説明

インクジェットプリンタ

【課題】乾燥した室内または高温の環境で長時間にわたってプリントを継続する過酷な使用条件下でも、ノズル内の乾燥を抑制し易いインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】ノズル部からインクを吐出して記録媒体に画像を形成するプリントヘッドH、及び、ノズル部のノズル面11aを封止する封止状態とノズル面11aから離間した離間状態との間で切り替え可能に設けられたキャップ部材40を備え、且つ、離間状態におけるキャップ部材40の開口部を閉鎖する閉鎖機構60を備えるインクジェットプリンタとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル部からインクを吐出して記録媒体に画像を形成するプリントヘッド、及び、前記ノズル部のノズル面を封止する封止状態と前記ノズル面から離間した離間状態との間で切り替え可能に設けられたキャップ部材を備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のインクジェットプリンタに関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたインクジェットプリンタは、プリントヘッドが非印刷領域にある時にノズル面を封止可能なキャップ部材と、キャップ部材に配置された多孔質のインク吸収材に吸収されたインクをポンプで吸引して廃インクタンクに排出する機構とを備え、さらに、インク吸収材に自然に保持されているインクからノズル面とキャップ部材とで囲まれる空間内にインク溶媒が蒸発して、同空間内を保湿するので、ノズル内の乾燥を効果的に抑制できると記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−196482号公報(段落番号0024、0029、0040、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記されたインクジェットプリンタでは、特に、乾燥した室内または高温の環境(プリンタ筐体内の高温条件も含む)で長時間にわたってプリントが継続された場合などに、キャップ部材に配置されたインク吸収材からインク溶媒が大気中に蒸発して、インク吸収材の表面に乾燥したインクの硬い層が形成されるので、インク吸収材のインク吸収力やノズル面の封止能力が低下し、結果的にノズル内の乾燥を十分に抑制できないという事態になる虞があった。
【0005】
本発明の目的は、上に例示した従来技術によるインクジェットプリンタの持つ欠点に鑑み、乾燥した室内または高温の環境で長時間にわたってプリントを継続する過酷な使用条件下でも、ノズル内の乾燥を抑制し易いインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、ノズル部からインクを吐出して記録媒体に画像を形成するプリントヘッド、及び、前記ノズル部のノズル面を封止する封止状態と前記ノズル面から離間した離間状態との間で切り替え可能に設けられたキャップ部材を備えるインクジェットプリンタであって、
前記離間状態におけるキャップ部材の開口部を閉鎖する閉鎖機構を備える点にある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によるインクジェットプリンタでは、プリント中など、キャップ部材がノズル面から離れた離間状態において、キャップ部材の開口部が閉鎖されるので、乾燥した室内などで長時間にわたってプリントを継続するような過酷な使用条件下でも、キャップ部材から水分やインク溶媒が蒸発し難くなるため、キャップ部材の乾燥防止能力が保たれて、ノズル内の乾燥や詰まりを抑制し易くなる。
【0008】
本発明の他の特徴構成は、前記閉鎖機構が、前記キャップ部材の開口部を閉鎖可能なカバー手段、及び、前記キャップ部材の前記封止状態と前記離間状態との間の切り替えに応じて、前記カバー手段を、前記キャップ部材の開口部を閉鎖する閉鎖位置と、前記キャップ部材の開口部を解放した解放位置との間で移動操作させる移動操作機構を備える点にある。
【0009】
本構成であれば、キャップ部材が離間状態に切り替えられている間は終始、移動操作機構によって自動的にキャップ部材の開口部がカバー手段によって閉鎖された状態に保持されるので、キャップ部材の乾燥防止能力がより確実に保たれる。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、前記閉鎖機構が、インクジェットプリンタの筐体内に配置されたカバー手段、及び、前記キャップ部材の前記封止状態と前記離間状態との間の切り替えに応じて、前記キャップ部材を、その開口部が前記カバー手段によって閉鎖される閉鎖位置と、同開口部が前記カバー手段から解放された解放位置との間で移動させる移動操作機構を備える点にある。
【0011】
本構成であれば、キャップ部材が離間状態に切り替えられている間は終始、移動操作機構によって自動的にキャップ部材の開口部がカバー手段によって閉鎖された状態に保持されるので、キャップ部材の乾燥防止能力がより確実に保たれる。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、前記キャップ部材の内面にインク吸収材が設けられており、前記カバー手段は前記インク吸収材に押し付けられる閉鎖面を備える点にある。
【0013】
本構成であれば、ノズルから溢れ出るインクやノズルの先端の周辺に付着しているインクを吸収するインク吸収材の表面が、カバー手段の閉鎖面によってシールされ、空気から遮断されるので、インク吸収材からの水分やインク溶媒の蒸発が確実に抑制され、インク吸収材の表面にインクの固化層がより形成され難くなる。
【0014】
本発明の他の特徴構成は、前記カバー手段の内面に、前記インク吸収材を加湿する加湿手段が備えられている点にある。
【0015】
本構成であれば、キャップ部材内に配置されたインク吸収材を加湿された状態に保持できるので、インク吸収材の表面にインクの固化層がさらに形成され難くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明による最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
〔全体構成〕
図1及び図2に示すインクジェットプリンタは、記録媒体としてのロール状のプリントペーパRPから引き出したプリントペーパPを搬送機構Aによってプリント部Bに供給して画像情報のプリントを行う。このインクジェットプリンタは、プリントを完了したプリントペーパPの部位を切り離す切断部C、裏印字部D、巻癖を矯正するデカール部Eを経て、筐体1の外部の排出トレイ2に排出する搬送系を備える。筐体1の内部には他に制御ユニットFとインク貯留部Gなどを備えている。
【0017】
搬送機構Aは、搬送方向でプリント部Bの上流側と下流側とに配置された圧着型の搬送ローラ4、5を備えている。この搬送機構Aは筐体1の外部の手差しトレイ6にセットしたカットペーパを圧着型の供給ローラ7によって取込んでプリント部Bに供給することもできる。
プリント部Bは、図1〜図5に示すように、主走査方向(X軸方向)に往復作動するプリントヘッドHと、プリントペーパPの搬送経路を挟んで対向する位置に配置した吸引ユニット状のペーパガイド12とを備えている。
【0018】
プリントヘッドHは、キャリッジ10と、このキャリッジ10に連結されプリントペーパPにインクを吐出して情報をプリントするインク吐出ユニット11とを有すると共に、キャリッジ10の上方を覆うキャリッジカバー16を有している。また、吸引ユニット状のペーパガイド12は、ケース状のユニット上面に形成された多数の開口から空気を吸引し、下方に送り出す電動ファン(図示せず)を内蔵している。
切断部Cは、プリントペーパPを圧着状態で搬送する搬送ローラ21と、プリントペーパPを切断する円盤状カッター22と、この円盤状カッターを主走査方向Xに往復移動させる作動機構23とを備えている。
【0019】
裏印字部Dは、プリントペーパPの裏面側に情報をプリントする印字ヘッド24を備えている。デカール部EはプリントペーパPの巻癖を矯正するために、プリントペーパPを、ロール状のプリントペーパRPの巻方向と逆方向に湾曲させて搬送するように1つの搬送ローラ25と、この搬送ローラ25に対向する位置に配置された1つの矯正ローラ26と、複数のガイド板27とを備えている。図面には示していないが、このデカール部Eは搬送ローラ25を駆動する電動モータを備え、搬送ローラ25と矯正ローラ26とでプリントペーパPを圧着して搬送する際に巻癖を矯正する。
インク貯留部Gには複数のインクカートリッジ(図示せず)がセットされ、このインク貯留部Gから送られるインクは中間タンク(図示せず)からチューブを介してプリントヘッドHに供給される。
【0020】
〔プリント処理形態〕
プリントを行う場合には、搬送機構AによってプリントペーパPの先端部をプリント部Bの下部位置に送り込んで停止する。この状態で吸引ユニット状のペーパガイド12からの負圧をプリントペーパPの裏面側に作用させることで、ペーパガイド12の上面にプリントペーパPを吸着して平滑な状態に維持する。このような状態においてプリントヘッドHを主走査方向(X軸方向)に往復作動させながらインク吐出ユニット11からプリントペーパPにインクを吐出して画像情報などのプリントを行う。
【0021】
具体的に説明すると、プリントヘッドHをホームポジションHPから折り返し点TPに向かって主走査方向Xに移動させながら、インク吐出ユニット11からインクを吐出してプリントを行う。プリントヘッドHが折り返し点TPに達すると、搬送機構AによりプリントペーパPを副走査方向(Y軸方向)に所定量だけ搬送する。この搬送の後に、プリントヘッドHを主走査方向の他方に(折り返し点TPからホームポジションHPに)移動させ、インク吐出ユニット11からインクを吐出しながらプリントペーパPに情報のプリントを行うことになる。
【0022】
このプリントヘッドHの往復作動によって情報がプリントされたプリントペーパPが切断部Cに搬送された場合、このプリントペーパPの切断位置が円盤状カッター22の切断位置に達した時点で搬送を停止する。この停止状態において作動機構23が円盤状カッター22を主走査方向に移動させることによりプリントペーパPがプリントサイズに切断される。
【0023】
次に、切断されたプリントペーパPは裏印字部Dの印字ヘッド24においてオーダを特定する情報等がプリントされる。更に、このプリントペーパPはデカール部Eの搬送ローラ25、矯正ローラ26、ガイド板27に送られることによりカールが矯正された後、排出トレイ2の上面に排出される。
【0024】
〔プリント部の詳細〕
プリント部Bには断面が円形の一対のガイドロッド13が主走査方向に平行姿勢で配置されている。この一対のガイドロッド13に対してスライド移動自在にキャリッジ10が支持され、このキャリッジ10の下面側にインク吐出ユニット11が連結されている。インク吐出ユニット11の下面には多数の吐出ノズルが形成されたノズル面11aを備えている。この実施形態では、副走査方向(Y軸方向)で互いに離間した2つのノズル面11aが設けられている。
【0025】
キャリッジ10の副走査方向での一方の側面には一方のガイドロッド13に外嵌するように円形の孔部が形成された一対のスライドガイド14を備え、他方の側面には他方のガイドロッド13に係合する凹部が形成されたスライドブロック15を備えている。また、このキャリッジ10は上部にキャリッジカバー16を備えている。
【0026】
駆動プーリ17とアイドルプーリ18とに巻回するタイミングベルト型の駆動ベルト19がキャリッジの側部で主走査方向に沿って配置されている。この駆動ベルト19とキャリッジ10が連結し、駆動プーリ17には駆動モータMから回転駆動力が伝えられる。
【0027】
主走査方向でのプリントヘッドHの位置を取得するリニアエンコーダLEとして、主走査方向と平行姿勢でプリントヘッドHの近傍位置に帯状のリニアストリップ31が筐体1に固設され、このリニアストリップ31のスケール情報を光学的に取得するセンサユニット32が基板33を介してプリントヘッドHのキャリッジ10に支持されている。
【0028】
図6に示すように、リニアストリップ31は帯状で透明の樹脂等の部材に対して所定間隔でバーコード状のスケール情報31aがプリントされた構造を有している。基板33にはリニアストリップ31に対して厚み方向(副走査方向と一致する)の表裏両面に近接するように突設した一対の壁体34を備え、この壁体34の部位にセンサユニット32が固定されている。センサユニット32は、光源モジュール32aとフォトセンサモジュール32bとを対向する位置に配置したフォトインタラプタ型に構成されている。
【0029】
リニアエンコーダLEは、プリントヘッドHの移動時にスケール情報31aをカウントすることによりプリントヘッドHの主走査方向での位置を特定するインクリメンタル型に構成されている。また、駆動プーリ17、アイドルプーリ18、駆動ベルト19、駆動モータMなどによってプリントヘッドHの移動機構が構成されている。
【0030】
制御ユニットFは、プリントを行う画像や文字等の情報を取得し、搬送機構Aを制御し、リニアエンコーダLEからの信号に基づいて駆動モータMを制御し、この駆動モータMの駆動と同期してインク吐出ユニット11に内蔵された駆動機構を制御することによりノズル面11aの吐出ノズルからインクを吐出して情報がプリントされる。
【0031】
また、このプリント時にはプリントヘッドHがホームポジションHPを基準にしたリニアエンコーダLEからの情報によってプリントヘッドHの主走査方向での位置が特定される。更に、この制御ユニットFは、切断部Cの作動機構23を制御し、裏印字部Dの印字ヘッド24を制御し、デカール部Eを制御する。
【0032】
(ノズル面管理システム)
プリントヘッドHのノズル面11aを良好な状態に保持するためのノズル面管理システムとして、プリントヘッドHがホームポジションHPよりも更に外側の待機位置WPに停止中に、ノズル面11aの乾燥を防止するために、ノズル面11aを封止しておく封止機構Sが設けられている。
図7に示すように、封止機構Sは、ノズル面11aに嵌合してノズル面11aを周囲の空気に対して封止するキャップ部材40と、キャップ部材40をノズル面11aと嵌合した封止状態とノズル面11aから離間した離間状態との間で切り替える切り替え機構50とを備える。図7(a)はキャップ部材40による封止状態を示し、図7(b)及び図7(c)はキャップ部材40の離間状態を示す。
【0033】
ここでは、切り替え機構50はキャップ部材40の一側面から延びた少なくとも2本のリンクアーム45からなる4点リンク機構と、リンクアーム45の1つを揺動操作する駆動機構とからなる。駆動機構はモータM1とモータM1の駆動力をリンクアーム45の揺動運動に変換する減速伝導機構46とからなる。
キャップ部材40は、概して直方体状を呈しており、その上面には柔軟な多孔質材料からなるインク吸収材41がマット状に設けられ、そのインク吸収材41の外側には、弾性材料からなるシール部材42が、インク吸収材41を取り囲む低い壁のように立設されている。
キャップ部材40が切り替え機構50のリンクアーム45によって封止状態に保持されている時、インク吸収材41は2つのノズル面11aに押し付けられる。また、同時にシール部材42が、インク吐出ユニット11の平坦な下面に密着することで、ノズル面11a及びシール部材42を周囲の空気から遮断する。
【0034】
ノズル面管理システムは、さらに、ノズル面11aから離間中の離間状態におけるキャップ部材40の開口部を閉鎖する閉鎖機構Tを備える。
閉鎖機構Tは、キャップ部材40のシール部材42の内部(開口部の一例)を閉鎖可能なカバー部材60、及び、キャップ部材40の封止状態と離間状態との間の切り替えに応じて、カバー部材60を、キャップ部材40の開口部を閉鎖する閉鎖位置と、キャップ部材40の開口部を解放した解放位置との間で移動操作させる移動操作機構70を備える。
カバー部材60は、その側面部位にて、水平な軸心Xc回りで揺動自在に支持されており、移動操作機構70は、カバー部材60を揺動操作するためにモータM2などで構成された駆動機構からなる。図7(a)及び図7(b)は解放位置にあるカバー部材60を示し、図7(c)は閉鎖位置にあるカバー部材60を示す。閉鎖位置では、カバー部材60の内面に設けられた平滑な閉鎖面60aがインク吸収材41の表面に密着することで、インク吸収材41の表面のインクの固化および一部成分の揮発や蒸発を抑制する。閉鎖面60aは例えば非多孔質の樹脂などで構成することができる。
【0035】
尚、封止機構Sと閉鎖機構Tとはいずれもインクジェットプリンタの筐体1に対して固定された共通ホルダ72に支持されており、離間状態におけるキャップ部材40は共通ホルダ72の中央付近に設けられた弾性材料からなる支持突起73に支持される。
【0036】
インクジェットプリンタの停止中は、プリントヘッドHは待機位置WPに位置し、図7(a)に示すように、封止機構Sのキャップ部材40がノズル面11aを封止している。閉鎖機構Tのカバー部材60は解放位置にある。
制御ユニットFは、ユーザがインクジェットプリンタのメインスイッチ(不図示)を入り操作する際に発生する信号に基づいて、図7(b)に示すように、キャップ部材40をノズル面11aから離間させ、下方の支持突起73上に支持された休止位置に静止させ、プリントヘッドHをホームポジションHPに移動させる。さらに、図7(c)に示すように、カバー部材60を、キャップ部材40を閉鎖した閉鎖位置に切り替える。次に、プリントヘッドHと搬送機構Aなどによるプリント動作が開始される。
その後、制御ユニットFは、ユーザがインクジェットプリンタのメインスイッチ(不図示)を切り操作する際に発生する信号、または、所定時間を越えるプリントの中断信号に基づいて、プリントヘッドHをホームポジションHPに移動、停止させる。次に、図7(b)に示すように、先ずカバー部材60をキャップ部材40から離合させ、プリントヘッドHを待機位置WPに移動させ、キャップ部材40を図7(a)に示す封止状態に切り替える。
【0037】
〔別実施形態〕
〈1〉ノズル面管理システムを図8に示す形態で実施することができる。
図8のノズル面管理システムにも、ノズル面11aに嵌合してノズル面11aを周囲の空気に対して封止するキャップ部材43と、離間状態におけるキャップ部材43の開口部を閉鎖するカバー部材63とが設けられている。しかし、カバー部材63は筐体1を構成する側壁1aの内面に固定されている。図8(a)はキャップ部材43による封止状態を示し、図8(b)及び図8(c)はキャップ部材43の離間状態を示す。
【0038】
キャップ部材43を、ノズル面11aと嵌合した封止状態とノズル面11aから離間した離間状態との間で切り替える切り替え機構53は、筐体1の側壁1aの内面に固定されたブラケット54、ブラケット54上の水平な軸心Q1回りで上下に揺動自在に支持された揺動アーム55、揺動アーム55の長手方向に沿って設けられた軸心Q2回りでキャップ部材43を揺動自在に支持する支持機構56、揺動アーム55を揺動操作する駆動機構57を備えている。
駆動機構57は側壁1aの内面に固定されたモータM3、及び、モータM3の駆動力を揺動アーム55に固定されたピニオンギヤに伝える減速伝導機構58を備える。
【0039】
また、駆動機構57による揺動アーム55の揺動操作に応じて、キャップ部材43を軸心Q2回りで回転操作する機構として、キャップ部材43には傘歯車状のピニオンギヤ44が固定設置されており、ブラケット54には、ピニオンギヤ44と常に噛合している傘歯車状のラックギヤ54Rが設置されている。
【0040】
図8(a)の状態では、揺動アーム55及びキャップ部材43は横姿勢をとり、キャップ部材43の開口部はノズル面11aを閉鎖するために上向きとなっている。揺動アーム55の下向きの揺動操作に伴って、図8(b)に示すように、キャップ部材43は、ラックギヤ54Rと噛合したピニオンギヤ44の作用で、軸心Q2回りで回転操作される。図8(c)に示す、駆動機構57による揺動操作の最終段階では、揺動アーム55及びキャップ部材43は縦姿勢となり、キャップ部材43の開口部は、図8(a)の状態に対して約180°の回転を経て、カバー部材63と対向し、カバー部材63によって開口部が閉鎖された状態(閉鎖姿勢)となる。
カバー部材63は、図8(a)及び図8(b)では解放位置にあり、図8(c)では閉鎖位置にある。
【0041】
カバー部材63には、キャップ部材43のインク吸収材41を加湿する加湿機構64が備えられている。加湿機構64は、閉鎖位置においてキャップ部材43のインク吸収材41と接当するようにカバー部材63の内面に配置されたスポンジ状の柔軟な多孔質体65と、多孔質体65を湿潤状態に保持するための加湿液供給機構とからなる。加湿液供給機構としては、筐体1の外面に配置されたタンク66、タンク66の底面から連通した供給チューブ67、供給チューブ67から多孔質体65の内部に延設された多数の毛管状通路68などで構成することができる。
【0042】
〈2〉加湿機構64に、キャップ部材43がカバー部材63によって開口部が閉鎖される閉鎖位置となるタイミングに合わせてインク吸収材41を加湿するアクティブ加湿機構を設けることも可能である。例えば、タンク66の少なくとも一部を筐体1の内面に設け、駆動機構57によって図8(c)の状態まで下降されるキャップ部材43または揺動アーム55がタンク66の可撓性の壁面を押し操作することで、タンク66内の加湿液が多孔質体65に対して強制的に供給され、インク吸収材41が加湿される構成とすることが可能である。
或いは、モータによって圧縮操作されるベローズ型のポンプを設けて、これを加湿液のためのタンク66とし、制御ユニットFからの指令に基づいてポンプから加湿液が供給操作されるように構成することも可能である。
【0043】
〈3〉図示していないが、図7のキャップ部材40及び図8のキャップ部材43には、キャップ部材内のインク吸収材41に吸収されたインクをキャップ部材の背面側から吸引するポンプと、吸引したインクを蓄積する廃インクタンクとからなる廃インク排出機構が設けられている。
また、やはり図示していないが、図7のキャップ部材40及び図8のキャップ部材43の側方などには、ノズル面11aに溢れた過剰なインクを定期的に拭き取るワイピング機構が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】プリント装置の主要構成を示す斜視図
【図2】プリント装置の主要構成を示す縦断側面図
【図3】プリントヘッドの作動系を示す平面図
【図4】キャリッジ・プリントヘッドの斜視図
【図5】キャリッジ・プリントヘッドの側面図
【図6】センサユニットを示す斜視図
【図7】ノズル面管理システム(封止機構および閉鎖機構)を示す概略側面図
【図8】ノズル面管理システムの変形例を示す概略側面図
【符号の説明】
【0045】
A 搬送機構
B プリント部
F 制御ユニット
G インク貯留部
H プリントヘッド
HP ホームポジション
P プリントペーパ
S 封止機構
T 閉鎖機構
TP 折り返し点
X 主走査方向
Y 副走査方向
10キャリッジ
11インク吐出ユニット
11aノズル面
12ペーパガイド
40キャップ部材
41インク吸収材
42シール部材
45リンクアーム
43 キャップ部材
44 ピニオンギヤ
50切り替え機構
53 切り替え機構
54 ブラケット
54R ラックギヤ
55 揺動アーム
56 支持機構
57 駆動機構
60a 閉鎖面
63 カバー部材
64 加湿機構
65 多孔質体
66 タンク
67 供給チューブ
68 毛管状通路
70 移動操作機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル部からインクを吐出して記録媒体に画像を形成するプリントヘッド、及び、前記ノズル部のノズル面を封止する封止状態と前記ノズル面から離間した離間状態との間で切り替え可能に設けられたキャップ部材を備えるインクジェットプリンタであって、
前記離間状態における前記キャップ部材の開口部を閉鎖する閉鎖機構を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記閉鎖機構が、前記キャップ部材の開口部を閉鎖可能なカバー手段、及び、前記キャップ部材の前記封止状態と前記離間状態との間の切り替えに応じて、前記カバー手段を、前記キャップ部材の開口部を閉鎖する閉鎖位置と、前記キャップ部材の開口部を解放した解放位置との間で移動操作させる移動操作機構を備える請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記閉鎖機構が、インクジェットプリンタの筐体内に配置されたカバー手段、及び、前記キャップ部材の前記封止状態と前記離間状態との間の切り替えに応じて、前記キャップ部材を、その開口部が前記カバー手段によって閉鎖される閉鎖位置と、同開口部が前記カバー手段から解放された解放位置との間で移動させる移動操作機構を備える請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記キャップ部材の内面にインク吸収材が設けられており、前記カバー手段は前記インク吸収材に押し付けられる閉鎖面を備える請求項2または3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記カバー手段の内面に、前記インク吸収材を加湿する加湿手段が備えられている請求項4に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−233961(P2009−233961A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81493(P2008−81493)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】