説明

イソプレン系化合物の重合用の重合触媒組成物

【課題】ミクロ構造におけるシス−1,4−含有率が高いシス−1,4−イソプレン系重合体を提供する。
【解決手段】一般式(A)で表される錯体、触媒活性化剤及び有機アルミニウム化合物を用いて、イソプレン系化合物を重合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイソプレン系重合体、特に位置及び立体選択的であるイソプレン系重合体(高分子主鎖原子に相異なる二つの側鎖置換基をもつ場合において高いタクチシティーを有する)、好ましくはポリイソプレンの製造方法及びこれに用いる重合触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソプレンは、以下の4つの異なる構造単位を有する可能性がある。すなわち、一般式(I')で表される3,4結合型構造単位、一般式(II')で表されるトランス1,4結合型構造単位、一般式(III')で表されるシス1,4結合型構造単位、及び一般式(IV')で表される1,2結合型構造単位である。
【0003】
【化1】

【0004】
上記の構造単位のうち、一般式(I')で表される構造単位を選択的に有するポリイソプレンの製造について、以下の二つの報告がされている。一つは、アルミニウムアルキル−チタニウムアルコキシド(AlEt3 − Ti(OC3H7-n)4)系の触媒を重合触媒として用いてイソプレンを重合させて、上記重合体を製造するという報告である(非特許文献1参照)。もう一つは、FeCl2にスパルテイン(sparteine)が配位した錯体を重合触媒として用いてイソプレンを重合させて、上記重合体を製造するという報告である(非特許文献2)。
【0005】
一方、一般式(I')で表される構造単位を選択的に有するポリイソプレンは、該構造単位の配列のタクチシティーによって物性が大きく異なると考えられる。一般式(I')で表される構造単位からなるポリイソプレンのように、主鎖原子に相異なる二つの側鎖置換基をもつ高分子には2種類の立体異性が生じ得る。タクチシティーとはこの立体異性を示す部分の高分子主鎖中での配列の仕方あるいは秩序を意味する。相違なる二つの側鎖置換基の一方が、高分子主鎖のつくる平面に対して片方にのみ結合している高分子をアイソタクチック重合体(下記一般式(V)で表される)と称し、平面に対して交互に両方向に結合している高分子をシンジオタクチック重合体(下記一般式(VI)で表される)と称する。また、このような規則性のない高分子をアタクチック重合体と称する。
【0006】
【化2】

【0007】
上記した非特許文献1では、得られたポリイソプレンについてアタクチック重合体であると記載されており、また非特許文献2では、得られたポリイソプレンのタクチシティーに関して記載がされていない。したがって、一般式(I')を選択的に有するポリイソプレンであって、かつ高いタクチシティーを有するポリイソプレンが求められていた。
【0008】
このような技術背景において、高いタクチシティーを有するポリイソプレンを製造する方法が報告されている(特許文献1)。ここでは、メタロセン系触媒を用いてポリイソプレンの重合を行っている。このような触媒を用いてイソプレンの重合を行うことにより、高いタクチシティーを有するポリイソプレンを製造することができるものの、現時点では触媒のコストが高くつくという問題がある。
従って、高いタクチシティーを有するポリイソプレンなどのイソプレン系重合体を低コストで製造するための他の触媒が求められている。
【0009】
一方、アミジンを含む非メタロセン系触媒を用いたポリエチレンを製造することが報告されている(非特許文献3)。ここでは、中心金属を変えることにより、ポリエチレンの収率が変動することが報告されている。しかしながら、高いタクチシティーを有するイソプレン系重合体を製造することについては報告されていない。
【0010】
また、同一の錯体を用いた触媒組成物において、添加物の有無により、重合反応の立体選択性が変化する例はこれまで報告されていない。
【特許文献1】国際公開第05/085306号パンフレット
【非特許文献1】Makromolekulare Chem (1964), 77, pp.126-138.
【非特許文献2】Macromolecules (2003), 36, pp.7953-7958.
【非特許文献3】J. AM. CHEM. SOC. (2004), 126, pp.9182-9183.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような状況下でなされたものであり、下記一般式(Y)で表される構造単位を選択的に有するイソプレン系重合体であって、ミクロ構造におけるシス−1,4−含有率が高いシス−1,4−イソプレン系重合体を製造する方法を見出したものである。
【0012】
【化3】

(一般式(Y)中、R4は炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は以下の通りである。
(1)一般式(A)で表される錯体、触媒活性化剤及び有機アルミニウム化合物を含むことを特徴とする、一般式(X)で表されるイソプレン系化合物の重合用の重合触媒組成物。
【0014】
【化4】

【0015】
(一般式(A)において、
1及びR2はそれぞれ独立して、アルキル基、シクロヘキシル基、アリール基又はアラルキル基を示し、
3はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基、脂肪族、芳香族又は環状のアミノ基、若しくはホスフィノ基、ボリル基、アルキル又はアリールチオ基、アルコキシ又はアリールオキシ基を示し、
Mは、スカンジウムSc、イットリウムY又はプロメチウムPmを除くランタンLaからルテチウムLuまでの希土類元素の何れかを示し、
1およびQ2はそれぞれ独立して、モノアニオン性配位子を示し、
Lは中性ルイス塩基を示し、wは0〜3の整数を示す。)
【0016】
【化5】

【0017】
(一般式(X)においてR4は炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
(2)一般式(A)におけるR1及びR2が2,6−ジイソプロピルフェニル基を示し、R3がフェニル基を示すことを特徴とする、(1)に記載の重合触媒組成物。
(3)一般式(A)で表される錯体が、一般式(B)で表される化合物であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の重合触媒組成物。
【0018】
【化6】

【0019】
(一般式(B)において、Mは、スカンジウムSc、イットリウムY又はプロメチウムPmを除くランタンLaからルテチウムLuまでの希土類元素の何れかを示す。)
(4)一般式(A)で表される錯体が、一般式(C)で表される化合物であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の重合触媒組成物。
【0020】
【化7】

【0021】
(一般式(C)において、Mは、スカンジウムSc、イットリウムY又はプロメチウムPmを除くランタンLaからルテチウムLuまでの希土類元素のうち何れかを示す。)
(5)一般式(A)における中心金属がイットリウムYを示すことを特徴とする、(1)〜(4)の何れかに記載の重合触媒組成物。
(6)前記触媒活性化剤が、非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物であることを特徴とする、(1)〜(5)の何れかに記載の重合触媒組成物。
(7)前記非配位性アニオンが4価のホウ素アニオンであることを特徴とする、(6)に記載の重合触媒組成物。
【0022】
(8)前記有機アルミニウム化合物が、トリ(ヒドロカルビル)アルミニウムであることを特徴とする、(1)〜(7)の何れかに記載の重合触媒組成物。
(9)前記トリ(ヒドロカルビル)アルミニウムが、トリメチルアルミニウムであることを特徴とする、(8)に記載の重合触媒組成物。
(10)一般式(X)で表されるイソプレン系化合物を、(1)〜(9)の何れかに記載の重合触媒組成物を用いて重合させることを特徴とする、イソプレン系重合体の製造方法。
【0023】
(11)一般式(X)におけるR4がメチル基であることを特徴とする、(10)に記載の製造方法。
(12)前記重合が溶液重合であって、重合反応温度が0℃以下であることを特徴とする、(10)又は(11)に記載の製造方法。
(13)前記イソプレン系重合体が、シス−1,4−イソプレン系重合体であることを特徴とする、(10)〜(12)の何れかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、下記一般式(Y)で表される構造単位を有するミクロ構造におけるシス−1,4−含有率が高いシス−1,4−イソプレン系重合体を製造する方法が提供される。
【0025】
【化8】

(一般式(Y)中、R4は炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<本発明の重合触媒組成物>
本発明の重合触媒組成物は、前記一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を含むことを特徴とする。
【0027】
一般式(A)において、R1及びR2はそれぞれ独立してアルキル基、置換若しくは無置換のシクロヘキシル基、アリール基又はアラルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等を例示できる。置換のシクロヘキシル基としては、アルキル基を置換基とするシクロヘキシル基、例えばメチルシクロヘキシル基等を例示できる。無置換のアリール基としては、例えばフェニル基を例示でき、置換のアリール基としては、例えばアルキル基を置換基とするフェニル基等を例
示できる。無置換のアラルキル基としては、例えばベンジル基を例示でき、置換のアラルキル基としては、例えばアルキル基を置換基とするベンジル基等を例示できる。この中でもアルキル基を置換基とするフェニルが好ましく、特に2,6−ジイソプロピルフェニル基が好ましい。R1及びR2は同一でも異なっていてもよいが、R1及びR2は共にアルキル基を置換基とするフェニル基であることが好ましく、共に2,6−ジイソプロピルフェニル基であることがさらに好ましい。
【0028】
3はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基、脂肪族、芳香族又は環状のアミノ基、若しくはホスフィノ基、ボリル基、アルキル又はアリールチオ基、アルコキシ又はアリールオキシ基を示す。この中でもアリール基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0029】
さらに、本発明の重合触媒組成物に含まれる錯体は、R1及びR2が、共に2,6−ジイソプロピルフェニル基であり、かつR3がフェニル基であるN,N'-ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)ベンズアミジナート(NCN)の構造を有することが好ましい。
【0030】
一般式(A)において、中心金属Mは、スカンジウムSc、イットリウムY又はプロメチウムPmを除くランタンLaからルテチウムLuまでの希土類元素の何れかを示す。本発明の重合触媒組成物に含まれる錯体においては、中心金属Mは重合させようとするモノマーの種類、併用する有機アルミニウム化合物の種類などに応じて適宜選択されうるが、スカンジウムSc、イットリウムY又はルテチウムLuが好ましく、特にイットリウムYが好ましい。
【0031】
一般式(A)において、Q1およびQ2はモノアニオン性配位子である。モノアニオン性配位子としては、1)ヒドリド、2)ハライド、3)置換もしくは無置換の、炭素数1〜20のヒドロカルビル基、4)置換もしくは無置換の、炭素数1〜20のアルコキシ基もしくはアリールオキシ基、5)置換もしくは無置換の、炭素数1〜20のアミド基(シリルアミド基を含む)、6)ホスフィノ基などが例示され、ヒドロカルビル基が好ましく例示されるが、これらに限定されるわけではない。
また、Q1およびQ2は互いに結合するか、あるいは一緒になってジアニオン性配位子となっていてもよい。ジアニオン性配位子としては、アルキリデン、ジエン、シクロメタル化されたヒドロカルビル基、または二座のキレート配位子などが挙げられる。
【0032】
前記ハライドは、クロリド、ブロミド、フルオリド及びアイオダイドのいずれでもよい。
前記炭素数1〜20のヒドロカルビル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基、ビニル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、アリル基、メタリル基、クロチル基等のアルケニル基、エチニル基、3,3−ジメチル−1−ブチニル基等のアルキニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルエチル基等のフェニルアルキル基等のアラルキル基、トリアルキルシリルメチル基、ビス(トリアルキルシリル)メチル基、2−フェニルエチニル基、2−(トリメチルシリル)エチニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、アミノフェニル基、o-N,N−ジメチルアミノベンジル基等のアミノベンジル基、o-(メチルチオ)ベンジル基等のチオベンジル基、o-メトキシベンジル基等のアルコキシベンジル基、o-(ジメチルホスフィノ)ベンジル基等のホスフィノベンジル基などでもよい。
【0033】
本発明においてはQ1及びQ2は、トリアルキルシリルメチル基又はアミノベンジル基で
あることが好ましい。トリアルキルシリルメチル基のシリル元素上の3個のアルキル基は、炭素原子数1〜6程度、好ましくは炭素原子数1〜4程度の直鎖又は分岐鎖基が挙げられ、さらに好ましくはメチル基が挙げられる。該トリアルキルシリルとしては、例えばトリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリルなどが挙げられる。アミノベンジル基としては、o-N,N−ジメチルアミノベンジル基が好ましく挙げられる。
【0034】
前記アルコキシ基またはアリールオキシ基は、好ましくはメトキシ基、置換または無置換のフェノキシ基などである。
前記アミド基は、好ましくはジメチルアミド基、ジエチルアミド基、メチルエチルアミド基、ジ−t−ブチルアミド基、ジイソプロピルアミド基、無置換または置換ジフェニルアミド基、ビス(トリメチルシリル)アミド基などである。
前記ホスフィノ基は、好ましくはジフェニルホスフィノ基、ジシクロヘキシルホスフィノ基、ジイソプロピルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基などである。
【0035】
前記アルキリデンは、好ましくはメチリデン、エチリデン、プロピリデン、ベンジリデンなどである。
前記シクロメタル化されたヒドロカルビル基は、好ましくはプロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレンなどである。
前記ジエンは、好ましくは1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエンなどである。
【0036】
前記一般式(A)におけるLは中性ルイス塩基である。中性ルイス塩基としてはテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウムなどが例示される。この中でも、テトラヒドロフランが好ましい。
また中性ルイス塩基Lは、Q1および/またはQ2と結合していわゆる多座配位子となっていてもよい。
一般式(A)におけるLwのwは、中性ルイス塩基の個数を示す。wは、中心金属Mの種類などに応じて異なるが、通常は0〜3の整数であり、好ましくは0または1である。
【0037】
また、本発明の重合用触媒組成物に含まれる一般式(A)で表される錯体は、前記一般式(B)又は(C)で表される化合物であることが好ましい。一般式(B)又は(C)において中心金属Mは、スカンジウムSc、イットリウムY又はプロメチウムPmを除くランタンLaからルテチウムLuまでの希土類元素の何れかを示す。本発明の重合触媒組成物に含まれる錯体においては、中心金属Mは重合させようとするモノマーの種類、併用する有機アルミニウム化合物の種類などに応じて適宜選択されうるが、スカンジウムSc、イットリウムY又はルテチウムLuが好ましく、特にイットリウムYが好ましい。
【0038】
本発明の重合触媒組成物に含まれる触媒活性化剤は、イオン性化合物、アルキルアルミニウム化合物又はルイス酸などであり、好ましくは非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物を含む。前記触媒活性化剤は、本発明の錯体を活性化させて重合触媒としての活性を発揮させる。その活性化メカニズムとして、前記錯体が触媒活性化剤と反応して、前記錯体の希土類金属原子に複数個配位しているQ1又はQ2が脱離し、カチオン性の錯体(活性種)が生成すると考えることができる。
【0039】
イオン性化合物の非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが好ましく、テトラ(フェニル)ボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート
、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(ペンタフルオロフェニル)トリフェニルボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレートなどが挙げられる。
【0040】
イオン性化合物のカチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリス(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンを挙げることができる。アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリt−ブチルアンモニウムカチオン、トリn−ブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンを挙げることができる。
【0041】
すなわち、前記イオン性化合物として、前記した非配位性アニオンおよびカチオンからそれぞれ選ばれるものを組み合わせたものを用いることができる。好ましくは例えば、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1'-ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが例示される。この中でも、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いることが好ましい。イオン性化合物は1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるルイス酸として、B(C6F5)3、Al(C6F5)3などを用いることができ、これらを前記のイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明の重合触媒組成物に含まれる有機アルミニウム化合物は、好ましくはトリ(ヒドロカルビル)アルミニウムである。
前記ヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルエチル基等のフェニルアルキル基等のアラルキル基が挙げられる。トリ(ヒドロカルビル)アルミニウムの具体例としては、トリアルキルアルミニウム等を挙げることができる。トリアルキルアルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、ジエチルメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジメチルフェニルアルミニウム、ベンジルジメチルアルミニウムなどを挙げることができる。有機アルミニウム化合物は錯体における中央金属に応じて適宜選択され、例えば中心金属がイットリ
ウムYの場合、この中でも、トリメチルアルミニウムを用いることが好ましい。
【0043】
本発明の重合触媒組成物は、一般式(A)で表される錯体の少なくとも1つと触媒活性化剤の少なくとも1つを含みうるが、好ましくは、一般式(B)及び(C)で表される錯体の少なくとも1つとトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([Ph3C][B(C6F5)4])及びN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([PhMe2NH][B(C6F5)4])の少なくとも1つを含むことが好ましい。特に、 (NCN)Y(CH2SiMe3)2(THF)及び(NCN) Y(CH2C6H4NMe2-o)2から選ばれる錯体と、[Ph3C][B(C6F5)4]を含むことが好ましい。
【0044】
本発明の重合触媒組成物において、一般式(A)で表される錯体は任意の量を用いることができ、重合させるイソプレン系化合物の量及び製造の目的とするイソプレン系重合体の分子量に応じて調節することができる。好ましくは、後述するイソプレン系重合体の製造方法に用いるのに適した量とすることができる。触媒活性化剤の量も同様に調節することができるが、通常、前記錯体1モルに対して0.5から5モル、好ましくは約1倍モルである。
【0045】
有機アルミニウム化合物の量は、通常、前記錯体における中心金属含量(モル)に対して1から1000倍、好ましくは3から10倍である。
【0046】
さらに、イソプレン系重合体の製造方法に用いられる重合触媒は、2種以上の有機アルミニウム系化合物やアルミノキサンなど第四成分を含んでいてもよい。本発明の重合触媒組成物においては有機アルミニウム化合物を含むことにより、重合反応の立体選択性が逆転するが、このような作用以外にも、有機アルミ系化合物やアルミノキサンを加えると、反応系内の不純物の除去や連鎖移動が促進されると考えられるので、触媒活性や得られたポリマーの分子量などが変わることが予想される。
【0047】
本発明の重合触媒組成物は、前記一般式(X)で表されるイソプレン系化合物の重合用として用いられる。一般式(X)においてR1はアルキル基又はアルケニル基を示す。例えば、炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基又はアルケニル基であり、特に好ましくはメチル基又は4−メチル−3−ペンテニル基である。
【0048】
<本発明のイソプレン系重合体の製造方法>
高いアイソタクチシティーを有するイソプレン系重合体は、一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を用いて、前記一般式(X)で表されるイソプレン系化合物を重合させることにより製造することができる。
ポリマーのミクロ構造におけるシス−1,4−含有率の高いイソプレン系化合物は、一般式(A)で表される錯体、触媒活性化剤及び適量の有機アルミニウム化合物を用いて、前記一般式(X)で表されるイソプレン系化合物を重合させることにより製造することができる。
【0049】
一般式(A)で表される錯体は、例えば下記のスキームに従って製造することが可能である。当業者は下記に示す一般的合成スキームを参照しつつ、出発原料、反応試薬、反応条件などを適宜選択し、必要に応じてこれらの方法に適宜の修飾ないし改変を加えることにより、一般式(A)で表される錯体を容易に製造することができる。なお、一般式(A)で表される錯体の合成については、J. AM. CHEM. SOC. 2004, 126, 9182-9183に記載の内容を参照することもできる。
【0050】
【化9】

【0051】
イソプレン系重合体の製造において、該錯体の使用量は、イソプレン系化合物の1モルに対して、通常は0.00001から0.05モル、好ましくは0.0001から0.01モルである。イソプレンに対して該錯体の量を減らせば、得られるイソプレン系重合体の分子量を大きくすることができ、逆に該錯体の量を増やせばイソプレン系重合体の分子量を小さくすることができる。
【0052】
イソプレン系重合体の製造において、触媒活性化剤の量は、一般式(A)で表される錯体の1モルに対して、通常は0.5から5モル、好ましくは約1倍モルである。
【0053】
有機アルミニウム化合物の量は、通常、前記錯体における中心金属含量(モル)に対して1から1000倍、好ましくは3から10倍である。
【0054】
本発明のイソプレン系重合体の製造方法は、付加重合法、重縮合法、重付加法、又はその他の方法であり得るが、好ましくは付加重合法である。
【0055】
また、本発明のイソプレン系重合体の製造方法は、気相重合法、溶液重合法、スラリー重合法などの任意の方法であり得る。溶液重合法による場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、イソプレン系化合物及び触媒を溶解させ得る溶媒であれば特に限定されない。例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロルエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフランやジエチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。これらの溶媒のうち、0℃より低い融点を有するものが好ましく、−20℃より低い融点を有するものがより好ましい。具体的には、芳香族炭化水素、特にクロロベンゼンが好ましい。溶媒は1種を単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせた混合溶媒を用いてもよい。
また、用いられる溶媒の量は、通常は重合触媒に含まれる錯体の濃度が0.00001〜0.1M、好ましくは0.0001〜0.01Mとなるように調節することができる。
【0056】
本発明の重合を溶液重合で行う場合の重合反応温度は、任意の温度、例えば−100〜100℃の範囲で行いうる。通常は25℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは−10℃以下、さらに好ましくは−20℃以下であり得る。一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を用いた場合には、重合温度を低下させることで、得られるイソプレン系重合体に含まれる構造単位(I’)の配列のタクチシティー(アイソタクチシティー)を高めることができる。つまり、重合温度を調整することによって該アイソタクチシティーを調整することができる。
一般式(A)で表される錯体、触媒活性化剤及び有機アルミニウム化合物を用いた場合には、重合温度を低下させることで、得られる構造単位(III’)の配列の含有率の高いイソプレン系重合体のシス−1,4−含有率を高めることができる。つまり、重合温度を調整することによって、シス−1,4−含有率の高い重合体のシス−1,4−含有率を
調整することができる。
【0057】
反応時間は、例えば1分〜100時間程度であり、通常は1分〜24時間、好ましくは1〜60分である。もっとも、これらの反応条件は、重合反応温度、モノマーの種類や量、触媒組成物の種類や量などに応じて、適宜選択することが可能であり、上記に例示した範囲に限定されることはない。本発明は上記のようにより低温で重合させることが好ましいので、温度を下げることによって反応性が下がる場合には重合時間を長くすることが好ましい。
【0058】
本発明のイソプレン系重合体の製造方法は、反応系中に錯体(及び有機アルミニウム化合物)、イソプレン系化合物及び触媒活性化剤、並びにその他の化合物を任意の順序で添加して実施すればよいが、通常は錯体(及び有機アルミニウム化合物)とイソプレン系化合物の混合物中に、触媒活性化剤を添加して実施する。一方、錯体(及び有機アルミニウム化合物)と触媒活性化剤の混合物中に、イソプレン系化合物を添加して重合反応を行うと、得られるイソプレン系重合体の分子量分布曲線は、複数のピークを有することがある(すなわち、分子量分布のピークが互いに異なるイソプレン系重合体の混合物が得られることがある)。
【0059】
重合反応が所定の重合率に達した後、公知の重合停止剤(例えばBHT(2,6-ビス(t-ブチル)-4-メチルフェノールを含有するメタノール))を重合系に加えて停止させ、次いで通常の方法に従い生成した重合体を反応系から分離することができる。
【0060】
<本発明のイソプレン系重合体>
本発明の製造方法を用いて一般式(X)で表されるイソプレン系化合物を重合させて得られるイソプレン系重合体は、下記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)で表される構造単位(以下、それぞれについて、単に「構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)」とも称する。)を任意の比率で含みうる。構造単位(I)〜(IV)におけるR4はアルキル基又はアルケニル基である。さらに好ましくは、R4はメチル基であり、すなわち本発明の製造方法により製造される最も好ましいイソプレン系重合体はポリイソプレンである。また、R4として4−メチル−3−ペンテニル基も好ましく例示され、すなわち、好ましい重合体としてミルセン重合体が挙げられる。
【0061】
【化10】

【0062】
一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を用いた製造方法により製造されるイソプレン系重合体に含まれる構造単位(I)の、該重合体のミクロ構造における割合は、通常は60%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。なお、本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体は、構造単位(I)以外に、構造単位(II)〜(IV)を任意の比率で含みうる。各構造単位のミクロ構造における割合は、得られるイソプレン系重合体のNMRスペクトルを測定し、各構造単位に帰属されるピークの積分値を求めて、それを比較することで算出することができる。該算出については、本願明細書において後に説明されている。
【0063】
また、触媒系に有機アルミニウム化合物を含む本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体に含まれる構造単位(III)の、該重合体のミクロ構造における割合は、通常は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。
【0064】
イソプレン系重合体に含まれる構造単位(I)は通常、頭−尾(head to tail)結合して配列しているが、その配列において下記するような2つの立体異性が生じ得る。すなわち、高分子主鎖がつくる平面に対する1- アルキルビニル基もしくは1-アルケニルビニル基(-C(R4)=CH2)、又は水素原子の結合の方向により、2つの立体異性が生じ得る。本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体に含まれる構造単位(I)は、立体規則性をもって配列しており、好ましくは高アイソタクチックに配列している。高アイソタクチックに配列しているとは、一般式(I)における1- アルキルビニル基もしくは1-アルケニルビニル基(又は水素原子)が、高分子主鎖がつくる平面に対して一方の面側に選択的に配置されていることをいう。
【0065】
【化11】

【0066】
具体的には、一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を用いた製造方法により製造されるイソプレン系重合体に含まれる構造単位(I)の配列のアイソタクチシティーは、トリアッド表示で少なくとも60%mm以上、通常は80%mm以上、好ましくは90%mm以上、より好ましくは95%mm以上、さらに好ましくは99%mm以上、最も好ましくはペンタット表示で99%mmmm以上である。
【0067】
ここで、トリアッド表示について簡単に説明する。イソプレン系重合体中の、構造単位(I)の三連鎖(「トリアッド」という)は、以下のように、アイソタクチックトリアッド、ヘテロタクチックトリアッド、シンジオタクチックトリアッドの3種類が考えられる。トリアッド表示によるアイソタクチシティーとは、重合体中における「アイソタクチックトリアッド、ヘテロタクチックトリアッド及びシンジオタクチックトリアッドの合計」に対する「アイソタクチックトリアッド」の割合を意味し、その割合の百分率が‘%mm’で表示される。
【0068】
【化12】

【0069】
また、ペンタッド表示によるアイソタクチシティーとは、構造単位(I)の五連鎖(「ペンタッド」という)に注目して、トリアッド表示と同様にして、ペンタッドのうちのアイソタクチックペンタッドの割合を示したものであり、その割合の百分率は‘%mmmm’で表示される。
【0070】
イソプレン系重合体に含まれる構造単位(I)の配列のアイソタクチシティーは、上記のとおりトリアッド表示又はペンタッド表示により表され得る。なお、イソプレン系重合体のトリアッド表示又はペンタッド表示によるアイソタクチシティーは、得られるイソプレン系重合体のNMRスペクトルデータ(好ましくは13C−NMR)から算出することができる。この算出については、本願明細書において後に説明されている。
【0071】
一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を用いた本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体の平均分子量は任意であるが、数平均分子量で、少なくとも5千以上、通常5万以上、好ましくは10万以上である。なお数平均分子量の上限は特に限定されないが、目安として600万以下であり得る。該数平均分子量は、GPC法により測定した数平均分子量を意味し、例えばGPC測定装置(TOSOH HLC 8220 GPC)を用いて測定することができる。
【0072】
触媒系に有機アルミニウム化合物を含む本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体の平均分子量は任意であるが、数平均分子量で、少なくとも5千以上、通常1万以上、好ましくは10万以上である。なお数平均分子量の上限は特に限定されないが、目安として1000万以下であり得る。
【0073】
一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を用いた本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体の分子量分布は、Mw/Mnで表した場合、通常は6以下、好ましくは3以下、より好ましくは1.7以下である。該分子量分布は、GPC法により測定した分子量分布を意味し、例えばGPC測定装置(TOSOH HLC 8220 GPC)を用いて測定することができる。
【0074】
触媒系に有機アルミニウム化合物を含む本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体の分子量分布は、Mw/Mnで表した場合、通常は3以下、好ましくは2以下、より
好ましくは1.5以下である。
【0075】
一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を用いた本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体は、炭素二重結合を含む1- アルキルビニル基又は1- アルケニルビニル基を側鎖として有している。該ビニル基の炭素二重結合はヒドロシリル化やヒドロホウ素化、エポキシ化することができる。
【0076】
本発明の製造方法により製造されるイソプレン系重合体は、単独重合体は勿論のこと、共重合体も含みうる。この様な共重合体としては、例えばイソプレンとイソプレン以外のイソプレン系化合物との共重合体や、イソプレンと共役ジエンとの共重合体であり得る。また、イソプレン系化合物と非極性モノマー(エチレン、スチレンなどを含む)あるいは極性モノマー(ラクトン、アクリル酸エステルなどを含む)との共重合体でもあり得る。
【0077】
イソプレン系重合体は、1H−NMR分析、13C−NMR分析、GPC法による平均分子量および分子量分布の測定、IR測定、質量分析などにより同定することができる。なお、本願明細書において「NMR分析」とは、400MHzの周波数における核磁気共鳴分光法による分析を意味する。例えばNMR分析装置であるJEOL製JNM-AL-400RNを用いて該分析を行うことができる。また「NMRスペクトルデータ」とは該分析により得られたスペクトルデータを意味する。なお測定溶媒は重クロロホルムCDCl3、測定温度は25℃(室温)である。
【0078】
イソプレン系重合体の、各構造単位のミクロ構造における割合は、以下の既知文献(W.
M. Dong, T. Masuda, J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem., 40, 1838(2002)、A. S.
Khatchaturov, E. R. Dolinskaya, L. K. Prozenko, E. L. Abramenko and V. A. Kormer, Polymer, 18, 871, (1976))の記載に基づき、NMRスペクトルデータから求めることができる。
【0079】
また、イソプレン系重合体に含まれる一般式(I)で表される構造単位(構造単位(I))の配列のアイソタクチシティーは、NMRスペクトルデータから求めることができる。例えば、図8及び図9は、ポリイソプレンであって、ミクロ構造における構造単位(I)の割合が92%であって、かつ構造単位(I)の配列のアイソタクチシティーが36%mmである重合体の1H-NMR及び13C−NMRの測定チャートである。図8及び図9においては、アイソタクチックトリアッド(mm)に帰属されるピークの他、ヘテロタクチックトリアッド(mr)に帰属されるピークやシンジオタクチックトリアッド(rr)に帰属されるピークが認められる。一方、図1及び図2は、ポリイソプレンであって、ミクロ構造における構造単位(I)の割合が99.8%であって、かつ構造単位(I)の配列のアイソタクチシティーが99%mmmmである重合体の1H-NMR及び13C-NMRの測定チャート、図5及び図6はポリイソプレンであって、ミクロ構造における構造単位(I)の割合が99.0%であって、かつ構造単位(I)の配列のアイソタクチシティーが80%mmmmである重合体の1H-NMR及び13C-NMRの測定チャート、である。図1、図2、図5、図6においては、図8及び9において観察された、ヘテロタクチックトリアッド(mr)に帰属されるピークやシンジオタクチックトリアッド(rr)に帰属されるピークがほぼ消失していることがわかる。さらに、アイソタクチックトリアッド(mm)に帰属されるピークも、選択的にアイソタクチックペンタッド(mmmm)に帰属されることがわかる。したがって、これらのピークの積分値を比較することにより、イソプレン系重合体に含まれる構造単位(I)の配列のアイソタクチシティーを求めることができる。
【実施例1】
【0080】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。
<錯体の合成>
Y(CH2C6H4NMe2-o)3 (0.384g, 0.781mmol)のトルエン(4ml)溶液の入った100mlフラスコに、(NCN)H (bis(2,6-diisopropylphenyl)benzamidine) (0.344 g, 0.781 mmol)のn-ヘキサン(6ml)溶液を滴下し、一晩攪拌した。反応混合液は明るい淡黄色に変化した。次いで反応混合液から低沸点化合物を除去後、減圧乾燥し、定量的に淡黄色の粉体を得た。これを冷却したヘキサン3mlで速やかに洗い、トルエン3mlと少量のn-ヘキサン中で再結晶させ、(NCN)Y(CH2C6H4NMe2-o)2を結晶として単離した(0.529g, 収率85%)。また、Y(CH2C6H4NMe2-o)3の代わりにSc(CH2C6H4NMe2-o)3を用いることによって(NCN)Sc(CH2C6H4NMe2-o)2を得た。
【0081】
【化13】

【0082】
J. AM. CHEM. SOC. 2004, 126, 9182-9183に記載の方法に従って、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)、(NCN)Y(CH2SiMe3)2(THF)、(NCN)Lu(CH2SiMe3)2(THF)を得た。
【0083】
【化14】

【0084】
<ポリイソプレンの製造>
以下の実施例及び比較例で得られた化合物は1H−NMR, 13C−NMR(JEOL製JNM-AL 400RN)、GPC(TOSOH HLC-8220)、UV(SHIMAZDZU CORPRATION UV-PC SERIES UV-2400PC/UV-2500PC)により同定した。元素分析は、理化学研究所化学分析室により分析された。
【0085】
【化15】

【0086】
<比較例1>
グローブボックス中で、滴下漏斗を取り付けたフラスコ (100 ml)に磁気攪拌子を入れ、イソプレン (1.022 g, 15.0 mmol)、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF) (0.015 g, 0.020mmol)、クロロベンゼン溶液(4ml)を加えた。次いで、[Ph3C][B(C6F5)4] (0.018 g, 0.020mmol)のクロロベンゼン溶液(1ml)を滴下漏斗へ加えた。この反応装置を、グローブボックス外に移動し、クーリングバス(−10℃)に設置した。10分後、[Ph3C][B(C6F5)4]のクロロベンゼン溶液をフラスコ内のイソプレンと(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)を含む混合溶液に
滴下し、高速攪拌した。この混合溶液を−10℃で20分攪拌した後、メタノールを加えることにより重合を終了させた。反応溶液を少量の塩酸および安定剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むメタノール溶液200 mlに注いだ。デカンテーションにより沈殿したポリマー生成物を単離し、小さく切断した後、メタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、1.021 gのポリマーを得た(収率:100%)。得られたポリマーの1H−NMRスペクトルチャートを図1に、13C−NMRスペクトルチャートを図2に示す。NMRスペクトルは、室温で重クロロホルムを溶媒として測定した。また、GPCチャートを図3に、DSCチャートを図4に示す。
【0087】
<比較例2>
比較例1における反応時間を20分間から10分間に変更したこと以外は、比較例1と同様にしてポリマーを得た。
<比較例3>
比較例1における反応時間を20分間から5分間に変更し、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Y(CH2SiMe3)2(THF)を用いたこと以外は、比較例1と同様にしてポリマーを得た。
<比較例4>
比較例1において、反応温度を−10℃から室温に変更し、反応時間を20分間から5分間に変更したこと以外は、比較例1と同様にしてポリマーを得た。
得られたポリマーの1H−NMRスペクトルチャートを図5に、13C−NMRスペクトルチャートを図6に示す。NMRスペクトルは、室温で重クロロホルムを溶媒として測定した。また、DSCチャートを図7に示す。
【0088】
<比較例5>
比較例4において、[Ph3C][B(C6F5)4]に代えて[PhMe2NH][B(C6F5)4]を用いたこと以外は、比較例4と同様にしてポリマーを得た。
<比較例6>
比較例4において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Y(CH2SiMe3)2(THF)を用いたこと以外は、比較例4と同様にしてポリマーを得た。
【0089】
<比較例7>
比較例6において、[Ph3C][B(C6F5)4]に代えて[PhMe2NH][B(C6F5)4]を用いたこと以外は、比較例6と同様にしてポリマーを得た。得られたポリマーの1H−NMRスペクトルチャートを図8に、13C−NMRスペクトルチャートを図9に示す。NMRスペクトルは、室温で重クロロホルムを溶媒として測定した。
<比較例8>
比較例6において、[Ph3C][B(C6F5)4]に代えてB(C6F5)3を用いたこと以外は、比較例6と同様にしてポリマーを得た。
【0090】
<比較例9>
比較例4において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF) (0.015 g, 0.020mmol)のクロロベンゼン溶液(8ml)と[Ph3C][B(C6F5)4] (0.018 g, 0.020mmol)のクロロベンゼン溶液(2ml)を用いたこと以外は、比較例4と同様にしてポリマーを得た。
<比較例10>
比較例9において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Y(CH2SiMe3)2(THF)を用いたこと以外は、比較例9と同様にしてポリマーを得た。
<比較例11>
比較例9において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Lu(CH2SiMe3)2(THF)を用いたこと以外は、比較例9と同様にしてポリマーを得た。
<比較例12>
比較例9において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Sc(CH2C6H4NMe2-o)2を用いたこと以外は、比較例9と同様にしてポリマーを得た。
【0091】
<比較例13>
比較例9において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Y(CH2C6H4NMe2-o)2を用いたこと以外は、比較例9と同様にしてポリマーを得た。
<比較例14>
比較例9において、反応温度を室温から−10℃に変更し、反応時間を5分間から20分間に変更したこと以外は、比較例9と同様にしてポリマーを得た。
<比較例15>
比較例14において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Y(CH2SiMe3)2(THF)を用いたこと以外は、比較例14と同様にしてポリマーを得た。
【0092】
<比較例16>
比較例15において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Lu(CH2SiMe3)2(THF)を用いたこと以外は、比較例15と同様にしてポリマーを得た。
<比較例17>
比較例15において、(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)に代えて(NCN)Sc(CH2C6H4NMe2-o)2を用いたこと以外は、比較例15と同様にしてポリマーを得た。
<比較例18>
比較例17において、反応時間を20分間から30分間に変更したこと以外は比較例17と同様にしてポリマーを得た。
【0093】
<比較例19>
比較例17において、予め(NCN)Sc(CH2C6H4NMe2-o)2を[Ph3C][B(C6F5)4]で10分間活性化した後、イソプレンを加えて30分間攪拌したこと以外は比較例17と同様にしてポリマーを得た。
<比較例20>
比較例17において、(NCN)Sc(CH2C6H4NMe2-o)2に代えて(NCN)Y(CH2C6H4NMe2-o)2を用いたこと以外は比較例17と同様にしてポリマーを得た。
<比較例21>
比較例10において、反応温度を室温から−20℃に変更したこと以外は比較例10と同様にしてポリマーを得た。
【0094】
表1に実施例及び比較例で得られたポリイソプレンの収率(%)、数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn、全ポリイソプレンに対する3,4−ポリイソプレンの割合(%)、トリアッド表示及びペンタッド表示でのアイソタクチシティー(%)、ガラス転移温度Tg(℃)、融点Tm(℃)を示す。なお、3,4−ポリイソプレン以外の生成物は、1,4−ポリイソプレンであった。
表1から本発明の重合触媒組成物を用い、反応条件を適宜選択することにより、アイソタクチシティーが高いポリイソプレンが製造できることが分かる。特に、錯体として(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)や(NCN)Sc(CH2C6H4NMe2-o)2を用い、触媒活性化剤として[Ph3C][B(C6F5)4]を用いた場合には、アイソタクチシティーが高い3,4−ポリイソプレンが製造できることが分かる。
【0095】
<比較例22>
(NCN)Sc(CH2SiMe3)2(THF)、(NCN)Y(CH2SiMe3)2(THF)について、触媒活性化剤を加えずに、反応温度を室温とし、反応時間を30分間として上記比較例と同様にして反応を行ったが、ポリマーは得られなかった。
【0096】
【表1】

【0097】
<イソプレンの重合における立体選択性に対するアルキルアルミニウム化合物の作用>
【0098】
【化16】

【0099】
<実施例1>
グローブボックス中で、滴下漏斗を取り付けたフラスコ (100 ml)に磁気攪拌子を入れ、 (NCN)Y(CH2C6H4NMe2-o)2 (0.016 g, 0.020mmol)を含むクロロベンゼン溶液(8 ml)、イソプレン (1.022 g, 15.0 mmol)、1Mトリメチルアルミニウムトルエン溶液(0.1 ml, 0.1 mmol)を加えた。次いで、[Ph3C][B(C6F5)4] (0.018 g, 0.020mmol)のクロロベンゼン溶
液 2 ml)を滴下漏斗へ加え、フラスコ内のイソプレン、(NCN)Y(CH2C6H4NMe2-o)2及びトリメチルアルミニウムを含む混合溶液に滴下し、高速攪拌した。この混合溶液を室温で10分攪拌した後、メタノールを加えることにより重合を終了させた。反応溶液を少量の塩酸および安定剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含むメタノール溶液200 mlに注いだ。デカンテーションにより沈殿したポリマー生成物を単離し、小さく切断した後、メタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、1.021 gのポリマーを得た(収率:100%)。
【0100】
<実施例2>
実施例1において、反応温度を室温から−10℃に変更し、反応時間を10分から60分に変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
<参考例1>
実施例1において、AlMe3を5倍量から1倍量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
<参考例2>
実施例1において、AlMe3を5倍量から2倍量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
<実施例3>
実施例1において、AlMe3を5倍量から3倍量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
<実施例4>
実施例1において、AlMe3を5倍量から10倍量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0101】
表2に実施例及び比較例で得られたポリイソプレンの収率(%)、数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn、全ポリイソプレンに対する3,4−、シス−1,4−及びトランス−1,4−ポリイソプレンの割合(%)、ガラス転移温度Tg(℃)を示す。
表2から本発明の重合触媒組成物の内、前記一般式(A)において中心金属MがイットリウムYの化合物を用い、触媒系にAlMe3を加え反応させることにより、AlMe3を加えない場合に対し、立体選択性が逆転し、高い選択性でシス-1,4-ポリイソプレンを製造することができることが分かる。
【0102】
<比較例23>
(NCN)Sc(CH2C6H4NMe2-o)2、(NCN)Y(CH2C6H4NMe2-o)2、(NCN)Nd(CH2C6H4NMe2-o)2について、触媒活性化剤及びアルキルアルミニウム化合物を加えずに、反応時間を2時間として実施例1と同様にして反応を行ったが、ポリマーは得られなかった。
<比較例24>
触媒活性化剤[Ph3C][B(C6F5)4]のみを加え、反応時間を2時間として実施例1と同様にしてポリマーを得た。
<比較例25>
(NCN)Sc(CH2C6H4NMe2-o)2及び[Ph3C][B(C6F5)4]のみを加え、反応時間を2分間として実施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0103】
<比較例26>
(NCN)Y(CH2C6H4NMe2-o)2及び[Ph3C][B(C6F5)4]のみを加え、反応時間を2分間として実施例1と同様にしてポリマーを得た。
<比較例27>
比較例26において、反応温度を室温から−10℃に変更し、反応時間を2分間から20分間に変更したこと以外は参考例20と同様にしてポリマーを得た。
<比較例28>
(NCN)Nd(CH2C6H4NMe2-o)2及び[Ph3C][B(C6F5)4]のみを加え、反応時間を2分間として実施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0104】
<比較例29>
(NCN)Y(CH2C6H4NMe2-o)2及びAlMe3のみを加え、反応時間を2時間として実施例1と同様にして反応を行ったが、ポリマーは得られなかった。
<比較例30>
[Ph3C][B(C6F5)4]及びAlMe3のみを加え、反応時間を2時間として実施例1と同様にしてポリマーを得た。
【0105】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0106】
一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を用いた製造方法により製造されるイソプレン系重合体はアイソタクチシティーが高く、力学的又は熱的な耐久力に優れた特徴を示すと考えられる。そのため、プラスチック材料として利用されることが期待される。特に、本発明の重合触媒組成物は低コストであることから、イソプレン系重合体の側鎖の1-アルキルビニル基又は1-アルケニルビニル基の二重結合を化学的に修飾することで、新規な機能性ポリマーの開発に有用であると考えられる。
また、本発明によれば、前記一般式(A)で表される錯体及び触媒活性化剤を含む触媒系において、有機アルミニウム化合物を添加することにより重合反応における立体選択性を逆転させてシス−1,4−イソプレン系重合体を製造することが可能である。同じ錯体を用いているにもかかわらず、触媒系における添加物の有無だけで立体選択性の異なるポリマーを作り分けることが可能な錯体触媒はこれまでにない。言い換えれば、従来3,4
−イソプレン系重合体とシス−1,4−イソプレン系重合体の両方をつくるには、2つの錯体が必要であった。したがって、工業化に際しては、2つの錯体を作る装置が必要であり、触媒の原料の種類も数多く必要であり、人件費もかさむ。1つの錯体で両重合体を製造できれば、これらの触媒製造のためのコストを軽減することができる。また、重合反応に際しても、錯体触媒が同じであれば、同じ反応器を用いて2つのポリマーを作り分けることが、より容易にできると考えられる。例えば、触媒投入ラインが1つで済み、反応器の洗浄の面においても低コストになるなどの利点がある。触媒を回収する場合も、同じ錯体触媒のほうがより容易である。すなわち、2つの触媒を別々に回収する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】比較例1で得られたポリイソプレンの1H−NMRスペクトルチャートである。
【図2】比較例1で得られたポリイソプレンの13C−NMRスペクトルチャートである。
【図3】比較例1で得られたポリイソプレンのGPCチャートである。
【図4】比較例1で得られたポリイソプレンのDSCチャートである。
【図5】比較例4で得られたポリイソプレンの1H−NMRスペクトルチャートである。
【図6】比較例4で得られたポリイソプレンの13C−NMRスペクトルチャートである。
【図7】比較例4で得られたポリイソプレンのDSCチャートである。
【図8】比較例7で得られたポリイソプレンの1H−NMRスペクトルチャートである。
【図9】比較例7で得られたポリイソプレンの13C−NMRスペクトルチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)で表される錯体、触媒活性化剤及び有機アルミニウム化合物を含むことを特徴とする、一般式(X)で表されるイソプレン系化合物の重合用の重合触媒組成物。
【化1】

(一般式(A)において、
1及びR2はそれぞれ独立して、アルキル基、シクロヘキシル基、アリール基又はアラルキル基を示し、
3はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアラルキル基、脂肪族、芳香族又は環状のアミノ基、若しくはホスフィノ基、ボリル基、アルキル又はアリールチオ基、アルコキシ又はアリールオキシ基を示し、
Mは、スカンジウムSc、イットリウムY又はプロメチウムPmを除くランタンLaからルテチウムLuまでの希土類元素の何れかを示し、
1およびQ2はそれぞれ独立して、モノアニオン性配位子を示し、
Lは中性ルイス塩基を示し、wは0〜3の整数を示す。)
【化2】

(一般式(X)においてR4は炭素数1〜10のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
【請求項2】
一般式(A)におけるR1及びR2が2,6−ジイソプロピルフェニル基を示し、R3がフェニル基を示すことを特徴とする、請求項1に記載の重合触媒組成物。
【請求項3】
一般式(A)で表される錯体が、一般式(B)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の重合触媒組成物。
【化3】

(一般式(B)において、Mは、スカンジウムSc、イットリウムY又はプロメチウムPmを除くランタンLaからルテチウムLuまでの希土類元素の何れかを示す。)
【請求項4】
一般式(A)で表される錯体が、一般式(C)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の重合触媒組成物。
【化4】

(一般式(C)において、Mは、スカンジウムSc、イットリウムY又はプロメチウムPmを除くランタンLaからルテチウムLuまでの希土類元素のうち何れかを示す。)
【請求項5】
一般式(A)における中心金属がイットリウムYを示すことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の重合触媒組成物。
【請求項6】
前記触媒活性化剤が、非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の重合触媒組成物。
【請求項7】
前記非配位性アニオンが4価のホウ素アニオンであることを特徴とする、請求項6に記載の重合触媒組成物。
【請求項8】
前記有機アルミニウム化合物が、トリ(ヒドロカルビル)アルミニウムであることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の重合触媒組成物。
【請求項9】
前記トリ(ヒドロカルビル)アルミニウムが、トリメチルアルミニウムであることを特徴とする、請求項8に記載の重合触媒組成物。
【請求項10】
一般式(X)で表されるイソプレン系化合物を、請求項1〜9の何れか一項に記載の重合触媒組成物を用いて重合させることを特徴とする、イソプレン系重合体の製造方法。
【請求項11】
一般式(X)におけるR4がメチル基であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記重合が溶液重合であって、重合反応温度が0℃以下であることを特徴とする、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記イソプレン系重合体が、シス−1,4−イソプレン系重合体であることを特徴とする、請求項10〜12の何れか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−222791(P2008−222791A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60656(P2007−60656)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】