イオン導入投与デバイスと同デバイスの水和方法
【課題】最初は非水和形で製造されるが、身体に装着する前に迅速に水和する電極アセンブリを備えたイオン導入投与デバイスを提供する。
【解決手段】(i)体表を通して投与すべき薬剤を含むに適した溜め15、16を有する電極アセンブリ8、9であって、該溜めが、実質的に水和されていない水和可能なマトリックスを含み、(ii)該溜めを水和するための液体20を含む密封容器であって、該容器の壁の少なくとも一部が液体不透性物質からなる、(iii)該容器から放出される液体の流れを水和されていない溜めのマトリックスへ導くための、該容器に付随する液体流案内手段、を含む電気駆動式イオン導入薬物投与デバイス10であって、前記デバイスが該液体不透性物質に付着した部分を有するタブを含み、該タブを該液体不透性物質に対して引っ張ると、該液体不透性物質が裂かれる又は破かれて、該容器から該溜めマトリックス中に液体が放出される。
【解決手段】(i)体表を通して投与すべき薬剤を含むに適した溜め15、16を有する電極アセンブリ8、9であって、該溜めが、実質的に水和されていない水和可能なマトリックスを含み、(ii)該溜めを水和するための液体20を含む密封容器であって、該容器の壁の少なくとも一部が液体不透性物質からなる、(iii)該容器から放出される液体の流れを水和されていない溜めのマトリックスへ導くための、該容器に付随する液体流案内手段、を含む電気駆動式イオン導入薬物投与デバイス10であって、前記デバイスが該液体不透性物質に付着した部分を有するタブを含み、該タブを該液体不透性物質に対して引っ張ると、該液体不透性物質が裂かれる又は破かれて、該容器から該溜めマトリックス中に液体が放出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン導入による経皮的又は経粘膜的な作用剤(agent)投与のためのデバイスに関する。さらに詳しくは、本発明は、身体へのデバイスの装着直前に水和するか、又は他のやり方で液体の添加によって活性化することができる電極を有する電気駆動式イオン導入投与デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン導入は今まで、「治療目的のための身体組織中への溶解性塩のイオンの電流による導入」であると定義されている。皮膚を通してイオン化薬物を投与するためのイオン導入デバイスは1900年代初期から知られている。ドイチュ(Deutsch)の英国特許明細書第410,009号(1934)は、このような初期デバイスの欠点の1つ(すなわち電流供給源の近くに固定する必要があること)を克服したイオン導入デバイスを述べている。このドイチュのデバイスは電極と、経皮投与すべき薬物を含む物質とから形成される電池(galvanic cell)によって駆動される(powered)。この電池は作用剤をイオン導入投与するために必要な電流を製造した。従って、このデバイスはイオン導入薬物投与中に患者が動き回ることを可能にしく患者の日常活動を実質的に殆ど妨げない。
【0003】
現在、イオン導入は電流による身体中へのイオン(例えば、薬物イオン)の投与のみに限定されない。例えば、無荷電薬物又は作用剤の身体への投与にイオン導入投与デバイスを用いることができることが現在認められている。これは電気浸透と呼ばれる方法によって達成される。電気浸透はドナー電極によって皮膚を通って負荷される電界の存在によって誘導される液体溶剤(例えば、無荷電薬物又は作用剤を含む液体溶剤)の経皮流動(flux)である。ここで用いるかぎり、“イオン導入(iontophoresis)”及び“イオン導入による(iontophoretic)”なる用語は、(1)電気的移動による荷電薬物又は作用剤の投与、(2)電気浸透プロセスによる無荷電薬物又は作用剤の投与、(3)電気的移動と電気浸透との複合プロセスによる荷電薬物又は作用剤の投与、及び/又は(4)電気的移動と電気浸透との複合プロセスによる荷電もしくは無荷電薬物又は作用剤の投与を意味する。
【0004】
最近では、幾つかの米国特許がイオン導入法分野において発行され七おり、この薬物投与形式に新たに関心が持たれていることを実証している。例えば、ヴェルノン(Vernon)等の米国特許第3,991,755号;ヤコブセン(Jacobsen)等の米国特許第4,141,359号;ウィルソン(Wilson)の米国特許第4,398,545号;及びヤコブセンの米国特許第4,250,878号は、イオン導入デバイスの例とその幾つかの用途を開示する。イオン導入法は塩酸リドカイン、ヒドロコルチゾン、フッ化物、ペニシリン、リン酸ナトリウムデキサメタゾン、インシュリン及びその他の多くの薬物を含めた作用剤又は薬物の経皮投与に有効である。イオン導入法の最も一般的な用途はピロカルピン塩をイオン導入投与することによる嚢胞性線維症の診断である。ピロカルピンは発汗を刺激する;汗を回収し、この疾患の有無を検出するためにその塩化物含量に関して分析する。
【0005】
現在公知のイオン導入デバイスでは、少なくとも2個の電極が用いられる。これらの電極の両方は身体の皮膚又は他の膜表面の一部と密接に電気的に接触するように配置される。活性電極若しくはドナー電極と呼ばれる、一方の電極はそれからイオン性物質、作用剤、薬物先駆体又は薬物がイオン導入によって身体中に投与される電極である。カウンター若しくはリターン電極と呼ばれる、他方の電極は身体を通しての電気回路を閉じるように作用する。患者の皮膚と電極との接触と共に、電気エネルギー源、例えば電池への電極の結合によって回路が完成する。例えば、身体へ投与すべきイオン性物質が陽性に荷電する(すなわちカチオンである)場合には、アノードが活性電極であり、カソードは回路の完成に役立つ。身体へ投与すべきイオン性物質が陰性に荷電する(すなわちアニオンである)場合には、カソードが活性電極であり、アノードはカウンター電極になる。
【0006】
或いは、アノードとカソードとの両方を用いて、対立電荷の薬物を身体中に投与することができる。このような場合には、両電極は活性若しくはドナー電極であると考えられる。例えば、アノードは陽性に荷電したイオン性物質を身体に投与することができ、カソードは陰性に荷電したイオン性物質を身体に投与することができる。
【0007】
イオン導入デバイスは一般に、身体中にイオン導入的に投与すなわち導入されるべき有効剤の溜め若しくは供給源を必要とする。作用剤のこのような溜め若しくは供給源の例には、前記ヤコブセンの米国特許第4,250,878号に述べられているようなポウチ若しくはキャビティ、ヤコブセン等の米国特許第4,141,359号に開示されているような多孔質スポンジ若しくはパッド、又はウェブスター(Webster)の米国特許第4,382,529号とアリウラ(Ariura)等の米国特許第4,474,570号に述べられているような予成形ゲル体がある。このような薬物溜めはイオン導入デバイスのアノード又はカソードに電気的に結合して、1種以上の好ましい薬物の固定した若しくは再生可能な供給源を形成する。
【0008】
皮膚表面に取り付け可能であり、このような皮膚表面との電気的接触を確立するために電解質流体に依存するイオン導入投与デバイスは、少なくとも2つのカテゴリーに分けることができる。第1カテゴリーは電極レセプタクル中に含まれる液体電解質と共にパックされるデバイスを含む。第2タイプのデバイスは通常、身体への装着直前に電極レセプタクルに薬物/電解質溶液を充填する乾燥状態電極を用いるものである。両タイプのデバイスに関して、使用者は現在、デバイスの使用を不便で、問題あるものにする多くの問題を経験している。
【0009】
充填済み(prefilled)デバイスに関しては、貯蔵が重要な問題である。多くの薬物が溶液中では不良な安定性を有する。したがって、充填済みイオン導入薬物投与デバイスの貯蔵寿命は容認されないほど短い。電極と他の電気的要素との腐食も予充填デバイスに付随する考えられる問題である。例えば、リターン電極アセンブリは通常、例えば塩化ナトリウムのような電解質塩を含むが、このような塩は時間が経つにつれて金属及び他の導電性物質の腐食を惹起することがありうる。充填済み電極に付随する他の問題は電極の無菌性の維持とその中での微生物増殖の防止とに関する。これは、イオン導入の実施のために用いる液体が水である場合の特別な問題である。抗菌剤をイオン導入投与デバイスの薬物及び/又は電解質溜めに加えることができるが、このような抗菌剤の添加は作用剤投与の効率を損なう傾向がある。漏出は充填済みイオン導入薬物投与デバイスに付随するもう一つの重要な問題である。電極レセプタクルからの薬物又は電解質の漏出は実施不能な状態又は不完全な状態を生ずることがありうる。さらに、このような充填済みデバイスは、電極開口を覆い、流体をレセプタクルキャビティ内に保持する保護シールを皮膚への装着前に除去しなければならないので、装着が困難である。この保護シールの除去後に、電極を皮膚に配置しようと試みると、こぼれがしばしば生ずる。このようなこぼれは皮膚に対する電極の所望の接着接触を損ない、またレセプタクルキャビティの一部を空にする。この結果の、薬物又は電解質溶液の損失は電極との電気的接触を無効にし、他の場合にはこれらのデバイスによって与えられる所望の均一な電位勾配を中断する。
【0010】
乾燥状態電極は貯蔵の容易さで非常に多くの利点を有するが、幾つかの問題が残る。例えば、このようなデバイスの薬物と電解質のレセプタクルは通常、デバイスを患者の皮膚に装着する前に開口から充填される。それ故、充填済み電極と同じ、薬物のこぼれ及び損失の問題が装着時に生ずる。
【0011】
このような電極はしばしば、イオン導入用途に必要とされる、適当な均一電流(current flow)を発生するために充分に構成されていない。このような不均一な電流は皮膚表面におけるレセプタクルキャビティ内のエアポケットの発生に起因する。このような効果はイオン導入用途において特に厄介であり、この場合には不均一な電流分布が過剰な皮膚刺激又は“灼熱(burning)”を生ずる。
【0012】
さらに最近では、ドナーとカウンター電極アセンブリが“マルチ−ラミネート”構造を有するイオン導入投与デバイスが開発されている。これらのデバイスでは、ドナーとカウンター電極アセンブリが多層状の(通常)ポリマーマトリックスからそれぞれ形成される。例えば、パルシ(Parsi)の米国特許第4,731,049号は親水性ポリマーに基づく電解質溜め層と薬物溜め層、皮膚接触ヒドロゲル層、及び任意に1個以上の半透膜層を有するドナー電極アセンブリを開示する。さらに、アリウラ等の米国特許第4,474,570号は、電極アセンブリが導電性樹脂膜電極層、親水性ゲル溜め層、アルミニウムホイル導体層及び絶縁バッキング層を含むデバイスを開示する。
【0013】
イオン導入投与デバイスの薬物と電解質溜め層は典型的に親水性ポリマーから形成されている。例えばアリウラ等の米国特許第4,474,570号;ウェブスターの米国特許第4,383,529号及びササキ(Sasaki)の米国特許第4,764,164号を参照のこと。親水性ポリマーを用いるには幾つかの理由がある。第一に、水は生体適合性であり、非常に極性であるので、多くの薬物にとって好ましい溶剤である。第二に、親水性ポリマー成分(すなわち、ドナー電極中の薬物溜めとカウンター電極中の電解質溜め)は、身体への付着時に、皮膚から又は粘膜から水分を吸収することによって水和されることができる。例えば、皮膚接触電極は汗又は経表皮的水分損失からの水を吸収することによって水和されることができる。同様に、口腔粘膜に付着した電極は唾液を吸収することによって水和されることができる。ひと度充分な量の水が薬物と電解質の溜め中に吸収されたならば、イオンは溜めから組織を横切って移動することができ、デバイスは作用剤を身体に投与することができる。
【0014】
ヒドロゲルは、一部はそれらの高い平衡水分含量と身体からのそれらの迅速な吸水力のために、イオン導入投与デバイス中の薬物溜めマトリックス及び電解質溜めマトリックスとしての使用に特に好まれている。さらに、ヒドロゲルは皮膚及び粘膜との良好な生体適合性を有する傾向がある。しかし、多くの薬物とある種の電極成分は水の存在下では不安定であるので、水和済み(prehydrated)ヒドロゲルから形成された薬物溜めを有するイオン導入薬物投与デバイスも容認されないほど短い貯蔵寿命を有する。薬物安定性問題の1つの解決策は、実質的な乾燥状態(すなわち、非水和状態)である、親水性ポリマーの薬物と電解質溜めを用いることである。薬物及び/又は電解質を例えば親水性ポリマーと乾式ブレンドして、次にキャスト又は押出成形して、水和可能ではあるが、非水和形(non-hydrated)の薬物若しくは電解質含有溜めを形成する。残念ながら、デバイスが薬物投与を開始するまでに、非水和形親水性ポリマー成分は身体から充分な量の水を最初に吸収しなければならない。この投与開始期間は数時間以上を要することがありうる。この遅延は多くのデバイスをそれらの所定目的に不適切なものにする。例えば、あまり重要ではない手術(例えば、ほくろの手術による除去)の準備で局部麻酔薬の投与にイオン導入投与デバイスを用いる場合に、外科医と患者は、投与デバイスの薬物と電解質の溜めが充分に水和されてから、麻酔薬が麻酔を誘導するために充分な量で投与されるまで待たなければならない。同様な遅延は他の薬物に関しても経験される。
【0015】
水中で不安定である薬物のイオン導入投与の困難性に応じて、ハーク(Haak)等の国際特許WO第92/07618号は、実質的に非水和形の薬物と電解質溜めマトリックスを有するイオン導入作用剤投与デバイスを開示する。使用直前に乾燥溜めを水和するために、バッキング層、エレクトロニクス(electronics)層及び電極層を通る通路が設けられ、これらの通路を通して水和用液体が外部供給源から加えられる。
【0016】
コンノ(Konno)等は米国特許第4,842,577号において実質的に非水和形薬物含有マトリックスと、電極の薬物含有部分からホイルシートを用いて最初は密封される、分離水溜めとを有するイオン導入電極を図4に開示する。コンノ等の電極アセンブリを活性化するために、水溜め容器の頂部が押し下げられ、ホイルシートが破壊され、それによって水が非水和形薬物含有マトリックス中に放出される。残念ながら、この電極設計は製造が困難であるのみでなく、厳しい取り扱い制限をも受けることになる。特に、電極の製造、包装及び取り扱い中にホイルシートが偶然に破壊する傾向がある。特に、デバイスの製造又は輸送中にシールが破壊するときには、このことが特別に劇的な結果を有する可能性がある。シールがひと度破壊すると、水が薬物含有溜め中に毛管作用で吸収され、デバイスが使用される前に薬物及び/又は他の成分の破壊を生ずる可能性がある。
【0017】
サバタノ(Sabatano)の米国特許第4,192,299号は軽症の(minor)皮膚創傷上に貼付するための消毒剤含有包帯(bandage)を開示する。この包帯は消毒剤ゼリーを含むアルミニウムホイル製エンベロープ(envelope)を有する。使用者がこのエンベロープを開いて、ゼリーをエンベロープから吸収性パッド上に絞り出す。皮膚に該包帯を貼付する前にこのエンベロープは捨てる。
【0018】
非水和形親水性ポリマー成分を用いることの他の欠点は、これらのポリマー成分が水和中に電極アセンブリの他の部分から剥離する傾向があることである。例えば、親水性ポリマーから成る薬物溜めマトリックス又は電解質溜めマトリックスを用いる場合に、マトリックスは皮膚から水分を吸収するにつれて、膨潤し始める。ヒドロゲルの場合には、この膨潤が非常に顕著である。典型的に、薬物若しくは電解質溜めは電極に直接接触するか又はイオン的導電性(ionically conductive)接着剤の薄層を介して接触する。電極は典型的に金属(例えば、バッキング層に付着した金属ホイル若しくは金属薄層)又は導電性フィラーを含む疎水性ポリマー(例えば、炭素繊維及び/又は金属粒子を負荷した疎水性ポリマー)から成る。親水性薬物と電解質溜めとは異なり、電極は水を吸収せず、膨潤しない。親水性溜めと電極又はイオン的導電性接着剤との異なる膨潤性はそれらの接触面に沿った剪断(shearing)を生ずる。厳しい場合には、この剪断は電極層と溜め層との間の電気的接触の完全な欠損を生ずることがあり、作用不能なデバイスを生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、最初は非水和形で製造されるが、身体に装着する前に迅速に水和することができる電極アセンブリを備えたイオン導入投与デバイスを提供することが、本発明の目的である。
【0020】
イオン導入投与デバイスの“開始”遅延を最小にするために、イオン導入投与デバイスの電極アセンブリの改良された迅速水和方法を提供することが、本発明のもう一つの目的である。
【0021】
実際に使用する前に偶然によって水和されることがあり得ないイオン導入投与デバイスを提供することが、本発明のさらに他の目的である。
イオン導入薬剤投与デバイスと、デバイスをパッケージから取り出すこと以外に使用者側に特別な労力又は関与を要求しない、同デバイスの“自動”水和方法とを提供することが、本発明のさらに他の目的である。
【0022】
上記その他の目的は、電気的駆動(electrically powered)イオン導入作用剤投与デバイスと同デバイスの水和方法とによって満たされる。この投与デバイスは少なくとも1つの乾燥状態電極アセンブリと、この電極アセンブリに電気的に結合した電力源とを含む。この電極アセンブリは投与すべき作用剤を含むのに適した、実質的に非水和形の水和可能なマトリックスから成る作用剤溜めを含む。この電極アセンブリは、体表を通して作用剤を電気的補助投与するために、体表(例えば、無傷の皮膚若しくは粘膜)に作用剤伝達関係に置かれるのに適する。この電極アセンブリは電力源と作用剤溜めとの両方と電気的に接触する電極をも含む。電極アセンブリは実質的に非水和形の作用剤溜めマトリックスを水和するための液体を含む容器を有する。この容器壁の少なくとも一部は液体不透性物質から成り、液体を放出するために破壊される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の1実施態様によると、この液体不透性物質は引き裂く又は破ることができる。該液体不透性物質に付着した1部分と電極アセンブリから外方に伸びる他の部分とを有する引張りタブを備える。液体不透性物質に対してこのタブを引っ張ると、この物質は避けるか又は破れ、それによって容器から液体が放出される。この電極アセンブリは容器から放出される液体の流れを実質的に非水和形のマトリックスに向けるための液体の流れ制御手段をも有する。電極アセンブリはタブを引っ張って、液体不透性物質を引き裂くか又は破り、それによって液体を容器から放出することによって活性化(すなわち、水和)される。放出された液体は次に非水和形マトリックス中に流入する。
【0024】
好ましくは、このタブをデバイスが含まれるパッケージに取り付ける。電極アセンブリをパッケージから取り出すときに、タブが液体不透性物質に対して引っ張られる。したがって、パッケージから電極アセンブリを取り出す作用が“自動的に”電極アセンブリを水和し、活性化する。或いは、電極アセンブリの皮膚接触面を覆う剥離ライナー(release liner)にタブを取り付ける。剥離ライナーを電極アセンブリから除去するときに、タブが液体不透性物質に対して引っ張られる。このようにして、剥離ライナーを除去する作用が“自動的に”電極アセンブリを水和し、活性化する。
【0025】
本発明の他の実施態様によると、密封容器内の圧力が所定レベルに達すると、液体不透性物質が破裂する。デバイスは、内部に圧縮帯を有するパッケージ内に含まれる。デバイスをパッケージから取り出すときに、密封容器が圧縮帯によって押されて、密封容器内の圧力が所定レベルを越えて上昇し、それによって液体不透性物質が破裂して、水和用液体を放出する。
【0026】
さらに他の実施態様では、乾燥状態電極アセンブリに水和用液体とパンチとの両方を含む密封フレキシブルポウチを備える。パンチはブレードを有し、活性化時に、このブレードがポウチに穿孔して、ポウチから非水和形作用剤溜めマトリックスまでの液体流路を形成する。該ポウチに不注意によって与えられる圧力によるブレードの偶発的な活性化を阻止するための手段を備える。
【0027】
さらに他の態様では、乾燥状態電極アセンブリに水和用液体を含む密封容器を備える。容器と非水和形溜めとの間にはパンチを配置する。このパンチは少なくとも1個のブレードを有し、活性化時に、このブレードが容器壁に穿孔して、それによって該密封容器から液体を放出させる。該パンチは放出液体をパンチから水和可能な溜め中に流動させる開放構造を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は体表100(例えば、無傷の皮膚若しくは粘膜)を通して有効剤を投与するためのイオン導入投与デバイス10の側断面である。イオン導入投与デバイス10はドナー電極アセンブリ8とカウンター電極アセンブリ9を含む。ドナー電極アセンブリ8とカウンター電極アセンブリ9とは絶縁体19によって分離される。絶縁体19は、電極アセンブリ8と9の間の直接の電気移動及び/又はイオン移動を防止することによって(すなわち、身体を通過するイオンとしての電流なしに)、電極アセンブリ8と9が身体に短絡することを阻止する。デバイス10が体表(例えば、皮膚)100上に存在するときに、例えばバス(bath)の水のような流体による溜め15と16の汚染を防止するために、電極アセンブリ8と9(図1に図示)の外周に絶縁体19を任意に備えることができる。絶縁体19は好ましくは、イオンと水の両方の通過に対して不透性である疎水性非導電性ポリマー物質から形成する。好ましい絶縁物質には、無孔質エチレン−酢酸ビニル、ポリイソプレン、ポリプロピレン、イソプレンとプロピレンとのコポリマー、及び一般に独立気泡型の発泡プラスチックがある。
【0029】
電極アセンブリ8と9は、例えば金属ホイル、ワイヤ、印刷回路又は導電性膜のような周知の電気的導体(図示せず)を用いて、電力源に直列に接続する。電力源と電気的導体とを膜14として概略的に示す。デバイス10を駆動するために用いられる電力源は典型的に、1個以上の低電圧(例えば、1〜3voltボタン電池(button cell)電池である。フレキシブルで水不透性のハウジング13が、要素14をその関連電気的要素と共に含むデバイス10の頂部を覆う。
【0030】
ドナー電極アセンブリ8は電極11と溜め15を含む。溜め15はデバイス10によってイオン導入投与すべき有効剤を含む。作用剤を体表100に投与する速度を制御するか又は、デバイスを停止させたときに体表100への作用剤投与を制限するために、速度制御膜(図示せず)を任意に溜め15と体表100との間に配置することができる。カウンター電極アセンブリ9は電極アセンブリ8から離れた位置で体表100に接触する。カウンター電極アセンブリ9は電極12と溜め16とを含む。溜め16は電解質(例えば、水溶性電解質塩)を含む。
【0031】
イオン導入投与デバイス10は体表100に、イオン導入投与デバイスを体表に装着するための公知手段を用いて付着させることができる。例えば、デバイス10は溜め15と16の身体側の面(body-facing surface)に塗布したイオン伝導性接着剤層によって体表100に接着することができる。或いは、デバイス10は接着性オーバーレイを用いて体表100に接着することができる。受動的経皮投与デバイスを皮膚に固定するために用いられる通常の接着性オーバーレイのいずれも使用可能である。さらにまた、溜め15と16の粘着性溜めマトリックス物質の使用によって又は粘着性絶縁体19の使用によって、デバイス10を体表100に接着することができる。さらにまた、デバイス10は体表100にストラップ又は弾性バンド(例えば、腕又は脚のような身体部分を巻くストラップ又はバンド)によってイオン伝導関係で固定することができる。
【0032】
デバイス10が貯蔵中であるときに、デバイスは閉じた回路を形成しな.いので、電流は流れない。デバイス10を患者の皮膚又は粘膜に置き、電極アセンブリ8と9が充分に水和されて、イオンが電極アセンブリ8と9の種々な層を通って流れる場合には、電極間の回路は閉ざされ、電力源はデバイスと患者の身体とを通して電流を供給し始める。ドナー電極アセンブリ8とカウンター電極アセンブリ9とは通常、除去可能な剥離ライナー(図示せず)を含み、これは電極アセンブリ8と9を体表100に装着する前に除去される。
【0033】
ドナー電極アセンブリ8は電極11と密封液体含有容器若しくはポウチ21との間に配置された液体ウィッキング(liquid-wicking)物質の任意の層17を含む。ポウチ21の壁23は液体不透性物質、好ましくは、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン又は金属ホイル(例えばアルミニウムホイル)のような、フレキシブルなシート物質から形成される。ポウチ21はウィッキング層に隣接する面に沿って、シート形状で示される液体不透性物質25によってシールされる。ポウチ21から液体20を放出するためには、以下に述べるように、シート25が破壊される。
【0034】
ドナー電極アセンブリ8と同様に、カウンター電極アセンブリ9も、液体20を含む密封容器若しくはポウチ22を有する。電極12とポウチ22の間には任意の液体ウィッキング層18を備える。ポウチ21と同様に、ポウチ24の壁24も液体不透性物質、好ましくは、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン又は金属ホイル(例えばアルミニウムホイル)のような、フレキシブルなシート物質から形成される。ポウチ21及び22に含まれる液体20は典型的には水であるが、非水性液体を含む他の液体も使用可能である。ポウチ22はウィッキング層に隣接する面に沿って、シート形状で示される液体不透性物質26によってシールされる。シート25と同様に、シート26も破壊されることができる。
【0035】
図1に示した実施態樺では、シート25と26は引き裂かれる又は破られることができ、好ましくは、約0.2〜2.3kgの範囲内の引裂き強さを有する。最も好ましくは、シート25と26は例えばポリマー膜、金属ホイル、金属化ポリマー膜(例えば、ポリマー膜上に付着した金属及び金属ホイル/ポリマー膜ラミネート)のような、薄い水不透性膜若しくはホイルから構成される。図1と3に最も良く示されるように、引張りタブ27をシート25に取り付ける。同様に、引張りタブ28をシート26に取り付ける。図2に最も良く示すように、引張りタブ27と28の各々をそれ自体の上に折り重ねられ、デバイス10の周囲を越えて伸びる、握り可能な端部を有する。引張りタブ27と28を引っ張る又は引張りタブ27と28に他のやり方で引張り応力を与えるときに、タブ27と28をシート25と26に取り付けた部分に沿ってシート25と26の物質が破損し、引き裂かれ又は破れるように、シート25と26の物質の引裂き強さよりも大きい強度を有するように、引張りタブ27と28をシート25と26にそれぞれ取り付ける。必要な場合には、シート25と26を確実に適当に引き裂くために、引張りタブ27と28をシート25と26にそれぞれ取り付ける部分においてシート25と26を意図的に弱めることができる。
【0036】
引張りタブ27と28は先行技術の水和可能なデバイスに見られない重要な利益を与える。例えばコンノ等の米国特許第4,842,577号に開示されるデバイスのようなデバイスでは、水溜めと電極の非水和形部分との間のシールが電極の製造、包装及び/又は取り扱い中に水溜め中に及ぼされる偶発的な力のために偶然に破壊する傾向がある。本発明の設計では、液体20はタブ27と28を握って、引っ張る作用によってのみ放出されるので、この問題は解消されている。タブ27と28を引っ張る作用はデバイス10の活性化(すなわち、水和)のために使用者側に意図的な作用を要求する。デバイス内のシールを破壊するためにデバイスの外部に圧力を与えることによって活性化されるデバイスに比べて、デバイスが不注意によって活性化されることはあり得ない。したがって、タブ27と28によって要求される引張りはデバイス10に偶然に与えられる圧力によって生ずる下方の電極アセンブリの偶発的な水和を防止するために役立つ。このように、本発明の設計はコンノ等によって開示された改良を凌駕する重要な改良を生ずる。
【0037】
投与デバイス10を活性化するためには、溜め15と16(並びに任意のイオン伝導性膜及び/又は電極アセンブリ8と9内の接着性層)は、イオン導入によって作用剤を通過させることができるほど、充分に水和されなければならない。溜め層15と16、並びに任意の膜及び/又は接着性層を水和するために、ポウチ21と22内に含まれる液体20を放出して、それぞれ、電極アセンブリ8と9の非水和形部分中に流入させなければならない。図1に示す矢印の方向に引張りタブ27を握うて、引っ張ることによって、ポウチ21中の液体20が放出される。タブ27を引っ張ると、シート25の破れが生じ、それによって液体20がウィッキング層17中に放出される。液体20は層17によって迅速に吸収され、電極11の上面全体を横切って流れる。同様に、溜め層16の非水和形マトリックスを水和するためには、図1と3に示す矢印の方向に引張りタブ28を握って、引っ張ることによって、ポウチ22から液体20が放出される。タブ28を引っ張ると、シート26の破れが生じ、それによって液体20がウィッキング層18中に放出される。液体20は層18によって迅速に吸収され、電極12の上面全体を横切って流れる。任意のウィッキング層17と18は例えば綿、スポンジ、三酢酸セルロース、レーヨン、ポリエステル、親水性ポリマー樹脂等及びこれらのブレンドのような液体ウィッキング物質から構成することができる。ウィッキング物質としては、好ましくは親水性面を生ずるように処理され、繊維束(collection of fibers)に水を吸着させ、繊維自体中には水を殆ど又は全く吸収させずに毛管作用によって輸送する、例えばポリプロピレン又はポリエステル繊維のような疎水性樹脂繊維も適当である。湿潤可能な面を生ずるように処理された疎水性ポリエステル繊維の例は、Coolmax(登録商標)とThermax(登録商標)であり、両方ともイー.アイ.デュポン デ ネマース アンド カンパニー(E. I. DuPont de Nemours and Company)(デラウェア州,ウィルミントン)によって販売される。CoolmaxとThermax繊維並びに湿潤可能なポリプロピレン繊維及び他の表面一湿潤可能な疎水性繊維が特に効果的なウィッキング物質であり、繊維の表面に沿って、繊維自体内に多くの水を保持することなく、繊維間のスペースにおいて水を輸送する。
【0038】
ウィッキング層17と18の代替え手段として、特に電極11と12が親水性水運搬添加剤(water-conveying additive)を含む固体ポリマーマトリックスから構成される場合に、電極11と12の上面に複数個の液体運搬みぞを備えることができる。複数個の液体運搬みぞの代替え手段として、実質的に任意の幾何学的形状の、複数個の小さい山と谷を形成するために、電極11と12の上面を実質的に任意の公知の方法で組織化する(textured)ことができる(例えば、粗面化表面)。これらの小さい谷は電極11と12の全面を横切って水を運搬する。
【0039】
電極11と12はそれぞれ液体20を通過させて、それぞれ非水和形溜め15と16中、及び存在する任意の膜及び/又は接着性層中に流入させ、それによってそれぞれ電極アセンブリ8と9を水和し、活性化する。電極11と12はそれぞれ、それらを通して、少なくとも1つの液体運搬路を有して、それぞれポウチ21と22から放出される液体20を溜め15と16の非水和形マトリックスに流入させる。例えば、電極11と12は、それを通して1個以上の液体運搬孔を有するプレート(図示せず)形状の金属から形成することができる。或いは、電極11と12は金属スクリーン(図示せず)から形成することができる。しかし、最も好ましくは、電極11と12は導電性充填剤(例えば炭素繊維又は金属粉末)と液体運搬添加剤、最も好ましくは親水性水運搬添加剤との両方を含む固体ポリマーマトリックスの形状である。
【0040】
作用剤(すなわち、薬物及び/又は電解質塩)は水和前の非水和形の溜め15と16中に含めることができるか、又は水和時に液体20と共に非水和形溜め15と16に加えることができる、しかし、水和用液体20の存在下で不安定である作用剤の場合には、薬物が水和前の非水和形溜め15中に存在することが好ましい。非水和形溜め15が投与すべき作用剤を既に含む場合には、液体20が脱イオン水を含むことが好ましい。非水和形溜め15と16が最初は作用剤を含まない場合には、液体20が作用剤又は電解質塩の水溶液又は懸濁液を含むことが好ましい。最も好ましくは、溜め15と16がそれぞれ親水性ポリマーから構成される。
【0041】
大抵の場合には、ポウチ21と22中に含まれる液体20は少なくとも一部は水から構成される。しかし、溜め15と16を例えばアルコールとグリコールのような非水性液体を含む他の液体を用いて“水和する”ことは、充分に本発明の範囲内である。したがって、ここで用いるかぎり、“水和する”なる用語はポウチ21と22からの水性又は非水性液体の放出を意味する。さらに、非水和形溜め15及び/又は16が最初に薬物又は電解質を含まないような場合には、水和用液体20が薬物又は電解質の液体溶液又は懸濁液を含むことができる。液体20は例えば防腐剤、微生物増殖を抑制する作用剤又は皮膚を通る薬物の経皮流動を強化する作用剤(例えば、1種以上の界面活性剤)及びこれらの作用剤の組合せのような、他の添加剤をも含むことができる。液体が水から成る典型的な場合には、溜め15と16のマトリックスは少なくとも部分的に、例えば親水性ポリマー、セルローススポンジ若しくはパッド、又は他の水分保持物質から構成される。最も好ましくは、溜め15と16は以下に述べる種類の親水性ポリマーから構成される。
【0042】
本発明によると、電極アセンブリ8と9の少なくとも一方、好ましくは電極アセンブリ8と9の両方が最初は実質的に乾燥状態である。したがって、電極アセンブリ8と9を構成する種々なイオン伝導層は最初は非水和状態である。ここで用いるかぎり、“乾燥状態”及び“非水和形”なる用語は、特定の層がイオンを通過させるためには不充分な量の液体を含むことを意味する。例えば、ドナー電極アセンブリ8のイオン伝導層は溜め15と任意の接着性及び/又は膜層とを含む。電極11はその組成に依存してイオン伝導性でもありうる、例えば、電極11が金属ホイルである場合には、これは導電性(すなわち、電子伝導性)であるが、イオン伝導性ではない。しかし、電極11が金属粒子を負荷された親水性ポリマーマトリックス(例えばポリビニルピロリドン)から構成される場合には、電極11はイオン伝導性でもある。ドナー電極アセンブリ8が“乾燥状態”電極アセンブリと見なされるためには、電極アセンブリ内の溜め15と他のイオン伝4導性層とが最初、イオンを効果的に通過させるためには不充分な量の液体を含む。同様に、カウンター電極アセンブリ9が“乾燦状態”電極アセンブリと見なされるためには、電極アセンブリ9内の溜め16と他のイオン伝導性層は最初に、イオンを効果的に通過させるためには不充分な量の液体を含む。“非水和形”と見なされるためには、溜め層15と16は約10重量%未満の液体、好ましくは約5重量%未満の液体、最も好ましくは、約1重量%未満の液体を最初に含むべきである。
【0043】
図4〜8では、本発明によるイオン導入作用剤投与デバイス(数字30によって指定)の代替え実施態様を示す。デバイス30はパッケージ32内に保持される。引張りタブ37と38を、図1で説明するデバイス10に示す方法と同様な方法で、それぞれシート25と26(図4〜8に図示せず)に取り付ける。シート25と26は引き裂く又は破ることができる物質から製造する。引張りタブ37と38(図4〜8)は引張りタブ27と28(図1〜3)とは、次の点で異なる。引張りタブ27と28はそれぞれ、使用者が握って、引っ張るために適した端部を有する(図10参照)。しかし、デバイス30では、タブ37と38は握って、引っ張るために適さない。その代わりに、タブ37と38はパッケージ32に取り付けられる。図6と7に最も良く示されるように、個々のタブ37と38の端部は一体(integral)タブ要素39になる。タブ要素39はパッケージ32に取り付けられる(例えば、接着剤接着、ヒートシーリング又は機械的接着(例えばカスガイ止め)によって)。図5と6に最も良く示されるように、パッケージ32はポケット33を有し、その中にデバイス30が入る。ポケット33は折り曲げ線35に沿ってクロージャー(closure)要素34を広げることによって開くことができる。デバイス30を握って、図6、7及び8に示す矢印方向に引っ張ることによって、デバイス30はポケット33から取り出される。タブ要素39はパッケージ32に取り付けられているので、ポケット33からのデバイス30の取り出しが自動的に、タブ37と38をデバイス30に対して引っ張ることになり、ポウチ21と22をそれぞれシールする液体不透性シート25と26を引き裂くか又は破ることになる。このようにして、デバイス30の乾燥状態電極アセンブリはパッケージ32からのデバイス30の取り出し作用によって自動的に水和される。
【0044】
図9では、本発明によるイオン導入作用剤投与デバイス(数字40によって指定)の他の実施態様を示す。図4〜8に示すデバイス30と同様に、デバイス40もパッケージ42からの取り出し時に自動的に水和される。デバイス40はフレキシブル壁23を有する液体含有ポウチ21を有する。例えば、フレキシブル壁23は任意の液体不透性、成形可能なフレキシブル膜又はホイルから構成することができ、好ましくはポリエチレン若しくはポリプロピレンフィルム又は軟質の成形可能なアルミニウムホイルから形成される。ポウチ21はウィッキング層17に隣接する面に沿って、シート形状で示す液体不透性物質45によってシールされる。シート45は、密封容器21内の圧力が所定レベルに達したときに、破裂するように設計される。例えば、シート45は金属ホイルから形成することができ、好ましくは脆いアルミニウムホイル、最も好ましくは、ホイルの水誘導劣化に耐える及び/又は壁23の物質とヒートシールされることができる物質によってその内面を処理された脆いアルミニウムホイルによって形成される。
【0045】
パッケージ42は例えば厚紙、ボール紙、硬質プラスチック等のような、比較的硬質の物質から構成される。パッケージ42の上部壁は任意に、ポウチ21の形状に密接に適応する隆起部分41を任意に有する。或いは、パッケージ42の内部に達する突起44を備えることができる。パッケージ42は(1)パッケージ42の底部に連結した部分21のネックダウン部、(2)パッケージ42の頂部と突起44、又は(3)上記(1)と(2)の組合せのいずれかによって形成される圧縮帯46を有する。部分41と突起44を、いずれか単独で又は組合せて、用いて圧縮帯46を形成することができることは、当業者が容易に理解するであろう。圧縮帯46を形成するためのパッケージ42の多くの付加的形状は、本明細書の教示を考慮するならば、明らかであろう。パッケージ42内でのデバイス40の貯蔵中に、ポウチ21は圧縮帯46の外部に置かれる。圧縮帯46はパッケージ42内のポウチ21の“貯蔵”位置とパッケージ42の開口43との間に置かれる。
【0046】
デバイス40を活性化するために、デバイス40はパッケージ42から矢印方向に滑り出て、ポウチ21を圧縮帯46中に押し込む。ポウチ21が圧縮帯46に直面すると、ポウチは圧搾されて、それによってポウチ21内の圧力が少なくとも所定レベル程度の大きさのレベルに上昇し、それによってシート45は破裂する。ひと度破裂すると、ポウチ21内の液体20は任意のウィッキング層17中に放出され、電極11を通って、デバイス10と同様に、溜め15の非水和形マトリックス中に放出される。デバイス40は、乾燥作用剤溜め15の他に、イオン伝導性接着剤の非水和層47をも含む。剥離ライナー48をデバイス40の底面に備えるが、これは体表にデバイス40を配置する直前に除去するのに適する。
【0047】
図10〜12では、イオン導入投与デバイスの非水和形溜めマトリックスを水和するために用いられるポウチ形状の液体含有容器の他の実施態様を説明する。図10では、水和用液体20を含む密封ポウチ50を説明する。ポウチ50の壁は例えばポリエチレン、ポリプロピレン又は、ミネソタ マイニング アンド マニュファクチャーリング社(Minnesota Mining and Manufacturing C.)(ミネソタ州,セントポール)から販売されるMedpar(登録商標)のような、ポリエステル/ホイルラミネートのような、フレキシブルなシート材料から形成される。パンチ60はポウチ50内に配置される。図10と11では、パンチ60は上方の、使用準備位置にあるが、図12では、パンチ60は下方の、活性化位置に示される。或いは、2個以上のパンヂ60をポウチ50内に含めることができる。
【0048】
次に図11に関しては、パンチ60はプランジャー62とスタンド64とから成る。プランジャー62は“+”形状の断面を有するブレード63を含む。ブレード63の周囲には、複数個の間隔を置いたプロング(prong)66が配置され、各プロングは1対の間隔を置いた隆起縁67と68を有する。スタンド64はスロット61を含む環状形を有し、図12における液体流矢印が示すように、スロット61はブレード63によって形成される孔への液体20の流入を可能にする。スタンド64は内側に突出するリップ65をも有する。リップ65はプロング66と係合する形状であり、図11に示すように、リップ65は縁67と68の間に挿入される。図12における矢印が示すように、ポウチ50の頂部が圧縮されるときに、ポウチ50の壁に穿孔するために充分な強度を有する任意の硬質物質から、ブレード63を製造することができる。好ましくは、パンチ60を例えばポリカーボネート、ポリスルホン又は硬質ポリ塩化ビニルのような硬質ポリマー物質から構成する。プランジャー62がスタシド64中に押しこまれると、縁67がリップ65を越えて押し込まれる。最終的には、ブレード63がポウチ50の底部壁を切って通り、イオン導入投与デバイス内の種々な上部層を貫通して、図12に最も良く示されるように、ブレード63の先端はウィッキング物質17中に達する。ポウチ50内の液体はスロリト61を通り、ブレード63の“+”形状断面の開放面積(open area)に沿って、任意のウィッキング層17中へ放出され、ウィッキング層17は非水和形溜め15の上面全体に該液体を流す(wick)。
【0049】
1個以上の液体含有ポウチ50を有する乾燥状態イオン導入投与デバイスを、圧縮帯46を有する、図9に示したタイプのパッケージと組合せて用いることができる。圧縮帯46の外側にポウチ50を配置して、デバイスをパッケージ内に保持することができる。デバイスをパッケージから取り出すときに、ポウチ50は圧縮帯46に押し通されて、フレキシブルポウチ50が圧縮され、それによって、プランジャー62がスタンド64に押し込まれることによって、パンチ60が活性化される。
【0050】
或いは、使用者に通常の指圧によってポウチ50の頂部を押圧させることによって、パンチ60を活性化することができる。
リップ65は間隔を置いた縁67と68と共に、先行技術の水和可能なデバイスに見られない重要な利益を与える。コンノ等の米国特許第4,842,577号に開示されたようなデバイスでは、水溜めと電極の非水和形部分との間のシールが電極の製造、包装及び/又は取り扱い中に偶然に破壊する傾向がある。本発明の設計では、ポウチ50に及ぼされる僅かな圧力がプランジャー62をスタンド64に押し込む傾向があるが、この圧力はリップ65と縁67の相互作用によって生ずる抵抗を克服するには不充分であり、ポウチ50に偶然に与えられる圧力によって惹起される下方の電極アセンブリの偶発的な水和を防止するので、この問題は解消されている。したがって、本発明の設計はコンノ等によって開示された改良を凌駕する重要な改良を生ずる。
【0051】
図13〜14では、イオン導入投与デバイスの非水和形溜めマトリックスを水和するために用いられるポウチ形状の液体含有容器の他の実施態様を説明する。図13では、水和用液体20を含む密封ポウチ50を説明する。ポウチ50の壁は例えばポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエステル/ホイルラミネート(例えば、Medpar(登録商標))のような、フレキシブルなシート材料から形成される。ポウチ50の下方には、パンチ70が配置される。図13では、パンチ70は使用準備位置にあるが、図14では、パンチ70は活性化位置に示される。パンチ70の上面は図15に示すが、図13に示すパンチ70の図は図15のラインXIII−XIIIに沿った断面図である。パンチ70は複数個(例えば、4個)のバイアスド(biased)ブレード72、73、74及び75を有する環状要素71から成り、各斜めブレードは要素71から内側に半径方向に伸びる。要素71とブレード72、73、74及び75は単独一体要素から形成されるか、或いはブレード72、73、74及び75を別々に形成して、後に適当な手段によって要素71に取り付けることができる。例えば、要素71と、ブレード72、73、74及び75を金属から形成し、ブレードを例えば溶接によって要素71に取り付けることができる。或いは、パンチ70を金属スタンピング(stamping)操作によって形成することができる。さらに、或いは、要素71とブレード72、73、74及び75は、例えばABSコポリマー、ポリアミド又はナイロンのような適当なポリマーを成形することによって形成される単独一体ピースであることができる。
【0052】
図13に最も良く示されるように、ブレード72〜75の各々は複数のベンド(bend)76〜78をブレード中に有する。ベンド78はベンド76と77よりも実質的に低フレキシブルであり、そのため、ベンド78はブレード72〜75の頂部に下向き圧力が加えられるときにまっすぐにならない。さらに、各ブレードは自由端部を有し、この自由端部は一般にポウチ50の底部を指す方向に配向する。図14の矢印が示すように、ポウチ50の頂部に圧力が加えられるときに、ポウチ50はブレード72、73、74及び75を下方に押圧する。この下向き圧力がブレード72と73の高フレキシブルベンド76と77をまっすぐにし、ブレード72〜75を押圧して、図14に示す形状にする。容易に理解されるように、ブレード72〜75の自然のバイアスはブレードの自由端部(好ましくは鋭利にして、それらがバッキング層52とポウチ50に穿孔する可能性を強化する)を上方に伸ばさせ、最後にはバッキング層とポウチ50の底部壁とに穿孔させ、それらを通る孔51を形成する。孔51がひと度形成されたならば、ポウチ50内9液体20がポウチ50から流出し、孔51を通り、環状要素71の開放基部(open base)を通って、ウィッキシグ層17中に流入する。
【0053】
液体含有ポウチ50とパンチ70とを有する乾燥状態イオン導入投与デバイスを、圧縮帯46を有する、図9に示したタイプのパッケージと組合せて用いることができる。圧縮帯46の外側にポウチ50を配置して、デバイスをパッケージ内に保持することができる。デバイスをパッケージから取り出すときに、ポウチ50が圧縮帯46に押し通されて、フレキシブルポウチ50が圧縮され、それによって、ブレード72〜75を押圧して、ポウチ50の下側に穿孔させることによって、パンチ70が活性化される。或いは、デバイスの使用前に、使用者に通常の指圧によってポウチ50の頂部を押圧させることによって、パンチ70を活性化することができる。
【0054】
図16と17では、パッケージからの取り出し時に自動的に水和される、他のイオン導入投与デバイスを示す。パッケージ90はトレー92と蓋94とから成る。蓋94には、開口95〜99が存在する。トレー92には4個のスロット93が存在する。図16に示すように、2個のストリップ81と82を蓋94に備える。ストリップ81は2端部を有し、各端部はスロット93と係合する。同様に、ストリップ82は2端部を有し、各端部はトレー92(図16には図示せず)中の他のスロット93と係合する。ストリップ81は開口96と97を通り(threaded)、スロット88を経由して、ポウチ50上で開口95を横切って通る。同様に、ストリップ82は開口98と99を通り、スロット89を経由して、第2ポウチ50上で開口95を横切って通る。
【0055】
貯蔵条件下で、ストリップ81と82の端部はスロット93中に達し、それによって、蓋94をトレー92内に固定する。
蓋94を除去するためには、図17に最も良く示されるように、ストリップ81と82を開口95領域において押し下げなければならない。ストリップ81と82の押し下げはトレー92の同じ面に存在するスロット93の少なくとも2個からストリップを引き出すことになり、好ましくは、図16の矢印によって最も良く示されるように、トレー92の両側の4個のスロット93の全てからストリップを引き出す。さらに、開口95の領域におけるストリップ81と82の押し下げはポウチ50に圧力を及ぼすことになり、ポウチ50を破壊し、前述した方法と一致する方法で、デバイス80の非水和形部分に水を放出する。当業者によって理解されるように、パッケージ90はパッケージ90からのデバイス80の取り出し時に、デバイス80を自動的に水和する手段を与える。
【0056】
図18では、他のイオン導入投与デバイス110を示す。図1に示したデバイス10と同様に、デバイス110は非水和形ドナー電極アセンブリ8と非水和形カウンター電極アセンブリ9とを含む。剥離ライナー112と113とがそれぞれ、ドナー電極アセンブリ8とカウンター電極アセンブリ9との皮膚接触面を被覆する。剥離ライナー112と113は典型的に、シリコン化ポリエステル物質から成る。剥離ライナー112の1端部はタブ27に固定付着させる。114と標識した領域において、例えば接着剤接着、スタンプリング等のような通常の手段(図示せず)を用いて、剥離ライナー112とタブ27とを相互に接着させる。同様に、通常の接着手段を用いて、領域115において剥離ライナー113をタブ28に接着させる。使用前に、患者又は医師が電極アセンブリ8と9の表面から、矢印によって示すように、剥離ライナー112、113をそれぞれ剥離する。電極アセンブリ8と9の皮膚接触面から剥離ライナー112、113がひと度剥離されたならば、患者又は医師は該剥離ライナーをさらにデバイス110から外方に引っ張って、タブ27と28をそれぞれポウチ21と22に対して引っ張らせる。この引張り作用は、図1に宗したデバイス10に関して述べた方法と同じ方法で、水含有ポウチ21と22を開放するばかりでなく、剥離ライナー112と113を除去するようにも作用する。デバイス110を体表の適所に固定することができる前には剥離ライナー112と113を最初に除去しなければならないので、この形態によって電極アセンブリは確実に水和され、したがって、デバイス110は身体に装着する前に活性化される。
【0057】
溜め15又はドナー電極アセンブリ8に関して用いる場合に、“作用剤”なる表現は有効剤を意味し、好ましくは、例えば皮膚又は粘膜のような体表を通して投与されることができるクラス内の、例えば薬物のような、有効剤を意味する。
【0058】
“作用剤”なる表現は、生活する生物に投与されて所望の、通常は有益な、効果を生ずる治療有効物質としてのそれらの広い解釈を有するように意図される。一般に、これは主要な治療分野の全てにおける治療剤を含み、限定する訳ではなく、例えば抗生物質と抗ウイルス剤のような抗感染薬、鎮痛薬と鎮痛複合薬、麻酔薬、食欲減退薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙撃薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、下痢止め、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬、乗り物酔い治療剤、抗おう吐薬、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、かゆみ止め、抗精神病薬、解熱薬、胃腸及び尿路を含む鎮痙薬、抗コリン作動薬、交感神経作用薬、キサンチン誘導体、カルシウムチャンネル遮断薬とべータ遮断薬とを含めた心血管系製剤、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、全身、冠状、末梢及び脳血管を含む血管拡張薬、中枢神経系刺激薬、咳き薬及び風邪薬、うっ血除去薬、診断薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、副交感神経作用薬、蛋白質、ペプチド、精神刺激薬、鎮静薬及びトランキライザーを含む。
【0059】
本発明はまた、イオン導入法の実施のために必要な液体(例えば水)の存在下で不安定であり、加水分解、酸化、変性又は他の点で劣化する傾向を有する、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、高分子及び他の薬物の制御投与に特に有用である。例えば、エステル結合(すなわち、ステロイド)又はアミド結合(すなわち、ペプチド)を含む薬物は水中で加水分解する可能性がある。水の存在下で劣化する可能性がある薬物の特定の例には、カテコール(例えば、アポモルフィンとエピネフリン)、サルブタモール、スルフヒドリル(例えば、カプトプリル)、ニフェジピン及びペプチド(例えば、VIPとインシュリン)がある。
【0060】
本発明のデバイスを用いて投与することができる、他のペプチドと蛋白質の例には、限定する訳ではなく、LHRH、例えばブセレリン、ゴナドレリン、ナフレリン及びロイプロリドのようなLHRH類似体、GHRH、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、エンドルフィン、TRH、NT−36(化学名:N−[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド)、リプレシン、下垂体ホルモン(例えば、HGH,HMG,HCG,酢酸デスモプレッシン等)、卵胞ルテオイド、αANF、例えば成長因子放出因子(GFRF)、βMSH、ソマトスタチン、ブラディキニン、ソマトトロピン、血小板誘導成長因子、アスパルギナーゼ、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性性腺刺激ホルモン、コルチコトロピン(ACTH)、エリスロポイエチン、エポプロステノール(血小板凝固阻害因子)、グルカゴン、ヒアルロニダーゼ、インターフェロン、インターロイキン−2、メノトロピン(ウロフォリトロピン(FSH)とLH)、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性因子、ウロキナーゼ、バソプレッシン、デスモプレッシン、ACTH類似体、ANP、ANPクリアランス阻害因子、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、抗利尿ホルモンアゴニスト、抗利尿ホルモンアンタゴニスト、ブラディキニンアンタゴニスト、CD4、セレダーゼ、CSF類、エンケファリン、FABフラグメント、IgEペプチド抑制因子、IGF−1、神経栄養因子、上皮小体ホルモンとアゴニスト、上皮小体ホルモンアンタゴニスト、プロスタグランジンアンタゴニスト、ペンチゲチド、プロテインC、プロテインS、レニン阻害因子、チモシンα−1、血栓溶解薬、TNF、ワクチン、バソプレッシンアンタゴニスト類似体、α−1抗トリプシン(組換え体)がある。
【0061】
溜め層16及び/又はカウンター電極アセンブリ9に関して用いる場合に、“作用剤”なる表現は、任意の適当な、薬理学的に受容される電解質塩を意味する。該電解質塩がカウンター電極アセンブリ9を“水和する”ために用いる液体中に可溶であることが好ましい。適当な電解質塩には、例えば塩化ナトリウム、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、例えば塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、及び例えばアスコルビン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩及びこれらの混合物のような有機塩のような、水溶性の生体適合性塩がある。
【0062】
電極11と12は導電性であり、金属又は他の導電性物質から形成することができる。例えば、電極11と12は金属ホイル、金属スクリーン又は適当なバッキング上に付着した又は塗布した金属から形成することができる。適当な金属の例は銀、亜鉛、銀/塩化銀、アルミニウム、白金、ステンレス鋼、金及びチタンを含む。或いは、電極11と12は例えば金属粉末、粉状黒鉛、炭素繊維又は他の公知の導電性充填剤物質のような、導電性充填剤を含むポリマーマトリックスから形成することができる。ポリマーベースド電極は好ましい疎水性ポリマーマトリックス中に導電性充填剤を混合することによって製造することができる。例えば、亜鉛粉末、銀粉末、銀/塩化銀粉末、粉状炭素、炭素繊維及びこれらの混合物を疎水性ポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニルコポリマー)マトリックス中で混合することができ、導電性充填剤の好ましい量は約30〜90容量%の範囲内であり、残部は疎水性ポリマーマトリックスである。
【0063】
電極11と12を液体含有ポウチ21、22と非水和形溜め15、16の間にそれぞれ配置する場合には、電極11と12はポウチ21と22から放出された水和用液体をそれぞれ溜め15と16中に伝達することができるべきである。これは、他の点では固体の電極11と12を通る1個以上の液体伝導路を形成することによって達成することができる。或いは、電極11と12は金属メッシュの形状であってもよい。電極を導電性ポリマーを含む疎水性ポリマーマトリックスから形成する場合には、適当量(例えば、10〜40容量%)の親水性添加剤を加えることによってマトリックスを水透過性にすることがことができる。好ましい親水性添加剤には溜め15と16のマトリックスに用いた親水性ポリマーがある。
【0064】
図面に説明したデバイスでは、液体含有ポウチ21と22がデバイスの上面に配置されている。この位置では、ポウチ21と22から放出された液体を、電極層11と12をそれぞれ通って流れるように、制御しなければならない。したがって、図面に説明したデバイスでは、液体流制御手段が、水和用液体20に対して透過性であり、任意に液体20の流れをそれぞれ電極11と12の上面全体に均一に分配するウィッキング物質層17、18を有する“フロースルー(flow through)”電極として示されている。しかし、該液体含有ポウチ21と22を他の位置に、例えば投与デバイスの側縁に配置することも充分に本発明の範囲内であり、投与デバイスの側縁に配置した場合には、(1)電極11と12の“フロースルー”特徴と、(2)ウィッキング物質層17と18、のいずれか又は両方が不要になる。“液体流制御手段”なる用語がここでは、ポウチ21と22からデバイスの非水和形部分中へ放出される液体流を制御するための任意の手段を広範囲に定義するために用いられ、図面に示した“フロースルー”電極及びウィッキング物質に特に限定されないことを当業者は理解すると考えられる。
【0065】
電極11と12は層14中の電源に、例えばフレキシブル印刷回路、金属ホイル、ワイヤ又は直接接触によるような周知手段を用いて電気的に連結する。電源としての電池の代替え手段として、異なる電気化学的カップルから構成され、相互に電気的に接触して配置されるドナー電極11とカウンター電極12とによって形成されるガルバーニカップル(galvanic couple)によって、デバイス10を駆動することができる。カチオン作用剤を投与するための典型的なガルバーニカップルは亜鉛ドナー電極11と銀/塩化銀カウンター電極12とを含む。Zn−Ag/AgClガルバーニカップルは約1 voltの電位を与える。
【0066】
溜め15と16のマトリックスは、イオン導入法による作用剤の通過を可能にするために、その中に充分な量の液体を吸収し、維持するために適した任意の物質でよい。例えば、綿から製造されたガーゼ又は他の吸収性の布帛並びにパッド及びスポンジが、天然と合成の両方で、使用可能である。さらに好ましくは、溜め15と16のマトリックスは、少なくとも一部において、親水性ポリマー物質から構成される。最も好ましくは、溜め15と16のマトリックスは、少なくとも一部が親水性ポリマー物質から構成される固体ポリマーマトリックスである。天然及び合成の両方の親水性ポリマーが使用可能である。適当な親水性ポリマーは、例えば、デュポン デ ネマース社(デラウェア州,ウィルミントン)から販売されるHytrel(登録商標);ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、例えばユニオン カーバイド社(Union Carbide Corp.)によって製造されるPolyox(登録商標)のようなポリエチレンオキシド;ビーエフ グッドリッチ(BF Goodrich)(オハイオ州,アクロン)によって製造されるCarbopol(登録商標);例えばPolyoxとCarbopolとのブレンドのようなポリオキシエチレン又はポリエチレングリコールとポリアクリル酸とのブレンド、ポリアクリルアミド、Klucel(登録商標)、例えばセファデックス(Sephadex)[ファルマシア ファイン ケミカルス(Pharmacia Fine Chemicals),AB,スゥェーデン,アプサラ]のような架橋デキストラン、澱粉グラフト(アクリル酸ナトリウム−コ−アクリルアミド(Sodium acrylate-co-acrylamide))ポリマーであるWater Lock(登録商標)[グレイン プロセッシング社(Grain Processing Corp.)、アイオワ州,ムスカリン];例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース及び架橋Na−カルボキシメチルセルロース{例えばAc−Di−Sol[FMC社,ペンシルバニア州,フィラデルフィア]}のようなセルロース誘導体;例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート[ナショナル パテント デベロップ社(National Patent Develop Corp.)]のようなヒドロゲル、天然ガム、キトサン、ペクチン、澱粉、グァーガム、ローカストビーンガム(locust bean gum)等を、これらのブレンドと共に含む。
【0067】
任意に、溜め15と16のマトリックスは、溜め層15と16の隣接層(例えば、絶縁体26と27、電極i1と12並びに任意の膜及び/又は接着性層)への積層を強化するために、好ましくは熱融合性の疎水性ポリマーを含むこともできる。溜め層15と16のマトリックスに用いるために適した疎水性ポリマーには、限定する訳ではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン及びポリアルケン、ゴム、例えばKraton(登録商標)のようなコポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、例えばナイロンのようなポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、例えばアクリル酸若しくはメタクリル酸と、例えばn−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、r−メチルブタノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、イソオクタノール、n−デカノール又はn−ドデカノールのようなアルコールとのエステルのポリマーのようなアクリル樹脂若しくはメタクリル樹脂、単独又は例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルコキシメチルァクリルアミド、N−アルコキシメチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド及びイタコン酸のようなエチレン系不飽和モノマー、アルキル基が炭素数10〜24であるN−分枝アルキルマレアミド酸、グリコールジアクリレート及びこれらのブレンドと共重合したものがある。上記疎水性ポリマーの大部分は熱融合性である。これらの中で、エチレン−酢酸ビニルコポリマーが好ましい。
【0068】
薬物又は電解質が水和前の溜めマトリックス中に存在するときに、薬物又は電解質と親水性ポリマーマトリックスとの混和は例えば磨砕(milling)、押出し、又はホットメルト混合によって機械的に達成することができる。溜め15と16は、薬物と電解質の他に、例えば染料、顔料、不活性充填剤及び他の賦形剤のような、他の通常用いられる物質をも含むことができる。
【0069】
電極アセンブリ8と9の総皮膚接触面積は1cm2未満から200cm2を越えるまでの範囲であることができる。しかし、平均的なデバイス10は約5〜50cm2の範囲内の総皮膚接触面積を有する電極アセンブリを有する。
【0070】
本発明をこのように一般的に述べ、そのある一定の好ましい実施態様を詳細に説明したが、下記請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の種々な変更が当業者によってなされうることは容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明によるイオン導入薬物投与デバイスの断面図である。
【図2】図1に示したデバイスの平面図である。
【図3】図1におけるライン3−3に沿った、図1に示したデバイスの底面図である。
【図4】本発明の1実施態様によるイオン導入投与デバイスを保持するためのパッケージの側面図である。
【図5】図4に示したパッケージの正面図である。
【図6】図4と5に示した容器の正面図であり、イオン導入投与デバイスはファントムで示す。
【図7】説明のためにパッケージの一部を開いた、図4、5及び6に示したパッケージとイオン導入投与デバイスの透視図である。
【図8】図7のライン8−8に沿った、図7に示したパッケージとイオン導入投与デバイスの断面図である。
【図9】本発明の他の実施態様によるイオン導入投与デバイスとそのためのパッケージとの側断面図である。
【図10】本発明の他の実施態様によるイオン導入投与デバイスを水和するために有用な、流体溜め容器の透視図であり、一部はファントムで示す。
【図11】図10に示した流体溜め容器の側断面図であり、パンチは上方の、使用準備位置、すなわち下方の電極アセンブリを水和する前の位置にある。
【図12】図10と11に示す流体溜め容器の他の側断面図であり、下方の電極アセンブリを水和するための下方の、すなわち活性化位置にある。
【図13】流体溜め容器とイオン導入投与デバイスの一部の側断面図であり、代替えパンチは使用準備位置、すなわち下方の電極アセンブリを水和する前の位置にある。
【図14】図13に示した流体溜め容器とイオン導入投与デバイスの他の側断面図であり、パンチは下方の電極アセンブリを水和するための活性化位置にある。
【図15】図13と14に示したパンチの平面図である。
【図16】パッケージを開くときにデバイスを自動的に水和するための手段を備えたイオン導入投与デバイスのためのパッケージの透視図である。
【図17】は、ライン17−17に沿った、図16に示したパッケージとデバイスの断面図である。
【図18】本発明による他のイオン導入薬物投与デバイスの断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン導入による経皮的又は経粘膜的な作用剤(agent)投与のためのデバイスに関する。さらに詳しくは、本発明は、身体へのデバイスの装着直前に水和するか、又は他のやり方で液体の添加によって活性化することができる電極を有する電気駆動式イオン導入投与デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン導入は今まで、「治療目的のための身体組織中への溶解性塩のイオンの電流による導入」であると定義されている。皮膚を通してイオン化薬物を投与するためのイオン導入デバイスは1900年代初期から知られている。ドイチュ(Deutsch)の英国特許明細書第410,009号(1934)は、このような初期デバイスの欠点の1つ(すなわち電流供給源の近くに固定する必要があること)を克服したイオン導入デバイスを述べている。このドイチュのデバイスは電極と、経皮投与すべき薬物を含む物質とから形成される電池(galvanic cell)によって駆動される(powered)。この電池は作用剤をイオン導入投与するために必要な電流を製造した。従って、このデバイスはイオン導入薬物投与中に患者が動き回ることを可能にしく患者の日常活動を実質的に殆ど妨げない。
【0003】
現在、イオン導入は電流による身体中へのイオン(例えば、薬物イオン)の投与のみに限定されない。例えば、無荷電薬物又は作用剤の身体への投与にイオン導入投与デバイスを用いることができることが現在認められている。これは電気浸透と呼ばれる方法によって達成される。電気浸透はドナー電極によって皮膚を通って負荷される電界の存在によって誘導される液体溶剤(例えば、無荷電薬物又は作用剤を含む液体溶剤)の経皮流動(flux)である。ここで用いるかぎり、“イオン導入(iontophoresis)”及び“イオン導入による(iontophoretic)”なる用語は、(1)電気的移動による荷電薬物又は作用剤の投与、(2)電気浸透プロセスによる無荷電薬物又は作用剤の投与、(3)電気的移動と電気浸透との複合プロセスによる荷電薬物又は作用剤の投与、及び/又は(4)電気的移動と電気浸透との複合プロセスによる荷電もしくは無荷電薬物又は作用剤の投与を意味する。
【0004】
最近では、幾つかの米国特許がイオン導入法分野において発行され七おり、この薬物投与形式に新たに関心が持たれていることを実証している。例えば、ヴェルノン(Vernon)等の米国特許第3,991,755号;ヤコブセン(Jacobsen)等の米国特許第4,141,359号;ウィルソン(Wilson)の米国特許第4,398,545号;及びヤコブセンの米国特許第4,250,878号は、イオン導入デバイスの例とその幾つかの用途を開示する。イオン導入法は塩酸リドカイン、ヒドロコルチゾン、フッ化物、ペニシリン、リン酸ナトリウムデキサメタゾン、インシュリン及びその他の多くの薬物を含めた作用剤又は薬物の経皮投与に有効である。イオン導入法の最も一般的な用途はピロカルピン塩をイオン導入投与することによる嚢胞性線維症の診断である。ピロカルピンは発汗を刺激する;汗を回収し、この疾患の有無を検出するためにその塩化物含量に関して分析する。
【0005】
現在公知のイオン導入デバイスでは、少なくとも2個の電極が用いられる。これらの電極の両方は身体の皮膚又は他の膜表面の一部と密接に電気的に接触するように配置される。活性電極若しくはドナー電極と呼ばれる、一方の電極はそれからイオン性物質、作用剤、薬物先駆体又は薬物がイオン導入によって身体中に投与される電極である。カウンター若しくはリターン電極と呼ばれる、他方の電極は身体を通しての電気回路を閉じるように作用する。患者の皮膚と電極との接触と共に、電気エネルギー源、例えば電池への電極の結合によって回路が完成する。例えば、身体へ投与すべきイオン性物質が陽性に荷電する(すなわちカチオンである)場合には、アノードが活性電極であり、カソードは回路の完成に役立つ。身体へ投与すべきイオン性物質が陰性に荷電する(すなわちアニオンである)場合には、カソードが活性電極であり、アノードはカウンター電極になる。
【0006】
或いは、アノードとカソードとの両方を用いて、対立電荷の薬物を身体中に投与することができる。このような場合には、両電極は活性若しくはドナー電極であると考えられる。例えば、アノードは陽性に荷電したイオン性物質を身体に投与することができ、カソードは陰性に荷電したイオン性物質を身体に投与することができる。
【0007】
イオン導入デバイスは一般に、身体中にイオン導入的に投与すなわち導入されるべき有効剤の溜め若しくは供給源を必要とする。作用剤のこのような溜め若しくは供給源の例には、前記ヤコブセンの米国特許第4,250,878号に述べられているようなポウチ若しくはキャビティ、ヤコブセン等の米国特許第4,141,359号に開示されているような多孔質スポンジ若しくはパッド、又はウェブスター(Webster)の米国特許第4,382,529号とアリウラ(Ariura)等の米国特許第4,474,570号に述べられているような予成形ゲル体がある。このような薬物溜めはイオン導入デバイスのアノード又はカソードに電気的に結合して、1種以上の好ましい薬物の固定した若しくは再生可能な供給源を形成する。
【0008】
皮膚表面に取り付け可能であり、このような皮膚表面との電気的接触を確立するために電解質流体に依存するイオン導入投与デバイスは、少なくとも2つのカテゴリーに分けることができる。第1カテゴリーは電極レセプタクル中に含まれる液体電解質と共にパックされるデバイスを含む。第2タイプのデバイスは通常、身体への装着直前に電極レセプタクルに薬物/電解質溶液を充填する乾燥状態電極を用いるものである。両タイプのデバイスに関して、使用者は現在、デバイスの使用を不便で、問題あるものにする多くの問題を経験している。
【0009】
充填済み(prefilled)デバイスに関しては、貯蔵が重要な問題である。多くの薬物が溶液中では不良な安定性を有する。したがって、充填済みイオン導入薬物投与デバイスの貯蔵寿命は容認されないほど短い。電極と他の電気的要素との腐食も予充填デバイスに付随する考えられる問題である。例えば、リターン電極アセンブリは通常、例えば塩化ナトリウムのような電解質塩を含むが、このような塩は時間が経つにつれて金属及び他の導電性物質の腐食を惹起することがありうる。充填済み電極に付随する他の問題は電極の無菌性の維持とその中での微生物増殖の防止とに関する。これは、イオン導入の実施のために用いる液体が水である場合の特別な問題である。抗菌剤をイオン導入投与デバイスの薬物及び/又は電解質溜めに加えることができるが、このような抗菌剤の添加は作用剤投与の効率を損なう傾向がある。漏出は充填済みイオン導入薬物投与デバイスに付随するもう一つの重要な問題である。電極レセプタクルからの薬物又は電解質の漏出は実施不能な状態又は不完全な状態を生ずることがありうる。さらに、このような充填済みデバイスは、電極開口を覆い、流体をレセプタクルキャビティ内に保持する保護シールを皮膚への装着前に除去しなければならないので、装着が困難である。この保護シールの除去後に、電極を皮膚に配置しようと試みると、こぼれがしばしば生ずる。このようなこぼれは皮膚に対する電極の所望の接着接触を損ない、またレセプタクルキャビティの一部を空にする。この結果の、薬物又は電解質溶液の損失は電極との電気的接触を無効にし、他の場合にはこれらのデバイスによって与えられる所望の均一な電位勾配を中断する。
【0010】
乾燥状態電極は貯蔵の容易さで非常に多くの利点を有するが、幾つかの問題が残る。例えば、このようなデバイスの薬物と電解質のレセプタクルは通常、デバイスを患者の皮膚に装着する前に開口から充填される。それ故、充填済み電極と同じ、薬物のこぼれ及び損失の問題が装着時に生ずる。
【0011】
このような電極はしばしば、イオン導入用途に必要とされる、適当な均一電流(current flow)を発生するために充分に構成されていない。このような不均一な電流は皮膚表面におけるレセプタクルキャビティ内のエアポケットの発生に起因する。このような効果はイオン導入用途において特に厄介であり、この場合には不均一な電流分布が過剰な皮膚刺激又は“灼熱(burning)”を生ずる。
【0012】
さらに最近では、ドナーとカウンター電極アセンブリが“マルチ−ラミネート”構造を有するイオン導入投与デバイスが開発されている。これらのデバイスでは、ドナーとカウンター電極アセンブリが多層状の(通常)ポリマーマトリックスからそれぞれ形成される。例えば、パルシ(Parsi)の米国特許第4,731,049号は親水性ポリマーに基づく電解質溜め層と薬物溜め層、皮膚接触ヒドロゲル層、及び任意に1個以上の半透膜層を有するドナー電極アセンブリを開示する。さらに、アリウラ等の米国特許第4,474,570号は、電極アセンブリが導電性樹脂膜電極層、親水性ゲル溜め層、アルミニウムホイル導体層及び絶縁バッキング層を含むデバイスを開示する。
【0013】
イオン導入投与デバイスの薬物と電解質溜め層は典型的に親水性ポリマーから形成されている。例えばアリウラ等の米国特許第4,474,570号;ウェブスターの米国特許第4,383,529号及びササキ(Sasaki)の米国特許第4,764,164号を参照のこと。親水性ポリマーを用いるには幾つかの理由がある。第一に、水は生体適合性であり、非常に極性であるので、多くの薬物にとって好ましい溶剤である。第二に、親水性ポリマー成分(すなわち、ドナー電極中の薬物溜めとカウンター電極中の電解質溜め)は、身体への付着時に、皮膚から又は粘膜から水分を吸収することによって水和されることができる。例えば、皮膚接触電極は汗又は経表皮的水分損失からの水を吸収することによって水和されることができる。同様に、口腔粘膜に付着した電極は唾液を吸収することによって水和されることができる。ひと度充分な量の水が薬物と電解質の溜め中に吸収されたならば、イオンは溜めから組織を横切って移動することができ、デバイスは作用剤を身体に投与することができる。
【0014】
ヒドロゲルは、一部はそれらの高い平衡水分含量と身体からのそれらの迅速な吸水力のために、イオン導入投与デバイス中の薬物溜めマトリックス及び電解質溜めマトリックスとしての使用に特に好まれている。さらに、ヒドロゲルは皮膚及び粘膜との良好な生体適合性を有する傾向がある。しかし、多くの薬物とある種の電極成分は水の存在下では不安定であるので、水和済み(prehydrated)ヒドロゲルから形成された薬物溜めを有するイオン導入薬物投与デバイスも容認されないほど短い貯蔵寿命を有する。薬物安定性問題の1つの解決策は、実質的な乾燥状態(すなわち、非水和状態)である、親水性ポリマーの薬物と電解質溜めを用いることである。薬物及び/又は電解質を例えば親水性ポリマーと乾式ブレンドして、次にキャスト又は押出成形して、水和可能ではあるが、非水和形(non-hydrated)の薬物若しくは電解質含有溜めを形成する。残念ながら、デバイスが薬物投与を開始するまでに、非水和形親水性ポリマー成分は身体から充分な量の水を最初に吸収しなければならない。この投与開始期間は数時間以上を要することがありうる。この遅延は多くのデバイスをそれらの所定目的に不適切なものにする。例えば、あまり重要ではない手術(例えば、ほくろの手術による除去)の準備で局部麻酔薬の投与にイオン導入投与デバイスを用いる場合に、外科医と患者は、投与デバイスの薬物と電解質の溜めが充分に水和されてから、麻酔薬が麻酔を誘導するために充分な量で投与されるまで待たなければならない。同様な遅延は他の薬物に関しても経験される。
【0015】
水中で不安定である薬物のイオン導入投与の困難性に応じて、ハーク(Haak)等の国際特許WO第92/07618号は、実質的に非水和形の薬物と電解質溜めマトリックスを有するイオン導入作用剤投与デバイスを開示する。使用直前に乾燥溜めを水和するために、バッキング層、エレクトロニクス(electronics)層及び電極層を通る通路が設けられ、これらの通路を通して水和用液体が外部供給源から加えられる。
【0016】
コンノ(Konno)等は米国特許第4,842,577号において実質的に非水和形薬物含有マトリックスと、電極の薬物含有部分からホイルシートを用いて最初は密封される、分離水溜めとを有するイオン導入電極を図4に開示する。コンノ等の電極アセンブリを活性化するために、水溜め容器の頂部が押し下げられ、ホイルシートが破壊され、それによって水が非水和形薬物含有マトリックス中に放出される。残念ながら、この電極設計は製造が困難であるのみでなく、厳しい取り扱い制限をも受けることになる。特に、電極の製造、包装及び取り扱い中にホイルシートが偶然に破壊する傾向がある。特に、デバイスの製造又は輸送中にシールが破壊するときには、このことが特別に劇的な結果を有する可能性がある。シールがひと度破壊すると、水が薬物含有溜め中に毛管作用で吸収され、デバイスが使用される前に薬物及び/又は他の成分の破壊を生ずる可能性がある。
【0017】
サバタノ(Sabatano)の米国特許第4,192,299号は軽症の(minor)皮膚創傷上に貼付するための消毒剤含有包帯(bandage)を開示する。この包帯は消毒剤ゼリーを含むアルミニウムホイル製エンベロープ(envelope)を有する。使用者がこのエンベロープを開いて、ゼリーをエンベロープから吸収性パッド上に絞り出す。皮膚に該包帯を貼付する前にこのエンベロープは捨てる。
【0018】
非水和形親水性ポリマー成分を用いることの他の欠点は、これらのポリマー成分が水和中に電極アセンブリの他の部分から剥離する傾向があることである。例えば、親水性ポリマーから成る薬物溜めマトリックス又は電解質溜めマトリックスを用いる場合に、マトリックスは皮膚から水分を吸収するにつれて、膨潤し始める。ヒドロゲルの場合には、この膨潤が非常に顕著である。典型的に、薬物若しくは電解質溜めは電極に直接接触するか又はイオン的導電性(ionically conductive)接着剤の薄層を介して接触する。電極は典型的に金属(例えば、バッキング層に付着した金属ホイル若しくは金属薄層)又は導電性フィラーを含む疎水性ポリマー(例えば、炭素繊維及び/又は金属粒子を負荷した疎水性ポリマー)から成る。親水性薬物と電解質溜めとは異なり、電極は水を吸収せず、膨潤しない。親水性溜めと電極又はイオン的導電性接着剤との異なる膨潤性はそれらの接触面に沿った剪断(shearing)を生ずる。厳しい場合には、この剪断は電極層と溜め層との間の電気的接触の完全な欠損を生ずることがあり、作用不能なデバイスを生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、最初は非水和形で製造されるが、身体に装着する前に迅速に水和することができる電極アセンブリを備えたイオン導入投与デバイスを提供することが、本発明の目的である。
【0020】
イオン導入投与デバイスの“開始”遅延を最小にするために、イオン導入投与デバイスの電極アセンブリの改良された迅速水和方法を提供することが、本発明のもう一つの目的である。
【0021】
実際に使用する前に偶然によって水和されることがあり得ないイオン導入投与デバイスを提供することが、本発明のさらに他の目的である。
イオン導入薬剤投与デバイスと、デバイスをパッケージから取り出すこと以外に使用者側に特別な労力又は関与を要求しない、同デバイスの“自動”水和方法とを提供することが、本発明のさらに他の目的である。
【0022】
上記その他の目的は、電気的駆動(electrically powered)イオン導入作用剤投与デバイスと同デバイスの水和方法とによって満たされる。この投与デバイスは少なくとも1つの乾燥状態電極アセンブリと、この電極アセンブリに電気的に結合した電力源とを含む。この電極アセンブリは投与すべき作用剤を含むのに適した、実質的に非水和形の水和可能なマトリックスから成る作用剤溜めを含む。この電極アセンブリは、体表を通して作用剤を電気的補助投与するために、体表(例えば、無傷の皮膚若しくは粘膜)に作用剤伝達関係に置かれるのに適する。この電極アセンブリは電力源と作用剤溜めとの両方と電気的に接触する電極をも含む。電極アセンブリは実質的に非水和形の作用剤溜めマトリックスを水和するための液体を含む容器を有する。この容器壁の少なくとも一部は液体不透性物質から成り、液体を放出するために破壊される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の1実施態様によると、この液体不透性物質は引き裂く又は破ることができる。該液体不透性物質に付着した1部分と電極アセンブリから外方に伸びる他の部分とを有する引張りタブを備える。液体不透性物質に対してこのタブを引っ張ると、この物質は避けるか又は破れ、それによって容器から液体が放出される。この電極アセンブリは容器から放出される液体の流れを実質的に非水和形のマトリックスに向けるための液体の流れ制御手段をも有する。電極アセンブリはタブを引っ張って、液体不透性物質を引き裂くか又は破り、それによって液体を容器から放出することによって活性化(すなわち、水和)される。放出された液体は次に非水和形マトリックス中に流入する。
【0024】
好ましくは、このタブをデバイスが含まれるパッケージに取り付ける。電極アセンブリをパッケージから取り出すときに、タブが液体不透性物質に対して引っ張られる。したがって、パッケージから電極アセンブリを取り出す作用が“自動的に”電極アセンブリを水和し、活性化する。或いは、電極アセンブリの皮膚接触面を覆う剥離ライナー(release liner)にタブを取り付ける。剥離ライナーを電極アセンブリから除去するときに、タブが液体不透性物質に対して引っ張られる。このようにして、剥離ライナーを除去する作用が“自動的に”電極アセンブリを水和し、活性化する。
【0025】
本発明の他の実施態様によると、密封容器内の圧力が所定レベルに達すると、液体不透性物質が破裂する。デバイスは、内部に圧縮帯を有するパッケージ内に含まれる。デバイスをパッケージから取り出すときに、密封容器が圧縮帯によって押されて、密封容器内の圧力が所定レベルを越えて上昇し、それによって液体不透性物質が破裂して、水和用液体を放出する。
【0026】
さらに他の実施態様では、乾燥状態電極アセンブリに水和用液体とパンチとの両方を含む密封フレキシブルポウチを備える。パンチはブレードを有し、活性化時に、このブレードがポウチに穿孔して、ポウチから非水和形作用剤溜めマトリックスまでの液体流路を形成する。該ポウチに不注意によって与えられる圧力によるブレードの偶発的な活性化を阻止するための手段を備える。
【0027】
さらに他の態様では、乾燥状態電極アセンブリに水和用液体を含む密封容器を備える。容器と非水和形溜めとの間にはパンチを配置する。このパンチは少なくとも1個のブレードを有し、活性化時に、このブレードが容器壁に穿孔して、それによって該密封容器から液体を放出させる。該パンチは放出液体をパンチから水和可能な溜め中に流動させる開放構造を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は体表100(例えば、無傷の皮膚若しくは粘膜)を通して有効剤を投与するためのイオン導入投与デバイス10の側断面である。イオン導入投与デバイス10はドナー電極アセンブリ8とカウンター電極アセンブリ9を含む。ドナー電極アセンブリ8とカウンター電極アセンブリ9とは絶縁体19によって分離される。絶縁体19は、電極アセンブリ8と9の間の直接の電気移動及び/又はイオン移動を防止することによって(すなわち、身体を通過するイオンとしての電流なしに)、電極アセンブリ8と9が身体に短絡することを阻止する。デバイス10が体表(例えば、皮膚)100上に存在するときに、例えばバス(bath)の水のような流体による溜め15と16の汚染を防止するために、電極アセンブリ8と9(図1に図示)の外周に絶縁体19を任意に備えることができる。絶縁体19は好ましくは、イオンと水の両方の通過に対して不透性である疎水性非導電性ポリマー物質から形成する。好ましい絶縁物質には、無孔質エチレン−酢酸ビニル、ポリイソプレン、ポリプロピレン、イソプレンとプロピレンとのコポリマー、及び一般に独立気泡型の発泡プラスチックがある。
【0029】
電極アセンブリ8と9は、例えば金属ホイル、ワイヤ、印刷回路又は導電性膜のような周知の電気的導体(図示せず)を用いて、電力源に直列に接続する。電力源と電気的導体とを膜14として概略的に示す。デバイス10を駆動するために用いられる電力源は典型的に、1個以上の低電圧(例えば、1〜3voltボタン電池(button cell)電池である。フレキシブルで水不透性のハウジング13が、要素14をその関連電気的要素と共に含むデバイス10の頂部を覆う。
【0030】
ドナー電極アセンブリ8は電極11と溜め15を含む。溜め15はデバイス10によってイオン導入投与すべき有効剤を含む。作用剤を体表100に投与する速度を制御するか又は、デバイスを停止させたときに体表100への作用剤投与を制限するために、速度制御膜(図示せず)を任意に溜め15と体表100との間に配置することができる。カウンター電極アセンブリ9は電極アセンブリ8から離れた位置で体表100に接触する。カウンター電極アセンブリ9は電極12と溜め16とを含む。溜め16は電解質(例えば、水溶性電解質塩)を含む。
【0031】
イオン導入投与デバイス10は体表100に、イオン導入投与デバイスを体表に装着するための公知手段を用いて付着させることができる。例えば、デバイス10は溜め15と16の身体側の面(body-facing surface)に塗布したイオン伝導性接着剤層によって体表100に接着することができる。或いは、デバイス10は接着性オーバーレイを用いて体表100に接着することができる。受動的経皮投与デバイスを皮膚に固定するために用いられる通常の接着性オーバーレイのいずれも使用可能である。さらにまた、溜め15と16の粘着性溜めマトリックス物質の使用によって又は粘着性絶縁体19の使用によって、デバイス10を体表100に接着することができる。さらにまた、デバイス10は体表100にストラップ又は弾性バンド(例えば、腕又は脚のような身体部分を巻くストラップ又はバンド)によってイオン伝導関係で固定することができる。
【0032】
デバイス10が貯蔵中であるときに、デバイスは閉じた回路を形成しな.いので、電流は流れない。デバイス10を患者の皮膚又は粘膜に置き、電極アセンブリ8と9が充分に水和されて、イオンが電極アセンブリ8と9の種々な層を通って流れる場合には、電極間の回路は閉ざされ、電力源はデバイスと患者の身体とを通して電流を供給し始める。ドナー電極アセンブリ8とカウンター電極アセンブリ9とは通常、除去可能な剥離ライナー(図示せず)を含み、これは電極アセンブリ8と9を体表100に装着する前に除去される。
【0033】
ドナー電極アセンブリ8は電極11と密封液体含有容器若しくはポウチ21との間に配置された液体ウィッキング(liquid-wicking)物質の任意の層17を含む。ポウチ21の壁23は液体不透性物質、好ましくは、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン又は金属ホイル(例えばアルミニウムホイル)のような、フレキシブルなシート物質から形成される。ポウチ21はウィッキング層に隣接する面に沿って、シート形状で示される液体不透性物質25によってシールされる。ポウチ21から液体20を放出するためには、以下に述べるように、シート25が破壊される。
【0034】
ドナー電極アセンブリ8と同様に、カウンター電極アセンブリ9も、液体20を含む密封容器若しくはポウチ22を有する。電極12とポウチ22の間には任意の液体ウィッキング層18を備える。ポウチ21と同様に、ポウチ24の壁24も液体不透性物質、好ましくは、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン又は金属ホイル(例えばアルミニウムホイル)のような、フレキシブルなシート物質から形成される。ポウチ21及び22に含まれる液体20は典型的には水であるが、非水性液体を含む他の液体も使用可能である。ポウチ22はウィッキング層に隣接する面に沿って、シート形状で示される液体不透性物質26によってシールされる。シート25と同様に、シート26も破壊されることができる。
【0035】
図1に示した実施態樺では、シート25と26は引き裂かれる又は破られることができ、好ましくは、約0.2〜2.3kgの範囲内の引裂き強さを有する。最も好ましくは、シート25と26は例えばポリマー膜、金属ホイル、金属化ポリマー膜(例えば、ポリマー膜上に付着した金属及び金属ホイル/ポリマー膜ラミネート)のような、薄い水不透性膜若しくはホイルから構成される。図1と3に最も良く示されるように、引張りタブ27をシート25に取り付ける。同様に、引張りタブ28をシート26に取り付ける。図2に最も良く示すように、引張りタブ27と28の各々をそれ自体の上に折り重ねられ、デバイス10の周囲を越えて伸びる、握り可能な端部を有する。引張りタブ27と28を引っ張る又は引張りタブ27と28に他のやり方で引張り応力を与えるときに、タブ27と28をシート25と26に取り付けた部分に沿ってシート25と26の物質が破損し、引き裂かれ又は破れるように、シート25と26の物質の引裂き強さよりも大きい強度を有するように、引張りタブ27と28をシート25と26にそれぞれ取り付ける。必要な場合には、シート25と26を確実に適当に引き裂くために、引張りタブ27と28をシート25と26にそれぞれ取り付ける部分においてシート25と26を意図的に弱めることができる。
【0036】
引張りタブ27と28は先行技術の水和可能なデバイスに見られない重要な利益を与える。例えばコンノ等の米国特許第4,842,577号に開示されるデバイスのようなデバイスでは、水溜めと電極の非水和形部分との間のシールが電極の製造、包装及び/又は取り扱い中に水溜め中に及ぼされる偶発的な力のために偶然に破壊する傾向がある。本発明の設計では、液体20はタブ27と28を握って、引っ張る作用によってのみ放出されるので、この問題は解消されている。タブ27と28を引っ張る作用はデバイス10の活性化(すなわち、水和)のために使用者側に意図的な作用を要求する。デバイス内のシールを破壊するためにデバイスの外部に圧力を与えることによって活性化されるデバイスに比べて、デバイスが不注意によって活性化されることはあり得ない。したがって、タブ27と28によって要求される引張りはデバイス10に偶然に与えられる圧力によって生ずる下方の電極アセンブリの偶発的な水和を防止するために役立つ。このように、本発明の設計はコンノ等によって開示された改良を凌駕する重要な改良を生ずる。
【0037】
投与デバイス10を活性化するためには、溜め15と16(並びに任意のイオン伝導性膜及び/又は電極アセンブリ8と9内の接着性層)は、イオン導入によって作用剤を通過させることができるほど、充分に水和されなければならない。溜め層15と16、並びに任意の膜及び/又は接着性層を水和するために、ポウチ21と22内に含まれる液体20を放出して、それぞれ、電極アセンブリ8と9の非水和形部分中に流入させなければならない。図1に示す矢印の方向に引張りタブ27を握うて、引っ張ることによって、ポウチ21中の液体20が放出される。タブ27を引っ張ると、シート25の破れが生じ、それによって液体20がウィッキング層17中に放出される。液体20は層17によって迅速に吸収され、電極11の上面全体を横切って流れる。同様に、溜め層16の非水和形マトリックスを水和するためには、図1と3に示す矢印の方向に引張りタブ28を握って、引っ張ることによって、ポウチ22から液体20が放出される。タブ28を引っ張ると、シート26の破れが生じ、それによって液体20がウィッキング層18中に放出される。液体20は層18によって迅速に吸収され、電極12の上面全体を横切って流れる。任意のウィッキング層17と18は例えば綿、スポンジ、三酢酸セルロース、レーヨン、ポリエステル、親水性ポリマー樹脂等及びこれらのブレンドのような液体ウィッキング物質から構成することができる。ウィッキング物質としては、好ましくは親水性面を生ずるように処理され、繊維束(collection of fibers)に水を吸着させ、繊維自体中には水を殆ど又は全く吸収させずに毛管作用によって輸送する、例えばポリプロピレン又はポリエステル繊維のような疎水性樹脂繊維も適当である。湿潤可能な面を生ずるように処理された疎水性ポリエステル繊維の例は、Coolmax(登録商標)とThermax(登録商標)であり、両方ともイー.アイ.デュポン デ ネマース アンド カンパニー(E. I. DuPont de Nemours and Company)(デラウェア州,ウィルミントン)によって販売される。CoolmaxとThermax繊維並びに湿潤可能なポリプロピレン繊維及び他の表面一湿潤可能な疎水性繊維が特に効果的なウィッキング物質であり、繊維の表面に沿って、繊維自体内に多くの水を保持することなく、繊維間のスペースにおいて水を輸送する。
【0038】
ウィッキング層17と18の代替え手段として、特に電極11と12が親水性水運搬添加剤(water-conveying additive)を含む固体ポリマーマトリックスから構成される場合に、電極11と12の上面に複数個の液体運搬みぞを備えることができる。複数個の液体運搬みぞの代替え手段として、実質的に任意の幾何学的形状の、複数個の小さい山と谷を形成するために、電極11と12の上面を実質的に任意の公知の方法で組織化する(textured)ことができる(例えば、粗面化表面)。これらの小さい谷は電極11と12の全面を横切って水を運搬する。
【0039】
電極11と12はそれぞれ液体20を通過させて、それぞれ非水和形溜め15と16中、及び存在する任意の膜及び/又は接着性層中に流入させ、それによってそれぞれ電極アセンブリ8と9を水和し、活性化する。電極11と12はそれぞれ、それらを通して、少なくとも1つの液体運搬路を有して、それぞれポウチ21と22から放出される液体20を溜め15と16の非水和形マトリックスに流入させる。例えば、電極11と12は、それを通して1個以上の液体運搬孔を有するプレート(図示せず)形状の金属から形成することができる。或いは、電極11と12は金属スクリーン(図示せず)から形成することができる。しかし、最も好ましくは、電極11と12は導電性充填剤(例えば炭素繊維又は金属粉末)と液体運搬添加剤、最も好ましくは親水性水運搬添加剤との両方を含む固体ポリマーマトリックスの形状である。
【0040】
作用剤(すなわち、薬物及び/又は電解質塩)は水和前の非水和形の溜め15と16中に含めることができるか、又は水和時に液体20と共に非水和形溜め15と16に加えることができる、しかし、水和用液体20の存在下で不安定である作用剤の場合には、薬物が水和前の非水和形溜め15中に存在することが好ましい。非水和形溜め15が投与すべき作用剤を既に含む場合には、液体20が脱イオン水を含むことが好ましい。非水和形溜め15と16が最初は作用剤を含まない場合には、液体20が作用剤又は電解質塩の水溶液又は懸濁液を含むことが好ましい。最も好ましくは、溜め15と16がそれぞれ親水性ポリマーから構成される。
【0041】
大抵の場合には、ポウチ21と22中に含まれる液体20は少なくとも一部は水から構成される。しかし、溜め15と16を例えばアルコールとグリコールのような非水性液体を含む他の液体を用いて“水和する”ことは、充分に本発明の範囲内である。したがって、ここで用いるかぎり、“水和する”なる用語はポウチ21と22からの水性又は非水性液体の放出を意味する。さらに、非水和形溜め15及び/又は16が最初に薬物又は電解質を含まないような場合には、水和用液体20が薬物又は電解質の液体溶液又は懸濁液を含むことができる。液体20は例えば防腐剤、微生物増殖を抑制する作用剤又は皮膚を通る薬物の経皮流動を強化する作用剤(例えば、1種以上の界面活性剤)及びこれらの作用剤の組合せのような、他の添加剤をも含むことができる。液体が水から成る典型的な場合には、溜め15と16のマトリックスは少なくとも部分的に、例えば親水性ポリマー、セルローススポンジ若しくはパッド、又は他の水分保持物質から構成される。最も好ましくは、溜め15と16は以下に述べる種類の親水性ポリマーから構成される。
【0042】
本発明によると、電極アセンブリ8と9の少なくとも一方、好ましくは電極アセンブリ8と9の両方が最初は実質的に乾燥状態である。したがって、電極アセンブリ8と9を構成する種々なイオン伝導層は最初は非水和状態である。ここで用いるかぎり、“乾燥状態”及び“非水和形”なる用語は、特定の層がイオンを通過させるためには不充分な量の液体を含むことを意味する。例えば、ドナー電極アセンブリ8のイオン伝導層は溜め15と任意の接着性及び/又は膜層とを含む。電極11はその組成に依存してイオン伝導性でもありうる、例えば、電極11が金属ホイルである場合には、これは導電性(すなわち、電子伝導性)であるが、イオン伝導性ではない。しかし、電極11が金属粒子を負荷された親水性ポリマーマトリックス(例えばポリビニルピロリドン)から構成される場合には、電極11はイオン伝導性でもある。ドナー電極アセンブリ8が“乾燥状態”電極アセンブリと見なされるためには、電極アセンブリ内の溜め15と他のイオン伝4導性層とが最初、イオンを効果的に通過させるためには不充分な量の液体を含む。同様に、カウンター電極アセンブリ9が“乾燦状態”電極アセンブリと見なされるためには、電極アセンブリ9内の溜め16と他のイオン伝導性層は最初に、イオンを効果的に通過させるためには不充分な量の液体を含む。“非水和形”と見なされるためには、溜め層15と16は約10重量%未満の液体、好ましくは約5重量%未満の液体、最も好ましくは、約1重量%未満の液体を最初に含むべきである。
【0043】
図4〜8では、本発明によるイオン導入作用剤投与デバイス(数字30によって指定)の代替え実施態様を示す。デバイス30はパッケージ32内に保持される。引張りタブ37と38を、図1で説明するデバイス10に示す方法と同様な方法で、それぞれシート25と26(図4〜8に図示せず)に取り付ける。シート25と26は引き裂く又は破ることができる物質から製造する。引張りタブ37と38(図4〜8)は引張りタブ27と28(図1〜3)とは、次の点で異なる。引張りタブ27と28はそれぞれ、使用者が握って、引っ張るために適した端部を有する(図10参照)。しかし、デバイス30では、タブ37と38は握って、引っ張るために適さない。その代わりに、タブ37と38はパッケージ32に取り付けられる。図6と7に最も良く示されるように、個々のタブ37と38の端部は一体(integral)タブ要素39になる。タブ要素39はパッケージ32に取り付けられる(例えば、接着剤接着、ヒートシーリング又は機械的接着(例えばカスガイ止め)によって)。図5と6に最も良く示されるように、パッケージ32はポケット33を有し、その中にデバイス30が入る。ポケット33は折り曲げ線35に沿ってクロージャー(closure)要素34を広げることによって開くことができる。デバイス30を握って、図6、7及び8に示す矢印方向に引っ張ることによって、デバイス30はポケット33から取り出される。タブ要素39はパッケージ32に取り付けられているので、ポケット33からのデバイス30の取り出しが自動的に、タブ37と38をデバイス30に対して引っ張ることになり、ポウチ21と22をそれぞれシールする液体不透性シート25と26を引き裂くか又は破ることになる。このようにして、デバイス30の乾燥状態電極アセンブリはパッケージ32からのデバイス30の取り出し作用によって自動的に水和される。
【0044】
図9では、本発明によるイオン導入作用剤投与デバイス(数字40によって指定)の他の実施態様を示す。図4〜8に示すデバイス30と同様に、デバイス40もパッケージ42からの取り出し時に自動的に水和される。デバイス40はフレキシブル壁23を有する液体含有ポウチ21を有する。例えば、フレキシブル壁23は任意の液体不透性、成形可能なフレキシブル膜又はホイルから構成することができ、好ましくはポリエチレン若しくはポリプロピレンフィルム又は軟質の成形可能なアルミニウムホイルから形成される。ポウチ21はウィッキング層17に隣接する面に沿って、シート形状で示す液体不透性物質45によってシールされる。シート45は、密封容器21内の圧力が所定レベルに達したときに、破裂するように設計される。例えば、シート45は金属ホイルから形成することができ、好ましくは脆いアルミニウムホイル、最も好ましくは、ホイルの水誘導劣化に耐える及び/又は壁23の物質とヒートシールされることができる物質によってその内面を処理された脆いアルミニウムホイルによって形成される。
【0045】
パッケージ42は例えば厚紙、ボール紙、硬質プラスチック等のような、比較的硬質の物質から構成される。パッケージ42の上部壁は任意に、ポウチ21の形状に密接に適応する隆起部分41を任意に有する。或いは、パッケージ42の内部に達する突起44を備えることができる。パッケージ42は(1)パッケージ42の底部に連結した部分21のネックダウン部、(2)パッケージ42の頂部と突起44、又は(3)上記(1)と(2)の組合せのいずれかによって形成される圧縮帯46を有する。部分41と突起44を、いずれか単独で又は組合せて、用いて圧縮帯46を形成することができることは、当業者が容易に理解するであろう。圧縮帯46を形成するためのパッケージ42の多くの付加的形状は、本明細書の教示を考慮するならば、明らかであろう。パッケージ42内でのデバイス40の貯蔵中に、ポウチ21は圧縮帯46の外部に置かれる。圧縮帯46はパッケージ42内のポウチ21の“貯蔵”位置とパッケージ42の開口43との間に置かれる。
【0046】
デバイス40を活性化するために、デバイス40はパッケージ42から矢印方向に滑り出て、ポウチ21を圧縮帯46中に押し込む。ポウチ21が圧縮帯46に直面すると、ポウチは圧搾されて、それによってポウチ21内の圧力が少なくとも所定レベル程度の大きさのレベルに上昇し、それによってシート45は破裂する。ひと度破裂すると、ポウチ21内の液体20は任意のウィッキング層17中に放出され、電極11を通って、デバイス10と同様に、溜め15の非水和形マトリックス中に放出される。デバイス40は、乾燥作用剤溜め15の他に、イオン伝導性接着剤の非水和層47をも含む。剥離ライナー48をデバイス40の底面に備えるが、これは体表にデバイス40を配置する直前に除去するのに適する。
【0047】
図10〜12では、イオン導入投与デバイスの非水和形溜めマトリックスを水和するために用いられるポウチ形状の液体含有容器の他の実施態様を説明する。図10では、水和用液体20を含む密封ポウチ50を説明する。ポウチ50の壁は例えばポリエチレン、ポリプロピレン又は、ミネソタ マイニング アンド マニュファクチャーリング社(Minnesota Mining and Manufacturing C.)(ミネソタ州,セントポール)から販売されるMedpar(登録商標)のような、ポリエステル/ホイルラミネートのような、フレキシブルなシート材料から形成される。パンチ60はポウチ50内に配置される。図10と11では、パンチ60は上方の、使用準備位置にあるが、図12では、パンチ60は下方の、活性化位置に示される。或いは、2個以上のパンヂ60をポウチ50内に含めることができる。
【0048】
次に図11に関しては、パンチ60はプランジャー62とスタンド64とから成る。プランジャー62は“+”形状の断面を有するブレード63を含む。ブレード63の周囲には、複数個の間隔を置いたプロング(prong)66が配置され、各プロングは1対の間隔を置いた隆起縁67と68を有する。スタンド64はスロット61を含む環状形を有し、図12における液体流矢印が示すように、スロット61はブレード63によって形成される孔への液体20の流入を可能にする。スタンド64は内側に突出するリップ65をも有する。リップ65はプロング66と係合する形状であり、図11に示すように、リップ65は縁67と68の間に挿入される。図12における矢印が示すように、ポウチ50の頂部が圧縮されるときに、ポウチ50の壁に穿孔するために充分な強度を有する任意の硬質物質から、ブレード63を製造することができる。好ましくは、パンチ60を例えばポリカーボネート、ポリスルホン又は硬質ポリ塩化ビニルのような硬質ポリマー物質から構成する。プランジャー62がスタシド64中に押しこまれると、縁67がリップ65を越えて押し込まれる。最終的には、ブレード63がポウチ50の底部壁を切って通り、イオン導入投与デバイス内の種々な上部層を貫通して、図12に最も良く示されるように、ブレード63の先端はウィッキング物質17中に達する。ポウチ50内の液体はスロリト61を通り、ブレード63の“+”形状断面の開放面積(open area)に沿って、任意のウィッキング層17中へ放出され、ウィッキング層17は非水和形溜め15の上面全体に該液体を流す(wick)。
【0049】
1個以上の液体含有ポウチ50を有する乾燥状態イオン導入投与デバイスを、圧縮帯46を有する、図9に示したタイプのパッケージと組合せて用いることができる。圧縮帯46の外側にポウチ50を配置して、デバイスをパッケージ内に保持することができる。デバイスをパッケージから取り出すときに、ポウチ50は圧縮帯46に押し通されて、フレキシブルポウチ50が圧縮され、それによって、プランジャー62がスタンド64に押し込まれることによって、パンチ60が活性化される。
【0050】
或いは、使用者に通常の指圧によってポウチ50の頂部を押圧させることによって、パンチ60を活性化することができる。
リップ65は間隔を置いた縁67と68と共に、先行技術の水和可能なデバイスに見られない重要な利益を与える。コンノ等の米国特許第4,842,577号に開示されたようなデバイスでは、水溜めと電極の非水和形部分との間のシールが電極の製造、包装及び/又は取り扱い中に偶然に破壊する傾向がある。本発明の設計では、ポウチ50に及ぼされる僅かな圧力がプランジャー62をスタンド64に押し込む傾向があるが、この圧力はリップ65と縁67の相互作用によって生ずる抵抗を克服するには不充分であり、ポウチ50に偶然に与えられる圧力によって惹起される下方の電極アセンブリの偶発的な水和を防止するので、この問題は解消されている。したがって、本発明の設計はコンノ等によって開示された改良を凌駕する重要な改良を生ずる。
【0051】
図13〜14では、イオン導入投与デバイスの非水和形溜めマトリックスを水和するために用いられるポウチ形状の液体含有容器の他の実施態様を説明する。図13では、水和用液体20を含む密封ポウチ50を説明する。ポウチ50の壁は例えばポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエステル/ホイルラミネート(例えば、Medpar(登録商標))のような、フレキシブルなシート材料から形成される。ポウチ50の下方には、パンチ70が配置される。図13では、パンチ70は使用準備位置にあるが、図14では、パンチ70は活性化位置に示される。パンチ70の上面は図15に示すが、図13に示すパンチ70の図は図15のラインXIII−XIIIに沿った断面図である。パンチ70は複数個(例えば、4個)のバイアスド(biased)ブレード72、73、74及び75を有する環状要素71から成り、各斜めブレードは要素71から内側に半径方向に伸びる。要素71とブレード72、73、74及び75は単独一体要素から形成されるか、或いはブレード72、73、74及び75を別々に形成して、後に適当な手段によって要素71に取り付けることができる。例えば、要素71と、ブレード72、73、74及び75を金属から形成し、ブレードを例えば溶接によって要素71に取り付けることができる。或いは、パンチ70を金属スタンピング(stamping)操作によって形成することができる。さらに、或いは、要素71とブレード72、73、74及び75は、例えばABSコポリマー、ポリアミド又はナイロンのような適当なポリマーを成形することによって形成される単独一体ピースであることができる。
【0052】
図13に最も良く示されるように、ブレード72〜75の各々は複数のベンド(bend)76〜78をブレード中に有する。ベンド78はベンド76と77よりも実質的に低フレキシブルであり、そのため、ベンド78はブレード72〜75の頂部に下向き圧力が加えられるときにまっすぐにならない。さらに、各ブレードは自由端部を有し、この自由端部は一般にポウチ50の底部を指す方向に配向する。図14の矢印が示すように、ポウチ50の頂部に圧力が加えられるときに、ポウチ50はブレード72、73、74及び75を下方に押圧する。この下向き圧力がブレード72と73の高フレキシブルベンド76と77をまっすぐにし、ブレード72〜75を押圧して、図14に示す形状にする。容易に理解されるように、ブレード72〜75の自然のバイアスはブレードの自由端部(好ましくは鋭利にして、それらがバッキング層52とポウチ50に穿孔する可能性を強化する)を上方に伸ばさせ、最後にはバッキング層とポウチ50の底部壁とに穿孔させ、それらを通る孔51を形成する。孔51がひと度形成されたならば、ポウチ50内9液体20がポウチ50から流出し、孔51を通り、環状要素71の開放基部(open base)を通って、ウィッキシグ層17中に流入する。
【0053】
液体含有ポウチ50とパンチ70とを有する乾燥状態イオン導入投与デバイスを、圧縮帯46を有する、図9に示したタイプのパッケージと組合せて用いることができる。圧縮帯46の外側にポウチ50を配置して、デバイスをパッケージ内に保持することができる。デバイスをパッケージから取り出すときに、ポウチ50が圧縮帯46に押し通されて、フレキシブルポウチ50が圧縮され、それによって、ブレード72〜75を押圧して、ポウチ50の下側に穿孔させることによって、パンチ70が活性化される。或いは、デバイスの使用前に、使用者に通常の指圧によってポウチ50の頂部を押圧させることによって、パンチ70を活性化することができる。
【0054】
図16と17では、パッケージからの取り出し時に自動的に水和される、他のイオン導入投与デバイスを示す。パッケージ90はトレー92と蓋94とから成る。蓋94には、開口95〜99が存在する。トレー92には4個のスロット93が存在する。図16に示すように、2個のストリップ81と82を蓋94に備える。ストリップ81は2端部を有し、各端部はスロット93と係合する。同様に、ストリップ82は2端部を有し、各端部はトレー92(図16には図示せず)中の他のスロット93と係合する。ストリップ81は開口96と97を通り(threaded)、スロット88を経由して、ポウチ50上で開口95を横切って通る。同様に、ストリップ82は開口98と99を通り、スロット89を経由して、第2ポウチ50上で開口95を横切って通る。
【0055】
貯蔵条件下で、ストリップ81と82の端部はスロット93中に達し、それによって、蓋94をトレー92内に固定する。
蓋94を除去するためには、図17に最も良く示されるように、ストリップ81と82を開口95領域において押し下げなければならない。ストリップ81と82の押し下げはトレー92の同じ面に存在するスロット93の少なくとも2個からストリップを引き出すことになり、好ましくは、図16の矢印によって最も良く示されるように、トレー92の両側の4個のスロット93の全てからストリップを引き出す。さらに、開口95の領域におけるストリップ81と82の押し下げはポウチ50に圧力を及ぼすことになり、ポウチ50を破壊し、前述した方法と一致する方法で、デバイス80の非水和形部分に水を放出する。当業者によって理解されるように、パッケージ90はパッケージ90からのデバイス80の取り出し時に、デバイス80を自動的に水和する手段を与える。
【0056】
図18では、他のイオン導入投与デバイス110を示す。図1に示したデバイス10と同様に、デバイス110は非水和形ドナー電極アセンブリ8と非水和形カウンター電極アセンブリ9とを含む。剥離ライナー112と113とがそれぞれ、ドナー電極アセンブリ8とカウンター電極アセンブリ9との皮膚接触面を被覆する。剥離ライナー112と113は典型的に、シリコン化ポリエステル物質から成る。剥離ライナー112の1端部はタブ27に固定付着させる。114と標識した領域において、例えば接着剤接着、スタンプリング等のような通常の手段(図示せず)を用いて、剥離ライナー112とタブ27とを相互に接着させる。同様に、通常の接着手段を用いて、領域115において剥離ライナー113をタブ28に接着させる。使用前に、患者又は医師が電極アセンブリ8と9の表面から、矢印によって示すように、剥離ライナー112、113をそれぞれ剥離する。電極アセンブリ8と9の皮膚接触面から剥離ライナー112、113がひと度剥離されたならば、患者又は医師は該剥離ライナーをさらにデバイス110から外方に引っ張って、タブ27と28をそれぞれポウチ21と22に対して引っ張らせる。この引張り作用は、図1に宗したデバイス10に関して述べた方法と同じ方法で、水含有ポウチ21と22を開放するばかりでなく、剥離ライナー112と113を除去するようにも作用する。デバイス110を体表の適所に固定することができる前には剥離ライナー112と113を最初に除去しなければならないので、この形態によって電極アセンブリは確実に水和され、したがって、デバイス110は身体に装着する前に活性化される。
【0057】
溜め15又はドナー電極アセンブリ8に関して用いる場合に、“作用剤”なる表現は有効剤を意味し、好ましくは、例えば皮膚又は粘膜のような体表を通して投与されることができるクラス内の、例えば薬物のような、有効剤を意味する。
【0058】
“作用剤”なる表現は、生活する生物に投与されて所望の、通常は有益な、効果を生ずる治療有効物質としてのそれらの広い解釈を有するように意図される。一般に、これは主要な治療分野の全てにおける治療剤を含み、限定する訳ではなく、例えば抗生物質と抗ウイルス剤のような抗感染薬、鎮痛薬と鎮痛複合薬、麻酔薬、食欲減退薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗痙撃薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、下痢止め、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗偏頭痛薬、乗り物酔い治療剤、抗おう吐薬、抗新生物薬、抗パーキンソン病薬、かゆみ止め、抗精神病薬、解熱薬、胃腸及び尿路を含む鎮痙薬、抗コリン作動薬、交感神経作用薬、キサンチン誘導体、カルシウムチャンネル遮断薬とべータ遮断薬とを含めた心血管系製剤、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、全身、冠状、末梢及び脳血管を含む血管拡張薬、中枢神経系刺激薬、咳き薬及び風邪薬、うっ血除去薬、診断薬、ホルモン、催眠薬、免疫抑制薬、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、副交感神経作用薬、蛋白質、ペプチド、精神刺激薬、鎮静薬及びトランキライザーを含む。
【0059】
本発明はまた、イオン導入法の実施のために必要な液体(例えば水)の存在下で不安定であり、加水分解、酸化、変性又は他の点で劣化する傾向を有する、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、高分子及び他の薬物の制御投与に特に有用である。例えば、エステル結合(すなわち、ステロイド)又はアミド結合(すなわち、ペプチド)を含む薬物は水中で加水分解する可能性がある。水の存在下で劣化する可能性がある薬物の特定の例には、カテコール(例えば、アポモルフィンとエピネフリン)、サルブタモール、スルフヒドリル(例えば、カプトプリル)、ニフェジピン及びペプチド(例えば、VIPとインシュリン)がある。
【0060】
本発明のデバイスを用いて投与することができる、他のペプチドと蛋白質の例には、限定する訳ではなく、LHRH、例えばブセレリン、ゴナドレリン、ナフレリン及びロイプロリドのようなLHRH類似体、GHRH、インシュリン、ヘパリン、カルシトニン、エンドルフィン、TRH、NT−36(化学名:N−[[(s)−4−オキソ−2−アゼチジニル]カルボニル]−L−ヒスチジル−L−プロリンアミド)、リプレシン、下垂体ホルモン(例えば、HGH,HMG,HCG,酢酸デスモプレッシン等)、卵胞ルテオイド、αANF、例えば成長因子放出因子(GFRF)、βMSH、ソマトスタチン、ブラディキニン、ソマトトロピン、血小板誘導成長因子、アスパルギナーゼ、硫酸ブレオマイシン、キモパパイン、コレシストキニン、絨毛性性腺刺激ホルモン、コルチコトロピン(ACTH)、エリスロポイエチン、エポプロステノール(血小板凝固阻害因子)、グルカゴン、ヒアルロニダーゼ、インターフェロン、インターロイキン−2、メノトロピン(ウロフォリトロピン(FSH)とLH)、オキシトシン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性因子、ウロキナーゼ、バソプレッシン、デスモプレッシン、ACTH類似体、ANP、ANPクリアランス阻害因子、アンギオテンシンIIアンタゴニスト、抗利尿ホルモンアゴニスト、抗利尿ホルモンアンタゴニスト、ブラディキニンアンタゴニスト、CD4、セレダーゼ、CSF類、エンケファリン、FABフラグメント、IgEペプチド抑制因子、IGF−1、神経栄養因子、上皮小体ホルモンとアゴニスト、上皮小体ホルモンアンタゴニスト、プロスタグランジンアンタゴニスト、ペンチゲチド、プロテインC、プロテインS、レニン阻害因子、チモシンα−1、血栓溶解薬、TNF、ワクチン、バソプレッシンアンタゴニスト類似体、α−1抗トリプシン(組換え体)がある。
【0061】
溜め層16及び/又はカウンター電極アセンブリ9に関して用いる場合に、“作用剤”なる表現は、任意の適当な、薬理学的に受容される電解質塩を意味する。該電解質塩がカウンター電極アセンブリ9を“水和する”ために用いる液体中に可溶であることが好ましい。適当な電解質塩には、例えば塩化ナトリウム、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、例えば塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、及び例えばアスコルビン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩及びこれらの混合物のような有機塩のような、水溶性の生体適合性塩がある。
【0062】
電極11と12は導電性であり、金属又は他の導電性物質から形成することができる。例えば、電極11と12は金属ホイル、金属スクリーン又は適当なバッキング上に付着した又は塗布した金属から形成することができる。適当な金属の例は銀、亜鉛、銀/塩化銀、アルミニウム、白金、ステンレス鋼、金及びチタンを含む。或いは、電極11と12は例えば金属粉末、粉状黒鉛、炭素繊維又は他の公知の導電性充填剤物質のような、導電性充填剤を含むポリマーマトリックスから形成することができる。ポリマーベースド電極は好ましい疎水性ポリマーマトリックス中に導電性充填剤を混合することによって製造することができる。例えば、亜鉛粉末、銀粉末、銀/塩化銀粉末、粉状炭素、炭素繊維及びこれらの混合物を疎水性ポリマー(例えば、エチレン−酢酸ビニルコポリマー)マトリックス中で混合することができ、導電性充填剤の好ましい量は約30〜90容量%の範囲内であり、残部は疎水性ポリマーマトリックスである。
【0063】
電極11と12を液体含有ポウチ21、22と非水和形溜め15、16の間にそれぞれ配置する場合には、電極11と12はポウチ21と22から放出された水和用液体をそれぞれ溜め15と16中に伝達することができるべきである。これは、他の点では固体の電極11と12を通る1個以上の液体伝導路を形成することによって達成することができる。或いは、電極11と12は金属メッシュの形状であってもよい。電極を導電性ポリマーを含む疎水性ポリマーマトリックスから形成する場合には、適当量(例えば、10〜40容量%)の親水性添加剤を加えることによってマトリックスを水透過性にすることがことができる。好ましい親水性添加剤には溜め15と16のマトリックスに用いた親水性ポリマーがある。
【0064】
図面に説明したデバイスでは、液体含有ポウチ21と22がデバイスの上面に配置されている。この位置では、ポウチ21と22から放出された液体を、電極層11と12をそれぞれ通って流れるように、制御しなければならない。したがって、図面に説明したデバイスでは、液体流制御手段が、水和用液体20に対して透過性であり、任意に液体20の流れをそれぞれ電極11と12の上面全体に均一に分配するウィッキング物質層17、18を有する“フロースルー(flow through)”電極として示されている。しかし、該液体含有ポウチ21と22を他の位置に、例えば投与デバイスの側縁に配置することも充分に本発明の範囲内であり、投与デバイスの側縁に配置した場合には、(1)電極11と12の“フロースルー”特徴と、(2)ウィッキング物質層17と18、のいずれか又は両方が不要になる。“液体流制御手段”なる用語がここでは、ポウチ21と22からデバイスの非水和形部分中へ放出される液体流を制御するための任意の手段を広範囲に定義するために用いられ、図面に示した“フロースルー”電極及びウィッキング物質に特に限定されないことを当業者は理解すると考えられる。
【0065】
電極11と12は層14中の電源に、例えばフレキシブル印刷回路、金属ホイル、ワイヤ又は直接接触によるような周知手段を用いて電気的に連結する。電源としての電池の代替え手段として、異なる電気化学的カップルから構成され、相互に電気的に接触して配置されるドナー電極11とカウンター電極12とによって形成されるガルバーニカップル(galvanic couple)によって、デバイス10を駆動することができる。カチオン作用剤を投与するための典型的なガルバーニカップルは亜鉛ドナー電極11と銀/塩化銀カウンター電極12とを含む。Zn−Ag/AgClガルバーニカップルは約1 voltの電位を与える。
【0066】
溜め15と16のマトリックスは、イオン導入法による作用剤の通過を可能にするために、その中に充分な量の液体を吸収し、維持するために適した任意の物質でよい。例えば、綿から製造されたガーゼ又は他の吸収性の布帛並びにパッド及びスポンジが、天然と合成の両方で、使用可能である。さらに好ましくは、溜め15と16のマトリックスは、少なくとも一部において、親水性ポリマー物質から構成される。最も好ましくは、溜め15と16のマトリックスは、少なくとも一部が親水性ポリマー物質から構成される固体ポリマーマトリックスである。天然及び合成の両方の親水性ポリマーが使用可能である。適当な親水性ポリマーは、例えば、デュポン デ ネマース社(デラウェア州,ウィルミントン)から販売されるHytrel(登録商標);ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、例えばユニオン カーバイド社(Union Carbide Corp.)によって製造されるPolyox(登録商標)のようなポリエチレンオキシド;ビーエフ グッドリッチ(BF Goodrich)(オハイオ州,アクロン)によって製造されるCarbopol(登録商標);例えばPolyoxとCarbopolとのブレンドのようなポリオキシエチレン又はポリエチレングリコールとポリアクリル酸とのブレンド、ポリアクリルアミド、Klucel(登録商標)、例えばセファデックス(Sephadex)[ファルマシア ファイン ケミカルス(Pharmacia Fine Chemicals),AB,スゥェーデン,アプサラ]のような架橋デキストラン、澱粉グラフト(アクリル酸ナトリウム−コ−アクリルアミド(Sodium acrylate-co-acrylamide))ポリマーであるWater Lock(登録商標)[グレイン プロセッシング社(Grain Processing Corp.)、アイオワ州,ムスカリン];例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース及び架橋Na−カルボキシメチルセルロース{例えばAc−Di−Sol[FMC社,ペンシルバニア州,フィラデルフィア]}のようなセルロース誘導体;例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート[ナショナル パテント デベロップ社(National Patent Develop Corp.)]のようなヒドロゲル、天然ガム、キトサン、ペクチン、澱粉、グァーガム、ローカストビーンガム(locust bean gum)等を、これらのブレンドと共に含む。
【0067】
任意に、溜め15と16のマトリックスは、溜め層15と16の隣接層(例えば、絶縁体26と27、電極i1と12並びに任意の膜及び/又は接着性層)への積層を強化するために、好ましくは熱融合性の疎水性ポリマーを含むこともできる。溜め層15と16のマトリックスに用いるために適した疎水性ポリマーには、限定する訳ではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン及びポリアルケン、ゴム、例えばKraton(登録商標)のようなコポリマー、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、例えばナイロンのようなポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、例えばアクリル酸若しくはメタクリル酸と、例えばn−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、r−メチルブタノール、1−メチルペンタノール、2−メチルペンタノール、3−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、イソオクタノール、n−デカノール又はn−ドデカノールのようなアルコールとのエステルのポリマーのようなアクリル樹脂若しくはメタクリル樹脂、単独又は例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルコキシメチルァクリルアミド、N−アルコキシメチルメタクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド及びイタコン酸のようなエチレン系不飽和モノマー、アルキル基が炭素数10〜24であるN−分枝アルキルマレアミド酸、グリコールジアクリレート及びこれらのブレンドと共重合したものがある。上記疎水性ポリマーの大部分は熱融合性である。これらの中で、エチレン−酢酸ビニルコポリマーが好ましい。
【0068】
薬物又は電解質が水和前の溜めマトリックス中に存在するときに、薬物又は電解質と親水性ポリマーマトリックスとの混和は例えば磨砕(milling)、押出し、又はホットメルト混合によって機械的に達成することができる。溜め15と16は、薬物と電解質の他に、例えば染料、顔料、不活性充填剤及び他の賦形剤のような、他の通常用いられる物質をも含むことができる。
【0069】
電極アセンブリ8と9の総皮膚接触面積は1cm2未満から200cm2を越えるまでの範囲であることができる。しかし、平均的なデバイス10は約5〜50cm2の範囲内の総皮膚接触面積を有する電極アセンブリを有する。
【0070】
本発明をこのように一般的に述べ、そのある一定の好ましい実施態様を詳細に説明したが、下記請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の種々な変更が当業者によってなされうることは容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明によるイオン導入薬物投与デバイスの断面図である。
【図2】図1に示したデバイスの平面図である。
【図3】図1におけるライン3−3に沿った、図1に示したデバイスの底面図である。
【図4】本発明の1実施態様によるイオン導入投与デバイスを保持するためのパッケージの側面図である。
【図5】図4に示したパッケージの正面図である。
【図6】図4と5に示した容器の正面図であり、イオン導入投与デバイスはファントムで示す。
【図7】説明のためにパッケージの一部を開いた、図4、5及び6に示したパッケージとイオン導入投与デバイスの透視図である。
【図8】図7のライン8−8に沿った、図7に示したパッケージとイオン導入投与デバイスの断面図である。
【図9】本発明の他の実施態様によるイオン導入投与デバイスとそのためのパッケージとの側断面図である。
【図10】本発明の他の実施態様によるイオン導入投与デバイスを水和するために有用な、流体溜め容器の透視図であり、一部はファントムで示す。
【図11】図10に示した流体溜め容器の側断面図であり、パンチは上方の、使用準備位置、すなわち下方の電極アセンブリを水和する前の位置にある。
【図12】図10と11に示す流体溜め容器の他の側断面図であり、下方の電極アセンブリを水和するための下方の、すなわち活性化位置にある。
【図13】流体溜め容器とイオン導入投与デバイスの一部の側断面図であり、代替えパンチは使用準備位置、すなわち下方の電極アセンブリを水和する前の位置にある。
【図14】図13に示した流体溜め容器とイオン導入投与デバイスの他の側断面図であり、パンチは下方の電極アセンブリを水和するための活性化位置にある。
【図15】図13と14に示したパンチの平面図である。
【図16】パッケージを開くときにデバイスを自動的に水和するための手段を備えたイオン導入投与デバイスのためのパッケージの透視図である。
【図17】は、ライン17−17に沿った、図16に示したパッケージとデバイスの断面図である。
【図18】本発明による他のイオン導入薬物投与デバイスの断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)体表を通して投与すべき薬剤を含むに適した溜めを有する電極アセンブリであって、該溜めが、実質的に水和されていない水和可能なマトリックスを含みそして電源に電気的に連結している、該電極アセンブリ、
(ii)該溜めを水和するための液体を含む密封容器であって、該容器の壁の少なくとも一部が液体不透性物質からなる、該容器、および
(iii)該容器から放出される液体の流れを水和されていない溜めのマトリックスへ導くための、該容器に付随する液体流案内手段、
を含む電気駆動式イオン導入薬物投与デバイスであって、
該容器は、前記デバイスに一体化されており、前記デバイスは、さらに下記特徴:
該液体不透性物質は裂くか又は破くことができるものであり、前記デバイスが該液体不透性物質に付着した部分を有するタブをさらに含み、そのために該タブを該液体不透性物質に対して引っ張ることによって、該液体不透性物質が裂かれる又は破かれて、該容器から該溜めマトリックス中に液体が放出される;
を有する、前記デバイス。
【請求項2】
(i)体表を通して投与すべき薬物を含むに適した溜めを有する電極アセンブリであって、該溜めが、実質的に水和されていない水和可能なマトリックスを含みそして電源に電気的に連結している、該電極アセンブリ、
(ii)該溜めを水和するための液体を含む密封容器であって、該容器の壁の少なくとも一部が液体不透性物質からなる、該容器、および
(iii)該容器から放出される液体の流れを水和されていない溜めのマトリックスへ導くための、該容器に付随する液体流案内手段、
を含む電気駆動式イオン導入作用剤投与デバイスであって、
該容器は、前記デバイスに一体化されており、前記デバイスは、さらに下記特徴:
該容器内にパンチが存在し、該パンチが該密封容器の該液体不透性物質を切断するためのブレードを有していて、該パンチが作用すると該密封容器から水和されていない溜め中に液体が放出され、該パンチが、該ブレードを非作用位置に維持して該ブレードの作用に予め定められた抵抗を与えるための要素をさらに有する;
を有する前記デバイス。
【請求項3】
(i)体表を通して投与すべき薬物を含むに適した溜めを有する電極アセンブリであって、該溜めが、実質的に水和されていない水和可能なマトリックスを含みそして電源に電気的に連結している、該電極アセンブリ、
(ii)該溜めを水和するための液体を含む密封容器であって、該容器の壁の少なくとも一部が液体不透性物質からなる、該容器、および
(iii)該容器から放出される液体の流れを水和されていない溜めのマトリックスへ導くための、容器に付随する液体流案内手段、
を含む電気駆動式イオン導入薬物投与デバイスであって、
該容器は、前記デバイスに一体化されており、前記デバイスは、さらに下記特徴:
該容器と水和されていない水和可能な該溜めとの間に位置したパンチを有し、該パンチは、該密封容器の該液体不透性物質を切断するためのブレードを有していて、該パンチが作用すると該密封容器から水和されていない該溜め中に液体を解放し、さらに該パンチは、解放された液体を、パンチを通って水和可能な溜め内に流すようにするための手段をさらに有する;
を有する前記デバイス。
【請求項4】
該ブレードが“+”形状断面を有する請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
該ブレードを非作用位置に維持するための要素がパンチスタンドである、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
該容器の圧縮によって該パンチが作用する、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項7】
該パンチが環状要素を含み、該環状要素が同環状要素から内側に半径方向に伸びる、複数個のバイアスドブレードを有する請求項3に記載のデバイス。
【請求項8】
該バイアスドブレードの各々がその中に複数のベンドを有し、このようなブレードの1つにおけるベンドの少なくとも1つが該ブレードにおける他のベンドよりも実質的に低フレキシブルである請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
該容器を該パンチに対して押圧することによって該パンチを作用させる、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項10】
該液体不浸透性物質が金属ホイル、ポリマーフィルム、金属被覆ポリマーフィルム及び金属ホイル/ポリマーフィルムラミネートから成る群から選択される請求項1〜9の何れかに記載のデバイス。
【請求項11】
該液体流案内手段が該密封容器と該溜めとの間に配置された液体ウィッキング物質を含む、請求項1〜9の何れかに記載のデバイス。
【請求項12】
該溜めが電流分配電極を通して電源に電気的に連結し、該液体流案内手段が電極を通る1個以上の液体運搬路を含む請求項1〜11の何れかに記載のデバイス。
【請求項13】
該溜めが電流分配電極を通して電源に電気的に連結し、該液体流案内手段が電極の表面の1個以上の液体運搬みぞを含む請求項1〜11の何れかに記載のデバイス。
【請求項14】
該溜めが電流分配電極を通して電源に電気的に連結し、電極が金属スクリーンを含む請求項1〜11の何れかに記載のデバイス。
【請求項15】
該溜めが電流分配電極を通して電源に電気的に連結し、電極が導電性充填材と約10〜50容量%の親水性運搬添加剤とを含む疎水性ポリマーマトリックスを含む請求項1〜11の何れかに記載のデバイス。
【請求項1】
(i)体表を通して投与すべき薬剤を含むに適した溜めを有する電極アセンブリであって、該溜めが、実質的に水和されていない水和可能なマトリックスを含みそして電源に電気的に連結している、該電極アセンブリ、
(ii)該溜めを水和するための液体を含む密封容器であって、該容器の壁の少なくとも一部が液体不透性物質からなる、該容器、および
(iii)該容器から放出される液体の流れを水和されていない溜めのマトリックスへ導くための、該容器に付随する液体流案内手段、
を含む電気駆動式イオン導入薬物投与デバイスであって、
該容器は、前記デバイスに一体化されており、前記デバイスは、さらに下記特徴:
該液体不透性物質は裂くか又は破くことができるものであり、前記デバイスが該液体不透性物質に付着した部分を有するタブをさらに含み、そのために該タブを該液体不透性物質に対して引っ張ることによって、該液体不透性物質が裂かれる又は破かれて、該容器から該溜めマトリックス中に液体が放出される;
を有する、前記デバイス。
【請求項2】
(i)体表を通して投与すべき薬物を含むに適した溜めを有する電極アセンブリであって、該溜めが、実質的に水和されていない水和可能なマトリックスを含みそして電源に電気的に連結している、該電極アセンブリ、
(ii)該溜めを水和するための液体を含む密封容器であって、該容器の壁の少なくとも一部が液体不透性物質からなる、該容器、および
(iii)該容器から放出される液体の流れを水和されていない溜めのマトリックスへ導くための、該容器に付随する液体流案内手段、
を含む電気駆動式イオン導入作用剤投与デバイスであって、
該容器は、前記デバイスに一体化されており、前記デバイスは、さらに下記特徴:
該容器内にパンチが存在し、該パンチが該密封容器の該液体不透性物質を切断するためのブレードを有していて、該パンチが作用すると該密封容器から水和されていない溜め中に液体が放出され、該パンチが、該ブレードを非作用位置に維持して該ブレードの作用に予め定められた抵抗を与えるための要素をさらに有する;
を有する前記デバイス。
【請求項3】
(i)体表を通して投与すべき薬物を含むに適した溜めを有する電極アセンブリであって、該溜めが、実質的に水和されていない水和可能なマトリックスを含みそして電源に電気的に連結している、該電極アセンブリ、
(ii)該溜めを水和するための液体を含む密封容器であって、該容器の壁の少なくとも一部が液体不透性物質からなる、該容器、および
(iii)該容器から放出される液体の流れを水和されていない溜めのマトリックスへ導くための、容器に付随する液体流案内手段、
を含む電気駆動式イオン導入薬物投与デバイスであって、
該容器は、前記デバイスに一体化されており、前記デバイスは、さらに下記特徴:
該容器と水和されていない水和可能な該溜めとの間に位置したパンチを有し、該パンチは、該密封容器の該液体不透性物質を切断するためのブレードを有していて、該パンチが作用すると該密封容器から水和されていない該溜め中に液体を解放し、さらに該パンチは、解放された液体を、パンチを通って水和可能な溜め内に流すようにするための手段をさらに有する;
を有する前記デバイス。
【請求項4】
該ブレードが“+”形状断面を有する請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項5】
該ブレードを非作用位置に維持するための要素がパンチスタンドである、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
該容器の圧縮によって該パンチが作用する、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項7】
該パンチが環状要素を含み、該環状要素が同環状要素から内側に半径方向に伸びる、複数個のバイアスドブレードを有する請求項3に記載のデバイス。
【請求項8】
該バイアスドブレードの各々がその中に複数のベンドを有し、このようなブレードの1つにおけるベンドの少なくとも1つが該ブレードにおける他のベンドよりも実質的に低フレキシブルである請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
該容器を該パンチに対して押圧することによって該パンチを作用させる、請求項2または3に記載のデバイス。
【請求項10】
該液体不浸透性物質が金属ホイル、ポリマーフィルム、金属被覆ポリマーフィルム及び金属ホイル/ポリマーフィルムラミネートから成る群から選択される請求項1〜9の何れかに記載のデバイス。
【請求項11】
該液体流案内手段が該密封容器と該溜めとの間に配置された液体ウィッキング物質を含む、請求項1〜9の何れかに記載のデバイス。
【請求項12】
該溜めが電流分配電極を通して電源に電気的に連結し、該液体流案内手段が電極を通る1個以上の液体運搬路を含む請求項1〜11の何れかに記載のデバイス。
【請求項13】
該溜めが電流分配電極を通して電源に電気的に連結し、該液体流案内手段が電極の表面の1個以上の液体運搬みぞを含む請求項1〜11の何れかに記載のデバイス。
【請求項14】
該溜めが電流分配電極を通して電源に電気的に連結し、電極が金属スクリーンを含む請求項1〜11の何れかに記載のデバイス。
【請求項15】
該溜めが電流分配電極を通して電源に電気的に連結し、電極が導電性充填材と約10〜50容量%の親水性運搬添加剤とを含む疎水性ポリマーマトリックスを含む請求項1〜11の何れかに記載のデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−255433(P2006−255433A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129009(P2006−129009)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【分割の表示】特願平6−500816の分割
【原出願日】平成5年6月1日(1993.6.1)
【出願人】(500498394)アルザ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【分割の表示】特願平6−500816の分割
【原出願日】平成5年6月1日(1993.6.1)
【出願人】(500498394)アルザ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
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