説明

インクジェット用葉書用紙

【課題】本発明は、古紙パルプを配合しても、インクジェットプリンター印字で滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、版持ちなどのプロセス印刷による印刷適性が良好なインクジェット用葉書用紙を提供する。
【解決手段】本発明に係るインクジェット用葉書用紙は、3層以上の多層抄きの基紙の片面側に顔料を主体として含有するインク受容層を設け、基紙の反対面側にはインク受容層を設けずに基紙を剥き出しの状態とし、かつ、基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上であり、基紙の片面だけにインク受容層を設けた片面塗工品の坪量が150〜250g/mであり、基紙の層のうち、インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、中間に位置する層を中間層としたとき、中間層が1層以上で形成され、かつ、片面塗工品の裏面層中に残存する界面活性剤の含有率が500ppm以下、片面塗工品の透気抵抗度が200秒以下、である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、古紙パルプを含有したインクジェット記録用葉書用紙に関するものであり、インクジェットプリンター印字後の滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、更には版持ちなどのプロセス印刷適性が良好なインクジェット用葉書用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式が一般大衆へ普及するに伴い、葉書にも採用されるようになってきており、インクジェット記録用の葉書に関する技術もある(例えば、特許文献1又は特許文献2を参照。)。
【0003】
葉書には、通常、郵便番号枠、切手貼り付け枠、又はお年玉付き年賀葉書の抽選番号等が宛名面側にプロセス印刷によって印刷されるが、近年、印刷速度の高速化に伴い、宛名面の表面強さをはじめとする印刷適性への要求が大きくなっている。
【0004】
また、近年、紙製品での環境配慮としてのリサイクル、すなわち、古紙パルプを多く配合することが重要であり、ユーザーからの要求も大きくなっている。
【0005】
古紙パルプを配合した葉書に関して、特定の填料を使用又は使用するパルプの離解フリーネスに着目した技術が開示されている(例えば、特許文献3又は特許文献4を参照。)。
【0006】
さらに、多層抄きインクジェット用紙とした技術も開示されている(例えば、特許文献5又は特許文献6を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−297148号公報
【特許文献2】特開2005−67166号公報
【特許文献3】特開2001−260527号公報
【特許文献4】特開2006−289813号公報
【特許文献5】特開2002−127592号公報
【特許文献6】特開2004−177461号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「情報用紙 ’95」、紙業タイムス社、1995年4月20日発行、p.176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
古紙パルプの配合割合を高くしたとき、次のような弊害が発生する。
1.リサイクルが進むと繊維の角質化、短繊維化などの影響によって、各種強度(例えば、紙力、内部結合強さ、引張強さ、引裂強さ、破裂強さなど)の低下、及び、透気抵抗度の上昇が起こること。
2.古紙処理工程で使用する脱墨剤などの界面活性剤が残留するため、基紙が剥き出しである宛名面に印字したときにはフェザリングが発生すること(フェザリングとは、非特許文献1に記載のとおり、いわゆるインク受容層を特別に設けない紙基材表面での滲みを表現するものである。)。宛名面の水性ペンの筆記性も同様に悪化すること。
3.また、プロセス印刷において、印刷面に脱墨剤などの界面活性剤が残留すると、印刷時に湿し水を吸水しやすくなり、結果として紙からの溶出などによって湿し水が汚れやすくなり、印刷版の持ちが悪くなること。
4.インク受容層を設ける場合にも、塗工液の浸透ムラが発生しやすくなる。結果としてインク受容層表面での滲みが発生すること。
【0010】
印刷強度を上げる対策として、表面強さを高くする方法があり、その手段として被覆性の高いポリビニルアルコール等の塗布が挙げられる。しかし、透気抵抗度が上がり、インクジェット用インクの吸収が悪くなり滲みが大きくなる。
【0011】
基紙内の強度を上げる対策として、パルプの叩解を進め、強度を向上させる方法もあるが、基紙が緻密になるため、同様に透気抵抗度がインクジェット用インクの吸収が悪くなり、滲みが大きくなる。
【0012】
透気抵抗度を下げる方策として、表面に塗布している澱粉やポリビニルアルコール等の量を制限する、又はパルプの叩解を緩める方法があるが、前述の印刷強度を上げる対策及び基紙内の強度を上げる対策と相反することとなり、不具合となる。
【0013】
印刷版の持ちを向上させる対策として、印刷面からの溶出を減らす方法があり、その手段として印刷面のサイズ性を上げる方法が挙げられる。しかし、古紙パルプ中の残留脱墨剤によって効果が出ない。
【0014】
葉書の宛名面のフェザリング対策として、基紙を製造するときに内添サイズ剤や表面サイズ剤を使用して対応するが、古紙パルプ中の残留脱墨剤、残留灰分によって効果が出ない。宛名面の水性ペンの筆記性も同様に改善しない。
【0015】
インク受容層を設ける場合にも、塗工液の浸透ムラ対策として、基紙を製造するときに内添サイズ剤及び/又は表面サイズ剤を使用して対応するが、古紙パルプ中の残留脱墨剤、残留灰分によって効果が出ない。結果としてインク受容層表面での滲みが発生する。
【0016】
最近では、インクジェットプリンターの普及及び高解像度化に伴い、いわゆる通信面側には写真ライクな高精細な画像が望まれている。
【0017】
前述したように、葉書に要求される特性は多岐にわたり、従来技術ではこれらの特性を十分に満足させるまでには至っていなかった。
【0018】
特許文献3又は特許文献4に記載されている特定の填料を使用又は使用するパルプの離解フリーネスに着目した技術では、非塗工面の耐刷力に乏しく事実上印刷をすることはできない。
【0019】
さらに、特許文献5又は特許文献6に記載された多層抄きインクジェット用紙は、古紙パルプの配合については触れておらず、この製造方法では前記特性を十分に満足させるという課題を解決することができない。
【0020】
したがって、本発明は、このような従来の技術がもっていた問題を解決しようとするものであり、古紙パルプ配合のインクジェット記録用葉書に関し、インクジェットプリンター印字で滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、更には版持ちなどのプロセス印刷による印刷適性が良好なインクジェット用葉書用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは鋭意検討の結果、基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上であるインクジェット用葉書用紙において、該基紙中の残存界面活性剤の含有率を一定以下とし、かつ片面塗工品の透気抵抗度を200秒以下とすることをすることで、インクジェットプリンター印字後の滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、更には版持ちなどのプロセス印刷による印刷適性が良好なインクジェット用葉書用紙を完成するに至った。具体的には、本発明に係るインクジェット用葉書用紙は、3層以上の多層抄きの基紙の片面側に顔料を主体として含有するインク受容層を設け、前記基紙の反対面側にはインク受容層を設けずに基紙を剥き出しの状態とし、かつ、前記基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上であり、前記基紙の片面だけにインク受容層を設けた片面塗工品の坪量(JIS P 8124:1998(紙及び板紙−坪量測定方法))が150〜250g/mである多層抄きインクジェット用葉書用紙において、
前記基紙の層のうち、前記インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、該表面層と該裏面層との中間に位置する層を中間層とそれぞれ表記したとき、該中間層が1層以上で形成され、かつ、
1)前記片面塗工品の裏面層中に残存する界面活性剤の含有率が500ppm以下、
2)前記片面塗工品の透気抵抗度(JIS P 8117:1998(紙及び板紙−透気度試験方法−ガーレー試験機法))が200秒以下、
であることを特徴とする。なお、ここに示す残存する界面活性剤の含有率は、裏面層の質量に対する質量百万分率である。以下、ppmで表記しているものについては同様の解釈とする。
【0022】
本発明に係るインクジェット用葉書用紙では、前記片面塗工品の表面層中に残存する界面活性剤の含有率が1000ppm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明に係るインクジェット用葉書用紙では、前記基紙の透気抵抗度が60秒以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るインクジェット記録用葉書は、前記の構成をとることによって、基紙全体の古紙パルプ配合割合を20質量%以上にした場合においてもインクジェットプリンター印字後の滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、更には版持ちなどのプロセス印刷による印刷適性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0026】
本実施形態に係るインクジェット用葉書用紙は、基紙の片面側に顔料を主体として含有するインク受容層を設け、基紙の反対面側にはインク受容層を設けずに基紙を剥き出しの状態としている。そして、基紙は、(a)3層以上の多層抄きであり、(b)基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上であり、(c)インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、表面層と裏面層との中間に位置する層を中間層とした場合、中間層を1層以上有し、(d)基紙の片面だけにインク受容層を設けた片面塗工品(以下、片面塗工品という)の坪量(JIS P 8124:1998)は150〜250g/mである。そして、
1)片面塗工品の裏面層中に残存する界面活性剤の含有率が500ppm以下、
2)片面塗工品の透気抵抗度(JIS P 8117:1998)が200秒以下、
である。
【0027】
基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%未満であると、古紙を再利用し、リサイクル率を高め環境に配慮するという本発明の目的を達成しにくくなる。基紙全体の古紙パルプ配合割合は、高いほうが環境配慮とすることができる。
【0028】
表面層、中間層、裏面層に均一に古紙パルプを配合した場合又は単層抄きの場合には、
古紙パルプに含まれる残留インキや除去しきれないゴミなどの夾雑物は古紙パルプ配合割合に相関して多くなってしまう。さらに、表面層、裏面層への古紙パルプ配合割合が高くなれば、更に人目に触れる夾雑物は増加する。夾雑物が増加すると見た目が悪くなるだけでなく、宛名面となる裏面の場合では、郵便番号が自動区分機で読み取れなくなる、お年玉付き年賀葉書の抽選番号等が読み取れなくなる、更には住所が読み取り難くなるなどの弊害が発生する。そこで、中間層の古紙パルプ配合割合を表面層、裏面層よりも高めることが好ましい。古紙パルプ配合割合を高くした場合には、褪色の弊害を少なくする観点からも、中間層により多くの古紙を配合することが好ましい。また、古紙パルプを含ませたときに増加する蛍光によるバーコード読み取りの不良の問題を生じさせないためには、より内側である中間層に古紙パルプを使用することが好ましい。
【0029】
なお、古紙パルプ配合割合は、数1によって算出する。
(数1)古紙パルプ配合割合(%)=古紙パルプ配合量÷(バージンパルプ配合量+古紙パルプ配合量)×100
【0030】
また、生産時には自己回流損紙が発生するが、この自己回流損紙を使用しても支障は無い。ただし、自己回流損紙は、古紙パルプ配合量に含めないにもかかわらず古紙パルプを実質含むため、基紙の表裏に出ないように中間層で使用することが好ましい。さらには、オンマシンでインク受容層を塗工する場合は、インク受容層塗設済みの自己回流損紙を使用するので、プレスパート及びドライヤー汚れを軽減するために中間層で使用することがより好ましくなる。以上のことから単層抄きの場合は、夾雑物の面だけでなく抄紙機上の工程汚れの面でも不利となる。
【0031】
表面層、中間層、裏面層に均一に古紙パルプを配合した場合又は単層抄きの場合には、印刷強度は古紙パルプ配合割合に相関して低下してしまう。さらに、裏面層への古紙パルプ配合割合が高くなれば、更に印刷強度は低下する。印刷強度が低下すると、紙剥け、ピッキングなどの品質上の問題だけでなく、ブランケットへのパイリング等も発生し印刷作業性にも支障を来たす。
【0032】
中間層だけに古紙パルプを配合することによって、所望の、基紙全体に対する古紙パルプ配合割合を達成することができる場合には、表面層及び裏面層には、古紙パルプを配合せずともよい。
【0033】
基紙に用いる古紙パルプは、大きく上質系、中質系に分けられるが、褪色を避けるために上質系古紙パルプが好ましい。上質系古紙パルプとしては、上白・罫白・カード・模造・色上・ケント・白アート・ミルクカートンなどの古紙から調製されたパルプが挙げられる。
【0034】
古紙処理工程には離解、除塵処理、脱墨、漂白、分散、洗浄などの各工程を持つが脱墨剤は離解時、脱墨工程前、漂白前に使用する。脱墨剤は、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系界面活性剤系脱墨剤の他、脂肪酸系脱墨剤、脂肪酸のポリアルキレンオキシド誘導体、高級アルコールのポリアルキレンオキシド誘導体、油脂のポリアルキレンオキシド誘導体系脱墨剤等が使用される。
【0035】
本発明に使用される古紙パルプは、分散処理、洗浄処理を有する古紙処理工程で処理されたものを使用することが好ましい。その他に除塵、脱墨、漂白などの各処理工程を有していることがより好ましい。
【0036】
洗浄効果を向上させるために洗浄工程の前に分散処理を行い、このことによって微細繊維を除去し、基紙の透気性を向上させ、更には脱墨剤の残留を軽減し、インクジェット印字適性を好適とする。また、不要灰分を除去することによって印刷適性を好適とする。
【0037】
多層抄きの場合、抄き合わせ後にプレスパートで加圧脱水するときに、古紙パルプが中間層だけに配合した場合でも、界面活性剤、微細なインク及び灰分は、表面層及び/又は裏面層へ層を越えて移動することがある。したがって、古紙処理工程には界面活性剤、微細なインク及び灰分を除去できる洗浄装置を設置し、当該装置による洗浄工程を経ることが好ましい。さらには洗浄工程が2回以上あることがより好ましい。ただし、洗浄工程が4回以上になると洗浄による効果が頭打ちとなり、歩留まりやランニングコストの面から不利になることが多くなるため、注意が必要である。
【0038】
ここで用いる分散処理としては、低速・高濃度用軸タイプの分散機又はディスクタイプの分散機が適している。低速・高濃度用軸タイプの分散機としては、一軸型又は二軸型のニーダータイプのディスパーザーが好ましい。軸状のローターに取り付けられた回転刃と、ケーシングに取り付けられた固定刃とを有し、回転数50〜300rpmの低速で、パルプ濃度%を20%〜50%(以下、パルプ濃度%は、質量%を意味する。)の高濃度、好ましくは、25%〜40%で処理する。パルプ濃度%が20%未満では、機械的負荷がかかりにくく、コート紙系古紙中の塗工層の分散性が低下するため、次工程の洗浄処理で不要灰分を除去することができない。また、パルプ濃度%が50%を超えて高濃度にすると機械的に搾水するのは困難である。
【0039】
一般的には、一軸型ニーダーとして、ニーディング・ディスパージャーKD(商品名:アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー社製)、ディスパーザー(商品名:相川鉄工社製)、ディスパーザー(商品名:アセック社製)、ディスパーザー(商品名:三栄レギュレーター社製)、CCE型ニーディングマシン(商品名:新浜ポンプ製作所社製)、ニーダー(商品名:山本百馬製作所社製)などが使用され、又、二軸型ニーダーとして、新浜ポンプ製作所社製、山本百馬製作所社製のものなどが使用されるが、特定の機種に限定するものではない。
【0040】
また、ディスクタイプの分散機とは、ディスク型ディスパーザー又はコニカル型ディスパーザーであれば特に制限はない。構造的にはディスクリファイナーと似ているが、ディスクプレートの構造が異なっている。また、コニカル型ディスパーザーは、回転刃がコニカル状になっている。回転数300rpm〜2500rpm、パルプ濃度%を20%以上として処理する。軸タイプの分散機と異なる点は、繊維と刃の衝突作用が主体となってインキ剥離・ダートの分散が起こる点である。一般的には、ディスク型ディスパーザーとして、ディスパージャーHTD(商品名:アイ・エイチ・アイ フォイト ペーパーテクノロジー社製)、KRIMAホットディスパージョン設備(商品名:Cellwood社製)などが使用され、また、コニカル型ディスパーザーとして、コニディスク(商品名:相川鉄工社製)、コニカルディスパージョンシステム/HIプリヒーター/OptiFinerディスパーザー(商品名:メッツォ SHI社製)などが使用されるが、特定の機種に限定するものではない。
【0041】
ここで用いる洗浄処理としては、2連エキストラクター、3連エキストラクター、ディスクシックナー、バルブレスフィルター、フォールウォッシャー(栄工機社製)、DNTウォッシャー(相川鉄工社製)等があるが特定の機種に限定するものではない。
【0042】
中質系古紙パルプの代表として、新聞、雑誌、切付、中質反古、茶模造、段ボール、台紙・地券、ボール紙などから調製されるパルプが挙げられる。なお、褪色性の観点から、全古紙パルプ中の中質系古紙パルプの割合を20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。
【0043】
基紙に用いるパルプとしては、古紙パルプの他に、バージンパルプとして広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)が好ましい。所望する品質が損なわれない程度に針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、機械パルプ(GP、TMP、BCTMP)や必要に応じて、木材パルプ以外に、非木材パルプ、合成パルプ、合成繊維などを適宜用いてもよいが、褪色性、インクジェット適性及びコストの観点から、その量は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0044】
基紙に広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)を用いるが、一旦濃縮した後、離解及び叩解を行い、基紙の原料として使用することが好ましい。固形分濃度として20質量%から70質量%の範囲に一旦濃縮することが好ましく、30質量%から60質量%の範囲がより好ましい。20質量%未満であるとパルプ中の不要成分、微細繊維等の除去が不十分となり、基紙の透気性が低下しインクジェット印字適性が不適となる。70質量%を超えることは、機械的に搾水するのが困難である。なお、運搬などの都合よって脱水濃縮後に加熱乾燥等の処理を行うことがあるが、パルプの角質化の進行やパルプ自体が剛直となり、非塗工面の耐刷力に悪影響を及ぼすため、80質量%を超えるまでの加熱乾燥は行わない。
【0045】
ここで用いる濃縮機としては、ダブルワイヤーシックナー、スクリュープレス、ツインドラムプレスなどがあるが、バルブレスフィルターの様に洗浄効果が少なく、かつ、高濃度に濃縮できない機種は適さない。濃縮したパルプを移動・運搬を要する場合は、ダブルワイヤーシックナーを用いるとシート状となり、かつ、高濃度に濃縮可能なため、好ましい。
【0046】
本実施形態においては、基紙に填料を添加してもよい。具体的には、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミノケイ酸塩、焼成クレー、合成樹脂填料などの公知の填料を併用することができる。
【0047】
所定のフリーネスに叩解されたパルプスラリーは、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機又は円網抄紙機によって3層以上の多層で抄紙される。これらの抄紙機のコンビーネーションでもかまわない。この場合、必要に応じて分散助剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、pH調節剤、染料、有色顔料、蛍光増白剤なども適宜添加することが可能である。ここで叩解方法は、バージンパルプと古紙パルプとを混合してから叩解するいわゆる混合叩解を行う方法、又はバージンパルプと古紙パルプとを別々に叩解するいわゆる単独叩解を行ってから混合する方法でもどちらでもよい。
【0048】
表面層、中間層、裏面層を設けた3層以上の多層で抄紙されるが、各層の坪量は均等である必要はなく、例えば中間層の坪量を、表面層の坪量及び裏面層の坪量よりも相対的に大きくすることも可能である。さらに、表面層及び裏面層を各1層とし中間層を2層以上にすることも可能である。
【0049】
本実施形態に係るインクジェット用葉書用紙では、片面塗工品の坪量(JIS P 8124:1998)を150〜250g/mとする。通常の郵便葉書の坪量が180〜200g/mであるため、当該坪量の範囲を含む、片面塗工品の坪量150〜250g/mを前提とした透気抵抗度を求めることとしている。
【0050】
本実施形態では、前記のようにして多層抄き合せによって抄造された基紙の表面に必要に応じてサイズ液を塗布してもよい。基紙の表面としては、インク受容層を設ける予定の面又は及びその裏面である。具体的には、酸化澱粉、自家変成澱粉、尿素リン酸化澱粉、ポリアクリルアマイド、ポリビニルアルコールなどの表面サイズ剤、pH調節剤、染料、有色顔料、蛍光増白剤などの公知の資材を使用することができる。
【0051】
サイズ液の塗布方式としては、コンベンショナルサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、フィルムトランスファー方式のサイズプレス、エアナイフコーター、ロッドコーターなどを用いることができる。
【0052】
また、必要に応じてフィルムトランスファー方式のサイズプレス、エアナイフコーター、ロッドコーターなどを用いて裏面(宛名面側)だけの塗布としてもよい。
【0053】
このようにして製造した基紙(紙支持体)に直接にインク受容層を設けてもよいが、予め基紙表面を平滑化する目的で、マシンカレンダー、ソフトカレンダー、熱キャレンダー、ラスタープレスなどの処理を施すことが好ましい。
【0054】
インク受容層に用いる顔料としては、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイトなどの白色無機顔料はもちろんのこと、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂などの有機顔料も使用することができるが、コストと高いインク吸収性の点から、合成非晶質シリカが好ましく用いられる。
【0055】
インク受容層には、顔料のほか、次のバインダーを用いる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、でんぷん、変性でんぷん、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペン等の水溶性バインダーなどが挙げられるが、コストとインクジェット適性の点から、ポリビニルアルコール及びポリエチレン酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0056】
インク受容層には、インクジェットインクの定着性と発色性を向上させるために、カチオン性高分子を主成分とする次のようなインク定着剤を用いる。このようなカチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリスチレン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアミド共重合物、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、メラミン樹脂酸コロイド、尿素系樹脂、カチオン変性PVA、ベタイン型化合物、その他第4級アンモニウム塩類、ポリアミンなどが用いられる。
【0057】
インク受容層に用いる塗工液には、必要に応じて分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色顔料、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤などを適宜選定して添加することができる。また、例えばシリカスラリーに含有させる、バインダーに含有させるなど、これらを添加する場所、方法についても限定されない。
【0058】
インク受容層に関しては、一般の塗工機、例えば、ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、リップコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、ダイコーター、チャンブレックスコーター、チップブレードコーターなどによってオフマシン又はオンマシンで塗工する。
【0059】
塗工液は、乾燥塗工量が通信面に4〜15g/m、好ましくは5〜13g/mの範囲で塗工する。乾燥塗工量が4g/m未満の場合は、インクジェット印字品質が低下する。乾燥塗工量が15g/mを超えるとインクジェットプリンター内で塗工層の脱落などが発生し、印字汚れが発生し、更には宛名面のプロセス印刷による印刷時にも、葉書用紙のエッジ部からの粉落ち原因になる。当然薬品費も掛かるので、コスト面でも不利となる。
【0060】
塗工後の乾燥方式としては、熱風乾燥、赤外乾燥、ドラム乾燥等が挙げられるが、本発明においては特に限定されるものではない。
【0061】
また、塗工層の乾燥後に、必要に応じてマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどの処理を行ってもよい。本発明においては、処理方式は特に限定されるものではない。
【0062】
本実施形態に係るインクジェット用葉書用紙では、片面塗工品の裏面層中に残存する界面活性剤の含有率を500ppm以下とし、300ppm以下とすることが好ましい。片面塗工品の裏面層中に残存する界面活性剤の含有率が500ppmを超えると、宛名面にインクジェット印字をした場合フェザリングの発生が有り、又水性ペンでの筆記性が低下し、印刷版の持ちが悪くなる。片面塗工品の裏面層中に残存する界面活性剤の含有率を500ppm以下とする具体的な手段としては、例えば、古紙処理工程で使用する脱墨剤として界面活性剤系の使用を控え、界面活性剤系以外の脱墨剤を使用すること、古紙処理工程において界面活性剤を除去できる洗浄装置を設置し、当該装置による洗浄工程を経ること、更に当該洗浄工程の回数を増やすこと、である。なお、片面塗工品の裏面層中に残存する界面活性剤の含有率の下限としては、1ppmとすることが好ましい。脱墨効果を得るためには、わずかながらも脱墨剤を添加する必要があり、また、洗浄を強化しすぎると、歩留まり低下を招くためである。また、古紙処理工程での脱墨剤の使用量は、0.05〜0.4質量%であるが、出来上がり古紙パルプの品質、残留脱墨剤の観点から、添加率を増減することが好ましい。
【0063】
本実施形態に係るインクジェット用葉書用紙では、片面塗工品の透気抵抗度(JIS P 8117:1998)を200秒以下とし、好ましくは170秒以下とする。片面塗工品の透気抵抗度が200秒を超えると、インクジェットインキの浸透が阻害され、結果として、印字品質の悪化につながるという問題がある。片面塗工品の透気抵抗度の下限は、60秒とすることが好ましい。片面塗工品の透気抵抗度が60秒未満では、結果として、繊維間結合が弱くなり、実質、プロセス印刷に耐え難いものとなる場合がある。
【0064】
片面塗工品の透気抵抗度を200秒以下とするために、基紙の透気抵抗度を60秒以下とすることが好ましく、50秒以下がより好ましい。基紙の透気抵抗度を60秒以下とするためには、具体的には、前述したとおりの、古紙パルプの種類を選択し、古紙パルプの処理を行い、古紙パルプの他に使用するパルプの種類を選択し、古紙パルプの他に使用するパルプの処理を行って、基紙に使用することが好ましい。特に、古紙パルプの洗浄効果を向上させるために洗浄工程の前に分散処理を行い、このことによって微細繊維を除去することで基紙の透気性を向上させる手法は好適である。一方、澱粉やポリビニルアルコールなどの基紙に塗布する薬剤の減量、使用するパルプの叩解度を緩めるなどの手段では透気抵抗度は下がっても強度低下が著しく結果的に実使用ができないことになる。基紙の透気抵抗度の下限は、20秒とすることが好ましい。基紙の透気抵抗度が20秒未満では、基紙の細孔が大きくなり、その結果、インク受容層を設けるときにバインダーのマイグレーションが顕著となり、塗工層強度が弱くなり、プロセス印刷機での印刷時のブランケット汚れ、インクジェットプリンターでの印字時のインク受容層の剥離などの不具合をきたす場合がある。
【0065】
本実施形態に係るインクジェット用葉書用紙では、片面塗工品の表面層中に残存する界面活性剤の含有率が1000ppm以下であることが好ましく、700ppm以下がより好ましい。表面層中に残存する界面活性剤の含有率を1000ppm以下とすることによって、インク受容層を設ける場合に塗工液の浸透ムラに起因するインク受容層表面での滲みを好適にできる。前述の透気抵抗度を200秒以下とすることと併せて、このインク受容層表面での滲みを好適にできるということに対してより効果的となる。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、「部」及び「%」は、特に明示しない限り質量部及び質量%を示す。なお、配合において示す部数は、実質成分の数量である。
【0067】
(実施例1)
<基紙の作製>
表面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部、中間層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ10部及び未叩解上質系古紙パルプ90部、裏面層のパルプ配合を広葉樹漂白クラフトパルプ100部の各パルプ原料に対して、表面層、中間層、裏面層共通でカチオン化澱粉(ネオタック40T、日本食品加工社製)を1.0部、酸性ロジンサイズ剤0.1部(AL1212、星光PMC社製)、液体硫酸バンド1部、及びタルクを灰分5%になるよう添加量を調整して配合した紙料を各々長網抄紙機にて抄紙し、表面層坪量60g/m、中間層坪量60g/m、裏面層坪量60g/mの3層を抄き合わせ180g/mの基紙を製造した。なお、実施例1で使用した未叩解上質系古紙パルプは、分散工程においてパルプ濃度を30%としてコニカル型ディスパーザーによって分散処理し、洗浄工程において3連エキストラクターで洗浄し、この洗浄工程を1回通過させたパルプである。古紙処理工程での脱墨剤(花王社製、DI−600R)の使用量を古紙原料に対して0.2%とした。未叩解上質系古紙パルプのカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)は400mlとした。
<サイズ液の塗布>
酸化澱粉(王子エースA:王子コーンスターチ社製)糊液をサイズ液とし、基紙の両面に乾燥塗工量が片面当たり1g/mとなるようにサイズプレスで塗布し、シリンダードライヤーで乾燥した。スチールカレンダーを用いて線圧40kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行った。
<インク受容層用塗工液の調製>
合成非晶質シリカ(ニップジェルBY400:東ソーシリカ社製)100部に、水とpH調整剤として酢酸0.5部を添加し、カウレス分散機で固形分濃度28%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーにポリビニルアルコール15部(PVA−117:クラレ社製)、ポリエチレン酢酸ビニルバインダー35部(スミカフレックス450:住友化学社製)、及びインク定着剤15部(SR1001:田岡化学社製)を添加・攪拌し、更に水を添加し、固形分濃度が20%の塗工液を得た。
<インク受容層の形成>
得られたインク受容層用塗工液を通信面に乾燥塗工量が8g/mとなるようにエアナイフコーターで塗工し、エアドライヤーで熱風乾燥した。さらに、ソフトカレンダーを用いて線圧30kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行い、インクジェット用葉書用紙を作製した。また全体の古紙パルプ配合割合は、30%となった。片面塗工品の坪量は、190g/mであった。
【0068】
(実施例2〜8、比較例1〜3)
基紙に使用する基紙全体の古紙パルプ配合量、各層の古紙パルプ配合割合及び古紙パルプを製造するときに古紙処理工程にある洗浄工程の処理回数を変更した以外は、実施例1に準じインクジェット用葉書用紙を作製した。前記変更点は、実施例1も含めて表1に示し、また、得られた各層の界面活性剤の含有量、サイズ剤の塗工量、基紙の透気抵抗度、片面塗工品の透気抵抗度、基紙全体の古紙パルプ配合割合%、各層の古紙パルプ配合割合%、洗浄回数及び片面塗工品の坪量の測定結果を合わせて示す。
【0069】
(実施例9)
実施例1と同じ紙料を用いて、表面層坪量40g/m、中間層坪量60g/m、裏面層坪量40g/mの3層を抄き合わせ140g/mの基紙を製造した。この基紙に、実施例1の場合と同様にサイズ剤の塗工及びインク受容層用塗工液を用いて塗工を行い、インクジェット用葉書用紙を作製した。片面塗工品の坪量は、150g/mであった。前記変更点は、表1に示し、また、得られた各層の界面活性剤の含有量、サイズ剤の塗工量、基紙の透気抵抗度、片面塗工品の透気抵抗度、基紙全体の古紙パルプ配合割合%、各層の古紙パルプ配合割合%、洗浄回数及び片面塗工品の坪量の測定結果を合わせて示す。
【0070】
(実施例10)
実施例1と同じ紙料を用いて、表面層坪量80g/m、中間層坪量80g/m、裏面層坪量80g/mの3層を抄き合わせ240g/mの基紙を製造した。この基紙に、実施例1の場合と同様にサイズ剤の塗工及びインク受容層用塗工液を用いて塗工を行い、インクジェット用葉書用紙を作製した。片面塗工品の坪量は、250g/mであった。前記変更点は、表1に示し、また、得られた各層の界面活性剤の含有量、サイズ剤の塗工量、基紙の透気抵抗度、片面塗工品の透気抵抗度、基紙全体の古紙パルプ配合割合%、各層の古紙パルプ配合割合%、洗浄回数及び片面塗工品の坪量の測定結果を合わせて示す。
【0071】
(比較例4)
<サイズ液の塗布>
酸化澱粉(王子エースA:王子コーンスターチ社製)糊液をサイズ液とし、基紙の両面に乾燥塗工量が片面当たり2g/mとなるようにサイズプレスで塗布したこと以外は、
実施例3に準じインクジェット用葉書用紙を作製した。前記変更点は、表1に示し、また、得られた各層の界面活性剤の含有量、サイズ剤の塗工量、基紙の透気抵抗度、片面塗工品の透気抵抗度、基紙全体の古紙パルプ配合割合%、各層の古紙パルプ配合割合%、洗浄回数及び片面塗工品の坪量の測定結果を合わせて示す。
【0072】
(比較例5)
<サイズ液の塗布>
酸化澱粉(王子エースA:王子コーンスターチ社製)糊液をサイズ液とし、基紙の両面に乾燥塗工量が片面当たり3g/mとなるようにサイズプレスで塗布したこと以外は、
実施例1に準じインクジェット用葉書用紙を作製した。前記変更点は、表1に示し、また、得られた各層の界面活性剤の含有量、サイズ剤の塗工量、基紙の透気抵抗度、片面塗工品の透気抵抗度、基紙全体の古紙パルプ配合割合%、各層の古紙パルプ配合割合%、洗浄回数及び片面塗工品の坪量を合わせて示す。
【0073】
(比較例6)
実施例4において、使用古紙のフリーネスを250mlとした以外は、同様にしてインクジェット葉書用紙を得た。
【0074】
(比較例7)
実施例4において、ソフトキャレンダー処理数を1パスから3パスとした以外は、同様にしてインクジェット葉書用紙を得た。
【0075】
(比較例8)
実施例4において、脱墨剤を0.2%から0.3%とした以外は、同様にしてインクジェット葉書用紙を得た。
【0076】
以上の実施例及び比較例において得られたインクジェット葉書用紙について、表2に通信面及び宛名面のインクジェット印字適性、宛名面ペン書きサイズ度評価及びプロセス印刷適性(版持ち及びブランケット汚れ)評価の結果を示す。
【0077】
<評価方法>
得られたインクジェット用葉書用紙は、23℃−50%RHの恒温恒湿室で24時間調湿後、同環境下でそれぞれ次に示す方法によって、評価を行った。
【0078】
<インクジェット印字適性>
市販のフルカラーインクジェットプリンター(商品名:PM−900C、セイコーエプソン社製)を用いて、通信面には写真画像をフルカラーインクで印字し、宛名面にはブラックインクだけで文字を印字し、通信面は画像細部のムラの他、境界部の滲み、発色の鮮やかさなどを目視観察、宛名面はフェザリングなどを目視観察してインクジェット印字適性を評価した。
【0079】
前記インクジェット印字適性の評価は、次に示す要領によって記述することにした。
◎…優れている(実用レベル)、○…良い(実用レベル)、△…やや劣る(実用下限レベル)、×…劣る(実用に適さない)。
【0080】
<ペン書きサイズ度評価>
J TAPPI紙パルプ試験方法No12−76で規定する測定方法に従い、宛名面のペン書きサイズ度を測定し評価した。
【0081】
前記試験方法に従って、0から6等級で報告したものを、次に示す要領によって記述することにした。
◎…6(実用でき、良好)、○…5(実用下限)、△…4(不適)、×…3以下(不適)。
【0082】
<透気抵抗度の測定>
JIS P 8117:1998(紙及び板紙−透気度試験方法−ガーレー試験機法)で規定する測定方法に従い、ガーレー式透気度計によって測定した。
【0083】
<プロセス印刷適性評価>
実機印刷機(リョービ社製、リョービ3302M)を用いて、宛名面側に郵便番号枠、切手貼り付け枠、及びテストパターンをプロセス印刷し、版持ちとブランケット汚れを評価した。
【0084】
前記版持ちとブランケット汚れの評価は、次に示す要領によって記述することにした。なお版持ちは印刷版が汚れるまでの印刷枚数を、ブランケット汚れは5000枚印刷後のブランケットの汚れ具合を目視評価した。
版持ちの評価:◎…20万枚以上(実用レベル)、○…10万枚以上(実用レベル)、△…3万枚以上(実用下限)、×…3万枚以下(使用不可)。
ブランケット汚れの評価:◎…実用レベル以上、○…実用レベル、△…実用下限、×…使用不可。
【0085】
<界面活性剤含有率測定試料>
表面層についてはインク受容層にあたるため、インク受容層をカミソリで除去した後、基紙を抄き合わせ部分から層別し、インク受容層側の最上層を表面層とし、また非塗工面側の最上層を裏面層とし、界面活性剤含有量測定用の試料とした。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
実施例と比較例では、基紙の透気抵抗度が25秒から90秒の範囲となったが、これは、ここで使用される古紙パルプの配合率、古紙パルプ中の微細繊維量の要因によって変化したものであり、使用される古紙パルプの配合率を増減することで基紙の透気抵抗度を制御することができ(古紙パルプの配合率を増やすと透気抵抗度が上がる)、また、古紙パルプ中の微細繊維量を古紙処理工程中の洗浄度合いを増減することで基紙の透気抵抗度を制御することができ(古紙処理工程中の洗浄度合いを多くすると透気抵抗度が上がる)、実施例では、基紙の透気抵抗度を60秒以下に調整した。なお、古紙のフリーネスが低いものを使用すれば透気抵抗度が上がり、LBKPを使用する前に濃縮したものを使用すると、微細繊維が抜けて透気抵抗度が低くなることを利用して、透気抵抗度を制御してもよい。次に、実施例と比較例では、片面塗工品の透気抵抗度は、65秒から238秒の範囲となったが、これは、基紙の透気抵抗度、インク受容層を設けた後のソフトキャレンダー処理の加圧の要因によって変化したものであり、基紙の透気抵抗度を増減することによって片面塗工品の透気抵抗度を制御することができ(基紙の透気抵抗度を下げると片面塗工品の透気抵抗度も下がる)、また、ソフトキャレンダー処理の加圧力を増減又は処理の回数を増減することによって片面塗工品の透気抵抗度を制御することができ(ソフトキャレンダー処理の加圧を緩めることによって又は処理の回数を減らすことによって片面塗工品の透気抵抗度も下がる)、実施例では、片面塗工品の透気抵抗度をすべて200秒以下に調整した。表面層及び裏面層の界面活性剤含有量は、脱墨剤の濃度を減らし、洗浄回数を多くし、洗浄機から発生する汚水の廃棄率を多くすることで、低減させることができ、実施例では、裏面層の界面活性剤含有量を500ppm以下に調整した。
【0089】
実施例では、片面塗工品の透気抵抗度を200秒以下、かつ、裏面層の界面活性剤含有量を500ppm以下としたので、宛名面でのインクジェット印字適性に優れ、宛名面ペン書きサイズ度評価も優れ、版持ちもよく、ブランケット汚れも少なかった。一方、比較例1では、裏面層の界面活性剤含有量が500ppmを超えており、宛名面でのインクジェット印字適性が劣り、宛名面ペン書きサイズ度評価が不適であった。比較例2では、裏面層の界面活性剤含有量が500ppmを超えており、また表面層の界面活性剤含有量が1000ppmを超えており、比較例1と比べて、宛名面でのインクジェット印字適性と宛名面ペン書きサイズ度評価の不適に加え、更に通信面でのインクジェット印字適性が低下した。比較例3では、裏面層の界面活性剤含有量が500ppmを超えており、また表面層の界面活性剤含有量が1000ppmを超えており、更に片面塗工品の透気抵抗度が200秒を超えているため、全ての評価が不適となった。比較例4及び5は、片面塗工品の透気抵抗度が200秒を超えているため、通信面でのインクジェット印字適性が不適であった。比較例6は、使用した古紙のフリーネスが250mlであり、基紙の透気抵抗度が上がりその結果、片面塗工品の透気抵抗度が200秒を超えているため、通信面でのインクジェット印字適性が不適であった。比較例7は、ソフトキャレンダー処理を1パスから3パスとしたため、片面塗工品の透気抵抗度が200秒を超えているため、通信面でのインクジェット印字適性が不適であった。比較例8は、脱墨剤を0.3%としたため、界面活性剤の含有量が増加し、いずれの特性も低く、特にインクジェット印字適性、宛名面ペン書きサイズ度が不適であった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明によってインクジェット用葉書用紙に関し、インクジェットプリンター印字後の滲みがなく、宛名面における水性ペンでの筆記性に優れ、更には版持ちなどの印刷適性が良好な性能が得られすべてバージンパルプを用いた葉書用紙と同等の性能を得ることができた。したがって、古紙パルプを配合したインクジェット葉書用紙への利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層以上の多層抄きの基紙の片面側に顔料を主体として含有するインク受容層を設け、前記基紙の反対面側にはインク受容層を設けずに基紙を剥き出しの状態とし、かつ、前記基紙全体の古紙パルプ配合割合が20質量%以上であり、前記基紙の片面だけにインク受容層を設けた片面塗工品の坪量(JIS P 8124:1998(紙及び板紙−坪量測定方法))が150〜250g/mである多層抄きインクジェット用葉書用紙において、
前記基紙の層のうち、前記インク受容層と接する層を表面層、反対側の層を裏面層、該表面層と該裏面層との中間に位置する層を中間層とそれぞれ表記したとき、該中間層が1層以上で形成され、かつ、
1)前記片面塗工品の裏面層中に残存する界面活性剤の含有率が500ppm以下、
2)前記片面塗工品の透気抵抗度(JIS P 8117:1998(紙及び板紙−透気度試験方法−ガーレー試験機法))が200秒以下、
であることを特徴とするインクジェット用葉書用紙。
【請求項2】
前記片面塗工品の表面層中に残存する界面活性剤の含有率が1000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット用葉書用紙。
【請求項3】
前記基紙の透気抵抗度が60秒以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット用葉書用紙。

【公開番号】特開2010−274606(P2010−274606A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131472(P2009−131472)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】