説明

イマチニブメシレート

イマチニブメシレートの固体分散体であって、イマチニブメシレートおよび薬学的に受容可能な担体を含み、前記担体がセルロース誘導体である、固体分散体が提供される。さらに提供されるのは、固体分散体の製造プロセス、およびイマチニブの製造プロセスである。別の局面において、イマチニブメシレートの固体分散体の調製プロセスが提供され、このプロセスは、I.溶媒に溶解したイマチニブメシレートおよび薬学的に受容可能な担体の溶液であって、該担体が、該溶媒に可溶なセルロース誘導体である溶液を提供すること;II.該溶媒を除去して残留物を取得すること;および、III.イマチニブメシレートの固体分散体である該残留物を単離すること、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的に受容可能な担体を有するイマチニブメシレートの固体分散体、およびその製造プロセスに関する。さらに提供されるのは、イマチニブまたはその塩の調製プロセスである。
【背景技術】
【0002】
イマチニブメシレートは、化学的には、4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミドメタンスルフォネートと記述され、式(I)、
【0003】
【化1】

の化学構造によって表される。
【0004】
イマチニブは、特に各種の癌の治療に有用な、タンパク・チロシンキナーゼ阻害剤であり、通常、メタンスルホン酸塩、すなわち、イマチニブメシレートの形で経口的に投与される。イマチニブメシレートは、商品名Gleevecという名の下に錠剤として市販されている。
【0005】
Zimmermannらは、特許文献1において、イマチニブ、および、特に抗癌剤としてのその使用を開示する。この特許文献1はさらに、イマチニブの調製プロセスであって、塩基としてのピリジンの存在下に、N−(2−メチル−5−アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミンを4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸クロリドと反応させることを含むプロセスを記載する。
【0006】
Kankanらは、特許文献2において、イマチニブの調製プロセスであって、不活性有機溶媒中で、外部塩基無添加において、N−(2−メチル−5−アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミンを4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸クロリドと反応させることを含むプロセスを開示する。
【0007】
Parthasaradhiらは、特許文献3において、結晶質イマチニブメシレートFormH1、非晶質イマチニブメシレート水和物、それらの調製プロセス、および製薬組成物を開示する。
【0008】
Jegorovらは、特許文献4において、イマチニブメシレートの結晶形、非晶形、およびその調製プロセスを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,521,184号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/074502号パンフレット
【特許文献3】米国特許第7,300,938号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/136510号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
商業的製造のために使用が可能とされるイマチニブの調製プロセス、およびイマチニブメシレートの新規固体形は絶えず求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一局面において、イマチニブメシレートおよび薬学的に受容可能な担体を含む、イマチニブメシレートの固体分散体であって、該担体がセルロース誘導体である、固体分散体が提供される。種々の実施態様および変異態様が提供される。
【0012】
別の局面では、イマチニブメシレートの固体分散体の調製プロセスであって:
I.溶媒に溶解したイマチニブメシレートおよび薬学的に受容可能な担体の溶液であって、該担体が、該溶媒に可溶なセルロース誘導体である溶液を提供すること;
II.該溶媒を除去して残留物を取得すること;および、
III.イマチニブメシレートの固体分散体である該残留物を単離すること、
を含むプロセスが提供される。
【0013】
さらに別の局面では、式II
【0014】
【化2】

のイマチニブ、またはその薬学的に受容可能な塩の調製プロセスであって、カップリング剤の存在下に、式IV
【0015】
【化3】

のN−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミンまたはその塩を、式III
【0016】
【化4】

の4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸、またはその塩と反応させることを含むプロセスが提供される。種々の実施態様および変異態様が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1にしたがって調製された固体分散体のX線粉末回折パターンの具体例である。
【図2】実施例1にしたがって8日間保存された後の、X線粉末回折パターンの具体例である。
【図3】実施例9にしたがって調製された結晶質イマチニブのX線粉末回折パターンの具体例である。
【図4】実施例9にしたがって調製された結晶質イマチニブの、示差走査熱分析(DSC)サーモグラムの具体例である。
【図5】実施例9にしたがって調製された結晶質イマチニブの、熱重量測定分析(TGA)後に得られたサーモグラムの具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ある単一の化合物が、はっきりと異なる物理特性を有する種々の固体を生じる場合がある。この物理特性の変動は、処方製剤製品の異なる生産ロットの間にバイオアベイラビリティー、安定性などに違いをもたらすことがしばしばある。多型は、その物理特性において変動することがあり得るので、規制当局は、新規薬剤物質については、その全ての多型、例えば、結晶形、非晶形、溶媒化合形などを特定するよう努めるようにと要求する。
【0019】
薬剤物質の種々の多型は、一般に、保存されると他の結晶形へ変換されるという欠陥を被るので、該薬剤結晶の物理的形状の変化のみならず、同時に、それに関連して溶解およびバイオアベイラビリティー特徴にも変化がもたらされる。一般に、分子は、熱力学的に安定な形に帰着するものであるが、これは、溶解度がもっとも低い形態である。このような熱力学的安定形では、時に、特に経口投与では、バイオアベイラビリティーが低下したり、または至適レベルに届かない場合がある。
【0020】
本発明は、どのようなものであれ特定の理論によって限定されるものではないが、薬剤物質の固体分散形、より具体的には、結晶形の長所、すなわち、熱力学的安定性を持つと考えられる、薬剤物質の熱力学的安定形、および、非晶形の長所、すなわち、高められた溶解度、速やかな活動開始、および高められたバイオアベイラビリティーを持つと考えられる薬剤物質、これらの固体分散形を実現することは望ましい。
【0021】
本明細書で用いる「固体分散体」という用語は、互いに緊密に混ぜ合わされる、異なる化学的実体の、少なくとも二つの成分を含む均一な固体を表す。このような固体分散体は、二つの成分が、揮発性溶媒において液体溶液中の溶質で存在する場合、溶媒蒸発後残留物として取得される。
【0022】
前述したように、本出願は、イマチニブメシレートに対し薬学的に受容可能な担体として作動するセルロース誘導体を有する、イマチニブメシレートの固体分散体を提供する。本発明は、どのようなものであれ特定の理論によって限定されるものではないが、この固体分散体は、その内部では、それぞれの成分が分子レベルで互いに分散し合う、緊密な混合物である。好ましくは、この固体分散体は、先ず、揮発性溶媒に溶解した成分の溶液を取得し、次いで、該溶媒を除去することによって取得される。これは、例えば、下記:
I.揮発性溶媒において、イマチニブメシレート、および、担体として作動するべきセルロース誘導体の溶液を提供すること;
II.該揮発性溶媒を除去して固体残留物を生成すること;および、
III.イマチニブメシレートの固体分散体である残留物を単離すること、
を含み、別々に考慮の対象とされるプロセスによって実現されてもよい。本発明は、どのようなものであれ特定の理論によって限定されるものではないが、これらの成分は該溶媒において分子レベルで溶解されるので、残留物は固体分散体である。
【0023】
担体としてのセルロース誘導体の使用−この場合セルロース誘導体は固体分散体の一部を形成する−と、固体分散体を使用する製薬処方における共通賦形剤としてのセルロース誘導体の使用とを区別することが重要である。この点で、セルロース誘導体は、担体としてのその使用を有用ならしめる、いくつかの特性を有することが期待される。固体分散体における担体として好適なセルロース誘導体は、最終分散体における各成分の所望の比率、および製造適性を確保するのに十分なレベルにおいて液体溶媒に溶解するのに十分な溶解度を有することが好ましい。選ばれたセルロース誘導体の所望の溶解度を測定するための有用な方法として、メタノールにおける溶解度を使用してもよい。好適なセルロース誘導体は、メタノールに対し0.01g/ml以上、好ましくは0.1g/ml以上の溶解度を有することが好ましい。さらに、セルロース誘導体は、最終的固体分散体に好適な粘度範囲を所有することが望ましい。セルロース誘導体の好ましい粘度は、約1cpsから約100cpsの範囲に亘る。一変異態様では、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。本固体分散体において担体として使用するのに好ましいHPMCは、5cpsの粘度を有する。別の変異態様では、セルロース誘導体はエチルセルロースである。
【0024】
好ましくは、本明細書に記載される固体分散体は、約5:95から約95:5の範囲の比で存在するイマチニブメシレートおよび担体を含む。より好ましい比は、約50:50である。
【0025】
本発明人らは、固体分散体中の残留水分量が重要な場合のあることを発見した。この残留水分は、十分認可されているKarl Fisher法によって測定した(測定してもよい)。好ましくは、本固体分散体は、該固体分散体全体の重量に対し約1%よりも大きく、約10%よりも少ない、残留水分を含む。一特定変異態様では、約2%未満の残留水分含量を有する固体分散体が特に考慮の対象とされる。好ましい別の変異態様では、約4%から約7%の範囲の残留水分含量を有する固体分散体が特異的に考慮の対象とされる。
【0026】
溶媒を除去すると、残留物は、イマチニブメシレートを非晶形として含む。このように、イマチニブメシレート分画が非晶形で存在する固体分散体は、好ましく、特異的に考慮の対象とされる。さらに考慮の対象とされるものは、該固体分散体中に存在するイマチニブの重量に対し、60%から100%の範囲の非晶質含量を有する固体分散体、および、90%から100%の範囲で、より好ましくは約99%において非晶質含量を有する分散体である。
【0027】
本明細書に記載される固体分散体は、X線粉末回折パターン(XRPD)、熱技術、例えば、示差走査熱分析測定法(DSC)、および熱重量(TGA)分析によってその特徴が解明されてもよい。イマチニブメシレートの固体分散体のサンプルは、Bruker AXS D8上級回折メーターにおいて、X線源−Cu Kα放射を波長1.5418Åで用いるXRPDによって分析した。実施例で得られた固体分散体の分析データの具体例を、図1−5(1−2)に記載する。
【0028】
前述したように、固体分散体の製造プロセスは、個別に考慮の対象とされる。したがって、イマチニブメシレートの固体分散体の調製プロセスであって:
I.揮発性溶媒に溶解したイマチニブメシレートおよび薬学的に受容可能な担体の溶液であって、該担体が、該溶媒に対して可溶なセルロース誘導体である、溶液を提供すること;
II.前記揮発性溶媒を除去して残留物を取得すること;および、
III.イマチニブメシレートの固体分散体である残留物を単離すること、
を含むプロセスが提供される。
【0029】
一実施態様では、該提供する工程は、固体イマチニブメシレート、および該薬学的に受容可能な担体を、該溶媒に溶解することを含む。溶解は、これらの成分の完全な溶解に適当な温度で実行してもよい。開始イマチニブメシレートは、任意の形態を持っていてよく、例えば、結晶質、非晶質、または、結晶および非晶形の混合物であってもよい。
【0030】
別の実施態様では、該提供する工程は、該溶媒に対しイマチニブの遊離塩基を溶解すること、該遊離塩基液をメタンスルホン酸によって処理して、溶液内においてイマチニブメシレートを取得すること、および該担体を加えることを含む。
【0031】
該好ましい揮発性溶媒としては、C1−C5アルコール類、C3−C8エステル類、C2−C8エーテル類、C5−C8炭化水素、水、およびそれらの混合物が挙げられる。該提供する工程のために特に好適な溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、水、トルエン、シクロヘキサン、ジイソプロピルエーテル、アセトン、およびそれらの混合物が挙げられる。メタノール、エタノール、n−プロパノールおよびイソプロパノール、水、およびそれらの混合物が好ましい。
【0032】
個別に考慮の対象とされるものは、本明細書に記載されるいずれかのプロセスによって生産される固体分散体である。
【0033】
溶媒の除去は、当該技術分野で公知の慣用法、例えば、減圧の存在または不在下における、蒸留、蒸発、または濃縮によって実行してもよい。慣例法の例としては、ただしこれらに限定されないが、回転蒸発、スプレー乾燥、凍結乾燥、液体ベッド乾燥、フラッシュ乾燥、スピンフラッシュ乾燥、およびUltrafilm agitated thin film dryer−vertical(ATFD−V)が挙げられる。例えば、典型的な実験室における減圧蒸留/蒸発法では、溶液は、減圧下に、あらかじめ加熱された反応器に滴下される。次に、産物は、乾燥粉末として単離される。溶媒の除去は、溶解成分の分解ができるだけ少ないように実行されるのが好ましい。
【0034】
溶媒の除去は、該溶液におけるイマチニブメシレートの濃度、および、除去が行われる圧に関連して適切な温度において実行される。溶媒は、約1から100mbar、好ましくは10から30mbarに維持した減圧下において蒸発させてもよい。蒸発は、約30から約100℃の温度、または還流温度において実行することが可能である。
【0035】
薬学的に受容可能な担体を有するイマチニブメシレートの固体分散体は、任意の方法によって単離してよい。このプロセスは、減圧の存在下または不在下に、かつ、不活性雰囲気の存在下または不在下に取得される産物の乾燥をさらに含んでもよい。
【0036】
本明細書に記載される、担体を有するイマチニブメシレートの固体分散体は、表1に示すように、約50%未満の相対湿度で、約0−5℃の温度または周囲温度では、どのような結晶形にも変換されない。
【0037】
【表1】

さらに、式II
【0038】
【化5】

のイマチニブ、またはその薬学的に受容可能な塩の調製プロセスであって、カップリング剤の存在下に、式IV
【0039】
【化6】

のN−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミン、またはその塩を、式III
【0040】
【化7】

の化合物、またはその塩と反応させて、式IIのイマチニブ、またはその薬学的に受容可能な塩を取得することを含むプロセスが提供される。活性化剤の使用(カップリング剤に加えて)も考慮の対象とされる。
【0041】
式IIIおよびIVの化合物は、無機酸、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、およびヨウ化水素酸;および、有機酸、例えば、酢酸、酒石酸、シュウ酸、およびメタンスルホン酸を含む酸、ただしこれらに限定されないが、を用いることによって塩に変換することが可能である。
【0042】
好ましい実施態様では、イマチニブまたは薬学的に受容可能な塩を調製するプロセスであって、式IVのN−(2−メチル−5−アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミンを、式IIIの4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸と、カップリング剤の存在下に反応させることを含むプロセスが提供される。
【0043】
好適なカップリング剤の非限定的例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、イソブチルクロロフォルメート、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT)、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド、および2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド(DMC)、およびそれらの混合物が挙げられる。活性化剤は、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N−ヒドロキシスクシンイミド、およびN−ヒドロキシピペリジンから選んでもよい。
【0044】
上記反応に利用が可能な、式IVの化合物、および式IIIのジヒドロクロリド塩のモル比は、約1:1から約1:2の範囲、好ましくは1:1.5として存在してもよい。上記反応に利用が可能な、式IVの化合物、およびカップリング剤のモル比は、約1:1から約1:2の範囲、好ましくは1:1.5として存在してもよい。上記反応に利用が可能な、式IVの化合物、および活性化剤のモル比は、約1:1から約1:2.5の範囲内に存在してもよい。
【0045】
この反応は、塩基の存在下に実行してもよい。本出願のプロセスにおいて使用することが可能な好適な塩基としては、ただしこれらに限定されないが、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム;アルカリ金属炭酸塩、例えば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸リチウム;アミン類、例えば、トリエチルアミン、およびトリメチルアミン;N−メチルモルフォリン;およびこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、該塩基は、トリエチルアミンおよびN−メチルモルフォリンから選ばれる。
【0046】
この反応は、約−10℃から、溶媒の、約還流温度までの温度において実行してよい。温度は、約0℃から約50℃までであることが好ましい。
【0047】
前記反応のために使用することが可能な溶媒としては、N,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、スルフォラン、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサメチルフォスフォルアミド(HMPA)、およびジメチルアセトアミド(DMA)、およびこれらの混合物が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0048】
反応完了後、産物を単離することが可能である。例えば、反応混合物は、水によって反応停止させ、得られた混合物はろ過して、副産物を除去してもよい。次に、この反応混合物を適切な有機溶媒によって抽出することによって本化合物を単離してもよい。この産物の抽出のために使用することが可能な有機溶媒としては、ハロゲン化溶媒、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、およびクロロフォルム;炭化水素溶媒、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレンなど;エステル溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル;エーテル溶媒、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アルコール溶媒、例えば、n−ブタノール、およびイソブタノール、ケトン溶媒、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン;および、これらの混合物が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0049】
このようにして取得されるイマチニブ遊離塩基はさらに、溶媒における沈殿、析出、またはスラリー形成などの方法によって精製してもよい。この目的のために使用してもよい溶媒としては、エステル類、例えば、酢酸エチル、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテートなど;エーテル類、例えば、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテルなど;アルコール類、例えば、メタノール、イソプロパノール、エタノールなど;ケトン類、例えば、アセトン、エチルメチルケトンなど;炭化水素、例えば、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなど;アセトニトリル、水、およびこれらの混合物が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0050】
固体産物は、適切な技術、例えば、傾斜抽出、重力または吸引によるろ過、遠心などによって回収される。反応混合物から固体を分離するための、他の技術も本発明の範囲内にある。
【0051】
本出願のプロセスによって取得されるイマチニブ遊離塩基は、X線粉末回折(”XRPD”)パターン、示差走査熱分析測定(”DSC”)曲線、および熱重量曲線(TGA)によってその特徴が解明されてもよい。イマチニブ遊離塩基は、約6.0、17.2、18.1、19.8、24.3、および25.3±0.2度の、回折角度2−シータにおいて特徴的ピークを持つ。本明細書において上述する特徴的ピークの外に、X線粉末回折パターンはさらに、7.7、12.1、18.7、20.9、23.4、および23.8±0.2度においてピークを含んでもよい。同じ固体形態についてもXRPDパターンは、通常、いくつかの関連因子−X線回折装置およびオペレータ間のバラツキが、その内のいくつかとして挙げられる−の関数として変動する。図3は、本出願の、結晶質イマチニブ遊離塩基のX線粉末回折パターンの例を提示する。
【0052】
本出願にしたがって取得されるイマチニブ遊離塩基は、図4によれば、示差走査熱分析(DSC)サーモグラムにおいて約205.39℃に吸熱ピークを有する。
【0053】
示差走査熱分析分析は、TA Instrumentsから市販されるDSC Q1000モデルを用い、5℃/分の勾配、60秒の変調時間、±1℃の変調温度において実行した。開始温度は0℃、終了温度は200℃であった。
【0054】
本出願のイマチニブ遊離塩基は、図5によれば、約0.16%w/wの重量損失に一致する特徴的TGA曲線を有する。
【0055】
このようにして得られたイマチニブ遊離塩基は、慣用法により薬学的に受容可能な酸と反応させることによって、所望の、薬学的に受容可能な酸添加塩に変換することが可能である。
【0056】
イマチニブ塩の調製のために使用することが可能な薬学的に受容可能な酸としては、無機酸、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、およびヨウ化水素酸;および有機酸、例えば、酢酸、酒石酸、シュウ酸、メタンスルホン酸などが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0057】
別の実施態様では、本出願のプロセスによって取得される固体分散体は、カプセル、錠剤、丸剤、散剤、または顆粒剤の形状を持つ経口投与用の固体組成物として処方されてもよい。これらの組成物において、上記活性産物は、一つ以上の、薬学的に受容可能な賦形剤と混ぜ合わせられる。この薬剤物質は、経口投与用の液体組成物、すなわち、溶媒またはベヒクル、例えば、水、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、または流動パラフィンを含む、溶液、縣濁液、シロップ、エリキシルおよび乳剤を含む、液体組成物として処方することが可能である。
【0058】
非経口投与用組成物は、縣濁液、乳剤、または、水性または非水性滅菌液であってもよい。溶媒またはベヒクルとして、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油、および注入可能な有機エステル類、例えば、エチルオレエートを用いてもよい。これらの組成物は、アジュバント、特に、湿潤剤、乳化剤、および分散剤を含むことが可能である。滅菌は、いくつかのやり方で、例えば、細菌フィルターの使用、滅菌剤の、組成物中への取り込み、放射線被爆または加熱によって実行してもよい。組成物は、滅菌組成物として、使用時に、滅菌水、またはその他の任意の、滅菌注入媒体に溶解が可能な組成物として調製されもてよい。
【0059】
本出願のイマチニブメシレートの固体分散体を含む組成物に使用される、薬学的に受容可能な賦形剤としては、希釈剤、例えば、でん粉、ゼラチン化でん粉、ラクトース、粉末状セルロース、微細結晶セルロース、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、マンニトール、ソルビトール、糖など;カップリング剤、例えば、アカシア、グアガム、トラガカント、ゼラチン、ゼラチン化でん粉など;崩壊剤、例えば、でん粉、でん粉グリコール酸ナトリウム、ゼラチン化でん粉、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素など;潤滑剤、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛など;滑沢剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素など;可溶性または湿潤強化剤、例えば、陰イオンまたは陽イオンまたは中性界面活性化剤、ワックス類などが挙げられるが、ただしこれらに限局されない。他の、薬学的に受容可能な、有用な賦形剤としては、フィルム形成剤、可塑化剤、着色剤、芳香剤、甘味剤、粘性強化剤、防腐剤、抗酸化剤などが挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0060】
本出願のイマチニブメシレートの固体分散体の組成物に使用される薬学的に受容可能な賦形剤はさらに、固体分散体の調製のために使用される薬学的に受容可能な担体を含んでもよい。
【0061】
本発明の、いくつかの特異的局面および実施態様を、下記の実施例を参照しながらより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、ただ例示のためだけに提示されるものであって、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと思量してはならない。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
エチルセルロース(EC)によるイマチニブメシレートの固体分散体(比50:50)。
【0063】
フラスコを、同時に攪拌しながら、最大60℃に加熱している際、エチルセルロース(6g;微細級−7cps)およびイマチニブメシレート(6g;β形)を、メタノール(200ml)に溶解した。得られた溶液を減圧下60℃の温度において乾燥するまで蒸発させ、表記の化合物11gを非晶形として得た(図1)。
【0064】
得られたサンプルについて、その物理的安定性を確認するために、種々の温度に7日間暴露した(図2)。結果を表2にまとめる。
【0065】
【表2】

(実施例2)
エチルセルロースと組み合わせたイマチニブメシレートの固体分散体(67:33)。
【0066】
フラスコを60℃の温度に加熱しながら、エチルセルロース(1g;微細級−7cps)をメタノール(50ml)に溶解した。得られた溶液にイマチニブメシレート(2.0g;β形)を加えた。この全体溶液を減圧下60℃において完全に蒸発させ、表記の化合物を得た。
【0067】
収量:2.5g
Karl fisherによる水分含量:1.70%w/w 。
【0068】
(実施例3)
HPMCによるイマチニブメシレートの固体分散体(比50:50)
フラスコを、同時に攪拌しながら、60℃の温度に加熱している際、イマチニブメシレート(6g;β形)およびHPMC(6g;等級−5cps)をメタノール(410ml)に溶解した。得られた溶液を減圧下60℃の温度において乾燥するまで完全に蒸発させ、表記の化合物12gを非晶形として得た。
【0069】
得られたサンプルについて、その物理的安定性を確認するために、種々の温度に7日間暴露した。結果を表3にまとめる。
【0070】
【表3】

(実施例4)
HPMCによるイマチニブメシレートの固体分散体(比77:23)
フラスコを、同時に攪拌しながら、60℃の温度に加熱している際、イマチニブメシレート(1g;β形)およびHPMC(0.3g;等級−5cps)をメタノール(20ml)に溶解した。得られた溶液を減圧下60℃の温度において乾燥するまで完全に蒸発させ、表記の化合物0.807gを非晶形として得た。水分含量2.81%w/w。
【0071】
(実施例5)
HPMCによるイマチニブメシレートの固体分散体(比91:09)
フラスコを、同時に攪拌しながら、60℃の温度に加熱している際、イマチニブメシレート(1g;β形)およびHPMC(0.1g;等級−5cps)をメタノール(20ml)に溶解した。得られた溶液を減圧下60℃の温度において乾燥するまで完全に蒸発させ、表記の化合物0.750gを非晶形として得た。水分含量4.24%w/w。
【0072】
(実施例6)
イマチニブメシレートを単離しない場合のイマチニブメシレートの固体分散体
イマチニブ(2g)をメタノール(210ml)に溶解し、次いで、その中に、25と35℃の間の温度においてメタンスルホン酸(0.4g)を加え、全体溶液を10分攪拌した。フラスコを60℃の温度に加熱しながら、得られた反応液にHPMC(0.4g;等級−5cps)を加えた。得られた溶液をスプレイドライヤーを用いて完全に蒸発させ、イマチニブメシレートの、非晶質固体分散体2.5gを得た。M.C.:Karl Fisher法により4.4%。
【0073】
スプレイドライヤーパラメータ:
吸引器:70%
供給率:20%
入力温度:75℃
圧:5.0kg/cm
得られたサンプルは、物理的安定性を確認するために、ポリエチレンバッグに包装し、2日間室温に暴露した。試料は、元のXRPDパターンの維持によって示されるように、二日間の保存後も多型を保持することが認められた。
【0074】
もう一つのサンプルは、物理的安定性を確認するために、開放ペトリ皿に保存され、22時間室温に暴露された。この試料は、元のXRPDパターンおよびM.C.4.36%の維持によって示されるように、二日間の保存後も多型を保持することが認められた。
【0075】
(実施例7)
イマチニブメシレートを単離しない場合のイマチニブメシレートの固体分散体
イマチニブ(1g)をメタノール(150ml)に溶解し、次いで、その中に、25と35℃の間の温度においてメタンスルホン酸(0.2g)を加え、全体溶液を5分間攪拌した。得られた反応液にHPMC(1g;等級−5cps)を30℃の温度で加えた。得られた溶液を回転蒸発器において65℃で完全に蒸発させ、固体を30分乾燥し、イマチニブメシレートの非晶質固体分散体1.2gを得た。
【0076】
M.C.:Karl Fisher法により2.6%。
【0077】
得られたサンプルは、その物理的安定性を確認するために、ポリエチレンバッグに包装し、25から35℃までの温度に43時間暴露した。試料は、元のXRPDパターンおよびMC.3.29%の維持によって示されるように、43時間の保存後もその多型を保持することが認められた。
【0078】
(実施例8)
イマチニブ遊離塩基からのイマチニブメシレートの調製
イマチニブ(5g)を、ミネラル除去水(20ml)とイソプロピルアルコール(175ml)の混合液に溶解し、次いで、その中にメタンスルホン酸(1g)を25と35℃の間の温度において加えた。得られた溶液をスプレイドライヤーを用いて乾燥するまで完全に蒸発させ、非晶質イマチニブメシレート4.0gを得た。
【0079】
M.C.:Karl Fisher法により2.06%。
【0080】
(実施例9)
カップリング剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド、活性化剤としてHOBtを用いるイマチニブ遊離塩基の調製
4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸クロリド(8.308g)、ジメチルフォルムアミド(75ml)、およびトリエチルアミン(14ml)をフラスコに満たした。この反応混合液を、25℃の温度で10分攪拌し、次いで0℃に冷却した。この反応混合液に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)(3.657g)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(5.584g)を加えた。この反応混合液に、N−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミン(5g)を窒素雰囲気下に加え、次いで、放置して温度を26℃に上昇させ、その後21時間攪拌した。反応完了は、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて確認し、次いで、この反応混合物をろ過した。ろ液にジクロロメタン(100ml)および水(100ml)を加え、次いで、ジクロロメタン層を分離した。このジクロロメタン層を、7%のNaHCO水溶液で洗浄した(2×50ml)。再び、このジクロロメタン層を50mlの水で洗浄した。このジクロロメタン層をNaSO上で乾燥させ、580mmHgの減圧下25℃で完全に蒸発させて、固体を得た。
【0081】
この固体を酢酸エチル(50ml)に縣濁し、15分攪拌し、次いでこの縣濁液をろ過した。得られた個体を再び酢酸エチル(25ml)に縣濁し、20分攪拌し、次いでろ過した。固体を、580mmHgの減圧下45℃の温度で1時間乾燥したところ、7gの表記化合物が得られた。
【0082】
質量:494.4(M+1)。
【0083】
(実施例10)
カップリング剤として2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンを用いるイマチニブの調製
ジメチルフォルムアミド(10ml)、4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸ジヒドロクロリド(1.65g)、N−メチルモルフォリン(2.54g)、および2−クロロ−4,6−ジメトキシ 1,3,5−トリアジン(1.26g)を、フラスコに充填した。この反応混合物を2時間攪拌した。反応完了は、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて確認し、次いで、この反応混合物に、N−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミン(1g)を加えた。この反応混合物を25℃で4時間攪拌し、次いでろ過した。ろ液にジクロロメタン(20ml)を加え、次いで、有機層を水で洗浄した(3×10ml)。有機層を、580mmHgの減圧下54℃で乾燥するまで完全に濃縮して残留物を得た。この残留物を、ジイソプロピルエーテル(3×20ml)で選択抽出し、次いで固体を乾燥してイマチニブを得た。
【0084】
収量:900mg
質量:494.3(M+1)。
【0085】
(実施例11)
カップリング剤としてイソブチルクロロフォルメートを用いるイマチニブの調製
4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸ジヒドロクロリド(1.662g)、ジメチルフォルムアミド(15ml)、N−(2−メチル−5−アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミン(1g)、およびN−メチルモルフォリン(2.1ml)を、フラスコに充填した。この反応混合物を25℃で10分攪拌し、次いで2℃に冷却した。反応混合物に、イソブチルクロロフォルメート(0.75ml)を20分に亘って加え、次いで22時間攪拌し、窒素雰囲気下に35分攪拌した。再び、反応混合物にイソブチルクロロフォルメート(0.24ml)を加え、3時間、45分攪拌し、次いでろ過した。このろ液に、ジクロロメタン(20ml)および水(20ml)を加え、5から10分攪拌した。有機層を分離し、7%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し(2×10ml)、次いで、水で洗浄した(10ml)。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、乾燥するまで完全に蒸発させた。この残留物に、ジイソプロピルエーテル(20ml)を加え、30分攪拌した。この縣濁液をろ過し、次いで固体を酢酸エチル(10ml)に縣濁した。得られた縣濁液は25分攪拌し、次いでろ過した。酢酸エチルスラリーをもう一度繰り返し、得られた固体を25℃で乾燥してイマチニブを得た。
【0086】
収量:350mg
質量:494.3(M+1)。
【0087】
(実施例12)
カップリング剤としてエチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド、活性化剤としてヒドロキシベンゾトリアゾールを用いるイマチニブの調製
4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸ジヒドロクロリド(1.661g)、ジメチルフォルムアミド(15ml)、およびN−メチルモルフォリン(2.3ml)を、フラスコに充填した。この反応混合物を、25℃の温度において10分攪拌し、次いで0℃に冷却した。反応混合物に、ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.975g)、およびエチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド(1.384g)を加え、次いで全体反応マスを10分間攪拌した。この反応混合物に、N−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミン(1g)を窒素雰囲気下に加え、次いで、26℃の温度において10時間攪拌した。この反応混合物をろ過した。ろ液に、ジクロロメタン(20ml)および水(20ml)を加え、次いで5分間攪拌した。有機層を分離し、7%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し(2×10ml)、次いで、水で洗浄した(10ml)。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、次いで45℃で600mHgの減圧下に、乾燥するまで完全に蒸発させた。得られた残留物を酢酸エチル(10ml)において25分間スラリー形成させ、ろ過した。スラリー形成ステップをもう一度繰り返し、得られた固体を、650mmHg減圧下に25℃で1時間乾燥してイマチニブを得た。
【0088】
収量:700mg
質量:494.3(M+1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イマチニブメシレートおよび薬学的に受容可能な担体を含む、イマチニブメシレートの固体分散体であって、該担体がセルロース誘導体である、固体分散体。
【請求項2】
前記セルロース誘導体が、メタノール中で0.01g/ml以上の溶解度を有する、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項3】
前記セルロース誘導体が、約1cpsから約100cpsの範囲の粘度を有する、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項4】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項5】
前記セルロース誘導体がエチルセルロースである、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項6】
イマチニブメシレートおよび前記担体が、約5:95から約95:5の範囲の比で存在する、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項7】
イマチニブメシレートおよび前記担体が、約50:50の比で存在する、請求項6に記載の固体分散体。
【請求項8】
前記固体分散体全体の重量に対し約1%よりも大きく、約10%よりも少ない、残留水分含量を有する、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項9】
前記残留水分含量が約2%未満である、請求項8に記載の固体分散体。
【請求項10】
前記残留水分含量が約4%から約7%の範囲にある、請求項8に記載の固体分散体。
【請求項11】
イマチニブメシレートが非晶形で存在する、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項12】
非晶質含量が、前記固体分散体中に存在するイマチニブの重量に対し60%から100%の間の範囲にある、請求項11に記載の固体分散体。
【請求項13】
前記非晶質含量が、90%から100%の範囲にある、請求項12に記載の固体分散体。
【請求項14】
前記非晶質含量が約99%である、請求項12に記載の固体分散体。
【請求項15】
イマチニブメシレートの固体分散体を調製するためのプロセスであって:
I.溶媒中のイマチニブメシレートと薬学的に受容可能な担体との溶液を提供する工程であって、該担体が、該溶媒に可溶なセルロース誘導体である、工程;
II.該溶媒を除去して残留物を取得する工程;および、
III.イマチニブメシレートの該固体分散体である該残留物を単離する工程、
を含む、プロセス。
【請求項16】
前記提供する工程が、固体イマチニブメシレート、および前記薬学的に受容可能な担体を、前記溶媒に溶解することを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記提供する工程が、前記溶媒にイマチニブの遊離塩基を溶解すること、該遊離塩基の溶液をメタンスルホン酸によって処理して、その場でイマチニブメシレートを取得すること、および前記担体を加えることを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項18】
前記セルロース誘導体が、メタノール中で0.01g/ml以上の溶解度を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項19】
前記セルロース誘導体がヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項15に記載のプロセス。
【請求項20】
前記セルロース誘導体がエチルセルロースである、請求項15に記載のプロセス。
【請求項21】
前記揮発性溶媒が、C1−C5アルコール、C3−C8エステル、C2−C8エーテル、C5−C8炭化水素、水、またはそれらの混合物である、請求項15のプロセス。
【請求項22】
前記揮発性溶媒が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、水、トルエン、シクロヘキサン、ジイソプロピルエーテル、アセトン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記溶媒がメタノールである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項24】
請求項15に記載のプロセスによって生産される固体分散体。
【請求項25】
請求項23に記載のプロセスによって生産される固体分散体。
【請求項26】
式II:
【化8】

のイマチニブ、またはその薬学的に受容可能な塩を調製するプロセスであって、
カップリング剤の存在下に、式IV:
【化9】

のN−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミン、またはその塩を、
式III:
【化10】

の4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸、またはその塩と反応させる工程を含む、プロセス。
【請求項27】
N−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミンを、4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸のヒドロクロリドまたはジヒドロクロリドと反応させる、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
N−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミンを、4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸のジヒドロクロリドと、約1:1から約1:2の範囲のモル比で反応させる、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
N−(2−メチル−5 アミノフェニル)−4−(3−ピリジル−2−ピリミジン)アミンおよび4−(4−メチル−ピペラジノメチル)−安息香酸のジヒドロクロリドを、約1:1.5のモル比で反応させる、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記式IVの化合物およびカップリング剤が、約1:1から約1:2の範囲のモル比で存在する、請求項26に記載のプロセス。
【請求項31】
前記式IVの化合物およびカップリング剤が、約1:1.5のモル比で存在する、請求項26に記載のプロセス。
【請求項32】
前記カップリング剤が、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、イソブチルクロロフォルメート、2−クロロ−4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン(CDMT)、エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド(DMC)、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項33】
カップリングを活性化剤の存在下で実行する工程をさらに含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項34】
前記活性化剤が、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、N−ヒドロキシスクシンイミド、およびN−ヒドロキシピペリジンから選ばれる、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記式IVの化合物および活性化剤が、約1:1から約1:2.5の範囲のモル比で存在する、請求項33に記載のプロセス。
【請求項36】
イマチニブの遊離塩基を、イマチニブのメシレート塩に変換する工程をさらに含む、請求項26に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−521477(P2010−521477A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553730(P2009−553730)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/056588
【国際公開番号】WO2008/112722
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(506159459)ドクター レディズ ラボラトリーズ リミテッド (9)
【出願人】(506017137)ドクター レディズ ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】