説明

イソソルビドグリセリルエーテル誘導体およびそれらの家庭用用途における使用

次の一般式:
【化1】


[式中、RまたはR’は、水素原子または6〜22個のC原子を有するアルキル基またはアシル基を表し、nおよびmは、互いに独立してゼロ、または1〜4の数を表す]
で示されるイソソルビドグリセリルエーテル誘導体およびそれらの洗浄剤または洗剤またはパーソナルケア用途における使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソソルビドグリセリルエーテル誘導体の、洗剤のような家庭用製品における使用、または化粧品用途のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソソルビド(または1,4:3,6−ジアンヒドロソルビトール、以下の式を参照)
【化1】

は、ソルビトールの無水物である。
【0003】
例えば濃硫酸または濃塩酸でソルビトールを加熱すると、2分子の水が脱離するに伴い、イソソルビドが形成される。従来、これらの化合物は、通常、ジアンヒドロへキシトール(イソソルビドに加えて、異性体イソマンニドおよびイソイジドも含む)としても知られている。イソソルビド自体に加えて、イソソルビドの特定の誘導体、特に、それらのモノエステルおよびジエステルが、よく知られている。
【0004】
イソソルビドの特定の誘導体、特にそれらのエステルまたはエーテルは既知である。さらに、イソソルビド誘導体を、洗剤、洗浄剤または化粧品組成物のような種々の用途における添加剤として使用することが知られている。米国特許出願公開第2002/0174596号には、燃料用の洗剤としての種々のイソソルビドエーテルが開示されている。国際公開第01/0191949号には、個人用洗浄組成物の化合物として、ジメチル−イソソルビドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0174596号明細書
【特許文献2】国際公開第01/0191949号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、洗剤および洗浄剤において有用であり、イソソルビド化学に基づく新規な添加剤を見出すことであった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、第1の態様において、一般式(I):
【化2】

[式中、RまたはR’は、水素原子または6〜22個のC原子を有するアルキル基またはアシル基を表し、nおよびmは、nおよびmの合計はゼロより大きいという条件で、互いに独立してゼロ、または1〜4の数を表す]
で示されるイソソルビドグリセリドに関する。一般式(I)で示される化合物は、グリセロールおよびイソソルビドのエーテルである。イソソルビドとグリセロールとのモノエーテルおよびジエーテル、オリゴ−グリセロール、およびグリセロール、ジグリセロールおよびオリゴグリセロールの誘導体のいずれもを含む。化合物は、式(I)で示される異なる化合物の混合物として存在してもよい。
【0008】
Rおよび/またはR’が、10〜22個、好ましくは12〜20個、最も好ましくは14〜18個のC原子を有する直鎖状、飽和アルキル部分を表すものが、好ましい誘導体である。さらに、グリセリド、すなわちグリセロールまたはジグリセロールまたはオリゴグリセロールのアルキルエステルも、好ましい。製造方法によっては、化合物は、式(I)で示される化合物の他に、より少量(すなわち5重量%未満)の副生成物および未反応物を含有する。
【0009】
式(I)で示される化合物の製造を、一般式(II):
【化3】

で示されるイソソルビドグリシジルエーテルを出発として、既知の方法により行うことができる。
【0010】
例えば、米国特許第3,041,300号明細書の教示によれば、イソソルビドは、塩基性触媒の存在下でエピクロロヒドリンと反応し、式(II)で示されるビスグリシジルエーテルを与え得る。第2工程において、HSOのような強酸を添加することによりこのオキシランエーテルを開裂させ、その後、溶液を中和することができる。このような生成物を得るための2つ目の方法は、塩基性触媒の存在下でのアルカノールの使用である。
【0011】
本発明のさらなる態様は、洗剤、洗浄剤など(固形状、液状またはゲル様のもの)を製造するための式(I)で示される化合物の使用、または、化粧品組成物におけるこの化合物の使用に関する。さらに、これらの製剤は、それらが水、界面活性剤および任意にさらなる汎用成分および式(I)で示される少なくとも1つのイソソルビド誘導体を含有する限り、本発明の主題である。
【0012】
式(I)で示されるイソソルビドグリセリルエーテル誘導体は、個々の製剤に応じて、0.1〜25重量%以下の量で存在してよい。これらの洗剤または洗浄剤は、洗浄剤または洗剤の全重量に基づいて1〜15重量%、最も好ましくは5〜10重量%の量のモノエステルを含有することが好ましい。
【0013】
式(I)で示されるイソソルビド誘導体は、洗剤および各種洗浄剤(台所洗浄剤、浴室洗浄剤、硬質表面洗浄剤、自動車用洗浄剤または車洗浄剤、および多目的洗浄剤)のようなホームケア用途において、ならびに食器洗浄組成物(手洗いおよび自動食器洗浄)において、および、特に皮膚および毛髪洗浄製剤のようなパーソナルケア組成物において、特に有利である。
【0014】
本発明による洗剤は、イソソルビドグリセリドの他に、界面活性剤、ビルダー、塩、漂白剤、漂白活性化剤、光学的光沢剤、再堆積防止剤、撥汚剤(soil repellant)、可溶化剤、発泡防止剤および酵素を、補助剤および添加剤として含有してよい。
【0015】
本発明による洗浄剤は、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールまたは好ましくはブチルジグリコールなどの可溶化剤、例えば石鹸などの発泡調整剤、可溶性ビルダー、例えばクエン酸またはクエン酸ナトリウム、EDTAまたはNTA、および研磨剤を、補助剤として含有してよい。多くの場合において、追加の殺菌作用が必要とされるため、多目的洗浄剤は、カチオン性界面活性剤または殺生物剤、例えばグルコプロタミンを含有してよい。本発明の洗浄剤は、アルカリ性(pH>7.5)および酸性(pH<6.5)のいずれでもよい。イソソルビドグリセリルエーテル誘導体を、アニオン性、非イオン性、両性および/またはカチオン性界面活性剤といった他の界面活性剤と製剤化してよい。
【0016】
本発明のアニオン性界面活性剤は、脂肪族サルフェート、例えば脂肪アルコールサルフェート、脂肪アルコールエーテルサルフェート、脂肪酸ポリグリコールエステルサルフェート、ジアルキルエーテルサルフェート、モノグリセリドサルフェートおよび脂肪族スルホネート、例えばアルカンスルホネート、オレフィンスルホネート、エーテルスルホネート、n−アルキルエーテルスルホネート、エステルスルホネート、およびリグニンスルホネートを含む。脂肪酸シアナミド、スルホコハク酸エステル、脂肪酸イセチオネート、アシルアミノアルカンスルホネート(脂肪酸タウリド)、脂肪酸サルコシネート、エーテルカルボン酸およびアルキル(エーテル)ホスフェートを、本発明の目的に使用してもよいが、好ましくはない。本発明の意味するところにおいて、好ましいアニオン性界面活性剤を、脂肪アルコールサルフェート、脂肪アルコールエーテルサルフェートおよび/または脂肪酸ポリグリコールエステルサルフェート、およびそれらの混合物の群から選択する。
【0017】
非イオン性界面活性剤の例は、アルカノールのアルコキシレート、遊離のOH基を含有しないアルカノールの末端キャップされたアルコキシレート、アルコキシ化脂肪酸低級アルキルエステル、アミンオキシド、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルコキシ化トリグリセリド、混合エーテルおよび混合ホルマール、脂肪酸−N−アルキルグルカミド、タンパク質水解物(より具体的には小麦由来植物性産物)、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステルおよびポリソルベートである。非イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含有する場合、それらは、狭い同族体分布を有することが好ましいが、通常の同族体分布を有してよい。他の非イオン性界面活性剤は、アルカノールのアルコキシレート、より具体的には脂肪アルコールポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルまたは脂肪アルコールポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールエーテル、アルカノールの末端キャップされたアルコキシレート、より具体的には末端キャップされた脂肪アルコールポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールエーテルまたは末端キャップされた脂肪アルコールポリプロピレングリコール/ポリエチレングリコールエーテル、および脂肪酸低級アルキルエステルおよびアミンオキシドからなる群から選択することが好ましい。
【0018】
アルキルおよびアルケニルオリゴグリコシドは既知であり、好ましくは、式:R−O−[G](式中、Rは6〜22個の炭素原子を含有するアルキル基および/またはアルケニル基であり、Gは5または6個の炭素原子を含有する糖単位であり、pは1〜10の数である)に相当する非イオン性界面活性剤である。調製有機化学の関連する方法により、それらを得てよい。アルキルオリゴグリコシドおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドを、5または6個の炭素原子を含有するアルドースまたはケトース、好ましくはグルコースから誘導してよい。したがって、好ましいアルキルオリゴグリコシドおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドは、アルキルグルコシドおよび/またはアルケニルオリゴグルコシドである。一般式(V)における添え字pは、オリゴマー化度(DP)、すなわちモノグリコシドおよびオリゴグリコシドの分布を表し、1〜10の数である。ある特定の化合物におけるpは、常に、整数でなければならず、中でも、1〜6の値をとり売るのに対し、ある一定のアルキルオリゴグリコシドについての値pは、通常は分数である、分析的に測定された計算値である。1.1〜3.0の平均オリゴマー化度pを有するアルキルオリゴグリコシドおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドを使用することが好ましい。1.7未満、より具体的には1.2〜1.4のオリゴマー化度を有するアルキルオリゴグリコシドおよび/またはアルケニルオリゴグリコシドが、応用の観点から好ましい。アルキル基またはアルケニル基Rを、4〜11個、好ましくは8〜10個の炭素原子を含有する第1級アルコールから誘導させてよい。
【0019】
カチオン性界面活性剤の例は、第4級アンモニウム化合物および4級化脂肪酸トリアルカノールアミンエステルである。
【0020】
両性界面活性剤または双性イオン性界面活性剤の例は、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート、イミダゾリニウムベタインおよびスルホベタインである。
【0021】
本発明のイソソルビドグリセリルエーテル誘導体は、その発泡特性のために、洗剤において有利な特性を示す。それらは、化粧品製剤においても使用可能となる興味深い保湿特性も示し得る。
【実施例】
【0022】
〔イソソルビドビスグリシジルエーテルの製造〕
容器にイソソルビド73,5gおよびエピクロロヒドリン370gを充填した。溶液を115℃まで加熱した。10時間で、50%水酸化ナトリウム水溶液81gを、沸騰する反応混合物へ漸次添加した。反応の間中、反応混合物から水およびエピクロロヒドリンを蒸留した。その後、水相を分離し、次いで、150℃、真空下で、未反応のエピクロロヒドリンを取り除くよう留去した。粗製物から塩を分離するために、撹拌しながらアセトンを添加し、混合物をろ過した。洗浄後に、アセトンを除去するためにさらなる蒸留工程を行った。イソソルビドビスグリシジルエーテルが得られた。
【0023】
〔イソソルビドジグリセリドの製造〕
イソソルビドビスグリシジルエーテル(26.9g)83mmolの水22mlにおける溶液を、室温(21℃)で調製する。HSO
(30重量%)2mlを滴下する。1時間後、Ca(OH)11mmol(0.8g)を、中和のために添加する。その後、反応混合物をろ過し、真空下で水を除去し、淡黄色の油(収量:20g)を得る。次いで、イソソルビドグリセリルエーテルエステルを得るために、このポリオールを、従来法にしたがいエステル化することができる。
【0024】
イソソルビドのグリセリル誘導体を得るための第2の方法は、脂肪アルコールとの反応を介する、ビスグリシジルエーテルのオキシランの開裂である。このため、イソソルビドビスグリシジルエーテル(75g)326mmolを、ドデカノール(182g)1molおよび触媒としての水酸化カリウム(3.65g、65mmol)の溶液に、100℃で添加する。いったん反応が完了すると、混合物をろ過し、未反応のドデカノールを真空下で除去し、黄色のペーストが得られる(収量:48g)。
【0025】
〔イソソルビドグリセリルエーテル誘導体の性能試験〕
イソソルビドのラウリルグリセリルエーテルを用いて、発泡試験を行った。
界面活性剤混合物:
SLES 9%
ベタイン 3%
グリセリルエーテル誘導体 2%
蒸留水 86%
全ての成分を、共に、自動撹拌装置で混合した。
【0026】
次いで、この界面活性剤混合物の水性溶液2.0重量%を硬水を用いて製造した。その後、ビーカー内で10秒、2000rpmで撹拌し、泡体積を評価した。次いで、得られた泡のサンプルを質の面で評価した。1-2で泡質を測定し、泡の高さは5.5cmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、RまたはR’は、水素原子または6〜22個のC原子を有するアルキル基またはアシル基を表し、nおよびmは、nおよびmの合計はゼロより大きいという条件で、互いに独立してゼロ、または1〜4の数を表す]
で示されるイソソルビドグリセリルエーテル誘導体。
【請求項2】
Rおよび/またはR’が10〜22個、好ましくは12〜20個、最も好ましくは14〜18個のC原子を有する直鎖状、飽和アルキルまたはアシル部分を表す誘導体から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のイソソルビド誘導体。
【請求項3】
請求項1に記載の一般式(I)で示されるイソソルビドグリセリルエーテル誘導体の、洗浄剤、洗剤またはパーソナルケア組成物を調製するための使用。
【請求項4】
式(I)で示される化合物が、Rおよび/またはR’が10〜22個、好ましくは12〜20個、最も好ましくは14〜18個のC原子を有する直鎖状、飽和アルキル部分を表すものから選択されることを特徴とする、請求項2に記載のイソソルビドグリセリルエーテル誘導体の使用。
【請求項5】
イソソルビドグリセリル誘導体が、洗浄剤または洗剤の全重量に基づいて0.1〜25重量%、好ましくは1〜15重量%、最も好ましくは5〜10重量%の量で存在することを特徴とする、請求項2または3のいずれかに記載のイソソルビドグリセリルエーテル誘導体の使用。
【請求項6】
水、界面活性剤、および任意にさらなる汎用成分、および請求項1に記載の式(I)で示される少なくとも1つのイソソルビド誘導体を少なくとも0.1%を含有する、洗浄剤、洗剤またはパーソナルケア組成物。

【公表番号】特表2013−504525(P2013−504525A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528251(P2012−528251)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005368
【国際公開番号】WO2011/029548
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】