説明

インクジェット用インク

【課題】特にプリント配線板用途または半導体用途において、基板に対する良好な密着性を発現するポリイミド膜を形成することができるインクジェット用インクを提供する。
【解決手段】式(1)で表される骨格を有するアミド酸誘導体(A1)およびそのイミド化物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有するインクジェット用インク。


(R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に水素または炭素数1〜10のアルキルである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するアミド酸誘導体またはそのイミド化物を含むインクジェット用インクに関する。より詳しくは、例えば電子部品製作において絶縁膜層を形成するために用いられるインクジェット用インク、該インクジェット用インクを用いて形成されるポリイミド膜、該ポリイミド膜が形成されたフィルム基板およびシリコンウエハー基板、ならびに、該フィルム基板または該シリコンウエハー基板を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、耐熱性および電気絶縁性に優れるため、電子通信分野で広く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照。)。ポリイミドを所望のパターン膜として使用する場合、従来はエッチングや感光性ポリイミドを用いてパターンを形成することが一般的であった。しかしながら、パターンの形成にはフォトレジスト、現像液、エッチング液および剥離液などの多種大量の薬液を必要とし、また、煩雑な工程を必要とした。そのため、近年、インクジェットにより所望のポリイミドのパターン膜を形成する方法が検討されている。
【0003】
インクジェット用インクは各種提案されているが(例えば、特許文献4〜5参照。)、インクジェット用インクとして吐出・印刷するためには、インクの粘度、表面張力および溶媒の沸点などの様々なパラメータを最適化しなくてはならない。
【0004】
粘度に関しては、一般的には吐出温度(吐出時のインクの温度)において、1〜50mPa・s程度の低粘度であることが求められている。特にピエゾ方式のインクジェット印刷の場合は、圧電素子の吐出圧力が小さいため、粘度が高くなるとインクが吐出不能となることがある。
【0005】
表面張力に関しては、20〜70mN/mの範囲に調整することが好ましく、20〜40mN/mの範囲に調整することがより好ましい。表面張力が低すぎると、インクがプリンターヘッドのノズルから吐出された直後に広がってしまい、良好な液滴が形成できなくなることがある。反対に表面張力が高すぎると、メニスカスを形成できなくなるため、吐出不能になることがある。
【0006】
溶媒の沸点に関しては、100〜300℃であることが好ましく、150〜250℃の範囲であることがより好ましい。沸点が低すぎると、プリンターヘッドのノズル部のインク中の溶媒が、特にインクを加温して吐出する場合に蒸発してしまう。それによってインクの粘度が変化し、インクを吐出できなくなる、あるいはインクの成分が固化してしまうことがある。反対に沸点が高すぎると、印刷後のインクの乾燥が遅すぎて、印刷パターンが悪化することがある。
【0007】
ポリイミド系のインクジェット用インクとして、ポリイミドを含有するものや、加熱処理することによりポリイミドとなるポリアミド酸を含有しているものが各種提案されている(例えば、特許文献6〜10参照。)。
【0008】
ポリイミド系のインクジェット用インクにおいては、前述したインクジェット用インクとしての粘度、表面張力および溶媒の沸点などの必要特性に加えて、膜を形成したときのポリイミドとしての機能・特性が重要である。例えば、体積抵抗率、耐電圧、誘電率および誘電損失等の電気的特性、折り曲げ試験、弾性率および引張伸度等の機械的特性、耐酸性、耐アルカリ性および耐めっき性等の化学的安定性、熱分解温度、ガラス転移温度および熱線膨張係数等の熱的特性など様々な特性が求められている。さらには、基板との密着性、膜形成時の収縮に伴う反りの問題、およびマイグレーション耐性など二次的な課題も挙げられている。
【0009】
本来、ポリイミドは上記特性に優れた樹脂として広く電子材料用途に用いられてきたものであるが、インクジェットインクとして材料設計する際の制限から、ポリイミドとしての機能・特性をバランス良く、十分に発現することは困難を極めていた。また、膜を形成したときのポリイミドとしての機能・特性は用途によって異なり、特にフイルム基板を用いたフレキシブルプリント配線板用途、ガラス−エポキシ基板を用いたリジッドのプリント配線板用途、およびシリコンウエハー基板を用いた半導体用途では、基板とポリイミド膜との密着性が大きな課題となっている。
【0010】
ポリイミド膜の機能・特性を制御する方法としては、原料のテトラカルボン酸誘導体やジアミン誘導体の構造を最適化する方法、共重合体やポリマーブレンド等におけるポリマーの構造を最適化する方法、ポリイミド前駆体のイミド化率を最適化する方法、および架橋剤の添加などの様々な手法が検討されている。
【0011】
原料のテトラカルボン酸誘導体の構造を最適化して機能・特性を発現する具体例として、特許文献11には、特定構造のテトラカルボン酸無水物を使用して製造される含リンポリエステルイミド前駆体または含リンポリエステルイミドが、薄膜化しても従来と同様の耐熱難燃性を保持し、良好な熱拡散性を有することが開示されている。
【0012】
しかしながら、基板−ポリイミド膜との密着性については、何ら開示されておらず、更にインクジェットインクとしての粘度、表面張力、および溶媒の沸点等の必要特性に配慮したものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−039714号公報
【特許文献2】特開2003−238683号公報
【特許文献3】特開2004−094118号公報
【特許文献4】特開2003−213165号公報
【特許文献5】特開2006−131730号公報
【特許文献6】特開2009−35700号公報
【特許文献7】国際公開第2008/123190号パンフレット
【特許文献8】特開2009−144138号公報
【特許文献9】国際公開第2008/059986号パンフレット
【特許文献10】特開2009−203440号公報
【特許文献11】特開2009−221309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、特にプリント配線板用途または半導体用途において、基板に対する良好な密着性を発現するポリイミド膜を形成することができるインクジェット用インクを提供することを課題とする。
【0015】
また、本発明は、粘度、表面張力および溶剤の沸点などのパラメータをインクジェット印刷用に最適化したインクジェット用インクにおいて、インクジェットヘッドの耐久性を低下させない溶媒を使用できるイミド系化合物を含むインクジェット用インクを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、特定の構造を有するアミド酸誘導体またはそのイミド化物を含むインクジェット用インクを用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は、以下の通りである。
【0017】
[1]式(1)で表される骨格を有するアミド酸誘導体(A1)およびそのイミド化物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有するインクジェット用インク。
【0018】
【化1】

【0019】
式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素または炭素数1〜10のアルキルである。
【0020】
[2]化合物(A)が、式(2−1)または(2−2)で表される酸無水物を用いて得られた化合物である[1]に記載のインクジェット用インク。
【0021】
【化2】

式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素または炭素数1〜10のアルキルであり、R5は単結合、炭素または炭素数1〜50の有機基であり、mは1または2であり、nは1または2である。
【0022】
[3]化合物(A)が、式(3)〜(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種を用いて得られた化合物である[1]または[2]に記載のインクジェット用インク。
【0023】
【化3】

【0024】
[4]化合物(A)が、式(6)〜(7)で表されるジカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種を用いて得られた化合物である[1]または[2]に記載のインクジェット用インク。
【0025】
【化4】

[5]アミド酸誘導体(A1)が、式(8)で表される構成単位と、式(8−1)および(8−2)で表される分子末端基からなる群より選ばれる少なくとも1種の分子末端基とを有する化合物ならびに式(9)〜(12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]〜[4]のいずれか1つに記載のインクジェット用インク。
【0026】
【化5】

【0027】
式中、Xは炭素または炭素数2〜100の4価の有機基であり、Yは炭素数1〜100の2価の有機基であり、Zは炭素数1〜100の1価の有機基であり、X、YおよびZの少なくとも1つが式(1)で表される骨格を有し、X’は独立して炭素数1〜100の2価の有機基であり、Y’は独立して炭素数1〜100の1価の有機基である。
【0028】
[6]式(8−1)、(8−2)および(9)〜(12)中、X’が独立して不飽和炭化水素構造を有する炭素数2〜100の2価の有機基または式(a)で表される2価の有機基であり、Y’が独立して不飽和炭化水素構造を有する炭素数2〜100の1価の有機基または式(b)で表される1価の有機基である[5]に記載のインクジェット用インク。
【0029】
【化6】

【0030】
式中、Rは独立して水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R’は炭素数1〜20の3価の有機基であり、R”は炭素数1〜20の2価の有機基である。
【0031】
[7]さらに溶媒(B)を含む[1]〜[6]のいずれか1つに記載のインクジェット用インク。
【0032】
[8]溶媒(B)が、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、アニソール、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群より選ばれる少なくとも1種である[7]に記載のインクジェット用インク。
【0033】
[9]インクジェット用インク100重量部に対して、化合物(A)を5〜95重量部の量で含む[1]〜[8]のいずれか1つに記載のインクジェット用インク。
【0034】
[10][1]〜[9]のいずれか1つに記載のインクジェット用インクを用いて形成されたポリイミド膜。
【0035】
[11]パターン状である[10]に記載のポリイミド膜。
【0036】
[12][1]〜[9]のいずれか1つに記載のインクジェット用インクを、インクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を加熱処理してポリイミド膜を形成する工程とを含むポリイミド膜形成方法。
【0037】
[13]基板上に[10]または[11]に記載のポリイミド膜が形成されてなるフィルム基板。
【0038】
[14][13]に記載のフィルム基板を有する電子部品。
【0039】
[15]基板上に[10]または[11]に記載のポリイミド膜が形成されてなるシリコンウエハー基板。
【0040】
[16][15]に記載のシリコンウエハー基板を有する電子部品。
【発明の効果】
【0041】
粘度、表面張力および溶剤の沸点などのパラメータをインクジェット印刷用に最適化した本発明のインクジェット用インクを用いれば、インクジェット印刷に好適に使用することができる。また、本発明のインクジェット用インクを用いて、塗膜としたときに種々の基板に対して良好な密着性を示すポリイミド膜を形成することができる。また、パターン状のポリイミド膜を形成するために、本発明のインクジェット用インクを用いれば、インクジェット印刷により必要な部分のみに描画すればよく、また、フォトマスク等を使用する必要がないので、エッチング等の他の方法に比べて材料使用量を圧倒的に少なくすることができるとともに、製造に要する工程数を少なくすることができ、多品種大量生産が可能である。また、本発明のインクジェット用インクはイミド系化合物を含むことから、インクジェットヘッドの耐久性を低下させない溶媒を使用したインクジェット用インクを提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例において密着強度を測定するために作製した評価サンプルの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係るインクジェット用インク、該インクジェット用インクを用いて形成されるポリイミド膜、該ポリイミド膜が形成されたフィルム基板およびシリコンウエハー基板、ならびに、該フィルム基板または該シリコンウエハー基板を有する電子部品について詳細に説明する。
【0044】
[インクジェット用インク]
本発明のインクジェット用インクは、式(1)で表される骨格(以下「骨格(1)」ともいう。)を有するアミド酸誘導体(A1)またはそのイミド化物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有する。また、本発明のインクジェット用インクは、好ましくは溶媒(B)をさらに含み、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。なお、本発明のインクジェット用インクは、有色または無色のどちらであっても構わない。
【0045】
【化7】

式(1)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素または炭素数1〜10のアルキルである。
【0046】
<1.化合物(A)>
上記化合物(A)は、骨格(1)を有する酸無水物および/または骨格(1)を有するアミン(以下「骨格(1)を有する原料」ともいう。)を用いて合成することができる。このような骨格(1)を有する原料を用いて合成することにより、アミド酸誘導体またはそのイミド化物に骨格(1)を導入することができる。
【0047】
1.1 骨格(1)を有する原料
骨格(1)を有する原料としては、骨格(1)を有する酸無水物および/またはアミンであれば特に限定されないが、例えば、式(2−1)または(2−2)で表される酸無水物が好ましい。
【0048】
【化8】

式(2−1)〜(2−2)中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素または炭素数1〜10のアルキル、好ましくは水素または炭素数1〜8のアルキル、より好ましくは水素であり、R5は単結合、炭素または炭素数1〜50の有機基、好ましくは単結合、炭素または炭素数1〜30の有機基、より好ましくは単結合、炭素または炭素数1〜20の有機基であり、mは1または2であり、nは1または2である。
【0049】
式(2−1)で表される酸無水物の好ましい例として、式(3)〜(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0050】
【化9】

【0051】
また、式(2−2)で表される酸無水物の好ましい例として、式(6)〜(7)で表されるジカルボン酸無水物も挙げられる。
【0052】
【化10】

【0053】
1.2 他の原料
化合物(A)を合成するための原料として、上述した骨格(1)を有する原料とともに、通常のポリイミドの原料として使用できるテトラカルボン酸二無水物やジアミン、ならびに、通常の末端封止剤として使用できるジカルボン酸無水物やモノアミンを併用することができる。具体的には、以下に示すテトラカルボン酸二無水物(a1)、ジアミン(a2)、ジカルボン酸無水物(a3)およびモノアミン(a4)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、特許文献6〜10に記載されている化合物を用いることができる。
【0054】
1.2.1 テトラカルボン酸二無水物(a1)
テトラカルボン酸二無水物(a1)の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(略語:PMDA)、3,3’,4,4’−ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物(略語:BPDA-H)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(略語:ODPA)、2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4ージカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物およびブタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。テトラカルボン酸二無水物(a1)は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
1.2.2 ジアミン(a2)
ジアミン(a2)の具体例としては、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(略語:BAPP)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ベンジジン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]シクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス[4−(4−アミノベンジル)フェニル]メタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル(略語:BAPEE)および下記式(13)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【化11】

式中、R8は独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R9は独立してメチレンまたはフェニレンであり、該フェニレンの任意の水素はアルキルで置き換えられていてもよく、xは独立して1〜6の整数であり、yは1〜70の整数である。
ジアミン(a2)は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
1.2.3 ジカルボン酸無水物(a3)
ジカルボン酸無水物(a3)の具体例としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、3−メチルフタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物、3−フルオロフタル酸無水物、4−フルオロフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、こはく酸無水物、ブチルこはく酸無水物、n−オクチルこはく酸無水物、ドデシルこはく酸無水物、テトラプロペニルこはく酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、アリルこはく酸無水物、2−ブテン−1−イルこはく酸無水物、2−ドデセン−1−イルこはく酸無水物、マレイン酸無水物(略語:MA)、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アリルナジック酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,3−シクロへキサンジカルボン酸無水物、p−(トリメトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、p−(トリエトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、m−(トリメトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、m−(トリエトキシシリル)フェニルサクシニックアンヒドリド、トリメトキシシリルプロピルサクシニックアンヒドリドおよびトリエトキシシリルプロピルサクシニックアンヒドリドが挙げられる。
【0058】
これらの中では、無水フタル酸、無水トリメリット酸、4−メチルフタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物、4−フルオロフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、テトラプロペニルこはく酸無水物、テトラデセニルこはく酸無水物、オクタデセニルこはく酸無水物、2−ドデセン−1−イルこはく酸無水物、グルタル酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アリルナジック酸無水物、cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物および1,3−シクロへキサンジカルボン酸無水物が好ましい。
ジカルボン酸無水物(a3)は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
1.2.4 モノアミン(a4)
モノアミン(a4)の具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルメチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリエトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルメチルジエトキシシラン、4−エチニルアニリン、3−エチニルアニリン、プロパルギルアミン、3−アミノブチン、4−アミノブチン、5−アミノペンチン、4−アミノペンチン、アリルアミン、7−アミノヘプチン、m−アミノスチレン、p−アミノスチレン、m−アミノ−α−メチルスチレン、3−アミノフェニルアセチレンおよび4−アミノフェニルアセチレンが挙げられる。
【0060】
これらの中では、例えば得られる膜の耐久性が優れるという点から、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびp−アミノフェニルトリメトキシシランが好ましく、3−アミノプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
モノアミン(a4)は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
1.3 化合物(A)の合成方法
上記化合物(A)の合成法として、例えば、特許文献6〜10に記載されている方法が挙げられる。
【0062】
1.3.1 アミド酸誘導体(A1)の合成方法
上記アミド酸誘導体(A1)は、骨格(1)を有するアミン、ジアミン(a2)および/またはモノアミン(a4)と、骨格(1)を有する酸無水物、テトラカルボン酸二無水物(a1)および/またはジカルボン酸無水物(a3)とを、アミノ基と酸無水物基とが反応してアミド酸を形成する穏やかな反応条件で、反応させて得ることができる。
【0063】
この穏やかな反応条件とは、例えば、常圧下、温度20〜60℃、反応時間0.2〜20時間で、触媒を使用することなく、反応により酸無水物基が開環して生じたカルボキシル基を活性化させることなく反応させる、という条件である。カルボキシル基の活性化とは、例えば、酸クロリドへの変換である。
【0064】
このような穏やかな反応条件下では、酸無水物基とアミノ基とが反応して生じたカルボキシル基が、さらに骨格(1)を有するアミン、ジアミン(a2)および/またはモノアミン(a4)のアミノ基と反応することがないため、遊離のカルボキシル基を有するアミド酸誘導体が得られる。
【0065】
1.3.2 イミド化物(A2)の合成方法
上記イミド化物(A2)は、上記アミド酸誘導体(A1)をイミド化することにより得ることができる。具体的には、上記イミド化物(A2)は、熱的方法または脱水触媒および脱水剤を用いた化学的方法によりアミド酸誘導体をイミド化する方法、好ましくは、精製処理を行なわずにインクの成分として使用できる熱的方法でイミド化する方法、より好ましくは、骨格(1)を有する酸無水物、骨格(1)を有するアミン、テトラカルボン酸二無水物(a1)、ジアミン(a2)、ジカルボン酸無水物(a3)、モノアミン(a4)等の原料を反応溶媒中で反応させた後、還流してイミド化する方法により得ることができる。還流は、使用する反応溶媒により条件が異なるが、140〜230℃で1.5〜10時間の条件で行うことが好ましい。還流温度が前記範囲内であると、イミド化が十分に進み強固な膜を得ることができるとともに、比較的沸点の高い溶媒を用いても還流可能である。
【0066】
1.3.3 反応溶媒
上記アミド酸誘導体(A1)またはそのイミド化物(A2)を合成するために用いられる反応溶媒は、アミド酸誘導体またはそのイミド化物を合成できれば特に限定されるものではない。
【0067】
反応溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(略語:EDM)、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(1−エトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、アニソール、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン(略語:NMP)、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。
【0068】
これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびγ−ブチロラクトンが溶解性の面で好ましい。
【0069】
反応溶媒は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記反応溶媒以外の他の溶媒を、反応溶媒に混合して用いることもできる。反応溶媒は、反応に用いる原料化合物の合計100重量部に対し、100重量部以上使用すると、反応がスムーズに進行するので好ましい。
【0070】
1.4 化合物(A)の例
化合物(A)としては、骨格(1)を有するとともに、粘度、表面張力および溶媒の沸点などの必要特性を有するインクジェット用インクを調製することができれば、何ら限定されるものではない。
【0071】
化合物(A)の好ましい例として、ジアミンと酸無水物基を2つ以上有する化合物とを用いて得られるポリアミド酸またはそのイミド化物(例えば、特許文献6参照)、分子内にアミド酸構造を有するシリコン化合物であるシリコンアミド酸またはそのイミド化物(例えば、特許文献7、8参照)、分子内に少なくとも1つのアルケニル置換ナジイミド構造を有するアルケニル置換ナジイミド化合物(例えば、特許文献9、10参照)が挙げられる。
【0072】
アミド酸誘導体(A1)の具体例として、式(8)で表される構成単位と、式(8−1)および式(8−2)で表される分子末端基からなる群より選ばれる少なくとも1種の分子末端基とを有する化合物(以下「化合物(8)」という。)ならびに式(9)〜(12)で表される化合物(以下それぞれ「化合物(9)」〜「化合物(12)」という。)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。イミド化物(A2)の具体例としては、前記化合物(8)〜(12)のイミド化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
【化12】

【0074】
式(8)、(8−1)、(8−2)および(9)〜(12)中、Xは炭素または炭素数2〜100の4価の有機基、好ましくは炭素または2〜80の4価の有機基、より好ましくは炭素または2〜50の4価の有機基であり、Yは炭素数1〜100の2価の有機基、好ましくは1〜80の2価の有機基、より好ましくは1〜50の2価の有機基であり、Zは炭素数1〜100の1価の有機基、好ましくは1〜80の1価の有機基、より好ましくは1〜50の1価の有機基であり、X、YおよびZの少なくとも1つが骨格(1)を有し、X’は独立して炭素数1〜100の2価の有機基、好ましくは不飽和炭化水素構造を有する炭素数2〜100の2価の有機基または式(a)で表される2価の有機基、より好ましくは不飽和炭化水素構造を有する炭素数2〜80の2価の有機基または式(a)で表される2価の有機基であり、
Y’は独立して炭素数1〜100の1価の有機基、好ましくは不飽和炭化水素構造を有する炭素数2〜100の1価の有機基または式(b)で表される1価の有機基、より好ましくは不飽和炭化水素構造を有する炭素数2〜80の1価の有機基または式(b)で表される1価の有機基である。
【0075】
【化13】

【0076】
式(a)および(b)中、Rは独立して水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシ、好ましくは水素、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり、R’は炭素数1〜20の3価の有機基、好ましくは炭素数1〜10のアルキルであり、R”は炭素数1〜20の2価の有機基、好ましくは炭素数1〜10のアルキルである。
【0077】
上記アルケニル置換ナジイミド化合物の例として、X’が式(c)で表される不飽和炭化水素構造を有する2価の有機基である、前記化合物(9)または(11)のイミド化物が挙げられる。
【0078】
【化14】

【0079】
式(c)中、R12およびR13は、それぞれ独立に水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルである。
【0080】
1.5 化合物(A)の含有量
本発明のインクジェット用インクは、インク100重量部に対して化合物(A)を5〜95重量部、好ましくは20〜80重量部、より好ましくは30〜70重量部の量で含む。前記範囲の量で化合物(A)を含むと、一回のジェッティングで比較的厚いポリイミド膜(2μm以上)を形成することが可能であり、また、インクの粘度を、インクジェット印刷可能な粘度範囲に調整することができる。
【0081】
化合物(A)の濃度が高いほど、本発明のインクジェット用インクから得られるポリイミド膜の膜厚が厚くなるため好ましいが、その一方で粘度が高くなる傾向にあるため、インクジェット印刷機でインクジェット用インクが吐出できなくなるという問題が生じる可能性がある。
【0082】
<2.溶媒(B)>
溶媒(B)は、化合物(A)を溶解することができる溶媒であれば、特に制限されない。また、単独では化合物(A)を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒と混合することによって化合物(A)を溶解できるのであれば、そのような混合溶媒を、溶媒(B)として用いることが可能である。
溶媒(B)の沸点は、好ましくは150〜300℃、より好ましくは150〜250℃である。
【0083】
溶媒(B)の具体例としては、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、アニソール、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン(略語:NMP)、1−エチル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。
【0084】
これらの中では、インクジェットヘッドの耐久性向上の点で、乳酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンまたはγ−ブチロラクトンを、溶媒(B)として含むことが好ましい。
【0085】
なお、上記例示溶媒の中では、インクジェットヘッドの耐久性の点から、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン(略語:NMP)、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのアミド系溶媒は、溶媒(B)の合計100重量部に対して、50重量部以下の量で含まれることが好ましく、好ましくは20重量部以下の量で含まれることが好ましく、全く含まれない、すなわち溶媒(B)が非アミド系の溶媒であることがより好ましい。
また、上述したように、化合物(A)の合成には反応溶媒が使用される。そのため、化合物(A)の合成が完了したときに前記反応溶媒が残存している場合、その反応溶媒を溶媒(B)として使用することもできる。
【0086】
溶媒(B)は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。また、本発明のインクジェット用インクは、インク100重量部に対して、溶媒(B)を5〜95重量部、好ましくは20〜80重量部、より好ましくは30〜70重量部の量で含有する。溶媒(B)の含有量が前記範囲内であると、インクジェット用インクの粘度が大きくなり過ぎず、ジェッティング特性は良好であるとともに、1回のジェッティングで形成できるポリイミド膜が薄くなり過ぎることがない。
【0087】
<3.添加剤>
本発明のインクジェット用インクは、目的とする特性によっては、化合物(A)および溶媒(B)以外の添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、高分子化合物、アルケニル置換ナジイミド化合物、シリコンアミド酸化合物、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、エポキシ硬化剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー、顔料および染料が挙げられる。
【0088】
3.1 高分子化合物
上記高分子化合物は、特に限定されないが、例えば、ポリアミド酸、可溶性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアミド酸エステル、ポリエステル、アクリル酸ポリマー、アクリレートポリマー、ポリビニルアルコールおよびポリオキシエチレンが挙げられる。これらの中では、ポリアミド酸および可溶性ポリイミドなどのポリイミド系高分子化合物が好ましい。
【0089】
高分子化合物とは、構成単位を有する化合物のことを指す。特に、重量平均分子量が1,000〜10,000である高分子化合物が、溶媒(B)に対する溶解性が優れており、インクジェット用インクの含有成分として好ましい。溶媒(B)に対する溶解性の観点からは、高分子化合物の重量平均分子量は、より好ましくは1,000〜7,500であり、さらに好ましくは1,000〜5,000であり、特に好ましくは1,000〜2,000である。
【0090】
重量平均分子量が1,000以上であると、加熱処理によって蒸発することがなく、化学的・機械的に安定である。また重量平均分子量が2,000以下であると、高分子化合物の溶媒(B)に対する溶解性が特に高いので、本発明のインクジェット用インク中の高分子化合物の濃度を高くすることができる。このため、インクジェット用インクを塗布して得られる塗膜の柔軟性および耐熱性を向上させることができる。
【0091】
高分子化合物の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。具体的には、高分子化合物をテトラヒドロフラン(THF)等で濃度が約1重量%になるように希釈し、東ソー株式会社製カラムG4000HXL、G3000HXL、G2500HXLおよびG2000HXLを、この順で直列に結合して用いて、THFを展開剤としてゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めることができる。
【0092】
本発明のインクジェット用インクの高分子化合物の濃度は、通常0〜20重量%であり、好ましくは0〜10重量%である。このような濃度範囲であると、絶縁膜として良好な特性が付与できることがある。
【0093】
3.2 エポキシ樹脂
上記エポキシ樹脂は、オキシランやオキセタンを有する化合物であれば特に限定されないが、オキシランを2つ以上有する化合物が好ましい。
【0094】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、オキシランを有するモノマーの重合体、およびオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0095】
オキシランを有するモノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートおよびメチルグリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0096】
オキシランを有するモノマーと共重合させる他のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドが挙げられる。
【0097】
オキシランを有するモノマーの重合体およびオキシランを有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、ベンジルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、n−ブチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート−グリシジルメタクリレート共重合体、またはスチレン−グリシジルメタクリレート共重合体が挙げられる。インクジェット用インクがこれらのエポキシ樹脂を含有すると、インクジェット用インクから形成されたポリイミド膜の耐熱性が良好となるため好ましい。
【0098】
エポキシ樹脂の具体例としては、商品名「エピコート807」、「エピコート815」、「エピコート825」、「エピコート827」、「エピコート828」、「エピコート190P」、「エピコート191P」(油化シェルエポキシ(株)製)、商品名「エピコート1004」、「エピコート1256」(ジャパンエポキシレジン(株)製)、商品名「アラルダイトCY177」、商品名「アラルダイトCY184」(日本チバガイギー(株)製)、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド3000」、「EHPE−3150」(ダイセル化学工業(株)製)、商品名「テクモアVG3101L」(三井化学(株)製)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。これらの中では、商品名「アラルダイトCY184」、商品名「セロキサイド2021P」、商品名「テクモアVG3101L」および商品名「エピコート828」が、得られるポリイミド膜の平坦性が特に良好であるため好ましい。
【0099】
エポキシ樹脂の具体例として、さらに式(I)〜(VI)の化合物が挙げられる。これらの中では、式(I)、式(V)および式(VI)の化合物が、得られる膜の平坦性が特に良好であるため好ましい。
【0100】
【化15】

【0101】
式(V)中、Rf、RgおよびRhは、それぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基である。
式(VI)中、Rcは炭素数2〜100の4価の有機基であり、Rdは炭素数1〜30の2価の有機基、例えば、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分枝鎖状の2価の有機基であり、前記2価の有機基は環構造または酸素を含んでいてもよく、環構造としては、フェニル、シクロヘキシル、ナフチル、シクロヘキセニルおよびトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルなどが挙げられ、Reは、オキセタン、オキシランまたは1,2−エポキシシクロヘキサンを有する一価の有機基であり、好ましくは式(VII)〜(IX)からなる群より選ばれる1価の有機基である。
【0102】
【化16】

式(VII)中、Riは水素または炭素数1〜3のアルキルである。
【0103】
式(VI)で表される化合物の好ましい例として、式(X)で表される化合物が挙げられる。
【0104】
【化17】

【0105】
エポキシ樹脂は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のインクジェット用インク中のエポキシ樹脂の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。前記濃度範囲であると、本発明のインクジェット用インクから形成されたポリイミド膜の耐熱性、耐薬品性および平坦性が良好である。
【0106】
3.3 アクリル樹脂
上記アクリル樹脂は、アクリル基またはメタクリル基を有する樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ヒドロキシルを有する単官能重合性モノマー、ヒドロキシルを有しない単官能重合性モノマー、二官能(メタ)アクリレート、または三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの単独重合体、あるいはこれらのモノマーの共重合体が挙げられる。
【0107】
ヒドロキシルを有する単官能重合性モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中では、形成される膜を柔軟にできる点から、4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましい。
【0108】
ヒドロキシルを有しない単官能重合性モノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、ビニルトルエン、N−アクリロイルモルホリン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]およびシクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]が挙げられる。
【0109】
二官能(メタ)アクリレートの具体例としては、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレートおよびトリメチロールプロパンジアクリレートを挙げることができる。
【0110】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0111】
アクリル樹脂は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のインクジェット用インク中のアクリル樹脂の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%である。前記濃度範囲であると、本発明のインクジェット用インクから形成された塗膜の耐熱性、耐薬品性および平坦性が良好である。
【0112】
3.4 界面活性剤
上記界面活性剤は、本発明のインクジェット用インクの下地基板への濡れ性、レベリング性または塗布性を向上させるために使用するものである。
【0113】
界面活性剤としては、本発明のインクの塗布性を向上できる点から、例えば、商品名「Byk−300」、「Byk−306」、「Byk−335」、「Byk−310」、「Byk−341」、「Byk−344」、「Byk−370」(ビック・ケミー(株)製)等のシリコン系界面活性剤;商品名「Byk−354」、「ByK−358」、「Byk−361」(ビック・ケミー(株)製)等のアクリル系界面活性剤;商品名「DFX−18」、「フタージェント250」、「フタージェント251」(ネオス(株)製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
これらの界面活性剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のインクジェット用インク中の界面活性剤の濃度は、好ましくは0.01〜1重量%である。
【0114】
3.5 帯電防止剤
上記帯電防止剤は、本発明のインクジェット用インクの帯電を防止するために使用するものであり、特に限定されないが、公知の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物等の金属酸化物や四級アンモニウム塩が挙げられる。
帯電防止剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のインクジェット用インク中の帯電防止剤の濃度は、好ましくは0.01〜1重量%である。
【0115】
3.6 カップリング剤
上記カップリング剤は、特に限定されるものではなく、公知のカップリング剤、好ましくはシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤の例としては、トリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0116】
トリアルコキシシラン化合物またはジアルコキシシラン化合物としては、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。これらの中では、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシランおよびγ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
カップリング剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のインクジェット用インク中のカップリング剤の濃度は、好ましくは0.01〜3重量%である。
【0117】
3.7 エポキシ硬化剤
上記エポキシ硬化剤は、特に限定されるものではなく、公知のエポキシ硬化剤、具体的には、有機酸ジヒドラジド化合物、イミダゾールおよびその誘導体、ジシアンジアミド、芳香族アミン、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物などを用いることができる。
【0118】
さらに具体的には、ジシアンジアミド等のジシアンジアミド類、アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等の有機酸ジヒドラジド、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチルイミダゾリル−(1’)]−エチルトリアジン、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物などの酸無水物、およびトリメリット酸が挙げられる。これらの中では、透明性が良好なトリメリット酸および1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物が好ましい。
【0119】
エポキシ硬化剤は、1種のみを用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明のインクジェット用インク中のエポキシ硬化剤の濃度は、好ましくは0.2〜5重量%である。
【0120】
<4.インクジェット用インクの物性>
4.1 インクジェット用インクの粘度
本発明のインクジェット用インクの、インクジェットヘッドから吐出するときの温度(吐出温度)における粘度は、好ましくは1〜50mPa・s、より好ましくは5〜20mPa・s、さらに好ましくは8〜15mPa・sである。粘度が前記範囲内であると、インクジェット塗布方法によるジェッティング精度が向上する。粘度が15mPa・sより低いと、インクジェット吐出不良が生じ難い。
【0121】
また常温(25℃)でジェッティングを行う場合も多いため、本発明のインクジェット用インクの25℃における粘度は、好ましくは1〜50mPa・s、より好ましくは5〜20mPa・s、特に好ましくは8〜15mPa・sである。25℃における粘度が15mPa・sより小さいと、インクジェット吐出不良が生じ難い。
【0122】
4.2 インクジェット用インクの表面張力
本発明のインクジェット用インクの表面張力は、好ましくは20〜70mN/m、より好ましくは20〜40mN/mである。表面張力が前記範囲内であると、ジェッティングにより良好な液滴が形成でき、かつメニスカスを形成することができる。
【0123】
4.3 インクジェット用インクの水分量
本発明のインクジェット用インク中の水分量は、好ましくは10,000ppm以下、より好ましくは5,000ppm以下である。水分量が前記範囲内であると、インクジェット用インクの粘度変化が少なく、保存安定性に優れる。
【0124】
[ポリイミド膜]
本発明のポリイミド膜は、本発明のインクジェット用インクを用いて形成される。具体的には、本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を加熱処理することにより、全面または所定のパターン状(たとえばライン状)のポリイミド膜を形成することができる。なお、本発明のインクジェット用インクに含まれる化合物(A)がイミド化物(A2)の場合、加熱処理に限定されず、紫外線、イオンビーム、電子線またはガンマ線などを照射する処理でもよい。
【0125】
インクジェット塗布方法における吐出方法としては、例えば、圧電素子型、バブルジェット(登録商標)型、連続噴射型および静電誘導型が挙げられる。本発明のインクジェット用インクは、含まれる各成分を適正に選択することにより、様々な方法で吐出が可能であり、インクジェット塗布方法によれば、本発明のインクジェット用インクを予め定められたパターン状に塗布することができる。
【0126】
本発明における好ましい吐出方法は、圧電素子型である。この圧電素子型のヘッドは、複数のノズルを有するノズル形成基板と、圧電材料および導電材料からなり、かつノズルに対向して配置される圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクとを備えたオンデマンドインクジェット塗布ヘッドであり、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させる。
【0127】
インクジェット塗布装置は、塗布ヘッドとインク収容部とが別体となった構成に限らず、それらが分離不能に一体になった構成であってもよい。また、インク収容部は、塗布ヘッドに対して、分離可能または分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えば、チューブを介して塗布ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0128】
また、塗布ヘッドに対して、好ましい負圧を作用させるための構成をインクタンクに設ける場合には、インクタンクのインク収納部に吸収体を配置した形態、あるいは可撓性のインク収容袋とこれに対しその内容積を拡張する方向の力を作用させるバネ部とを有した形態などを採用することができる。塗布装置は、シリアル塗布方式を採るもののほか、塗布媒体の全幅に対応した範囲にわたって塗布素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
【0129】
本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法により基板上に塗布した後、ホットプレートまたはオーブン等での加熱により溶媒を気化等させて除去する、すなわち乾燥する。この加熱条件は各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常70〜150℃で、オーブンを用いた場合は5〜15分間、ホットプレートを用いた場合は1〜5分間乾燥する。
【0130】
乾燥した後、塗膜の耐熱性、耐薬品性、平坦性、さらには十分な機械的強度を得るために、150〜350℃、好ましくは200〜300℃で、オーブンを用いた場合は30〜90分間、ホットプレートを用いた場合は5〜30分間加熱処理(硬化処理)することにより、ポリイミド膜が形成される。インクジェット塗布方法を用いて、パターン状に印刷した場合には、パターン状のポリイミド膜が形成される。本明細書では、特に言及のない限り、ポリイミド膜はパターン状のポリイミド膜を含むものとする。
【0131】
このようにして得られたポリイミド膜は、本発明のインクジェット用インクが、化合物(A)を高濃度で含んでいることから、従来のインクジェット用インクの塗布および加熱により形成されていたポリイミド膜よりも厚く、その厚みは通常2μm以上であり、好ましくは2〜5μmである。
【0132】
このように本発明のインクジェット用インクからは、1回のジェッティングで厚いポリイミド膜を得ることができる。そのため、例えば10μm程度の厚い絶縁膜を形成する場合には、従来のインクジェット用インクよりも、重ね塗りの回数を減らすことができ、絶縁膜の製造工程を短縮することができる。
また、本発明のインクジェット用インクから得られるポリイミド膜は、耐熱性および電気絶縁性に優れ、電子部品の信頼性および歩留まりを向上させることができる。
【0133】
本発明のポリイミド膜は基板から容易に剥離しないことが好ましく、その密着性は、基板に対するポリイミド膜の密着強度で表すことができる。密着強度は、好ましくは0.2N/mm以上であり、より好ましくは0.5N/mm以上であり、特に好ましくは0.5〜1.5N/mmである。密着強度が0.2N/mm以上であると、ポリイミド膜が基板から容易に剥離することがなく、好ましい。
【0134】
[基板]
本発明のフィルム基板は、例えば、配線が形成されたポリイミドフィルム等の基板上に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって全面または所定のパターン状(ライン状等)に塗布し、その後、上述したように乾燥し、さらに加熱してポリイミド膜を形成させて得られる。
【0135】
本発明のシリコンウエハー基板は、例えば、シリコンウエハー等の基板上に、本発明のインクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって全面または所定のパターン状に塗布し、その後、上述したように乾燥し、さらに加熱してポリイミド膜を形成させて得られる。
【0136】
本発明で用いることができるポリイミド膜は、好ましくは上述したポリイミドフィルム等の基板上またはシリコンウエハー基板上に形成されるが、特にこれらに限定されるものではなく、公知の基板上に形成することができる。
【0137】
本発明に適用可能な基板としては、例えば、FR−1、FR−3、FR−4、CEM−3またはE668等の各種規格に適合する、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、グリーンエポキシ基板およびBTレジン基板が挙げられる。
【0138】
また、本発明に適用可能な他の基板としては、例えば、銅、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ、クロムまたはステンレス等の金属からなる基板(それらの金属を表面に有する基板であってもよい);酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、ジルコニウムのケイ酸塩(ジルコン)、酸化マグネシウム(マグネシア)、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛(PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、硫化カドニウム、硫化モリブデン、酸化ベリリウム(ベリリア)、酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素(シリコンカーバイト)、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)、酸化亜鉛、ムライト、フェライト、ステアタイト、ホルステライト、スピネルまたはスポジュメン等のセラミックスからなる基板(それらのセラミックスを表面に有する基板であってもよい);PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PCT(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)、熱可塑性エラストマーまたは液晶ポリマー等の樹脂からなる基板(それらの樹脂を表面に有する基板であってもよい);シリコン、ゲルマニウムまたはガリウム砒素等の半導体基板;ガラス基板;酸化スズ、酸化亜鉛、ITOまたはATO等の電極材料が表面に形成された基板;αGEL(アルファゲル)、βGEL(ベータゲル)、θGEL(シータゲル)またはγGEL(ガンマゲル)(以上、株式会社タイカの登録商標)等のゲルシートが挙げられる。
【0139】
[電子部品]
本発明の電子部品は、上述のフィルム基板を有する電子部品、あるいは上述のシリコンウエハー基板を有する電子部品である。このように本発明のフィルム基板を利用して、フレキシブルな電子部品が得られる。また、本発明のシリコンウエハー基板を利用して、半導体電子部品が得られる。
【実施例】
【0140】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた反応原料および溶媒の名称の略号を以下に示す。
【0141】
<テトラカルボン酸二無水物>
PMDA:ピロメリット酸二無水物
BPDA-H:3,3’,4,4’−ビシクロへキシルテトラカルボン酸二無水物
TAPQ:式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物
【0142】
【化18】

【0143】
<ジアミン>
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
BAPEE:ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル
<ジカルボン酸無水物>
MA:マレイン酸無水物
<溶媒>
EDM:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点:180〜190℃)
NMP:1−メチル−2−ピロリドン(沸点:202℃)
【0144】
[合成例1]
100mLのサンプル瓶中に攪拌子をいれて、表1に示す配合割合で原料および溶媒を仕込み、室温で攪拌後、淡黄色なポリアミド酸の25重量%溶液(インクA)を得た。この溶液の粘度を、25℃にて、TV-22(TOKI SANGYO製)で測定したところ、13.7mPasであった。
【0145】
[合成例2]
合成例1と同様に、表1に示す配合割合で原料および溶媒を仕込み、室温で攪拌後、淡黄色なポリアミド酸の25重量%溶液(インクB)を得た。この溶液の粘度を、合成例1と同様にして測定したところ、11.5mPasであった。
【0146】
[合成例3]
合成例1と同様に、表1に示す配合割合で原料および溶媒を仕込み、室温で攪拌後、淡黄色なポリアミド酸の25重量%溶液(インクC)を得た。この溶液の粘度を、合成例1と同様にして測定したところ、16mPasであった。
【0147】
[合成例4]
合成例1と同様に、表1に示す配合割合で原料および溶媒を仕込み、室温で攪拌後、淡黄色なポリアミド酸の25重量%溶液(インクD)を得た。この溶液の粘度を、合成例1と同様にして測定したところ、15mPasであった。
【0148】
【表1】

【0149】
[実施例1]
(1)インクジェット装置(Dimatix製「DMP2831」)を用いて、銅箔(日鉱金属製「BHY−22B−T」、20mm×30mm)上全面に、インクAを塗布し、80℃で5分間乾燥させ、続いて180℃で60分間加熱することにより、厚み10μmのポリイミド膜を形成し、ポリイミド膜4と銅箔5との複合膜を得た。
【0150】
(2)次に、図1に示すように、粘着剤層2を有するガラスエポキシ支持基板1((株)マックエイト製「SHG−1B」:0.5mm厚)全面に、金メッキ用マスキングテープ3(住友3M製「851A」;ポリエステルフィルムの片面に粘着剤が塗布された、粘着力3.49N/10mm、引張強度35N/10mmのテープ。)のポリエステルフィルム面を貼り付けた。
【0151】
マスキングテープ3に上記(1)で作製したポリイミド膜4と銅箔5との複合膜を貼り付けた。このとき、マスキングテープ3の粘着剤が塗布された面とポリイミド膜4とが接するようにした。さらに、前記複合膜上の銅箔5に幅2.5mmの金メッキ用マスキングテープ(住友3M製「851A」)を貼り付け、粘着剤層2を有するガラスエポキシ支持基板1−マスキングテープ3−ポリイミド膜4−銅箔5−金メッキ用マスキングテープの順で積層された積層体を得た。
【0152】
得られた積層体を以下の方法でエッチング処理した。エッチングは、前記積層体を塩化第二鉄溶液(サンハトヤ製「H−1000A」)に浸漬し(エアーバブリング有り)、浴温45℃の条件で15分間行った。
エッチング処理後の積層体を純水で洗浄した後、銅箔に貼り付けたマスキングテープを剥がして幅2.5mmの銅箔を有する評価サンプルとした。
【0153】
(3)得られた評価サンプルの銅箔5を、引っ張り試験機(島津製作所製「島津卓上小型字型試験機EZGraph」)を用いて、引張速度:50mm/minおよびロードセル:20Nの条件で180°方向へ剥離し、その強度を密着強度とした。その結果、密着強度は0.7N/mmであった。
【0154】
[比較例1]
インクAの代わりにインクBを用いたこと以外は実施例1と同様にして評価サンプルを作製し、その密着強度を測定した。密着強度は0.1N/mmであった。
【0155】
[比較例2]
インクAの代わりにインクCを用いたこと以外は実施例1と同様にして評価サンプルを作製し、その密着強度を測定した。密着強度は0.04N/mmであった。
【0156】
[比較例3]
インクAの代わりにインクDを用いたこと以外は実施例1と同様にして評価サンプルを作製し、その密着強度を測定した。密着強度は0.19N/mmであった。
【0157】
実施例1で用いたインクAは、インクの粘度がインクジェット印刷に好適な13.7mPasであった。また、インクAは、インクジェット装置のノズルから吐出させることができ、吐出された直後に広がらず、良好な液滴を形成できたことから、インクジェット用インクに適した表面張力となっていることがわかった。さらに、実施例1の結果から、沸点が100〜300℃の範囲の溶媒を使用することができることもわかった。これらのことから、実施例1のインクAは、粘度、表面張力および溶剤の沸点のパラメータをインクジェット印刷用に最適化させたインクであると評価できる。
【0158】
また、インクAを用いて形成した塗膜について、基板との密着強度を測定したところ、0.7N/mmという高い値を示した。このことから、インクAを用いることによって、基板に対して良好な密着性を示すポリイミド膜を形成できたことがわかった。
【0159】
これに対して、比較例1〜3で用いたインクB〜Dは、インクジェット印刷に使用することは可能であったが、インクB〜Dを用いて形成した塗膜について、基板との密着強度を測定したところ、すべて0.2N/mm以下という低い値を示した。このことから、インクB〜Dを用いて形成したポリイミド膜は、基板に対する密着性が不充分であり、剥離し易いことがわかった。
【符号の説明】
【0160】
1 支持基板
2 粘着剤層
3 粘着剤付きマスキングテープ
4 ポリイミド膜
5 銅箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される骨格を有するアミド酸誘導体(A1)およびそのイミド化物(A2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(A)を含有するインクジェット用インク。
【化1】

(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素または炭素数1〜10のアルキルである。)
【請求項2】
化合物(A)が、式(2−1)または(2−2)で表される酸無水物を用いて得られた化合物である請求項1に記載のインクジェット用インク。
【化2】

(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素または炭素数1〜10のアルキルであり、R5は単結合、炭素または炭素数1〜50の有機基であり、mは1または2であり、nは1または2である。)
【請求項3】
化合物(A)が、式(3)〜(5)で表されるテトラカルボン酸二無水物から選ばれる少なくとも1種を用いて得られた化合物である請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
【化3】

【請求項4】
化合物(A)が、式(6)〜(7)で表されるジカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種を用いて得られた化合物である請求項1または2に記載のインクジェット用インク。
【化4】

【請求項5】
アミド酸誘導体(A1)が、式(8)で表される構成単位と、式(8−1)および(8−2)で表される分子末端基からなる群より選ばれる少なくとも1種の分子末端基とを有する化合物ならびに式(9)〜(12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【化5】

(式中、Xは炭素または炭素数2〜100の4価の有機基であり、Yは炭素数1〜100の2価の有機基であり、Zは炭素数1〜100の1価の有機基であり、X、YおよびZの少なくとも1つが式(1)で表される骨格を有し、X’は独立して炭素数1〜100の2価の有機基であり、Y’は独立して炭素数1〜100の1価の有機基である。)
【請求項6】
式(8−1)、(8−2)および(9)〜(12)中、X’が独立して不飽和炭化水素構造を有する炭素数2〜100の2価の有機基または式(a)で表される2価の有機基であり、Y’が独立して不飽和炭化水素構造を有する炭素数2〜100の1価の有機基または式(b)で表される1価の有機基である請求項5に記載のインクジェット用インク。
【化6】

(式中、Rは独立して水素、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜20のアルコキシであり、R’は炭素数1〜20の3価の有機基であり、R”は炭素数1〜20の2価の有機基である。)
【請求項7】
さらに溶媒(B)を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項8】
溶媒(B)が、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、アニソール、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−ビニル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミドおよび1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載のインクジェット用インク。
【請求項9】
インクジェット用インク100重量部に対して、化合物(A)を5〜95重量部の量で含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット用インク。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを用いて形成されたポリイミド膜。
【請求項11】
パターン状である請求項10に記載のポリイミド膜。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェット用インクを、インクジェット塗布方法によって基板上に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を加熱処理してポリイミド膜を形成する工程とを含むポリイミド膜形成方法。
【請求項13】
基板上に請求項10または11に記載のポリイミド膜が形成されてなるフィルム基板。
【請求項14】
請求項13に記載のフィルム基板を有する電子部品。
【請求項15】
基板上に請求項10または11に記載のポリイミド膜が形成されてなるシリコンウエハー基板。
【請求項16】
請求項15に記載のシリコンウエハー基板を有する電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−67203(P2012−67203A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213565(P2010−213565)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】