説明

イソロンギホレンの触媒的製造方法

本発明は、ナノ結晶の固体超強酸を用いるイソロンギホレンの触媒的製造方法に関する。本方法は、三環式セスキ−テルペン炭化水素であるイソロンギホレンのための、環境に優しく、単一段階で、溶媒を用いない、触媒的製造方法である。より詳しくは、本発明は、固体超強酸触媒としてナノ結晶硫酸化ジルコニアを用いる、ロンギホレンのイソロンギホレンへの触媒的異性化のための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ結晶の固体超強酸を用いるイソロンギホレンの触媒的製造方法に関するものである。本方法は、環境に優しく、単一段階で、溶媒を用いない、三環式セスキ−テルペン炭化水素であるイソロンギホレンの触媒的製造方法である。
【0002】
より詳しくは、本発明は、固体超強酸触媒としてのナノ結晶硫酸化ジルコニアを用いる、ロンギホレンのイソロンギホレンへの触媒的異性化のための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ロンギホレン、C1524(デカヒドロ−4,8,8−トリメチル−9−メチレン−1−4−メタノアズレン)は、チルパイン(パイナスロンギホリア)(Chirpine(pinus longifolia))から5〜7%という範囲で得られるインドテレビン油中に存在する。これは、世界中どこでも得られる最も大きなトン数(tonnage)のセスキテルペン炭化水素である。
【0004】
このテルペン炭化水素の経済的利用は、異性体生成物であるイソロンギホレン及びその誘導体への変換を含み、その木質の匂い及び花のような匂いにより、香料工業に広く用いられている。この異性化されたイソロンギホレン(2,2,7,7−テトラメチルトリシクロウンデク−5−エン)の酸触媒及びハイドロホルミル化生成物は、また、木質の琥珀色の匂い(woody amber odor)を有し、多くの薬学的工業製品にフレーバーとして用いられる。
【0005】
この異性化された芳香族化合物は、薬学的工業製品にフレーバーとしての商業的重要性を有する。現在、イソロンギホレン、C1524は、主に、硫酸のような無機酸または酢酸により触媒される多くの工程を含む、ロンギホレンの転位により製造されている。無機酸を用いる一般的に用いられている方法は、多段階工程であり、副生成物として大量の望まれない不要の化学製品が結果として得られ、廃棄の前にさらに処理を必要とする。
【0006】
有害な無機酸の使用は、それが腐食性のある刺激物であるので、取り扱いの観点から安全ではなく、また化学量論的量以上を必要とする。さらに、無機酸を用いて得られる異性化生成物は、生成する不純物により何らかの着色を持っており、さらに精製を必要とする。
【0007】
従って、上述の不都合を克服するためのロンギホレンからイソロンギホレンを製造するためと、環境に優しく且つ安全な触媒を見出すための検索努力(research efforts)が必要とされる。
【0008】
【化1】

【0009】
多段階工程を用いる、カンフェン−1−カルボン酸からのイソロンギホレンの合成が報告されている(非特許文献1参照)。多くの工程を含むことと並んで、この経路は、イソロンギホレンの劣化により生成され、化学量論的量の試薬を使用する、副生成物のC13−ケト酸を生成するという欠点を有する。
【0010】
酸処理シリカゲルを用いる、ロンギホレンの酸触媒水和からのイソロンギホレンの合成が報告されている(非特許文献2参照)。この合成方法は、長期の使用によりシリカゲルから生じる酸の浸出剤(leaching)として用いられる触媒の安定性に大きな欠点を有する。
【0011】
トリフッ化ホウ素エーテレート(boron trifluoride etherate)により、ロンギホレンを処理することによるイソロンギホレンの合成が報告されている(非特許文献3参照)。典型的な反応において、ロンギホレンはナトリウムで乾燥されたエーテル中で取り扱われ、そこにトリフッ化ホウ素エーテレートを加え、混合物を蒸気浴上で60分間還流する。結果として得られた暗褐色混合物に、過剰の水酸化カリウムと氷とを、注意深く加える。混合物を、雰囲気温度で90分間撹拌すると、最後にエーテル層が麦藁様の黄色(straw yellow)に着色する。分離とさらなる抽出、水洗、エーテルの蒸発は、結果として明るい黄色のイソロンギホレンを生じる。この経路は、KOH、BF及び金属ナトリウム等の有害な化学製品を用いるイソロンギホレンの合成に、多段階を用いるという欠点を有する。反応混合物からの生成物の分離は、各種の化学的処理を受け入れ、生成物が得られる前に消費される付加的な時間がある。
【0012】
ロンギホレンを、アンバーリスト−15(ローム・アンド・ハース社)または酸処理されたシリカゲルで、95℃で36時間処理することにより、95%の収率でイソロンギホレンを得る、イソロンギホレンの合成が報告されている(非特許文献4参照)。この方法は、熱安定性に乏しく、長期の使用により膨張するイオン交換樹脂であるアンバーリストを用いるという欠点を有する。さらに、この方法は、完結のために36時間かかる。
【0013】
120℃でモンモリロナイト・クレー、K10を用い、100%の選択性と90%以上の変換率を備えるロンギホレンの異性化が報告されている(非特許文献5参照)。しかしながら、この方法は、多くの不純物を有し、要求される表面酸性を備えるように再製することが難しい、天然のクレーを用いるという欠点を有する。さらに、クレーの熱安定性は低く、使用により失活し、クレー触媒の再生及び再使用の可能性は知られていない。
【0014】
臭化酢酸を用いるロンギホレンのイソロンギホレンへの酸で触媒された転位が報告されている(非特許文献6参照)。この方法は、異性化に液体の臭化酢酸を用いるという欠点を有し、取り扱いに安全ではない。さらに、反応混合物からの生成物の分離が難しい。
【0015】
ジオキサン中で酢酸及び硫酸を用いるロンギホレンの水和によるイソロンギホレンの製造が報告されている(非特許文献7参照)。イソロンギホレンに加えて、3−セスキテルペンアルコールがまた副生成物として得られる。典型的に、200gのロンギホレンを、500mLの酢酸と、40mLの50%硫酸との中で、475mLのジオキサンと共に撹拌する。混合物を22〜24℃に60時間保持し、続いて52℃で10時間加温し、その後、600mLの水中に注いだ。水層を硫酸アンモニウムで処理し、50mLの石油エーテルで3回抽出した。合計された有機生成物を水洗し、乾燥して、溶媒を蒸発させた。この乾燥生成物は、約66%のイソロンギホレンを含む。この方法は、多くの工程と、有害且つ有毒である多数の試薬を用いるという欠点を有する。これはまた、使用済みの試薬の廃棄の問題を有する。
【0016】
薬用ニンジン(panax ginseng)の茎及び葉の中の揮発油からの他の生成物に加えて、イソロンギホレンの分離及び同定が報告されている(非特許文献8参照)。しかしながら、これは、時間を消費する方法であり、大量製造の要求に対処することができず、従って、合成経路の改良を必要とする。
【非特許文献1】Sobti,R.R., Dev,S., "Tetrahedron", Volume 26, 1970, 649
【非特許文献2】Prahlad,J.R. et al., "Tetrahedron Letters", Volume 60, 1964, 417
【非特許文献3】Beyler,R.E., Ourisson,G., "J. Org. Chem.", Volume 30, 1965, 2838
【非特許文献4】Bisarya S.C. et al., "Tetrahedron Letters", Volume 28, 1969, 2323
【非特許文献5】Ramesha A.R. et al., "Organic Preparation Procedure International", Volume 31, 1999, 227
【非特許文献6】Kula J., Masarweh A., "Flavour and Fragrance Journal", Volume 13, 1998, 277
【非特許文献7】Nayak, U.R., Dev S., "Tetrahedron", 8, 1960, 42
【非特許文献8】Wang, Hui, et.al., "Jilin daxue Ziran Kexue Xuebao", 1, Chinese, 2001, 88-90
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の主な目的は、上述のような欠点を不要にする、イソロンギホレンの触媒的製造方法を提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、ロンギホレンの異性化によりイソロンギホレンを製造することである。
【0019】
本発明のさらに他の目的は、ロンギホレンの異性化のための単一段階で溶媒を用いない方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらに他の目的は、ナノ結晶硫酸化ジルコニアの固体超強酸が触媒として用いられる方法を提供することである。
【0021】
本発明のさらに他の目的は、高い変換率(>90%)及び、イソロンギホレンの選択性が100%であるロンギホレンの異性化の方法を提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、大気圧及び穏やかな温度で、高い変換率及び、高いイソロンギホレンの選択性を備えるロンギホレンの異性化が達成される方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらに他の目的は、ロンギホレンの異性化が、高い原子利用と低いE−ファクターとで触媒的に行われる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
従って、本発明は、
(i)ジルコニウムアルコキシドを加水分解し、硫酸で硫酸化して、硫酸化ジルコニア(sulfated zirconia)を得て、
(ii)硫酸化ジルコニアを乾燥し、続いて乾燥された硫酸化ジルコニアを仮焼し、
(iii)上記工程(ii)で得られた、乾燥され硫酸化ジルコニア触媒を活性化し、
(iv)非溶媒媒体中、ロンギホレンを、工程(iii)で得られた活性化された触媒と反応させ、その間、2〜10重量%の範囲の触媒比に反応物を保持し、異性化生成物を得て、
(v)反応混合物から、異性化生成物のイソロンギホレンを分離し、
(vi)触媒を洗浄し、密着している物質を除去し、
(vii)触媒を110℃で2乃至4時間乾燥し、続いて550℃で4乃至8時間の間の時間、空気仮焼することからなる、
イソロンギホレンの触媒的製造方法からなる。
【0025】
本発明の他の態様において、硫酸化ジルコニアは、110℃の温度で8〜12時間乾燥され、続いて550乃至650℃で2〜6時間仮焼される。
【0026】
本発明の他の態様において、乾燥された硫酸化ジルコニア触媒は、反応に先立って、400〜450℃の範囲の温度で、2〜4時間活性化される。
【0027】
本発明の他の態様において、ロンギホレンの反応は、120乃至200℃の範囲の反応温度に、大気圧で、0.5〜6時間までの選択された時間に保持されている間に行われる。
【0028】
本発明の他の態様において、異性化生成物のイソロンギホレンの分離は、濾過により行われる。
【0029】
本発明の他の態様において、触媒は酢酸エチルにより洗浄され、密着している物質を除去する。
【0030】
本発明の他の態様において、触媒は、触媒活性に優れた正方晶系の結晶相を備え、それぞれ10〜100nm、80〜120m−1、0.08〜0.2cm−1、及び35〜60オングストロームの範囲にある(i)結晶径、(ii)BET表面積、(iii)空孔容積及び(iv)空孔径を有するナノ結晶の硫酸化ジルコニアからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
表面に、キレート化合物を形成する二座配位子の化学種として、硫酸塩を有するナノ結晶ジルコニアは、大気圧での触媒的変換に用いられる。ジルコニウムアルコキシドまたはジルコニウム塩の加水分解は、酸性媒体、塩基性媒体または中性媒体中で行われ得る。硫酸によるジルコニアの硫酸化は、雰囲気温度での二段階法と同様に、単一段階を用いるゾル−ゲル法により行われ得る。固体酸触媒は、600℃の温度での触媒の仮焼後に、0.5乃至2.5重量%の硫黄を有する。固体酸触媒の比に対する反応物の比は、2乃至10重量%の範囲内で変化し得る。
【0032】
触媒的変換のための温度は、120乃至200℃の範囲であり得、時間は0.5乃至6時間の範囲であり得る。反応は、好ましくは、非溶媒状態及び単一段階法で行われる。
【0033】
触媒の製造の典型的方法において、ジルコニウムイソプロポキシドは、ZrOに加水分解され、硫酸により硫酸化ジルコニアに硫酸化される。加水分解及び硫酸化は、単一段階法の間に同時に行われた。二段階法において、加水分解は第1段階で行われ、第二段階で硫酸化が後続した。加水分解は、塩基性媒体及び中性媒体中で行われた。全ての場合において、試料は110℃で一夜乾燥され、550〜650℃で、2乃至6時間仮焼された。このようにして得られた触媒は、雰囲気温度で冷却された。このように製造された触媒の活性化は、触媒の研究の前に、450℃で4時間の間、行われた。
【0034】
触媒の研究は、装着された温度調整器、水循環装置、マグネティック・スターラー及び水分トラップを有する、50ml容の撹拌タンク反応器中で行われた。典型的に、ロンギホレン(2g)を50ml容の丸底フラスコに取り、そこに活性化触媒(0.2g)を、ロンギホレン/触媒の比が2乃至10の範囲であるように加えた。触媒の活性化は、450℃で4時間行われた。丸底フラスコは、冷却器に密着され、そこに定温の水が循環された。水分トラップは、冷却器の末端に装着された。フラスコの中味は、マグネティック・スターラーを用いて絶えず撹拌された。フラスコは油浴中に保持され、その温度は120乃至200℃の所望の反応温度までゆっくりと引き上げられた。フラスコの中味は、0.5から6時間までの異なる時間間隔で、キャピラリーカラムHP−5を用いるガスクロマトグラフィー、HPモデル6890により、分析された。ロンギホレンの変換率は、次の式を用いて計算された。
【0035】
変換率=〔n−n/n〕×100
ここで、n=反応前に導入されたロンギホレンのモル数
=反応後に反応混合物中にあるロンギホレンのモル数
上記合成触媒の構造的特徴付けは、FT−IRスペクトロスコープ及びX線粉末回折法を用いて行われた。結晶径は、X線回折のデータから決定された。表面積、空孔容積及び空孔径の本質的な特徴付けは、77Kでの窒素吸着により行われた。
【0036】
本発明において、ナノ結晶硫酸化ジルコニアに基づく触媒は、ロンギホレンの単一段階の異性化のために開発され、選択的にイソロンギホレン生成物を製造する。この触媒は、非溶媒状態で、高い活性(100%の選択性で>90%の変換率)を示した。
【0037】
硫酸化ジルコニアは、硫酸基が酸素原子を通じてZr4+に結合することにより、超強酸領域(ハメット指標<−12)において、表面酸性を備えている。ゾル−ゲル法により、固相において生成される多孔性は、活性酸サイト(active acid sites)に向かい、活性酸サイトから離れる、ロンギホレン/イソロンギホレンの分子の拡散を促進するために十分高いものである。ロンギホレンの二重結合は、酸サイトとの反応においてカルボニウムイオンを生成し、イソロンギホレンに転位する。
【0038】
従来技術との関係において採用される進歩性は、(i)イソロンギホレンの製造のための固体酸触媒に基づく新規な合成経路であること、(ii)異性化された生成物のために非常に高い変換率(>90%)と選択性(100%)とを備えた、ロンギホレンのイソロンギホレンへの異性化のための触媒活性のための、酸性溶媒、塩基性溶媒及び中性媒体中での単一段階及び二段階ゾル−ゲル法によるナノ結晶硫酸化ジルコニアの製造方法であり、(iii)単一段階かつ非溶媒媒体中でのイソロンギホレンの合成であり、(iv)工程のエネルギーを効率的にする、1時間以下でのイソロンギホレンの合成のための、大気圧のような比較的穏和な温度状態であり、(v)何も副生成物が生成されず、触媒が容易に分離し、再使用することができる、工程での高い原子利用である。
【0039】
次の実施例は説明のために与えられ、従って本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0040】
6.4mLの水で稀釈された、1.02mLの濃HSOを、Zr(OCのプロパノール30%溶液または硝酸ジルコニウムのようなジルコニウム塩に、滴下して加えた。加水分解されたゾルを、マグネティックスターラーにより3時間、連続的に撹拌した。形成されたゲルを、最初に雰囲気温度で3時間、次に110℃で12時間乾燥した。乾燥されたゲルを、170メッシュの粉末にし、600℃で2時間仮焼した。製造された試料は、X線回折から決定されたものとして、13nmの結晶径を備えていた。触媒に負荷された硫黄は、元素分析により測定されたものとして、1.2重量%であった。2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち120℃までゆっくり引き上げた。マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って定期的に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、3乃至6時間後、100%の選択率で、72乃至75%であった。
【実施例2】
【0041】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち140℃までゆっくり引き上げた。実施例1で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って6時間後に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、6時間後、100%の選択率で、85%であった。
【実施例3】
【0042】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち160℃までゆっくり引き上げた。実施例1で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って2乃至6時間後に定期的に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2乃至6時間後、100%の選択率で、84乃至86%であった。
【実施例4】
【0043】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち180℃までゆっくり引き上げた。実施例1で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って0.5から6時間まで定期的に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、0.5乃至6時間後、100%の選択率で、91乃至92%であった。
【実施例5】
【0044】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち190℃までゆっくり引き上げた。実施例1で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って0.5乃至4時間後に定期的に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、0.5乃至4時間で、100%の選択率で、90乃至92%であった。
【実施例6】
【0045】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち200℃までゆっくり引き上げた。実施例1で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って0.5乃至4時間後に定期的に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、1乃至4時間後、100%の選択率で、91乃至92%であった。
【実施例7】
【0046】
1.02mLの濃HSOを、Zr(OCのプロパノール30%溶液に加え、次に、この溶液に6.4mLの水を滴下して加えた。加水分解されたゾルを、マグネティックスターラーにより連続的に撹拌した。ゲルは直ちに凝固された。形成されたゲルを、最初に室温で3時間、次に110℃で12時間乾燥した。乾燥されたゲルを、170メッシュの粉末にし、600℃で2時間仮焼した。製造された試料は、X線回折から決定されたものとして、11nmの結晶径を備えていた。触媒に負荷された硫黄は、元素分析により測定されたものとして、1.6重量%であった。2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち140℃までゆっくり引き上げた。マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って定期的に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、92%であった。
【実施例8】
【0047】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち180℃までゆっくり引き上げた。実施例7で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って定期的に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、85%の選択率で、93%であった。
【実施例9】
【0048】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち200℃までゆっくり引き上げた。実施例7で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って定期的に試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、80%の選択率で、93%であった。
【実施例10】
【0049】
アンモニア水溶液(25%)を、Zr(OCのプロパノール30%溶液に、混合物のpHが9〜10になるまで、滴下して加えた。加水分解されたゾルを、マグネティックスターラーにより連続的に3時間撹拌した。形成されたゲルを、最初に室温で3時間、次に110℃で12時間乾燥した。乾燥されたゲルを、170メッシュの粉末にし、1NHSO(15mL/g)と共に30分間撹拌した。濾過後、最初に室温で3時間、次に110℃で12時間乾燥した。乾燥されたゲルを、170メッシュの粉末にし、600℃で2時間仮焼した。製造された試料は、X線回折から決定されたものとして、11nmの結晶径を備えていた。触媒に負荷された硫黄は、元素分析により測定されたものとして、1.4重量%であった。2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち180℃までゆっくり引き上げた。マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、90%であった。
【実施例11】
【0050】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち200℃までゆっくり引き上げた。実施例10で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、90%であった。
【実施例12】
【0051】
6.4mLの水を、Zr(OCのプロパノール30%溶液に滴下して加えた。加水分解されたゾルを、マグネティックスターラーにより連続的に3時間撹拌した。形成されたゲルを、最初に室温で3時間、次に110℃で12時間乾燥した。乾燥されたゲルを、170メッシュの粉末にし、1NHSO(15mL/g)と共に30分間撹拌した。濾過後、最初に室温で3時間、次に110℃で12時間乾燥した。乾燥されたゲルを、170メッシュの粉末にし、600℃で2時間仮焼した。製造された試料は、X線回折から決定されたものとして、100nmの結晶径を備えていた。触媒に負荷された硫黄は、元素分析により測定されたものとして、1.3重量%であった。2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち180℃までゆっくり引き上げた。マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、反応物に加えた。シリンジを使って試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、92%であった。
【実施例13】
【0052】
2gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち200℃までゆっくり引き上げた。実施例12で記述したようにして製造され、マッフル炉中、450℃で2時間、予め活性化された0.2gmの触媒を、フラスコに取った反応物に加えた。シリンジを使って試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、92%であった。
【実施例14】
【0053】
実施例1で記述したようにして製造された触媒を、実施例4で記述したような反応の完了後、濾過により反応混合物から分離し、雰囲気温度で、10mLの酢酸エチル溶液で洗浄した。触媒を電気炉中、110℃で2〜4時間乾燥し、続いてマッフル中、550℃で4〜8時間、空気仮焼した。触媒を雰囲気温度)まで冷却し、実施例1−リサイクルと名付けた。1gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち180℃までゆっくり引き上げた。実施例1−リサイクルである0.1gmの触媒を、フラスコに取った反応物に加えた。シリンジを使って試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、36%であった。
【実施例15】
【0054】
実施例7で記述したようにして製造された触媒を、実施例8で記述したような反応の完了後、濾過により反応混合物から分離し、雰囲気温度で、10mLの酢酸エチル溶液で洗浄した。触媒を電気炉中、110℃で2〜4時間乾燥し、続いてマッフル中、550℃で4〜8時間、空気仮焼した。触媒を雰囲気温度)まで冷却し、実施例2−リサイクルと名付けた。1gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち180℃までゆっくり引き上げた。実施例7−リサイクルである0.1gmの触媒を、フラスコに取った反応物に加えた。シリンジを使って試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、90%であった。
【実施例16】
【0055】
実施例10で記述したようにして製造された触媒を、実施例10で記述したような反応の完了後、濾過により反応混合物から分離し、雰囲気温度で、10mLの酢酸エチル溶液で洗浄した。触媒を電気炉中、110℃で2〜4時間乾燥し、続いてマッフル中、550℃で4〜8時間、空気仮焼した。触媒を雰囲気温度)まで冷却し、実施例10−リサイクルと名付けた。1gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち180℃までゆっくり引き上げた。実施例10−リサイクルである0.1gmの触媒を、フラスコに取った反応物に加えた。シリンジを使って試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、90%であった。
【実施例17】
【0056】
実施例12で記述したようにして製造された触媒を、実施例12で記述したような反応の完了後、濾過により反応混合物から分離し、雰囲気温度で、10mLの酢酸エチル溶液で洗浄した。触媒を電気炉中、110℃で2〜4時間乾燥し、続いてマッフル中、550℃で4〜8時間、空気仮焼した。触媒を雰囲気温度)まで冷却し、実施例12−リサイクルと名付けた。1gのロンギホレンを2口丸底フラスコに取った。2口丸底フラスコは、温度調節器、マグネティックスターラー、冷却器及び循環装置を備え、油浴中に置かれた。油浴の温度を、所望の温度、すなわち180℃までゆっくり引き上げた。実施例12−リサイクルである0.1gmの触媒を、フラスコに取った反応物に加えた。シリンジを使って試料を採取し、HP−5カラムを用いてガスクロマトグラフィーにより分析した。ロンギホレンの変換率は、2時間後、100%の選択率で、91%であった。
【0057】
従来の方法を超える本方法の主な利点は、次のものを含む。
1.本方法は、固体酸触媒を採用し、環境に優しく、取り扱いにおいて安全であり、廃棄物または副生成物を生成しない。
2.反応プロセスは、何ら溶媒を用いることなく、単一段階のプロセスである。
3.さらに、この方法は、圧力及び温度の穏和な状態で行われる。
4.本来固体である触媒は、濾過または遠心分離により、液体の反応混合物から容易に分離することができる。
5.高度に結晶性で熱的に安定である触媒は、熱処理により再生することができ、再使用することができる。
6.固体酸触媒に基づく硫酸化ジルコニアは、HSO、CHCOOH及びBF3.OEtのような従来の触媒に比較して、変換、取り扱いその他に容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ジルコニウムアルコキシドを加水分解し、硫酸で硫酸化して、硫酸化ジルコニア(sulfated zirconia)を得て、
(ii)硫酸化ジルコニアを乾燥し、続いて乾燥された硫酸化ジルコニアを仮焼し、ナノ結晶硫酸化ジルコニア触媒を得て、
(iii)上記工程(ii)で得られた、乾燥された硫酸化ジルコニア触媒を活性化し、
(iv)非溶媒媒体中、ロンギホレンを、工程(iii)で得られた活性化された触媒と反応させ、その間、2〜10重量%の範囲の触媒比に反応物を保持し、異性化生成物を得て、
(v)反応混合物から、異性化生成物のイソロンギホレンを分離し、
(vi)触媒を洗浄し、密着している物質を除去し、
(vii)触媒を110℃で2乃至4時間乾燥し、続いて550℃で4乃至8時間の間の時間、空気仮焼することからなることを特徴とするイソロンギホレンの触媒的製造方法。
【請求項2】
上記工程(i)の加水分解及び硫酸化は、単一段階または二段階のゾル−ゲル法により、酸性媒体、塩基性媒体または中性媒体からなる群から選択される1つの媒体中、雰囲気温度で行われることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
硫酸化ジルコニアは、110℃の温度で8〜12時間乾燥され、続いて550乃至650℃で2〜6時間仮焼されることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
乾燥された硫酸化ジルコニア触媒は、反応に先立って、400〜450℃の範囲の温度で、2〜4時間活性化されることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
ロンギホレンの反応は、120乃至200℃の範囲の反応温度に、大気圧で、0.5から6時間までの選択された時間に保持されている間に行われることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
異性化生成物のイソロンギホレンの分離は、濾過により行われることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
触媒は酢酸エチルにより洗浄され、密着している物質を除去することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
触媒は、それぞれ10〜100nm、80〜120m−1、0.08〜0.2cm−1、及び35〜60オングストロームの範囲にある(i)結晶径、(ii)BET表面積、(iii)空孔容積及び(iv)空孔径を有するナノ結晶の硫酸化ジルコニアからなることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
ロンギホレンの異性化は、いかなる溶媒も用いること無しに単一段階で行われることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
ナノ結晶硫酸化ジルコニアは、10乃至100nmの範囲の結晶径を有することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項11】
ナノ結晶硫酸化ジルコニアは、600℃で仮焼された後、0.5乃至2.5重量パーセントの硫黄含有量を有することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項12】
ナノ結晶硫酸化ジルコニア触媒のBET表面積は、80乃至120m−1の間に維持されることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項13】
ロンギホレンの異性化は、90パーセントより大きな変換率で達成されることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項14】
ロンギホレンの異性化の選択性は、98乃至100パーセントの間に維持されることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項15】
ロンギホレンの異性化は、高い原子利用及び低いE−ファクターにより行われることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項16】
触媒は分離され、リサイクルのために再生されることを特徴とする請求項1記載の製造方法。

【公表番号】特表2006−525949(P2006−525949A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500179(P2005−500179)
【出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【国際出願番号】PCT/IN2003/000200
【国際公開番号】WO2004/106270
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】