説明

インクジェットシステムの短絡検査装置

【課題】ピエゾアクチュエータを用いたインクジェットヘッドと駆動回路とをフローティング接続した構成において、ヘッド内での液漏れなどによる予期せぬ様々な配線間の短絡異常から駆動回路側の出力回路を保護する。
【解決手段】負荷電源ライン(22)の短絡検査を行う電源短絡検査回路(44)と、ピエゾアクチュエータ(12)の駆動選択信号を伝送する信号ライン(18)の短絡検査を行う信号短絡検査回路(46)と、検査対象のラインを選択するモニタ選択回路(42)と、検査モード時にモニタ選択回路(42)の動作を許可し、選択に係る検査対象ラインに応じて電源短絡検査回路(44)又は信号短絡検査回路(46)を起動させる検査切換回路(48)と、検査対象ライン上の電位を検出して回線短絡の有無を判定する短絡判定回路(50)とを備え、短絡異常を検知した場合にヘッドへの負荷電源の供給、駆動選択信号の送出及び負駆動電力の供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェットシステムの短絡検査装置に係り、特に、インクジェットヘッド内部の電気回路における短絡(電気ショート)異常を検知し、当該ヘッドに接続されている駆動基板上の回路部品の破壊を回避する手段として好適な回路保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを吐出するための圧力発生素子としてピエゾアクチュエータ(圧電素子)を用いたインクジェット式プリンタでは、インクジェットヘッドに備わる複数のノズルに対応して設けられた複数個の圧電素子を選択的に駆動することにより、各ピエゾアクチュエータの動圧に基づいてノズルからインク滴を吐出させる。こうして吐出されたインク滴を記録用紙に付着させることにより、記録用紙上にドットが形成され、印刷が行われる。
【0003】
ここで、図12を用いて、従来のインクジェットヘッドの回路構成について概説する。同図に示すように、インクジェットヘッド300内には、複数のノズル(不図示)に対応してピエゾアクチュエータ302が複数設けられている。各ピエゾアクチュエータ302には、個々にアナログスイッチ304が接続されており、各アナログスイッチ304の片側端子は駆動回路320の出力線322に接続されている。
【0004】
また、駆動回路320を搭載した駆動基板324には、ヘッド内の各アナログスイッチ304をオン/オフ制御するための画像データ(ドットの配置形態を表すドットデータ)を伝送する画像データ送信回路326が設けられている。画像データ送信回路326はアイソレータ・ドライバを含み、信号処理回路330にて生成された画像データ信号の電圧レベル変換を行う。画像データ送信回路326からのノズルON/OFFパターンを表す画像データの送信にはシリアル転送が採用され、インクジェットヘッド300内にはシリアル/パラレル変換を行うためのシフトレジスタ308(直列入力並列出力形;Serial-In, Parallel-Out;SIPO)が設けられている。
【0005】
一方、ピエゾアクチュエータ302を駆動する駆動信号の生成に関しては、駆動波形のデジタルデータを記憶した記憶素子340からデジタルデータ列を順次読み出し、これをD/Aコンバータ332でアナログ信号に変換する。このアナログ信号をオペアンプ334で増幅する。オペアンプ334の出力にはパワートランジスタ2個(Tr1,Tr2)からなるブースト回路336が接続されており、大きな出力電流を流せるようになっている。これは、インクジェットヘッド300内部の複数のピエゾアクチュエータ302に対して電圧パルス信号を与えたときに、コンデンサを充放電するための大きな電流を瞬間的に流す必要があるためである。
【0006】
駆動基板324とインクジェットヘッド300とのインターフェースは、ピエゾアクチュエータ302を駆動するための駆動信号を伝送する回線350と、アナログスイッチ304を制御するための画像(ドット)データ信号を伝送する回線352とを含む。
【0007】
インクジェットヘッド300におけるノズル数が多いため、ピエゾアクチュエータ302を駆動する信号は、適当なノズル数でグループ分けされた複数のノズル分を1つの駆動系統1回線でまとめられ、ケーブル360を介してインクジェットヘッド300側へ送られる。また、アナログスイッチ304を制御する画像(ドット)データ信号は、複数のノズル分をシリアル転送する構成となっている。駆動系統1回線に送信される駆動波形信号は、画像(ドット)データに応じたアナログスイッチ304の切り換えにより、各ピエゾアクチュエータ302に印加される。これにより、該当するノズルからインクの吐出が行われる。
【0008】
上記のようなピエゾアクチュエータ302を用いるインクジェットヘッド300の内部では、ピエゾアクチュエータ302の駆動構造からインク室と電気回路とが近接しており、ヘッドユニットの製造、構造、材料等の不具合や、経年劣化、或いはインク供給圧力による要因などにより、インクリーク(漏れ)が発生し、ヘッド内電気回路の配線を電気ショートさせてしまう場合がある。この電気ショートは液体であるインクそのものによって起こるため、電気回路におけるショート箇所は複雑に発生する。
【0009】
一般に、ピエゾアクチュエータを駆動するための駆動回路を搭載した駆動基板は、ヘッドに対して少なくとも、電源、駆動電力、画像データ(個々のピエゾアクチュエータのON/OFFを制御するための信号)を出力する。特に、ノズル数が数百から数千個に及ぶマルチノズルヘッドの場合は、必要なタイミングで画像データを転送しなければならないため、複数のデータ回線を用いることがある。そのため、ヘッド内部のインクリークなどにより、予測不能な電気ショートが発生すると、駆動回路内のこれら出力回路に多大な被害(部品焼損)を与えてしまう。すなわち、電気ショートにより、出力回路の絶対定格電流をオーバーしてしまい、回路部品を破壊してしまう。
【0010】
インクジェットヘッドと駆動部間の接続線における短絡(ショート)異常への保護対策に関する従来技術として、例えば、特許文献1〜4などがある。
【0011】
特許文献1では、インクジェットヘッドにおける信号伝送方式としてLVDS(Low voltagedifferential signaling;小振幅差動信号方式)ドライバ等の差動伝送を採用する場合において、ヘッド内インクショートで電源電流が差動伝送路に流れ、伝送システムが破壊されるという課題に対して、回路を保護する方法が提案されている。具体的には、差動伝送の特徴を生かしてプラス、マイナス方向のラインに直列にコンデンサを設け、両方向に流れるデータを操作して前データでコンデンサに蓄積された電荷を次のデータで打ち消すようシステム化したものである。かかる構成により、ヘッド内インクショートによって電源電圧が加わってもコンデンサで過電流が流れないよう、ドライバを保護するものである。
【0012】
特許文献2では、圧力発生素子として発熱抵抗体を用いたサーマルインクジェットヘッドに送るデータ線、アドレス線のグランド(GND)への短絡を検出し、短絡検知時にはドライバ出力の停止又は電源を遮断することでドライバ回路を保護する方法を提案している。
【0013】
特許文献3では、駆動回路からサーマルインクジェットヘッドに送る駆動線の短絡異常と駆動電力素子(発熱抵抗体)の異常を検出するものを提案している。具体的には、短絡検出回路として抵抗とコンデンサを直列に接続した充電回路にて充放電を行い、負荷である検査対象の状態をコンデンサの電位を時間的に測定して異常を検知している。
【0014】
特許文献4では、インクジェットヘッドに送るデータ線とGND間の短絡を検出する手段を提案している。同文献4によれば、データ線はヘッドとショート検出回路に並列接続されており、通常モードで使用するドライバにて電圧を送信し各データ線に流れる電圧が所定値を超えたレベルであるかを判定し、超えていない場合(ショート)はその線を特定するバイナリコードを制御部に送信し、該当ショート線にデータ送信しないように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−72074号公報
【特許文献2】特開平10−128965号公報
【特許文献3】特開平9−322380号公報
【特許文献4】特開2000−263765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、信号伝送方法として差動方式を用いた場合に有効であるが、シングルエンドにおける伝送方式には適用できない。また、このシステムはインクショートによって電源電圧が信号伝送路に印加した場合に限り、ドライバを破壊から保護するというものであり、限定的な保護機能である。更に、特許文献1の方法では、ショートによる異常を検知していない。
【0017】
特許文献2に記載の方法は、短絡検出を行っているが、検出対象が限定的である。すなわち、特許文献2では、データ線又はアドレス線について、それぞれグランド(GND)との間の短絡しか対応できていない。例えば、アドレス線にデータ線の駆動電圧が短絡した場合などは考慮されていない。また、引用文献2の技術では、複数線に対し個別に短絡を確認することができない。更に、ヘッドと電圧的にフローティング接続した回路に対応できない。その他回路上の矛盾点として、アドレス線の短絡検出回路は常時アドレス線に電圧印加している。これは短絡検出以外の通常動作時において常にアドレスに接続されたヒータスイッチのFET(Field-Effect Transistor)が常時ON状態になってしまうという問題がある。
【0018】
特許文献3に記載の方法は、インクジェットヘッドがサーマル方式で負荷がヒータ抵抗である場合に限り適用できるものである。したがって、負荷がピエゾアクチュエータ、つまりコンデンサ(容量性負荷)であるインクジェットヘッドについては、同文献3の技術を適用できない。
【0019】
特許文献4に記載の技術は、ショートしたデータ線を検出し、次回にその線を使用せず残りの線のみ使用するという内容である。つまり、駆動回路を保護するものではなく、ショート後の対応幅を広げることを目的とした技術である。また、特許文献4では、短絡検出回路のレベル判定方法が具体的に明示されていない。更に、特許文献3と同様、短絡検出においてGNDとの間しか対応できていない。
【0020】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ピエゾアクチュエータを用いたインクジェットヘッドと駆動回路とをフローティング接続した構成において、ヘッド内での液漏れなどによる予期せぬ様々な配線間の短絡異常から駆動回路側の出力回路を保護することができるインクジェットシステムの短絡検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために以下の発明態様を提供する。
【0022】
(発明1):発明1に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、ノズルに対応して設けられたピエゾアクチュエータと、前記ピエゾアクチュエータの駆動/非駆動を選択的に切り換える負荷制御回路とを有し、前記負荷制御回路で駆動選択された前記ピエゾアクチュエータを駆動することにより、対応するノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドと、前記ピエゾアクチュエータの駆動に必要な負荷電源、駆動選択信号及び駆動電力を前記インクジェットヘッドに出力する電気回路を含んだ駆動回路とを備え、前記インクジェットヘッドと前記駆動回路の間の電気接続をフローティング接続とした構成のインクジェットシステムに搭載される短絡検査装置であって、前記負荷制御回路に前記負荷電源を供給する電源生成回路と、前記電源生成回路が生成する前記負荷電源を前記インクジェットヘッドに伝送する負荷電源ラインに接続され、当該負荷電源ラインを検査対象として短絡検査を行う電源短絡検査回路と、前記ピエゾアクチュエータの駆動/非駆動を選択するための前記駆動選択信号を伝送する信号ラインに接続され、当該信号ラインを検査対象として短絡検査を行う信号短絡検査回路と、前記電源短絡検査回路又は前記信号短絡検査回路による短絡検査を行う検査モードの際に前記電源生成回路からの前記負荷電源の供給を停止させる制御回路と、前記検査モード時における前記短絡検査の検査対象として前記負荷電源ライン又は前記信号ラインのいずれか一方のラインを選択するモニタ選択回路と、前記検査モード時に、前記モニタ選択回路の動作を可能にするとともに、前記電源短絡検査回路又は前記信号短絡検査回路の動作を可能にする一方、前記ノズルから液滴を吐出させる駆動モード時には、前記モニタ選択回路、前記電源短絡検査回路及び前記信号短絡検査回路を動作不能な状態にする検査切換回路と、前記検査モード時に前記モニタ選択回路の選択に係る前記検査対象のラインに検査用電源を接続し、当該検査対象のライン上の電位を検出して回線短絡の有無を判定する短絡判定回路と、を備え、前記短絡判定回路により回線短絡を検知した場合に、前記インクジェットヘッドに対する前記負荷電源の供給、前記駆動選択信号の送出、及び前記駆動電力の供給が停止されることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、駆動モードによる駆動動作前、或いは、駆動モードによる駆動動作後の適宜のタイミングで検査モードに移行して回線短絡の有無を検査することができる。配線間の短絡を検知した場合には、インクジェットヘッドに対する負荷電源の供給を停止するとともに、駆動選択信号の送出を停止し、更に、ピエゾアクチュエータへの駆動電力(負荷駆動電力)の供給も停止する。これにより、駆動回路に過電流が流れ込むことを防止することができ、回路部品を保護することができる。
【0024】
短絡異常が検知された場合の具体的な対処例としては、例えば、制御回路によって電源生成回路等の電源出力を停止させる制御を行う。電源生成回路の電源出力を停止することにより、ヘッドへの負荷電源の供給が停止されるとともに、駆動回路内で当該電源生成回路から電源供給を受ける回路(負荷電源ラインに接続されている回路部品)に対する電源の供給も停止される。これにより、駆動選択信号の出力回路(アイソレータ・ドライバICなど)への電源供給を停止することができ、ヘッドに対する駆動選択信号の送出が停止される。同様に、制御回路によって駆動電力増幅回路への電源供給を停止することにより、負荷駆動電力の供給が停止される。
【0025】
本発明によれば、負荷電源ライン、信号ラインの各ラインを検査対象とすることができ、ヘッド内における様々なショート形態に対応することができる。本発明によれば、ヘッド内における液漏れ等による電気ショートのように、予期せぬ形で発生し得る各種接続線間の短絡異常から駆動回路を保護することができる。
【0026】
なお、インクジェットヘッドにおけるピエゾアクチュエータの個数は特に限定されない。複数のノズルを有するインクジェットヘッドの場合、各ノズルに対応して複数のピエゾアクチュエータが設けられる。
【0027】
(発明2):発明2に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明1において、前記駆動回路は、前記ピエゾアクチュエータを駆動させる電圧波形の駆動電力信号を出力する駆動電力増幅回路を含み、前記駆動電力増幅回路から出力される駆動波形電圧が前記負荷電源並びに前記駆動選択信号の基準電位となっていることを特徴とする。
【0028】
本発明は、発明2に記載のように、接続線に比較的高い電圧が印加される態様についても対応できる。
【0029】
(発明3):発明3に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明1又は2において、前記制御回路は、前記検査モードにおいて前記駆動電力増幅回路の電源供給を停止させることを特徴とする。
【0030】
検査時には、負荷電源の供給を停止するとともに駆動電力信号の出力も停止することにより、短絡発生時における回路部品の破壊を防止することができる。
【0031】
(発明4):発明4に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明3において、前記制御回路は、前記短絡判定回路により回線短絡を検知した場合は、前記電源生成回路の出力を停止させるとともに、前記駆動電力増幅回路の電源供給を停止させることを特徴とする。
【0032】
短絡異常を検知した際に、駆動回路側からインクジェットヘッドに対する負荷電源の供給を止めるとともに、ピエゾアクチュエータの駆動電力の供給を止めることにより、駆動回路側への過電流の流入を回避し、回路部品の破壊を防止する。
【0033】
(発明5):発明5に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明1乃至4のいずれか1項において、前記検査切換回路は、検査モードに移行することを示すトリガ信号の入力に基づいて前記電源短絡検査回路及び前記信号短絡検査回路の起動を許可する起動許可信号を出力するとともに、前記モニタ選択回路の選択に係る前記検査対象のラインから回線短絡によって電流が流れ込む配線ラインを前記駆動回路のグランドにスイッチ接続して終端することを特徴とする。
【0034】
検査切換回路にトリガ信号が入力することにより、検査切換回路から起動許可信号が出され、この起動許可信号によりモニタ選択回路の選択機能が有効となって、電源短絡検査回路又は信号短絡検査回路による検査機能が起動する。トリガ信号は、制御回路が出力してもよいし、更に上位の制御装置から出力してもよい。
【0035】
(発明6):発明6に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明1乃至5のいずれか1項において、前記ピエゾアクチュエータの駆動/非駆動を選択する信号を生成する信号処理回路を有し、前記信号処理回路が出力する前記信号を電圧変換することにより前記駆動選択信号が生成される一方、前記信号処理回路は、検査モード時に、前記短絡検査の検査対象とする前記負荷電源ライン又は前記信号ラインのいずれか一方のラインを選択する信号として、前記電源短絡検査回路又は前記信号短絡検査回路を選択起動させるためのモニタ選択信号を生成し、該モニタ選択信号は、前記ピエゾアクチュエータの駆動/非駆動を選択する信号を伝送する信号ラインを利用して前記モニタ選択回路に入力されることを特徴とする。
【0036】
かかる態様によれば、既存の信号回線を用いて検査対象回線の選択信号(モニタ選択信号)を送信することができる。これにより、省線化と回路実装の省スペース化が可能である。
【0037】
(発明7):発明7に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明6において、前記モニタ選択信号は、前記電源短絡検査回路及び前記信号短絡検査回路のうち一方の短絡検査回路を選択起動するハイ(H)レベルと、他方の短絡検査回路を選択起動するロー(L)レベルのロジック2値信号であることを特徴とする。
【0038】
かかる態様によれば、2つの検査対象を簡易なロジック制御で選択起動することが可能である。
【0039】
(発明8):発明8に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明6又は7において、前記信号ラインの回線が複数設けられ、これら複数回線のうち前記検査対象とする1回線とその他の回線に対して異なるモニタ選択信号が送信され、個別回線を検査可能であることを特徴とする。
【0040】
かかる態様によれば、検査対象を回線別に選択することにより、回線毎に短絡異常の有無を検知することができる。
【0041】
(発明9):発明9に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明6乃至8のいずれか1項において、前記モニタ選択回路は、前記検査切換回路からの前記電源短絡検査回路及び前記信号短絡検査回路の起動を許可する起動許可信号によって、前記モニタ選択信号に応じた前記電源短絡検査回路又は前記短絡検査回路を起動することを特徴とする。
【0042】
かかる態様によれば、検査切換回路によって電源短絡検査回路及び信号短絡検査回路の起動が許可されることを条件に前記モニタ選択信号が有効に機能して当該モニタ選択信号に対応した電源短絡検査回路又は前記短絡検査回路が動作する。
【0043】
(発明10):発明10に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明9において、前記電源短絡検査回路は、前記検査切換回路からの起動許可信号によって前記モニタ選択回路からの電源短絡検査起動信号を受信することにより、前記信号ラインを前記検査切換回路にスイッチ接続し、当該検査切換回路を介して前記信号ラインを前記駆動回路のグランドにつなげるとともに、前記検査用電源を前記負荷電源ラインにスイッチ接続することを特徴とする。
【0044】
かかる態様によれば、検査切換回路の起動許可とモニタ選択回路に入力されるモニタ選択信号に応じて負荷電源ラインの短絡検査を実施することができる。
【0045】
(発明11):発明11に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明9又は10において、前記駆動回路は、前記ピエゾアクチュエータを駆動させる電圧波形の駆動電力信号を前記インクジェットヘッドに伝送する負荷駆動電力ラインを有し、前記信号短絡検査回路は、前記検査切換回路からの起動許可信号によって前記モニタ選択回路からの信号短絡検査起動信号を受信することにより、前記負荷駆動電力ラインを前記検査切換回路にスイッチ接続して当該検査切換回路を介して前記負荷駆動電力ラインを前記駆動回路のグランドにつなげるとともに、前記検査用電源を前記信号ラインにスイッチ接続することを特徴とする。
【0046】
かかる態様によれば、検査切換回路の起動許可とモニタ選択回路に入力されるモニタ選択信号に応じて信号ラインの短絡検査を実施することができる。
【0047】
(発明12):発明12に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明1乃至11のいずれか1項において、前記信号ラインを介して前記駆動選択信号を前記インクジェットヘッドに出力する送信回路としてアイソレータ・ドライバICを用いたことを特徴とする。
【0048】
配線間の電気ショートが発生した際のリーク電流がアイソレータ・ドライバICの定格を超えて流れる恐れがある場合に、本発明はそのアイソレータ・ドライバICの破壊を効果的に防止することができる。
【0049】
(発明13):発明13に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明1乃至12のいずれか1項において、前記短絡判定回路は、前記検査モード時に前記検査対象のラインに前記検査用電源からテスト電圧を印加して、当該ライン上の電位を閾値と比較して回線短絡の有無を判別し、その判定結果の信号を出力することを特徴とする。
【0050】
かかる態様によれば、回線間に短絡異常があれば、検査対象のラインから短絡経路を介してグランドに電流が流れる。したがって、短絡異常発生時における当該検査対象ライン上の注目する電位は、正常な場合(短絡異常が無い場合)と比較して低い電位となる。この電位変化に基づき、回線短絡の有無を判定することができる。
【0051】
(発明14):発明14に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明13において、前記検査用電源の電圧印加は、前記検査対象となるラインの回線の送信回路出力における定格電流以下に設定していることを特徴とする。
【0052】
検査モード時に流す電流で回路が破壊されないよう、検査用の電流を制限する。駆動回路側において、短絡異常によって破壊される可能性のある回路部品が複数存在する場合、それらのうち最も厳しい条件(定格電流が最小のもの)を満たす範囲で検査用の電流値を設定することが望ましい。
【0053】
(発明15):発明15に係るインクジェットシステムの短絡検査装置は、発明13又は14において、前記検査対象のライン上の電位を比較する前記閾値は、当該ラインに印加される前記検査用電源の電圧からグランドを基準として抵抗で分圧設定していることを特徴とする。
【0054】
かかる態様によれば、簡易な回路構成で、回路短絡の有無を判定することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、インクジェットヘッドと駆動回路との間が電圧的にフローティングの関係で接続された構成において、ヘッド内の液漏れ等による接続線間の短絡異常の有無を適宜のタイミングで検査することができる。そして、短絡異常が発見された場合には、負荷電源の供給を停止するとともに、駆動選択信号の送出と駆動電力(負荷駆動電力)の供給も停止するため、短絡経路を経由したリーク電流の戻りによる回路部品の破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットシステムの短絡検査装置の構例を示した回路ブロック図
【図2】本例の短絡検査装置の更に具体的な回路例を示す図
【図3】短絡判定回路における比較判別回路の入力側の等価回路図
【図4】検査モード時に画像信号ラインに流れる信号のタイミングチャート
【図5】電源短絡検査回路の動作を説明するための要部回路図
【図6】信号短絡検査回路の動作を説明するための要部回路図
【図7】本発明の実施形態に係る短絡検査装置を搭載したインクジェット記録装置の構成図
【図8】インクジェットヘッドの構造例を示す図
【図9】インクジェットヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図10】図8中のA−A線に沿う断面図
【図11】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図12】従来のインクジェットヘッドの回路構成の概要図
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0058】
図1は本発明の実施形態に係るインクジェットシステムの短絡検査装置の構成例を示した回路ブロック図である。
【0059】
図1に示すように、インクジェットヘッドユニット(以下「ヘッドユニット」という。)10には、各ノズルに対応したピエゾアクチュエータ12が設けられている。図1では、簡略化のためにヘッドユニット10内に1つのピエゾアクチュエータ12の回路だけを記載したが、実際は複数のノズルに対応したピエゾアクチュエータ12が複数存在する。また、ヘッドユニット10を複数個つなぎ合わせて1つのインクジェットヘッドを構成する態様もある。
【0060】
ヘッドユニット10内の各ピエゾアクチュエータ12には、個々のピエゾアクチュエータ12の駆動選択(ON/OFFの制御)を行うためのスイッチ素子14を含んだ負荷制御回路16(スイッチ回路)が設けられている。負荷制御回路16についても、図1では1回路のみを示したが、個々のピエゾアクチュエータ12に対応して同様の回路が複数存在する。
【0061】
また、複数のピエゾアクチュエータ12を短時間でスイッチ制御するため、その負荷制御回路16を制御する信号(画像データ)は、複数の回線(符号18)によって駆動基板20からヘッドユニット10へと送られる。図1では符号18で示した画像データを伝送する信号ラインを1回線のみ図示したが、実際は複数の回線を持つ。
【0062】
また、図12の符号352、308で説明したように、1つの信号(画像データ)回線は、複数個のピエゾアクチュエータ12をオン/オフさせる信号(「駆動選択信号」に相当)をシリアル転送するものとなっている。以下、この符号18で示した信号ラインを「画像信号ライン」という。
【0063】
図1において、画像信号ライン18以外に、個々のピエゾアクチュエータ12の駆動に必要な電気配線は、負荷電源ライン22と、負荷駆動電力ライン24と、コモン(COM)ライン26の3線である。
【0064】
図示の回路では、ヘッドユニット10と駆動基板20の間の電気接続はフローティング接続となっている。すなわち、駆動基板20側のグランド(GND)と、ヘッドユニット10におけるグランドとが完全に分離した状態(絶縁状態)となっている。なお、駆動基板20に搭載された電気回路を総称して「駆動回路」という場合がある。
【0065】
ヘッドユニット10の内部回路はピエゾアクチュエータ12の駆動構造上、基準電位をピエゾアクチュエータ12の駆動波形電圧としている。このためヘッドユニット10の電源(負荷電源ライン22から供給される負荷電源)は、負荷駆動電力ライン24の駆動波形電圧を基準とした電位となる。したがって、駆動回路側では、ヘッドユニット10に送信するピエゾアクチュエータ12の駆動選択信号(画像データ)について、駆動基板20の基準電位であるGND(符号30)からヘッド基準電位の駆動波形電圧へ電圧レベル変換を行っている。ピエゾアクチュエータ12の駆動に必要な駆動波形電圧は数十V[ボルト]程度であること、また、駆動波形はスキューが要求されることから電圧レベル変換を行う送信回路には高価なアイソレーション部品(図中符号34で示したアイソレータ・ドライバIC)を使用している。
【0066】
かかる構成により、各ノズルに対応する複数個のピエゾアクチュエータ12に対して、負荷駆動電力ライン24を通じて共通して駆動電力を流し、画像データに基づき、どの画素のノズルを駆動(吐出)させるかを選択するための駆動選択信号をヘッドユニット10に送る。ヘッドユニット10内には、各ピエゾアクチュエータ12に対応したスイッチ素子14が設けられており、画像信号ライン18で送られてくる駆動選択信号にしたがってスイッチ素子14のON/OFFを制御して、対応するピエゾアクチュエータ12の駆動選択を行う。これにより、画像データに対応した画素のノズルからインクの吐出を行うことができる。
【0067】
このような回路構成のインクジェットシステムにおいて、仮に、ヘッドユニット10の内部にあるインク室(各ノズルに対応した個別の圧力室や複数の圧力室と連通する共通液室など)からインクがリーク(漏洩)されると、ヘッドユニット10内部における電気回路の各配線の様々な箇所で電気ショートが発生する可能性がある。例えば、図1における負荷電源ライン22と画像信号ライン18の配線間の電気ショート(符号<1>)、画像信号ライン18と負荷駆動電力ライン24の配線間の電気ショート(符号<2>)、負荷駆動電力ライン24とコモン(COM)ライン26間の電気ショート(符号<3>)、或いはこれらの組合せなどが発生し得る。
【0068】
その結果、何ら対策を講じなければ、ヘッドユニット10と駆動基板20との配線においてショートが発生することから、駆動基板20の出力回路に過電流が流れ、回路を構成する部品が破壊される恐れがある。例えば、その部品破壊に至る範囲は、負荷電源を供給する負荷電源生成回路(「電源生成回路」に相当)32、個々のピエゾアクチュエータ12を駆動選択する画像データ送信回路(符号34で示すアイソレータ・ドライバICを含む回路)、ピエゾアクチュエータ12を駆動する駆動電力信号を出力する駆動電力増幅(アンプ)回路36である。
【0069】
ピエゾアクチュエータ12を駆動する駆動電力信号は、負荷駆動電力ライン24を介して0Vから数十V[ボルト]の電圧波形として伝送される。ヘッドユニット10へ供給される負荷電源は、この駆動波形電圧を基準としたデジタル電源(例えば+3.3V)となる。よって駆動基板20の基準電位GND(符号30)から見れば、駆動電源電位は駆動波形電圧(0V〜数十V)にデジタル電源(例えば+3.3V)がプラスされることになる。
【0070】
一方、ピエゾアクチュエータ12を駆動選択する信号(画像データ)は駆動波形電位を基準としたアイソレータ・ドライバIC34でデジタル伝送される。このドライバIC34は、出力電流が最大で数十mA[ミリアンペア]であり、インク漏れ等に起因する配線間ショート時のリーク電流がSink(吸い込み)、Source(吐き出し)共に定格を超えて流れる。Sink(吸い込み)での破壊要因は主に、ヘッド内部での負荷電源ライン22と画像信号ライン(受信入力側)18とのショートモードである。一方、Source(吐き出し)での破壊要因は主に、ヘッド内部での画像信号ライン18と負荷駆動電力ライン24とのショートモード或いは画像信号ライン18とコモン(COM)ライン26とのショートモードである。
【0071】
このような様々な配線間の電気ショートに対応した回路保護を実現するため、本実施形態に係る短絡検査装置は、電源制御回路40、モニタ選択回路42、電源短絡検査回路44、信号短絡検査回路46、検査切換回路48、短絡判定回路50を備えている。
【0072】
電源制御回路40は、絶縁型DC−DCコンバータで構成される負荷電源生成回路32のオン/オフ制御と、駆動電力増幅回路36の電源(+V)供給のオン/オフ制御を行う。モニタ選択回路42は、電源短絡検査回路44及び信号短絡検査回路46のうち稼働させる一方の短絡検査回路を選択する信号を出力する回路である。このモニタ選択回路42は、信号処理回路60からアイソレータ・ドライバIC34の前段34Aに入力される信号線に伝送されてくる選択信号(「モニタ選択信号」に相当)を受信し、その受信に係る信号に従い、電源短絡検査回路44内のスイッチ素子44A,44B及び信号短絡検査回路46のスイッチ素子46A,46Bのオン/オフを制御する信号(「電源短絡検査起動信号」、「信号短絡検査起動信号」に相当)を出力する。なお、スイッチ素子44A,44Bのペア(組)は連動して制御される。同様に、スイッチ素子46A,46Bのペア(組)は連動して制御される。
【0073】
電源短絡検査回路44は、負荷電源ライン22を検査対象として短絡の有無を検査する手段である。電源短絡検査回路44のスイッチ素子44Aは、負荷電源生成回路32とは別の電源(「検査用電源」に相当)から供給されるテスト電源電圧(+V)を負荷電源ライン22に印加し、又はその印加を解除する。
【0074】
電源短絡検査回路44は、アイソレータ・ドライバIC34の後段(出力側)34Bの画像信号ライン18に接続される抵抗器44Cとダイオード44Dの直列回路を含む。ダイオード44Dのカソード(陰極)端子はスイッチ素子44Bを介して検査切換回路48のスイッチ素子48Aの一端に接続される。
【0075】
信号短絡検査回路46は、画像信号ライン18を検査対象として短絡の有無を検査する手段である。この信号短絡検査回路46は、既述した電源短絡検査回路44と比較して、検査対象とする配線ラインは相違するが、主たる回路要素は電源短絡検査回路44と同様である。
【0076】
信号短絡検査回路46のスイッチ素子46Aは、モニタ選択回路42からの信号によって制御される。スイッチ素子46Aがオンすると、テスト電源電圧(+V)が画像信号ライン18に印加される。また、スイッチ素子46Aをオフにすると、テスト電源電圧(+V)の印加が解除さされる。
【0077】
信号短絡検査回路46は、駆動電力増幅回路36の出力ライン(負荷駆動電力ライン24)に接続される抵抗器46Cとダイオード46Dの直列回路を含む。ダイオード46Dのカソード(陰極)端子はスイッチ素子46Bを介して検査切換回路48のスイッチ素子48Aの一端に接続される。
【0078】
スイッチ素子48Aの他方の端子は、駆動回路のグランド(GND)ライン30に接続されている。このスイッチ素子48Aは、上位装置の制御部62から与えられるテストモード(TEST_MODE)信号によってオン/オフの制御が行われる。スイッチ素子48Aの制御により、モニタ選択回路42による検査回路の選択に応じて、電源短絡検査回路44の抵抗器44C又は信号短絡検査回路46の抵抗器46Cをグランド(GND)ライン30に接続したり、又は、グランド(GND)ライン30との接続を解除したりすることができる。
【0079】
駆動基板20上の駆動回路と、ヘッドユニット10とはグランドが完全に分離されているため、駆動基板20側からヘッドユニット10に検査用の電流を流すためには、戻りとして駆動回路側のグランド(符号30)に流す必要がある。
【0080】
このため本実施形態では、検査対象のラインを含む検査用の回路をグランドに接続するための検査切換回路48が設けられており、この検査切換回路48とモニタ選択回路42とが連携して電源短絡検査回路44又は信号短絡検査回路46の選択的な起動を実現している。
【0081】
信号処理回路60は、各ピエゾアクチュエータ12の駆動/非駆動を選択するための画像データ(ドットデータ)を生成する。信号処理回路60から出力された信号(画像データ)をアイソレータ・ドライバIC34によって電圧変換し、負荷制御回路16のスイッチ素子14をオン/オフ制御する駆動選択信号が生成される。また、信号処理回路60は、検査モード時に、検査対象のラインを選択するための検査対象選択信号(「モニタ選択信号」に相当、後述の「TEST_DATAn」)を生成する。
【0082】
信号処理回路60は、駆動基板20上に搭載されていてもよいし、駆動回路を制御する上位装置に搭載されていてもよい。また、図1では制御部62と信号処理回路60とを別々のブロックで示したが、これらを統合して一体の構成することも可能である。更に、電源制御回路40と制御部62とを統合して一つの制御回路として構成することも可能である。電源制御回路40、或いは、これと制御部62との組合せが「制御回路」に相当する。
【0083】
図2は、図1で説明した構成の更に具体的な回路例を示すものである。図2において、図1に示した要素と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。図2では、ヘッドユニット10内における多数のピエゾアクチュエータ12に対応して、画像信号ライン18が複数回線設けられている様子を示した。この画像データを伝送する信号バスライン68は、図2中不図示の信号処理回路(図1の符号60)に接続されている。この信号バスライン68からn個の回路に分岐して、それぞれの信号ライン(signal_1,signal_2,・・・signal_n)がヘッドユニット10内のピエゾアクチュエータ12の負荷制御回路16に接続される構成となっている。
【0084】
ヘッドユニット10は多数のノズルを有しているため、画像データの送信回線(画像信号ライン18)は多回線となっている。ヘッドユニット10内のノズル群を適当な数でグループ分けし、そのグループ単位で1回線を割り当て、複数ノズル分の画像データをシリアルデータで伝送する。
【0085】
信号処理回路60は、それぞれの信号ライン(signal_1,signal_2,・・・signal_n)について回線別に信号を出力することができる。本例では、第1信号ライン(signal_1)、第2信号ライン(signal_1)・・・、第n信号ライン(signal_n)の各回線について1回線ずつ、順次データ(選択信号)を送ることにより、全ての回線を個別に検査することができる。
【0086】
なお、図2では、省線化の観点から、短絡判定回路50が1つにまとめられているため、n本の回線を同時に検査することはできないが、短絡判定回路50を複数設けることにより、複数回線を同時に検査することも可能である。
【0087】
<駆動波形の生成について>
符号36で示した駆動電力増幅回路は、図12で説明した駆動回路320と同様である。すなわち、駆動波形のデジタルデータを記憶した記憶素子64(図1参照)からデジタルデータ列を順次読み出し、これを図示せぬD/Aコンバータでアナログ信号に変換する。そして、アナログ信号をオペアンプ70で増幅する。オペアンプ70の出力にはパワートランジスタ2個(Tr1,Tr2)からなるブースト回路が接続されており、負荷駆動電力ライン24に大きな出力電流に流せるようになっている。また、ブースト回路への電源(+V)の供給をオン/オフするための電源スイッチSW2が設けられており、この電源スイッチSW2は電源制御回路40によって制御される。
【0088】
<モニタ選択回路42について>
モニタ選択回路42は、PNPトランジスタTr3とNPNトランジスタTr4を並列に接続した構成を有し、トランジスタTr3,Tr4のベースに対し、信号バスライン68から信号(TEST_DATAn)が入力される。この信号(TEST_DATAn)は、検査対象のラインを選択するモニタ選択信号(「検査対象選択信号」に相当)である。TEST_DATAnの信号として、ロジック「L」レベルの信号が入力されると、電源短絡検査回路44が起動可能となる。また、TEST_DATAnの信号として、ロジック「H」レベルの信号が入力されると信号短絡検査回路46が起動可能となる。
【0089】
このように負荷電源ライン22の検査と、画像信号ライン18の検査とが同時に働かないように、モニタ選択回路42で択一的な選択が行われる。この検査対象の選択(切り換え)を指令する信号(データ)は、信号処理回路60から画像送信用のラインを利用して出力される。吐出駆動用の画像データが出力されないとき(吐出駆動停止期間中)に検査モードに移行し、この空いた画像送信用のラインを利用してモニタ選択信号をモニタ選択回路42に送る。これにより、省線化を図ることができる。
【0090】
<電源短絡検査回路44、信号短絡検査回路46について>
図2の電源短絡検査回路44におけるトランジスタTr5、Tr6は、それぞれ図1で説明したスイッチ素子44A、44Bに相当している。図2の信号短絡検査回路46におけるトランジスタTr7が図1で説明したスイッチ素子46Aに相当している。また、図2におけるトランジスタTr4が図1で説明したスイッチ素子46Bとして機能する。
【0091】
<短絡判定回路50について>
短絡判定回路50は、テスト電源電圧(+V)が印加された検査対象ライン(負荷電源ライン22又は画像信号ライン18)の電位を検出して、所定の基準値(閾値)と比較して、正常か異常かを示し信号を出力する比較判別回路52を有する。短絡判定回路50は、抵抗器R1,R2,R3を組み合わせた分圧回路(抵抗分割回路)を含み、比較判別回路52の入力端子には分圧回路で抵抗分割した電位が入力される。また、閾値の値については、テスト電源電圧(+V)から図示せぬ分圧回路で設定した規定電圧が比較判別回路52に入力される構成になっている。
【0092】
すなわち、比較判別回路52の入力スレッショルド(閾値)レベルを基に短絡有無を判定する電位を、抵抗器R1〜R3の分圧回路と、短絡発生時の検査切換回路48までに続く回路との分圧比で設定する。その構成図を図3の等価回路で示す。
【0093】
上述の「短絡発生時の検査切換回路48までに続く回路」とは、図3中符号54で示した部分であり、負荷電源ライン22の検査時の場合は、トランジスタTr5から配線間短絡部、抵抗器44C、ダイオード44D、トランジスタTr6、トランジスタTr8に至る回路となる。また、画像信号ライン18の検査時の場合は、トランジスタTr7から配線間短絡部、抵抗器46C、ダイオード46D、トランジスタTr4、トランジスTr8に至る回路となる。
【0094】
テスト電源電圧(+V)は、例えば+36Vに設定される。検査モード時にモニタ選択回路42によって選択される検査対象のラインに対して、このテスト電源電圧(+V)が印加されることになるが、抵抗器R1〜R3によって電流値が制限されており、仮に、回線短絡が発生している場合でも、アイソレータ・ドライバIC34の出力の定格電流に満たないレベルの電流が流れる程度であり、駆動基板20上の回路部品を破壊しないようになっている。
【0095】
比較判別回路52は、入力電位が正常か異常かを2値(「0」か「1」)で出力するデジタル回路を採用することができる。例えば、A/Dコンバータやアナログ・コンパレータを用いることができる。
【0096】
本例の比較判別回路52は、短絡異常がある場合に「1」を出力し、正常時には「0」を出力するように構成される。この判別結果の信号は制御部62に送られ、電源制御回路40の制御に用いられる。
【0097】
次に、上記のごとく構成された検査装置の動作について説明する。
【0098】
本例のインクジェット記録装置は、ヘッドユニット10を吐出駆動させる通常の動作モード(「駆動モード」に相当)とは別に、吐出駆動を行わない状態で、回路系に電気ショートによる異常が発生していないかどうかを検査するモードを有する。この検査用動作モード(「検査モード」或いは「テストモード」という。)は、以下の手順で動作する。
【0099】
(工程1):まず、電源制御回路40により負荷電源生成回路32と駆動電力増幅回路36の電源をオフする。具体的には、負荷電源生成回路32の電源スイッチSW1(不図示)をオフにするとともに、駆動電力増幅回路36の電源スイッチSW2(図2参照)をオフにする。これは、検査時における出力回路(アイソレータ・ドライバIC34を含む画像データ送信回路)の破壊防止と動作停止、並びに検査回路の動作保証のために行うものである。
【0100】
(工程2):次に、信号処理回路60から検査モード時において、電源短絡検査を行うか、或いは信号短絡検査を行うかを選択するためのデータ信号(ここでは「モニタ選択信号」という。「検査対象選択信号」に相当)を送信する。なお、信号処理回路60は、ヘッドユニット10から液滴を吐出させる通常の動作モード(「駆動モード」という。)時において、吐出ノズルに対応したピエゾアクチュエータ12を選択する信号(画像データ)を送信するが、検査モード時の期間は、電源短絡検査、或いは信号短絡検査の検査対象を選択するロジックレベル(「H(ハイ)」又は「L(ロー)」の信号)を送信する(図4のタイミングチャート参照)。
【0101】
(工程3):モニタ選択回路42は、信号処理回路60からアイソレータ・ドライバIC34の前段(34A)に入力される画像信号ラインに伝送されてくるモニタ選択信号を受信し、その受信に係る選択信号にしたがって電源短絡検査回路44及び信号短絡検査回路46のうち、稼動させる短絡検査回路を選択する。
【0102】
(工程4):また、検査モード時において、検査切換回路48にテストモード信号(TEST_MODE信号)を入力し、この信号によってスイッチ素子48A(図2におけるトランジスタTr8に相当)を閉じて電源短絡検査回路44及び信号短絡検査回路46をGNDライン30に接続し、短絡検査回路(44又は46)を動作させる。本例のTEST_MODE信号は「Hレベル」の信号とし、制御部62(図1参照)から発生する。
【0103】
こうして、電源短絡検査回路44及び信号短絡検査回路46がGND接続されると、これら短絡検査回路(44又は46)が動作待機状態となり、モニタ選択回路42で出力される起動信号(短絡検査回路の選択信号)によって各回路は動作開始となる。
【0104】
(工程5):モニタ選択回路42により選択された短絡検査回路(44又は46)は、スイッチ素子44A又は46Aを閉じてテスト電源電圧Vを検査対象の負荷接続ライン(負荷電源ライン22又は画像信号ライン18)に印加する一方、スイッチ素子44B又は46Bを閉じて検査対象のラインのリーク電流が流れ込むライン(画像信号ライン18又は負荷駆動電力ライン24)を終端抵抗(抵抗器44C又は46C)とともにグランド(GND)ライン30に接続する。選択される短絡検査回路と各ラインの接続関係について表1に整理した。
【0105】
【表1】

【0106】
(工程6):短絡判定回路50は、検査対象ライン(負荷電源ライン22又は画像信号ライン18)にテスト電源電圧(+V)を印加した場合の当該対象ラインの電位を検出器閾値と比較し、正常/異常を判定する回路である。ヘッドユニット10内でインクリーク等が発生し、検査対象ラインが電気ショートした場合は、印加電圧に対して低電圧を検出するため、「異常」と判定し、エラー結果を出力する。この判定結果の信号は図1で説明した制御部62に送られる。
【0107】
(工程7):上記「工程6」でエラー判定した場合は、負荷電源生成回路32と駆動電力増幅回路36の電源をONさせない。つまり、制御部62は、負荷電源生成回路32の電源スイッチSW1をオフ状態で維持するとともに、駆動電力増幅回路36の電源スイッチSW2をオフ状態で維持するよう、電源制御回路40を制御する。こうして、ヘッドユニット10に対するピエゾアクチュエータ12の駆動信号の出力を禁止する。
【0108】
更に、当該エラー情報をホストコンピュータなどの上位装置に通信し、エラーメッセージの表示や音声等による警告など、適宜の報知手段によって警告を行う態様も好ましい。
【0109】
このように、エラー発生時は負荷電源生成回路32と駆動電力増幅回路36の電源ONを許可しないことで、駆動基板20上の出力回路(アイソレータ・ドライバIC34等)を保護する。
【0110】
図4は、検査モード時における画像信号ライン18に流れる信号のタイミングチャートである。図4の(a)の前段部分に示したように、通常の駆動モードによる吐出駆動時(通常駆動時)には各ピエゾアクチュエータ12の選択信号に相当する画像データが送られる。このとき、テストモード(TEST_MODE)信号はロジック「L」レベルであり、検査切換回路48のスイッチ素子48Aはオフ状態であって、各短絡検査回路(44,46)は動作しない。
【0111】
駆動モードによる画像データの送信が停止されている状態で、その停止中の適宜のタイミングでテストモード(検査モード)に移行する。検査モードに移行するタイミングは、駆動モードによる駆動を開始する前でもよいし、印刷ジョブ間や一定枚数の印刷後など、駆動モードによる動作後であってもよい。検査モードに入ると、「工程1」で説明したように、負荷電源生成回路32と駆動電力増幅回路36の電源がオフされる。そして、「テストモード信号(TEST_MODE信号)」がアクティブレベル(Hレベル)となる。テストモード信号がHレベルになると、画像信号ライン18の検査選択信号のデータが有効となる。
【0112】
こうして、検査モード時には、画像信号ライン18の回線に短絡検査回路(44,46)を選択する信号(検査対象の配線ラインを選択する信号とも言える)が信号処理回路60から送信される。図4の例では、まず電源短絡検査を選択する信号(ロジック「L」レベルの信号)が出力され、その後、信号短絡検査を選択する信号(ロジック「H」レベルの信号)が出力されているが、検査の順序は特に限定されず、入れ替え可能である。
【0113】
本例では、負荷電源ライン22を検査対象とする電源短絡検査回路44は、Lレベルでアクティブとなり、画像信号ライン18を検査対象とする信号短絡検査回路はHレベルでアクティブとなる。
【0114】
図4(b)で示したように、TEST_MODE信号がアクティブレベル、すなわち、ロジック「H」レベルになると、画像信号ライン18のモニタ選択信号のデータが有効となり、モニタ選択回路42によって選択信号が有効データとして入力され、該当の短絡検査回路が起動する。
【0115】
TEST_MODE信号をアクティブレベルで維持した状態で、モニタ選択信号のハイ(H)/ロー(L)を切り換えることにより、検査対象を変更して連続的に検査を行うことができる。また、複数回線について検査を行う場合には、TEST_MODE信号をアクティブレベルに維持した状態で、対象とする回線毎にモニタ選択信号を流し、順次検査を行う。
【0116】
次に、電源短絡検査回路44、信号短絡検査回路46のそれぞれについて、各回路が起動して短絡検出を行うまでの回路動作について説明する。
【0117】
<負荷電源ラインの短絡検査>
図5は、電源短絡検査回路44の動作を説明するための要部回路図である。
【0118】
電源短絡検査の場合、信号処理回路60(図1参照)の出力からロジック“L”レベルのモニタ選択信号(TEST_DATAn)が送信される(n=1,2,・・・)。このモニタ選択信号(TEST_DATAn)は、モニタ選択回路42のトランジスタTr3のベース端子に印加される。
【0119】
また、検査切換回路48の制御端子に入力されるTEST_MODE信号がアクティブ(ロジック「H」レベル)になると、検査切換回路48のトランジスタTr8がオンするとともに、モニタ選択回路42に入力されている先の選択信号(TEST_DATAn)が有効となる(図4のタイミングチャート参照)。
【0120】
すなわち、モニタ選択回路42に入力されたロジック「L」レベルの選択信号(TEST_DATAn)によって、当該モニタ選択回路42のトランジスタTr3がオンし、負荷電源生成回路32とは別の電源(+V)から該トランジスタTr3を介して電源短絡検査回路44のトランジスタTr6のベースに電流が流れる。すると、このトランジスタTr6がオンする。さらに、検査切換回路48に検査モードのトリガ信号であるTEST_MODE信号(Hレベル)が入力されると、トランジスタTr8がスイッチオンして、図中の[7]→[8]→[9]の経路がグランドに接続される。これにより、電源短絡検査回路44のトランジスタTr5がオンし、テスト電源電圧(+V)から負荷電源ライン22へと電流が流れる経路([1]→[2])形成される。こうして電源短絡検査回路44が起動し、図5のテスト電源電圧(+V)から[1]→[2]の経路を通して、負荷電源ライン22にテスト電源電圧(+V)が印加される。
【0121】
すなわち、検査切換回路48に対してTEST_MODE信号(Hレベル)が入力され、トランジスタTr8がスイッチオンして、電源短絡検査回路44のトランジスタTr6のエミッタがグランドに接続されることが、検査切換回路48からの「起動許可信号」に相当している。また、モニタ選択回路42のトランジスタTr3がオンして、該トランジスタTr3のコレクタを介して電源短絡検査回路44のトランジスタTr6のベースに電圧が印加されることが、モニタ選択回路42からの「電源短絡検査起動信号」を受信したことに相当している。
【0122】
ヘッドユニット10内で負荷電源ライン22と画像信号ライン18とがショートしていなければ、負荷電源ライン22と画像信号ライン18の配線間([3]→[4])に電流は流れないため、短絡判定回路50の比較判別回路52には、抵抗器R1,R2,R3の抵抗分割で定まる所定の分圧電圧が入力される。この正常状態(ショート無し)の場合、短絡判定回路50はロジック「H」レベルを検出して、正常である旨を示すノンエラーの信号を出力する。この短絡判定回路50から出力される判定信号は図1で説明した制御部62に送られる。
【0123】
その一方、ヘッドユニット10内で負荷電源ライン22と画像信号ライン18とがショートしていれば、負荷電源ライン22と画像信号ライン18の配線間([3]→[4])に電流が流れるため、画像信号ライン18に接続された抵抗器44C→トランジスタTr6→トランジスタTr8→グランド(GND)のルートで(図5中の[5]→[6]→[7]→[8]→[9]のルート)でGNDライン30に到達する。
【0124】
この結果、[1]で示した箇所(トランジスタTr5のエミッタの電位)は、ショートが発生していない場合と比較して低電位となる。この場合、短絡判定回路50はロジック「L」レベルを検出して、エラー信号を出力する。このエラー信号を受けた制御部62は、ヘッドユニット10への負荷電源の供給を禁止するとともに、駆動電力増幅回路36への電源供給を禁止する。なお、検査モードにおいて、負荷電源の供給と駆動電力の供給を停止して検査を行っているため、短絡異常を検知した際には、この供給停止状態を維持し続けることになる。
【0125】
<画像信号ラインの短絡検査>
図6は、信号短絡検査回路46の動作を説明するための要部回路図である。
【0126】
信号短絡検査の場合、信号処理回路60(図1参照)の出力からロジック“H”レベルの選択信号(TEST_DATAn)が送信される。また、検査切換回路48の制御端子に検査モードを示すTEST_MODE信号が入力されると(TEST_MODE信号がアクティブになると)、モニタ選択回路42に入力されている先の選択信号(TEST_DATAn)が有効となる。そして、モニタ選択回路42のトランジスタTr4がオンするとともに、検査切換回路48のトランジスタTr8がオンし、図6中の[8]→[9]→[10]のルートが導通して、[6]→[7]→[8]→[9]→[10]の電流経路が形成される。
【0127】
こうして、信号短絡検査回路46が起動し、図6のテスト電源電圧(+V)から[1]→[2]の経路を通して、画像信号ライン18に電流(テスト電流)が流れる。
【0128】
すなわち、検査切換回路48のトランジスタTr8がオンして、モニタ選択回路42のトランジスタTr4のエミッタがグランドに接続されることが、検査切換回路48からの「起動許可信号」を受信したことに相当している。また、モニタ選択回路42のトランジスタTr4がオンして、該トランジスタTr4のコレクタにつながる信号短絡検査回路46のトランジスタTr7のベース電位が下がり、トランジスタTr7がスイッチオンすることが、モニタ選択回路42から「信号短絡検査起動信号」を受信したことに相当している。
【0129】
ヘッドユニット10内で画像信号ライン18と負荷駆動電力ライン24とがショートしていなければ、画像信号ライン18と負荷駆動電力ライン24との配線間([3]→[4])に電流は流れないため、短絡判定回路50の比較判別回路52には、抵抗器R1,R2,R3の抵抗分割で定まる所定の分圧電圧が入力される。この正常状態(ショート無し)の場合、短絡判定回路50はロジック「H」レベルを検出して、正常である旨を示すノンエラーの信号を出力する。この短絡判定回路50から出力される判定信号は図1で説明した制御部62に送られる。
【0130】
その一方、ヘッドユニット10内で画像信号ライン18と負荷駆動電力ライン24とがショートしていれば、両配線間([3]→[4])に電流が流れるため、負荷駆動電力ライン24に接続された抵抗器46C→トランジスタTr4→トランジスタTr8→グランド(GND)を経由する経路で(図6中の[5]→[6]→[7]→[8]→[9]→[10]のルート)GNDライン30に到達する。
【0131】
この結果、[1]で示した箇所(トランジスタTr7のエミッタの電位)は、ショートが発生していない場合と比較して低電位となる。この場合、短絡判定回路50はロジック「L」レベルを検出して、エラー信号を出力する。このエラー信号を受けた制御部62は、ヘッドユニット10への負荷電源の供給を禁止するとともに、駆動電力増幅回路36への電源供給を禁止する。
【0132】
このように、電源短絡検査及び信号短絡検査のいずれか一方の検査で異常が検出された場合には、負荷電源供給並びに駆動電力信号の出力が禁止されるため、駆動回路を保護することができる。なお、電源短絡検査及び信号短絡検査のいずれにおいても異常が検出されなかった場合には、駆動回路を正常に作動させることができるため、制御部62は通常モードに移行することができ、吐出動作を行うことができる。
【0133】
<図5,図6以外の配線間の短絡現象について>
図5では負荷電源ライン22と画像信号ライン18の間の短絡検査を説明し、図6では画像信号ライン18と負荷駆動電力ライン24間の短絡検査を説明したが、他の組合せの配線間で短絡が発生している場合も図5,図6のいずれかで検知可能である。
【0134】
例えば、負荷駆動電力ライン24とコモン(COM)ライン26が短絡すると、これら2線が同電位になるため、仮に画像信号ライン18とコモン(COM)ライン26間で短絡が発生していれば、図6と同様に、画像信号ライン18からグランドに電流が流れて、画像信号ライン18の電位が低下する。したがって、短絡異常を検知することが可能である。
【0135】
本実施形態によれば、既存の信号回線である画像信号ライン18を用いて検査対象回線の選択信号を送信することができる。これにより、新たに選択信号用の信号線を追加的に設ける必要がなく、省線化が可能である。また、小規模の回路で対応可能であり、検査用部品の実装スペースを小さくすることができる。
【0136】
本実施形態は、電圧変換型の検査回路を採用しているため、フローティング電圧回路に対応できる。通常の吐出駆動動作に必要な回路に対して、本発明による検査回路を直結する回路構成が可能である。更に、画像信号ライン18或いは負荷電源ラインとリターンパスライン間のショートを検出できる。
【0137】
更に、本実施形態によれば、多数のピエゾアクチュエータ12に対応した多回線のドライバ出力ラインの状態を一度に検査することができる。したがって、短時間での検査が可能であり、通常のプリントシーケンス毎に検査モードに移行して、検査を行うことができる。また、これら多回線の信号ラインについて、回線異常であるか(ハードウェアに関する異常)、データ異常であるか(ソフトウェア上の問題)、不具合の原因を切り分けることが可能である。
【0138】
<インクジェット記録装置の構成例>
図1乃至図6で説明した短絡検査装置を搭載したインクジェット記録装置の構成例を説明する。図7は本発明の実施形態に係る短絡検査装置を搭載したインクジェット記録装置100の構成図である。このインクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0139】
図示のように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122を備えて構成される。
【0140】
(給紙部)
給紙部112は、記録媒体124を処理液付与部114に供給する機構であり、当該給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されている。給紙部112には、給紙トレイ150が設けられ、この給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。
【0141】
本例のインクジェット記録装置100では、記録媒体124として、紙種や大きさ(用紙サイズ)の異なる複数種類の記録媒体124を使用することができる。給紙部112において各種の記録媒体をそれぞれ区別して集積する複数の用紙トレイ(不図示)を備え、これら複数の用紙トレイの中から給紙トレイ150に送る用紙を自動で切り換える態様も可能であるし、必要に応じてオペレータが用紙トレイを選択し、若しくは交換する態様も可能である。なお、本例では、記録媒体124として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0142】
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0143】
図7に示すように、処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体124を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
【0144】
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。
【0145】
本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0146】
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
【0147】
(描画部)
描画部116は、描画ドラム170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
【0148】
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0149】
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
【0150】
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
【0151】
上述のように、記録媒体124の画像形成領域の全幅をカバーするノズル列を有するフルラインヘッドがインク色毎に設けられる構成によれば、描画ドラム170によって記録媒体124を一定の速度で搬送し、この搬送方向(副走査方向)について、記録媒体124と各インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yを相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体124の画像形成領域に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
【0152】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0153】
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録媒体124の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録媒体124の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録媒体124の幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録媒体124の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録媒体124の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
【0154】
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図7に示すように、乾燥ドラム176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。
【0155】
乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0156】
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。
【0157】
各温風噴出しノズル182から記録媒体124に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ180の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
【0158】
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
【0159】
(定着部)
定着部120は、定着ドラム184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0160】
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
【0161】
定着ローラ188は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体124を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体124は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
【0162】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、紫外線(UV)露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置100は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ188)の代わりに、記録媒体124上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。
【0163】
インラインセンサ190は、記録媒体124に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0164】
(排紙部)
図7に示すように、定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。
【0165】
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0166】
<インクジェットヘッドの構造>
次に、インクジェットヘッドの構造について説明する。各色に対応するインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
【0167】
図8(a) はヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図8(b) はその一部の拡大図である。また、図9はヘッド250の他の構造例を示す平面透視図、図10は記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル251に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図8中のA−A線に沿う断面図)である。
【0168】
図8に示したように、本例のヘッド250は、インク吐出口であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)253をマトリクス状に2次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0169】
記録媒体124の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に記録媒体124の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図8(a) の構成に代えて、図9(a)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール250’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体124の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成する態様や、図9(b)に示すように、ヘッドモジュール250”を一列に並べて繋ぎ合わせる態様もある。
【0170】
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており(図8(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル251への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)254が設けられている。なお、圧力室252の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。 図10に示すように、ヘッド250は、ノズル251が形成されたノズルプレート251Aと圧力室252や共通流路255等の流路が形成された流路板252P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート251Aは、ヘッド250のノズル面(インク吐出面)250Aを構成し、各圧力室252にそれぞれ連通する複数のノズル251が2次元的に形成されている。
【0171】
流路板252Pは、圧力室252の側壁部を構成するとともに、共通流路255から圧力室252にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口254を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図10では簡略的に図示しているが、流路板252Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
【0172】
ノズルプレート251A及び流路板252Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0173】
共通流路255はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に供給される。
【0174】
圧力室252の一部の面(図10において天面)を構成する振動板256には、個別電極257を備えたピエゾアクチュエータ258(図1で説明した「ピエゾアクチュエータ12」に相当)が接合されている。本例の振動板256は、ピエゾアクチュエータ258の下部電極に相当する共通電極259として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室252に対応して配置されるピエゾアクチュエータ258の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
【0175】
個別電極257に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ258が変形して圧力室252の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル251からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ258が元の状態に戻る際、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に再充填される。
【0176】
かかる構造を有するインク室ユニット253を図8(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル251が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0177】
また、本発明の実施に際してヘッド250におけるノズル251の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図8で説明したマトリクス配列に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
【0178】
<制御系の説明>
図11は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース270、システムコントローラ272、メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278、プリント制御部280、画像バッファメモリ282、ヘッドドライバ284等を備えている。
【0179】
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ286から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース270にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ286から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ274に記憶される。
【0180】
メモリ274は、通信インターフェース270を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ272を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ274は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0181】
システムコントローラ272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ272は、通信インターフェース270、メモリ274、モータドライバ276、ヒータドライバ278等の各部を制御し、ホストコンピュータ286との間の通信制御、メモリ274の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ288やヒータ289を制御する制御信号を生成する。
【0182】
ROM290には各種制御プログラムや各種のパラメータ等が格納されており、システムコントローラ272の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。
【0183】
メモリ274は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0184】
モータドライバ276は、システムコントローラ272からの指示にしたがってモータ288を駆動するドライバである。図11では、装置内の各部に配置される様々なモータを代表して符号288で図示している。
【0185】
ヒータドライバ278は、システムコントローラ272からの指示にしたがって、ヒータ289を駆動するドライバである。図11では、装置内の各部に配置される様々なヒータを代表して符号289で図示している。
【0186】
プリント制御部280は、システムコントローラ272の制御に従い、メモリ274内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ284に供給する制御部である。
【0187】
ドットデータは、一般に多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置100で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0188】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータ(本例では、KCMYのドットデータ)に変換する処理である。
【0189】
プリント制御部280において所要の信号処理が施され、得られたドットデータに基づいて、ヘッドドライバ284を介してヘッド250のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0190】
プリント制御部280には画像バッファメモリ282が備えられており、プリント制御部280における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ282に一時的に格納される。また、プリント制御部280とシステムコントローラ272とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0191】
ヘッドドライバ284は、図1で説明した駆動電力増幅回路36及びアイソレータ・ドライバIC34、モニタ選択回路42、電源短絡検査回路44、信号短絡検査回路46等を含んで構成される。なお、図11に示すヘッドドライバ284には、ヘッド250の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0192】
図1で説明したとおり、本例に示すインクジェット記録装置100は、各ピエゾアクチュエータ258に共通の駆動電力波形信号を印加し、各ピエゾアクチュエータ258の吐出タイミングに応じて各ピエゾアクチュエータ258の個別電極に接続されたスイッチ素子14(図1参照)のオンオフを切り換えることで、各ピエゾアクチュエータ258に対応するノズル251からインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0193】
図11におけるプリント制御部280は、図1で説明した信号処理回路60に相当しており、図11におけるシステムコントローラ272或いはこれとプリント制御部280との組合せが図1で説明した制御部62に相当している。
【0194】
<他の装置への応用例>
上記の実施形態では、印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを得るインクジェットシステムにも広く適用できる。
【符号の説明】
【0195】
10…ヘッドユニット、12…ピエゾアクチュエータ、14…スイッチ素子、16…負荷制御回路、18…画像信号ライン、20…駆動基板、22…負荷電源ライン、24…負荷駆動電力ライン、26…コモンライン、32…負荷電源生成回路、34…アイソレータ・ドライバIC、36…駆動電力増幅回路、40…電源制御回路、42…モニタ選択回路、44…電源短絡検査回路、46…信号短絡検査回路、48…検査切換回路、50…短絡判定回路、60…信号処理回路、62…制御部、100…インクジェット記録装置、251…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルに対応して設けられたピエゾアクチュエータと、前記ピエゾアクチュエータの駆動/非駆動を選択的に切り換える負荷制御回路とを有し、前記負荷制御回路で駆動選択された前記ピエゾアクチュエータを駆動することにより、対応するノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドと、
前記ピエゾアクチュエータの駆動に必要な負荷電源、駆動選択信号及び駆動電力を前記インクジェットヘッドに出力する電気回路を含んだ駆動回路とを備え、
前記インクジェットヘッドと前記駆動回路の間の電気接続をフローティング接続とした構成のインクジェットシステムに搭載される短絡検査装置であって、
前記負荷制御回路に前記負荷電源を供給する電源生成回路と、
前記電源生成回路が生成する前記負荷電源を前記インクジェットヘッドに伝送する負荷電源ラインに接続され、当該負荷電源ラインを検査対象として短絡検査を行う電源短絡検査回路と、
前記ピエゾアクチュエータの駆動/非駆動を選択するための前記駆動選択信号を伝送する信号ラインに接続され、当該信号ラインを検査対象として短絡検査を行う信号短絡検査回路と、
前記電源短絡検査回路又は前記信号短絡検査回路による短絡検査を行う検査モードの際に前記電源生成回路からの前記負荷電源の供給を停止させる制御回路と、
前記検査モード時における前記短絡検査の検査対象として前記負荷電源ライン又は前記信号ラインのいずれか一方のラインを選択するモニタ選択回路と、
前記検査モード時に、前記モニタ選択回路の動作を可能にするとともに、前記電源短絡検査回路又は前記信号短絡検査回路の動作を可能にする一方、前記ノズルから液滴を吐出させる駆動モード時には、前記モニタ選択回路、前記電源短絡検査回路及び前記信号短絡検査回路を動作不能な状態にする検査切換回路と、
前記検査モード時に前記モニタ選択回路の選択に係る前記検査対象のラインに検査用電源を接続し、当該検査対象のライン上の電位を検出して回線短絡の有無を判定する短絡判定回路と、
を備え、前記短絡判定回路により回線短絡を検知した場合に、前記インクジェットヘッドに対する前記負荷電源の供給、前記駆動選択信号の送出、及び前記駆動電力の供給が停止されることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記駆動回路は、前記ピエゾアクチュエータを駆動させる電圧波形の駆動電力信号を出力する駆動電力増幅回路を含み、
前記駆動電力増幅回路から出力される駆動波形電圧が前記負荷電源並びに前記駆動選択信号の基準電位となっていることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記制御回路は、前記検査モードにおいて前記駆動電力増幅回路の電源供給を停止させることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御回路は、前記短絡判定回路により回線短絡を検知した場合は、前記電源生成回路の出力を停止させるとともに、前記駆動電力増幅回路の電源供給を停止させることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記検査切換回路は、検査モードに移行することを示すトリガ信号の入力に基づいて前記電源短絡検査回路及び前記信号短絡検査回路の起動を許可する起動許可信号を出力するとともに、前記モニタ選択回路の選択に係る前記検査対象のラインから回線短絡によって電流が流れ込む配線ラインを前記駆動回路のグランドにスイッチ接続して終端することを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記ピエゾアクチュエータの駆動/非駆動を選択する信号を生成する信号処理回路を有し、前記信号処理回路が出力する前記信号を電圧変換することにより前記駆動選択信号が生成される一方、前記信号処理回路は、検査モード時に、前記短絡検査の検査対象とする前記負荷電源ライン又は前記信号ラインのいずれか一方のラインを選択する信号として、前記電源短絡検査回路又は前記信号短絡検査回路を選択起動させるためのモニタ選択信号を生成し、
該モニタ選択信号は、前記ピエゾアクチュエータの駆動/非駆動を選択する信号を伝送する信号ラインを利用して前記モニタ選択回路に入力されることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
前記駆動選択信号を伝送する前記信号ラインを利用して前記モニタ選択回路に入力されることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記モニタ選択信号は、前記電源短絡検査回路及び前記信号短絡検査回路のうち一方の短絡検査回路を選択起動するハイ(H)レベルと、他方の短絡検査回路を選択起動するロー(L)レベルのロジック2値信号であることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記信号ラインの回線が複数設けられ、これら複数回線のうち前記検査対象とする1回線とその他の回線に対して異なるモニタ選択信号が送信され、個別回線を検査可能であることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか1項において、
前記モニタ選択回路は、前記検査切換回路からの前記電源短絡検査回路及び前記信号短絡検査回路の起動を許可する起動許可信号によって、前記モニタ選択信号に応じた前記電源短絡検査回路又は前記短絡検査回路を起動することを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記電源短絡検査回路は、前記検査切換回路からの起動許可信号によって前記モニタ選択回路からの電源短絡検査起動信号を受信することにより、
前記信号ラインを前記検査切換回路にスイッチ接続し、当該検査切換回路を介して前記信号ラインを前記駆動回路のグランドにつなげるとともに、前記検査用電源を前記負荷電源ラインにスイッチ接続することを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記駆動回路は、前記ピエゾアクチュエータを駆動させる電圧波形の駆動電力信号を前記インクジェットヘッドに伝送する負荷駆動電力ラインを有し、
前記信号短絡検査回路は、前記検査切換回路からの起動許可信号によって前記モニタ選択回路からの信号短絡検査起動信号を受信することにより、
前記負荷駆動電力ラインを前記検査切換回路にスイッチ接続して当該検査切換回路を介して前記負荷駆動電力ラインを前記駆動回路のグランドにつなげるとともに、前記検査用電源を前記信号ラインにスイッチ接続することを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項において、
前記信号ラインを介して前記駆動選択信号を前記インクジェットヘッドに出力する送信回路としてアイソレータ・ドライバICを用いたことを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項において、
前記短絡判定回路は、前記検査モード時に前記検査対象のラインに前記検査用電源からテスト電圧を印加して、当該ライン上の電位を閾値と比較して回線短絡の有無を判別し、その判定結果の信号を出力することを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記検査用電源の電圧印加は、前記検査対象となるラインの回線の送信回路出力における定格電流以下に設定していることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。
【請求項15】
請求項13又は14において、
前記検査対象のライン上の電位を比較する前記閾値は、当該ラインに印加される前記検査用電源の電圧からグランドを基準として抵抗で分圧設定していることを特徴とするインクジェットシステムの短絡検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−37196(P2011−37196A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188347(P2009−188347)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】