説明

インクジェット画像支持媒体のためのシステム及び方法

画像支持媒体(100)は、未加工原紙(350)と、当該未加工原紙(350)の少なくとも片側に配置されたフィルム形成樹脂(110、130)とを含んで成り、当該未加工原紙(350)は、加重平均長さ0.5〜3.0mmの繊維から成る。画像支持媒体(100)はまた、1〜40重量%の填料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
写真印刷用の樹脂コートされた画像支持媒体は、伝統的に、ハロゲン化銀写真媒体用に構成された未加工の原紙を備えている。ハロゲン化銀写真媒体用に構成された原紙は、特にネガを用いて印刷物を形成するために作製された高品質紙である。また、従来の画像支持媒体は、一般に、両側にプラスチック層を押出加工することによって耐水性とされる。次いで、カラー印刷用の赤色光、緑色光及び青色光に対して分光感度特性を有する多数の感光性ハロゲン化銀粒子で、又は白黒印刷用の単色光による露光に対して感応性である多数のハロゲン化銀粒子で、画像受容側をコーティングする。画像支持媒体は、伝統的に、ハロゲン化銀粒子を物理的に固定化し、画像の形成を容易にするゼラチンも含む。
【0003】
従来のハロゲン化銀写真の基材は、複雑な画像現像プロセスに起因して、非常に厳密な品質要件を有するため、通常の良質原紙と比べると生産コストが高い。例えば、ハロゲン化銀品質の未加工原紙は、最小限の液体浸透性が必要とされ、極めて高含量のAKD(アルキルケトンダイマー)等のサイズ剤を含有している。さらに、ハロゲン化銀品質の未加工原紙は、現像液との化学反応の可能性から、炭酸カルシウム等のいかなる無機物質も使用することができない。また、ハロゲン化銀品質の未加工原紙は、ハロゲン化銀エマルジョンの鉄感応性を防止するために、ステンレス鋼製の機械で形成する必要がある。さらに、ハロゲン化銀基材に関し必要とされる厳密な性能のため、形成プロセス速度は、一般に600m/分未満である。
【0004】
上記のコストの多くは、ハロゲン化銀現像プロセスで使用される画像支持媒体を製造することに起因するものであるが、この比較的高価なハロゲン化銀画像支持媒体は、多くの場合、ハロゲン化銀以外の画像形成プロセスで用いられるため、過度に高価で過剰に処理された画像支持媒体となってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】
画像支持媒体は、未加工原紙と、当該未加工原紙の少なくとも片側に配置されたフィルム形成樹脂とを含んで成り、前記未加工原紙は、加重平均長さ0.5〜3.0mmの繊維から形成されている。
【0007】
例示的な一実施形態によれば、画像支持媒体は、乾燥重量で1〜40%の填料を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
添付の図面は、本発明のシステム及び方法の様々な実施形態を示すものであり、明細書の一部である。図示する実施形態は、本発明のシステム及び方法の単なる例に過ぎず、これらに範囲を限定する意はない。
【0009】
図面全体にわたって、同一の符号は、必ずしも同一ではないが同様の要素を示す。
【0010】
低コストの樹脂コートされた画像支持媒体を形成するための例示的な方法及び装置を本書に記載する。より詳細には、例示的な一実施形態によれば、本発明の方法及び装置では、未加工原紙をポリオレフィン樹脂でコーティングすることによって、インクジェット写真画像プロセスで使用するよう構成された低コストの樹脂コーティング画像支持媒体を製造する。本明細書は、当該画像支持媒体を形成するための例示的なシステム及び方法、並びに未加工原紙及び樹脂の例示的な組成を開示する。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いるとき、用語「未加工原紙」は、繊維、填料、添加剤等から構成された任意の非押出紙を意味し、画像支持媒体を形成するのに用いられる。同様に、用語「画像支持媒体」及び「写真原紙」は相互に交換して用いられ、それは、その上にインクジェットコーティング調合物が付着していない、樹脂でコーティングされた未加工原紙を示す。さらに、「コーティングされた写真インクジェット紙」とは、その上にインクジェット調合物がコーティングされた結果、インクジェットプリンターで画像形成することのできる完成構造となった写真原紙を意味している。「ハロゲン化銀」は、銀と、塩素、臭素又は場合によりヨウ素等のハロゲンとから構成される任意の化合物を意味している。さらに、用語「樹脂」は、実質的に透明又は半透明であり、且つ水に不溶性である任意の粘性物質を意味している。さらに、本書では、用語「輝度」は、457nmの光波長における、酸化マグネシウム等の標準物による反射率に対する、媒体の方向反射率であることを理解されたい。
【0012】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲で用いるとき、繊維長という用語は、微細化プロセス後のパルプの加重平均繊維長を示すものとして広く解釈されるものとする。したがって、繊維の長さがl mmであり、重量がw mgである場合は、所定のパルプについて、加重平均長(L)は、Σ(wl)/Σw、即ち、各繊維の重量と長さを乗じた積の合計を、試料中の繊維の総重量で除したものである。
【0013】
以下、低コストの樹脂コーティング画像支持媒体を形成する本発明のシステム及び方法についての理解をもたらすべく、種々の詳細を記載する。しかしながら、当業者にとって、本発明の方法がこれらの詳細なしに実施し得ることは明らかであろう。本明細書で「一一実施形態」又は「或る実施形態」という場合、この実施形態に関連して記載した特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の各所に「一実施形態では」というフレーズが登場するが、必ずしも同じ実施形態を示すものではない。
【0014】
例示的な構造
図1は、例示的な一実施形態による、最終的にインクジェット印刷装置用画像支持媒体として機能するよう構成された、例示的な画像支持媒体(100)を示している。図1に示すように、画像支持媒体(100)は、フィルム形成樹脂(110)で少なくとも片側がコーティングされている未加工原紙層(120)を備える。図1に示す例示的な実施形態によれば、未加工原紙層(120)は、未加工原紙層(120)の裏面をコーティングする第2のフィルム形成樹脂(130)を含む。画像支持媒体(100)の上記構成要素について、さらに詳細を示すこととする。
【0015】
例示的な一実施形態によれば、図1に示す画像支持媒体(100)は、特にインクジェット印刷装置と共に使用するために構成される。特定の紙構造品質をもたらし且つハロゲン化銀タイプの化学プロセス処理物質によるコンタミネーションの可能性を減らすべく、未使用の硬材繊維で形成される従来のハロゲン化銀写真原紙とは異なり、本発明の画像支持媒体(100)は、コンタミネーションしやすい複雑な化学プロセス処理を受けない。その結果、図1に示すインクジェット画像支持媒体(100)では、未加工原紙及び押出製造時に代替的なプロセス及び材料を利用する。インクジェット画像支持媒体(100)の例示的な組成物及び特性を以下に詳細に記載する。
【0016】
図1に示すように、例示的な画像支持媒体(100)は、未加工原紙層(120)の少なくとも片面に形成されたフィルム形成樹脂(110)を含む。従来の写真原紙は、ハロゲン化銀を用いた画像形成に伴う化学プロセスに向くように処理されるが、本発明の例示的な画像支持媒体(100)は、従来の写真原紙と比べると、インクジェット写真イメージング用途のための製品品質が改善された比較的高価でない未加工原紙層(120)を用いる。
【0017】
本発明の画像支持媒体(100)の例示的な一実施形態によれば、未加工原紙層(120)は、限定はしないが、未使用硬材繊維、未使用軟材繊維、再生木材繊維等をはじめとする何種類かの繊維から作製することができる。従来のハロゲン化銀画像形成法とは異なり、インクジェット画像形成法は、非接触型画像付着法から成り、また、現像液を用いないため、コンタミネーションの影響が排除される。コンタミネーションが排除されるため、本発明の未加工原紙層(120)は、限定はしないが、再生木材繊維をはじめとする任意の種類の繊維)を含むことができる。
【0018】
また、本発明の未加工原紙層(120)を形成するのに用いられる繊維の加重平均長さは、約3.0mm未満とし得る。より詳細には、例示的な一実施形態によれば、未加工原紙層(120)を形成するのに用いられる繊維の加重平均長さは、繊維微細化プロセスの完了時には、約0.5mm〜約3.0mmの範囲とし得る。
【0019】
さらに、上記の繊維サイズに加えて、本発明の画像支持媒体(100)は、限定はしないが、多くの填料及び添加材を含むことができる。先述のように、従来のハロゲン化銀写真原紙は、一般に、ハロゲン化銀系の層に支障をきたす恐れのあるいかなるコンタミネーションも防止するため、無機物質填料及び/又は添加剤を使用していなかった。しかしながら、本発明の例示的な実施形態によれば、ハロゲン化銀系の層が形成されないため、従来使用されなかった多くの填料物質を用いることができる。例示的な実施形態によれば、填料物質としては、限定はしないが、クレイ、カオリン、炭酸カルシウム(CaCO)、石膏(硫酸カルシウム水和物)、酸化チタン、並びに画像支持媒体(100)中でセルロース繊維に取って代わる任意の他の低コスト材料が挙げられる。
【0020】
より詳細には、例示的な一実施形態によれば、未加工原紙層(120)のうち、乾燥重量で40%までは、限定はしないが、炭酸カルシウム(CaCO)、クレイ、カオリン、石膏(硫酸カルシウム水和物)、酸化チタン(TiO)、タルク、アルミナ三水和物、酸化マグネシウム(MgO)、無機物質、並びに/又は合成填料及び天然填料をはじめとする填料で構成することができる。上記の填料を含有することにより、様々な面で、本発明の画像支持媒体(100)の全コストが減った。まずはじめに、炭酸カルシウム等の白色填料を含有することにより、得られる画像支持媒体の輝度、白色度及び品質が向上する。その結果、フィルム形成樹脂(110)中に存在する比較的高価な酸化チタン(TiO)の量を減少させることができる。また、輝度及び白色度が向上したことにより、先述の未加工原紙層(120)の形成の際に、あまり高価でない再生繊維及び合成繊維の含有が助長される。さらに、炭酸カルシウム等の無機填料を含有することにより、パルプ繊維単独で形成されるハロゲン化銀の実施形態と比べて、未加工原紙層(120)のコストが減る。例示的な一実施形態によれば、本発明の未加工原紙層(120)は、乾燥重量で約1〜40%の無機填料を含む。他の例示的な実施形態によれば、未加工原紙層(120)は、乾燥重量で約5〜25%の無機填料を含む。
【0021】
添加し得る添加剤としては、限定はしないが、脂肪酸の金属塩及び/又は脂肪酸、アルキルケテンダイマーエマルジョン製品及び/又はエポキシド化高級脂肪酸アミド、アルケニル又はアルキルコハク酸無水物エマルジョン製品及びロジン誘導体等のサイズ剤;アニオン性、カチオン性若しくは両性のポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、カチオン化デンプン及び植物性ガラクトマンナン等の乾燥強化剤;ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等の湿潤強化剤;水溶性のアルミニウム塩、塩化アルミニウム、及び硫酸アルミニウム等の定着剤;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム及び硫酸等のpH調節剤;光増白剤(optical brightening agent);並びに顔料、着色染料及び蛍光増白剤(fluorescent brighteners)等の着色剤も挙げられる。
【0022】
上記の填料材料及び添加材料に加えて、未加工原紙層(120)の20%未満は、0.2〜5μmの粒径を有する微細物(fine content)とし得、この微細物としては、パルプの微細化プロセス中に形成された細断又は断片化された小さい木材繊維片が挙げられる。例示的な一実施形態によれば、微細物は、乾燥重量で4〜10%の範囲とし得る。従来のハロゲン化銀用の未加工原紙は、乾燥重量で20%を超える微細物を含有する。微細物を減少させることにより、ウェットエンド操作及び保存の管理が容易となる。また、未加工原紙層は、様々な保存補助剤、排水補助剤、湿潤強化添加剤、消泡剤、殺生物剤、染料及び/又は他の湿潤仕上げ添加剤を含むことができる。
【0023】
図1について続けると、例示的な一実施形態によれば、フィルム形成樹脂(110、130)は、未加工原紙層(120)の少なくとも片側に配置される。この例示的な実施形態によれば、フィルム形成樹脂(110、130)は、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂である。一実施形態によれば、未加工原紙層(120)の少なくとも片面をコーティングするフィルム形成樹脂(110、130)に用いられる熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂形態のポリオレフィン樹脂である。ポリエチレン樹脂は、その溶融押出コーティング性から、未加工原紙層(120)の少なくとも片側をコーティングするのに選択し得る。この例示的な実施形態によれば、未加工原紙層(120)の少なくとも片面をコーティングするのに用いられるポリエチレン樹脂は、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、α−オレフィン(例えば、エチレン及びプロピレン又はブチレン)を有するコポリマー、カルボキシ修飾ポリエチレン樹脂、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
上記の構成成分を画像支持媒体(100)中に組み入れることにより、インクジェット用途に向くよう構成された低コストの写真基材が得られる。例示的な一実施形態によれば、上記の未加工原紙層(120)の多数の物性及び光学特性を、以下の表1に示すように従来のハロゲン化銀画像支持媒体の特性と比較した。
【0025】
【表1】

【0026】
上記の表1に示すように、本発明の未加工原紙層(120)は、従来のハロゲン化銀系の媒体と比べて、インクジェット画像形成に関する物性及び光学特性を改良するように構成されている。
【0027】
表1に示すように、本発明の未加工原紙層(120)はより多孔性の構造を有し、これは上記のガーレー透気度(Gurley Porosity)により立証される。また、上記のコッブ試験(Cobb Test)により立証されるように、本発明の未加工原紙(120)は、水を吸収するのにより良好な親和性を有する。表1に示すように、ガーレー透気度試験は、本発明の未加工原紙が、100ccの空気を180秒未満で通過させ得るが、従来のハロゲン化銀画像支持媒体は、100ccの空気を通過させるのに180秒超要したことを示し、これは、本発明の未加工原紙層(120)が従来のハロゲン化銀写真基材よりも多孔性の構造を有することを意味している。
【0028】
同様に、表1に示すコッブ試験(Cobb test)の結果は、従来のハロゲン化銀写真基材よりも吸収速度の速いことを示している。例示的な一実施形態によれば、コッブ試験は次のように実施される。未加工原紙をリング(内面積100cm)内に留め、水のリザーバを設ける。所定の接触時間(例えば、2分)の後、水を迅速に空けて、吸収されていない水を除去するように紙で吸い取り、この紙を秤量する。吸収量は重量の増大分(g/m)である。表1に示すように、本発明の未加工原紙は、1平方メートル当たり25g以上の水を吸収するが、ハロゲン化銀の未加工原紙は、1平方メートル当たり25g未満の水しか吸収しない。
【0029】
また、表1は、本発明の例示的な原紙層(120)が、従来のハロゲン化銀の未加工原紙よりも小さいMD/CD剛性比を示し得ることを示している。本明細書で用いるとき、MD/CD剛性比は、未加工原紙の異方性、並びに横方向(抄紙機の作動方向と垂直)に対する縦方向(抄紙機の作動方向と同じ)の応力比を指すものである。例示的な一実施形態によれば、本発明のシステム及び方法で使用される繊維の選択及び製造プロセスは、MD/CD比を低減し、それ故、印刷の実施の前後いずれにおいても、湿度及び温度等の環境条件が変化する際の製品(即ち、コーティングされた写真インクジェット紙)がカールしにくくなる。
【0030】
さらに、表1は、輝度、白色度及び不透明度といった、所望の光学特性が向上したことを示している。表1に示すように、Tappi規格525に従って本発明の未加工原紙層(120)の輝度を測定すると、ハロゲン化銀の未加工原紙と比べて輝度が改良されている(それぞれ、95〜110、93〜95)。また、Tappi規格560による白色度は、ハロゲン化銀の未加工基材と比べて改良されており(それぞれ105〜140、96〜105)、Tappi規格425による不透明度も改良されている(160g/mに対して95以上、160g/mに対して93以下)。本発明の未加工原紙層(120)の輝度、白色度及び不透明度の増大は、フィルム形成樹脂(110、130)中に存在させる必要のある高価な酸化チタン(TiO)の量を減らす一方で、最終画像の品質を高めることができる。
【0031】
表1は、本発明の未加工原紙層(120)の特性と従来のハロゲン化銀の未加工原紙の特性との多くの相違を示すが、本発明のシステム及び方法により製造される未加工原紙層(120)は、従来のハロゲン化銀の未加工原紙の品質と同等の多くの品質も示す。例示的な一実施形態によれば、本発明の未加工原紙層(120)及び従来のハロゲン化銀の未加工原紙は、同等の構造及び平滑度特性を示す。
【0032】
例示的な一実施形態によれば、本発明の未加工原紙層(120)は、カヤーニ構造装置(Kajaani Formation apparatus)を用いて約110〜120の、又はAmbertecベータ構造試験機を用いて約0.25〜0.6の構造レベルを示し、両方の試験機とも、構造の均一性を分析するのに未加工原紙の光学特性を試験する。同様に、例示的な一実施形態によれば、本発明の未加工原紙層(120)は、Park印刷表面法(Park print surface method)を用いて約2.0〜4.0μmの、又はSheffield平滑度分析法を用いて約20〜70のSheffield単位(SU)の平滑度値を示す。これらの構造レベル及び平滑度値は、実質的に、従来のハロゲン化銀の未加工原紙の対応する値と同等である。ここで、上記の画像支持媒体(100)を形成する例示的な形成方法を以下に詳細に示す。
【0033】
例示的な写真基材の形成システム及び方法
例示的な実施形態によれば、未加工原紙層の少なくとも片側に、フィルム形成樹脂をコーティングする。図2は、例示的な一実施形態による、未加工原紙層を形成し且つ未加工原紙層の少なくとも片側をフィルム形成樹脂でコーティングする例示的な一実施形態を示している。図2に示すように、インクジェット画像支持媒体(100;図1)を形成する例示的な方法は、はじめに、所望の木材パルプを約0.5〜3.0mmの加重平均繊維長にまで微細化すること(工程200)で開始する。木材パルプ繊維を所望の長さまで微細化したら(工程200)、それらは、約0.0%〜20.0%の範囲の微細物を有するスラリーを形成する。次いで、炭酸カルシウム、クレイ又は石膏等の填料;サイズ剤;及び任意の所望の添加剤を、スラリー乾燥重量で40%までを構成するように添加することができる(工程210)。例示的な一実施形態によれば、このスラリーを形成した後、それを従来の抄紙機でプロセス処理して、約80〜300g/mの坪量を有する未加工原紙を製造することができる(工程220)。本明細書で用いるとき、「従来の抄紙機」という用語は、ハロゲン化銀の未加工原紙を形成するように設計されたものではない、任意の抄紙機、即ち、構造上ステンレス鋼ではない抄紙機を表わすものとする。未加工原紙を形成したら(工程220)、次にその表面の少なくとも片方に樹脂組成物を与え(工程230)、上記のインクジェット画像支持媒体(100;図1)を形成することができる。形成した後、このインクジェット画像支持媒体をインクジェットコーティング調合物で選択的にコーティングすることができる(工程240)。上記各工程について、詳細を以下に示す。
【0034】
図2に示すように、形成プロセスは、所望の木材パルプを約0.5〜3.0mmの重量平均繊維長さまで微細化すること(工程200)により開始される。例示的な一実施形態によれば、所望の木材パルプを約0.5〜3.0mmの加重平均繊維長まで微細化することは、外部フィブリル化及び内部フィブリル化の一方、パルプの細断、又はパルプの叩解を伴う。本発明の例示的な実施形態によれば、裁断叩解(cutting beating)及び湿潤叩解(wet beating)の様々な組み合わせを使用することができる。
【0035】
木材パルプ繊維を所望の長さまで微細化したら(工程200)、生成される微細物は、木材パルプ中、乾燥重量で約0.0%〜20.0%の範囲を占めるであろう(工程210)。前述のように、微細物の上記の範囲は、ハロゲン化銀の未加工原紙(無水ベースで20%を上回る)よりも少ない。従来のハロゲン化銀の未加工原紙と比べて、インクジェット用に設計された未加工原紙の微細物の低減は、より高い抄紙機速度を可能にする。
【0036】
所望の微細化プロセスの完了後、所望の未加工原紙層(120;図1)を形成すべく、スラリーの乾燥重量で40%までを構成するように、填料、サイズ剤及び任意の所望の添加剤を添加することができる(工程210)。例示的な一実施形態によれば、無機填料をスラリーに添加する(工程210)。この例示的な実施形態によれば、炭酸カルシウム(CaCO)、クレイ、石膏(硫酸カルシウム水和物)、酸化チタン(TiO)、タルク、アルミナ三水和物及び/又は酸化マグネシウム(MgO)の任意の組み合わせをスラリーに填料として添加する。したがって、上記の填料は、スラリーの乾燥重量で約40%までを構成し得る。
【0037】
例示的な一実施形態よれば、スラリーを形成し、次いで、それを従来の抄紙機でプロセス処理して、約80〜300g/mの坪量を有する未加工原紙を製造する(工程220)。従来のハロゲン化銀の未加工原紙は、コンタミネーションの一形態である鉄感応化(iron sensitization)を防止するために、ステンレス鋼製の高価な抄紙機上で形成する必要がある。しかしながら、本発明の例示的なシステム及び方法には、ステンレス鋼製の抄紙機は必要ない。例示的な一実施形態によれば、上記のスラリーを様々な処理速度でプロセス処理することができ、微細化の程度が低ければ、上記のスラリーを600m/分を超える速度でプロセス処理することができる。
【0038】
未加工原紙を形成したら(工程220)、次にその表面の少なくとも片側に樹脂組成物を与え(工程230)、上記のインクジェット画像支持媒体(100;図1)を形成することができる。図3は、樹脂塗工機(300)を用いた未加工原紙表面上への樹脂組成物の適用を例示的な実施形態により図示している。図3に示すように、未加工原紙(350)を、ローラ、即ち、巻出装置(340)上に用意する。樹脂塗工プロセスの間(工程230;図2)、コーティングされていない未加工原紙(350)を、フィルムダイ(325)の下方に位置する加圧ローラ(360)上に通す。図3に示すように、フィルムダイ(325)は、所望の樹脂を含有するホッパー(310)及び押出機(320)と流体連通している。コーティングされていない未加工原紙(350)をフィルムダイ(325)に近接して通過させ、樹脂(330)をこの未加工原紙(350)の表面上に押し出す。コーティング後、この未加工原紙及びその新たなコーティングを冷却ローラ(370)でプロセス処理する。冷却ローラ(370)の表面仕上げ及び樹脂塗工機(300)の処理条件により、得られる表面仕上げ及びコーティングされた基体(380)の光沢が決定される。また、コロナ処理を利用して、未加工原紙(350)表面上への樹脂(330)の接着を高めることができる。また、樹脂のコーティングが完了した後で、ゼラチン下塗り層を適用して、樹脂コーティング表面上への写真インクジェットコーティング調合物の接着性を向上させることもできる。コーティングしたら、インクジェット調合物のコーティング、裁断、印刷、梱包等のさらなるプロセスを実施するまで保管するために、基材を巻取ローラ(390)で回収する。
【0039】
本発明のシステム及び方法の例示的な一実施形態によれば、冷却ローラ(370)の粗さは、約0.25マイクロインチ〜約5マイクロインチのR(平均粗さ)で変更し得る。本明細書で用いるとき、平均粗さ(R)とは、表面積中心線の上下の総面積の絶対値の合計を基準長さで除したものとして測定される。例示的な一実施形態によれば、上記の粗さを有する冷却ローラ(370)は、インクジェットコーティング調合物を受容するように構成される光沢表面をもたらすことが分かった。また、多くの他のプロセスパラメータを変更することにより、樹脂コーティングされた基材の最終的な光沢を変化させることが可能であり、このプロセスパラメータとしては、限定はしないが、ニップ圧、冷却ローラ温度及び溶融温度が挙げられる。
【0040】
図3に示す樹脂塗工機(300)は、樹脂(330)を未加工原紙(350)の片面に供給する押出装置として示しているが、上記のシステム及び方法を用いて、樹脂コーティングを未加工原紙(350)の複数面に供給することもできる。さらに、様々な樹脂塗工機を用いて、樹脂(330)を未加工原紙(350)の片面又は複数面に供給してもよく、様々な樹脂塗工機としては、限定はしないが、サイズプレス、タブサイズプレス、ブレードコーティング、エアナイフコーティング、及び押出コーティング等が挙げられる。
【0041】
図2に再度戻ると、樹脂でコーティングされた写真原紙を形成したら(工程230)、これをインクジェットコーティング製剤でコーティングしてもよい(工程240)。1つの例示的な実施形態によれば、樹脂でコーティングされた紙をコーティングするのに使用され得るインクジェットコーティング製剤としては、ポリビニルアルコール、シリカ、アルミナ、ゼラチン、ポリマー、及びそれらの適切な組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。また、インクジェットコーティング製剤は、1つ又は複数の層を含んでいてもよい。さらに、コーティング層(単数又は複数)をインクジェット画像支持媒体の片面又は複数面に形成してもよい。インクジェットコーティング製剤の塗工を様々な材料分配手段で実施してもよく、この材料分配手段としては、スロットダイコーティング装置、カーテンコーティング装置、ブレードコーティング装置、ロールコーティング装置、及びグラビアコーティング装置等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
写真基材にインクジェット調合物を与えた後、このローラを多くの加工(converting)作業及び梱包作業にかける。例示的な一実施形態によれば、得られたコーティングされた写真インクジェット紙のローラ上で実施され得る加工作業及び梱包作業としては、限定はしないが、図2に示すコーティングされた写真インクジェット紙の製造工程後に実施され得る、裁断工程、印刷工程及び/又は梱包工程が挙げられる。
【0043】
インクジェットコーティング調合物を樹脂コーティング紙に適用した後、これをインクジェット材料分配機により画像を受容するように準備する。得られた写真基材上に画像を形成するのに用い得るインクジェット材料分配機としては、限定はしないが、熱駆動式インクジェット分配機、機械駆動式インクジェット分配機、電気駆動式インクジェット分配機、磁気駆動式分配機、圧電駆動式分配機、及び連続インクジェット分配機等が挙げられる。
【0044】
最後に、本発明のシステム及び方法は、インクジェット画像形成法に使用される、低コストの樹脂コーティング基材を提供する。より詳細には、このインクジェット画像形成法は、様々な木材又は合成原料からの加重平均長さ0.5〜3.0mmの未使用繊維及び/又は再生繊維を組み込んだ原紙の使用を可能にする。また、画像形成媒体に対する製造条件、及び画像形成媒体を製造するのに使用される利用可能な機械を緩和することにより、生産設備を確立する初期コストが大幅に削減される。さらに、本発明のシステム及び方法は、填料を本発明の媒体基材に組み込むことができ、それによりコストを削減し且つ得られる媒体基材の光学的品質を改善する。さらに、上記構成成分の使用は、カールしにくい媒体基材の形成を容易にする。
【0045】
以上の説明は、本発明のシステム及び方法の例示的実施形態を示し且つ説明するためにのみ提示したものである。網羅的なものではないし、開示した任意の厳密な形態にシステム及び方法を限定する意はない。上記の教示に鑑みれば、多数の変更形態及び変形形態を実施可能である。システム及び方法の範囲は、添付の特許請求の範囲で規定されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】例示的な一実施形態による、インクジェット印刷可能な写真媒体の横断面図
【図2】例示的な一実施形態による、インクジェット印刷可能な写真媒体を形成する方法を示すフローチャート
【図3】例示的な一実施形態による、インクジェット印刷可能な写真媒体を製造するように構成された製造システムを示す概略ブロック図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像支持媒体(100)であって:
未加工原紙(350);及び
前記未加工原紙(350)の少なくとも片面に配置されたフィルム形成樹脂(110、130)
を含んで成り、前記未加工原紙(350)が、加重平均長さ0.5〜3.0mmの繊維から形成されている、画像支持媒体。
【請求項2】
前記未加工原紙(350)が、乾燥重量で約1〜40%の填料を含む、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項3】
前記未加工原紙(350)が、未使用硬材繊維又は未使用軟材繊維の1つをさらに含む、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項4】
前記未加工原紙(350)が、再生繊維をさらに含む、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項5】
前記フィルム形成樹脂(110、130)が、熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項6】
前記未加工原紙(350)が、乾燥重量で20%未満の微細物(fine content)を含む、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項7】
前記未加工原紙(350)が、2未満のMD/CD比を有する、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項8】
前記未加工原紙(350)が、25g/mより大きいコッブ(Cobb)試験値を有する、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項9】
前記未加工原紙(350)が、Tappi規格525にしたがって、95を超える輝度を示す、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項10】
前記未加工原紙(350)が、Tappi規格560にしたがって、少なくとも105のCIE白色度を示す、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項11】
前記未加工原紙(350)が、Tappi規格425にしたがって、160g/mに対して95を超える不透明度を示す、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項12】
前記未加工原紙(350)が、カヤーニ構造装置(Kajaani Formation apparatus)を用いて約110〜120の、又はAmbertecベータ構造試験機を用いて約0.25〜0.6の、構造レベルを示す、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項13】
前記未加工原紙(350)が、Park印刷表面法(Park print surface method)を用いて約2.0〜4.0の、又はSheffield平滑度分析を用いて約20〜70のSheffield単位(SU)の平滑度レベルを示す、請求項1に記載の画像支持媒体。
【請求項14】
画像支持媒体(100)であって:
未加工原紙(350);及び
前記未加工原紙(350)の少なくとも片面に配置されたフィルム形成樹脂(110、130)
を含んで成り、前記未加工原紙(350)が、乾燥重量で約1〜40%の填料を含む、画像支持媒体。
【請求項15】
前記未加工原紙(350)が、重量で約5〜25%の填料を含む、請求項14に記載の画像支持媒体。
【請求項16】
前記填料が、炭酸カルシウム(CaCO)、クレイ、カオリン、石膏(硫酸カルシウム水和物)、酸化チタン(TiO)、タルク、アルミナ三水和物又は酸化マグネシウム(MgO)のうちの1つを含む、請求項14に記載の画像支持媒体。
【請求項17】
前記未加工原紙(350)が添加剤を含有し、該添加剤が、サイズ剤、乳化製品、強化剤、定着剤、pH調節剤、蛍光増白剤又は着色剤のうちの1つを含む、請求項14に記載の画像支持媒体。
【請求項18】
前記未加工原紙(350)が、加重平均長さ0.6〜0.9mmの繊維から形成されている、請求項14に記載の画像支持媒体。
【請求項19】
画像支持媒体(100)を形成する方法であって:
加重平均長さ0.5〜3.0mmの繊維を有する未加工原紙(350)を形成すること;及び
前記未加工原紙(350)の少なくとも片面をフィルム形成樹脂(110、130)でコーティングすること
を包含する、方法。
【請求項20】
写真紙製造装置であって:
加圧ローラ(360);
フィルム形成樹脂分配機;及び
約0.25マイクロインチ〜約5マイクロインチの表面粗さを有する冷却ローラ(370)
を備える、写真紙製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−522052(P2008−522052A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544345(P2007−544345)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/037523
【国際公開番号】WO2006/060071
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】