説明

インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置

【課題】迅速且つ十分に色材を凝集させ、画像濃度の向上、滲み(フェザリング/ICB)改善を実現可能なインクジェット用インクセット、並びに、それを用いたインクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】 インクジェト用インクセットにおいて、少なくとも色材及び両性イオン物質を含むイオンと、インクの液性(pH)とは異なる液性(pH)の処理液と、から構成し、そして、色材としてアニオン性を呈するものを用いる場合、インクの液性を塩基性とし、処理液の液性を酸性とする(第一の発明)。一方、色材としてカチオン性を呈するものを用いる場合、インクの液性を酸性とし、処理液の液性を塩基性とする(第二の発明)。そして、これを用いたそれを用いたインクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル、スリットあるいは多孔質フィルム等から液体あるいは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等に記録を行う、いわゆるインクジェット方式の記録装置は、小型で安価、静寂性等種々の利点があり、最近ではレポート用紙、コピー用紙等のいわゆる普通紙上に良好な印字品質が得られる黒色の単色プリンターだけではなく、フルカラー記録が行える製品が数多く市販されており、記録装置の分野で大きな位置を占めるようになった。中でも、圧電素子を用いたいわゆるピエゾインクジェット方式、あるいは、熱エネルギーを作用させて液滴を形成し、記録を行う、いわゆる熱インクジェット方式は、高速印字、高解像度が得られる等、多くの利点を有している。
【0003】
インクジェット記録装置で用いられるインクは、主に溶媒、色材、添加剤から構成される。かかるインクに対しては、紙上で滲みのない、高解像度、高濃度で均一な画像が得られること、紙上においてインクの速乾性が良いこと、画像の堅ろう性が良いこと、長期保存安定性が良いこと、などの要求特性がある。また、オフィス向けインクジェットプリンターにおいては、高画質であることだけでなく、高速印刷が可能であることが求められている。
【0004】
近年、画像濃度の向上、滲み(フェザリング/ICB)改善の両立を目的として、第二液(処理液)を用いて用紙上でインクの色材を凝集させ、用紙内部への色材の浸透を防止する方法が提案されている。このような色材の凝集作用を生じさせるために、両性イオン物質を用いることが、例えば、特開平9−151346号公報、特開2004−155868公報には提案されている。
【特許文献1】特開平9−151346号公報
【特許文献2】特開2004−155868公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昨今の技術要求からすると、上記提案でも、両性イオン物質により色材の凝集作用を生じさせる際に、色材と両性イオン物質との遭遇(接触)する確率/時間の関係上、画質改善効果が不十分であるといった問題があり、より迅速且つ十分に色材を凝集させることが求められているのが現状である。
【0006】
従って、本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、迅速且つ十分に色材を凝集させ、画像濃度の向上、滲み(フェザリング/ICB)改善を実現可能なインクジェット用インクセット、並びに、それを用いたインクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
第一の本発明のインクジェット用インクセットは、少なくともアニオン性の色材及び両性イオン物質を含む塩基性のインクと、酸性の処理液と、を具備することを特徴としている。
【0008】
第二の本発明のインクジェット用インクは、少なくともカチオン性の色材及び両性イオン物質を含む酸性のインクと、塩基性の処理液と、を具備することを特徴としている。
【0009】
上記いずれの本発明のインクジェット用インクにおいては、前記両性イオン性物質は両性イオンポリマーであることが好適である。また、前記両性イオンポリマーは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸ジアルキルアミノエステル重合体、アリルアミン−マレイン酸共重合体、ビニルピリジン−アクリル酸共重合体、アミノエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、2−ビニルピリジン−マレイン酸共重合体、4−ビニルピリジン−マレイン酸共重合体、2−ビニルピリジン−イタコン酸共重合体、n−メチルアミノエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、4−ビニルピリジン−イタコン酸共重合体、n−メチルアリルアミン−イタコン酸共重合体、及び4−ビニルピリジン−フマール酸共重合体より選択される少なくとも1種であることが好適である。を特徴とする請求項3に記載のインクジェット用インクセット。
【0010】
上記いずれの本発明のインクジェット用インクにおいては、前記色材は顔料であることが好適緒である。また、前記顔料は自己分散顔料であることが好適である。
【0011】
上記いずれの本発明のインクジェット用インクにおいては、前記処理液は少なくとも多価金属化合物を含有することが好適である。
【0012】
一方、本発明のインクジェト用インクタンクは、上記本発明のインクジェット用インクセットを収納したことを特徴としている。
また、本発明のインクジェット記録方法は、上記第一及び第二の本発明のインクジェット用インクセットを用い、前記インク及び処理液が互いに接触するように記録媒体上に吐出して、画像を形成することを特徴としている。
また、本発明のインクジェット記録方法において、前記インクジェット用インクセットを収納したインクジェット用インクタンクから供給された前記インク及び処理液を、記録媒体上に吐出することが好適である。
【0013】
本発明のインクジェット記録方法においては、前記記録媒体上に吐出する前記インク総量と前記処理液総量と比率(インク総量:処理液総量)は1:0.5〜1:0.05であることが好適である。
【0014】
また、本発明のインクジェット記録装置は、上記第一及び第二の本発明のインクジェット用インクセットにおける各液体を記録媒体に吐出するための記録ヘッドを備えることを特徴としている。
本発明のインクジェット記録装置においては、前記インクジェット用インクセットを収納したインクジェット用インクタンクから前記記録ヘッドへ、前記インク及び処理液を供給するためのインクジェット用インクタンクを、さらに備えることが好適である。
【0015】
本発明のインクジェット記録装置においては、前記記録媒体上に吐出する前記インク総量と前記処理液総量と比率(インク総量:処理液総量)は1:0.5〜1:0.05であることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、迅速且つ十分に色材を凝集させ、画像濃度の向上、滲み(フェザリング/ICB)改善を実現可能なインクジェット用インクセット、並びに、それを用いたインクジェット用インクタンク、、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(インクセット)
本発明のインクセットは、少なくとも色材及び両性イオン物質を含むイオンと、インクの液性(pH)とは異なる液性(pH)の処理液と、からなるものである。そして、色材としてアニオン性を呈するものを用いる場合、インクの液性を塩基性とし、処理液の液性を酸性とする(第一の発明)。一方、色材としてカチオン性を呈するものを用いる場合、インクの液性を酸性とし、処理液の液性を塩基性とする(第二の発明)。
【0018】
ここで、なるべく速く色材を凝集させるためには、インク中の色材と処理液中の凝集剤とが混合して反応するより、もともとインク中に含まれている材料間で反応する方がよい。しかしながら、単純に色材と逆極性の材料をインク中に添加したのでは、インク自体が成り立たない、又は保存安定性が確保できないといった問題がある。
【0019】
そこで、本発明では、インク中に色材凝集性のある両性イオン物質を凝集性が発揮しない状態で添加しておき、記録媒体上において、処理液と混合された際、凝集性を発揮する状態に変化させるようにする。
【0020】
つまり、色材がアニオン性の場合、両性イオン物質は分子中のカチオン基は解離せず、アニオン基の解離により溶解していて、色材と反応しない状態、すなわちインクの液性を塩基性としおく。そして、処理液の液性を酸性にしておき、インクが処理液と混合してはじめて両性イオン物質中のカチオン基が解離する状態になり、色材のアニオン基と反応して色材凝集させる。
【0021】
一方、色材がカチオン性の場合、両性イオン物質は分子中のアニオン基は解離せず、カチオン基の解離により溶解していて、色材と反応しない状態、すなわちインクの液性を酸性としておく。そして、処理液を塩基性にしておき、インクが処理液と混合してはじめて両性イオン物質中のアニオン基が解離する状態になり、色材のカチオン基と反応して色材凝集させる。
【0022】
このため、本発明では色材の凝集に伴う反応性が向上しており、迅速且つ十分に色材を凝集させることができる。これにより、画像濃度の向上、滲み(フェザリング/ICB)改善が効果的に実現可能である。
【0023】
また、2液式では、乾燥時間を短縮させようとして、インク及び処理液の用紙への浸透性を高めると、用紙上で色材が十分凝集するには反応が不十分であり、すこしでも反応を生じさせるべく色材と両性イオン物質との接触確率を高めようとして、処理液の用紙へ付着量を増やすと、印字後の紙しわを増幅させる結果となる。
【0024】
しかし、本発明では、迅速且つ十分に色材を凝集させることができるので、インク及び処理液の浸透性を上げる必要もなく、処理液の付与量も少量ですむため、乾燥時間短縮及び用紙しわ抑制も図れる。
【0025】
本発明のインクセットにおいて、塩基性のインクと酸性の処理液との組合せの場合、インクのpHは8.5以上が好ましく、さらに9以上であるのがより好ましい。また、処理液のpHは5.5以下であるのが好ましく、さらに5以下であるのがより好ましい。
【0026】
一方、酸性のインクと塩基性の処理液との組合せの場合、インクのpHは5.5以下が好ましく、さらに5以下であるのがより好ましい。また、処理液のpHは、8.5以上であるのが好ましく、さらに9以上であるのがより好ましい。
【0027】
ここで、インク及び処理液の液性(pH)は、例えば、pH調整剤を添加することで調整することができる。pH調整剤としては、pHを調整しうる、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩、グッドバッファー等の生化学用pH調整剤等が挙げられる。
【0028】
なお、pHとは、温度23±0.5℃、湿度55±5%RH環境下において、pH/導電率計(メトラー・トレド社製MPC227)により測定した値を用いるものとする。
【0029】
このようなpH調整剤は、インク及び処理液のそれぞれを、前記した液性(pH)条件に適合するように適宜添加される。以下に詳述するように、インクに含まれる色材がアニオン性であるかカチオン性であるかにより、インク及び処理液のそれぞれのpHが決定され、それに応じた種類と添加量とが選択されるものである。
【0030】
以下、インク及び処理液の構成材料について説明する。
【0031】
インクは、少なくとも色材、両性イオン物質、水溶性溶媒、及び水を含有することができる。
【0032】
色材について説明する。色材は、目的に応じて、アニオン性の色材、及びカチオン性の色材が適宜用いられる。アニオン性の色材は、アニオン性基(例えば、−COOH基、SO3H基、−SO4H基、−SO2基、−PO42基、又はこれらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩等))を有する色材である。また、アニオン性の色材は、例えば、顔料に吸着している顔料分散剤がアニオン性基を有するものでもよい。一方、カチオン性の色材は、カチオン性基(例えば、1級〜3級アミノ基、又は4級アンモニウム塩基)を有する色材である。また、カチオン性の色材は、例えば、顔料に吸着している顔料分散剤がカチオン性基を有するものでもよい。
【0033】
色材は、染料、顔料どちらでも構わないが、特に顔料が好ましい。これは、染料に比べて顔料の方が、処理液との混合時に凝集が生じやすいためであると考えられる。顔料の中でも、高分子分散剤(後述の高分子物質)により分散されている顔料、自己分散可能な顔料、樹脂により被覆された顔料、及び高分子グラフト顔料が好ましく、特に、自己分散可能な顔料が好ましい。
【0034】
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することも可能である。更には、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0035】
黒色顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1, Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
シアン顔料としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
マゼンタ顔料としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−184,−202等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
イエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤を使用しなくとも水中で安定に分散する顔料のことを指す。具体的には、通常の所謂顔料に対して、酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことで、水に自己分散可能な顔料が得られる。
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−250、Cab−o−jet−260、Cab−o−jet−270、Cab−o−jet−300、IJX−444、IJX−55、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0040】
また、色材として、樹脂により被覆された顔料等を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
【0041】
更に、色材としての顔料に、高分子グラフト顔料を使用することも可能である。高分子グラフト顔料とは、顔料表面に対してポリマー等の有機化合物が化学結合しているものを指す。
【0042】
一方、染料としては、水溶性染料、分散染料のいずれでも構わない。
水溶性染料の具体例としては、C.I.Direct Black−2,−4,−9,−11,−17,−19,−22,−32,−80,−151,−154,−168,−171,−194,−195、C.I.Direct Blue−1,−2,−6,−8,−22,−34,−70,−71,−76,−78,−86,−112,−142,−165,−199,−200,−201,−202,−203,−207,−218,−236,−287,−307,C.I.Direct Red−1,−2,−4,−8,−9,−11,−13,−15,−20,−28,−31,−33,−37,−39,−51,−59,−62,−63,−73,−75,−80,−81,−83,−87,−90,−94,−95,−99,−101,−110,−189,−227、C.I.Direct Yellow−1,−2,−4,−8,−11,−12,−26,−27,−28,−33,−34,−41,−44,−48,−58,−86,−87,−88,−132,−135,−142,−144,−173、C.I.Food Black−1,−2、C.I.Acid Black−1,−2,−7,−16,−24,−26,−28,−31,−48,−52,−63,−107,−112,−118,−119,−121,−156,−172,−194,−208、C.I.Acid Blue−1,−7,−9,−15,−22,−23,−27,−29,−40,−43,−55,−59,−62,−78,−80,−81,−83,−90,−102,−104,−111,−185,−249,−254、C.I.Acid Red−1,−4,−8,−13,−14,−15,−18,−21,−26,−35,−37,−52,−110,−144,−180,−249,−257,−289、C.I.Acid Yellow−1,−3,−4,−7,−11,−12,−13,−14,−18,−19,−23,−25,−34,−38,−41,−42,−44,−53,−55,−61,−71,−76,−78,−79,−122などが挙げられる。
【0043】
分散染料の具体例としては、C.I.Disperse Yellow−3、−5、−7、−8、−42、−54、−64、−79、−82、−83、−93、−100、−119、−122、−126、−160、−184:1、−186、−198、−204、−224、C.I.Disperse Orange−13、−29、−31:1、−33、−49、−54、−66、−73、−119、−163、C.I.Disperse Red−1、−4、−11、−17、−19、−54、−60、−72、−73、−86、−92、−93、−126、−127、−135、−145、−154、−164、−167:1、−177、−181、−207、−239、−240、−258、−278、−283、−311、−343、−348、−356、−362、C.I.Disperse Violet−33、C.I.Disperse Blue−14、−26、−56、−60、−73、−87、−128、−143、−154、−165、−165:1、−176、−183、−185、−201、−214、−224、−257、−287、−354、−365、−368、C.I.Disperse Green−6:1、−9などが挙げられる。
【0044】
色材粒子の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。色材の粒子の体積平均粒子径とは、色材そのものの粒子径、又は色材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した状態の粒子径をいう。本発明において、体積平均粒子径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析装置(Leeds&Northrup社)を用いた。具体的には、その測定は、インクを4mlを測定セルに入れ、所定の方法に従って行った。なお、即定時に入力するパラメーターとして、粘度は、インクの粘度を、分散粒子の密度は、顔料密度(色材密度)を用いた。
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上200nm以下であり、更に好ましくは30nm以上175nm以下である。インク中の色材粒子の体積平均粒子径が10nm未満である場合には、光学濃度が低くなる場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、保存安定性が確保できない場合がある。
【0045】
色材は、インク全質量に対し0.1質量%以上20質量%以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下の範囲で使用される。インク中の色材量が0.1質量%未満の場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、また、色材量が20質量%よりも多い場合には、インクの噴射特性が不安定となる場合がある。
【0046】
色材は、色材を分散させるため、又は、色材の凝集促進剤として、高分子物質を併用することができる。なお、色材(顔料)を分散させるために用いられる高分子物質を高分子分散剤と称する。
ここで用いられる高分子物質としては、水溶性高分子物質、及び、エマルジョン、自己分散微粒子などの水不溶性高分子物質のいずれもが使用でき、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物いずれであっても構わない。
【0047】
高分子物質は、処理液に含まれる凝集剤により増粘又は凝集する効果があり、高分子物質が凝集する際に色材を取り込むため、結果として色材の凝集速度を大きくする効果があると推測している。即ち、高分子物質が凝集する際の構造体の大きさ、密度、高分子物質中への色材の取りこみ易さなどが凝集速度では重要となる。これらの組合せを最適化するように、インク中における色材、高分子物質、処理液中における凝集剤を選択することで、光学濃度、滲み、色間滲みが改善される。
本発明においては、高分子物質としてはカルボン酸基を含有する化合物が使用されることが好ましい。これは、カルボン酸基の解離度が小さいため、凝集剤による凝集が促進されるためであると推測される。
【0048】
高分子物質の具体例について説明する。高分子物質としては、具体的には、例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等が挙げられる。α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0049】
上記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独若しくは複数を共重合して得られる共重合体が、本発明における高分子物質として好適に使用される。この共重合体として、具体的には、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0050】
これらの高分子物質は、酸価などを基準に、色材(顔料)との親和性、高分子物質自体の凝集性などを考慮して選択することが好ましい。具体的には、高分子物質として、酸価が30KOHmg/g以上150KOHmg/g未満であるか、又は、酸価が150KOHmg/g以上であり、かつ、中和度が80%以下であるものを用いることが好ましい。
高分子化合物の酸価が30KOHmg/g以上150KOHmg/g未満である場合には、より好ましくは酸価が50〜120KOHmg/gであり、更に好ましくは、70〜120KOHmg/gである。酸価が30KOHmg/g未満の場合には、インクの噴射(吐出)安定性が低下する場合がある。
一方、高分子化合物の酸価が150KOHmg/g以上で、中和度が80%以下である場合では、より好ましくは、酸価が200〜400KOHmg/g、中和度が50〜80%であり、更に好ましくは、酸価が200〜300KOHmg/g、中和度が60〜80%である。酸価が400KOHmg/gを超え、中和度が80%を超える場合、インクの粘度が大きくなり、正常に噴射できない場合がある。
【0051】
このように、低酸価の高分子物質を使用する、又は、高酸価の高分子物質を低中和度で使用することで、高分子物質の水溶性基量を少なくすることが可能となり、処理液に凝集力の弱い凝集剤を用いた場合においても、十分に大きな凝集力を得ることが可能となるためであると考えている。
【0052】
高分子物質の重量平均分子量は、2,000〜100,000の範囲であることがより好ましく、3,500〜50,000の範囲であることが更に好ましい。高分子物質の重量平均分子量が2,000未満の場合、顔料が安定に分散しない場合が存在し、一方、分子量が100,000を超える場合には、インクの粘度が高くなり、吐出性が悪化する場合がある。
【0053】
高分子物質は、インク全質量に対し、0.01質量%以上10質量%以下の範囲で添加されることが好ましく、0.05質量%以上7.5質量%以下の範囲がより好ましく、更に好ましくは、0.1質量%以上5質量%以下の範囲である。添加量が10質量%を超える場合には、液体粘度が高くなり、インクの噴射特性が不安定となる場合がある。一方、添加量が0.01質量%未満の場合には、顔料の分散安定性が低下する場合がある。
【0054】
両性イオン物質について説明する。両性イオン物質としては、カチオン基及びアニオン基の双方を有する物質である。また、両性イオン物質にはノニオン性基を有してもよい。
【0055】
両性イオン物質は、低分子量の物質、高分子量の物質のいずれの物質を使用することができるが、色材の凝集作用を効果的に発揮する点から、高分子の物質(両性イオンポリマー)が好適である。
【0056】
両性イオンポリマーは、例えば、カチオン基として脂肪族アミノ基或いは芳香族アミノ基を含有するモノマーと、窒素原子を含むヘテロ芳香環を有するモノマーと、アニオン性基としてカルボン酸基或いはスルホン酸基を有するモノマーと、を少なくとも重合成分として含み、その他、ノニオン性モノマーも重合成分として含む、ポリマーが挙げられる。
【0057】
具体的には、スチレン−アクリル酸−アクリル酸ジアルキルアミノエステル重合体、アリルアミン−マレイン酸共重合体、ビニルピリジン−アクリル酸共重合体、アミノエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、2−ビニルピリジン−マレイン酸共重合体、4−ビニルピリジン−マレイン酸共重合体、2−ビニルピリジン−イタコン酸共重合体、n−メチルアミノエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、4−ビニルピリジン−イタコン酸共重合体、n−メチルアリルアミン−イタコン酸共重合体、及び4−ビニルピリジン−フマール酸共重合体などが好適に挙げられる。
これら両性イオンポリマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0058】
両性イオンポリマーの重量平均分子量は、600以上が好ましく、より好ましくは800以上50000未満、さらに好ましくは1000以上30000未満である。この分子量が大きすぎると、例えば、ノズルの目詰まりが生じるなどインクの噴射特性が悪化し、小さすぎると色材への凝集作用が弱くなってしまうことがある。
【0059】
両性イオン物質の含有量としては、インクの全質量に対し、0.05質量%以上20質量%以下、好ましくは、0.1質量%以上10質量%以下で使用される。液体中の両性イオン物質が0.05質量%よりも少ない場合には、色材の凝集効果が弱く、画質改善が不十分な場合が存在し、逆に、20質量%よりも多い場合には、ノズル詰まりや方向性不良といったヘッドでの吐出性に関する問題がおこりやすい場合がある。
【0060】
水溶性溶媒について説明する。水溶性溶媒としては、水に0.1%以上溶解するものであれば適宜使用できるが、具体的には、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0061】
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0062】
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。
アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0063】
水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。
水溶性溶媒の含有量としては、インクの全質量に対し、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。液体中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、インクの粘度が大きくなり、インクの噴射特性が不安定になる場合がある。
【0064】
水について説明する。水は、インクの表面張力及び粘度となる範囲で添加される。水の添加量は、特に制限は無いが、好ましくは、インクの全質量に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上85質量%以下である。
【0065】
インクの好ましい物性について説明する。インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
【0066】
また、インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。インクの粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
【0067】
次に、処理液について説明する。処理液は、少なくとも水溶性溶媒、及び水を含有することができる。また、より効果的な色材の凝集を促進させるために、凝集剤を含ませてもよい。
【0068】
凝集剤について説明する。凝集剤とは、インク中の成分と反応、又は、相互作用をすることで、増粘又は凝集を起こす効果を有する物質のことを示す。具体的には、無機電解質、有機アミン化合物、及び有機酸などが有効に使用される。
【0069】
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0070】
アルカリ金属類の塩(アルカリ金属化合物)の具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等が挙げられる。
一方、多価金属塩(多価金属化合物)の具体例としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。
【0071】
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩等が挙げられる。
具体例としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩、ポリアミン等が挙げられ、例えば、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、ジプロピルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体、及び、これら化合物のスルフォニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩、又は、リン酸エステル等が挙げられる。
【0072】
有機酸としては、具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸、フタル酸水素カリウム、リン酸二水素カリウム、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、四ホウ素ナトリウム、酒石酸、乳酸、塩化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、これらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の化合物が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、好ましくは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、クエン酸二水素カリウム、コハク酸、酒石酸、乳酸、フタル酸水素カリウム、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より好ましくは、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、ジアリルアミン重合体、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくはこれらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
【0074】
さらに、これらの中でも、特に多価金属塩(多価金属化合物)が好適である。凝集剤は単独で使用しても、或いは2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0075】
凝集剤の添加量は、処理液全質量に対し、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.1質量%以上15質量%以下であり、更に好ましくは、0.25質量%以上10質量%以下である。処理液中における凝集剤の添加量が0.01質量%未満の場合には、インク接触時において色材の凝集が不充分となり、光学濃度、滲み、色間滲みが悪化する場合が存在し、一方、添加量が30質量%を超える場合には、噴射特性が低下し、液体が正常に噴射しない場合がある。
【0076】
水溶性溶媒について説明する。水溶性溶媒としては、インクと同様の水溶性溶媒を使用することができる。
【0077】
水溶性溶媒の含有量は、処理液の全質量に対し、1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。処理液中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、処理液の粘度が大きくなり、処理液の噴射特性が不安定になる場合がある。
【0078】
水について説明する。水は、表面張力及び粘度となる範囲で添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、処理液の全質量に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0079】
処理液の好ましい物性について説明する。処理液の表面張力は、20mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN/m以上39mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、45mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
【0080】
処理液の粘度は、いずれも1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。処理液の粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
【0081】
次に、インク及び処理液に対し、適宜、用いることのできる添加剤について説明する。
【0082】
インク及び処理液は、界面活性剤を用いることもできる。界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用することができる。更には、上記高分子物質(高分子分散剤)をも界面活性剤として使用することもできる。
【0083】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が使用でき、具体的には、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ケリルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等も有効に使用される。
【0084】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、脂肪族アルカノールアミド、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0085】
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
その他、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
【0086】
界面活性剤の量は、10質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%の範囲で使用される。添加量が10質量%以上の場合には、光学濃度、及び、顔料インクの保存安定性が悪化する場合がある。
【0087】
その他、インク及び処理液には、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を添加することができる。
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を添加することができる。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0088】
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、インクと処理液とを互いに接触させるように記録媒体上に吐出して、画像を形成する方法である。また、本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明のインクジェット用インクセットの各液体を記録媒体に吐出する記録ヘッドを備えるものである。これらは、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、又は、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び処理液を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する記録装置等を適用することができる。
【0089】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インク及び処理液ともに、1ドロップ当たりの液体質量は25ng以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5ng以上20ng以下であり、更に好ましくは、1ng以上8ng以下である。1ドロップ当たりの液体質量が25ngを超える場合には、滲みが悪化する場合が存在した。これは、インク及び処理液の記録媒体に対する接触角がドロップ量に依存して変化するためであり、ドロップ量が増えるにつれてドロップが紙表面方向に広がりやすい傾向があるためと考えている。
但し、一つのノズルから複数の体積のドロップを噴射することが可能であるインクジェット装置において、上記ドロップ量とは、印字可能な最小ドロップのドロップ量を指すこととする。
【0090】
また、インク及び処理液とは互いに接触するように、記録媒体上に付与されるが、接触していれば、互いに隣接するよう付与されても、覆い被さるように付与されても、どちらでもよい。
【0091】
また、記録媒体への付与の順番は、処理液を付与した後、インクを付与する。処理液を先に付与することで、インク中の色材を効果的に凝集させることが可能となるからである。処理液を付与した後であれば、いかなる時期にインクを付与してもかまわない。好ましくは、処理液を付与してから1秒以下であり、より好ましくは0.5秒以下である。
【0092】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、記録媒体上に吐出するインク総量と処理液総量と比率(インク総量:処理液総量)は、1:0.5〜1:0.05であることが好ましい。インク総量が処理液総量に対して少なすぎたり、多すぎたり場合には、色材の凝集が不充分となり、光学濃度の低下、滲みの悪化、色間滲みの悪化が生じる場合が存在した。
【0093】
本発明のインクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。この原因は明らかとはなっていないが、熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果があると考えられる。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果があるものと推測している。
【0094】
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インク及び処理液の記録ヘッドへの補給(供給)は、インク及び処理液の各液体が満たされたインクタンク(処理液タンクを含む)から行われることがよい。このインクタンクは、装置に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクタンクを交換することで、インク及び処理液の補給が簡易に行われる。
【0095】
以下、図面を参照しながら本発明のインクジェット記録装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、実質的に同様の機能を有する部材については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0096】
図1は本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図2は、図1のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。
【0097】
本実施形態の画像形成装置100は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。すなわち、図1及び図2に示すように、画像形成装置100は、主として、外部カバー6と、普通紙などの記録媒体1を所定量載置可能なトレイ7と、記録媒体1を画像形成装置100内部に1枚毎に搬送するための搬送ローラ(搬送手段)2と、記録媒体1の面にインク及び処理液を吐出して画像を形成する画像形成部8(画像形成手段)と、画像形成部8のそれぞれのサブインクタンク5へインク及び処理液を補給するメインインクタンク4と、から構成されている。
【0098】
搬送ローラ2は画像形成装置100内に回転可能に配設された一対のローラで構成された紙送り機構であり、トレイ7にセットされた記録媒体1を挟持するとともに、所定量の記録媒体1を所定のタイミングで1枚毎に装置100内部に搬送する。
【0099】
画像形成部8は記録媒体1の面上にインクによる画像を形成する。画像形成部8は、主として記録ヘッド3と、サブインクタンク5と、給電信号ケーブル9と、キャリッジ10と、ガイドロッド11と、タイミングベルト12と、駆動プーリ13と、メンテナンスユニット14とから構成されている。
【0100】
サブインクタンク5はそれぞれ異なる色のインク及び処理液が記録ヘッドから吐出可能に納められたサブインクタンク51、52、53、54、55を有している。これらには、例えば、第1の液体として、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)が、第2の液体として処理液がメインインクタンク4から補給され納められている。
【0101】
サブインクタンク5には、それぞれ排気孔56と補給孔57とが設けられている。そして、記録ヘッド3が待機位置(もしくは補給位置)に移動したとき、排気孔56及び補給孔57に補給装置15の排気用ピン151及び補給用ピン152がそれぞれ挿入されることで、サブインクタンク5と補給装置15とが連結可能となっている。また、補給装置15はメインインクタンク4と補給管16を介して連結されており、補給装置15によりメインインクタンク4から補給孔57を通じてサブインクタンク5へとインク又は処理液を補給する。
【0102】
ここで、メインインクタンク4も、それぞれ異なる色のインク及び処理液が納めされたメインインクタンク41、42、43、44、45を有している。そして、これらには、例えば、第1の液体として、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)が、第2の液体として処理液が満たされ、それぞれが画像形成装置100に脱着可能に格納されている。
【0103】
さらに、記録ヘッド3には給電信号ケーブル9とサブインクタンク5が接続されており、給電信号ケーブル9から外部の画像記録情報が記録ヘッド3に入力されると、記録ヘッド3はこの画像記録情報に基づき各インクタンクから所定量のインクを吸引して記録媒体の面上に吐出する。なお、給電信号ケーブル9は画像記録情報の他に記録ヘッド3を駆動するために必要な電力を記録ヘッド3に供給する役割も担っている。
【0104】
また、この記録ヘッド3はキャリッジ10上に配置されて保持されており、キャリッジ10はガイドロッド11、駆動プーリ13に接続されたタイミングベルト12が接続されている。このような構成により、記録ヘッド3はガイドロッド11に沿うようにして、記録媒体1の面と平行でありかつ記録媒体1の搬送方向X(副走査方向)に対して垂直な方向Y(主走査方向)にも移動可能となる。
【0105】
画像形成装置100には、画像記録情報に基づいて記録ヘッド3の駆動タイミングとキャリッジ10の駆動タイミングとを調製する制御手段(図示せず)が備えられている。これにより、搬送方向Xにそって、所定の速度で搬送される記録媒体1の面の所定領域に画像記録情報に基づく画像を連続的に形成することができる。
【0106】
メンテナンスユニット14は、チューブを介して減圧装置(図示せず)に接続されている。更にこのメンテナンスユニット14は、記録ヘッド3のノズル部分に接続し、記録ヘッド3のノズル内を減圧状態にすることにより記録ヘッド3のノズルからインクを吸引する機能を有している。このメンテナンスユニット14を設けておくことにより、必要に応じて画像形成装置100が作動中にノズルに付着した余分なインクを除去したり、作動停止状態のときにノズルからのインクの蒸発を抑制することができる。
【0107】
図3は本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図4は、図3のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。本実施形態の画像形成装置101は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。
【0108】
図3及び図4に示す画像形成装置101は、記録ヘッド3の幅が記録媒体1幅と同じ又はそれ以上であり、キャリッジ機構を持たず、副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)の紙送り機構(本実施形態では搬送ローラ2を示しているが、例えばベルト式の紙送り機構でもよい)で構成されている。
【0109】
また、図示しないが、サブインクタンク51〜55を副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)に順次配列させるのと同様に、各色(処理液も含む)を吐出するノズル群も副走査方向に配列させている。これ以外の構成は、図1及び2に示す画像形成装置100と同様なので説明を省略する。なお、図中、記録ヘッド3は移動しないので、サブインクタンク5は補給装置15と常時連結した構成を示しているが、インク補給時に補給装置15と連結する構成でもよい。
【0110】
図3及び図4に示す画像形成装置101では、記録媒体1の幅方向(主走査方向)の印字を記録ヘッド3により一括で行うため、キャリッジ機構を持つ方式に比べ、装置の構成が簡易であり、印字速度も速くなる。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【0112】
(実施例1)
−処理液−
・クエン酸:5wt.%
・ジエチレングリコール:10wt.%
・2−ピロリドン:5wt.%
・テトラメチルデシンジオールオキシエチレン付加物:0.5wt.%
上記組成を混合し、さらに純水、及び水酸化ナトリウムを加えて、100wt.%になるように調整した。また、この液体のpH=3.5であった。
【0113】
−Bkインク−
・Cabojet‐300:5wt.%
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル共重合体(重量平均分子量3000):5wt.%
・グリセリン:20wt.%
・BCBT(ジエチレングリコールモノブチルエーテル):8wt.%
・オキシエチレンオレイルエーテル:0.5wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて100wt.%になるように調整し、ポアサイズ2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを得た。このインクのpH=10.9であった。
【0114】
−Cyanインク−
・顔料(C.I.Pigment Blue 15を表面処理し、スルホン酸基を導入した顔料):4wt.%
・n−メチルアミノエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体(重量平均分子量5800):5wt.%
・ジエチレングリコール:20wt.%
・テトラメチルデシンジオールオキシエチレン付加物:3wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて100wt.%になるように調整し、ポアサイズ2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを得た。このインクのpH=11.5であった。
【0115】
−Magentaインク−
・顔料(C.I.Pigment Red 122を表面処理し、スルホン酸基を導入した顔料):7wt.%
・アリルアミン−マレイン酸共重合体(重量平均分子量19000):4wt.%
・エチレングリコール:10wt.%
・グリセリン:5wt.%
・プロピレングリコール:5wt.%
・BCBT:3wt.%
・テトラメチルデシンジオールオキシエチレン付加物:2.5wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて100wt.%になるように調整し、ポアサイズ2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを得た。このインクのpH=10.8であった。
【0116】
−Yellowインク−
・顔料(C.I.Pigment Yellow 128を表面処理し、スルホン酸基を導入した顔料):6wt.%
・スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ジメチルアミノエチルエステル共重合体(重量平均分子量6200):5wt.%
・ジエチレングリコール:5wt.%
・1,3−ブタンジオール:4wt.%
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル:8wt.%
・1,2−ヘキサンジオール:1wt.%
・オキシエチレンラウリルエーテル:0.5wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて100wt.%になるように調整し、ポアサイズ2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを得た。このインクのpH=11.3であった。
【0117】
―評価―
得られたインクセットを用いて、印字を行った。印字は、1200dpi、256ノズルの試作プリントヘッド(ドロップ量6ng)を用い、FX−P紙(富士ゼロックス社製)に対して処理液を吐出し、その上からインクを吐出して重ね印字する方法で行った。印字は一般環境下(温度23±0.5℃、湿度55±5%RH)でおこなった。また、インクと処理液との付与量の質量比が1:0.2となるように印字した。評価は、印字後24時間一般環境下に放置したサンプルに対して行った(但し、乾燥時間と長期保存安定性は除く)。結果を表1に示す。
【0118】
《O.D(画像濃度)》
処理液の上に4色のインクを吐出して重ね印字し、印字部分をエックスライト404(エックスライト社製)を用いて、各色の光学濃度を測定した。
【0119】
《ICB(色間滲み)》
色間滲みの評価は、処理液の上に4色のインクを隣接するように吐出して印字し、各色の境界部分の滲み度合いを予め定めておいた限度見本に照合し、官能評価を行なった。
−評価基準−
◎…滲みが全くあるいはほとんどないもの
○…滲みがわずかに発生しているもの
△…滲みは発生しているが、許容レベルのもの
×…滲みが激しく、許容範囲外のもの
【0120】
《フェザリング(滲み)》
各インクの細線パターンを印字し、印字部の滲み度合いを限度見本に照合し、官能評価を行なった。
−評価基準−
◎…滲みが少ないもの
○…滲みがわずかに発生しているもの
△…滲みは発生しているが、許容レベルのもの
×…滲みが激しく、許容範囲外のもの
【0121】
《乾燥時間》
各インクを100%カバレッジパターンを印字してから所定の時間経過後に印字パターン上に別のFX−P紙を1.9×104N/m2の荷重で押し当てる。この時、押し当てたFX−P紙側に液体が転写されなくなる時間を乾燥時間とした。
【0122】
《インク保存安定性》
各インクを80℃恒温槽に、14日間入れた後、Microtruc UPAで粒度分布測定を行った。評価基準は以下の通りである。
◎…粒径分布、平均粒径の変化が無し。
〇…粒径分布、平均粒径の変化が微妙にある。
△…粒径分布、平均粒径の変化はあるが、凝集及び又は沈降未発生
×…目視で、凝集及び又は沈降発生が確認された。
【0123】
(実施例2)
実施例1のインクセットのうちCyanインクについて、NaOHの量を調整しpHを8.8に調整したインクを準備し、その他は実施例1と同様の組成で同様の評価を行った。
【0124】
(実施例3)
実施例1のインクセットのうちYellowインクについて、NaOHの量を調整しpHを8.1に調整したインクを準備し、その他は実施例1と同様の組成で同様の評価を行った。
【0125】
(実施例4)
実施例1のインクセットのうち処理液について、NaOHの量を調整しpHを5.1に調整した処理液を準備し、その他は実施例1と同様の組成で同様の評価を行った。
【0126】
(実施例5)
実施例1のインクセットのうち処理液について、NaOHの量を調整しpHを5.9に調整した処理液を準備し、その他は実施例1と同様の組成で同様の評価を行った。
【0127】
(実施例6)
実施例1のインクセットのうち処理液について、硝酸マグネシウム6水和物を3wt.%添加し、pHを3.9に調整した処理液を準備し、その他は実施例1と同様の組成で同様の評価を行った。
【0128】
(実施例7)
−処理液−
・CHES(N−Cyclohexyl−2−aminoethanesulfonic
acid):5wt.%
・グリセリン:10wt.%
・ジエチレングリコール:5wt.%
・テトラメチルデシンジオールオキシエチレン付加物:0.8wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて、100wt.%になるように調整し、処理液を得た。またこの液体のpH=9.8であった。
【0129】
−Bkインク組成−
・IJX−212C(カチオン化表面処理したカーボンブラック):5wt.%
・4−ビニルピリジン−イタコン酸共重合体(重量平均分子量8400):2.5wt.%
・ジエチレングリコール:7wt.%
・グリセリン:10wt.%
・テトラメチルデシンジオールオキシエチレン付加物:1.7wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて100wt.%になるように調整し、ポアサイズ2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを得た。このインクのpH=3.9であった。
【0130】
―評価―
得られたインクセットを用いて、実施例1と同様に評価した。但し、ICBを除く。
【0131】
(実施例8)
−処理液−
・BES(グッドバッファー):4wt.%
・グリセリン:7wt.%
・エチレングリコール:8wt.%
・1.2−ヘキサンジオール:4wt.%
・テトラメチルデシンジオールオキシエチレン付加物:0.6wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて、100wt.%になるように調整して、処理液を得た。またこの液体のpH=7.6であった。
【0132】
−評価−
得られた処理液と実施例7と同様のBkインクとのインクセットを用いて、実施例1と同様に評価した。但し、ICBを除く。
【0133】
(実施例9)
−Bkインク−
・IJX−212C (カチオン化表面処理したカーボンブラック):5wt.%
・n−メチルアミノエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体(重量平均分子量1500):3.5wt.%
・ポリエチレングリコール(重量平均分子量400):5wt.%
・グリセリン:4wt.%
・プロピレングリコール:5wt.%
・1,3−ブタンジオール:4wt.%
・オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー:1wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びりん酸2水素カリウム/NaOHを加えて、100wt.%になるように調整し、ポアサイズ2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを得た。このインクのpH=6.2であった。
【0134】
−評価−
実施例7と同様の処理液と得られたBkインクとのインクセットを用いて、実施例1と同様に評価した。但し、ICBを除く。
【0135】
(比較例1)
実施例1において、各インク組成をNaOHの代わりに、塩酸を加えたところ、インクの色材が凝集してしまい、インクとして機能させることができなかった。なお、凝集後の液体のpH=2.4であった。
【0136】
(比較例2)
インクは実施例1と同様のものを使用し、処理液は実施例1の組成から、クエン酸を除き、その代わりにトリスヒドロキシメチルアミノメタンを添加し、HClと水を加えて、pH8.9とした。
【0137】
得られたインクセットを用いて、実施例1と同様に評価した。
【0138】
(比較例3)
−処理液−
・EPPS(3−[4−(2−hydroxyethyl)−1−piperazinyl]propanesulfonic acid):3wt.%
・4−ビニルピリジン−イタコン酸共重合体(重量平均分子量8400):2.5wt.%
・グリセリンオキシエチレン付加物:4wt.%
・ジエチレングリコール:5wt.%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:5.5wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて、100wt.%になるように調整し、処理液を得た。またこの液体のpH=7.9であった。
【0139】
−Bkインク組成−
・IJX−212C(カチオン化表面処理したカーボンブラック):5wt.%
・エチレングリコール:4wt.%
・ジグリセリン:5wt.%
・ポリエチレングリコール400:3wt.%
・テトラメチルデシンジオールオキシエチレン付加物:1.5wt.%
上記組成を混合し、さらに純水及びNaOHを加えて100wt.%になるように調整し、ポアサイズ2μmのメンブレンフィルターを用いて濾過することによりインクを得た。このインクのpH=4.2であった。
【0140】
【表1】

【0141】
これら結果から、本実施例のインクセットを用いることで、迅速且つ十分に色材を凝集され、画像濃度の向上、滲み(フェザリング/ICB)改善が効果的に実現可能であることがわかる。また、処理液をインクに対して10%カバレッジといった少量印字することで、画像濃度の向上、滲み(フェザリング/ICB)改善が図れるので、乾燥時間短縮及び用紙しわ抑制も実現可能であることもわかる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。
【図3】本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観構成を示す斜視図である。
【図4】図3のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0143】
100、101 画像形成装置
1 記録媒体
2 搬送ローラ
3 記録ヘッド
4 メインインクタンク
5 サブインクタンク
6 外部カバー
7 トレイ
8 画像形成部
9 給電信号ケーブル
10 キャリッジ
11 ガイドロッド
12 タイミングベルト
13 駆動プーリ
14 メンテナンスユニット
15 補給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアニオン性の色材及び両性イオン物質を含む塩基性のインクと、酸性の処理液と、を具備することを特徴とするインクジェット用インクセット。
【請求項2】
少なくともカチオン性の色材及び両性イオン物質を含む酸性のインクと、塩基性の処理液と、を具備することを特徴とするインクジェット用インクセット。
【請求項3】
前記両性イオン性物質が、両性イオンポリマーであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項4】
前記両性イオンポリマーが、スチレン−アクリル酸−アクリル酸ジアルキルアミノエステル重合体、アリルアミン−マレイン酸共重合体、ビニルピリジン−アクリル酸共重合体、アミノエチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、2−ビニルピリジン−マレイン酸共重合体、4−ビニルピリジン−マレイン酸共重合体、2−ビニルピリジン−イタコン酸共重合体、n−メチルアミノエチルメタクリレート−アクリル酸共重合体、4−ビニルピリジン−イタコン酸共重合体、n−メチルアリルアミン−イタコン酸共重合体、及び4−ビニルピリジン−フマール酸共重合体より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項5】
前記色材が、顔料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項6】
前記色材が、自己分散顔料であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェト用インクセット。
【請求項7】
前記処理液は、少なくとも多価金属化合物を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用インクセット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1に記載のインクジェット用インクセットを収納したことを特徴とするインクジェット用インクタンク
【請求項9】
インクジェット用インクセットを用いたインクジェット記録方法であって、
前記インクジェット用インクセットは、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセットであり、
前記インク及び処理液が互いに接触するように記録媒体上に吐出して、画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記インクジェット用インクセットを収納したインクジェット用インクタンクから供給された前記インク及び処理液を、記録媒体上に吐出することを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記記録媒体上に吐出する前記インク総量と前記処理液総量と比率(インク総量:処理液総量)が、1:0.5〜1:0.05であることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
インクジェット用インクセットにおける各液体を記録媒体に吐出するための記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
インクジェット用インクセットは、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット用インクセットである、
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記インクジェット用インクセットを収納したインクジェット用インクタンクから前記記録ヘッドへ、前記インク及び処理液を供給するためのインクジェット用インクタンクを、さらに備えることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記記録媒体上に吐出する前記インク総量と前記処理液総量と比率(インク総量:処理液総量)が、1:0.5〜1:0.05であることを特徴とする請求項12に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−199896(P2006−199896A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16027(P2005−16027)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】