イオン導入器用フェース・ヘッドパッド及びそれを備えたイオン導入装置
【課題】耐久性、柔軟性に優れたイオン導入器用フェース・ヘッドパッドであって、かつ例えば顔や頭皮等の比較的広い面積に1回でより簡便かつより均一にイオン導入することを可能にするイオン導入器用フェース・ヘッドパッド、及び該フェース・ヘッドパッドを備えたイオン導入装置を提供することを課題とする。
【解決手段】イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドであって、絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有し、該導電性シリコンゴム層における導電性シリコンゴムの体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であることを特徴とするフェース・ヘッドパッドを用いる。
【解決手段】イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドであって、絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有し、該導電性シリコンゴム層における導電性シリコンゴムの体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であることを特徴とするフェース・ヘッドパッドを用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン導入器用フェース・ヘッドパッド及びそれを備えたイオン導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
肌への美容効果を高めるイオン導入法(イオントフォレーシス)が注目されている。これは微弱電流を皮膚に通電して、イオン化した、たとえば、アスコルビン酸リン酸マグネシウム等のビタミンC誘導体などの水溶液(以下、導入剤と称する。)を皮膚の深部に浸透させる方法である。通常、この導入剤を皮膚の深部に安定に、しかも持続的に浸透させるのにイオン導入器が使用される。この装置の操作ではイオン導入器の電極部分を皮膚に当てて、たとえば、1mAの微弱電流を人体内に導く。
【0003】
このとき、たとえば、電極に巻いた化粧用コットンなどに含ませた導入剤は表皮から真皮に到達し、肌の美容の維持に有効に作用する。すなわち、皮膚にシミ(肝斑)、ソバカス(雀卵性)あるいは一過性色素沈着(レーザ照射後)などの色素沈着を引き起こすメラニンの異常増加を抑制したり、またはいったん形成されたメラニンを脱色することが可能である。イオン導入器を用いる利点はこれに限られず、イオン導入前の洗顔後に、たとえば、スキン・トナーを用いて毛穴に詰まった汚れなどを取り除く、クレンジング効果を得ることも可能である。そのようなイオン導入器としては、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。また、特許文献3には、頭髪を梳くブラシの毛の部分を金属製の梳毛ピンにより構成し、柄の手で触れ得る部分に電極を設けると共に、その梳毛ピンと電極との間に高周波パルスを供給し得る電源を接続して成る養毛ブラシが開示されている。
【0004】
しかし、これらの従来のイオン導入器は、皮膚との接着面が狭く、顔や頭皮等の比較的広い部分にイオン導入する際には、イオン導入器を接着させる皮膚を少しずつずらしながら何度もイオン導入しなければならず、かなり多くの手間を要した。
【0005】
このような欠点を補うべく、比較的広い部分に一度でイオン導入することのできるイオン導入器及びそれに用いる用具の開発が試みられている。例えば特許文献4には、保水性を有する材質のウエブでマスク本体(1)を成形するとともに、該マスク本体(1)中に美肌用液を含浸させ、さらに該マスク本体(1)のウエブに通電可能な物質を塗布し、該通電物質塗布部(2)にイオン導入器(3)の電極導子を接続可能としたことを特徴とする化粧用マスクが記載されている。しかし、複数の美容液等の薬剤をイオン導入する場合、複数のマスクに薬剤液を含浸させたうえでさらにそれぞれに、通電可能な物質を塗布する必要があり、簡便性及びコストの点で十分とはいえなかった。
【0006】
また、特許文献5には、電導体(2)を薬剤含浸シート(1)の片面の全体あるいは一部に接着・溶着・圧着などの方法ではりつけた医療及び美容に使用する電導体付薬剤含浸シートが記載されている。しかし、電導体の材質によっては、薬剤含浸シートに流れる電流にムラが生じる場合や、電流は比較的均一に流れるものの電導体の柔軟性が不十分で、顔面にイオン導入する際などに電導体付薬剤含浸シートを手などで押さえる必要が生じる場合、また電導体部分の強度が十分ではなく耐久性の点で不十分な場合などが想定され、実用性の点で十分とはいえない。
【0007】
また、導電性シリコンゴム自体は公知の物質であり、リモコンのスイッチ等の電気接点や、導電部品などに用いられていた。しかし、導電性シリコンゴムをイオン導入用のフェース・ヘッドパッドとして用いることは知られていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−237043号公報
【特許文献2】特開2005−237545号公報
【特許文献3】特開平7−241345号公報
【特許文献4】特許第2768456号公報
【特許文献5】特開2003−38660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、上記のような従来のイオン導入器及びそれに用いる用具の問題点及び不十分な点に鑑み、耐久性、柔軟性に優れたイオン導入器用フェース・ヘッドパッドであって、かつ例えば顔や頭皮等の比較的広い面積に1回でより簡便かつより均一にイオン導入することを可能にするイオン導入器用フェース・ヘッドパッド、及び該フェース・ヘッドパッドを備えたイオン導入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、絶縁支持体層と、特定の導電性シリコンゴム層とを有するフェース・ヘッドパッドを用いると、上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(1)イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドであって、絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有し、該導電性シリコンゴム層における導電性シリコンゴムの体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であることを特徴とするフェース・ヘッドパッドや、(2)導電性シリコンゴムの引張強さが5.0MPa以上であることを特徴とする上記(1)に記載のフェース・ヘッドパッドや、(3)導電性シリコンゴム層の導電性シリコンゴムが、カーボンを含む導電性シリコンゴムであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のフェース・ヘッドパッドや、(4)導電性シリコンゴム層の厚さが、0.2〜1.0mmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドや、(5)絶縁支持体層が、絶縁樹脂層であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドや、(6)絶縁樹脂層が、絶縁シリコンゴム層であることを特徴とする上記(5)に記載のフェース・ヘッドパッドや、(7)絶縁シリコンゴム層の厚さが、0.3〜1.8mmであることを特徴とする上記(6)に記載のフェース・ヘッドパッドや、(8)絶縁支持体と接している面の反対側の導電性シリコンゴム層表面に薬剤又は化粧料が付着していることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドや、(9)薬剤又は化粧料がジェル状であることを特徴とする上記(8)に記載のフェース・ヘッドパッドに関する。
【0012】
また本発明は(10)イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドセットであって、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドと、保水性を有するシートとからなるフェース・ヘッドパッドセットや、(11)保水性を有するシートが、コットンからなることを特徴とする上記(10)に記載のフェース・ヘッドパッドセットや、(12)保水性を有するシートが、薬剤又は化粧料を含んでいることを特徴とする上記(10)又は(11)に記載のフェース・ヘッドパッドセットに関する。
【0013】
さらに本発明は、(13)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド又は上記(10)〜(12)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドセットと、イオン導入器とを備えていることを特徴とするイオン導入装置や、(14)イオン導入器を収納し得る防水容器をさらに備えていることを特徴とする上記(13)に記載のイオン導入装置に関する。
【0014】
また本発明は、(15)上記(13)又は(14)に記載のイオン導入装置を用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法や、(16)上記(14)に記載のイオン導入装置を風呂場で用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有するフェース・ヘッドパッドは、耐久性、柔軟性に優れている。また、該フェース・ヘッドパッドを用いると、例えば顔や頭皮等の比較的広い面積に1回でより簡便かつより均一にイオン導入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のフェース・ヘッドパッドは、イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドであって、絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有し、該導電性シリコンゴム層における導電性シリコンゴムの体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であることを特徴とするフェース・ヘッドパッドである。本明細書におけるフェース・ヘッドパッドとは、フェースパッド又はヘッドパッドを表す。本発明におけるフェースパッドとは、顔に装着し得るパッドを意味し、本発明におけるヘッドパッドとは頭皮に装着し得るパッドを意味する。なお、本発明におけるフェース・ヘッドパッドとは、便宜上、顔及び頭皮以外の人体のいずれかの部分、例えば首、腕、背中、胸、足、腹、手の甲等に装着し得る任意の形状のパッド、並びに顔及び頭皮以外の人体のいずれかの部分に装着するのに適した任意の形状であって、顔又は頭皮への装着ができない形状のパッドをも含む。
【0017】
本発明の導電性シリコンゴム層に用いる導電性シリコンゴムは、体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であれば特に制限されない。体積抵抗率は15Ω・cm以下であればよいが、好ましくは10Ω・cm以下、より好ましくは6Ω・cm以下、さらに好ましくは4Ω・cm以下である。また、硬さ度は50〜80の範囲内であればよいが、好ましくは50〜77、より好ましくは55〜69、さらに好ましくは62〜66である。また、伸び率は180%以上であればよいが、好ましくは200%以上、より好ましくは220%以上、さらに好ましくは250%以上である。このような導電性シリコンゴムを用いることにより、フェース・ヘッドパッドの耐久性、柔軟性が優れ、かつ、例えば顔や頭皮等の比較的広い面積に1回でより簡便かつより均一にイオン導入することが可能となる。特に、体積抵抗率が高い導電性シリコンゴムを用いると、フェース・ヘッドパッドの部位によって流れる電流の量にムラを生じる結果を引き起こすことにつながる。なお、本発明における体積抵抗率、硬さ度及び伸び率は、それぞれJIS K 6249の試験方法により測定した値である。
【0018】
本発明に用いる導電性シリコンゴムの引張強さは特に制限されないが、好ましくは5.0MPa以上、より好ましくは5.5MPa以上、さらに好ましくは6.0MPa以上、最も好ましくは6.4MPa以上である。このような導電性シリコンゴムを用いることにより、耐久性がより向上したフェース・ヘッドパッドが得られる。なお、本発明における引張強さは、JIS K 6249の試験方法により測定した値である。
【0019】
本発明に用いる導電性シリコンゴムは、体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上である限り、導電性物質の種類は特に制限されず、金、銀、銅等の金属やカーボンなどが挙げられるが、安全性及び安定性の観点からカーボンであることが好ましい。体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上である限り、導電性シリコンゴムにおける導電性物質の含有量は特に制限されないが、例えば、30〜40重量%としてもよい。カーボン等の導電性物質の含有量を多くすると体積抵抗率は低下する一方、硬さ度は上昇し、伸び率は低下する結果、フェース・ヘッドパッドの柔軟性が低下する傾向があるので、導電性物質やシリコンゴムの種類に応じて適当な含有量とすることが好ましい。なお、本発明に用いる導電性シリコンゴムは、2種以上の導電性物質を含んでいてもよい。
【0020】
また、体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上である限り、導電性シリコンゴムにおけるシリコンゴムの種類は特に制限されず、シリコンゴムの他、ビニルメチルシリコンゴム(VMQ)、フェニルビニルメチルシリコンゴム(PVMQ)、メチルシリコンゴム(MQ)、フロロシリコンゴム(FVMQ)を例示することができる。本発明に用いる導電性シリコンゴムの中では、体積抵抗率、硬さ度、伸び率及び引張強度がバランス良くより優れていることから、SRX539U(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)が特に好ましい。導電性シリコンゴムは、吸水性が低いため、使用後は簡単に水洗いするだけで、用いた薬剤を十分に落として衛生的に保つことができる点で好ましい。なお、本発明の導電性シリコンゴム層は、シリコンゴム以外の他の樹脂及び/又はゴムをさらに含有していてもよいし、2種以上のシリコンゴムを含有していてもよい。
【0021】
本発明における導電性シリコンゴム層の厚さは、特に制限されないが、導電性シリコンゴム層の厚さを薄くすると柔軟性は高くなる一方、体積抵抗率が上がる傾向があるため、適度の厚さとすることが好ましい。適度な厚さがどの程度であるかは、導電性シリコンゴム層等に用いる導電性物質やシリコンゴムの種類等により左右されるため一概には言えないが、SRX539Uを用いた場合は0.2〜1.0mmとすることが好ましく、0.3〜0.7mmとすることがより好ましく、0.5mmとすることがさらに好ましい。
【0022】
本発明における絶縁支持体層は、層状の絶縁支持体である限り特に制限されない。本発明における絶縁支持体の電気抵抗は特に制限されないが、例えば体積抵抗率が1×104Ω・cm以上、より好ましくは1×108Ω・cm以上である。絶縁支持体の硬さ度は特に制限されないが、硬さ度は50〜80であればよいが、好ましくは50〜77、より好ましくは55〜69以下、さらに好ましくは56〜66以下である。また、絶縁支持体の伸び率は特に制限されないが、300%以上であればよいが、好ましくは400%以上、より好ましくは500%以上である。
【0023】
絶縁支持体の種類は、特に制限されないが、柔軟性と強度(耐久性)とのバランスの観点から、絶縁樹脂であることが好ましく、絶縁ゴムであることがより好ましく、絶縁(非導電性の)シリコンゴムであることがさらに好ましく、DY32−816U(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)であることがさらにより好ましい。
【0024】
本発明における絶縁支持体層の厚さは、特に制限されないが、厚くすると強度が上がる一方、柔軟性が下がる傾向があるため、適度な厚さとすることが好ましい。適度な厚さがどの程度の厚さであるかは、用いる絶縁支持体の柔軟性及び強度等により左右されるため一概には言えないが、絶縁シリコンゴムを用いる場合は0.3〜1.8mmとすることが好ましく、0.5〜1.5mmとすることがより好ましく、0.7〜1.2mmとすることがさらに好ましい。
【0025】
フェース・ヘッドパッドの形状は特に制限されず、イオン導入する部位の皮膚の形状等に合わせて適宜決定することができる。例えば、顔用のパッドの場合、顔に適用し得る限りその形状は特に制限されないが、例えば目及び口に接する部分をくり抜き、また鼻に接する部分に切れ目を入れるなどして顔面にフィットするような形状とすることができる。具体的には、例えば、後述の図1に記載されたような形状のフェースパッドとすることができる。また、頭皮用のパッドの場合、頭皮に適用し得る限りその形状は特に制限されないが、例えば櫛状の形状にすることで、パッドを頭皮に十分に接触させることができる。具体的には、例えば、後述の図9に記載されたような形状のヘッドパッドとすることができる。このヘッドパッドは、絶縁材13、導電性シリコンゴム層14、電極用端子15、導体16を備えている。電極用端子15に、イオン導入器の電極導子の一方を接続する。また、首用のパッドとしては長方形等の形状とすることができる。なお、顔用のパッドの一部を利用して、首用のパッドとして用いることなども適宜できる。
【0026】
フェース・ヘッドパッドの面積は特に制限されず、また対象とする皮膚の部位等に左右されるため一概にはいえないが、顔用の場合、例えば100cm2〜600cm2とすることができ、また、頭皮用の場合、例えば、10cm2〜400cm2とすることができる。
【0027】
本発明における導電性シリコンゴム層の形状は、一定の厚みを有していさえすれば、特に制限されず、例えば、後述の図9に記載されたような形状のヘッドパッドの導電性シリコンゴム層等の、層状の部分を一部に備えた形状はもちろんのこと、曲面からなる形状、波打った形状などいかなる形状も含まれる。
【0028】
また、本発明のフェース・ヘッドパッドは、イオン導入器に用いる旨の表示が付されていてもよいし、薬剤又は化粧料のイオン導入用である旨の表示が付されていてもよいし、薬剤又は化粧料の風呂場でのイオン導入用である旨の表示が付されていてもよい。
【0029】
本発明のフェース・ヘッドパッドの製法は特に制限されず、例えば、絶縁支持体層の上に導電性シリコン層を形成させることにより得ることができる。また、本発明のフェース・ヘッドパッドは、本発明の効果を妨げない限り、絶縁支持体層と導電性シリコン層のほかに任意の構成を有していてもよい。例えば、絶縁支持体層を2層以上有していてもよいし、導電性シリコン層を2層以上有していてもよいし、絶縁支持体層と導電性シリコン層の間に中間層を有していてもよいし、絶縁支持体層の表面にコーティング層をさらに有していてもよい。
【0030】
本発明のフェース・ヘッドパッドは、イオン導入器に接続して用いることにより、イオン導入を好適に行うことができる。本発明におけるイオン導入器としては、正と負の両電極導子を有する電気回路及び電源を備えていれば特に制限されない。該電気回路は、電圧を調整できるように、変圧器やコンデンサをさらに有していることが好ましい。
【0031】
イオン導入の方法としては、本発明のフェース・ヘッドパッドを用いる限り特に制限されないが、例えば、以下のような2つの方法を例示することができる。第1の方法としては、イオン導入器の一方の電極導子を導電性シリコンゴム層に接触させた本発明のフェース・ヘッドパッドであって、導電性シリコンゴム層に薬剤又は化粧料が付着したフェース・ヘッドパッドの導電性シリコンゴム層側を、イオン導入する部分の皮膚に接触させ、かつ、イオン導入器のもう一方の電極導子を他の部分の皮膚に接触させた状態でイオン導入器の電流を流すことができる。この第1の方法に用いる薬剤や化粧料は、ジェル状でなくてもよいが、ジェル状であると本発明のフェース・ヘッドパッドに薬剤が十分に付着することから、ジェル状であることが好ましい。
一方、第2の方法としては、本発明のフェース・ヘッドパッドとイオン導入器に加えて、保水性を有するシートをさらに用いることができる。第2の方法では、導電性シリコンゴム層に薬剤又は化粧料が直接付着したフェース・ヘッドパッドを用いる代わりに、保水性を有するシートに薬剤又は化粧料を含有させ、該シートを導電性シリコンゴム層側に接触させたフェース・ヘッドパッドを用いる。このシートを接触させたフェース・ヘッドパッドのシート側を、イオン導入する部分の皮膚に接触させ、第1の方法と同様にイオン導入器の電流を流すことができる。第2の方法を用いると、複数の薬剤又は化粧料を連続的にイオン導入する場合に、別の薬剤又は化粧料を用いる度にフェース・ヘッドパッドを洗う必要がほとんどないため、より簡便にイオン導入することができる。
【0032】
イオン導入に用いる薬剤や化粧料の種類は特に制限されないが、化粧料としてはアスコルビン酸、レチノール、アミノ酸、ミネラル、フェチン酸若しくはこれらの誘導体、プラセンター等を例示することができ、薬剤としては、消炎剤、鎮痛剤や、麻酔剤等の経皮吸収薬剤を例示することができる。薬剤や化粧料の種類によって、電流を流した際に薬剤や化粧料の分子の正味電荷が正になるものと、負になるものがある。正味電荷が正になる薬剤や化粧料を用いる場合は、フェース・ヘッドパッド側に正の電極導子を接触させて電流を流し、正味電荷が負になる薬剤や化粧料を用いる場合は、フェース・ヘッドパッド側に負の電極導子を接触させて電流を流すことにより、電気的な反発力を利用して薬剤又は化粧料を皮膚の内部に浸透させることができる。なお、イオン導入に用いる薬剤や化粧料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上の薬剤を用いてもよいし、2種以上の化粧料を用いてもよいし、少なくとも1種以上の薬剤と少なくとも1種以上の化粧料を合わせて用いてもよい。
【0033】
上記のイオン導入する部分としては特に制限されず、顔、首、頭皮等を例示することができる。また、上記の他の部分としては、イオン導入される人の身体のいずれかの部分であって、イオン導入する部分以外の部分であれば特に制限はされないが、例えば顔、首又は頭皮にイオン導入する場合は、他の部分として耳、手等を挙げることができる。
【0034】
イオン導入する際に印加する電流が周期的に変化する場合、電流の周波数は特に制限されないが、0.5〜1.5kHzの範囲を例示することができる。印加電流の波形は特に制限されないが、例えば、方形波等のパルス波のほかに、三角波や正弦波などの複雑な信号波形などを用いてもよい。更には複数の波長を与えてもよい。また、直流の電流の他、交流の電流であってもよい。イオン導入する際の電圧(Vp-p)は特に制限されないが、例えば1〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜7、さらに好ましくは4〜6とすることができる。また、パルス波等の場合のデューティー(ON/OFFの時間比(%))は特に制限されないが、例えば20〜90%、より好ましくは40〜80%とすることができる。
【0035】
本発明のフェース・ヘッドパッドセットは、本発明のフェース・ヘッドパッドと、上記の保水性を有するシートからなる。本発明に用いるシートは、保水性を有している限り特に制限はない。本発明における保水性を有しているシートとは、水分を保持し得る限り特に制限はないが、シートの重量の1000分の1以上、500分の1以上、100分の1以上、好ましくは50分の1以上、より好ましくは30分の1以上、さらに好ましくは10分の1以上の重量、最も好ましくはシートと同重量の水分を含み得るシートを意味する。
【0036】
シートの素材は特に制限されないが、コットン、布、紙、不織布等を例示することができ、中でもコットンを好ましく例示することができる。シートの素材は、1種でもよいし2種以上を含んでいてもよい。また、シートは、1枚ずつ用いてもよいし、同種又は異種の素材のシートを2枚以上重ねて一度に用いてもよいし、1枚を折り畳んで用いてもよい。
【0037】
本発明のフェース・ヘッドパッドセットにおけるシートの形状は、特に制限されないが、フェース・ヘッドパッドの形状に合わせることができる。シートは、フェース・ヘッドパッド全体を覆うような大きさでもよいし、フェース・ヘッドパッドより小さくてもよい。
【0038】
本発明のフェース・ヘッドパッドセットにおけるシートは、薬剤又は化粧料を含んでいなくてもよいが、薬剤又は化粧料を含んでいてもよい。例えばウェットティシューのように、容器内部であらかじめシートを薬剤又は化粧料に浸しておくと、容器から取り出してすぐに用いることができる。
【0039】
また、本発明のフェース・ヘッドパッドセットは、イオン導入器に用いる旨の表示が付されていてもよいし、薬剤又は化粧料のイオン導入用である旨の表示が付されていてもよいし、薬剤又は化粧料の風呂場でのイオン導入用である旨の表示が付されていてもよい。
【0040】
本発明のイオン導入装置は、本発明のフェース・ヘッドパッド又は本発明のフェース・ヘッドパッドセットと、イオン導入器とを備えていることを特徴とする。本発明のイオン導入装置は、本発明のフェース・ヘッドパッド又は本発明のフェース・ヘッドパッドセットと、任意のイオン導入器を備えていれば特に制限されない。イオン導入器としては、正と負の両電極導子を有する電気回路及び電源を備えていれば特に制限されない。該電気回路は、電圧を調整できるように、変圧器をさらに有していることが好ましい。
【0041】
本発明のイオン導入装置に用いるイオン導入器が印加しうる電流の周波数は特に制限されないが、0.5〜1.5kHzの範囲を例示することができる。印加電流の波形は特に制限されないが、例えば、方形波等のパルス波のほかに、三角波や正弦波などの複雑な信号波形などでもよく、更には複数の波長を与えてもよい。また、該イオン導入器が印加しうる電流は直流であっても、交流であってもよい。該イオン導入器が印加しうる電圧(Vp-p)は特に制限されないが、例えば1〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜7、さらに好ましくは4〜6である。また、該イオン導入器が印加する電流がパルス波等の場合におけるデューティー(ON/OFFの時間比(%))は特に制限されないが、例えば20〜90%、より好ましくは40〜80%である。これにより、より効率的に薬剤をイオン導入することができる。また、本発明に用いるイオン導入器は、本発明のパッド又はパッドセットと接続しなくても、イオン導入することができるイオン導入器であってもよい。
【0042】
本発明の薬剤又は化粧料をイオン導入する方法は、本発明のイオン導入装置を用いることを特徴とする。本発明の方法は、本発明のイオン導入装置を用いる限り特に制限されないが、例えば以下のような方法を例示することができる。
【0043】
第1の方法としては、イオン導入器の一方の電極導子を導電性シリコンゴム層に接触させた本発明のフェース・ヘッドパッドであって、導電性シリコンゴム層に薬剤又は化粧料が付着したフェース・ヘッドパッドの導電性シリコンゴム層側を、イオン導入する部分の皮膚に接触させ、かつ、イオン導入器のもう一方の電極導子を他の部分の皮膚に接触させた状態でイオン導入器の電流を流すことができる。この第1の方法に用いる薬剤や化粧料は、ジェル状でなくてもよいが、ジェル状であると本発明のフェース・ヘッドパッドに薬剤や化粧料が十分に付着することから、ジェル状であることが好ましい。
第2の方法としては、本発明のフェース・ヘッドパッドとイオン導入器に加えて、保水性を有するシートをさらに用いることができる。第2の方法では、導電性シリコンゴム層に薬剤又は化粧料が直接付着したフェース・ヘッドパッドを用いる代わりに、保水性を有するシートに薬剤又は化粧料を含有させ、該シートを導電性シリコンゴム層側に接触させたフェース・ヘッドパッドを用いる。このシートを接触させたフェース・ヘッドパッドのシート側を、イオン導入する部分の皮膚に接触させ、第1の方法と同様にイオン導入器の電流を流すことができる。第2の方法を用いると、複数の薬剤又は化粧料を連続的にイオン導入する場合に、別の薬剤又は化粧料を用いる度にフェース・ヘッドパッドを洗う必要がほとんどないため、より簡便にイオン導入することができる。
【0044】
また、本発明のイオン導入装置は、本発明のフェース・ヘッドパッド又はフェース・ヘッドセット、及びイオン導入器に加えて、防水容器をさらに有していてもよい。イオン導入器を防水容器に入れ、接続コードを防水容器から出すことにより、風呂場などの水に濡れる可能性のある場所でも、イオン導入器を破損することなく、イオン導入を行うことができる。防水容器の形状、素材等は、イオン導入器が破損しない程度の防水効果を有している限り、特に制限されない。
本発明の方法は、本発明のイオン導入装置を風呂場で用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法も含まれる。入浴中は皮膚の毛穴が大きく開いているため、より効果的にイオン導入することができる。本発明のイオン導入装置は、薬剤又は化粧料の風呂場でのイオン導入用である旨の表示が付されていてもよい。
【0045】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(1)フェースパッド
SRX539U(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)からなる導電性シリコンゴム層(厚さ0・5mm)を1次成形した後、その表面上に、DY32−816U(絶縁シリコンゴム:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を用いて絶縁支持体層(厚さ1.0mm)を2次成形した。該導電性シリコンゴム層中の残留活性基が、絶縁シリコンゴム中の化合物と共加硫すること等により、接着剤を用いることなく、導電性シリコンゴム層と絶縁シリコンゴム層が接着する。得られたパッドを、図1のような形状に加工し、本発明のフェースパッドを得た。このフェースパッドの片側の面積は約400cm2であった。このフェースパッドの抵抗を測定したところ約500オームであった。なお、SRX539Uは、体積抵抗率が3.5Ω・cm、硬さ度が64、伸び率が250%、引張強さが5.0MPaである。また、DY32−816Uの体積抵抗率は約1×1015Ω・cm、硬さ度が61、伸び率が527%、引張強さが9.3MPaである。なお、体積抵抗率、硬さ度、伸び率、引張強さの測定方法は、JIS K 6249に従った。
【0047】
(2)イオン導入器
正と負の両電極導子を有する電気回路及び電源を備えたイオン導入器として、図2(正面図)、図3(側面図)及び図4(背面図)に示すイオン導入器を用意した。このイオン導入器は、コットンパフプレート1、電源スイッチ2、極性スイッチ3、ブザー音量調節スイッチ4、出力調整スイッチ5、外部端子、ハンドプレート、モニターランプ、電池カバーを備えている。このイオン導入器は、狭い範囲であれば、本発明のフェース・ヘッドパッド等を用いなくとも、イオン導入することができる。すなわち、コットンパフプレートに、薬剤を含浸させたコットンパフ等を当て、そのコットンパフをイオン導入したい部位の皮膚に接触させ、さらにハンドプレートに指等を接触させた状態で電源スイッチを入れると、コットンパフプレートから皮膚、人体を経由してハンドプレートにかけて電流が流れ、薬剤がイオン導入される。また、極性スイッチを切り替えることにより、電流の向きを逆方向に切り替えることができる。コットンパフプレートから皮膚、人体を経由してハンドプレートへ、又は、その逆方向に電流が流れている場合は、モニターランプが点滅する。すなわち、このモニターランプが点滅していることを確認することにより、イオン導入がされていることを確認することができる。イオン導入が完了すると、ブザー音がなる。また、出力調製スイッチを切り替えることにより、出力を「L」モード(Vp-p 4; デューティー 50%)、「M」モード(Vp-p 6; デューティー 50%)、「H」モード(Vp-p 6; デューティー 75%)の3段階に切り替えることができる。
【0048】
(3)イオン導入装置
図5にイオン導入装置を示す。上記のイオン導入器の一方の電極導子をフェースパッドに接続し、もう一方の電極導子を身体の他の部分に接触させて用いる。
【0049】
(4)電圧波形の測定
上記のイオン導入装置を用いて実際にイオン導入を行い、イオン導入がフェースパッド全体に均一に行われているかどうかを調べた。具体的には以下のような手順で行った。
上記のイオン導入器の一方の電極導子を接続したフェースパッドの導電性シリコンゴム層側に、化粧水溶液(プラセンター、アスコルビン酸、アミノ酸、フェチン酸の混合化粧水溶液)を浸したコットンシートを接触させた。このコットンシートを接触させたフェースパッドのシート側を、顔を覆うように顔の皮膚に接触させ、さらに、もう一方の電極導子を被験者の耳に接触させた状態でイオン導入器の電源スイッチを入れてイオン導入を行った。イオン導入時の電圧を測定し、電圧波形を得た。出力を「L」モード、「M」モード及び「H」モードとしたときのそれぞれの電圧波形を、図6、図7及び図8にそれぞれ示す。なお、電圧の周波数は約1kHzであった。今度は、フェースパッドを用いずに同様のイオン導入器を用いてイオン導入を行った。すなわち、同様の薬剤溶液を浸したコットンシートを、イオン導入器の一方の電極であるコットンパフプレートに載せ、もう一方の電極であるハンドプレートに被験者の指が接触させた状態でイオン導入器の電源スイッチを入れてイオン導入を行った。なお、コットンパフプレートの面積は、およそ5.5cm2である。
該イオン導入時の電圧を測定したところ、「L」モード、「M」モード及び「H」モードのそれぞれについて、先ほどのパッドを用いた場合と同様の電圧波形を得た。
フェースパッドを用いた場合にも、フェースパッドを用いなかった場合と同様に乱れのない電圧波形が得られたことから、本発明のフェースパッドを用いれば比較的広い面積であっても一度でムラなく均一にイオン導入ができることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のフェースパッドの形状を示す図である。
【図2】本発明のイオン導入器の正面図である。
【図3】本発明のイオン導入器の側面図である。
【図4】本発明のイオン導入器の背面図である。
【図5】本発明のイオン導入装置を示す図である。
【図6】イオン導入時の電圧波形(「L」モード)を示す図である。
【図7】イオン導入時の電圧波形(「M」モード)を示す図である。
【図8】イオン導入時の電圧波形(「H」モード)を示す図である。
【図9】本発明のヘッドパッドの形状を示す図である。
【図10】絶縁材と接している側と反対側の、本発明のヘッドパッドの導電性シリコンゴム層を示す図である。
【図11】本発明のヘッドパッドの導電性シリコンゴム層の側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 コットンパフプレート
2 電源スイッチ
3 極性スイッチ
4 ブザー音量調節スイッチ
5 出力調整スイッチ
6 外部端子
7 ハンドプレート
8 モニターランプ
9 電池カバー
10 フェースパッド
11 イオン導入器
12 接続コード
13 絶縁材
14 導電性シリコンゴム層
15 電極用端子
16 導体
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン導入器用フェース・ヘッドパッド及びそれを備えたイオン導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
肌への美容効果を高めるイオン導入法(イオントフォレーシス)が注目されている。これは微弱電流を皮膚に通電して、イオン化した、たとえば、アスコルビン酸リン酸マグネシウム等のビタミンC誘導体などの水溶液(以下、導入剤と称する。)を皮膚の深部に浸透させる方法である。通常、この導入剤を皮膚の深部に安定に、しかも持続的に浸透させるのにイオン導入器が使用される。この装置の操作ではイオン導入器の電極部分を皮膚に当てて、たとえば、1mAの微弱電流を人体内に導く。
【0003】
このとき、たとえば、電極に巻いた化粧用コットンなどに含ませた導入剤は表皮から真皮に到達し、肌の美容の維持に有効に作用する。すなわち、皮膚にシミ(肝斑)、ソバカス(雀卵性)あるいは一過性色素沈着(レーザ照射後)などの色素沈着を引き起こすメラニンの異常増加を抑制したり、またはいったん形成されたメラニンを脱色することが可能である。イオン導入器を用いる利点はこれに限られず、イオン導入前の洗顔後に、たとえば、スキン・トナーを用いて毛穴に詰まった汚れなどを取り除く、クレンジング効果を得ることも可能である。そのようなイオン導入器としては、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。また、特許文献3には、頭髪を梳くブラシの毛の部分を金属製の梳毛ピンにより構成し、柄の手で触れ得る部分に電極を設けると共に、その梳毛ピンと電極との間に高周波パルスを供給し得る電源を接続して成る養毛ブラシが開示されている。
【0004】
しかし、これらの従来のイオン導入器は、皮膚との接着面が狭く、顔や頭皮等の比較的広い部分にイオン導入する際には、イオン導入器を接着させる皮膚を少しずつずらしながら何度もイオン導入しなければならず、かなり多くの手間を要した。
【0005】
このような欠点を補うべく、比較的広い部分に一度でイオン導入することのできるイオン導入器及びそれに用いる用具の開発が試みられている。例えば特許文献4には、保水性を有する材質のウエブでマスク本体(1)を成形するとともに、該マスク本体(1)中に美肌用液を含浸させ、さらに該マスク本体(1)のウエブに通電可能な物質を塗布し、該通電物質塗布部(2)にイオン導入器(3)の電極導子を接続可能としたことを特徴とする化粧用マスクが記載されている。しかし、複数の美容液等の薬剤をイオン導入する場合、複数のマスクに薬剤液を含浸させたうえでさらにそれぞれに、通電可能な物質を塗布する必要があり、簡便性及びコストの点で十分とはいえなかった。
【0006】
また、特許文献5には、電導体(2)を薬剤含浸シート(1)の片面の全体あるいは一部に接着・溶着・圧着などの方法ではりつけた医療及び美容に使用する電導体付薬剤含浸シートが記載されている。しかし、電導体の材質によっては、薬剤含浸シートに流れる電流にムラが生じる場合や、電流は比較的均一に流れるものの電導体の柔軟性が不十分で、顔面にイオン導入する際などに電導体付薬剤含浸シートを手などで押さえる必要が生じる場合、また電導体部分の強度が十分ではなく耐久性の点で不十分な場合などが想定され、実用性の点で十分とはいえない。
【0007】
また、導電性シリコンゴム自体は公知の物質であり、リモコンのスイッチ等の電気接点や、導電部品などに用いられていた。しかし、導電性シリコンゴムをイオン導入用のフェース・ヘッドパッドとして用いることは知られていなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−237043号公報
【特許文献2】特開2005−237545号公報
【特許文献3】特開平7−241345号公報
【特許文献4】特許第2768456号公報
【特許文献5】特開2003−38660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、上記のような従来のイオン導入器及びそれに用いる用具の問題点及び不十分な点に鑑み、耐久性、柔軟性に優れたイオン導入器用フェース・ヘッドパッドであって、かつ例えば顔や頭皮等の比較的広い面積に1回でより簡便かつより均一にイオン導入することを可能にするイオン導入器用フェース・ヘッドパッド、及び該フェース・ヘッドパッドを備えたイオン導入装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、絶縁支持体層と、特定の導電性シリコンゴム層とを有するフェース・ヘッドパッドを用いると、上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(1)イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドであって、絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有し、該導電性シリコンゴム層における導電性シリコンゴムの体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であることを特徴とするフェース・ヘッドパッドや、(2)導電性シリコンゴムの引張強さが5.0MPa以上であることを特徴とする上記(1)に記載のフェース・ヘッドパッドや、(3)導電性シリコンゴム層の導電性シリコンゴムが、カーボンを含む導電性シリコンゴムであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のフェース・ヘッドパッドや、(4)導電性シリコンゴム層の厚さが、0.2〜1.0mmであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドや、(5)絶縁支持体層が、絶縁樹脂層であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドや、(6)絶縁樹脂層が、絶縁シリコンゴム層であることを特徴とする上記(5)に記載のフェース・ヘッドパッドや、(7)絶縁シリコンゴム層の厚さが、0.3〜1.8mmであることを特徴とする上記(6)に記載のフェース・ヘッドパッドや、(8)絶縁支持体と接している面の反対側の導電性シリコンゴム層表面に薬剤又は化粧料が付着していることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドや、(9)薬剤又は化粧料がジェル状であることを特徴とする上記(8)に記載のフェース・ヘッドパッドに関する。
【0012】
また本発明は(10)イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドセットであって、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドと、保水性を有するシートとからなるフェース・ヘッドパッドセットや、(11)保水性を有するシートが、コットンからなることを特徴とする上記(10)に記載のフェース・ヘッドパッドセットや、(12)保水性を有するシートが、薬剤又は化粧料を含んでいることを特徴とする上記(10)又は(11)に記載のフェース・ヘッドパッドセットに関する。
【0013】
さらに本発明は、(13)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド又は上記(10)〜(12)のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドセットと、イオン導入器とを備えていることを特徴とするイオン導入装置や、(14)イオン導入器を収納し得る防水容器をさらに備えていることを特徴とする上記(13)に記載のイオン導入装置に関する。
【0014】
また本発明は、(15)上記(13)又は(14)に記載のイオン導入装置を用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法や、(16)上記(14)に記載のイオン導入装置を風呂場で用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有するフェース・ヘッドパッドは、耐久性、柔軟性に優れている。また、該フェース・ヘッドパッドを用いると、例えば顔や頭皮等の比較的広い面積に1回でより簡便かつより均一にイオン導入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のフェース・ヘッドパッドは、イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドであって、絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有し、該導電性シリコンゴム層における導電性シリコンゴムの体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であることを特徴とするフェース・ヘッドパッドである。本明細書におけるフェース・ヘッドパッドとは、フェースパッド又はヘッドパッドを表す。本発明におけるフェースパッドとは、顔に装着し得るパッドを意味し、本発明におけるヘッドパッドとは頭皮に装着し得るパッドを意味する。なお、本発明におけるフェース・ヘッドパッドとは、便宜上、顔及び頭皮以外の人体のいずれかの部分、例えば首、腕、背中、胸、足、腹、手の甲等に装着し得る任意の形状のパッド、並びに顔及び頭皮以外の人体のいずれかの部分に装着するのに適した任意の形状であって、顔又は頭皮への装着ができない形状のパッドをも含む。
【0017】
本発明の導電性シリコンゴム層に用いる導電性シリコンゴムは、体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であれば特に制限されない。体積抵抗率は15Ω・cm以下であればよいが、好ましくは10Ω・cm以下、より好ましくは6Ω・cm以下、さらに好ましくは4Ω・cm以下である。また、硬さ度は50〜80の範囲内であればよいが、好ましくは50〜77、より好ましくは55〜69、さらに好ましくは62〜66である。また、伸び率は180%以上であればよいが、好ましくは200%以上、より好ましくは220%以上、さらに好ましくは250%以上である。このような導電性シリコンゴムを用いることにより、フェース・ヘッドパッドの耐久性、柔軟性が優れ、かつ、例えば顔や頭皮等の比較的広い面積に1回でより簡便かつより均一にイオン導入することが可能となる。特に、体積抵抗率が高い導電性シリコンゴムを用いると、フェース・ヘッドパッドの部位によって流れる電流の量にムラを生じる結果を引き起こすことにつながる。なお、本発明における体積抵抗率、硬さ度及び伸び率は、それぞれJIS K 6249の試験方法により測定した値である。
【0018】
本発明に用いる導電性シリコンゴムの引張強さは特に制限されないが、好ましくは5.0MPa以上、より好ましくは5.5MPa以上、さらに好ましくは6.0MPa以上、最も好ましくは6.4MPa以上である。このような導電性シリコンゴムを用いることにより、耐久性がより向上したフェース・ヘッドパッドが得られる。なお、本発明における引張強さは、JIS K 6249の試験方法により測定した値である。
【0019】
本発明に用いる導電性シリコンゴムは、体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上である限り、導電性物質の種類は特に制限されず、金、銀、銅等の金属やカーボンなどが挙げられるが、安全性及び安定性の観点からカーボンであることが好ましい。体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上である限り、導電性シリコンゴムにおける導電性物質の含有量は特に制限されないが、例えば、30〜40重量%としてもよい。カーボン等の導電性物質の含有量を多くすると体積抵抗率は低下する一方、硬さ度は上昇し、伸び率は低下する結果、フェース・ヘッドパッドの柔軟性が低下する傾向があるので、導電性物質やシリコンゴムの種類に応じて適当な含有量とすることが好ましい。なお、本発明に用いる導電性シリコンゴムは、2種以上の導電性物質を含んでいてもよい。
【0020】
また、体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上である限り、導電性シリコンゴムにおけるシリコンゴムの種類は特に制限されず、シリコンゴムの他、ビニルメチルシリコンゴム(VMQ)、フェニルビニルメチルシリコンゴム(PVMQ)、メチルシリコンゴム(MQ)、フロロシリコンゴム(FVMQ)を例示することができる。本発明に用いる導電性シリコンゴムの中では、体積抵抗率、硬さ度、伸び率及び引張強度がバランス良くより優れていることから、SRX539U(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)が特に好ましい。導電性シリコンゴムは、吸水性が低いため、使用後は簡単に水洗いするだけで、用いた薬剤を十分に落として衛生的に保つことができる点で好ましい。なお、本発明の導電性シリコンゴム層は、シリコンゴム以外の他の樹脂及び/又はゴムをさらに含有していてもよいし、2種以上のシリコンゴムを含有していてもよい。
【0021】
本発明における導電性シリコンゴム層の厚さは、特に制限されないが、導電性シリコンゴム層の厚さを薄くすると柔軟性は高くなる一方、体積抵抗率が上がる傾向があるため、適度の厚さとすることが好ましい。適度な厚さがどの程度であるかは、導電性シリコンゴム層等に用いる導電性物質やシリコンゴムの種類等により左右されるため一概には言えないが、SRX539Uを用いた場合は0.2〜1.0mmとすることが好ましく、0.3〜0.7mmとすることがより好ましく、0.5mmとすることがさらに好ましい。
【0022】
本発明における絶縁支持体層は、層状の絶縁支持体である限り特に制限されない。本発明における絶縁支持体の電気抵抗は特に制限されないが、例えば体積抵抗率が1×104Ω・cm以上、より好ましくは1×108Ω・cm以上である。絶縁支持体の硬さ度は特に制限されないが、硬さ度は50〜80であればよいが、好ましくは50〜77、より好ましくは55〜69以下、さらに好ましくは56〜66以下である。また、絶縁支持体の伸び率は特に制限されないが、300%以上であればよいが、好ましくは400%以上、より好ましくは500%以上である。
【0023】
絶縁支持体の種類は、特に制限されないが、柔軟性と強度(耐久性)とのバランスの観点から、絶縁樹脂であることが好ましく、絶縁ゴムであることがより好ましく、絶縁(非導電性の)シリコンゴムであることがさらに好ましく、DY32−816U(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)であることがさらにより好ましい。
【0024】
本発明における絶縁支持体層の厚さは、特に制限されないが、厚くすると強度が上がる一方、柔軟性が下がる傾向があるため、適度な厚さとすることが好ましい。適度な厚さがどの程度の厚さであるかは、用いる絶縁支持体の柔軟性及び強度等により左右されるため一概には言えないが、絶縁シリコンゴムを用いる場合は0.3〜1.8mmとすることが好ましく、0.5〜1.5mmとすることがより好ましく、0.7〜1.2mmとすることがさらに好ましい。
【0025】
フェース・ヘッドパッドの形状は特に制限されず、イオン導入する部位の皮膚の形状等に合わせて適宜決定することができる。例えば、顔用のパッドの場合、顔に適用し得る限りその形状は特に制限されないが、例えば目及び口に接する部分をくり抜き、また鼻に接する部分に切れ目を入れるなどして顔面にフィットするような形状とすることができる。具体的には、例えば、後述の図1に記載されたような形状のフェースパッドとすることができる。また、頭皮用のパッドの場合、頭皮に適用し得る限りその形状は特に制限されないが、例えば櫛状の形状にすることで、パッドを頭皮に十分に接触させることができる。具体的には、例えば、後述の図9に記載されたような形状のヘッドパッドとすることができる。このヘッドパッドは、絶縁材13、導電性シリコンゴム層14、電極用端子15、導体16を備えている。電極用端子15に、イオン導入器の電極導子の一方を接続する。また、首用のパッドとしては長方形等の形状とすることができる。なお、顔用のパッドの一部を利用して、首用のパッドとして用いることなども適宜できる。
【0026】
フェース・ヘッドパッドの面積は特に制限されず、また対象とする皮膚の部位等に左右されるため一概にはいえないが、顔用の場合、例えば100cm2〜600cm2とすることができ、また、頭皮用の場合、例えば、10cm2〜400cm2とすることができる。
【0027】
本発明における導電性シリコンゴム層の形状は、一定の厚みを有していさえすれば、特に制限されず、例えば、後述の図9に記載されたような形状のヘッドパッドの導電性シリコンゴム層等の、層状の部分を一部に備えた形状はもちろんのこと、曲面からなる形状、波打った形状などいかなる形状も含まれる。
【0028】
また、本発明のフェース・ヘッドパッドは、イオン導入器に用いる旨の表示が付されていてもよいし、薬剤又は化粧料のイオン導入用である旨の表示が付されていてもよいし、薬剤又は化粧料の風呂場でのイオン導入用である旨の表示が付されていてもよい。
【0029】
本発明のフェース・ヘッドパッドの製法は特に制限されず、例えば、絶縁支持体層の上に導電性シリコン層を形成させることにより得ることができる。また、本発明のフェース・ヘッドパッドは、本発明の効果を妨げない限り、絶縁支持体層と導電性シリコン層のほかに任意の構成を有していてもよい。例えば、絶縁支持体層を2層以上有していてもよいし、導電性シリコン層を2層以上有していてもよいし、絶縁支持体層と導電性シリコン層の間に中間層を有していてもよいし、絶縁支持体層の表面にコーティング層をさらに有していてもよい。
【0030】
本発明のフェース・ヘッドパッドは、イオン導入器に接続して用いることにより、イオン導入を好適に行うことができる。本発明におけるイオン導入器としては、正と負の両電極導子を有する電気回路及び電源を備えていれば特に制限されない。該電気回路は、電圧を調整できるように、変圧器やコンデンサをさらに有していることが好ましい。
【0031】
イオン導入の方法としては、本発明のフェース・ヘッドパッドを用いる限り特に制限されないが、例えば、以下のような2つの方法を例示することができる。第1の方法としては、イオン導入器の一方の電極導子を導電性シリコンゴム層に接触させた本発明のフェース・ヘッドパッドであって、導電性シリコンゴム層に薬剤又は化粧料が付着したフェース・ヘッドパッドの導電性シリコンゴム層側を、イオン導入する部分の皮膚に接触させ、かつ、イオン導入器のもう一方の電極導子を他の部分の皮膚に接触させた状態でイオン導入器の電流を流すことができる。この第1の方法に用いる薬剤や化粧料は、ジェル状でなくてもよいが、ジェル状であると本発明のフェース・ヘッドパッドに薬剤が十分に付着することから、ジェル状であることが好ましい。
一方、第2の方法としては、本発明のフェース・ヘッドパッドとイオン導入器に加えて、保水性を有するシートをさらに用いることができる。第2の方法では、導電性シリコンゴム層に薬剤又は化粧料が直接付着したフェース・ヘッドパッドを用いる代わりに、保水性を有するシートに薬剤又は化粧料を含有させ、該シートを導電性シリコンゴム層側に接触させたフェース・ヘッドパッドを用いる。このシートを接触させたフェース・ヘッドパッドのシート側を、イオン導入する部分の皮膚に接触させ、第1の方法と同様にイオン導入器の電流を流すことができる。第2の方法を用いると、複数の薬剤又は化粧料を連続的にイオン導入する場合に、別の薬剤又は化粧料を用いる度にフェース・ヘッドパッドを洗う必要がほとんどないため、より簡便にイオン導入することができる。
【0032】
イオン導入に用いる薬剤や化粧料の種類は特に制限されないが、化粧料としてはアスコルビン酸、レチノール、アミノ酸、ミネラル、フェチン酸若しくはこれらの誘導体、プラセンター等を例示することができ、薬剤としては、消炎剤、鎮痛剤や、麻酔剤等の経皮吸収薬剤を例示することができる。薬剤や化粧料の種類によって、電流を流した際に薬剤や化粧料の分子の正味電荷が正になるものと、負になるものがある。正味電荷が正になる薬剤や化粧料を用いる場合は、フェース・ヘッドパッド側に正の電極導子を接触させて電流を流し、正味電荷が負になる薬剤や化粧料を用いる場合は、フェース・ヘッドパッド側に負の電極導子を接触させて電流を流すことにより、電気的な反発力を利用して薬剤又は化粧料を皮膚の内部に浸透させることができる。なお、イオン導入に用いる薬剤や化粧料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上の薬剤を用いてもよいし、2種以上の化粧料を用いてもよいし、少なくとも1種以上の薬剤と少なくとも1種以上の化粧料を合わせて用いてもよい。
【0033】
上記のイオン導入する部分としては特に制限されず、顔、首、頭皮等を例示することができる。また、上記の他の部分としては、イオン導入される人の身体のいずれかの部分であって、イオン導入する部分以外の部分であれば特に制限はされないが、例えば顔、首又は頭皮にイオン導入する場合は、他の部分として耳、手等を挙げることができる。
【0034】
イオン導入する際に印加する電流が周期的に変化する場合、電流の周波数は特に制限されないが、0.5〜1.5kHzの範囲を例示することができる。印加電流の波形は特に制限されないが、例えば、方形波等のパルス波のほかに、三角波や正弦波などの複雑な信号波形などを用いてもよい。更には複数の波長を与えてもよい。また、直流の電流の他、交流の電流であってもよい。イオン導入する際の電圧(Vp-p)は特に制限されないが、例えば1〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜7、さらに好ましくは4〜6とすることができる。また、パルス波等の場合のデューティー(ON/OFFの時間比(%))は特に制限されないが、例えば20〜90%、より好ましくは40〜80%とすることができる。
【0035】
本発明のフェース・ヘッドパッドセットは、本発明のフェース・ヘッドパッドと、上記の保水性を有するシートからなる。本発明に用いるシートは、保水性を有している限り特に制限はない。本発明における保水性を有しているシートとは、水分を保持し得る限り特に制限はないが、シートの重量の1000分の1以上、500分の1以上、100分の1以上、好ましくは50分の1以上、より好ましくは30分の1以上、さらに好ましくは10分の1以上の重量、最も好ましくはシートと同重量の水分を含み得るシートを意味する。
【0036】
シートの素材は特に制限されないが、コットン、布、紙、不織布等を例示することができ、中でもコットンを好ましく例示することができる。シートの素材は、1種でもよいし2種以上を含んでいてもよい。また、シートは、1枚ずつ用いてもよいし、同種又は異種の素材のシートを2枚以上重ねて一度に用いてもよいし、1枚を折り畳んで用いてもよい。
【0037】
本発明のフェース・ヘッドパッドセットにおけるシートの形状は、特に制限されないが、フェース・ヘッドパッドの形状に合わせることができる。シートは、フェース・ヘッドパッド全体を覆うような大きさでもよいし、フェース・ヘッドパッドより小さくてもよい。
【0038】
本発明のフェース・ヘッドパッドセットにおけるシートは、薬剤又は化粧料を含んでいなくてもよいが、薬剤又は化粧料を含んでいてもよい。例えばウェットティシューのように、容器内部であらかじめシートを薬剤又は化粧料に浸しておくと、容器から取り出してすぐに用いることができる。
【0039】
また、本発明のフェース・ヘッドパッドセットは、イオン導入器に用いる旨の表示が付されていてもよいし、薬剤又は化粧料のイオン導入用である旨の表示が付されていてもよいし、薬剤又は化粧料の風呂場でのイオン導入用である旨の表示が付されていてもよい。
【0040】
本発明のイオン導入装置は、本発明のフェース・ヘッドパッド又は本発明のフェース・ヘッドパッドセットと、イオン導入器とを備えていることを特徴とする。本発明のイオン導入装置は、本発明のフェース・ヘッドパッド又は本発明のフェース・ヘッドパッドセットと、任意のイオン導入器を備えていれば特に制限されない。イオン導入器としては、正と負の両電極導子を有する電気回路及び電源を備えていれば特に制限されない。該電気回路は、電圧を調整できるように、変圧器をさらに有していることが好ましい。
【0041】
本発明のイオン導入装置に用いるイオン導入器が印加しうる電流の周波数は特に制限されないが、0.5〜1.5kHzの範囲を例示することができる。印加電流の波形は特に制限されないが、例えば、方形波等のパルス波のほかに、三角波や正弦波などの複雑な信号波形などでもよく、更には複数の波長を与えてもよい。また、該イオン導入器が印加しうる電流は直流であっても、交流であってもよい。該イオン導入器が印加しうる電圧(Vp-p)は特に制限されないが、例えば1〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜7、さらに好ましくは4〜6である。また、該イオン導入器が印加する電流がパルス波等の場合におけるデューティー(ON/OFFの時間比(%))は特に制限されないが、例えば20〜90%、より好ましくは40〜80%である。これにより、より効率的に薬剤をイオン導入することができる。また、本発明に用いるイオン導入器は、本発明のパッド又はパッドセットと接続しなくても、イオン導入することができるイオン導入器であってもよい。
【0042】
本発明の薬剤又は化粧料をイオン導入する方法は、本発明のイオン導入装置を用いることを特徴とする。本発明の方法は、本発明のイオン導入装置を用いる限り特に制限されないが、例えば以下のような方法を例示することができる。
【0043】
第1の方法としては、イオン導入器の一方の電極導子を導電性シリコンゴム層に接触させた本発明のフェース・ヘッドパッドであって、導電性シリコンゴム層に薬剤又は化粧料が付着したフェース・ヘッドパッドの導電性シリコンゴム層側を、イオン導入する部分の皮膚に接触させ、かつ、イオン導入器のもう一方の電極導子を他の部分の皮膚に接触させた状態でイオン導入器の電流を流すことができる。この第1の方法に用いる薬剤や化粧料は、ジェル状でなくてもよいが、ジェル状であると本発明のフェース・ヘッドパッドに薬剤や化粧料が十分に付着することから、ジェル状であることが好ましい。
第2の方法としては、本発明のフェース・ヘッドパッドとイオン導入器に加えて、保水性を有するシートをさらに用いることができる。第2の方法では、導電性シリコンゴム層に薬剤又は化粧料が直接付着したフェース・ヘッドパッドを用いる代わりに、保水性を有するシートに薬剤又は化粧料を含有させ、該シートを導電性シリコンゴム層側に接触させたフェース・ヘッドパッドを用いる。このシートを接触させたフェース・ヘッドパッドのシート側を、イオン導入する部分の皮膚に接触させ、第1の方法と同様にイオン導入器の電流を流すことができる。第2の方法を用いると、複数の薬剤又は化粧料を連続的にイオン導入する場合に、別の薬剤又は化粧料を用いる度にフェース・ヘッドパッドを洗う必要がほとんどないため、より簡便にイオン導入することができる。
【0044】
また、本発明のイオン導入装置は、本発明のフェース・ヘッドパッド又はフェース・ヘッドセット、及びイオン導入器に加えて、防水容器をさらに有していてもよい。イオン導入器を防水容器に入れ、接続コードを防水容器から出すことにより、風呂場などの水に濡れる可能性のある場所でも、イオン導入器を破損することなく、イオン導入を行うことができる。防水容器の形状、素材等は、イオン導入器が破損しない程度の防水効果を有している限り、特に制限されない。
本発明の方法は、本発明のイオン導入装置を風呂場で用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法も含まれる。入浴中は皮膚の毛穴が大きく開いているため、より効果的にイオン導入することができる。本発明のイオン導入装置は、薬剤又は化粧料の風呂場でのイオン導入用である旨の表示が付されていてもよい。
【0045】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
(1)フェースパッド
SRX539U(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)からなる導電性シリコンゴム層(厚さ0・5mm)を1次成形した後、その表面上に、DY32−816U(絶縁シリコンゴム:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を用いて絶縁支持体層(厚さ1.0mm)を2次成形した。該導電性シリコンゴム層中の残留活性基が、絶縁シリコンゴム中の化合物と共加硫すること等により、接着剤を用いることなく、導電性シリコンゴム層と絶縁シリコンゴム層が接着する。得られたパッドを、図1のような形状に加工し、本発明のフェースパッドを得た。このフェースパッドの片側の面積は約400cm2であった。このフェースパッドの抵抗を測定したところ約500オームであった。なお、SRX539Uは、体積抵抗率が3.5Ω・cm、硬さ度が64、伸び率が250%、引張強さが5.0MPaである。また、DY32−816Uの体積抵抗率は約1×1015Ω・cm、硬さ度が61、伸び率が527%、引張強さが9.3MPaである。なお、体積抵抗率、硬さ度、伸び率、引張強さの測定方法は、JIS K 6249に従った。
【0047】
(2)イオン導入器
正と負の両電極導子を有する電気回路及び電源を備えたイオン導入器として、図2(正面図)、図3(側面図)及び図4(背面図)に示すイオン導入器を用意した。このイオン導入器は、コットンパフプレート1、電源スイッチ2、極性スイッチ3、ブザー音量調節スイッチ4、出力調整スイッチ5、外部端子、ハンドプレート、モニターランプ、電池カバーを備えている。このイオン導入器は、狭い範囲であれば、本発明のフェース・ヘッドパッド等を用いなくとも、イオン導入することができる。すなわち、コットンパフプレートに、薬剤を含浸させたコットンパフ等を当て、そのコットンパフをイオン導入したい部位の皮膚に接触させ、さらにハンドプレートに指等を接触させた状態で電源スイッチを入れると、コットンパフプレートから皮膚、人体を経由してハンドプレートにかけて電流が流れ、薬剤がイオン導入される。また、極性スイッチを切り替えることにより、電流の向きを逆方向に切り替えることができる。コットンパフプレートから皮膚、人体を経由してハンドプレートへ、又は、その逆方向に電流が流れている場合は、モニターランプが点滅する。すなわち、このモニターランプが点滅していることを確認することにより、イオン導入がされていることを確認することができる。イオン導入が完了すると、ブザー音がなる。また、出力調製スイッチを切り替えることにより、出力を「L」モード(Vp-p 4; デューティー 50%)、「M」モード(Vp-p 6; デューティー 50%)、「H」モード(Vp-p 6; デューティー 75%)の3段階に切り替えることができる。
【0048】
(3)イオン導入装置
図5にイオン導入装置を示す。上記のイオン導入器の一方の電極導子をフェースパッドに接続し、もう一方の電極導子を身体の他の部分に接触させて用いる。
【0049】
(4)電圧波形の測定
上記のイオン導入装置を用いて実際にイオン導入を行い、イオン導入がフェースパッド全体に均一に行われているかどうかを調べた。具体的には以下のような手順で行った。
上記のイオン導入器の一方の電極導子を接続したフェースパッドの導電性シリコンゴム層側に、化粧水溶液(プラセンター、アスコルビン酸、アミノ酸、フェチン酸の混合化粧水溶液)を浸したコットンシートを接触させた。このコットンシートを接触させたフェースパッドのシート側を、顔を覆うように顔の皮膚に接触させ、さらに、もう一方の電極導子を被験者の耳に接触させた状態でイオン導入器の電源スイッチを入れてイオン導入を行った。イオン導入時の電圧を測定し、電圧波形を得た。出力を「L」モード、「M」モード及び「H」モードとしたときのそれぞれの電圧波形を、図6、図7及び図8にそれぞれ示す。なお、電圧の周波数は約1kHzであった。今度は、フェースパッドを用いずに同様のイオン導入器を用いてイオン導入を行った。すなわち、同様の薬剤溶液を浸したコットンシートを、イオン導入器の一方の電極であるコットンパフプレートに載せ、もう一方の電極であるハンドプレートに被験者の指が接触させた状態でイオン導入器の電源スイッチを入れてイオン導入を行った。なお、コットンパフプレートの面積は、およそ5.5cm2である。
該イオン導入時の電圧を測定したところ、「L」モード、「M」モード及び「H」モードのそれぞれについて、先ほどのパッドを用いた場合と同様の電圧波形を得た。
フェースパッドを用いた場合にも、フェースパッドを用いなかった場合と同様に乱れのない電圧波形が得られたことから、本発明のフェースパッドを用いれば比較的広い面積であっても一度でムラなく均一にイオン導入ができることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のフェースパッドの形状を示す図である。
【図2】本発明のイオン導入器の正面図である。
【図3】本発明のイオン導入器の側面図である。
【図4】本発明のイオン導入器の背面図である。
【図5】本発明のイオン導入装置を示す図である。
【図6】イオン導入時の電圧波形(「L」モード)を示す図である。
【図7】イオン導入時の電圧波形(「M」モード)を示す図である。
【図8】イオン導入時の電圧波形(「H」モード)を示す図である。
【図9】本発明のヘッドパッドの形状を示す図である。
【図10】絶縁材と接している側と反対側の、本発明のヘッドパッドの導電性シリコンゴム層を示す図である。
【図11】本発明のヘッドパッドの導電性シリコンゴム層の側面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 コットンパフプレート
2 電源スイッチ
3 極性スイッチ
4 ブザー音量調節スイッチ
5 出力調整スイッチ
6 外部端子
7 ハンドプレート
8 モニターランプ
9 電池カバー
10 フェースパッド
11 イオン導入器
12 接続コード
13 絶縁材
14 導電性シリコンゴム層
15 電極用端子
16 導体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドであって、絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有し、該導電性シリコンゴム層における導電性シリコンゴムの体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であることを特徴とするフェース・ヘッドパッド。
【請求項2】
導電性シリコンゴムの引張強さが5.0MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項3】
導電性シリコンゴム層の導電性シリコンゴムが、カーボンを含む導電性シリコンゴムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項4】
導電性シリコンゴム層の厚さが、0.2〜1.0mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項5】
絶縁支持体層が、絶縁樹脂層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項6】
絶縁樹脂層が、絶縁シリコンゴム層であることを特徴とする請求項5に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項7】
絶縁シリコンゴム層の厚さが、0.3〜1.8mmであることを特徴とする請求項6に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項8】
絶縁支持体と接している面の反対側の導電性シリコンゴム層表面に薬剤又は化粧料が付着していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項9】
薬剤又は化粧料がジェル状であることを特徴とする請求項8に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項10】
イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドセットであって、請求項1〜9のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドと、保水性を有するシートとからなるフェース・ヘッドパッドセット。
【請求項11】
保水性を有するシートが、コットンからなることを特徴とする請求項10に記載のフェース・ヘッドパッドセット。
【請求項12】
保水性を有するシートが、薬剤又は化粧料を含んでいることを特徴とする請求項10又は11に記載のフェース・ヘッドパッドセット。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド又は請求項10〜12のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドセットと、イオン導入器とを備えていることを特徴とするイオン導入装置。
【請求項14】
イオン導入器を収納し得る防水容器をさらに備えていることを特徴とする請求項13に記載のイオン導入装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のイオン導入装置を用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法。
【請求項16】
請求項14に記載のイオン導入装置を風呂場で用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法。
【請求項1】
イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドであって、絶縁支持体層と導電性シリコンゴム層とを有し、該導電性シリコンゴム層における導電性シリコンゴムの体積抵抗率が15Ω・cm以下、硬さ度が50〜80、及び伸び率が180%以上であることを特徴とするフェース・ヘッドパッド。
【請求項2】
導電性シリコンゴムの引張強さが5.0MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項3】
導電性シリコンゴム層の導電性シリコンゴムが、カーボンを含む導電性シリコンゴムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項4】
導電性シリコンゴム層の厚さが、0.2〜1.0mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項5】
絶縁支持体層が、絶縁樹脂層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項6】
絶縁樹脂層が、絶縁シリコンゴム層であることを特徴とする請求項5に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項7】
絶縁シリコンゴム層の厚さが、0.3〜1.8mmであることを特徴とする請求項6に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項8】
絶縁支持体と接している面の反対側の導電性シリコンゴム層表面に薬剤又は化粧料が付着していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項9】
薬剤又は化粧料がジェル状であることを特徴とする請求項8に記載のフェース・ヘッドパッド。
【請求項10】
イオン導入器に用いるフェース・ヘッドパッドセットであって、請求項1〜9のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドと、保水性を有するシートとからなるフェース・ヘッドパッドセット。
【請求項11】
保水性を有するシートが、コットンからなることを特徴とする請求項10に記載のフェース・ヘッドパッドセット。
【請求項12】
保水性を有するシートが、薬剤又は化粧料を含んでいることを特徴とする請求項10又は11に記載のフェース・ヘッドパッドセット。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッド又は請求項10〜12のいずれかに記載のフェース・ヘッドパッドセットと、イオン導入器とを備えていることを特徴とするイオン導入装置。
【請求項14】
イオン導入器を収納し得る防水容器をさらに備えていることを特徴とする請求項13に記載のイオン導入装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のイオン導入装置を用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法。
【請求項16】
請求項14に記載のイオン導入装置を風呂場で用いることを特徴とする、薬剤又は化粧料をイオン導入する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−98060(P2007−98060A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295760(P2005−295760)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(505377522)株式会社エムシープラザ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(505377522)株式会社エムシープラザ (1)
【Fターム(参考)】
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