インクジェットプリンタ
【課題】導波管を用いたインクジェットプリンタにおいて、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制する。
【解決手段】メディアに吐出されたインクを乾燥する導波管の終端側に配置された回転反射部38に、導波管内に供給されたマイクロ波を反射する平板状のプロペラ部61と、このプロペラ部61と回転出力軸63で連結されてプロペラ部61を回転させるモータ部62とを備えるプロペラ部材60が設けられている。そして、マグネトロン43から導波管内に供給されたマイクロ波は、回転反射部38において回転するプロペラ部61により反射されるため、マグネトロンから直接供給されたマイクロ波と、プロペラ部61により反射されたマイクロ波とにより発生する定在波のピーク位置を変動させることができ、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができる。
【解決手段】メディアに吐出されたインクを乾燥する導波管の終端側に配置された回転反射部38に、導波管内に供給されたマイクロ波を反射する平板状のプロペラ部61と、このプロペラ部61と回転出力軸63で連結されてプロペラ部61を回転させるモータ部62とを備えるプロペラ部材60が設けられている。そして、マグネトロン43から導波管内に供給されたマイクロ波は、回転反射部38において回転するプロペラ部61により反射されるため、マグネトロンから直接供給されたマイクロ波と、プロペラ部61により反射されたマイクロ波とにより発生する定在波のピーク位置を変動させることができ、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出させてメディアに画像等を形成するインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいては、紙、絹、綿、塩化ビニル等のシート状のメディア(記録媒体)の表面あるいは表裏面に対して、酸性染料、反応染料、直接染料等の染料系インクや、ソルベントインク等の有機溶剤系の顔料系インクを吐出することによって印刷を行なう。このようなインクジェットプリンタにおいては、特に工業分野において、印刷後のメディアの出荷及び納品等を迅速かつ容易に行なうために、インクが吐出されたメディアを効率良く乾燥することが重要となる。
【0003】
このため、特許文献1では、マイクロ波が供給される導波管にメディアを挿通させることで、メディアに吐出されたインクを乾燥させるインクジェットプリンタが考えられている。
【特許文献1】特開2003−022890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、迅速にインクを乾燥させることができるものの、導波管内にマイクロ波の定在波が発生するため、インクの乾燥ムラが発生するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、導波管を用いたインクジェットプリンタにおいて、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットプリンタは、メディアに向けてインクを吐出する吐出手段と、吐出手段によりインクが吐出されたメディアが内部に挿通される導波管と、導波管の始端部に設けられて、導波管に電磁波を供給する電磁波供給手段と、導波管の終端部に設けられて、電磁波供給手段により供給された電磁波を回転して反射する回転反射部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、吐出手段によりインクが吐出されたメディアは、電磁波供給手段により電磁波が供給される導波管内に挿通される。このため、メディアに吐出されたインクは、この電磁波により乾燥される。そして、この電磁波供給手段により供給された電磁波は、導波管内を伝搬した後に、終端部において回転反射部材により反射されるため、再度、この反射された電磁波により、メディアに吐出されたインクが乾燥される。そして、この回転反射部材が回転することで、回転反射部材により反射される電磁波の反射方向が変化するため、電磁波供給手段により供給された電磁波と回転反射部材により反射された電磁波とにより発生する定在波が変動する。これにより、定在波のピーク位置が導波管内において変動するため、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができる。
【0008】
この場合、回転反射部材は、電磁波の搬送方向に垂直な軸を中心軸として回転することが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、回転反射部材を導波管における電磁波の搬送方向に垂直な軸を中心軸として回転させることで、導波管内に供給された電磁波を効率的に反射させることができるとともに、回転反射部材を容易に導波管に取り付けることができる。
【0009】
また、導波管における回転反射部材の終端側に設けられて、電磁波供給手段により供給された電磁波を反射終端する反射終端部材を更に有することが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、回転反射部材に反射されずに通過した電磁波は、回転反射部材の終端側に設けられた反射終端部材により反射終端されるため、電磁波供給手段により供給された電磁波を確実に反射させることができ、メディアに吐出されたインクをより迅速に乾燥させることができる。
【0010】
また、回転反射部材は、導波管の内側断面と略同形の平板状に形成されていることが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、回転反射部材が導波管の内側断面と略同形の平板上に形成されているため、導波管内に供給された電磁波を効率的に反射することができ
る。
【0011】
また、導波管に供給される電磁波の波長をλgとし、nを1以上の整数とするとき、反射部材と回転反射部材との離間距離が、(n/2)・λgであることが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、反射部材と回転反射部材との離間距離を(n/2)・λgとすることで、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを更に抑制することができる。
【0012】
また、反射部材と回転反射部材との離間距離を変動させる離間距離変動手段を更に有することが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、反射部材と回転反射部材との離間距離を変動させることで、導波管内に発生する定在波のピーク位置を変動させることができる。このため、電磁波のパワーを導波管内において分散させることができるため、導波管に挿通されたメディアに吐出されたインクの乾燥ムラを更に抑制することができる。
【0013】
また、電磁波供給手段と回転反射部材との間に設けられて、回転反射部材により反射された電磁波の伝搬を阻止する伝搬阻止手段を更に有することが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、電磁波供給手段から導波管内に供給された電磁波は回転反射部材により反射されるが、電磁波供給手段と回転反射部材との間に伝搬阻止手段が設けられているため、この反射された電磁波は、電磁波供給手段への伝搬が阻止される。このため、反射された電磁波により電磁波供給手段が故障するのを防止することができる。
【0014】
また、回転反射部材は、金属製であることが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、回転反射部材が金属製であるため、導波管に供給された電磁波を効率的に反射させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導波管を用いたインクジェットプリンタにおいて、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るインクジェットプリンタの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0017】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの斜視図であり、図2は、図1に示したインクジェットプリンタの断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、基台10に載置されてメディアMにインクを吐出するプリンタ部20と、プリンタ部20においてメディアMに吐出されたインクを乾燥する導波管30とを備えている。メディアMには、シート状の印刷媒体が用いられ、例えば、紙、絹、綿、塩化ビニルなどで構成される。また、インクには、酸性染料、反応染料、直接染料などの染料系インクや、ソルベントなどの有機溶剤系インクなどが用いられる。
【0019】
プリンタ部20には、メディアMを搬送する搬送ローラ21と、プラテン22上のメディアMにインクを吐出するインクジェットヘッド23と、インクジェットヘッド23から吐出するインクを貯蔵するインクタンクが収納されたトナー部24と、ユーザが操作入力を行う操作部25と、が設けられている。
【0020】
図3は、導波管の斜視図であり、図4は、導波管の平面図である。図3及び図4に示すように、導波管30は、断面矩形で長尺の導波管であって、中央部で略U字状に屈曲した2段形状になっている。そして、導波管30は、導波管本体31,32と、屈曲部33と、電磁波供給部34と、伝搬阻止部35と、整合部36と、終端部37と、回転反射部38とで構成されている。なお、導波管本体31,32、屈曲部33、電磁波供給部34、伝搬阻止部35、終端部37及び回転反射部38は、それぞれ端面にフランジ部が形成されており、これらのフランジ部が重ねあわされて接続されることで、電磁波供給部34と伝搬阻止部35、伝搬阻止部35と整合部36、整合部36と導波管本体31、導波管本体31と屈曲部33、屈曲部33と導波管本体32、導波管本体32と回転反射部38、回転反射部38と終端部37とが、それぞれ連結されている。
【0021】
導波管本体31,32は、長尺に形成されており、マイクロ波によりメディアMに吐出されたインクを乾燥させるものである。このため、導波管本体31,32には、それぞれ、インクジェットヘッド23によりインクが吐出されたメディアMが導波管本体31,32内に挿通される挿入口41,42が形成されている。
【0022】
屈曲部33は、略U字状に形成されており、導波管本体31と導波管本体32との間に配置されて、導波管本体31及び導波管本体32とを上下2段に連結するものである。
【0023】
電磁波供給部34は、導波管30の始端部に配置されており、マイクロ波を発生するマグネトロン43が取り付けられるものである。このマグネトロン43は、マイクロ波を発生して、導波管30内にマイクロ波を供給し、導波管30内においてマイクロ波を順方向D1,D2に搬送させるものである。なお、マグネトロン43から導波管30に供給されるマイクロ波の波長をλgとする。
【0024】
伝搬阻止部35は、導波管本体31と電磁波供給部34との間に配置されており、マイクロ波を一方向にのみ伝搬させるアイソレータ44が取り付けられるものである。このアイソレータ44は、周知のアイソレータで構成されており、電磁波供給部34から導波管本体31に向かうマイクロ波を伝搬させるが、導波管本体31から電磁波供給部34に向かうマイクロ波の伝搬を阻止するものである。
【0025】
整合部36は、伝搬阻止部35と導波管本体31との間に配置されて、マイクロ波整合器45が取り付けられるものである。マイクロ波整合器45は、周知のマイクロ波整合器で構成されており、整合部36においてインピーダンス整合を行うことでマグネトロン43から供給されたマイクロ波の反射電力を小さくして、メディアMに吐出されたインクに対するマイクロ波の吸収効率を向上させるものである。
【0026】
終端部37は、導波管本体32の終端側、すなわち、導波管30の終端部に配置されており、導波管30内に供給されたマイクロ波の終端処理を行うものである。
【0027】
図5は、終端部の斜視透視図であり、図6は、終端部の縦断面図である。図5及び図6に示すように、終端部37には、反射終端部材50が設けられている。反射終端部材50は、終端部37の内部にスライド可能に設けられて、電磁波供給部34から導波管30内に供給されたマイクロ波を反射終端させるものである。このため、反射終端部材50には、反射終端本体51と、反射板52と、スライド駆動部53とが設けられている。
【0028】
反射終端本体51は、導体で構成されており、導波管30の終端部37の内壁と接触されて、反射板52を保持するものである。そして、反射終端本体51は、導波管本体32(電磁波供給部34)側(図6において右側)において、反射板52が螺着されており、導波管30の終端側(図6において左側)において、スライド駆動部53に連結されるロッド55が取り付けられている。
【0029】
反射板52は、断面コ字状に形成されており、一対の対向する矩形の側面部522と、この一対の側面部522を連結して反射終端本体51に螺着される矩形の反射面部521と、により構成されている。そして、反射面部521が、終端部37に搬送されてきたマイクロ波を反射して、導波管30内においてマイクロ波を順方向D1,D2の逆方向に搬送させる。このため、反射面部521の導波管本体32側の面が、導波管30の反射終端面となる。なお、反射面部521は、マイクロ波を好適に反射する形状に形成されており、好ましくは、マイクロ波の搬送方向(順方向D2)に対して垂直な平面状、又は、マイクロ波の搬送方向(順方向D2)に対して凸状若しくは凹状に湾曲した湾曲面状に形成されている。そして、反射板52は、金属で形成されるのが好ましく、特に、SUS(ステンレス鋼)、アルミニウム、鋼板で形成されるのが好ましい。このように、反射板52を金属で形成することで、導波管30に供給されたマイクロ波を効率的に反射させることができる。
【0030】
スライド駆動部53は、ロッド55を介して反射終端部材50を導波管30の長手方向にスライドさせるものである。スライド駆動部53には、モータなどの回転駆動源が内蔵されており、スライド駆動部53の出力軸が、回転駆動源の回転出力を導波管30の長手方向に変換する1又は複数のギア(不図示)を介して、ロッド55に連結されている。
【0031】
そして、図3及び図4に示すように、回転反射部38は、導波管本体32の終端側であって、導波管本体32と終端部37との間に配置されている。
【0032】
図7は、回転反射部の斜視透視図であり、図8は、回転反射部の縦断面図である。図7及び図8に示すように、回転反射部38には、プロペラ部材60が設けられている。このプロペラ部材60は、マグネトロン43から供給されたマイクロ波を反射するとともに、導波管30内に発生する定在波を変動させて乱すものである。このため、プロペラ部材60には、プロペラ部61と、このプロペラ部61を回転させるモータ部62とにより構成されており、プロペラ部61を回転させながら回転反射部38に搬送されたマイクロ波を反射する。
【0033】
プロペラ部61は、回転反射部38内に配置されており、回転反射部38の内壁と所定距離だけ離間して、回転反射部38の内側断面と略同形の平板上に形成されている。そして、プロペラ部61は、その表裏面に、マイクロ波を反射する反射面611が形成されている。反射面611は、マイクロ波を好適に反射する形状に形成されており、平面状、又は、凸状若しくは凹状に湾曲した湾曲面状に形成されている。
【0034】
なお、プロペラ部61は、金属で形成されるのが好ましく、特に、SUS(ステンレス鋼)、アルミニウム、鋼板で形成されるのが好ましい。このように、プロペラ部61を金属で形成することで、導波管30に供給されたマイクロ波を効率的に反射させることができる。
【0035】
モータ部62は、回転反射部38の上面(図4において上面)に設置されている。そして、モータ部62の回転出力軸63が、マイクロ波の搬送方向D2に対して垂直方向に向けて延びて、プロペラ部61に連結されている。これにより、モータ部62が回転駆動することにより、回転反射部38内において、プロペラ部61がマイクロ波の搬送方向D2に対して垂直方向の軸を中心軸として回転する。なお、回転出力軸63は、金属ではなくセラミックなどの非導電材料で構成することが好ましい。非導電材料にすることによって、回転出力軸63が導波管壁を貫通してモータに接続する場合において、導波管貫通部分からの電波漏れ(マイクロ波の漏洩)を小さくすることができる。
【0036】
図9は、終端部と回転反射部とを連結した状態の斜視透視図である。図9に示すように、終端部37と回転反射部38とを連結すると、反射終端部材50が、プロペラ部材60に対して、導波管30の終端側に配置され、プロペラ部材60が、反射終端部材50に対して、導波管30の始端側に配置される。そして、スライド駆動部53を駆動制御することにより、反射板52とプロペラ部61との離間距離Aが設定される。具体的には、反射面部521の反射面と回転出力軸63の中心軸との離間距離Aが(n/2)・λgとなるように、反射終端部材50のスライド位置が設定される。なお、λgは、マグネトロン43から導波管30に供給されるマイクロ波の波長を示し、nは1以上の整数を示している(プロペラ部61などの機械的な干渉を考慮し、nは2以上であることが好ましい)。
【0037】
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の動作について説明する。
【0038】
まず、搬送ローラ21を回転させて、メディアMをプラテン22上まで搬送させる。そして、プラテン22上に載置されたメディアMに対して、インクジェットヘッド23からインクを吐出させる。これにより、メディアM上に画像などが印刷される。
【0039】
その後、インクが吐出されたメディアMを挿入口41から導波管本体31内に挿通させるとともに、導波管本体31から出てきたメディアMを挿入口42から導波管本体32に挿通させて、マグネトロン43からマイクロ波を導波管30内に供給する。
【0040】
なお、導波管30に供給するマイクロ波は、例えば、搬送ローラ21によるメディアMの送り速度が12cm/分、導波管本体31及び導波管本体32におけるマイクロ波の照射幅が12cm(6cm×2本)である場合、メディアMに対して照射エネルギーが500Wのマイクロ波を照射することで、500W×60秒=30000Jのマイクロ波を、メディアMに照射することができる。
【0041】
そして、マグネトロン43から導波管30内に供給されたマイクロ波は、まず、整合部36において、マイクロ波整合器45により反射電力が小さくされて、導波管本体31に搬送される。そして、導波管本体31に搬送されたマイクロ波の一部は、挿入口41から挿入されたメディアMに吐出されたインクに吸収され、このインクを乾燥させる。そして、導波管本体31においてインクの乾燥に用いられなかったマイクロ波は、導波管本体31を通過して、屈曲部33で屈曲された後、導波管本体32に搬送される。そして、導波管本体32に搬送されたマイクロ波の一部は、導波管本体31内と同様に、挿入口42から挿入されたメディアMに吐出されたインクに吸収され、このインクを乾燥させる。
【0042】
その後、導波管本体32においてもインクの乾燥に用いられなかったマイクロ波は、導波管本体32を通過して、回転反射部38に搬送される。そして、回転反射部38に搬送されたマイクロ波は、プロペラ部材60のプロペラ部61で反射処理され、プロペラ部61で反射されず、回転反射部38を通過したマイクロ波は、終端部37に搬送されて、反射終端部材50の反射板52で反射終端処理される。
【0043】
ここで、反射終端部材50によるマイクロ波の反射終端処理と、プロペラ部材60によるマイクロ波の反射処理について詳しく説明する。
【0044】
マグネトロン43からマイクロ波が供給されている間は、プロペラ部材60のモータ部62が回転駆動されて、プロペラ部61が回転反射部38内で回転している。このため、回転反射部38に搬送されたマイクロ波は、その一部がプロペラ部61の反射面611で反射される。ここで、プロペラ部61は、モータ部62の回転駆動により回転しているため、このマイクロ波は、プロペラ部61の回転角度より適宜変動する反射面611が向く方向に反射される。
【0045】
図10は、回転反射部におけるプロペラ部の回転角度を示した図であり、図11は、図10に示したプロペラ部の各回転角度における定在波の状態を示した図である。なお、本実施形態では、プロペラ部61がマイクロ波の搬送方向D2に対して垂直な方向に向く回転角度を0°とし、上面視において、時計回りに回転角度が正の方向に大きくなるものとする。図10及び図11に示すように、プロペラ部61の回転角度が0°の場合は、図11(a)に示す定在波が発生する。そして、プロペラ部61の回転角度が45°に変動した場合は、図11(b)に示すように、プロペラ部61の回転角度が0°の定在波に対して、(1/6)・λg位相がずれた定在波が発生する。そして、プロペラ部61の回転角度が90°に変動した場合は、図11(c)に示すように、プロペラ部61の回転角度が0°の定在波に対して、(1/3)・λg位相がずれた定在波が発生し、プロペラ部61の回転角度が45°の定在波に対して、(1/6)・λg位相がずれた定在波が発生する。
【0046】
このように、プロペラ部61の回転により、プロペラ部61により反射されたマイクロ波の反射方向が変化するため、電磁波供給部34から回転反射部38に向かうマイクロ波とプロペラ部61により反射されたマイクロ波とによる定在波の発生が抑制されるとともに、この定在波のピーク位置が導波管30内において変動する。
【0047】
一方、プロペラ部61で反射されずに終端部37まで搬送されたマイクロ波は、反射板52の反射面部521で反射されて、導波管本体32に戻される。このとき、反射終端部材50とマグネトロン43とは固定されているため、導波管30内では、電磁波供給部34から終端部37に向かうマイクロ波と、終端部37から電磁波供給部34に向かうマイクロ波とにより定在波が発生する。しかしながら、導波管30内に供給されたマイクロ波の一部は、プロペラ部61で反射され、終端部37まで搬送されないため、電磁波供給部34から終端部37に向かうマイクロ波と終端部37から電磁波供給部34に向かうマイクロ波とにより発生する定在波のパワーを小さくすることができる。
【0048】
このようにして回転反射部38において反射処理されたマイクロ波及び終端部37において反射終端処理されたマイクロ波は、再度、回転反射部38及び終端部37から導波管本体32に戻される。そして、導波管本体32に搬送されたマイクロ波の一部は、挿入口42から挿入されたメディアMに吐出されたインクに吸収され、このインクを乾燥させる。そして、導波管本体32においてインクの乾燥に用いられなかったマイクロ波は、導波管本体32を通過して、屈曲部33で屈曲された後、導波管本体31に搬送される。そして、導波管本体31に搬送されたマイクロ波の一部は、挿入口41から挿入されたメディアMに吐出されたインクに吸収され、このインクを乾燥させる。その後、導波管本体31においてもインクの乾燥に用いられなかったマイクロ波は、導波管本体31を通過して、伝搬阻止部35まで搬送される。そして、伝搬阻止部35に搬送されたマイクロ波は、伝搬阻止部35に取り付けられたアイソレータ44により、電磁波供給部34への伝搬が阻止される。
【実施例1】
【0049】
次に、本発明に係るインクジェットプリンタの実施例について説明する。以下の説明では、インクジェットプリンタ1の導波管30でメディアMに吐出されたインクを乾燥させた場合の乾燥状態について実験した。実験条件は、下記のとおりである。
【0050】
(1)メディアMの材質:ポリ塩化ビニル
(2)マグネトロンの出力電力:800W
(3)マイクロ波の波長:
管内:147.88mm、空気中(自由空間):122.4mm
(導波管 EIAJ:日本電子機械工業会の規格のWRI-22、JIS-C6601〜6608)
(4)マイクロ波の照射時間:2分
(5)プロペラ部の回転速度:13rpm
そして、インクジェットプリンタ1により、メディアMに吐出したインクを上記条件で乾燥させたところ、プロペラ部61の回転角度に応じたインクの乾燥状態は、図12のようになった。図12は、プロペラ部材の回転出力軸と反射終端部材の反射板との離間距離を220mmとして乾燥させた場合のメディアMの写真を示しており、図12(a)は、プロペラ部61の回転角度を0°で固定した場合、図12(b)は、プロペラ部61の回転角度を45°で固定した場合、図12(c)は、プロペラ部61の回転角度を90°で固定した場合、図12(d)は、プロペラ部61を回転させた場合を示している。そして、図12に示される複数の略円状の変色箇所は、定在波のピークにより他の箇所と比べて急激に加熱されて乾燥した過加熱箇所である。このため、この過加熱箇所を観察することで、導波管30内の定在波のピークを推定することができ、定在波のピークのパワーを推定することができる。
【0051】
図12(a)〜(c)に示すように、プロペラ部61の回転角度が0°、45°、90°に固定されていると、複数の過加熱箇所が表出されて乾燥ムラが生じているが、プロペラ部61の回転角度ごとに、過加熱箇所の表出位置が異なる。そして、図12(d)に示すように、プロペラ部61を回転することで、過加熱箇所の表出が低減されて、全体的に乾燥ムラが抑えられていることが分かる。
【0052】
また、プロペラ部材60の回転出力軸63と反射終端部材50の反射板52との離間距離Aに応じたインクの乾燥状態は、図13及び図14のようになった。図13は、乾燥後のメディアMの写真を示しており、図14は、乾燥ムラの測定結果を示している。図14(a)は、図13に示す各離間距離に応じた、過加熱箇所の間隔と過加熱箇所の幅を示しており、図14(b)は、過加熱箇所の間隔と過加熱箇所の幅とを説明するためのメディアMの模式図を示している。
【0053】
図13に示すように、回転出力軸63と反射板52との離間距離Aごとに、過加熱箇所の表出度合いが異なることが分かる。また、図14に示すように、回転出力軸63と反射板52との離間距離Aごとに、過加熱箇所の間隔α及び過加熱箇所の幅βが異なることが分かる。
【0054】
また、図13及び図14に示すように、回転出力軸63と反射板52との離間距離Aが(n/2)・λg(プロペラ部61などの機械的な干渉を考慮し、nは2以上であることが好ましい)となる150又は220mmの場合が、最も、過加熱箇所の表出度合いが小さくなっているため、乾燥ムラが抑制されていることが分かる。
【0055】
このように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1よれば、インクジェットヘッド23によりメディアMにインクが吐出されると、このメディアMは、マグネトロン43によりマイクロ波が供給される導波管30内に挿通される。そして、このマグネトロン43により供給されたマイクロ波は、導波管30内を伝搬した後に、回転反射部38においてプロペラ部材60のプロペラ部61により反射されるため、再度、この反射されたマイクロ波により、メディアMに吐出されたインクが乾燥される。そして、このプロペラ部61が回転することで、プロペラ部61により反射されるマイクロ波の反射方向が変化するため、マグネトロン43により供給されたマイクロ波とプロペラ部61により反射されたマイクロ波とにより発生する定在波が変動する。これにより、定在波のピーク位置が導波管30内において変動するため、メディアMに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができる。
【0056】
また、プロペラ部61を導波管30におけるマイクロ波の搬送方向D2に垂直な軸を中心軸として回転させることで、導波管30内に供給されたマイクロ波を効率的に反射させることができるとともに、プロペラ部材60を容易に導波管30の回転反射部38に取り付けることができる。
【0057】
そして、プロペラ部61に反射されずに通過したマイクロ波は、回転反射部38の終端側に設けられた反射終端部材50により反射終端されるため、マグネトロン43により供給されたマイクロ波を確実に反射させることができ、メディアMに吐出されたインクをより迅速に乾燥させることができる。
【0058】
また、プロペラ部61が回転反射部38の内側断面と略同形の平板上に形成されているため、回転反射部38に搬送されたマイクロ波を効率的に反射することができる。
【0059】
また、反射終端部材50の反射板52とプロペラ部61との離間距離Aを(n/2)・λgとすることで、メディアMに吐出されたインクの乾燥ムラを更に抑制することができる。
【0060】
この場合、スライド駆動部53により反射終端部材50をスライドさせて、反射板52とプロペラ部61との離間距離Aを変動させることで、導波管30内に発生する定在波のピーク位置を変動させることができる。このため、マイクロ波のパワーを導波管内において分散させることができるため、導波管に挿通されたメディアに吐出されたインクの乾燥ムラを更に抑制することができる。
【0061】
そして、マグネトロン43から導波管30内に供給されたマイクロ波はプロペラ部61により反射されるが、マグネトロン43とプロペラ部61との間にアイソレータ44が取り付けられた伝搬阻止部35が配置されているため、この反射されたマイクロ波は、マグネトロン43への伝搬が阻止される。このため、反射されたマイクロ波によりマグネトロン43が故障するのを防止することができる。
【0062】
また、プロペラ部61が金属製であるため、導波管30に供給されたマイクロ波を効率的に反射させることができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、2段の導波管を用いて説明したが、1段の導波管でもよく、3段以上の導波管でもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、回転出力軸63を中心として羽が双方向に延びる平板状のプロペラ部61を用いて説明したが、プロペラ部の形状は、回転反射部38内において回転することができる形状であれば如何なるものであってもよい。例えば、図15に示すように、回転出力軸63を中心として羽が4方向に延びる断面が十字状のプロペラ部65を用いてもよく、図16に示すように、回転出力軸63に対して羽が一方向にのみ延びる平板状のプロペラ部66を用いてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、プロペラ部61は、マイクロ波の搬送方向D2に対して垂直方向の軸を中心軸として回転するものとして説明したが、プロペラ部61の反射面611が回転反射部38内で回転することができれば、如何なる方向に回転してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、導波管30に反射終端部材50が設けられるものとして説明したが、特に反射終端部材50を設けなくてもよい。この場合、例えば、反射終端部材50に、短絡板や、マイクロ波を吸収して終端させる終端部材などを設けてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、反射終端部材50は、スライド可能なものとして説明したが、導波管30内で固定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェットプリンタの断面図である。
【図3】導波管の斜視図である。
【図4】導波管の平面図である。
【図5】終端部の斜視透視図である。
【図6】終端部の縦断面図である。
【図7】回転反射部の斜視透視図である。
【図8】回転反射部の縦断面図である。
【図9】終端部と回転反射部とを連結した状態の斜視透視図である。
【図10】回転反射部におけるプロペラ部の回転角度を示した図である。
【図11】図10に示したプロペラ部の各回転角度における定在波の状態を示した図である。
【図12】プロペラ部材の回転出力軸と反射終端部材の反射板との離間距離を220mmとして乾燥させた場合のメディアの写真を示している。
【図13】プロペラ部材の回転出力軸と反射終端部材の反射板との離間距離を変えて乾燥させた場合のメディアの写真を示している。
【図14】図13の場合の乾燥ムラの測定結果を示している。
【図15】他のプロペラ部を用いた回転反射部の横断面図である。
【図16】他のプロペラ部を用いた回転反射部の横断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1…インクジェットプリンタ、10…基台、20…プリンタ部、21…搬送ローラ、22…プラテン、23…インクジェットヘッド、24…トナー部、25…操作部、30導波管、31…導波管本体、32…導波管本体、33…屈曲部、34…電磁波供給部、35…伝搬阻止部、36…整合部、37…終端部、38…回転反射部、41…挿入口、42…挿入口、43…マグネトロン(電磁波供給手段)、44…アイソレータ(伝搬阻止手段)、45…マイクロ波整合器、50…反射終端部材、51…反射終端本体、52…反射板、521…反射面部、522…側面部、53…スライド駆動部、55…ロッド、60…プロペラ部材(回転反射部材)、61…プロペラ部、611…反射面、62…モータ部、63…回転出力軸、65…プロペラ部、66…プロペラ部、A…離間距離、M…メディア。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出させてメディアに画像等を形成するインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいては、紙、絹、綿、塩化ビニル等のシート状のメディア(記録媒体)の表面あるいは表裏面に対して、酸性染料、反応染料、直接染料等の染料系インクや、ソルベントインク等の有機溶剤系の顔料系インクを吐出することによって印刷を行なう。このようなインクジェットプリンタにおいては、特に工業分野において、印刷後のメディアの出荷及び納品等を迅速かつ容易に行なうために、インクが吐出されたメディアを効率良く乾燥することが重要となる。
【0003】
このため、特許文献1では、マイクロ波が供給される導波管にメディアを挿通させることで、メディアに吐出されたインクを乾燥させるインクジェットプリンタが考えられている。
【特許文献1】特開2003−022890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、迅速にインクを乾燥させることができるものの、導波管内にマイクロ波の定在波が発生するため、インクの乾燥ムラが発生するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、導波管を用いたインクジェットプリンタにおいて、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができるインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェットプリンタは、メディアに向けてインクを吐出する吐出手段と、吐出手段によりインクが吐出されたメディアが内部に挿通される導波管と、導波管の始端部に設けられて、導波管に電磁波を供給する電磁波供給手段と、導波管の終端部に設けられて、電磁波供給手段により供給された電磁波を回転して反射する回転反射部材と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るインクジェットプリンタによれば、吐出手段によりインクが吐出されたメディアは、電磁波供給手段により電磁波が供給される導波管内に挿通される。このため、メディアに吐出されたインクは、この電磁波により乾燥される。そして、この電磁波供給手段により供給された電磁波は、導波管内を伝搬した後に、終端部において回転反射部材により反射されるため、再度、この反射された電磁波により、メディアに吐出されたインクが乾燥される。そして、この回転反射部材が回転することで、回転反射部材により反射される電磁波の反射方向が変化するため、電磁波供給手段により供給された電磁波と回転反射部材により反射された電磁波とにより発生する定在波が変動する。これにより、定在波のピーク位置が導波管内において変動するため、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができる。
【0008】
この場合、回転反射部材は、電磁波の搬送方向に垂直な軸を中心軸として回転することが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、回転反射部材を導波管における電磁波の搬送方向に垂直な軸を中心軸として回転させることで、導波管内に供給された電磁波を効率的に反射させることができるとともに、回転反射部材を容易に導波管に取り付けることができる。
【0009】
また、導波管における回転反射部材の終端側に設けられて、電磁波供給手段により供給された電磁波を反射終端する反射終端部材を更に有することが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、回転反射部材に反射されずに通過した電磁波は、回転反射部材の終端側に設けられた反射終端部材により反射終端されるため、電磁波供給手段により供給された電磁波を確実に反射させることができ、メディアに吐出されたインクをより迅速に乾燥させることができる。
【0010】
また、回転反射部材は、導波管の内側断面と略同形の平板状に形成されていることが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、回転反射部材が導波管の内側断面と略同形の平板上に形成されているため、導波管内に供給された電磁波を効率的に反射することができ
る。
【0011】
また、導波管に供給される電磁波の波長をλgとし、nを1以上の整数とするとき、反射部材と回転反射部材との離間距離が、(n/2)・λgであることが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、反射部材と回転反射部材との離間距離を(n/2)・λgとすることで、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを更に抑制することができる。
【0012】
また、反射部材と回転反射部材との離間距離を変動させる離間距離変動手段を更に有することが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、反射部材と回転反射部材との離間距離を変動させることで、導波管内に発生する定在波のピーク位置を変動させることができる。このため、電磁波のパワーを導波管内において分散させることができるため、導波管に挿通されたメディアに吐出されたインクの乾燥ムラを更に抑制することができる。
【0013】
また、電磁波供給手段と回転反射部材との間に設けられて、回転反射部材により反射された電磁波の伝搬を阻止する伝搬阻止手段を更に有することが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、電磁波供給手段から導波管内に供給された電磁波は回転反射部材により反射されるが、電磁波供給手段と回転反射部材との間に伝搬阻止手段が設けられているため、この反射された電磁波は、電磁波供給手段への伝搬が阻止される。このため、反射された電磁波により電磁波供給手段が故障するのを防止することができる。
【0014】
また、回転反射部材は、金属製であることが好ましい。このインクジェットプリンタによれば、回転反射部材が金属製であるため、導波管に供給された電磁波を効率的に反射させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、導波管を用いたインクジェットプリンタにおいて、メディアに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るインクジェットプリンタの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0017】
図1は、本実施形態に係るインクジェットプリンタの斜視図であり、図2は、図1に示したインクジェットプリンタの断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、基台10に載置されてメディアMにインクを吐出するプリンタ部20と、プリンタ部20においてメディアMに吐出されたインクを乾燥する導波管30とを備えている。メディアMには、シート状の印刷媒体が用いられ、例えば、紙、絹、綿、塩化ビニルなどで構成される。また、インクには、酸性染料、反応染料、直接染料などの染料系インクや、ソルベントなどの有機溶剤系インクなどが用いられる。
【0019】
プリンタ部20には、メディアMを搬送する搬送ローラ21と、プラテン22上のメディアMにインクを吐出するインクジェットヘッド23と、インクジェットヘッド23から吐出するインクを貯蔵するインクタンクが収納されたトナー部24と、ユーザが操作入力を行う操作部25と、が設けられている。
【0020】
図3は、導波管の斜視図であり、図4は、導波管の平面図である。図3及び図4に示すように、導波管30は、断面矩形で長尺の導波管であって、中央部で略U字状に屈曲した2段形状になっている。そして、導波管30は、導波管本体31,32と、屈曲部33と、電磁波供給部34と、伝搬阻止部35と、整合部36と、終端部37と、回転反射部38とで構成されている。なお、導波管本体31,32、屈曲部33、電磁波供給部34、伝搬阻止部35、終端部37及び回転反射部38は、それぞれ端面にフランジ部が形成されており、これらのフランジ部が重ねあわされて接続されることで、電磁波供給部34と伝搬阻止部35、伝搬阻止部35と整合部36、整合部36と導波管本体31、導波管本体31と屈曲部33、屈曲部33と導波管本体32、導波管本体32と回転反射部38、回転反射部38と終端部37とが、それぞれ連結されている。
【0021】
導波管本体31,32は、長尺に形成されており、マイクロ波によりメディアMに吐出されたインクを乾燥させるものである。このため、導波管本体31,32には、それぞれ、インクジェットヘッド23によりインクが吐出されたメディアMが導波管本体31,32内に挿通される挿入口41,42が形成されている。
【0022】
屈曲部33は、略U字状に形成されており、導波管本体31と導波管本体32との間に配置されて、導波管本体31及び導波管本体32とを上下2段に連結するものである。
【0023】
電磁波供給部34は、導波管30の始端部に配置されており、マイクロ波を発生するマグネトロン43が取り付けられるものである。このマグネトロン43は、マイクロ波を発生して、導波管30内にマイクロ波を供給し、導波管30内においてマイクロ波を順方向D1,D2に搬送させるものである。なお、マグネトロン43から導波管30に供給されるマイクロ波の波長をλgとする。
【0024】
伝搬阻止部35は、導波管本体31と電磁波供給部34との間に配置されており、マイクロ波を一方向にのみ伝搬させるアイソレータ44が取り付けられるものである。このアイソレータ44は、周知のアイソレータで構成されており、電磁波供給部34から導波管本体31に向かうマイクロ波を伝搬させるが、導波管本体31から電磁波供給部34に向かうマイクロ波の伝搬を阻止するものである。
【0025】
整合部36は、伝搬阻止部35と導波管本体31との間に配置されて、マイクロ波整合器45が取り付けられるものである。マイクロ波整合器45は、周知のマイクロ波整合器で構成されており、整合部36においてインピーダンス整合を行うことでマグネトロン43から供給されたマイクロ波の反射電力を小さくして、メディアMに吐出されたインクに対するマイクロ波の吸収効率を向上させるものである。
【0026】
終端部37は、導波管本体32の終端側、すなわち、導波管30の終端部に配置されており、導波管30内に供給されたマイクロ波の終端処理を行うものである。
【0027】
図5は、終端部の斜視透視図であり、図6は、終端部の縦断面図である。図5及び図6に示すように、終端部37には、反射終端部材50が設けられている。反射終端部材50は、終端部37の内部にスライド可能に設けられて、電磁波供給部34から導波管30内に供給されたマイクロ波を反射終端させるものである。このため、反射終端部材50には、反射終端本体51と、反射板52と、スライド駆動部53とが設けられている。
【0028】
反射終端本体51は、導体で構成されており、導波管30の終端部37の内壁と接触されて、反射板52を保持するものである。そして、反射終端本体51は、導波管本体32(電磁波供給部34)側(図6において右側)において、反射板52が螺着されており、導波管30の終端側(図6において左側)において、スライド駆動部53に連結されるロッド55が取り付けられている。
【0029】
反射板52は、断面コ字状に形成されており、一対の対向する矩形の側面部522と、この一対の側面部522を連結して反射終端本体51に螺着される矩形の反射面部521と、により構成されている。そして、反射面部521が、終端部37に搬送されてきたマイクロ波を反射して、導波管30内においてマイクロ波を順方向D1,D2の逆方向に搬送させる。このため、反射面部521の導波管本体32側の面が、導波管30の反射終端面となる。なお、反射面部521は、マイクロ波を好適に反射する形状に形成されており、好ましくは、マイクロ波の搬送方向(順方向D2)に対して垂直な平面状、又は、マイクロ波の搬送方向(順方向D2)に対して凸状若しくは凹状に湾曲した湾曲面状に形成されている。そして、反射板52は、金属で形成されるのが好ましく、特に、SUS(ステンレス鋼)、アルミニウム、鋼板で形成されるのが好ましい。このように、反射板52を金属で形成することで、導波管30に供給されたマイクロ波を効率的に反射させることができる。
【0030】
スライド駆動部53は、ロッド55を介して反射終端部材50を導波管30の長手方向にスライドさせるものである。スライド駆動部53には、モータなどの回転駆動源が内蔵されており、スライド駆動部53の出力軸が、回転駆動源の回転出力を導波管30の長手方向に変換する1又は複数のギア(不図示)を介して、ロッド55に連結されている。
【0031】
そして、図3及び図4に示すように、回転反射部38は、導波管本体32の終端側であって、導波管本体32と終端部37との間に配置されている。
【0032】
図7は、回転反射部の斜視透視図であり、図8は、回転反射部の縦断面図である。図7及び図8に示すように、回転反射部38には、プロペラ部材60が設けられている。このプロペラ部材60は、マグネトロン43から供給されたマイクロ波を反射するとともに、導波管30内に発生する定在波を変動させて乱すものである。このため、プロペラ部材60には、プロペラ部61と、このプロペラ部61を回転させるモータ部62とにより構成されており、プロペラ部61を回転させながら回転反射部38に搬送されたマイクロ波を反射する。
【0033】
プロペラ部61は、回転反射部38内に配置されており、回転反射部38の内壁と所定距離だけ離間して、回転反射部38の内側断面と略同形の平板上に形成されている。そして、プロペラ部61は、その表裏面に、マイクロ波を反射する反射面611が形成されている。反射面611は、マイクロ波を好適に反射する形状に形成されており、平面状、又は、凸状若しくは凹状に湾曲した湾曲面状に形成されている。
【0034】
なお、プロペラ部61は、金属で形成されるのが好ましく、特に、SUS(ステンレス鋼)、アルミニウム、鋼板で形成されるのが好ましい。このように、プロペラ部61を金属で形成することで、導波管30に供給されたマイクロ波を効率的に反射させることができる。
【0035】
モータ部62は、回転反射部38の上面(図4において上面)に設置されている。そして、モータ部62の回転出力軸63が、マイクロ波の搬送方向D2に対して垂直方向に向けて延びて、プロペラ部61に連結されている。これにより、モータ部62が回転駆動することにより、回転反射部38内において、プロペラ部61がマイクロ波の搬送方向D2に対して垂直方向の軸を中心軸として回転する。なお、回転出力軸63は、金属ではなくセラミックなどの非導電材料で構成することが好ましい。非導電材料にすることによって、回転出力軸63が導波管壁を貫通してモータに接続する場合において、導波管貫通部分からの電波漏れ(マイクロ波の漏洩)を小さくすることができる。
【0036】
図9は、終端部と回転反射部とを連結した状態の斜視透視図である。図9に示すように、終端部37と回転反射部38とを連結すると、反射終端部材50が、プロペラ部材60に対して、導波管30の終端側に配置され、プロペラ部材60が、反射終端部材50に対して、導波管30の始端側に配置される。そして、スライド駆動部53を駆動制御することにより、反射板52とプロペラ部61との離間距離Aが設定される。具体的には、反射面部521の反射面と回転出力軸63の中心軸との離間距離Aが(n/2)・λgとなるように、反射終端部材50のスライド位置が設定される。なお、λgは、マグネトロン43から導波管30に供給されるマイクロ波の波長を示し、nは1以上の整数を示している(プロペラ部61などの機械的な干渉を考慮し、nは2以上であることが好ましい)。
【0037】
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1の動作について説明する。
【0038】
まず、搬送ローラ21を回転させて、メディアMをプラテン22上まで搬送させる。そして、プラテン22上に載置されたメディアMに対して、インクジェットヘッド23からインクを吐出させる。これにより、メディアM上に画像などが印刷される。
【0039】
その後、インクが吐出されたメディアMを挿入口41から導波管本体31内に挿通させるとともに、導波管本体31から出てきたメディアMを挿入口42から導波管本体32に挿通させて、マグネトロン43からマイクロ波を導波管30内に供給する。
【0040】
なお、導波管30に供給するマイクロ波は、例えば、搬送ローラ21によるメディアMの送り速度が12cm/分、導波管本体31及び導波管本体32におけるマイクロ波の照射幅が12cm(6cm×2本)である場合、メディアMに対して照射エネルギーが500Wのマイクロ波を照射することで、500W×60秒=30000Jのマイクロ波を、メディアMに照射することができる。
【0041】
そして、マグネトロン43から導波管30内に供給されたマイクロ波は、まず、整合部36において、マイクロ波整合器45により反射電力が小さくされて、導波管本体31に搬送される。そして、導波管本体31に搬送されたマイクロ波の一部は、挿入口41から挿入されたメディアMに吐出されたインクに吸収され、このインクを乾燥させる。そして、導波管本体31においてインクの乾燥に用いられなかったマイクロ波は、導波管本体31を通過して、屈曲部33で屈曲された後、導波管本体32に搬送される。そして、導波管本体32に搬送されたマイクロ波の一部は、導波管本体31内と同様に、挿入口42から挿入されたメディアMに吐出されたインクに吸収され、このインクを乾燥させる。
【0042】
その後、導波管本体32においてもインクの乾燥に用いられなかったマイクロ波は、導波管本体32を通過して、回転反射部38に搬送される。そして、回転反射部38に搬送されたマイクロ波は、プロペラ部材60のプロペラ部61で反射処理され、プロペラ部61で反射されず、回転反射部38を通過したマイクロ波は、終端部37に搬送されて、反射終端部材50の反射板52で反射終端処理される。
【0043】
ここで、反射終端部材50によるマイクロ波の反射終端処理と、プロペラ部材60によるマイクロ波の反射処理について詳しく説明する。
【0044】
マグネトロン43からマイクロ波が供給されている間は、プロペラ部材60のモータ部62が回転駆動されて、プロペラ部61が回転反射部38内で回転している。このため、回転反射部38に搬送されたマイクロ波は、その一部がプロペラ部61の反射面611で反射される。ここで、プロペラ部61は、モータ部62の回転駆動により回転しているため、このマイクロ波は、プロペラ部61の回転角度より適宜変動する反射面611が向く方向に反射される。
【0045】
図10は、回転反射部におけるプロペラ部の回転角度を示した図であり、図11は、図10に示したプロペラ部の各回転角度における定在波の状態を示した図である。なお、本実施形態では、プロペラ部61がマイクロ波の搬送方向D2に対して垂直な方向に向く回転角度を0°とし、上面視において、時計回りに回転角度が正の方向に大きくなるものとする。図10及び図11に示すように、プロペラ部61の回転角度が0°の場合は、図11(a)に示す定在波が発生する。そして、プロペラ部61の回転角度が45°に変動した場合は、図11(b)に示すように、プロペラ部61の回転角度が0°の定在波に対して、(1/6)・λg位相がずれた定在波が発生する。そして、プロペラ部61の回転角度が90°に変動した場合は、図11(c)に示すように、プロペラ部61の回転角度が0°の定在波に対して、(1/3)・λg位相がずれた定在波が発生し、プロペラ部61の回転角度が45°の定在波に対して、(1/6)・λg位相がずれた定在波が発生する。
【0046】
このように、プロペラ部61の回転により、プロペラ部61により反射されたマイクロ波の反射方向が変化するため、電磁波供給部34から回転反射部38に向かうマイクロ波とプロペラ部61により反射されたマイクロ波とによる定在波の発生が抑制されるとともに、この定在波のピーク位置が導波管30内において変動する。
【0047】
一方、プロペラ部61で反射されずに終端部37まで搬送されたマイクロ波は、反射板52の反射面部521で反射されて、導波管本体32に戻される。このとき、反射終端部材50とマグネトロン43とは固定されているため、導波管30内では、電磁波供給部34から終端部37に向かうマイクロ波と、終端部37から電磁波供給部34に向かうマイクロ波とにより定在波が発生する。しかしながら、導波管30内に供給されたマイクロ波の一部は、プロペラ部61で反射され、終端部37まで搬送されないため、電磁波供給部34から終端部37に向かうマイクロ波と終端部37から電磁波供給部34に向かうマイクロ波とにより発生する定在波のパワーを小さくすることができる。
【0048】
このようにして回転反射部38において反射処理されたマイクロ波及び終端部37において反射終端処理されたマイクロ波は、再度、回転反射部38及び終端部37から導波管本体32に戻される。そして、導波管本体32に搬送されたマイクロ波の一部は、挿入口42から挿入されたメディアMに吐出されたインクに吸収され、このインクを乾燥させる。そして、導波管本体32においてインクの乾燥に用いられなかったマイクロ波は、導波管本体32を通過して、屈曲部33で屈曲された後、導波管本体31に搬送される。そして、導波管本体31に搬送されたマイクロ波の一部は、挿入口41から挿入されたメディアMに吐出されたインクに吸収され、このインクを乾燥させる。その後、導波管本体31においてもインクの乾燥に用いられなかったマイクロ波は、導波管本体31を通過して、伝搬阻止部35まで搬送される。そして、伝搬阻止部35に搬送されたマイクロ波は、伝搬阻止部35に取り付けられたアイソレータ44により、電磁波供給部34への伝搬が阻止される。
【実施例1】
【0049】
次に、本発明に係るインクジェットプリンタの実施例について説明する。以下の説明では、インクジェットプリンタ1の導波管30でメディアMに吐出されたインクを乾燥させた場合の乾燥状態について実験した。実験条件は、下記のとおりである。
【0050】
(1)メディアMの材質:ポリ塩化ビニル
(2)マグネトロンの出力電力:800W
(3)マイクロ波の波長:
管内:147.88mm、空気中(自由空間):122.4mm
(導波管 EIAJ:日本電子機械工業会の規格のWRI-22、JIS-C6601〜6608)
(4)マイクロ波の照射時間:2分
(5)プロペラ部の回転速度:13rpm
そして、インクジェットプリンタ1により、メディアMに吐出したインクを上記条件で乾燥させたところ、プロペラ部61の回転角度に応じたインクの乾燥状態は、図12のようになった。図12は、プロペラ部材の回転出力軸と反射終端部材の反射板との離間距離を220mmとして乾燥させた場合のメディアMの写真を示しており、図12(a)は、プロペラ部61の回転角度を0°で固定した場合、図12(b)は、プロペラ部61の回転角度を45°で固定した場合、図12(c)は、プロペラ部61の回転角度を90°で固定した場合、図12(d)は、プロペラ部61を回転させた場合を示している。そして、図12に示される複数の略円状の変色箇所は、定在波のピークにより他の箇所と比べて急激に加熱されて乾燥した過加熱箇所である。このため、この過加熱箇所を観察することで、導波管30内の定在波のピークを推定することができ、定在波のピークのパワーを推定することができる。
【0051】
図12(a)〜(c)に示すように、プロペラ部61の回転角度が0°、45°、90°に固定されていると、複数の過加熱箇所が表出されて乾燥ムラが生じているが、プロペラ部61の回転角度ごとに、過加熱箇所の表出位置が異なる。そして、図12(d)に示すように、プロペラ部61を回転することで、過加熱箇所の表出が低減されて、全体的に乾燥ムラが抑えられていることが分かる。
【0052】
また、プロペラ部材60の回転出力軸63と反射終端部材50の反射板52との離間距離Aに応じたインクの乾燥状態は、図13及び図14のようになった。図13は、乾燥後のメディアMの写真を示しており、図14は、乾燥ムラの測定結果を示している。図14(a)は、図13に示す各離間距離に応じた、過加熱箇所の間隔と過加熱箇所の幅を示しており、図14(b)は、過加熱箇所の間隔と過加熱箇所の幅とを説明するためのメディアMの模式図を示している。
【0053】
図13に示すように、回転出力軸63と反射板52との離間距離Aごとに、過加熱箇所の表出度合いが異なることが分かる。また、図14に示すように、回転出力軸63と反射板52との離間距離Aごとに、過加熱箇所の間隔α及び過加熱箇所の幅βが異なることが分かる。
【0054】
また、図13及び図14に示すように、回転出力軸63と反射板52との離間距離Aが(n/2)・λg(プロペラ部61などの機械的な干渉を考慮し、nは2以上であることが好ましい)となる150又は220mmの場合が、最も、過加熱箇所の表出度合いが小さくなっているため、乾燥ムラが抑制されていることが分かる。
【0055】
このように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1よれば、インクジェットヘッド23によりメディアMにインクが吐出されると、このメディアMは、マグネトロン43によりマイクロ波が供給される導波管30内に挿通される。そして、このマグネトロン43により供給されたマイクロ波は、導波管30内を伝搬した後に、回転反射部38においてプロペラ部材60のプロペラ部61により反射されるため、再度、この反射されたマイクロ波により、メディアMに吐出されたインクが乾燥される。そして、このプロペラ部61が回転することで、プロペラ部61により反射されるマイクロ波の反射方向が変化するため、マグネトロン43により供給されたマイクロ波とプロペラ部61により反射されたマイクロ波とにより発生する定在波が変動する。これにより、定在波のピーク位置が導波管30内において変動するため、メディアMに吐出されたインクの乾燥ムラを抑制することができる。
【0056】
また、プロペラ部61を導波管30におけるマイクロ波の搬送方向D2に垂直な軸を中心軸として回転させることで、導波管30内に供給されたマイクロ波を効率的に反射させることができるとともに、プロペラ部材60を容易に導波管30の回転反射部38に取り付けることができる。
【0057】
そして、プロペラ部61に反射されずに通過したマイクロ波は、回転反射部38の終端側に設けられた反射終端部材50により反射終端されるため、マグネトロン43により供給されたマイクロ波を確実に反射させることができ、メディアMに吐出されたインクをより迅速に乾燥させることができる。
【0058】
また、プロペラ部61が回転反射部38の内側断面と略同形の平板上に形成されているため、回転反射部38に搬送されたマイクロ波を効率的に反射することができる。
【0059】
また、反射終端部材50の反射板52とプロペラ部61との離間距離Aを(n/2)・λgとすることで、メディアMに吐出されたインクの乾燥ムラを更に抑制することができる。
【0060】
この場合、スライド駆動部53により反射終端部材50をスライドさせて、反射板52とプロペラ部61との離間距離Aを変動させることで、導波管30内に発生する定在波のピーク位置を変動させることができる。このため、マイクロ波のパワーを導波管内において分散させることができるため、導波管に挿通されたメディアに吐出されたインクの乾燥ムラを更に抑制することができる。
【0061】
そして、マグネトロン43から導波管30内に供給されたマイクロ波はプロペラ部61により反射されるが、マグネトロン43とプロペラ部61との間にアイソレータ44が取り付けられた伝搬阻止部35が配置されているため、この反射されたマイクロ波は、マグネトロン43への伝搬が阻止される。このため、反射されたマイクロ波によりマグネトロン43が故障するのを防止することができる。
【0062】
また、プロペラ部61が金属製であるため、導波管30に供給されたマイクロ波を効率的に反射させることができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、2段の導波管を用いて説明したが、1段の導波管でもよく、3段以上の導波管でもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、回転出力軸63を中心として羽が双方向に延びる平板状のプロペラ部61を用いて説明したが、プロペラ部の形状は、回転反射部38内において回転することができる形状であれば如何なるものであってもよい。例えば、図15に示すように、回転出力軸63を中心として羽が4方向に延びる断面が十字状のプロペラ部65を用いてもよく、図16に示すように、回転出力軸63に対して羽が一方向にのみ延びる平板状のプロペラ部66を用いてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、プロペラ部61は、マイクロ波の搬送方向D2に対して垂直方向の軸を中心軸として回転するものとして説明したが、プロペラ部61の反射面611が回転反射部38内で回転することができれば、如何なる方向に回転してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、導波管30に反射終端部材50が設けられるものとして説明したが、特に反射終端部材50を設けなくてもよい。この場合、例えば、反射終端部材50に、短絡板や、マイクロ波を吸収して終端させる終端部材などを設けてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、反射終端部材50は、スライド可能なものとして説明したが、導波管30内で固定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係るインクジェットプリンタの斜視図である。
【図2】図1に示したインクジェットプリンタの断面図である。
【図3】導波管の斜視図である。
【図4】導波管の平面図である。
【図5】終端部の斜視透視図である。
【図6】終端部の縦断面図である。
【図7】回転反射部の斜視透視図である。
【図8】回転反射部の縦断面図である。
【図9】終端部と回転反射部とを連結した状態の斜視透視図である。
【図10】回転反射部におけるプロペラ部の回転角度を示した図である。
【図11】図10に示したプロペラ部の各回転角度における定在波の状態を示した図である。
【図12】プロペラ部材の回転出力軸と反射終端部材の反射板との離間距離を220mmとして乾燥させた場合のメディアの写真を示している。
【図13】プロペラ部材の回転出力軸と反射終端部材の反射板との離間距離を変えて乾燥させた場合のメディアの写真を示している。
【図14】図13の場合の乾燥ムラの測定結果を示している。
【図15】他のプロペラ部を用いた回転反射部の横断面図である。
【図16】他のプロペラ部を用いた回転反射部の横断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1…インクジェットプリンタ、10…基台、20…プリンタ部、21…搬送ローラ、22…プラテン、23…インクジェットヘッド、24…トナー部、25…操作部、30導波管、31…導波管本体、32…導波管本体、33…屈曲部、34…電磁波供給部、35…伝搬阻止部、36…整合部、37…終端部、38…回転反射部、41…挿入口、42…挿入口、43…マグネトロン(電磁波供給手段)、44…アイソレータ(伝搬阻止手段)、45…マイクロ波整合器、50…反射終端部材、51…反射終端本体、52…反射板、521…反射面部、522…側面部、53…スライド駆動部、55…ロッド、60…プロペラ部材(回転反射部材)、61…プロペラ部、611…反射面、62…モータ部、63…回転出力軸、65…プロペラ部、66…プロペラ部、A…離間距離、M…メディア。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアに向けてインクを吐出する吐出手段と、
前記吐出手段によりインクが吐出されたメディアが内部に挿通される導波管と、
前記導波管の始端部に設けられて、前記導波管に電磁波を供給する電磁波供給手段と、
前記導波管の終端部に設けられて、前記電磁波供給手段により供給された電磁波を回転して反射する回転反射部材と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記回転反射部材は、電磁波の搬送方向に垂直な軸を中心軸として回転することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記導波管における前記回転反射部材の終端側に設けられて、前記電磁波供給手段により供給された電磁波を反射終端する反射終端部材を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記回転反射部材は、前記導波管の内側断面と略同形の平板状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記導波管に供給される電磁波の波長をλgとし、nを1以上の整数とするとき、前記反射部材と前記回転反射部材との離間距離が、
(n/2)・λg
であることを特徴とする請求項3又は4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記反射部材と前記回転反射部材との離間距離を変動させる離間距離変動手段を更に有することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記電磁波供給手段と前記回転反射部材との間に設けられて、前記回転反射部材により反射された電磁波の伝搬を阻止する伝搬阻止手段を更に有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記回転反射部材は、金属製であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項1】
メディアに向けてインクを吐出する吐出手段と、
前記吐出手段によりインクが吐出されたメディアが内部に挿通される導波管と、
前記導波管の始端部に設けられて、前記導波管に電磁波を供給する電磁波供給手段と、
前記導波管の終端部に設けられて、前記電磁波供給手段により供給された電磁波を回転して反射する回転反射部材と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記回転反射部材は、電磁波の搬送方向に垂直な軸を中心軸として回転することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記導波管における前記回転反射部材の終端側に設けられて、前記電磁波供給手段により供給された電磁波を反射終端する反射終端部材を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記回転反射部材は、前記導波管の内側断面と略同形の平板状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記導波管に供給される電磁波の波長をλgとし、nを1以上の整数とするとき、前記反射部材と前記回転反射部材との離間距離が、
(n/2)・λg
であることを特徴とする請求項3又は4に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記反射部材と前記回転反射部材との離間距離を変動させる離間距離変動手段を更に有することを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記電磁波供給手段と前記回転反射部材との間に設けられて、前記回転反射部材により反射された電磁波の伝搬を阻止する伝搬阻止手段を更に有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記回転反射部材は、金属製であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図15】
【図16】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−89353(P2010−89353A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260808(P2008−260808)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】
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