説明

インクジェット画像形成方法

【課題】高速印刷時にブリードの発生を低減し、高精細な画質を与えることを可能とするインクジェット画像形成方法を提供する。
【解決手段】記録媒体の少なくとも一方の面が40℃以上90℃以下となるように加熱し、水と、顔料と、有機または無機の酸と、アミンと、該有機または無機の酸よりもpKaが高い樹脂とを含有するインクジェット用水性インクを前記記録媒体の前記面に吐出することを特徴とするインクジェット画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、簡便・安価に画像を形成できるため、写真、各種印刷、サイン、カラーフィルター等、様々な印刷分野に利用されている。インクジェット記録用として最適な特性を有する専用紙を用いると、銀塩写真に匹敵する画質を得ることができているが、専用紙を必要とする印刷では、コストが高く、用途も限定される。
【0003】
近年、非吸収性メディア(塩ビ、アート紙、コート紙など)に高速で印刷する用途が拡大しているが、このような媒体に水性インクで画像を形成すると、インク同士が寄り集まり、斑や滲み(以下、ブリードと呼ぶ)が発生してしまう問題があった。この画質劣化を改善するには、印字後すぐに、ある程度インク粘度が上昇している必要があることが知られている。
【0004】
印字後すぐに粘度を上昇させて画質劣化を改善する技術としては、バインダー樹脂としてアミンで中和された水溶性樹脂を、固形分として2%以上10%以下含むインクジェットインクを用い、記録媒体を加温しながら印字する方法によりブリードが改善されるとされて(例えば、特許文献1参照)いる。このインク増粘は、グリコールエーテルもしくは1,2−アルカンジオールから選ばれる水溶性有機溶剤を用いたインクで特に顕著に発揮されると記載されており、乾燥で水分の蒸発が進むことで、着弾インク中のグリコールエーテルもしくは1,2−アルカンジオール成分の比率が高まることで、水溶性樹脂同士の相互作用が増大し、インク粘度が上昇すると考えられている。
【0005】
しかしながら、この方法は加温と特定溶媒の存在により着弾後の粘度が上昇し、非吸収性媒体においてもブリードがある程度改善されるものの、高速印字ではインク粘度の上昇速度が不十分であった。したがって、高速印字で高画質を達成するためには、インク着弾後の速やかな粘度上昇が重要な課題である。
【0006】
また、別の技術として、pHの変化に応じて可変する変色性染料と、揮発性有機アミンを含み、アンモニウム塩の揮発によるpH低下を利用した熱履歴表示用染料インクが開示されて(例えば、特許文献2参照)いる。しかし、pH低下を利用した樹脂や顔料の析出・凝集については記載されていない。
【0007】
加水分解性シラン化合物とアンモニウム塩を含み、水の蒸発にともないアンモニウム塩がアミン、またはアンモニアを放出し残った酸の作用で縮重合反応を促進し、耐水性が向上することが記載されて(例えば、特許文献3参照)いる。しかし、アミン塩がインク中で解離して形成される酸成分よりもpKaが高い樹脂を含有することについては特に記載されておらず、画質改善のために樹脂や顔料の析出・凝集を利用した粘度上昇に関する技術思想は開示されていない。
【0008】
水酸化バリウムとアンモニウム塩を含んだインクがブリードを低減できると記載してある。しかし、水酸化バリウムとアンモニウム塩の吸熱反応による粘度上昇を利用しており、樹脂を含有することについては特に記載されて(例えば、特許文献4参照)いない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−208153号公報
【特許文献2】特開平11−189741号公報
【特許文献3】特開2004−10814号公報
【特許文献4】特開2002−226739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高速印刷時にブリードの発生を低減し、高精細な画質を与えることを可能とするインクジェット画像形成方法を提供することにある。特に、非吸収メディアに高速で印刷した際に発生するブリードを防止するインクジェット画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0012】
1.記録媒体の少なくとも一方の面が40℃以上90℃以下となるように加熱し、水と、顔料と、有機または無機の酸と、アミンと、該有機または無機の酸よりもpKaが高い樹脂とを含有するインクジェット用水性インクを前記記録媒体の前記面に吐出することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【0013】
2.前記有機または無機の酸と、前記アミンがアンモニウム塩の解離により形成されることを特徴とする前記1に記載のインクジェット画像形成方法。
【0014】
3.前記有機または無機の酸のインクジェット用水性インク中の含有量がインクジェット用水性インクに対して0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする前記1または2に記載のインクジェット画像形成方法。
【0015】
4.前記アミンのインクジェット用水性インク中の濃度が0.01mol/L以上3mol/L以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0016】
5.前記酸のpKaが5以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0017】
6.前記水のインクジェット用水性インク中の含有量が20質量%以上90質量%以下であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0018】
7.前記顔料が、前記有機または無機の酸よりもpKaが高い樹脂で分散されたことを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0019】
8.前記記録媒体の前記40℃以上90℃以下に加熱されている前記記録媒体の前記面は前記インクジェット用水性インクに対して非吸収性であることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【0020】
9.前記酸と前記樹脂とのpKa差が0.5以上であることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明のインクジェット記録方法を用いて画像を形成すると、高速印刷においてもブリードのない高精細な画質を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るインクジェット記録方式の画像形成装置の一例である。
【図2】ヘッド111及びヘッド112の配置を示した図である。
【図3】ラインヘッドを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討したところ、乾燥で水分の蒸発により特定溶媒の比率を上げて水溶性樹脂同士の相互作用を増大させるだけでは高速印刷では不十分であり、さらに粘度上昇速度を上げるためには、インクのpHを低下させ、樹脂の溶解性や顔料の分散性を低下させることにより、析出・凝集を起こさせ、樹脂同士、顔料同士、または樹脂と顔料間の相互作用を増大させることが有効であることを見出した。
【0024】
アミン中和樹脂を含むインクにおいて、インクが加熱された媒体上で蒸発するときのpH変化を調べると、インク中のアミンの蒸発によってある程度pHが低下しているが、樹脂や顔料が析出・凝集を起こすpHまでは低下していないことが分かった。これは、水溶性樹脂のカウンターであるアミンを解離するエネルギーが、数十度の加熱でインクに与えられるエネルギーよりも大きいために、カウンターの大部分のアミンは短時間では揮発せず、pHの低下が起きないと推測される。
【0025】
そこで、本発明に記載の有機または無機の酸と、アミンを添加し、加温することによりpHの低下を促進させ、樹脂の溶解性や顔料の分散性を低下させることにより、析出・凝集を起こさせ、樹脂同士、顔料同士、または樹脂と顔料間の相互作用を増大させることによりブリードを低減する技術思想に至った。
【0026】
本発明を更に詳しく説明する。
【0027】
本発明は、水と、顔料と、有機または無機の酸と、アミンと、当該酸成分よりもpKaが高い樹脂を含有するインクジェット用水性インクを加温することによりpHの低下を促進させ、樹脂の溶解性や顔料の分散性を低下させることにより、析出・凝集を起こさせ、樹脂同士、顔料同士、または樹脂と顔料間の相互作用を増大させることによりブリードを低減する。
【0028】
《インクジェット用水性インク》(以後、単にインクジェットインクまたはインクともいう)
本発明に係るインクジェット用水性インクは、水と、顔料と、有機または無機の酸と、アミンと、当該酸成分よりもpKaが高い樹脂を含有するインクを特徴とする。さらに、インクジェット記録時に記録媒体の画像形成面を40℃から90℃に加熱しておくことによって、よりブリード低減効果を得ることができる。
【0029】
着弾後にインク粘度が上昇し、流動を防ぐことによりブリードが低減されることが知られており、本発明でも着弾後のインクの粘度上昇により画質が改善されたと思われる。
【0030】
本願発明者は、インクジェット用水性インクの粘度上昇は、pH低下によって、樹脂の溶解性や顔料の分散性を低下させることにより、析出・凝集を起こさせ、樹脂同士、顔料同士、または樹脂と顔料間の相互作用を増大させることにより起きていると予想している。つまり、インク中の有機または無機の酸と、アミンが、インク着弾後の粘度上昇に関して以下の役割を果たしていると推測している。
【0031】
着弾後にインク中の、アミン塩がアンモニア、またはそれ以外のアミンとして空気中に放出されるので、液中のHが増加し、pHが低下する。
【0032】
アンモニア、またはアミンの揮発により、インク中で解離していた酸成分のみが残り、水溶液中の平衡関係からpKaの大きな樹脂のカウンターが優先的に封鎖されて樹脂、顔料の析出、凝集が起きる。
【0033】
水溶性の塩が存在するので、水の蒸発によりインクが濃縮され固形分濃度が増加すると塩析によって、より樹脂の析出、顔料の凝集が促進される。
【0034】
上述した効果は、有機または無機の酸と、アミンが、有機又は無機のアミン塩から形成されている場合、さらには、樹脂が水溶性樹脂である場合には特に効果が大きい。
【0035】
(有機または無機の酸)
本発明に係る有機または無機の酸は、インク中に存在する樹脂との間に、pKaの関係が満たされる限り、いかなるものも使用できる。これらの酸は、インク中で水素イオンと解離したイオンの状態、水素イオンと結合した状態もしくは双方の状態で存在し、本願では、インク中にいずれかの状態にあっても酸と呼ぶ。
【0036】
酸としては、例えば、燐酸、硫酸、酢酸、クエン酸、フタル酸、乳酸、安息香酸、こはく酸、サリチル酸、酒石酸、アミド硫酸、しゅう酸、蟻酸、フッ酸、塩酸、臭酸、ヨウ酸、硝酸、等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明で利用する有機または無機の酸は、pKaが5以下であることが好ましい。酸を複数添加した場合は、最も低いpKaが5以下であればよい。なお、ここで言うpKaとは、酸解離定数Kaの逆数の対数値を表すものであり、数値が小さいほど強い酸を意味し、数値が大きいほど弱い酸を意味する。
【0038】
アミンとしては、アンモニアの他、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、n−ブチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、ジ−n−ブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0039】
これらのアミンのインク中の濃度は0.01mol/L以上3mol/L以下であることが好ましい。
【0040】
(有機または無機アミン塩)
本発明では、有機または無機の酸とアミンは、インクに有機または無機アミン塩を添加し、有機または無機アミン塩から解離したものであることが好ましい。本発明に係る有機または無機アミン塩とは、アミン塩がインク中で解離して形成される酸成分のpKaが5以下であり、その酸成分をアンモニウムイオンおよび、有機アミンで中和したものを指す。pKaを複数有する酸成分は、最も低いpKaが5以下であればよい。
【0041】
酸成分をアンモニウムイオンで中和した有機または無機アンモニウム塩としては、例えば、燐酸三アンモニウム、硫化アンモニウム、酢酸アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、フタル酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、こはく酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸水素アンモニウム、アミド硫酸アンモニウム、しゅう酸アンモニウム、しゅう酸水素アンモニウム、蟻酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0042】
アンモニウムイオンの代わりにアミンを用いてもよく、アミンの例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、n−ブチルモノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、n−ブチルジエタノールアミン、ジ−n−ブチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の効果をより向上するためには、沸点の低いアンモニウムイオンで中和された塩であることが好ましく、酢酸アンモニウム、クエン酸二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、フタル酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、こはく酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸水素アンモニウム、アミド硫酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、等が好ましく、酢酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、蟻酸アンモニウム、硝酸アンモニウムがより好ましい。
【0044】
本発明の好ましい態様では、pH低下作用を得るために有機または無機アミン塩を添加する。
【0045】
前記有機または無機の酸のインク中の含有率はインクに対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0046】
上記有機または無機アンモニウム塩の添加量は、インク全量に対して質量百分率で0.1%〜10%であることが好ましく、より好ましくは0.2%以上5.0%未満である。0.1%以上とすることによりインクのpHを十分に低下させることができ、10%以下とすることにより、揮発により放出されるアンモニア量の増加による作業環境の悪化が低減できる。
【0047】
<樹脂>
本発明に係る樹脂とは、上記の有機または無機の酸のpKaよりも樹脂の酸成分のpKaが高い樹脂であることを特徴とする。上記の有機または無機の酸が有機または無機のアミン塩からインク中に供給される場合には、アミン塩がインク中で解離して形成される酸成分のpKaよりも樹脂の酸成分のpKaが高い樹脂であることが好ましい。
【0048】
該樹脂とは顔料に吸着していても、定着性や光沢の向上のために溶解状態で存在していてもよいが、好ましくは顔料に吸着していている状態である。粘度を上昇させる点では、顔料に吸着している樹脂に加え、インク化の際に当該樹脂をさらに添加するほうが、pHが低下したときに樹脂同士、顔料同士、または樹脂と顔料間の相互作用を増大させるので好ましい。
【0049】
尚、顔料に吸着している樹脂とさらにインク化の際に添加する樹脂は同じでも異なっていても良い。前記樹脂が複数添加されている場合には、少なくとも1種が有機または無機の酸のpKaよりも樹脂の酸成分のpKaが高い樹脂であればよい。好ましくは、複数添加されている樹脂の全てが有機または無機の酸のpKaよりも樹脂の酸成分のpKaが高い樹脂であることがよい。
【0050】
本発明の有機または無機の酸のpKaよりもpKaが高い樹脂は、水溶性であることが好ましい。
【0051】
樹脂の酸成分の中和は特に制限されず、中和の例としてアミン、ナトリウム、リチウムなどが挙げられる。乾燥後にカウンターのアミンが揮発するので、耐水性の観点からアミンによって中和された酸を有する樹脂であることが好ましい。
【0052】
本発明に係る樹脂は、樹脂中にカルボキシル基やスルホ基等の酸の官能基を有し、該樹脂中の酸の官能基がアミンによって中和されている樹脂であることが好ましい。具体的な例としては、アクリル系、スチレンアクリル系、アクリロニトリル−アクリル系、酢酸ビニルアクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系などの樹脂の一部をカルボキシル基やスルホ基等の酸で修飾し、その樹脂をアミンによって中和することで得ることが出来る。中和に用いるアミンの例としては、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン等が好ましく、本発明の効果がより現れる沸点の低いアンモニアが特に望ましい。
【0053】
酸を有する樹脂は、モノマーを重合することによって得ることができる。このようなモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、スチレンの酸誘導体をラジカル共重合したものなどが挙げられる。また、必要に応じて他のモノマーと共重合しても良い。
【0054】
酸を有する樹脂の重量平均分子量は、本発明の係る画質改善効果の観点から、3000以上、射出性と粘度の観点から、30000以下であることが好ましく、10000以上、20000以下がより好ましい。また、酸価は、60mgKOH/g以上、300mgKOH/g未満であることが好ましい。
【0055】
本発明に係る樹脂の含有量は、インク全質量に対して0.5%〜15%が好ましく、より好ましくは2.0%〜10%である。アミンによって中和された酸を有する樹脂の含有量は、インク全質量に対して0.5%〜15%が好ましく、より好ましくは2.0%〜10%である。0.5%以上とすることにより、粘度上昇の効果が十分に得られ、15%以下とすることにより、効果の向上が期待され、射出性が良好に維持される。
【0056】
<その他の樹脂>
また、本発明に係るインクには、上記アミンによって中和された樹脂とは異なる樹脂を様々の目的に応じて含有させてもよい。これらの樹脂は、複数種添加しても、共重合体として添加しても良く、エマルジョン状態で分散されていても構わない。エマルジョン状態で分散させる場合、インクジェット方式による射出性を損なわないという観点から、樹脂微粒子の平均粒径は、300nm以下であることが好ましい。水溶性ポリマーの場合、組成や分子量は特に限定は無いが、重量平均分子量50000以下であることが好ましい。
【0057】
本発明においては、有機または無機の酸のpKaと樹脂とのpKaの差が0.5以上あることが好ましく、更に好ましくは1以上である。
【0058】
<水>
本発明に係るインクは、水を含有する。水のインク中での含有量は、少なくとも20質量%以上90質量%以下であることが望ましい。
【0059】
<水溶性有機溶媒>
本発明に係るインクは、水溶性有機溶媒を含んでも良い。上記樹脂を溶解する場合、インク溶媒としては、20質量%以上、90質量%以下の水の他に、吐出性向上やインク物性の調整などの目的で、水溶性有機溶媒を含んでいることが好ましい。本発明の効果を損なわない限り、水溶性有機溶媒の種類には特に制限はなく、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、デカグリセリル、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、1,2,6ヘキサントリオール、2ピロリジノン、ジメチルイミダゾリジノン、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ブタンジオール、等を挙げることができる。
【0060】
<顔料>
本発明に係るインクに使用できる顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、水分散性顔料、溶媒分散性顔料等何れも使用可能であり、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、カーボンブラック等の無機顔料等を好ましく用いることができる。
【0061】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0062】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
【0063】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0064】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0065】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0066】
以上の他にレッド、グリーン、ブルー、中間色が必要とされる場合には、以下の顔料を単独あるいは併用して用いることが好ましく、例えば
C.I.Pigment Red;209、224、177、194、 C.I.Pigment Orange;43、 C.I.Vat Violet;3、 C.I.Pigment Violet;19、23、37、 C.I.Pigment Green;36、7、 C.I.Pigment Blue;15:6、等が用いられる。
【0067】
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0068】
本発明で用いられる顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物と共に分散機により分散して用いることが好ましい。分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。
【0069】
本発明に係るインクに使用する顔料分散体の平均粒径は、10nm以上、200nm以下であることが好ましく、10nm以上、100nm以下であることがより好ましく、10nm以上、50nm以下であることが更に好ましい。
【0070】
顔料分散体の粒径測定は、例えば、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。また、透過型電子顕微鏡による顔料粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0071】
<界面活性剤>
本発明に係るインクには、吐出性向上や濡れ性向上のため、界面活性剤を含んでいることが好ましい。使用される界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれの界面活性剤を用いることができる。本発明に適用可能な界面活性剤の具体例としては、特に限定するものではないが、以下のものを好ましく用いることができる。
【0072】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0073】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0074】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等、非イオン活性剤としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0075】
さらに、インクの低表面張力化の観点から、これらの界面活性剤の一部がフッ素原子あるいは珪素原子に置換されていることが好ましい。
【0076】
これらの界面活性剤や溶剤を単独で用いても良いし複数を併用しても良い。
【0077】
<その他の添加剤>
本発明に係るインクには、さらに種々の目的で添加物を含んでも良い。出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報及び特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0078】
《インクジェット画像形成方法》
本発明のインクジェット画像形成方法(以後、単に画像形成方法ともいう)においては、本発明に係るインクジェットインクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクジェットインクを液滴として吐出させることで、記録媒体に画像形成を行う。
【0079】
本発明に係るインクを吐出して画像形成を行う際に使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また、吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。その中でも、本発明の画像形成方法においては、30μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドを使用することが好ましい。
【0080】
本発明の画像形成方法において、印字方式としては特に制限はなく、シングルパス型、スキャン型のどちらでも良いが、高速印刷に効果的であるという点からシングルパス型が好ましい。シングルパス型のインクジェット画像形成方法とは、記録媒体が一つのインクジェットヘッドユニットの下を通過した際に、一度の通過で、画素を形成するための全てのドットが吐出されるインクジェット画像形成方法である。
【0081】
シングルパス型の画像形成方法を達成する手段として、ラインヘッド型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
【0082】
ラインヘッド型のインクジェットヘッドとは、印刷範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドのことを指す。ラインヘッド型のインクジェットヘッドとしては、一つのヘッドで印刷範囲の幅以上であっても良いし、特開2007−320278号公報に開示のように複数のヘッドを組み合わせて印刷範囲の幅を超えるよう構成してもよい。
【0083】
本発明の画像形成方法に用いることのできるインクジェット記録装置の一例を図を参照しながら説明する。
【0084】
図1は、本発明の画像形成方法に適用可能なシングルパス方式(ラインヘッド方式)のインクジェット記録装置の一例を示す模式図である。
【0085】
図1において、11がラインヘッド型のヘッドユニットであり、それぞれ色相の異なるインクを吐出するヘッド111〜114で構成され、各ヘッドのノズルピッチは360dpi程度であることが好ましい。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0086】
記録媒体である印刷用塗工紙Pは、ロール状に積層された状態で、搬送機構12より矢印方向に繰り出される。この時、印刷用塗工紙Pは、画像形成前に赤外線ヒーター等の加熱部13で予め所定の温度に加熱してもよい。画像形成面は下部の温度制御プレート14を用いて、本発明で規定する40℃以上、90℃以下の温度になる様に適宜制御を行う。40℃以上とすることにより、インクの粘度上昇の効果が十分となり、90℃以下とすることにより粘度上昇の効果を適宜維持するだけでなく、記録媒体の傷みも低減できる。
【0087】
図2は、各ヘッド底部におけるノズルの配置を示す底面図である。
【0088】
図2に示すように、それぞれヘッド111とヘッド112、ヘッド113とヘッド114のノズルNは、半ピッチずつずらした千鳥配列となっている。この様なヘッド構成とすることにより、より緻密な画像を形成することができる。
【0089】
図3は、ヘッドユニット構成の一例を示す模式図である。
【0090】
印字幅の広い印刷用塗工紙Pを用いる場合は、印刷用塗工紙Pの全巾をカバーするように複数個のヘッドHを千鳥配列に配置したヘッドユニットHUを用いることも好ましい。
【0091】
本発明の記録媒体は特に制限がなく、インク吸収性記録媒体でも、インク非吸収性記録媒体でもよい。しかし、本発明では、特にインク非吸収性媒体を使用して高速で印刷した際に、ブリードの発生を十分に防止できる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0093】
《顔料分散体の調製》
(マゼンタ顔料分散体の調製)
顔料分散剤としてジョンクリル6783質量部、ジメチルアミノエタノール1.3質量部、イオン交換水80.7質量部を混合した後、加熱攪拌した。この混合液に、C.I.ピグメントレッド122を15質量部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料固形分が15%のマゼンタ顔料分散体を得た。
【0094】
ジョンクリル678は、BASF社製のスチレン−アクリル酸共重合体で、酸価215mgKOH/g、Tg85℃、平均分子量8500のフレーク状樹脂であり、pKaは5以上である。
【0095】
(シアン顔料分散体の調製)
顔料分散剤としてジョンクリル6783質量部、ジメチルアミノエタノール1.3質量部、イオン交換水80.7質量部を混合した後、加温攪拌した。この混合液にC.I.ピグメントブルー15:3を15質量部添加し、プレミックスした後、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料固形分が15%のシアン顔料分散体を得た。
【0096】
《インクの調製》
(インク1−Mの調製)
下記に記載した各添加剤のうち、マゼンタ顔料分散体を除いたものを、下記の添加量で混合し、十分に攪拌した後、マゼンタ顔料分散体33質量部を攪拌しながら添加した。十分に攪拌を行った後、この混合液を#3500メッシュの金属フィルターで濾過し、中空糸膜による脱気を行って、インク1−Mを調製した。なお、ジョンクリルJDX6500は、アミンにより中和されたBASF社製の水溶性アクリル樹脂で、酸価74mgKOH/g、Tg65℃、平均分子量10000で、pKaは5以上である。
【0097】

マゼンタ顔料分散体 33質量部
ジョンクリルJDX6500(BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 20質量部
酢酸アンモニウム(酢酸:pKa 4.76) 2質量部
水 14.5質量部
(インク2−Mの調製)
マゼンタ顔料分散体 33質量部
ジョンクリルJDX6500(BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 20質量部
蟻酸アンモニウム(蟻酸:pKa 3.75) 2質量部
水 14.5質量部
(インク3−Mの調製)
マゼンタ顔料分散体 33質量部
ジョンクリルJDX6500(BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 20質量部
酒石酸アンモニウム(酒石酸:pKa 3.04) 2質量部
水 14.5質量部
(インク4−Mの調製)
マゼンタ顔料分散体 33質量部
ジョンクリルJDX6500(BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 20質量部
硝酸アンモニウム(硝酸:pKa=−1.4) 2質量部
水 14.5質量部
(インク5−Mの調製)
マゼンタ顔料分散体 33質量部
ジョンクリルJDX6500(BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 20質量部
炭酸アンモニウム(炭酸:pKa 10.33) 2質量部
水 14.5質量部
(インク6−Mの調製)
マゼンタ顔料分散体 33質量部
ジョンクリルJDX6500(BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 20質量部
酢酸ナトリウム(酢酸:pKa 4.6) 2質量部
水 14.5質量部
(インク7−Mの調製)
マゼンタ顔料分散体 33質量部
ジョンクリルJDX6500(BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 20質量部
水 16.5質量部
(インク8−Mの調製)
マゼンタ顔料分散体 33質量部
ジョンクリル61J (BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 18質量部
酢酸アンモニウム(酢酸:pKa 4.76) 2質量部
水 14.5質量部
なお、ジョンクリル61Jは、アミンにより中和されたBASF社製の水溶性スチレンアクリル樹脂で、酸価195mgKOH/g、Tg70℃、平均分子量12000で、pKaは5以上である。
【0098】
(インク9−Mの調製)
JDX−C3000はBASF社製のアクリル樹脂で、酸価74mgKOH/g、Tg65℃、平均分子量10000で、pKaは5以上である。上記のジョンクリルJDX6500とpKa、酸価、Tg、平均分子量が等しく、該樹脂はアミンで中和されていない未中和樹脂である。JDX−C3000を25質量部、1N/lの水酸化ナトリウム水溶液を1.3質量部、水を73.7質量部加えて、加熱撹拌することにより水溶性ナトリウム中和樹脂を得た。
【0099】
マゼンタ顔料分散体 33質量部
JDX−C3000 (BASF社製) 10質量部
界面活性剤:オルフィンE1010(アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業社製) 0.5質量部
プロピレングリコール 10質量部
1,2−ヘキサンジオール 5質量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
グリセリン 20質量部
酢酸アンモニウム(酢酸:pKa 4.76) 2質量部
水 14.5質量部
(インク1−C〜9−Cの調製)
インク1−C〜9−Cの調製について、マゼンタ顔料分散体を同量のシアン分散体に変更した以外は同様にして、インク1−C〜9−Cを調製した。
【0100】
(インクセット1〜9の作製)
インク1−Mと1−Cの組み合わせをインクセット1とし、同様にM、Cを組み合わせたインクセット2〜9を用意した。
【0101】
《印字画像の形成》
〔画像1の形成〕
インクセット1を用いて、下記の印字方法により、印刷塗工紙上に画像1を形成した。
【0102】
インクジェット記録装置として、図1に記載のシングルパス方式(ラインヘッド方式)のインクジェット記録装置を用いた。印刷用塗工紙としてSA金藤(アート紙、王子製紙社製)を用い、搬送速度280mm/sで搬送しながら、記録媒体Pを加熱ユニット13または14を用いて画像形成面を40℃に加熱し、ヘッドユニット11よりインクセット1を吐出した。なお、印刷用塗工紙の印字面温度は、非接触型の赤外温度計により測定を行った。
【0103】
ヘッドユニット11を構成する各ヘッド(111〜114)は、それぞれ360dpiの2つのヘッドが、図2に示す様なノズルが互い違いの配置になるよう配置し、図3に示す様に、印刷用塗工紙全幅をカバーする様に複数個配置したラインヘッド方式とした。ヘッド112よりインクセット1を構成するインク1−Mを、ヘッド111よりインクセット1を構成するインク1−Cを、それぞれ720dpi×720dpiの印字解像度で、インク液滴量として16plで吐出し、印字率が100%のマゼンタベタ画像上の一部に、印字率が100%のシアンベタ画像を印字し、画像1を得た。
【0104】
〔画像2〜9の形成〕
インクセット2〜9を用いて、画像形成1と同様に画像を形成した。
【0105】
〔画像10〜12の形成〕
インクセット1を用いて、画像形成面を30℃、50℃、60℃にした以外は同様の方法で画像を形成した。
【0106】
〔画像13〜15の形成〕
インクセット1を用いて、記録媒体をORAJET3650G−101(塩ビ、ORAFOL社製)に、画像形成面を50℃、70℃、90℃にした以外は同様の方法で画像を形成した。
【0107】
《形成画像の評価》
〔ブリーディング耐性の評価〕
印字率が100%のマゼンタベタ上の一部に、印字率が100%のシアンが印字されたベタ画像を印字し、ブリーディング(画像滲み)の発生の有無を目視観察し、下記の基準に従ってブリーディング耐性を評価した。
【0108】
○ :ブリーディングの発生がほぼ認められない
△ :シアン画像の0.5mm未満の滲みが認められる
× :シアン画像の0.5mm以上、1.0mm未満の滲みが認められる
××:シアン画像の1.0mm以上の滲みが認められる
【0109】
【表1】

【0110】
表1に記載の結果より明らかな様に、本発明の画像形成方法に従って形成した画像は、比較例に対し、ブリーディング耐性が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0111】
11 ヘッドユニット
111、112、113、114 ヘッド
12 搬送機構
13 加熱部
14 温度制御プレート
P 印刷用塗工紙
N ノズル
H ヘッド
HU ヘッドユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の少なくとも一方の面が40℃以上90℃以下となるように加熱し、水と、顔料と、有機または無機の酸と、アミンと、該有機または無機の酸よりもpKaが高い樹脂とを含有するインクジェット用水性インクを前記記録媒体の前記面に吐出することを特徴とするインクジェット画像形成方法。
【請求項2】
前記有機または無機の酸と、前記アミンがアンモニウム塩の解離により形成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項3】
前記有機または無機の酸のインクジェット用水性インク中の含有量がインクジェット用水性インクに対して0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項4】
前記アミンのインクジェット用水性インク中の濃度が0.01mol/L以上3mol/L以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項5】
前記酸のpKaが5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項6】
前記水のインクジェット用水性インク中の含有量が20質量%以上90質量%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項7】
前記顔料が、前記有機または無機の酸よりもpKaが高い樹脂で分散されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項8】
前記記録媒体の前記40℃以上90℃以下に加熱されている前記記録媒体の前記面は前記インクジェット用水性インクに対して非吸収性であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。
【請求項9】
前記酸と前記樹脂とのpKa差が0.5以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェット画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−260345(P2010−260345A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86725(P2010−86725)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】