説明

インクジェットヘッド及びインクジェット記録装置

【課題】本発明は、長期間インク流路中の親水性が保たれるインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るインクジェットヘッドは、インクを吐出する吐出口に連通するインク流路を有するインクジェットヘッドであって、前記インク流路の壁面の少なくとも一部に、シリコンアルコキシドを主原料とする親水性膜が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吐出口から記録液体を吐出して記録を行うインクジェットヘッド及びインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェットヘッドとしては、例えば、電気熱変換素子が形成された基板上に、インク吐出口と、電気熱変換体による熱作用部となるノズル部と、このノズル部にインクを供給するための共通液室部と、を有する天板を接合した構成を挙げることができる。また、さらに共通液室部は、インク供給筒内のインク通路部と繋がっており、また、インク供給筒にはインクタンクが接続され、このタンクにインクが供給される。
【0003】
図1及び図6を参照にして上述のインクジェットヘッドについてさらに説明する。図1は前述のように構成されたインクジェットヘッドの概略斜視図であり、図6はそのA−A’断面を示す概略断面図である。
【0004】
図6において、10は複数の電気熱変換素子が配列された基板である。20は天板であり、天板20は、複数のインク吐出口21と、インク供給筒24と、液室枠26とを含んで構成されている。また、天板20の内部は、ノズル部22と、共通液室部23と、インク通路部27とから構成されている。ノズル部22は、インク吐出口21に連通する。共通液室部23は各ノズル部22にインクを供給する。インク通路部27は共通液室部23に通じる。インク供給筒24は共通液室部23の液室上面に開口する開口部25を有する。液室枠26は前記基板10と接合する部材となる。また、40は各部品を構築してインクジェットヘッドを構成するための金属支持部材である。
【0005】
このような構成において、インク吐出時のインクの流れを説明する。例えば、インクを貯留するタンク(不図示)から流出したインクは種々の連結管等を通過し、天板20のインク通路部27に至り、液室上面の開口部25を経て共通液室部23に一次的に蓄えられる。そして、各ノズル部22にもインクが流れ、吐出口21の先端で表面張力等によりインクが保持される。ここで、吐出信号を基板10上の電気熱変換素子11に与えると、それに対応したノズル部22内のインクにバブルが発生し、その作用により液摘がインク吐出口21より吐出される。ノズル部には吐出が開始されると、これに必要なインクの供給を順次共通液室部23側から受ける。
【0006】
ところが、一般に、天板20はプラスチックの成形部材で構成されており、プラスチックはインクをはじきやすい性質であるため、インク通路部27、共通液室部23、ノズル部22の内壁に気泡6を生じやすい傾向がある。発生した気泡6がノズル部22にインクと共に供給されると、インク吐出が不安定な状態となり、印刷品位の劣化が発生する。さらにこのような状態が継続すると、インク不吐出により印字が不可能となる。
【0007】
前述した気泡6は、例えばインクタンクに供給されたインクがインク通路部を通って共通液室部からノズル部までを満たす時に空気の巻き込みやはじきにより発生する。
【0008】
このような気泡6は、インクジェット記録装置の使用者等がキャッピング等の手段によって回復操作を行い、流路内から除去するようにしている。このような回復操作は、印刷開始時間の遅れやインク消費量が増加するという問題点があった。
【0009】
このような問題を解決すべく、例えば特許文献1では、インク流路に光触媒性機能を有する無機質の親水性物質からなる膜を設ける技術が公開されている。また、特許文献1には、透明な天板基材を用いることにより、インク流路の壁面にある光触媒性物質に紫外線を照射する技術が記載されている。
【0010】
また、特許文献2では、光触媒性物質を有する親水性の層をプラスチックなどの低耐熱性物質面へ形成する一般的な方法が公開されている。特許文献2では、酸化チタン等の光触媒性物質を添加したシリコーンを100℃で硬化し、プラスチック基材に被覆している。
【0011】
更に、特許文献3の実施例2には、紫外線硬化剤と光触媒を含む光触媒性コーティング組成物をプラスチック基材に塗布し、30〜50mW/cm2のUV−A領域(400〜315nm)の紫外線を1分照射することにより、光触媒性物質を有する親水性の膜を形成する方法が記載されている。
【0012】
【特許文献1】特開平11−198377号公報
【特許文献2】特許2756474号明細書
【特許文献3】特開平11−315224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に記載の技術では、一般に知られていることであるが、透明部材を透過する紫外線の透過率は極めて低く、インク流路中にある光触媒性物質を光励起させて親水化するのには高照度のUV照射を必要とする。そのため、高照度のUV装置をインクジェット記録装置内に配置する必要があるが、小型化が望まれる近年においては適していないという問題がある。
【0014】
更には、光触媒性物質の光励起により活性酸素種が発生する場合がある。その強力な酸化還元反応よる有機物分解は、インク流路の壁面に付着する疎水性有機物に対して選択的に行われるものではなく、光触媒性物質に接触する有機物であるインク染料をも分解してしまう。そのため、ノズル部のように極めて細い流路中で光触媒機能を光励起した場合、インクの脱色や変質などを起こす場合があり、結局はその部分のインクを吐出をせねばならず、インクの節約にはならない。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術では、50質量%酸化チタンが添加されているものでも、親水性とするには0.5mW/cm2の照度の紫外線を2時間照射する必要がある。
【0016】
また、特許文献3に記載の方法により形成された光触媒性親水性膜は、真夏の炎天下での紫外線照度の2倍以上もの値(8mW/cm2)を照射しても、親水化するのに596時間も掛かっており、実用面で改善が望まれている。
【0017】
更に、インクには有機系撥水性物質が僅かに含まれると予想されるが、その有機系撥水性物質のインク流路内における挙動について考える。親水化した面は表面エネルギーの高い状態であって、水などの表面張力の高い物質が吸着しやすく、油などの一般的な撥水性物質は表面張力は小さく高エネルギー表面には吸着しにくい。そこで、インク流路が親水化しているうちにインクを流路内に満たすようにすれば、インク中に含まれる有機系撥水性物質よりもインク中の水分の方が親水化した流路壁面に優先的に吸着する。したがって、有機系撥水性物質がインク壁面近傍を通過したとしても、水の分子の上から有機系撥水性物質が吸着することは考え難くい。たとえ吸着したとしても、「酸化チタン光触媒のすべて」(シーエムシー社発行、橋本・藤嶋編集)に記載される超親水性の易水洗効果としても知られているように、有機系撥水性物質は容易にインクとともに流し去られてしまう。この事からも、気泡除去だけのためでなく、有機系撥水性物質の吸着を抑える意味からも、インク流路にインクが満たされて水分の吸着層が形成されるまでの間、インク流路の壁面は親水性であることが重要になってくる。
【0018】
そこで、本発明は、長期間インク流路中の親水性が保たれるインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的は、以下の手段により達成される。
【0020】
本発明は、インクを吐出する吐出口に連通するインク流路を有するインクジェットヘッドであって、前記インク流路の壁面の少なくとも一部に、シリコンアルコキシドを主原料とする親水性膜が設けられていることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、親水化状態が長期間維持されるインク流路を有するインクジェットヘッドを提供することができる。インク流路中の親水性が保たれることによりインク流路が良好な濡れ性を有するため、気泡の発生や滞留を低減し、回復操作が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、インクを吐出する吐出口に連通するインク流路を有するインクジェットヘッドであって、前記インク流路の壁面の少なくとも一部に、シリコンアルコキシドを主原料とする親水性膜が設けられていることを特徴とするインクジェットヘッドである。
【0023】
インク流路中にシリコンアルコキシドを主原料とする親水性膜を設けることにより、インク流路を親水性とすることができる。そのため、インク流路中における気泡の発生や滞留を抑制することができ、印字品位を向上させることができる。また、回復操作を非常に容易にするとともに回復操作頻度を減少させ、インク消費量を抑えることが可能になる。
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
(親水性膜)
本発明における親水性膜は、シリコンアルコキシドを主原料とする。シリコンアルコキシドとしては、特に制限されるものではないが、例えば、テトラアルコキシシランを用いることができる。テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン又はテトラメトキシシランなどを挙げることができる。これらの中でもテトラエトキシシラン、テトラメトキシシランを好ましく用いることができる。
【0026】
また、親水性膜は、特に限定されるものではないが、ゾル−ゲル法によって、テトラアルコキシシラン等のシリコンアルコキシド又はその重合体から形成されることが好ましい。親水性膜は、例えば、シリコンアルコキシド又はその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱して溶媒を除去することにより塗膜形成することができる。
【0027】
塗布は、一般的に用いられる塗布方法により行うことができる。例えば、ディッピング法、スピンコート法、エアーフローティング法、スプレー法等により行うことができる。硬化方法としては、例えば、熱処理、室温放置、紫外線照射等により重合させて行うことができる。
【0028】
特に、本発明では紫外線照射により重合硬化させることが好ましく、中でも、波長280nm未満のUV−Cを用いることが好ましい。
【0029】
また、本発明における親水性膜は、光触媒性物質を含むことが好ましい。光触媒性物質としては、例えば、チタニア(TiO2)、ZnO、SnO2、SrTiO3、WO3、Bi23若しくはFe23又はこれらの合金よりなる金属酸化物が挙げられる。これらの中でも、チタニア(TiO2)を好ましく用いることができる。チタニアは、無害であり、化学的に安定であり、かつ、安価に入手可能である。
【0030】
親水性膜の厚みは、特に限定されるものではないが、少なくとも数nmは有することが好ましい。あまり薄いと充分な親水性を示さなくなる。また、厚すぎると硬化性が低下するため、約500nm以下であることが好ましい。必要に応じて多層化して形成することもできる。
【0031】
光触媒性物質の添加量は、特に限定されるものではなく、例えば、シリコンアルコキシド単独でのUV−C紫外線照射による硬化時の濡れ性を勘案して選択できる。より好ましくは、二酸化シリコン換算モル比として、TiO2/(SiO2+TiO2)モル比が0%から80%以下であり、より好ましくは70%以下である。光触媒性物質の添加量を適宜調整することにより、親水性膜に高度な親水性と有効な膜強度を付与することができる。
【0032】
(インク流路)
本発明におけるインク流路とは、インクを吐出する吐出口までのインクが流れる領域であれば、特に制限されない。例えば、上述の説明で用いた図6においては、ノズル部22と、共通液室部23と、インク通路部27がインク流路に該当する。
【0033】
また、本発明においては、インク流路中の少なくとも一部に前記親水性膜が形成されていればよい。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の実験例及び実施例等について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
【0035】
(実験例及び比較実験例、親水性評価)
まず、図3を参照にして本発明の実験例及び比較実験例について詳細に説明する。
【0036】
図3は、天板部材に用いられるポリサルファイド樹脂板に種々表面処理を行った時の水に対する接触角の変化を、暗中保管条件下で求めたものである。この時、暗中保管を行ったのは、光触媒性物質を含む膜は一般照明下に置いたとき光励起に伴う有機物分解作用のため親水性が回復してしまうためである。そこで、初期に親水化した状態が維持される力を確認するために、光励起のない状態で接触角を求めた。尚、接触角は接触角測定装置(協和界面科学製CA−D)を用いて測定した。測定可能な接触角の最低値は1°であり、これ以下の場合は0°とした。
【0037】
図3は、下記の溶液(a)又は(b)を用いて塗布形成した親水性膜についてデータを求めたものである。
・溶液(a);シリコンアルコキシドの一種であるテトラエトキシシラン6重量部と、水6重量部と、36%塩酸を2重量部と、エチルアルコール86重量部と、を混合し、5℃8ヶ月保管し加水分解を進め、分子量を15000まで高めた溶液である。
・溶液(b);溶液(a)に、光触媒性物質としてアナターゼ型チタニアゾルSTS―01(石原産業製)を加え、二酸化シリコン換算モル比として、TiO2/(SiO2+TiO2)のモル比が50%となるよう調整した溶液である。
【0038】
それぞれの溶液(a)及び(b)をポリサルファイド樹脂板にディップ法にて塗布し、溶剤揮発後UV−C領域の紫外線を2分間照射し、膜(1)及び(2)を形成した。膜厚は、硬化後で大略50nmであった。UVランプは、200W低圧水銀灯、センエンジニアリング製、254nm照度8mW/cm2のもの使用した。なお、UV−Cよりも短波長側のUVを用いることもできる。
【0039】
比較実験例として、ポリサルファイド樹脂板をウエット洗浄の代表としてアセトン洗浄したものについて、成膜上がり又は洗浄上がりからの水に対する接触角の経時変化を暗中保管し接触角計にて求めたものを膜(3)として図3に示す。
【0040】
尚、未処理状態のポリサルフアイド樹脂板の表面の接触角は、大略80°であった。一般に、20°以下が親水性、10°以下が超親水性と言われている。実施例における図3の結果から、従来の洗浄では決して得られない極めて高度に親水化した状態が長期にわたり維持されることが判った。
【0041】
また、親水性膜の形成時における紫外線による硬化は、40秒を3回に分け照射したこともあり、46℃とほとんどプラスチック基材に温度を掛けることなく、直ちに親水化することができた。なお、上述の特許文献2の実施例15におけるプラスチックに形成した酸化チタンを含む100℃で硬化したシリコーンの接触角は大略80°である。
【0042】
(実験例2、メチレンブルー分解性評価)
白板ガラス(松波製、micro slide glass)に前記溶液(a)及び溶液(b)をディップ法によりそれぞれ塗布し、実験例1と同一条件でUV−Cの紫外線を照射し硬化した。溶液(a)によるサンプルを膜(4)とし、溶液(b)によるサンプルを膜(5)とした。どちらもの膜厚も100nmであった。
【0043】
次に、これらをメチレンブルー水溶液に浸し、色素を吸着させ、乾燥させた。その後、BLBライトを照射し(365nmにおける照度1mW/cm2)酸化チタンの光励起に伴うメチレンブルーの分解反応を進行させた。分解反応の追跡は、580nmにおける吸光度変化(ΔAbs)を図4に示した。(ΔAbs)の絶対値の変化が大きいほど色素の分解反応が進行したことを意味しており、光触媒性物質が添加されている膜(5)はインク成分を分解していることが分かる。
【0044】
したがって、親水性膜に光触媒性物質を添加しておくことにより、気泡の発生を抑制するのみならず、壁面付近の有機物を分解することができ、インク流路の詰まりを抑制することができることが判る。
【0045】
(実施例及び比較例)
図1を用いて、実施例及び比較例で用いたインクジェットヘッドの構成について説明する。図1は本発明を適用可能なインクジェットヘッドの一部を概略的に示す斜視図である。図1において、10はセラミックス等の基板であり、成膜技術等によりエネルギー発生素子としての電気熱変換素子11(図2参照)が複数個配列されている。基板10にはさらに電気熱変換素子11を駆動するための駆動回路が同時に形成されており、基板後端部にはこの回路を接続するためのパッド12が配置されている。20はこの基板に接合された天板である。30は基板10の駆動回路に配線するための配線基板であり、基板10のパッド12に対応してパッド32が配置されている。
【0046】
基板10と配線基板30とはアルミニウム等の良導電性金属材料からなる放熱用支持板40上に配置され、両者のパッド12と30がそれぞれボンディングワイヤ42によって接続されている。
【0047】
次に、本発明の実施例に係るインクジェットヘッドについて図2、図5を用いて、また比較例として図6を用いて説明する。
【0048】
図5は、ポリサルファイド樹脂を射出成形した天板20を示す図である。天板20は、上述のように、紙面と垂直方向に並列に複数個配列されたインク吐出口21が形成され、吐出口21に連通するノズル部22が複数個の溝として形成されている。そして、ノズル部22に連通する共通液室部23は液室枠26内に形成されており、該共通液室部23は、液室枠26と一体のインク供給筒24内に形成されたインク通路部27と開口部25を介して連通している。
【0049】
本発明の実施例として、上記の天板20を用意し、インク通路部27、共通液室部23、ノズル部22の壁面に、前記溶液(a)をディスペンサーで図5の矢印33の方向から塗布した。次に、エアー吹き付けを行って滞留している液を除去するとともに、溶剤を乾燥した。その後、UV−C領域の紫外線照射を図5の矢印33及び34の両方向から照射し、親水性を有する膜(a)を形成した。そして、この膜(a)を形成した天板(a)と基板とを接合し、インクジェットヘッド(a)を作製した。
【0050】
また、前記溶液(b)についても同様に天板に成膜し、インクジェットヘッド(b)を作製した。
【0051】
また、比較例として、アセトン洗浄した天板20と基板とを接合し、インクジェットヘッド(Cont)を作製した。
【0052】
これら3種類のインクジェットヘッドを各々50個用意し、成膜或いは洗浄から24時間経過後と960時間経過後に、シアニンブルー水溶液をインク流路内に充満させ、インク流路内壁に生じる気泡の存在を確認した結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
本実施例によれば、インク流路となる共通液室部23、インク通路部27、ノズル部22の壁面に親水性膜29を形成したことにより、インク流路にインクを充填する際における気泡の形成を抑制することができた。また、インク流路は親水性膜が施されているため、回復操作によって気泡を容易に除去できる。また、回復操作の頻度を極めて少なくすることもでき、インク消費量を抑えることができる。
【0055】
また、図3及び表1の結果からも明かなように、本発明では親水化された状態が極めて長期にわたり維持される。したがって、親水性膜を形成した後、天板20と基板10とを接合してインクを注入するまでの工程に時間が掛かったとしても、インク流路中における気泡の発生を抑制し、高性能のインクジェットヘッドを容易に製造できる。
【0056】
なお、本実施例では、インクジェットプリンターヘッドへの成膜方法として、ディスペンサーを用いた塗布法を示したが、他にもスプレー法や浸漬法・筆塗り等の方法を採用できる。また、親水性膜とインク流路の壁面との間にはシランカップリング材などの中間層を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】インクジェットヘッドの構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明のインクジェットヘッドの構成例を示す、図1のA−A’線における断面図である。
【図3】本発明の実験例1及び比較実験例を示すグラフである。
【図4】本発明における光触媒性物質を含有する親水性膜の有機物分解性能を評価したグラフである。
【図5】本発明の実施例における天板の構成を表す断面図である。
【図6】気泡の発生を説明するためのインクジェットヘッドの断面図である。
【符号の説明】
【0058】
6 気泡
10 基板
11 電気熱変換素子
12 パッド
20 天板
21 インク吐出口
22 ノズル部
23 共通液室部
24 インク供給筒
25 開口部
26 液室枠
27 インク通路部
29 親水性膜
30 配線基板
32 パッド
33 塗布方向又はUV−C照射方向
34 UV−C照射方向
40 支持板
42 ボンディングワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する吐出口に連通するインク流路を有するインクジェットヘッドであって、
前記インク流路の壁面の少なくとも一部に、シリコンアルコキシドを主原料とする親水性膜が設けられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記親水性膜は光触媒性物質を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記光触媒性物質は、TiO2、ZnO、SnO2、SrTiO3、WO3、Bi23若しくはFe23又はこれらの合金よりなることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記親水性膜は、紫外線照射によって硬化して形成されたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記紫外線は、少なくともUV−Cかそれよりも短波長側の紫外線よりなることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記インクジェットヘッドは、前記インク流路が設けられた天板と、前記吐出口からインクを吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子が設けられた基板と、を接合して形成されたインクジェットヘッドであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のインクジェットヘッドを具備することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−143000(P2010−143000A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320836(P2008−320836)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】