説明

インクジェット用インク

【課題】光沢紙上での光沢性に優れた画像を形成することができるインクジェット用インクを提供。
【解決手段】表面に有機基が化学的に結合している顔料と、界面活性剤と、水とを少なくとも含むインクジェット用インクにおいて、前記有機基は、顔料表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の酸価を持つ共重合体と、の反応物を有し、前記界面活性剤は曇点が35℃以下であり、且つ、前記界面活性剤が下記式(1)に示す構造を有することを特徴とするインクジェット用インク。


(式(1)中、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、mは2以上15以下の整数であり、nは2以上15以下の整数であり、Rは炭素数7以上14以下のアルキル鎖であり、m/nが1以上である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来インクジェット用インクにおいては、耐候性、耐水性を高いレベルで満足されることが求められており、それを達成するために色材には顔料が用いられてきた。顔料は染料と異なり粒子状であるため、インク中で顔料を安定的に分散することが求められている。顔料を水性媒体中に安定的に分散する方法として、分散剤、例えば樹脂分散剤を用いる方法が挙げられる。上述の技術、即ち樹脂分散型顔料を用いることで、水性媒体中で顔料は安定的な分散状態を保つことができる。また、顔料を分散する別の技術としては、顔料の表面を化学的に修飾する方法が挙げられる。このような顔料は自己分散顔料と呼ばれており、分散剤を使用することなく水性媒体中に安定的に顔料を分散することができる。更に別の技術として、顔料粒子の表面に親水性基を有する分散性樹脂を化学的に結合させた顔料を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。自己分散型顔料を含むインクは、インクの長期保存安定性、吐出安定性といった信頼性を有し、且つ、印字後の擦れに対して優れた耐擦過性を示す画像を形成することができる。
【0003】
上述のように顔料を用いた検討が盛んに行われているが、顔料は一般的に光沢性が低く、特に表面平滑性の高い記録媒体(以下、光沢紙とも言う)に顔料を含むインクを付与したところ、インクが付与された領域の光沢性が損なわれることがあった。このような光沢性の低下を解決するために、顔料インク中にプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体部分を有するノニオン性界面活性剤を光沢剤として添加する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−83743号公報
【特許文献2】特開2005−82663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献2に記載の方法では、本発明者等が満足するレベルの光沢性を有する画像を得ることができなかった。
【0005】
したがって、本発明は、上述の課題を解決し、吐出安定性といった信頼性を損なうことなく、光沢紙上での光沢性に優れた画像を形成することができるインクジェット用インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面に有機基が化学的に結合している顔料と、界面活性剤と、水とを少なくとも含むインクジェット用インクにおいて、前記有機基は、顔料表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の酸価を持つ共重合体と、の反応物を有し、前記界面活性剤は曇点が35℃以下であり、且つ、前記界面活性剤が下記式(1)に示す構造を有することを特徴とするインクジェット用インクである。
【0007】
【数1】

【0008】
(式(1)中、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、mは2以上15以下の整数であり、nは2以上15以下の整数であり、Rは炭素数7以上14以下のアルキル鎖であり、m/nが1以上である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明を用いることで、優れた吐出安定性を有するインクジェット用インクを提供することができる。また、光沢紙上で優れた光沢性と発色性とを両立した画像を形成することができるインクジェット用インクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のインクジェット用インクが光沢紙上で光沢性に優れた画像を形成することができるのは、以下のメカニズムによるものと推測している。
【0011】
本発明に用いられる界面活性剤は曇点が35℃以下と疎水性が強い。これはプロピレンオキサイド鎖とアルキル鎖という疎水性を示す官能基を複数箇所に有しているためである。これによってポリマー結合型自己分散顔料の有する共重合体の疎水部との疎水性相互作用を強固なものとすることができる。その結果、共重合体及び界面活性剤の親水部が水性媒体側に露出するのを促進することができる。また、ポリマー結合型自己分散顔料とは、顔料と共重合体とが強固に結合しているものであるため、顔料表面から共重合体が外れることを低減することができる。そのため、水性媒体側に向いた親水性基によって、効率的に顔料の分散を促すことができ、インク滴を記録媒体表面に付与した際の共重合体の凝集速度を低減することができる。その結果、記録媒体上にインクドットが複数付与された際におけるドット間の凹凸が低減され、平滑化するために、光沢紙上で優れた光沢性を発現することができる。
【0012】
以下に本発明のインクジェット用インクに用いる各成分について詳細に説明する。
【0013】
<界面活性剤>
本発明のインクジェット用インクに用いることのできる界面活性剤は、曇点が35℃以下であり、かつ式(1)に示す構造を有する界面活性剤である。
【0014】
【数2】

【0015】
(式(1)中、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、mは2以上15以下の整数であり、nは2以上15以下の整数であり、Rは炭素数7以上14以下のアルキル鎖であり、m/nが1以上である。)
【0016】
ここでいう曇点とは、ノニオン性界面活性剤の親水基の水との親和性が低下することにより界面活性剤が無数に会合し溶媒中から相分離する温度である。そのため、本発明において曇点が低いことは、界面活性剤の疎水性が高いことを指す。
【0017】
上述した界面活性剤としては、具体的には、FINESURF7085(青木油脂社製)、ソフタノールEP5035(日本触媒社製)、ニューポールPE−61、62、71(三洋化成社製)が挙げられる。また、上記に示した物性を有するものであれば、本発明のために別途新たに作成された界面活性剤を使用してもよい。
【0018】
本発明においては上述の通り界面活性剤の曇点が35℃以下であるが、25℃以下であれば好ましい。なお、本発明においては曇点の下限値は特に制限されるものではないが、0℃以上であれば好ましい。
【0019】
本発明の界面活性剤は、重量平均分子量が100以上4000以下であることが好ましい。界面活性剤の重量平均分子量を上記に示した範囲とすることで、ポリマー結合型自己分散顔料と界面活性剤との相互作用をより効果的なものとすることができる。
【0020】
<色材>
本発明は顔料自体の分散性を高め、更に分散剤等を用いることなく分散可能としたポリマー結合型自己分散顔料を色材として用いる。本発明の色材、即ちポリマー結合型自己分散顔料とは、顔料と、顔料の表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、該官能基と共有結合する共重合体とを指す。ポリマー結合型自己分散顔料を用いることで、共重合体が効率的に顔料の分散に寄与するため、光沢性を向上することができる。本発明においては更に上述した界面活性剤を用いるため、界面活性剤の寄与による顔料の分散性も効率的に向上することができる。
【0021】
以下、本発明のポリマー結合型自己分散顔料に用いる各成分について詳細に説明する。
【0022】
(顔料)
本発明に用いることのできるポリマー結合型自己分散顔料のベース顔料としては、公知の無機顔料、有機顔料のいずれも使用することができる。
【0023】
黒色インクに使用される無機顔料としては、カーボンブラックを好ましく用いることができる。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックを何れも使用することができる。具体的には、例えば、レイヴァン7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−11、1170、1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズL、リーガル、400R、300R、660R、モウグルL、モナク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック6、5、4、4A(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等が挙げられる。また、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。更に、本発明のために別途新たに作成されたカーボンブラックを使用することもできる。
【0024】
有機顔料としては、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンイエロー、イソインドリノオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のベンズイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0025】
また、本発明においてはカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示す有機顔料を使用することもできる。具体的にはC.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
【0026】
(顔料と化学的に結合した官能基)
本発明においてはポリマー結合型自己分散顔料を得るために、上述した無機顔料、有機顔料の表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合した官能基を導入することが求められる。該官能基は、後述する共重合体との反応物を含む有機基を構成するためのものであるため、官能基の種類は共重合体が有している官能基との反応性によって適宜選択することができる。
【0027】
顔料の表面に化学的に結合する官能基としては、共重合体との反応においてアミド結合等の加水分解を起こさない結合を形成するものであることが好ましい。例えばアミド結合によって官能基と共重合体とを結合する場合には、官能基がアミノ基であり、共重合体がカルボキシル基を有していることが好ましい。また、官能基がカルボキシル基であり、共重合体がアミノ基を有している場合にも、アミド結合を形成する上では好ましい。
【0028】
また、官能基は顔料の表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合していればよいが、官能基と反応する共重合体の分子量が比較的大きい場合には、共重合体同士の立体障害を避けるために、他の原子団を介して官能基を顔料の表面に導入することが好ましい。ここで、他の原子団は、多価の元素や有機基であれば特に限定されるものではないが、顔料の表面からの官能基の距離を制御し、立体障害を低減するという観点からは、例えば2価の有機残基が好ましい。2価の有機残基の例としては、アルキレン基やアリーレン基(フェニレン基)等が挙げられる。より具体的に述べると、顔料とアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホンとを反応することで顔料の表面にアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基を導入し、その後、ペンタエチレンヘキサミンのアミノ基とアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とを反応させることにより、官能基としてのアミノ基を導入することができる。また、この場合アミノ基は、フェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して顔料の表面に化学的に結合している、ということができる。
【0029】
(共重合体)
本発明において上述の官能基と共有結合する共重合体は、酸価が80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である。本発明において共重合体は上記した官能基と共有結合し、上記酸価を満たしていれば特に問題ない。
【0030】
共重合体を形成する具体的なモノマーユニットとしては特に限定されず、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から本発明の物性を満たすように適宜選択することができるが、本発明における共重合体の物性を鑑みれば共重合体を形成するモノマーユニットのうち少なくとも1種類が、酸価を持つ親水性モノマーユニットであることが求められる。また、共重合体中のモノマーユニットの配列については特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0031】
共重合体の酸価が80mgKOH/g未満の場合、インクの長期保存安定性や吐出安定性が低下する。一方、共重合体の酸価が250mgKOH/gを超える場合、上記に記載した界面活性剤を添加した際に十分な光沢性の向上効果が得られない。酸価が高すぎると、ポリマー結合型自己分散顔料の表面の疎水部が少なくなるため、界面活性剤が十分吸着することができないと考えられる。
【0032】
上記した共重合体の重量平均分子量(Mw)は、重量平均分子量が1,000以上20,000以下の範囲のものであることが好ましく、3,000以上20,000以下の範囲のものであればより好ましい。
【0033】
<インクジェット用インク>
本発明のインクジェット用インクには、インク中で遊離して存在する共重合体をさらに含有していてもよい。このような共重合体としては、インクの長期保存安定性や吐出安定性を向上するために酸価が80mgKOH/g以上であることが好ましい。また、樹脂の浸透性を制御するという観点から酸価が200mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0034】
本発明のインクジェット用インクにおけるポリマー結合型自己分散顔料の含有量は、十分な画像濃度を得るという観点からインク全質量に対し0.5質量%以上であることが好ましい。また、上限値としては特に限定されないが15質量%より多く添加してもそれ以上の着色効果は得られにくいことから、15質量%以下であることが好ましい。また、ポリマー結合型自己分散顔料の含有量はインク全質量に対し1%質量以上10%質量以下であればより好ましい。
【0035】
本発明のインクジェット用インク中において、界面活性剤の全質量をaとし、顔料の表面の官能基と結合している共重合体の全質量をbとしたときに、b/aが0.15以上6.0以下であることが光沢性向上及び長期保存安定性向上の観点から好ましい。また、b/aは0.25以上4.0以下であればより好ましい。
【0036】
また、本発明のインクジェット用インクにおいて、顔料の表面の官能基と結合している共重合体の全質量をaとし、遊離して存在している共重合体の全質量をcとし、ポリマー結合型自己分散顔料全質量をdとした際の(d−a)/(c+a)を、光沢性向上の観点から1/0.5以上とすることが好ましい。また、吐出安定性の観点から1/4以下とすることが好ましい((d−a)/(c+a)はインク中の顔料と共重合体との質量比といえるため、以下P/B比ともいう)。
【0037】
<その他の成分>
本発明のインクジェット用インクには、上記各成分の他に必要に応じて水性媒体として水溶性の有機溶媒を加えてもよい。また、記録媒体への浸透性を助けるための浸透剤、防腐剤、防黴剤等を加えてもよい。
【実施例】
【0038】
実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中に「部」または「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
【0039】
<顔料分散体の製造>
[顔料分散体1]
カーボンブラック(BP100:キヤボット社製)500g、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン(APSES)45g、イオン交換水900gを55℃に保温し、300rpmで20分間撹拌し、分散液を得た。次いで分散液を25質量%濃度の亜硝酸ナトリウムと反応させた後、遠心分離及び精製処理を行うことで15質量%固形分濃度の分散体Aを得た。この分散体Aを室温中で強撹拌しながら、分散体Aにペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を滴下した。PEHA添加後、分散体Aを48時間撹拌し精製処理を行うことで10質量%固形分濃度の分散体Bを得た。次に、共重合体として、樹脂1の9.5質量%水溶液を調製し、攪拌した。上記撹拌中の樹脂水溶液に上記分散体Bを滴下して混合物Cを得た。このとき樹脂1は酸価100mgKOH/g、重量平均分子量7500のスチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体である。その後、混合物Cを150℃で15時間加熱乾燥し、蒸発乾燥物を得た。次いで、蒸発乾燥物をpH9に調製したNaOH水溶液中に分散させた後、更にNaOH水溶液を添加してpH10に調製し、更に精製処理及び粗大粒子の除去を行ってポリマー結合型自己分散顔料を含有する顔料分散体1を作製した。顔料分散体中の顔料の濃度は10質量%であり、P/B比は1/0.5であった。
【0040】
[顔料分散体2]
樹脂1に代えて樹脂2を用いた以外は顔料分散体1と同様の操作を行い、実施例3用の顔料分散体2を得た。このとき樹脂2は酸価220mgKOH/g、重量平均分子量12000のスチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体である。顔料分散体中の顔料の濃度は10質量%であり、P/B比は1/0.5であった。
【0041】
[顔料分散体3]
樹脂1に代えて樹脂3を用いた以外は顔料分散体1と同様の操作を行い、顔料分散体3を得た。このとき樹脂3は酸価300mgKOH/g、重量平均分子量12000のスチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体である。顔料分散体中の顔料の濃度は10質量%であり、P/B比は1/0.5であった。
【0042】
[顔料分散体4]
カーボンブラックに代えてピグメントブルー15:3(クラリアント社製)に用いた以外は顔料分散体1と同様の操作を行い、顔料分散体4を得た。顔料分散体中の顔料の濃度は10質量%であり、P/B比は1/0.5であった。
【0043】
[顔料分散体5]
カーボンブラックに代えてピグメントレッド122(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を用いた以外は顔料分散体1と同様の操作を行い、顔料分散体5を得た。顔料分散体中の顔料の濃度は10質量%であり、P/B比は1/0.5であった。
【0044】
[顔料分散体6]
カーボンブラックに代えてピグメントイエロー74(クラリアント社製)を用いた以外は顔料分散体1と同様の操作を行い、顔料分散体6を得た。顔料分散体中の顔料の濃度は10質量%であり、P/B比は1/0.5であった。
【0045】
[顔料分散体7]
樹脂1に代えて樹脂4を用いた以外は顔料分散体1と同様の操作を行い、顔料分散体3を得た。このとき樹脂4は酸価70mgKOH/g、重量平均分子量12000のスチレン−アクリル酸−アクリル酸ブチル共重合体である。顔料分散体中の顔料の濃度は10質量%であり、P/B比は1/0.5であった。
【0046】
<インクジェット記録用水性インクの作成>
表1に示す処方にて各成分を混合し、十分に撹拌して溶解した後、ポアサイズ1.5μmのミクロフィルター(富士フィルム社製)にて加圧ろ過し、本実施例に用いる各インクを作製した。得られたインクのP/B比、インク中に含まれる界面活性剤の全質量をaとし、インク中に含まれるポリマー結合型自己分散顔料に結合した共重合体の全質量をbとしたときの、b/aも表1に記載する。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示した界面活性剤の構造、及び物性を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
【数3】

【0051】
<インクジェット用インクの評価>
[光沢性、光学濃度の評価]
実施例及び比較例のインクジェット用インクをキヤノン社製BJF−900用のインクカートリッジに詰め、キヤノン社製BJF−900を用い、100%dutyで記録媒体に印字を行った。得られた印字物を元に下記に示す物性の評価を行った。このとき記録媒体として、キヤノン社製スーパーフォトペーパーSP−101A4を用いた。
【0052】
(光沢性)
得られた印字物を24時間自然乾燥した後、印字物の光沢性を写像性解析装置DIAS(米国OEA社)を用いて測定した。測定結果を下記の基準によって評価した。結果を表3に示す。
◎:界面活性剤を含まないインクと比べて非常に光沢感が向上した。
○:界面活性剤を含まないインクと比べて光沢感が向上した。
△:界面活性剤を含まないインクと比べて光沢感の向上がみられなかった。
×:界面活性剤を含まないインクと比べて光沢感が低下した。
【0053】
(光学濃度(O.D.))
得られた印字物を24時間自然乾燥し、印字物の光学濃度をGretag Spectrolino(商品名:Gretag社製)で測定した。測定結果を下記の基準によって評価した。結果を表3に示す。
○:界面活性剤を含まないインクと比べてO.D.値が増加した。
×:界面活性剤を含まないインクと比べてO.D.値が変わらないもしくは低下した。
【0054】
[吐出安定性の評価]
ノズルチェックパターンが最初に入っているベタ印字を、A4普通紙3枚に連続して印字し、2時間印字を行わずに放置し、その後再びベタ印字を連続して印字するサイクルを10回繰り返した。その時の印字乱れ、及び不吐出の有無を目視によって評価した。結果を表3に示す。
◎:印字乱れ及び不吐出がない
○:若干の印字乱れがあるが、不吐出はない
×:印字乱れ及び不吐出がある
【0055】
【表3】

【0056】
表3に示した評価結果から明らかなように、各実施例で調製したインク組成物は、光沢性、O.D.、吐出安定性のいずれの試験においても高い評価が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に有機基が化学的に結合している顔料と、界面活性剤と、水とを少なくとも含むインクジェット用インクにおいて、
前記有機基は、顔料表面に直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合している官能基と、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下の酸価を持つ共重合体と、の反応物を有し、
前記界面活性剤は曇点が35℃以下であり、且つ、前記界面活性剤が下記式(1)に示す構造を有する
ことを特徴とするインクジェット用インク。
【数1】

(式(1)中、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、mは2以上15以下の整数であり、nは2以上15以下の整数であり、Rは炭素数7以上14以下のアルキル鎖であり、m/nが1以上である。)
【請求項2】
前記界面活性剤の曇点が25℃以下である請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記インクジェット用インク中の前記界面活性剤の全質量をaとし、前記インクジェット用インク中の前記共重合体の全質量をbとしたときに、b/aが0.15以上6.0以下である請求項1または2に記載のインクジェット用インク。

【公開番号】特開2010−138321(P2010−138321A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317270(P2008−317270)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】