説明

インクジェットプリンタ

【課題】インク排出チューブの硬さに関わらず印字ヘッドから一定量のインクを排出することが可能なインク吸引装置を有するインクジェットプリンタの提供。
【解決手段】本発明でのインクジェットプリンタでは、印字ヘッド1と、前記印字ヘッドにインク供給路で接続されたインク供給部1と、前記印字ヘッドのインク吐出ノズルに吸着するノズルキャップ5と、前記ノズルキャップに接続して前記印字ヘッド内のインクを排出するインク排出チューブ6と、前記インク排出チューブをモータ駆動で回転する円板でしごくことにより前記印字ヘッドからインクを吸い出すポンプ7、とを有するインクジェットプリンタにおいて、前記ポンプ部の円板の回転量を検出する回転量検出部12と、前記回転量検出部で検出された回転量に応じて前記ポンプ部のモータの回転速度を制御する制御部11とを有し、前記回転量が一定値に到達時にモータを停止させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ等の印刷装置に関わり、特にインク供給源と印字ヘッドがインク供給路で接続され、当該印字ヘッドのノズル側からポンプによってインクを吸い出すことにより当該印字ヘッドへのインクの供給及び排出する構成のインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタではキャリッジに印字ヘッドを搭載し、インクカートリッジ等のインク供給源と印字ヘッドがインク供給路を通じて接続され、印字ヘッドのインク吐出ノズル側からのインク排出路の樹脂製のインク排出チューブを、突起のついた円板をモータ駆動させ、その突起部分でしごく構造のポンプでインクを吸い出すことで、印字ヘッド内インクの排出及びインク供給源から印字ヘッドへのインク供給を行う構成を取っており、印字ヘッドへ一定量のインクを供給するためにはポンプのモータを定速で一定時間回転させていた。
【0003】
図2により従来のインクジェットプリンタについて説明する。図2は上述の従来技術の構成例であり、印字ヘッドの保守のために印字領域から印字ヘッドを退避した状態である。インク供給部1の内部のインクはインク供給チューブ2を通じて印字ヘッド3に接続される。印字ヘッド3の印字ノズルがあるノズル面4には内部が空洞のノズルキャップ5が接触し、ノズルキャップ5内の空洞は廃液チューブ6およびポンプ7を通じてインクを廃棄するための廃液タンク8に接続される。ポンプ内にはモータ10によって回転する突起付円板9が廃液チューブ6に接触するように設置され、突起付円板9の回転によりその突起が廃液チューブを廃液タンク8側に向かってしごくことで印字ヘッド内のインクが吸い出され、廃液タンク8に排出される。印字ヘッド3から排出すべきインク量に応じて制御部11がモータ10を一定時間回転させる。
【0004】
特許文献1にはこのようなポンプを有するインクジェットプリンタが開示されている。
【特許文献1】特開2001−63093
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、プリンタの周囲温度の変動によりインク排出チューブの硬さが変動すると、ポンプモータの回転に対する前記インク排出チューブの負荷が変動し、ポンプモータを一定時間回転させてもポンプモータ回転数が一定にならず、印字ヘッドからのインク排出量が一定にならない可能性がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、インク排出チューブの硬さに関わらず印字ヘッドから一定量のインクを排出することが可能なインク吸引装置と、それを有するインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにインク供給路で接続されたインク供給部と、前記インクジェットヘッドのインク吐出ノズルに吸着するノズルキャップと、前記ノズルキャップに接続して前記インクジェットヘッド内のインクを排出するインク排出チューブと、突起部を有するロータと、前記ロータを回転させて前記突起部によって前記インク排出チューブをしごくことにより前記インクジェットヘッドからインクを吸い出すポンプ部と、前記ロータを回転させるモータと、前記モータの回転を制御するモータ制御部と、を有するインクジェットプリンタであって、前記インク排出チューブを流れるインク量を検出するインク量検出手段を有し、前記モータ制御部は前記インク量検出手段よる検出結果に応じて前記モータの回転を制御し、前記インク排出チューブを流れるインク量を可変することを特徴とするインクジェットプリンタである。
【0008】
また、上述インクジェットプリンタにおいて、前記インク量検出手段は、前記ロータの回転量を検出する回転量検出部を有し、前記モータ制御部は前記回転量検出部で検出された回転量に応じて前記モータの回転を制御し、前記回転量検出部で検出された前記回転量が所定の値に達した場合に前記モータ制御部の制御によって前記モータを停止させることを特徴とするインクジェトプリンタとすることができる。
【0009】
また、上述インクジェットプリンタにおいて前記インク量検出手段は、前記インク排出チューブに流れるインク流量を計測するインク流量計であり、前記モータ制御部は前記インク流量計で検出されたインク量に応じて前記モータの回転を制御し、前記インク流量計で計測したインク流量の積算値が所定の値に達した場合に前記モータ制御部の制御によって前記モータを停止させることを特徴とするインクジェットプリンタとすることができる。
【0010】
さらに、上述インクジェットプリンタにおいて、前記ポンプ部の周囲温度を測定する温度測定部をさらに有し、前記モータ制御部は前記温度測定部で測定された温度に応じて前記モータの回転時間を制御することを特徴とするインクジェットプリンタとすることができる。
【0011】
さらに、上述インクジェットプリンタにおいて、前記モータ制御部は前記モータの始動時と停止時に前記モータの回転速度が所定の回転速度変化をするように制御することを特徴とするインクジェットプリンタとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、インク排出時のインク流量に応じてインクを排出するポンプを制御することで、インクジェットヘッドから所定量のインクを安定して排出することができる。
【0013】
また、本発明によると、プリンタの周囲温度によらず、インクジェットヘッドから一定量のインクを排出することができ、ヘッド状態維持を安定して行うことが可能である。
【0014】
さらに、印字ヘッドからのインクの排出開始および停止時に印字ヘッド内のインクが印字にとって不安定な状態になることを防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1および図3〜図7を参照して説明する。図1、図3、図4は本発明に係るインクジェットプリンタの基本的な構成を示す。図5、図6は本発明でのモータ速度制御例を示す。図7は本発明の動作のフローチャートを示す。
【0016】
尚、図1、図3、図4では本発明の実施形態の特徴部分とは直接関係のない、用紙搬送系やキャリッジ駆動系や、CPUに付随するメモリ類やホストとの外部インターフェース等については図示及び説明を省略する。
【0017】
図1のインクジェットプリンタでは、図2の従来技術のインクジェットプリンタのポンプ7の突起付円板(ロータ)9の回転軸に回転量検出部12を設置し、前記回転量検出部からの前記突起付円板9の回転量情報を制御部11にフィードバックしている。制御部11はPWM制御等によりモータの速度制御を行う。
【0018】
インクジェットプリンタのCPU等から制御部11へインク吸引量の指令値、が与えられると、制御部11はモータ10を回転させ、それによりポンプ7内の突起付円板9を回転させ、廃インクチューブを突起付円板(ロータ)9の外周部に設けた突起部によりしごき、印字ヘッド3からのインク吸引動作を開始される。指令値は、例えば所定の値として100回転させる場合は100回転に対応するデータと回転開始の指示するデータである。突起付円板9の回転量は回転量検出部12を通じて制御部11で監視され、回転量検出部12から制御部11へ回転量に対応する値が出力される。例えば1回転すると1回転したことを示すデータが出力される。突起付円板9の回転量が前記インク吸引量指令値に応じた回転数(累積の回転数)に達すると制御部11はモータ10の回転を停止させる。これにより周囲温度により廃インクチューブ6の硬さが変動しモータへの負荷が変動して突起付円板9の回転速度が変動しても、突起付円板9を一定の回転量で停止させることができ、印字ヘッド3からのインク吸引量を一定にすることができる。
【0019】
図3のインクジェットプリンタでは、図2の従来技術のインクジェットプリンタの廃インクチューブ6にインク流量を測定する流量計13を設置し、前記流量計13からのインク流量情報を制御部11にフィードバックしている。
【0020】
インクジェットプリンタのCPU等から制御部11へインク吸引量の指令値が与えられると、制御部11はモータ10を回転させ、それによりポンプ7内の突起付円板9を回転し、廃インクチューブをしごいて印字ヘッド3からのインク吸引動作が開始される。指令値は、例えば所定の値として1cc排出させる場合は1ccに対応するデータと回転開始の指示するデータである。廃液チューブ6を通じて吸引されるインク量は流量計13通じて制御部11で監視される。流量計13は所定量で流れると信号を出力するタイプの流量計でも、所定間隔ごとに流量値を出力するタイプの流量計でも良い。流量計13からのインク流量の信号に基づいて制御部11で累積値を演算し、前記インク吸引量指令値に達すると制御部11はモータ10の回転を停止させる。図3の構成は印字ヘッド3から吸引するインク量を直接監視するため、図1の構成よりもインク吸引量を安定に一定にすることができる。
【0021】
図4のインクジェットプリンタでは、図2の従来技術のインクジェットプリンタの廃インクチューブ6の周辺に温度計14を設置し、温度計14で測定された温度をメモリに予め記憶されている温度−吸引時間変換テーブル15を通じて制御部11にフィードバックしている。温度−吸引時間変換テーブル15は温度計14の出力値に対応した値を制御部11へ出力する記憶手段である。
【0022】
インクジェットプリンタのCPU等から制御部11へインク吸引量の指令値が与えられると、制御部11はモータ10を一定電圧で回転させ、それによりポンプ7内のロータである突起付円板9を回転し、廃インクチューブをしごいて印字ヘッド3からのインク吸引動作が開始される。周囲の温度により変化する廃液チューブ6の硬度によってインクを一定量吸引するのに必要なモータ回転時間をあらかじめ測定し、温度と吸引時間の関係を求め、温度−吸引時間変換テーブル15として記憶格納しておく。温度計14によって測定された温度に対応する必要モータ回転時間を、温度―吸引時間変換テーブル15によって求め、制御部11はモータの回転が必要モータ回転時間に達したらモータを停止させる。図4の構成は図1、図3の構成と比較して吸引インク量の精度は低くなるが、図2の従来技術に対して少ない構造変更で実施することができる。
【0023】
図5には本発明でのポンプモータの速度制御の例を示す。従来技術ではモータの回転開始から停止までモータに常に一定の電圧を印加するため、モータは常にほぼ一定速度で回転する。その場合、モータの回転開始時と停止時の加速度が大きいため、それによって吸引される廃インクチューブ内のインクにもモータの回転開始と停止時には衝撃が加わる。それによりインクジェットヘッド内のインクが不安定な状態が生じ、吸引後の印字の安定性に障害を与える場合がある。これを回避するため、回転開始、回転停止時に制御部11によってモータ駆動をPWM制御することで、モータ印加電力を可変させ、図5に示すようにモータの回転開始時と停止時に等加速度で徐々に速度を変化させ、インクへの衝撃を抑えることが可能となる。図5に示すように等間隔でパルス幅を大きくまたは小さくする制御をおこなうと、そのパルス幅に比例してモータの速度が大きくまたは小さくなる。さらに、図5のモータの停止時および加速減速区間および定速区間の間での速度変化によるインクへの衝撃を緩和するために、図6に示すようなS字型の加速度制御を行うことも可能となる。この場合パルス幅が漸次大きくまたは漸次小さくなるように制御する。例えば速度変化を大きくしたいときには、前回の倍にパルス幅が大きくなるように、速度変化を遅くしたいときには前回の二分の一にパルス幅が小さくなるように制御する。その他、任意の時間−速度曲線により速度制御を行うことが可能である。
【0024】
図7には図1の構成例での図5および図6の速度制御を実施する別の態様を示す場合のフローチャートの例を示す。CPU等からのインク吸引量目標値により、制御部が回転量検出部の回転量目標値を設定し、予め制御部11に記憶された図5及び図6の加速曲線(時間と速度の値のテーブル)に従ってモータを加速する。加速曲線に対応した速度になるように制御部11が駆動パルスをモータへ与え加速制御する。その後、所定の速度に達すると、モータを等速回転させ、回転量検出部の回転量を監視する。回転量検出部の回転量が回転量目標値を超えたら、図5及び図6の減速曲線に従ってモータを減速後、停止させる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】回転量検出部設置した本発明の実施形態を示す構成図である。
【図2】従来技術の構成図である。
【図3】流量計を設置した本発明の実施形態を示す構成図である。
【図4】温度計を設置した本発明の実施形態を示す構成図である。
【図5】本発明の等加速度のモータ速度制御方法を示すグラフである。
【図6】本発明のS字型加速のモータ速度制御方法を示すグラフである。
【図7】本発明の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
1 インク供給部
2 インク供給チューブ
3 印字ヘッド
4 印字ヘッドのノズル面
5 ノズルキャップ
6 廃インクチューブ
7 ポンプ
8 廃インクタンク
9 突起付円板
10 モータ
11 モータ制御部
12 回転量検出部
13 流量計
14 温度計
15 温度−吸引時間変換テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドにインク供給路で接続されたインク供給部と、前記インクジェットヘッドのインク吐出ノズルに吸着するノズルキャップと、前記ノズルキャップに接続して前記インクジェットヘッド内のインクを排出するインク排出チューブと、突起部を有するロータと、前記ロータを回転させて前記突起部によって前記インク排出チューブをしごくことにより前記インクジェットヘッドからインクを吸い出すポンプ部と、前記ロータを回転させるモータと、前記モータの回転を制御するモータ制御部と、を有するインクジェットプリンタであって、
前記インク排出チューブを流れるインク量を検出するインク量検出手段を有し、
前記モータ制御部は前記インク量検出手段よる検出結果に応じて前記モータの回転を制御し、前記インク排出チューブを流れるインク量を可変することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インク量検出手段は、前記ロータの回転量を検出する回転量検出部であり、
前記モータ制御部は前記回転量検出部で検出された回転量に応じて前記モータの回転を制御し、前記回転量検出部で検出された前記回転量が所定の値に達した場合に前記モータ制御部の制御によって前記モータを停止させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェトプリンタ。
【請求項3】
前記インク量検出手段は、前記インク排出チューブに流れるインク流量を計測するインク流量計であり、前記モータ制御部は前記インク流量計で検出されたインク量に応じて前記モータの回転を制御し、前記インク流量計で計測したインク流量の積算値が所定の値に達した場合に前記モータ制御部の制御によって前記モータを停止させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記ポンプ部の周囲温度を測定する温度測定部をさらに有し、前記モータ制御部は前記温度測定部で測定された温度に応じて前記モータの回転時間を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記モータ制御部は前記モータの始動時と停止時に前記モータの回転速度が所定の回転速度変化をするように制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−201078(P2008−201078A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42074(P2007−42074)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】