説明

イオン注入装置

【課題】 イオンビームの空間電荷効果等によるY方向の発散を補償して、イオンビームの輸送効率を高めることができ、しかもエネルギーコンタミネーションの発生を抑制することができるイオン注入装置を提供する。
【解決手段】 このイオン注入装置は、リボン状のイオンビーム4の経路を挟んでY方向において相対向するように、かつイオンビーム4の進行方向に対して交差するように配置されていて、イオンビーム4のX方向の寸法をカバーする長さを有する第1および第2の磁石50、52を備えている。両磁石50、52は、イオンビーム4の入口側および出口側に一対の磁極を有していてしかもその極性が両磁石50、52で逆であり、イオンビーム4に対して両磁石50、52間に内向きのローレンツ力を働かせる方向の磁界を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X方向の走査を経て、またはX方向の走査を経ることなく、X方向の寸法が当該X方向と実質的に直交するY方向の寸法よりも大きいリボン状(これはシート状または帯状とも呼ばれる)の形をしているイオンビームをターゲットに照射してイオン注入を行う構成のイオン注入装置に関し、より具体的には、イオンビームをY方向において絞る手段の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のイオン注入装置の従来例を図16に示す。これと同様のイオン注入装置が、例えば特許文献1に記載されている。なお、この明細書および図面において、イオンビーム4を構成するイオンは正イオンの場合を例に説明している。
【0003】
このイオン注入装置は、イオン源2から発生させた、リボン状のイオンビームの元になる小さな断面形状(例えば丸または四角いスポット状)をしているイオンビーム4を、質量分離器6を通して質量分離し、加減速器8を通して加速または減速し、エネルギー分離器10を通してエネルギー分離し、走査器12を通してX方向(例えば水平方向)に走査し、ビーム平行化器14を通して平行ビーム化した後に、ホルダ26に保持されたターゲット(例えば半導体基板)24に照射して、ターゲット24にイオン注入を行うよう構成されている。イオン源2からターゲット24までのイオンビーム4の経路は真空雰囲気に保たれる。
【0004】
ターゲット24は、ホルダ26と共に、ビーム平行化器14からのイオンビーム4の照射領域内で、ターゲット駆動装置28によって、Y方向(例えば垂直方向)に沿う方向に機械的に走査(往復駆動)される。
【0005】
なお、この明細書および図面においては、イオンビームの進行方向をZ方向とし、Z方向と実質的に直交する面内において互いに実質的に直交する2方向をX方向およびY方向としている。
【0006】
ビーム平行化器14は、磁界または電界(この例では磁界)によってイオンビーム4を走査する走査器12と協働して、X方向に走査されたイオンビーム4を、磁界または電界(この例では磁界)によって基準軸16に対して実質的に平行になるように曲げ戻して平行ビーム化して、X方向の寸法がY方向の寸法よりも大きいリボン状の形をしているイオンビーム4(図17も参照)を導出する。リボン状と言っても、Y方向の寸法が紙や布のように薄いという意味ではない。例えば、イオンビーム4のX方向の寸法は35cm〜50cm程度であり、Y方向の寸法は5cm〜10cm程度である。ビーム平行化器14は、この例のように磁界を使用する場合は、ビーム平行化マグネットと呼ばれる。
【0007】
上記イオン注入装置は、X方向の走査を経てリボン状の形をしているイオンビーム4をターゲット24に照射する場合の例であるが、イオン源2からリボン状のイオンビーム4を発生させて、X方向の走査を経ることなくリボン状の形をしているイオンビーム4をターゲット24に照射する場合もある。
【0008】
上記イオンビーム4の輸送経路は、図示しない真空容器内にあり、真空雰囲気に保たれるけれども、残留ガスやアウトガス等のガスが僅かではあるが必ず存在する。このガス分子にイオンビーム4が衝突して中性粒子が発生してそれがターゲット24に入射すると、注入量分布の均一性を悪化させたり、注入量誤差を生じさせたりする等の悪影響が生じる。
【0009】
これを防止するためには、ターゲット24に照射するエネルギー状態(換言すれば、加減速器8を通した後の最終エネルギー状態)のイオンビーム4を、ターゲット24の近くに設けたイオンビーム偏向器によって磁界または電界の作用で偏向させて、偏向したイオンビーム4と偏向せずに直進する中性粒子18とを互いに分離して、中性粒子18がターゲット24に入射するのを防止するのが好ましく、上記ビーム平行化器14はこのイオンビーム偏向器を兼ねている。
【0010】
ところで、イオンビーム4は、その輸送途中において、空間電荷効果によって発散する。装置のスループットを高めると共に、ターゲット24上に形成する半導体デバイスの微細化のためにイオン注入深さを浅くする等の観点から、ターゲット24に照射するイオンビーム4は低エネルギーかつ大電流のものが望まれているが、イオンビーム4が低エネルギーかつ大電流になるほど、空間電荷効果によるイオンビーム4の発散は大きくなる。
【0011】
このイオンビーム4の発散は、X、Y両方向において生じるけれども、元々、イオンビーム4のX方向の寸法は上記のようにY方向に比べてかなり大きいので、Y方向の発散による悪影響の方が大きい。そこで以下においてはこのY方向の発散に着目する。
【0012】
イオンビーム4がY方向に発散すると、Y方向におけるイオンビーム4の一部が、イオンビーム4の経路を囲む真空容器や、イオンビーム4を整形するマスク等によってカットされて、イオンビーム4のターゲット24への輸送効率が低下する。
【0013】
例えば、ビーム平行化器14とターゲット24との間には、図16、図17に示すように、また例えば特許第3567749号公報にも記載されているように、イオンビーム4を通過させる開口22を有していてイオンビーム4を整形するマスク20が設けられていることが多い。このマスク20によって、イオンビーム4のY方向の不要な裾の部分をカットして、イオンビーム4からターゲット24を逃がす距離L2 を小さくすることができるからである。
【0014】
イオンビーム4が空間電荷効果によってY方向に発散すると、例えばこのマスク20によってカットされる割合が大きくなるので、マスク20を通過することができるイオンビーム4の量が減り、イオンビーム4の輸送効率が低下する。
【0015】
上記課題は、イオン源2からリボン状のイオンビーム4を発生させて、X方向の走査を経ることなくリボン状の形をしているイオンビーム4をターゲット24に照射する場合にも同様に存在する。
【0016】
イオンビーム4の空間電荷効果によるY方向の発散を補償する手段として、イオンビーム4の経路に、例えばビーム平行化器14の下流側近傍または上流側近傍に、例えば非特許文献1に記載されているような電界レンズ(これは静電レンズとも呼ばれる)を設けることが考えられる。
【0017】
その電界レンズの一例を図18に示す。この電界レンズ30は、イオンビーム4の進行方向Zに互いに間をあけて並べられた入口電極32、中間電極34および出口電極36を備えている。入口電極32および出口電極36は、互いに同電位(図示例では接地電位)に保たれる。中間電極34には、直流電源38から、正(図示例の場合)または負の直流電圧V1 が印加されて、入口電極32および出口電極36とは異なる電位に保たれる。各電極32、34および36は、それぞれ、イオンビーム4の形状に応じた形状をしており、例えば、筒状電極の場合もあるし、平行平板電極の場合もある。
【0018】
この電界レンズ30は、アインツェルレンズ(これはユニポテンシャルレンズとも呼ばれる)の働きをし、中間電極34に正、負いずれの直流電圧V1 を印加しても、イオンビーム4のエネルギーを変えることなくイオンビーム4をY方向において絞る働きをする。なお、図18では、図示の簡略化のためにイオンビーム4は絞られていない状態を図示しているが、実際は絞られる。
【0019】
【特許文献1】特開平8−115701号公報(段落0003、図1)
【非特許文献1】執筆委員 高木俊宜、電気学会大学講座、「電子・イオンビーム工学」、初版、社団法人電気学会、1995年3月1日、頁105−108
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のような電界レンズ30を用いてイオンビーム4を絞る技術では、イオンビーム4の空間電荷効果によるY方向の発散を補償して、イオンビーム4の輸送効率を高めることができるけれども、エネルギーコンタミネーション(即ち不所望エネルギー粒子の混入)が発生するという課題がある。
【0021】
即ち、電界レンズ30の中間電極34に負の直流電圧V1 を印加する場合、イオンビーム4は、入口電極32と中間電極34間の領域で一旦加速された後に、中間電極34と出口電極36間の領域で減速されて元のエネルギーになる。この加速領域において、イオンビーム4が残留ガスと衝突して荷電変換によって中性粒子が発生すると、入射イオンビーム4のエネルギーよりも高いエネルギーの中性粒子が発生し、それが下流側へ進行することになり、高エネルギー成分のエネルギーコンタミネーションの原因となる。
【0022】
中間電極34に図18に示すように正の直流電圧V1 を印加する場合、イオンビーム4は、入口電極32と中間電極34間の領域で一旦減速された後に、中間電極34と出口電極36間の領域で加速されて元のエネルギーになる。この減速領域において、イオンビーム4が残留ガスと衝突して荷電変換によって中性粒子が発生すると、入射イオンビーム4のエネルギーよりも低いエネルギーの中性粒子が発生し、それが下流側へ進行することになり、低エネルギー成分のエネルギーコンタミネーションの原因となる。
【0023】
このように、中間電極34に正、負いずれの直流電圧V1 を印加しても、エネルギーコンタミネーションが発生する。
【0024】
また、中間電極34に正の直流電圧V1 を印加すると、図18に示すように、電場のないドリフト空間(即ち中間電極34付近よりも上流側および下流側における電場のない空間)中の電子39が中間電極34に引き込まれて消滅するので、ドリフト空間での電子量が減少してイオンビーム4の空間電荷効果による発散が強くなり、イオンビーム4の輸送効率の低下が大きくなる。
【0025】
そこでこの発明は、イオンビームの空間電荷効果等によるY方向の発散を補償して、イオンビームの輸送効率を高めることができ、しかもエネルギーコンタミネーションの発生を抑制することができるイオン注入装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この発明に係るイオン注入装置は、前記ターゲットよりも上流側にあって、前記リボン状のイオンビームの経路を挟んでY方向において相対向するように、かつ前記リボン状のイオンビームの進行方向に対して交差するように配置されている第1の磁石および第2の磁石を備えており、前記第1の磁石および第2の磁石は、それぞれ、前記イオンビームの入口側および出口側に一対の磁極を有していてしかもその極性が第1の磁石と第2の磁石とで逆であり、かつ前記イオンビームに対して両磁石間に内向きのローレンツ力を働かせる方向の磁界を発生させるものである、ことを特徴としている。
【0027】
このイオン注入装置によれば、第1および第2の磁石によって、リボン状のイオンビームのX方向の全域に亘って、イオンビームの進行方向に対して直交する成分を有する磁界を発生させることができ(但し、両磁石が発生させる磁界は互いに逆向き)、この磁界によって、イオンビームはY方向における内向きのローレンツ力を受けることになる。これによって、イオンビームをY方向において絞ることができる。
【0028】
前記第1の磁石と前記第2の磁石とは、極性が互いに逆であることを除いて、前記イオンビームの経路のY方向における中心を通りかつX方向およびY方向に実質的に直交する対称面に関して実質的に面対称に配置しておくのが好ましい。
【0029】
前記第1の磁石および第2の磁石は、前記イオンビームの進行方向に対して斜めに交差するように配置しておいても良い。
【0030】
前記第1の磁石および第2の磁石は、永久磁石でも良いし、電磁石でも良い。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、第1および第2の磁石が発生させる磁界によって、イオンビームをY方向において絞ることができるので、イオンビームの空間電荷効果等によるY方向の発散を補償して、イオンビームの輸送効率を高めることができる。
【0032】
また、電界レンズを用いる場合と違って、イオンビームを加減速することなく絞ることができるので、エネルギーコンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0033】
しかも、上記効果を、第1および第2の磁石という簡素な構成によって奏することができる。
【0034】
請求項2に記載の発明によれば、第1および第2の磁石によって、対称面に関して対称性の良い磁界を発生させることができるので、イオンビームを対称性良く絞ることができる、という更なる効果を奏する。
【0035】
請求項3に記載の発明によれば、イオンビームの進行方向に直交する磁界成分をより大きくして、イオンビームをY方向においてより強く絞ることができる、という更なる効果を奏する。
【0036】
請求項4に記載の発明によれば、X方向において実質的に平行走査されるイオンビームのX方向の全域に亘って均一にイオンビームをY方向において絞ることができる、という更なる効果を奏する。
【0037】
請求項5に記載の発明によれば、X方向において扇状に走査されるイオンビームのX方向の全域に亘って均一にイオンビームをY方向において絞ることができる、という更なる効果を奏する。
【0038】
請求項6に記載の発明によれば、X方向の走査を経ることなくリボン状をしているイオンビームのX方向の全域に亘って均一にイオンビームをY方向において絞ることができる、という更なる効果を奏する。
【0039】
請求項7に記載の発明によれば、第1および第2の磁石が永久磁石であるので、構成をより簡素化することができる、という更なる効果を奏する。
【0040】
請求項8に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、第1および第2の磁石が電磁石であるので、それらが発生する磁界の強さを調整することが容易であり、従って、イオンビームをY方向において絞る度合いを容易に制御することができる。また、永久磁石に比べてより強い磁界を発生させて、イオンビームをより強く絞ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1は、この発明に係るイオン注入装置の一実施形態を部分的に示す平面図である。図16に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0042】
このイオン注入装置は、上記ターゲット24よりも上流側に設けられていて、より具体的には、イオンビーム4と中性粒子18(図16参照)とを分離するイオンビーム偏向器を兼ねる上記ビーム平行化器14の下流側近傍に設けられていて、上記リボン状のイオンビーム4の経路を挟んでY方向において相対向するように配置された第1の磁石50および第2の磁石52を備えている。図1では、第2の磁石52(図3参照)は第1の磁石50の下に隠れていて表れていないので、その符号52を括弧書きで記載している。
【0043】
なお、ビーム平行化器14の下流側では、上記走査器12とビーム平行化器14とが協働することによって、イオンビーム4はX方向において実質的に平行に走査されて、リボン状をしている。
【0044】
上記第1および第2の磁石50、52は、この実施形態では、実質的に真っ直ぐな形状をしている永久磁石である。
【0045】
両磁石50、52は、上記リボン状のイオンビーム4の進行方向Zに対して交差するように、より具体的にはこの実施形態では、斜めに交差するように配置されている。しかも両磁石50、52は、この実施形態では、リボン状のイオンビーム4のX方向の寸法をカバーする長さを有している。即ち、両磁石50、52は、リボン状のイオンビーム4のX方向の寸法よりもX方向の寸法が大きくて、細長い棒状または板状の形状をしている。
【0046】
上記「斜めに交差」というのは、図2に示す例のように、磁石50の長辺50aに立てた垂線60とイオンビーム4の進行方向との成す角度βが0度以外であることである。垂線60は、換言すれば、磁石50の短軸(これはこの例では磁軸でもある)に平行な線である。角度βが0度の場合は、図6に示す例のように、磁石50はイオンビーム4の進行方向に対して実質的に直角に交差していることになる。第2の磁石52についても同様である。
【0047】
両磁石50、52は、それぞれ、イオンビーム4の入口側および出口側に一対の磁極(N極およびS極)を有している。即ち、細長い各磁石50、52の二つの(即ちイオンビーム4の入口側および出口側の)長辺50a、52a側が、それぞれ、その実質的に全長に亘って磁極である。つまり、磁石50、52の短手方向の両端が磁極である。この点が、図14、図15に示すように短辺80b、82b側が磁極である参考例と大きく異なる。しかも、上記磁極の極性は、図3に示すように、第1の磁石50と第2の磁石52とで逆である。
【0048】
更にこの実施形態では、第1の磁石50と第2の磁石52とは、極性が互いに逆であることを除いて、イオンビーム4の経路のY方向における中心を通りかつX方向およびY方向に実質的に直交する対称面58(図3参照)に関して実質的に面対称に配置されている。より具体的には、磁石50と磁石52とを互いに実質的に同じ形状および寸法とし、両磁石50、52をY方向において実質的に正対させて(換言すればY方向において互いに重なるように)配置し、かつ対称面58から両磁石50、52までの距離を互いに実質的に等しくしている。従って、対称面58付近では、上下の磁界が互いに打ち消し合って磁界の強さは実質的に0になり、対称面58からY方向の上下に離れるに従って磁界の強さは大きくなる。
【0049】
両磁石50、52の設置場所と磁極の極性との関係を表1にまとめて示す。図1に示す実施形態は、表1中の実施例1に相当している。実施例2については後述する。
【0050】
【表1】

【0051】
上記表1は、上記角度βを、図2に示すように入射イオンビーム4に対して反時計回りに取ったとき、角度βが正(但し90度より小)の場合のものである。また、図6に示す角度γを、入射イオンビーム4に対して時計回りに取ったとき、角度γが正(但し90度より小)の場合のものである。同様に、図8に示す角度φを、入射イオンビームに対して時計回りに取ったとき、角度φが正(但し90度よりも小)の場合のものである。上記角度β、γ、φが負の場合は、後述する直交成分BR の方向が逆転するので、磁石50、52の極性を表1中に示すものと逆転させれば良い。つまりどの場合も、両磁石50、52の磁極の極性は、イオンビーム4に対して両磁石50、52間の内向きにローレンツ力を働かせる方向の磁界を発生させるものとしている。
【0052】
これを、まず図2、図3を参照して説明する。第1の磁石50は、イオンビーム4の経路側に、イオンビーム4に対して角度βで交差する方向の磁界Bを発生させる。磁石50が発生させる磁界Bを、図3中に磁力線54で模式的に示している。図14、図15に示す参考例の場合と違って、磁石50の磁極は短手方向にあるので、上記のような磁界Bを発生させることができる。
【0053】
上記磁界Bは、上記角度βが存在するために、イオンビーム4の進行方向Zに対して直交する成分(直交成分)BR を有している。このような直交成分BR が、イオンビーム4のX方向の全域に亘って発生する。この直交成分BR によって、イオンビーム4はY方向における内向き(図3中の下向き)のローレンツ力Fを受けることになる。
【0054】
第2の磁石52も、向きが逆向きである以外は、第1の磁石50が発生させる磁界Bと同様の磁界を発生させる。磁石52が発生させる磁界を、図3中に磁力線56で模式的に示している。この磁界の直交成分によって、イオンビーム4はY方向における内向き(図3中の上向き)のローレンツ力Fを受けることになる。
【0055】
上記ローレンツ力Fによって、イオンビーム4をY方向において絞ることができる。イオンビーム4が絞られる程度は、磁界Bの磁束密度に比例し、イオンビーム4のエネルギーに反比例する。従って、磁束密度を一定とするならば、低エネルギーのイオンビーム4ほど強く絞ることができる。
【0056】
イオンビーム4が絞られた状態の一例を図3に示す。これは、Y方向において発散する入射イオンビーム4を集束するように絞った例である。但し図示したイオンビーム4の状態はあくまでも一例である(図4、図9、図11、図13においても同様)。イオンビーム4を絞る程度を調整することによって、上記例以外の絞り方も可能である。例えば、Y方向において発散が実質的に0である平行なイオンビームを導出することも可能である。後述する他の実施形態においても同様である。
【0057】
このようにこのイオン注入装置によれば、第1および第2の磁石50、52が発生させる磁界によって、イオンビーム4をY方向において絞ることができるので、イオンビーム4の空間電荷効果等によるY方向の発散を補償して、イオンビーム4のターゲット24への輸送効率を高めることができる。
【0058】
イオンビーム4をY方向において絞ることができるので、イオンビーム4の空間電荷効果以外によるY方向の発散を抑制することもできる。また、前述したように、Y方向においてイオンビーム4を絞る程度を調整することによって、Y方向において発散が実質的に0である平行なイオンビーム4を導出することも可能になる。
【0059】
より具体例を挙げると、図1に示す例のように両磁石50、52の下流側に前述したマスク20が設けられている場合は、ビーム平行化器14とマスク20との間において、イオンビーム4の空間電荷効果によるY方向の発散を補償して、マスク20の開口22を通過するイオンビーム4の量を増やして、ターゲット24へのイオンビーム4の輸送効率を高めることができる。
【0060】
また、電界レンズを用いる場合と違って、イオンビーム4を加減速することなく絞ることができるので、エネルギーコンタミネーションの発生を抑制することができる。
【0061】
しかも、上記効果を、第1および第2の磁石50、52という簡素な構成によって奏することができる。
【0062】
更にこの実施形態には次のような利点がある。
【0063】
即ち、両磁石50、52が永久磁石であるので、構成をより簡素化することができる。
【0064】
両磁石50、52を、イオンビーム4の進行方向Zに対して斜めに交差するように配置しているので、上記直交成分BR をより大きくして、イオンビームをY方向においてより強く絞ることができる。
【0065】
両磁石50、52を、X方向において実質的に平行走査されるイオンビーム4の経路に設けているので、X方向において実質的に平行走査されるイオンビーム4の全域に亘って均一にイオンビーム4をY方向において絞ることができる。
【0066】
第1の磁石50と第2の磁石52とを対称面58に関して実質的に面対称に配置していて、第1および第2の磁石50、52によって、対称面58に関して対称性の良い磁界を発生させることができるので、イオンビーム4を対称性良く絞ることができる。
【0067】
ところで、上記第1の磁石50の磁極と第2の磁石52の磁極との間には、厳密に見れば、図4に示す例のように、Y方向の磁界B1 、B2 が発生する。両磁界B1 、B2 は、互いに逆向きであり、また両磁石50、52間のY方向における距離が小さくなるほど強くなる。この磁界B1 、B2 によって、イオンビーム4は、図5にも示すように、X方向における互いに逆向きのローレンツ力F1 、F2 を受けて、両磁石50、52間を通過中にX方向に曲げられて、磁石50、52の入口と出口との間で、X方向において軌道に差(軌道差)ΔXが生じる。両磁界B1 、B2 の強さを互いに実質的に等しくすれば、入射イオンビーム4と照射イオンビーム4とは互いに実質的に平行になる。上記のような軌道差ΔXが生じても、イオンビーム4をY方向において絞るという目的は達成することができる。また、上記のような軌道差ΔXは、通常は小さいので、それが生じても特に不都合はないが、不都合であれば他の手段で対処することができる。
【0068】
なお、図5では、イオンビーム4は一筋のみを代表して示しているが、他の箇所のイオンビーム4についても図示と同様である(このことは、図6、図12についても同様である)。
【0069】
また、上記のように両磁石50、52間を通過中にイオンビーム4がX方向に曲げられることに着目すると、図6に示す例のように、磁石50、52を、イオンビーム4の進行方向Zに対して実質的に直角に交差するように(換言すれば、図2に示した角度βが実質的に0度になるように)配置しても良い。この場合も、磁石50、52間を通過中のイオンビーム4と上記磁界Bとの成す角度γは0度よりも大きくなり、イオンビーム4の進行方向に対して直交する成分(直交成分)BR が生じるので、この直交成分BR によって、図2、図3の例の場合と同様に、イオンビーム4はY方向における内向きのローレンツ力Fを受けることになり(但しその大きさは、図2、図3の例よりかは通常は小さい)、これによってイオンビーム4をY方向において絞ることができる。
【0070】
これと同様の現象は、図5を参照すれば分かるように、図2、図3の例の場合も、厳密に見れば生じる。従って、上記角度γにも着目すれば、磁石50、52間を通過中のイオンビーム4の進行方向と上記磁界Bとの成す角度は、β+γとなる。
【0071】
上記磁石50は、一つの永久磁石で構成しても良いし、図7に示す例のように、複数の同極性の永久磁石68を並設することによって構成しても良い。上記磁石52についても同様である。また、後述する(図8、図9参照)弧状をした磁石50、52についても同様である。
【0072】
なお、図14、図15に示す参考例のように、第1の磁石80および第2の磁石82の長手方向の両端に、即ち二つの短辺80b、82b側に磁極を設けるのは好ましくない。そのように磁極を設けると、両磁石80、82間には、図15に示すように、X方向の両端の磁極付近のみにY方向に沿う磁力線84、86が発生して、リボン状のイオンビーム4のX方向の両端付近に、イオンビーム4を外側へ発散させるローレンツ力F3 、F4 が働くことになるだけであり、イオンビーム4をY方向において絞ることはできないからである。
【0073】
第1および第2の磁石50、52は、上記実施形態のようにビーム平行化器14の下流側近傍に設ける代わりに、ビーム平行化器14の上流側近傍に設けても良い。そのようにすれば、ビーム平行化器14に入射してそこを通過するイオンビーム4の量を増やすことができるので、イオンビーム4の輸送効率を高めることが容易になる。
【0074】
第1および第2の磁石50、52を、ビーム平行化器14の下流側近傍および上流側近傍の少なくとも一方に設けても良いし、両方に設けても良い。両方に設ければ、ビーム平行化器14を通過するイオンビーム4の量を増やすと共に、ビーム平行化器14を通過したイオンビームのY方向の発散を抑制することができるので、イオンビーム4のターゲット24への輸送効率をより高めることができる。
【0075】
第1および第2の磁石50、52を、ビーム平行化器14の上流側近傍のように、走査器12(図16参照)によってX方向において扇状に走査されるイオンビーム4の経路に設ける場合は、両磁石50、52は、図1、図2等に示した磁石50、52を弧状に曲げたものに、即ち次のような弧状のものにするのが好ましい。
【0076】
つまり、両磁石50、52は、図8、図9に示す実施形態のように、イオンビーム4の進行方向に張り出した弧状であって、X方向の各走査位置におけるイオンビーム4の進行方向と、各磁石50、52の一対の磁極(N極とS極)間を最短距離で結ぶ直線62との成す角度φが常に実質的に一定となる弧状をしているのが好ましい。
【0077】
これを詳述すると、走査器12によるイオンビーム4の走査の中心点をaとし、この中心点aからX方向に距離L6 だけ離れた点をbとすると、弧状の磁石50、52の二つの(即ちイオンビーム4の入口側および出口側の)弧状辺50c、52cは、それぞれ、点bを中心とする円の一部であるものにする。この弧状辺50c、52cが、それぞれ、その実質的に全長に亘って磁極である。
【0078】
両磁石50、52を上記のような弧状にすると、イオンビーム4の走査位置に拘わらずに、上記角度φは実質的に一定となる。この角度φによって(厳密に見れば図6を参照して説明した角度γも加わって)、両磁石50、52が発生させる磁界Bは、イオンビーム4の進行方向に対して直交する成分(直交成分)BR を有することになる。この直交成分BR によって、イオンビーム4はY方向における内向きのローレンツ力Fを受けることになり、それによって、イオンビーム4をY方向において絞ることができる。上記距離L6 を大きくするほど角度φは大きくなる。
【0079】
しかも、イオンビーム4の走査位置に拘わらずに上記角度φが実質的に一定になるので、X方向において扇状に走査されるイオンビーム4の全域に亘って均一にイオンビーム4をY方向において絞ることができる。
【0080】
上記表1中の実施例2は、上記図8、図9に示す実施形態に相当している。
【0081】
イオン源2(図16参照)からリボン状のイオンビームを発生させて、X方向の走査を経ることなく、リボン状をしているイオンビーム4をターゲット24に入射させる場合は、当該イオンビーム4の経路に、上記図1〜図7を参照して説明した、実質的に真っ直ぐな形状をした第1および第2の磁石50、52を設ければ良い。そのようにすれば、当該イオンビーム4のX方向の全域に亘って均一にイオンビーム4をY方向において絞ることができる。
【0082】
上述したような真っ直ぐな、または弧状をした第1および第2の磁石50、52を、上記実施形態のように永久磁石で構成する代わりに、電磁石で構成しても良い。電磁石で構成する場合の実施形態を、以下においては、上記永久磁石で構成した実施形態との相違点を主体に説明する。
【0083】
真っ直ぐな第1および第2の磁石50、52を電磁石で構成した実施形態を図10、図11に示す。これは、図2、図3に示した実施形態に対応している。
【0084】
両磁石50、52は、それぞれ、上記図1〜図6に示した磁石50、52に相当する形状・配置をした鉄心70と、この鉄心の長手方向に巻回されたコイル72とを有している。鉄心70の二つの(即ちイオンビーム4の入口側および出口側の)長辺70a側が、それぞれ、その実質的に全長に亘って磁極である。
【0085】
両磁石50、52は、それぞれ、直流電源74、76から励磁電流I1 、I2 が供給されて、図1〜図6に示した実施形態と同様の極性の磁界を発生させる。従って、図1〜図6に示した実施形態と同様の作用によって、イオンビームをY方向において絞ることができる。
【0086】
しかも、第1および第2の磁石50、52が電磁石であるので、それらが発生する磁界の強さを調整することが容易であり、従って、イオンビーム4をY方向において絞る度合いを容易に制御することができる。例えば、イオンビーム4のエネルギーに応じて、発生させる磁界の強さを変えることによって、どのエネルギーにおいても同様にイオンビーム4を絞ることができる。また、発生させる磁界の強さを変えることによって、イオンビーム4のY方向における集束状況(例えば焦点距離等)を変えることもできる。後述するビーム寸法dt 、発散角α、偏差角θの制御を行うこともできる。また、永久磁石に比べてより強い磁界を発生させて、イオンビーム4をより強く絞ることも可能である。図12に示す実施形態においても同様である。
【0087】
上記励磁電流I1 、I2 は、互いに同一の大きさにしても良いし、異なる大きさにしても良い。同一の大きさにする場合は、一つの直流電源を両磁石50、52に兼用しても良い。また、直流電源74、76の一方または両方を、両極性電源にして、励磁電流I1 、I2 の方向を逆転させることができるようにしても良い。図12に示す実施形態においても同様である。
【0088】
弧状の磁石50、52を電磁石で構成した実施形態を、第1の磁石50で代表して図12に示す。断面は図11と同様であるので、それを参照するものとする。これは、図8、図9に示した実施形態に対応している。
【0089】
両磁石50、52は、それぞれ、上記図8、図9に示した磁石50、52に相当する形状・配置をした鉄心70と、この鉄心の長手方向に巻回されたコイル72とを有している。鉄心70の二つの(即ちイオンビーム4の入口側および出口側の)弧状辺70c側が、それぞれ、その実質的に全長に亘って磁極である。コイル72は、鉄心70の長手方向に真っ直ぐに巻いておいても良いけれども、図示例のように、弧状辺70cに沿って弧状に巻いておくのが好ましい。そのようにすれば、両弧状辺70c、即ち両磁極の実質的に全長に亘って均一な磁界を発生させることができる。
【0090】
両磁石50、52は、それぞれ、直流電源74、76から励磁電流I1 、I2 が供給されて、図8、図9に示した実施形態と同様の極性の磁界を発生させる。従って、図8、図9に示した実施形態と同様の作用によって、イオンビームをY方向において絞ることができる。
【0091】
第1および第2の磁石50、52が電磁石である場合に、それらを用いてイオンビーム4のY方向におけるビーム寸法dt 、発散角αおよび偏差角θを制御する例を以下に説明する。
【0092】
図1を参照して、ターゲット24の上流側および下流側に、イオンビーム4のビーム電流を計測する複数の検出器がX方向にそれぞれ並設されて成る前段多点ファラデー42および後段多点ファラデー44をそれぞれ設けておいて、例えば特開2005−195417号公報に記載されている技術と同様に、両多点ファラデー42、44とその前方でY方向に駆動されるシャッターとを組み合わせて用いて、イオンビーム4の進行方向Zの2箇所におけるイオンビーム4のY方向のビーム寸法df 、db と、両箇所間の距離L3 および両箇所とターゲット24間の距離L4 、L5 とに基づいて、次式に従って、ターゲット24の位置でのイオンビーム4のY方向のビーム寸法dt 、イオンビーム4のY方向における発散角αを計測しても良い。前段多点ファラデー42の前方にシャッターを設ける代わりに、前段多点ファラデー42を例えばマスク20の下流側近傍に設ける等しておいて、前段多点ファラデー42をY方向に駆動しても良い。
【0093】
[数1]
t =(L5 /L3 )df +(L4 /L3 )db 、(但しL3 =L4 +L5
【0094】
[数2]
α=tan-1{(db −df )/2L3
【0095】
そして、上記ビーム寸法dt 、発散角αの計測データに基づいて、図示しない制御装置によって、上記直流電源74、76ひいては上記励磁電流I1 、I2 をフィードバック制御するようにしても良い。例えば、イオンビーム4のY方向のビーム寸法dt や発散角αが大きいときは、それに応じて、上記励磁電流I1 、I2 の絶対値(大きさ)を大きくするように制御すれば良い。それによって、両磁石50、52によってイオンビーム4がY方向においてより強く絞られるので、上記ビーム寸法dt や発散角αを小さくすることができる。ターゲット24の位置での発散角αを実質的に0度にして、ターゲット24に対してY方向における平行度の高いイオンビーム4を入射させてイオン注入を行うこともできる。
【0096】
両磁石50、52に互いに同じ大きさの励磁電流I1 、I2 を供給して、両磁石50、52が互いに同じ強さの磁界を発生させる場合、例えば図13に示す例のように、何らかの原因で入射イオンビーム4がY方向に傾いていると、出射イオンビーム4もY方向において偏差角θを持つことになる。偏差角θは、YZ平面内において、イオンビーム4の中心軌道と前記対称面58との成す角度である。
【0097】
これを、両磁石50、52に互いに異なる大きさの励磁電流I1 、I2 を供給して、両磁石50、52によって互いに異なる強さの磁界を発生させることによって、補正することができる。例えば、上記図13に示した例のように入射イオンビーム4がY方向における上向きに傾いている場合は、傾いている側の磁石50に供給する励磁電流I1 を大きくすることと、反対側の磁石52に供給する励磁電流I2 を小さくすることの少なくとも一方を行えば良い。それによって、傾いている側の磁石50が発生する磁界の方が強くなり、下向きのローレンツ力Fの方が大きくなり、偏差角θを小さくすることができる。実質的に0度にすることも可能である。偏差角θが上記とは逆の場合は、上記とは逆にすれば良い。
【0098】
上述した前段多点ファラデー42、後段多点ファラデー44等を用いて、例えば上記特開2005−195417号公報に記載されている技術と同様に、イオンビーム4の進行方向の2箇所におけるイオンビーム4のY方向の中心位置yf 、yb と両箇所間の距離L3 とに基づいて、次式に従って、上記偏差角θを計測しても良い。
【0099】
[数3]
θ=tan-1{(yb −yf )/L3
【0100】
そして、上記偏差角θの計測データに基づいて、図示しない制御装置によって、偏差角が小さく(例えば実質的に0度に)なるように、上記直流電源74、76ひいては上記励磁電流I1 、I2 を、上記のようにフィードバック制御するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】この発明に係るイオン注入装置の一実施形態を部分的に示す平面図である。
【図2】図1に示す第1の磁石およびイオンビームを拡大して示す平面図である。
【図3】図3の線C−Cに概ね沿って、第1の磁石、第2の磁石およびイオンビームを示す断面図である。
【図4】図3にY方向の磁界を追記した図である。
【図5】イオンビームのX方向における軌道のずれを拡大して示す平面図であり、イオンビームは一筋のみを代表して示している。
【図6】第1の磁石をイオンビームに対して実質的に直角に配置した実施形態を示す平面図であり、イオンビームは一筋のみを代表して示している。
【図7】第1の磁石を、複数の永久磁石を並設することによって構成した例を示す平面図である。
【図8】図1に示すビーム平行化器の上流側近傍に第1および第2の磁石を設けた実施形態を示す平面図である。
【図9】図8の線D−Dに概ね沿って、第1の磁石、第2の磁石およびイオンビームを示す断面図である。
【図10】電磁石で構成された第1の磁石、それ用の電源およびイオンビームの例を示す平面図であり、図2に対応している。
【図11】図10の線E−Eに概ね沿って、第1の磁石、第2の磁石、それ用の電源およびイオンビームを示す断面図である。
【図12】図8に示す第1の磁石を、永久磁石の代わりに電磁石で構成した例を電源と共に示す図である。
【図13】電磁石で構成された第1および第2の磁石を用いて、イオンビームの偏差角を制御する例を説明するための図である。
【図14】参考例として、長手方向の両端に磁極を有する第1の磁石およびイオンビームの例を示す平面図である。
【図15】図14に示す第1の磁石、イオンビームおよび第2の磁石を、図4中の矢印P方向に見て示す正面図である。
【図16】従来のイオン注入装置の一例を示す平面図である。
【図17】図16中のマスクおよびターゲットをイオンビームの進行方向に見て拡大して示す正面図である。
【図18】電界レンズの一例を電源と共に示す側面図である。
【符号の説明】
【0102】
4 イオンビーム
14 ビーム平行化器(イオンビーム偏向器)
24 ターゲット
50 第1の磁石
52 第2の磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向の走査を経て、またはX方向の走査を経ることなく、X方向の寸法が当該X方向と実質的に直交するY方向の寸法よりも大きいリボン状の形をしているイオンビームをターゲットに照射する構成のイオン注入装置において、
前記ターゲットよりも上流側にあって、前記リボン状のイオンビームの経路を挟んでY方向において相対向するように、かつ前記リボン状のイオンビームの進行方向に対して交差するように配置されている第1の磁石および第2の磁石を備えており、
前記第1の磁石および第2の磁石は、それぞれ、前記イオンビームの入口側および出口側に一対の磁極を有していてしかもその極性が第1の磁石と第2の磁石とで逆であり、かつ前記イオンビームに対して両磁石間に内向きのローレンツ力を働かせる方向の磁界を発生させるものである、ことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
前記第1の磁石と前記第2の磁石とは、極性が互いに逆であることを除いて、前記イオンビームの経路のY方向における中心を通りかつX方向およびY方向に実質的に直交する対称面に関して実質的に面対称に配置されている請求項1記載のイオン注入装置。
【請求項3】
前記第1の磁石および第2の磁石は、前記イオンビームの進行方向に対して斜めに交差するように配置されている請求項1または2記載のイオン注入装置。
【請求項4】
前記第1の磁石および第2の磁石は、X方向において実質的に平行に走査されるイオンビームの経路に設けられており、かつ前記第1の磁石および第2の磁石は、実質的に真っ直ぐな形状をしている請求項1、2または3記載のイオン注入装置。
【請求項5】
前記第1の磁石および第2の磁石は、X方向において扇状に走査されるイオンビームの経路に設けられており、かつ前記第1の磁石および第2の磁石は、前記イオンビームの進行方向に張り出した弧状であって、X方向の各走査位置におけるイオンビームの進行方向と、各磁石の一対の磁極間を最短距離で結ぶ直線との成す角度が常に実質的に一定となる弧状をしている請求項1、2または3記載のイオン注入装置。
【請求項6】
前記第1の磁石および第2の磁石は、X方向の走査を経ることなくリボン状をしているイオンビームの経路に設けられており、かつ前記第1の磁石および第2の磁石は、実質的に真っ直ぐな形状をしている請求項1、2または3記載のイオン注入装置。
【請求項7】
前記第1の磁石および第2の磁石は永久磁石である請求項1ないし6のいずれかに記載のイオン注入装置。
【請求項8】
前記第1の磁石および第2の磁石は電磁石である請求項1ないし6のいずれかに記載のイオン注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−135207(P2008−135207A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318435(P2006−318435)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】