説明

イワダレソウ専用の壁面下垂型緑化システム。

【課題】刈り揃え等のメンテナンスを不要とし、下垂させても容易に補助資材に絡み付き、一年を通して壁面の常緑状態を保つこと。
【解決手段】構造物の壁面上部にプランターを取り付け、このプランターに植栽した植物を下垂させて壁面を緑化する壁面下垂型緑化システムにおいて、上記植物に改良種のイワダレソウ1を選択し、上記プランター2下には上記イワダレソウ1を這わせる格子状の茎這わせ材4を取り付け、この茎這わせ材4に、成長時のイワダレソウの折損を防ぐ帯状の保護ネット5を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良種のイワダレソウを用いた壁面下垂型緑化システムの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部におけるヒートアイランド現象の緩和、建築物の断熱性や耐久性の向上、あるいは室内の熱環境の緩和等を目的として壁面緑化が注目されている。この壁面緑化には様々な方法が提案されているが、特許文献1では、構造物の上部に位置する平面に蔓性植物を植栽する土壌を収納するための収納ポットが配置され、この収納ポットの下方に位置する構造物には蔓性植物が育成する補助資材が垂設され、この補助資材の表面に蔓性植物の横揺れを防止する揺れ止め材が備えられた壁面緑化システムが示されている。そして、このシステムによると、蔓性植物を下垂させる場合において、伸長が早く、壁面に安定し易いといった効果が得られる。
【0003】
【特許文献1】 特開2005−27562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1で用いられる蔓性植物の場合、生育環境や改良土壌等によりどこまでも下垂伸長するため、これを刈り揃える等のメンテナンスが必要となってくる。また、蔓性植物は本来、樹木や岩等を伝って登攀する性質があるため、これを下垂させても補助資材には絡み付きにくいといった欠点も生じている。また、蔓性植物の多くは冬場に枯れるという問題もある。
【0005】
本発明は、刈り揃え等のメンテナンスを不要とし、下垂させても容易に補助資材に絡み付き、一年を通して常緑の下垂型壁面緑化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、蔓性植物のうち改良種のイワダレソウ(以下、単にイワダレソウという。)に着目し、このイワダレソウを、下垂させて生育させたとき、その伸長が250cm程度で止まる性質を有していることを知得した。そこでこの性質を壁面緑化に応用すべく、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、構造物の壁面上部にプランターを取り付け、このプランターに植栽した植物を下垂させて壁面を緑化する下垂型壁面緑化システムにおいて、上記植物にイワダレソウを選択し、上記プランター下には上記イワダレソウを這わせる格子状の茎這わせ材を取り付け、この茎這わせ材に、成長時のイワダレソウの折損を防ぐ帯状の保護ネットを取り付けたことを特徴とするイワダレソウ専用の壁面下垂型緑化システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、刈り揃え等のメンテナンスを不要とし、下垂させても容易に補助資材に絡み付けることができ、一年を通して壁面の常緑状態を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
改良種のイワダレソウは、本共同出願人である宇都宮大学雑草科学研究センター所長の倉持仁志が、在来種のイワダレソウに改良を加え、種子を作らない常緑の耐寒性宿根草として開発したもので、品種登録出願番号第18591号及び第18592号として種苗登録申請中のものである。
【実施例】
【0009】
以下、本発明によるイワダレソウ専用の壁面下垂型緑化システムを、図1を用いて説明する。イワダレソウ1は、土壌に這わせると本来は節々で根を張るが、これを下垂させた場合、根が張れない関係で、その部分からは茎が張り出すとともに、その下垂伸長も250cm程度で止まる性質がある。このイワダレソウ1がプランター2に植栽されている。プランター2は、例えばその寸法が幅900mm×奥行き250mm×高さ200mmで成型され、壁面3に建築外壁用固定金具(図示せず。)により固定されている。
【0010】
プランター2の下には、イワダレソウ1の茎を下垂させて這わせる格子状の茎這わせ材4が固定されている。この茎這わせ材4は、イワダレソウ1が下垂したときにこれに絡み付き易いように、その面がプランター2の外面の延長面に置かれるのが好ましい。なお、茎這わせ材4は、金属又は樹脂等の腐食しにくい材質により成形されている。さらにこの茎這わせ材4の表面には、成長時にこれに絡み付かないことのあるイワダレソウ1の一部を風による折損から保護する帯状の保護ネット5が取り付けられている。なお、この保護ネット5の幅や取り付け数に制限はない。
【0011】
上記下垂型緑化システムによると、イワダレソウ1は、成長するにつれて茎這わせ材4の格子部分の表面側を這ったり中に入ったりして、これに絡みつくようになる。イワダレソウ1が伸長を続けると、中には茎這わせ材4に絡み付かないものも出てくるが、そのようなイワダレソウ1は、保護ネット5により保護される。そして、イワダレソウ1が下垂長で250cm程度に達すると、その伸長が止まり、あとは、節々から出てきている茎が次第に成長する。したがって、イワダレソウ1は伸び過ぎることがないので、刈り揃えのメンテナンスを不要にすることができる。また、茎這わせ材4にも絡み付き易い性質を有している。さらに常緑であるので、一年を通して緑化壁面を保持することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるイワダレソウ専用の壁面下垂型緑化システムの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0013】
1 改良種のイワダレソウ
2 プランター
3 壁面
4 茎這わせ材
5 保護ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面上部にプランターを取り付け、このプランターに植栽した植物を下垂させて壁面を緑化する壁面下垂型緑化システムにおいて、上記植物に改良種のイワダレソウを選択し、上記プランター下には上記イワダレソウを這わせる格子状の茎這わせ材を取り付け、この茎這わせ材に、成長時のイワダレソウの折損を防ぐ帯状の保護ネットを取り付けたことを特徴とするイワダレソウ専用の壁面下垂型緑化システム。

【図1】
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【公開番号】特開2009−297010(P2009−297010A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180730(P2008−180730)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(302044100)株式会社エココスモ (11)
【出願人】(505159928)
【Fターム(参考)】