説明

インクジェット法により印刷可能なプレス加工性のある化粧紙含浸体

化粧コーティング材用の化粧紙含浸体であって、前記化粧紙含浸体は、直接プレス加工してラミネートを形成することができ、含浸樹脂で含浸され、インク受容層を付与され、そして、残留水分率少なくとも3.5%と、乾燥後の0.4%を超える流出量とを有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、熱硬化性含浸樹脂で含浸され、そして、インクジェット法により印刷可能な化粧紙含浸体(Dekorpapier-Impraegnat)に関するものであって、前記化粧紙含浸体を、印刷後に、木材とともに直接にプレス加工してラミネートを形成することができる。
【0002】
化粧紙は、家具製造及び内装における建築材料として使用される化粧紙ラミネート(dekorative Laminate)を製造するために必要とされる。前記化粧紙ラミネートは、主に、いわゆる高圧ラミネート板紙(HPL)及び低圧ラミネート板紙(LPL)である。高圧ラミネートの製造では、化粧紙が、印刷されていない又は印刷された状態で樹脂により含浸され、そして、フェノール樹脂で含浸されたクラフト紙シートの1つ以上の層(コアペーパー)とともに、ラミネートプレス中に、約110〜170℃の温度で、約5.5〜11MPaの圧力で、プレス加工される。次に、このように製造されるラミネート(HPL)は、支持材料(例えば、HDF板紙又はチップボール)に、糊付けされる(verleimt)か又は接着される(verklebt)。低圧ラミネートは、印刷されていない又は印刷された化粧紙(樹脂で含浸される)を、160〜200℃の温度及び1.25〜3.5MPaの圧力で、支持板紙上へ直接プレス加工(verpressen)することにより製造される。
【0003】
材料表面の仕上げ(Veredelung)は、外観的性質(適当な着色による)及び/又は物理的性質(適当な機能性及び構造で板紙表面をコーティングすることによる)によることができる。化粧紙は、プリントされた(aufgedruckt)パターンとともに処理するか、又は、それなしで処理することができる。この目的のために、印刷された又は印刷されていない化粧紙を、通常、一段階で又は多段階で合成樹脂により含浸して、次に、乾燥させ(ここで、樹脂はまだ反応性のままである)、そして、シートへ又は巻き取られた商品として、支持材料とともに不可逆的に熱プレスする。プレスの間で、樹脂が硬化する。この硬化によって、板紙に対する接着がつくられるだけでなく、紙を化学的にそして物理的に完全密封する。
【0004】
印刷パターンは、通常、グラビア印刷によって付与される。特に、市場で常用される印刷パターンの製造の間で、この印刷技術は、高い機械速度で大量の紙を印刷するという利点を有している。
【0005】
しかしながら、グラビア印刷は、少ない量の印刷に対して経済的ではなく、そして、複雑なデザインの場合の印刷品質に関して不適当であると評価される。フレキシビリティ及び品質についての要件を満たす印刷技術の中で、インクジェット印刷(インクジェット)は、重要性が増してきている。
【0006】
インクジェットにより印刷可能な化粧紙を製造するためには、インクを受容し染料を固定する1つ又は複数の機能層で、これらの化粧紙をコーティングする。インクジェット法により印刷することのできるこのような化粧紙は、DE19916546A1に開示されている。
【0007】
インクジェット印刷性のある化粧紙を、印刷後に、熱硬化性樹脂で含浸して、次に、熱プレスすることができる。しばしば、紙は、シート中に数リニアメーター長(例えば、3.5メーター)まで印刷されるので、含浸システム内での含浸が不可能になる。この場合には、シートを、かなり樹脂含浸された紙同士の間でプレスする。このプレス加工の間で、樹脂が化粧紙中に浸透して、硬化する。結果として、高品質ラミネートが得られる。しかしながら、この方法は、含浸システムと比較すると、化粧紙が均一に含浸されることを保証するものではない。その結果、この方法において紙の完全な密閉は達成されない。
【0008】
樹脂含浸された紙同士の間で化粧紙をプレス加工する場合には、印刷された化粧紙だけをプレスするので有利である。化粧紙をロールとして印刷し、その後含浸する場合には、システム中の初期動作(Vorlaeufe)、印刷移行及び切断移行、並びに工程の調節によって、材料の損失が生じる。従って、高品質の材料が損なわれる。
【0009】
本発明の目的は、前述の不利点を有さない化粧紙を提供することである。
【0010】
前記目的は、含浸された原紙(化粧原紙)と、インク受容層とを含む化粧紙含浸体であって、前記原紙が、前記原紙の坪量の40〜250重量%の量で含浸樹脂を含み、そして、前記化粧紙含浸体が、乾燥後に、少なくとも3.5%の残留水分率と、圧力180バール及び温度143±2℃で測定される0.4%を超える流出量(Fluss)とを有する、前記化粧紙含浸体によって達成される。
【0011】
本発明の特定の実施態様において、含浸樹脂の量は、原紙の坪量の80〜125重量%である。
【0012】
乾燥後の、化粧紙の残留水分率は、5〜8.5%であることが好ましい。
【0013】
本発明による効果は、特に、化粧原紙を最初にコア含浸(kernimpraegnieren)して、予備乾燥して、その直後に1つ以上のインク受容層をコーティングして、そして、乾燥する場合に、達成される。この場合、コア含浸された原紙の予備乾燥後、及び、仕上げ加工した化粧紙含浸体の乾燥後で、含浸樹脂が硬化せず、従って、反応性(reactiv)のままであるということに注意されたい。
【0014】
本明細書中における用語『硬化していない』は、含浸樹脂が、最大65%(好ましくは、最大30%)の架橋度を有することを意味する。架橋度を決定する方法は、本明細書中で詳細に説明する。
【0015】
本発明による化粧紙含浸体を製造する方法は、以下の工程:
(a)坪量30〜200g/mを有する化粧原紙を製造し;
(b)化粧原紙を、原紙の坪量の40〜250重量%の量で、熱硬化性含浸樹脂によってコア含浸し;
(c)コア含浸された紙を予備乾燥し、ここで、紙が9〜20%の水分を有し、そして、樹脂が硬化せず、従って、まだ反応性のままであるように、乾燥温度を調節するものとする;
(d)予備乾燥したコア含浸紙に、少なくとも1つのインク受容層をコーティングし;そして、
(e)少なくとも1つのインク受容層を付与された、コア含浸化粧紙を、残留水分率3.5〜8.5%まで乾燥させ、
ここで、樹脂が最大30%の架橋度まで架橋され、そして、まだ反応性を有しているものとし、そして、乾燥した化粧紙含浸体が、180バール及び143±2℃の温度で測定される0.4%を超える流出量を有するものとする;
ことを特徴とする。
【0016】
コア含浸を、通常の含浸システム中にオフラインで実施するか、又は、通常の付与ユニットを用いて抄紙機内にインラインで実施することができる。
【0017】
本発明の更なる実施態様では、インク受容層をコア含浸された紙へ、予備乾燥無しで付与することができる。
【0018】
本発明の更なる実施態様では、インク受容層を、多重に含浸された樹脂含浸紙(従来の化粧紙含浸体)へ付与することができる。
【0019】
本発明の特定の実施態様では、化粧紙含浸体が、温度140℃及び圧力25バールでの2〜3分の反応性を有する。
【0020】
この方法で製造される化粧紙含浸体は、システム中で巻き取られるか、又は、複数のシートへ分割されることができる。化粧紙を、次に、種々のインクジェット法を使用して、高品質で印刷することができる。印刷後に、木質ベースの板紙上で、又は、ラミネートを形成するためにコーティングプレス中で、紙を熱プレスする。この目的のために、複合相としての樹脂含浸した紙(アンダーレイ)、又は、その他の任意の接着層がもはや不要である。しかしながら、樹脂含浸されたアンダーレイを、必要な場合には、追加的に使用することができる。樹脂含浸されたオーバーレイを、プレス加工前に、保護層として付与することができる。しかしながら、印刷した製品を、まず、ニスで密封することもできる。
【0021】
本発明により使用される化粧原紙は、任意の内面サイジングも、任意の表面サイジングも施されていないものである。これらは、実質的に、セルロース、顔料及び充填剤、並びに、通常の添加剤からなる。通常の添加剤は、湿潤強度剤、歩留まり向上剤、定着剤であることができる。化粧原紙は、充填剤含有量又は顔料含有量の比率が非常に高い点、及び、通常の紙で使用される内面サイズ剤又は表面サイズ剤を含まない点で、通常の紙とは異なる。
【0022】
針葉樹材セルロース、広葉樹材セルロース、又は、両タイプのセルロースの混合物を使用して、化粧原紙を製造することができる。広葉樹材セルロース100%を使用することが好ましい。しかしながら、5:95〜50:50(特に、10:90〜30:70)の比率で針葉樹材/広葉樹材セルロースの混合物を使用することもできる。原紙を長網抄紙機又はヤンキー抄紙機で製造することができる。この目的のために、紙料濃度(Stoffdichte)2〜5重量%を有するセルロース混合物を、ろ水度10〜45°SRまで叩解することができる。混合バット中で、充填剤及び/又は顔料、着色顔料及び/又は染料、並びに、湿潤強度剤(例えば、ポリアミド/ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂、カチオン性ポリアクリレート、変性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、又はカチオン化デンプン)を、化粧紙製造における通常の量で加えて、セルロース混合物と十分に混合させることができる。
【0023】
充填剤及び/又は顔料は、セルロースの重量に対して、55重量%以下、特に、10〜45重量%の量で添加することができる。適当な顔料及び充填剤の例としては、二酸化チタン、タルク、硫化亜鉛、カオリン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、コランダム、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウム、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0024】
混合バット中で製造される高濃度の紙料を、紙料濃度約1%まで希釈することができる。必要な場合には、追加の助剤(例えば、歩留まり向上剤、消泡剤、染料及びその他の前記助剤、あるいはそれらの混合物)を添加することができる。この低濃度の紙料を、抄紙機のヘッドボックスを介してワイヤーセクション上へ導入する。繊維ウェブ(Faservlies)を形成し、そして、脱水後に原紙を得て、次に、それを乾燥させる。製造された紙の坪量は、30〜200g/mであることができる。
【0025】
用途及び品質要件によって、本発明で使用される化粧原紙は、以下の性質:
− 平滑である、すなわち、80sを超えるベック平滑度を有する;
− 80s未満のベック平滑度を有していて平滑化されていない;
− ヤンキーシリンダー又はカレンダリングによって平滑化される;
− 合成樹脂で予備含浸されるか又は予備含浸されていない;
− 非常に透気性が高い(ガーレー値20s/hml未満)であるか、又は、不透気性(ガーレー値20s/hml超)であるか、あるいは、予備含浸された紙の場合には200s/hmlを超えるガーレー値を有していて極めて不透気性である;
であることができる。
【0026】
本発明による化粧紙を着色することができる。無機着色顔料(例えば、金属酸化物、金属水酸化物、酸化金属水和物(Metalloxidhydrate)、金属硫化物、金属硫酸塩、金属クロム酸塩、金属モリブデン酸塩又はそれらの混合物)、並びに、有機着色顔料及び/又は染料(例えば、カルボニル着色剤(例えば、キノン、キナクリドン)、シアニン着色剤、アゾ着色剤、アゾメチン及びメチン、フタロシアニン、あるいは、ジオキサジン)を着色に使用することができる。無機着色顔料及び有機着色顔料又は染料の混合物が、特に好ましい。着色顔料/顔料混合物又は染料/染料混合物の量は、材料のタイプによって、セルロースの質量に対して、0.0001〜5重量%であることができる。
【0027】
インク受容層には、全ての公知の受容層を使用することができる。それらは、主に、水溶性ポリマー又は水分散性ポリマーを含む親水性コーティングである。
【0028】
インク受容層は、充填剤、顔料、染料定着剤(例えば、第4級ポリアンモニウム塩)、及び、前記層に通常使用されるその他の助剤を更に含むことができる。好ましい第4級ポリアンモニウム塩は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドである。
【0029】
本発明の好ましい実施態様では、インク受容層が、顔料とバインダーとを10:90〜90:10の量比で含む。インク受容層中の顔料の量は、前記層の乾燥重量に対して、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは、10〜60重量%である。
【0030】
顔料は、インクジェット記録材料で通常使用される任意の顔料であって、特に、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、及びシリカ(例えば、沈降シリカ又は発熱性シリカ)であることができる。
【0031】
バインダーは、水溶性及び/又は水分散性ポリマーであって、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、エチレン/ビニルアセテート−コポリマー、スチレン/アクリル酸エステルコポリマー、又はこれらの混合物であることができる。鹸化度88〜99%を有するポリビニルアルコールを、ポリビニルアルコールとして使用することができる。
【0032】
本発明の特定の実施態様では、インク受容層を着色することができる。着色剤は、原紙を着色するのに使用されるものと同じ着色顔料及び/又は染料が使用される。インク受容層中の着色顔料及び/又は染料の量(濃度)は、乾燥したインク受容層に対して、セルロース(絶対乾燥)に基づく原紙中の着色顔料及び/又は染料の量の、好ましくは約45〜75%、特に、45〜65%である。
【0033】
インク受容層の付与重量は、2〜25g/m、より好ましくは3〜20g/m、最も好ましくは4〜15g/m、であることができる。インク受容層は、通常の付与方法により付与するものであって、例えば、ローラー付与法、スロットダイコーティング法、グラビアコーティング法又はニップコーティング法、カーテンコーティング法、エアーナイフコーティング法、あるいは、計測バーを使用するコーティング法により付与することができる。
【0034】
適当な含浸樹脂は、この技術分野で通常使用される含浸樹脂であって、例えば、特に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリレート、アクリル酸エステル/スチレンコポリマー、及びそれらの混合物であることができる。特に好ましいのは、4.5分を超える濁り時間(Truebungszeit)を有するいわゆる「遅延性(langsam)」含浸樹脂である。濁り時間とは、樹脂が100℃の温度で最初の濁り(重合反応の開始を示唆する)を示す時間である。
【0035】
樹脂は、化粧原紙の坪量の、40〜250重量%、好ましくは80〜125重量%である。
【実施例】
【0036】
実施例1
ユーカリセルロース80重量%とマツ硫酸塩セルロース20重量%とのセルロース混合物を、紙料濃度5%でろ水度33°SRまでパルプ化することによってセルロース懸濁液を調製した。次に、この懸濁液に、湿潤強度剤としてエピクロルヒドリン樹脂1.8重量%を添加した。硫酸アルミニウムによって、このセルロース懸濁液をpH6.5〜7に調節した。その後、二酸化チタン40重量%と、タルク5重量%と、歩留まり向上剤0.11重量%と、消泡剤0.03重量%との混合物を、前記セルロース懸濁液へ加えて、坪量81g/m及び灰分約32重量%を有する化粧原紙を製造した。重量%の量は、セルロースに基づくものである。
次の工程では、インク受容層用のコーティング混合物が調製された。前記コーティング混合物は以下の組成を有する:
水 80重量%
ベーマイト 10重量%
ポリビニルアルコール 5重量%
ポリビニルアセテート 4重量%
第4級ポリアンモニウム塩 1重量%
製造した化粧原紙を、通常の化粧紙含浸システムの第1段階で、「遅延性」樹脂で作用させ、そして、浸透段階後に浸漬し、次に、ごく控えめに圧搾して、紙表面上に小さい樹脂膜が残るようにした。固形分51%及び濁り時間4.5分を有する純メラミンホルムアルデヒド樹脂を樹脂として使用した。
コア含浸された紙を、水分12%まで乾燥させた。含浸後の紙の坪量は、139g/mであった。
予備乾燥されたコア含浸紙を、次に、付与重量6g/mで前述のインク受容層によりコーティングし、最終水分6.3%まで乾燥させた。
乾燥した化粧紙含浸体は、坪量140g/m及び厚さ133μmを有していた。
乾燥した化粧紙含浸体中の含浸樹脂の反応性は、2.5分であった。架橋度は、29%であった。
本発明による化粧紙含浸体の流出量は1.2%であった。
実施例1により製造された化粧紙を、インクジェットプリンター(顔料インクを伴うHP2500)で印刷し、そして、DIN A4シートへ分割した。これらのシートをチップボール上へ置き、オーバーレイフィルム(坪量35g/mを有する、116g/mまで樹脂含浸された紙)で覆い、そして、熱プレスした。プレス加工を、温度140℃及び圧力25バールで実施した。
【0037】
実施例2
ユーカリセルロース100重量%を、紙料濃度5%でろ水度33°SRまでパルプ化することにより、セルロース懸濁液を調製した。この懸濁液に、湿潤強度剤としてエピクロルヒドリン樹脂1.8重量%を添加した。硫酸アルミニウムによって、このセルロース懸濁液をpH6.5〜7に調節した。その後、二酸化チタン36重量%と、タルク5重量%と、歩留まり向上剤0.11重量%と、消泡剤0.03重量%との混合物を、前記セルロース懸濁液へ加えて、坪量約80g/m及び灰分約30重量%を有する化粧原紙を製造した。重量%の量は、セルロースに基づくものである。
製造した化粧原紙を、通常の化粧紙含浸システムの第1段階で、「遅延性」樹脂で作用させ、そして、浸透段階後に浸漬し、次に、ごく控えめに圧搾した(実施例1のように)。固形分51%及び濁り時間5.5分を有する純メラミンホルムアルデヒド樹脂を樹脂として使用した。コア含浸された紙を、水分13%まで乾燥させた。含浸後の紙の坪量は、162g/mであった。
予備乾燥されたコア含浸紙を、次に、付与重量7g/mで前述のインク受容層によりコーティングし、最終水分6.5%まで乾燥させた。
乾燥した化粧紙含浸体は、坪量160g/m及び厚さ149μmを有していた。乾燥した化粧紙含浸体中の含浸樹脂の反応性は、3.5分であった。架橋度は、26%であった。本発明による化粧紙含浸体の流出量は1.5%であった。
実施例2により製造された化粧紙を、インクジェットプリンター(顔料インクを伴うHP2500)で印刷し、そして、DIN A4シートへ分割した。これらのシートをチップボール上へ置き、実施例1のオーバーレイフィルムで覆い、そして、熱プレスした。プレス加工を、温度140℃及び圧力25バールで実施した。
【0038】
本発明の化粧紙を使用して製造されたラミネート板紙は、高品質のメラミンコーティングの特性を示す。これらは、水蒸気試験において泡及び変退色の生じない閉鎖した表面(geschlossene Oberflaeche)により区別される。この表面は、ラミネート板紙用の基準EN438による化学作用に対しても耐性を示す。
【0039】
本発明による方法には、以下の利点が更に関連する:
−数リニアメーターの短いウェブ長さであっても、十分完全に含浸することができる。通常、産業用合成樹脂含浸では、回収(Einziehen)及び設定の監視のための初期動作として、少なくとも完全な含浸システム長さ(合計で、50〜100メーターを意味する)を使用する。
−本発明による化粧紙は、ペーパーウェブのコア含浸後でのみ印刷するため、費用が高く精密な印刷が含浸方法によって悪影響を受けない。
−水性印刷インクを使用して印刷する場合に、本発明の紙製品は、膨潤による波状のたるみをほとんど生じない。なぜなら、樹脂によって紙構造が安定化するからである。
−剛性の理由から、従来のプレス加工の間で、含浸されていない原紙を2枚の樹脂含浸紙の間へ配置することと比較すると、含浸された紙をプレスへ配置することはより簡単である。
−その後の含浸と比較する場合、処理段階が除かれるのでかなり費用優位である。
−ラミネート製造業者は、含浸装置なしで、化粧紙のそれぞれの所望量を個別に印刷することができる。このために、インクジェット印刷装置をラミネートプレスの近くに設置することができる。印刷と含浸とを分離させることによって、製品の全体的な物流管理を改善し、材料の使用量が最適化される。
【0040】
《使用した試験方法》
含浸体の流出量試験
含浸樹脂を含浸された化粧紙(含浸体)の樹脂の流出態様を決定することにより流出量を試験する。このために、直径4cmを有する5つのディスクを含浸体サンプルから打ち抜く。これらを、アルミホイルの間で5分間プレスする(Wickert und Soehne精密プレス,120x120cm,予備圧力:46バール/12秒,メイン圧力:180バール/143±2℃で12秒)。プレス加工後に、ディスクラミネートを冷却して、重さを量る(初期重量)。ディスクから流れ出た樹脂(ブランク側に配置される樹脂の量)を除去した後に、ラミネートをもう一度重さを量る(最終重量)。元々のディスクラミネートの重量に対する、初期重量と最終重量との間の差により含浸体の流出量を計算する。
流出量 = 初期重量(g) − 最終重量(g) × 100
初期重量(g)
【0041】
樹脂の反応性
反応性は、特定の温度(例えば、140℃)で、染料ローダミンBを伴う混入物質を水で簡単に除去できる程度に表面を硬化させるのに必要とされる最小プレス時間である。
【0042】
樹脂の架橋度
架橋度は、室温でDMF(ジメチルホルムアミド)中に35分間浸漬させた後でも、サンプルから溶解されない含浸樹脂の量である。
【0043】
含浸体の残留水分率
この目的のために、円形サンプル(F40mm)を打ち抜いて、23℃で50%室内湿度に初めに調節して、そして、検量する。検量されたサンプルを乾燥キャビネ中に、160℃で5分間乾燥させる。残留水分率を以下のように計算する。
残留水分率(%) = 初期重量(g) − 最終重量(g)
初期重量(g)
【0044】
樹脂の反応性
試験を用いて、含浸された化粧紙の時間的な硬化態様を決定する。
このために、直径4cmを有する複数の円形サンプルを打ち抜く。これらのサンプルを次に、アルミニウム膜(厚さ:0.030mm)の光沢面の間に置いて、包装物を加熱されたプレス(Wickert und Soehne,プレス領域120mmx120mm,予備圧力設定46バールで12秒間,メイン圧力設定180バールで12秒間,温度設定140℃)の真ん中へ設置する。プレスを開始して、プレス加工プログラムを作動させる。硬化時間の初期値は、5秒(初め)〜120秒(終わり)ずつの20〜600秒である。
プレス加工プログラムが満了した後で、2枚のシートの間で試験紙片を直ぐに冷却し、効果反応を停止させる。
5〜65℃まで冷却した後、試験紙片を、95℃の温度の0.025%ローダミンB水溶液中に3分間浸漬して、次に、冷水中に15秒浸漬する。軟質ペーパータオルで乾燥させた後に、サンプルを、プレス時間を増やした後で透明な膜上へ糊付けする。参照サンプルに対して視覚的に評価を実施する。試験片が最小限だけ着色されて、より長いプレス時間によってもこれ以上の変化が達成されない場合に、反応性の値が得られる。
【0045】
架橋度
試験を使用して、含浸体の硬化度を決定する。
このために、100cmの面積を有する試験片を打ち抜きして、重さを量る(「抽出前」のサンプル重量に相当する)。試験片を、次に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(100ml中に100cmのディスク)中に浸漬する。室温で30〜35分の露光時間の後で、試験片を取り除き、吸い取り紙上へ置き、そして、次に、乾燥キャビネ中に120℃で90分乾燥させる。
冷却後に、試験片の重さを量る(「抽出後」のサンプル重量に相当する)。
評価:
溶解量(g)=初期重量(g)−最終重量(g)
溶解率(%)=溶解量(g)/初期重量(g)×100
架橋度(%)=最終重量(g)/初期重量(g)×100
初期重量(g)=「抽出前」サンプル重量(g)−原紙の坪量(g/m)×サンプル面積(cm)/10.000
最終重量(g)=「抽出後」サンプル重量(g)−原紙の坪量(g/m)×サンプル面積(cm)/10.000

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸された原紙とインク受容層とを含む、化粧コーティング材用の化粧紙含浸体であって、
前記原紙が、前記原紙の坪量の40〜250重量%の量で含浸樹脂を含有すること、並びに、
乾燥後で、前記化粧紙含浸体が、少なくとも3.5重量%の残留水分率と、圧力180バール及び温度143±2℃で測定される0.4%を超える流出量とを有することを特徴とする、前記化粧紙含浸体。
【請求項2】
含浸樹脂を、原紙の坪量の80〜125%の量で含有することを特徴とする、請求項1に記載の化粧紙含浸体。
【請求項3】
含浸樹脂が、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、アクリレート樹脂、又はそれらの樹脂の混合物であることを特徴とする、請求項1及び2に記載の化粧紙含浸体。
【請求項4】
化粧紙含浸体の乾燥後であっても、含浸樹脂が反応性であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧紙含浸体。
【請求項5】
インク受容層が、顔料とバインダーとを10:90〜90:10の量比で含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化粧紙含浸体。
【請求項6】
インク受容層のバインダーが、水溶性及び/又は水分散性ポリマーであることを特徴とする、請求項5に記載の化粧紙含浸体。
【請求項7】
顔料が、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト及び/又はシリカであることができることを特徴とする、請求項5に記載の化粧紙含浸体。
【請求項8】
インク受容層の付与重量が、2〜25g/mであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化粧紙含浸体。
【請求項9】
プレス加工性のある化粧紙含浸体を製造する方法であって:
(a)坪量30〜200g/mで製造される化粧原紙を、前記原紙の坪量の40〜250重量%の量の含浸樹脂で、コア含浸すること;
(b)コア含浸された紙を予備乾燥し、ここで、紙が水分9〜20%を有し、そして、樹脂が部分的に濃縮され、完全に重合せず、従って、まだ反応性を有するように、乾燥温度を調節すること;
(c)予備乾燥された紙を少なくとも1つのインク受容層でコーティングすること;そして、
(d)インク受容層少なくとも1つを付与されるコア含浸された化粧紙(化粧紙含浸体)を残留水分率3.5〜8.5%まで乾燥すること、
ここで、樹脂が最大30%の架橋度まで架橋され、そして、まだ反応性を有しているものとし、そして、乾燥した化粧紙含浸体が、180バール及び143±2℃の温度で測定される0.4%を超える流出量を有するものとする;
を特徴とする、前記方法。
【請求項10】
含浸樹脂が、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、アクリレート樹脂、又はそれら樹脂の混合物であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
インク受容層の付与重量が、2〜25g/mであることを特徴とする、請求項9及び10に記載の方法。
【請求項12】
全ての種類のレイヤードプレスされた材料及びラミネートを製造するための、請求項1〜8のいずれか一項による化粧紙含浸体の使用。

【公表番号】特表2011−508682(P2011−508682A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538705(P2010−538705)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067746
【国際公開番号】WO2009/077561
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(500121849)テクノチェル デコール ゲー エム ベー ハー ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】TECHNOCELL DEKOR GMBH & CO. KG
【Fターム(参考)】