説明

インクジェット印刷装置とその制御方法、ホストコンピュータとその制御方法および印刷ヘッドクリーニング方法

【課題】タイマクリーニングが行われている最中に印刷命令がなされたときの印刷処理と、通常時の印刷処理とを同程度の処理時間で実行するヘッドクリーニング方法を提供する。
【解決手段】クリ−ニング制御部24は、所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に複数個間欠的に出力する分割ヘッドクリーニング命令出力部25と、ヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけて、当該割込み以降の分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルするヘッドクリーニング中止部26とを備えている。また、印刷制御部23は、印刷命令実行手段として動作し、分割ヘッドクリーニング命令のキャンセル後に、印刷命令を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ヘッドのノズルクリーニングを実行するインクジェット印刷装置、インクジェット印刷装置の動作を制御するホストコンピュータおよび印刷ヘッドクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インク収容室であるインクタンクから印刷ヘッドにインクを供給し、印刷ヘッドにある複数のインク吐出用のノズルからインクを印刷用紙に吐出することにより印刷を行う。このようなインクジェットプリンタでは、ノズルの状態を好適に保つために印刷処理の途中あるいは終了後等に、ノズルからインクを吐出することで、ノズル内で増粘したインク等を強制排出する、いわゆるフラッシング操作が行われている。
【0003】
通常、フラッシング動作を実行するには、吐出したインクを吸収するための吸収材が所定のポジションに設けられており、印刷処理の実行途中で所定のポジションへ印刷ヘッドを移動させてフラッシング操作を行う。このため、フラッシング操作による時間分だけ印刷処理の実行時間を増大させてしまうことが考えられる。このため、フラッシング動作を含む印刷処理の実行時間を低減させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、インクジェットプリンタには、液体のインクを扱う関係上、インクタンクからノズルに至るまでの経路に気泡などが溜まってインクを均一に吐出できなくなることがあるため、殆どのインクジェットプリンタには印刷ヘッドのノズルからインクを吸引するインク吸引機能を備えている。具体的には、ノズルのインク吐出面にキャップをし、吸引ポンプで負圧をかけて密閉した後、インクを吸引することにより、目詰まりを解消するものである。
【0005】
一般に、ノズルからインクを吸引するクリーニングには、定期的に自動で行われるタイマクリーニングや、ユーザーの指示に応じてその都度実行されるマニュアルクリーニングなどがある。
【0006】
ここで、従来のタイマクリーニングの制御方法について図9を参照して説明する。インクジェットプリンタ(デバイス)は、電源ONにより起動されるとタイマクリーニングを自動的に開始し、実行する(ステップS501,ステップS502,ステップS503)。印刷ヘッドのノズルからインクを吸引してクリーニングを終了すると(ステップS504)、タイマクリーニングの時間カウンタを初期化セットし(ステップS505)、経過時間のカウントを開始する(ステップS506)。
【0007】
この時点でプリンタの電源がOFFされず(ステップS507:No)、実行可能な印刷データがホストコンピュータから送信されてくれば(ステップS508:Yes)、その印刷データに基づき印刷処理を実行する(ステップS509)。印刷処理が終了すると、タイマクリーニング時間を算出して再びタイマクリーニング時間のカウントを開始する(ステップS511,ステップS512)。カウントした時間が予め設定されているタイマクリーニング時間と等しければ、ステップS502へ戻り再びタイマクリーニングを実行する。一方、カウントした時間がタイマクリーニング時間に満たない場合には(ステップS513:No)、そのまま待機してホストコンピュータから印刷データがくれば印刷処理を実行する。
【0008】
【特許文献1】特開2006−159836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、タイマクリーニングは、予め印刷装置に設定されているタイマクリーニング時間が経過すると自動的に行われるクリーニングであり、図10に示すように、1つのクリーニング命令Cに応じてインク吸引動作を開始すると所定量あるいは所定時間のインク吸引動作を終了するまで連続して実行する。すなわち、クリーニング命令を受信してクリーニング動作の実行中に印刷データを受け付けても、クリーニング処理が中断されることはなく、クリーニング処理が優先して実行され一連のクリーニング処理が終了するのを待って印刷処理が実行される。このため、印刷命令がなされてから印刷処理が完了するまでの処理時間が、通常時の印刷処理時間に比べて多くの時間を要することとなる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、タイマクリーニングが行われている最中に印刷命令がなされたときの印刷処理と、通常時の印刷処理とを同程度の処理時間で実行することができるインクジェット印刷装置とその制御方法、ホストコンピュータとその制御方法および印刷ヘッドクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷装置であって、前記所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を、前記予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に複数個間欠的に出力する分割ヘッドクリーニング命令出力手段と、ヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、前記複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけて、当該割込み以降の前記分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルするヘッドクリーニング中止手段と、前記分割ヘッドクリーニング命令のキャンセル後に、印刷命令を実行する印刷命令実行手段と、を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置である。
【0012】
また、本発明は、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷装置の印刷制御方法であって、前記所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を、前記予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に複数個間欠的に出力するステップと、ヘッドクリーニング割込命令を検出するステップと、前記ヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、前記複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけて、当該割込み以降の前記分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルするステップと、前記分割ヘッドクリーニング命令のキャンセル後に、前記印刷命令を実行するステップと、を含むことを特徴とするインクジェット印刷装置の制御方法である。
【0013】
上記構成によれば、分割ヘッドクリーニング命令が、所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示するものであり、ヘッドクリーニング割込命令の検出以降の分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルして印刷命令を実行するので、クリーニング中に印刷命令を受け付けた場合の印刷処理時間を短縮することができる。また、キャンセルされた分のクリーニングは実行されないためクリーニングのためのインク消費量を低減することができる。
【0014】
また、本発明は、インクジェット印刷装置の動作を制御するホストコンピュータであって、前記印刷命令の生成指示に応じて、前記ヘッドクリーニング割込命令を付加した印刷命令を生成する印刷命令生成手段を有することを特徴とするホストコンピュータである。
【0015】
また、本発明は、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷装置の動作を制御するホストコンピュータの制御方法であって、ヘッドクリーニング割込命令の設定指示に基づき前記ヘッドクリーニング割込命令を生成するステップと、印刷命令の生成指示に応じて前記ヘッドクリーニング割込命令を付加した印刷命令を生成するステップと、前記印刷命令を前記インクジェット印刷装置へ送信するステップと、を有することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、ヘッドクリーニング割込命令を付加した印刷命令を生成する。したがって、印刷命令を受信したインクジェット印刷装置はヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、当該割込み以降の分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルすることができる。したがって、タイマクリーニングが行われている最中に印刷命令がなされたときの印刷処理と、通常時の印刷処理とを同程度の処理時間で実行することができる。
【0017】
また、本発明のホストコンピュータは、前記印刷命令の生成指示に応じて、前記ヘッドクリーニング割込命令と前記印刷命令とを生成する印刷命令生成手段と、前記ヘッドクリーニング割込命令を前記印刷命令に先立って前記インクジェット印刷装置へ送信する送信部と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷装置の動作を制御するホストコンピュータの制御方法であって、ヘッドクリーニング割込命令の設定指示に基づき前記ヘッドクリーニング割込命令を生成するステップと、印刷命令の生成指示に応じて、前記印刷命令を生成するステップと、前記ヘッドクリーニング割込命令を前記印刷命令に先立って前記インクジェット印刷装置へ送信するステップと、を有することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、ヘッドクリーニング割込命令と印刷命令とを生成し、ヘッドクリーニング割込命令を印刷命令に先立ってインクジェット印刷装置へ送信するので、インクジェット印刷装置は、印刷命令の前にヘッドクリーニング割込命令を受信することができる。このため、インクジェット印刷装置は印刷命令を受信する前から、複数個間欠的に出力された分割ヘッドクリーニング命令をより早い時点においてキャンセルすることができる。したがって、タイマクリーニングが行われている最中に印刷命令がなされたときの印刷処理と、通常時の印刷処理とを同程度の処理時間で実行することができるとともに、クリーニングのためのインク消費量をより効果的に削減することができる。
【0020】
また、本発明は、ホストコンピュータと、前記ホストコンピュータと通信可能に接続されたインクジェット印刷装置と、を備え、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施する印刷ヘッドクリーニング方法であって、前記ホストコンピュータは、ヘッドクリーニング割込命令の設定指示に基づき前記ヘッドクリーニング割込命令を生成し、印刷命令の生成指示に応じて前記印刷命令を生成し、前記ヘッドクリーニング割込命令と前記印刷命令とを前記インクジェット印刷装置へ送信し、前記インクジェット印刷装置は、前記ヘッドクリーニング割込命令を検出し、前記所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を前記予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に複数個間欠的に出力し、前記ヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、前記複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけて、当該割込み以降の前記分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルすることを特徴とする印刷ヘッドクリーニング方法である。
【0021】
上記構成によれば、インクジェット印刷装置は所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を複数個間欠的に出力し、ヘッドクリーニング割込命令を検出するとそれ以降の分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルすることができるので、ノズルクリーニングによるインク消費量を削減することができる。また、複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけることができるので、ノズルクリーニング処理に優先して印刷処理を実行することができる。すなわち、インクジェット印刷装置はクリーニング処理の実行中に印刷命令を受け付けても、実行中の分割ヘッドクリーニング処理を中止して印刷処理を実行することができるため、クリーニングが行われている最中に印刷命令がなされたときの印刷処理と、通常時の印刷処理とを同程度の処理時間で実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明に係るインクジェットプリンタを搭載したメディア処理装置の一例を説明する。本実施形態のインクジェットプリンタは、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するように制御される。図1は本発明に係るインクジェットプリンタ5を搭載したメディア処理装置1と、メディア処理装置1の動作を制御するホストコンピュータ10との間で行われる内部処理を示した機能ブロック図である。
【0023】
(メディア処理装置の内部処理について)
図1を参照してメディア処理装置1の内部処理について説明する。図1に示すように、本実施形態ではインクジェットプリンタ5、メディア搬送機構6及びメディアドライブ4の3つのUSBデバイスが筐体によって覆われて1つのメディア処理装置1を構成している。メディア処理装置1は、USBポートに複数のUSBデバイスを接続するための分岐装置であるハブ7を介して、ホストコンピュータ10に通信可能に接続されている。
【0024】
ホストコンピュータ10は、主に、アプリケーション11、メディア処理装置1を構成する各USBデバイスの動作を制御するデバイスドライバ12、送受信部13、などで構成される。デバイスドライバ12は、主として印刷データ生成部14とコマンド生成部15とを含む。
【0025】
ホストコンピュータ10のアプリケーション11は、印刷に係る各種コマンド等をインクジェットプリンタ5に実行させるためのユーザーインターフェースを提供する。ユーザーは、アプリケーション上で印刷データの作成や編集、印刷指示を行う。デバイスドライバ12は、アプリケーション11により呼び出され、インクジェットプリンタ5、メディア搬送機構6及びメディアドライブ4の動作を直接制御する。具体的には、アプリケーション11での設定等に応じて印刷データ生成部14は印刷命令生成手段として動作し印刷データ(印刷命令)を生成する。コマンド生成部15はメディアをピックして搬送するメディア搬送アーム(不図示)を移動させる移動コマンド、メディアのピックコマンド及びメディアのリリースコマンド等のメディア処理装置1に対する各種制御コマンドを生成して、適切なタイミングで各データは送受信部13を介してメディア処理装置1へ送信する。
【0026】
なお、アプリケーション11およびデバイスドライバ12は、ホストコンピュータ10の図示しない記憶領域、例えばHDDに予め格納されたプログラムであり、それぞれの各種機能は、ホストコンピュータ10の図示しない制御部(CPU)で上記プログラムを読み出し、実行することにより実現される。また、送受信部13は、印刷データや各種コマンドデータをメディア処理装置1へ送信するためのインターフェース部である。
【0027】
本実施形態の印刷データ生成部14は、アプリケーション11からの印刷データの生成指示に応じて、ヘッドクリーニング割込命令を付加した印刷データを生成する。そして、ヘッドクリーニング割込命令が付加された印刷データは送受信部13を介してメディア処理装置のインクジェットプリンタ5へ送信する。
また印刷データ生成部14は、アプリケーション11からの印刷データの生成指示に応じて、ヘッドクリーニング割込命令と印刷データとを別々に生成してもよい。この場合には、印刷データに先立ってヘッドクリーニング割込命令が送受信部13を介してインクジェットプリンタ5へ送信される。
【0028】
メディア処理装置1を構成する各USBデバイスは、通信インターフェースとしての送受信部21,31,41をそれぞれ備えている。送受信部21は、ホストコンピュータ10からハブ7を介して送信された印刷データや印刷コマンドを受信するためのインターフェース部である。送受信部21で一時保存した印刷データはプリントバッファ22に展開され、印字可能なドットデータに変換される。印刷制御部23(印刷命令実行手段)は、受信した印刷データに基づいて、図示せぬ印刷ヘッドやキャリッジ等を駆動させてプリントバッファ22に展開されたドットデータをメディアのレーベル面に印刷する。
【0029】
また、送受信部31は、ホストコンピュータ10からハブ7を介して送信された各種コマンドデータを受信するためのメディア搬送機構6のインターフェース部である。送受信部31で一時保存したコマンドデータに基づき、搬送制御部32は、メディア搬送アームやメディアを把持する把持爪を駆動させて、メディアを搬送する。
【0030】
搬送制御部32からの指示に応じてメディアが積層されたスタッカからメディアをピックし、ピックしたメディアをインクジェットプリンタ5のメディアトレイやメディアドライブのメディアトレイまで搬送し、リリースコマンドに応じてピックしたメディアをリリースする。さらに、搬送制御部32からの指示に応じてデータ書き込み処理、レーベル印刷処理が終了した処理済メディアをメディアトレイからピックし、ピックしたメディアをメディア取出し口あるいはメディアスタッカまで搬送し、リリースコマンドに応じてピックしたメディアをリリースする。
【0031】
また、送受信部41は、ホストコンピュータ10からハブ7を介して送信された書き込みデータや書き込みコマンドデータを受信するためのメディアドライブ4のインターフェース部である。送受信部41で一時保存した書き込みコマンドデータに基づき、書き込み制御部42は、メディアドライブを駆動させて、メディアに対するデータ書き込み処理を制御する。
【0032】
本実施形態のインクジェットプリンタ5は、図示せぬ印刷ヘッドのノズルからインクを吸引するインク吸引機能を備え、ノズルのインク吐出面にキャップをし、吸引ポンプで負圧をかけて密閉した後、インクを吸引することにより、インクの目詰まり等を解消することができる。クリーニング制御部24は、印刷ヘッドの吐出面を覆うキャップ、キャップをした状態で印刷ヘッドに負圧をかける吸引ポンプ等クリーニング動作に必要な各種機構部の動作を制御する。
【0033】
なお、印刷ヘッドのノズルからインクを吸引するヘッドクリーニングには、定期的に自動で行われるタイマクリーニングや、ユーザーの指示に応じてその都度実行されるマニュアルクリーニングがある。以下では、タイマクリーニングを対象として説明することとする。
【0034】
(クリーニング制御部の内部処理について)
次に、図10と図2を比較しながら本実施形態のインクジェットプリンタ5が行うタイマクリーニングについて説明する。図2は、本実施形態のインクジェットプリンタが行うタイマクリーニングのタイムチャートである。
従来行われていたタイマクリーニングは、図10に示したように1つのクリーニング命令に対して、吸引開始から吸引終了までの予め設定された吸引量あるいは吸引時間だけ連続して実行する。しかしながら、本実施形態では従来1回で行っていたタイマクリーニングを複数回に分割し1回あたりのインク吸引時間を短縮して実行するよう設定されている。図2(a)に示すように、ここでは従来の1回分のインク吸引処理の実行時間を8回に分割し、各回のインク吸引時間を短縮して行うようになっている。すなわち、小さなインク吸引処理を複数回にわたって間欠的に実行することで、従来の1回分のインク吸引動作によるヘッドクリーニング効果を得ることができるよう設定されている。
【0035】
そこで本実施形態のクリーニング制御部24は、分割ヘッドクリーニング命令出力部25を備え、この分割ヘッドクリーニング命令出力部25によって小さなインク吸引動作を複数回間欠的に行うことができるようになっている。分割ヘッドクリーニング命令出力部25は、通常1回のタイマクリーニングの実行に必要とされるインク吸引時間として設定されている所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に複数個間欠的に出力する。本実施形態では、インクジェットプリンタ5に予め設定されているタイマクリーニング時間の経過毎に、8個の分割ヘッドクリーニング命令Cを間欠的に出力する。
【0036】
さらに、クリーニング制御部24は、ヘッドクリーニング中止部26を備え、後述するヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけて、割込み以降の分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルする。具体的には図2(a)に示すように、4つ目の分割ヘッドクリーニング命令C4に応じたインク吸引動作を実行する前に、ホストコンピュータ10から印刷データ(印刷命令)を受けると、ヘッドクリーニング中止部26は4つ目以降の分割ヘッドクリーニング命令C4,C5,C6,C7,C8をキャンセルする(図2(b)参照)。そして印刷制御部23は、分割ヘッドクリーニング命令C4,C5,C6,C7,C8のキャンセル後に、印刷データを実行する。
【0037】
(タイマクリーニング処理について)
次に、図3から図8を参照してさらに詳細なタイマクリーニング処理について説明する。図3は、ホストコンピュータにおいてインクジェットプリンタの印刷設定を行う場合に、図示しない表示装置に表示される印刷設定画面の概略図であり、図4は、印刷設定のプロパティを設定する場合に表示されるプロパティ画面の概略図であり、図5は、ホストコンピュータが行う印刷データ生成処理を説明するフローチャートであり、図6は、ホストコンピュータが行う印刷データ生成処理の変形例を説明するフローチャートであり、図7は、生成された印刷データの模式図であり、図8は、ホストコンピュータから送信された印刷データに応じてインクジェットプリンタが実行する処理を説明するフローチャートである。
【0038】
<印刷データ生成処理について>
図3に示す印刷設定画面は、印刷出力を行うプリンタの選択、印刷範囲の指定、印刷部数の指定等を設定できる画面であり、「OK」ボタン101が押下されると、印刷データが生成されインクジェットプリンタ5は印刷処理を実行する。一方、「キャンセル」ボタン102が押下されると、印刷処理は実行されない。
【0039】
図3の印刷設定画面に表示されている「プロパティ」ボタン103が押下されると、図4に示すプロパティ画面を表示する。このとき、図4のプロパティ画面は、図3の印刷設定画面で選択されたプリンタのプロパティ画面である。
【0040】
図4に示すプロパティ画面は、給紙元、排紙先、カラーモード等を設定できる画面であり、プロパティ画面の各印刷設定がなされると、「プレビュー画面」201にプロパティの各印刷設定に基づいた印刷プレビューの画面を表示する。例えば、「メディアタイプ」202で「ワイドタイプ」を選択すると、「プレビュー画面」201にワイドタイプのメディアの印刷プレビューを表示する。
【0041】
図4のプロパティ画面において、ヘッドクリーニング割り込みチェックボックス203が押された状態で「OK」ボタン204が押されると、ヘッドクリーニング割り込み処理を行うよう設定される。「OK」ボタンが押されるとプロパティ画面で設定された印刷設定の情報を記憶手段に格納し、図4に示すプロパティ画面を閉じる。
【0042】
印刷設定画面の「OK」ボタン101が押されると、図5に示すように、ホストコンピュータ10は、アプリケーション11またはオペレーティングシステムから印刷命令がなされたことを感知し印刷データ作成処理を開始する(ステップS301)。
【0043】
図4に示すようなGUI(プロパティ画面)でヘッドクリーニング割り込み203にチェックが入っているかどうかを判別し(ステップS302)、ヘッドクリーニング割り込み処理が行われるような設定(チェック有)になっていれば(ステップS302:Yes)、ステップS303において印刷データにヘッドクリーニング割込命令を付加する。ここで、ヘッドクリーニング割込命令は、印刷データの先頭に付加される。そして、印刷データとともにインクジェットプリンタ(ファーム)10へ転送する(ステップS304)。
【0044】
一方、ステップS302においてGUI(プロパティ画面)でヘッドクリーニング割り込み203にチェックが入っていない場合(ステップS302:No)は、印刷データにヘッドクリーニング割込命令を付加せずにインクジェットプリンタ(ファーム)5へ転送する(ステップS304)。
【0045】
図7(a)に、図5に示す方法によって作成された印刷データを示す。すなわち、タイマクリーニング停止命令は、印刷データの先頭に付加される。
【0046】
なお、タイマクリーニング停止命令を印刷命令に付加せず、印刷データとは別にインクジェットプリンタ5へ送信することもできる。図5のフローチャートにおいては、ステップS303で印刷データの先頭にヘッドクリーニング割込命令を付加したのに対して、印刷データとは別にヘッドクリーニング割込命令を作成し転送することもできる。
【0047】
印刷設定画面の「OK」ボタン101が押されると、図6に示すように、ホストコンピュータ10は、アプリケーション11またはオペレーティングシステムから印刷命令がなされたことを感知し印刷データ作成処理を開始する(ステップS401)。
【0048】
図4に示すようなGUI(プロパティ画面)でヘッドクリーニング割り込み203にチェックが入っているかどうかを判別し(ステップS402)、ヘッドクリーニング割り込み処理が行われるような設定(チェック有)になっていれば(ステップS402:Yes)、ステップS403においてコマンド生成部15がヘッドクリーニング割込命令を生成し、印刷データに先立ってインクジェットプリンタへ転送する(ステップS403)。次に、印刷データ生成部14が印刷データを生成しインクジェットプリンタ(ファーム)5へ転送する(ステップS404)。
【0049】
図7(b)は、図6に示す方法によって作成された印刷データを示す。この場合は、タイマクリーニング停止命令が、印刷データとは別のデータとして作成され転送される。
【0050】
<インクジェットプリンタにおけるタイマクリーニング処理について>
次に、図8を参照してインクジェットプリンタ5が行うタイマクリーニング処理について説明する。
インクジェットプリンタ5が、電源ONにより起動されると(ステップS601)、クリーニング開始処理においてクリーニング回数カウンタを初期値にセットする(ステップS602)。ここで、クリーニング開始処理とは、クリーニングのためにヘッド位置の移動などの準備処理である。
【0051】
クリーニング実行処理においてクリーニング回数カウンタの値から「1」を減算する(ステップS603)。なお、クリーニング回数カウンタの値は、図10に示したように通常のタイマクリーニングを1回行うことによって得られるクリーニング効果と同程度の効果を得られる回数に設定されていることが好ましい。本実施形態では、クリーニング回数カウンタの値は8回に設定されている。
【0052】
ホストコンピュータ10で生成された印刷データ(図7(a)の場合)が送信され、かつ印刷データにヘッドクリーニング割込命令が付加されているかどうかを判断する(ステップS604)。ここで、クリーニング実行処理とは、印刷ヘッドにキャップをして吸引ポンプによって負圧をかけることによってノズルからインクを吸引する処理である。
【0053】
ステップS604において、印刷データが送信されていないか、またはヘッドクリーニング割込命令が付加されていない場合(ステップS604:No)は、クリーニング回数カウンタの分だけクリーニング処理がなされたかどうかを判断する(ステップS605)。
【0054】
そしてステップS605において、クリーニング回数カウンタの分だけクリーニング処理がなされていないと判断した場合(ステップS605:No)は、ステップS603に戻り、クリーニング実行処理を行い、再びクリーニング回数カウンタの値から「1」を減算する。一方、ステップS605において、クリーニング回数カウンタの分だけクリーニング処理がなされたと判断した場合(ステップS605:Yes)には、クリーニング終了処理を行う(ステップS606)。ここで、クリーニング終了処理とは、ヘッド位置をものと位置にもどすなどの処理を指す。
【0055】
図2(a)に示すように分割ヘッドクリーニング命令C3とC4との間に印刷データが送信されて、その印刷データにヘッドクーニング割込命令が付加されていると判断した場合には(ステップS604:Yes)、分割ヘッドクリーニング命令出力部25が以後に出力する分割ヘッドクリーニング命令C4からC8を、ヘッドクリーニング中止部26がキャンセルしてクリーニング終了処理を行う(ステップS606)。そして、タイマクリーニングカウンタに初期値をセットし(ステップS607)、タイマクリーニング時間のカウントを開始する(ステップS608)。
【0056】
この時点でプリンタの電源がOFFされず(ステップS609:No)、実行可能な印刷データがホストコンピュータ10から送信されていれば(ステップS610:Yes)、その印刷データに基づき印刷処理を実行する(ステップS611)。印刷処理が終了すると(ステップS612)、タイマクリーニング時間を算出し(ステップS613)、再びタイマクリーニング時間のカウントを開始する(ステップS614)。カウントした時間がタイマクリーニング時間と等しければ(ステップS615:Yes)、ステップS602へ戻り再びタイマクリーニングを実行する。一方、カウントした時間がタイマクリーニング時間に満たない場合には(ステップS615:No)、そのまま待機してホストコンピュータ10から印刷データがくれば印刷処理を実行する。
【0057】
上述したように、分割ヘッドクリーニング命令は、所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示するものであり、ヘッドクリーニング割込命令の検出以降の分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルしてから印刷データを実行するので、クリーニング実行中に印刷データを受け付けた場合でも印刷処理を優先して行うことができる。このためクリーニングが行われている最中に印刷命令がなされたときの印刷処理と、通常時の印刷処理とを同程度の処理時間で実行することができるとともに、ノズルクリーニングによるインク消費量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを搭載したメディア処理装置と、メディア処理装置の動作を制御するホストコンピュータとの間で行われる内部処理を示した機能ブロック図である。
【図2】本実施形態のインクジェットプリンタが行うタイマヘッドクリーニングのタイムチャートである。
【図3】本実施形態のホストコンピュータにおける表示装置に表示される印刷設定画面の概略図である。
【図4】本実施形態のホストコンピュータにおける表示装置に表示される印刷設定のプロパティを設定する場合に表示されるプロパティ画面の概略図である。
【図5】本実施形態のホストコンピュータが行う印刷データ生成処理を説明するフローチャートである。
【図6】本実施形態のホストコンピュータが行う印刷データ生成処理の変形例を説明するフローチャートである。
【図7】本実施形態のホストコンピュータの印刷データ生成部によって生成された印刷データの模式図である。
【図8】本実施形態のホストコンピュータから送信された印刷データに応じてインクジェットプリンタが実行する処理を説明するフローチャートである。
【図9】従来のファームウェア上で行われるタイマヘッドクリーニングの処理を説明するフローチャートである。
【図10】従来のファームウェア上で行われるタイマヘッドクリーニングのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1:メディア処理装置、4:メディアドライブ、5:インクジェットプリンタ、6:メディア搬送機構、7:ハブ、10:ホストコンピュータ、11:アプリケーション、12:デバイスドライバ、13:送受信部、14:印刷データ生成部、15:コマンド生成部、22:プリントバッファ、23:印刷制御部、24:クリ−ニング制御部、25:分割ヘッドクリーニング命令出力部、26:ヘッドクリーニング中止部、32:搬送制御部、42:書き込み制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷装置であって、
前記所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を、前記予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に複数個間欠的に出力する分割ヘッドクリーニング命令出力手段と、
ヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、前記複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけて、当該割込み以降の前記分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルするヘッドクリーニング中止手段と、
前記分割ヘッドクリーニング命令のキャンセル後に、印刷命令を実行する印刷命令実行手段と、を備えることを特徴とするインクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置の動作を制御するホストコンピュータであって、前記印刷命令の生成指示に応じて、前記ヘッドクリーニング割込命令を付加した印刷命令を生成する印刷命令生成手段を有することを特徴とするホストコンピュータ。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置の動作を制御するホストコンピュータであって、
前記印刷命令の生成指示に応じて、前記ヘッドクリーニング割込命令と前記印刷命令とを生成する印刷命令生成手段と、
前記ヘッドクリーニング割込命令を前記印刷命令に先立って前記インクジェット印刷装置へ送信する送信部と、を有することを特徴とするホストコンピュータ。
【請求項4】
予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷装置の印刷制御方法であって、
前記所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を、前記予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に複数個間欠的に出力するステップと、
ヘッドクリーニング割込命令を検出するステップと、
前記ヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、前記複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけて、当該割込み以降の前記分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルするステップと、
前記分割ヘッドクリーニング命令のキャンセル後に、前記印刷命令を実行するステップと、を含むことを特徴とするインクジェット印刷装置の制御方法。
【請求項5】
予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷装置の動作を制御するホストコンピュータの制御方法であって、
ヘッドクリーニング割込命令の設定指示に基づき前記ヘッドクリーニング割込命令を生成するステップと、
印刷命令の生成指示に応じて前記ヘッドクリーニング割込命令を付加した印刷命令を生成するステップと、
前記印刷命令を前記インクジェット印刷装置へ送信するステップと、を有することを特徴とするホストコンピュータの制御方法。
【請求項6】
予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷装置の動作を制御するホストコンピュータの制御方法であって、
ヘッドクリーニング割込命令の設定指示に基づき前記ヘッドクリーニング割込命令を生成するステップと、
印刷命令の生成指示に応じて、前記印刷命令を生成するステップと、
前記ヘッドクリーニング割込命令を前記印刷命令に先立って前記インクジェット印刷装置へ送信するステップと、を有することを特徴とするホストコンピュータの制御方法。
【請求項7】
ホストコンピュータと、前記ホストコンピュータと通信可能に接続されたインクジェット印刷装置と、を備え、予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に所定時間のヘッドクリーニングを実施するインクジェット印刷システムのヘッドクリーニング方法であって、
前記ホストコンピュータは、
ヘッドクリーニング割込命令の設定指示に基づき前記ヘッドクリーニング割込命令を生成し、
印刷命令の生成指示に応じて前記印刷命令を生成し、
前記ヘッドクリーニング割込命令と前記印刷命令とを前記インクジェット印刷装置へ送信し、
前記インクジェット印刷装置は、
前記ヘッドクリーニング割込命令を検出し、
前記所定時間を複数に分割した短い時間のヘッドクリーニングを指示する分割ヘッドクリーニング命令を前記予め設定された時間の経過若しくは予め設定された量の印刷の実行時毎に複数個間欠的に出力し、
前記ヘッドクリーニング割込命令の検出に応じて、前記複数個の分割ヘッドクリーニング命令間で割込みをかけて、当該割込み以降の前記分割ヘッドクリーニング命令をキャンセルすることを特徴とするインクジェット印刷システムのヘッドクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−246942(P2008−246942A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92901(P2007−92901)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】