説明

イチョウ抽出物の使用

【課題】新規な癌細胞増殖を減少させる薬剤の提供。
【解決手段】その必要性のある患者の細胞内末梢-型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)の発現減少方法におけるイチョウの葉の抽出物またはイチョウの葉の抽出成分である単離されたギンコライドB(GKB)を使用する薬剤。さらに、患者での癌細胞増殖を減少させる方法におけるイチョウの葉の抽出物または単離されたGKBを使用する。特に、患者での癌細胞増殖を減少させる方法におけるイチョウの葉の抽出物または単離されたGKBの使用であって、癌細胞がヒト乳癌細胞である。なお、さらに、患者での癌細胞増殖を減少させる方法におけるイチョウの葉の抽出物または単離されたGKBの使用であって、前記癌細胞が侵襲性および浸潤性の表現型であり、かつ非侵襲性の癌細胞に比較して高レベルのPBRを発現する癌細胞である。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、その必要性のある患者の細胞内末梢-型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)の発現減少方法におけるイチョウの葉の抽出物またはイチョウの葉の抽出成分である単離されたギンコライドB(GKB)の使用に関する。さらに、本発明は、その必要性のある患者での癌細胞増殖を減少させる方法におけるイチョウの葉の抽出物または単離されたGKBの使用に関する。さらに特に、本発明は、その必要性のある患者での癌細胞増殖を減少させる方法におけるイチョウの葉の抽出物または単離されたGKBの使用であって、前記癌細胞がヒト乳癌細胞である上記使用に関する。なお、さらに特に、本発明は、その必要性のある患者での癌細胞増殖を減少させる方法におけるイチョウの葉の抽出物または単離されたGKBの使用であって、前記癌細胞が侵襲性および浸潤性の表現型であり、かつ非侵襲性の癌細胞に比較して高レベルのPBRを発現する癌細胞である上記使用に関する。
【0002】
他の側面において、本発明は35番目の遺伝子の生成物の発現を減少させるためのイチョウの葉の抽出物の使用に関する(詳細は以下に述べる)。
EGB761(登録商標)(IPSEN(Paris, France)の製品)として知られるイチョウの葉の抽出物のある特定の製剤は、組成物の構成成分であるかまたは本発明の方法で使用されるのが好ましい。
【0003】
イチョウはもっとも古来の木の一つであり、その葉からの抽出物は数百年もの間伝統的な治療において使用されてきた。加齢および老衰と関連した覚性障害、記憶障害および見当識障害のある患者ならびに全てのタイプの痴呆、気分の変化および日常のストレスを処理する能力をもった患者におけるイチョウの抽出物の有利な効果について記述する多くの研究がある。EGB761(登録商標)と名づけられたイチョウの葉の標準化された抽出物は、これらの研究のほとんどで使用されている。この抽出物はまた心臓防御効果を有することが知られている(DeFeudis F.V. イチョウの抽出物(EGB761(登録商標)):化学から臨床まで。Ullstein Medical, Wisbaden, Germany. 400pp. 1998; Tosaki, A., Droy-Fefaix, M.T., Pali, T.,およびDas, D.K., Free Rad. Biol. Med., 14: 361-370, 1993)。これらの効果は少なくとも一部において、EGb761(登録商標)のフリーラジカル除去特性、おそらく抽出物中のフラボノイドまたはテルペノイド成分の存在によるとされてきた。最近のインビボおよびインビトロでの研究は、EGB761(登録商標)のテルペン成分であるギンコライドおよびビロバライドは、抗酸化剤特性を有することを示した(Pietri, S., Maurelli, E., Drieu,K., および Culcasi, M., J. Mol. Cell. Cardiol., 29: 733-742, 1997; Yao, Z., Boujrad, N., Drieu, K., およびPapadopoulos, V., Adv. Ginkgo Biloba Res. 7: 129-138, 1998)。EGB761(登録商標)の他の研究は、加齢および老衰と関連した脳血管および末梢血管不全を含む様々な臨床障害の治療における生成物の医学的価値について報告した。例えばイチョウの抽出物(EGB761(登録商標))の薬理学的活性および臨床応用、DeFeudis, F.V., Eds, Elsevier, 1991; およびUllstein Medical 1998, イチョウの抽出物(EGB761(登録商標)), Eds. Wiesbaden, DeFeudis, F.V.を参照されたい。抽出物は、24%のイチョウ-フラボン配糖体、6%のテルペンラクトン(ギンコライドおよびビロバライド)、約7%のプロアントシアニジンおよびいくつかの他の成分を含む。Boralle, N., ら: ギンコライド、 化学、生物学、薬理学および臨床的考え方, Ed: Braquet, P., J. R. Porous Science Publishers, 1988を参照されたい。
【0004】
腫瘍の進行は、組織を浸潤しおよび転移を形成する能力(乳癌における死亡の主要な原因である)を含む、正常細胞が次第により悪性な表現型を獲得するという複数の段階からなるプロセスである。このプロセス中、多数の遺伝子生成物の"異常"な発現が、腫瘍形成の原因または結果となり得る。腫瘍の進行の第一段階は細胞増殖であることを考慮すると、腫瘍形成および悪性度は腫瘍細胞の増殖ポテンシャルと関連するということが示され得る。
【0005】
グリオーム腫瘍を含むラットの脳(Richfield, E.K.ら(1988) Neurology 38: 1255-1262)、結腸腺癌および卵巣癌(Katz, Y. ら(1988) Eur. J. Pharmacol. 148:483-484 およびKatz, Yら(1990) Clinical Sci. 78:155-158)などの多数の腫瘍における研究は、正常組織と比較して多量の末梢-型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)を示した。さらに、正常柔組織に関連してPBR濃度において12-倍の増加がヒト脳グリオームまたは星状細胞腫に認められた(Cornu, P. ら(1992) Acta Neurochir. 199: 146-152)。筆者は、PBR濃度はこれらの組織内の受容体の増殖活性を反映し得ると提唱した。最近、PBRの細胞増殖への関与がさらに示された(Neary, J. T.ら(1995) Brain Research 675:27-30; Miettinen, Hら(1995) Cancer Research 55: 2691-2695)、およびヒト星状細胞腫瘍の発現は腫瘍の悪性度および増殖性指数と関連していることが発見された(Miettinen, H.ら supra; Alho, H.(1994) Cell Growth Dirrerent. 5:1005-1014)。さらなる研究は、PBR受容体はヒト膠芽細胞腫に多いことを示した(Broaddus, W.C.,ら Brain Research, Vol.518:199-208,1990; およびPappata, S.,ら J. Nuclear Med., 32:1608-1610, 1991)。
【0006】
PBRはGABA神経伝達物質受容体とは別個のベンゾジアゼピン結合部位のクラスとして発見された18-kDAのタンパク質である(Papadopoulos, V.(1993) Endocr. Rev. 14:222-240)。PBRはステロイド生成細胞に非常に多く、そして主にミトコンドリア膜の外側に見出される(Anholt, R.ら(1986) J. Biol. Chem. 261:576-583)。PBRは18-kDaのイソキノリン-結合性タンパク質および34-kDaの孔-形成電位-依存型アニオンチャンネンルタンパク質からなる多重結合の複合体の部分であり、優先的に外側/内側のミトコンドリア膜の接触部位に存在すると考えられている(McEnery, M.W.ら Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:3170-3174; Garnier, Mら(1994) Mol. Pharmacol. 45:201-211; Papadopoulos, V.ら(1994) Mol. Cel. Endocr. 104:R5-R9)。PBRの薬物リガンドは、受容体に結合すると、インビトロでステロイド合成細胞でのステロイド合成を刺激する(Papadopoulos, V.ら(1990) J. Biol. Chem. 265:3772-3779; Ritta, M.N.ら(1989) Neuroendocrinology 49:262-266; Barnea, E.R.ら(1989) Mol. Cell Endocr. 64:155-159; Amsterdam, A. および Suh, B.S.(1991) Endocrinology 128:503-510; Yanagibashi, K.ら(1989) J. Biochem.(Tokyo) 106:1026-1029)。同様に、インビボの研究は、高親和性のPBRリガンドは下垂体を切除したラットの血漿ステロイドレベルを増加することを示した(Papadopoulos V.ら(1997) Steroids 62:21-28)。さらに、単離されたミトコンドリアでのインビトロの研究は、PBRリガンド、薬物リガンド、または内因性PBRリガンド、ポリペプチドジアゼパム結合阻害剤(BDI)(Papadopoulos, V.ら(1997) Steroids 62:21-28)は、ミトコンドリア膜の外側から内側へのコレステロールの輸送率を増加することによって、プレグネロンの形成を刺激するという証拠を提供した(Krueger, K.E.およびPapadopoulos, V.(1990) J. Biol. Chem 265:15015-15022; Yanagibashi, K.ら(1988) Endocrinology 123:2075-2082; Besman, M.J.ら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.86:4897-4901; Papadopoulos, V.ら(1991) Endocrinology 129: 1481-1488)。
【0007】
18-kDaのPBRのアミノ酸配列に基づいて、三次元モデルが開発された(Papadopoulos, V.(1996): The Leydig Cell. Payne, A.H.ら(eds) Cache River Press, IL, pp. 596-628)。このモデルは、コレステロール輸送におけるPBRの役割をサポートしながら、コレステロール分子を収容しおよびチャンネンルとして機能することが示された。最近我々は、相同の組換え(Papadopoulos. V.ら(1997) J. Biol. Chem. 272:32129-32135)によって、ステロイドを産生しないPBRの負の細胞を生成することによりステロイド生成におけるPBRの役割を示した。しかし、水溶性のコレステロール類似体である22R-ヒドロキシコレステロールの付加によりこれらの細胞によるステロイド生成が復活し、コレステロール輸送メカニズムが障害されたことが示された。さらに、18-kDaPBRタンパク質を発現するバクテリアでのコレステロール輸送実験は、コレステロールチャンネル/輸送体としての機能に対する決定的な証拠を提供した(LiおよびPapadopoulos, V.ら(1998) Endocinology)。
【0008】
我々は、末梢-型ベンゾジアゼピン受容体は、癌での増加した侵襲的行動を説明する細胞および分子機能の変化の部分であると仮定し、また、この仮説についてヒト乳癌において検証することを選択した。乳癌は、もっとも一般的な腫瘍で、ほとんどの発展途上国における女性の癌-関連死亡の主要な原因であり(Lippman, M. E. (1993) Science 259:631-632)、184,000人近くの女性が罹患し、米国だけでも年間46,000件以上の死亡がある(American Cancer Society, 1996)。ヒト乳腺細胞は、脳および性腺細胞のようではなくステロイドを産生することは出来ないが、体内の多くの他の細胞と同様に、ステロイドを代謝することができる。
【0009】
増加したPBR発現レベルは、腫瘍細胞の増加した侵襲的な行動と相関する。浸潤性の腫瘍は浸潤し局所的に成長するが転移はしない。しかし、侵襲性の腫瘍は、ヒトの体の異なる場所への血管を介して浸潤しおよび転移する能力を有する。生命をつかさどる重要な器官(例えば肺)への腫瘍の転移は、もっとも一般的な死因である。
【0010】
ヒト乳癌でのPBRの高い発現レベルおよび転移ポテンシャルとの相関性は、同時にペンディング中の1998年3月25日に提出された米国出願番号09/047,652に示されており、その出願において、本出願のVassilios Papadopoulosが共同発明者である。しかし、細胞増殖におけるPBRの関与および全細胞でのPBRの発現により、この相関性は、いくつかの例をあげると、前立腺癌、結腸癌、脳腫瘍および性腺腫瘍のようなステロイド産生組織での腫瘍などの他の固形腫瘍および癌でも存在するようである。
【発明の概要】
【0011】
一つの側面において、本発明は、癌が、腫瘍細胞を調節する役割を有するタンパク質の発現の脱調節によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での癌を治療する方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0012】
他の側面において、本発明は、増殖が、腫瘍細胞を調節する役割を有するタンパク質の発現の脱調節によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での癌細胞の増殖を抑える方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0013】
他の側面において、本発明は、増殖が、腫瘍細胞を調節する役割を有するタンパク質の過剰発現によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での癌細胞の増殖を抑える方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0014】
他の側面において、本発明は、増殖が、末梢-型ベンゾジアゼピン受容体タンパク質の過剰発現によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での侵襲性の表現型を有する癌細胞の増殖を抑える方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0015】
他の側面において、本発明は、増殖が、癌遺伝子の過剰発現によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での前記癌遺伝子の発現を減少させることにより癌細胞の増殖を抑える方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。直前に述べた方法の好ましい方法は、前記癌遺伝子が一またはそれ以上のAPC、PE-1、RhoAおよびc-Junである方法である。
【0016】
他の側面において、本発明は、前記癌細胞が、標準的な癌細胞と比較して異常なレベルの末梢-型ベンゾジアゼピン受容体を発現する場合に、そのような減少の必要性のある患者での癌細胞内の末梢-型ベンゾジアゼピン受容体の発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。直前に述べた方法の好ましい方法は、癌細胞がヒト乳癌細胞;ヒト膠芽細胞腫;ヒト脳腫瘍;ヒト星状細胞腫;ヒト結腸癌;ヒト結腸腺癌;ヒト卵巣癌;ヒト肝細胞癌である方法である。
【0017】
他の側面において、本発明は、そのような減少の必要性のある患者での癌細胞内の末梢-型ベンゾジアゼピン受容体のmRNAの発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0018】
他の側面において、本発明は、そのような増加の必要性のある患者でのc-Myc癌原遺伝子の発現を増加させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0019】
他の側面において、本発明は、そのような減少の必要性のある患者での細胞周期調節因子であるプロチモシン-α、CDK2、p55CDC、ミエロブラスチンおよびp120増殖-細胞核抗原(PCNA)の発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0020】
他の側面において、本発明は、そのような減少の必要性のある患者での細胞内シグナル形質導入活性調節因子であるNET1およびERK2の発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0021】
他の側面において、本発明は、そのような減少の必要性のある患者でのアポトーシス-関連タンパク質であるアデノシンA2A受容体、Flt3リガンド、Grb2、クルステリン、RXR-β、グルタチオンS-トランスフェラーゼP、N-Myc、TRADD、SGP-2およびNIP-1の発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0022】
他の側面において、本発明は、そのような減少の必要性のある患者での転写因子であるId-2、ATF-4、ETR101およびETR-103の発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0023】
他の側面において、本発明は、そのような減少の必要性のある患者での成長因子であるマクロファージコロニー-刺激因子-1、ヘパリン-結合性EGF-様成長因子、肝細胞成長因子-様タンパク質およびインヒビンαの発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0024】
他の側面において、本発明は、そのような減少の必要性のある患者での接着分子であるCD19B-リンパ球抗原、L1CAM、β-カテニン、インテグリンサブユニットα3、α4、α6、β5、およびαMの発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0025】
他の側面において、本発明は、そのような減少の必要性のある患者での遺伝子であるAPC、PE-1、RhoA、c-Jun、プロチモシン-α、CDK2、p55CDC、ミエロブラスチン、p120増殖-細胞核抗原(PCNA)、NET1、ERK2、アデノシンA2A受容体、Flt3リガンド、Grb2、クルステリン、RXR-β、グルタチオンS-トランスフェラーゼP、N-Myc、TRADD、SGP-2、NIP-1、Id-2、ATF-4、ETR-101、ETR-103、マクロファージコロニー-刺激因子-1、ヘパリン-結合性EGF-様成長因子、肝細胞成長因子-様タンパク質、インヒビンα、CD19B-リンパ球抗原、L1CAM、β-カテニンならびにインテグリンサブユニットα3、α4、α6、β5、およびαMの発現を減少させる方法であって、前記患者に有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを投与することを含む上記方法に関する。
【0026】
他の側面において、本発明は、癌の治療のための有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBおよび薬剤的に受容可能な担体または希釈剤を含む薬剤組成物に関する。
【0027】
本発明の前記方法および組成物の全てについて、それぞれの好ましい態様は、イチョウの抽出物がEGB761(登録商標)であるものである。
さらに、本発明の前記方法および組成物の全てについて、ギンコライドBが使用されるのが好ましい。
【0028】
[詳細な説明]
"イチョウのテルペノイド"という用語は、合成されたイチョウのテルペノイドおよび薬剤的に活性な誘導体およびその塩ならびにその混合物ばかりでなく裸子植物の木のイチョウに由来する天然のテルペンの全てを含む。イチョウのテルペノイドの例は、ギンコライドを含む。イチョウのテルペノイドの例は、P.Braquet編集のJ. R. Provs. Science Publishers(1988)のギンコライド、化学、生物学、薬理学および臨床的考え方; F.V. DeFeudis、イチョウの抽出物(EGB761(登録商標)); 薬理的活性および臨床応用、Elsevier、章II(1991)に開示されている。
【0029】
本明細書にて用いられる"ギンコライド"という用語は、非-毒性の薬剤的に活性なその誘導体と同様、上記に引用した本に開示される様々なギンコライドを含む。ギンコライド誘導体の例には、テトラヒドロ誘導体、アセチル誘導体、ならびにOkabeら、J. Chem. Soc. (c), pp. 2201-2206 (1967)で開示された一酢酸誘導体および三酢酸誘導体などのアルキルエステルを含む。ギンコライドBは次の構造を有し、そして本明細書における使用の場合は、単離されたギンコライドBを意味する:
【0030】
【化1】

【0031】
本明細書において使用される"イチョウの抽出物"という用語は、イチョウの木の葉に由来するテルペノイドを含む天然分子の集合を含む。好ましくは、抽出物は、EGB761(登録商標)として知られるイチョウの抽出物の特定の製剤である。
【0032】
本明細書において使用される"治療する"という用語は、"治療する"という言葉が何の言葉に従ったとしても、防止、阻害およびまたは減少を意味し、例えば、癌細胞の増殖を治療するということは、癌細胞の増殖を妨げおよび阻害し、さらに、およびまたは増殖の度合いもしくは率を減少させることを意味する。
【0033】
PBR発現レベルは、癌もしくは腫瘍の診断または予後の目的のために、いくつかのレベルで検出され得る。当該技術分野で公知の標準的な方法を用いて、PBR RNAの検出および定量のためのアッセイが設計され、そして該アッセイには、数ある中でも、ノーザンハイブリッド形成アッセイ、in situハイブリッド形成アッセイおよびPCRアッセイが含まれる。核酸ハイブリッド形成方法の一般的な記載については、例えば、Maniatis, FitschおよびSambrook, 分子クローニング;実験マニュアル(1982)またはDNAクローニング、号IおよびII(D.N. Glover ed. 1985)、または分子生物学における現在のプロトコール、Ausubel, F. M.ら(Eds),Wiley & Sons, Incを参照されたい。PBR RNA検出のためのポリヌクレオチドプローブは、ヒトPBR配列のアクセスナンバーL21950で入手可能な配列から設計され得る(Riond, J.ら(1991) Eur. J. Biochem. 195:305-311; Chang, Y. J.ら(1992) DNA and Cell Biol. 11: 471-480)。ウシ(Parola, A. L. ら(1991) J. Biol. Chem 266:14082-14087)およびマウス(Garnier, M.ら(1994) Mol Phar. 45:201-211)などの他のソースからのPBR配列もまた知られている。
【0034】
正常型または突然変異型のPBRの完全配列は、RNA発現を検出するためのプローブに用いられ得る。代替的に、配列の一つの部分または複数の部分も用いられ得る。プローブの設計方法は当該技術分野において知られている。ポリヌクレオチド配列は、好ましくはPBR遺伝子の領域に相同であるかまたは相補的であり、好ましくは、ポリヌクレオチドが由来する領域の配列はPBR遺伝子に特有な配列に相同または相補的である。配列がPBR遺伝子に特有であろうとなかろうと、配列は当該技術分野の当業者に公知の技術により決定され得る。例えば、配列は、データバンク、例えばGenBank内の配列と比較され得る。典型的なDNA配列が由来し得る領域は、例えば、非-転写および/または非-翻訳領域だけでなく特異的なエピトープをコードする領域を含むが、これらに限定されない。
【0035】
PBRリガンドもしくは抗-PBR抗体、またはPBRを検出できるリガンドおよび抗体のフラグメントは、乳癌などの疾患に対する診断および予後に使用される様々な標識および標識方法、特に陽電子放出断層撮影(PET)および核磁気共鳴影像法(MRI)(Leong, D.ら(1996) Alcohol Clin. Exp. Res. 20: 601-605)などのアッセイに対する様々な標識および標識方法を用いて標識化され得る。本発明で使用され得る標識タイプの例には、酵素標識、放射性同位体標識、非-放射性同位体標識および化学発光標識が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
適切な酵素標識の例には、マレイン酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母-アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、アスパルギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどが含まれる。
【0037】
適切な放射性同位体標識の例には、3H、111In、125I、32P、35S、14C、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、21Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pd、11C、19F、123Iなどが含まれる。
【0038】
適切な非-放射性同位体標識の例には、157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、46Feなどが含まれる。
適切な蛍光標識の例には、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアン酸標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコジアニン標識、アロフィコシアニン標識、フルオレサミン標識などが含まれる。
【0039】
化学発光標識の例には、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識などが含まれる。
【0040】
本明細書において我々は、イチョウの抽出物、より明確にはEGB761(登録商標)およびGKBの、特にヒト乳癌細胞でのPBR発現および細胞増殖に対する効果を調査した。我々は、非-侵襲性細胞ラインのMCF-7と比較して60-倍以上の高レベルのPBRリガンド結合性およびmRNAを発現する高度に侵襲性の細胞ラインMDA-231を用いた。EGB761(登録商標)およびGKBは時間-および用量-依存的に、MDA-231細胞でのPBR発現および細胞増殖を減少し、一方、EGB761(登録商標)およびGKBはMCF-7細胞増殖に同程度にまでには影響を及ぼさなかった。この効果は可逆的であり、そして試験化合物の抗酸化特性によるものではなかった。
【0041】
上昇したPBRレベルの判定が、検出不能の腫瘍サンプルに関して行われる。これは、同じ患者または異なる患者からである。例えば、最初のサンプルは、固形腫瘍の外科的切除の直後に集められ得る。次のサンプルは、腫瘍成長および/または腫瘍細胞増殖の再発をモニターするために採取され得る。さらに、他のスタンダードは、侵襲性の表現型における増加または減少をアクセスできるように変化する侵襲性の表現型の細胞を含み得る。
【0042】
正常な乳腺の導管上皮細胞の細胞質内の別個の細胞下でのPBRの局在、ならびに侵襲性の腫瘍細胞の核および核周囲部の染色の欠如は、腫瘍細胞の侵襲性表現型の簡単な診断方法を提供する。標識されたPBRリガンドもしくは標識されたPBR抗体、またはPBRに結合できそして細胞内サンプルでのPBRの細胞下の配置を決定することができるリガンドもしくは抗体のフラグメントを用いた免疫染色は、本発明の他の診断アッセイをさらに提供する。さらに、PBRを認識する抗血清はまた第一抗体に反応する第二抗体とともに使用され得る。免疫染色アッセイは当該技術分野で公知であり、そしてさらに乳癌細胞および生検に関して以下の例に記述される。
【0043】
腫瘍細胞でのPBRレベルが正常細胞内のPBRレベルの約2-3倍、正常細胞内のPBR量の約10-100倍までであるときに、PBRレベルの増加が決定される。
細胞培養および処理 ヒト乳癌細胞ライン(MCF-7およびMDA-231)は、Lombardi Cancer Center, Georgetown University Medical Centerから得た。細胞ラインをポリスチレン培養皿(Corning)で培養し、10%ウシ胎児血清(FBS)で補充されたダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)内で成長させた。標準のイチョウ抽出物EGB761(登録商標)の注射可能な型(IPS200)を使用した。この注射可能な型は、インビトロでタンパク質と相互作用することが知られるプロトシアニジンを欠いている(Defeuder,1998 Ullstein Medical)。EGB761(登録商標)およびEGB761(登録商標)から単離されたGKB(BN52021)の注射可能な型はInstitut Henri Beaufour-IPSEN(Paris, France)により提供された。
放射性リガンド結合性アッセイ 細胞を150mmの培養皿から擦り取って5mlのリン酸バッファー生理食塩水(PBS)中へ粉砕することにより分散させ、そして、15分間500xgで遠心分離した。細胞ペレットをPBS中に再-懸濁化し、そして、タンパク質濃度のためのアッセイを行った。細胞懸濁液からの50μgのタンパク質に対する〔3H〕PK11195結合性試験を先述のとおり実施した(Papadopoulos, V.ら, 1990, J. Biol. Chem. 265: 3772-3779; Hardwick, M.ら, 1999, Cancer Research, 59: 631-632)。これらの内容については、本明細書において参照として援用される。〔N-メチル-3H〕PK11195(1-(2-クロロフェニル)-N-メチル-N-(1-メチル-プロピル)-3-イソキノリンカルボキシアミド; sp. Act. 83.50(Ci/mmol)をDu Pont-New England Nuclear(Wilmington, DE)から入手し、PK11195をResearch Biochemicals Incorporated(Natick, MA)から入手した。スキャッチャードプロットをLIGANDプログラムによって分析した(Munson, PJ, および Robbard, D. 1980, Anal. Biochem., 107: 220-239)(BIOSOFT, Ferguson, MO)。
タンパク質の計測 タンパク質レベルを、ウシ血清アルブミンを標準物質としてBio-Radタンパク質アッセイキット(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を用いて、Bradfordメッソド(Bradford, MM, 1976, Anal. Biochem., 72: 248-254)により計測した。
RNA(ノーザン)分析 様々な化合物で処理されたMDA-231細胞でのPBR mRNA発現を先述のとおりノーザンブロット分析により調べた(Hardwick, Mら, 1999, Cancer Research, 59: 831-842)。簡単に説明すると、全細胞RNAをRNAzol B試薬(TEL-TEST, Inc., Friendswood, TX)およびクロロホルムを用いて単離した。各細胞ラインから全RNAの20μgを1%アガロースゲルに流し、そして一晩かけてナイロン膜へ移した(S&S Nytran, Schleicher & Schuell, Keene, NH)(21)。0.2KbのヒトPBR(hPBR)cDNAフラグメント(親切にもDr. Jerome Straus, University of Pennsylvania, PAにより提供された完全長hPBRを含むpCMV5-PBRプラスミドベクターに由来する)を、ランダムプライマーDNA標識システム(Life Technologies, Gaithersburg, MD)を用いて〔α-32P〕dCTPで放射性標識化した。ハイブリッド形成の条件は、先述のとおりである(Hardwick, Mら, 1999, Cancer Research, 59: 831-842)。オートラジオグラフィーを、ブロットをX-OMAT ARフィルム(Kodak, Rochester, NY)へ-70℃で4-48時間露出させることにより行った。PBR mRNAの定量を、SigmaGel ソフトウエア(Jandel Scientific, San Rafael, CA)を用いて実施した。
核酸アレイ 我々は、Clontech(Palo Alto, CA)からのAtlasヒトcDNA発現アレイIを用いた。このアレイは、プラスに帯電したナイロン膜に固定された200-500bpの長さの588のヒトPCR-増幅したc-DNAフラグメントを含む。MDA-231細胞を20μg/mlのEGB761(登録商標)を用いておよび用いないで48時間処理した。ポリA+RNAをコントロールおよびEGB761(登録商標)-処理細胞から単離した。32-P標識されたcDNAプローブを各ポリA+RNAから生成し、そして製品アドバイスに従いAtlasアレイへハイブリッド形成させた。オートラジオグラフィーを、ブロットをX-OMAT ARフィルム(Kodak, Rochester, NY)へ-70℃で4-96時間露出させることにより行った。ハイブリッド形成の定量を、SigmaGel ソフトウエア(Jandel Scientific, San Rafael, CA)を用いて実施した。低いレベルで発現する遺伝子を検出するために、複数回の露出を用いた。コントロールおよびEGB761(登録商標)-処理細胞内の検出された遺伝子生成物の相対発現レベルを比較するために、三つの内部コントロールであるユビキチン、G3PDHおよびβ-アクチンを用いた。実験間の変動は、遺伝子発現対内部コントロールの比を用いて補正した。各遺伝子生成物に対するEGB761(登録商標)処理の効果は、コントロール(未処理)細胞の%として表現される。本明細書において提示される結果は、EGB761(登録商標)処理によりコントロールの30%以上のレベルで一貫して影響される遺伝子を示す。
BrdU 細胞増殖アッセイ 0.1%FBSで補充されたDMEM中約10,000細胞/ウエル(24時間インキュベーション)または約5,000細胞/ウエル(48時間インキュベーション)の濃度で、MDA-231細胞を96-ウエルプレートに置いた(Corning, Corning, NJ)。その後、表示された時間の間、細胞を様々な濃度のEGB761(登録商標)またはGKBとともに10%FBS中でインキュベートした。細胞増殖における差を、BrdU ELISA(Boehringer Mannheim Indianapolis, IN)を用いて決定された5-ブロモ-2'デオキシウリジン(BrdU)の取り込み量を計測することにより分析した。BrdUの取り込みは450nm(対照は690nm)で計測した。
酸化ストレスの分析 細胞の酸化ストレスレベルを、Goodman, Y.およびMattson, M.P., Exp. Neurol., 128: 1-12., 1994に記載されているように、蛍光プローブ2,7-ジクロロフルオレシンジアセテート(2,7-DCF; Molecular Probes, Inc., Eugene, OR)を用いて計測した。簡単に説明すると、細胞を96-ウエルプレート内で培養し、そして表示された濃度のEGB761(登録商標)で48時間処理した。処理の最後に、細胞を洗浄し、そして、PBS中50μMの2,7-DCFの存在下インキュベートした。その後、蛍光をVictor2定量検出蛍光光度計(EGG-Wallac, Inc., Gaithersburg, MD)を用いて定量した。
インビボでの生物学的評価 MDA-231ヒト乳癌(エストロゲン無感受性)の異種移植モデルを、EGB761(登録商標)およびGKBのインビボスクリーニングに使用した。インビトロのデータおよび以前公表したインビボのデータ(23)に基づいて、使用される用量をEGB761(登録商標)については50mg/kgおよびGKBについては1mg/kgとした。雌胸腺欠損ヌードマス(NCI/Charles River, Frederick, MD)に8×106MDA-231腫瘍細胞を皮下投与で注射して、腫瘍が100から150mm3の量を形成するようにする。今度は、化合物毎10の動物のグループに、それぞれEGB761(登録商標)を経口でまたはGKBを腹腔内へ一日一回一ヶ月間注射した。処理中の30日間、さらに処理終了後の30日間、全動物について、週に2回腫瘍の大きさおよび体重を記録した。その後、動物をと殺し、そして、腫瘍を取り出して免疫組織化学に使用した。動物のケアは施設のガイドラインに従った。
MDA-231腫瘍の免疫組織化学 EGB761(登録商標)またはGKBを用いてまたは用いないで処理したマウスから取り出されたMDA-231腫瘍を、10%バッファーホルマリン内に固定した。腫瘍を切片化し、その後ガラスのスライドに置き、そして先述のように(19)処理した。抗-PBR第一抗体を用いた免疫組織学のために、組織切片を30%H2O2/メタノール混合物(1:9の比率)で5分間室温で処理して、内因性のペルオキシダーゼ活性を失活させ、その後PBSでよく洗浄した。PBS中10%の子ウシ血清中の第一抗体を室温で1時間1:500の濃度で切片に加えた。第二抗体反応は、10%子ウシ血清で補充されたPBS中に1:500で希釈されたヤギ抗-ウサギ第二抗体を結合したホースラディッシュペルオキシダーゼを用いて実施した。スライドをPBS中で各2分ごと3回洗浄後、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)で1:1000に希釈した新鮮なH2O2を加え、そしてスライドを1時間37℃でインキュベートした。その後スライドを、クリスタル/マウント(Crystal/Mount)で標本にする前に、蒸留したH2Oで洗浄した。
統計分析 複数の方法の比較はInStatの一元-配置分散分析(ANOVA)(GraphPad Inc., San Diego, CA)を用いて行った。一元-配置分散分析の全てのF検定(statics)およびP値をテキスト内に示した。コントロール処理に対する個々の薬物処理との比較はアンペアードt-検定を用いて行った。アンペアードt-検定の全てのp値をテキスト内に示した。
結果
EGB761(登録商標)およびGKBはMDA-231ヒト乳癌細胞のPBRリガンド結合能を減少させる。 図1は、注射可能な型のEGB761(登録商標)濃度の増加に伴い、時間に依存してPBRリガンド結合能(Bmax)(放射標識したリガンドPK11195で飽和等温線を用い、その後データのスキャッチャード分析により決定される)を阻害することを示す。同様の結果が単離されたGKBを用いて得られた(図2)。興味深いことに、EGB761(登録商標)およびGKBはPBRレベルをコントロール値の66%減少させた。受容体親和性(Kd)に対する有意な効果は認められなかった(5.8±1.4pモル/mgタンパク質、n=12)。
EGB761(登録商標)およびGKBはMDA-231ヒト乳癌細胞のPBR mRNA発現を減少させる。 コントロールおよびEGB761(登録商標)でまたはGKBで処理された細胞間のPBRリガンド結合性に認められる差が、PBR mRNA発現に影響を示すか否かを決定するために、RNA(ノーザン)ブロット分析を行った。図3に示すように、EGB761(登録商標)およびGKBのいずれも、PBR mRNAレベルを減少させた。この結果は、に示したPBRリガンド結合性発現に対する上述の結果と整合する。
EGB761(登録商標)およびGKBはMDA-231細胞増殖を阻害する。 ブロモデオキシウリジン(BrdU)細胞増殖ELISA(Boehringer-Mannheim, Indianapolis, IN)を用いて、我々はEGB761(登録商標)濃度増加のMDA-231細胞増殖に対する効果を調べた。図4は、EGB761(登録商標)は濃度および時間に依存してMDA-231細胞増殖を阻害することを示す。このEGB761(登録商標)の効果は、最も高濃度のEGB761(登録商標)を使用した場合でも可逆的であった。EGB761(登録商標)で48時間MDA-231細胞をインキュベーションし、その後洗浄してEGB761(登録商標)-フリーの培地でさらに48時間インキュベーションすると、MDA-231増殖活性の復活という結果が得られた。GKB濃度の増加もまた、48時間処理後にMDA-231細胞増殖を阻害した(図6)。
EGB761(登録商標)およびGKBは、MDA-231細胞増殖に対するのと同程度の阻害をMCF-7細胞増殖に対しては示さない。 非-侵襲性MCF-7細胞は、MDA-231細胞と比較してきわめて低い(<60倍)PBRレベルを含むので、リガンド結合性試験およびmRNA分析の両方によって決定されたように、EGB761(登録商標)およびGKBがMDA-231細胞増殖率に影響を及ぼすのと同程度にMCF-7細胞増殖率に影響を及ぼすかどうか調べた。図7は、EGB761(登録商標)またはGKBのいずれも、それらがMDA-231細胞増殖に影響を及ぼすのと同程度にはMCF-7細胞増殖に影響を及ぼさないことをはっきりと示す。
EGB761(登録商標)はMDA-231のフリーラジカルレベルに影響を及ぼさない。 最近のインビボおよびインビトロ研究により、GKBを含むEGB761(登録商標)のテルペン構成成分が抗酸化特性を有することが示された。EGB761(登録商標)の抗増殖効果はその抗酸化特性によるものであるのか否かを決定するために、我々は、EGB761(登録商標)の増加する濃度を用いておよび用いないで処理されたMDA-231細胞でのフリーラジカルレベルを決定した(図8)。フリーラジカルレベルの20%減少が認められたが、この効果は統計的に有意ではなく、また用量依存性もなかった。このことより、認められた効果は、EGB761(登録商標)により誘導された細胞内フリーラジカルレベルの減少によるものではないことが示された。
EGB761(登録商標)は細胞増殖に関するMDA-231転写プログラムを調節する。 上記に示された結果は、EGB761(登録商標)およびGKBがPBR-リッチなおよび高度に侵襲性のMDA-231乳癌細胞内のPBR発現および細胞増殖を阻害することを示す。極端に低いPBRレベルを含む非-侵襲性のMCF-7細胞は、MDA-231乳癌細胞の場合と同程度にはEGB761(登録商標)処理に反応しなかった。MDA-231細胞に対するEGB761(登録商標)(20μg/mlで48時間)の効果がPBRに特異的であるのか否か、または細胞増殖に関与するほかの遺伝子が処理により影響されるのか否かを決定するために、我々は588の別個のヒト遺伝子を表すcDNAアレイを使用した。材料および方法で記載したように、実験間の変動は遺伝子発現対内部コントロールの比を用いて補正した。EGB761(登録商標)処理の各遺伝子生成物に対する効果をコントロール(未処理)細胞の%として表現する。コントロール値の30%以上の一貫した変化のみが図9および表1に示される。
インビボでのEGB761(登録商標)およびGKBの効果の生物学的評価 EGB761(登録商標)およびGKBのインビボセッティングでの腫瘍細胞増殖およびPBR発現に対する効果を評価するために、我々は乳房脂肪パッド異種移植モデル(Medina,D., J. Mamm, Gland. Biol. Neopl. 1:5-19,1996を参照されたい)を使用した。図10は、50mg/kgのEGB761(登録商標)または1mg/kgのGKBのいずれかで30日間処理した結果、処理終了1ヶ月後計測したところ、それぞれ腫瘍の大きさが35%(p=0.037)および32%(P=0.043)減少した。これらの処理は動物の体重には影響を与えなかった(データは示していない)。EGB761(登録商標)およびGKBのMDA-231細胞内のPBR発現に対する効果に関するこれらのインビトロデータを考慮しつつ、我々は、EGB761(登録商標)およびGKBはMDA-231異種移植片でのPBR発現をも減少させるか否かについて調べた。図11(A-D)は、ビヒクル-処理した動物からのMDA-231異種移植片での18,000分子量タンパク質を検出するのに使用されるPBR抗血清のホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)染色を示す。ヘマトキシリン対比染色は、腫瘍内のPBRの核局在(19)を識別するために省略した。図11Aは18,000PBRタンパク質の核局在が容易に認められる腫瘍の中央を示す(矢印の先端を参照されたい)。図11Bは、ビヒクル-処理した動物から得られた腫瘍の端に認められた免疫染色を示す。ビヒクル-処理した動物から得られた腫瘍の端で認められた免疫染色の高倍率の図を図1Cに示し、そして非-特異的抗血清で処理したコントロールを図11Dに示す。EGB761(登録商標)(図11E)またGKB(図11F)での処理により、腫瘍の中央に認められた細胞に存在する核内PBR発現を減少させた。興味深いことに、EGB761(登録商標)(図11G)またはGKB(図11H)のいずれかの処理により、腫瘍の端にある細胞での核内PBR発現を消失させた。しかし、後者のケースでは、細胞質免疫染色は認められた(図11GおよびH)。三つの異なる動物で成長した異種移植片から採取された切片においてもこれらと同様のデータが得られた。
【0044】
高濃度のEGB761(登録商標)またはGKBのいずれかの存在においてでさえも、PBRレベルおよび細胞増殖率は正常値の30%未満までは減少されなかったということは興味深く注目に値する。これは、膜の完全な状態および細胞機能を維持するのに必要とされる最小限のPRBがあるということを示す。たとえ最も高い濃度を使用しても、化合物の除去により細胞増殖はすぐに回復したので、EGB761(登録商標)またはGKBのいずれも細胞毒性はなかった。これらのデータは、これらの化合物が細胞増殖抑制性でありおよび細胞毒性がないことを示す。追加の細胞毒性アッセイは、同様の条件下でEGB761(登録商標)またはGKBのいずれも有意な細胞死を誘発しないことを示した。
【0045】
EGB761(登録商標)またはGKBにより、MDA-231細胞内で生産される活性酸素種の量が有意に減少しなかったことは、これらの抗-酸化特性はMDA-231細胞でのPBR発現および細胞増殖を減少させることの原因ではなかったことを示す。これらの結果は、これらの化合物は直接または間接的にPBR遺伝子転写を調節し得ることを示す。
【0046】
EGB761(登録商標)およびGKBは、高度に侵襲的な核PBR-発現性のMDA-231細胞でのPBR発現および細胞増殖を減少させるが、極めて低いPBRレベルを有しおよび核PBRのない非-侵襲性のMCF-7細胞に対しては、MDA-231細胞に対して示したのと同程度には影響を示さなかったという発見は、PBRの存在は乳癌細胞の侵襲性表現型の決定因子と成り得るという仮説に対するさらなる支持を提供する。さらにこの所見は、PBR発現の調節を標的とすることにおけるEGB761(登録商標)およびGKBの効果の特異性を説明する。後者の発見は、今回の研究により我々に二つの鍵となる疑問を投げかけた:他の遺伝子の発現は、EGB761(登録商標)により調節されるのか?PBRが事象のカスケードの開始または部分であり、MDA-231細胞の増殖率変更の原因となっている、EGB761(登録商標)によって活性化または阻害される転写プログラムが存在するのか?これらの疑問を処理するために、我々はAtlasヒトcDNA発現アレイを使用した。表1に示すように、MDA-231細胞のEGB761(登録商標)抽出物による処理により、調査した588遺伝子のうちの36の転写発現の変更が誘導された。予想したとおり、影響を受けた遺伝子の大半が、細胞増殖、分化またはアポトーシスのいずれかと密接な結びつきを有する。おそらく、EGB761(登録商標)がMDA-231細胞ラインに対して有する最も有効な効果は、p120増殖-細胞核抗原のダウン-レギュレーションである。P120は乳癌患者および前立腺癌における予後のインディケーターとして使用される(Perlaky, L.ら, Cancer Res., 52: 428-436,1992; Zhuang, S.H.ら, Endocrinology, 139: 1197-1207,1998)。しかし、さらに重要なことは、p120は増殖細胞の免疫細胞化学マーカーであるということである。したがって、この増殖マーカーの68%のダウンーレギュレーションにより、EGB761(登録商標)はMDA-231細胞増殖を阻害することを説明する我々のデータが確証される。
【0047】
ヒトcDNA発現アレイを用いて、我々はMDA-231細胞における588遺伝子の発現に対するEGB761処理の効果を調べた。我々は、処理によりc-Myc癌原遺伝子の発現が増加し、ならびに細胞増殖を調節する様々な経路に直接的に関与する癌遺伝子(AP-1、PE-1、RhoA、n-Myc)、細胞周期調節因子(CDK2、p55CDC、PCNA p120)、シグナル形質導入モジュレーター(NET1、ERK2)、アポトーシス-関連生成物(SGP-2、NIP1)受容体(A2A、RXR-ベータ、Grb2)、転写因子(Id-2、ATF-4、ETR101、ETR-103)、成長因子(HB-EGF、HGF-様)、および細胞接着分子(CD19、L1CAM、インテグリンα3、α4、α6、β5、Mac-1、βカテニン)を含む35の遺伝子生成物の発現が減少することを発見した。試験化合物が高レベルのPBRを発現するMDA-231細胞のみに効果的であったということを考慮すると、これらのデータにより、核PBRの発現は、腫瘍細胞が侵襲性および浸潤性の表現型を獲得するための決定因子となり得るということが示される。

表1:材料および方法で記載したAtlasヒトc-DNA発現アレイを用いて調べたEGB761(登録商標)のMDA-231遺伝子発現に対する効果
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
転写因子のMycファミリーの二つのメンバーであるc-Mycおよびn-Mycは、この実験において大きく変更されることが発見された。癌原-遺伝子のc-Mycの発現は75%増加し、一方n-Mycの発現は74%減少した。これらの遺伝子の両方ともいくつかの癌タイプでは過剰発現し(Kim, C.J.ら, Virchows Arch., 434: 301-305, 1999; Dang, C.V., Mol. Cel. Biol., 19: 1-11, 1999)、および腫瘍細胞増殖と強く関連する。従来の研究により、チロシンキナーゼ阻害剤ゲニステインによる神経芽細胞種細胞の成長停止は、n-Myc発現のダウンーレギュレーションと同時に起こることが示されている。このデータは我々の細胞増殖およびn-Mycデータと極めてよく整合する。しかし、c-Mycの過剰発現は正常血清状態における細胞増殖刺激と関連する。c-Mycの過剰発現は、血清または他の生存因子がないときの細胞死を誘導する。これらのデータを考え合わせると、c-Myc発現の脱調節は変更された他の遺伝子の発現も必要とするということが示唆される。
【0054】
我々のマイクロアレイ実験において、いくつかの他のc-Myc-関連遺伝子の脱調節された発現を発見した。そのような遺伝子の一つであるプロチモシンα(proTα)はc-Mycにより誘導される。しかし、proT αの発現は、c-Mycのアップ-レギュレーションにより予想されたように、増加するよりむしろ79%減少する。さらに、cdc25A、サイクリンAおよびサイクリンEなどの他のc-Myc標的遺伝子の発現は、MDA-231細胞のEGB761(登録商標)での処理によっては影響を受けなかった。これにより、c-Myc-調節遺伝子転写での処理-特異性または細胞ライン-特異性のショートサーキットのいずれかが示唆される。マイクロアレイ実験から集めた他のデータによりさらにこの仮説が支持される。c-Myc転写調節はAPCおよびβ-カテニンのコントロール下にある。しかし、これらの遺伝子の両方ともMDA-231細胞内でEGB761(登録商標)によりダウン-レギュレートされるが(それぞれ59および58%)、一方c-Mycはアップ-レギュレートされる。このデータのいくつかは矛盾するように思われるが、細胞増殖、分化、および細胞死におけるc-Mycの役割に関する公表されたデータの多くもまた矛盾するように思われる。
【0055】
c-MycおよびMyc-関連タンパク質のEGB761(登録商標)による変更された調節と同様に、マイクロアレイ実験はいくつかのシグナル伝達分子の中断を明らかにした。EGB761(登録商標)処理の結果、様々な細胞の現象に関与するGTP-結合性タンパク質をコードする遺伝子であるRhoAの発現が93%減少し、RhoA-特異性グアニン交換因子であるNET1の発現が55%減少した。興味深いことに、RhoAは繊維芽細胞でのサイクリンE/Cdk2活性を調節することが示された。サイクリンE/Cdk2複合体の活性化は、G1からS期への細胞周期の進行に極めて重要である。サイクリンE/Cdk2活性の調節もまたc-Mycにより示された。これらの二つの現象の意義はすぐには明らかとならないが、Cdk2の発現がEGB761(登録商標)により83%減少することは注目すべきである。
【0056】
他の重要なシグナル分子もまたEGB761(登録商標)によりダウン-レギュレートされる。アダプター分子Grb2の発現は70%減少する。Grb2は、受容体チロシンキナーゼなどのシグナルトランスデューサーをRas/MAPK経路へ物理的にリンクさせることにより、細胞シグナル伝達において重要な役割を果たす。MAPK経路に関し、MAP/ERKファミリーメンバーのERK2の発現は46%ダウン-レギュレートされ、およびc-Jun転写因子の発現は78%減少する。興味深いことに、EGB761(登録商標)はホルボールエステルによって刺激されるAP-1転写因子のサプレッサーであることが報告されている。これらのデータにより、EGB761(登録商標)のMDA-231細胞増殖に対する効果とmRNAの広範な減少とが互いに機能的関連性をもって同時に発現するということを示唆する。
【0057】
マイクロアレイ実験からの他の興味深い発見は、いくつかのインテグリンの減少された発現である。インテグリンは、二つの膜貫通糖タンパク質サブユニット、すなわち一つのα-および一つのβ-サブユニットからなる細胞-細胞および細胞-細胞外マトリックス接着受容体の大きなファミリーである。表1に示されたインテグリンの全ては、何らかの方法で細胞増殖の調節に関与する。たとえば、インテグリンαMはエラスターゼ受容体の部分である。エラスターゼ阻害剤であるONO-5046は、ポリオーマウイルス-およびキルステンサルコーマウイルス-形質転換BALB/c3T3細胞ならびにカパン-1膵臓癌細胞の増殖を抑制する。さらに、インテグリンα4はメラノーマ、サルコーマおよびリンパ腫細胞モデルでの遠位の転移の蓄積に関与していた。インテグリンが一つのα-および一つのβ-サブユニットのヘテロダイマーとして機能するということを強調するのは重要である。α-またはβ-サブユニットのいずれかの減少した発現はインテグリン受容体機能の調節において明らかに重要である。
【0058】
肝細胞成長因子-様およびEGF-様成長因子などのいくつかの鍵となる成長因子遺伝子の発現もまたEGB761(登録商標)により減少された。細胞増殖のEGB761(登録商標)-誘導型阻害は、細胞成長の自己分泌調節因子として行動し得るこれらの成長因子の減少した発現によるものであるとすることは可能である。
【0059】
EGB761(登録商標)およびGKBは、治療を受ける患者に対し、前記患者の癌治療に十分な量で、または上記表1にリストされた遺伝子生成物の発現に(負または正に)影響を与えるのに十分な量で提供されることが意図される。もしEGB761(登録商標)およびGKBの投与量、投与経路などがそのような反応に影響を与えるのに十分であれば、量は、癌治療にも十分であると言われている。
【0060】
投与が治療を受ける患者によって耐え得るものであれば組成物は"薬理学的に受容可能である"と言われている。投与された量が生理的に意義があれば、そのような薬剤は"治療的有効量"で投与されたと言われている。その存在により、治療を受ける患者の生理的変化が検出可能となれば、薬剤は生理的に意義がある。
【0061】
EGB761(登録商標)およびGKBは、薬剤的に有用な組成物を調製するための公知の方法にしたがって製剤化されることができ、それによってこれらの材料またはそれらの機能的な誘導体が薬剤的に受容可能な担体ビヒクルとの混合物と混合されていてもよい。ヒト血清アルブミンなどの他のヒトタンパク質を含む適切なビヒクルおよびそれらの製剤は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences (16th ED., Osol, A. ed., Mack Easton PA. (1980))に記載されている。効果的な投与に適した薬剤的に受容可能な組成物を形成するために、そのような組成物は、適切な量の担体ビヒクルとともに上述の化合物の有効量を含む。
【0062】
追加の調剤化方法は、作用時間の制御のために採用され得る。徐放製剤は化合物を複合するまたは吸収するポリマーの使用を介して得ることができる。制御された送達は、放出制御のための結合方法ばかりでなく、適切なマクロ分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、酢酸エチレンビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、または硫酸プロタミン)およびマクロ分子濃度の選択により実行され得る。徐放製剤による作用時間の制御のためのほかの可能な方法は、本発明化合物をポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)または酢酸エチレンビニル共重合体などの重合体材料の粒子へ結合させることである。代替的に、これらの薬剤を重合体粒子へ結合させる代わりに、これらの材料を界面重合などにより調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリラート)マイクロカプセルに、またはコロイド状の薬物送達システム、例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセルに、またはマクロエマルションにとりこむことが可能である。そのような技術はRemington's Pharmaceutical Sciences (1980)に開示されている。
【0063】
EGB761(登録商標)および単離されたGKBは、経口の、非経口の(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内もしくは皮下内注射、または移植)、点鼻の、経膣の、経直腸の、舌下のまたは局所の投与経路により投与され、それぞれの投与経路に適切な投薬形態を提供するため薬剤的に受容可能な担体とともに製剤化され得る。
【0064】
経口投与のための固形投薬形態にはカプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤が含まれる。そのような固形投薬形態では、活性化合物は、ショ糖、乳糖、またはデンプンなど少なくとも一つの不活性な薬剤的に受容可能な担体とともに混合される。そのような投薬形態は、通常の慣行に従い、そのような不活性な希釈剤の他に追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤を含むことができる。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合には、投薬形態は、緩衝剤も含んでもよい。錠剤および丸剤はさらに腸溶コーティング剤とともに調製することができる。
【0065】
経口投与のための液体投薬形態には、水などの当該技術分野において普通に用いられている不活性な希釈剤を含む薬剤的に受容可能なエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤が含まれる。そのような不活性な希釈剤の他に、組成物には湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤などのアジュバントならびに甘味剤、香料添加剤および芳香剤も含まれ得る。
【0066】
非経口投与のための本発明による調製物には、滅菌水または非-水性液剤、懸濁剤、またはエマルションが含まれる。非-水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルおよびコーンオイルなどの植物油、ゼラチン、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。そのような投薬形態にはまた保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含まれ得る。それらは例えば、細菌-保持フィルターでろ過することにより、滅菌剤を組成物へ組み込むことにより、組成物を照射することにより、または組成物を加熱することにより滅菌され得る。それらは、滅菌水に溶解されるまたは他のいくつかの滅菌された注射用媒体に使用直前に溶解される滅菌された固形組成物の形態にも製造され得る。
【0067】
経直腸または経膣投与のための組成物は、好ましくは、活性物質に加えてココアバターまたは座剤用ワックスなどの賦形剤を含む座剤である。
点鼻または舌下投与のための組成物は、また、当該技術分野で公知の標準的な賦形剤とともに調製される。
【0068】
本発明の組成物におけるEGB761(登録商標)または単離されたGKBの投与量は、変化し得る;しかし、有効成分量は適切な投薬形態が得られるような量であることが必要である。選択される投与量は、望まれる治療効果、投与経路、および治療期間による。用量は、一回投与または複数回投与に分けて投与され得る。EGB761(登録商標)または単離されたGKBいずれかの有効な用量は、治療を受ける患者の状態、選択される投与経路によるものであるが、最終的には主治医または獣医によって決定される。
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本明細書で援用された刊行物および特許の内容は、本明細書全体において参照として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
この特許ファイルは少なくとも一枚のカラーで作成された図を含む(図11)。この写真は記録物のコピーの一部として国際局によって保持される。
【図1】様々な濃度のEGB761(登録商標)のMDA-231PBRリガンド結合能に対する効果。MDA-231細胞を、材料および方法で説明したように培養した。細胞を、表示された濃度のEGB761(登録商標)の注射可能な型で処理した。表示された時間間隔で細胞を収集し、そして、PBRリガンド結合特性をスキャッチャード分析で決定した。データポイントは、三組で実施された三つの独立した実験の平均値±S.D.を表す。
【図2】様々な濃度のGKBのMDA-231PBRリガンド結合能に対する効果。MDA-231細胞を、材料および方法で説明したように培養した。細胞を、表示した濃度のGKBで48時間処理した。表示された時間間隔で細胞をその後収集し、そして、PBRリガンド結合特性をスキャッチャード分析で決定した。データポイントは、三組で実施された二つの独立した実験の平均値±S.D.を表す。
【図3】EGB761(登録商標)およびGKBのMDA-231細胞内のPBR mRNAレベルに対する効果。細胞を、20(EGb-20)もしくは200(EGb-200)μg/mlのEGB761(登録商標)、または2(GKB-2)もしくは20(GKB-20)μg/mlのGKBを用いないでまたは用いて48時間処理した。インキュベーションの最後に、全RNAを単離し、10μg/レーンの濃度で1%のホルムアルデヒドゲルへ充填した。ノーザンブロットを32Pで標識したhPBRプローブでインキュベートし、そしてXOMATコダックフィルムへ露出させた。上図は、ブロットのオートラジオグラムである。PBRは0.9Kbで移動した。下図は、PBR mRNA/28SのリボソームRNAの相対強度を臭化エチジウム染色で図示した。オートラジオグラムおよびPBR mRNAの定量は、二つの独立した実験のうちの一つをあらわす。
【図4】EGB761(登録商標)のMDA-231細胞増殖に対する効果。96-ウエルプレートで成長したMDA-231細胞をPBSで洗浄し、そして、表示された濃度のEGB761(登録商標)が存在するまたは存在しない状態での10%FBSで補充された培地で培養した。インキュベーション終了4時間前に、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を各ウエルに加えた。BrdUの取り込みが450nm(対照=700nm)で計測された。データポイントは、四組で実施された四つの独立した実験の平均値±S.D.を表す。一元-配置分散分析により、EGB761(登録商標)処理によって、MDA-231細胞増殖が48、72、96時間後に有意に変更されたことが示される(P<0.0001)。
【図5A】図5右、中央、左.EGB761(登録商標)の除去後すぐのMDA-231細胞増殖の回復。96-ウエルプレートで成長したMDA-231細胞をPBSで洗浄し、そして、2(左)、20(中央)または200(右)μg/mlのEGB761(登録商標)が存在するまたは存在しない状態での10%FBSで補充された培地で48時間培養した。処理の最後に、細胞を洗浄し、そして、EGB761(登録商標)-フリーの培地で48時間インキュベートした。インキュベーション終了4時間前に、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を各ウエルに加えた。BrdUの取り込みが450nm(対照=700nm)で計測された。データポイントは、四組で実施されたニつの独立した実験の平均値±S.D.を表す。
【図5B】図5右、中央、左.EGB761(登録商標)の除去後すぐのMDA-231細胞増殖の回復。96-ウエルプレートで成長したMDA-231細胞をPBSで洗浄し、そして、2(左)、20(中央)または200(右)μg/mlのEGB761(登録商標)が存在するまたは存在しない状態での10%FBSで補充された培地で48時間培養した。処理の最後に、細胞を洗浄し、そして、EGB761(登録商標)-フリーの培地で48時間インキュベートした。インキュベーション終了4時間前に、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を各ウエルに加えた。BrdUの取り込みが450nm(対照=700nm)で計測された。データポイントは、四組で実施されたニつの独立した実験の平均値±S.D.を表す。
【図5C】図5右、中央、左.EGB761(登録商標)の除去後すぐのMDA-231細胞増殖の回復。96-ウエルプレートで成長したMDA-231細胞をPBSで洗浄し、そして、2(左)、20(中央)または200(右)μg/mlのEGB761(登録商標)が存在するまたは存在しない状態での10%FBSで補充された培地で48時間培養した。処理の最後に、細胞を洗浄し、そして、EGB761(登録商標)-フリーの培地で48時間インキュベートした。インキュベーション終了4時間前に、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を各ウエルに加えた。BrdUの取り込みが450nm(対照=700nm)で計測された。データポイントは、四組で実施されたニつの独立した実験の平均値±S.D.を表す。
【図6】GKBのMDA-231細胞増殖に対する効果。96-ウエルプレートで成長したMDA-231細胞をPBSで洗浄し、そして、2μg/mlまたは20μg/mlGKBのいずれかが存在するまたは存在しない状態での10%FBSで補充された培地で48時間培養した。インキュベーション終了4時間前に、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を各ウエルに加えた。BrdUの取り込みが450nm(対照=700nm)で計測された。データポイントは、四組で実施されたニつの独立した実験の平均値±S.D.を表す。一元-配置分散分析により、MDA-231細胞増殖がGKB処理によって、有意に変更されたことが示される(P<0.0001)。
【図7】EGB761(登録商標)およびGKBのMCF-7細胞増殖に対する効果。図4でMDA-231細胞について説明したのと同様に、MCF-7細胞を96-ウエルプレートで成長させた。MCF-7細胞を、20(EGb-20)もしくは200(EGb-200)μg/mlのEGB761(登録商標)、または2(GKB-2)もしくは20(GKB-20)μg/mlのGKBを用いないでまたは用いて48時間処理した。インキュベーション終了の4時間前に、ブロモデオキシウリジン(BrdU)を各ウエルに加えた。BrdUの取り込みが450nm(対照=700nm)で計測された。データポイントは、四組で実施されたニつの独立した実験の平均値±S.D.を表す。一元-配置分散分析により、MCF-7細胞増殖が、EGB761(登録商標)またはGKBで処理することによって、MDA-231細胞増殖より少ない度合いで変更されたことが示される。
【図8】EGB761(登録商標)のMDA-231細胞フリーラジカル生成に対する効果。MDA-231細胞を2(EGb-2)、20(EGb-20)または200(EGb-200)μg/mlのEGB761(登録商標)で48時間処理した。その後、細胞を洗浄し、そして、細胞の酸化のストレスレベルを材料および方法で述べた蛍光プローブDCFにより計測した。結果を平均値±S.D.(n=4)で表す。統計分析により、EGB761(登録商標)の効果は有意ではないことが示される。
【図9】EGB761(登録商標)に対する転写反応は、細胞増殖に関与する遺伝子に対する効果を示唆する。結果は、588のPCR-増殖されたcDNAフラグメント(Clontech Inc.)を含むAtlasヒトcDNA発現アレイの定量分析を表す。mRNAはコントロールまたはEGB761(登録商標)(20μg/ml)で48時間処理されたMDA-231細胞から得られた。多量のmRNAを標準化するために、イメージ分析から得られた光学密度計測の値を、アレイで提供されたハウスキーピング遺伝子を用いて標準化した。30%以上の一貫した有意な変化が考慮された。
【図10】EGB761(登録商標)またはGKBのいずれかによる処理の後のヌードマウスでのMDA-231異種移植片の成長。100-150mm3の量のMDA-231腫瘍で開始し、動物を一日一回一ヶ月間50mg/kgEGB761(登録商標)の経口投与または1mg/kgGKBの腹腔内投与のいずれかで処理した。処理終了後、動物を30日以上保ち、その後60日目に動物をと殺した。データを平均値±S.E.M.(n=10)で表す。統計分析により、EGB761(登録商標)およびGKBの効果は各々のコントロールに比較して有意であることが示された(p<0.05)。
【図11】図11A、B、C、D、E、F、G、H.コントロールおよびEGB761(登録商標)またはGKB処理した動物からのMDA-231異種移植片でのPBR発現。ホルマリン包理したMDA-231異種移植片の切片を、材料および方法のセクションで述べたように、1:500に希釈した抗-PBR抗血清で免疫染色した。MDA-231腫瘍を、ビヒクル(A-D)、50mg/kgEGB761(登録商標)経口投与(E、G)または1mg/kgGKB腹腔内投与(F、H)で処理した動物から得た。Aは、PBRタンパク質の核局在が容易に認められる(矢印の先を参照されたい)ビヒクル-処理した動物から得られた腫瘍の中央に認められた細胞を示す。Bは、ビヒクル-処理した動物から得られた腫瘍の端に存在する細胞で認められた免疫染色を示す。ビヒクル-処理した動物から得られた腫瘍の端に存在する細胞で認められた免疫染色の高倍率の図をCに示す。Dは非-特異的抗血清で処理されたコントロールを表す。Eは、EGB761(登録商標)で処理した動物から得られた腫瘍の中央に認められた細胞でのPBR免疫染色を示す。Fは、GKBで処理した動物から得られた腫瘍の中央に認められた細胞でのPBR免疫染色を示す。Gは、EGB761(登録商標)で処理した動物から得られた腫瘍の端に認められた細胞でのPBR免疫染色を示す。Hは、GKBで処理した動物から得られた腫瘍の中央に認められた細胞でのPBR免疫染色を示す。矢印の先は、核を示す。倍率は、A、B、C、D、E、F、GおよびHは75倍、そしてCは150倍である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌が腫瘍細胞を調節する役割を有するタンパク質の発現の脱調節によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での癌を治療するために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む前記薬剤。
【請求項2】
増殖が腫瘍細胞を調節する役割を有するタンパク質の発現の脱調節によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での癌細胞の増殖を抑えるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項3】
増殖が腫瘍細胞を調節する役割を有するタンパク質の過剰発現によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での癌細胞の増殖を抑えるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項4】
増殖が末梢-型ベンゾジアゼピン受容体タンパク質の過剰発現によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での侵襲性の表現型を有する癌細胞の増殖を抑えるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項5】
増殖が癌遺伝子の過剰発現によりひきおこされる場合に、そのような治療の必要性のある患者での前記癌遺伝子の発現を減少することにより癌細胞の増殖を抑えるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項6】
前記癌遺伝子が一またはそれ以上のAPC、PE-1、RhoAおよびc-Junである請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
癌細胞が標準的な癌細胞と比較して異常なレベルの末梢-型ベンゾジアゼピン受容体を発現する場合に、そのような減少の必要性のある患者での前記癌細胞内の末梢-型ベンゾジアゼピン受容体の発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項8】
前記癌細胞がヒト乳癌細胞である請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
前記癌細胞が膠芽細胞腫である請求項7に記載の薬剤。
【請求項10】
前記癌細胞がヒト脳腫瘍細胞である請求項7に記載の薬剤。
【請求項11】
前記癌細胞がヒト星状細胞腫細胞である請求項7に記載の薬剤。
【請求項12】
前記癌細胞がヒト結腸癌細胞である請求項7に記載の薬剤。
【請求項13】
前記癌細胞がヒト結腸腺癌細胞である請求項7に記載の薬剤。
【請求項14】
前記癌細胞がヒト卵巣癌細胞である請求項7に記載の薬剤。
【請求項15】
前記癌細胞がヒト肝細胞癌細胞である請求項7に記載の薬剤。
【請求項16】
そのような減少の必要性のある患者での癌細胞内の末梢-型ベンゾジアゼピン受容体のmRNAの発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項17】
そのような増加の必要性のある患者でのc-Myc癌原遺伝子の発現を増加させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項18】
そのような減少の必要性のある患者での細胞周期調節因子であるプロチモシン-α、CDK2、p55CDC、ミエロブラスチンおよびp120増殖-細胞核抗原の発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項19】
そのような減少の必要性のある患者での細胞内シグナル形質導入活性調節因子であるNET1およびERK2の発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項20】
そのような減少の必要性のある患者でのアポトーシス-関連生成物であるアデノシンA2A受容体、Flt3リガンド、Grb2、クルステリン、RXR-β、グルタチオンS-トランスフェラーゼP、N-Myc、TRADD、SGP-2およびNIP-1の発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項21】
そのような減少の必要性のある患者での転写因子であるId-2、ATF-4、ETR101およびETR-103の発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項22】
そのような減少の必要性のある患者での成長因子であるマクロファージコロニー-刺激因子-1、ヘパリン-結合性EGF-様成長因子、肝細胞成長因子-様タンパク質およびインヒビンαの発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項23】
そのような減少の必要性のある患者での接着分子であるCD19B-リンパ球抗原、L1CAM、β-カテニン、インテグリンサブユニットα3、α4、α6、β5、およびαMの発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項24】
そのような減少の必要性のある患者での遺伝子であるAPC、PE-1、RhoA、c-Jun、プロチモシン-α、CDK2、p55CDC、ミエロブラスチン、p120増殖-細胞核抗原、NET1、ERK2、アデノシンA2A受容体、Flt3リガンド、Grb2、クルステリン、RXR-β、グルタチオンS-トランスフェラーゼP、N-Myc、TRADD、SGP-2、NIP-1、Id-2、ATF-4、ETR-101、ETR-103、マクロファージコロニー-刺激因子-1、ヘパリン-結合性EGF-様成長因子、肝細胞成長因子-様タンパク質、インヒビンα、CD19B-リンパ球抗原、L1CAM、β-カテニンならびにインテグリンサブユニットα3、α4、α6、β5、およびαMの発現を減少させるために投与する薬剤であって、有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBを含む上記薬剤。
【請求項25】
癌の治療のための有効量のイチョウの抽出物または単離されたギンコライドBおよび薬剤的に受容可能な担体または希釈剤を含む薬剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−126472(P2007−126472A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345847(P2006−345847)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【分割の表示】特願2001−516553(P2001−516553)の分割
【原出願日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【出願人】(500511604)ソシエテ・ドゥ・コンセイユ・ドゥ・ルシェルシュ・エ・ダプリカーション・シャンティフィック・エス・ア・エス (22)
【出願人】(500027873)ジョージタウン・ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】