説明

インクジェット用水性インク、インクジェット記録方法及びインクカートリッジ

【課題】サテライトの発生を抑制することができるとともに、インクの吐出安定性及び画像の定着性に優れたインクジェット用水性インク、該インクを用いたインクジェット記録方法、並びにインクカートリッジを提供すること。
【解決手段】顔料、曳糸性化合物を含有するインクジェット用水性インクであって、前記顔料がカーボンブラック及び有機顔料の少なくとも一方であり、前記曳糸性化合物の重量平均分子量が50万以上1,500万以下であることを特徴とするインクジェット用水性インク、インクジェット記録方法及びインクカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用水性インク、インクジェット記録方法及びインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット用水性インクとして、色材として染料を含有する染料インクが用いられている。染料インクによれば、表面光沢を有する記録媒体に画像を記録した際に、光沢感を損なうことなく高い発色性が得られる。しかし、オフィスなどで一般的に使用されるOA用紙やコピー用紙などの普通紙を記録媒体として用いた場合、染料は水溶性であるため、耐水性が不十分であるという課題がある。
【0003】
これに対し、耐水性に優れたインクとして、無機コロイド状物質に染料を吸着させたものを色材として用い、これを高分子化合物によって分散させたインクや、色材として顔料を含有する顔料インクに関する提案がある(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−196966号公報
【特許文献2】特開2005−206615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1及び2に示されたようなインクを用いることで、確かに普通紙において優れた耐水性が得られることを確認した。しかし、一方で、これらのインクをインクジェット記録方法に適用し、画像を記録する場合、以下のような課題が生じることがわかった。具体的には、記録ヘッドからインク滴が吐出される際に、インク滴が体積の最も大きいインク滴(主滴)と、これよりも体積の小さい少なくともひとつのインク滴(サテライト)とに分裂する。このサテライトが、記録ヘッドの主走査方向に主滴とずれて記録媒体に着弾するため、得られる画像品位の低下が起こる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、サテライトの発生を抑制することができるとともに、インクの吐出安定性及び画像の定着性に優れたインクジェット用水性インク、該インクを用いたインクジェット記録方法、並びにインクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、顔料、曳糸性化合物を含有するインクジェット用水性インクであって、前記顔料が、カーボンブラック及び有機顔料の少なくとも一方であり、前記曳糸性化合物の重量平均分子量が50万以上1,500万以下であることを特徴とするインクジェット用水性インク、該インクを用いたインクジェット記録方法及びインクカートリッジである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サテライトの発生を抑制することができるとともに、インクの吐出安定性及び画像の定着性に優れたインクジェット用水性インク、該インクを用いたインクジェット記録方法及びインクカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳述する。本発明は、顔料(カーボンブラック及び有機顔料の少なくとも一方)、重量平均分子量が50万以上1,500万以下の曳糸性化合物を含有するインクジェット用水性インクである。かかる構成のインクにより、サテライトの発生が抑制されるという効果が得られる。本発明者らは、このような効果が得られる理由を、以下のように推測している。
【0010】
サテライトは以下のようにして発生する。記録ヘッドから吐出されるインク滴は、吐出直後に、表面張力によって比較的体積が大きい液滴(主滴)と液柱状の液滴に分裂する。液柱状の液滴はその後細径化して伸長し、体積の相対的に小さい少なくともひとつのインク滴となるか、多くの場合は複数のインク滴にさらに分裂する。このように主滴と液柱状の液滴の分裂、液柱状の液滴のさらなる分裂という2段階のインク滴の分裂によってサテライトは生じる。
【0011】
本発明者らが検討した結果、インクの表面張力を高めることで、サテライトの発生をある程度を抑制することは可能であるが、記録媒体への浸透性が低くなるため、画像の定着性が十分に得られなかった。そこで、優れた定着性を保ちつつ、サテライトの発生を抑制すべく、本発明者らが検討を重ねた結果、以下のような知見を得た。
【0012】
本発明のインクは、疎水性の高いカーボンブラックや有機顔料と、親水性の高い曳糸性化合物を含有する。そのため、インク中において曳糸性化合物は顔料に極微量吸着するものの、ほとんどが顔料から独立して存在する。顔料に吸着した曳糸性化合物と、顔料から独立して存在する曳糸性化合物とが互いに絡み合い相互作用を生じることにより、本発明のインクは曳糸性と3次元網目構造による構造粘性という2つの特性を有する。この2つの特性により、本発明のインクは、インクの表面張力の高低に関わらず、上記2段階のインク滴分裂が起こりにくくなり、サテライトの発生が抑制されると考えられる。
【0013】
<インク>
以下、本発明のインクを構成する成分について説明する。
(顔料)
本発明のインクに含有させる色材(顔料)は、カーボンブラック及び有機顔料の少なくとも一方であることを要する。これら以外の顔料では、顔料の親水性が相対的に高く、曳糸性化合物の多くが顔料に吸着してしまい、サテライトの発生を抑制する効果が得られないためである。本発明のインクに使用可能な顔料の種類としては、無機顔料であるカーボンブラックが挙げられる。また、アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、オキサジンなどの有機顔料が挙げられる。これらの顔料は、1種又は2種以上を用いることができる。インク中の顔料の含有量は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
インクを構成する水性媒体中に顔料を分散させる方式はどのような方式であってもよい。例えば、樹脂分散剤を顔料に吸着させる樹脂分散顔料が挙げられる。また、樹脂で顔料を実質的に包含したマイクロカプセル顔料、顔料粒子の表面に親水性基を含む官能基を結合させた自己分散顔料、顔料粒子の表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型自己分散顔料などが挙げられる。もちろん、これらの分散方式の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。
【0015】
(曳糸性化合物)
本発明のインクには曳糸性化合物を含有させる。本発明における曳糸性化合物の定義を以下に示す。曳糸性とは、物体の伸長特性が表れる、いわゆる、「糸を曳く」性質であり、例えば「納豆の糸曳き」などがその代表例として挙げられる。曳糸性は、液状の組成物を低速度で滴下又はその一端を保持して伸長した際に、破断して液滴を形成することなく、連続した糸状構造体を呈する性質である。一般的に、曳糸性は液状の組成物の弾性的緩和現象の一つであり、表面張力や粘度とは独立した物性であることが知られている。通常の高分子化合物であっても、例えば10質量%以上の高濃度の水溶液であれば、上記の曳糸性挙動を呈することはしばしばある。しかし、このような高濃度の水溶液は極めて粘度が高く、著しく流動性に欠ける。本発明でいう曳糸性化合物とは、希薄な水溶液(0.5質量%以下)とした場合であっても、高い流動性を保ちながら曳糸性を発現する化合物をいう。
【0016】
ある化合物が、本発明にいう「曳糸性化合物」であるか否かについては、25℃の環境で、以下の方法によって判定する。まず、判定対象となる化合物をイオン交換水で希釈し、十分に撹拌して、0.5質量%の水溶液を調製する。次いで、調製した水溶液を、先端内径1mmのガラス製パスツールピペット(例えば、IK−PAS−5P;旭テクノグラス製)より、5mm以上離れた落下地点へと静かに滴下させる。その際に、目視観察によって糸曳きを確認できた場合を、本発明にいう「曳糸性化合物」であると判定する。
【0017】
本発明のインクに用いることができる曳糸性化合物としては、例えば、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、捺染用デンプン系のり剤(小麦デンプン、プリティッシュガム、デキストリン)、繊維素誘導体のり剤(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、海藻系のり剤(アルギン酸塩、寒天、カラギーナン、ふのり)、ガム系のり剤(ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、クリスタルガム)、合成系のり剤(酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、アクリル酸共重合体/PVAブロック共重合体)などが挙げられる。本発明においては、サテライトの発生をより効果的に抑制するためには、アニオン性の曳糸性化合物であるポリアクリル酸塩を用いることが特に好ましい。なお、曳糸性化合物が塩である場合、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属や(有機)アンモニウムなどの塩であることが好ましい。
【0018】
本発明のインクにおいて、曳糸性化合物の重量平均分子量は50万以上1,500万以下であることが必要である。なお、曳糸性化合物の重量平均分子量は、100万以上1,000万以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が50万未満であると、インクに曳糸性が付与されにくく、サテライトの発生を抑制する効果が得られない。一方、重量平均分子量が1,500万を超えると、インクの粘度が高くなり、インクの吐出安定性が得られない。曳糸性化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される、ポリスチレン換算の値である。
【0019】
本発明においては、インク中の曳糸性化合物の含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.005質量%以上0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.1質量%以下であることがさらに好ましい。含有量が0.005質量%未満であると、インクに曳糸性が付与されにくく、サテライトの発生を抑制する効果が十分に得られない場合がある。一方、含有量が0.1質量%を超えると、インクの粘度が高くなりすぎ、吐出安定性が十分に得られない場合がある。
【0020】
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒を水性媒体として含有させることが好ましい。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、従来、インクジェット用のインクに一般的に使用される公知のものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上の水溶性有機溶剤を用いることができる。具体的には、1価又は多価のアルコール類、アルキレン基の炭素数が1〜4程度のアルキレングリコール類、平均分子量200〜2,000程度のポリエチレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などが挙げられる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
【0021】
本発明のインクには水溶性有機溶剤の中でも、以下に挙げるような高浸透性の水溶性有機溶剤を用いることが特に好ましい。例えば、エタノール、2−プロパノール、1,2−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどの1価若しくは多価アルコール類、又はアルキレングリコール類が挙げられる。これらは浸透性が高い部類の水溶性有機溶剤であるが、このようなものを用いると、画像の定着性を顕著に向上することができるものの、インクの動的表面張力が低下するため、サテライトが多く発生してしまうことが知られている。しかし、曳糸性化合物を含有する本発明のインクでは、高浸透性の水溶性有機溶剤を含有させても、サテライトの発生が十分に抑制され、かつ、画像の定着性も高いレベルで得ることができる。
【0022】
本発明のインクは、25℃における表面張力が20.0mN/m以上38.0mN/m以下であることが好ましく、20.0mN/m以上35.0mN/m以下であることがさらに好ましい。表面張力が38.0mN/mを超えると、記録媒体へのインクの浸透性が低くなり、画像の定着性が十分に得られない場合がある。また、表面張力が20.0mN/m未満であると、記録媒体へのインクの浸透性が高くなりすぎ、高いレベルの画像濃度が得られない場合がある。なお、インクの表面張力は水溶性有機溶剤や界面活性剤の種類や含有量などを適宜に選択することによっても調整することができる。また、ここでの表面張力とは、白金プレート法などにより測定される、いわゆる静的表面張力を意味する。
【0023】
(その他の成分)
本発明のインクには、上記成分以外にも必要に応じて、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの常温で固体の有機化合物や、尿素、エチレン尿素などの含窒素化合物を含有させてもよい。また、上記の成分の他に、さらに必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート剤などの種々の添加剤をインクに含有させてもよい。
【0024】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えてなり、前記インク収容部に、上記で説明した本発明のインクが収容されてなるものである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものが挙げられる。または、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量の全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部であるインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
【0025】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式やインクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられ、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
【実施例】
【0026】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。なお、成分量に関し「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0027】
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液A)
自己分散カーボンブラックを含む顔料分散液(商品名:Cab−O−Jet400;キャボット製)をイオン交換水で希釈し、十分撹拌して顔料分散液Aを得た。顔料分散液Aは、pHが9.0であり、顔料の含有量が10.0%、顔料の体積平均粒子径(D50)が110nmであった。
【0028】
(顔料分散液B)
比表面積が210m2/gでDBP吸油量が74mL/100gであるカーボンブラック10.0部、樹脂20.0部、水70.0部を混合した。なお、前記樹脂は、酸価200mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン−アクリル酸共重合体を10.0%水酸化ナトリウム水溶液で中和したものである。サンドグラインダーを用いてこの混合物を1時間分散した後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズが3.0μmであるミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、顔料分散液Bを得た。顔料分散液Bは、pHが10.0、顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が20.0%、顔料の体積平均粒子径(D50)が120nmであった。
【0029】
(顔料分散液C)
カーボンブラックの代わりにC.I.ピグメントレッド122(チバスペシャリティーケミカルズ製)を用いた以外は顔料分散液Bと同様にして、顔料分散液Cを得た。顔料分散液Cは、pHが10.0、顔料の含有量が8.0%、樹脂の含有量が20.0%、顔料の体積平均粒子径(D50)が107nmであった。
【0030】
(顔料分散液D)
超微粒子無水シリカ(商品名:AEROSIL OX50;日本アエロジル製)5gを200mLビーカーに入れた。これにC.I.ダイレクトレッド227の10.0%水溶液を100mL加え、マグネチックスターラーを用いて、1,000rpmで5時間撹拌した。次に、ポアサイズが1.0μmであるミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行った。フィルター上に残った成分をイオン交換水で3回洗浄し、続いて0.1mol/Lの塩酸で2回洗浄し、再びイオン交換水で2回洗浄した後、分散容器に入れた。さらに重量平均分子量60,000のポリメタクリル酸5.0部、重量平均分子量6,000のポリエチレングリコール0.5部と、全量が100.0部となる量のイオン交換水を加えた。サンドグラインダーを用いてこの混合物を5時間分散した後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行った。上記の方法により、無機顔料に染料を吸着させた無機顔料が樹脂分散剤により分散された状態の顔料分散液Dを得た。顔料分散液Dは、pHが10.0、無機顔料の含有量が10.0%、樹脂の含有量が5.0%、無機顔料の体積平均粒子径(D50)が40nmであった。
【0031】
<高分子化合物を含む水溶液の調製>
下記表1に示した高分子化合物をイオン交換水で希釈し、十分撹拌して、高分子化合物の含有量が0.5質量%である水溶液1〜6をそれぞれ調製した。高分子化合物の曳糸性の有無は以下のようにして判定した。上記で得られた水溶液を、先端内径1mmのガラス製パスツールピペット(IK−PAS−5P;旭テクノグラス製)より、落下地点から5mm離して静かに滴下操作をした。その際に、糸を曳いた水溶液を調製するのに用いた高分子化合物を曳糸性ありと判定し、糸を曳かなかった水溶液を調製するのに用いた高分子化合物を曳糸性なしと判定した。
【0032】

【0033】
<インクの調製>
表2−1及び2−2の上段に示した各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌して分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。なお、アセチレノールE100は川研ファインケミカル製の界面活性剤である。また、表2−1及び2−2の下段には、10mm×24mmの白金プレートを搭載した表面張力計(商品名:CBVP−A3;協和界面科学製)を用いて、25℃における各インクの表面張力を測定した結果も示す。
【0034】

【0035】

【0036】
<評価>
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填した。そして、熱エネルギーの作用によりインクを吐出するインクジェット記録装置(PIXUS iP3100(キヤノン製)を用いて、1/600インチ×1/600インチの単位領域に約30ngのインクを付与する条件で画像を記録し、評価を行った。本発明においては、下記の各項目の評価基準でB以上を許容できるレベル、Cを許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。
【0037】
(サテライトの抑制)
上記記録装置を用いて、A4サイズの記録媒体(商品名:高品位専用紙HR−101;キヤノン製)に、1ドットの幅の縦罫線を記録した。得られた記録物の縦罫線を倍率20倍のルーペで観察し、以下の基準でサテライトの抑制の評価を行った。
A:主滴とサテライトの着弾位置のずれがほとんどなかった。
B:主滴とサテライトの着弾位置に若干のずれがあった。
C:主滴とサテライトの着弾位置のずれが顕著であった。
【0038】
(吐出安定性)
上記記録装置を用いて、A4サイズの記録媒体(商品名:PPC用紙GF−500;キヤノン製)に、19cm×26cmのベタ画像を記録した。得られた記録物のベタ画像を目視で観察し、以下の基準で吐出安定性の評価を行った。
A:白スジやカスレが生じず、正常に記録されていた。
B:白スジやカスレが僅かに生じていたが、目立っていなかった。
C:白スジやカスレが全体に生じていた。
【0039】
(定着性)
上記記録装置を用いて、A4サイズの記録媒体(商品名:PPC用紙GF−500;キヤノン製)に、1cm×2cmのベタ画像を記録した。記録の10秒後に、40g/cm2のおもりを乗せたシルボン紙でベタ画像の部分を擦り、非記録部分の汚れの程度を目視で観察し、以下の基準で定着性の評価を行った。
A:非記録部分に汚れがほとんど付着していなかった。
B:非記録部分に汚れが付着していた。
【0040】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、曳糸性化合物を含有するインクジェット用水性インクであって、
前記顔料が、カーボンブラック及び有機顔料の少なくとも一方であり、
前記曳糸性化合物の重量平均分子量が50万以上1,500万以下であることを特徴とするインクジェット用水性インク。
【請求項2】
インク中の前記曳糸性化合物の含有量が、インク全質量を基準として、0.005質量%以上0.1質量%以下である請求項1に記載のインクジェット用水性インク。
【請求項3】
前記曳糸性化合物がポリアクリル酸塩である請求項1又は2に記載のインクジェット用水性インク。
【請求項4】
インクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジであって、前記インク収容部に収容されたインクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット用水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項5】
インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット用水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2012−172041(P2012−172041A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34630(P2011−34630)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】