説明

インクカートリッジ

【課題】インクカートリッジ内のインクに対する攪拌操作の有無や攪拌の程度に関する情報を間接的に取得する。
【解決手段】インク8を供給するためのインクカートリッジ1であって、インク8を貯留するインクパック7と、磁気振動子14と、磁気振動子14の移動経路に沿って配置された発電コイル13と、発電コイル13により生成された電力を蓄電する蓄電部6とを備え、磁気振動子14と発電コイル13のうち、少なくとも一方が、インクパック7に対して相対的に移動するように配置され、磁気振動子14と発電コイル13とが相対的に移動可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ等の記録装置のためのインクを供給するインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、その内部にインクを貯留し、プリンタ等の記録装置のためのインクを供給可能なインクカートリッジがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
インクカートリッジが貯留するインクは、その組成によってインクパックの内部で沈殿物が生じやすい場合がある。その沈殿物の沈澱分離状態を解消するためには、インクカートリッジ全体に対してある程度の加速度や振動を加え、インクパック内のインクを攪拌操作する必要がある。このように、インクカートリッジはその内部状態に応じた操作や制御が必要である。
【0004】
従来では、使用者がインクカートリッジを手で持って、そのインクカートリッジを闇雲に振っていた。その後、使用者がその振ったインクカートリッジを記録装置に装着して、印刷を開始していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−240131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の方法では、インクカートリッジは闇雲に振られたにすぎなかった。使用者は、そのインクカートリッジのインクでとりあえず印刷してみて、その印刷結果を見ていた。即ち、使用者は、その印刷結果を見て、インクの状態を確認していた。使用者は、インクの攪拌が十分でないにも関わらず、印刷を繰り返し、インクや被印刷対象を無駄にしていた。または、使用者がインクの攪拌操作を必要以上に繰り返し、印刷の作業全体としての効率が低下していた。このため、印刷前のインクカートリッジが客観的に撹拌操作されたか否かを確認することが難しく、また、装着されたインクカートリッジがすでに撹拌操作されたか否か、もしくは、それらの程度を確認できる構成も要望されていた。
【0007】
本発明の目的は、インクカートリッジ内のインクに対する攪拌操作の有無や攪拌の程度に関する情報を、間接的に取得できるインクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1の発明は、インクを供給するためのインクカートリッジであって、インクを貯留する貯留部と、永久磁石と、前記永久磁石の移動経路に沿って配置されたコイルと、前記コイルにより生成された電力を蓄電する蓄電部とを備え、前記永久磁石と前記コイルのうち、少なくとも一方が、前記貯留部に対して相対的に移動するように配置され、前記永久磁石と前記コイルとが相対的に移動可能に配置されたことを特徴とする。
【0009】
本願第1発明のインクカートリッジの貯留部にインクが貯留される。ここで、インクの組成によっては、貯留部内において沈殿物が生じやすい場合がある。その沈殿物の沈澱を解消するためには、インクに対してある程度の加速度や振動を加え、貯留部内のインクを攪拌操作する必要がある。
【0010】
本願第1発明においては、上記貯留部内のインクに対する加速度や振動が加えられると、上記永久磁石かコイルの少なくとも一方が貯留部に対して移動する。この永久磁石とコイルとの相対移動に伴う電磁誘導により、電力生成部が電力を生成し、その電力は蓄電部に蓄電される。
【0011】
これにより、蓄電部に電力が蓄積されているか否かが、当該インクに対し加速度や振動が加えられたか否かに対応することとなる。この結果、蓄電部の電力を検出することにより、インクカートリッジのインクに対する攪拌操作の有無や攪拌の程度に関する情報を、間接的に取得することができる。
【0012】
第2発明は、上記第1発明において、載置面に接触する当該インクカートリッジの外周部の接触位置を変更すると、前記永久磁石と前記コイルのうち、少なくとも一方が、前記貯留部に対して相対的に移動すると共に、前記永久磁石と前記コイルとが相対的に移動することを特徴とする。
【0013】
本願第2発明においては、使用者が外周部を載置面上に接触させた状態で撹拌操作を行うことにより、大型で比較的重量の大きいインクカートリッジ全体を持ち上げることなく容易な撹拌操作が可能となる。そして、使用者が外周部に対応する範囲でインクカートリッジの状態を変更し、インクを攪拌できるため、貯留部の沈殿を低減できる。
【0014】
第3発明は、上記第2発明において、前記永久磁石又は前記コイルの移動経路は、前記外周部の略周方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0015】
本願第3発明においては、永久磁石又はコイルの移動経路が外周部の略周方向に沿って配置されていることで、移動経路全体の傾きが、例えば右下がりの姿勢から水平状態を超えて左下がりの姿勢へ変化するような相対的な姿勢変化が可能となる。このため、永久磁石又はコイルがその自重により移動経路を移動することができ、コイルに電力を生成させることができる。
【0016】
第4発明は、上記第3発明において、前記永久磁石又は前記コイルの移動経路は、前記外周部全体の中央点近傍に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本願第4発明においては、永久磁石又はコイルの移動経路が外周部の中央点近傍で外周側面の略周方向に沿って配置されていることで、筐体をその中央点を中心とした狭い角度範囲で往復揺動させた場合でも、電力の生成に必要な移動経路全体の相対的な姿勢変化を確実に行うことができる。
【0018】
第5発明は、上記第2乃至第4発明のいずれかにおいて、外部にインクを排出する排出部が、前記外周部の揺動中心点の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0019】
本願第5発明においては、排出部が外周部の揺動中心点の近傍に配置されていることで、揺動に伴うインクの遠心力が排出部に付加されず、撹拌操作中における排出部からのインクの漏出を抑えることができる。
【0020】
第6発明は、上記第2乃至第5発明のいずれかにおいて、載置面上に載置した際の側面視における前記外周部の断面が円形又は略楕円形状に形成されていることを特徴とする。
【0021】
本願第6発明においては、外周部の断面が楕円形状に形成されていることで、インクカートリッジを揺動又は転動させた際に、インクに垂直方向に沿った加振力を加えることができるため、貯留部のインクの撹拌を促進できる。
【0022】
第7発明は、上記第2乃至第6発明のいずれかにおいて、載置面上に載置した際の側面視における前記外周部の断面が略多角形形状に形成されていることを特徴とする。
【0023】
本願第7発明においては、外周部の断面が多角形形状に形成されていることで、インクカートリッジを揺動又は転動させた際に、インクに垂直方向に沿った加振力を加えることができるため、貯留部のインクの撹拌を促進できる。
【0024】
第8発明は、上記第1発明において、最大幅よりも狭い部分、若しくは、貫通部を備えていることを特徴とする。
【0025】
本願第8発明においては、使用者が最大幅よりも狭い部分、若しくは、貫通部の周辺を把持したり、貫通部に紐を通したりしてインク加振できるため、貯留部で沈殿分離したインクの撹拌操作が容易に可能となる。
【0026】
第9発明は、上記第1乃至第8発明において、周囲よりも摩擦係数を高くした部分、若しくは、凹凸を設けていることを特徴とする。
【0027】
本願第9発明においては、摩擦係数を高くした部分、若しくは、凹凸を形成された部分を把持してインク加振できるため、貯留部で沈殿分離したインクの撹拌操作が容易に可能となる。
【0028】
第10発明は、上記第8又は第9発明において、前記外周面は直線上の外形を有し、インクを外部へ排出する排出部は、インクを排出する方向が前記外周面の直線状の方向と略直交するよう配置されていることを特徴とする。
【0029】
本願第10発明においては、排出部のインク排出方向が外周面の直線状の方向と略直交するよう配置されていることで、撹拌操作のためにインクカートリッジに外周面の直線状に沿った加振力が加えられてもインクの慣性力が排出部におけるインク排出方向に付加されず、撹拌操作中でも排出部からのインクの漏出を抑えることができる。
【0030】
第11発明は、上記第1乃至第10発明のいずれかにおいて、前記貯留部の内部において、前記貯留部に対して移動可能な撹拌部材を備えていることを特徴とする。
【0031】
本願第11発明においては、撹拌操作を行った際に、貯留部の内部に備えた撹拌部材が貯留部に対して移動するので、インクの撹拌を有効に促すことができる。
【0032】
第12発明は、上記第1乃至第11発明のいずれかにおいて、前記コイルまたは前記蓄電部に接続されて当該コイルが電力を生成した際に状態が変化する報知手段を備えていることを特徴とする。
【0033】
本願第12発明においては、使用者が報知手段の一例としてLEDなどで構成する発電表示手段の発光を視認することで、撹拌操作に伴う電力生成と蓄電が有効に行われているかを確認できる。
【0034】
第13発明は、上記第1乃至第12発明のいずれかにおいて、前記貯留部の内部に、顔料系のインクを収納していることを特徴とする。
【0035】
本願第13発明においては、撹拌操作を行った際に、貯留部の内部に収納されたインクが攪拌され、インクの顔料成分の沈降や凝集による印刷不良を低減することができる。
【0036】
第14発明は、上記第13発明において、前記顔料系のインクとは、酸化チタンを含有するインクであることを特徴とする。
【0037】
本願第14発明においては、撹拌操作を行った際に、貯留部の内部に収納された酸化チタンを含有するインクが攪拌され、インクの酸化チタンの沈降や凝集による印刷不良を低減することができる。
【0038】
第15発明は、上記第1乃至第14発明のいずれかにおいて、前記貯留部が不透明な筐体に覆われたことを特徴とする。
【0039】
本願第15発明においては、不透明な筐体に覆われた貯留部のインクに対する攪拌操作に関する情報を、間接的に取得することができる。
【0040】
第16発明は、上記第1乃至第15発明のいずれかにおいて、前記前記永久磁石の移動経路が非磁性体に覆われたことを特徴とする。
【0041】
本願第16発明においては、磁性体に覆われた移動経路を移動する永久磁石を用いる場合に比べ、非磁性体に覆われた移動経路を移動する永久磁石を用いているので、小さな外力に基づく発電により、インクに対する攪拌操作に関する情報を、間接的に取得することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、インクカートリッジ内のインクに対する攪拌操作の有無や攪拌の程度に関する情報を、間接的に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態のインクカートリッジの外観斜視図である。
【図2】プリンタとインクカートリッジの装着態様を表す外観斜視図である。
【図3】図1中の矢視IIIから見たインクカートリッジの側面図である。
【図4】図1中の矢視IV−IV断面で見たインクカートリッジの縦断面図である。
【図5】発電部、蓄電部、及び発光部の外観図である。
【図6】発電部、蓄電部、及び発光部を接続した電気的な回路構成である。
【図7】発電部の詳細な構成及び動作を説明する図である。
【図8】揺動による筐体の撹拌操作と発電部の発電動作を表す図である。
【図9】磁気振動子の移動経路が外周揺動面の径方向に配置されている場合の、揺動による筐体の撹拌操作と発電部の発電動作を表す図である。
【図10】スパウトが外周揺動面の近傍に配置されている場合の、揺動による筐体の撹拌操作を表す図である。
【図11】外周揺動面の横断面形状が略楕円形状に形成されている場合の側面図である。
【図12】外周揺動面の横断面形状が略多角形形状に形成されている場合の側面図である。
【図13】磁気振動子の移動経路が外周転動軸とねじれの関係で配置されている場合の側面図である。
【図14】磁気振動子の移動経路が外周転動軸と直交するよう配置されている場合の側面図である。
【図15】外周転動面の横断面形状が略楕円形状に形成されている場合の側面図である。
【図16】外周転動面の横断面形状が略多角形形状に形成されている場合の側面図である。
【図17】筐体の長手方向と直交する方向で直線加振する場合の縦断面図である。
【図18】筐体の長手方向と平行な方向で直線加振する場合の縦断面図である。
【図19】磁気振動子の移動経路が回動加振方向に沿って配置されている場合の縦断面図である。
【図20】磁気振動子の移動経路が回動加振方向と直交するよう配置されている場合の縦断面図である。
【図21】スパウトのインク排出方向が回動中心点へ向かうよう配置されている場合の縦断面図である。
【図22】発電部が棒形状に形成された回動加振把持部の内部に配置されている場合の縦断面図である。
【図23】インクパックの内部に撹拌部材を備えた場合の縦断面図である。
【図24】筐体に加振操作を必要とする遊具を備えた場合の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0045】
図1に示すように、本実施形態のインクカートリッジ1は、全体が半円柱形状の外郭をなす不透明な筐体2を有している。即ち、使用者は、インクの状態を不透明な筐体に阻まれ、インクの状態を目視できない。この筐体2は、この例では、長さ方向の寸法が630mm、幅方向の寸法(半円横断面の直径寸法)が110mm、厚み方向の寸法(半円横断面の半径寸法)が55mmに設定されている。インクカートリッジ1は、この筐体2の長手方向一方側の端面(図中の右手前側の端面)の近傍に、スパウト3、発光部4、発電部5、及び蓄電部6を備えている。
【0046】
図2に示すように、このインクカートリッジ1を装着するプリンタ100には、その側面(図中の手前側の側面)に、インクカートリッジ1の筐体2の半円形断面に対応した半円形状の挿入口101が形成されている。図示する例では、YMCKのそれぞれ1つずつと、W用の4つを合わせた8つの挿入口101が設けられており、それぞれ対応する色のインクを貯留したインクカートリッジ1を長手方向に沿って挿入口101に挿入できる。この際、インクカートリッジ1は、上記図1で示したスパウト3を備える側の端面から挿入され、装着完了時には当該スパウト3を介して内部に貯留した液体のインクをプリンタ100へ供給可能となる。
【0047】
インクカートリッジ1を上記図1中の矢視IIIから見た図3の側面図、及び上記図1中の矢視IV−IV断面で見た図4の縦断面図において、当該インクカートリッジ1は、上述した筐体2、スパウト3、発光部4、発電部5、蓄電部6に加え、内部にインクパック7を備えている。筐体2は、内部が中空構造となっており、その内部に上記の各部を収納している。
【0048】
スパウト3は、円管部材3aの内周側に例えばゴムなどの密閉性の高い弾性体3bが嵌入された構成であり、円管部材3aの一端面が筐体2の端面に表出するよう設けられている。また、本実施形態の例では、スパウト3は筐体2の半円端面における中心点近傍に配置されている。
【0049】
発光部4は、この例ではLEDで構成されており、その発光部分が筐体2の側方平面に表出している。
【0050】
発電部5は、後に詳述するように、所定の移動動作を行うことにより電力を発電する。この例ではその全体がおよそ単3電池程度の大きさの円柱形状に形成されている。
【0051】
蓄電部6は、上記発電部5が発電した電力を蓄電するとともに、この蓄電電力を利用して上記発光部4の発光や所定の制御を行う(詳しくは上記発電部5とともに後に説明する)。
【0052】
インクパック7は、例えば樹脂からなる袋体であり、その内部にはインク8が貯留されている。筐体2の内部空間のほとんどはこのインクパック7が占めており、上記スパウト3の内側の端部がインクパック7の一方側の端部に接続されて内部のインク8に接触している。上記図2に示したように当該インクカートリッジ1がプリンタ100に装着される際には、プリンタ100内に設けられた中空の連通針(特に図示せず)がスパウト3の弾性体3bを貫通し、インクパック7の内部からインク8が供給可能となる。
【0053】
上記の発電部5、蓄電部6、及び発光部4は、図5に示すように、互いに通電コード11で接続されている。発電部5は、磁性シールドケース12と、発電コイル13と、磁気振動子14とを有している。蓄電部6は、筐体ケース15と、整流回路16と、コンデンサ17と、制御回路18とを有している。整流回路16、コンデンサ17、及び制御回路18は一つの基板19に一体に固定されている。
【0054】
これら発電部5、蓄電部6、及び発光部4を接続した電気的な回路構成は図6に示すようになり、発電部5が発電した交流電力(後述)を蓄電部6の整流回路16が整流し、コンデンサ17に蓄電する。制御回路18は、このコンデンサ17に蓄電された電力を利用して起動し、発光部4の発光と所定の制御を行う。
【0055】
なお、スパウト3が各請求項記載の排出部に相当し、発光部4が各請求項記載の報知手段に相当し、インクパック7が各請求項記載の貯留部に相当し、磁気振動子14が各請求項記載の永久磁石に相当し、発電コイル13が各請求項記載のコイルに相当し、蓄電部6全体が各請求項記載の蓄電部6に相当する。
【0056】
発電部5の詳細な構成及び動作を、図7を参照しながら説明する。この図7において、磁性シールドケース12は、長さが同じで径が異なる2つの円筒部材12a,12bを同軸的に固定した構成であり、それらの両端を一致させて閉じている。この磁性シールドケース12の内筒12aと外筒12bの間であって、長手方向のほぼ中央位置に、発電コイル13が巻回されている。内筒12aの内周側には、ほぼ同じ断面形状の磁気振動子14が長手方向に自由に摺動可能に遊嵌している。つまり、磁性シールドケース12の長手方向が磁気振動子14の移動方向となり、この移動方向に沿った内筒12a内の空間が各請求項記載の永久磁石の移動経路に相当する。磁気振動子14は全体が永久磁石からなり、図示する例では、磁力線を内筒12aの内部における移動可能方向に沿って放出している。この磁力線の放出方向は、磁気振動子14が内筒12aの内部で長手方向に往復移動する場合でも、内筒12aの長手方向に沿うよう維持される。外筒12bは磁性体材料からなり、磁気振動子14の強い磁力が外部に漏出しないようシールドしている。
【0057】
なお、低い磁力の磁気振動子14を用いたことにより、または、磁気振動子14の強力な磁力のままであるが、その磁気振動子14の配置を工夫することにより、或いは、磁気シールドケース12以外に磁気を遮蔽するシールドを設けることにより、磁気振動子14の周辺の機器などに大きな磁気的な影響を与えない構成であってもよい。そのような構成であれば、磁気振動子14の移動経路を覆う磁気シールドケース12を非磁性体材料(単なる樹脂)から構成してもよい。磁気シールドケース12が磁性体材料である構成に比べ、磁気シールドケース12が非磁性体材料であれば、磁気振動子14が磁気シールドケース12を吸引することなく、磁気振動子14が小さな外力で移動し、電力が生じる。即ち、磁気シールドケース12が磁性体材料である構成に比べ、インクに対する攪拌を省力で行うことができる。省力で発電が行えるということは、インクカートリッジ1に与えられる外力(例えば、振動)が小さくて済む。従って、磁気シールドケース12が磁性体材料である構成に比べ、筐体2やインクパック7の強度が低くてもよい。磁気シールドケース12が磁性体材料である構成に比べ、強くインクカートリッジ1を振る必要も無いので、インクパック7自体やインクバック7の筐体2に対する固定部分の破損が軽減されている。
【0058】
このように構成された発電部5の発電原理について説明する。発電部5全体が外部から力を受けてその位置や姿勢が変化したことで、磁気振動子14が内筒12aの内部を移動する際の移動速度をVとする。また、磁気振動子14自体が有する磁束密度をBとする。この場合、発電コイル13内の自由電子が電磁相互作用により受けるローレンツ力Fは、
F=qVB (但し、qは電荷)
となる。この式の両辺を電荷qで割ると、当該電荷qが出力する電場の力eが求められる。
e=VB
このeを発電コイル13のコイル経路長で積分した値が、発電電圧Eとなる。



したがって、発電コイル13全体の抵抗値をRとした場合、発電部5の発電電力Pは、



となる。
【0059】
なお、上述した発電原理の解析手法は一例であり、他の手法でも解析可能である。そして、この発電部5の構成で磁気振動子14が内筒12a内部を往復動した場合には、交流電力が発電される。磁気振動子14の磁束密度Bが十分大きい場合には、発電コイル13を一度通過するだけでも十分に発光部4のLEDを点灯可能な電力を発電できる。
【0060】
一方、本実施形態のインクカートリッジ1が貯留するインク8は、その色ごとに組成が異なっており、その組成によっては含まれる複数の含有物間の比重の違いにより沈殿分離しやすいものがある。特に白インクの場合は、それに含まれる酸化チタンの比重が特に重いため、インクカートリッジ1を比較的短期間静置するだけでも容易に沈殿分離が生じやすい。このように含有物が沈殿分離した状態のインク8をそのままプリンタ100に供給すると印刷不良を起こしてしまうため、インクカートリッジ1に対してはプリンタ100に装着する前に手作業で撹拌操作を行う必要がある。
【0061】
本実施形態においては、この撹拌操作時にインクカートリッジ1に加えられる加速度や振動を利用して上記発電部5における人力発電も同時に行わせ、これにより生成された発電電力を蓄電部6に蓄電させる。制御回路18は、蓄電部6における電力の蓄電を検出することで、インクカートリッジ1の撹拌操作に関する情報を間接的に取得できる。そして制御回路部18は、特に図示しないコネクタなどを介して、プリンタ100側の制御部に上記撹拌操作に関する情報を出力するなどの適宜の処置が可能となる。
【0062】
以下においては、インクカートリッジ1の撹拌操作とそれに伴う発電部5の発電動作について説明する。
【0063】
まず、上記図1で説明したように、本実施形態のインクカートリッジ1は大型で比較的重量が大きいため、筐体2には使用者による撹拌操作を容易にするための補助構成を備える必要がある。また、発電部5は、その補助構成により行われる撹拌動作に対応して、適切に発電できるよう配置される必要がある。本実施形態のインクカートリッジ1の例では、上記図3に対応する図8に示すように、半円柱形状の筐体2の外周曲面を外周揺動面21とし、この外周揺動面21を載置面22上に接触させてインクカートリッジ1全体を揺動させることで撹拌操作及び発電操作を同時に行わせる。なお、この外周揺動面21が、各請求項記載の外周部に相当する。
【0064】
まず、図8(a)において、本実施形態のインクカートリッジ1の筐体2は半円柱形状であるため、外周揺動面21は横断面で見て揺動中心点O周りの180°の内周角に対応した円弧範囲に形成されている。これにより、当該インクカートリッジ1は最大180°の角度範囲での揺動が可能である。そしてこの例では、発電部5が、外周揺動面21全体の中央点近傍、つまり揺動角度範囲における中心角度位置で、その磁気振動子14の移動経路の方向、つまり磁性シールドケース12の長手方向が外周揺動面21の周方向に沿うよう配置されている。これにより、図示するインクカートリッジ1の中立姿勢では、磁気振動子14の移動経路が略水平の状態となる。
【0065】
このような構成のインクカートリッジ1に対して、図8(b)に示すように側方平面の一端側(図中の左側)だけを押下することで、インクカートリッジ1全体をその一端側に傾けるよう揺動できる。その後、図8(c)に示すように側方平面の他端側(図中の右側)だけを押下することで、インクカートリッジ1全体をその他端側に傾けるよう揺動できる。この図8(b)と図8(c)の状態を繰り返すことにより、インクカートリッジ1を往復揺動させて内部のインク8を撹拌できる。
【0066】
また図8(b)の状態では、発電部5における磁気振動子14の移動経路が上記一端側へ向けて下がる姿勢に変化する。この際には、磁気振動子14がその自重により一端側へ移動し、発電コイル13はその磁気振動子14の移動に伴って電力を発電する。またその後の図8(c)の状態では、発電部5における磁気振動子14の移動経路が上記一端側から水平状態を超えて上記他端側へ向けて下がるよう姿勢変化する。この際にも、磁気振動子14がその自重により一端側から他端側へ移動し、発電コイル13はその磁気振動子14の移動に伴って電力を発電する。制御回路18は、このように発電コイル13の発電時に、コンデンサ17に蓄電された電力の一部を利用して発光部4を発光させる。つまり、インクカートリッジ1が適切に撹拌操作されている間だけ発光部4が発光する。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のインクカートリッジ1においては、インクパック7のインク8に対する加速度や振動が加えられると、磁気振動子14がインクパック7に対して移動する。これによる磁気振動子14と発電コイル13との相対移動に伴う電磁誘導により、発電部5が電力を生成し、その電力は蓄電部6に蓄電される。
【0068】
これにより、蓄電部6に電力が蓄積されているか否かが、当該インク8に対し加速度や振動が加えられたか否かに対応することとなる。この結果、蓄電部6の電力を検出することにより、インクカートリッジ1のインク8に対する攪拌操作の有無や攪拌の程度に関する情報を、間接的に取得することができる。
【0069】
なお、上記実施形態の発電部5においては、永久磁石からなる磁気振動子14がインクパック7に対して相対的に移動するよう配置され、磁気振動子14と発電コイル13とが相対的に移動可能に配置された構成としているが、本発明はこれに限られない。例えば、特に図示しないが、発電コイル13がインクパック7に対して相対的に移動するよう配置され、磁気振動子14と発電コイル13とが相対的に移動可能に配置された構成としても発電部5は発電可能である。
【0070】
なお、インクカートリッジ1の蓄電部は、コンデンサ17の代わりに二次電池などの蓄電機能を有する部材を備えてもよい。
【0071】
また、本実施形態では特に、使用者が外周揺動面21を載置面22上に接触させた状態で撹拌操作を行うことにより、大型で比較的重量の大きいインクカートリッジ1全体を持ち上げることなく容易な撹拌操作が可能となる。そして、使用者が外周揺動面21に対応する範囲でインクカートリッジ1の状態を変更し、インク8を攪拌できるため、インクパック7の沈殿を低減できる。
【0072】
また、本実施形態では特に、磁気振動子14の移動経路が外周揺動面21の略周方向に沿って配置されていることで、磁気振動子14の移動経路全体の傾きが、例えば右下がりの姿勢から水平状態を超えて左下がりの姿勢へ変化するような相対的な姿勢変化が可能となる。このため、磁気振動子14がその自重により移動経路を移動することができ、発電コイル13に電力を生成させることができる。
【0073】
また、本実施形態では特に、磁気振動子14の移動経路が外周揺動面21の中央点近傍で外周側面の略周方向に沿って配置されていることで、筐体2をその中央点を中心とした狭い角度範囲で往復揺動させた場合でも、電力の生成に必要な移動経路全体の相対的な姿勢変化を確実に行うことができる。なお、これとは逆に、磁気振動子14の移動経路を外周揺動面21の中央点から離して配置した場合には、筐体2の中立状態からその配置位置に対応する揺動角で大きく揺動させなければ発電は行われない。これを利用して、使用者に発光部4の発光を確認できるまで大きく揺動させるよう促すようにしてもよい。
【0074】
また、本実施形態では特に、スパウト3が外周揺動面21の揺動中心点Oの近傍に配置されていることで、揺動に伴うインク8の遠心力がスパウト3に付加されず、撹拌操作中におけるスパウト3からのインクの漏出を抑えることができる。
【0075】
また、本実施形態では特に、使用者が発光部4の発光を視認することで、撹拌操作に伴う電力生成と蓄電が有効に行われているかを確認できる。なお、発光部4の光学的に報知する構成としては、上述したLEDに限られず、他にも通常のランプ、液晶表示装置、又は電子ペーパー等で構成してもよい。また、コンデンサ17に十分な電力量が蓄電されている間、発光部4を点灯させるようにしてもよい。
【0076】
なお、筐体2内における発電部5の配置は上記実施形態における配置に限られない。例えば、上記図8に対応する図9に示すように、磁気振動子14の移動経路が外周揺動面21の径方向に配置されていてもよい。なお、この場合には、外周揺動面21が90°より大きい内周角に対応して形成され、磁気振動子14の移動経路が外周揺動面21の一方の端点から90°より大きい内周角(図示する例では150°)で離間する位置に配置される必要がある。これにより、磁気振動子14の移動経路を90°より大きい角度範囲でその姿勢を変化させることができ、その角度範囲内で電力の生成に必要な移動経路全体の相対的な姿勢変化を確実に行うことができる。
【0077】
また、スパウト3の配置は揺動中心点O近傍に限られない。例えば、上記図8に対応する図10に示すように、スパウト3が外周揺動面21の近傍に配置されていてもよい。使用者が筐体2を揺動させる際には、外周揺動面21以外の側方平面を押して揺動させる。したがって、外周揺動面21の近傍に配置されたスパウト3が側方平面を押す使用者の手から離間しているため、使用者の手がスパウト3から漏出したインク8に触れて汚れるのを防ぐことができる。
【0078】
また、外周揺動面21の横断面形状は、半径が等しい半円形状に限られない。例えば、図11に示すような略楕円形状や、図12に示すような略多角形形状に形成されていてもよい。これらの場合には、インクカートリッジ1C,1Dを揺動させた際に、インク8に垂直方向に沿った加振力を加えることができるため、インクパック7内のインク8の撹拌をさらに促進できる。また、外周揺動面21の横断面形状は、揺動が可能な程度の自由曲線形状でもよい。
【0079】
また、特に図示しないが、発電部5、蓄電部6、及び発光部4をまとめて別体のモジュールとして構成し、インクカートリッジ1の筐体2に着脱可能に構成してもよい。
【0080】
また、インクカートリッジ1は、インクパック7を備えずに筐体2全体の密閉性を高めてその内部にインク8を貯留させる構成としてもよい。この場合には、筐体2自体が、各請求項記載の貯留部にも相当する。
【0081】
また、発電部5における振動発電は上述した電磁誘導方式に限定されるものではなく、ここでは特に詳細な説明を省略するが、他にもピエゾ素子などを用いた圧電方式や、静電方式などによって振動発電を行ってもよい。
【0082】
そして本実施形態のインクカートリッジ1は、インクパック7の内部に、顔料系のインク8を収納していることで、撹拌操作を行った際に、インクパック7の内部に収納されたインク8が攪拌され、インク8の顔料成分の沈降や凝集による印刷不良を低減することができる。また、上記顔料系のインク8が、酸化チタンを含有するインク8であることで、撹拌操作を行った際に、インクパック7の内部に収納された酸化チタンを含有するインク8が攪拌され、インク8の酸化チタンの沈降や凝集による印刷不良を低減することができる。なお、このような酸化チタンを含有する白インクに限られず、他のメタリックインクなど沈殿の可能性がある他の色のインクに適用しても有用である。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0084】
(1)筐体の転動により撹拌操作する場合
上記実施形態では、筐体2の外周側面の一部を外周揺動面21として載置面に接触させて揺動により撹拌操作を行ったが、本発明はこれに限られない。例えば、筐体2の外周側面全体を外周転動面として載置面に接触させ、当該筐体2全体を転動させることにより撹拌操作させてもよい。
【0085】
例えば、上記図8(a)に対応する図13及び図14に示すように、本変形例のインクカートリッジ1E,1Fの筐体2E,2Fはその全体が円柱形状に形成されており、その外周曲面全体が外周転動面23となる。つまり、上記実施形態における外周揺動面21は限定された内周角に対応する外周側面であったことに対し、この外周転動面23は全周に渡って備えられる。すなわち転動とは、上記実施形態での揺動に対して角度範囲を限定せずに転がすことができる動作である。このように外周転動面23を載置面22上に接触させ、当該筐体2E,2F全体を転動させることで、撹拌操作及び発電操作を同時に行わせる。これにより、大型で比較的重量の大きいインクカートリッジ1E,1F全体を持ち上げることなく容易な撹拌操作が可能となる。そして、使用者がインクカートリッジ1E,1F全体を任意の角度で転動できるため、インクパック7内で沈殿分離したインク8の撹拌操作が可能となる。
【0086】
ここで、円柱形状の筐体2E,2Fの中心軸がすなわち転動中心軸Lとなるが、磁気振動子14の移動経路がこの転動中心軸Lと平行に配置された場合には、筐体2E,2Fをどのように転動させても、磁気振動子14の移動経路全体の相対的な姿勢を電力の生成に必要な程度に変化させることができない。そのため、例えば図13に示すように磁気振動子14の移動経路を外周転動面23の略周方向に沿って配置して転動中心軸Lとねじれの配置関係とするか、例えば図14に示すように磁気振動子14の移動経路を外周転動面23の略径方向に沿って配置して転動中心軸Lと直交する配置関係とすればよい。いずれの場合でも、インクカートリッジ1E,1Fを360°以上の任意の角度範囲で転動できるため、電力の生成に必要な移動経路全体の相対的な姿勢変化を確実に行うことができる。つまり、磁気振動子14の自重移動による発電が可能となる。
【0087】
また、図示するように、スパウト3が外周転動面23の転動中心軸Lの近傍に配置されている場合には、転動に伴うインク8の遠心力がスパウト3に付加されず、撹拌操作中におけるスパウト3からのインク8の漏出を抑えることができる。
【0088】
また、本変形例においても、外周転動面23の横断面形状は、半径が等しい円形状に限られない。例えば、図15に示すような略楕円形状や、図16に示すような略多角形形状に形成されていてもよい。これらの場合には、筐体2G,2Hを揺動させた際に、インクカートリッジ1G,1H全体に垂直方向に沿った加振力を加えることができるため、インクパック7内のインク8の撹拌をさらに促進できる。また、外周転動面23の横断面形状は、転動が可能な程度の自由曲線形状でもよい。
【0089】
(2)筐体の直線加振により撹拌操作する場合
上記実施形態及び上記第1変形例では、筐体2を載置面上に載置させて行う載置撹拌の操作を前提としていたが、本発明はこれに限られない。例えば、使用者が筐体2を手に持って空中で行う空中撹拌の操作を前提としてもよい。
【0090】
例えば、上記図4に対応する図17及び図18に示すように、本変形例のインクカートリッジ1I,1Jの筐体2I,2Jは、その長手方向の両端部のそれぞれに使用者が確実に把持可能なハンドル形状の直線加振把持部24を備えている。使用者は両手でこれらの直線加振把持部24を把持してインクカートリッジ1I,1J全体を持ち上げ、空中で所定の略直線方向に往復させて加振できる。図17に示す例では、筐体2Iの長手方向と直交する方向(図中の上下方向)を直線加振方向とし、図18に示す例では、筐体2Jの長手方向(図中の左右方向)を直線加振方向としている。本変形例は、このようにインクカートリッジ1I,1J全体を略直線的に加振できるため、インクパック7内で沈殿分離したインク8の撹拌操作が可能となる。
【0091】
ここで、本変形例において発電部5は、磁気振動子14の移動経路の姿勢変化による磁気振動子14の自重移動で発電させるのではなく、発電部5自体の位置移動による磁気振動子14の慣性移動で発電させることになる。そのため、磁気振動子14の移動経路が筐体2の直線加振方向と直交するよう配置された場合には、筐体2を直線加振しても磁気振動子14を慣性移動させて発電させることができない。そこで、図17及び図18に示すように、磁気振動子14の移動経路を筐体2I,2Jの直線加振方向と略一致させるよう配置するとよい。これにより、撹拌操作のために筐体2I,2Jに加えられる加振力がそのまま移動経路に対しても磁気振動子14を移動させる加振力として加えられる。このため、磁気振動子14がその慣性により移動経路を移動することができ、発電コイル13に電力を生成させることができる。
【0092】
しかし、両図の例ではいずれも直線加振把持部24が同じ位置に設けられていながらそれぞれ異なる方向で直線加振が可能であり、すなわち空中撹拌の場合には直線加振把持部24の設置位置にかかわらず使用者が任意の方向で直線加振が可能となる。そのため、予め使用者に対しては、磁気振動子14の移動経路に対応した直線加振方向、つまり撹拌と同時に発電可能な方向を指定する必要がある。または、直交3軸方向にそれぞれ対応して3つの発電部5を設けてもよい。
【0093】
また、特に図17に示すように、スパウト3がそのインク8を排出する方向(図中の左右方向)を筐体2Iの直線加振方向(図中の上下方向;この方向と平行な筐体2の縁部の方向が各請求項記載の外周面の直線状の方向に相当)と直交するよう配置されている場合には、撹拌操作のために筐体2Iに当該直線加振方向に沿った加振力が加えられてもインク8の慣性力がスパウト3におけるインク排出方向に付加されず、撹拌操作中でもスパウト3からのインク8の漏出を抑えることができる。
【0094】
なお、図17及び図18に示した例では、筐体2に直線加振把持部24を明確な部材として設けた構成を示したが、これに限られない。他にも、特に図示しないが、使用者が所定の直線加振方向に沿った直線加振を容易に行えるよう把持可能な凹凸部などを筐体2自体の外周表面に形成した構成としてもよく、このような構成部分もまた各請求項記載の最大幅よりも狭い部分に相当する。また、特に図示しないが、筐体2の所定位置に貫通孔を形成し、この貫通孔に紐などを通して把持することで筐体2を加振する構成としてもよく、このような貫通孔が各請求項記載の貫通部に相当する。また、筐体2の所定箇所にシボ加工したり、ゴムを貼ったりするなどにより周囲よりも摩擦係数を高くした部分、若しくは、凹凸を設けてもよく、この部分を把持してインク加振できるため、インクパック7で沈殿分離したインク8の撹拌操作が容易に可能となる。
【0095】
(3)筐体の回動により撹拌操作する場合
上記第2変形例では、空中撹拌の一例として、筐体2全体を所定の直線加振方向に沿って往復加振することにより撹拌操作を行ったが、本発明はこれに限られない。他にも、筐体2全体を所定の回動中心点を中心に回動させて往復加振することにより撹拌操作させてもよい。
【0096】
例えば、上記図17及び図18に対応する図19に示すように、本変形例のインクカートリッジ1Kの筐体2Kは、その長手方向の一方側の端部に使用者が確実に把持可能なハンドル形状の回動加振把持部25を備えている。使用者はこの回動加振把持部25を把持してインクカートリッジ1K全体を持ち上げ、空中で所定の回動中心点Aを中心に往復回動させて加振できる。図19に示す例では、筐体2Kの外部で回動加振把持部25を備えた側の延長線上に回動中心点Aを設定し、その回動中心点Aの側方(図中の左側)で筐体2Kを往復回動させている。本変形例は、このように回動加振できるため、インクパック7内で沈殿分離したインク8の撹拌操作が可能となる。
【0097】
なお、回動中心点Aは、筐体2Kの外部に位置するよう設定する以外にも、筐体2Kの内部に位置するよう設定してもよい。筐体2Kの内部に位置するよう設定した場合には、インクカートリッジ1K全体を揺動させる撹拌動作となる(特に図示せず)。このように、回動中心点Aの位置と、当該回動中心点Aと筐体2Kを回動させる相対的な位置関係は、回動加振把持部25の設置位置に応じて使用者が任意に設定できる。
【0098】
そして本変形例では、図19に示すように磁気振動子14の移動経路が筐体2Kの回動加振方向に沿って配置されている。これにより、撹拌操作のために筐体2Kに加えられる加振力がそのまま移動経路に対しても磁気振動子14を移動させる加振力として加えられる。このため、磁気振動子14がその慣性により移動経路を移動することができ、発電コイル13に電力を生成させることができる。また、筐体2Kが鉛直下方を通過するよう回動加振する場合には、当該筐体2Kをその鉛直下方を中心として狭い角度範囲で回動させた場合でも、電力の生成に必要な移動経路全体の相対的な姿勢変化を確実に行うことができる(特に図示せず)。つまり、磁気振動子14の自重移動による発電が可能となる。
【0099】
また本変形例では、スパウト3は、インク8を排出する方向が回動中心点Aと逆へ向かうよう配置されている。これにより、スパウト3からインク8が漏出しても遠心力で外周側へ飛散するため、回動中心点A付近に位置する使用者の手にインク8が触れて汚れるのを防ぐことができる。
【0100】
なお、本変形例は、磁気振動子14の移動経路を筐体2の回動加振方向に沿って配置することに限られない。他にも、図20に示すように、磁気振動子14の移動経路を筐体2Lの回動加振方向と略直交する方向に沿って配置してもよい。この場合には、筐体2Lが水平側方を通過するよう回動加振させる必要がある。これにより、当該筐体2Lをその水平側方と中心として狭い角度範囲で回動させた場合でも、電力の生成に必要な移動経路全体の相対的な姿勢変化を確実に行うことができる。つまり、磁気振動子14の自重移動による発電が可能となる。
【0101】
また、本変形例は、図21に示すように、インク8を排出する方向が回動中心点Aへ向かうようスパウト3を配置してもよい。この場合には、撹拌操作のために筐体2Mに回動加振力が加えられても、インク8の慣性力及び遠心力がスパウト3におけるインク排出方向に付加されず、撹拌操作中でもスパウト3からのインク8の漏出を抑えることができる。
【0102】
また、本変形例は、回動加振把持部25が上記図19に示したハンドル形状に限られない。他にも、図22に示すように、筐体2Nから突出する配置の棒形状で回動加振把持部25Nを構成してもよく、さらにこの棒形状の回動加振把持部25Nの内部に発電部5を設けてもよい。この場合、磁気振動子14の移動経路は、棒形状の回動加振把持部25Nの長手方向に沿った配置、つまり筐体2Nの回動加振方向と略直交する方向に沿って配置することになるため、上記図20の場合と同様に、筐体2Nが水平側方を通過するよう回動加振させる必要がある。これにより、当該筐体2Nをその水平側方と中心として狭い角度範囲で回動させた場合でも、電力の生成に必要な移動経路全体の相対的な姿勢変化を確実に行うことができる。つまり、磁気振動子14の自重移動による発電が可能となる。
【0103】
(4)その他
また、本発明のインクカートリッジ1は、インクパック7の内部において、インク8の自然な流れを阻害する撹拌部材を備えてもよい。例えば、上記図4に対応する図23(a)に示すように、球状に形成された撹拌球26をインクパック7の内部に自由移動可能に備えてもよい。または、図23(b)に示すように、インクパック7の内部で回転可能に設けられた撹拌板27を備えてもよい。これら撹拌部材に相当する撹拌球26及び撹拌板27は、筐体2P,2Q全体に対して撹拌操作を行った際にインクパック7に対して移動するので、インク8の撹拌を有効に促すことができる。
【0104】
または、図23(c)に示すように、筐体2Rの内周側面に略錐状の突起形状部28を形成し、インクパック7も当該突起形状部28に合わせた形状に形成されていてもよい。この撹拌板27は、筐体2R全体に対して撹拌操作を行った際にインク8の自然な流れを阻害するため、これによっても沈殿物の撹拌を有効に促すことができる。
【0105】
また、図24に示すように、筐体2Sの外表面に、輪投げゲームなどのような加振操作を必要とする遊具29を備えてもよい。これにより、使用者が興味を持って筐体2Sに対する加振操作を繰り返し行うことができ、有効な撹拌操作及び人力発電を促すことができる。上述した筐体2は不透明であるため、使用者はインクの状態を見ることができない。もし、筐体2の少なくとも一部を透明としたり、インクパック7の一部を直接見ることができるような貫通部を筐体2に設けても良い。筐体2の少なくとも一部が透明であったり、筐体2に貫通部が設けられたインクカートリッジ1であっても、インクの種類によっては攪拌がされたか否かを、誰でもが目で見ただけで判断することが困難な場合が想定される。そのため、本件発明のような攪拌に関する客観的な情報を取得することは有用である。
【0106】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0107】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0108】
1,1A〜1S インクカートリッジ
2,2A〜2S 筐体
3 スパウト(排出部)
4 発光部(報知手段)
5 発電部
6 蓄電部
7 インクパック(貯留部)
8 インク
12 磁性シールドケース
13 発電コイル(コイル)
14 磁気振動子(永久磁石)
15 筐体ケース
16 整流回路
17 コンデンサ
18 制御回路
19 基板
21 外周揺動面
22 載置面
23 外周転動面
24 直線加振把持部
25 回動加振把持部
26 撹拌球(撹拌部材)
27 撹拌板(撹拌部材)
28 突起形状部
100 プリンタ
O 揺動中心点
L 転動中心軸
A 回動中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを供給するためのインクカートリッジであって、
インクを貯留する貯留部と、
永久磁石と、
前記永久磁石の移動経路に沿って配置されたコイルと、
前記コイルにより生成された電力を蓄電する蓄電部とを備え、
前記永久磁石と前記コイルのうち、少なくとも一方が、前記貯留部に対して相対的に移動するように配置され、前記永久磁石と前記コイルとが相対的に移動可能に配置されたことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
載置面に接触する当該インクカートリッジの外周部の接触位置を変更すると、前記永久磁石と前記コイルのうち、少なくとも一方が、前記貯留部に対して相対的に移動すると共に、前記永久磁石と前記コイルとが相対的に移動することを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記永久磁石又は前記コイルの移動経路は、
前記外周部の略周方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項2記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記永久磁石又は前記コイルの移動経路は、
前記外周部全体の中央点近傍に配置されていることを特徴とする請求項3記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
外部にインクを排出する排出部が、
前記外周部の揺動中心点の近傍に配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項6】
載置面上に載置した際の側面視における前記外周部の断面が円形又は略楕円形状に形成されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項7】
載置面上に載置した際の側面視における前記外周部の断面が略多角形形状に形成されていることを特徴とする請求項2乃至6いずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項8】
最大幅よりも狭い部分、若しくは、貫通部を備えていることを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項9】
周囲よりも摩擦係数を高くした部分、若しくは、凹凸を設けていることを特徴とする請求項1または8記載のインクカートリッジ。
【請求項10】
前記外周面は直線上の外形を有し、
インクを外部へ排出する排出部は、
インクを排出する方向が前記外周面の直線状の方向と略直交するよう配置されていることを特徴とする請求項8又は9記載のインクカートリッジ。
【請求項11】
前記貯留部の内部において、前記貯留部に対して移動可能な撹拌部材を備えていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項12】
前記コイルまたは前記蓄電部に接続されて当該コイルが電力を生成した際に状態が変化する報知手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項13】
前記貯留部の内部に、顔料系のインクを収納していることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項14】
前記顔料系のインクとは、酸化チタンを含有するインクであることを特徴とする請求項13に記載のインクカートリッジ。
【請求項15】
前記貯留部が不透明な筐体に覆われたことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。
【請求項16】
前記永久磁石の移動経路が非磁性体に覆われたことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のインクカートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2012−139852(P2012−139852A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292750(P2010−292750)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】