説明

インクジェットインク用添加剤、及びそれを用いたインクジェットインク用顔料分散液、並びにインクジェットインク組成物

【課題】印字安定性、印字濃度、光沢性が良好であるのは勿論のこと、インクの粘性を低下させることができ、耐擦性、耐マーカー性に優れたインクジェットインクを調製し得る、インクジェットインク用添加剤を提供する。
【解決手段】(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを構成単位として含み、その平均分岐数が2.3以上である分岐状重合体のスルホン化物及び/又はその塩を必須成分として含有するインクジェットインク用添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク用添加剤、及びそれを用いたインクジェットインク用顔料分散液、並びにインクジェットインク組成物に関するものである。具体的には、インクジェットインクに好適に用いることができる、特定構造の分岐状重合体のスルホン化物及び/又はその塩を含有するインクジェットインク用添加剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙等の基材にインクジェット方式により記録する方法は、コンピューターのプリンター等に採用され、近年急速に普及している。インクジェット方式による記録方式はインクの微小液滴を噴射させて紙や高分子シート等の記録シートに付着させ、画像、文字等の記録を行うものであり、高速、低騒音、多色化可能、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着が不要等の好ましい特徴を有している。そして、近年のインクジェット技術の進歩により、多色インクジェット記録方式により形成される画像の高精細化が進展しており、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画と比較しても、遜色のない記録を行うことが可能となってきた。
【0003】
従来、インクジェット記録用インクとしては、各種染料を水或いは水と有機溶媒の混合溶媒等に溶解させた染料インクが用いられてきた。しかし、染料インクには、にじみが多く印字品質に劣る他、耐光性や耐水性に劣る等の欠点がある。そこで、にじみが少なく印字品質に優れることに加え、耐光性や耐水性にも優れる顔料インクの検討が行われている。
【0004】
しかしながら、顔料インクにはインク中の顔料粒子の分散性、分散安定性や印字ヘッド部での目詰り等の問題があった。特に近年、インクジェットプリンターの高精細化の進展に伴い、従来の顔料インクでは印字ヘッド等での目詰りが起こりやすく、また印字品質も不十分になってきている。
【0005】
そこでインク中の顔料粒子の分散性に関して種々検討されている(例えば特許文献1、2)が、たとえ顔料の微粒子化が実現できたとしても、単に微粒子化しただけでは、顔料インクの粘度は増大したり、また、いったん沈降した顔料の分散安定性は悪いため、再分散が困難で、いわゆるハードケーキを形成したりする。インクジェット記録に用いる顔料インクにおいて、顔料の微粒子化は顔料の沈降防止に不可欠であるが、上記のインクの粘度の増大、或いは分散安定性の欠如等の問題が残る。
【0006】
また、これらのインク、更に特許文献3のインクで紙、OHP等のメディアに印字した場合に、印字品質、すなわち、印字濃度、光沢、耐擦性、写像性等の更なる向上が望まれているが、現状では、これらすべてを満足できるものはなく、更に優れた水系インクに使用する水性顔料分散液の登場が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開平7−238234号公報
【特許文献2】特開平9−272832号公報
【特許文献3】特開平11−217525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題を解決するためになされたものであり、具体的には、印字安定性、印字濃度、光沢性が良好であるのは勿論のこと、インクの粘性を低下させることができ、耐擦性、耐マーカー性に優れたインクジェットインクを調製し得るインクジェットインク用添加剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造の分岐状重合体のスルホン化物及び/又はその塩を含有するインクジェットインク用添加剤により、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下のインクジェットインク用添加剤及びそれを用いたインクジェットインク用顔料分散液並びにインクジェットインク組成物が提供される。
【0010】
[1] (a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを構成単位として含み、その平均分岐数が2.3以上である分岐状重合体のスルホン化物及び/又はその塩を必須成分として含有するインクジェットインク用添加剤。
【0011】
[2] 前記分岐状重合体が、(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーをリビングアニオン重合させて複数のリビングアニオン重合体を形成した後、それらのリビングアニオン末端同士をカップリング剤によりカップリングさせることにより分岐状としたものである前記[1]に記載のインクジェットインク用添加剤。
【0012】
[3] 前記リビングアニオン重合体が、(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーを構成単位とし、(A)脂肪族ジエンの連続ユニット及び(B)芳香族ビニルモノマーの連続ユニットを含むブロック共重合体である前記[2]に記載のインクジェットインク用添加剤。
【0013】
[4] 前記ブロック共重合体が、AB型、ABA型、BAB型、ABAB型、BABA型、及びABABA型からなる群より選択される少なくとも1種のブロック共重合体である前記[3]に記載のインクジェットインク用添加剤。
【0014】
[5] 前記スルホン化物及び/又はその塩のスルホン酸基含量が0.5〜2.2mmol/gである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェットインク用添加剤。
【0015】
[6] 顔料、分散剤ポリマー及び水を必須成分として含有し、前記分散剤ポリマーとして、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェットインク用添加剤を用いたインクジェットインク用顔料分散液。
【0016】
[7] 顔料、水及び高沸点有機溶剤を必須成分として含有し、更に、前記[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェットインク用添加剤を含有するインクジェットインク組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明のインクジェットインク用添加剤は、印字安定性、印字濃度、光沢性が良好であるのは勿論のこと、インクの粘性を低下させることができ、耐擦性、耐マーカー性に優れたインクジェットインクを調製することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のインクジェットインク用添加剤を実施するための最良の形態について具体的に説明する。但し、本発明のインクジェットインク用添加剤は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[1]インクジェットインク用添加剤
本発明のインクジェットインク用添加剤は、(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを構成単位として含み、その平均分岐数が2.3以上である分岐状重合体のスルホン化物及び/又はその塩を有効成分とするものである。本出願人はこのような分岐状重合体のスルホン化物を帯電防止剤として既に出願している(特開平8−311435号公報参照)。但し、本発明は、前記分岐状重合体のスルホン化物が前記公報に記載された帯電防止剤とは全く異なる用途(インクジェットインク用添加剤)において好適に利用可能であることを見出したものである。
【0020】
[1−1]分岐状重合体の構成単位
本発明のインクジェットインク用添加剤に含まれる分岐状重合体の構成単位は、脂肪族ジエン、芳香族ビニルモノマー及びその他のモノマーである。
【0021】
(a)脂肪族ジエン
ここで、脂肪族ジエンとは、分子中に二重結合を2個含有する炭化水素類をいう。本発明においては、炭素数4〜7の直鎖状ないしは分岐状の炭化水素類であることが好ましい。
【0022】
例えば、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、1,2−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ペンタジエン、イソプレン、1,2−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,2−ヘプタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、2,3−ヘプタジエン、2,5−ヘプタジエン、3,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン等が挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、イソプレンが特に好ましい。これらの脂肪族ジエンは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
(b)芳香族ビニルモノマー
一般に、芳香族ビニルモノマーとは、エチレン分子の水素原子の一部ないし全部が芳香族化合物によって置換された化合物をいう。芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル等が挙げられ、中でもスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニルモノマーは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
(c)その他のモノマー
本発明のインクジェットインク用添加剤の有効成分となる分岐状重合体は、その構成単位として、脂肪族ジエン及び/又は芳香族ビニルモノマーを含んでいるものであれば足り、その他のモノマーを含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、脂肪族ジエンや芳香族ビニルモノマーと共重合可能なモノマーが挙げられる。より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類;
【0025】
下記一般式(1)で示されるアルキルエステル類;
【化1】

(式中、R、R′及びR″は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示す。nは1〜20の整数である。なお、R、R′及びR″は、同種であっても異種であってもよい)
【0026】
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のモノカルボン酸、ジカルボン酸、又はジカルボン酸無水物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルメチルエチルケトン、ビニルメチルエーテル、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、アリルアセテート、メタアリルアセテート、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクロレイン、アリルアルコール等の不飽和基含有化合物;
【0027】
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、スチレンオキシド、ブチレンオキシド、グリシジルエーテル等の環状エーテル化合物;エチレンスルフィド、プロピレンスルフィド等の環状チオエーテル類;プロピオラクトン、ε−カプロラクタム等の環状エステルないし環状アミド;ビニルピリジン等の含窒素化合物等を挙げることができる。中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。これらのモノマーは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
なお、前記のようにその他のモノマーを使用する場合であっても、脂肪族ジエン及び芳香族ビニルモノマーの合計質量は、全モノマーを100質量%とした場合に、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。50質量%未満であると、本発明のインクジェットインク用添加剤を用いてインクジェットインク組成物を調製した際に、その印字特性、特に光沢性が劣る場合があり、また、インクジェットインク組成物(ないしはインクジェットインク用顔料分散液)の粘度が増大する場合がある点において好ましくない。
【0029】
[1−2]分岐状重合体の構造及び製造方法
分岐状重合体は、前記構成単位を重合することにより得られる重合体である。特に、本発明においては、(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーをリビングアニオン重合させて複数のリビングアニオン重合体を形成した後、それらのリビングアニオン末端同士をカップリング剤によりカップリングさせることにより分岐状とさせた分岐状重合体が好ましい(このような分岐状重合体は「星型重合体」と称される場合がある)。この分岐状重合体の構造は、下記一般式(2)で示され、結合サイト数が4のカップリング剤の場合であれば、下記一般式(3)に示されるような分岐状構造を有する。但し、本発明における分岐状重合体にはカップリング剤の全ての結合サイトにリビングアニオン重合体がカップリングされたものの他、一部の結合サイトのみにリビングアニオン重合体がカップリングされたものも含まれる。
(P)m−Y …(2)
(式中、Pはリビングアニオン重合体、mはカップリング剤の結合サイト数(但し、mは2以上の整数)、Yはカップリング剤残基)
【化2】

【0030】
この際のリビングアニオン重合体としては、(a)脂肪族ジエン及び/又は(b)芳香族ビニルモノマーを構成単位とする重合体、例えば、(a)脂肪族ジエンないしは(b)芳香族ビニルモノマーの単独重合体又は(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーのランダム共重合体等が挙げられる。
【0031】
具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ブタジエン−スチレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体、イソプレン−ブタジエン共重合体等が好ましく、ポリイソプレン、イソプレン−スチレン共重合体、ポリスチレンが更に好ましい。
【0032】
中でも、リビングアニオン重合体としては、(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーを構成単位とし、(A)脂肪族ジエンの連続ユニット及び(B)芳香族ビニルモノマーの連続ユニットを含むブロック共重合体が特に好ましい。具体的には、AB型、ABA型、BAB型、ABAB型、BABA型、及びABABA型からなる群より選択される少なくとも1種のブロック共重合体が挙げられる。
【0033】
前記分岐状重合体の平均分岐数としては、2.3以上であることが必要であり、2.5以上であることが好ましく、2.5〜30であることが更に好ましい。2.3未満では本発明のインクジェットインク用添加剤を用いてインクジェットインク組成物を調製した際に、その印字特性、特に耐マーカー性、耐擦性が劣る場合があり好ましくない。所望の平均分岐数を有する分岐状重合体を得るためには、カップリング剤の使用量、カップリング反応の温度等の条件を適宜制御すればよい。なお、分岐状重合体の平均分岐数は、カップリング後の分岐状重合体の質量平均分子量を、カップリング前のリビングアニオン重合体の質量平均分子量で除することにより算出することができる。
【0034】
また、前記分岐状重合体(カップリング後、スルホン化前の重合体)の質量平均分子量は、通常、1000〜100万であり、3000〜50万であることが好ましく、1万〜30万であることが特に好ましい。1000未満では、インクジェットインク用顔料分散液又はインクジェットインク組成物を調製する際に、十分な分散性が得られない場合があり好ましくない。一方、100万を超えると、インクジェットインク用顔料分散液又はインクジェットインク組成物を調製する際に、十分な分散性が得られない場合があり、また、それらの粘度が増大する場合がある点において好ましくない。分岐状重合体の質量平均分子量は、反応条件、特に重合開始剤の種類及びその量、溶媒の種類及びその量、反応温度、反応時間等により適宜変化させることができる。なお、本明細書において「質量平均分子量」というときは、GPC−LS法(Gel Permeation Chromatography−Light Scattering Method:GPC−光散乱法)で測定された値から算出される質量平均分子量を意味するものとする。
【0035】
分岐状重合体の製造方法としては、例えば、以下に掲げるような方法が挙げられる。まず、炭化水素溶媒中、アニオン重合開始剤の存在下、脂肪族ジエン、芳香族ビニルモノマー又は他のモノマーをリビングアニオン重合させる。その後、重合を停止させることなく、得られるリビングアニオン重合体のリビングアニオン末端同士をカップリング剤によりカップリングさせることによって、分岐状重合体を得る。
【0036】
前記炭化水素溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素、パラフィン類、シクロパラフィン類、及びエーテル類の群から選択される少なくとも1種の溶媒が挙げられる。具体的には、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ナフタレン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジグライム等を用いることが好ましい。
【0037】
アニオン重合開始剤としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、アミルリチウム、ヘキシルリチウム、2−エチルヘキシルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、キシリルリチウム、ナフチルリチウム、ジリチウムナフタレン、メチルナトリウム、エチルナトリウム、n−ブチルナトリウム、アミルナトリウム、ナフチルナトリウム、ジナトリウムナフタレン、メチルカリウム、エチルカリウム、n−ブチルカリウム、アミルカリウム、ナフチルカリウム、ジカリウムナフタレン等の有機アルカリ金属;金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム等のアルカリ金属;メチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ジエチルマグネシウム等の有機アルカリ土類金属;ジエチル亜鉛等を用いることが好ましい。
【0038】
これらのアニオン重合開始剤の中でも、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、アミルリチウムを用いることが更に好ましく、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムを用いることが特に好ましい。アニオン重合開始剤の使用量は、モノマーの合計質量100質量部に対して、0.04〜5質量部とすることが好ましい。0.04質量部未満では重合反応が十分に進行しない場合があり好ましくない。一方、5質量部を超えると、未反応モノマーが残存し、目的とする重合体を得られない場合があり好ましくない。
【0039】
また、重合の際に、エーテル類やアミン類等を添加して開始剤効率を向上させるとともに、生成するポリマーの立体規則性、脂肪族ジエン系ポリマーのミクロ構造を制御することも可能である。エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル、ブチルエーテル、高級エーテル、ジオキサンの他、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のポリエチレングリコールのエーテル誘導体等が挙げられる。また、アミン類としては、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、トリブチルアミン等の第3級アミン等が挙げられる。これらは前記炭化水素溶媒とともに用いられる。
【0040】
重合反応は、通常、−100℃〜+150℃の範囲で行われ、重合開始剤とモノマーの種類及び量等によって重合生成物の内容が決定される。また、重合は、一定温度にコントロールして実施しても、また熱除去をしないで上昇温度下にて実施してもよい。種々のモノマーを逐次添加しながら重合してもよい。
【0041】
カップリング剤としては、例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ブロモホルム、四臭化炭素、四塩化スズ等の多ハロゲン化物;四塩化ケイ素、1,2−ビス(トリクロシル)エタン、1,2−ビス(トリクロロメチルシリル)エタン、メチルトリクロルシラン、オクタクロロシラン、ドデカクロロシラン等のケイ素化合物;1,2,4−トリクロルメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラクロルメチルベンゼン、ヘキサ−p−(クロロメチル)フェニルベンゼン、1,3,5−トリブロモメチルベンゼン等の芳香族ハロゲン化物;
【0042】
p−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、クエン酸トリメチル等のエステル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;トリレンジイソシアナート、トリジンジイソシアナート、メチレンビス(4−フェニルイソシアナート)等のイソシアナート化合物等が挙げられる。中でも、m,p−ジビニルベンゼン、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、トリレンジイソシアナート、メチレンビス(4−フェニルイソシアナート)を用いることが特に好ましい。
【0043】
カップリング剤の使用量は、アニオン重合開始剤1モルに対して、0.01〜30モルとすることが好ましく、0.05〜20モルとすることが更に好ましい。0.01モル未満では、平均分岐数が2.3以上の分岐状重合体の含有量が10質量%未満、或いは分岐状重合体の平均分岐度が2.3未満となる場合がある。一方、30モルを超えると、スルホン化した後に不溶物ができるおそれがある。
【0044】
このような製造方法においては得られる重合体中には、分岐状重合体が含有されている。分岐状重合体の含有量は、重合体合計質量を100質量%とした場合に、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることが更に好ましく、15〜95質量%であることが特に好ましい。10質量%未満では本発明のインクジェットインク用添加剤を用いてインクジェットインク組成物を調製した際に、その印字特性、特に耐マーカー性、耐擦性が劣る場合があり、また、インクジェットインク組成物(ないしはインクジェットインク用顔料分散液)の粘度が増大する場合があり好ましくない。なお、分岐状重合体の含有量は、GPCチャートにおけるカップリング後の重合体のピークとカップリング前の重合体のピークの面積比から算出することができる。
【0045】
[1−3]スルホン化物及び/又はその塩、並びにその製造方法
本発明においては、前記分岐状重合体をスルホン化して、スルホン化物及び/又はその塩とした状態で用いる。分岐状重合体は、その重合体中の二重結合部分を無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウム等の公知のスルホン化剤を用いて、公知の条件でスルホン化することができる。
【0046】
この場合のスルホン化剤としては、無水硫酸を単独で用いることが好ましく、無水硫酸と電子供与性化合物との錯体を用いることが更に好ましい。ここで、電子供与性化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;ピリジン、ピペラジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類;ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド等のスルフィド類;アセトニトリル、エチルニトリル、プロピルニトリル等のニトリル化合物、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト等のリン化合物等が挙げられる。中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサンを用いることが好ましい。
【0047】
スルホン化剤の量は、分岐状重合体中の脂肪族ジエン及び/又は芳香族ビニルモノマー1モルに対して、通常は、無水硫酸換算で0.1〜10モル、好ましくは0.3〜3モルである。0.1モル未満では反応収率が低くなる傾向がある。一方、10モルを超えると未反応の無水硫酸が多くなり、アルカリで中和した後、多量の硫酸塩を生じ、スルホン化物及び/又はその塩の純度が低下するおそれがある。
【0048】
スルホン化の際には、スルホン化剤である無水硫酸に不活性な溶媒を使用することもできる。この溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;液体二酸化イオウ、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0049】
スルホン化の反応温度は、通常、−70〜+200℃、好ましくは−30〜+50℃である。−70℃未満ではスルホン化反応が進行し難くなり、経済的でない。一方、+200℃を超えると副反応を起こし、生成物が黒色化ないしは不溶化するおそれがある。
【0050】
前記のスルホン化反応により、分岐状重合体に無水硫酸が結合した中間体が生成する。この中間体に水又は塩基性化合物を作用させることにより、分岐状重合体の二重結合が開裂して単結合によりスルホン酸(又はその塩)が結合された生成物が得られるか、或いは二重結合は開裂せずに残ったまま、分岐状重合体の水素原子がスルホン酸(又はその塩)に置換された生成物が得られる。
【0051】
前記塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;
【0052】
炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等の酸化物;メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、アミルリチウム、プロピルナトリウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムブロマイド、プロピルマグネシウムアイオダイド、ジエチルマグネシウム、ジエチル亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機金属化合物;アンモニア水、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、アミノメチルプロパノール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、アニリン、ピペラジン等のアミン類;ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物等を挙げることができる。
【0053】
これらの塩基性化合物の中では、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニア水が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、アンモニア水が好ましい。これらの塩基性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0054】
塩基性化合物の使用量は、使用したスルホン化剤1モルに対して、通常、10モル以下、好ましくは3モル以下である。10モルを超えると、未反応の塩基性化合物が多量に残存し、スルホン化物(又はその塩)の純度が低下する場合があり好ましくない。前記中間体と塩基性化合物の反応の際には、前記塩基性化合物を水溶液の形で使用することもでき、或いは塩基性化合物に不活性な有機溶媒に溶解して使用することもできる。
【0055】
この有機溶媒としては、前記無水硫酸に不活性な溶媒の他、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。塩基性化合物を水溶液又は有機溶媒溶液として使用する場合には、塩基性化合物濃度は、溶液全体を100質量%とした場合に、通常、1〜70質量%、好ましくは10〜50質量%程度である。また、反応温度は、通常、−30〜+150℃、好ましくは−10〜+120℃、より好ましくは0〜+100℃である。また、常圧、減圧或いは加圧下のいずれでも実施することができる。更に、反応時間は、通常、0.1〜24時間、好ましくは0.5〜5時間である。
【0056】
なお、このようにして得られるスルホン化物(又はその塩)のカチオン種は、特に限定されるものではないが、水溶性にするためには、水素;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミンジブチルアミン、トリブチルアミン等のアルキルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン、モルホリン、ピペリジン等のアミン;アンモニウム等が好ましい。
【0057】
前記分岐状重合体のスルホン化物及び/又はその塩の構造は、赤外線吸収スペクトル(IR)や核磁気共鳴スペクトル(NMR)によって確認することができる(例えば、スルホン基の吸収等)。
【0058】
スルホン化物及び/又はその塩のスルホン酸基含量が0.5〜2.2mmol/gであることが好ましい。0.5mmol/g未満では本発明のインクジェットインク用添加剤を用いてインクジェットインク組成物(ないしはインクジェットインク用顔料分散液)を調製する際に、水性媒体中で安定的に乳化させることができない場合があり好ましくない。一方、2.3mmol/gを超えると、本発明のインクジェットインク用添加剤を用いてインクジェットインク組成物を調製した際に、その印字特性、特に耐水性が劣る場合があり好ましくない。
【0059】
なお、本明細書において、「スルホン酸基含量」というときは、スルホン酸基がフリーの酸であるか、塩となっているかに拘らず、ポリマーの単位質量当たりのスルホン酸基のmol数を示すものとする。スルホン酸基含量は電位差、電導度等の酸・アルカリ滴定によって確認することができる。
【0060】
[2]インクジェットインク用顔料分散液
本発明のインクジェットインク用顔料分散液は、顔料、分散剤ポリマー及び水を必須成分として含有し、この分散剤ポリマーとして、本発明のインクジェットインク用添加剤を用いたものである。
【0061】
[2−1]顔料
本発明の顔料分散液に用いられる顔料としては、有機顔料及び無機顔料が挙げられる。有機顔料としては、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料;リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダンスレン、チオインジゴマルーン等の建染染料から誘導される顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料:キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料;イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料;キノフタロン系顔料;ジアンスラキノニルレッド等のアントラキノン系顔料等が挙げられる。また、無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン系顔料、酸化鉄系顔料、カドミウム系顔料、コバルト系顔料等が挙げられる。
【0062】
また、顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、125、128、137、138、147、148、153、154、166、168;C.I.ピグメントオレンジ13、16、36、43、51、55、59、61;C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240;C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:4、15:6、22、60、64;C.I.ピグメントグリーン7、36;C.I.ピグメントブラウン23、25、26;C.I.ピグメントブラック7;C.I.ピグメントホワイト6;C.I.ピグメントエロー37;C.I.ピグメントレッド101;C.I.ピグメントブルー28等が例示できる。
【0063】
カラー顔料としては、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、縮合アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料及びキノフタロン系顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機顔料を用いることが耐光性向上等の観点から好ましい。また、上記顔料の表面に親水性基を有し、水に自己分散可能にした自己分散顔料も使用できる。顔料に含まれる親水性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等のカチオン性親水性基の他、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、水酸基等のノニオン性親水性基等が挙げられる。上記顔料は単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0064】
本発明の顔料分散液中の顔料含有率は、顔料、分散剤ポリマー、水及び使用した場合には水溶性有機溶剤の合計質量を100質量%とした場合に、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%である。含有率が1質量%未満では、生産性が低下するため好ましくない。一方、30%質量を超えると、粘度が上昇するため顔料を十分に分散できない場合があり好ましくない。
【0065】
[2−2]分散剤ポリマー
本発明の顔料分散液は、顔料を分散させるための分散剤ポリマーを必須成分として含有する。そして、分散剤ポリマーの少なくとも一部に本発明のインクジェットインク用添加剤を用いる必要がある。
【0066】
本発明の顔料分散液中における本発明のインクジェットインク用添加剤の含有率は、顔料、分散剤ポリマー、水及び使用した場合には水溶性有機溶剤の合計質量を100質量%とした場合に、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%である。含有率が1質量%未満では、生産性が低下するため好ましくない。一方、30質量%を超えると、粘度が上昇するため顔料を十分に分散できない場合があり好ましくない。
【0067】
本発明の顔料分散液においては、分散剤ポリマーとして、本発明のインクジェットインク用添加剤以外の分散剤ポリマーを併用してもよい。そのような分散剤ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0068】
本発明の顔料分散液中における本発明のインクジェットインク用添加剤以外の分散剤ポリマーの含有率は、顔料、分散剤ポリマー、水及び使用した場合には水溶性有機溶剤の合計質量を100質量%とした場合に、1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%である。含有率が1質量%未満では、生産性が低下する場合があり好ましくない。一方、30質量%を超えると、粘度が上昇するため顔料を十分に分散できない場合があり好ましくない。
【0069】
[2−3]水
本発明の顔料分散液は、後述するインクジェットインク組成物、特に水性のインクジェットインク組成物の中間体として用いることを主たる目的としているため、分散媒としての水を必須成分として含有する。
【0070】
本発明の顔料分散液中における水の含有率は、顔料、分散剤ポリマー、水及び使用した場合には水溶性有機溶剤の合計質量を100質量%とした場合に、10〜98質量%、好ましくは20〜94質量%である。含有率が10質量%未満では、粘度が上昇するため顔料を十分に分散できない場合があり好ましくない。
【0071】
なお、本発明の顔料分散液においては、水以外の分散媒として、水溶性有機溶剤を併用してもよい。
【0072】
本発明に用いられる水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、グリセリン等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−プロピルケトン等のケトン類;酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸エチル等のエステル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;
【0073】
N−メチル−2―ピロリドン、トリエタノールアミン等の含窒素化合物化合物;その他、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセテート、チオジグリコール、チオール等の水溶性有機溶剤が挙げられ、アルコール類又はグリコールエーテル類を用いることが好ましい。
【0074】
中でも、下記1)又は2)のいずれかのアルコール類、或いは下記3)のグリコールエーテル類を用いることが特に好ましい。
1)炭素数3〜6の直鎖状ないし分岐状アルキル基を有するモノアルコール類、
2)炭素数3〜6の直鎖状ないし分岐状アルキル基、又は炭素数3〜6の直鎖状ないし分岐状アルキレン基を有する多価アルコール類、
3)上記1)又は2)のアルコールのグリコールエーテル類。
【0075】
1)のモノアルコール類としては、例えば、n−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ペンタノ−ル、ヘキサノール等が挙げられる。
【0076】
2)の多価アルコール類としては、例えば、1,2−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール1,2,5−ペンタントリオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール等が挙げられる。
【0077】
3)のグリコールエーテル類としては、1)又は2)のアルコール類のグリコールエーテル、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコール、トリプロピレングリコ−ルモノブチルエ−テル、ジプロピレングリコ−ルモノブチルエ−テル、プロピレングリコ−ルモノブチルエ−テル、テトラプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、テトラプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。これらの中で特に好ましい水溶性有機溶剤としては、1,2−ヘキサンジオール、トリエチレングリコ−ルモノブチルエ−テルである。これらの水溶性有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0078】
本発明の顔料分散液において、水溶性有機溶剤の使用量は、顔料、分散剤ポリマー、水及び水溶性有機溶剤の合計質量を100質量%とした場合に、45質量%以下、好ましくは35質量%以下である。使用量が45質量%を超えると、顔料分散液の貯蔵安定性が低下する場合があり好ましくない。
【0079】
本発明の顔料分散液は、水ないしは水と水溶性有機溶剤との混合溶液中で、分散剤ポリマー(本発明のインクジェットインク用添加剤を含む)、顔料及び他の添加剤(例えば、pH調整剤等)を、分散機で混合分散して製造する。使用する分散機としては、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、アトライター、ボールミル、ペイントシェーカー、フルイダイザー、高速ミキサー、超音波分散機等が挙げられる。この際、ミル媒体として、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、ステンレスビーズ等を使用してもよいし、しなくてもよい。より具体的には、0.01〜1mmの粒子径のセラミックビーズを用いて遊星ボールミル或いはサンドミルでインクを分散する方法がある。この場合に、遊星ボールミルでは加速度5〜50G、サンドミルではセラミックビーズの充填率50〜90%で周速5〜20m/sで行うと好ましい。分散時間は5分〜24時間、好ましくは30分〜8時間である。
【0080】
本発明により得られる顔料分散液の顔料の粒子径は、使用する顔料種により異なるが、通常、10〜200nm、好ましくは50〜150nmである。特に、本発明のインクジェットインク用添加剤を用いれば、粒子径の小さな、保存安定性等の優れた顔料分散液が容易に得られる。また、本発明の顔料分散液の粘度(測定温度:25℃)は、顔料濃度、本発明のインクジェットインク用添加剤の量等にもよるが、通常、2〜20mPa・s、好ましくは3〜8mPa・sである。
【0081】
[3]インクジェットインク組成物
本発明のインクジェットインク組成物は、顔料、水及び高沸点有機溶剤を必須成分として含有し、更に、本発明のインクジェットインク用添加剤を含有するものである。
【0082】
高沸点有機溶剤は、プリンターヘッド部における目詰まりを抑制するための溶剤であり、常圧での沸点が150℃以上の有機溶剤、例えば、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル等を好適に用いることができる。
【0083】
また、必須成分ではないが、水溶性有機溶剤を含有せしめてもよい。水溶性有機溶剤としては、前記インクジェットインク用顔料分散液の項で述べたものを好適に用いることができる。但し、前記インクジェットインク用顔料分散液に既に水溶性有機溶剤が含まれており、その量が十分である場合には、インクジェットインク組成物を調製する際に改めて水溶性有機溶剤を添加することを要しない。
【0084】
本発明のインクジェットインク用添加剤は、分散剤ポリマー及び/又は添加剤ポリマーとして好適に用いることができる。分散剤ポリマーは、顔料の分散性を向上させるための添加剤であり、本発明のインクジェットインク用添加剤の他、前記インクジェットインク用顔料分散液の項で述べたものを好適に用いることができる。添加剤ポリマーは、耐マーカー性、耐擦性、バインダー性等の印字特性を向上させるための添加剤であり、本発明のインクジェットインク用添加剤の他、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系をはじめとするエマルジョンポリマー等を好適に用いることができる。
【0085】
上記の必須成分の含有率としては、顔料、水、高沸点有機溶剤、本発明のインクジェットインク用添加剤及び使用した場合には水溶性有機溶剤の合計質量を100質量%とした場合に、顔料1〜10質量%、水25〜97.9質量%、高沸点有機溶剤1〜40質量%、本発明のインクジェットインク用添加剤0.1〜10質量%、水溶性有機溶剤0〜15質量%であることが好ましい。
【0086】
本発明のインクジェットインク組成物には、上述の必須成分や水溶性有機溶剤の他、公知の添加剤を添加することもできる。例えば、界面活性剤、多価アルコール等の湿潤剤、消泡剤、表面張力調整剤、キレート剤、酸素吸収剤等を添加することができる。
【0087】
界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤;脂肪族アミン、4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ベタイン型化合物等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル型等のノニオン系界面活性剤;セルロース系高分子、リグニンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物塩、スチレン−マレイン酸共重合物塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0088】
浸透剤又は湿潤剤としては、炭素数が5〜10のアルキル基を有するアルコール類が好ましい。具体的には、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等のアルコール類を挙げることができる。これらアルコール類のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。中でも、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルが更に好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0089】
本発明のインクジェットインク組成物は、前記インクジェットインク用顔料分散液から調製することができる。例えば、前記インクジェットインク用顔料分散液に対して、界面活性剤、水溶性有機溶剤、高沸点有機溶剤及び添加剤ポリマー等を添加することにより調製することができる。
【0090】
本発明のインクジェットインク組成物は、インクジェット記録に好適な粘度と表面張力を有することが好ましい。粘度(測定温度:25℃)は、0.7〜15mPa・sであることが好ましく、1〜10mPa・sであることが更に好ましい。また、表面張力(測定温度:25℃)は、200〜700μN/cmであることが好ましく、250〜600μN/cmであることが更に好ましく、300〜400μN/cmであることが特に好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、部及び%は特に断らない限り質量基準である。また、実施例中の各種の測定項目は下記のようにして求めた。
【0092】
[質量平均分子量]:GPC−LS法(GPC−光散乱法)により、分岐状重合体を含む重合体の質量平均分子量を求めた。測定装置及び測定条件は以下の通りとした。検出器:TDA−302(商品名、ビスコテック社製)、GPCカラム:G4000HXL(商品名、東ソー社製)とG2000HXL(商品名、東ソー社製)を並列につないで使用、流速:1ml/分、校正用サンプル:ポリスチレン標準サンプル(PS115K(商品名、アメリカンポリマースタンダード社製))
【0093】
[平均分岐数]:カップリング後の分岐状重合体を含む重合体の質量平均分子量をカップリング前の重合体の質量平均分子量で除した値を平均分岐数とした。
【0094】
[スルホン酸基含量]:スルホン酸基含量の測定には、各スルホン酸(塩)含有ポリマーの20%水溶液を調製し、透析膜(セルロースダイオライザーチュービング−VT351(商品名、半井化学薬品社製))により、低分子物を除去し、精製したサンプルを用い、このサンプルを陽イオン交換樹脂(アンバーライト IR−118(H)(商品名、オルガノ社製))でイオン交換し、完全に酸型にしたのち、そのスルホン酸量を電位差滴定から求めた。水不溶性のスルホン化物については、含イオウ低分子化合物(Na2SO4、硫酸等)を沈殿生成により取り除いた後、元素分析によりポリマー中のイオウ量を定量しスルホン酸基含量を求めた。
【0095】
[顔料粒子径]:粒子径測定装置(フォータルPAR−III(商品名、大塚電子社製))を用いて測定した。
【0096】
[分散液粘度]:E型粘度計(RE−80L(商品名、東機産業社製))を用いて測定した。
【0097】
[インク粘度]:E型粘度計(RE−80L(商品名、東機産業社製))を用いて測定した。
【0098】
[印字安定性]:印刷後の印字物の状態で印字安定性を以下のように評価した。
○:印字部分にほとんど線が入らない、
△:印字部分の一部に線が入る、
×:印字部分の大部分に線が入る。
【0099】
[印字濃度]:マクベス濃度計(マクベスシリーズ1200(商品名、グレダグマクベス社製))により印字物の光学濃度(OD値)を測定した。
【0100】
[耐マーカー性]:ラインマーカー(イエローダイキリECL12−G(商品名、ぺんてる社製))で印字部分を重ねてマーキングし、インクの滲み具合で耐マーカー性を以下のように評価した。
○:2回ラインを引いて、滲み若しくは汚れがほとんどなし、
△:2回ラインを引いて、滲み若しくは汚れあり、
×:1回ラインを引いて、滲み若しくは汚れあり。
【0101】
[光沢性]:光沢計(マイクロヘイズプラス(商品名、BYK−ガードナー社製))により20度光沢を測定した。
○:光沢値120以上、
△:光沢値100以上〜120未満、
×:光沢値100未満。
【0102】
[耐擦性]:印字物表面にPM写真用紙裏面を乗せ、ここに荷重300gをかけた。この状態で、印字物表面を20rpmで20回転させ、表面の傷の付き具合で耐擦性を以下のように評価した。
○:印字層に傷・剥離がほとんどなし、
△:印字層に傷若しくは剥離が一部あり、
×:印字層に傷若しくは剥離が大きくあり。
【0103】
(合成例1)
[分岐状重合体を含む重合体の合成]:内容積5リットルのオートクレーブに、脱水窒素バブリングしたシクロヘキサン2kg、テトラヒドロフラン1g及びn−ブチルリチウム11.2gを加え、温度70℃にて攪拌を続け、イソプレン300g、スチレン200gを順次加え重合を行った後、その一部を少量サンプルとして取り出し、質量平均分子量を測定した。残りのリビングポリマー溶液にジビニルベンゼン12gを添加した後、更に50℃で1時間攪拌を続けた。
【0104】
次いで、重合停止剤として、イソプロピルアルコール200gを加えて重合を停止した。カップリング前後のGPCパターンから、直鎖状ポリマーの一部がカップリングし分岐状重合体となっていることを確認した。カップリング剤であるジビニルベンゼン添加前の質量平均分子量は5000であり、カップリング剤添加後の重合体の質量平均分子量は15000であった。また、分岐状重合体の割合は50%で直鎖状のポリマーの割合は50%であった。このベースポリマーの赤外吸光スペクトルには700cm-1と800cm-1にジビニルベンゼンの吸収が認められた。このようにして得られた分岐状重合体を含む重合体をBP−1と称する。
【0105】
(合成例2〜7)
BP−1と同様な方法で表1に示すモノマー、試薬を使用して(共)重合体を合成した(BP−2〜BP−7)。
【0106】
(実施例1)
(1)スルホン化
i)ガラス製反応容器にジオキサン177gを入れ、これに無水硫酸11.8gを内温を20℃に保ちながら添加し、1時間攪拌して、無水硫酸−ジオキサン錯体を得た。ii)前記、分岐状重合体を含む(共)重合体であるBP−1中の溶媒を除去した後、ポリマー100gをジオキサン400gに溶解させ、上記i)で得られた錯体全量を、内温を20℃に保ちながら添加し、更に1時間攪拌を続けた。
【0107】
iii)水1.6kg、水酸化ナトリウム5.9gをフラスコに入れ、ii)の溶液全量を加えて、70℃にて1時間中和を行った。その後、減圧蒸留により、水を残しつつ溶剤を除去し、濃度15%のポリマースルホン化物のナトリウム塩の乳化物を得た。乳化物中の粒子の粒径は30nm、固形分中のスルホン酸基含量は1.25mmol/gであった。
【0108】
(実施例2〜5、比較例1,2)
表1に示す(共)重合体を使用して、表2に示す条件で実施例1と同様にスルホン化反応を行い、分岐状重合体を含む(共)重合体のスルホン化物を得た。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
(試験例1〜3、比較試験例1,2)
500mLのポリビンに実施例1〜3、比較例1、カーボンブラック(カラーブラックFW−18(商品名、デグサ社製))、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水、0.3mmジルコニアビーズ、消泡剤(SN398(商品名、サンノプコ社))を表3に示した量で仕込み、ペイントシェーカーで5時間分散した。得られた分散液の顔料粒子径、分散液の粘度を測定した結果を表3に併せて示した。
【0112】
【表3】

【0113】
一方、得られた顔料分散液10gに1,2−ヘキサンジオール1g、グリセリン3g、水6gを混合してインクジェットインク組成物を調製した。得られたインクジェットインク組成物を、インクジェットプリンター(EM930(商品名、セイコーエプソン社製))を用いて、普通用紙(ゼロックス社製)に印字し、下記測定項目に基づいて評価した。結果を印字特性(1)として表3に示す。
【0114】
(試験例4〜6、比較試験例3,4)
また、上記で得られた顔料分散液5gに1,2−ヘキサンジオール1g、グリセリン3g、水11gを混合してインクジェットインク組成物を調製した。得られたインクジェットインク組成物をインクジェットプリンターを用いて、PM写真用紙に印字し、下記測定項目に基づいて評価した。結果を印字特性(2)として表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
(試験例7,8、比較試験例5〜7)
インクジェット用顔料インク(ICMB33(商品名、セイコーエプソン社製))20gに実施例4,5、比較例1,2を1%添加し、1時間攪拌して得られたインクジェットインク組成物を、インクジェットプリンターを用いて、普通用紙に印字し、下記測定項目に基づいて評価した。結果を表5に示す。なお、比較試験例7はインク中にポリマーを添加しなかったケースである。
【0117】
【表5】

【0118】
(試験例9,10、比較試験例8〜10)
インクジェット用顔料インク20gに実施例4,5、比較例1,2を1%添加し、1時間攪拌して得られたインクジェットインク組成物を、インクジェットプリンターを用いて、PM写真用紙に印字し、下記測定項目に基づいて評価した。結果を表6に示す。なお、比較試験例10はインク中にポリマーを添加しなかったケースである。
【0119】
【表6】

【0120】
以上の結果から、本発明のインクジェットインク用添加剤(分岐状重合体のスルホン化物及び/又はその塩)をインクジェットインク組成物に含有させることにより、直鎖状ポリマーに比べ、特に顔料分散液粘度及びインク粘度低減の効果があり、更には多様な印字特性においても優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のインクジェットインク用添加剤は、印字安定性、印字濃度、光沢性が良好であるのは勿論のこと、インクの粘性を低下させることができ、耐擦性、耐マーカー性に優れたインクジェットインクを調製することができるので、インクジェットインクに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを構成単位として含み、その平均分岐数が2.3以上である分岐状重合体のスルホン化物及び/又はその塩を必須成分として含有するインクジェットインク用添加剤。
【請求項2】
前記分岐状重合体が、(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーをリビングアニオン重合させて複数のリビングアニオン重合体を形成した後、それらのリビングアニオン末端同士をカップリング剤によりカップリングさせることにより分岐状としたものである請求項1に記載のインクジェットインク用添加剤。
【請求項3】
前記リビングアニオン重合体が、(a)脂肪族ジエン及び(b)芳香族ビニルモノマーを構成単位とし、(A)脂肪族ジエンの連続ユニット及び(B)芳香族ビニルモノマーの連続ユニットを含むブロック共重合体である請求項2に記載のインクジェットインク用添加剤。
【請求項4】
前記ブロック共重合体が、AB型、ABA型、BAB型、ABAB型、BABA型、及びABABA型からなる群より選択される少なくとも1種のブロック共重合体である請求項3に記載のインクジェットインク用添加剤。
【請求項5】
前記スルホン化物及び/又はその塩のスルホン酸基含量が0.5〜2.2mmol/gである請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェットインク用添加剤。
【請求項6】
顔料、分散剤ポリマー及び水を必須成分として含有し、前記分散剤ポリマーとして、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェットインク用添加剤を用いたインクジェットインク用顔料分散液。
【請求項7】
顔料、水及び高沸点有機溶剤を必須成分として含有し、更に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェットインク用添加剤を含有するインクジェットインク組成物。

【公開番号】特開2006−160798(P2006−160798A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350272(P2004−350272)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】