説明

イオン性有機化合物及びその製造方法、並びに該イオン性有機化合物からなるハイドロゲル化剤及びハイドロゲル

【課題】新規なイオン性有機化合物とその簡単な工程による製造方法を提供するとともに、得られたイオン性有機化合物からなるハイドロゲル化剤、及び該ハイドロゲル化剤を用いた水又は酸性水溶液を媒体とするハイドロゲルを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるイオン性有機化合物である。これらの化合物は、4級化可能な窒素原子を含む官能基を複数もつ化合物と反応活性なメチレン基を複数もつ化合物との縮合反応により得られる。得られたイオン性有機化合物は、ハイドロゲル化剤として、中性および酸性水溶液をゲル化することができる。
【化1】


(式中、Aはアミド基又はウレア基であり、2つのAは互いにベンゼン環のオルト、メタ又はパラ位に位置する。Bは、置換基を有してもよい炭素数3〜12の2価の炭化水素基であり、Xはハロゲンイオンを示す。そして、nは2〜30の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性有機化合物とその製造方法、並びに該イオン性有機化合物からなるハイドロゲル化剤及びハイドロゲルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゲルは、その構造・物性などの基礎研究から食料品、医療品、化粧品などへの応用研究など幅広い分野で展開され注目を浴びており、新規なゲル化剤の合成開発が盛んにおこなわれている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、酸性条件ではゲル化が困難であることや、多段階合成が必要などの問題点もあり、その克服が望まれている。
【特許文献1】特開2003−327949号公報
【特許文献2】特開2003−49154号公報
【特許文献1】特開2003−55642号公報
【0003】
この様な背景の中、本発明者らは、アミノピリジン類と活性メチレン基をもつ酸ハライドとの重縮合反応により、一段階で得られる電解質構造をもつ新規なイオン性有機オリゴマーが、水および酸性水溶液に対して、ゲル化剤として機能することを見出し先に提案した(特許文献4)。しかしながら該当化合物の合成法は、反応部位となるピリジル部位と活性メチレン部位が、一分子内に存在する必要があり、多様なイオン性有機化合物の合成を著しく制限している。
【特許文献4】WO 2006/082768 A1
【0004】
本発明は、上記化合物からの合成的拡張をおこなった結果得られた、共重合法による新規なイオン性有機化合物の合成とそれらイオン性有機化合物のハイドロゲル化剤としての利用に関するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なイオン性有機化合物とその簡単な工程による製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、得られたイオン性有機化合物からなるハイドロゲル化剤、及び該ハイドロゲル化剤を用いた水又は酸性水溶液を媒体とするハイドロゲルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、4級化可能な窒素原子を複数もつ化合物と反応活性なハロゲン化アルキル部位を複数もつ化合物との縮合反応により、一般式(1)で表されるイオン性有機化合物を合成したもので、つぎの1〜5の構成を採用する。
1.つぎの一般式(1)で表されるイオン性有機化合物。
【化1】

(式中、Aはアミド基又はウレア基であり、2つのAは互いにベンゼン環のオルト、メタ又はパラ位に位置する。Bは、置換基を有してもよい炭素数3〜12の2価の炭化水素基であり、Xはハロゲンイオンを示す。そして、nは2〜30の整数を示す。)
2.(A)N,N’-ジ(4-ピリジル)- 1,y-ベンゼンジカルボキサミド(yは2、3又は4である)又は1,z-ビス[N’-(4-ピリジル)ウレイド]ベンゼン(zは2、3又は4である)と、(B)置換基を有してもよい炭素数8〜12のジ(ハロアルキル)ベンゼン類又は置換基を有してもよい炭素数3〜12のジハロアルカン類を、縮合反応させることを特徴とする1に記載のイオン性有機化合物の製造方法。
3.縮合反応をジメチルホルムアミド中で、50〜80℃で行うことを特徴とする2に記載の製造方法。
4.1に記載されたイオン性有機化合物からなるハイドロゲル化剤。
5.4に記載のハイドロゲル化剤を含むハイドロゲル。
【発明の効果】
【0007】
本発明のイオン性有機化合物は、水のゲル化剤として好適に用いられる。この化合物をゲル化剤として得られたゲルは、高負荷の歪を与え、それを開放した後の貯蔵弾性率の戻りが速いという特徴をもつ。また、pH<1の塩酸水溶液をゲル化することが可能である。また、本発明は簡単な工程によってゲル化剤等として優れた性状を有する新規なイオン性化合物を効率良く製造することを可能とするものであり、反応試薬の組み合わせによるゲル物性の制御あるいは機能性官能基の導入による機能性ゲル化剤の合成開発に新たな道を拓くものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
上記した一般式(1)で表される本発明のイオン性有機化合物は、(A)4級化可能な窒素原子を2つ有する化合物と、(B)反応活性なハロゲン化アルキル部位を2つ有する化合物との重縮合反応により得られる。反応溶媒は、ジメチルホルムアミド等の極性有機溶媒を使用することが望ましいが、これに限定されるものではない。また、反応時間は24から48時間が好ましい。反応温度は50〜80℃程度、特に80℃程度とすることが好ましい。
【0009】
(A)4級化可能な窒素原子を2つ有する化合物としては、N,N’-ジ(4-ピリジル)- 1,y-ベンゼンジカルボキサミド(yは2、3又は4である)又は1,z-ビス[N’-(4-ピリジル)ウレイド]ベンゼン(zは2、3又は4である)を使用する。
このような化合物の具体例としては、例えばN,N’-ジ(4-ピリジル)- 1,2-ベンゼンジカルボキサミド、N,N’-ジ(4-ピリジル)- 1,3-ベンゼンジカルボキサミド、N,N’-ジ(4-ピリジル)- 1,4-ベンゼンジカルボキサミド、1,2-ビス[N’-(4-ピリジル)ウレイド]ベンゼン、1,3-ビス[N’-(4-ピリジル)ウレイド]ベンゼン、1,4-ビス[N’-(4-ピリジル)ウレイド]ベンゼンが挙げられる。
【0010】
また、(B)反応活性なハロゲン化アルキル部位を2つ有する化合物としては、置換基を有してもよい炭素数8〜12のジ(ハロアルキル)ベンゼン類又は置換基を有してもよい炭素数3〜12のジハロアルカン類を使用する。
このような化合物の具体例としては、例えばオルト−(ジクロロメチル)ベンゼン、メタ−(ジクロロメチル)ベンゼン、パラ−(ジクロロメチル)ベンゼン、1.3-ジブロモプロパン、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、1,6-ジブロモへキサン、1,7-ジブロモヘプタン、1,8-ジブロモオクタン等が挙げられる。
【0011】
上記した一般式(1)で表される、好ましいイオン性有機化合物としては、つぎの一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化2】

(式中、Cはアミド基又はウレア基である。Dはパラ-キシリル基又は炭素数4〜7のアルキレン基であり、Xは塩素イオン又は臭素イオンを示す。nは2〜30の整数を示す。)
【0012】
上記方法で得られた一般式(1)、特に一般式(2)で表されるイオン性有機化合物は、ハイドロゲル化剤として優れた性状を有し、該化合物を中性の水もしくは酸性水溶液に加熱溶解させた後、室温で放置することによりハイドロゲルが得られる。
これらの化合物において、イオン性の4級化された窒素原子が、水への溶解性を担い、また、アミド基(水素結合)、芳香環や炭化水素部位(疎水相互作用)、電荷(静電相互作用)が、分子間相互作用を担い、組織体を作ることによってゲル化現象を起こすと考えられる。
【実施例】
【0013】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
以下の実施例において、有機イオン性化合物を製造する原料となる4-アミノピリジン、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリド、オルト-キシレンジクロリド、メタ-キシレンジクロリド、1,4-ジブロモブタン、1,5-ジブロモペンタン、1,6-ジブロモへキサン、1,7-ジブロモヘプタンは東京化成工業から購入したものをそのまま用いた。脱水塩化メチレン、N,N-ジメチルホルムアミドは関東化学から購入したものをそのまま用いた。トリエチルアミン、1,4-(ジクロロメチル)ベンゼン、1.3-ジブロモプロパンは和光純薬工業から購入したものをそのまま用いた。1,4--フェニレンジイソシアネートはAldrichから購入したものを精製して用いた。すなわち、1,4--フェニレンジイソシアネートを塩化メチレンに加え、不溶成分をろ過して取り除いた後、溶媒を留去したものを反応に用いた。
【0014】
(製造例1)
N,N’-ジ(4-ピリジル)- 1,4-ベンゼンジカルボキサミドの合成
4-アミノピリジン(466mg、4.95mmol)とトリエチルアミン(0.75g、7.41mmol)を脱水塩化メチレン(25mL)中で懸濁させた。そこに、テレフタロイルクロリド(502mg、2.47mmol)の脱水塩化メチレン(25mL)懸濁液を、攪拌しながら滴下して加えた。24時間後、沈殿物をろ別して下記の式(3)で表される化合物を得た。740mg、収率94%。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ10.8(s, 2H)、8.51(dd、J=5.0、1.2Hz、4H)、8.12(s、4H)、7.81(dd、J=5.1、1.3Hz、4H)。
【化3】

【0015】
(製造例2)
N,N’-ジ(4-ピリジル)-1,3-ベンゼンジカルボキサミドの合成
4-アミノピリジン(5.00g、53.1mmol)とトリエチルアミン(6.22g、61.5mmol)を脱水塩化メチレン(70mL)中で懸濁させた。そこに、イソフタロイルクロリド(5.39mg、26.5mmol)の脱水塩化メチレン(30mL)懸濁液を、攪拌しながら滴下して加えた。24時間後、沈殿物をろ別してジメチルホルムアミドで2回洗浄をおこない、下記の式(4)で表される化合物を得た。5.85g、収率69%。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ10.8(s, 2H)、8.55(s, 2H)、8.51(dd、J=4.9、1.4Hz、2H)、8.19(dd、J=7.8、1.6Hz、2H)、7.81(dd、J=4.9、1.4Hz、2H)、7.75(t、J=7.8Hz、1H)。
【化4】

【0016】
(製造例3)
1,4-ビス[N’-(4-ピリジル)ウレイド]ベンゼンの合成
1,4--フェニレンジイソシアネート(502mg、3.14mmol)を塩化メチレン(60mL)に溶かした。そこに、4-アミノピリジン(593mg、6.30mmol)の塩化メチレン(60mL)懸濁液を攪拌しながら加え、加熱還流した。24時間後、沈殿物をろ別して、化合物(5)を得た。0.95g、収率87%。H NMR(300MHz、DMSO-d)δ9.08(s, 1H)、8.79(s, 1H)、8.34(dd、J=4.9、1.4Hz、2H)、7.43−7.37(m, 4H)。
【化5】

【0017】
(実施例1)
窒素ガスの雰囲気下、上記の製造例1で得られたN,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4-ベンゼンジカルボキサミド(3.22 g、10 mmol)をジメチルホルムアミド(500 mL)中、80℃で加熱攪拌して溶解させた。その後、パラ-ジ(クロロメチル)ベンゼン(1.80 g、10 mmol)を添加して48時間加熱攪拌した。4級化反応が進行することにより生じた沈殿をろ別することで、下記の式(6)で表される化合物を収率65%で得た。得られた生成物のプロトンNMRスペクトルにおいて、低磁場シフトしたベンジル基のメチレンピーク(5.75ppm)が観測されたことから、該当化合物の構造を確認した。1H NMR(300MHz、D2O)8.75(4H)、8.29(4H)、8.11(4H)、7.57(4H)、5.75(N-CH2-Ph、4H)。また、ベンジル基のメチレンピークの1H NMRの積分比から重合度(n)は5と見積もられた。
【化6】

【0018】
(実施例2)
上記実施例1において、パラ-ジ(クロロメチル)ベンゼンに代えてメタ-ジ(クロロメチル)ベンゼンを使用した以外は、実施例1と同様にして下記の式(7)で表される化合物を得た。得られた化合物のプロトンNMRスペクトルからその構造を確認した。1H NMR(300MHz、D2O)8.60(d、J=7.5Hz)、8.22(d、J=7.4Hz)、7.82(s)、7.66(s)、6.04(s)、5.76(s)、5.71(br s)。
【化7】

【0019】
(実施例3)
上記実施例1において、パラ-ジ(クロロメチル)ベンゼンに代えてオルト-ジ(クロロメチル)ベンゼンを使用した以外は、実施例1と同様にして下記の式(8)で表される化合物を得た。得られた化合物のプロトンNMRスペクトルからその構造を確認した。1H NMR(300MHz、D2O)8.50−8.41(m)、8.09−8.03(m)、7.92−7.90(m)、7.77(s)、7.57(s)、6.08−5.82(m)。
【化8】

【0020】
(実施例4)
上記実施例1において、パラ-ジ(クロロメチル)ベンゼンに代えて1,3−ジブロモプロパン(10mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして下記の式(9)で表される化合物を得た。得られた化合物のプロトンNMRスペクトルからその構造を確認した。1H NMR(300MHz、D2O)8.74(br s)、8.67(d、J=7.4Hz)、8.57(br)、8.27(br)、8.14(d、J=7.3Hz)、8.01−7.98(m)、7.95(s)、7.84(s)、7.79(s)、4.93(t、J=5.2Hz)、3−2.9(2つのブロードなピーク)。
【化9】

【0021】
(実施例5)
上記実施例4において、1,3−ジブロモプロパンに代えて1,4−ジブロモブタンを使用した以外は、実施例4と同様にして下記の式(10)で表される化合物を得た。得られた化合物のプロトンNMRスペクトルからその構造を確認した。1H NMR(300MHz、D2O)8.73−8.58(m)、8.31−8.10(m)、7.98−7.95(m)、7.81(s)、4.58−4.50(m)、2.26(br s)、2.16(br s)。
【化10】

【0022】
(実施例6)
上記実施例4において、1,3−ジブロモプロパンに代えて1,5−ジブロモペンタンを使用した以外は、実施例4と同様にして下記の式(11)で表される化合物を得た。得られた化合物のプロトンNMRスペクトルからその構造を確認した。1H NMR(300MHz、D2O)8.65(br s)、8.58(d、J=7.4Hz)、8.21(d、J=7.3Hz)、8.16(br s)、7.95(s)、7.81(s)、4.56(t、J=5.6Hz)、2.08(br s)、1.25(br s)、0.80(br)。
【化11】

【0023】
(実施例7)
上記実施例4において、1,3−ジブロモプロパンに代えて1,6−ジブロモヘキサンを使用した以外は、実施例4と同様にして下記の式(12)で表される化合物を得た。得られた化合物のプロトンNMRスペクトルからその構造を確認した。1H NMR(300MHz、D2O)8.70−8.63(m)、8.29−8.20(m)、8.16−8.04(m)、7.95−7.88(m)、4.53−4.45(m)、2.01(br s)、1.43(br)、1.18(br s)。
【化12】

【0024】
(実施例8)
上記実施例4において、1,3−ジブロモプロパンに代えて1,7−ジブロモヘプタンを使用した以外は、実施例4と同様にして下記の式(13)で表される化合物を得た。得られた化合物のプロトンNMRスペクトルからその構造を確認した。1H NMR(300MHz、D2O)8.65(d、J=7.4Hz)、8.20(d、J=7.3Hz)、7.91(s)、4.47(t、J=6.8Hz)、1.96(br s)、1.87−1.77(m)、1.48−1.25(m)。
【化13】

【0025】
(実施例9)
上記実施例1において、N,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4-ベンゼンジカルボキサミドに代えて製造例2で得られたN,N’-ジ(4-ピリジル)-1,3-ベンゼンジカルボキサミド(10mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして下記の式(14)で表される化合物を得た。得られた化合物は白色固体で、水に不溶であった。
【化14】

【0026】
(実施例10)
上記実施例1において、N,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4-ベンゼンジカルボキサミドに代えて製造例3で得られた1,4-ビス[N’-(4-ピリジル)ウレイド]ベンゼン(10mmol)を使用した以外は、実施例1と同様にして下記の式(14)で表される化合物を得た。得られた化合物は黄色固体で、水に溶けにくいものであった。
【化15】

【0027】
(実施例11)
上記の実施例1で得られた式(6)のイオン性有機化合物を、濃度が20g/Lになるように中性の水とともに内容量2mLのサンプル瓶に入れ、加熱溶解させると透明な溶液になった。これを室温で放置させると、ハイドロゲルが得られた。このハイドロゲルは、図1の写真にみられるように、サンプル瓶を倒立させても内容物が落下しないものであった。
同様にして、上記の実施例で得られた式(11)、(12)、(13)、(15)の化合物を使用することにより、ゲル化剤の濃度が20g/Lのハイドロゲルを得た。また、式(10)の化合物を使用して、ゲル化剤の濃度が40g/Lのハイドロゲルを得た。
【0028】
(実施例12)
上記の実施例6で得られた式(11)のイオン性有機化合物を、濃度が20g/Lになるように1N塩酸水溶液(pH = 0.1)とともに内容量2mLのサンプル瓶に入れ、加熱溶解させると透明な溶液になった。これを室温で放置させると、ハイドロゲルが得られた。このハイドロゲルは、図2の写真にみられるように、サンプル瓶を倒立させても内容物が落下しないものであった。
同様にして、上記の実施例で得られた式(6)、(10)、(12)、(13)の化合物を使用することにより、ゲル化剤の濃度が20g/Lの0.1N塩酸水溶液のハイドロゲルを得た。
【0029】
(実施例13)
実施例1で得られた式(6)の化合物をゲル化剤として、中性水を媒体とした濃度30g/Lのハイドロゲルを調製した。このゲルを使用して、ARES−RFS(TA Instruments)により、粘弾性測定を行った結果を図3に示す。図3の(a)は、縦軸に貯蔵弾性率(G’)を、横軸に時間をとった場合のグラフである。同じく(b)は、縦軸に復帰率(貯蔵弾性率(G’)÷貯蔵弾性率飽和点(G’eq.))を、横軸に時間をとった場合のグラフである。貯蔵弾性率飽和点(G’eq.)は初期の低負荷の歪(0.1%)で示した約4200Paとした。
はじめに、300秒の静止時間の後に、周波数1Hzで低負荷の歪(0.1%)を600秒与えると貯蔵弾性率(G’)が約4200Paを示した。続いて高負荷の歪(100%)を与えると、貯蔵弾性率は10Paまで減少した。その後再び低負荷の歪(0.1%)を与えると、600秒後には、貯蔵弾性率が約4100Pa(98%)まで復帰した。このような高速復帰挙動は、3回の繰り返し測定をおこなっても損なわれなかった。
【0030】
上記の通り、本発明のイオン性有機化合物は、ハイドロゲル化剤として優れた性状を有し、該化合物を中性の水もしくは酸性水溶液に加熱溶解させた後、室温で放置することによりハイドロゲルが得られる。本発明のイオン性有機化合物をハイドロゲル化剤として使用する際には、ゲル化対象とする水、又は酸性水溶液に対してハイドロゲル化剤を10〜
50g/L程度、特に20〜50g/L程度使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例11で得られたハイドロゲルの写真である。
【図2】実施例12で得られたハイドロゲルの写真である。
【図3】実施例13において、ゲルの粘弾性を測定した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つぎの一般式(1)で表されるイオン性有機化合物。
【化1】

(式中、Aはアミド基又はウレア基であり、2つのAは互いにベンゼン環のオルト、メタ又はパラ位に位置する。Bは、置換基を有してもよい炭素数3〜12の2価の炭化水素基であり、Xはハロゲンイオンを示す。そして、nは2〜30の整数を示す。)
【請求項2】
(A)N,N’-ジ(4-ピリジル)- 1,y-ベンゼンジカルボキサミド(yは2、3又は4である)又は1,z-ビス[N’-(4-ピリジル)ウレイド]ベンゼン(zは2、3又は4である)と、(B)置換基を有してもよい炭素数8〜12のジ(ハロアルキル)ベンゼン類又は置換基を有してもよい炭素数3〜12のジハロアルカン類を、縮合反応させることを特徴とする請求項1に記載のイオン性有機化合物の製造方法。
【請求項3】
縮合反応をジメチルホルムアミド中で、50〜80℃で行うことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載されたイオン性有機化合物からなるハイドロゲル化剤。
【請求項5】
請求項4に記載のハイドロゲル化剤を含むハイドロゲル。

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−214529(P2008−214529A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55286(P2007−55286)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】