説明

インクジェット用インク、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイス

【課題】本発明は、各種溶媒に対する耐薬品性に優れたカラーフィルタを製造することができるインクジェット用インク、このようなインクジェット用インクにより得られるカラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、ならびに画像表示デバイスを提供することを目的とする。
【解決手段】染料、溶媒、重合性モノマー、および下記一般式(1)で表される化合物を含有するインクジェット用インク。


(一般式(1)中、Mは重合性基を表す。Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Aは、ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を表す。nは、1〜100の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、特に大画面液晶テレビの発達に伴い、液晶ディスプレイ(LCD)、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。一方で、カラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっている。特にコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。このようなカラーフィルタは、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備える。このカラーフィルタを備える液晶ディスプレイにおいては、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われる。
【0003】
近年、このカラーフィルタの製造方法として、インクジェット法で着色インクを吹き付けして着色層(色画素)を形成する方法が提案されている(特許文献1)。インクジェット法は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。インクジェット法は、インクジェットヘッドを順次移動させることにより、大面積のカラーフィルタを高生産性で製造でき、低騒音で操作性がよいという利点をもつ。
【0004】
また、インクジェット用のインクとしては、主に、顔料を含むインクが提案されていた。しかし、顔料を使用した場合は、顔料粒子による散乱のためコントラストの低下や、ヘイズの増加といった問題が生じていた。そこで、顔料の代わりに染料を用いる技術が提案されている(特許文献2)。染料を使用したインクの場合、カラーフィルタのコントラストやヘイズなど光学特性の向上が期待される。また、概して吐出安定性も高く、インク粘度の増加などに伴うノズル目詰まりがあった場合でも、ワイピングやパージにより容易にインク吐出状態が回復することが期待される。
【0005】
このような染料を含むインクジェット用インクを用いたカラーフィルタの製造方法としては、まず基板であるガラスの洗浄を行い、次に基板上に各色の着色層の隔壁となるブラックマトリックスを形成する。次に、基板上に形成されたブラックマトリックスの隔壁により区画された凹部に液滴として各色のインクを付与して着色層(色画素)を形成する。その後、ITOなどの透明電極、配向膜などを各種構成部材を順次積層させる。このようにカラーフィルタの製造方法は非常に多工程にわたっている。そのため、基板上への各種材料の塗布や洗浄などの工程で、基板上に形成された色画素は、各工程で使用される酸やアルカリなどの各種溶媒と接触する。その際、色画素から染料などが溶出し、色画素の色相変化が起こるなどの問題があった。このような課題を解決する一つの方法として、色画素形成後、オーバーコート層を作製する方法が提案されているが、必ずしも実用上満足いくものではなかった。また、オーバーコート層を作製する場合、製造工程の増加に伴い、製造手順が煩雑になり生産性が低下するともに、コスト面の点でも問題を抱えていた。
【0006】
【特許文献1】特開平8−146215号公報
【特許文献2】特開平6−75375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な色相をしめす色画素を形成することができ、特に、各種溶媒に対する耐薬品性に優れたカラーフィルタを製造することができるインクジェット用インク、このようなインクジェット用インクにより得られる光学特性、耐光性や耐熱性などの特性に優れたカラーフィルタ、およびこのような特性を持つカラーフィルタを安定して、コストアップを招くことなく製造することができるカラーフィルタの製造方法、ならびに高輝度バックライトに対応できる、高コントラスト、高彩度の液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、各色インクジェット用インク中にケイ素原子またはフッ素原子を有し、かつ重合性基を有する化合物を含有させることにより、カラーフィルタの製造工程を増加させることなく、各色のカラーフィルタの各種溶媒に対する耐性(耐薬品性)を付与できることを見出した。
【0009】
つまり、本発明者らは、上記課題が下記の<1>〜<22>の構成により解決されることを見出した。
【0010】
<1> 染料、溶媒、重合性モノマー、および下記一般式(1)で表される化合物を含有するインクジェット用インク。
【化1】


(一般式(1)中、Mは重合性基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。Aは、ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を表す。nは、1〜100の整数を表す。)
<2> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物である<1>に記載のインクジェット用インク。
【化2】


(一般式(2)中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。Rは、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するアリール基、または一般式(X)で表される基を表す。)
【化3】


(一般式(X)中、Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rgは、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Z)で表される基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【化4】


(一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。lは、0〜49の整数を表す。)
【化5】


(一般式(Z)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Mは、重合性基を表す。)
<3> 前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物、または一般式(4)で表される化合物である<2>に記載のインクジェット用インク。
【化6】


(一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。Rc、RdおよびRm〜Roは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【化7】


(一般式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【化8】


(一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。lは、0〜49の整数を表す。)
<4> 前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(5)で表される化合物である<2>に記載のインクジェット用インク。
【化9】


(一般式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Lは、−C2p−、−C(C2p+1)H−、−CHC(C2p+1)H−、−CHCHO−、−CHCHCHO−、または単なる結合手を表す。Rは、−C2q+1、−(CFH、−(CFOC2q2s+1、−(CFpOC2r2sH、−N(C2p+1)COC2q+1、または−N(C2p+1)SO2q+1を表す。pは、1〜10の整数を表す。qは、1〜16の整数を表す。rは、0〜10の整数を表す。sは、0〜16の整数を表す。)
<5> 前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(6)で表される繰り返し単位および一般式(7)で表される繰り返し単位を有する高分子である<1>に記載のインクジェット用インク。
【化10】


(一般式(6)中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。Rは、重合性基を表す。
一般式(7)中、R10は水素原子、フッ素原子またはアルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。R11は、フッ素原子、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するアリール基、または一般式(X)で表される基を表す。R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子を表す。)
【化11】


(一般式(X)中、Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rgは、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Z)で表される基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【化12】


(一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。lは、0〜49の整数を表す。)
【化13】


(一般式(Z)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Mは、重合性基を表す。)
<6> 前記一般式(1)中のMが、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基およびアリル基からなる群から選択されるいずれかである<1>に記載のインクジェット用インク。
<7> 界面活性剤をさらに含有する<1>〜<6>のいずれかに記載のインクジェット用インク。
<8> 吐出時における粘度が2〜30mPa・sである<1>〜<7>のいずれかに記載のインクジェット用インク。
<9> 25℃における表面張力が20〜40mN/mである<1>〜<8>のいずれかに記載のインクジェット用インク。
<10> 基板上に形成された隔壁により区画された凹部にインクジェット法により<1>〜<9>のいずれかに記載のインクジェット用インクの液滴を付与してカラーフィルタの色画素を形成する画素形成工程を有するカラーフィルタの製造方法。
<11> 前記画素形成工程は、前記インクジェット法により液滴として前記凹部に前記インクを付与する描画工程と、前記凹部に付与された前記インクを硬化させて前記色画素を形成する硬化工程とを有する<10>に記載のカラーフィルタの製造方法。
<12> 前記硬化工程は、前記インクに含まれる溶剤を除去してインク残部とした後に、前記インク残部に活性エネルギー線を照射する照射工程および/または前記インク残部を加熱する加熱工程とを備え、前記照射工程および/または前記加熱工程により前記インク残部を重合して前記色画素を形成する<11>に記載のカラーフィルタの製造方法。
<13> 前記描画工程は、インクジェットヘッドの吐出ノズルから前記インクジェット用インクの液滴を吐出して前記基板の前記凹部に付与するものであり、
さらに、前記描画工程の前に、前記インクジェットヘッドの吐出ノズルの吐出状態を検査する検査工程と、
前記吐出状態の検査結果が所定規定範囲外の場合に、前記インクジェットヘッドによる描画領域外で、前記所定規定範囲外に該当する吐出ノズルについてインク吐出動作を実施する前処理工程とを有し、
この前処理工程の後、前記検査工程に戻り、前記吐出状態を再度検査して、前記所定規定範囲内である場合に、前記描画工程により前記色画素の描画を開始する<11>または<12>に記載のカラーフィルタの製造方法。
<14> 前記描画工程は、インクジェットヘッドの吐出ノズルから前記インクジェット用インクの液滴を吐出して前記基板の前記凹部に付与するものであり、
さらに、前記描画工程の前に、前記インクジェットヘッドの吐出ノズルの吐出状態を検査する検査工程と、
前記検査工程における検査により、前記インクジェットヘッドに不吐出ノズルがある場合に、前記インクジェットヘッドの複数の吐出ノズルの内の前記不吐出ノズルを含む一部あるいは全部に対して、ヘッド加圧による前記吐出ノズルのインクパージ、前記吐出ノズルからのインク吸引、前記インクジェットヘッドのノズル面のワイピングのうち一部あるいは全部を実施する前処理工程と、
この前処理工程の後、前記検査工程に戻り、前記吐出状態を再度検査して、前記所定規定範囲内である場合に、前記描画工程により前記色画素の描画を開始する<11>または<12>に記載のカラーフィルタの製造方法。
<15> さらに、前記前処理工程における前記インク吐出動作により吐出されたインク、前記インクパージによりパージされたインクおよび前記インク吸引により吸引されたインクを回収する回収工程と、
回収された回収インクを保管する保管工程と、
保管されている回収インクの濃度を含むインク特性を評価する評価工程と、
評価された回収インクの評価結果に基づいて前記回収インクを前記色画素を形成するための前記インクジェット用インクとして再調液する再調液工程とを有する<13>または<14>に記載のカラーフィルタの製造方法。
<16> さらに、予め、高濃度インクを高濃度インク保存タンクに、希釈用インクを希釈用インク保存タンクに保存しておく第1保存工程と、
前記高濃度インク保存タンクから前記高濃度インクを供給し、前記希釈用インク保存タンクから前記希釈用インクを供給する供給工程と、
供給された前記高濃度インクと供給された前記希釈用インクとを調液して前記色画素を形成するための前記インクジェット用インクとして調液インクを生成する調液工程と、
前記インクジェット用インクとして調液された前記調液インクを調液インク保存タンクに保存する第2保存工程とを有し、
前記描画工程において、前記調液インク保存タンクに保存された前記調液インクを前記インクジェット用インクとして供給する<10>〜<15>のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
<17> 前記希釈用インクが、前記溶媒である<10>〜<16>のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
<18> <10>〜<17>のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタ。
<19> <1>〜<9>のいずれかに記載のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により製造されるカラーフィルタ。
<20> <1>〜<9>のいずれかに記載のインクジェット用インクを用いて形成された色画素を備えるカラーフィルタ。
<21> <18>〜<20>のいずれかに記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
<22> <18>〜<20>のいずれかに記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な色相をしめす色画素を形成することができ、特に、各種溶媒に対する耐薬品性に優れたカラーフィルタを製造することができるインクジェット用インク、このようなインクジェット用インクにより得られる光学特性、耐光性や耐熱性などの特性に優れたカラーフィルタ、およびこのような特性を持つカラーフィルタを安定して、コストアップを招くことなく製造することができるカラーフィルタの製造方法、ならびに高輝度バックライトに対応できる、高コントラスト、高彩度の液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るインクジェット用インク、このインクジェットインクを用いたカラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスについて詳細に説明する。
【0013】
<インクジェット用インクおよびその製造方法>
まず、本発明のインクジェット用インク、その構成成分およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明のインクジェット用インクは、染料、溶媒、重合性モノマー、および下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0014】
【化14】


(一般式(1)中、Mは重合性基を表す。Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Aは、ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を表す。nは、1〜100の整数を表す。)。
【0015】
<一般式(1)で表される化合物>
本発明に係るインクジェット用インクは、一般式(1)で表される化合物を含む。以下に一般式(1)で表される化合物について説明する。該化合物は、ケイ素原子および/またはフッ素原子を含み、かつ少なくとも1つの重合性基を有する化合物である。
【0016】
【化15】


(一般式(1)中、Mは重合性基を表す。Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Aは、ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を表す。nは、1〜100の整数を表す。)
【0017】
一般式(1)中、Mは重合性基を表す。重合性基としては、熱または活性エネルギー線の照射により重合が進行し、高分子量体を形成する官能基であれば特に制限は無く、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、アニオン重合性基などが挙げられる。なかでも、重合反応性および材料の入手し易さなどの観点から、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、さらに好ましくは高極性環状エーテル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アリル基であり、特にエポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が好ましい。
【0018】
一般式(1)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。連結基としては、特に限定はされず、一般式(1)で表される化合物の物質特性の観点、および合成上の観点より適宜最適な基が選択される。具体的に、アルキレン基(炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。)、−O−、−S−、アリーレン基(フェニレン基など)、−CO−、−NH−、−SO−、−COO−、−CONH−、−C≡C−、−N=N−、−CONR−(Rはアルキル基を表す)、またはこれらを組み合わせた基(例えば、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基などが挙げられる。)が挙げられる。なかでも、−O−、アルキレン基、−CONH−、−COO−、アリーレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基、またはこれらを組み合わせた基が好ましく挙げられる。Lが単なる結合手の場合、一般式(1)のMがAと直接結合することをさす。
【0019】
一般式(1)中、Aは、ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を表す。該官能基は、ケイ素原子またはフッ素原子を含んでいれば、その構造は特に制限されず、一般式(1)で表される化合物の物質特性の観点、および合成上の観点より適宜最適な基が選択される。該官能基は、ケイ素原子とフッ素原子の両方を含んでいてもよい。
【0020】
一般式(1)中、nは1〜100の整数を表す。好ましくは、5〜50であり、より好ましくは7〜30である。上記範囲内であれば、より優れた耐溶剤性を示す。
【0021】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、シロキサン骨格を有するとともに、分子末端または側鎖に、少なくとも1つのアクリロリル基、メタクリロイル基またはビニル基などの重合性基を有するシリコーン化合物(主にポリジアルキレンシロキサン)などが挙げられる。該シリコーン化合物としては、具体的には特公昭51−42961号、同54−6512号、同57−57096号、同58−53656公報などに開示されているような化合物が挙げられる。商品名では、FM0711、FM0721、FM0725、PS583(以上、チッソ(株))、KNS−50002、KNS−5100、KNS−5200、KNS−5300、KP−600、X−62−7052、X−62−7100、X−62−7112、X−62−7140、X−62−7144、X−62−7153、X−62−7157、X−62−7158、X−62−7166、X−62−7168、X−62−7177、X−62−7180、X−62ー7181、X−62−7192、X−62−7200、X−62−7203、X−62−7205、X−62−7931、KM−875、X−62−7296A/B、X−62−7305A/B、X−62−7028A/B、X−62−5039A/B、X−62−5040A/B(以上、信越化学工業(株))、RC149、RC300、RC450、RC802、RC710、RC715、RC720、RC730(以上、ゴールドシュミット社)、EBECRYL350、EBECRYL1360(以上、ダイセルUCB(株))などが挙げられる。
【0022】
また、一般式(1)で表される化合物の他の具体例としては、少なくとも1つのアクリロリル基、メタクリロイル基またはビニル基を有するシリコーン化合物と(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、脂肪酸ビニルエステルからなる群から選ばれる単量体の1種又は2種以上の混合物との共重合体であるシリコーン含有共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸および脂肪酸ビニルエステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル〔(メタ)アクリル酸メチルとはメタアクリル酸メチル又はアクリル酸メチルのことをいう。以下同様。〕(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの低級アルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの高級(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸などが挙げられる。また、インクジェット用インク中の他の成分との混和性を損なわない程度に、他のビニル型単量体を共重合することができる。
これら共重合体の具体例としては、モディパーFS700、FS710、FS720、FS730、FS770(日本油脂(株)製)などが挙げられる。
【0023】
また、一般式(1)で表される化合物の他の具体例としては、分子末端、又は側鎖に少なくとも一つのアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する含フッ素化合物が挙げられる。含フッ素化合物としては、特開平5−8345号公報、段落[0009]〜段落[0010]、特開2005−179613号公報、段落[0058]に記載された化合物を使用することができる。
さらに、他の具体例として、分子末端、又は側鎖にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する含フッ素化合物と上述した(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、脂肪酸ビニルエステルからなる群から選ばれる単量体の1種又は2種以上の混合物との共重合体であるフッ素含有共重合体なども挙げられる。なお、インクジェット用インク中の他の成分との混和性を損なわない程度に、他のビニル型単量体を共重合することができる。
【0024】
また、一般式(1)で表される化合物の合成方法としては、i)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0025】
一般式(1)で表される化合物の好適な実施態様として、以下の一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0026】
【化16】


(一般式(2)中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す。Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Rは、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するアリール基、または一般式(X)で表される基を表す。)
【0027】
【化17】


(一般式(X)中、Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rgは、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Z)で表される基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【0028】
【化18】


(一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。lは、0〜49の整数を表す。)
【0029】
【化19】


(一般式(Z)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Mは、重合性基を表す。)
【0030】
一般式(2)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2である。ここで、アルキル基は分岐していてもよく、またヘテロ原子で置換されていてもよく、さらに不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。なかでも、Rとしてより好ましくは、水素原子、メチル基である。
【0031】
一般式(2)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Lで表される連結基は、上述した一般式(1)中のLで表される連結基と同義である。なかでも、好ましい連結基としては、アルキレン基(炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。)、−O−、−S−、アリーレン基(フェニレン基など)、−CO−、−NH−、−SO−、−COO−、−CONH−、−C≡C−、−N=N−、−CONR−(Rはアルキル基を表す)、またはこれらを組み合わせた基(アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基)が挙げられる。Lが単なる結合手の場合、一般式(2)のC(炭素原子)がRと直接結合することをさす。
【0032】
一般式(2)中、Rは、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するアリール基、または一般式(X)で表される基を表す。フッ素原子を有するアルキル基とは、少なくともひとつのフッ素原子を有する直鎖、分岐又は環状のアルキル基であり、さらに他の置換基(例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン基)を有していてもよい。また、−O−などの連結基を含んでいてもよい。アルキル基としては、炭素数2〜20が好ましく、炭素数3〜10がより好ましい。また、フッ素原子を2個以上有することが好ましい。なかでも、パーフルオロアルキル基(炭素数2〜20が好ましく、炭素数3〜10がより好ましい)が好ましい。
【0033】
フッ素原子を有するアルキル基の具体例としては、CF3CH2基、CF3CF2CH2基、CF3CF2(CH26基、CF3CF2CF2CH2基、CF3CHFCF2CH2基、F(CF24CH2CH2基、F(CF24CH2CH2CH2基、F(CF24(CH26基、F(CF23OCF(CF3)CH2基、F(CF26CH2CH2基、F(CF26(CH23基、F(CF26(CH26基、F(CF28CH2CH2基、F(CF28(CH23基、F(CF28(CH26基、F(CF210CH2CH2基、C37OCF(CF3)CF2OCF(CF3)CH2基、(CF32CF(CH26基、(CF32CF(CF22CH2CH2基、(CF32CF(CF24CH2CH2基、(CF32CF(CF26CH2CH2基、CHF2CF2CH2基、H(CF24CH2基、H(CF26CH2基、H(CF28CH2基、(CF32CH基、CF3CHFCF2CH2基、CF3CF2(CH26OCH2CH2基、F(CF23OCF(CF3)CH2OCH2CH2基、H(CF24CH2OCH2CH2基、H(CF26CH2OCH2CH2基、H(CF28CH2OCH2CH2基、CF3CHFCF2CH2OCH2CH2基、C715CH2OCH2CH2基などが挙げられる。フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基に少なくとも1つのフッ素原子が置換したものがあげられ、さらに他の置換基を有していてもよい。アリール基としては、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、9,10−ジメトキシアントリル基等を好ましく挙げることができる。また、フッ素原子を2個以上有することが好ましい。
【0034】
一般式(X)中、Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3である。ここで、アルキル基は分岐していてもよく、またヘテロ原子で置換されていてもよく、さらに不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基である。アリール基としては、炭素数は6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい。アリール基の具体例として、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げら、なかでもフェニル基が好ましい。
【0035】
一般式(X)中、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。RcおよびRdで表されるアルキル基およびアリール基は、それぞれ上述したRa、Rb、ReおよびRfで表されるアルキル基およびアリール基と同義である。
【0036】
一般式(X)中、Rgは、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Z)で表される基を表す。Rgで表されるアルキル基およびアリール基は、それぞれ上述したRa、Rb、ReおよびRfで表されるアルキル基およびアリール基と同義である。
【0037】
一般式(X)中、mは、1〜50の整数を表す。なかでも、3〜30が好ましく、より好ましくは5〜20である。
【0038】
一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rh〜Rlで表されるアルキル基は、上述した一般式(X)中のRa、Rb、ReおよびRfで表されるアルキル基と同義である。また、Rh〜Rlで表されるアリール基は、上述した一般式(X)中のRa、Rb、ReおよびRfで表されるアリール基と同義である。
【0039】
一般式(Y)中、lは0〜49の整数を表す。なかでも、0〜30が好ましく、より好ましくは5〜20である。
【0040】
一般式(Z)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Lで表される連結基は、上述した一般式(1)中のLで表される連結基と同義である。なかでも、好ましい連結基としては、アルキレン基(炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましい。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。)、−O−、−S−、アリーレン基(フェニレン基など)、−CO−、−NH−、−SO−、−COO−、−CONH−、−C≡C−、−N=N−、−CONR−(Rはアルキル基を表す)、またはこれらを組み合わせた基(アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基)が挙げられる。Lが単なる結合手の場合、一般式(Z)のMが一般式(X)中のSi(ケイ素原子)と直接結合することをさす。
【0041】
一般式(Z)中、Mは重合性基を表す。Mで表される重合性基は、一般式(1)中のMで表される重合性基と同義である。なかでも、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましい。
【0042】
一般式(2)で表される化合物の好適な実施態様として、以下の一般式(3)で表される化合物、一般式(4)で表される化合物および一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化20】


(一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。Rc、RdおよびRm〜Roは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【0044】
【化21】


(一般式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【0045】
【化22】


(一般式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Lは、−C2p−、−C(C2p+1)H−、−CHC(C2p+1)H−、−CHCHO−、−CHCHCHO−、または単なる結合手を表す。Rは、−C2q+1、−(CFH、−(CFOC2q2s+1、−(CFpOC2r2sH、−N(C2p+1)COC2q+1、または−N(C2p+1)SO2q+1を表す。pは、1〜10の整数を表す。qは、1〜16の整数を表す。rは、0〜10の整数を表す。sは、0〜16の整数を表す。)
【0046】
一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。一般式(3)中のRaおよびRbは、上述した一般式(X)中のRa、Rbとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。一般式(3)中のRc、Rd、Rm、RnおよびRoは、上述した一般式(X)中のRcおよびRdとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。一般式(3)中のmは、上述した一般式(X)中のmと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0047】
一般式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。一般式(4)中のRa、Rb、ReおよびRfは、上述した一般式(X)中のRa、Rb、ReおよびRfとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。一般式(4)中のRcおよびRdは、上述した一般式(X)中のRcおよびRdとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同じである。一般式(4)中のmは、上述した一般式(X)中のmと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0048】
一般式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0049】
一般式(5)中、Lは、−C2p−、−C(C2p+1)H−、−CHC(C2p+1)H−、−CHCHO−、−CHCHCHO−または単なる結合手を表す。Lが単なる結合手の場合、一般式(5)のRがO(酸素)と直接結合することをさす。Lとして、好ましくは−C2p−、−CHCHO−、−CHCHCHO−である。
【0050】
一般式(5)中、Rは、−C2q+1、−(CFH、−(CFOC2q2s+1、−(CFpOC2r2sH、−N(C2p+1)COC2q+1、または−N(C2p+1)SO2q+1を表す。なかでも、好ましくは−C2q+1、−(CFHである。
【0051】
一般式(5)中、pは、1〜10の整数を表し、好ましくは2〜6である。qは、1〜16の整数を表し、好ましくは2〜12である。rは、0〜10の整数を表し、好ましくは1〜3である。sは、0〜16の整数を表し、好ましくは1〜3である。
【0052】
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CFCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、C15CON(C)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF10(CHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH(CH)OCOC(CH)=CH、CFCHOCHCHOCOCH=CH、C(CHCHO)CHOCOC=CH、(CFCFO(CHOCOCH=CH、CF(CFOCHCHOCOC(CH)=CH、CCON(C)CHOCOCH=CH、CF(CFCON(CH)CH(CH)CHOCOCH=CH、H(CFC(C)OCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CFCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CH10OCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CSON(C)C(C)HCHOCOCH=CHなどが挙げられる。
【0053】
がメチル基である化合物の商品名としては、例えば、ビスコート3MF、ビスコート4MF、ビスコート8MF、ビスコート17MF(以上,大阪有機化学工業(株))、EF−135M(三菱金属(株))、MAE−600、MAE−1014、MAE−800、Hoe T 3606(ヘキストジャパン(株))などがある。
【0054】
一般式(1)で表される化合物の好適な他の実施態様として、以下の一般式(6)で表される繰り返し単位、および一般式(7)で表される繰り返し単位を有する高分子が挙げられる。
【0055】
【化23】


(一般式(6)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Rは、重合性基を表す。
一般式(7)中、R10は水素原子、フッ素原子またはアルキル基を表す。Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。R11は、フッ素原子、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するアリール基、または一般式(X)で表される基を表す。R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子を表す。)
【0056】
【化24】


(一般式(X)中、Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rgは、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Z)で表される基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【0057】
【化25】


(一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。lは、0〜49の整数を表す。)
【0058】
【化26】


(一般式(Z)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Mは、重合性基を表す。)
【0059】
一般式(6)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3である。ここで、アルキル基は分岐していてもよく、またヘテロ原子で置換されていてもよく、さらに不飽和結合を有していてもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。なかでも、Rとしてより好ましくは、水素原子、メチル基である。
【0060】
一般式(6)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Lで表される連結基は、上述した一般式(1)中のLで表される連結基と同義である。なかでも、好ましい連結基としては、−O−、アルキレン基、−CONH−、−COO−、アリーレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。Lが単なる結合手の場合、一般式(6)のRがC(炭素)と直接結合することをさす。
【0061】
一般式(6)中、Rは、重合性基を表す。該重合性基は、上述した一般式(1)中のMで表される重合性基と同義である。なかでも、好ましい重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が挙げられる。
【0062】
一般式(6)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0063】
【化27】


【0064】
一般式(7)中、R10は水素原子、フッ素原子またはアルキル基を表す。R10で表されるアルキル基は、一般式(6)のRで表されるアルキル基と同義である。R10として、好ましくは水素原子、メチル基である。
【0065】
一般式(7)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Lで表される連結基は、上述した一般式(1)中のLで表される連結基と同義である。なかでも、好ましい連結基としては、−O−、アルキレン基、−CONH−、−COO−、アリーレン基、アルキレンオキシ基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンカルボニルオキシ基、またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。Lが単なる結合手の場合、一般式(7)のRがC(炭素)と直接結合することをさす。
【0066】
一般式(7)中、R11は、フッ素原子、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するアリール基、または一般式(X)で表される基を表す。それぞれの基は、一般式(2)中のRで表される各基と同義である。なかでも、パーフルオロアルキル基(炭素数2〜20が好ましく、炭素数3〜10がより好ましい)が好ましい。
【0067】
一般式(7)中、R12およびR13は、それぞれ独立に水素原子またはフッ素原子を表す。
【0068】
一般式(7)で表される繰り返し単位の具体例としては、上述の特公昭51−42961号、同54−6512号、同57−57096号、同58−53656公報などに開示されているような該シリコーン化合物由来の繰り返し単位が挙げられる。商品名では、FM0711、FM0721、FM0725、PS583(以上、チッソ(株))、KNS−50002、KNS−5100、KNS−5200、KNS−5300、KP−600、X−62−7052、X−62−7100、X−62−7112、X−62−7140、X−62−7144、X−62−7153、X−62−7157、X−62−7158、X−62−7166、X−62−7168、X−62−7177、X−62−7180、X−62ー7181、X−62−7192、X−62−7200、X−62−7203、X−62−7205、X−62−7931、KM−875、X−62−7296A/B、X−62−7305A/B、X−62−7028A/B、X−62−5039A/B、X−62−5040A/B(以上、信越化学工業(株))、RC149、RC300、RC450、RC802、RC710、RC715、RC720、RC730(以上、ゴールドシュミット社)、EBECRYL350、EBECRYL1360(以上、ダイセルUCB(株))などが挙げられる。
また、以下のようなフッ素含有モノマー由来の繰り返し単位も挙げられる。CF(CFCHCHOCOCH=CH、CFCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、C15CON(C)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF10(CHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH(CH)OCOC(CH)=CH、CFCHOCHCHOCOCH=CH、C(CHCHO)CHOCOC=CH、(CFCFO(CHOCOCH=CH、CF(CFOCHCHOCOC(CH)=CH、CCON(C)CHOCOCH=CH、CF(CFCON(CH)CH(CH)CHOCOCH=CH、H(CFC(C)OCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CFCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CH10OCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CSON(C)C(C)HCHOCOCH=CHなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0069】
一般式(6)で表される繰り返し単位および一般式(7)で表される繰り返し単位を有する高分子(共重合体)は、一般式(6)で表される繰り返し単位および一般式(7)で表される繰り返し単位のみからなるコポリマーであってもよく、他の種類の繰り返し単位が含まれていてもよい。連結の様式は特に限定されず、一般式(6)で表される繰り返し単位および一般式(7)で表される繰り返し単位が1ずつ交互に連結しても、複数ずつ交互に連結しても、ランダムに連結してもよい。また、該高分子は、複数の種類の異なる一般式(6)で表される繰り返し単位、および一般式(7)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0070】
上記他の種類の繰り返し単位としては、特に限定されず、オレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル由来の繰り返し単位が挙げられる。
【0071】
一般式(6)で表される繰り返し単位、および一般式(7)で表される繰り返し単位を有する高分子中における、一般式(6)で表される繰り返し単位の含有量は、特に限定されないが、10〜95モル%が好ましく、20〜90モル%がより好ましい。上記範囲内であれば、より強固に該高分子を膜内に固定する事が可能である。
また、一般式(7)で表される繰り返し単位の含有量は、特に限定されないが、1〜40モル%が好ましく、5〜20モル%がより好ましい。上記範囲内であれば、耐薬品性の付与と溶解性の両立が可能である。
【0072】
一般式(6)で表される繰り返し単位、および一般式(7)で表される繰り返し単位を有する高分子の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はないが、2000〜100000が好ましく、3000〜50000がより好ましく、5000〜30000が特に好ましい。上記範囲内であれば、溶解性、作成膜の面状に優れる。
【0073】
一般式(6)で表される繰り返し単位、および一般式(7)で表される繰り返し単位を有する高分子の合成法は特に限定されず、例えば、カチオン重合、ラジカル重合、またはアニオン重合などの公知の重合方法を用いて合成できる。より具体的に、側鎖に重合性基を有する高分子化合物の合成方法としては、i)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。また、これら高分子は市販品を用いてもよい。
【0074】
一般式(1)で表される化合物は、一種のみを使用してもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0075】
一般式(1)で表される化合物のインクジェット用インク中の含有量は、インク物性、表面形状、溶剤への溶解性の観点から後述する界面活性剤同等の添加量が好ましく、インク全量に対し、0.01質量%〜5質量%が好ましい。更には0.05質量%〜2質量%が好ましい範囲である。
【0076】
<染料>
本発明のインクジェット用インクは、少なくとも1種の染料を含有する。染料としては、特に限定されず、水溶性染料および油溶性染料などの公知の染料を使用することが出来る。また、1つのインクに複数の染料を併用することもできる。染料として以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0077】
イエロー染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロン類、ピリドン類、開鎖型活性メチレン化合物類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分として開鎖型活性メチレン化合物類を有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてイエローを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0078】
マゼンタ染料としては、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料;例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのようなキノン系染料、例えばジオキサジン染料等のような縮合多環系色素等を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてマゼンタを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
【0079】
シアン染料としては、例えばインドアニリン染料、インドフェノール染料のようなアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてシアンを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。
また、ポリアゾ染料などのブラック染料も使用することができる。
【0080】
また、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料等の水溶性染料を併用することもできる。なかでも好ましいものとしては、C.I. ダイレクトレッド2、4、9、23、26、31、39、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、21、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247:
C.I. ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101:
C.I. ダイレクトイエロー8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163:
C.I. ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291:
C.I. ダイレクトブラック9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、199:
C.I. アシッドレッド35、42、52、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397:
C.I. アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126:
C.I. アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227:
C.I. アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、106、112、113、120、127:1、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326:
C.I. アシッドブラック7、24、29、48、52:1、172:
C.I. リアクティブレッド3、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55:
C.I. リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34:
C.I. リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42:
C.I. リアクティブブルー2、3、5、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38:
C.I. リアクティブブラック4、5、8、14、21、23、26、31、32、34:
C.I. ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46:
C.I. ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48:
C.I. ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40:
C.I. ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71:
C.I. ベーシックブラック8、等が挙げられる。
【0081】
他の染料としては、例えば、特許出願2007−303656号明細書の段落番号[0017]〜[0043]および段落番号[0147]〜[0288]に記載される染料を用いてもよい。また、特許出願2008−149467号明細書の段落番号[0015]〜[0074]に記載される染料を用いてもよい。
【0082】
本発明のインクジェット用インク中の染料の含有量は、1〜25質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましい。1質量%未満の場合、カラーフィルタとして必要な光学濃度を達成するために、膜厚が厚くなる。そのためブラックマトリクスも厚くする必要があり、ブラックマトリクス形成が困難になるで好ましくない。25質量%を超える場合、インク粘度が高くなり吐出が困難になる、また溶媒への溶解が困難になるので好ましくない。
【0083】
<溶媒>
本発明のインクジェット用インクは、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、各成分の溶解性や後述する溶媒の沸点を満足すれば基本的に特に限定されないが、特に後述するバインダーの溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。溶媒の具体例としては、水や、エステル類、例えば、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなど;3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチルなどの3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなど;2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピルなどの2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類、例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチルなど;ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチルなど;エーテル類、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなど;ケトン類、例えば、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノンなど;芳香族炭化水素類、例えば、キシレンなど;ジシクロヘキシルメチルアミンなどの有機溶剤などが好適に挙げられる。これらは1種または2種以上を併用して使用しても構わない。
【0084】
本発明のインクジェット用インク中の該溶媒の含有量は、30〜90質量%が好ましく、50〜90質量%がさらに好ましい。30質量%以上であると1画素内に打滴されるインク量が保たれ、画素内でのインクの濡れ広がりが良好である。また、90質量%以下であると、インク中の機能膜(例えば画素など)を形成するための溶媒以外の成分量を所定量以上に保つことができる。これより、カラーフィルタを形成する場合には、1画素当たりのインク必要量が多くなり過ぎることがなく、例えば隔壁で区画された凹部にインクジェット法でインクを付与する場合に、凹部からのインク溢れや隣の画素との混色の発生を抑制することができる。
【0085】
本発明のインクジェット用インクは、ノズルに対するインクの吐出性および基板に対する濡れ性の点で、上述した溶媒のうち、沸点の高い溶媒を含有していることが好ましい。沸点の低い溶媒は、インクジェットヘッド上でもすばやく蒸発するため、ヘッド上でのインクの粘度上昇や固形分の析出等を容易に引き起こし、吐出性の悪化を伴う場合が多い。また、インクが基板面に着弾し、基板面上を濡れ拡がる場合も、濡れ拡がりの縁の部分において溶媒が蒸発することでインクの粘度上昇が起こり、ピニング(PINNING)という現象により、濡れ拡がりが抑えられる場合がある。
【0086】
本発明で用いられる溶媒の沸点は、130〜280℃が好ましい。130℃より低いと、面内の画素の形状の均一性の点で好ましくない。280℃より高いと、プリベークによる溶媒除去の点で好ましくない。なお、溶媒の沸点は、圧力1atmのもとでの沸点を意味し、化合物辞典(Chapman & Hall 社)などの物性値表により知ることができる。これらは1種または2種以上を併用してもよい。
【0087】
なお、上述のインクジェット用インクが後述する重合性モノマーなどを含まない場合、インクに含まれる溶媒を除去して得られるインク残部(色画素)の厚みが薄くなるため、混色などの防止目的で基板上に形成された隔壁の高さを低くすることができ、コスト・生産性の面から好ましい。
【0088】
<重合性モノマー>
本発明のインクジェット用インクは、重合性モノマーを含んでいてもよい。重合性モノマーの添加により、インク液滴と基板との密着性が向上する。併せて、染料のインク中での分散均一性の向上や、耐候性・耐熱性などの堅牢性の向上が期待できる。この重合性モノマーとしては、特に制限は無いが、各種置換基のバリエーションが多く、入手が容易な点で、(メタ)アクリル系モノマー、エポキシ系モノマー、およびオキセタニル系モノマーから選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0089】
重合性モノマーとしては、重合性基を2つ以上有するモノマー(以下、「2官能以上のモノマー」ともいう)が好ましい。重合性モノマーとしては、活性エネルギー線および/または熱により重合反応可能であれば特に限定されるものではないが、膜の強度や耐溶剤性などの点から、重合性基を3つ以上有するモノマー(以下、「3官能以上のモノマー」ともいう)がより好ましい。
【0090】
上述した重合性基の種類としては、特に制限はないが、上記の通り、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。重合性モノマーの具体例としては、特開2001−350012号公報の段落番号[0061]〜[0065]に記載のエポキシ基含有モノマー、特開2002−371216号公報の段落番号[0016]に記載のアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマー、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報、特開2003−341217号公報の段落番号[0021]〜[0084]および特開2004 −91556号公報の段落番号[0022]〜[0058]などに記載のオキセタニル基含有モノマー、並びに、シーエムシー出版「反応性モノマーの市場展望」に記載のモノマーなどが挙げられる。
【0091】
エポキシ系モノマーであるエポキシ基含有モノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0092】
より具体的には、商品名エピコート828(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(油化シェルエポキシ社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(油化シェルエポキシ社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(油化シェルエポキシ社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(油化シェルエポキシ社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(油化シェルエポキシ社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(油化シェルエポキシ社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
【0093】
また、(メタ)アクリル系モノマーであるアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーとしては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、などの単官能のアクリレートやメタアクリレートや、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレートなどのアクリレートまたはメタクリレートや、グリセリンやトリメチロールエタンなどの多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化して得られるトリメチロールプロパンPO(プロピレンオキサイド)変性トリ(メタ)アクリレートやトリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号の各公報に記載のウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載のポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類などの多官能のアクリレートやメタアクリレート、およびこれらの混合物を挙げることができる。またさらに、日本接着協会誌 Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものが挙げられるなどが挙げられる。単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上の多官能モノマー、オリゴマーを適宜組み合わせて粘度を調整することが好ましい。単官能モノマーや2官能モノマーを併用すると、インクの粘度が低下し、ノズル詰まりを防止できる効果が得られ、膜の強度を補ったり、基板との密着を付与するために、25℃での粘度が700mPa・s以上の高粘度の多官能モノマーやウレタンアクリレートなどの高極性モノマー、オリゴマーなどを少量併用しても構わない。
【0094】
また、オキセタニル系モノマーであるオキセタニル基含有モノマーとしては、特開2003−341217号公報の段落番号[0021]〜[0084]に記載の化合物を好適に使用できる。更に、特開2004 −91556号公報の段落番号[0022]〜[0058]に記載の化合物も使用することができる。
【0095】
上述した重合性モノマーの含有量は、インクジェット用インクの固形分中の30〜80量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましく。モノマーの使用量が上記範囲内であれば、画素部の重合が十分となるため、画素部の膜強度の不足に起因する傷の発生が起こりにくくなったり、透明導電膜を付与する際にクラックやレチキュレーションが発生しにくくなったり、配向膜を設ける際の耐溶剤性が向上したり、電圧保持率を低下させない等の効果が得られる。ここで、配合割合を特定するためのインクジェット用インクの固形分とは、溶剤を除く全ての成分を含み、液状の重合性モノマーなども固形分に含まれる。
【0096】
<バインダー樹脂>
本発明のインクジェット用インクには、粘度の調整やインク硬度の調整などの目的で、バインダー樹脂を入れてもよい。バインダー樹脂としては、それ自体は重合反応性のない樹脂のみから構成されるような単に乾燥固化するバインダー樹脂を用いてもよい。しかしながら、塗工膜に十分な強度、耐久性、密着性を付与するためには、インクジェット法により基板上に画素のパターンを形成後、該画素を重合反応により硬化させることのできるバインダー樹脂を用いるのが好ましく、例えば、可視光線、紫外線、電子線等により重合硬化させることができる光硬化性のバインダー樹脂や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性のバインダー樹脂のような、重合硬化可能なバインダー樹脂を用いることができる。
【0097】
バインダー樹脂の総添加量は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限されない。バインダー樹脂は溶剤に溶解させて用いてもよく、また溶剤に分散させて用いることも可能である。溶剤に分散させて用いる場合は、分散されるバインダー樹脂の平均粒径は1.0μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましい。平均粒径が1.0μm以下であると、ヘッドでの詰まり、膜の透明性、平滑性の低下を防止することができる。また、バインダー樹脂は、インクジェット用インクの粘度を上昇させる場合があり、本質的にこれを用いないことも好ましい。
【0098】
バインダー樹脂としては、例えば、特許出願2007−303656号明細書の段落[0060]〜[0085]に記載されるバインダー樹脂を用いてもよい。
【0099】
<重合開始剤>
本発明のインクジェット用インクは、重合性モノマーおよびバインダー樹脂の重合反応を促進する目的で、重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、インクジェット用インクに用いる重合性モノマーおよびバインダーの種類、重合経路にあわせて選択することができる。重合開始剤としては、例えば、特許出願2007−303656号明細書の[0086]〜[0117]に記載される重合開始剤を用いてもよい。
【0100】
重合開始剤の含有量は、インクジェット用インク中の全固形分に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%である。含有量が上述の範囲内であると、より良好な感度と強固な硬化部を形成することができる。また、上記、酸を発生させる化合物は1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0101】
<硬化剤>
エポキシ系モノマー(エポキシ基含有モノマー)、熱硬化性バインダー樹脂には、通常、硬化剤を組み合わせて配合することができる。硬化剤としては、エポキシ樹脂技術協会発行の「総説エポキシ樹脂基礎編I」2003年11月19日発行、第3章に記載の硬化剤、促進剤を好適に用いることができ、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いることができる。
【0102】
<熱潜在性触媒>
また、本発明において、エポキシ基含有モノマー、熱硬化性バインダー樹脂を用いる場合には、インクの硬度および耐熱性を向上させるために、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
【0103】
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。
【0104】
また、熱潜在性触媒は、液晶汚染性等の面から、ハロゲンフリーの酸性触媒であることが好ましい。ハロゲンフリーの酸性触媒として具体的には、ノフキュアーLC‐1およびノフキュアーLC‐2(いずれも商品名、日本油脂(株)製)を例示することができる。
【0105】
<界面活性剤>
本発明のインクジェット用インクには、さらに界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例として、特開平7−216276号公報の段落番号[0021]や、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に開示されている界面活性剤が、好適なものとして挙げられる。界面活性剤の含有量は、インクジェット用インク全量に対して5質量%以下が好ましい。
【0106】
界面活性剤のなかでも、フッ素含有界面活性剤が好ましい。フッ素含有界面活性剤としては、特開2000−186228に記載されているフッ素含有界面活性剤が例示できる。フッ素含有界面活性剤はイオン性の点においてアニオン性、カチオン性およびノニオン性の3種類に分類されるが、アニオン性およびカチオン性のものは活性エネルギー線硬化性化合物との相溶性が悪く、ノニオン性が好ましい。
【0107】
ノニオン性フッ素含有界面活性剤としては分子中にフッ化炭素系化合物(パーフルオロ基)と有機化合物とを併せ持つ化合物、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のメガファックF−142D、メガファックF−144D、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−815、ディフェンサMCF−300、ディフェンサMCF−312、ディフェンサMCF−323、住友スリーエム(株)製のフロラードFC−170C、フロラードFC−430、フロラードFC−431等が挙げられる。
【0108】
その他の添加剤としては、特開2000−310706号公報の段落番号[0058]〜[0071]に記載のその他の添加剤が挙げられる。
【0109】
本発明に係るインクジェット用インクの各成分の含有量としては、染料の含有量は1 〜25質量%が好ましく、溶媒の含有量は30〜90質量%が好ましく、重合性モノマーの含有量は5〜50質量%が好ましく、一般式(1)で表される化合物の含有量は0.01〜5質量%が好ましい。
【0110】
<インクジェット用インクの製造方法>
本発明のインクジェット用インクの製造には、公知のインクジェット用インクの製造方法を適用することが可能である。例えば、溶剤中に染料を溶解した後、インクジェット用インクに必要な各成分(例えば重合性モノマーや一般式(1)で表される化合物など)を溶解させてインクジェット用インクを調製することができる。
【0111】
モノマー液を作製する際には、溶剤に対して使用する素材の溶解性が低い場合には、モノマー液が重合反応を起こさない範囲内で、加熱や超音波処理等の処理を適宜行うことが可能である。
【0112】
染料を水性媒体に分散させる場合は、特開平11−286637号、特開2001−240763(特願2000−78491)号、特開2001−262039(特願2000−80259)号、特開2001−247788(特願2000−62370)号のように染料と油溶性ポリマーとを含有する着色微粒子を水性媒体に分散させたり、特開2001−262018(特願2000−78454)号、特開2001−240763(特願2000−78491)号、特開2001−335734(特願2000−203856)号のように高沸点有機溶媒に溶解した染料を水性媒体中に分散させてもよい。染料を水性媒体に分散させる場合の具体的な方法、使用する油溶性ポリマー、高沸点有機溶剤、添加剤およびそれらの使用量は、前記特許文献に記載されたものを好ましく使用することができる。あるいは、染料を固体のまま微粒子状態に分散してもよい。分散時には、分散剤や界面活性剤を使用することができる。
【0113】
分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。上記のインクジェット用インクの調製方法については、先述の特許文献以外にも特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開平11−286637号、特開2001−271003(特願2000−87539)号の各公報に詳細が記載されていて、本発明のインクジェット用インクの調製にも利用できる。
【0114】
<インクジェット用インクの物性値>
本発明のインクジェット用インクの物性値としては、インクジェットヘッドで吐出可能な範囲であれば特に限定されないが、吐出時における粘度は安定吐出観点から、2〜30mPa・sであることが好ましく、2〜20mPa・sがより好ましく。また、装置で吐出する際には、インクジェットインクの温度を20〜80℃の範囲でほぼ一定温度に保持することが好ましい。装置の温度を高温に設定すると、インクの粘度が低下し、より高粘度のインクを吐出可能となるが、温度が高くなることにより、熱によるインクの変性や熱重合反応がヘッド内で発生したり、インクを吐出するノズル表面で溶剤が蒸発しやすくなり、ノズル詰まりが起こりやすくなるため、装置の温度は20〜80℃の範囲が好ましい。
【0115】
なお、粘度は、25℃にインクジェット用インクを保持した状態で、一般に用いられるE型粘度計(例えば、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いることにより測定される値である。
【0116】
また、インクジェット用インクの25℃の表面張力(静的表面張力)としては、非浸透性の基板に対する濡れ性を向上、吐出安定性の点で、20〜40mN/mが好ましく、20〜35mN/mがより好ましい。また、装置で吐出する際には、インクジェット用インクの温度を20〜80℃の範囲で略一定温度に保持することが好ましく、そのときの表面張力を20〜40mN/mとすることが好ましい。インクジェット用インクの温度を所定精度で一定に保持するためには、インク温度検出手段と、インク加熱もしくは冷却手段と、検出されたインク温度に応じて加熱もしくは冷却を制御する制御手段とを備えていることが好ましい。あるいは、インク温度に応じてインクを吐出させる手段への印加エネルギーを制御することにより、インク物性変化に対する影響を軽減する手段を有することも好適である。
【0117】
上述の表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3など)を用いて、ウィルヘルミー法で液温25℃、60%RHにて測定される値である。
【0118】
また、インクジェットインクが基板着弾後に濡れ拡がる形状を適正に保つためには、基板に着弾後のインクジェットインクの液物性を所定に保持することが好ましい。このためには、基板および/または基板の近傍を所定温度範囲内に保持することが好ましい。あるいは、基板を支持する台の熱容量を大きくするなどにより、温度変化の影響を低減することも有効である。
【0119】
一般式(1)で表される化合物を含む本発明のインクジェット用インクを用いて形成される色画素を備えるカラーフィルタは、優れた耐薬品性を備える。その理由について詳細は不明だが、一般式(1)で表される化合物がケイ素原子またはフッ素原子を有する官能基および重合性基を有するため、該化合物を効果的に色画素の表面に偏析させて色画素中に効果的にアンカリングさせることができるためと推測される。
【0120】
<カラーフィルタおよびその製造方法>
次に、図面に示す好適実施形態を参照して、本発明のインクジェット用インクを用いたカラーフィルタおよびその製造方法について詳細に説明する。
本発明のカラーフィルタは、本発明のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により形成された色画素を備えることを特徴とするものであり、すなわち、本発明のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により製造されたことを特徴とするものである。また、本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に形成された隔壁により囲まれた凹部に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット法により付与して画素を形成する工程(以下、「画素形成工程」という)を有することを特徴とする。好ましくは、画素形成工程は、基板上の隔壁により区画された凹部にインクジェット法により液滴としてインクを付与する描画工程と、さらに、描画された少なくとも1色の画素(凹部内のインク)を活性エネルギー線の照射により硬化して色画素を形成する照射工程や、所望の色相の画素(凹部内のインク)の全てを形成した後に熱により硬化して色画素を形成する加熱工程を含む硬化工程を有し、必要に応じてベーク処理などの他の工程を設けて構成することができる。
【0121】
図1は、本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートであり、図2(a)〜(f)は、本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
図1および図2(a)〜(f)に示すように、本発明のカラーフィルタ10の製造方法は、基板12にブラックマトリックス(BM)となる隔壁(バンク)14を形成する隔壁形成工程S102(図2(b)参照)と、隔壁14に撥液性(撥インク性)を付与する撥液処理工程S104と、隣接する隔壁14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18をインクジェット法により付与して色画素20を形成する画素形成工程S106(図2(c)〜(e)参照)と、形成された色画素20を保護する保護膜22を形成してカラーフィルタ10を製造する保護膜形成工程S108(図2(f)参照)とを有する。
【0122】
また、画素形成工程S106は、上述したように、隔壁14間の凹部16にインク18をインクジェット法により液滴として吐出して付与する描画工程S110(図2(c)参照)と、凹部16に付与されたインク18を乾燥させてインク18内の溶剤を除去してインク残部18aとする予備処理工程S112(図2(d)参照)と、基板12上の凹部16内のインク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程および/またはインク残部18aを加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させ、色画素20を形成する硬化工程S114(図2(e)参照)とを有する。
なお、隔壁14は、画素形成工程S106の前の隔壁形成工程S102において、予め基板12上に形成されたものであり、隔壁14の隔壁形成工程S102およびその形成方法の詳細については後述し、まず始めに、画素形成工程S106について説明する。
【0123】
<画素形成工程>
図2(c)〜(e)に示すように、画素形成工程S106では、描画工程S110において、隔壁(色離隔壁)14間の凹部16に、本発明のインクジェット用インク18の液滴をインクジェット法で付与して、硬化工程S114で付与されたインク18を硬化して画素20を形成する。この画素20は、カラーフィルタ10を構成する赤色(R)、緑色(G)、青色(B)などの色画素となるものである。本発明で使用されるインクジェット法および描画工程S110の詳細については後述する。本発明のインクジェット用インクを用いることにより、青色(B)の色画素を有するカラーフィルタ10を製造することができる。なお、カラーフィルタの基板12としては、特に限定されず、ガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂板を用いることができる。
【0124】
本発明のインクジェット用インクを用いて製造するカラーフィルタとしては、単色のカラーフィルタのみならず、イエロー(Y)とマゼンタ(M)とでなる赤色(R)の色画素、イエロー(Y)とシアン(C)とでなる緑色(G)の色画素、マゼンタ(M)とシアン(C)とでなる青色(B)の色画素を有する3色のカラーフィルタや、さらに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色画素を有する4〜6色の色画素を有するカラーフィルタなどが挙げられる。
【0125】
マゼンタ(M)とこれ以外の他色の色画素を有するカラーフィルタを形成するためのそれぞれの着色用インクとしては、公知のものを使用することができる。例えば、マゼンタ色調インクの場合は、カップリング成分(以降、カプラー成分と呼ぶ)として、フェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;アントラピリドン染料(例えばUS2004/0239739A1明細書記載のTable 1中のNo.20の化合物や、国際公開第04/104108号パンフレット記載の化合物(13)など)などを含んだインクを挙げることができる。
【0126】
イエロー色調用インクとしては、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のような複素環類、開鎖型活性メチレン化合物類、などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料などを含んだインクを挙げることができる。
【0127】
シアン色調用染料としては、例えば、カプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分としてフェノール類、ナフトール類、ピロロトリアゾールのような複素環類などを有するアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料などのようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料などのようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;インジゴ・チオインジゴ染料などを含んだインクを挙げることができる。
【0128】
カラーフィルタパターンの形状については、特に限定はなく、ブラックマトリックス形状として一般的なストライプ状であっても、格子状であっても、さらにはデルタ配列状であってもよい。
【0129】
本発明においては、図2(c)に示すように、描画工程S110において基板12上の凹部16にインク18の液滴を付与してインク18の層を形成した後、図2(d)に示すように、予備処理工程S112でインク18内に含まれる有機溶剤を乾燥して除去してインク残部18aとした後に、図2(e)に示すように、このインク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程(以下、第1の硬化工程ともいう)および/またはインク残部を加熱する加熱工程(以下、第2の硬化工程ともいう)からなる硬化工程S114によりインク残部18aを重合して画素20を形成してもよい。また、インク残部の熱重合が開始する温度をT℃としたときに、予備処理工程S112において、T℃未満の温度で予備加熱(以下、予備加熱工程ともいう)を行ってインク18内に含まれる有機溶剤を強制的に乾燥させて除去してインク残部18aとした後に、インク残部18aに活性エネルギー線を照射する照射工程および/またはインク残部18aをT℃以上の温度で加熱する加熱工程によりインク残部18aを重合して硬化させて、画素20を形成してもよい。
【0130】
<第1の硬化工程>
描画工程S110で形成された少なくとも1色の画素形成のための凹部16内のインク残部(以下、未硬化画素インクという)18aに活性エネルギー線を照射して硬化する工程(第1の硬化工程)を設けることができる。第1の硬化工程では、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)を含む各色のインクを硬化させることにより、硬化した画素20を形成することができる。硬化は、1色の未硬化画素インク18aを形成するごとに行ってもよいし、複数色または全色の未硬化画素インク18aを形成した後に行うようにしてもよい。
【0131】
第1の硬化工程において、1色または複数色毎に凹部16内のインク、すなわち未硬化画素インク18aを硬化させる場合、硬化させる順序は、特に制限的ではなく、どのような順序でも良い。
また、R,G,Bなどのインクの硬化は、インクの持つ感光波長に対応する波長領域の活性エネルギー線を発するエネルギー源を用いて重合硬化を促進する露光処理を施すことにより行うことができる。
【0132】
エネルギー源としては、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザ光、ArFエキシマレーザ光、電子線、X線、分子線、またはイオンビームなど、既述の重合開始剤が感応するものを適宜選択して用いることができる。具体的には、250〜450nm、好ましくは365±20nmの波長領域に属する活性光線を発する光源、例えば、LD、LED(発光ダイオード)、蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどを用いて好適に行うことができる。好ましい光源には、LED、高圧水銀灯、メタルハライドランプが挙げられる。
【0133】
活性エネルギー線の照射時間としては、モノマーと重合開始剤との組合せに応じて適宜設定することができるが、例えば、1〜30秒とすることができる。
【0134】
<第2の硬化工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)など所望の色相の未硬化画素インク18aを、熱により硬化する工程(第2の硬化工程)を設けることができる。上記のように、第1の硬化工程を設けると共に第2の硬化工程を設けることによって、カラーフィルタ10の製造効率と表示特性とを両立させことができる。また、第2の硬化工程のみで硬化させてもよい。
【0135】
本第2の硬化工程では、隔壁および所望の色相からなる未硬化画素インクを形成し、第1の硬化工程を行った後に、さらに加熱処理(いわゆるベーク処理)を行って、熱による硬化を施すことができる。すなわち、隔壁および光照射により光重合した画素が形成されている基板を、電気炉、乾燥器などに入れて加熱する、あるいは赤外線ランプを照射して加熱することができる。
【0136】
このときの加熱温度および加熱時間は、インクジェット用インクの組成や画素の厚みに依存するが、一般に充分な耐溶剤性、耐アルカリ性、および紫外線吸光度を確保する観点から、約120℃〜約250℃で約10分〜約120分間加熱することが好ましい。
【0137】
また、本発明のインクジェット用インクを用いたカラーフィルタの製造方法では、活性エネルギー線の露光および/または熱処理による画素形成用凹部(未硬化画素)内のインクの重合を行う前に、予備処理工程S112として、予備加熱工程を設けても良い。予備加熱工程における加熱温度は特に制限は無いが、未硬化画素インクの熱重合が開始する温度をT℃とした場合に、T℃未満であり、未硬化画素インクの重合が起きない温度が好ましく、50〜100℃がより好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。本予備加熱工程を入れることで、インクジェット法により付与されたインク中の有機溶剤の蒸発が促進され、カラーフィルタを効率的に作製することができる上に、インク残部の粘度が熱により低下するため、より高い流動性が得られ、高い平坦性の画素を有するカラーフィルタを得ることが可能になる。
【0138】
上記予備加熱工程は、本発明のごときインク残部が流動性を有するインクであれば、画素内が熱によって重合するインクのみならず、光によって重合するインクにおいても有効である。光によって重合するインクの場合、上述のインクが熱重合を開始する温度Tは、熱によって光重合開始剤などが分解して重合反応が開始する温度または、モノマー自体が熱によって分解し、重合反応が開始する温度を意味する。予備加熱工程の時間は特に制限が無いが、1〜5分間行うことが好ましい。
【0139】
温度Tは、以下のようにして求めることができる。インクを加熱し、加熱によりインクの重合が開始し、インクのゲル化などが観察される温度をTとする。より具体的には、加熱前のインク粘度に対して、加熱後のインク粘度の上昇が5mPa・s以上の場合の加熱温度をTとする。
【0140】
本発明のインクを用いたカラーフィルタの製造方法においては、描画工程S110から予備加熱工程(S112)および第1の硬化工程と第2の硬化工程とからなる硬化工程(S114)までの画素形成工程S106を、24時間以内で行う事が好ましく、12時間以内で行う事がより好ましく、6時間以内に行う事がさらに好ましい。描画工程S110から、最終の硬化工程(第2の硬化工程)S114までの画素の形成を24時間以内で行うことにより、画素の面状を向上させることができる。
なお、本発明のカラーフィルタの製造方法においては、画素形成工程S106、すなわち描画工程S110から予備加熱工程(S112)、第1の硬化工程および第2の硬化工程(S114)までを、1色毎に行っても良いし、複数色毎に行っても良いし、または描画工程S110で全色について描画を行い、予備加熱工程(S112)による予備加熱、硬化工程S114による硬化を全色について行っても良い。また、画素形成工程S106を1色または複数色毎に行う場合、形成する画素の色の順序は、特に制限的ではなく、どのような色の順序でも良い。
【0141】
<隔壁形成工程>
本発明のカラーフィルタの製造方法では、上述した画素形成工程S106において、図2(c)〜(e)に示すように、基板12上に形成された隔壁14により囲まれた凹部16に、インクジェット法により本発明のインクジェット用インク18の液滴を付与して画素20が形成される。
この隔壁14は、特に制限的ではなく、公知の隔壁を用いることができ、どの様なものでもよいが、カラーフィルタを作製する場合は、ブラックマトリクスの機能を持った遮光性を有する隔壁であることが好ましい。
そのため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102において、図2(b)に示すように、図2(a)に示す基板12上に、このようなブラックマトリクスの機能を持つ遮光性のある隔壁14を形成する。
【0142】
なお、この隔壁14は、公知のカラーフィルタ用ブラックマトリクスと同様の素材を用い、同様の公知の方法により作製することができる。例えば、特開2007−193090号公報の段落番号[0108]〜[0126]や、特開2005−3861号公報の段落番号[0021]〜[0074]や、特開2004−240039号公報の段落番号[0012]〜[0021]に記載のブラックマトリクス(いわゆる樹脂ブラックマトリックス)や、特開2006−17980号公報の段落番号[0015]〜[0020] や、特開2006−10875号公報の段落番号[0009]〜[0044]に記載のインクジェット用ブラックマトリクスなどが挙げられる。また、隔壁14は、ブラックマトリクス機能と隔壁機能とを別々に持つ層からなる2層構造であっても良い。例えば、特開2004−361491号公報の段落番号[0054]〜[0057]や、特開2004−295039号公報の段落番号[0067]〜[0069]や、特開2006−86128号公報の段落番号[0068]〜[0069]、 [0103]、 [0109]〜[0110]に記載の金属遮光膜とその上に形成された樹脂製、好ましくは、撥液性の樹脂製の隔壁(バンク)層とからなる2層構造であっても良い。
本発明法では、上述した公知の作製方法の中でも、コスト削減の観点から感光性樹脂転写材料を用いることが好ましい。感光性樹脂転写材料は、仮支持体上に少なくとも遮光性を有する樹脂層を設けたものであり、基板に圧着して、遮光性を有する樹脂層を基板に転写することができる。
【0143】
感光性樹脂転写材料は、特開平5−72724号公報に記載されている感光性樹脂転写材料、すなわち一体型となったフイルムを用いて形成することが好ましい。該一体型フイルムの構成の例としては、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層(本発明において「感光性樹脂層」とは光照射により硬化しうる樹脂をいい、それが遮光性を有するときには「遮光性を有する樹脂層」ともいい、目的の色に着色されているときには「着色樹脂層」ともいう。)/保護フイルムを、この順に積層した構成が挙げられる。感光性樹脂転写材料を構成する仮支持体、熱可塑性樹脂層、中間層、保護フィルムや、転写材料の作製方法については、特開2005−3861号公報の段落番号[0023]〜[0066] や特開2007−193090号公報の段落番号[0108]〜[0126]に記載のものが好適なものとして挙げられる。
【0144】
また、このような隔壁14は、インクジェット用インクの混色を防ぐために、撥インク処理を施してもよい。
このため、図1に示す例では、隔壁形成工程S102の後、撥液処理工程S104において、図2(b)に示す基板12上の隔壁14に、撥液処理、すなわち撥インク処理を施す。
なお、このような撥インク処理としては、例えば、特開2007−187884号公報の段落番号[0086]〜[0087]に記載された撥インク処理方法、具体的には、(1)撥インク性物質を隔壁に練りこむ方法(例えば、特開2005−36160号公報参照)、(2)撥インク層を新たに設ける方法(例えば、特開平5−241011号公報参照)、(3)プラズマ処理により撥インク性を付与する方法(例えば、特開2002−62420号公報参照)、(4)隔壁の壁上面に撥インク材料を塗布する方法(例えば、特開平10−123500号公報参照)、などが挙げられ、特に(3)基板上に形成された隔壁にプラズマによる撥インク化処理を施す方法が好ましい。
【0145】
これらの他、本発明法に適用可能な撥インク処理方法として、特開2004−361491号公報の段落番号[0058]に記載された撥インク処理方法(例えば、特開平9−203803号公報、特開平9−230129号公報および特開平9−230127号公報参照)や、特開2006−86128号公報の段落番号[0074]〜[0075]、[0111]〜[0118]、[0130]に記載された撥インク処理方法などを挙げることができる。
なお、上述した例では、基板12上の隔壁14に撥インク処理を施しているが、本発明はこれに限定されず、同時に基板12上の凹部16内に親インク処理を施しても良い。
なお、隔壁14が撥インク性を備えている場合には、撥液処理工程S104は不要であるが、その場合においても、基板12上の凹部16内に親インク処理を施しても良い。
【0146】
図2(e)に示すように、基板12上に隔壁14および画素20を形成して、カラーフィルタ10を作製した後には、耐性向上の目的で、図2(f)に示すように、画素20および隔壁の14の全面を覆うように保護層としてオーバーコート層22を形成することができる。オーバーコート層22は、R,G,Bなどの画素20および隔壁14を保護すると共に表面を平坦にすることができる。但し、工程数が増える点からは設けないことが好ましい。オーバーコート層22は、樹脂(OC剤)を用いて構成することができ、樹脂(OC剤)としては、アクリル系樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、ポリイミド樹脂組成物などが挙げられる。中でも、可視光領域での透明性で優れており、インクジェット用インクの樹脂成分が通常アクリル系樹脂を主成分としており、密着性に優れることから、アクリル系樹脂組成物が望ましい。オーバーコート層の例として、特開2003−287618号公報の段落番号[0018]〜[0028]に記載のものや、オーバーコート剤の市販品として、JSR社製のオプトマーSS6699Gが挙げられる。
【0147】
本発明のカラーフィルタは、さらに透明導電膜として、酸化インジウムスズ(ITO)層を有していてもよい。ITO層の形成方法としては、例えば、インライン低温スパッタ法や、インライン高温スパッタ法、バッチ式低温スパッタ法、バッチ式高温スパッタ法、真空蒸着法、およびプラズマCVD法などが挙げられ、特にカラーフィルタに対するダメージを少なくするため、低温スパッタ法が好ましく用いられる。
【0148】
本発明のカラーフィルタは、例えば、液晶ディスプレイ、テレビ、パーソナルコンピュータ、液晶プロジェクタ、ゲーム機、携帯電話などの携帯端末、デジタルカメラ、カーナビなどの画像表示、特にカラー画像表示の用途に特に制限なく好適に適用できる。
また、本発明のカラーフィルタは、電子ペーパや有機EL素子デバイスなどの画像表示デバイス、特にカラー画像表示デバイスにも適用可能である。
【0149】
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法の描画工程、これに用いられるインクジェット描画方法、これを実施するインクジェット描画装置、およびこれに用いられるインクジェットヘッドについて説明する。
図3は、本発明のカラーフィルタの製造方法の描画工程を実施するのに用いられるインクジェット描画装置の一実施形態の一部分を示す斜視図であり、図4は、図3に示すインクジェット描画装置の部分断面図であり、図5は、図3に示すインクジェット描画装置におけるインク循環系の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【0150】
図3および図4に示すインクジェット描画装置(以下、単に、描画装置ともいう)30は、基板12を載置して支持するプラテン32と、基板12にカラーフィルタ製造用インクを吐出するインクジェットヘッド34を備えるキャリッジタイプのヘッドユニット36と、プラテン32上に支持された基板12上においてヘッドユニット36を主走査方向(図3中矢印Xで示す方向)に移動させるヘッド移動機構38と、プラテン32に載置された基板12を主走査方向(X方向)と略直交する副走査方向(図3および図4中矢印Yで示す方向)に搬送する基板搬送機構40と、ヘッドユニット36のインクジェットヘッド34にインクを供給するインク供給系50(図5参照)と、基板搬送機構40を介してプラテン32に基板12を供給する図示しない基板供給手段とを有する。なお、基板供給手段は、基板搬送機構40が基板12をプラテン32に搬送できるように、基板12を基板搬送機構40に供給できれば、どのような基板供給手段でも良く、例えば、公知の基板供給手段や、基板12を基板搬送機構40を介してプラテン32に自動的に供給する自動給版装置であっても良い。
【0151】
ここで、プラテン32は、平板形状を有し、基板供給手段から供給された基板12をその表面上に載置して支持するものである。ここで、プラテン32の表面には、空気吸引孔を設けてヘッドユニット36による描画中、すなわちヘッドユニット36のインクジェットヘッド34による描画中に基板12を吸着するのが好ましい。これにより、基板12の平面性を適正に維持できる。また、基板搬送機構40によって基板12を副走査方向(Y方向)に搬送する際には、プラテン32の表面は、基板12の裏面との摩擦が小さいものであるのが好ましい。なお、プラテン32は、描画装置30の筐体(図示せず)に取り付けられる。
【0152】
ヘッドユニット36は、インクジェットヘッド34を有し、プラテン32に対向して配置され、後述するヘッド移動機構38により、プラテン32の表面と平行に移動可能な状態で支持されている。また、ヘッドユニット36には、インク供給系50のインクタンク52(図5参照)内のインクをインクジェットヘッド34に供給するためのインク供給管54が接続される。
インクジェットヘッド34は、カラーフィルタ形成のための所定色のインク吐出信号に応じて、上述した本発明のカラーフィルタ製造のためのインクジェット用インク18を吐出し、基板12上に画素(未硬化画素18a)を描画し、硬化画素20(図2(e)および(f)参照)を形成するためのものである。ここで、吐出信号とは、画像信号に基づいて、カラーフィルタの画素となる部分に選択的にインクを塗布するように液滴を吐出させる吐出信号である。
インクジェットヘッドとしては、コンティニュアス型やオンデマンド型のピエゾ方式、サーマル方式、ソリッド方式、静電吸引方式等の種々の方式のインクジェットヘッド(吐出ヘッド)を用いることができ、オンデマンド型の種々の方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましく、特に、オンデマンド型のピエゾ方式のインクジェットヘッドを用いることが好ましい。また、インクジェットヘッドの吐出部(ノズル)は、単列配置に限定されず、複数列としても千鳥格子状に配置としてもよい。なお、インクジェットヘッドのノズルの配置およびそれに応じた描画方法については後述する。
【0153】
なお、図3および図4に示す描画装置30においては、1色、例えばマゼンタのインクを用いてカラーフィルタのR画素を形成するものであるが、カラーフィルタの2色以上、例えば3色のRGB画素を形成するために、1台の描画装置30によって色の異なるインクに取り替えて順次他の色の画素を形成してもよいし、それぞれ異なる色のインクを用いる3台の描画装置30によってそれぞれ異なる色の画素を形成してもよいし、もしくは図3および図4に示す描画装置30において、2次元方向に移動可能な2以上のヘッドユニットを備える構成としても良い。
また、図示例においては、ヘッドユニット36は、1色のインクを吐出する1種のインクジェットヘッド34を備えるものであるが、本発明はこれに限定されず、2色以上、例えば、3色または4色のフルカラーのインクをそれぞれ吐出する2種以上、例えば、3種または4種のインクジェットヘッド34を備えるものであっても良い。この場合には、3種または4種のインクジェットヘッド34のそれぞれに対して、それぞれのインク供給系50、すなわち3色または4色のフルカラーのインクをそれぞれ供給する3種または4種のインク供給系50が必要であり、それらの各々に応じて3つまたは4つのインク供給管54がヘッドユニット36には接続される。
【0154】
ヘッド移動機構38は、ヘッドユニット36を、主走査方向(図3中矢印X方向)に走査移動するものであり、ドライブスクリュ42と、ガイドレール43と、駆動支持部44と、支持部45とを有する。ドライブスクリュ42およびガイドレール43は、互いに所定間隔離間して、共に基板12の搬送方向(図3中Y方向)と直交する主走査方向(図3中X方向)と平行に、また、使用可能な最大(主走査方向の長さが最長)の基板12をその左端から右端まで跨ぐように配置されている。
【0155】
ドライブスクリュ42は、ヘッドユニット36に形成された雌ねじ部(図示せず)と螺合する雄ねじ部を持つボールねじ(図示せず)等からなり、回転することによりヘッドユニット36を移動させる。ガイドレール43は、ヘッドユニット36に形成された貫通孔に挿通され、ドライブスクリュ42の回転により移動するインクジェットヘッド34の姿勢が変わらないように案内するガイドである。
また、駆動支持部44は、ドライブスクリュ42およびガイドレール43の一方の端部に、支持部45は、それらの他方の端部に設けられ、ドライブスクリュ42を正逆回転可能な状態で支持し、ガイドレール43を移動しないように支持している。駆動支持部44は、ドライブスクリュ42を駆動するモータ等の駆動源(図示せず)を備える。なお、駆動支持部44および支持部45は、共に、上述した図示しない描画装置30の筐体に支持される。
【0156】
ヘッドユニット36は、ドライブスクリュ42およびガイドレール43によって移動可能に支持されており、駆動支持部44により、ドライブスクリュ42を正逆回転させることで、ガイドレール43に案内されつつ、主走査方向(X方向)に往復移動(走査)される。なお、ヘッド移動機構38は、ヘッドユニット36の姿勢を保つために、複数のガイドレールを備えていても良いし、その他の姿勢保持手段を有していても良い。なお、ヘッドユニット36は、ガイドレール43により、インク液滴を吐出させる部分、つまり、インクジェットヘッド34のインク液滴吐出面がプラテン32と対向した所定の姿勢を維持して移動される。
【0157】
ここで、ヘッドユニット36の移動機構としては、上記のヘッド移動機構38に限定されず、種々の公知のヘッド移動機構を用いることができる。例えば、ドライブスクリュをガイドレールなどの棒状部材とし、インクジェットヘッドのX方向の端部の両側にそれぞれガイドワイヤーをつけた構成として、移動方向のガイドワイヤを巻き取り、ガイドレールに沿って移動させる構成も用いることができる。また、ガイドワイヤの代りに、タイミングベルトで移動させても良い。この場合には、ワイヤーリールに代えてタイミングベルト用スプロケットを用いればよい。また、ラックアンドピニオン機構を用いても良い。また、自走式としても良い。さらに、リニアモータを用いてもよい。
【0158】
基板搬送機構40は、ヘッドユニット36に対して、プラテン32に載置された基板12を副走査方向(Y方向)に搬送するものであり、副走査方向(Y方向)に所定間隔、例えば、使用可能な最小(副走査方向の長さが最短)の基板12の長さより少し短い間隔だけ離間して、主走査方向(X方向)延在して配置され、図示しない駆動源と接続する1対の送りローラ46と、各送りローラ46上に載置された基板12の主走査(X)方向の両端部をそれぞれ挟む位置に配置される、各送りローラ46に付き1組の小幅の抑えローラ48とを有し、送りローラ46と抑えローラ48との間に基板12を挟持して副走査(Y)方向に搬送する。1対の送りローラ46は、使用可能な最大(主走査方向に最長)の基板12の主走査方向の長さより長い2つの長尺の駆動ローラで構成され、この2つの駆動ローラの駆動軸は、駆動ベルトなど同期駆動手段により、互いに連結されて同期駆動される。一方、抑えローラ48は、各送りローラ46に対して2つ、合計4つ設けられる小幅の短尺の従動ローラで構成され、使用可能な主走査方向に最長の基板12の両端の位置から使用可能な主走査方向に最短の基板12の両端の位置の間で主走査方向に移動可能であり、使用される基板12の両端の位置に適切調整できるようになっているのが好ましい。1つの送りローラ46と2つの抑えローラ48とは、基板12の搬送経路を上下に挟んで配置されている。自動給版装置から供給された基板12は、送りローラ46と抑えローラ48との間に所定のニップ圧で挟持され、送りローラ46を駆動源(図示せず)によって所定方向(図4において反時計回り)に回転させることで、副走査(Y)方向に搬送される。
【0159】
ここで、ヘッドユニット36による描画中に、基板12をプラテン32の表面に吸着させる場合には、全ての送りローラ46および抑えローラ48を回転を停止させ、ヘッドユニット36による描画が行われていない間に、送りローラ48が図示しない駆動源によって回転駆動され、抑えローラ48との間に挟持している基板12を副走査(Y)方向に搬送するように構成するのが好ましい。すなわち、基板搬送機構40は、基板12を間欠的に副走査搬送するものであるのが好ましい。なお、送りローラ46および抑えローラ48は、共に、図示しない描画装置30の筐体に回転可能に支持される。なお、本発明に用いられる基板搬送機構40は、基板12を副走査方向に搬送できるものであればどのような形式のものでも良く、公知の全ての副走査搬送機構が適用可能である。
このようにして、基板搬送機構40は、基板12を副走査方向に搬送することにより、基板12に対してへッドユニット36を副走査方向に相対的に移動させることができる。
【0160】
以上のようにして、ヘッド移動機構38および基板搬送機構40は、へッドユニット36を基板12に対して主走査方向および副走査方向に相対的に移動させることができ、へッドユニット36のインクジェットヘッド34による基板12の2次元走査(XY走査)を実現することができる。なお、本発明において、ヘッド移動機構38および基板搬送機構40の駆動源は、カラーフィルタなどの製造のための描画を正確にできれば、特に制限的ではないが、ステップモータであるのが好ましい。
なお、ヘッド移動機構38は、ヘッドユニット36を、インクジェットヘッド34の不使用時には所定のヘッド退避位置に、メンテナンス時には所定のメンテナンス位置に移動させる。また、所定のヘッド退避位置や、所定のメンテナンス位置は、プラテン32上の基板12から外れた位置、あるいはプラテン32から外れた位置であるのが好ましく、より好ましくは、所定のヘッド退避位置は、プラテン32上の基板12から外れた位置であるのが良く、所定のメンテナンス位置は、プラテン32から外れた位置であるのが良い。
なお、図示例では、ヘッド移動機構38によるへッドユニット36の主走査方向の移動および基板搬送機構40による基板12の副走査方向の搬送により、へッドユニット36のインクジェットヘッド34による基板12に対する2次元走査(XY走査)を実現しているが、本発明はこれに限定されず、基板12を支持台としてのプラテン32に載置して固定しておき、ヘッドユニット走査手段などにより、ヘッドユニット36を主走査(X)方向および副走査(Y)方向に移動走査させて、固定された基板12に対する2次元走査(XY走査)を行うようにしても良い。
ヘッドユニット36による基板の2次元走査については、本発明のカラーフィルタ製造のためのインクジェット描画方法とともに後に詳細に説明する。
【0161】
図5に、インクジェット描画装置30におけるインク供給系50の概略構成を示す。
インク供給系50は、インクジェットヘッド34に供給するインクを貯留するインクタンク52と、インクジェットヘッド34とインクタンク52とを接続するインク供給管54と、インク供給管54の途中に設けられるフィルタ56と、インクジェットヘッド34のノズル領域を覆うキャップ58と、インクジェットヘッド34のノズル面34aのクリーニングを行うクリーニングブレード60と、キャップ58に接続され、インクジェットヘッド34のノズル吸引を行う吸引ポンプ62と、吸引ポンプ62で吸引したインクを回収する回収タンク64と、キャップ58と回収タンク64とを吸引ポンプ62を介して接続するインク回収管66と、インク供給管54に分岐して設けられ、インクジェットヘッド34のノズルの圧力室(図示せず)を加圧して強制吐出を行うためのヘッド加圧ポンプ68と、インクタンク52にインクを補充するインク補充系70とを有する。
なお、キャップ58、クリーニングブレード60、吸引ポンプ62およびヘッド加圧ポンプ68は、インクジェットヘッド34のメンテナンス系を構成し、キャップ58、回収タンク64、インク回収管66ならびに後述するインク補充系70の回収インク補充管82、フィルタ84および濃度検出部86は、インク回収系を構成する。
ここでは、インク供給系50は、インクタンク52からインクジェットヘッド34にインクを供給する狭義の供給系のみならず、インクジェットヘッド34のメンテナンス系、インク回収系およびインク補充系70をも含むものである。
【0162】
インクタンク52は、インクジェットヘッド34にインクを供給するためのメインタンクであり、上述したカラーフィルタ製造のための本発明のインクジェット用インクを始めとして、種々のインクを貯留するためのものである。なお、図示例においては、インクタンク52の形態として、インク補充系70を備え、インクタンク52内のインク残量が少なくなった場合には、インク補充系70から補充口(図示せず)からインクを補充する方式を採用しているが、本発明はこれに限定されず、インクタンク52をインクカートリッジとしてインクタンクごと交換するカートリッジ方式を採用してもよい。
カラーフィルタを大量生産する場合など、各色、各種類ごとにインクジェットヘッド34およびインク供給系50を備え、大量のインクを消費する場合には、インク交換やコストの点からも、インク補充方式が適しているが、少量のインク消費で、使用用途に応じてインク種類を替える場合には、カートリッジ方式が適している。このカートリッジ方式の場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じて吐出制御を行うことが好ましい。
【0163】
図5に示したように、インクタンク52とインクジェットヘッド34を繋ぐインク供給管54の途中には、異物や気泡を除去するためにフィルタ56が設けられている。フィルタ56のメッシュサイズは、インクジェットヘッド34のノズル径と同等、もしくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とするのが好ましい。なお、詳細は後述するが、さらに、インク供給管54の途中に分岐して設けられ、インクジェットヘッド34にインクの吐出不良が発生した場合に、インクジェットヘッド34のノズルの圧力室(図示せず)を強制的に加圧して強制吐出を行うためのヘッド加圧ポンプ68が設けられる。また、インク供給管54は、インクジェットヘッド34に接続されている部分、例えば、ヘッド加圧ポンプ68よりインクジェットヘッド34の側の部分は、ヘッドユニット36の二次元的(XY方向)移動の際にスムーズな移動を実現するために、フレキシブルチューブとするのが良い。
なお、図5には示さないが、インクジェットヘッド34の近傍またはインクジェットヘッド34と一体にサブタンクを設ける構成とするのもまた好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果およびリフィルを改善する機能を有する。
【0164】
また、図示例のインクジェット描画装置30には、インクジェットヘッド34の各ノズルからインクを適切に吐出させるため、インクジェットヘッド34を適切な吐出状態を維持するための、キャップ58およびクリーニングブレード60などを含むメンテナンスユニットを備える。これらのメンテナンスユニットは、図示しない移動機構によってインクジェットヘッド34に対して相対移動可能であり、必要に応じて、その所定の退避位置からメンテナンス位置にあるインクジェットヘッド34の下方に移動される。図3に示すインクジェット描画装置30の場合、メンテナンスユニットの退避位置も、メンテナンス位置も、プラテン32上の基板12から外れた位置、好ましくは、プラテン32から外れた位置であるのが良い。
【0165】
キャップ58は、インクジェットヘッド34のノズル面34aのノズル領域を覆うように被着され、インクジェットヘッド34の不使用時のノズルの乾燥防止またはノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段として設けられる。また、キャップ58は、インクジェットヘッド34のノズル(図示せず)の吐出状態の検査および/または吐出不良の解消のための予備吐出(以下、ダミー吐出ともいう)や、ヘッド加圧ポンプ68によるノズルからの強制的な吐出や、吸引ポンプ62によるインクジェットヘッド34のノズル吸引の際にも、吐出されたインクを回収するために、また、吸引ポンプ62によるノズル吸引を可能とし、かつ吸引されたインクを回収するために、ノズル面34aを覆うようにインクジェットヘッド34に被着されて用いられる。
このキャップ58は、メンテナンス位置において、図示しない昇降機構によって、インクジェットヘッド34に対して相対的に昇降変位される。昇降機構は、電源オフ(OFF)時や描画待機時にキャップ58を所定の上昇位置まで上昇させ、インクジェットヘッド34に密着させることにより、ノズル面34aのノズル領域をキャップ58で覆うようになっている。
【0166】
クリーニングブレード60は、インクジェットヘッド34のノズル面34aの清掃手段として設けられ、ゴムなどの弾性部材で構成されており、メンテナンス位置において、図示しないブレード移動機構によりインクジェットヘッド34のインク吐出面(ノズル面34a)に摺動可能である。ノズル面34aにインク液滴または異物が付着した場合、クリーニングブレード60をノズル面34aに摺動させることでノズル面34aを拭き取り、ノズル面34aを清浄するようになっている。
吸引ポンプ62は、インク回収管66によってキャップ58に接続される。この吸引ポンプ62は、初期のインクのインクジェットヘッド34の各ノズルへの装填時、あるいは長時間の停止後の使用開始時に、インクジェットヘッド34のノズル面34aにキャップ58を当接させて吸引動作(ノズル吸引動作)を行い、粘度が上昇して固化した劣化インクを吸い出して除去するために用いられるものである。なお、吸引ポンプ62は、吸い出して除去した劣化インクを回収タンク64へ送液して回収する。
【0167】
また、印字中または待機中において、特定のノズルの使用頻度が低くなり、そのノズル近傍のインク粘度が上昇した場合、粘度が上昇して劣化したインクを排出すべく、キャップ58に向かって予備吐出が行われる。しかしながら、インクジェットヘッド34の各ノズルから予備吐出を行っても、各ノズルの吐出状態の検査の結果、吐出不良のノズルが存在する場合がある。
このように、予備吐出でも吐出不良ノズルが容易に吐出できるように回復しない場合、すなわち、容易に吐出不良が解消しない場合、例えば、インクジェットヘッド34内(圧力室内)のインクに気泡が混入した場合や、ノズル内でインクが高粘度となりあるいは固化して劣化インクとなった場合にも、インクジェットヘッド34にキャップ58を当接させて、吸引ポンプ62は、圧力室内の(気泡が混入した)インクや、高粘度のあるいは固化した劣化インクを吸引(ノズル吸引)により除去するために用いられる。もちろん、この場合も、吸引ポンプ62は、吸引除去した気泡混入インクや劣化インクを回収タンク64へ送液して回収する。
【0168】
ヘッド加圧ポンプ68は、インクジェットヘッド34に接続されたインク供給管54に分岐して設けられる。このヘッド加圧ポンプ68は、上述した吸引ポンプ62と同様に、初期のインクの装填時、あるいは長時間の停止後の使用開始時に、予備吐出でも容易に吐出不良が解消しない場合などに、インクジェットヘッド34のノズルの圧力室を加圧して圧力室内の気泡混入インクやノズル内の劣化インクを含むインクを各ノズルから強制的に吐出させる(強制吐出を行う)ためのものである。この場合にも、キャップ58は、インクジェットヘッド34に押し当てられ、ヘッド加圧ポンプ68によって強制吐出された気泡混入インクや劣化インクを含むインクを受け、吸引ポンプ62およびインク回収管66を介して回収タンク64に送液して回収する。
なお、吸引ポンプ62とヘッド加圧ポンプ68とは、同様の機能を有するので、いずれか一方のみを備えていれば良いが、図示例のように両方を有していても良い。
【0169】
回収タンク64は、予備吐出されたインク、吸引ポンプ62によって吸引除去したインクや劣化インクや、ヘッド加圧ポンプ68によって強制的に吐出された気泡混入インクやノズル内の劣化インクを含むインクを回収し、回収インクとして保管するためのものである。
なお、この回収タンク64に回収され、保管され、所定量となった回収インクは、廃棄されても良いが、後述するように、インク補充系70に送られ、インク濃度や電気伝導度などのインク特性が検出されて評価された後、その評価結果に基づいて、カラーフィルタ製造のために、再使用可能なインクとして再調液された後に、インクタンク52に補充されるのが好ましい。
【0170】
ところで、インクジェットヘッド34は、ある時間以上吐出しない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してノズル近傍のインクの粘度が高くなってしまい、吐出駆動用の圧力発生手段(図示せず)が動作してもノズルからインクが吐出しなくなる。したがって、この様な状態になる手前で(圧力発生手段の動作によってインク吐出が可能な粘度の範囲内において)、インク受けとなるキャップ58に向かって圧力発生手段を動作させて、粘度が上昇したノズル近傍のインクを吐出させる「予備吐出」が行われる。また、ノズル面34aの清掃手段として設けられているクリーニングブレード60等のワイパーによってノズル面34aの汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「ダミー吐出」、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
【0171】
また、インクジェットヘッド34のノズルや圧力室内に気泡が混入したり、ノズル内のインクの粘度上昇があるレベルを超えたりすると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなるため、上述したような吸引ポンプ62による吸引動作やヘッド加圧ポンプ68によるヘッド加圧動作を行う。
すなわち、インクジェットヘッド34のノズルや圧力室のインク内に気泡が混入した場合、あるいはノズル内のインク粘度があるレベル以上に上昇した場合には、圧力発生手段を動作させてもノズルからインクを吐出できなくなる。このような場合、インクジェットヘッド34のノズル面34aに、キャップ58を当接させて圧力室内の気泡が混入したインクまたは増粘インクもしくは固化インクを吸引ポンプ62で吸引する動作、またはヘッド加圧ポンプ68で圧力室内を強制的に加圧してノズルから強制的に吐出させる動作が行われる。
【0172】
ただし、上記の吸引動作やヘッド加圧による強制吐出動作は、圧力室内のインク全体に対して行われるためインク消費量が大きい。したがって、粘度上昇が少ない場合は、なるべく予備吐出を行うことが好ましい。なお、図5で説明したキャップ58は、吸引手段として機能するとともに、予備吐出のインク受けとしても機能し得るのはいうまでもない。
また、キャップ58の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とするのが好ましい。
【0173】
次に、インク補充系70は、図5に示すように、コンクインクを貯留するコンクインク補充タンク72と、希釈液を貯留する希釈液補充タンク74と、インクタンク52のインクの濃度を検出する濃度検出部76と、インクタンク52のインクの貯留量を検出するレベル検出部78と、濃度検出部76からの検出濃度およびレベル検出部78からのインクの貯留量の情報を受け、コンクインク補充タンク72からのコンクインクの補充量および希釈液補充タンク74からの希釈液の補充量を制御する補充制御部80とを有する。
また、図5に示すインク補充系70においては、インクタンク52と回収タンク64とは、回収インク補充管82によって接続される。この回収インク補充管82に途中には、回収タンク64内に回収された回収インクに含まれる固化インクなどの劣化インクを除去するためのフィルタ84が設けられ、回収インク補充管82のインクタンク52に近い側には、濃度検出部86が設けられている。ここで、補充制御部80は、濃度検出部86からの回収インクの検出濃度の情報をも受け取り、コンクインクの補充量および希釈液の補充量に加え、回収タンク64からの回収インク補充量を制御する。
【0174】
コンクインク補充タンク72は、コンクインク(高濃度インク)を充填するタンクであり、コンクインク補充タンク72内のコンクインクをインクタンク52に供給するポンプ(図示せず)などを備えるものであり、補充制御部80からの指示に従って、コンクインクをインクタンク52に補充する。
他方、希釈液補充タンク74は、インクを補充する際のインクの希釈液として用いる溶媒を充填するタンクであり、希釈液をインクタンク52に供給するポンプなどを有するものであり、補充制御部80からの指示に従って、希釈液をインクタンク52に補充する。
ここで、本発明においては、コンクインクの濃度には、特に限定的ではなく、インクの目標濃度より高濃度であれば良い。すなわち、補充用の所定濃度のインクとして、インクの目標濃度より高濃度のインクを用いればよい。また、希釈液も、特に限定的ではなく、インクの目標濃度より低濃度のインクを用いても良い。すなわち、本発明においては、コンクインクおよび希釈液として、インクの目標濃度より高濃度であるインクおよび低濃度であるインクを含む互いに濃度の異なる複数の所定濃度のインクを用いて補充を行ってもよい。
【0175】
濃度検出部76は、光学的な検出手段を用いてインクの濃度を検出し、補充制御部80に供給するものである。
例えば、インクジェット描画装置30のインク供給系50において、インク供給管54は、一部、ガラス等の光透過性部材で形成される透過部を有し、濃度検出部76は、発光素子から出射した測定光を光透過部に入射し、光透過部を透過した透過光の光量を受光素子で測定する。濃度検出部76は、実験等で予め作成した、透過光の測定結果とインク濃度との関係を示すルックアップテーブル(LUT)を有しており、このLUTを用いて、透過光の測定結果からインクの濃度を求める。あるいは、LUTに変えて、透過光の測定結果をパラメータとする演算式でインクの濃度を求めてもよい。
なお、本発明において、濃度検出部76におけるインク濃度の検出方法や手段は、光学的な方法や手段には限定されず、各種の方法や手段が利用可能であり、例えば、インクタンク52内のインクの電気伝導度などのインク特性を検出して、インク濃度を求めるようにしても良い。なお、本発明においては、インクの濃度を直接的に、かつ高精度に検出できる等の点で、このような光学的な濃度検出方法や手段を好ましく用いることができる。
【0176】
レベル検出部78は、インクタンク52内のインクレベル(インクの液面高さ、すなわちインクの量)を検出し、補充制御部80に供給するためのものである。すなわち、図示例においては、インクタンク52内のインクレベルを検出することによって、インク供給系50内のインク量を検出している。
本発明において、インクレベルの検出手段や方法には、特に限定はなく、電極棒等を用いる電気的なレベル検出手段、フロートを用いるレベル検出手段、超音波式のレベル検出手段、静電容量式のレベル検出手段やこれらの手段を用いる検出方法等、公知の各種の手段や方法が利用可能である。また、インクレベルの検出ではなく、インクタンク内のインク重量の測定等によって、インクタンク52内におけるインク量を直接的に検出するようにしてもよい。
【0177】
補充制御部80は、インクタンク52にインク補充を行う際に、濃度検出部76および86からのインクおよび回収インクの濃度の情報ならびにレベル検出部78からのインクタンク52内におけるインク量の情報を受け、コンクインクおよび希釈液の補充量、または回収インク、コンクインクおよび希釈液の補充量を決定し、コンクインク補充タンク72に対しコンクインクの補充量、希釈液補充タンク74に対し希釈液の補充量を、回収タンク64に対し回収インクの補充量、それぞれ指示するためのものである。
なお、本発明を用いる記録装置10において、インク補充のタイミングには、特に限定的ではなく、例えば、所定時間や期間毎や所定枚数の基板への描画毎等に自動的に行ってもよく、レベル検出部78で検出されたインクタンク52内のインクの量に応じて自動的に行ってもよく、描画した画素を観察したオペレータ等の判断による入力指示に応じて行ってもよく、複数のタイミング決定手段を有し、選択的に行ってもよい。
【0178】
図3〜図5に示すインクジェット描画装置は、基本的に以上のように構成されるものであるが、以下に、このインクジェット描画装置の作用およびインクジェット描画装置によるカラーフィルタ製造のためのインクジェット描画方法を説明する。
図6は、図3〜図5に示すインクジェット描画装置においてカラーフィルタ製造のための描画工程として実施されるインクジェット描画方法の描画開始前の一実施形態のフローを示すフローチャートである。
【0179】
まず、図6に示すように、ステップS120において、図3に示すインクジェット描画装置30で、図示しない基板供給手段により、基板搬送機構40を介してプラテン32上に隔壁14が形成されている基板12を供給する。次に、ステップS122において、供給された基板12を基板搬送機構40の送りローラ46および抑えローラ48によってプラテン32上に搬送してその所定の位置に位置決めして停止させ、基板12をプラテン32上に、例えば吸着等により、装着し、固定する。次いで、ステップS124において、基板12上のアラインメントマークを用いて基板アラインメントが採られ、描画開始位置が設定される。
【0180】
一方、ステップS130において、図3に示すように、ヘッド移動機構38によりドライブスクリュ42を駆動してヘッドユニット36をガイドレール43に沿って移動させ、ヘッドユニット36を基板12の領域またはプラテン32の領域から外れた、インクジェットヘッド34の吐出状態の検査を行うためのメンテナンス位置(吐出検査位置;図示せず)に移動させ、図5に示すように、インクジェットヘッド34のノズル面34aをキャップ58と対向させる。このとき、ヘッドユニット36は、キャップ58と対向する所定位置に移動されている。
次に、ステップS132において、キャップ58を上昇させてインクジェットヘッド34のノズル面34aに当接させ、各ノズルからインクを吐出させてインクの吐出検出を行う。このインクの吐出検出、すなわち吐出状態の検査は、キャップ58内にインクジェットヘッド34の各ノズル毎に設けられた光センサ、例えば発光受光素子に吐出インク液滴の有無を検出することによって行えばよい。あるいは、インクジェットヘッド34の各ノズル毎に吐出インク液滴の量を計測し、その量が予め設定された仕様、すなわち所定範囲内にあるか否によって各ノズルの吐出状態を検査するようにしても良い。なお、吐出検出の際の吐出インクは、インク回収管66を通って回収タンク64に回収される。
【0181】
次いで、ステップS134において、インクジェットヘッド34の全ノズルが、予め設定された仕様内にある、すなわち、適正な吐出状態にあるか否かの判断がなされる。
このステップS134の判断において、インクジェットヘッド34の全ノズルが、上記設定仕様内(適正な吐出状態)にある場合(Y)には、ステップS126に移り、キャップ58をインクジェットヘッド34のノズル面34aから外し、図3に示すように、ヘッド移動機構38によりドライブスクリュ42を駆動してヘッドユニット36をガイドレール43に沿って移動させ、ヘッドユニット36を基板アラインメントによる基板12上の所定の描画開始位置に移動させる。
次いで、ステップS128において、基板12上に描画を行う。
【0182】
一方、上記ステップS134の判断において、インクジェットヘッド34の1つのノズルでも、上記設定仕様(適正な吐出状態)から外れている場合(N)には、ステップS136に移り、インクジェットヘッド34の各ノズルからダミー吐出(予備吐出)を行う。
次に、ステップS138において、ステップS132と同様に、インクジェットヘッド34の各ノズルでのインクの吐出検出を行い、各ノズルの吐出状態を検査する。なお、ダミー吐出および吐出検出の際の吐出インクは、インク回収管66を通って回収タンク64に回収される(図5参照)。
次いで、ステップS140において、ステップS134と同様に、インクジェットヘッド34の全ノズルが上記設定仕様内にあるか否かの判断がなされ、上記設定仕様内にある場合(Y)には、ステップS126に移り、上述のように、キャップ58をインクジェットヘッド34のノズル面34aから外し、ヘッド移動機構38によりドライブスクリュ42を駆動してヘッドユニット36をガイドレール43に沿って移動させ(図3参照)、ヘッドユニット36を基板アラインメントによる基板12上の所定の描画開始位置に移動させる。
次いで、ステップS128において、基板12上に描画を行う。
【0183】
一方、上記ステップS140の判断において、インクジェットヘッド34の1つのノズルでも、上記設定仕様から外れている場合(N)には、ステップS142に移り、インクジェットヘッド34の各ノズルを、吸引ポンプ62によって各ノズル内のインクを吸引するか、または、ヘッド加圧ポンプ68によって各ノズルにヘッド加圧を行って各ノズル内のインクを強制的に吐出させる(図5参照)。なお、吸引ポンプ62によるノズル吸引動作およびヘッド加圧ポンプ68による強制吐出動作の両方を行っても良い。
次に、ステップS144において、キャップ58をインクジェットヘッド34のノズル面34aから外し、クリーニングブレード60によってノズル面34aのワイピングを行い、ノズル面34aに付着している固化インクや高粘度インクなどの劣化インクを擦り取り、ノズル面34aをクリーニングする(図5参照)。
【0184】
その後、ステップS146において、ステップS136と同様に、インクジェットヘッド34の各ノズルからダミー吐出を行う。
次に、ステップS148において、ステップS138と同様に、インクジェットヘッド34の各ノズルでのインクの吐出検出を行い、各ノズルの吐出状態を検査する。なお、ノズル吸引動作および/または強制吐出動作、ダミー吐出および吐出検出の際の吐出インクは、インク回収管66を通って回収タンク64に回収される(図5参照)。
次いで、ステップS150において、ステップS140と同様に、インクジェットヘッド34の全ノズルが上記設定仕様内にあるか否かの判断がなされ、上記設定仕様内にある場合(Y)には、ステップS126に移り、上述のように、キャップ58をインクジェットヘッド34のノズル面34aから外し、ヘッド移動機構38によりドライブスクリュ42を駆動してヘッドユニット36をガイドレール43に沿って移動させ、ヘッドユニット36を基板アラインメントによる基板12上の描画開始位置に移動させる(図3参照)。
次いで、ステップS128において、基板12上に描画を行う。
【0185】
一方、上記ステップS150の判断において、インクジェットヘッド34の1つのノズルでも、上記設定仕様から外れている場合(N)には、再びステップS142に戻り、上述した吸引ポンプ62によるノズル吸引動作および/またはヘッド加圧ポンプ68による強制吐出動作を行い、ステップS144におけるクリーニングブレード60によるノズルワイピング、ステップS146におけるダミー吐出、ステップS148における吐出検出、およびステップS150における全ノズルが上記設定仕様内にあるか否かの判断が順次行われる。
ステップS150において、全ノズルが上記設定仕様内にある場合(Y)には、ステップS126に移り、同様にして、ヘッドユニット36を基板アラインメントによる基板12上の描画開始位置に移動させ(図3参照)、ステップS128において、基板12上に描画が行われるが、インクジェットヘッド34の1つのノズルでも、上記設定仕様から外れている場合(N)には、再び、上述したステップS142に戻り、ステップS142、S144、S146、S148およびS150の各動作が、全ノズルが上記設定仕様内(Y)となるまで、繰り返される。なお、この繰り返し回数が、予め設定された所定回数を超えた場合には、エラーとして、この描画方法の実施を停止するのが良い。
【0186】
なお、ステップS128の描画ステップにおいては、図3に示すインクジェット描画装置30において、ヘッド移動機構38によりヘッドユニット36を主走査(X)方向に移動(走査)させつつ、基板12の所定位置、すなわち基板12上の隔壁14間の所定の凹部16にインクジェットヘッド34からインク18の液滴を吐出させて描画し、カラーフィルタの画素(未硬化画素インク18a)を形成する。
こうして、ヘッドユニット36を基板12の描画領域(隔壁14が形成されている領域)主走査(X)方向の始端から終端および/または終端から始端に移動走査させて、主走査方向の画素形成を終了する。
この後、プラテン32への基板12の吸着固定を解除し、基板移動機構40により送りローラ46を回転させて、基板12を副走査方向に所定距離(例えば、描画領域分の長さΔY(カラーフィルタのセルの1ピッチ(片道)または2ピッチ(往復)))だけ搬送し移動させて、プラテン32上に停止させ、再び、プラテン32に基板12を吸着固定させる。これにより、基板12の主走査方向の始端または終端に到達したヘッドユニット36は、副走査方向に一定量(描画領域分の長さΔY)移動された状態となる。
続いて、こうしてプラテン32上に吸着固定された基板12に、主走査方向の描画開始位置から、上述したように、再び、ヘッド移動機構38によりヘッドユニット36を主走査(X)方向に移動させて、インクジェットヘッド34による描画を行い、基板12の主走査方向の描画を終了する。
その後、再び、プラテン32への基板12の吸着解除、基板12の副走査方向に所定距離ΔYだけの搬送、プラテン32への基板12の吸着固定、インクジェットヘッド34による基板12の主走査方向の描画を繰り返して、基板12を副走査方向の始端から終端まで描画領域分の長さΔYずつ移動させながら、ヘッドユニット36を主走査(X)方向に移動させて、インクジェットヘッドのノズルから吐出信号に応じてインクを吐出させて基板12の全面に1色について描画し、カラーフィルタの画素(未硬化画素インク18a)を形成する。
【0187】
このようにして、カラーフィルタの他の色についても、基板12上でヘッドユニット36を主走査方向に移動させながらインクの吐出を行い、その後、基板12を副走査方向に一定距離移動させることを繰り返し、基板12上に順次他の色について描画し、カラーフィルタの画素(未硬化画素インク18a)を形成し、カラーフィルタの全色について全画素(未硬化画素インク18a)を形成することができる。
なお、本発明においては、ヘッドユニット36のインクジェットヘッド34のノズル配列は特に制限的ではなく、単列であっても、複数列であっても良いし、各ノズル列のノズル数も特に制限的ではなく、1個であっても、複数であっても良い。また、このようなノズル配列を持つインクジェットヘッド34によるカラーフィルタのセルや画素への描画形式は特に制限的ではなくどのようなものであっても良い。
【0188】
例えば、図9(a)に示すように、ノズル部に4列のノズル列を持ちRインクを吐出するインクジェットヘッド34Rと、ノズル部に4列のノズル列を持ちGインクを吐出するインクジェットヘッド34Gと、ノズル部に4列のノズル列を持ちGインクを吐出するインクジェットヘッド34Bを用い、その各インクジェットヘッド34R、34G、34Bの各ノズル列のノズル間隔に対して、図9(b)に示すように、カラーフィルタの各色の1つのセル(画素)20R、20G、20B内に描画すべきドット間隔が小さい場合、インクジェットヘッド34R、34G、34Bをその主走査(X)方向とカラーフィルタのセルの長手方向とが直交するように走査して、1つのインクジェットヘッドからカラーフィルタの1つのセルに対して4列の各列の2個のノズルを用い、合計8個のノズルからインク液滴を吐出してカラーフィルタの1つのセルに8個のドットを形成して、各色毎のセル(つまり、セル20R、20G、20B)を形成しても良い。また、図9(c)に示すように、ノズル部にRインクを吐出するノズルを配置したノズル列35R、Gインクを吐出するノズルを配置したノズル列35G、Bインクを吐出するノズルを配置したノズル列35Bの3列のノズル列を持つインクジェットヘッド34’を用い、インクジェットヘッド34’をその主走査(X)方向とカラーフィルタのセルの長手方向とが一致するように走査して、カラーフィルタの1つのセルに対して1つのノズル列(つまり、ノズル列35R、35G、35Bのいずれか1つのノズル列)の1つのノズルを用い、1つのノズルから合計8個のインク液滴を吐出して、図9(d)に示すカラーフィルタの1つのセル、つまり、図9(d)中ではセル20R、20G、20B、20R’のうちの対応する1つのセルに8個のドットを形成しても良い。図9(d)に示す例では、カラーフィルタの4つのセルの内、3つのセル(具体的には、セル20R、20G、20B)には、それぞれ異なる3種のインクによる8個ずつのドットが形成されていることを示し、図9(d)の最上と最下の2つのセル(具体的には、セル20Rとセル20R’)は、図9(c)に示すインクジェットヘッド34’のノズル列35Rの異なるノズルによって形成され、それぞれ同種のインクによる8個ずつのドットが形成されていることを示す。
【0189】
ここで、図3〜図5に示すインクジェット描画装置30を用い、図6に示すインクジェット描画方法によって形成されるカラーフィルタの画素配列(画素パターン)の形状を、ブラックマトリックス形状として、図7(a)に示すストライプ状、図7(b)に示す格子状、あるいは図7(c)に示すデルタ配列状とすることができるが、本発明は、特に制限的ではない。
【0190】
また、図7(a)〜図7(c)に示すカラーフィルタの色画素配列(色画素パターン)を描画し、硬化して形成する場合、1色、例えば、まず、Rの色画素パターンを描画・硬化して色画素20を形成し、順次他の色を1色ずつ、例えば、G、次にBの順で、色画素パターンを描画・硬化して形成して、全色の色画素20の色画素パターンを形成しても良いし、始めに、2色以上、例えば、RGBの3色の色画素パターンを順次もしくは同時にまたは複数色ずつ描画した後に、描画された2色以上、例えば、RGBの3色の色画素パターンの未硬化画素18aを硬化させて、複数色または全色の色画素パターンの硬化色画素20のを形成しても良い。
このように、カラーフィルタの製造においては、例えば、RGBなどの3原色の画素配列、すなわち画素パターンが規則的であるので、ランダムな色画素パターンからなる通常の画像をインクジェットヘッドで描画する場合よりも、またはこれらと異なり、インクジェットヘッドにおいて使用されるノズルが決まってしまい、インクジェットヘッドの全ノズルの中で長期間使用されないノズルが発生する。このため、本発明のカラーフィルタの製造方法におけるインクジェット描画方法においては、図6に示すように、インクジェットヘッドの各ノズルの吐出状態の検査し、吐出を確認しながらインクジェット描画を実施するのが好ましい。
【0191】
なお、上述した実施形態では、ヘッドユニットを主走査方向および副走査方向に移動させて画素を形成したが、これに限定されず、例えば、ヘッドユニットは、主走査方向のみに移動させ、基板を副走査方向に一定距離ずつ移動させるようにしてもよい。
また、インクジェットヘッドをフルラインヘッドとして、ヘッドユニットの一回の走査で、印刷版原版の全面に画素を形成するようにしてもよい。ここで、インクジェットヘッドをフルラインヘッドとする場合は、インクジェットヘッドを走査させても、基板を走査させてもよい。
【0192】
図5に示す例では、インクタンク52をインク供給管54によって直接インクジェットヘッド34に接続する構成としているが、本発明はこれに限定されず、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果およびリフィルを改善する機能を与えるために、インクタンク52とインクジェットヘッド34との間に供給サブタンクを設ける構成としても良い。
図8に、図5に示すインク供給系に代えて、図3および図4に示すインクジェット描画装置に適用されるインク供給系の他の実施形態の概略構成を模式的に示す。
図8に示すように、インクジェット描画装置31およびこれに用いられるインク供給系90は、基本的に、インクジェットヘッド(吐出ヘッド)34と、キャップ58と、インクタンク52と、供給サブタンク92と、回収タンク64と、補充タンク94と、を有する。
【0193】
図8に示すインクジェット描画装置31およびインク供給系90は、図3〜図5に示すインクジェット描画装置30およびインク供給系50と、供給サブタンク92を有し、回収タンク64とインクタンク52とをオーバーフロー管98で接続している点で異なっている以外は、同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には、同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。なお、図8に示されていないインクジェット描画装置31の走査系は、図3および図4に示すインクジェット描画装置30の走査系が適用されるものであっても良いし、従来公知の走査系が適用されるものであっても良い。
【0194】
インク供給系90は、主に、インクタンク52のインクをインクジェットヘッド34に供給する狭義のインク供給系と、キャップ58にパージされたインクを回収し、再利用するためのインク回収系とから構成される。インク供給系は、インクポンプ96、供給サブタンク92、インクポンプ96と供給サブタンク92とを接続する第1インク供給管54a、供給サブタンク92とインクジェットヘッド34とを接続する第2インク供給管54b、および供給サブタンク92内のインクをオーバーフローさせてインクタンク52に送液回収する第3インク回収管(流路)98としても機能する供給サブタンク92の内部において開口するオーバーフロー管98aから主に構成される。また、インク回収系は、回収タンク64、キャップ58と回収タンク64とを接続する第1インク回収管66、回収タンク64内のインクをオーバーフローさせてインクタンク52に送液回収する第2インク回収管100としても機能する回収タンク64の内部において開口するオーバーフロー管100aから主に構成される。なお、第2インク回収管100(オーバーフロー管100a)には、内部を流れる回収インクを濃度を検出するために回収インクの透過率を計測する濃度検出部86が取り付けられている。また、供給サブタンク92には、大気開放弁102と圧力調整弁104とが取り付けられている。インク供給流路となるインク供給管やインク回収流路となるインク回収管は、例えば、パイプや可撓性を有するチューブなどから構成することができる。
【0195】
なお、図8は、本発明の特徴的な部位を主に示しているが、インクジェット描画装置31およびインク供給系90は、図に示した以外にも、例えば、インクジェットヘッド34を駆動してインク液滴を吐出させるドライバ、インクジェットヘッド34の走査手段やインクジェットヘッド34と対面する所定の経路で、後述するノズル列方向(行方向)と直交する方向に記録媒体Pを搬送(走査搬送)する走査搬送手段など公知のインクジェット描画装置が有する各種の構成要素を有しているのは、もちろんのことである。
【0196】
キャップ58は、インクの循環停止時や長時間描画を行わない間に、インクジェットヘッド34のノズル側に装着されて、インクジェットヘッド34の全てのノズルを外気との連通を断った状態にし、ノズルに残存するインクの蒸発による乾燥固着を防止するものである。 このようなキャップ58は、各種のインクジェット記録装置で通常に使用されているものが各種利用可能である。
インクタンク52は、補充タンク94からの溶媒、コンクインク、回収タンク64からの回収されたインクを混合して、液物性、光学特性を一定にする機能およびインクを保管する機能を有する。インクタンク52は、染料の析出を防止するための撹拌手段や、インク吐出の安定性を向上するための温度調節手段を有するのが好ましい。
第1インク供給管54a上には、インクタンク52から供給サブタンク92にインクを送液するためのインクポンプ96が配置される。インクポンプ96による送液量は、供給サブタンク92からインクジェットヘッド34へのインク供給量よりも多く設定される。
【0197】
供給サブタンク92は、第1インク供給管54aおよび第2インク供給管54bが接続される密閉型のインクタンクであり、鉛直方向においてインクジェットヘッド34よりも下方に配置される。供給サブタンク92に接続された第2インク供給管54bの他端は、インクジェットヘッド34に接続されている。
供給サブタンク92には、第1インク供給管54aによってインクタンク52から供給されたインクが貯留され、貯留されたインクは第2インク供給管54bを介してインクジェットヘッド34に供給される。
また、供給サブタンク92内には、第3インク回収管98となるオーバーフロー管98aが配置され、かつ、第2インク供給管54bは、オーバーフロー管98aの上端よりも下方に接続される。図示例では、第2インク供給管54bとの接続部を供給サブタンク92の底面に設けた構成としている。
【0198】
供給サブタンク92に貯留されたインクは、ノズルメニスカスに表面張力や供給サブタンク圧力調整機構により供給サブタンク92を加圧することで第2インク供給管54bからインクジェットヘッド34に供給される。
また、供給サブタンク92では、インクポンプ96により供給されたインクがオーバーフロー管98aの高さを超えても、オーバーフロー管98aからオーバーフローして排出されるので、タンク内の液面の高さは一定に保たれる。その結果、供給サブタンク92を大気開放にすれば、供給サブタンク92の圧力は一定に保たれる。
なお、オーバーフロー管98からオーバーフローして排出されたインクは、第3インク回収管98を経て、インクタンク52に戻され、再度、循環に供される。
【0199】
回収タンク64は、キャップ58に接続される密閉型のインクタンクであり、インクジェットヘッド34よりも鉛直方向において下方に配置される。前述のように、第1インク回収管66の他端は、キャップ58に、第2インク回収管100の他端は、インクタンク52に、それぞれ接続される。
回収タンク64には、パージ、ダミー吐出によりキャップ58に排出されたインクが貯留される。回収タンク64に貯留されたインクは、第2インク回収管100からインクタンク52に戻される。
【0200】
インクの補充タンク94は、消費したインクをインクタンク52に補充する密閉型のタンクであり、インク補充管106によって、インクタンク52と接続される。
補充タンク94は、インクタンク52内のインクが、所定濃度で、かつ所定量となるように、インクタンク52にインクを補充する。補充タンク94の構成は特に限定されず、例えば、図5に示すインク補充系70のように、コンクインク(高濃度インク)を貯留するコンクタンクと、インクの希釈液を貯留する希釈液タンクとを有し、所定濃度で、かつ所定量となるように、決定された量のコンクインクおよび希釈液をインクタンクに補充するようにしてもよい。なお、希釈液としては、溶媒を用いればよい。
【0201】
インクジェット描画装置31およびインク供給系90において、インクの補充タイミングには、特に限定はない。例えば、所定枚数の描画毎等に自動的に行ってもよく、インクタンク52内のインクの量を検出して自動的に行ってもよく、描画した画素を観察したオペレータ等の判断による入力指示に応じて行ってもよく、複数のタイミング決定手段を有し、選択的に行ってもよい。
また、コンクインクおよび希釈液の補充量の決定方法にも、特に限定はない。例えば、インク予想蒸発量に加え、画素データ等から検出した総インク吐出回数、循環しているインクの濃度測定結果、インクタンク52内のインク量などを用いて、インクの消費量を予測し、インクタンク52内のインクQ所定濃度で所定量となるように、インクの補充量を決定すればよい。
【0202】
希釈液、コンクインク、回収インクの混合方法は、以下の方法で行うこともできる。回収タンク64からインクタンク52への流路となる第3インク回収管100の途中にインク濃度測定エリアとして透明な部分を設け、その部分に濃度検出部86を配置する。濃度検出部86においては、測定エリア内のインクの光透過率を測定することで、インクタンクに回収されるインクの溶媒蒸発量を計算する。光透過率と溶媒蒸発量との関係は、事前に染料濃度の異なるインクと光透過率との関係を測定しておくことや光透過率exp(−α・t) (α:吸収係数(染料濃度に比例)、t:厚み)であることから算出できる。透過率測定のため、インク濃度測定エリアには、光源、受光センサーおよびガラス等の透明部材の流路を具備する。流路は、測定光が透過する部分については、平面であることが望ましく、表面はARコートされていること、光軸に対して垂直から数度傾いていることが望ましい。反射光による測定精度悪化防止のためである。
回収されたインクの濃度から希釈液、コンクインク、回収インクの混合比を決定する。
図8に示すインクジェット描画装置31およびインク供給系90は、基本的に以上のように構成される。
【0203】
以上のようにして製造されたカラーフィルタは、液晶ディスプレイ、電子ペーパや有機ELなどのカラー画像表示デバイスのカラーフィルタとして好適に用いることができる。
【0204】
以上、本発明のインクジェット用インク、カラーフィルタおよびその製造方法、ならびにそれを用いる液晶ディスプレイおよび画像表示デバイスついて、種々の実施形態や実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は、上記実施例や実施形態には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんのことである。
【実施例】
【0205】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の範囲から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特に断りのない限り「%」および「部」は、「質量%」および「質量部」を表し、分子量とは重量平均分子量のことを示す。
【0206】
(隔壁形成用の濃色組成物の調製)
濃色組成物K1は、まず表1に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150rpmで10分間攪拌し、さらに攪拌しながら、表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスジエトキシカルボニルメチル)アミノ−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150rpmで30分間攪拌することによって得られた。なお、表1に記載の量は質量部であり、詳しくは以下の組成となっている。
【0207】
<K顔料分散物1>、
・カーボンブラック(デグッサ社製 Nipex35) 13.1%
・分散剤(下記化合物1) 0.65%
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比
のランダム共重合物、分子量3.7万) 6.72%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 79.53%
【0208】
【化28】

【0209】
<バインダー2>
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=78/22モル比
のランダム共重合物、分子量3.8万) 27%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 73%
【0210】
<DPHA液>
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(重合禁止剤MEHQ 500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD
DPHA) 76%
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 24%
【0211】
<界面活性剤1>
・下記構造物1 30%
・メチルエチルケトン 70%
【0212】
【化29】

【0213】
【表1】

【0214】
(隔壁の形成)
無アルカリガラス基板を、UV洗浄装置で洗浄後、洗浄剤を用いてブラシ洗浄し、更に超純水で超音波洗浄した。基板を120℃3分熱処理して表面状態を安定化させた。
基板を冷却し23℃に温調後、スリット状ノズルを有すガラス基板用コーター(エフ・エー・エス・アジア社製、商品名:MH−1600)にて、上述のように調製した濃色組成物K1を塗布した。引き続きVCD(真空乾燥装置、東京応化工業社製)で30秒間、溶媒の一部を乾燥して塗布層の流動性を無くした後、120℃3分間プリベークして膜厚2.3μmの濃色組成物層K1を得た。
超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング株式会社製)で、基板とマスク(画像パターンを有す石英露光マスク)を垂直に立てた状態で、露光マスク面と濃色感光層K1の間の距離を200μmに設定し、窒素雰囲気下、露光量300mJ/cmで隔壁幅20μm、スペース幅100μmにパターン露光した。
【0215】
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して、濃色組成物層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製を100倍希釈したもの)を23℃80秒、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワー現像しパターニング画像を得た。引き続き、超純水を、超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行い、大気下にて露光量2500mJ/cmにて基板の濃色組成物層K1が形成された面側からポスト露光を行って、オーブンにて240℃50分加熱し、膜厚2.0μm、光学濃度4.0、100μm幅の開口部を有するストライプ状の隔壁を得た。
【0216】
(撥インク化プラズマ処理)
隔壁を形成した基板に、カソードカップリング方式平行平板型プラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて撥インク化プラズマ処理を行った。
使用ガス :CF
ガス流量 :80sccm
圧力 :40Pa
RFパワー:50W
処理時間 :30sec
【0217】
<Si型重合性基含有ポリマーa−1の合成>
内容積1Lのオートクレーブに、下記成分を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、75℃、12時間反応させて重合体1の溶液を得た。
・メチルエチルケトン(MEK)〔溶剤〕 350g
・メタクリル酸2‐(2‐ブロモイソブチリルオキシ)エチル
(BBEM、マナック(株)製)〔重合性化合物1〕 167g
・片末端メタクリレート変性ジメチルシリコーン
(チッソ(株)製、分子量1000、TM−0701)〔シロキサン化合物〕100g
・メチルメタクリレート〔重合性化合物2〕 35g
・ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)
(V−601和光純薬(株)製)開始剤 (0.50mol%) 1.36g
さらに、以上のようにして得られた重合体1を含む系内へMEK350g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)300gを添加し、室温で12時間撹拌した溶液を、トリフルオロメタンスルホン酸で中和したのち、水にて再沈精製し、真空乾燥し、下記構造の特定ポリマーa−1(231g)を得た。特定ポリマーa−1の重量平均分子量(Mw)は、36000であった。
【0218】
【化30】

【0219】
(F型重合性基含有ポリマーb−1の合成)
内容積1Lのオートクレーブに、下記成分を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、75℃、12時間反応させて重合体2の溶液を得た。
・メチルエチルケトン(MEK)〔溶剤〕 350g
・メタクリル酸2‐(2‐ブロモイソブチリルオキシ)エチル
(BBEM、分子量279、マナック(株)製)〔重合性化合物1〕(0.6mol)167g
・2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート
(M−1620、分子量432、ダイキン社製)(0.1mol) 43.2g
・メチルメタクリレート〔分子量100、重合性化合物2〕(0.3mol)30g
・ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)
(V−601和光純薬(株)製)開始剤 (0.25mol%) 0.68g
さらに、以上のようにして得られた重合体2を含む系内へMEK350g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)300gを添加し、室温で12時間撹拌した溶液を、トリフルオロメタンスルホン酸で中和したのち、水にて再沈精製し、真空乾燥し、下記構造の特定ポリマーb−1(231g)を得た。特定ポリマーb−1の重量平均分子量(Mw)は、26000であった。
【0220】
【化31】

【0221】
<赤色(R)用インク>の調製法
下記の成分を混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して赤色用インク液(R実施例1〜5、およびR比較例1〜2)を調製した。
【0222】
用いた素材の詳細を以下に示す。
・染料:一般式(A)で表される化合物
・染料:一般式(B)で表される化合物
・DPCA−60(日本化薬社製(KAYARAD DPCA−60)):カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・KF−353(信越シリコーン社製):ポリエーテル変性シリコーンオイル
・特定ポリマーa−1、特定ポリマーb−1
・一般式(F−1)または一般式(Si−1)で表される化合物
【0223】
【化32】

【0224】
【化33】

【0225】
【化34】

【0226】
【化35】

【0227】
【表2】

【0228】
<緑色(G)用インク>の調製法
下記の成分を混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して緑色用インク液(G実施例1〜5、およびG比較例1〜2)を調製した。
【0229】
用いた素材の詳細を以下に示す。
・染料:一般式(C)で表される化合物
・染料:一般式(D)で表される化合物
・DCHMA:ジシクロヘキシルメチルアミン
・DPHA(日本化薬社製(KAYARAD DPHA)):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・KF−353(信越シリコーン社製):ポリエーテル変性シリコーンオイル
・F781−F(大日本インキ化学工業製(メガファックF781F))
・特定ポリマーa−1、特定ポリマーb−1
・一般式(F−1)または一般式(Si−1)で表される化合物
【0230】
【化36】

【0231】
【化37】


【0232】
【表3】

【0233】
<青色(B)用インク>の調製法
下記の成分を混合し、1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過して青色用インク液(B実施例1〜5、およびB比較例1〜2)を調製した。
【0234】
用いた素材の詳細を以下に示す。
・染料:一般式(E)で表される化合物
・染料:一般式(F)で表される化合物
・DPCA−60(日本化薬社製(KAYARAD DPCA−60)):カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
・KF−353(信越シリコーン社製):ポリエーテル変性シリコーンオイル
・特定ポリマーa−1、特定ポリマーb−1
・一般式(F−1)または一般式(Si−1)で表される化合物
【0235】
【化38】

【0236】
【化39】

【0237】
【表4】

【0238】
(粘度、表面張力の測定)
得られたインクを25℃に調温したまま、東機産業(株)製E型粘度計(RE−80L)を用いて以下の条件で測定した。
(測定条件)
・使用ロータ:1° 34’×R24
・測定時間 :2分間
・測定温度 :25℃
【0239】
得られたインクを25℃に調温したまま、協和界面科学(株)製表面張力計(FACE SURFACE TENSIOMETER CBVB−A3)を用いて測定した。
【0240】
<インクジェット方式による画素部の形成>
次に上述のR実施例1、G実施例1、B実施例1に記載のインクを用いて、上記で得られた基板の隔壁で区分された領域内(凸部で囲まれた凹部)に、Dimatix社製インクジェットヘッド(SE−128、ヘッド温度28℃)により所望の濃度になるまでインクの吐出を行い、100℃ホットプレートで2分乾燥させた。さらに220℃オーブン中で30分ベークすることで隔壁、画素ともに完全に硬化させ、R、G、Bのパターンからなるカラーフィルタを作製した。なお、他のR実施例2〜5、G実施例2〜5、B実施例2〜5のそれぞれのインクについても、同様の方法により、それらインクを用いてカラーフィルタを作製した。
【0241】
<耐薬品性評価方法>
上述の各色インクをガラス基板上にインクジェット法あるいはスピンコート法によってベタ膜を形成して、カラーフィルタ形成と同じようにプリベーク(予備加熱)(温度100℃、2分)、ポストベーク(後加熱)(温度220℃、30分)を行い、膜厚2um(μm)を形成した。
この各色インクがコートされたガラス基板を、評価を行う薬品(2−ブタノン、エタノール、5%硫酸水溶液、5%水酸化ナトリウム水溶液)中に20分間浸し、その前後の色相を測定した。色相の測定は、UV−560(日本分光社製)を用い、ΔEab<5を後述評価結果一覧の○の定義とした。ΔEabが5以上15未満を△と、ΔEabが15以上を×とした。結果を以下の表5に示す。なお、ΔEabは、CIE1976(L*,a*,b*)空間表色系による以下の色差公式から求められる値である(日本色彩学会編 新編色彩科学ハンドブック(昭和60年)p.266)。
ΔEab={(ΔL)2+(Δa)2+(Δb)21/2
【0242】
【表5】

【0243】
上記結果に示すように本願に係るインクジェットインクを用いて作製した着色膜は、各種溶媒に対して優れた耐性を示すことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態における製造工程を示すフローチャートである。
【図2】(a)〜(f)は、それぞれ本発明のカラーフィルタの製造方法における基板からカラーフィルタに至る製造工程順に示す基板およびカラーフィルタの模式的断面図である。
【図3】本発明のカラーフィルタの製造方法の描画工程を実施するのに用いられるインクジェット描画装置の一実施形態の一部分を示す斜視図である。
【図4】図3に示すインクジェット描画装置の部分断面図である。
【図5】図3に示すインクジェット描画装置におけるインク循環系の一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図6】図3に示すインクジェット描画装置において実施される描画方法の一実施形態のフローを示すフローチャートである。
【図7】(a)〜(c)は、それぞれ図3に示すインクジェット描画装置によって描画されたカラーフィルタの画素配列を示す模式図である。
【図8】図3に示すインクジェット描画装置に適用されるインク循環系の他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図9】(a)〜(d)は、それぞれ図3に示すインクジェット描画装置のインクジェットヘッドのノズル配列の一実施例およびそのノズル配列を持つインクジェットヘッドによって描画されたカラーフィルタの画素のドット形成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0245】
10 カラーフィルタ
12 基板
14 隔壁
16 凹部
18 インク
18a 未硬化画素インク
20 画素
22 保護膜
30,31 インクジェット描画装置
32 プラテン
34 インクジェットヘッド
36 ヘッドユニット
38 ヘッド移動機構
40 基板搬送機構
42 ドライブスクリュ
43 ガイドレール
44 駆動支持部
45 支持部
46 送りローラ
48 抑えローラ
50,90 インク供給系
52 インクタンク
54,54a,54b インク供給管
56,84 フィルタ
58 キャップ
60 クリーニングブレード
62 吸引ポンプ
64 回収タンク
66,100 インク回収管
68 ヘッド加圧ポンプ
70 インク補充系
72 コンクインク補充タンク
74 希釈液補充タンク
76,86 濃度検出部
78 レベル検出部
80 補充制御部
82 回収インク補充管
92 供給サブタンク
94 補充タンク
96 インクポンプ
98 オーバーフロー管
102 大気開放弁
104 圧力調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料、溶媒、重合性モノマー、および下記一般式(1)で表される化合物を含有するインクジェット用インク。
【化1】


(一般式(1)中、Mは重合性基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。Aは、ケイ素原子またはフッ素原子を含む官能基を表す。nは、1〜100の整数を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(2)で表される化合物である請求項1に記載のインクジェット用インク。
【化2】


(一般式(2)中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。Rは、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するアリール基、または一般式(X)で表される基を表す。)
【化3】


(一般式(X)中、Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rgは、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Z)で表される基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【化4】


(一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。lは、0〜49の整数を表す。)
【化5】


(一般式(Z)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Mは、重合性基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(2)で表される化合物が、一般式(3)で表される化合物、または一般式(4)で表される化合物である請求項2に記載のインクジェット用インク。
【化6】


(一般式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。Rc、RdおよびRm〜Roは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【化7】


(一般式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表す。Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【化8】


(一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。lは、0〜49の整数を表す。)
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物が、一般式(5)で表される化合物である請求項2に記載のインクジェット用インク。
【化9】


(一般式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Lは、−C2p−、−C(C2p+1)H−、−CHC(C2p+1)H−、−CHCHO−、−CHCHCHO−、または単なる結合手を表す。Rは、−C2q+1、−(CFH、−(CFOC2q2s+1、−(CFpOC2r2sH、−N(C2p+1)COC2q+1、または−N(C2p+1)SO2q+1を表す。pは、1〜10の整数を表す。qは、1〜16の整数を表す。rは、0〜10の整数を表す。sは、0〜16の整数を表す。)
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物が、一般式(6)で表される繰り返し単位および一般式(7)で表される繰り返し単位を有する高分子である請求項1に記載のインクジェット用インク。
【化10】


(一般式(6)中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。Rは、重合性基を表す。
一般式(7)中、R10は水素原子、フッ素原子またはアルキル基を表す。Lは、2価の連結基または単なる結合手を表す。R11は、フッ素原子、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するアリール基、または一般式(X)で表される基を表す。R12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子を表す。)
【化11】


(一般式(X)中、Ra、Rb、ReおよびRfは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Y)で表される基を表す。RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rgは、水素原子、アルキル基、アリール基または一般式(Z)で表される基を表す。mは、1〜50の整数を表す。)
【化12】


(一般式(Y)中、Rh〜Rlは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。lは、0〜49の整数を表す。)
【化13】


(一般式(Z)中、Lは2価の連結基または単なる結合手を表す。Mは、重合性基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(1)中のMが、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基およびアリル基からなる群から選択されるいずれかである請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
界面活性剤をさらに含有する請求項1〜6のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
吐出時における粘度が2〜30mPa・sである請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
25℃における表面張力が20〜40mN/mである請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
基板上に形成された隔壁により区画された凹部にインクジェット法により請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット用インクの液滴を付与してカラーフィルタの色画素を形成する画素形成工程を有するカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
前記画素形成工程は、前記インクジェット法により液滴として前記凹部に前記インクを付与する描画工程と、前記凹部に付与された前記インクを硬化させて前記色画素を形成する硬化工程とを有する請求項10に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項12】
前記硬化工程は、前記インクに含まれる溶剤を除去してインク残部とした後に、前記インク残部に活性エネルギー線を照射する照射工程および/または前記インク残部を加熱する加熱工程とを備え、前記照射工程および/または前記加熱工程により前記インク残部を重合して前記色画素を形成する請求項11に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項13】
前記描画工程は、インクジェットヘッドの吐出ノズルから前記インクジェット用インクの液滴を吐出して前記基板の前記凹部に付与するものであり、
さらに、前記描画工程の前に、前記インクジェットヘッドの吐出ノズルの吐出状態を検査する検査工程と、
前記吐出状態の検査結果が所定規定範囲外の場合に、前記インクジェットヘッドによる描画領域外で、前記所定規定範囲外に該当する吐出ノズルについてインク吐出動作を実施する前処理工程とを有し、
この前処理工程の後、前記検査工程に戻り、前記吐出状態を再度検査して、前記所定規定範囲内である場合に、前記描画工程により前記色画素の描画を開始する請求項11または12に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項14】
前記描画工程は、インクジェットヘッドの吐出ノズルから前記インクジェット用インクの液滴を吐出して前記基板の前記凹部に付与するものであり、
さらに、前記描画工程の前に、前記インクジェットヘッドの吐出ノズルの吐出状態を検査する検査工程と、
前記検査工程における検査により、前記インクジェットヘッドに不吐出ノズルがある場合に、前記インクジェットヘッドの複数の吐出ノズルの内の前記不吐出ノズルを含む一部あるいは全部に対して、ヘッド加圧による前記吐出ノズルのインクパージ、前記吐出ノズルからのインク吸引、前記インクジェットヘッドのノズル面のワイピングのうち一部あるいは全部を実施する前処理工程と、
この前処理工程の後、前記検査工程に戻り、前記吐出状態を再度検査して、前記所定規定範囲内である場合に、前記描画工程により前記色画素の描画を開始する請求項11または12に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項15】
さらに、前記前処理工程における前記インク吐出動作により吐出されたインク、前記インクパージによりパージされたインクおよび前記インク吸引により吸引されたインクを回収する回収工程と、
回収された回収インクを保管する保管工程と、
保管されている回収インクの濃度を含むインク特性を評価する評価工程と、
評価された回収インクの評価結果に基づいて前記回収インクを前記色画素を形成するための前記インクジェット用インクとして再調液する再調液工程とを有する請求項13または14に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項16】
さらに、予め、高濃度インクを高濃度インク保存タンクに、希釈用インクを希釈用インク保存タンクに保存しておく第1保存工程と、
前記高濃度インク保存タンクから前記高濃度インクを供給し、前記希釈用インク保存タンクから前記希釈用インクを供給する供給工程と、
供給された前記高濃度インクと供給された前記希釈用インクとを調液して前記色画素を形成するための前記インクジェット用インクとして調液インクを生成する調液工程と、
前記インクジェット用インクとして調液された前記調液インクを調液インク保存タンクに保存する第2保存工程とを有し、
前記描画工程において、前記調液インク保存タンクに保存された前記調液インクを前記インクジェット用インクとして供給する請求項10〜15のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項17】
前記希釈用インクが、前記溶媒である請求項10〜16のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法により製造されるカラーフィルタ。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により製造されるカラーフィルタ。
【請求項20】
請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット用インクを用いて形成された色画素を備えるカラーフィルタ。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかに記載のカラーフィルタを備える液晶ディスプレイ。
【請求項22】
請求項18〜20のいずれかに記載のカラーフィルタを備える画像表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−18653(P2010−18653A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178154(P2008−178154)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】