説明

インクカートリッジの装着方法とインクカートリッジおよびインクジェットプリンタ

【課題】本発明は、インクカートリッジを装着する際の、空気のかみ込みに起因するインクの漏出が生じないインクカートリッジの装着方法とインクカートリッジおよびインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】大気連通孔18と接続したポンプ手段5を具備する。インクカートリッジ1のインク供給口15をジョイント部41に接続する際、ポンプ手段4は、大気連通孔18を通して圧縮空気をインク室内のインクに供給し、インク供給口15内のインク先端を装着前の状態よりも外部へ押し出す圧力を負荷する。インク供給口15から押し出されたインクがジョイント部41のインクと連通させた状態で、インク供給口15とジョイント部41とを接続する。さらに、負荷した圧力を解除して大気連通孔18を通してインク室内を大気と連通させ、インクカートリッジの装着を完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクカートリッジをインクジェットホルダに装着する際に、インクが記録ヘッドのノズルから漏出することのないインクカートリッジを装着する方法と、インクカートリッジおよびインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて、インクカートリッジを交換する際、新しいインクカートリッジをインクカートリッジホルダに装着すると、インクが記録ヘッドのノズルから漏出してノズル面に垂れ下がった状態になることがある。これは、インクカートリッジのインク供給口とインクカートリッジホルダのジョイント部とが密着接続される際に、かみ込んだ空気が圧縮されることによって、インクカートリッジと記録ヘッドとのあいだのインク供給路内に圧力が発生するためである。
【0003】
つまり、インクカートリッジのインク供給口と記録ヘッドに連通しているジョイント部とが密着接続されると、インクカートリッジと記録ヘッドとのあいだには気密状態のインク供給路が構成される。インク供給口には複数の細孔を有するフィルタが設けられており、かつジョイント部内にはインクが残留した状態になっているため、インク供給路内に圧力が発生すると、フィルタよりもメニスカス耐圧が低い記録ヘッドのノズル内に張ったインクのメニスカスが破られるからである。
【0004】
上記のようにインクがノズル面に垂れ下がった状態になると、インクが直接記録媒体と接触したり、ペーパー押えなどの内部部品に付着したりすることによって記録媒体を汚すおそれがある。
【0005】
こうしたインク漏れを防止する手段を備えた公知の装置として、インク供給口およびジョイント部に設けたシール部材の少なくとも一方に、接続の際にかみ込む空気を排出するためのエアー抜き部を設けたインクジェット記録装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−277554号公報(第3〜6,8,9頁、第2,9図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のインクジェット記録装置の構成では、インク供給口とジョイント部に設けられているシール部材とが密接してシールがとられるまでは、ジョイント部とシール部材とのあいだの空気を外部に排出することができるものの、シールがとられてインク供給路内の気密性が確保されると、ジョイント部とシール部材とのあいだにかみ込んだ空気は排出されない。
【0007】
そこで、本発明はインクカートリッジを装着する際の、空気のかみ込みに起因するインクの漏出が生じないインクカートリッジの装着方法とインクカートリッジおよびインクジェットプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のインクカートリッジの装着方法は、内部にインクを貯留するインク室、そのインクを外部へ供給するインク供給口、及び前記インク室へ大気を導入する大気連通孔を有するインクカートリッジと、
そのインクカートリッジが着脱可能に装着され、前記インク供給口が密着接続するジョイント部、及びそのジョイント部に前記インク供給口を接続させた前記インクカートリッジから前記ジョイント部を通してインクが供給される記録ヘッドを備えるインクカートリッジホルダと
を有するインクジェットプリンタにおいて、前記インクカートリッジを、前記インク供給口を前記ジョイント部に接続させて前記インクカートリッジホルダに装着するインクカートリッジの装着方法であって、
前記インクカートリッジの装着に際し、前記インク室内のインクに前記大気連通孔を通して負荷した圧力によって前記インク供給口内のインクを装着前の状態よりも外部へ押し出し、そのインクと前記ジョイント部内に残留しているインクとを連通させた状態で、前記インク供給口と前記ジョイント部との密着接続を完了し、前記圧力の負荷を解除し、前記インク室を前記大気連通孔を介して大気と連通することを特徴としている。
【0009】
この請求項1のインクカートリッジの装着方法は、前記インク供給口と前記ジョイント部とを密着接続する際に、前記インク供給口内からインクを押し出し、大気圧下において前記ジョイント部内に残留しているインクと連通させるから、前記ジョイント部内に残留しているインクに圧力が作用することがない。また、従来のように接続する際にかみ込む空気が少なく、その空気が圧縮されて発生した圧力が作用することも少なく、前記記録ヘッドのノズル内のインクが漏出することが防止される。
【0010】
請求項2に記載のインクカートリッジの装着方法は、インク室内のインクに負荷する圧力を、前記大気連通孔から圧縮空気を導入することにより発生させることを特徴としている。
【0011】
この請求項2のインクカートリッジの装着方法は、前記大気連通孔を利用して圧縮空気を導入することにより、前記インク室内のインクに前記圧力を容易に負荷することができる。
【0012】
請求項3に記載のインクカートリッジの装着方法は、インク室内のインクに負荷する圧力を、インクカートリッジを、インク供給口とジョイント部とが密着接続を完了する位置に向けて移動するのにともない動作するポンプ手段によって発生させることを特徴としている。
【0013】
この請求項3のインクカートリッジの装着方法は、前記インクカートリッジをインクカートリッジホルダに装着すれば、自動的に前記圧力が前記インク室内のインクに負荷されるように構成することができる。
【0014】
請求項4に記載のインクカートリッジの装着方法は、インク供給口とジョイント部との密着接続を完了した後、圧力の負荷を解除するとともに、インク室を大気連通孔を介して大気と連通することを特徴としている。
【0015】
この請求項4のインクカートリッジの装着方法は、前記密着接続が完了した後、圧力の負荷を解除するとともに、インク室を大気連通孔を介して大気と連通することで、前述のように負荷した圧力に影響されることなく、前記インク室のインクを記録動作のために記録ヘッドに供給することができる。
【0016】
請求項5に記載のインクカートリッジの装着方法は、インク室内のインクは、装着前の状態で前記インク供給口の外部側開口端よりも前記インク室側の奥位置に形成したメニスカスにより、前記インク供給口から外部へ漏出しないように保持されており、負荷した圧力により、前記インク供給口の外部側開口端寄りに押し出されることを特徴とする。
【0017】
請求項5のインクカートリッジの装着方法は、前記インクカートリッジの装着前におけるインク漏れを防止するとともに、前記負荷した圧力によってインク供給口内に形成しているインクのメニスカスを破ることで、上記インク室のインクとジョイント部のインクとを連通させることができる。
【0018】
請求項6に記載のインクカートリッジの装着方法は、前記インク供給口内から押し出したインクと前記ジョイント部内に残留しているインクとを連通させた状態で、前記インク室内のインクを介して前記記録ヘッド内のインクに負圧を与えることを特徴とする。
【0019】
請求項6のインクカートリッジの装着方法は、前記インク供給口と前記ジョイント部との接続後、記録ヘッドのノズルからインクがわずか垂れ下がる方向に圧力が作用しても、与えた負圧によりそれを戻すことができ、記録ヘッドのノズル内のインクのメニスカスを保持することができる。
【0020】
請求項7に記載のインクカートリッジは、内部にインクを貯留するインク室、そのインクを外部へ供給するインク供給口、及び前記インク室へ大気を導入する大気連通孔を有するインクカートリッジにおいて、
前記インクカートリッジに、前記大気連通孔と接続したポンプ手段を具備させ、
そのポンプ手段は、前記大気連通孔を外部に対して遮断しかつ前記大気連通孔を通して前記インク室内のインクに、前記インク供給口内のインク先端を装着前の状態よりも外部へ押し出す圧力を負荷する第1の作動位置と、前記大気連通孔を通して前記インク室内を大気と連通させる第2の作動位置とを設けて、
前記インクカートリッジを、記録ヘッドに連通したジョイント部を有するインクカートリッジホルダに装着して、前記インク供給口を前記ジョイント部に密着接続する際、前記インクカートリッジの移動にともない、前記ポンプ手段が前記第1の作動位置から前記第2の作動位置へ順次作動するように構成することを特徴としている。
【0021】
この請求項7のインクカートリッジは、前記インクカートリッジを前記インクカートリッジホルダに装着し、前記インク供給口を前記ジョイント部に密着接続する方向に前記インクカートリッジを移動させることで、前記ポンプ手段の前記第1の作動位置において、前記インク供給路内のインクを押し出し、大気圧下において前記ジョイント部内のインクと連通させることができる。したがって、前記ジョイント部内に残留しているインクに圧力が作用することなく、インクカートリッジを装着することができる。この際、従来のように接続する際にかみ込む空気が少なく、その空気が圧縮されて発生した圧力が作用することも少なく、前記記録ヘッドのノズル内のインクが漏出することが防止される。
【0022】
そして、前記ポンプ手段の前記第2の作動位置において、前記インク室が外部の大気と連通することで前記インク室内のインクを記録ヘッドへ供給することができることができるようになる。
【0023】
請求項8に記載のインクカートリッジは、ポンプ手段を作動させる作動部を具備し、インクカートリッジの装着移動にともない、前記作動部を、前記インクカートリッジに対して相対移動し、ポンプ手段を前記第1の作動位置から前記第2の作動位置へ順次作動させる構成とすることを特徴としている。
【0024】
この請求項8のインクカートリッジは、前記インクカートリッジをインクカートリッジホルダに装着すれば、前記ポンプ手段が前記第1の作動位置から前記第2の作動位置へ順次作動されて、前記インク室内のインクに圧力が負荷され、その後、大気と連通される。
【0025】
請求項9に記載のインクカートリッジは、ポンプ手段を、インクカートリッジの一側に沿って装着移動方向に長く形成されたポンプ室と、そのポンプ室内を前記装着移動方向に摺動可能なピストン部とで構成し、前記第1の作動位置において前記ピストン部をポンプ室内に対し前記圧力を発生する方向に相対移動させ、前記第2の作動位置において前記ピストン部を迂回して前記大気連通孔を大気に連通させる通気路を形成することを特徴としている。
【0026】
この請求項9のインクカートリッジは、前記ポンプ手段を前記インクカートリッジのケース内に収納した構成とすることができる。また、前記ポンプ手段によって前記インク供給路内のインクを押し出した後、前記通気路を通して前記大気連通孔を大気に連通させ、インクへの圧力の負荷を解除することができる。
【0027】
請求項10に記載のインクカートリッジは、装着前の状態で、インク供給口に、その外部側開口端よりもインク室側の奥位置にインクのメニスカスを形成して、前記インク室内のインクを保持させて、前記第1の作動位置においてそのインクを前記インク供給口の外部側開口端寄りに押し出すことを特徴としている。
【0028】
この請求項10のインクカートリッジは、前記インクカートリッジの装着前におけるインク漏れを防止するとともに、前記負荷した圧力によってインク供給口内に形成しているインクのメニスカスを破ることで、上記インク室のインクとジョイント部のインクとを連通させることができる。
【0029】
請求項11に記載のインクカートリッジは、インク供給口に、その外部側開口端よりもインク室側の奥位置にフィルタを設け、そのフィルタに前記インクのメニスカスを形成させること特徴としている。
【0030】
この請求項11のインクカートリッジは、前記フィルタによって前記インクのメニスカスをより強固に形成し、前記インクカートリッジの装着前におけるインク漏れを防止することができる。
【0031】
請求項12に記載のインクカートリッジは、インク室に、インクを収容する負圧発生部材を内部に設けることを特徴としている。
【0032】
この請求項12のインクカートリッジは、前記負圧発生部材によって前記インク室内に負圧が発生するので、前記インクカートリッジホルダへの装着前において、インクの不用意な漏出を防ぐことができる。また装着後において、記録ヘッドのノズルからインクがわずかに垂れ下がる方向に圧力が作用しても、与えた負圧によりそれを戻し、記録ヘッドのノズル内のインクのメニスカスを保持することができ、装着後におけるインクの安定した供給が行えるようになる。
【0033】
請求項13に記載のインクカートリッジは、インク室を、インクを収容する負圧発生部材を内部に有する第1のインク室と、インクのみを収容する第2のインク室とで構成することを特徴としている。
【0034】
この請求項13のインクカートリッジは、前記インクカートリッジホルダへの装着後における、インクの供給をより安定して行えるようになる。
【0035】
請求項14に記載のインクジェットプリンタは、内部にインクを貯留するインク室、そのインクを外部へ供給するインク供給口、及び前記インク室へ大気を導入する大気連通孔を有するインクカートリッジと、
そのインクカートリッジが着脱可能に装着され、前記インク供給口が密着接続するジョイント部、及びそのジョイント部に前記インク供給口を接続させた前記インクカートリッジから前記ジョイント部を通してインクが供給される記録ヘッドを備えるインクカートリッジホルダと
を有するインクジェットプリンタにおいて、
前記インクカートリッジホルダに、前記インクカートリッジの前記大気連通孔と対向する位置にポンプ手段を具備させ、
そのポンプ手段を、前記インクカートリッジホルダに装着される過程の前記インクカートリッジに当接して、前記インク供給口が前記ジョイント部に密着接続する前、前記大気連通孔と接続しその大気連通孔を外部に対して遮断しかつ前記大気連通孔を通して前記インク室内のインクに、前記インク供給口内のインク先端を装着前の状態よりも外部へ押し出す圧力を負荷する第1の作動位置と、前記押し出されたインクと前記ジョイント部内に残留しているインクとを連通させた状態で、前記大気連通孔を通して前記インク室内を大気と連通させる第2の作動位置とに順次作動するように構成することを特徴としている。
【0036】
この請求項14のインクジェットプリンタは、前記インクカートリッジを前記インクカートリッジホルダに装着し、前記インク供給口と前記ジョイント部とを密着接続する際、前記第1の作動位置において、前記インク供給口内のインクを押し出し、大気圧下において前記ジョイント部に残留しているインクと連通することで、前記ジョイント部内に残留しているインクに圧力が作用することなく、インクカートリッジを装着することができる。この際に、従来のように接続する際にかみ込む空気が少なく、その空気が圧縮されて発生した圧力が作用することも少なく、前記記録ヘッドのノズル内のインクが漏出することが防止される。
【0037】
そして、第2の作動位置において、前記インク室内が外部の大気と連通することによって前記インク室内のインクを記録ヘッドへ供給することができることができるようになる。
【0038】
請求項15に記載のインクジェットプリンタは、ポンプ手段に、ポンプ室とそのポンプ室内設けられたピストン部とを相対摺動可能に設けて、前記第1の作動位置において前記ピストン部とポンプ室とを前記圧力を発生する方向に相対移動し、前記第2の作動位置において前記ピストン部を迂回して前記大気連通孔を大気に連通させる通気路を形成する構成とすることを特徴としている。
【0039】
この請求項15のインクジェットプリンタは、前記ポンプ室と前記ピストン部とを相対摺動させて前記ポンプ室内の空気を圧縮し、この圧縮空気を前記インク室に導入することで前記インク室内のインクに前記圧力を発生させることができる。また、その後、前記通気路を通して前記大気連通孔を大気に連通させ、インクへの圧力の負荷を解除することができる。
【0040】
請求項16に記載のインクジェットプリンタは、上記請求項14のインクジェットプリンタにおいて、ポンプ手段に、前記インクカートリッジに当接したとき前記大気連通孔と接続する接続口を設け、前記インクカートリッジの装着移動にともない、その接続口と前記大気連通孔との接続状態を維持しながら、前記ピストン部とポンプ室とを相対移動する構成にすることを特徴としている。
【0041】
この請求項16のインクジェットプリンタは、前記インクカートリッジを前記インクカートリッジホルダに装着する過程において、前記ポンプ室と前記インカートリッジの前記インク室との連通状態を維持して、上記のように前記インク室内のインクに前記圧力を負荷し、その後大気に連通させることができる。
【0042】
請求項17に記載のインクジェットプリンタは、装着前の状態で、インク供給口に、その外部側開口端よりもインク室側の奥位置にインクのメニスカスを形成して、前記インク室内のインクを保持させ、第1の作動位置においてそのインクを前記インク供給口の外部側開口端寄りに押し出す構成とすることを特徴としている。
【0043】
この請求項17のインクジェットプリンタは、前記インクカートリッジの装着前における前記インク室内のインクが不用意に漏出することを防ぐことができる。
【0044】
請求項18に記載のインクジェットプリンタは、インクカートリッジのインク供給口に、その外部側開口端よりも前記インク室側の奥位置にフィルタを設け、そのフィルタに前記インクのメニスカスを形成させることを特徴としている。
【0045】
この請求項18のインクジェットプリンタは、前記フィルタによって前記インクのメニスカスをより強固に形成し、前記インクカートリッジの装着前におけるインク漏れを防止することができる。
【0046】
請求項19に記載のインクジェットプリンタは、インク供給口内から押し出したインクと前記ジョイント部内に残留しているインクとを連通させた状態で、インクカートリッジのインク室内のインクを介して前記記録ヘッド内のインクの負圧を与える負圧発生手段をさらに備えていることを特徴としている。
【0047】
この請求項19のインクジェットプリンタは、前記インクカートリッジ装着後において、記録ヘッドのノズルからインクがわずか垂れ下がる方向に圧力が作用しても、与えた負圧によりそれを戻し、記録ヘッドのノズル内のインクのメニスカスを保持することができ、インクを安定して供給することができるようになる。
【0048】
請求項20に記載のインクジェットプリンタは、前記インクカートリッジのインク室を、インクを収容する負圧発生部材を内部に有する第1のインク室と、インクのみを収容する第2のインク室とで構成することを特徴としている。
【0049】
この請求項20のインクジェットプリンタは、前記インクカートリッジ装着後において、よりインクを安定して供給できるようになる。
【発明の効果】
【0050】
請求項1のインクカートリッジの装着方法によると、インクカーリッジの交換の際のインクの漏出を防ぎ、記録媒体やプリンタ内部部品等をインクで汚すことなくインクカーリッジの交換が行えるようになる。
【0051】
請求項2のインクカートリッジの装着方法によると、インク室内のインクに圧力を容易に負荷し、インクカーリッジの交換の際のインクの漏出を防ぐことができる。
【0052】
請求項3のインクカートリッジの装着方法によると、従来のインクカートリッジの交換方法のままで、交換時のインクの漏出を防止することができる。
【0053】
請求項4のインクカートリッジの装着方法によると、上記請求項1のインクカートリッジの装着方法と同様に、記録媒体や内部部品をインクで汚すことなくインクカーリッジを交換することができ、記録動作のためにインク室のインクを記録ヘッドに安定して供給することができる。
【0054】
請求項5のインクカートリッジの装着方法によると、装着前におけるインクカートリッジからの不用意なインクの漏れを防止しつつ、インクカートリッジの交換時のインクの漏出を防止することができる。
【0055】
請求項6のインクカートリッジの装着方法によると、インクカートリッジの交換時のインクの漏出を防止し、インクカートリッジを装着後、記録ヘッドのノズル内のインクのメニスカスを保持することができる。
【0056】
請求項7のインクカートリッジによると、交換の際のインクの漏出を防ぎ、記録媒体やプリンタの内部部品をインクで汚すことなく交換を行うことができる。
【0057】
請求項8のインクカートリッジは、インクカートリッジをインクカートリッジホルダに装着すれば、インク室への圧力の負荷と解除とを順次行うことができる。
【0058】
請求項9のインクカートリッジは、ポンプ手段をケース内に収納した構造になっているため、インクカートリッジホルダの構造の複雑化を避けることができる。
【0059】
請求項10のインクカートリッジは、交換時のインクの漏出だけでなく、インクカートリッジホルダへの装着前のインクの不用意な漏出も防止することができる。
【0060】
請求項11のインクカートリッジは、インクカートリッジホルダへの装着前のインクの不用意な漏出をより効果的に防止することができる。
【0061】
請求項12のインクカートリッジは、装着前のインクの不用意な漏出が防止され、装着後においては記録ヘッドのノズルからのインクの漏出を防止するとともに、インクを記録ヘッドに対し安定して供給することができる。
【0062】
請求項13のインクカートリッジは、上記請求項12のインクカートリッジの効果に加え、インクを記録ヘッドに対してより安定して供給できるようになる。
【0063】
請求項14のインクジェットプリンタは、インクカートリッジの交換の際のインクの漏出を防ぎ、記録ヘッドのノズルから漏出したインクによって記録媒体や内部部品を汚すことがない。
【0064】
請求項15のインクジェットプリンタは、上記請求項13のインクジェットプリンタの効果を、ポンプ室とピストン部との相対摺動によって、容易に達成することができる。
【0065】
請求項16のインクジェットプリンタは、インクカートリッジをインクカートリッジホルダに装着する過程において、インク室への圧力の負荷とインク室の外部の大気との連通をスムーズに行うことができる。
【0066】
請求項17のインクジェットプリンタは、インクカートリッジの装着前において、インク室内のインクが不用意に漏出することを防ぐことができる。
【0067】
請求項18のインクジェットプリンタは、インクカートリッジホルダへの装着前のインクの不用意な漏出をより効果的に防止することができる。
【0068】
請求項19のインクジェットプリンタは、インクカートリッジ交換時のインクの漏出だけでなく、インクカートリッジホルダへの装着後における記録ヘッドのノズルからのインクの漏出も防止することができ、かつ記録ヘッドへのインクの供給を安定して行える。
【0069】
請求項20のインクジェットプリンタは、インクカートリッジ装着後において、記録ヘッドへのインクの供給をより安定して行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
本発明の実施形態について、図1〜9を参照しつつ説明する。図1(a)(b)は、本発明の第1の実施形態にかかるインクカートリッジ1の側断面図を示している。インクカートリッジ1は、合成樹脂で形成されており、箱型のケース2とケース上部に取り付けられる上蓋部材3とからなり、ケース内に設けられている後述のインク室4にインクが収容されている。
【0071】
ケース2は、ケース前壁9、ケース後壁10、ケース上壁18A、ケース底壁11および図面の紙面表裏方向両側に位置する両ケース側壁(図示されていない)によって、ほぼ6面体の箱型に形成され、内部を、上記のインク室4とポンプ手段5のポンプ室6とに区画されており、インク室4は、第1のインク室7と第2のインク室8とで構成されている。
【0072】
第1のインク室7は、ケース前壁9とケース後壁10およびケース底壁11とのあいだにそれぞれ間隔をあけるようにして設けた隔壁12の内側に形成されており、内部にインクを含浸可能な多孔質材からなる負圧発生部材13が収納されている。
【0073】
そして、ケース内において隔壁12の外側に形成されている空間は、隔壁12の底部とケース底壁11とを連結するように形成した隔壁13により、ケース前壁9側とケース後壁10側とに区画され、このケース前壁9側が第2のインク室8になっている。第2のインク室8には、インクのみが収容されており、隔壁12に形成した連通孔14により第1のインク室7と連通している。隔壁12,13は、図示されていない両側のケース側壁に連結されている。
【0074】
ケース上壁18Aの第1のインク室7に対応する位置には、大気連通孔18が第1のインク室7と後述のポンプ室6とを連通させるように形成されている。大気連通孔18の開放上面および第2のインク室8の上面は上蓋部材13によって閉塞されている。
【0075】
このように構成されているインク室4のインクは、ケース底壁11に設けられたインク供給口15を通じて外部に供給されるようになっている。このインク供給口内15には、第2のインク室8寄りの位置にフィルタ16が配設されており、フィルタ16の微細孔に形成したインクのメニスカスと、負圧発生部材13の毛細管作用との共同作用で、インク室4のインクは、インク供給口内15から漏出しないように保持されている。
【0076】
一方、上記空間のケース後壁10側がポンプ室6になっており、ポンプ室6は、インクカートリッジ1の一側に沿って、インクカートリッジ1を後述のインクカートリッジホルダに装着に際し移動させる方向に長く形成されている。またポンプ室6は、ケース底部でケース底壁11に沿ってケース前壁9側に屈曲した形状になっており、ケース底壁11に貫通して設けられた大気導入孔17により外部の大気と連通し、またケース上部において大気連通孔18によって第1のインク室7に連通している。
【0077】
ポンプ室6内には、その室内をインクカートリッジ1の装着移動方向に摺動可能なピストン部19が収納されており、このピストン部19により室内が上下に仕切られている。
【0078】
このピストン部19は、筒型の外周壁22とその一端を閉塞する上面壁26とにより形成されており、開口端を大気導入孔17側に向けている。外周壁22において隔壁12の
側面と対向する側の外周面20には、ピストン部19の長手方向に沿って上端から途中部位まで第1連通溝21が形成されており、この第1連通溝21の下方には、外周壁22の内側から外側に向かって第2連通溝23が形成されている。また、外周壁22においてケース後壁10と対向する側の中間部に、連通孔24が外周壁22を貫通して設けられている。
【0079】
このようなピストン部19に、その内側に対して十分に径の小さい棒状の作動部25が、その一端側を開口端から挿入してその先端を、ピストン部19の上面壁26の裏面に固着することによって連結されている。
【0080】
ピストン部19は、ポンプ室6内の上側に設けたバネ27によって大気導入孔17側に付勢されており、作動部25の他端側が、ケース底壁11の大気導入孔17からケース外部に突出した状態になっている。作動部25と大気導入孔17とのあいだには隙間があって、空気が流通可能になっている。
【0081】
ポンプ室6内は、ピストン部19の連通孔24に接するケース後壁10の内面に、ポンプ室6が屈曲するやや上側の位置に段差28を設けて、この段差28より上側のケース後壁10の厚みを薄くすることによって、ピストン部19の外周面20とケース後壁10とのあいだに隙間が生じるように構成されている。
【0082】
一方、上蓋部材3は、ケース2の上面を覆うように取り付けられており、その上部には後述するインクカートリッジホルダの押圧レバー43に設けられている係合溝44に嵌合する突起部29がケース2の前側に形成されており、かつ押圧レバー43の係止爪46が係合する嵌合溝30がケース2の後側に形成されている。
インクカートリッジホルダ(以下単にホルダという)31は、図2に示すように、記録媒体に沿って往復移動するキャリッジを兼ねるもので、底壁35の前後に前壁34、後壁33をそれぞれ立ち上がらせて側断面が略L型の形状を備えたものである。底壁35の下面には、記録ヘッド36が、図示されていないインク噴射ノズルが開口されているノズル面37を下向きにして固着されるとともに、ノズル面37のノズルを露出させた状態で記録ヘッド36を覆うカバープレート38が取り付けられている。
【0083】
底壁35の上側には、その上面を覆うように支持板39が配設されており、支持板39の前壁34寄りの位置には開口部40が形成され、インクカートリッジ1のインク供給口15が接続されるジョイント部41を露出した状態になっている。このジョイント部41は記録ヘッド36に連通しており、インクカートリッジ1から供給されたインクを、記録ヘッド36に送給できるようになっている。このジョイント部41内には、使用済みのインクカートリッジを取り外したあともインクが残留した状態になっている。また、ジョイント部41の外周には、インク供給口15とジョイント部41とを接続した際の気密性を確保するためのシール部材42が取り付けられている。ジョイント部41の上端開口部には、異物の侵入を防ぐために、フィルタ41aが設けられている。
【0084】
一方、ホルダ31の上部には、押圧レバー43が揺動可能に設けられている。押圧レバー43には、先端にインクカートリッジ1の上蓋部材3に設けられている突起部29に嵌合させる係合溝44が形成されており、その後方にはインクカートリッジ1の上蓋部材3に当接する当接部45が突設されるとともに、さらにその後方に、上蓋部材3の嵌合溝30に係合する係止爪46が突設されている。
【0085】
このように構成されているホルダ31に上記のインクカートリッジ1を挿入し押圧レバー43を下げると、押圧レバー43の係合溝44がインクカートリッジ1の突起部29に嵌合し、係止爪46と嵌合溝30とが係合し、当接部45が上蓋部材3の上面に当接した
状態で、図示しないバネの作用でインクカートリッジ1が押し下げられ、インクカートリッジ1のインク供給口15とヘッドホルダ31のジョイント部41とがシール部材42を介して密着接続される。以下、この装着過程について詳細に説明する。
【0086】
インクカートリッジ1をホルダ31に装着する前、すなわちポンプ手段5の作動前の状態は、図1(a)に示すように、バネ27で付勢されているピストン部19が、その開口端をケース底壁11の内側面に当接させた状態になっている。この状態においては、ピストン部19の第1連通溝21の下端が隔壁12の側面よりも下に位置し、大気導入孔17、第2連通溝23、第1連通溝21およびピストン部19よりも上側のポンプ室6を通じて、インク室4の大気連通孔18が外部の大気と連通した状態になっている。インクカートリッジ1をホルダ31に挿入すると、まず、ポンプ手段5の作動部25の先端が支持板39に当接してケース2の内部に押し込まれ、ピストン部19がバネ27の付勢力に抗して大気連通孔18側に摺動することによって、図3(a)に示すように、第1連通溝21の下端が隔壁12の側面と対向し、ポンプ室6におけるピストン部19の上と下との連通が遮断される(第1の作動位置)。さらにピストン部19が大気連通孔18側に摺動すると、上側のポンプ室6の空気を圧縮し、この圧縮空気が第1のインク室7に導入される。これにより、第1のインク室7および第2のインク室8内のインクは、インク供給口15へ向けて、圧縮空気による圧力が負荷され、インク供給口15のフィルタ16で保持されているインクのメニスカスが破れて、インク供給口15内のインクが外部に押し出された状態になる(図4(a)に破線で示す)。
【0087】
この状態で、インク供給口15がジョイント部材41にさらに近づくと、図4(b)に示すように、インク供給口15から押し出されたインクとジョイント部材41内に残留していたインクとが接触し、相互に連通状態になる。このとき、インク供給口15とジョイント部材41とはシール部材42を介しての密着状態にはなく、インクどうしが接触状態にある部分は、大気圧下にある。したがって、この状態において、ジョイント部材41内のインクには、圧力が負荷されず、記録ヘッドのノズル内のインクは押されない。
【0088】
ホルダ31へのインクカートリッジの装着が完了すると、図3(b)に示すように、ピストン部19の外周壁22の連通孔24が、ケース後壁10の段差28よりも上側に位置した状態となり、第1のインク室7は、ピストン部19を迂回して、連通孔24と大気導入孔17とを通じて外部の大気と連通した状態になる(第2の作動位置)。それとともに、インク供給口15とジョイント部41とが密着接続される。
【0089】
したがって、ポンプ手段5によるインクへの圧力の負荷が解除され、第1インク室7が外部の大気と連通状態になる。また、図4(c)に示すように、インク供給口15内のインクとジョイント部41内のインクとが完全に連通し、第1のインク室7内の負圧発生部材13の毛細管作用により、第1のインク室7、第2のインク室8、インク供給口15およびジョイント部材41内のインクを通じて、記録ヘッド内のインクに負圧(背圧)が作用し、ノズル内のインクのメニスカスが正規位置に保持される。これにより、インクカートリッジ1から記録ヘッドへ正常にインクを供給することが可能になり、記録ヘッドのノズルからインクを噴射することが可能になる。
【0090】
なお、上記ポンプ手段5は、インク供給口15内のインクとジョイント部41内のインクとを連通した状態で、インク供給口15とジョイント部41との密着接続を完了すると同時に、インク室4を外部の大気と連通してインク室4に負荷していた圧力を解除しているが、密着接続を完了したあとにインク室4の圧力の負荷を解除することもできる。これにより、インク室4に負荷した圧力が、記録ヘッドのノズルからインクを垂れ下がらせるように作用するが、接続完了後圧力の負荷を解除するまでの時間が短時間ならば、負圧発生部材13の作用により、ノズルから垂れ下がろうとするインクを記録ヘッド内へ戻すこ
とができる。
【0091】
また、密着接続を完了する直前にインク室4の圧力の負荷を解除することもできる。このようにすると、インクカートリッジの装着が完了する前に、負圧発生部材13による負圧が相互に連通しているインクによって記録ヘッド内のインクに作用し、インクがノズルから垂れ下がるのを防止することができる。
【0092】
上記のように、インク供給口15とジョイント部41が密着接続を完了する前に、両者のインクが相互に連通することで、従来のように両者間に空気をかみ込むことがほとんどなくなり、その空気を排出するためにインクを無駄に排出する量を少なくできる。
【0093】
ポンプ手段5のピストン部19はバネ27によって付勢されているために、インクカートリッジ1を装着し直したりする場合など、インクカートリッジ1をヘッドホルダ31から取り外すとポンプ手段5は自動的に装着前の状態に復元する。インクカートリッジを装着したらインクを消費し尽くまで外さない場合には、バネ27は省略することができる。
【0094】
また、インクカートリッジ1を公知のように包装材で包んで減圧包装した場合、その包装材を開封したときに、ポンプ室6におけるピストン部材19の上側と下側とに圧力差が生じる(ちなみに、圧力差が生じると、ピストン部材19が大気連通孔18側に移動してしまう)のを解消するために、第1連通溝21と第2連通溝23とが設けられているが、減圧包装しない場合には、両溝21、23は省略することができる。
【0095】
作動部25は、ピストン19側に設けるのでなく、ホルダ31側から突出して設け、インクカートリッジの装着時に、作動部25が大気導入口17に侵入してピストン19を押すように構成することもできる。
【0096】
次に、上記のようなポンプ手段をヘッドホルダに設けた第2の実施形態について説明するが、上記のヘッドホルダおよびインクカートリッジと構成が同じ部分については、同一の符号を用いることとする。
【0097】
図5は、ポンプ手段が設けられているホルダ31の側断面図を示している。ポンプ手段47は、ホルダ31の後壁33と支持板39のあいだに形成された開口部48から一部を突出させた状態で配置されている。
【0098】
ポンプ手段47は、図6(a)に示すように、内側にポンプ室49を備えたシリンダ部50およびポンプ室49内に摺動可能に収納されているピストン部51で構成されており、ピストン部51にはピストンロッド52の一端が連結されている。そして、ピストンロッド52の他端部をホルダ32の底壁35に、軸52Aを中心に揺動自在に固定し、シリンダ部50をややヘッドホルダ32の前側に向けて傾け、先端部を開口部48から突出させた状態で配置している。
【0099】
シリンダ部50は、ピストン部51が相対的に後退する側は開放されており、前進側に設けられている上面壁53Aには接続口53が形成されて、ポンプ室49と外部とが連通した状態になっている。上面壁53Aの外面には、接続口53に対応した位置に孔が形成されているシート状のシール部材54が取り付けられている。またシリンダ部50の外周面には湾曲した溝部70が形成されており、この溝部70をホルダ32に設けられているガイド部71に係合させながら軸52Aを中心とする揺動をガイドするように動くようになっている。
【0100】
シール部材54は、後述するようにインクカートリッジがシリンダ部50に当接したと
き、大気導入孔17と接続口53とがずれないように所定の摩擦力を確保し、かつシール性を確保するものである。
【0101】
ポンプ室内には、ピストン部50を後退する方向に付勢するバネ69が配設されており、ポンプ室49の側面には、シリンダ部49の側壁56に沿って通気路55が設けられている。この通気路55は、ピストン部50を迂回してポンプ室49の上面壁51側と開放側とを連通可能にしている。
【0102】
一方、インクカートリッジ1にはポンプ手段が設けられておらず、ケース後壁10に沿って上下方向に大気導入路6’が形成され、大気導入孔17から導入された空気を、大気連通孔18を通じて第1のインク室7に供給するようになっている。
【0103】
このようなポンプ手段47を備えたヘッドホルダ31に、インクカートリッジを装着する場合について説明する。
【0104】
インクカートリッジ1は、ヘッドホルダ31の前方からやや前傾させた状態で挿入される(図5参照)ので、インクカートリッジ1のケース底壁11の下面がシリンダ50の上面に当接するように、ポンプ手段47は、その上面を前側に向けて傾け、上端部を開口部48から突出させた状態で配置されている。インクカートリッジ1の大気導入孔17とシリンダ50の接続口53とを対応させて、インクカートリッジ1の下面をシリンダ50の上面に当接させると、インクカートリッジ1の大気導入路6’とシリンダ50のポンプ室49とが、大気導入孔17と接続口53を通じて連通した状態になる(図6(a)参照)。
【0105】
そして、インクカートリッジ1をヘッドホルダ31の後壁側に回転させて直立状態にしながら、カートリッジ1を下方に向かって押し下げると、大気導入孔17と接続口53との接続が維持された状態で、即ち、大気連通孔18と接続口53とが、大気連通路6’を通じて接続状態を維持されたままでシリンダ50が押し下げられる。
【0106】
このとき、ピストン部51は通気路55よりも下方にあって(第1の作動位置)、シリンダ部50が押し下げられることによって、ポンプ室49で発生した圧縮空気がインクカートリッジ1の大気導入路6’を通じて第1のインク室7に導入される。これにより、前記の実施形態と同様に、圧縮空気によって第1のインク室7内のインクに圧力が負荷されるため、インク供給口15のフィルタ16で保持されているインクのメニスカスが破れ、インク供給口15内のインクが外部に押し出され、ジョイント部41内に残留しているインクと連通する(図4(b))。
【0107】
その後、シリンダ50がさらに押し下げられ、ピストン部51が通気路55の下端開口部よりも上方に移動し、外部の大気が通気路55を介して大気導入路6‘と連通する(第2の作動位置)。インクカートリッジ1の装着が完了すると、シリンダ50がさらに押し下げられる(図8)が、大気と大気導入路6‘と連通状態は維持されるとともに、インク供給口15とジョイント部41とがシール部材42を介して密着接続される。
【0108】
第1のインク室7がインクカートリッジ1の大気導入路6’を通じて大気と連通した状態になると、インク室7内の負圧発生部材13の作用により、記録ヘッドのノズル内のインクのメニスカスが正規状態に保持される。
【0109】
この第2の実施形態においても、前記第1の実施形態と同様に作用して記録ヘッドのノ
ズル内のインクが漏出しない効果を得ることができる。また、インク室に負荷した圧力を解除するタイミング等は、第1の実施形態と同様に各種設定することができる。
【0110】
また、図9に示すようにポンプ手段47を配置することも可能である。このポンプ手段57は、基本的には図6のポンプ手段47の上下を入れ替えた構成になっており、シリンダ部58は上端が開放され、下部に側壁59を貫通して連通孔60が設けられるとともに、側壁59には、ピストン61を迂回してポンプ室62の上側と下側とを連通する通気路63が形成されている。
【0111】
一端をピストン61に接続されたピストンロッド64の他端部には、アーム部材65が取り付けられ、その先端にはインクカートリッジ1の大気導入孔17に対応する連通孔66を有するアダプタ67が支持されており、シリンダ部50の連通孔60とアダプタ67の連通孔66とはフレキシブルチューブ68で連結されている。
【0112】
アダプタ67にインクカートリッジ1が接続され押し下げられると、ピストン部61が下がることによってポンプ室62の空気が圧縮され、圧縮空気がフレキシブルチューブ68を通じてインクカートリッジ1に供給される。さらにピストン部61が押し下げられると、ポンプ室62を介してインクカートリッジ1内が外部の大気と連通される。
【0113】
上記実施例のように機械的な手段で圧力の発生や大気との連通を図るものの他に、例えば、図8のアダプタ67をアーム部材67と切り離してヘッドホルダに昇降可能に設けておき、その位置をセンサーで検知することによってフレキシブルチューブ68から圧力を供給したり、フレキシブルチューブ68を通じて大気と連通したりすることもできる。
【0114】
なお、上記各実施形態では記録ヘッドを保持するヘッドホルダがインクカートリッジホルダを兼用したタイプであるが、ヘッドホルダとインクカートリッジとを切り離したタイプのものにも適応可能である。
【0115】
また、インクカートリッジを記録ヘッドの上方に配置するものだけでなく、記録ヘッドを搭載したキャリッジ外にインクカートリッジを配置して両者を可撓性のチューブによって接続するものにも適用することができる。この場合、インクカートリッジを記録ヘッドよりも下方に配置することで、通常のインク供給において記録ヘッドのインクに負圧を与えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態にかかるインクカートリッジの側断面図、(b)は(a)図における部分拡大図。
【図2】第1の実施形態にかかるインクカートリッジをカートリッジホルダに装着する前の状態を示すカートリッジホルダの側断面図。
【図3】インクカートリッジの部分拡大図であって、(a)はポンプ手段の第1の作動位置の状態、(b)はポンプ手段の第2の作動位置の状態を示している。
【図4】インクカートリッジをカートリッジホルダに装着する際の、インク供給口とジョイント部とのインクの状態を示している。
【図5】第2の実施形態にかかるインクジェットプリンタのヘッドホルダの側断面図であって、インクカートリッジを装着する前の状態を示している。
【図6】ヘッドホルダの部分拡大図であって、(a)はポンプ手段の第1の作動位置の状態を示し、(b)はポンプ手段の第2の作動位置の状態を示している。
【図7】インクカートリッジを装着した状態を示すヘッドホルダの側断面図。
【図8】インクカートリッジの装着を完了した状態におけるポンプ手段の状態を示すヘッドホルダの部分拡大図。
【図9】第3の実施形態にかかるインクジェットプリンタのポンプ手段についての説明図。
【符号の説明】
【0117】
1 インクカートリッジ
4 ポンプ手段
6 ポンプ室
7 第1のインク室
8 第2のインク室
15 インク供給口
18 大気連通孔
19 ピストン部
25 作動部
36 記録ヘッド
41 ジョイント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にインクを貯留するインク室、そのインクを外部へ供給するインク供給口、及び前記インク室へ大気を導入する大気連通孔を有するインクカートリッジと、
そのインクカートリッジが着脱可能に装着され、前記インク供給口が密着接続するジョイント部、及びそのジョイント部に前記インク供給口を接続させた前記インクカートリッジから前記ジョイント部を通してインクが供給される記録ヘッドを備えるインクカートリッジホルダと
を有するインクジェットプリンタにおいて、前記インクカートリッジを、前記インク供給口を前記ジョイント部に接続させて前記インクカートリッジホルダに装着するインクカートリッジの装着方法であって、
前記インクカートリッジの装着に際し、前記インク室内のインクに前記大気連通孔を通して負荷した圧力によって前記インク供給口内のインクを装着前の状態よりも外部へ押し出し、そのインクと前記ジョイント部内に残留しているインクとを連通させた状態で、前記インク供給口と前記ジョイント部との密着接続を完了し、前記圧力の負荷を解除し、前記インク室を前記大気連通孔を介して大気と連通することを特徴とするインクカートリッジの装着方法。
【請求項2】
前記インク室内のインクに負荷する圧力を、前記大気連通孔から圧縮空気を導入することにより発生させることを特徴とする請求項1に記載のインクカートリッジの装着方法。
【請求項3】
前記インク室内のインクに負荷する圧力を、前記インクカートリッジを、前記インク供給口と前記ジョイント部とが密着接続を完了する位置に向けて移動するのにともない動作するポンプ手段によって発生させることを特徴とする請求項1または2に記載のインクカートリッジの装着方法。
【請求項4】
前記インク供給口と前記ジョイント部との密着接続を完了した後、前記圧力の負荷を解除するとともに、前記インク室を前記大気連通孔を介して大気と連通することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインクカートリッジの装着方法。
【請求項5】
前記インク室内のインクは、前記装着前の状態で前記インク供給口の外部側開口端よりも前記インク室側の奥位置に形成したメニスカスにより、前記インク供給口から外部へ漏出しないように保持されており、前記負荷した圧力により、前記インク供給口の外部側開口端寄りに押し出されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクカートリッジの装着方法。
【請求項6】
前記インク供給口内から押し出したインクと前記ジョイント部内に残留しているインクとを連通させた状態で、前記インク室内のインクを介して前記記録ヘッド内のインクに負圧を与えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインクカートリッジの装着方法。
【請求項7】
内部にインクを貯留するインク室、そのインクを外部へ供給するインク供給口、及び前記インク室へ大気を導入する大気連通孔を有するインクカートリッジにおいて、
前記インクカートリッジに、前記大気連通孔と接続したポンプ手段を備え、
そのポンプ手段は、前記大気連通孔を外部に対して遮断しかつ前記大気連通孔を通して前記インク室内のインクに、前記インク供給口内のインク先端を装着前の状態よりも外部へ押し出す圧力を負荷する第1の作動位置と、前記大気連通孔を通して前記インク室内を大気と連通させる第2の作動位置とを有し、
前記インクカートリッジを、記録ヘッドに連通したジョイント部を有するインクカートリッジホルダに装着して、前記インク供給口を前記ジョイント部に密着接続する際、前記
インクカートリッジの移動にともない、前記ポンプ手段が前記第1の作動位置から前記第2の作動位置へ順次作動されることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項8】
前記ポンプ手段を作動させる作動部を有し、前記インクカートリッジの装着移動にともない、前記作動部は、前記インクカートリッジに対して相対移動し、前記ポンプ手段を前記第1の作動位置から前記第2の作動位置へ順次作動させることを特徴とする請求項7に記載のインクカートリッジ。
【請求項9】
前記ポンプ手段は、前記インクカートリッジの一側に沿って前記装着移動方向に長く形成されたポンプ室と、そのポンプ室内を前記装着移動方向に摺動可能なピストン部とを有し、前記第1の作動位置において前記ピストン部をポンプ室内に対し前記圧力を発生する方向に相対移動し、前記第2の作動位置において前記ピストン部を迂回して前記大気連通孔を大気に連通させる通気路を形成することを特徴とする請求項7または8に記載のインクカートリッジ。
【請求項10】
前記装着前の状態で、前記インク供給口は、その外部側開口端よりも前記インク室側の奥位置にインクのメニスカスを形成して、前記インク室内のインクを保持しており、
前記第1の作動位置においてそのインクを前記インク供給口の外部側開口端寄りに押し出すことを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のインクカートリッジ。
【請求項11】
前記インク供給口は、その外部側開口端よりも前記インク室側の奥位置にフィルタを有し、そのフィルタに前記インクのメニスカスを形成していることを特徴とする請求項10に記載のインクカートリッジ。
【請求項12】
前記インク室は、インクを収容する負圧発生部材を内部に有していることを特徴とする請求項7〜11に記載のインクカートリッジ。
【請求項13】
前記インク室は、インクを収容する負圧発生部材を内部に有する第1のインク室と、インクのみを収容する第2のインク室とからなることを特徴とする請求項7〜12に記載のインクカートリッジ。
【請求項14】
内部にインクを貯留するインク室、そのインクを外部へ供給するインク供給口、及び前記インク室へ大気を導入する大気連通孔を有するインクカートリッジと、
そのインクカートリッジが着脱可能に装着され、前記インク供給口が密着接続するジョイント部、及びそのジョイント部に前記インク供給口を接続させた前記インクカートリッジから前記ジョイント部を通してインクが供給される記録ヘッドを備えるインクカートリッジホルダと
を有するインクジェットプリンタにおいて、
前記インクカートリッジホルダに、前記インクカートリッジの前記大気連通孔と対向する位置にポンプ手段を備え、
そのポンプ手段は、前記インクカートリッジホルダに装着される過程の前記インクカートリッジに当接して、前記インク供給口が前記ジョイント部に密着接続する前、前記大気連通孔と接続しその大気連通孔を外部に対して遮断しかつ前記大気連通孔を通して前記インク室内のインクに、前記インク供給口内のインク先端を装着前の状態よりも外部へ押し出す圧力を負荷する第1の作動位置と、前記押し出されたインクと前記ジョイント部内に残留しているインクとを連通させた状態で、前記大気連通孔を通して前記インク室内を大気と連通させる第2の作動位置とに順次作動されることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項15】
前記ポンプ手段は、ポンプ室とそのポンプ室内設けられたピストン部とを相対摺動可能
に有し、前記第1の作動位置において前記ピストン部とポンプ室とを前記圧力を発生する方向に相対移動し、前記第2の作動位置において前記ピストン部を迂回して前記大気連通孔を大気に連通させる通気路を形成することを特徴とする請求項14に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項16】
前記ポンプ手段は、前記インクカートリッジに当接したとき前記大気連通孔と接続する接続口を有し、前記インクカートリッジの装着移動にともない、その接続口と前記大気連通孔との接続状態を維持しながら、前記ピストン部とポンプ室とを相対移動することを特徴とする請求項15に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項17】
前記装着前の状態で、前記インク供給口は、その外部側開口端よりも前記インク室側の奥位置にインクのメニスカスを形成して、前記インク室内のインクを保持しており、
前記第1の作動位置においてそのインクを前記インク供給口の外部側開口端寄りに押し出すことを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項18】
前記インクカートリッジのインク供給口は、その外部側開口端よりも前記インク室側の奥位置にフィルタを有し、そのフィルタに前記インクのメニスカスを形成していることを特徴とする請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項19】
前記インク供給口内から押し出したインクと前記ジョイント部内に残留しているインクとを連通させた状態で、前記インクカートリッジのインク室内のインクを介して前記記録ヘッド内のインクの負圧を与える負圧発生手段をさらに備えていることを特徴とする請求項14〜18に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項20】
前記インクカートリッジのインク室は、インクを収容する負圧発生部材を内部に有する第1のインク室と、インクのみを収容する第2のインク室とからなることを特徴とする請求項14〜19に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−276222(P2007−276222A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103797(P2006−103797)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】