説明

イレウスの治療及び予防のための新規な方法

【課題】手術後イレウス及び分娩後イレウスを治療及び/または予防するための新規な方法の提供。
【解決手段】有効な量の末梢μオピオイド拮抗薬化合物を患者に投与する。好ましい化合物としては、ピペリジン−N−アルキルカルボキシラート、第四級モルフィナン、アヘンアルカロイド誘導体及び第四級ベンゾモルファン。第四級モルフィナン化合物は、N−メチルナルトレキソン、N−メチルナロキソン、N−メチルナロルフィン、N−ジアリルノルモルフィン、N−アリルレバロルファン、及びN−メチルナルメフェンからなる群から選択される化合物の第四級塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イレウスの治療及び予防のための新規な方法に関する。より詳細には、本発明は、末梢μオピオイド拮抗薬化合物を使用することによる、イレウスの治療及び予防のための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オピオイド薬物が、生体システム内の3つのタイプの内因性オピオイド受容体(すなわち、μ、δ及びκ受容体)を標的とすることは周知である。モルヒネ等の多くのオピエートは、脳内及び中枢神経系(CNS)内のμオピオイド受容体を活性化することが理由となって、激しい疼痛の治療のための鎮痛薬としてしばしば使用されるμオピオイドアゴニストである。しかしながら、オピオイド受容体はCNSに限定されず、身体全体にわたって他の組織に見い出されることがある。オピオイド薬物の多くの副作用は、こうした末梢受容体の活性化によって引き起こされることがある。例えば、μオピオイドアゴニストの投与はしばしば、腸壁中の多数の受容体による腸機能不全をもたらす(Wittert, G., Hope, P. and Pyle, D., Biochemical and Biophysical Research Communications 1996, 218, 877-881; Bagnol, D., Mansour, A., Akil, A. and Watson, S.J., Neuroscience 1997, 81, 579-591)。具体的には、オピオイドは、動物及びヒトにおける悪心及び嘔吐並びに正常な推進胃腸機能の阻害を引き起こし(Reisine, T., and Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996, 521-555)、便秘等の副作用を生じることが一般に周知である。
【0003】
最近の証拠によると、天然に存在する内因性オピオイド化合物もまた、胃腸(GI)管の推進活性に影響することがあることが示された。脳及び腸の両方の内のμ及びδ受容体を活性化するMet−エンケファリンは、GI管中に見い出される幾つかの神経ペプチドのうちの1つである(Koch, T.R., Carney, J.A., Go, V.L., and Szurszewski, J.H., Digestive Diseases and Sciences 1991, 36, 712-728)。加えて、受容体ノックアウト技術は、μオピオイド受容体を欠くマウスは、野性型マウスよりもGI通過時間が短いことがあることを示しており、これは、内因性オピオイドペプチドが正常なマウスにおけるGI通過を持続的に阻害する(tonically inhibit)かもしれないことを示唆している(Schuller, A.G.P., King, M., Sherwood, A.C., Pintar., J.E., and Pasternak, G.W., Society of Neuroscience Abstracts 1998, 24, 524)。研究によると、GI管全体にわたって存在するオピオイドペプチドと受容体とは、動物及びヒトの両方における腸運動の正常な調節と流体の粘膜輸送とに関与しているかもしれないことが示された(Reisine, T., and Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996, 521-555)。他の研究は、交感神経が内因性オピオイドと腸運動の制御とに関連しているかもしれないことを示している(Bagnol, D., Herbrecht, F., Jule, Y., Jarry, T., and Cupo, A., Regul. Pept. 1993, 47, 259-273)。GI管に関連する内因性オピオイド化合物が存在することは、こうした化合物の異常な生理学的レベルは腸機能不全を生じるかもしれないことを示唆している。
【0004】
外科的処置、特に腹部の手術を受けた患者にとって一般的な問題は、手術後(または術後)イレウスと呼ばれる特定の腸機能不全に苦しむことである。本明細書において使用する“イレウス”は、腸、特に結腸の閉塞症を指す。例えば、Dorland's Illustrated Medical Dictionary, p. 816, 27th ed. (W.B. Saunders Company, Philadelphia 1988)を参照されたい。イレウスは、排便の稀なことまたは困難を指す便秘とは区別されるべきである。例えば、Dorland's Illustrated Medical Dictionary, p. 375, 27th ed. (W.B. Saunders Company, Philadelphia 1988)を参照されたい。イレウスは、腸の正常な協調運動の乱れと、それによって腸の内容物を推進できなくなることで診断できる。例えば、Resnick, J. Am. J. of Gastroenterology 1997, 92, 751 and Resnick, J. Am. J. of Gastroenterology, 1997, 92, 934を参照されたい。場合によっては、特に腹部の手術を含む手術の後に腸機能不全はかなり重症になり、1週間を超えて続き、GI管の1つの部分を超えて影響することがある。この状態はしばしば手術後(または術後)麻痺性イレウスと呼ばれ、開腹術の後に起きることが最も多い(Livingston, E.H. and Passaro, E.D. Jr. Digestive Diseases and Sciences 1990, 35, 121を参照されたい)。同様に、分娩後イレウスは出産後の期間の女性にとって一般的な問題であり、出産のストレスの結果として、天然のオピオイドレベルの同様の変動によって引き起こされると考えられている。
【0005】
手術後イレウスに関連した胃腸運動不全(gastrointestinal dysmotility)は、一般に結腸において最も重く、一般的に3〜5日間続く。オピオイド鎮痛薬を手術後の患者に投与することはしばしば腸機能不全の一因となることがあり、それによって正常な腸の機能の回復を遅らせる。事実上全ての患者が、手術、特に大手術の後の疼痛の緩和のためにモルヒネまたは他の麻薬等のオピオイド鎮痛薬を投与されるので、現在の手術後の疼痛治療は、正常な腸の機能の回復を実際に遅くすることがあり、それによって退院を遅らせ、医療費を増大させる。
【0006】
手術後イレウスはまた、外因性オピオイドアゴニストの存在しない場合にも起きることがある。手術及び出産等の生体のストレスの最中及び/または後に内因性オピオイドの天然の活性を阻害することによって、イレウスと腸機能不全の関連する形態とを予防または治療できれば有益であると思われる。現在、イレウスの治療としては、腸管の機能的刺激、大便軟化剤、緩下剤、潤滑剤、静脈内水分補給、及び経鼻胃減圧(nasogastric decompression)が挙げられる。こうした従来技術の方法は、例えば手術後または分娩後イレウスに対する特異性を欠くという欠点を有する。さらに、こうした従来技術の方法は、予防のための手段を提供しない。イレウスを予防することができれば、患者の不快感を最小にするという利益に加えて、入院、回復時間、及び医療費をかなり低減すると思われる。従って、腸内のオピオイド受容体に選択的に作用する薬物は、手術後及び分娩後イレウスを予防及び/または治療するための理想的な候補であると思われる。こうしたもののうち、CNS内でオピオイド鎮痛薬の効果を妨げない薬物は、限定された副作用で疼痛管理のために同時に投与できるので、特に有益であると思われる。
【0007】
血液脳関門を越えてCNS中に入らない末梢オピオイド拮抗薬は、文献において周知であり、GI管に対する活性に関して試験されてきた。米国特許第5,250,542号、同第5,434,171号、同第5,159,081号、及び同第5,270,328号においては、末梢選択的なピペリジン−N−アルキルカルボキシラートオピオイド拮抗薬は、特発性便秘、過敏性腸症候群及びオピオイド誘発性便秘の治療において有用であるとして説明されている。また、米国特許第4,176,186号は、麻薬性鎮痛薬の腸不動化副作用を予防または軽減し、しかも鎮痛有効性を低下させることがないと言われているノルオキシモルホンの第四級誘導体(すなわち、メチルナルトレキソン)を説明している。米国特許第5,972,954号は、オピオイド投与に関連したオピオイド及び/または非オピオイド誘発性の副作用を予防及び/または治療するためのメチルナルトレキソン、腸溶メチルナルトレキソン、またはノルオキシモルホンの他の第四級誘導体の使用を説明している。
【0008】
ナロキソン及びナルトレキソン等の一般的なオピオイド拮抗薬もまた、GI管運動不全の治療において有用であることが示されている。例えば、米国特許第4,987,126号及びKreek, M.J. Schaefer, R.A., Hahn, E.F., Fishman, J. Lancet 1983, 1(8319), 261は、特発性胃腸運動不全の治療のためのナロキソン及び他のモルフィナンに基づくオピオイド拮抗薬(すなわち、ナロキソン、ナルトレキソン)を開示している。加えて、非オピオイド誘発性腸閉塞症がナロキソンによって有効に治療されることが示され、このことは、この薬物はGI管にまたは脳内で直接に作用するかもしれないことを意味している(Schange, J.C., Devroede, G. Am. J. Gastroenerol. 1985, 80(6), 407)。その上、ナロキソンは麻痺性イレウスのための治療を提供するかもしれないことが示されている(Mack, D.J. Fulton, J.D. Br. J. Surg. 1989, 76(10), 1101)。しかしながら、ナロキソン及び関連する薬物の活性は末梢系に限定されず、オピオイド麻薬の鎮痛効果を妨げることがあることは周知である。
【0009】
例えば手術後及び分娩後イレウスは保健費用を増大させ、今のところまだ特異的な治療がない一般的な疾病なので、特異的で有効な治療法が要望されている。現在周知のオピオイド拮抗薬治療の大部分は末梢選択的ではなく、CNS中への侵入に起因する望ましくない副作用の可能性を有する。毎年概算で2100万の入院患者の手術及び26の外来患者の手術を行い、概算で470万人の患者が手術後イレウスを経験することを考えると、末梢系に対して特異的であるのみならず腸に対して特異的であるオピオイド拮抗薬を含む方法は、手術後及び分娩後イレウスを治療するために望ましい。本発明は、この目的並びに他の重要な目的に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,250,542号
【特許文献2】米国特許第5,434,171号
【特許文献3】米国特許第5,159,081号
【特許文献4】米国特許第5,270,328号
【特許文献5】米国特許第5,972,954号
【特許文献6】米国特許第4,987,126号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Wittert, G., Hope, P. and Pyle, D., Biochemical and Biophysical Research Communications 1996, 218, 877-881
【非特許文献2】Bagnol, D., Mansour, A., Akil, A. and Watson, S.J., Neuroscience 1997, 81, 579-591
【非特許文献3】Reisine, T., and Pasternak, G., Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics Ninth Edition 1996, 521-555
【非特許文献4】Koch, T.R., Carney, J.A., Go, V.L., and Szurszewski, J.H., Digestive Diseases and Sciences 1991, 36, 712-728
【非特許文献5】Schuller, A.G.P., King, M., Sherwood, A.C., Pintar., J.E., and Pasternak, G.W., Society of Neuroscience Abstracts 1998, 24, 524
【非特許文献6】Bagnol, D., Herbrecht, F., Jule, Y., Jarry, T., and Cupo, A., Regul. Pept. 1993, 47, 259-273)
【非特許文献7】Dorland's Illustrated Medical Dictionary, p. 816, 27th ed. (W.B. Saunders Company, Philadelphia 1988)
【非特許文献8】Dorland's Illustrated Medical Dictionary, p. 375, 27th ed. (W.B. Saunders Company, Philadelphia 1988)
【非特許文献9】Resnick, J. Am. J. of Gastroenterology 1997, 92, 751
【非特許文献10】Resnick, J. Am. J. of Gastroenterology, 1997, 92, 934
【非特許文献11】Livingston, E.H. and Passaro, E.D. Jr. Digestive Diseases and Sciences 1990, 35, 121
【非特許文献12】Kreek, M.J. Schaefer, R.A., Hahn, E.F., Fishman, J. Lancet 1983, 1(8319), 261
【非特許文献13】Schange, J.C., Devroede, G. Am. J. Gastroenerol. 1985, 80(6), 407
【非特許文献14】Mack, D.J. Fulton, J.D. Br. J. Surg. 1989, 76(10), 1101
【発明の概要】
【0012】
従って、本発明は、部分的には、イレウスを治療及び/または予防するための新規な方法に関する。具体的に、1実施例においては、有効な量の以下の式(I):
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、R1は、水素またはアルキルであり;
2は、水素、アルキルまたはアルケニルであり;
3は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
4は、水素、アルキルまたはアルケニルであり;
Aは、OR5またはNR67であり;ここで;
5は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
6は、水素またはアルキルであり;
7は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、アリール置換アルキル、若しくはアルキレン置換Bであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R6及びR7は複素環を形成し;
Bは、
【0015】
【化2】

【0016】
C(=O)W、またはNR89であり;ここで;
8は、水素またはアルキルであり;
9は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール、若しくはアリール置換アルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R8及びR9は複素環を形成し;
Wは、OR10、NR1112、またはOEであり;ここで;
10は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
11は、水素またはアルキルであり;
12は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、若しくはアルキレン置換C(=O)Yであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R11及びR12は複素環を形成し;
Eは、
【0017】
【化3】

【0018】
アルキレン置換(C=O)D、または−R13OC(=O)R14であり;
ここで;
13は、アルキル置換アルキレンであり;
14は、アルキルであり;
Dは、OR15またはNR1617であり;
ここで;
15は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
16は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アリール置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキルまたはシクロアルケニル置換アルキルであり;
17は、水素若しくはアルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R16及びR17は複素環を形成し;
Yは、OR18またはNR1920であり;
ここで;
18は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
19は、水素またはアルキルであり;
20は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、若しくはアリール置換アルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R19及びR20は複素環を形成し;
21は、水素またはアルキルであり;
nは、0〜4である。]
の化合物、若しくはその立体異性体、プロドラッグ、或いは薬学的に許容可能な塩、水和物またはN−酸化物を患者に投与することを含む、イレウスを治療または予防する新規な方法が得られる。
【0019】
本発明の別の実施例は、有効な量の末梢μオピオイド拮抗薬化合物を患者に投与することを含む、イレウスを治療または予防する方法に関する。
本発明の上述した態様及び他の態様は、以下の詳細な説明からより明瞭になろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例による方法を用いたイレウスの治療に関する研究のグラフ図である。
【図2】本発明の実施例による方法を用いたイレウスの治療に関する研究のグラフ図である。
【図3】本発明の実施例による方法を用いたイレウスの治療に関する研究のグラフ図である。
【図4】本発明の実施例による方法を用いたイレウスの治療に関する研究のグラフ図である。
【図5】本発明の実施例による方法を用いたイレウスの治療に関する研究のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記に及び開示全体にわたって用いる以下の用語は、特に断らない限り、以下の意味を有すると理解するものとする。
“アルキル”は、鎖中に1〜約10個の炭素原子を有する直線、枝分れまたは環式としてよい脂肪族炭化水素基、並びにこの範囲内の全ての組合せ及び副組合せを指す。“枝分れ”は、低級アルキル基の例えばメチル、エチルまたはプロピルが直鎖アルキル鎖と結合したアルキル基を指す。特定の好適な実施例においては、アルキル基は、C1〜C5アルキル基、すなわち、1〜約5個の炭素を有する枝分れまたは直鎖アルキル基である。他の好適な実施例においては、アルキル基は、C1〜C3アルキル基、すなわち、1〜約3個の炭素を有する枝分れまたは直鎖アルキル基である。模範的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル及びデシルが挙げられる。“低級アルキル”は、1〜約6個の炭素原子を有するアルキル基を指す。好ましいアルキル基としては、1〜約3個の炭素を有する低級アルキル基が挙げられる。
【0022】
“アルケニル”は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含みかつ鎖中に2〜約10個の炭素原子を有するアルキル基、並びにこの範囲内の全ての組合せ及び副組合せを指す。特定の好適な実施例においては、アルケニル基は、C2〜C10アルキル基、すなわち、2〜約10個の炭素を有する枝分れまたは直鎖アルケニル基である。他の好適な実施例においては、アルケニル基は、C2〜C6アルケニル基、すなわち、2〜約6個の炭素を有する枝分れまたは直鎖アルケニル基である。さらに他の好適な実施例においては、アルケニル基は、C3〜C10アルケニル基、すなわち、約3〜約10個の炭素を有する枝分れまたは直鎖アルケニル基である。さらに他の好適な実施例においては、アルケニル基は、C2〜C5アルケニル基、すなわち、2〜約5個の炭素を有する枝分れまたは直鎖アルケニル基である。模範的なアルケニル基としては、例えば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル及びデセニル基が挙げられる。
【0023】
“アルキレン”は、1〜約6個の炭素原子を有する直線または枝分れの二価脂肪族炭化水素基、並びにこの範囲内の全ての組合せ及び副組合せを指す。アルキレン基は、直線、枝分れまたは環式としてよい。模範的なアルキレン基としては、例えば、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)及びプロピレン(−(CH23−)が挙げられる。アルキレン基に沿って、1つ以上の酸素、硫黄または所望により置換された窒素原子が所望により挿入されていてよく、ここで、窒素置換基は先に説明したようなアルキルである。好ましいアルキレン基は約1〜約4個の炭素を有する。
【0024】
“アルケニレン”は、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含むアルケニレン基を指す。模範的なアルケニレン基としては、例えば、エテニレン(−CH=CH−)及びプロペニレン(−CH=CHCH2−)が挙げられる。好ましいアルケニレン基は2〜約4個の炭素を有する。
【0025】
“シクロアルキル”は、約3〜約10個の炭素を有する任意の安定な単環または二環、並びにこの範囲内の全ての組合せ及び副組合せを指す。好適な実施例においては、シクロアルキル基は、C3〜C8シクロアルキル基、すなわち、約3〜約8個の炭素を有するシクロアルキル基であり、C3〜C6シクロアルキル基、すなわち、約3〜約6個の炭素を有するシクロアルキル基がより好ましい。シクロアルキル基は、所望により1つ以上のシクロアルキル基置換基で置換されていてよい。好ましいシクロアルキル基置換基としては、アルキル、好ましくはC1〜C3アルキル、アルコキシ、好ましくはC1〜C3アルコキシ、またはハロが挙げられる。模範的なシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル基が挙げられる。
【0026】
“シクロアルキル置換アルキル”は、末端炭素において、シクロアルキル基で、好ましくはC3〜C8シクロアルキル基で置換された直鎖アルキル基、好ましくは低級アルキル基を指す。典型的なシクロアルキル置換アルキル基としては、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロペンチルエチル、シクロペンチルプロピル、シクロプロピルメチル及びその他同様なものが挙げられる。
【0027】
“シクロアルケニル”は、約4〜約10個の炭素を有するオレフィン性不飽和シクロアルキル基、並びにこの範囲内の全ての組合せ及び副組合せを指す。好適な実施例においては、シクロアルケニル基は、C5〜C8シクロアルケニル基、すなわち、約5〜約8個の炭素を有するシクロアルケニル基である。
【0028】
“アルコキシ”は、アルキル−O−基を指し、アルキルは先に説明した通りである。模範的なアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及びヘプトキシが挙げられる。
【0029】
“アルコキシ−アルキル”は、アルキル−O−アルキル基を指し、アルキルは先に説明した通りである。
“アシル”は、アルキル−CO−基を意味し、アルキルは先に説明した通りである。好ましいアシル基は、低級アルキル基の例えば約1〜約3個の炭素を有するアルキルを含む。模範的なアシル基としては、アセチル、プロパノイル、2−メチルプロパノイル、ブタノイル及びパルミトイルが挙げられる。
【0030】
“アリール”は、約6〜約10個の炭素を含む芳香族炭素環式ラジカル、並びにこの範囲内の全ての組合せ及び副組合せを指す。フェニル基は、所望により1つまたは2つ以上のアリール基置換基で置換されていてよい。好ましいアリール基置換基としては、アルキル基、好ましくはC1〜C2アルキル基が挙げられる。模範的なアリール基としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。
【0031】
“アリール置換アルキル”は、末端炭素において、所望により置換されたアリール基で、好ましくは所望により置換されたフェニル環で置換された直鎖アルキル基、好ましくは低級アルキル基を指す。模範的なアリール置換アルキル基としては、例えば、フェニルメチル、フェニルエチル及び3−(4−メチルフェニル)プロピルが挙げられる。
【0032】
“複素環式”は、約4〜約10の構成員を含む単環系または多環系炭素環式ラジカル、並びにこの範囲内の全ての組合せ及び副組合せを指し、構成員のうちの1つ以上は、炭素以外の元素の例えば窒素、酸素または硫黄である。複素環式基は芳香族または非芳香族としてよい。模範的な複素環式基としては、例えば、ピロール及びピペリジン基が挙げられる。
【0033】
“ハロ”は、フルオロ、クロロまたはブロモを指す。
“有効な量”は、特定の障害の症状を予防または治療するために治療上有効とすることができる本明細書において説明する化合物の量を指す。上述の障害としては、イレウスに関連した病理学的障害が挙げられるが、これに限定されるものではなく、ここで、治療または予防は、例えば、細胞、組織または受容体と本発明の化合物とを接触させることで活性を阻害することを含む。
【0034】
“薬学的に許容可能な”は、信頼できる医学的判断の範囲内で、ヒト及び動物の組織との接触に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー性反応、または他の問題となる合併症が無く、妥当な利益/危険比に相応する、化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指す。
【0035】
“薬学的に許容可能な塩”は、開示される化合物の誘導体を指し、親化合物は、その酸性塩または塩基性塩を作製することで修正される。薬学的に許容可能な塩の例としては、アミン等の塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;カルボン酸等の酸性残基のアルカリ塩または有機塩;及びその他同様なものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。薬学的に許容可能な塩としては、例えば、無毒の無機酸または有機酸から形成される、親化合物の従来の無毒の塩または第四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、このような従来の無毒の塩としては、無機酸の例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸及びその他同様なものから得た塩;有機酸の例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、及びその他同様なものから作製した塩が挙げられる。
【0036】
本発明の特定の酸性または塩基性化合物は、双性イオンとして存在してよい。遊離酸、遊離塩基及び双性イオンを含む本化合物の全ての形態は、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0037】
“患者”は、哺乳類を含む動物、好ましくはヒトを指す。
本発明は、イレウスの治療または予防のための方法に関する。様々なタイプのイレウスを、本発明の方法を使用して治療及び/または予防することができる。本方法は、手術後イレウス及び分娩後イレウスを治療及び/または予防するのに特に適している。“手術後イレウス”は、開腹術等の手術の後に生じることがあり、例えば、腸の、特に結腸内の閉塞症等の症状を特徴とすることがあり、悪心、嘔吐、放屁及び/または大便の通過の欠如、腹部膨満、及び腸雑音の欠如を生じる。この状態は一般に約3〜約5日間続くが、最高約1週間までを含めてより長く続くことがある。より長い持続期間は一般に、結腸に加えてGI管の他の部分に影響することがある手術後麻痺性イレウスと呼ばれる、より重症の形態のイレウスに特徴的である。“分娩後イレウス”は一般に、分娩後の腸の、特に結腸の閉塞症を指す。分娩の最中の自然の処置及び外科的補助処置の両方が、本発明によって治療される分娩後イレウスを生じることがある。分娩後イレウス及び手術後イレウスの症状は類似している。
【0038】
本発明の方法を、イレウスの開始の前、最中、及び後において、例えばオピエート及び/またはオピオイド(例としてオピオイド鎮痛薬)を含む腸運動を遅くすることがある化合物も投与されている最中の患者を治療するために使用してよい。このようなオピエートまたはオピオイド化合物の投与は腸機能不全を誘発することがあり、その結果として、術後イレウスを含むイレウスからの回復を遅らせることがある。また本発明の方法を、いかなる外因性オピエート及び/またはオピオイドも投与されていない患者を治療するためにも使用してよい。従って、特定の実施例においては、本方法は、例えば任意のμオピオイドアゴニストを含むいかなるオピオイド鎮痛薬も投与されていない患者に、下記に詳細に検討する化合物を投与することを含む。
【0039】
作動のいかなる理論によっても束縛されることを意図するものではないが、イレウス、特に手術後イレウス及び分娩後イレウスは、内因性オピオイド化合物のストレス誘発性の異常なレベルに起因するかもしれないと考えられている。本発明の方法によるμオピオイド拮抗薬の投与は、腸内での内因性オピオイド化合物とμ受容体との相互作用を遮断し、それによってイレウスを予防及び/または抑制することができる。
【0040】
好ましい形式においては、本発明の方法は、末梢μオピオイド拮抗薬化合物である化合物を患者に投与することを含む。末梢という用語は、中枢神経系の外部にある生理学的系及び成分に化合物が主に作用することを、すなわち、化合物は好ましくは血液脳関門を容易には越えないことを意味する。好ましい形式においては、本発明の方法において用いる末梢μオピオイド拮抗薬化合物は、胃腸組織に関して高いレベルの活性を示す一方、低減された中枢神経系(CNS)活性を示し、好ましくはCNS活性を実質的に示さない。本明細書において使用する“CNS活性を実質的に示さない”という用語は、本方法において用いる末梢μオピオイド拮抗薬化合物の薬理学的活性の約20%未満が、CNS内で示されることを意味する。好適な実施例においては、本方法において用いる末梢μオピオイド拮抗薬化合物は、その薬理学的活性の約15%未満をCNS内で示し、約10%未満がより好ましい。さらに好適な実施例においては、本方法において用いる末梢μオピオイド拮抗薬化合物は、その薬理学的活性の約5%未満をCNS内で示し、約0%(すなわち、CNSを活性を示さない)がさらに好ましい。
【0041】
より好適な実施例においては、本方法は、ピペリジン−N−アルキルカルボキシラート化合物であるμ末梢オピオイド拮抗薬化合物を患者に投与することを含む。好ましいピペリジン−N−アルキルカルボキシラートオピオイド拮抗薬化合物としては、例えば、米国特許第5,250,542号、同第5,159,081号、同第5,270,328号、及び同第5,434,171号に開示されている化合物が挙げられ、これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。特に好ましいクラスのピペリジン−N−アルキルカルボキシラートオピオイド拮抗薬化合物としては、以下の式(I):
【0042】
【化4】

【0043】
[式中、R1は、水素またはアルキルであり;
2は、水素、アルキルまたはアルケニルであり;
3は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
4は、水素、アルキルまたはアルケニルであり;
Aは、OR5またはNR67であり;ここで;
5は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
6は、水素またはアルキルであり;
7は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、アリール置換アルキル、若しくはアルキレン置換Bであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R6及びR7は複素環を形成し;
Bは、
【0044】
【化5】

【0045】
C(=O)W、またはNR89であり;ここで;
8は、水素またはアルキルであり;
9は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール、若しくはアリール置換アルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R8及びR9は複素環を形成し;
Wは、OR10、NR1112、またはOEであり;ここで;
10は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
11は、水素またはアルキルであり;
12は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、若しくはアルキレン置換C(=O)Yであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R11及びR12は複素環を形成し;
Eは、
【0046】
【化6】

【0047】
アルキレン置換(C=O)D、または−R13OC(=O)R14であり;
ここで;
13は、アルキル置換アルキレンであり;
14は、アルキルであり;
Dは、OR15またはNR1617であり;
ここで;
15は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
16は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アリール置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキルまたはシクロアルケニル置換アルキルであり;
17は、水素若しくはアルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R16及びR17は複素環を形成し;
Yは、OR18またはNR1920であり;
ここで;
18は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
19は、水素またはアルキルであり;
20は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、若しくはアリール置換アルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R19及びR20は複素環を形成し;
21は、水素またはアルキルであり;
nは、0〜4である。]
を有する化合物、若しくはその立体異性体、プロドラッグ、或いは薬学的に許容可能な塩、水和物またはN−酸化物が挙げられる。
【0048】
上記の式(I)において、R1は、水素またはアルキルである。好適な実施例においては、R1は、水素またはC1〜C5アルキルである。さらに好適な実施例においては、R1は水素である。
【0049】
上記の式(I)において、R2は、水素、アルキル、またはアルケニルである。好適な実施例においては、R2は、水素、C1〜C5アルキル、またはC2〜C6アルケニルである。また好適な実施例においては、R2はアルキルであり、C1〜C3アルキルがより好ましい。
【0050】
上記の式(I)において、R3は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルである。好適な実施例においては、R3は、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10アルケニル、フェニル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、またはフェニル置換C1〜C3アルキルである。より好適な実施例においては、R3は、ベンジル、フェニル、シクロヘキシル、またはシクロヘキシルメチルである。
【0051】
上記の式(I)において、R4は、水素、アルキル、またはアルケニルである。好適な実施例においては、R4は、水素、C1〜C5アルキル、またはC2〜C6アルケニルである。より好適な実施例においては、R4はC1〜C3アルキルであり、メチルがさらに好ましい。
【0052】
上記の式(I)において、Aは、OR5またはNR67である。
上記の式(I)において、R5は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルである。好適な実施例においては、R5は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキル、またはフェニル置換C1〜C3アルキルである。また好適な実施例においては、R5は、水素またはアルキルであり、C1〜C3アルキルがより好ましい。
【0053】
上記の式(I)において、R6は、水素またはアルキルである。好ましくは、R6は、水素またはC1〜C3アルキルである。さらに好ましくは、R6は水素である。
上記の式(I)において、R7は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、アリール置換アルキル、またはアルキレン置換Bである。好適な実施例においては、R7は、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10アルケニル、フェニル、シクロアルキル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルケニル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキル、フェニル置換C1〜C3アルキル、または(CH2q−Bである。より好適な実施例においては、R7は(CH2q−Bである。
【0054】
特定の他の実施例においては、上記の式(I)において、R6及びR7は、自らが結合した窒素原子と一緒になって複素環を形成する。
7の定義において基Bは、
【0055】
【化7】

【0056】
C(=O)W、またはNR89である。好適な実施例においては、BはC(=O)Wである。
Bの定義において基R8は、水素またはアルキルである。好適な実施例においては、R8は、水素またはC1〜C3アルキルである。
【0057】
Bの定義において基R9は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール、またはアリール置換アルキルである。好適な実施例においては、R9は、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10アルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキル、フェニル、またはフェニル置換C1〜C3アルキルである。
【0058】
特定の他の実施例においては、Bの定義において、R8及びR9は、自らが結合した窒素原子と一緒になって複素環を形成する。
Bの定義において基Wは、OR10、NR1112、またはOEである。
【0059】
Wの定義において基R10は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルである。好適な実施例においては、R10は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキル、またはフェニル置換C1〜C3アルキルである。また好適な実施例においては、R10は、水素、アルキル、好ましくはC1〜C5アルキル、フェニル置換アルキル、好ましくはフェニル置換C1〜C2アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキル置換アルキル、好ましくはC5〜C6シクロアルキル置換C1〜C3アルキルである。
【0060】
Wの定義において基R11は、水素またはアルキルである。好適な実施例においては、R11は、水素またはC1〜C3アルキルである。
Wの定義において基R12は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、またはアルキレン置換C(=O)Yである。好適な実施例においては、R12は、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10アルケニル、フェニル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキル、フェニル置換C1〜C3アルキル、またはアルキレン置換C(=O)Yである。また好適な実施例においては、R12は、水素、アルキル、好ましくはC1〜C3アルキル、または(CH2mC(O)Yであり、ここで、mは1〜4である。
【0061】
12の定義において基Yは、OR18またはNR1920である。
特定の他の実施例においては、Wの定義において、R12及びR13は、自らが結合した窒素原子と一緒になって複素環を形成する。
【0062】
Wの定義において基Eは、
【0063】
【化8】

【0064】
アルキレン置換(C=O)D、または−R13OC(=O)R14である。好適な実施例においては、Eは、
【0065】
【化9】

【0066】
(CH2m(C=O)D(ここで、mは上記で定義した通り)、または−R13OC(=O)R14である。
Eの定義において基R13は、アルキル置換アルキレンである。好適な実施例においては、R13はC1〜C3アルキル置換メチレンである。より好適な実施例においては、R13は、−CH(CH3)−または−CH(CH2CH3)−である。
【0067】
Eの定義において基R14はアルキルである。好適な実施例においては、R14はC1〜C10アルキルである。
Eの定義において基Dは、OR15またはNR1617である。
【0068】
Dの定義において基R15は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルである。好適な実施例においては、R15は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキル、またはフェニル置換C1〜C3アルキルである。また好適な実施例においては、R15は、水素またはアルキルであり、C1〜C3アルキルがより好ましい。
【0069】
Dの定義において基R16は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アリール置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキルまたはシクロアルケニル置換アルキルである。好適な実施例においては、R16は、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10アルケニル、フェニル、フェニル置換C1〜C3アルキル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキルである。さらに好適な実施例においては、R16は、メチルまたはベンジルである。
【0070】
Dの定義において基R17は、水素またはアルキルである。好適な実施例においては、R17は、水素またはC1〜C3アルキルである。さらに好適な実施例においては、R17は水素である。
【0071】
特定の他の実施例においては、Dの定義において、R16及びR17は、自らが結合した窒素原子と一緒になって複素環を形成する。
Yの定義において基R18は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルである。好適な実施例においては、R18は、水素、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキル、またはフェニル置換C1〜C3アルキルである。より好適な実施例においては、R18は、水素またはC1〜C3アルキルである。
【0072】
Yの定義において基R19は、水素またはアルキルである。好適な実施例においては、R19は、水素またはC1〜C3アルキルである。
Yの定義において基R20は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルである。好適な実施例においては、R20は、水素、C1〜C10アルキル、C3〜C10アルケニル、フェニル、シクロアルキル、C5〜C8シクロアルケニル、シクロアルキル置換C1〜C3アルキル、C5〜C8シクロアルケニル置換C1〜C3アルキル、またはフェニル置換C1〜C3アルキルである。より好適な実施例においては、R20は、水素またはC1〜C3アルキルである。
【0073】
特定の他の実施例においては、Yの定義において、R19及びR20は、自らが結合した窒素原子と一緒になって複素環を形成する。
Bの定義において基R21は、水素またはアルキルである。好ましくは、R21は、水素またはC1〜C3アルキルである。さらに好ましくは、R21は水素である。
【0074】
上記の式(I)において、nは0〜約4である。好適な実施例においては、nは約1または2である。
7の上記の定義において、qは約1〜約4である。好適な実施例においては、qは約1〜約3である。
【0075】
Eの上記の定義において、mは約1〜約4である。好適な実施例においては、mは約1〜約3である。
式(I)の化合物は、ピペリジン環の3及び4位における置換基が理由となって、トランス及びシス立体化学的異性体として存在し得、このような立体化学的異性体は請求の範囲内にある。本明細書において使用する“トランス”という用語は、3位のR2が4位のメチル基の反対側にあることを表し、これに対して、“シス”異性体においては、R2及び4−メチルは環の同じ側にある。本発明の方法においては、用いる化合物は、個々の立体異性体、並びに立体異性体の混合物としてよい。最も好適な実施例においては、本発明の方法は、3位の基R2が、4位にあり環の同じ側面にあるメチル基とは環を挟んで反対側に位置する、すなわちトランスであるような式(I)の化合物を含む。こうしたトランス異性体は、3R,4R−異性体、または3S,4S−異性体として存在し得る。
【0076】
“R”及び“S”という用語を、キラル中心の特定の立体配置を示すために有機化学において一般に使用するように本明細書において使用する。“R”という用語は“右”を表し、結合に沿って最も低い優先順位の基に向かって見た場合に、基の優先順位(最も高いものから2番目に低いもの)の時計回りの関係を有するようなキラル中心の立体配置を表す。“S”または“左”という用語は、結合に沿って最も低い優先順位の基に向かって見た場合に、基の優先順位(最も高いものから2番目に低いもの)の反時計回りの関係を有するようなキラル中心の立体配置を表す。基の優先順位は原子番号に基づく(最も重い同位体が第1番目)。優先順位の部分的な一覧表及び立体化学に関する検討は、以下の本:The Vocabulary of Organic Chemistry, Orchin, et al., John Wiley and Sons Inc., page 126 (1980)に含まれており、これは、本明細書において参考のためにその全体を引用する。
【0077】
本発明の方法において使用するための好ましいピペリジン−N−アルキルカルボキシラート化合物は、ピペリジン環の置換基の立体配置が3R及び4Rであるような式(I)の化合物である。
【0078】
3が水素ではない場合、R3が結合した炭素原子は不斉である。そのようなものとして、このクラスの化合物は、このキラル中心における個々のR若しくはS立体異性体として、または立体異性体の混合物としてさらに存在し得、全ては本発明の範囲内にあると考えられる。好ましくは、本発明の化合物の実質的に純粋な立体異性体、すなわち、R3が結合したキラル中心における立体配置がRまたはSであるような異性体、すなわち、3つのキラル中心における立体配置が好ましくは3R,4R,Sまたは3R,4R,Rであるような化合物を使用する。
【0079】
その上、Aの構造によっては、他の不斉炭素を分子中に導入することができる。そのようなものとして、こうしたクラスの化合物は、こうしたキラル中心における個々のR若しくはS立体異性体として、または立体異性体の混合物として存在し得、全ては本発明の方法の範囲内にあると考えられる。
【0080】
本発明の方法において使用するための好ましいピペリジン−N−アルキルカルボキシラート化合物は、以下のものを含む:
U−OCH2CH3;U−OH;G−OH;U−NHCH2C(O)NHCH3;U−NHCH2C(O)NH2;G−NHCH2C(O)NHCH3;U−NHCH2C(O)NHCH2CH3;G−NH(CH23C(O)OCH2CH3;G−NHCH2C(O)OH;M−NHCH2C(O)NH2;M−NH(CH22C(O)OCH2(C65);X−OCH2CH3;X−OH;X−NH(CH22CH3;Z−NH(CH23C(O)OCH2CH3;X−NHCH2C(O)OH;Z−NH(CH22N(CH32;Z−NH(CH22C(O)NHCH2CH3;X−OCH2(C65);X−N(CH32;Z−NH(CH23C(O)NHCH3;Z−NH(CH23C(O)NH2;Z−NH(CH23C(O)NHCH2CH3;X−OCH2C(O)OCH3;X−OCH2C(O)NHCH3;及びX−N(CH3)CH2C(O)CH2CH3;ここで;
Uは、
【0081】
【化10】

【0082】
を表し、
Gは、
【0083】
【化11】

【0084】
を表し、
Mは、
【0085】
【化12】

【0086】
Zは、
【0087】
【化13】

【0088】
を表し、
Xは、−ZNHCH2C(=O)−を表し;
ここで、Qは、
【0089】
【化14】

【0090】
を表す。
本発明の方法において使用するための特に好ましいピペリジン−N−アルキルカルボキシラート化合物は、以下のものを含む:
Z−OH;Z−NH(CH22C(O)OH;G−NH(CH22C(O)NH2;G−NH(CH22C(O)NHCH3;G−NHCH2C(O)NH2;G−NHCH2C(O)NHCH2CH3;G−NH(CH23C(O)NHCH3;G−NH(CH22C(O)OH;G−NH(CH23C(O)OH;X−NH2;X−NHCH(CH32;X−OCH2CH(CH32;X−OCH265;X−OH;X−O(CH24CH3;X−O−(4−メトキシシクロヘキシル);X−OCH(CH3)OC(O)CH3;X−OCH2C(O)NHCH2(C65);M−NHCH2C(O)OH;M−NH(CH22C(O)OH;M−NH(CH22C(O)NH2;U−NHCH2C(O)OCH2CH3;及びU−NHCH2C(O)OH;
ここで、Z、G、X、M及びUは上記で定義した通り。
【0091】
別の様式で述べると、本発明の好適な実施例によれば、式(I)の化合物は以下の式を有する:Q−CH2CH(CH2(C65))C(O)OH;Q−CH2CH2CH(C65)C(O)NHCH2C(O)OCH2CH2;Q−CH2CH2CH(C65)C(O)NHCH2C(O)OH;Q−CH2CH2CH(C65)C(O)NHCH2C(O)NHCH3;Q−CH2CH2CH(C65)C(O)NHCH2C(O)NHCH2CH3;G−NH(CH22C(O)NH2;G−NH(CH22C(O)NHCH3;G−NHCH2C(O)NH2;G−NHCH2C(O)NHCH3;G−NHCH3C(O)NHCH2CH3;G−NH(CH23C(O)OCH2CH3;G−NH(CH23C(O)NHCH3;G−NH(CH22C(O)OH;G−NH(CH23C(O)OH;Q−CH2CH(CH2(C611))C(O)NHCH2C(O)OH;Q−CH2CH(CH2(C611))C(O)NH(CH22C(O)OH;Q−CH2CH(CH2(C611))C(O)NH(CH22C(O)NH2;Z−NHCH2C(O)OCH2CH3;Z−NHCH2C(O)OH;Z−NHCH2C(O)NH2;Z−NHCH2C(O)N(CH32;Z−NHCH2C(O)NHCH(CH32;Z−NHCH2C(O)OCH2CH(CH32;Z−NH(CH22C(O)OCH2(C65);Z−NHCH2C(O)OH;Z−NH(CH22C(O)NHCH2CH3;Z−NH(CH23C(O)NHCH3;Z−NHCH2C(O)NHCH2C(O)OH;Z−NHCH2C(O)OCH2C(O)OCH3;Z−NHCH2C(O)O(CH24CH3;Z−NHCH2C(O)OCH2C(O)NHCH3;Z−NHCH2C(O)O−(4−メトキシシクロヘキシル);Z−NHCH2C(O)OCH2C(O)NHCH2(C65);またはZ−NHCH2C(O)OCH(CH3)OC(O)CH3
ここで、Q、G及びZは上記で定義した通り。
【0092】
さらに好適な実施例においては、式(I)の化合物は以下の式を有する:(3R,4R,S)−Z−NHCH2C(O)OCH2CH(CH32;(+)−Z−NHCH2C(O)OH;(−)−Z−NHCH2C(O)OH;(3R,4R,R)−Z−NHCH2C(O)−OCH2CH(CH32;(3S,4S,S)−Z−NHCH2C(O)OCH2CH(CH32;(3S,4S,R)−Z−NHCH2C(O)OCH2CH(CH32;(3R,4R)−Z−NHCH2C(O)NHCH2(C65);または(3R,4R)−G−NH(CH23C(O)OH;ここで、Z及びGは上記で定義した通り。さらに好適な実施例においては、式(I)の化合物は以下の式を有する:(+)−Z−NHCH2C(O)OH;または(−)−Z−NHCH2C(O)OH;ここで、Zは上記で定義した通り。
【0093】
腸に局所的に作用し、高い効力を有し、経口活性な式(I)の化合物が最も好ましい。本発明の特に好適な実施例は、化合物(+)−Z−NHCH2C(O)OH、すなわち、以下の式(II)の化合物である。
【0094】
【化15】

【0095】
式(II)の化合物は、低または高pH条件以外では、水への溶解度が低い。双性イオン特性は本化合物に固有なことがあり、経口投与の後に、低い全身吸収及び腸への持続的で局所的な影響等の望ましい特性を与えることができる。
【0096】
他の実施例においては、本発明の方法は、第四級モルフィナン化合物である末梢μオピオイド拮抗薬化合物を患者に投与することを含んでよい。本発明の方法において使用するのに適しているかもしれない第四級モルフィナン化合物の例としては、例えば、N−メチルナルトレキソン、N−メチルナロキソン、N−メチルナロルフィン、N−ジアリルノルモルフィン、N−アリルレバロルファン、及びN−メチルナルメフェンの第四級塩が挙げられる。
【0097】
さらに別の他の実施例においては、本発明の方法は、末梢μオピオイド拮抗薬化合物をアヘンアルカロイド誘導体の形態で患者に投与することを含んでよい。本明細書において使用する“アヘンアルカロイド誘導体”という用語は、アヘンアルカロイドの合成または半合成誘導体または類似体である末梢μオピオイド拮抗薬化合物を指す。好ましい形式においては、本発明の方法において用いるアヘンアルカロイド誘導体は高いレベルのモルヒネ拮抗作用を示す一方、低減されたアゴニスト活性を示し、好ましくはアゴニスト活性を実質的に示さない。アヘンアルカロイド誘導体に関連して本明細書において使用する“アゴニスト活性を実質的に示さない”という用語は、電気的に刺激したモルモットの回腸に関して最大反応は、濃度1μMでモルヒネと比較して約60%以下であることを意味する。好適な実施例においては、本方法において用いるアヘンアルカロイド誘導体は、モルモットの回腸に関して、濃度1μMでモルヒネと比較して最大反応約50%以下を有し、最大反応約40%以下がより好ましい。さらに好適な実施例においては、本方法において用いるアヘンアルカロイド誘導体は、モルモットの回腸に関して、濃度1μMでモルヒネと比較して最大反応約30%以下を有し、最大反応約20%以下がより好ましい。さらに好適な実施例においては、本方法において用いるアヘンアルカロイド誘導体は、モルモットの回腸に関して、濃度1μMでモルヒネと比較して最大反応約10%以下を有する。特定の特に好適な実施例においては、アヘンアルカロイド誘導体は、モルモットの回腸に関して、濃度1μMで最大反応約0%(すなわち、反応無し)を有する。
【0098】
電気的に刺激したモルモットの回腸に関してアヘンアルカロイド誘導体の最大反応を決定するための適切な方法は、例えば、米国特許第4,730,048号及び同第4,806,556号に説明されており、これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。
【0099】
好ましい形式においては、本発明の方法において用いるアヘンアルカロイド誘導体は、以下の式(III)若しくは(IV):
【0100】
【化16】

【0101】
[式中、Rは、アルキル、シクロアルキル置換アルキル、アリール、アリール置換アルキルまたはアルケニルであり;
Zは、水素またはOHであり;
R’は、X’−J(L)(T)であり、ここで;
Jは、アルキレンまたはアルケニレンであり;
Lは、水素、アミノ、または所望によりCO2H、OH若しくはフェニルで置換されたアルキルであり;
Tは、CO2H、SO3H、アミノまたはグアニジノであり;
X’は、直接結合またはC(=O)であり;
R”は、NH−J(L)(T)またはグアニジノである。]
若しくはその立体異性体、プロドラッグ、或いは薬学的に許容可能な塩、水和物またはN−酸化物を有する。
【0102】
上記の式(III)及び(IV)の化合物においては、Rは、アルキル、シクロアルキル置換アルキル、アリール、アリール置換アルキルまたはアルケニルである。好適な実施例においては、Rは、C1〜C5アルキル、C3〜C6シクロアルキル置換アルキル、アリール、アリールアルキルまたはトランス−C2−C5アルケニルである。より好適な実施例においては、Rは、C1〜C3アルキル、アリルまたはシクロプロピルメチルであり、シクロプロピルメチルがさらに好ましい。
【0103】
上記の式(III)及び(IV)の化合物においては、Zは、水素またはOHである。好適な実施例においては、ZはOHである。
式(III)及び(IV)の化合物においては、R’はX−J(L)(T)であり、R”はNH−J(L)(T)またはグアニジノである。
【0104】
R’及びR”の定義において、Gは、アルキレンまたはアルケニレンである。好適な実施例においては、Jは、C1〜C5アルキレン、酸素原子が割り込んだC2〜C6アルキレン、またはC2〜C5アルケニレンである。
【0105】
R’及びR”の定義において、Lは、水素、アミノ、または所望によりCO2H、OH若しくはフェニルで置換されたアルキルである。好適な実施例においては、Lは、水素、アミノ、または所望によりCO2H、OH若しくはフェニルで置換されたC1〜C5アルキルである。より好適な実施例においては、Lは、水素またはアミノである。
【0106】
R’及びR”の定義において、Tは、CO2H、SO3H、アミノまたはグアニジノである。好適な実施例においては、Tは、CO2Hまたはグアニジノである。
R’の定義において、Xは、直接結合またはC(=O)である。
【0107】
本発明の方法において用いてよい好ましいオピオイドアルカロイド誘導体としては、式(III)[式中、Rはシクロプロピルメチルであり、ZはOHであり、R’は、C(=O)(CH22CO2H、C(=O)(CH23CO2H、C(=O)CH=CHCO2H、C(=O)CH2OCH2CO2H、C(=O)CH(NH2)(CH23NHC(=NH)NH2またはC(=O)CH(NH2)CH2CO2Hから選択される。]の化合物が挙げられる。また好ましいのは、式(III)[式中、Rはシクロプロピルメチルであり、ZはOHであり、R’はCH2CO2Hである。]のオピオイドアルカロイド誘導体である。他の好適な実施例においては、本発明の方法において用いてよいオピオイドアルカロイド誘導体としては、式(IV)[式中、Rはシクロプロピルメチルであり、ZはOHであり、R”はNHCH2CO2Hである。]の化合物が挙げられる。
【0108】
本発明の方法において用いてよい他のオピオイドアルカロイド誘導体は、例えば、米国特許第4,730,048号及び同第4,806,556号に説明されており、これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。
【0109】
さらに別の他の実施例においては、本発明の方法は、末梢μオピオイド拮抗薬化合物を第四級ベンゾモルファン化合物の形態で患者に投与することを含んでよい。好ましい形式においては、本発明の方法において用いる第四級ベンゾモルファン化合物は高いレベルのモルヒネ拮抗作用を示す一方、低減されたアゴニスト活性を示し、好ましくはアゴニスト活性を実質的に示さない。第四級ベンゾモルファン化合物に関連して本明細書において使用する“アゴニスト活性を実質的に示さない”という用語は、電気的に刺激したモルモットの回腸に関して最大反応は、濃度1μMでモルヒネと比較して約60%以下であることを意味する。好適な実施例においては、本方法において用いる第四級ベンゾモルファン化合物は、モルモットの回腸に関して、濃度1μMでモルヒネと比較して最大反応約50%以下を有し、最大反応約40%以下がより好ましい。さらに好適な実施例においては、本方法において用いる第四級ベンゾモルファン化合物は、モルモットの回腸に関して、濃度1μMでモルヒネと比較して最大反応約30%以下を有し、最大反応約20%以下がより好ましい。さらに好適な実施例においては、本方法において用いる第四級ベンゾモルファン化合物は、モルモットの回腸に関して、濃度1μMでモルヒネと比較して最大反応約10%以下を有する。特定の特に好適な実施例においては、第四級ベンゾモルファン化合物は、モルモットの回腸に関して、濃度1μMで最大反応約0%(すなわち、反応無し)を有する。
【0110】
好ましい形式においては、本発明の方法において用いる第四級ベンゾモルファン化合物は、以下の式(V):
【0111】
【化17】

【0112】
[式中、R24は、水素またはアシルであり;
25は、アルキルまたはアルケニルである。]
若しくはその立体異性体、プロドラッグ、或いは薬学的に許容可能な塩、水和物またはN−酸化物を有する。
【0113】
上記の式(V)において、R24は、水素またはアシルである。好適な実施例においては、R24は、水素またはC1〜C6アシルである。より好適な実施例においては、R24は、水素またはC1〜C2アシルである。さらに好適な実施例においては、R24は、水素またはアセトキシであり、水素がさらに好ましい。
【0114】
上記の式(V)において、R25は、アルキルまたはアルケニルである。好適な実施例においては、R25は、C1〜C6アルキルまたはC2〜C6アルケニルである。さらに好適な実施例においては、R25は、C1〜C3アルキルまたはC2〜C3アルケニルである。さらに好適な実施例においては、R25は、プロピルまたはアリルである。
【0115】
本発明の方法において用いてよい好ましい第四級ベンゾモルファン化合物としては、式(V)の以下の化合物が挙げられる:2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2,2−ジアリル−6,7−ベンゾモルファニウム−ブロミド;2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2−n−プロピル−6,7−ベンゾモルファン;2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2−アリル−6,7−ベンゾモルファン;2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2−n−プロピル−2−アリル−6,7−ベンゾモルファニウム−ブロミド;2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2−n−プロピル−2−プロパルギル−6,7−ベンゾモルファニウム−ブロミド;及び2’−アセトキシ−5,9−ジメチル−2−n−プロピル−2−アリル−6,7−ベンゾモルファニウム−ブロミド。
【0116】
本発明の方法において用いてよい他の第四級ベンゾモルファン化合物は、例えば、米国特許第3,723,440号に説明されており、これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。
【0117】
上記に例示したものに加えて、本発明の方法において用いてよい他のμオピオイド拮抗薬化合物は、一旦本開示の教示を得れば、当業者には容易に明白であると思われる。
本発明の方法において用いる化合物はプロドラッグ形態で存在してよい。本明細書において使用する“プロドラッグ”は、このようなプロドラッグを哺乳類の患者に投与した場合、式(I)〜(IV)若しくは他の式に従う活性親薬物または本発明の方法において用いる化合物をインビボで放出する任意の共有結合したキャリアを含むことを意図したものである。プロドラッグは、処方剤の多くの望ましい特性(例えば、溶解度、生物学的利用率、製造等)を高めることが周知なので、本方法において用いる化合物を、希望するならプロドラッグ形態で送達してよい。従って、本発明は、プロドラッグを送達する方法を予想している。本発明において用いる化合物のプロドラッグは、修飾を常用の操作またはインビボで開裂して親化合物にするような様式で、化合物中に存在する官能基を修飾することで製造してよい。
【0118】
従って、プロドラッグとしては、例えば、本明細書において説明する化合物が挙げられ、ここで、ヒドロキシ、アミノ、またはカルボキシ基は任意の基と結合し、プロドラッグが哺乳類の患者に投与された場合に開裂してそれぞれ遊離のヒドロキシル、遊離のアミノ、またはカルボン酸を形成する。例としては、アルコール及びアミン官能基のアセテート、ホーメート及びベンゾエート誘導体;アルキル、炭素環式、アリール、及びアルキルアリールエステルの例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロプロピル、フェニル、ベンジル、及びフェネチルエステル、並びにその他同様なものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0119】
本発明の方法において用いる化合物を、当業者には周知の多数の様式で製造してよい。本化合物を、例えば、下記に説明する方法または当業者には了解されるその変形例で合成できる。本発明に関連して開示される全ての方法は、ミリグラム、グラム、マルチグラム、キログラム、マルチキログラムまたは工業的規模を含めて任意の規模で実施されると予想される。
【0120】
上記に詳細に検討したように、本方法において用いる化合物は1個以上の不斉に置換された炭素原子を含んでよく、光学活性またはラセミ形態で単離できる。従って、特定の立体化学または異性体形態を特に指示しない限り、構造の全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ形態及び全ての幾何異性体形態を意図している。このような光学活性形態をどのようにして製造し、単離するかは、従来技術において周知である。例えば、立体異性体の混合物を、例えばラセミ形態の分割、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、及びキラルクロマトグラフィー、優先的塩形成、再結晶化、並びにその他同様なものが挙げられるがこれらに限定されるものではない標準的な技術によって、またはキラル出発物質からのキラル合成によって若しくは標的キラル中心の計画的な合成によるキラル合成によって分離してよい。
【0121】
容易に理解できるように、存在する官能基は、合成の間に保護基を含んでよい。保護基はそれ自体、ヒドロキシル基及びカルボキシル基等の官能基(functionality)に選択的に付加でき、官能基から除去できる化学的官能基として周知である。こうした基は化合物中に存在して、化合物がさらされる化学反応条件に対してこのような官能基を不活性にする。任意の様々な保護基を本発明と共に用いてよい。好ましい保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基及びtert−ブチルオキシカルボニル基が挙げられる。本発明に従って用いてよい他の好ましい保護基は、Greene, T.W. and Wuts, P.G.M., Protective Groups in Organic Synthesis 2d. Ed., Wiley & Sons, 1991に説明されているかもしれない。
【0122】
本発明によるピペリジン−N−アルキルカルボキシラート化合物を、例えば、米国特許第5,250,542号、同第5,434,171号、同第5,159,081号、及び同第5,270,328号に教示されている方法を用いて合成してよく、これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。例えば、本化合物の合成において出発物質として用いる3−置換−4−メチル−4−(3−ヒドロキシ−またはアルカノイルオキシフェニル)ピペリジン誘導体を、米国特許第4,115,400号及び同第4,891,379号に教示されている一般的な手順で製造してよく、これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。本明細書において説明する化合物の合成のための出発物質である(3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルピペリジンを、米国特許第4,581,456号に説明されている手順で製造してよい(これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する)が、説明するように調節して、β−立体化学が好ましいようにしてよい。
【0123】
方法の第1の工程は、3−アルコキシブロモベンゼンとアルキルリチウム反応剤とを反応させることで3−アルコキシフェニルリチウム試薬を形成することを含んでよい。この反応を、不活性条件下、適切な非反応性溶媒の例えば無水ジエチルエーテルまたは好ましくは無水テトラヒドロフランの存在下で実行してよい。この方法において使用する好ましいアルキルリチウム反応剤は、n−ブチルリチウム、特にsec−ブチルリチウムである。一般に、ほぼ等モルからわずかに過剰のアルキルリチウム反応剤を反応混合物に加えてよい。反応を、温度−約20℃〜−約100℃、より好ましくは−約50℃〜−約55℃で行ってよい。
【0124】
一旦3−アルコキシフェニルリチウム試薬が形成されたら、ほぼ等モル量の1−アルキル−4−ピペリドンを混合物に加えてよく、その間、温度を−20℃〜−100℃に維持する。反応は一般的に約1〜24時間後に完了する。この時点で、反応混合物を徐々に室温に温めてよい。生成物の単離は、飽和塩化ナトリウム溶液を反応混合物に加え、いかなる残存しているリチウム試薬もクエンチすることで行ってよい。有機層を分離し、希望するならさらに精製して、適切な1−アルキル−4−(3−アルコキシフェニル)ピペリジノール誘導体を与えてよい。
【0125】
上記で製造した4−フェニルピペリジノールの脱水を、周知の手順に従って強酸を用いて成し遂げてよい。脱水は、幾つかの強酸の例えば塩酸、臭化水素酸、及びその他同様なものの任意の1つを様々な量で用いて起きるが、脱水は、好ましくはリン酸、または特にトルエン若しくはベンゼン中のp−トルエンスルホン酸を用いて行う。この反応を一般的に還流条件下で、より一般には約50℃〜150℃で行ってよい。こうして形成された生成物の単離は、生成物の塩形態の酸性水溶液を塩基性化し、水溶液を、適切な水不混和性溶媒を用いて抽出することで行ってよい。蒸発の後に得られた残留分を、希望するなら次にさらに精製できる。
【0126】
1−アルキル−4−メチル−4−(3−アルコキシフェニル)テトラヒドロピリジン誘導体を、メタロエナミンアルキル化によって製造してよい。この反応を好ましくは、窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気下、テトラヒドロフラン(THF)中のn−ブチルリチウムを用いて行う。一般に、わずかに過剰のn−ブチルリチウムを、−約50℃〜約0℃、より好ましくは−約20℃〜−10℃の範囲内の温度に冷却したTHF中の1−アルキル−4−(3−アルコキシフェニル)−テトラヒドロピリジンの撹拌中の溶液に加えてよい。この混合物を約10〜30分間撹拌し、続いて約1.0〜1.5当量のハロゲン化メチルを溶液に加えてよく、その間、反応混合物の温度を0℃未満に維持する。約5〜60分後、水を反応混合物に加え、有機相を集めてよい。生成物を標準的な手順に従って精製できるが、粗生成物を好ましくは、真空下で蒸留することで、またはヘキサン:酢酸エチル(65:35、v:v)及びシリカゲルの混合物中で約2時間スラリーにすることで精製する。後者の手順に従った場合、生成物を次にろ過によって単離し、続いてろ液を減圧下で蒸発させてよい。
【0127】
方法における次の工程は、マンニッヒ反応のアミノメチル化を非共役環内エナミンに適用することを含んでよい。この反応を好ましくは、約1.2〜2.0当量の水性ホルムアルデヒドと約1.3〜2.0当量の適切な第二級アミンとを適切な溶媒中で合わせることで実行する。水が好ましい溶媒であるかもしれないが、アセトン及びアセトニトリル等の他の非求核性溶媒もまたこの反応において用いることができる。この溶液のpHを、非求核性陰イオンを提供する酸を用いて約3.0〜4.0に調節してよい。このような酸の例としては、硫酸、スルホン酸の例えばメタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸、リン酸、並びにテトラフルオロホウ酸が挙げられ、硫酸が好ましい。この溶液に、一般的には水性硫酸中に溶解させた1当量の1−アルキル−4−メチル−4−(3−アルコキシフェニル)テトラヒドロピリジンを加えてよく、溶液のpHを非求核性酸または適切な第二級アミンを用いて再調節してよい。反応の最中に、pHを好ましくは約1.0〜5.0の範囲内に維持し、pH約3.0〜3.5がより好ましい。反応を、約50℃〜約80℃の範囲内の温度で、より好ましくは約70℃で行った場合、反応は実質的に約1〜4時間後に、より一般的には約2時間後に完了する。反応を次に約30℃に冷却し、水酸化ナトリウム溶液に加えてよい。次いでこの溶液を、水不混和性有機溶媒の例えばヘキサンまたは酢酸エチルを用いて抽出してよく、有機相を、水を用いて十分に洗浄していかなる残存しているホルムアルデヒドも除去した後に、減圧下で蒸発乾固させてよい。
【0128】
方法の次の工程は、製造した1−アルキル−4−メチル−4−(3−アルコキシフェニル)−3−テトラヒドロピリジンメタンアミンを対応するトランス−1−アルキル−3,4−ジメチル−4−(3−アルコキシフェニル)ピペリジンに接触水素化することを含んでよい。この反応は実際には2工程で起きる。第1の工程は水素化分解反応であり、ここでエキソC−N結合は還元的に開裂して3−メチルテトラヒドロピリジンを生じる。第2の工程においては、テトラヒドロピリジン環中の2,3−二重結合を還元して所望のピペリジン環を与える。
【0129】
エナミン二重結合の還元は、ピペリジン環の3及び4炭素原子において重要な相対的立体化学を導入する。還元は一般に、完全な立体選択性を示して起きることはない。本方法において用いる触媒を、様々なパラジウム触媒、好ましくは白金触媒の中から選択してよい。
【0130】
方法の接触水素化工程を好ましくは酸性反応媒質中で行う。方法において使用するための適切な溶媒としては、アルコール類の例えばメタノールまたはエタノール、並びに酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、及びその他同様なものが挙げられる。
【0131】
適切な立体化学的結果は、用いる触媒の量に依存することがある。所望の立体化学的結果を生じるために必要な触媒の量は、様々な触媒毒の存在または欠如に関する出発物質の純度に依存することがある。
【0132】
反応容器中の水素圧力を必要要件とすることはできず、約5〜200psiの範囲内とすることができる。出発物質の体積による濃度は、好ましくは、出発物質1グラム当り液体約20mLであるが、出発物質のより高いまたはより低い濃度もまた用いることができる。本明細書において指定する条件下で、分子の過還元ができないことが理由となって、接触水素化のための時間の長さを必要要件とすることはできない。反応を24時間までまたはより長く続けることができるが、理論的な2モルの水素の取込みの後に還元条件を続ける必要はないかもしれない。生成物を次に、反応混合物を例えば滴虫土を通してろ過することによって単離し、ろ液を減圧下で蒸発乾固させてよい。こうして単離した生成物のさらなる精製は必要ではないかもしれず、好ましくはジアステレオマー混合物を以下の反応に直接に導入してよい。
【0133】
アルキル置換基を、標準的な脱アルキル化手順によってピペリジン環の1位から除去してよい。好ましくは、クロロホーメート誘導体、特にビニルまたはフェニル誘導体を用いてよく、酸を用いて除去してよい。次に、製造したアルコキシ化合物脱を対応するフェノールに脱アルキル化してよい。この反応を一般に、48%水性臭化水素酸溶液中で化合物を反応させることで実行してよい。この反応を、温度約50℃〜約150℃で、より好ましくは反応混合物の還流温度で行った場合、反応は実質的に約30分〜24時間後に完了するかもしれない。混合物を次に、溶液を冷却することで後処理し、続いて塩基を用いてpH約8に中和してよい。この水溶液を、水不混和性有機溶媒を用いて抽出してよい。有機相の蒸発の後に、残留分を以下の工程で直接に使用してよい。
【0134】
本発明の化合物に至る出発物質として用いる化合物はまた、1−アルキル−4−メチル−4−(3−アルコキシフェニル)−3−テトラヒドロピリジンメタンアミンを3位において臭素化し、こうして製造したブロモ化合物をリチウム化し、リチウム化した中間体と臭化メチル等のハロゲン化メチルとを反応させて、対応する1−アルキル−3,4−ジメチル−4−(3−アルコキシフェニル)テトラヒドロピリジンメタンアミンを与えることで製造できる。この化合物を次に上記に示したように還元し、出発物質に転換してよい。
【0135】
上記に言及したように、本発明の化合物は、個々の立体異性体として存在し得る。好ましくは、反応条件を、米国特許第4,581,456号に開示されているように、または米国特許第5,250,542号の実施例1に説明されているように調節して実質的に立体選択的にし、事実上2つのエナンチオマーのラセミ混合物を与える。こうしたエナンチオマーを次に分割できる。こうした化合物の合成において使用する分割された出発物質を製造するために用いてよい手順としては、アルキル−3,4−ジメチル−4−(3−アルコキシフェニル)ピペリジンのラセミ混合物を、(+)−または(−)−ジトルオイル酒石酸を用いて処理して、分割された中間体を与えることが挙げられる。この化合物を次にビニルクロロホーメートを用いて1位において脱アルキル化し、最後に所望の4−(3−ヒドロキシフェニル)ピペリジン異性体に転換してよい。
【0136】
当業者には理解できるように、本発明の個々のエナンチオマーをまた、希望に応じて(+)または(−)ジベンゾイル酒石酸を用いて、本発明の化合物の対応するラセミ混合物から単離できる。好ましくは(+)−トランスエナンチオマーが得られる。
【0137】
(+)トランス−3,4立体異性体が好ましいが、本明細書において説明する化合物の可能な立体異性体の全ては、本発明の予想される範囲内にある。立体異性体のラセミ混合物並びに実質的に純粋な立体異性体は、本発明の範囲内にある。本明細書において使用する“実質的に純粋な”という用語は、他の可能な立体異性体と比較して、少なくとも約90モル%、より好ましくは少なくとも約95モル%、最も好ましくは少なくとも約98モル%の所望の立体異性体が存在することを指す。
【0138】
中間体を、3,4−アルキル−置換−4−(3−ヒドロキシフェニル)ピペリジンと式:LCH2(CH2n-1CHR3C(O)E[式中、Lは、塩素、臭素またはヨウ素等の脱離基であり、Eは、カルボン酸、エステルまたはアミドであり、R3及びnは、上文で定義した通り。]の化合物とを反応させることで製造できる。好ましくはLは塩素としてよく、反応を塩基の存在下で実行してピペリジン窒素をアルキル化する。例えば、4−クロロ−2−シクロヘキシルブタン酸、エチルエステルと(3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチルピペリジンとを接触させて、4−[(3R,4R)−4−(3−ヒドロキシフェニル)−3,4−ジメチル−1−ピペリジン]ブタン酸、エチルエステルを与えることができる。カルボン酸のエステルが好ましいかもしれないが、遊離酸自体またはカルボン酸のアミドを使用してよい。
【0139】
他の合成においては、置換されたピペリジンとメチレンアルキルエステルとを接触させて、ピペリジン窒素をアルキル化することができる。例えば、2−メチレン−3−フェニルプロポニック酸(proponic acid)、エチルエステルと所望のピペリジンとを接触させて、2−ベンジル−3−ピペリジンプロパン酸エチルエステルを与えることができる。
【0140】
別の合成経路は、置換されたピペリジンとハロアルキルニトリルとの反応を含むことができる。得られたピペリジンアルキルニトリルのニトリル基を、対応するカルボン酸に加水分解できる。
【0141】
各々の合成経路を用いて、得られたエステルまたはカルボン酸とアミンまたはアルコールとを反応させて、修正された化学構造を与える。アミドの製造においては、ピペリジン−カルボン酸または−カルボン酸エステルとアミンとを、カップリング剤の例えばジシクロヘキシルカルボジイミド、ホウ酸、ボラン−トリメチルアミン、及びその他同様なものの存在下で反応させてよい。エステルは、ピペリジン−カルボン酸と適切なアルコールとを、カップリング剤の例えばp−トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素エーテラートまたはN、N’−カルボニルジイミダゾールの存在下で接触させることで製造できる。他に、ピペリジン−カルボン酸塩化物は、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン及びその他同様なもの等の試薬を使用して製造できる。この塩化アシルと適切なアミンまたはアルコールとを反応させて、対応するアミドまたはエステルを与えることができる。
【0142】
本発明によるアヘンアルカロイド誘導体を、例えば、米国特許第4,730,048号及び同第4,806,556号に教示されている方法を用いて合成してよく、これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。例えば、式(III)のアヘンアルカロイド誘導体は、親水性のイオン化可能な部分であるR’及びR”とナルトレキサミン(式(III)[式中、Rは(シクロプロピル)メチルであり、ZはOHであり、R’はHである。])またはオキシモルファミン(式(III)[式中、RはCH3であり、ZはOHであり、R’はHである。])の6−アミノ基とを結合させることで製造してよい。式(IV)のアヘンアルカロイド誘導体は、オキシモルホン(式(VI)[式中、RはCH3であり、ZはOHである。])またはナルトレキソン(式(VI)[式中、Rは(シクロプロピル)メチルであり、ZはOHである。])の6−ケト基を、適切なアミノ化合物を用いたシッフ塩基反応によってイオン化可能な親水基(R”N=)に転換することで製造してよい。
【0143】
【化18】

【0144】
同様にして、式(III)及び(IV)[式中、Zは水素である。]のデオキシ−オピエートは、容易に入手可能な出発物質から製造してよい。
式(V)の化合物を、例えば、米国特許第3,723,440号に教示されている方法を用いて合成してよく、これらの開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。
【0145】
本発明の方法において用いる化合物を、活性剤と患者の体内の薬剤の作用点との接触をもたらすような任意の手段によって投与してよい。本化合物を、個々の治療剤としてまたは治療剤の組合せとして、処方剤と共に使用する際に有効な任意の従来の手段によって投与してよい。例えば、これを医薬組成物中の唯一の活性剤として投与してよく、または、これをオピオイド鎮痛剤等の他の治療上活性な成分と組み合わせて使用できる。
【0146】
本化合物を、好ましくは、選択した投与経路と標準的な薬学的慣行とを基準として選択された薬剤用キャリアと合わせ、これは例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., Easton, PA, 1980)に説明する通りであり、この開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。
【0147】
本発明の化合物を、例えば経口または非経口等の選択した投与経路に適合させた様々な形態で哺乳類の受容者に投与することができる。この点で、非経口投与は、以下の経路による投与を含む:静脈内、筋肉内、皮下、直腸、眼内、滑液嚢内、経皮を含む経上皮、目部、舌下及び頬;局所としては、目部、真皮、眼球、直腸、及び吹込エアロゾルによる鼻吸入を含む。
【0148】
本活性化合物を、例えば、不活性の希釈剤と共に若しくは同化性可食キャリアと共に経口投与してよく、または、硬質若しくは軟質シェルゼラチンカプセル中に封入してよく、または、圧縮して錠剤にしてよく、または食餌の食品と共に直接に取り入れてよい。経口治療投与の場合、本活性化合物を賦形剤と共に取り入れてよく、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、ウエハース、及びその他同様なものの形態で使用してよい。このような組成物及び処方剤は好ましくは少なくとも0.1%の活性化合物を含むべきである。組成物及び処方剤のパーセンテージはもちろん変化してよく、便利よく例えば単位の重量の約2〜約6%としてよい。このような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、好ましくは、適切な用量が得られるようなものである。本発明による好ましい組成物または処方剤を、経口投与単位形態が約0.1〜約1000mgの活性化合物を含むように製造してよい。
【0149】
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル、及びその他同様なものはまた、以下のもののうちの1つ以上を含んでよい:結合剤の例えばトラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ若しくはゼラチン;賦形剤の例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤の例えばコーンスターチ、じゃがいもデンプン、アルギン酸、及びその他同様なもの;滑沢剤の例えばステアリン酸マグネシウム;甘味剤の例えばショ糖、乳糖若しくはサッカリン;または着香料の例えばペパーミント、ウインターグリーン油若しくはチェリー着香料。投与単位形態がカプセルである場合、これは、上記のタイプの材料に加えて液体キャリアを含んでよい。様々な他の材料が、コーティングとして、または投与単位の物理的形態を他の方法で修正するために存在してよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルを、シェラック、糖またはこの両方を用いてコーティングしてよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、本活性化合物、甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチルパラベン及びプロピルパラベン、染料、並びに着香料の例えばチェリーまたはオレンジ着香料を含んでよい。もちろん、任意の投与単位形態を製造する際に使用する任意の材料は好ましくは薬学的に純粋であり、用いる量で実質的に無毒である。加えて、本活性化合物を、持続放出型処方剤及び製剤中に取り入れてよい。
【0150】
本活性化合物をまた非経口でまたは腹腔内に投与してよい。遊離塩基または薬理学的に許容可能な塩としての本活性化合物の液剤を、水中で、ヒドロキシプロピルセルロース等の界面活性剤と適切に混合して製造できる。分散系をまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びこれらの混合物中で並びに油中で製造できる。通常の貯蔵及び使用の条件下で、こうした処方剤は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含んでよい。
【0151】
注射可能な用途に適した処方剤形態としては、例えば、無菌の水溶液または分散系、及び、無菌の注射可能な液剤または分散系を必要に応じて作製するための無菌の散剤が挙げられる。全ての場合にこうした形態は好ましくは無菌であり、容易に注射可能なように流体である。これは、好ましくは、製造及び貯蔵の条件下で安定であり、好ましくは、細菌及び菌類等の微生物による汚染作用を防ぐように保存する。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール及びその他同様なもの)、これらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒または分散媒としてよい。適切な流動度を、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散系の場合には必要とする粒度の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持できる。微生物の作用は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤の例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール及びその他同様なものによって防いでよい。多くの場合、等浸透圧性剤(isotonic agent)の例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の長時間の吸収は、吸収を遅らせる薬剤の例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によって実現してよい。
【0152】
無菌の注射可能な液剤は、本活性化合物を、必要な量で、必要に応じて上記に列挙した他の成分の幾つかと共に適切な溶媒中に取り入れ、続いてろ過滅菌することで製造してよい。一般に、分散系は、基本的な分散媒と上記に列挙したものの中の必要な他の成分とを含む無菌のビヒクル中に、滅菌した活性成分を取り入れることで製造してよい。無菌の注射可能な液剤を作製するための無菌の散剤の場合には、好ましい製造方法としては真空乾燥及び凍結乾燥技術が含まれ、これは、予め無菌ろ過した溶液から、活性成分プラス任意の追加の所望の成分の散剤を生じる。
【0153】
本発明の治療化合物を、単独でまたは薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせて患者に投与してよい。上記に言及したように、活性成分及びキャリアの相対的比率は、例えば化合物の溶解度及び化学的性質、選択した投与経路並びに標準的な薬学的慣行によって決定してよい。
【0154】
予防または治療に最も適した本発明の化合物の用量は、投与の形態、選択した個々の化合物及び治療中の個々の患者の生理学的特性によって変化しよう。一般に、低用量を最初に使用し、必要ならば、状況下での所望の効果に達するまで少しずつ段階的に増量してよい。ラットを使用した生理学的研究に基づくヒトの治療のための用量は一般に、約0.01mg〜約100mg/体重1kg/日の範囲にわたってよく、並びにこの範囲内の全ての組合せ及び副組合せとしてよい。他に、ヒトの治療のための用量は、約0.4mg〜約10g以上としてよく、幾つかの異なる投与単位で1日1回〜数回投与してよい。一般的に言えば、経口投与はより高い用量を必要とすることがある。
【0155】
本発明の方法において使用するための化合物は、式(I)のピペリジン−N−アルキルカルボキシラート化合物及び特に式(II)の化合物を含めて、オピオイド受容体結合アッセイにおいて特徴付けられており、μオピオイド受容体との優先的な結合を示す。単離された組織(モルモットの回腸及びマウスの精管)における研究は、こうした化合物は、測定可能なアゴニスト活性無しで拮抗薬として働くことができることを示した。動物における研究は、本化合物は、非常に低い用量で経口または非経口で投与した場合にモルヒネ依存性マウスにおける便秘を逆転させることができ、100倍以上の用量で投与しない限りモルヒネの鎮痛作用を遮断しないことを証明した。総合して、データは、本明細書において説明する化合物は、非常に高度の末梢選択性を有することができることを示している。例えば、Zimmerman, D.M., et al., Drugs of the Future, 1994, 19(12), 1078-1083を参照されたい
本発明を、以下の実施例においてさらに説明する。実施例は実際の実施例であり、例示のみを目的としており、添付の請求の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【実施例】
【0156】
この実施例は、本発明の方法の有効性を証明する、ヒトにおけるインビボ実験に関する。
78人の患者の第2相臨床研究を行い、部分的結腸切除または単純子宮摘出或いは根治的子宮摘出の外科的処置を受けている患者において、2種の用量(2mg及び12mg)の式(II)の化合物対プラセボの比較をした。この研究の結果を以下の表1〜4に説明し、図1〜5に図示する。
【0157】
【表1】

【0158】
【表2】

【0159】
【表3】

【0160】
【表4】

【0161】
【表5】

【0162】
表1〜5及び図1〜5のデータの分析は用量依存性効果を示し、より高い用量の式(II)の化合物を投与されている患者は、以下のものまでの時間がより短かったことを示す:(i)最初の放屁までの時間(P<0.04)(表1及び図1を参照されたい);(ii)最初の便通までの時間(P<0.02)(表2及び図2を参照されたい);(iii)固形食までの時間(P=0.0001)(表3及び図3を参照されたい);(iv)退院可能になるまでの時間(P<0.04)(表4及び図4を参照されたい);及び(v)退院までの時間(P=0.0001)(表5及び図5を参照されたい)。最初の放屁までの時間は15時間低減し、全ての他の測定は24時間以上低減した。式(II)の化合物の活性に関して臨床研究者が判断したこの試験において、いずれの患者も深刻な有害副作用を経験しなかった。手術後の疼痛の緩和のために使用したモルヒネまたは他の麻薬性鎮痛薬の胃腸への有害作用を化合物(II)が遮断したので、より高い用量の式(II)の化合物を用いて治療された患者は実際に、プラセボ投与群の患者よりも全体的な有害作用が少なかった。特に、プラセボ対照群(P<0.03)の23%と比較して、より高い用量の式(II)の化合物を投与された患者のいずれも、手術後の嘔吐を経験しなかった。プラセボ対照群(P=0.003)の63%と比較して、より高い用量の化合物(II)を投与された患者の27パーセントが、臨床的に関連のある手術後の悪心を経験した。式(II)の化合物はまた、この試験において使用した全身麻薬の有益な鎮痛効果を低減しなかった。こうした結果は、式(II)の化合物は、手術後の正常な腸の機能の回復を速めることができることを証明する。
【0163】
本文書において引用または説明した各特許、特許出願及び公開の開示を、本明細書において参考のためにその全体として引用する。
本明細書において説明したものに加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者には明白であろう。このような修正も添付の請求の範囲内に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効な量の以下の式(I):
【化1】

[式中、R1は、水素またはアルキルであり;
2は、水素、アルキルまたはアルケニルであり;
3は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
4は、水素、アルキルまたはアルケニルであり;
Aは、OR5またはNR67であり;ここで;
5は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
6は、水素またはアルキルであり;
7は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、アリール置換アルキル、若しくはアルキレン置換Bであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R6及びR7は複素環を形成し;
Bは、
【化2】

C(=O)W、またはNR89であり;ここで;
8は、水素またはアルキルであり;
9は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール、若しくはアリール置換アルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R8及びR9は複素環を形成し;
Wは、OR10、NR1112、またはOEであり;ここで;
10は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
11は、水素またはアルキルであり;
12は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、若しくはアルキレン置換C(=O)Yであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R11及びR12は複素環を形成し;
Eは、
【化3】

アルキレン置換(C=O)D、または−R13OC(=O)R14であり;
ここで;
13は、アルキル置換アルキレンであり;
14は、アルキルであり;
Dは、OR15またはNR1617であり;
ここで;
15は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
16は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アリール置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキルまたはシクロアルケニル置換アルキルであり;
17は、水素若しくはアルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R16及びR17は複素環を形成し;
Yは、OR18またはNR1920であり;
ここで;
18は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
19は、水素またはアルキルであり;
20は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、若しくはアリール置換アルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R19及びR20は複素環を形成し;
21は、水素またはアルキルであり;
nは、0〜4である。]
の化合物、若しくはその立体異性体、プロドラッグ、或いは薬学的に許容可能な塩、水和物またはN−酸化物を患者に投与することを含む、イレウスを治療または予防する方法。
【請求項2】
式(I)の化合物はトランス3,4−異性体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1は水素であり;R2はアルキルであり;nは1または2であり;R3は、ベンジル、フェニル、シクロヘキシル、またはシクロヘキシルメチルであり;R4はアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
AはOR5であり、ここで、R5は水素またはアルキルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
AはNR67であり、ここで、R6は水素であり、R7はアルキレン置換Bであり、ここで、BはC(=O)Wである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
7は(CH2q−Bであり、ここで、qは約1〜約3であり;WはOR10であり、ここで、R10は、水素、アルキル、フェニル置換アルキル、シクロアルキルまたはシクロアルキル置換アルキルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
WはNR1112であり、ここで、R11は、水素またはアルキルであり、R12は、水素、アルキルまたはアルキレン置換C(=O)Yである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
12は(CH2mC(O)Yであり、ここで、mは1〜3であり、Yは、OR18またはNR1920であり、ここで、R18、R19及びR20は独立して水素またはアルキルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
WはOEであり、ここで、EはCH2C(=O)Dであり、ここで、Dは、OR15またはNR1617であり、ここで、R15は、水素またはアルキルであり、R16は、メチルまたはベンジルであり、R17は水素である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
WはOEであり、ここで、EはR13OC(=O)R14であり、ここで、R13は、−CH(CH3)−または−CH(CH2CH3)−であり、R14はアルキルである、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
ピペリジン環の3及び4位における立体配置は各々Rである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物は、Q−CH2CH(CH2(C65))C(O)OH;Q−CH2CH2CH(C65)C(O)NHCH2C(O)OCH2CH2;Q−CH2CH2CH(C65)C(O)NHCH2C(O)OH;Q−CH2CH2CH(C65)C(O)NHCH2C(O)NHCH3;Q−CH2CH2CH(C65)C(O)NHCH2C(O)NHCH2CH3;G−NH(CH22C(O)NH2;G−NH(CH22C(O)NHCH3;G−NHCH2C(O)NH2;G−NHCH2C(O)NHCH3;G−NHCH3C(O)NHCH2CH3;G−NH(CH23C(O)OCH2CH3;G−NH(CH23C(O)NHCH3;G−NH(CH22C(O)OH;G−NH(CH23C(O)OH;Q−CH2CH(CH2(C611))C(O)NHCH2C(O)OH;Q−CH2CH(CH2(C611))C(O)NH(CH22C(O)OH;Q−CH2CH(CH2(C611))C(O)NH(CH22C(O)NH2;Z−NHCH2C(O)OCH2CH3;Z−NHCH2C(O)OH;Z−NHCH2C(O)NH2;Z−NHCH2C(O)N(CH32;Z−NHCH2C(O)NHCH(CH32;Z−NHCH2C(O)OCH2CH(CH32;Z−NH(CH22C(O)OCH2(C65);Z−NHCH2C(O)OH;Z−NH(CH22C(O)NHCH2CH3;Z−NH(CH23C(O)NHCH3;Z−NHCH2C(O)NHCH2C(O)OH;Z−NHCH2C(O)OCH2C(O)OCH3;Z−NHCH2C(O)O(CH24CH3;Z−NHCH2C(O)OCH2C(O)NHCH3;Z−NHCH2C(O)O−(4−メトキシシクロヘキシル);Z−NHCH2C(O)OCH2C(O)NHCH2(C65);またはZ−NHCH2C(O)OCH(CH3)OC(O)CH3からなる群から選択され、
ここで、
Qは、
【化4】

を表し、
Gは、
【化5】

を表し、
Zは、
【化6】

を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物は、(3R,4R,S)−Z−NHCH2C(O)OCH2CH(CH32;(+)−Z−NHCH2C(O)OH;(−)−Z−NHCH2C(O)OH;(3R,4R,R)−Z−NHCH2C(O)−OCH2CH(CH32;(3S,4S,S)−Z−NHCH2C(O)OCH2CH(CH32;(3S,4S,R)−Z−NHCH2C(O)OCH2CH(CH32;(3R,4R)−Z−NHCH2C(O)NHCH2(C65);または(3R,4R)−G−NH(CH23C(O)OHからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物は、(+)−Z−NHCH2C(O)OH及び(−)−Z−NHCH2C(O)OHからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物は(+)−Z−NHCH2C(O)OHである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物は、実質的に純粋な立体異性体である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記イレウスは、手術後イレウス及び分娩後イレウスからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記イレウスは手術後イレウスである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記手術後イレウスは手術後麻痺性イレウスである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記式(I)の化合物は末梢μオピオイド拮抗薬化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
有効な量の末梢μオピオイド拮抗薬化合物を患者に投与することを含む、イレウスを治療または予防する方法。
【請求項22】
前記末梢μオピオイド拮抗薬化合物は、ピペリジン−N−アルキルカルボキシラート、第四級モルフィナン、アヘンアルカロイド誘導体及び第四級ベンゾモルファン化合物からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記末梢μオピオイド拮抗薬化合物はピペリジン−N−アルキルカルボキシラート化合物である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ピペリジン−N−アルキルカルボキシラート化合物は、以下の式(I):
【化7】

[式中、R1は、水素またはアルキルであり;
2は、水素、アルキルまたはアルケニルであり;
3は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
4は、水素、アルキルまたはアルケニルであり;
Aは、OR5またはNR67であり;ここで;
5は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
6は、水素またはアルキルであり;
7は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、アリール置換アルキル、若しくはアルキレン置換Bであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R6及びR7は複素環を形成し;
Bは、
【化8】

C(=O)W、またはNR89であり;ここで;
8は、水素またはアルキルであり;
9は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール、若しくはアリール置換アルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R8及びR9は複素環を形成し;
Wは、OR10、NR1112、またはOEであり;ここで;
10は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
11は、水素またはアルキルであり;
12は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、アリール置換アルキル、若しくはアルキレン置換C(=O)Yであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R11及びR12は複素環を形成し;
Eは、
【化9】

アルキレン置換(C=O)D、または−R13OC(=O)R14であり;
ここで;
13は、アルキル置換アルキレンであり;
14は、アルキルであり;
Dは、OR15またはNR1617であり;
ここで;
15は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
16は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、アリール置換アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキルまたはシクロアルケニル置換アルキルであり;
17は、水素若しくはアルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R16及びR17は複素環を形成し;
Yは、OR18またはNR1920であり;
ここで;
18は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、またはアリール置換アルキルであり;
19は、水素またはアルキルであり;
20は、水素、アルキル、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル置換アルキル、シクロアルケニル置換アルキル、若しくはアリール置換アルキルであり、または、自らが結合した窒素原子と一緒になって、R19及びR20は複素環を形成し;
21は、水素またはアルキルであり;
nは、0〜4である。]
若しくはその立体異性体、プロドラッグ、或いは薬学的に許容可能な塩、水和物またはN−酸化物を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記末梢μオピオイド拮抗薬化合物は第四級モルフィナン化合物である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記第四級モルフィナン化合物は、N−メチルナルトレキソン、N−メチルナロキソン、N−メチルナロルフィン、N−ジアリルノルモルフィン、N−アリルレバロルファン、及びN−メチルナルメフェンからなる群から選択される化合物の第四級塩である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記末梢μオピオイド拮抗薬化合物はアヘンアルカロイド誘導体である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記アヘンアルカロイド誘導体は、以下の式(III)若しくは(IV):
【化10】

[式中、Rは、アルキル、シクロアルキル置換アルキル、アリール、アリール置換アルキルまたはアルケニルであり;
Zは、水素またはOHであり;
R’は、X’−J(L)(T)であり、ここで;
Jは、アルキレンまたはアルケニレンであり;
Lは、水素、アミノ、または所望によりCO2H、OH若しくはフェニルで置換されたアルキルであり;
Tは、CO2H、SO3H、アミノまたはグアニジノであり;
X’は、直接結合またはC(=O)であり;
R”は、NH−J(L)(T)またはグアニジノである。]
若しくはその立体異性体、プロドラッグ、或いは薬学的に許容可能な塩、水和物またはN−酸化物を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
Rは、C1〜C3アルキル、アリルまたはシクロプロピルメチルであり;ZはOHであり;Jは、C1〜C5アルキレン、酸素原子が割り込んだC2〜C6アルキレン、またはC2〜C5アルケニレンであり;Lは、水素またはアミノであり;Tは、CO2Hまたはグアニジノである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
Rはシクロプロピルメチルであり、R’は、C(=O)(CH22CO2H、C(=O)(CH23CO2H、C(=O)CH=CHCO2H、C(=O)CH2OCH2CO2H、C(=O)CH(NH2)(CH23NHC(=NH)NH2、C(=O)CH(NH2)CH2CO2H、またはCH2CO2Hであり、R”はNHCH2CO2Hである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記末梢μオピオイド拮抗薬化合物は第四級ベンゾモルファン化合物である、請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記第四級ベンゾモルファン化合物は、以下の式(V):
【化11】

[式中、R24は、水素またはアシルであり;
25は、アルキルまたはアルケニルである。]
若しくはその立体異性体、プロドラッグ、或いは薬学的に許容可能な塩、水和物またはN−酸化物を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
24は、水素またはC1〜C2アシルであり、R25は、C1〜C3アルキルまたはC2〜C3アルケニルである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
24は、水素またはアセトキシであり、R25は、プロピルまたはアリルである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第四級ベンゾモルファン化合物は、2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2,2−ジアリル−6,7−ベンゾモルファニウム−ブロミド;2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2−n−プロピル−6,7−ベンゾモルファン;2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2−アリル−6,7−ベンゾモルファン;2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2−n−プロピル−2−アリル−6,7−ベンゾモルファニウム−ブロミド;2’−ヒドロキシ−5,9−ジメチル−2−n−プロピル−2−プロパルギル−6,7−ベンゾモルファニウム−ブロミド;及び2’−アセトキシ−5,9−ジメチル−2−n−プロピル−2−アリル−6,7−ベンゾモルファニウム−ブロミドからなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記イレウスは、手術後イレウス及び分娩後イレウスからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
前記イレウスは手術後イレウスである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記手術後イレウスは手術後麻痺性イレウスである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記イレウスは結腸のイレウスである、請求項21に記載の方法。
【請求項40】
前記イレウスは、外因性オピオイドアゴニストの存在しない場合に起きる、請求項21に記載の方法。
【請求項41】
オピエートまたはオピオイドを前記患者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記オピエートまたはオピオイドはオピオイド鎮痛薬を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記オピオイド鎮痛薬はμオピオイドアゴニストを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
腸運動を遅くする化合物を前記患者に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
オピエートまたはオピオイドを前記患者に投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項46】
前記オピエートまたはオピオイドはオピオイド鎮痛薬を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記オピオイド鎮痛薬はμオピオイドアゴニストを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
腸運動を遅くする化合物を前記患者に投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162560(P2012−162560A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92605(P2012−92605)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【分割の表示】特願2001−543508(P2001−543508)の分割
【原出願日】平成12年11月29日(2000.11.29)
【出願人】(501252928)アドラー コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】