説明

インクジェットプリンタ

【課題】容易に粘度を調整できるインクジェットプリンタの提供を目的とする。
【解決手段】インクジェットプリンタは、プリントヘッド1と、該プリントヘッド1にインク液を供給するインク液供給部4と、インク液をインク液供給部4に戻すインク液回収部3と、インク液の粘度を検出する粘度検出手段2と、インク液の粘度を所定値に調整する粘度調整手段6と備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インク液回収部3は、インク液の流路を分岐部によって流路抵抗の大きい流路13と流路抵抗の小さい流路14とに分岐し、これらのうち一方の流路にインク液が流れるよう切り替えるバルブ15が分岐部16に設けられ、粘度検出手段2により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合に、インク液を流路抵抗の小さい流路13に流すようバルブを切り替える制御部9を備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに係り、更に詳しくは連続式インクジェットプリンタに使用されるインク液の粘度調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットプリンタは、インク液供給部から供給されたインク液をノズルから噴射し、噴射されたインク粒子のうち印字に使用されるインク粒子を偏向させて所定の画像を印字するとともに、印字に使用されないインク粒子をガターにより捕獲し、ガターにより捕獲されたインク液をインク液供給部に戻し、再度印字に利用するようになっている。
【0003】
このようなインクジェットプリンタで、適切な印字を行うにはインク液の粘度を一定に保つ必要がある。
【0004】
そこで、下記特許文献1には、プリントヘッド内にヒーターを設置し、常にインク液を加温して粘度を一定に保つよう制御するとともに、粘度が低くなりすぎたときは加温を止めてインク粘度を上昇させる技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平07−137294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の粘度調整方法では、粘度制御は可能であるが、プリントヘッド内にノズルを加温するヒーター及びインク液の温度を検出するセンサを設ける必要があり、また、ヒーターの加温を制御する制御部も要する。よって、プリントヘッドの構造が複雑となるとともに、プリントヘッド自体が大きくなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、容易に粘度を調整できるインクジェットプリンタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットプリンタは、ノズルから噴射したインク粒子のうち印字に使用されるインク粒子を偏向させて所定の画像を印字するとともに、印字に使用されないインク粒子をガターにより捕獲するプリントヘッドと、該プリントヘッドにインク液を供給するインク液供給部と、プリントヘッドのガターにより捕獲されたインク液をインク液供給部に戻すインク液回収部と、インク液供給部におけるインク液の粘度を検出する粘度検出手段と、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度に応じてインク液供給部のインク液の粘度を所定値に調整する粘度調整手段とを備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インク液回収部は、インク液の流路を分岐部によって流路抵抗の大きい流路と流路抵抗の小さい流路とに分岐し、これらのうち一方の流路にインク液が流れるよう切り替えるバルブが分岐部に設けられ、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合に、インク液を流路抵抗の小さい流路に流すようバルブを切り替える制御部を備えた構成にしてある。
【0009】
また、ノズルから噴射したインク粒子のうち印字に使用されるインク粒子を偏向させて所定の画像を印字するとともに、印字に使用されないインク粒子をガターにより捕獲するプリントヘッドと、該プリントヘッドに供給されるインク液を貯留するインクタンクを備え、インクタンクからプリントヘッドにインク液を供給するインク液供給部と、プリントヘッドのガターにより捕獲されたインク液をインク液供給部に戻すインク液回収部と、インク液供給部におけるインク液の粘度を検出する粘度検出手段と、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度に応じてインク液供給部のインク液の粘度を所定値に調整する粘度調整手段とを備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インク液回収部は、インク液の流路を、インクタンクの気相中に連通する気相連通流路とインクタンクのインク液中に連通する液相連通流路とに分岐部によって分岐し、これらのうち一方の流路にインク液が流れるよう切り替えるバルブが分岐部に設けられ、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合にインク液を液相連通流路に流すようバルブを切り替える制御部を備えたものである。
【0010】
そして、ノズルから噴射したインク粒子のうち印字に使用されるインク粒子を偏向させて所定の画像を印字するとともに、印字に使用されないインク粒子をガターにより捕獲するプリントヘッドと、該プリントヘッドに供給するインク液を貯留するインクタンクを備え、インクタンクからプリントヘッドにインク液を供給するインク液供給部と、プリントヘッドのガターにより捕獲されたインク液をインク液供給部に戻すインク液回収部と、インク液供給部におけるインク液の粘度を検出する粘度検出手段と、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度に応じてインク液供給部のインク液の粘度を所定値に調整する粘度調整手段とを備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インク液回収部は、インク液が流通する流路を、流路抵抗が大きく且つインクタンクの気相中に連通する気相連通流路と、流路抵抗の小さく且つインクタンクのインク液中に連通する液相連通流路とに分岐部によって分岐し、該分岐部に、これらの流路のうち一方の流路にインク液が流れるようを切り替えるバルブが設けられ、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合に、液相連通流路にインク液を流すようバルブを切り替える制御部を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合に、インク液を流路抵抗の小さい流路に流すようバルブを切り替えるので、インク液が流路抵抗の小さい流路を通過する際、溶剤の揮発が促進され、インク液の粘度を速やかに上昇させることができ、インク液の粘度を早急に所定値に戻すことができる。
【0012】
また、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した際に、インク液を、インクタンクのインク液中に連通する液相連通流路に流すようバルブを切り替える場合には、インク液がインクタンクの液相中に放出されるので、インクタンク内のインク液が攪拌されてインク液の溶剤の揮発が促進され、インク液の粘度を速やかに上昇させることができ、インクの粘度を早急に所定値に戻すことができる。
【0013】
そして、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合に、流路抵抗が小さく且つインクタンクのインク液中に連通する液相連通流路にインク液を流すようバルブを切り替える場合は、流路抵抗を小さくした場合の効果と、インクタンクのインク液中にインク液を放出する場合の効果との、両者の効果が相乗的になり、より速やかに溶剤を揮発でき、より速やかに粘度を所定値に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係るインクジェットプリンタの構成概略図である。同図において、インクジェットプリンタは、プリントヘッド1と、インク液供給部4と、インク液回収部3と、粘度検出手段2と、粘度調整手段6と、溶剤タンク40とを備えている。
【0015】
プリントヘッド1は、インク液を噴射する直径50μm〜60μmのノズル52と、ノズル52から噴射されたインク粒子のうち印字に使用されないインク粒子を捕獲するガター53を備えている。
【0016】
インク液供給部4はプリントヘッド1に供給するインク液を貯留するインクタンク10と、インクタンク10内のインク液が不足したときに補充するインク液を貯留する補充用のインクタンク30と、インクタンク10とプリントヘッド1との間を繋ぐ配管65と、配管65に設けられたにポンプ61、フィルター62、レギュレータ63及び圧力センサ64とを備えている。
【0017】
インクタンク10は、インクタンク30から供給されるインク液と溶剤タンク40から供給される溶剤とを混合し粘度が調整されたインク液を貯留している。インクタンク10内には、貯留しているインク液の液面を検出する液面センサ11を備えている。尚、以下の記載では説明の都合上、「インクタンク10」を「メインタンク」10と称するが、「メインタンク10」はインク液を貯留するタンクであるのでインクタンクの機能を果たし、これにより技術的範囲が限定されない。
【0018】
インクタンク30は、プリントヘッド1のガター53において捕獲されポンプ72により送られてきたインク液を一旦貯留するとともに、インクジェットプリンタを流れるインク液が不足した時に作業者によって補充されるインク液を貯留する。そして、この貯留しているインク液を、メインタンク10内のインク液が不足したときにメインタンク10に供給する。
【0019】
レギュレータ63はプリントヘッド1へ供給するインク液を所定圧に調整している。
【0020】
インク液回収部3は、プリントヘッド1のガター53により捕獲されたインク液をインクタンク30に戻すために設けられている。図2に、インク液回収部3及びその周辺部品の部分構成図を示す。同図より、インク液回収部3は、ガター53とインクタンク30とを繋ぐ配管66中に設けられたポンプ72と、粘度上昇手段5とを備えている。
【0021】
粘度上昇手段5は、流路抵抗の大きい流路13と、流路抵抗の小さい流路14と、バルブ15と、制御部9とを備えている。流路抵抗の大きい流路13は径の小さい配管17(例えば直径0.5mm〜1mm)により構成され、流路抵抗の小さい流路14は径の大きい配管18(例えば直径3mm〜4mm)により構成される。流路抵抗の大きい流路13と流路抵抗の小さい流路14とは、インク液の流路を構成する配管66に設けられた分岐部16によって分岐されて形成されている。バルブ15は分岐部16に設けられ、流路13,14のうちいずれか一方の流路13又は14にインク液を流すよう切り替える三方バルブである。
【0022】
制御部9は、CPU(中央演算処理装置)92と、メモリ93と、バルブ制御手段91とを備えている。メモリ93は定期的に粘度検出手段2において検出され制御部9に入力される粘度測定データと、予め入力されたインク液の適正粘度値である所定値とを記憶する。バルブ制御手段91は粘度検出手段2により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合にインク液を流路抵抗の小さい流路14に流すようバルブ15を切り替える。
【0023】
粘度検出手段2はメインタンク10の上方に設けられ、メインタンク10内のインク液の粘度を検出する。粘度検出手段2は、メインタンク10からバルブ部8を介して供給されたインク液を貯留するザーンカップタンク20を備えている。ザーンカップタンク20の下部には貫通孔23が形成され、この貫通孔23に毛細管22が接続され、ザーンカップタンク20内のインク液をメインタンク10へ落下させている。また、ザーンカップタンク20内には、インク液の液面を上下2点で検出する液面センサ21を備えている。
【0024】
粘度調整手段6はバルブ部8により構成されている。バルブ部8はインクタンク30又は溶剤タンク40と、メインタンク10とを接続する流路を形成するとともに、メインタンク10のインク液を粘度検出手段2に供給する流路を形成している。バルブ部8はバルブ80〜83、配管85〜91及びポンプ84により構成される。このうちバルブ83は配管91からのインク液を配管88側又は配管89側のいずれに流すのかを切り替える三方バルブである。
【0025】
溶剤タンク40はメチルエチルケトン、酢酸エチル、エタノール、メタノール等の揮発性の高い溶剤を貯留している。尚、補充用のインクタンク30、溶剤タンク40及びメインタンク10はいずれも開口部95に接続され、大気に開放されている。
【0026】
次に、動作について説明する。インク液供給部4のメインタンク10に貯留するインク液はポンプ61によりフィルター62、レギュレータ63、圧力センサ64を経た後プリントヘッド1へ送られ、ノズル52から直径約100μmのインク粒子となって毎秒約70,000個が噴射される。連続式のインクジェットプリンタでは速乾性のインク液を使用するので、ノズル52においてインク液が固化しないよう常にインク液が噴射されている。
【0027】
インク粒子のうち印字に使用されるインク粒子は偏向され所定の画像を印字面(図示しない)に印字する。印字に使用されないインク粒子はガター53に捕獲され、インク液回収部3のポンプ72によって補充用のインクタンク30に送られる。
【0028】
補充用のインクタンク30に流入したインク液は、バルブ部8を通ってメインタンク10へ戻され、再度印字に利用される。インクジェットプリンタの稼動によりインク液は徐々に減少していくので、作業者によって未使用のインク液が補充用のインクタンク30に補充される。また、同様に溶剤も徐々に減少していくので、作業者によって溶剤タンク40に補充される。
【0029】
粘度検出手段2では、インク液供給部4におけるインク液の粘度を毛細管式粘度測定方法により定期的(例えば5分毎)に検出している。その際は、バルブ82を開放し、三方バルブ83を配管88側とする。これにより、メインタンク10内のインク液が配管87、バルブ82、配管90、ポンプ84、配管91、三方バルブ83、配管88を通ってザーンカップタンク20へ送られる。ザーンカップタンク20内の液面センサ21のうち上側のセンサが液面を検出すると、バルブ82を閉止し三方バルブ83を切り替え、インク液の供給を止める。
【0030】
ザーンカップタンク20に貯留するインク液は毛細管22を通ってメインタンク10に徐々に落下するが、インク液の落下速度はインク液の粘度が高い方が遅くなる。よって、液面センサ21のうち上部のセンサがインク液の液面を検出した後、下部のセンサがその液面を検出するまでの時間を計測することで粘度を検出する。
【0031】
メインタンク10の液面が低下したことを液面センサ11が検出した際には、粘度検出手段2で検出されたインク液の粘度に応じて、インク液あるいは溶剤のいずれかが補充される。
【0032】
インク液の粘度が予め設定した適正粘度値である所定値より高い場合、即ち、粘度検出手段2の液面センサ21の上部と下部のセンサの液面検出時間の差が、例えば30秒といった所定値より長い場合には、インク液の粘度を低下させるために、インク液よりも粘度の低い溶剤を補充する。その際は、バルブ81を開放し、三方バルブ83を配管89側にし、溶剤タンク40から配管86、バルブ81、配管90、ポンプ84、配管91、三方バルブ83、配管89を通ってメインタンク10へ溶剤を供給する。
【0033】
これに対し、インク液の粘度が予め設定した適正粘度値より低い場合、即ち、粘度検出手段2の液面センサ21の上部と下部のセンサの液面検出時間の差が、例えば30秒といった所定値より短い場合には、補充用のインクタンク30からインク液を補充する。その際は、バルブ80を開放し、三方バルブ83を配管89側にし、補充用のインクタンク30から配管85、バルブ80、配管90、ポンプ84、配管91、三方バルブ83、配管89を通ってメインタンク10へインク液を供給する。
【0034】
このようにインク液の粘度が所定値より高くなった場合には、インク液よりも粘度の低い溶剤を補充することで、インク液の粘度を容易に低下させることができる。しかし、インク液の粘度が所定値より低くなった場合には、補充用のインクタンク30内のインク液の粘度とメインタンク10の粘度とは略同等なので、ほとんど粘度を上昇させることができない。
【0035】
ここで、インク液の粘度が上昇するのは、ガター53においてインク粒子を捕獲する際、インク粒子と共に空気を吸い込み、この空気とインク液とが混じり合うことによりインク液中の溶剤が揮発し、揮発した溶剤が開口部95から大気中に放出されるためである。また、補充用のインクタンク30、溶剤タンク40及びメインタンク10はいずれも開口部95に接続され大気に開放されているために、揮発した溶剤が徐々に大気中に放出するためである。更に、インク液がノズル52から噴射される際にも溶剤が揮発し同様にインク液の粘度を高める。このほか、インクジェットプリンタを使用する際の周囲温度が早朝や夕刻では日中に比較して低くなりやすく、インク液の粘度が上昇しやすい。これらが原因でインク液の粘度が上昇した場合には上述のように溶剤を補充して容易にインク液の粘度を低下させることができる。
【0036】
これに対し、インク液の粘度が低下するのは、インクジェットプリンタを使用する際に周囲温度が急に上昇した場合、例えば、その日の天候が原因で気温が急に上昇した際や、暖房の運転開始時等である。このようにして周囲温度が上昇したためにインク液の粘度が低下した場合には、流路抵抗の小さい流路13にインク液を流すようバルブ15を切り替え、溶剤の揮発を促進させインク液の粘度を上昇させる。
【0037】
即ち、制御部9のCPU92が、メモリ93に記憶された最新の粘度測定データと所定値とを読み出し、両者を比較する。測定粘度データが所定値より短くなった場合、即ち、粘度が所定値より低くなった場合には、バルブ制御手段91において、流路抵抗の小さい流路14である配管18側にインク液を流すようバルブ15を切り替える。
【0038】
そして、測定粘度データが所定値と等しいか又は高くなった場合、即ち、液面センサ21の上下のセンサの液面検出時間の差が所定値と等しいか又は所定値より長くなった場合に、バルブ制御手段91において流路抵抗の大きい流路13である配管17側にインク液を流すようバルブ15を切り替える。
【0039】
以上より、粘度検出手段2により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合に、インク液を流路抵抗の小さい流路14に流すようバルブ15を切り替え、インク液中の溶剤を揮発させてインク液供給部4のインク液の粘度を上昇させるので、流路14を通過する際にインク液中の溶剤の揮発が大幅に促進され、インク液供給部4のインク液の粘度を速やかに上昇させることができる。
【0040】
また、特許文献1に開示された技術のようにインク液の粘度を調整するためプリントヘッド1にヒーターやセンサ、制御部などを備えなくても容易に粘度を調整することができ、プリントヘッド1の構造を不必要に複雑にするといったことがない。
【0041】
また、インク液回収部3の流路抵抗の大きな流路13である配管17は、揮発した溶剤の回収を目的として従来のインクジェットプリンタに既に設けられているので、流路抵抗の小さい流路14である径の大きな配管18及び制御部9を備えたバルブ15を新たに設けるだけよく、装置の大掛かりな改造は不要であり、コストを低く抑えることができる。
【0042】
一方、測定粘度データが所定値より高くなった場合、即ち、液面センサ21の上下のセンサの液面検出時間の差が所定値より短くなった場合に、バルブ制御手段91において流路抵抗の大きい流路13である配管17側にインク液を流すようバルブ15を切り替えるのは、インク液中の溶剤の揮発量を最小限に抑え、開口部95から大気中に放出される溶剤量を減少させ、溶剤の消費量を少なくするためであり、環境への負荷の低減、溶剤消費量を抑えることによるコスト削減などのためである。
【0043】
尚、上記の実施形態では、流路抵抗の大きい流路13は径の小さい配管17とし、流路抵抗の小さい流路14は径の大きい配管18としたが、本発明にかかるインクジェットプリンタはこれに限定されず、流路抵抗の大きい流路は配管の内壁に凹凸を設け流路抵抗を大きくした流路などであってもよい。
【0044】
また、粘度上昇手段5は配管66に設けたが、これに限定されず、他の流路を構成する配管に設けてもよい。また、粘度検出手段2は、毛細管式粘度測定方法を用いたが、これに限定されず、回転式、落球式、振動式、超音波式などの粘度測定法を用いてもよい。
【0045】
また、粘度上昇手段5は、インク液の流路を分岐部16によって流路抵抗の大きい流路13及び流路抵抗の小さい流路14とに分岐したが、これに限定されず、図3に示すように、インク液の流路を、インクタンク30aの気相中に連通する気相連通流路13aと、インクタンクのインク液中に連通する液相連通流路14aとに分岐部によって分岐してもよく、前記気相連通流路13aを、径の小さい配管等とすることで流路抵抗が大きい流路とし、液相連通流路14aを径の大きい配管等とすることで流路抵抗が小さい流路としてもよい。気相連通流路13aは配管17aにより構成され、液相連通流路14aは配管18aにより構成される。
【0046】
この場合には、制御部9aのCPU92aが粘度検出手段で測定されメモリ93に記憶された最新の粘度測定データと、予め設定された所定値を読み出し、両者を比較する。測定粘度データが所定値より低い場合には、バルブ制御手段91aにおいて、配管18a側にインク液を流すようバルブ15aを切り替える。
【0047】
これにより、インク液は液相連通流路14aを構成する配管18aを通りインクタンク30aの液相中に放出され、インクタンク30a内のインク液が攪拌される。これにより、インク液の溶剤の揮発が促進されるので、インク液の粘度を短時間で容易に上昇させることができる。よって、インク液の粘度を所定値に調整することができる。
【0048】
上記気相連通流路13aを、径の小さい配管等とすることで流路抵抗が大きい流路とし、液相連通流路14aを径の大きい配管等とすることで流路抵抗が小さい流路とした場合には粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した際に、流路抵抗の小さく且つインクタンクのインク液中に連通する液相連通流路にインク液を流すようバルブを切り替えるので、両者の効果が相乗的になり、より速やかに溶剤を揮発でき、より速やかに粘度を所定値に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの構成概略図である。
【図2】前記インクジェットプリンタの部分構成図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかるインクジェットプリンタの部分構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1 プリントヘッド
2 粘度検出手段
3 インク液回収部
4 インク液供給部
6 粘度調整手段
9,9a 制御部
10 インクタンク(メインタンク)
13 流路抵抗の大きい流路
13a 気相連通流路
14 流路抵抗の小さい流路
14a 液相連通流路
15,15a バルブ
16,16a 分岐部
30 インクタンク
52 ノズル
53 ガター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから噴射したインク粒子のうち印字に使用されるインク粒子を偏向させて所定の画像を印字するとともに、印字に使用されないインク粒子をガターにより捕獲するプリントヘッドと、該プリントヘッドにインク液を供給するインク液供給部と、プリントヘッドのガターにより捕獲されたインク液をインク液供給部に戻すインク液回収部と、インク液供給部におけるインク液の粘度を検出する粘度検出手段と、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度に応じてインク液供給部のインク液の粘度を所定値に調整する粘度調整手段とを備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インク液回収部は、インク液の流路を分岐部によって流路抵抗の大きい流路と流路抵抗の小さい流路とに分岐し、これらのうち一方の流路にインク液が流れるようを切り替えるバルブが分岐部に設けられ、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合に、インク液を流路抵抗の小さい流路に流すようバルブを切り替える制御部を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
ノズルから噴射したインク粒子のうち印字に使用されるインク粒子を偏向させて所定の画像を印字するとともに、印字に使用されないインク粒子をガターにより捕獲するプリントヘッドと、該プリントヘッドに供給されるインク液を貯留するインクタンクを備え、インクタンクからプリントヘッドにインク液を供給するインク液供給部と、プリントヘッドのガターにより捕獲されたインク液をインク液供給部に戻すインク液回収部と、インク液供給部におけるインク液の粘度を検出する粘度検出手段と、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度に応じてインク液供給部のインク液の粘度を所定値に調整する粘度調整手段とを備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インク液回収部は、インク液の流路を、インクタンク内の気相中に連通する気相連通流路と、インクタンク内のインク液中に連通する液相連通流路とに分岐部によって分岐し、これらのうち一方の流路にインク液を流すようを切り替えるバルブが分岐部に設けられ、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合にインク液を液相連通流路に流すようバルブを切り替える制御部を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
ノズルから噴射したインク粒子のうち印字に使用されるインク粒子を偏向させて所定の画像を印字するとともに、印字に使用されないインク粒子をガターにより捕獲するプリントヘッドと、該プリントヘッドに供給するインク液を貯留するインクタンクを備え、インクタンクからプリントヘッドにインク液を供給するインク液供給部と、プリントヘッドのガターにより捕獲されたインク液をインク液供給部に戻すインク液回収部と、インク液供給部におけるインク液の粘度を検出する粘度検出手段と、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度に応じてインク液供給部のインク液の粘度を所定値に調整する粘度調整手段とを備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インク液回収部は、インク液の流路を、流路抵抗が大きく且つインクタンクの気相中に連通する気相連通流路と、流路抵抗の小さく且つインクタンクのインク液中に連通する液相連通流路とに分岐部によって分岐し、該分岐部に、これらの流路のうち一方の流路にインク液が流れるようを切り替えるバルブが設けられ、粘度検出手段により検出されたインク液の粘度が所定値より低下した場合に、液相連通流路にインク液を流すようバルブを切り替える制御部を備えたことを特徴とするインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−137199(P2008−137199A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323770(P2006−323770)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(391040870)紀州技研工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】