インクジェットヘッドの駆動方法及びその装置
【課題】メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下の防止と高速印刷の実現とを両立させること。
【解決手段】ブロック1a上のノズル7の列設方向(主走査方向)における手前と次の各ノズル7からそれぞれ5ドロップ及び1ドロップのインク液滴を吐出するパターンの画像データが制御部に入力された場合に、手前のノズル7の吐出数を4ドロップに減らすか、次のノズル7の吐出数を2ドロップに増やすか、両方の変更を行うかのどれかを実行するようにした。そして、この変更により、次のノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出する時に、手前のノズル7で生じたメニスカス残留振動が収束しているようにするか、あるいは、次のノズル7からの2ドロップ目のインク液滴の吐出に伴い増幅されたインク室6内のインク圧力の増減によって、手前のノズル7から伝わったメニスカス残留振動が減衰又は相殺されるようにした。
【解決手段】ブロック1a上のノズル7の列設方向(主走査方向)における手前と次の各ノズル7からそれぞれ5ドロップ及び1ドロップのインク液滴を吐出するパターンの画像データが制御部に入力された場合に、手前のノズル7の吐出数を4ドロップに減らすか、次のノズル7の吐出数を2ドロップに増やすか、両方の変更を行うかのどれかを実行するようにした。そして、この変更により、次のノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出する時に、手前のノズル7で生じたメニスカス残留振動が収束しているようにするか、あるいは、次のノズル7からの2ドロップ目のインク液滴の吐出に伴い増幅されたインク室6内のインク圧力の増減によって、手前のノズル7から伝わったメニスカス残留振動が減衰又は相殺されるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドの駆動方法及びその装置に係り、特に、せん断モードによりインク液滴を吐出するインクジェットヘッドの駆動方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
せん断モード(シェアモード)型のインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタでは、インク液滴の吐出後におけるノズルのメニスカス残留振動により、次のインク液滴の吐出の際に着弾位置のずれが生じたり、余分なインクが吐出されてしまう可能性が指摘されている。
【0003】
そこで、印字命令と非印字命令とが交互に繰り返される時などのインクのメニスカス残留振動の影響を受けやすい場合であっても、インク液滴の着弾位置がずれることを防止するための技術が、既に提案されている。この提案では、直前及び直後が非印字命令である印字命令の際に、直前及び直後も印字命令である印字命令の場合よりもインク液滴の吐出数を少なくする制御を行うようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、インクジェットプリンタに対する高速印刷の要望が高まっている。この要望に応えるため、高速印刷に適したライン型の印字ヘッドを備えたライン型インクジェットプリンタが実用化されている。ライン型の印字ヘッドは、印刷用紙幅に対応したサイズのブロックを有し、インク吐出用の多数のノズルがブロック上に配置されている。そして、ライン方向(主走査方向)に垂直な方向(副走査方向)に搬送される印刷用紙に対してライン単位でインクを吐出することで画像を形成する。
【0006】
したがって、ライン型のインクジェットヘッドにおいては、上述したメニスカス残留振動の影響を、ブロック上の隣り合うノズル間においても考慮する必要がある。即ち、隣り合うノズルの一方でインク液滴の吐出を行った後、他方のノズルでインク液滴の吐出を行う場合、一方のノズルにおけるメニスカス残留振動がブロックを介して他方のノズルのメニスカスに伝わらないようにすることが望まれる。
【0007】
特に、各ノズルから同一の画素に対してインク液滴を複数連続して吐出するマルチドロップ動作を行う場合には、一方のノズルでインク液滴を最大数連続して吐出した場合であっても、それにより一方のノズルで生じたメニスカス残留振動が収束してから、他方のノズルにおけるインク液滴の吐出が開始されるようにする必要がある。
【0008】
そのために、隣り合う2つの各ノズルにそれぞれ連通する各インク室の容積を変更させる容積変更手段には、所定のインターバル期間を挟み前後に時間をずらして駆動信号がそれぞれ供給される。このインターバル期間の開始時点は、一方のノズルから同一画素に最大数連続してインク液滴を吐出する場合を基準にして、つまり、一方のノズルにおけるインク液滴の吐出で発生したメニスカス残留振動が最も遅く収束する場合を基準にして決定される。
【0009】
このインターバル期間は、ライン型インクジェットヘッドを用いるインクジェットプリンタの高速印刷という利点を大きくする上では、できるだけ短いことが望ましい。しかし、インターバル期間の無造作な短縮化は、インターバル期間を設けた本来の目的を損ねることにもなりかねない。
【0010】
なお、上述した事情は、ライン型インクジェットヘッドを用いるインクジェットプリンタに限らず、マルチドロップ方式のノズルを複数有するインクジェットヘッドを駆動する際に共通する事情である。
【0011】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、せん断モード(シェアモード)型のインクジェットヘッドをマルチドロップ方式で駆動する際に、メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下の防止と高速印刷の実現とを両立させることができるインクジェットヘッドの駆動方法と、この方法を実施する際に用いて好適なインクジェットヘッドの駆動装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、
インクジェットヘッド(例えば、図1のライン型インクジェットヘッド1)の複数のノズル(例えば、図1のノズル7)のそれぞれから、各ノズルに対応する画素に1又は複数のインク液滴を吐出させると共に、相互の間隔が最短距離にある2つのノズルから連続するタイミングでそれぞれのノズルに対応する2つの隣り合う画素に対してインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動に当たり、
前記2つのノズルのうちインク液滴の吐出タイミングが前である前側のノズル(例えば、図1の第1グループ(1G)のノズル7)からのインク液滴の吐出数が吐出可能範囲の最大値であり、かつ、前記吐出タイミングが後である後側のノズル(例えば、図1の第2グループ(2G)のノズル7)からのインク液滴の吐出数が前記吐出可能範囲の最小値であるときに、前記前側のノズルと前記後側のノズルとの吐出数差が、前記最大値と前記最小値との差よりも小さくなるように、前記前側及び後側の少なくとも一方のノズルの吐出数を変更するようにした、
ことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前側のノズルからの吐出数を吐出可能範囲の最大値とし、後側のノズルからの吐出数を吐出可能範囲の最小値とする印刷の際には、前側及び後側の少なくとも一方のノズルからの吐出数が変更される。その結果、実際の印刷においては、前側及び後側の各ノズルからの吐出数の差が吐出可能範囲の最大値と最小値との差よりも小さくなるような吐出数で、前側及び後側の各ノズルからインク液滴がそれぞれ吐出される。具体的には、前側のノズルからの吐出数が最大値よりも減らされるか、後側のノズルからの吐出数が最小値よりも増やされるか、あるいは、その両方とされるかである。
【0014】
前側のノズルからの吐出数が最大値よりも減らされると、前側のノズルからのインク液滴の吐出が終了するタイミングが早くなる。このため、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動を収束させるのに十分な時間を、後側のノズルからのインク液滴の吐出が開始されるまでの間に確保することができるようになる。
【0015】
一方、後側のノズルからの吐出数が最小値よりも増やされると、後側のノズルから1つ目のインク液滴を吐出した後も、2つ目のインク液滴のノズルからの吐出が継続されることになる。したがって、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動が収束せず後側のノズルに伝わっている状態で、後側のノズルにおける1つ目のインク液滴の吐出が開始されても、2つ目のインク液滴を吐出させる際のインク圧力の増減によって、前側のノズルから後側のノズルに伝わったメニスカス残留振動が減衰又は相殺される。
【0016】
このため、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動の影響で後側のノズルから吐出される1つ目のインク液滴が画質を低下させてしまうのを、防止することができる。これにより、せん断モード(シェアモード)型のインクジェットヘッドをマルチドロップ方式で駆動する際に、メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下を招くことなく、高速印刷を実現することができる。
【0017】
また、上記発明において、あるいは、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第1の変形例のように、請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動装置において、
前記インクジェットヘッドが、同一のブロック(例えば、図1のブロック1a)に複数列設された各ノズルにそれぞれ連通する各インク室(例えば、図2のインク室6)の容積を、前記ノズルからのインク液滴の吐出数に応じた波形の駆動信号(例えば、図5の駆動信号S1〜S3)でそれぞれ駆動される各容積変更手段(例えば、図2の圧電部材4a,4b)により変更させることで、対応する前記インク室内のインクの圧力を増減させて前記吐出数のインク液滴を前記ノズルから同一の画素に吐出させるライン型インクジェットヘッドであり、
前記2つのノズルが、前記ブロック上で前記ノズルの列設方向(例えば、図1の主走査方向)において隣り合って配置されており、
前記ライン型インクジェットヘッドが、前記2つのノズルにそれぞれ対応する前記各容積変更手段に対して、前記駆動信号を所定のインターバル期間を挟んで順次供給することで駆動されるものであり、
変更後の前記吐出数に応じた波形の前記駆動信号が、前記前側及び後側のノズルにそれぞれ対応する前記各容積変更手段に供給される、
ようにしてもよい。
【0018】
本発明によれば、前側のノズルからの吐出数が最大値よりも減らされると、所定のインターバル期間の開始よりも早い時点で、前側のノズルからのインク液滴の吐出が終了する。このため、インターバル期間の長短に拘わらず、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動を収束させるのに十分な時間を、後側のノズルからのインク液滴の吐出が開始されるまでの間に確保することができるようになる。
【0019】
一方、後側のノズルからの吐出数が最小値よりも増やされると、後側のノズルから1つ目のインク液滴を吐出した後も、2つ目のインク液滴をノズルから吐出させるために、容量変更手段によるインク室の容量変更が継続されることになる。したがって、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動が収束せず後側のノズルに伝わっている状態で、後側のノズルにおける1つ目のインク液滴の吐出が開始されても、2つ目のインク液滴を吐出させるためのインク室の容量変更によるインク室内のインク圧力の増減によって、前側のノズルから後側のノズルに伝わったメニスカス残留振動が減衰又は相殺される。
【0020】
このため、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動の影響で後側のノズルから吐出される1つ目のインク液滴が画質を低下させてしまうのを、インターバル期間の長短に拘わらず防止することができる。これにより、せん断モード(シェアモード)型のライン型インクジェットヘッドをマルチドロップ方式で駆動する際に、メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下を招くことなく、インターバル期間の短縮化による高速印刷の実現を達成することができる。
【0021】
さらに、上記発明に係るインクジェットヘッドの駆動方法において、前記インクジェットヘッドを用いた印刷の所定単位におけるインク液滴の吐出数の総和が、前記吐出数の変更の前後で一致するようにする構成としてもよい。
【0022】
また、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第2の変形例のように、請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動装置又は第1の変形例のインクジェットヘッドの駆動装置において、前記吐出数変更手段(例えば、図13のステップS5)が、前記インクジェットヘッドを用いた印刷の所定単位におけるインク液滴の吐出数の総和が、前記吐出数の変更の前後で一致するように、前記吐出数を変更する構成としてもよい。
【0023】
上記発明によれば、インク液滴の吐出数を変更しても印刷の所定単位について画像の濃度を変えずに維持できるので、印刷品質の向上及び高速印刷の実現に伴う画像の濃度の変化を防ぐことができる。
【0024】
さらに、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動方法の第2の変形例のように、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第1の変形例において、前記変更後の前記前側及び後側のノズルからの前記吐出数の和が、前記最大値と前記最小値との和と一致するようにする構成としてもよい。
【0025】
また、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第3の変形例のように、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第2の変形例において、前記吐出数変更手段が、前記変更後の前記前側及び後側のノズルからの前記吐出数の和が、前記最大値と前記最小値との和と一致するように、前記吐出数を変更する構成としてもよい。
【0026】
上記発明によれば、印刷品質の向上及び高速印刷の実現に伴う画像の濃度変化の防止を、吐出数を変更したインク液滴の着弾先の画素の範囲内で達成し、その画素において画像の濃度が局所的に変化してしまうのを防ぐことができる。
【0027】
さらに、請求項1又は2記載のインクジェットヘッドの駆動方法において、前記後側のノズルからの間隔が最短距離にある最後側のノズル(例えば、図1の第3グループ(3G)のノズル7)から、前記後側のノズルからのインク液滴の吐出に続いて、連続したタイミングでインク液滴を吐出する際に、該最後側のノズルからの前記吐出数と前記後側のノズルからの前記吐出数との大小関係が、前記吐出数の変更の前後で変わらないようにしてもよい。
【0028】
また、請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動装置又は第1の変形例のインクジェットヘッドの駆動装置において、前記吐出数変更手段が、前記後側のノズルからの間隔が最短距離にある最後側のノズルから、前記後側のノズルからのインク液滴の吐出に続いて、連続したタイミングでインク液滴を吐出する際に、該最後側のノズルからの前記吐出数と前記後側のノズルからの前記吐出数との大小関係が、前記吐出数の変更の前後で変わらないように、前記吐出数を変更する構成としてもよい。
【0029】
このように、インクジェットヘッド上に、後側のノズルの次にインク液滴を吐出する最後側のノズルが、後側のノズルの最短距離に存在する場合、後側のノズルからの吐出数と最後側のノズルからの吐出数との大小関係が、前側及び後側の少なくとも一方のノズルからの吐出数を変更する前後で変わらないようにすれば、後側及び最後側の各ノズルから吐出されるインク液滴の着弾先の各画素間で、画像の濃度の濃淡関係が変化することがない。このため、高速印刷の実現と印刷品質の向上を、後側及び最後側の各ノズルから吐出されるインク液滴の着弾先の各画素間で画像の濃度の濃淡関係を逆転させることなく、実現することができる。
【0030】
さらに、請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動方法において、前記ブロックにおける前記ノズルの列設方向とは異なる方向(例えば、図1の副走査方向)に複数の前記ブロック(例えば、図11の一段目と二段目のブロック1a)を列設することで、前記各ブロック上で前記列設方向において隣り合う2つの前記ノズルの間隔を前記ブロックの列設数(例えば、図11の場合は一段目のブロック1aと二段目のブロック1aとの2列であるので「2」)で除した間隔の画素に対するインク液滴の吐出を行うように前記ライン型インクジェットヘッド(例えば、図11のライン型インクジェットヘッド1)が構成されており、前記複数のブロック中に、前記前側のノズル(例えば、図11の一段目のブロック1aの第1グループ(1G)のノズル7)からの前記吐出数が前記最大値であり前記後側のノズル(例えば、図11の一段目のブロック1aの第2グループ(2G)のノズル7)からの前記吐出数が前記最小値であるブロック(例えば、図11の一段目のブロック1a)が存在するときに、前記前側及び後側の各ノズルからの前記吐出数と、前記前側及び後側の各ノズルに対応する各画素の間に位置する画素と対応する他のブロック(例えば、図11の二段目のブロック1a)の特定の前記ノズル(例えば、図11の二段目のブロック1aの第1グループ(1G)のノズル7)からの前記吐出数との和が、吐出数の変更の前後で変わらないように、前記少なくとも一方のノズルからの前記吐出数と、前記特定のノズルからの前記吐出数とを変更するようにしてもよい。
【0031】
また、第1の変形例のインクジェットヘッドの駆動装置において、前記ライン型インクジェットヘッドが、前記ブロックにおける前記ノズルの列設方向とは異なる方向に複数の前記ブロックを列設することで、前記各ブロック上で前記列設方向において隣り合う2つの前記ノズルの間隔を前記ブロックの列設数で除した間隔の画素に対するインク液滴の吐出を行うように構成されており、前記判定手段(例えば、図13のステップS3)が、前記複数のブロック中に、前記吐出パターンが前記特定吐出パターンであるブロックが存在するか否かを判定し、前記生成手段(例えば、図13のステップS7)が、前記吐出パターンが前記特定吐出パターンであるブロックが存在すると前記判定手段が判定したときに、前記前側及び後側の各ノズルからの前記吐出数と、前記前側及び後側の各ノズルに対応する各画素の間に位置する画素と対応する他のブロックの特定の前記ノズルからの前記吐出数との和が変わらないように、前記少なくとも一方のノズルからの前記吐出数と、前記特定のノズルからの前記吐出数とを変更した前記駆動信号を、前記前側及び後側の各ノズルに対応する前記各容積変更手段と前記特定のノズルに対応する前記容積変更手段とにそれぞれ生成し供給する構成としてもよい。
【0032】
このように、ライン型インクジェットヘッドによる印刷の解像度を向上させるために、複数のブロックをノズルの列設方向とは異なる方向に列設する場合、前側及び後側の各ノズルから吐出されるインク液滴の各吐出数と、それら各ノズルに対応する各画素の間に位置する画素と対応する他のブロックの特定のノズルから吐出されるインク液滴の吐出数との和を、前側及び後側の少なくとも一方のノズルからの吐出数を変更する前後で変わらないようにすれば、前側、後側、及び、特定の各ノズルから吐出されるインク液滴の着弾先の各画素間で、画像の濃度の濃淡関係が変化することがない。このため、インターバル期間の短縮化による高速印刷の実現と印刷品質の向上を、前側、後側、及び、特定の各ノズルから吐出されるインク液滴の着弾先の各画素間で画像の濃度の濃淡関係を逆転させることなく、実現することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、せん断モード(シェアモード)型のインクジェットヘッドをマルチドロップ方式で駆動する際に、メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下を招くことなく、高速印刷の実現を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明が適用されるライン型インクジェットヘッドを示す説明図である。
【図2】図1に示すライン型インクジェットヘッドの内部構造を示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)は図1に示すライン型インクジェットヘッドのインク吐出動作時におけるインク室内の状態変化を示す断面図である。
【図4】図1のライン型インクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタの機能構成を示すブロック図である。
【図5】図4のヘッド駆動部が各グループの同じ列のノズルにそれぞれ対応する各液滴吐出ユニットに駆動信号を出力するタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図6】主走査方向において隣り合う手前のノズルで5ドロップのインク液滴を連続吐出した後に、次のノズルからインク液滴を吐出する場合の、インターバル期間の長さとインク液滴の吐出速度との関係を示すグラフである。
【図7】主走査方向において隣り合う手前のノズルからインク液滴を5ドロップ連続吐出し、次のノズルからインク液滴を1ドロップ吐出する場合の、インターバル期間の長さとインク液滴の着弾点の本来の位置からのずれ量との関係を示すグラフである。
【図8】主走査方向において隣り合う手前のノズルから吐出されたインク液滴の着弾点に対して、次のノズルから吐出されたインク液滴の着弾点がずれた場合の印刷状態を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る駆動方法により図4の制御部が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る駆動方法により図4の制御部が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。
【図11】本発明が適用されるライン型インクジェットヘッドの他の例を示す説明図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る駆動方法により図4の制御部が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。
【図13】本発明の第1乃至第3実施形態に係る駆動方法によってライン型インクジェットヘッドを駆動する際に図4の制御部が行うインク液滴吐出数変更処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0036】
図1は本発明が適用されるライン型インクジェットヘッドを示す説明図、図2は図1に示すライン型インクジェットヘッドの内部構造を示す断面図、図3(a)〜(c)は図1に示すライン型インクジェットヘッドのインク吐出動作時におけるインク室内の状態変化を示す断面図である。図1に示すライン型インクジェットヘッドは、シェアモード型のライン型インクジェットヘッドである。
【0037】
なお、本実施形態において、後述のインク室に関する構成は全インク室で共通であるので、個々のインク室を示す符号のアルファベット等の添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0038】
図1に示すように、本実施形態のライン型インクジェットヘッド1は、1つの面をノズル面1bとしたブロック1aを有している。ノズル面1bには、所定数(本実施形態では3つ)ずつのノズル7が、記録紙(図示せず)の搬送方向(副走査方向)と直交する主走査方向(請求項中の列設方向に相当)に複数列並べて配置されている。各列の3つのノズル7は、主走査方向及び副走査方向にそれぞれ等間隔を空けて配置されている。このように配置することで、ノズル7を主走査方向に一直線状に並べて配置する場合は、ノズル加工精度上から印刷解像度に限界があったが、それに比べて、隣り合うノズル7どうしの主走査方向における間隔を縮め、ライン型インクジェットヘッド1による主走査方向の印刷解像度を高めている。以後の説明では、副走査方向における位置が同じノズル7の群を、それぞれ、第1グループ(1G)、第2グループ(2G)、第3グループ(3G)と言うことがある。
【0039】
ブロック1aの内部には、各ノズル7を構成要素の一部とする図2の液滴吐出ユニットUが複数設けられている。これら複数の液滴吐出ユニットUは、ノズル7と同じくブロック1aに主走査方向に列設されている。各液滴吐出ユニットUは、図2及び図3に示すように、セラミック等からなる基板2と、この基板2に副走査方向において対向配置されたカバープレート3と、これら基板2及びカバープレート3の間に主走査方向に間隔をおいて配置された複数の隔壁4とを有している。各隔壁4は2つの圧電部材4a,4b(請求項中の容積変更手段に相当)を有している。これら圧電部材4a,4bは、例えば、PZT(PbZrO3 −PbTiO3 )等の公知の圧電材料からなり、図3中の矢印で示すように互いに異なる方向に分極している。
【0040】
また、各液滴吐出ユニットUは、基板2、カバープレート3、および隔壁4の先端に固定されたノズルプレート5を有している。このノズルプレート5がブロック1aのノズル面1bを構成している。また、各液滴吐出ユニットUは、基板2、カバープレート3、隣り合う2つの隔壁4,4、およびノズルプレート5に囲まれたインク室6を有している。ノズルプレート5には、インク室6の一端側に連通する上述のノズル7が設けられている。インク室6の他端側は、全インク室6に連通するインク流入口8、インク供給口9を経て、インクチューブ10によってインクタンク(図示せず)に接続されている。
【0041】
インク室6の側面を構成する隔壁4および底面を構成する基板2の表面には、電極11(図3参照)が密着形成されている。インク室6内の電極11は、圧電部材4aの後部側表面まで延びている。各電極11には、この後部側表面において異方導電性フィルム(図示せず)を介してフレキシブルケーブル12が接続されており、このフレキシブルケーブル12を介して電極11に、駆動信号による駆動電圧が印加されるようになっている。
【0042】
電極11に駆動電圧が印加されると、隔壁4がせん断変形してインク室6の容積およびインク室6内のインクの圧力を変化させる。これにより、ノズル7からインク室6内のインクが吐出される。
【0043】
図4は図1のライン型インクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタの機能構成を示すブロック図である。図4に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタは、ライン型インクジェットヘッド1を駆動させるヘッド駆動部21と、温度検知部22と、加温部23と、制御部26とを備える。
【0044】
ヘッド駆動部21は、フレキシブルケーブル12を介してライン型インクジェットヘッド1の液滴吐出ユニットUに駆動電圧を印加する。具体的には、液滴吐出ユニットUの圧電部材4a,4bに設けられた電極11に駆動電圧を印加する。これにより圧電部材4a,4bは、隔壁4を変形させてインク室6の容積およびインク室6内のインクの圧力を変化させ、ノズル7からインクを吐出させる吐出駆動を行う。
【0045】
温度検知部22は、ライン型インクジェットヘッド1に供給されるインクの温度を検知する。インクタンク(図示せず)からライン型インクジェットヘッド1に供給されるインクの温度が検知できれば、温度検知部22はどこに配置されていてもよい。
【0046】
加温部23は、ライン型インクジェットヘッド1に供給されるインクを加温する。インクタンクからライン型インクジェットヘッド1に供給されるインクを加温できれば、加温部23はどこに配置されていてもよい。
【0047】
制御部26は、温度検知部22の検知結果を用いて加温部23によるインクの加温を制御する。また、制御部26は、入力される画像データに対応する内容の駆動信号をライン型インクジェットヘッド1の液滴吐出ユニットUに出力するようにヘッド駆動部21を制御する。この駆動信号は、ライン型インクジェットヘッド1の主走査方向におけるノズル7の配列順に合わせて、対象の液滴吐出ユニットUに出力される。
【0048】
図1を参照して前述したように、ブロック1a上には、副走査方向(列方向)に等間隔で位置をずらした第1グループ(1G)、第2グループ(2G)、第3グループ(3G)の各列のノズルが、主走査方向に等間隔を空けてサイクリックに配置されている。そのため、ヘッド駆動部21は、制御部26の制御にしたがって、第1グループ(1G)、第2グループ(2G)、第3グループ(3G)の順に、各グループの同じ列のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUの電極11に対して、駆動信号を順次出力する。例えば、図1にサフィックス付きの符号71 ,72 ,73 で示す、各グループのブロック1aの左端から数えてそれぞれ2番目に位置する3つのノズルは、各グループの同じ列のノズル7に該当する。つまり、各グループの同じ列のノズル7とは、各グループのブロック1aの例えば左端から数えた順番が同じノズル7どうしのことを指す。また、ヘッド駆動部21は、以後、各グループの次の列の(各グループのブロック1aの例えば左端から数えた順番が1つ後の)ノズル7にそれぞれ対応する液滴吐出ユニットUの電極11に、駆動信号を順次出力する。
【0049】
本実施形態のライン型インクジェットヘッド1では、各ノズル7から同一画素に対して最大5ドロップ(請求項中の吐出可能範囲の最大値に相当)、最小1ドロップ(請求項中の吐出可能範囲の最小値に相当)のインク液滴を連続吐出することができる。無論、画素に対してノズル7がインク液滴を吐出しない場合もある。したがって、インク液滴を吐出した場合のそのノズル7に発生するメニスカス残留振動は、一番遅い場合には、5ドロップ目のインク液滴を吐出した後に、一定の時間をかけて収束することになる。
【0050】
インク液滴を吐出したノズル7のメニスカス残留振動が収束しないまま、同じ列の次のグループのノズル7(請求項中の後側のノズルに相当)からインク液滴の吐出を開始すると、そのノズル7に連通するインク室6の隔壁4がせん断変形することで生じるインク室6内のインク圧力の増減が、直前にインク液滴を吐出した同じ列の手前のグループのノズル7(請求項中の前側のノズルに相当)からブロック1aを介して伝わったメニスカス残留振動によって減衰されてしまう。そして、この減衰によりインク室6内のインク圧力の増減幅が小さくなって、同じ列の次のグループのノズル7(後側のノズル)から最初に吐出されるインク液滴の吐出速度が低下する。インク液滴の吐出速度の低下は、インク液滴の着弾位置のずれを招き、印刷品質を低下させてしまう。なお、図1のブロック1aの場合、上述した手前のノズル7が第1グループのノズル7であるとすれば、第2グループの同じ列のノズル7が上述した次のノズル7に該当する。手前のノズル7が第2グループのノズル7であるとすれば、第3グループの同じ列のノズル7が次のノズルに該当する。
【0051】
そこで、ヘッド駆動部21は、ある列の手前のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUに出力した駆動信号が5ドロップ分のパルス波形を含む最も長い信号パターンであっても、その駆動信号の終了からメニスカス残留振動の収束に必要な時間(所定のインターバル期間)が経過してから、同じ列の次のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUへの駆動信号の出力を開始するようにしている。
【0052】
図5はヘッド駆動部21が各グループの同じ列のノズル7にそれぞれ対応する各液滴吐出ユニットUに駆動信号を出力するタイミングの一例を示すタイミングチャートである。図5に示すように、例えば、第1グループ(1G)のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUに出力された駆動信号S1が、5ドロップ分のパルス波形P1〜P5を含んでいる場合、その駆動信号S1の終了から、第2グループ(2G)のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUに対する駆動信号S2の出力が開始されるまでには、所定のインターバル期間Iが確保される。
【0053】
なお、第2グループと第3グループの同じ列のノズル7にそれぞれ対応する各液滴吐出ユニットUに出力される駆動信号S2,S3の間や、第3グループのノズル7と第1グループの次の列のノズル7とにそれぞれ対応する各液滴吐出ユニットUに出力される駆動信号S3,S1の間にも、同様に所定のインターバル期間Iが確保される。
【0054】
ところで、上述したインターバル期間Iは、高速印刷を実現する観点からすると、できるだけ短い時間にすることが望ましい。しかし、インターバル期間Iの必要以上の短縮化は、ある列の手前のノズル7で生じたメニスカス残留振動の影響による、同じ列の次のノズル7から吐出される1ドロップ目のインク液滴の吐出速度の低下を招き、インク液滴の着弾点にずれを生じさせることになるので、好ましくない。
【0055】
図6はある列の手前のノズル7で5ドロップのインク液滴を連続吐出した後に、同じ列の次のノズル7からインク液滴を吐出する場合の、インターバル期間Iの長さ(横軸)とインク液滴の吐出速度(縦軸)との関係を示すグラフである。図6中の「×」印のプロット点をつなぐ線は、次のノズル7から1ドロップのインク液滴を吐出する場合の相関を近似的に示している。メニスカス残留振動は周期波であるので、吐出速度とインターバル期間Iとの関係も直線的ではなく周期波的に変動するが、大まかには、インターバル期間Iが短いと吐出速度が低下する傾向が見られる。吐出速度の低下は、インク液滴の着弾点が本来の位置からずれる原因となる。
【0056】
図7はある列の手前のノズル7からインク液滴を5ドロップ連続吐出し、同じ列の次のノズル7からインク液滴を1ドロップ吐出する場合の、インターバル期間Iの長さ(横軸)とインク液滴の着弾点の本来の位置からのずれ量(縦軸)との関係を示すグラフである。インク液滴の吐出速度と着弾点のずれ量との間には一定の比例関係があるので、着弾点のずれ量とインターバル期間Iとの関係も、吐出速度とインターバル期間Iとの関係と同様に、直線的ではなく周期波的に変動する。しかし、大まかには、インターバル期間Iが短いと着弾点のずれ量が大きくなる傾向が見られる。図7では、縦軸の着弾点ずれ量を副走査方向におけるドット量で表している。例えば、インターバル期間Iが2μsである場合は、着弾点のずれ量は6ドット分に拡がる。
【0057】
図8はある列の手前のノズル7から吐出されたインク液滴の着弾点に対して、同じ列の次のノズル7から吐出されたインク液滴の着弾点がずれた場合の印刷状態を模式的に示す説明図である。インク液滴の着弾点が6ドット分ずれると、図8に示すように、ある列の手前のノズル7から5ドロップ連続吐出したインク液滴(太く濃い線)の着弾点に対して、同じ列の次のノズル7から1ドロップ吐出したインク液滴(細く淡い線)の着弾点が明らかにずれる。インク液滴の着弾点がずれると、両着弾点の画素によって表現される文字等のエッジがぼやけたような感じになり、印刷品質の低下につながる。
【0058】
一方、図6のグラフに「●」印や「◆」印の各プロット点どうしをそれぞれつなぐ線で示すように、次のノズル7から吐出するインク液滴が2ドロップや5ドロップに増えると、インターバル期間Iが短くても、次のノズル7から吐出される1ドロップ目のインク液滴の吐出速度は、1ドロップだけ吐出する場合に比べてそれほど低下しない。これは、次のノズル7から2ドロップ目のインク液滴を吐出させるために隔壁4がせん断変形することで生じるインク室6内のインク圧力の増減によって、1ドロップ目のインク液滴を吐出させるために生じたインク室6内のインク圧力の増減が増幅されるためである。
【0059】
また、ある列の手前のノズル7から吐出するインク液滴が4ドロップ以下である場合は、最後のインク液滴が手前のノズル7から吐出されてから、同じ列の次のノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。そのため、ある列の手前のノズル7から最後にインク液滴が吐出された際に生じたメニスカス残留振動が収束してから、同じ列の次のノズル7からの1ドロップ目のインク液滴の吐出が開始されることになる。
【0060】
そこで、本実施形態のライン型インクジェットヘッド1では、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ最大値である5ドロップ及び最小値である1ドロップとするパターン(請求項中の特定吐出パターンに相当)の画像データが、制御部26に入力された場合に、インク液滴の吐出数を変更する制御を制御部26において行うようにしている。このインク液滴の吐出数変更は、同じ列の手前と次の少なくとも一方のノズル7について行われる。かつ、このインク液滴の吐出数変更は、変更後の同じ列の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が、吐出数の最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップと一致しなくなるようなパターンで行われる。
【0061】
図9は本発明の第1実施形態に係る駆動方法により制御部26が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。図9の左側に示すように、制御部26に入力された画像データが、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとする内容(特定吐出パターン)である場合、制御部26は、図9の右側に示すa〜dのいずれかのパターンにインク液滴の吐出数を変更する。
【0062】
aパターンでは、手前のノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ減らして、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数をそれぞれ4ドロップ及び1ドロップとする。このaパターンでは、吐出数変更後の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。
【0063】
bパターンでは、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ減らして、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数をそれぞれ5ドロップ及び0ドロップとする。このbパターンでは、吐出数変更後の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が5ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。
【0064】
cパターンでは、手前のノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ減らすと共に、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やして、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数をそれぞれ4ドロップ及び2ドロップとする。このcパターンでは、吐出数変更後の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が2ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。
【0065】
dパターンでは、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ増やして、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数をそれぞれ5ドロップ及び2ドロップとする。このdパターンでは、吐出数変更後の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。
【0066】
以上のようなインク液滴の吐出数の変更を行う場合、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数の合計が、インク液滴の吐出数の変更前から、aパターンとbパターンでは1ドロップ減り、cパターンでは変わらず、dパターンでは1ドロップ増える。cパターンではインク液滴の吐出数の変更前後で、インク液滴の着弾点における画像の濃度が変わらないが、a,b,cの各パターンではインク液滴の着弾点における画像の濃度が変化する。
【0067】
そこで、制御部26は、乱数テーブル等を用いて、a,bの各パターンをそれぞれ1/6の確率、c,dの各パターンをそれぞれ1/3の確率で実行する。これにより、制御部26が吐出数の変更処理を行ったインク液滴の着弾点全体における画像の濃度を、インク液滴の吐出数の変更前後で実質的に変わらないようにすることができる。
【0068】
なお、制御部26は、任意の印刷単位の中で、上述した確率でa〜dの各パターンを実行することができる。例えば、1つの印刷ジョブを1つの印刷単位とし、その印刷ジョブによる印刷の全体でa〜dの各パターンを上述した確率で制御部26が実行するようにしてもよい。また、1頁の印刷を1つの印刷単位としてもよく、あるいは、主走査方向の所望のライン数を1つの印刷単位としてもよい。
【0069】
即ち、制御部26は、ライン型インクジェットヘッド1を用いた印刷におけるインク液滴の吐出数の総和が変更の前後で一致するような、インク液滴の吐出数の変更処理を、1つの印刷ジョブや1頁の印刷を単位(印刷の所定単位に相当)として、実行することができる。
【0070】
そして、手前のノズル7からのインク液滴の吐出数を4ドロップに減らすa,cの各パターンでは、最後の4ドロップ目のインク液滴が手前のノズル7から吐出されてから、次のノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、ある列の手前のノズル7に生じたメニスカス残留振動が収束してから、同じ列の次のノズル7からのインク液滴の吐出が開始されるようにし、そのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0071】
また、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を2ドロップとするdパターンでは、そのノズル7から2ドロップ目のインク液滴を吐出させるためのインク室6内のインク圧力の増減によって、そのノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出させるためのインク室6内のインク圧力の増減が増幅される。これにより、ある列の手前のノズル7からブロック1aを介して伝わるメニスカス残留振動を、同じ列の次のノズル7が1ドロップ目のインク液滴を吐出する際のインク室6内のインク圧力の増減により減衰又は相殺させて、そのノズル7から2ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0072】
一方、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を0ドロップとするbパターンでは、最後の5ドロップ目のインク液滴が手前のノズル7から吐出された後、次のノズル7からインク液滴が吐出されなくなる。したがって、ある列の手前のノズル7が5ドロップ目のインク液滴を吐出することで生じたメニスカス残留振動の影響を、同じ列の次のノズル7がインク液滴の吐出時に受けることはなくなる。
【0073】
なお、本発明の第1実施形態の変形例に係る駆動方法により制御部26が行うインク液滴の吐出数変更処理として、制御部26は常にcパターンの吐出数変更処理を行うようにしてもよい。
【0074】
図10は本発明の第2実施形態に係る駆動方法により制御部26が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。図10の変更パターンは、ある列の次のノズル7(後側のノズル)の主走査方向におけるさらに次のノズル7(最後側のノズルに相当)からのインク液滴の吐出数との関係で、手前と次の各ノズル7(前側と後側の各ノズル)からのインク液滴の吐出数をどのように変更するかを定めている。以後の説明では、便宜上、手前のノズル7を第1グループのノズル7、次のノズル7を第2グループの同じ列のノズル7、さらに次のノズル7を第3グループの同じ列のノズル7と仮定する。
【0075】
例えば、第1グループと第2グループの同じ列のノズル7からのインク液滴の吐出数が、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとなるパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力されると、制御部26は、入力された画像データによる、第1乃至第3グループの同じ列の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を参照する。
【0076】
そして、図10(a)〜(c)の左側に示すように、ある列の第3グループのノズル7からのインク液滴の吐出数が0〜2ドロップである場合、同じ列の第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を増減させるよりも、同じ列の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を5ドロップから4ドロップに減らす方が、同じ列の第1乃至第3グループの各ノズル7から吐出されるインク液滴のドロップパターンに生じる変化が小さい。そこで、制御部26は、図10(a)〜(c)の右側に示すように、第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ減らす。このパターンは、図9に示すaパターンと同じ変更パターンである。
【0077】
図10(a)〜(c)の変更パターンでは、吐出数変更後の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、最後の4ドロップ目のインク液滴がある列の第1グループのノズル7から吐出されてから、同じ列の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0078】
また、図10(d)〜(f)の左側に示すように、ある列の第3グループのノズル7からのインク液滴の吐出数が3〜5ドロップである場合、同じ列の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を5ドロップから4ドロップに減らすよりも、同じ列の第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップから2ドロップに増やす方が、第1乃至第3グループの各ノズル7から吐出されるインク液滴のドロップパターンに生じる変化が小さい。そこで、制御部26は、図10(d)〜(f)の右側に示すように、第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やす。このパターンは、図9に示すdパターンと同じ変更パターンである。
【0079】
図10(d)〜(f)の変更パターンでも、吐出数変更後の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、ある列の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出させるためのインク室6内のインク圧力の増減が、そのノズル7から2ドロップ目のインク液滴を吐出させるためのインク室6内のインク圧力の増減によって増幅されることで、ブロック1aを介して伝わった同じ列の手前のノズル7のメニスカス残留振動が減衰又は相殺される。これにより、第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0080】
なお、図9及び図10を参照して説明した第1及び第2実施形態の変更パターンは、ライン型インクジェットヘッド1が1つのブロック1aを有している場合のものである。一方、ライン型インクジェットヘッド1の中には、主走査方向における印刷解像度をさらに高めるために、2つ以上のブロック1aを副走査方向に並べて貼り合わせたものもある。
【0081】
図11は本発明が適用されるライン型インクジェットヘッドの他の例を示す説明図である。図11に示すライン型インクジェットヘッド1では、一段目と二段目の2つのブロック1aを副走査方向に並べて貼り合わせている。そして、各ブロック1aをノズル7の半ピッチ分だけ主走査方向にずらして配置することで、主走査方向において、一段目のブロック1aの隣り合うノズル7の中間に、二段目のブロック1a(他のブロックに相当)のノズル7を配置している。
【0082】
上述した図11のライン型インクジェットヘッド1により印刷を行う画像データとして、例えば、一段目のブロック1a上における同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ最大値である5ドロップ及び最小値である1ドロップとするパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力された場合にも、制御部26は、上述した第1及び第2実施形態の変更パターン(図9、図10参照)によって、インク液滴の吐出数を変更することができる。
【0083】
また、制御部26は、インク液滴の吐出数を変更してもその前後で画像の濃度が変わらないようにするために、インク液滴の吐出数変更の対象に二段目のブロック1aのノズル7も加えて、例えば図12の説明図に示すようなパターンでインク液滴の吐出数を変更することができる。
【0084】
図12は本発明の第3実施形態に係る駆動方法により制御部26が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。図12の変更パターンは、原則的に、一段目のブロック1a上の手前のノズル7のインク液滴の吐出数を5ドロップから4ドロップに減らすことを基本としている。その上で、一段目のブロック1a上における同じ列の手前と次の各ノズル7の中間に配置された二段目のブロック1aの手前のノズル7(特定のノズルに相当)と、このノズル7と二段目のブロック1a上で同じ列にある次のノズル7との、インク液滴の各吐出数との関係で、一段目のブロック1aの手前と次の各ノズル7や、二段目のブロック1aの手前のノズル7からの、インク液滴の各吐出数を、どのように変更するかを定めている。以後の説明では、便宜上、一段目のブロック1a上の手前のノズル7をA側の第1グループのノズル7、次のノズル7をA側の第2グループの同じ列のノズル7、これら手前及び次の各ノズル7の中間に位置する二段目のブロック1aの手前のノズル7をB側の第1グループのノズル7、次のノズル7をB側の第2グループの同じ列のノズル7と仮定する。
【0085】
例えば、A側の第1グループと第2グループの同じ列のノズル7からのインク液滴の吐出数が、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとなるパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力されると、制御部26は、入力された画像データによるB側の第1及び第2グループの同じ列の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を参照する。
【0086】
そして、図12の左側の(1)で示すパターンのように、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数が0ドロップである場合、これを1ドロップに増やすと、本来は空白であるはずの画素がインク液滴の着弾により潰れたイメージとなってしまう。また、図12の左側の(7)で示すパターンのように、B側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数が5ドロップ及び0ドロップである場合は、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数をさらに増やすことができない。そこで、これらの場合は、図12の右側の(1),(7)でそれぞれ示すパターンのように、A側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ減らした分、A側の第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やして2ドロップに変更する。B側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数は変更しない。
【0087】
これらの変更パターンでは、吐出数変更後のA側の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が2ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、最後の4ドロップ目のインク液滴がA側の第1グループのノズル7から吐出されてから、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0088】
次に、図12の左側の(2)〜(5)で示すパターンのように、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数が1〜4ドロップである場合、これを2〜5ドロップにそれぞれ増やしても、元々ドットが存在した画素のドット径が若干大きくなるだけで、イメージに大きな変化は与えない。そこで、これらの場合は、図12の右側の(2)〜(5)でそれぞれ示すパターンのように、A側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ減らした分、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やして2〜5ドロップに変更する。A側及びB側の各第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数は変更しない。
【0089】
これらの変更パターンでは、吐出数変更後のA側の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、最後の4ドロップ目のインク液滴がA側の第1グループのノズル7から吐出されてから、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0090】
次に、図12の左側の(6)で示すパターンのように、B側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数が4ドロップ及び1ドロップである場合、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やして5ドロップにすると、B側のブロック1aにおいて、同じ列の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数が、5ドロップと1ドロップとの関係(特定吐出パターン)になってしまう。そうすると、B側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出する際に、吐出速度の低下による着弾位置のずれが生じてしまう。
【0091】
また、図12の左側の(8)で示すパターンのように、B側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数が5ドロップ及び1ドロップ(特定吐出パターン)である場合にも、このままでは、B側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出する際に、吐出速度の低下による着弾位置のずれが生じてしまう。
【0092】
そこで、これらのパターンでは例外的に、図12の右側の(6),(8)でそれぞれ示すパターンのように、A側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ減らした分、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ増やさずに、A側の第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ増やして2に変更する。
【0093】
これらの変更パターンでは、吐出数変更後のA側の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が2ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、最後の4ドロップ目のインク液滴がA側の第1グループのノズル7から吐出されてから、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0094】
そして、上述した図12の各変更パターンでは、いずれも、A側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数とB側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数との合計が、変更の前後で変わらない。これにより、制御部26が吐出数の変更処理を行ったインク液滴の着弾点全体における画像の濃度を、インク液滴の吐出数の変更前後で変わらないようにすることができる。
【0095】
以上に説明した第1乃至第3実施形態に係る駆動方法によるインク液滴の吐出数変更処理を、制御部26は、例えば、図13に示すフローチャートにしたがって実行する。
【0096】
図13は本発明の第1乃至第3実施形態に係る駆動方法によってライン型インクジェットヘッド1を駆動する際に制御部26が行う、インク液滴の吐出数の変更処理を示すフローチャートである。
【0097】
図13に示すように、制御部26はまず、画像データの入力を待ち受ける(ステップS1)。画像データが入力されたならば(ステップS1でYES)、入力された画像データが吐出数変更の対象となるパターンを含んでいるか否かを判定する(ステップS3)。
【0098】
ここで、ライン型インクジェットヘッド1が図1に示す単一のブロック1aで構成されたものである場合は、主走査方向において隣り合う手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとするパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力されたか否かによって、ステップS3の判定を行う。
【0099】
一方、ライン型インクジェットヘッド1が例えば図11に示すような、2つ以上のブロック1aを副走査方向に並べて貼り合わせたものである場合は、同一のブロック1a上の主走査方向において隣り合う手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとするパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力されたか否かによって、ステップS3の判定を行う。
【0100】
入力された画像データが吐出数変更の対象となるパターンを含んでいる場合は(ステップS3でYES)、制御部26は、インク液滴の吐出数をそれぞれ5ドロップ及び1ドロップとする対象の手前と次の各ノズル7又はどちらか一方のインク液滴の吐出数を、図9、図10、及び、図12を参照して説明した第1乃至第3実施形態のいずれかの変更パターンを用いて変更する。なお、ライン型インクジェットヘッド1が図1に示す単一のブロック1aである場合は、第1及び第2実施形態のいずれかの変更パターン(図9、図10参照)を用いて、各ノズル7又はどちらか一方のインク液滴の吐出数を変更する(ステップS5)。
【0101】
ステップS5においてインク液滴の吐出数を変更した場合と、ステップS3において入力された画像データが吐出数変更の対象となるパターンを含んでいない場合(NO)は、制御部26は、入力された画像データによるインク液滴の吐出数、又は、それをステップS5で変更した変更後の吐出数にしたがって、各ノズル7からインク液滴を順次吐出させるための駆動信号をヘッド駆動部21に生成させ、かつ、対応する液滴吐出ユニットUの圧電部材4a,4bの電極11に出力させる(ステップS7)。以上で一連の処理を終了し、再びステップS1以降の処理を繰り返す。
【0102】
以上の説明からも明らかなように、上述したインク液滴の吐出数の変更処理においては、図13のフローチャートにおけるステップS3が、請求項中の判定手段に対応する処理となっている。また、図13中のステップS5が、請求項中の吐出数変更手段に対応する処理となっている。さらに、図13中のステップS7が、請求項中の生成手段に対応する処理となっている。
【0103】
このように、上述した第1乃至第3の各実施形態では、手前と次の各ノズル7からそれぞれ5ドロップ及び1ドロップのインク液滴を吐出するパターン(特定吐出パターン)の画像データが制御部26に入力された場合に、どちらか一方又は両方のノズル7からのインク液滴の吐出数を変更するようにした。そして、この変更により、次のノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出する時に、手前のノズル7で生じたメニスカス残留振動が収束しているようにするか、あるいは、次のノズル7からの2ドロップ目のインク液滴の吐出に伴い増幅されたインク室6内のインク圧力の増減によって、手前のノズル7から伝わったメニスカス残留振動が減衰又は相殺されるようにした。
【0104】
このため、ライン型インクジェットヘッド1を駆動する際に、前後する駆動信号S1,S2(又は、駆動信号S2,S3、駆動信号S3,S1)の間に存在するインターバル期間Iを短縮化しても、メニスカス残留振動の影響によるインク液滴の吐出速度の低下やそれに起因する印刷品質の低下が起こらないようにすることができる。これにより、印刷品質を低下させずにインターバル期間Iの短縮化による高速印刷を実現させることができる。
【0105】
また、第1実施形態によれば、印刷ジョブ単位や頁単位、所望のライン数単位といった印刷単位で、インク液滴の吐出数変更による画像の濃度変化を防ぐことができる。同様に、第1実施形態の変形例の駆動方法によれば、吐出数を変更したノズル7からのインク液滴の着弾先の画素の範囲内で、画像の濃度変化を防止することができる。
【0106】
さらに、第2実施形態によれば、手前と次の各ノズル7のどちらか又は両方についてインク液滴の吐出数を変更しても、次のノズル7からのインク液滴の吐出数と、さらに次のノズル7からのインク液滴の吐出数との、大小関係が変わらない。このため、手前のノズル7、次のノズル7、さらに次のノズル7の、連続3つのノズル7から吐出されるインク液滴のドロップパターンに生じる変化が小さい。このため、インク液滴の吐出数変更による画像の大きなイメージ変化を防止することができる。この第2実施形態は、細字等の画像を印刷する際に適用すると特に有効である。
【0107】
また、第3実施形態によれば、2つ以上のブロック1aを貼り合わせて構成したライン型インクジェットヘッド1において、次のノズル7からのインク液滴の吐出速度低下を防ぐために吐出数変更を行ったブロック1aにおける画像の濃度変化を、原則的に、他のブロック1aのノズル7からのインク液滴の吐出数変更によって防止することができる。
【0108】
なお、同じ列のインク液滴吐出順が連続する前後2つのノズル7,7からのインク液滴の吐出数が、それぞれ最大値である5ドロップ及び最小値である1ドロップとするパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力された場合の、インク液滴の吐出数の変更パターンは、以上に説明した各実施形態で説明したパターンに限定されない。
【0109】
例えば、制御部26に入力された画像データが、写真のような画像の濃度を維持するのが望ましいデータである場合で、かつ、文字のように画像の形状を変形しないように維持する必要性が薄いデータである場合は、前後2つのノズル7,7からのインク液滴の吐出数の合計を按分して、各ノズル7,7それぞれ3ドロップずつに変更するパターンとしてもよい。このような変更パターンにすれば、インク液滴の吐出数を各ノズル7で平均化して、特定のノズル7が偏って劣化しないようにすることができる。
【0110】
また、上述した各実施形態では、説明の便宜上、「手前のノズル(前側のノズル)」と「次のノズル(後側のノズル)」とが同じ列に存在するものとした。しかし、「手前のノズル(前側のノズル)」と「次のノズル(後側のノズル)」とが前後2つの列に跨って存在する場合(例えば、図1のある列の第3グループ(3G)のノズル7と、次の列の第1グループ(1G)のノズル7)にも、本発明は適用可能である。
【0111】
さらに、上述した各実施形態では、各ノズル7からのインク液滴の吐出をノズル7の配置順に行うライン型インクジェットヘッド1を例に取って説明したが、本発明は、複数のノズル7から並行してインク液滴の吐出を行うパラレル型のインクジェットヘッドや、ヘッドを主走査方向に移動させるシリアル型のインクジェットヘッドを駆動する際にも適用可能である。
【0112】
また、上述した各実施形態では、1列当たり3つのノズル7が配置された場合を例に取って説明したが、1列当たりのノズル7の数は、2つでも4つ以上でもよいのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0113】
1 ライン型インクジェットヘッド
1a ブロック
1b ノズル面
2 基板
3 カバープレート
4 隔壁
4a 圧電部材
4b 圧電部材
5 ノズルプレート
6 インク室
7 ノズル
71 ノズル
72 ノズル
73 ノズル
8 インク流入口
9 インク供給口
10 インクチューブ
11 電極
12 フレキシブルケーブル
21 ヘッド駆動部
22 温度検知部
23 加温部
26 制御部
I インターバル期間
S1 駆動信号
S2 駆動信号
S3 駆動信号
U 液滴吐出ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドの駆動方法及びその装置に係り、特に、せん断モードによりインク液滴を吐出するインクジェットヘッドの駆動方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
せん断モード(シェアモード)型のインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタでは、インク液滴の吐出後におけるノズルのメニスカス残留振動により、次のインク液滴の吐出の際に着弾位置のずれが生じたり、余分なインクが吐出されてしまう可能性が指摘されている。
【0003】
そこで、印字命令と非印字命令とが交互に繰り返される時などのインクのメニスカス残留振動の影響を受けやすい場合であっても、インク液滴の着弾位置がずれることを防止するための技術が、既に提案されている。この提案では、直前及び直後が非印字命令である印字命令の際に、直前及び直後も印字命令である印字命令の場合よりもインク液滴の吐出数を少なくする制御を行うようにしている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、インクジェットプリンタに対する高速印刷の要望が高まっている。この要望に応えるため、高速印刷に適したライン型の印字ヘッドを備えたライン型インクジェットプリンタが実用化されている。ライン型の印字ヘッドは、印刷用紙幅に対応したサイズのブロックを有し、インク吐出用の多数のノズルがブロック上に配置されている。そして、ライン方向(主走査方向)に垂直な方向(副走査方向)に搬送される印刷用紙に対してライン単位でインクを吐出することで画像を形成する。
【0006】
したがって、ライン型のインクジェットヘッドにおいては、上述したメニスカス残留振動の影響を、ブロック上の隣り合うノズル間においても考慮する必要がある。即ち、隣り合うノズルの一方でインク液滴の吐出を行った後、他方のノズルでインク液滴の吐出を行う場合、一方のノズルにおけるメニスカス残留振動がブロックを介して他方のノズルのメニスカスに伝わらないようにすることが望まれる。
【0007】
特に、各ノズルから同一の画素に対してインク液滴を複数連続して吐出するマルチドロップ動作を行う場合には、一方のノズルでインク液滴を最大数連続して吐出した場合であっても、それにより一方のノズルで生じたメニスカス残留振動が収束してから、他方のノズルにおけるインク液滴の吐出が開始されるようにする必要がある。
【0008】
そのために、隣り合う2つの各ノズルにそれぞれ連通する各インク室の容積を変更させる容積変更手段には、所定のインターバル期間を挟み前後に時間をずらして駆動信号がそれぞれ供給される。このインターバル期間の開始時点は、一方のノズルから同一画素に最大数連続してインク液滴を吐出する場合を基準にして、つまり、一方のノズルにおけるインク液滴の吐出で発生したメニスカス残留振動が最も遅く収束する場合を基準にして決定される。
【0009】
このインターバル期間は、ライン型インクジェットヘッドを用いるインクジェットプリンタの高速印刷という利点を大きくする上では、できるだけ短いことが望ましい。しかし、インターバル期間の無造作な短縮化は、インターバル期間を設けた本来の目的を損ねることにもなりかねない。
【0010】
なお、上述した事情は、ライン型インクジェットヘッドを用いるインクジェットプリンタに限らず、マルチドロップ方式のノズルを複数有するインクジェットヘッドを駆動する際に共通する事情である。
【0011】
本発明は前記事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、せん断モード(シェアモード)型のインクジェットヘッドをマルチドロップ方式で駆動する際に、メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下の防止と高速印刷の実現とを両立させることができるインクジェットヘッドの駆動方法と、この方法を実施する際に用いて好適なインクジェットヘッドの駆動装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、
インクジェットヘッド(例えば、図1のライン型インクジェットヘッド1)の複数のノズル(例えば、図1のノズル7)のそれぞれから、各ノズルに対応する画素に1又は複数のインク液滴を吐出させると共に、相互の間隔が最短距離にある2つのノズルから連続するタイミングでそれぞれのノズルに対応する2つの隣り合う画素に対してインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動に当たり、
前記2つのノズルのうちインク液滴の吐出タイミングが前である前側のノズル(例えば、図1の第1グループ(1G)のノズル7)からのインク液滴の吐出数が吐出可能範囲の最大値であり、かつ、前記吐出タイミングが後である後側のノズル(例えば、図1の第2グループ(2G)のノズル7)からのインク液滴の吐出数が前記吐出可能範囲の最小値であるときに、前記前側のノズルと前記後側のノズルとの吐出数差が、前記最大値と前記最小値との差よりも小さくなるように、前記前側及び後側の少なくとも一方のノズルの吐出数を変更するようにした、
ことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前側のノズルからの吐出数を吐出可能範囲の最大値とし、後側のノズルからの吐出数を吐出可能範囲の最小値とする印刷の際には、前側及び後側の少なくとも一方のノズルからの吐出数が変更される。その結果、実際の印刷においては、前側及び後側の各ノズルからの吐出数の差が吐出可能範囲の最大値と最小値との差よりも小さくなるような吐出数で、前側及び後側の各ノズルからインク液滴がそれぞれ吐出される。具体的には、前側のノズルからの吐出数が最大値よりも減らされるか、後側のノズルからの吐出数が最小値よりも増やされるか、あるいは、その両方とされるかである。
【0014】
前側のノズルからの吐出数が最大値よりも減らされると、前側のノズルからのインク液滴の吐出が終了するタイミングが早くなる。このため、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動を収束させるのに十分な時間を、後側のノズルからのインク液滴の吐出が開始されるまでの間に確保することができるようになる。
【0015】
一方、後側のノズルからの吐出数が最小値よりも増やされると、後側のノズルから1つ目のインク液滴を吐出した後も、2つ目のインク液滴のノズルからの吐出が継続されることになる。したがって、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動が収束せず後側のノズルに伝わっている状態で、後側のノズルにおける1つ目のインク液滴の吐出が開始されても、2つ目のインク液滴を吐出させる際のインク圧力の増減によって、前側のノズルから後側のノズルに伝わったメニスカス残留振動が減衰又は相殺される。
【0016】
このため、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動の影響で後側のノズルから吐出される1つ目のインク液滴が画質を低下させてしまうのを、防止することができる。これにより、せん断モード(シェアモード)型のインクジェットヘッドをマルチドロップ方式で駆動する際に、メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下を招くことなく、高速印刷を実現することができる。
【0017】
また、上記発明において、あるいは、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第1の変形例のように、請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動装置において、
前記インクジェットヘッドが、同一のブロック(例えば、図1のブロック1a)に複数列設された各ノズルにそれぞれ連通する各インク室(例えば、図2のインク室6)の容積を、前記ノズルからのインク液滴の吐出数に応じた波形の駆動信号(例えば、図5の駆動信号S1〜S3)でそれぞれ駆動される各容積変更手段(例えば、図2の圧電部材4a,4b)により変更させることで、対応する前記インク室内のインクの圧力を増減させて前記吐出数のインク液滴を前記ノズルから同一の画素に吐出させるライン型インクジェットヘッドであり、
前記2つのノズルが、前記ブロック上で前記ノズルの列設方向(例えば、図1の主走査方向)において隣り合って配置されており、
前記ライン型インクジェットヘッドが、前記2つのノズルにそれぞれ対応する前記各容積変更手段に対して、前記駆動信号を所定のインターバル期間を挟んで順次供給することで駆動されるものであり、
変更後の前記吐出数に応じた波形の前記駆動信号が、前記前側及び後側のノズルにそれぞれ対応する前記各容積変更手段に供給される、
ようにしてもよい。
【0018】
本発明によれば、前側のノズルからの吐出数が最大値よりも減らされると、所定のインターバル期間の開始よりも早い時点で、前側のノズルからのインク液滴の吐出が終了する。このため、インターバル期間の長短に拘わらず、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動を収束させるのに十分な時間を、後側のノズルからのインク液滴の吐出が開始されるまでの間に確保することができるようになる。
【0019】
一方、後側のノズルからの吐出数が最小値よりも増やされると、後側のノズルから1つ目のインク液滴を吐出した後も、2つ目のインク液滴をノズルから吐出させるために、容量変更手段によるインク室の容量変更が継続されることになる。したがって、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動が収束せず後側のノズルに伝わっている状態で、後側のノズルにおける1つ目のインク液滴の吐出が開始されても、2つ目のインク液滴を吐出させるためのインク室の容量変更によるインク室内のインク圧力の増減によって、前側のノズルから後側のノズルに伝わったメニスカス残留振動が減衰又は相殺される。
【0020】
このため、前側のノズルにおけるメニスカス残留振動の影響で後側のノズルから吐出される1つ目のインク液滴が画質を低下させてしまうのを、インターバル期間の長短に拘わらず防止することができる。これにより、せん断モード(シェアモード)型のライン型インクジェットヘッドをマルチドロップ方式で駆動する際に、メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下を招くことなく、インターバル期間の短縮化による高速印刷の実現を達成することができる。
【0021】
さらに、上記発明に係るインクジェットヘッドの駆動方法において、前記インクジェットヘッドを用いた印刷の所定単位におけるインク液滴の吐出数の総和が、前記吐出数の変更の前後で一致するようにする構成としてもよい。
【0022】
また、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第2の変形例のように、請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動装置又は第1の変形例のインクジェットヘッドの駆動装置において、前記吐出数変更手段(例えば、図13のステップS5)が、前記インクジェットヘッドを用いた印刷の所定単位におけるインク液滴の吐出数の総和が、前記吐出数の変更の前後で一致するように、前記吐出数を変更する構成としてもよい。
【0023】
上記発明によれば、インク液滴の吐出数を変更しても印刷の所定単位について画像の濃度を変えずに維持できるので、印刷品質の向上及び高速印刷の実現に伴う画像の濃度の変化を防ぐことができる。
【0024】
さらに、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動方法の第2の変形例のように、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第1の変形例において、前記変更後の前記前側及び後側のノズルからの前記吐出数の和が、前記最大値と前記最小値との和と一致するようにする構成としてもよい。
【0025】
また、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第3の変形例のように、本発明に係るインクジェットヘッドの駆動装置の第2の変形例において、前記吐出数変更手段が、前記変更後の前記前側及び後側のノズルからの前記吐出数の和が、前記最大値と前記最小値との和と一致するように、前記吐出数を変更する構成としてもよい。
【0026】
上記発明によれば、印刷品質の向上及び高速印刷の実現に伴う画像の濃度変化の防止を、吐出数を変更したインク液滴の着弾先の画素の範囲内で達成し、その画素において画像の濃度が局所的に変化してしまうのを防ぐことができる。
【0027】
さらに、請求項1又は2記載のインクジェットヘッドの駆動方法において、前記後側のノズルからの間隔が最短距離にある最後側のノズル(例えば、図1の第3グループ(3G)のノズル7)から、前記後側のノズルからのインク液滴の吐出に続いて、連続したタイミングでインク液滴を吐出する際に、該最後側のノズルからの前記吐出数と前記後側のノズルからの前記吐出数との大小関係が、前記吐出数の変更の前後で変わらないようにしてもよい。
【0028】
また、請求項4記載のインクジェットヘッドの駆動装置又は第1の変形例のインクジェットヘッドの駆動装置において、前記吐出数変更手段が、前記後側のノズルからの間隔が最短距離にある最後側のノズルから、前記後側のノズルからのインク液滴の吐出に続いて、連続したタイミングでインク液滴を吐出する際に、該最後側のノズルからの前記吐出数と前記後側のノズルからの前記吐出数との大小関係が、前記吐出数の変更の前後で変わらないように、前記吐出数を変更する構成としてもよい。
【0029】
このように、インクジェットヘッド上に、後側のノズルの次にインク液滴を吐出する最後側のノズルが、後側のノズルの最短距離に存在する場合、後側のノズルからの吐出数と最後側のノズルからの吐出数との大小関係が、前側及び後側の少なくとも一方のノズルからの吐出数を変更する前後で変わらないようにすれば、後側及び最後側の各ノズルから吐出されるインク液滴の着弾先の各画素間で、画像の濃度の濃淡関係が変化することがない。このため、高速印刷の実現と印刷品質の向上を、後側及び最後側の各ノズルから吐出されるインク液滴の着弾先の各画素間で画像の濃度の濃淡関係を逆転させることなく、実現することができる。
【0030】
さらに、請求項2記載のインクジェットヘッドの駆動方法において、前記ブロックにおける前記ノズルの列設方向とは異なる方向(例えば、図1の副走査方向)に複数の前記ブロック(例えば、図11の一段目と二段目のブロック1a)を列設することで、前記各ブロック上で前記列設方向において隣り合う2つの前記ノズルの間隔を前記ブロックの列設数(例えば、図11の場合は一段目のブロック1aと二段目のブロック1aとの2列であるので「2」)で除した間隔の画素に対するインク液滴の吐出を行うように前記ライン型インクジェットヘッド(例えば、図11のライン型インクジェットヘッド1)が構成されており、前記複数のブロック中に、前記前側のノズル(例えば、図11の一段目のブロック1aの第1グループ(1G)のノズル7)からの前記吐出数が前記最大値であり前記後側のノズル(例えば、図11の一段目のブロック1aの第2グループ(2G)のノズル7)からの前記吐出数が前記最小値であるブロック(例えば、図11の一段目のブロック1a)が存在するときに、前記前側及び後側の各ノズルからの前記吐出数と、前記前側及び後側の各ノズルに対応する各画素の間に位置する画素と対応する他のブロック(例えば、図11の二段目のブロック1a)の特定の前記ノズル(例えば、図11の二段目のブロック1aの第1グループ(1G)のノズル7)からの前記吐出数との和が、吐出数の変更の前後で変わらないように、前記少なくとも一方のノズルからの前記吐出数と、前記特定のノズルからの前記吐出数とを変更するようにしてもよい。
【0031】
また、第1の変形例のインクジェットヘッドの駆動装置において、前記ライン型インクジェットヘッドが、前記ブロックにおける前記ノズルの列設方向とは異なる方向に複数の前記ブロックを列設することで、前記各ブロック上で前記列設方向において隣り合う2つの前記ノズルの間隔を前記ブロックの列設数で除した間隔の画素に対するインク液滴の吐出を行うように構成されており、前記判定手段(例えば、図13のステップS3)が、前記複数のブロック中に、前記吐出パターンが前記特定吐出パターンであるブロックが存在するか否かを判定し、前記生成手段(例えば、図13のステップS7)が、前記吐出パターンが前記特定吐出パターンであるブロックが存在すると前記判定手段が判定したときに、前記前側及び後側の各ノズルからの前記吐出数と、前記前側及び後側の各ノズルに対応する各画素の間に位置する画素と対応する他のブロックの特定の前記ノズルからの前記吐出数との和が変わらないように、前記少なくとも一方のノズルからの前記吐出数と、前記特定のノズルからの前記吐出数とを変更した前記駆動信号を、前記前側及び後側の各ノズルに対応する前記各容積変更手段と前記特定のノズルに対応する前記容積変更手段とにそれぞれ生成し供給する構成としてもよい。
【0032】
このように、ライン型インクジェットヘッドによる印刷の解像度を向上させるために、複数のブロックをノズルの列設方向とは異なる方向に列設する場合、前側及び後側の各ノズルから吐出されるインク液滴の各吐出数と、それら各ノズルに対応する各画素の間に位置する画素と対応する他のブロックの特定のノズルから吐出されるインク液滴の吐出数との和を、前側及び後側の少なくとも一方のノズルからの吐出数を変更する前後で変わらないようにすれば、前側、後側、及び、特定の各ノズルから吐出されるインク液滴の着弾先の各画素間で、画像の濃度の濃淡関係が変化することがない。このため、インターバル期間の短縮化による高速印刷の実現と印刷品質の向上を、前側、後側、及び、特定の各ノズルから吐出されるインク液滴の着弾先の各画素間で画像の濃度の濃淡関係を逆転させることなく、実現することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、せん断モード(シェアモード)型のインクジェットヘッドをマルチドロップ方式で駆動する際に、メニスカス残留振動の影響による印刷品質の低下を招くことなく、高速印刷の実現を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明が適用されるライン型インクジェットヘッドを示す説明図である。
【図2】図1に示すライン型インクジェットヘッドの内部構造を示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)は図1に示すライン型インクジェットヘッドのインク吐出動作時におけるインク室内の状態変化を示す断面図である。
【図4】図1のライン型インクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタの機能構成を示すブロック図である。
【図5】図4のヘッド駆動部が各グループの同じ列のノズルにそれぞれ対応する各液滴吐出ユニットに駆動信号を出力するタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図6】主走査方向において隣り合う手前のノズルで5ドロップのインク液滴を連続吐出した後に、次のノズルからインク液滴を吐出する場合の、インターバル期間の長さとインク液滴の吐出速度との関係を示すグラフである。
【図7】主走査方向において隣り合う手前のノズルからインク液滴を5ドロップ連続吐出し、次のノズルからインク液滴を1ドロップ吐出する場合の、インターバル期間の長さとインク液滴の着弾点の本来の位置からのずれ量との関係を示すグラフである。
【図8】主走査方向において隣り合う手前のノズルから吐出されたインク液滴の着弾点に対して、次のノズルから吐出されたインク液滴の着弾点がずれた場合の印刷状態を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る駆動方法により図4の制御部が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る駆動方法により図4の制御部が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。
【図11】本発明が適用されるライン型インクジェットヘッドの他の例を示す説明図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る駆動方法により図4の制御部が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。
【図13】本発明の第1乃至第3実施形態に係る駆動方法によってライン型インクジェットヘッドを駆動する際に図4の制御部が行うインク液滴吐出数変更処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0036】
図1は本発明が適用されるライン型インクジェットヘッドを示す説明図、図2は図1に示すライン型インクジェットヘッドの内部構造を示す断面図、図3(a)〜(c)は図1に示すライン型インクジェットヘッドのインク吐出動作時におけるインク室内の状態変化を示す断面図である。図1に示すライン型インクジェットヘッドは、シェアモード型のライン型インクジェットヘッドである。
【0037】
なお、本実施形態において、後述のインク室に関する構成は全インク室で共通であるので、個々のインク室を示す符号のアルファベット等の添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0038】
図1に示すように、本実施形態のライン型インクジェットヘッド1は、1つの面をノズル面1bとしたブロック1aを有している。ノズル面1bには、所定数(本実施形態では3つ)ずつのノズル7が、記録紙(図示せず)の搬送方向(副走査方向)と直交する主走査方向(請求項中の列設方向に相当)に複数列並べて配置されている。各列の3つのノズル7は、主走査方向及び副走査方向にそれぞれ等間隔を空けて配置されている。このように配置することで、ノズル7を主走査方向に一直線状に並べて配置する場合は、ノズル加工精度上から印刷解像度に限界があったが、それに比べて、隣り合うノズル7どうしの主走査方向における間隔を縮め、ライン型インクジェットヘッド1による主走査方向の印刷解像度を高めている。以後の説明では、副走査方向における位置が同じノズル7の群を、それぞれ、第1グループ(1G)、第2グループ(2G)、第3グループ(3G)と言うことがある。
【0039】
ブロック1aの内部には、各ノズル7を構成要素の一部とする図2の液滴吐出ユニットUが複数設けられている。これら複数の液滴吐出ユニットUは、ノズル7と同じくブロック1aに主走査方向に列設されている。各液滴吐出ユニットUは、図2及び図3に示すように、セラミック等からなる基板2と、この基板2に副走査方向において対向配置されたカバープレート3と、これら基板2及びカバープレート3の間に主走査方向に間隔をおいて配置された複数の隔壁4とを有している。各隔壁4は2つの圧電部材4a,4b(請求項中の容積変更手段に相当)を有している。これら圧電部材4a,4bは、例えば、PZT(PbZrO3 −PbTiO3 )等の公知の圧電材料からなり、図3中の矢印で示すように互いに異なる方向に分極している。
【0040】
また、各液滴吐出ユニットUは、基板2、カバープレート3、および隔壁4の先端に固定されたノズルプレート5を有している。このノズルプレート5がブロック1aのノズル面1bを構成している。また、各液滴吐出ユニットUは、基板2、カバープレート3、隣り合う2つの隔壁4,4、およびノズルプレート5に囲まれたインク室6を有している。ノズルプレート5には、インク室6の一端側に連通する上述のノズル7が設けられている。インク室6の他端側は、全インク室6に連通するインク流入口8、インク供給口9を経て、インクチューブ10によってインクタンク(図示せず)に接続されている。
【0041】
インク室6の側面を構成する隔壁4および底面を構成する基板2の表面には、電極11(図3参照)が密着形成されている。インク室6内の電極11は、圧電部材4aの後部側表面まで延びている。各電極11には、この後部側表面において異方導電性フィルム(図示せず)を介してフレキシブルケーブル12が接続されており、このフレキシブルケーブル12を介して電極11に、駆動信号による駆動電圧が印加されるようになっている。
【0042】
電極11に駆動電圧が印加されると、隔壁4がせん断変形してインク室6の容積およびインク室6内のインクの圧力を変化させる。これにより、ノズル7からインク室6内のインクが吐出される。
【0043】
図4は図1のライン型インクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタの機能構成を示すブロック図である。図4に示すように、本実施形態に係るインクジェットプリンタは、ライン型インクジェットヘッド1を駆動させるヘッド駆動部21と、温度検知部22と、加温部23と、制御部26とを備える。
【0044】
ヘッド駆動部21は、フレキシブルケーブル12を介してライン型インクジェットヘッド1の液滴吐出ユニットUに駆動電圧を印加する。具体的には、液滴吐出ユニットUの圧電部材4a,4bに設けられた電極11に駆動電圧を印加する。これにより圧電部材4a,4bは、隔壁4を変形させてインク室6の容積およびインク室6内のインクの圧力を変化させ、ノズル7からインクを吐出させる吐出駆動を行う。
【0045】
温度検知部22は、ライン型インクジェットヘッド1に供給されるインクの温度を検知する。インクタンク(図示せず)からライン型インクジェットヘッド1に供給されるインクの温度が検知できれば、温度検知部22はどこに配置されていてもよい。
【0046】
加温部23は、ライン型インクジェットヘッド1に供給されるインクを加温する。インクタンクからライン型インクジェットヘッド1に供給されるインクを加温できれば、加温部23はどこに配置されていてもよい。
【0047】
制御部26は、温度検知部22の検知結果を用いて加温部23によるインクの加温を制御する。また、制御部26は、入力される画像データに対応する内容の駆動信号をライン型インクジェットヘッド1の液滴吐出ユニットUに出力するようにヘッド駆動部21を制御する。この駆動信号は、ライン型インクジェットヘッド1の主走査方向におけるノズル7の配列順に合わせて、対象の液滴吐出ユニットUに出力される。
【0048】
図1を参照して前述したように、ブロック1a上には、副走査方向(列方向)に等間隔で位置をずらした第1グループ(1G)、第2グループ(2G)、第3グループ(3G)の各列のノズルが、主走査方向に等間隔を空けてサイクリックに配置されている。そのため、ヘッド駆動部21は、制御部26の制御にしたがって、第1グループ(1G)、第2グループ(2G)、第3グループ(3G)の順に、各グループの同じ列のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUの電極11に対して、駆動信号を順次出力する。例えば、図1にサフィックス付きの符号71 ,72 ,73 で示す、各グループのブロック1aの左端から数えてそれぞれ2番目に位置する3つのノズルは、各グループの同じ列のノズル7に該当する。つまり、各グループの同じ列のノズル7とは、各グループのブロック1aの例えば左端から数えた順番が同じノズル7どうしのことを指す。また、ヘッド駆動部21は、以後、各グループの次の列の(各グループのブロック1aの例えば左端から数えた順番が1つ後の)ノズル7にそれぞれ対応する液滴吐出ユニットUの電極11に、駆動信号を順次出力する。
【0049】
本実施形態のライン型インクジェットヘッド1では、各ノズル7から同一画素に対して最大5ドロップ(請求項中の吐出可能範囲の最大値に相当)、最小1ドロップ(請求項中の吐出可能範囲の最小値に相当)のインク液滴を連続吐出することができる。無論、画素に対してノズル7がインク液滴を吐出しない場合もある。したがって、インク液滴を吐出した場合のそのノズル7に発生するメニスカス残留振動は、一番遅い場合には、5ドロップ目のインク液滴を吐出した後に、一定の時間をかけて収束することになる。
【0050】
インク液滴を吐出したノズル7のメニスカス残留振動が収束しないまま、同じ列の次のグループのノズル7(請求項中の後側のノズルに相当)からインク液滴の吐出を開始すると、そのノズル7に連通するインク室6の隔壁4がせん断変形することで生じるインク室6内のインク圧力の増減が、直前にインク液滴を吐出した同じ列の手前のグループのノズル7(請求項中の前側のノズルに相当)からブロック1aを介して伝わったメニスカス残留振動によって減衰されてしまう。そして、この減衰によりインク室6内のインク圧力の増減幅が小さくなって、同じ列の次のグループのノズル7(後側のノズル)から最初に吐出されるインク液滴の吐出速度が低下する。インク液滴の吐出速度の低下は、インク液滴の着弾位置のずれを招き、印刷品質を低下させてしまう。なお、図1のブロック1aの場合、上述した手前のノズル7が第1グループのノズル7であるとすれば、第2グループの同じ列のノズル7が上述した次のノズル7に該当する。手前のノズル7が第2グループのノズル7であるとすれば、第3グループの同じ列のノズル7が次のノズルに該当する。
【0051】
そこで、ヘッド駆動部21は、ある列の手前のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUに出力した駆動信号が5ドロップ分のパルス波形を含む最も長い信号パターンであっても、その駆動信号の終了からメニスカス残留振動の収束に必要な時間(所定のインターバル期間)が経過してから、同じ列の次のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUへの駆動信号の出力を開始するようにしている。
【0052】
図5はヘッド駆動部21が各グループの同じ列のノズル7にそれぞれ対応する各液滴吐出ユニットUに駆動信号を出力するタイミングの一例を示すタイミングチャートである。図5に示すように、例えば、第1グループ(1G)のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUに出力された駆動信号S1が、5ドロップ分のパルス波形P1〜P5を含んでいる場合、その駆動信号S1の終了から、第2グループ(2G)のノズル7に対応する液滴吐出ユニットUに対する駆動信号S2の出力が開始されるまでには、所定のインターバル期間Iが確保される。
【0053】
なお、第2グループと第3グループの同じ列のノズル7にそれぞれ対応する各液滴吐出ユニットUに出力される駆動信号S2,S3の間や、第3グループのノズル7と第1グループの次の列のノズル7とにそれぞれ対応する各液滴吐出ユニットUに出力される駆動信号S3,S1の間にも、同様に所定のインターバル期間Iが確保される。
【0054】
ところで、上述したインターバル期間Iは、高速印刷を実現する観点からすると、できるだけ短い時間にすることが望ましい。しかし、インターバル期間Iの必要以上の短縮化は、ある列の手前のノズル7で生じたメニスカス残留振動の影響による、同じ列の次のノズル7から吐出される1ドロップ目のインク液滴の吐出速度の低下を招き、インク液滴の着弾点にずれを生じさせることになるので、好ましくない。
【0055】
図6はある列の手前のノズル7で5ドロップのインク液滴を連続吐出した後に、同じ列の次のノズル7からインク液滴を吐出する場合の、インターバル期間Iの長さ(横軸)とインク液滴の吐出速度(縦軸)との関係を示すグラフである。図6中の「×」印のプロット点をつなぐ線は、次のノズル7から1ドロップのインク液滴を吐出する場合の相関を近似的に示している。メニスカス残留振動は周期波であるので、吐出速度とインターバル期間Iとの関係も直線的ではなく周期波的に変動するが、大まかには、インターバル期間Iが短いと吐出速度が低下する傾向が見られる。吐出速度の低下は、インク液滴の着弾点が本来の位置からずれる原因となる。
【0056】
図7はある列の手前のノズル7からインク液滴を5ドロップ連続吐出し、同じ列の次のノズル7からインク液滴を1ドロップ吐出する場合の、インターバル期間Iの長さ(横軸)とインク液滴の着弾点の本来の位置からのずれ量(縦軸)との関係を示すグラフである。インク液滴の吐出速度と着弾点のずれ量との間には一定の比例関係があるので、着弾点のずれ量とインターバル期間Iとの関係も、吐出速度とインターバル期間Iとの関係と同様に、直線的ではなく周期波的に変動する。しかし、大まかには、インターバル期間Iが短いと着弾点のずれ量が大きくなる傾向が見られる。図7では、縦軸の着弾点ずれ量を副走査方向におけるドット量で表している。例えば、インターバル期間Iが2μsである場合は、着弾点のずれ量は6ドット分に拡がる。
【0057】
図8はある列の手前のノズル7から吐出されたインク液滴の着弾点に対して、同じ列の次のノズル7から吐出されたインク液滴の着弾点がずれた場合の印刷状態を模式的に示す説明図である。インク液滴の着弾点が6ドット分ずれると、図8に示すように、ある列の手前のノズル7から5ドロップ連続吐出したインク液滴(太く濃い線)の着弾点に対して、同じ列の次のノズル7から1ドロップ吐出したインク液滴(細く淡い線)の着弾点が明らかにずれる。インク液滴の着弾点がずれると、両着弾点の画素によって表現される文字等のエッジがぼやけたような感じになり、印刷品質の低下につながる。
【0058】
一方、図6のグラフに「●」印や「◆」印の各プロット点どうしをそれぞれつなぐ線で示すように、次のノズル7から吐出するインク液滴が2ドロップや5ドロップに増えると、インターバル期間Iが短くても、次のノズル7から吐出される1ドロップ目のインク液滴の吐出速度は、1ドロップだけ吐出する場合に比べてそれほど低下しない。これは、次のノズル7から2ドロップ目のインク液滴を吐出させるために隔壁4がせん断変形することで生じるインク室6内のインク圧力の増減によって、1ドロップ目のインク液滴を吐出させるために生じたインク室6内のインク圧力の増減が増幅されるためである。
【0059】
また、ある列の手前のノズル7から吐出するインク液滴が4ドロップ以下である場合は、最後のインク液滴が手前のノズル7から吐出されてから、同じ列の次のノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。そのため、ある列の手前のノズル7から最後にインク液滴が吐出された際に生じたメニスカス残留振動が収束してから、同じ列の次のノズル7からの1ドロップ目のインク液滴の吐出が開始されることになる。
【0060】
そこで、本実施形態のライン型インクジェットヘッド1では、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ最大値である5ドロップ及び最小値である1ドロップとするパターン(請求項中の特定吐出パターンに相当)の画像データが、制御部26に入力された場合に、インク液滴の吐出数を変更する制御を制御部26において行うようにしている。このインク液滴の吐出数変更は、同じ列の手前と次の少なくとも一方のノズル7について行われる。かつ、このインク液滴の吐出数変更は、変更後の同じ列の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が、吐出数の最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップと一致しなくなるようなパターンで行われる。
【0061】
図9は本発明の第1実施形態に係る駆動方法により制御部26が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。図9の左側に示すように、制御部26に入力された画像データが、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとする内容(特定吐出パターン)である場合、制御部26は、図9の右側に示すa〜dのいずれかのパターンにインク液滴の吐出数を変更する。
【0062】
aパターンでは、手前のノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ減らして、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数をそれぞれ4ドロップ及び1ドロップとする。このaパターンでは、吐出数変更後の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。
【0063】
bパターンでは、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ減らして、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数をそれぞれ5ドロップ及び0ドロップとする。このbパターンでは、吐出数変更後の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が5ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。
【0064】
cパターンでは、手前のノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ減らすと共に、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やして、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数をそれぞれ4ドロップ及び2ドロップとする。このcパターンでは、吐出数変更後の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が2ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。
【0065】
dパターンでは、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ増やして、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数をそれぞれ5ドロップ及び2ドロップとする。このdパターンでは、吐出数変更後の手前と次の各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。
【0066】
以上のようなインク液滴の吐出数の変更を行う場合、同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数の合計が、インク液滴の吐出数の変更前から、aパターンとbパターンでは1ドロップ減り、cパターンでは変わらず、dパターンでは1ドロップ増える。cパターンではインク液滴の吐出数の変更前後で、インク液滴の着弾点における画像の濃度が変わらないが、a,b,cの各パターンではインク液滴の着弾点における画像の濃度が変化する。
【0067】
そこで、制御部26は、乱数テーブル等を用いて、a,bの各パターンをそれぞれ1/6の確率、c,dの各パターンをそれぞれ1/3の確率で実行する。これにより、制御部26が吐出数の変更処理を行ったインク液滴の着弾点全体における画像の濃度を、インク液滴の吐出数の変更前後で実質的に変わらないようにすることができる。
【0068】
なお、制御部26は、任意の印刷単位の中で、上述した確率でa〜dの各パターンを実行することができる。例えば、1つの印刷ジョブを1つの印刷単位とし、その印刷ジョブによる印刷の全体でa〜dの各パターンを上述した確率で制御部26が実行するようにしてもよい。また、1頁の印刷を1つの印刷単位としてもよく、あるいは、主走査方向の所望のライン数を1つの印刷単位としてもよい。
【0069】
即ち、制御部26は、ライン型インクジェットヘッド1を用いた印刷におけるインク液滴の吐出数の総和が変更の前後で一致するような、インク液滴の吐出数の変更処理を、1つの印刷ジョブや1頁の印刷を単位(印刷の所定単位に相当)として、実行することができる。
【0070】
そして、手前のノズル7からのインク液滴の吐出数を4ドロップに減らすa,cの各パターンでは、最後の4ドロップ目のインク液滴が手前のノズル7から吐出されてから、次のノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、ある列の手前のノズル7に生じたメニスカス残留振動が収束してから、同じ列の次のノズル7からのインク液滴の吐出が開始されるようにし、そのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0071】
また、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を2ドロップとするdパターンでは、そのノズル7から2ドロップ目のインク液滴を吐出させるためのインク室6内のインク圧力の増減によって、そのノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出させるためのインク室6内のインク圧力の増減が増幅される。これにより、ある列の手前のノズル7からブロック1aを介して伝わるメニスカス残留振動を、同じ列の次のノズル7が1ドロップ目のインク液滴を吐出する際のインク室6内のインク圧力の増減により減衰又は相殺させて、そのノズル7から2ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0072】
一方、次のノズル7からのインク液滴の吐出数を0ドロップとするbパターンでは、最後の5ドロップ目のインク液滴が手前のノズル7から吐出された後、次のノズル7からインク液滴が吐出されなくなる。したがって、ある列の手前のノズル7が5ドロップ目のインク液滴を吐出することで生じたメニスカス残留振動の影響を、同じ列の次のノズル7がインク液滴の吐出時に受けることはなくなる。
【0073】
なお、本発明の第1実施形態の変形例に係る駆動方法により制御部26が行うインク液滴の吐出数変更処理として、制御部26は常にcパターンの吐出数変更処理を行うようにしてもよい。
【0074】
図10は本発明の第2実施形態に係る駆動方法により制御部26が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。図10の変更パターンは、ある列の次のノズル7(後側のノズル)の主走査方向におけるさらに次のノズル7(最後側のノズルに相当)からのインク液滴の吐出数との関係で、手前と次の各ノズル7(前側と後側の各ノズル)からのインク液滴の吐出数をどのように変更するかを定めている。以後の説明では、便宜上、手前のノズル7を第1グループのノズル7、次のノズル7を第2グループの同じ列のノズル7、さらに次のノズル7を第3グループの同じ列のノズル7と仮定する。
【0075】
例えば、第1グループと第2グループの同じ列のノズル7からのインク液滴の吐出数が、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとなるパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力されると、制御部26は、入力された画像データによる、第1乃至第3グループの同じ列の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を参照する。
【0076】
そして、図10(a)〜(c)の左側に示すように、ある列の第3グループのノズル7からのインク液滴の吐出数が0〜2ドロップである場合、同じ列の第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を増減させるよりも、同じ列の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を5ドロップから4ドロップに減らす方が、同じ列の第1乃至第3グループの各ノズル7から吐出されるインク液滴のドロップパターンに生じる変化が小さい。そこで、制御部26は、図10(a)〜(c)の右側に示すように、第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ減らす。このパターンは、図9に示すaパターンと同じ変更パターンである。
【0077】
図10(a)〜(c)の変更パターンでは、吐出数変更後の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、最後の4ドロップ目のインク液滴がある列の第1グループのノズル7から吐出されてから、同じ列の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0078】
また、図10(d)〜(f)の左側に示すように、ある列の第3グループのノズル7からのインク液滴の吐出数が3〜5ドロップである場合、同じ列の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を5ドロップから4ドロップに減らすよりも、同じ列の第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップから2ドロップに増やす方が、第1乃至第3グループの各ノズル7から吐出されるインク液滴のドロップパターンに生じる変化が小さい。そこで、制御部26は、図10(d)〜(f)の右側に示すように、第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やす。このパターンは、図9に示すdパターンと同じ変更パターンである。
【0079】
図10(d)〜(f)の変更パターンでも、吐出数変更後の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、ある列の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出させるためのインク室6内のインク圧力の増減が、そのノズル7から2ドロップ目のインク液滴を吐出させるためのインク室6内のインク圧力の増減によって増幅されることで、ブロック1aを介して伝わった同じ列の手前のノズル7のメニスカス残留振動が減衰又は相殺される。これにより、第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0080】
なお、図9及び図10を参照して説明した第1及び第2実施形態の変更パターンは、ライン型インクジェットヘッド1が1つのブロック1aを有している場合のものである。一方、ライン型インクジェットヘッド1の中には、主走査方向における印刷解像度をさらに高めるために、2つ以上のブロック1aを副走査方向に並べて貼り合わせたものもある。
【0081】
図11は本発明が適用されるライン型インクジェットヘッドの他の例を示す説明図である。図11に示すライン型インクジェットヘッド1では、一段目と二段目の2つのブロック1aを副走査方向に並べて貼り合わせている。そして、各ブロック1aをノズル7の半ピッチ分だけ主走査方向にずらして配置することで、主走査方向において、一段目のブロック1aの隣り合うノズル7の中間に、二段目のブロック1a(他のブロックに相当)のノズル7を配置している。
【0082】
上述した図11のライン型インクジェットヘッド1により印刷を行う画像データとして、例えば、一段目のブロック1a上における同じ列の手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ最大値である5ドロップ及び最小値である1ドロップとするパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力された場合にも、制御部26は、上述した第1及び第2実施形態の変更パターン(図9、図10参照)によって、インク液滴の吐出数を変更することができる。
【0083】
また、制御部26は、インク液滴の吐出数を変更してもその前後で画像の濃度が変わらないようにするために、インク液滴の吐出数変更の対象に二段目のブロック1aのノズル7も加えて、例えば図12の説明図に示すようなパターンでインク液滴の吐出数を変更することができる。
【0084】
図12は本発明の第3実施形態に係る駆動方法により制御部26が行うインク液滴の吐出数変更処理の具体的パターンを示す説明図である。図12の変更パターンは、原則的に、一段目のブロック1a上の手前のノズル7のインク液滴の吐出数を5ドロップから4ドロップに減らすことを基本としている。その上で、一段目のブロック1a上における同じ列の手前と次の各ノズル7の中間に配置された二段目のブロック1aの手前のノズル7(特定のノズルに相当)と、このノズル7と二段目のブロック1a上で同じ列にある次のノズル7との、インク液滴の各吐出数との関係で、一段目のブロック1aの手前と次の各ノズル7や、二段目のブロック1aの手前のノズル7からの、インク液滴の各吐出数を、どのように変更するかを定めている。以後の説明では、便宜上、一段目のブロック1a上の手前のノズル7をA側の第1グループのノズル7、次のノズル7をA側の第2グループの同じ列のノズル7、これら手前及び次の各ノズル7の中間に位置する二段目のブロック1aの手前のノズル7をB側の第1グループのノズル7、次のノズル7をB側の第2グループの同じ列のノズル7と仮定する。
【0085】
例えば、A側の第1グループと第2グループの同じ列のノズル7からのインク液滴の吐出数が、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとなるパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力されると、制御部26は、入力された画像データによるB側の第1及び第2グループの同じ列の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を参照する。
【0086】
そして、図12の左側の(1)で示すパターンのように、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数が0ドロップである場合、これを1ドロップに増やすと、本来は空白であるはずの画素がインク液滴の着弾により潰れたイメージとなってしまう。また、図12の左側の(7)で示すパターンのように、B側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数が5ドロップ及び0ドロップである場合は、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数をさらに増やすことができない。そこで、これらの場合は、図12の右側の(1),(7)でそれぞれ示すパターンのように、A側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ減らした分、A側の第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やして2ドロップに変更する。B側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数は変更しない。
【0087】
これらの変更パターンでは、吐出数変更後のA側の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が2ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、最後の4ドロップ目のインク液滴がA側の第1グループのノズル7から吐出されてから、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0088】
次に、図12の左側の(2)〜(5)で示すパターンのように、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数が1〜4ドロップである場合、これを2〜5ドロップにそれぞれ増やしても、元々ドットが存在した画素のドット径が若干大きくなるだけで、イメージに大きな変化は与えない。そこで、これらの場合は、図12の右側の(2)〜(5)でそれぞれ示すパターンのように、A側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ減らした分、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やして2〜5ドロップに変更する。A側及びB側の各第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数は変更しない。
【0089】
これらの変更パターンでは、吐出数変更後のA側の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が3ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、最後の4ドロップ目のインク液滴がA側の第1グループのノズル7から吐出されてから、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0090】
次に、図12の左側の(6)で示すパターンのように、B側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数が4ドロップ及び1ドロップである場合、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1ドロップ増やして5ドロップにすると、B側のブロック1aにおいて、同じ列の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数が、5ドロップと1ドロップとの関係(特定吐出パターン)になってしまう。そうすると、B側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出する際に、吐出速度の低下による着弾位置のずれが生じてしまう。
【0091】
また、図12の左側の(8)で示すパターンのように、B側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数が5ドロップ及び1ドロップ(特定吐出パターン)である場合にも、このままでは、B側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出する際に、吐出速度の低下による着弾位置のずれが生じてしまう。
【0092】
そこで、これらのパターンでは例外的に、図12の右側の(6),(8)でそれぞれ示すパターンのように、A側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ減らした分、B側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ増やさずに、A側の第2グループのノズル7からのインク液滴の吐出数を1つ増やして2に変更する。
【0093】
これらの変更パターンでは、吐出数変更後のA側の第1及び第2グループの各ノズル7からそれぞれ吐出されるインク液滴の吐出数差が2ドロップとなり、最大値である5ドロップと最小値である1ドロップとの差である4ドロップとは一致しなくなる。そして、最後の4ドロップ目のインク液滴がA側の第1グループのノズル7から吐出されてから、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目のインク液滴が吐出されるまでに、インターバル期間I以上の時間が経過する。これにより、A側の第2グループのノズル7から1ドロップ目に吐出されるインク液滴の吐出速度の低下を抑制する。
【0094】
そして、上述した図12の各変更パターンでは、いずれも、A側の第1及び第2グループの各ノズル7からのインク液滴の吐出数とB側の第1グループのノズル7からのインク液滴の吐出数との合計が、変更の前後で変わらない。これにより、制御部26が吐出数の変更処理を行ったインク液滴の着弾点全体における画像の濃度を、インク液滴の吐出数の変更前後で変わらないようにすることができる。
【0095】
以上に説明した第1乃至第3実施形態に係る駆動方法によるインク液滴の吐出数変更処理を、制御部26は、例えば、図13に示すフローチャートにしたがって実行する。
【0096】
図13は本発明の第1乃至第3実施形態に係る駆動方法によってライン型インクジェットヘッド1を駆動する際に制御部26が行う、インク液滴の吐出数の変更処理を示すフローチャートである。
【0097】
図13に示すように、制御部26はまず、画像データの入力を待ち受ける(ステップS1)。画像データが入力されたならば(ステップS1でYES)、入力された画像データが吐出数変更の対象となるパターンを含んでいるか否かを判定する(ステップS3)。
【0098】
ここで、ライン型インクジェットヘッド1が図1に示す単一のブロック1aで構成されたものである場合は、主走査方向において隣り合う手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとするパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力されたか否かによって、ステップS3の判定を行う。
【0099】
一方、ライン型インクジェットヘッド1が例えば図11に示すような、2つ以上のブロック1aを副走査方向に並べて貼り合わせたものである場合は、同一のブロック1a上の主走査方向において隣り合う手前と次の各ノズル7からのインク液滴の吐出数を、それぞれ5ドロップ及び1ドロップとするパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力されたか否かによって、ステップS3の判定を行う。
【0100】
入力された画像データが吐出数変更の対象となるパターンを含んでいる場合は(ステップS3でYES)、制御部26は、インク液滴の吐出数をそれぞれ5ドロップ及び1ドロップとする対象の手前と次の各ノズル7又はどちらか一方のインク液滴の吐出数を、図9、図10、及び、図12を参照して説明した第1乃至第3実施形態のいずれかの変更パターンを用いて変更する。なお、ライン型インクジェットヘッド1が図1に示す単一のブロック1aである場合は、第1及び第2実施形態のいずれかの変更パターン(図9、図10参照)を用いて、各ノズル7又はどちらか一方のインク液滴の吐出数を変更する(ステップS5)。
【0101】
ステップS5においてインク液滴の吐出数を変更した場合と、ステップS3において入力された画像データが吐出数変更の対象となるパターンを含んでいない場合(NO)は、制御部26は、入力された画像データによるインク液滴の吐出数、又は、それをステップS5で変更した変更後の吐出数にしたがって、各ノズル7からインク液滴を順次吐出させるための駆動信号をヘッド駆動部21に生成させ、かつ、対応する液滴吐出ユニットUの圧電部材4a,4bの電極11に出力させる(ステップS7)。以上で一連の処理を終了し、再びステップS1以降の処理を繰り返す。
【0102】
以上の説明からも明らかなように、上述したインク液滴の吐出数の変更処理においては、図13のフローチャートにおけるステップS3が、請求項中の判定手段に対応する処理となっている。また、図13中のステップS5が、請求項中の吐出数変更手段に対応する処理となっている。さらに、図13中のステップS7が、請求項中の生成手段に対応する処理となっている。
【0103】
このように、上述した第1乃至第3の各実施形態では、手前と次の各ノズル7からそれぞれ5ドロップ及び1ドロップのインク液滴を吐出するパターン(特定吐出パターン)の画像データが制御部26に入力された場合に、どちらか一方又は両方のノズル7からのインク液滴の吐出数を変更するようにした。そして、この変更により、次のノズル7から1ドロップ目のインク液滴を吐出する時に、手前のノズル7で生じたメニスカス残留振動が収束しているようにするか、あるいは、次のノズル7からの2ドロップ目のインク液滴の吐出に伴い増幅されたインク室6内のインク圧力の増減によって、手前のノズル7から伝わったメニスカス残留振動が減衰又は相殺されるようにした。
【0104】
このため、ライン型インクジェットヘッド1を駆動する際に、前後する駆動信号S1,S2(又は、駆動信号S2,S3、駆動信号S3,S1)の間に存在するインターバル期間Iを短縮化しても、メニスカス残留振動の影響によるインク液滴の吐出速度の低下やそれに起因する印刷品質の低下が起こらないようにすることができる。これにより、印刷品質を低下させずにインターバル期間Iの短縮化による高速印刷を実現させることができる。
【0105】
また、第1実施形態によれば、印刷ジョブ単位や頁単位、所望のライン数単位といった印刷単位で、インク液滴の吐出数変更による画像の濃度変化を防ぐことができる。同様に、第1実施形態の変形例の駆動方法によれば、吐出数を変更したノズル7からのインク液滴の着弾先の画素の範囲内で、画像の濃度変化を防止することができる。
【0106】
さらに、第2実施形態によれば、手前と次の各ノズル7のどちらか又は両方についてインク液滴の吐出数を変更しても、次のノズル7からのインク液滴の吐出数と、さらに次のノズル7からのインク液滴の吐出数との、大小関係が変わらない。このため、手前のノズル7、次のノズル7、さらに次のノズル7の、連続3つのノズル7から吐出されるインク液滴のドロップパターンに生じる変化が小さい。このため、インク液滴の吐出数変更による画像の大きなイメージ変化を防止することができる。この第2実施形態は、細字等の画像を印刷する際に適用すると特に有効である。
【0107】
また、第3実施形態によれば、2つ以上のブロック1aを貼り合わせて構成したライン型インクジェットヘッド1において、次のノズル7からのインク液滴の吐出速度低下を防ぐために吐出数変更を行ったブロック1aにおける画像の濃度変化を、原則的に、他のブロック1aのノズル7からのインク液滴の吐出数変更によって防止することができる。
【0108】
なお、同じ列のインク液滴吐出順が連続する前後2つのノズル7,7からのインク液滴の吐出数が、それぞれ最大値である5ドロップ及び最小値である1ドロップとするパターン(特定吐出パターン)の画像データが、制御部26に入力された場合の、インク液滴の吐出数の変更パターンは、以上に説明した各実施形態で説明したパターンに限定されない。
【0109】
例えば、制御部26に入力された画像データが、写真のような画像の濃度を維持するのが望ましいデータである場合で、かつ、文字のように画像の形状を変形しないように維持する必要性が薄いデータである場合は、前後2つのノズル7,7からのインク液滴の吐出数の合計を按分して、各ノズル7,7それぞれ3ドロップずつに変更するパターンとしてもよい。このような変更パターンにすれば、インク液滴の吐出数を各ノズル7で平均化して、特定のノズル7が偏って劣化しないようにすることができる。
【0110】
また、上述した各実施形態では、説明の便宜上、「手前のノズル(前側のノズル)」と「次のノズル(後側のノズル)」とが同じ列に存在するものとした。しかし、「手前のノズル(前側のノズル)」と「次のノズル(後側のノズル)」とが前後2つの列に跨って存在する場合(例えば、図1のある列の第3グループ(3G)のノズル7と、次の列の第1グループ(1G)のノズル7)にも、本発明は適用可能である。
【0111】
さらに、上述した各実施形態では、各ノズル7からのインク液滴の吐出をノズル7の配置順に行うライン型インクジェットヘッド1を例に取って説明したが、本発明は、複数のノズル7から並行してインク液滴の吐出を行うパラレル型のインクジェットヘッドや、ヘッドを主走査方向に移動させるシリアル型のインクジェットヘッドを駆動する際にも適用可能である。
【0112】
また、上述した各実施形態では、1列当たり3つのノズル7が配置された場合を例に取って説明したが、1列当たりのノズル7の数は、2つでも4つ以上でもよいのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0113】
1 ライン型インクジェットヘッド
1a ブロック
1b ノズル面
2 基板
3 カバープレート
4 隔壁
4a 圧電部材
4b 圧電部材
5 ノズルプレート
6 インク室
7 ノズル
71 ノズル
72 ノズル
73 ノズル
8 インク流入口
9 インク供給口
10 インクチューブ
11 電極
12 フレキシブルケーブル
21 ヘッド駆動部
22 温度検知部
23 加温部
26 制御部
I インターバル期間
S1 駆動信号
S2 駆動信号
S3 駆動信号
U 液滴吐出ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドの複数のノズルのそれぞれから、各ノズルに対応する画素に1又は複数のインク液滴を吐出させると共に、相互の間隔が最短距離にある2つのノズルから連続するタイミングでそれぞれのノズルに対応する2つの隣り合う画素に対してインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動方法において、
前記2つのノズルのうちインク液滴の吐出タイミングが前である前側のノズルからのインク液滴の吐出数が吐出可能範囲の最大値であり、かつ、前記吐出タイミングが後である後側のノズルからのインク液滴の吐出数が前記吐出可能範囲の最小値であるときに、前記前側のノズルと前記後側のノズルとの吐出数差が、前記最大値と前記最小値との差よりも小さくなるように、前記前側及び後側の少なくとも一方のノズルの吐出数を変更するようにした、
ことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドは、同一のブロックに複数列設された各ノズルにそれぞれ連通する各インク室の容積を、前記ノズルからのインク液滴の吐出数に応じた波形の駆動信号でそれぞれ駆動される各容積変更手段により変更させることで、対応する前記インク室内のインクの圧力を増減させて前記吐出数のインク液滴を前記ノズルから同一の画素に吐出させるライン型インクジェットヘッドであり、
前記2つのノズルは、前記ブロック上で前記ノズルの列設方向において隣り合って配置されており、
前記ライン型インクジェットヘッドは、前記2つのノズルにそれぞれ対応する前記各容積変更手段に対して、前記駆動信号を所定のインターバル期間を挟んで順次供給することで駆動されるものであり、
変更後の前記吐出数に応じた波形の前記駆動信号が、前記前側及び後側のノズルにそれぞれ対応する前記各容積変更手段に供給される、
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドを用いた印刷の所定単位におけるインク液滴の吐出数の総和が、前記吐出数の変更の前後で一致するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項4】
インクジェットヘッドの複数のノズルのそれぞれから、各ノズルに対応する画素に1又は複数のインク液滴を吐出させると共に、相互の間隔が最短距離にある2つのノズルから連続するタイミングでそれぞれのノズルに対応する2つの隣り合う画素に対してインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動装置において、
前記2つのノズルからのインク液滴の吐出パターンが、該2つのノズルのうちインク液滴の吐出タイミングが前である前側のノズルからのインク液滴の吐出数を吐出可能範囲の最大値とし、かつ、前記吐出タイミングが後である後側のノズルからのインク液滴の吐出数を前記吐出可能範囲の最小値とする特定吐出パターンであるか否かを判定する判定手段と、
前記吐出パターンが前記特定吐出パターンであると前記判定手段が判定したときに、前記前側のノズルと前記後側のノズルとの吐出数差が、前記最大値と前記最小値との差よりも小さくなるように、前記前側及び後側の少なくとも一方のノズルの吐出数を変更する吐出数変更手段と、
を備えることを特徴とするインクジェットヘッドの駆動装置。
【請求項1】
インクジェットヘッドの複数のノズルのそれぞれから、各ノズルに対応する画素に1又は複数のインク液滴を吐出させると共に、相互の間隔が最短距離にある2つのノズルから連続するタイミングでそれぞれのノズルに対応する2つの隣り合う画素に対してインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動方法において、
前記2つのノズルのうちインク液滴の吐出タイミングが前である前側のノズルからのインク液滴の吐出数が吐出可能範囲の最大値であり、かつ、前記吐出タイミングが後である後側のノズルからのインク液滴の吐出数が前記吐出可能範囲の最小値であるときに、前記前側のノズルと前記後側のノズルとの吐出数差が、前記最大値と前記最小値との差よりも小さくなるように、前記前側及び後側の少なくとも一方のノズルの吐出数を変更するようにした、
ことを特徴とするインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドは、同一のブロックに複数列設された各ノズルにそれぞれ連通する各インク室の容積を、前記ノズルからのインク液滴の吐出数に応じた波形の駆動信号でそれぞれ駆動される各容積変更手段により変更させることで、対応する前記インク室内のインクの圧力を増減させて前記吐出数のインク液滴を前記ノズルから同一の画素に吐出させるライン型インクジェットヘッドであり、
前記2つのノズルは、前記ブロック上で前記ノズルの列設方向において隣り合って配置されており、
前記ライン型インクジェットヘッドは、前記2つのノズルにそれぞれ対応する前記各容積変更手段に対して、前記駆動信号を所定のインターバル期間を挟んで順次供給することで駆動されるものであり、
変更後の前記吐出数に応じた波形の前記駆動信号が、前記前側及び後側のノズルにそれぞれ対応する前記各容積変更手段に供給される、
ことを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドを用いた印刷の所定単位におけるインク液滴の吐出数の総和が、前記吐出数の変更の前後で一致するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドの駆動方法。
【請求項4】
インクジェットヘッドの複数のノズルのそれぞれから、各ノズルに対応する画素に1又は複数のインク液滴を吐出させると共に、相互の間隔が最短距離にある2つのノズルから連続するタイミングでそれぞれのノズルに対応する2つの隣り合う画素に対してインク液滴を吐出させるインクジェットヘッドの駆動装置において、
前記2つのノズルからのインク液滴の吐出パターンが、該2つのノズルのうちインク液滴の吐出タイミングが前である前側のノズルからのインク液滴の吐出数を吐出可能範囲の最大値とし、かつ、前記吐出タイミングが後である後側のノズルからのインク液滴の吐出数を前記吐出可能範囲の最小値とする特定吐出パターンであるか否かを判定する判定手段と、
前記吐出パターンが前記特定吐出パターンであると前記判定手段が判定したときに、前記前側のノズルと前記後側のノズルとの吐出数差が、前記最大値と前記最小値との差よりも小さくなるように、前記前側及び後側の少なくとも一方のノズルの吐出数を変更する吐出数変更手段と、
を備えることを特徴とするインクジェットヘッドの駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−11635(P2012−11635A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149469(P2010−149469)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】
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