説明

インクジェット装置

【課題】 フィルタがインク凝集物やゴミ等により詰まるのを防止して、フィルタの長寿命化を図ることのできるインクジェット装置の提供。
【解決手段】まず、バルブ61、64を閉、バルブ62、63、65、66、90を開の状態で、インクタンク30から一時貯蔵インクタンク32にフィルタ21を通してインクを充填する。次に、バルブ61、63、67、69を閉、バルブ62、64、90を開の状態で、真空ポンプ50により配管78及びインク溜め容器40を介して配管74、72内を真空に引き、一時貯蔵インクタンク32内のインクをフィルタ21を通してインク溜め容器40内に排出する。これにより、フィルタ21に蓄積された凝集物やゴミ等をインク溜め容器40に排出でき、フィルタ21を回復できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク供給・回復機構を有するインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属微粒子等を顔料として含む分散性の悪いインクはすぐに凝集、沈降するため、このようなインクをインクジェット装置で使用すると、インクジェットヘッドのノズルやインクジェットヘッドの上流側に位置するフィルタが凝集物等によりすぐに目詰まりを起こしてしまう。そこで従来より、インク供給経路内にインクを循環させる循環機構や(例えば、特許文献1参照。)、インク供給経路内に撹拌装置を設ける(例えば、特許文献2参照。)ことにより、インクの凝集や沈降を防止する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2004−9685号公報
【特許文献2】特開2002−273867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述の循環機構や撹拌装置を用いてもインクの凝集や沈降を完全に防ぐことは不可能であり、フィルタ等の目詰まりは発生してしまう。そして、一度目詰まりを起こしたフィルタは交換せざるを得なかった。フィルタを交換するためにはインク供給経路内のインクを抜く必要があることから、手間がかかり、インクも無駄になるという問題があった。また、頻繁にフィルタを交換するとコストも嵩むという問題があった。更に、フィルタ交換時にはインク供給路内に気泡が侵入してしまい、当該気泡を取り除くための動作、例えばパージングを行う必要があった。特にインクジェットヘッドの数が多い場合には、パージングによってもこのような気泡を完全に取り除くのは容易ではない。
【0004】
そこで本発明は、フィルタがインク凝集物やゴミ等により目詰まりを起こすのを防止し、フィルタの長寿命化を図ることのできるインクジェット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給手段と、該インクジェットヘッドと該インク供給手段とを接続するインク経路と、該インク経路上であって、該インクジェットヘッドと該インク供給手段の間に設けられたフィルタと、を備えるインクジェット装置であって、前記インクジェットヘッドと前記フィルタとの間で前記インク経路に接続された一時貯蔵インクタンクと、前記インク供給手段と該フィルタとの間で該インク経路に接続された排インクタンクとを、更に備えることを特徴としている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のインクジェット装置であって、前記一時貯蔵インクタンクは第1のバルブを介して前記インク経路に接続され、前記排インクタンクは第2のバルブを介して該インク経路に接続され、前記インクジェットヘッドと該フィルタとは第3のバルブを介して接続されていることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェット装置であって、複数のインクジェットヘッドと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数のフィルタと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数の一時貯蔵インクタンクとを備え、各インクジェットヘッドは対応のフィルタを介して前記排インクタンクに接続されていることを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェット装置であって、複数のインクジェットヘッドと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数の一時貯蔵インクタンクとを備え、前記フィルタは該複数のインクジェットヘッドの全てに共通に設けられ、各インクジェットヘッドは当該共通のフィルタを介して前記排インクタンクに接続されていることを特徴としている。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1又は2に記載のインクジェット装置であって、複数のインクジェットヘッドを備え、前記フィルタ及び前記一時貯蔵インクタンクは該複数のインクジェットヘッドの全てに共通に設けられ、各インクジェットヘッドは当該共通のフィルタを介して前記排インクタンクに接続されていることを特徴としている。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1に記載のインクジェット装置であって、前記インク経路の少なくとも一部を真空に引くことにより、前記一時貯蔵インクタンク内のインクを前記フィルタを介して前記排インクタンクへ排出させる負圧手段を更に備えることを特徴としている。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1に記載のインクジェット装置であって、前記一時貯蔵インクタンクを加圧して、前記一時貯蔵インクタンク内のインクを前記フィルタを介して前記排インクタンクへ排出させる加圧手段を更に備えることを特徴としている。
【0012】
請求項8記載の発明は、インクを吐出して記録を行うインクジェットヘッドと、該インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給手段と、該インクジェットヘッドと該インク供給手段とを接続するインク経路と、該インク経路上であって、該インクジェットヘッドと該インク供給手段の間に設けられたフィルタと、該インクジェットヘッドを吸引パージするパージキャップと、を備えるインクジェット装置であって、該パージキャップに接続された一時貯蔵インクタンクと、該インク供給手段と該インクジェットヘッドとの間で該インク経路に接続された排インクタンクとを、更に備えることを特徴としている。
【0013】
請求項9記載の発明は、請求項8に記載のインクジェット装置であって、複数のインクジェットヘッドと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数のフィルタと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数の一時貯蔵インクタンクとを備え、各インクジェットヘッドは対応のフィルタを介して前記排インクタンクに接続されていることを特徴としている。
【0014】
請求項10記載の発明は、請求項8又は9に記載のインクジェット装置であって、前記インク経路の少なくとも一部を真空に引くことにより、前記一時貯蔵インクタンク内のインクを、前記パージキャップと、前記インクジェットヘッドと、前記フィルタとを介して前記排インクタンクへ排出させる負圧手段を更に備えることを特徴としている。
【0015】
請求項11記載の発明は、請求項8又は9に記載のインクジェット装置であって、前記一時貯蔵インクタンクを加圧して、前記一時貯蔵インクタンク内のインクを、前記パージキャップと、前記インクジェットヘッドと、前記フィルタとを介して前記排インクタンクへ排出させる加圧手段を更に備えることを特徴としている。
【0016】
請求項12記載の発明は、請求項1乃至11のいずれか1に記載のインクジェット装置であって、前記一時貯蔵インクタンクに超音波振動を与える超音波手段を更に備えることを特徴としている。
【0017】
請求項13記載の発明は、請求項1乃至12のいずれか1に記載のインクジェット装置であって、前記一時貯蔵インクタンクは可撓性を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、一時貯蔵インクタンク内のインクをインク吐出時とは逆方向に流し、フィルタを介して排インクタンクへ排出するので、フィルタに詰まった異物等をインクと共に排インクタンクへ排出できる。よって、フィルタを交換することなく、インクジェット装置を回復でき、フィルタの長寿命化を図ることができる。また、フィルタを交換する必要がないため、インク流路内に気泡が入らず、当該気泡を排出するためのパージング動作を省略することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第1の実施の形態によるインクジェット装置1について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態によるインクジェット装置1の構成を表すブロック図である。図2は、本実施の形態によるインクジェット装置1のインクジェットヘッドユニット8を示す断面図である。なお、本実施の形態によるインクジェット装置1はライン型インクジェット記録装置である。
【0020】
図1に示すように、インクジェット装置1は、インクタンク30と、可撓性の有る負圧維持容器31と、排インクタンク40と、真空ポンプ50と、複数のインクジェットヘッドユニット8(図1にはインクジェットヘッドユニット8A及び8Bのみ示す。)とを備える。各インクジェットヘッドユニット8は、配管72により相互に接続され、バルブ63を介して配管73により負圧維持容器31に接続されている。負圧維持容器31は、配管75、76及びバルブ65、66を介してインクタンク30に接続されていて、インクタンク30からの脱気済みインクの供給を受けながら負圧を維持するよう構成されている。また、負圧維持容器31は配管73、72、及びバルブ63を介してインクを各インクジェットヘッドユニット8へ供給する。なお、このときのインク流れ方向を、ここでは特に「インク流方向」と称する。各インクジェットヘッドユニット8は、負圧維持容器31から分配されたインクの供給を受けながら、記録信号に応じて図示しない記録用紙表面にインク滴を吹き付けて記録を行うものであり、それぞれ同一の構成を有する。
【0021】
図1及び図2に示すように、各インクジェットヘッドユニット8は、インクジェットヘッド10と、可撓性のある一時貯蔵インクタンク32と、フィルタ21とを備える。インクジェットヘッド10は、バルブ61及び90と、コネクタ6と、配管71とを介して一時貯蔵インクタンク32に接続されている。また、フィルタ21はバルブ62及び90と、コネクタ6と、配管71とを介して一時貯蔵インクタンク32に接続され、バルブ62のインク流方向上流側に位置している。一時貯蔵インクタンク32はコネクタ6によってインクジェットヘッドユニット8本体に対し着脱可能に接続されていて、大気連通口92を有する容器(図示せず)に収容されている。
【0022】
なお、本実施の形態におけるインクジェットヘッド10に特に限定はなく、例えば、圧電インクジェットインクジェットヘッドやバブルインクジェットインクジェットヘッド等を用いることができる。
【0023】
図1に示すように、インクジェット装置1は更に、複数のノズルキャップ20を備える。ノズルキャップ20はそれぞれ対応のインクジェットヘッド10のノズル開口部(図示せず)に密着可能であり、対応のインクジェットヘッド10を吸引パージするものである。各ノズルキャップ20はバルブ67、91と配管77とを介して排インクタンク40に接続されている。また、配管72もバルブ64及び配管74を介して排インクタンク40に接続されている。
【0024】
真空ポンプ50は配管78及びバルブ68を介して排インクタンク40に接続されている。真空ポンプ50には更にリーク用のバルブ69とフィルタ22が配管79により接続されている。
【0025】
インクジェット装置1の記録動作中は、バルブ61、62、63が開、バルブ64、90、65が閉の状態になっており、負圧維持容器31中に蓄えられた脱気済みインクが配管73、72通って、インクジェットヘッド10に供給される。記録動作の継続に従い、負圧維持容器31中に蓄えられた脱気済みインクが少なくなると、図示しないセンサによりこの状態が検知されて、バルブ65、66が開かれ、インクタンク30に蓄えられた脱気済みインクが水頭圧によって負圧維持容器31に足され、その後バルブ65が閉じられる。このバルブ65の開閉制御により負圧維持容器31には、常に適量の脱気インクが供給されることになる。以上の動作の継続により、記録動作位置にあるインクジェットヘッド10は、用紙への記録動作を継続できる。
【0026】
一方、記録動作を長時間継続したり、記録動作が長期間行われない状態が続いたりすると、インクジェットヘッド10の上流側に位置するフィルタ21にインク凝集物やゴミ等が蓄積してしまう。すると、インクジェットヘッド10から吐出されるインクの量に対して負圧維持容器31からインクジェットヘッド10へのインク供給量が減少し、インクジェットヘッド10内に負圧が生じる。この負圧が一定以上になると、インクジェットヘッド10に吐出異常や不吐出が生じてしまう。そこで本実施の形態においては、フィルタ21に蓄積された異物を除去する動作を行い、インクジェットヘッド10の良好なインク吐出を維持している。
【0027】
具体的には、図示しない圧力検知器により、インクジェットヘッド10の上流側の負圧が閾値を越えたことが検知されると、次の異物除去動作が行われる。
【0028】
(1)まず、バルブ61、64を閉、バルブ62、63、65、66、90を開の状態で、インクタンク30から一時貯蔵インクタンク32にフィルタ21を通してインクを充填する。
【0029】
(2)次に、バルブ61、63、67、69を閉、バルブ62、64、90を開の状態で、真空ポンプ50により配管78及び排インクタンク40を介して配管74、72内を真空に引き、一時貯蔵インクタンク32内のインクをフィルタ21を通して記録動作時におけるインク流方向とは逆向きに流し、排インクタンク40内に排出する。これにより、フィルタ21に蓄積された凝集物やゴミ等がインクと共に排インクタンク40へ排出される。
【0030】
(3)その後、バルブ61、64を閉、バルブ62、63、65、66、90を開の状態で、インクタンク30から一時貯蔵インクタンク32へインクを再充填することで、インクジェット装置1が記録動作時の状態に戻る。つまり、前記(2)の動作では配管74、72内を真空に引くため、(2)の動作終了時にはこれら配管74、72内にインクがない状態になっている。そこで、インクタンク30から一時貯蔵インクタンク32へインクを再充填することで、配管72内にインクを充填することができるのである。
【0031】
このように、本実施の形態によれば、金属微粒子等を顔料として含む分散安定性の悪いインクを用いた場合にも、インクジェットヘッド10のインク流方向上流側に位置するフィルタ21に蓄積された凝集物やゴミ等を排インクタンク40に排出できるため、フィルタ21の寿命を延ばすことができる。また、フィルタ21を交換する場合と異なり、配管72等のインク流路内に気泡が入らないため、パージング等の動作を行う必要がない。
【0032】
次に、本発明の第2の実施の形態によるインクジェット装置2について図3を参照しながら説明する。
【0033】
本実施の形態におけるインクジェット装置2は、前述したインクジェット装置1とほぼ同様の構成を有するが、フィルタ21が配管72の分岐点Aよりもインク流方向上流側に設置され、全インクジェットヘッドユニット108に対し共通に設けられている点で異なる。この構成においても前記第1の実施の形態における動作と同様の動作によってフィルタ21の異物を除去できる。
【0034】
次に、本発明の第3の実施の形態によるインクジェット装置3について図4を参照しながら説明する。
【0035】
本実施の形態におけるインクジェット装置3は、前述したインクジェット装置2とほぼ同様の構成を有するが、一時貯蔵インクタンク32が全インクジェットヘッドユニット208に対して共通に1つだけ設けられている点で異なる。具体的には、一時貯蔵インクタンク32がフィルタ21のインク流方向下流側で、バルブ90及びコネクタ6を介して配管72に接続されている。また、バルブ62が省かれている。この構成では、フィルタ21に蓄積された異物を除去する異物除去動作は次のように行われる。なお、当該異物除去動作も、前述の第1の実施の場合と同様に、図示しない圧力検知器によりインクジェットヘッド10の上流側の負圧が閾値を越えたことが検知された場合に行なわれる。
【0036】
(1)まず、バルブ61、64を閉、バルブ63、65、66、90を開の状態で、インクタンク30から一時貯蔵インクタンク32へフィルタ21を通してインクを充填する。
【0037】
(2)次に、バルブ61、63、67、69を閉、バルブ64、90を開の状態で、真空ポンプ50を用いて配管78及び排インクタンク40を介して、配管72、74内を真空に引くことにより、一時貯蔵インクタンク32内のインクをインク流方向とは逆向きに流し、フィルタ21を通して排インクタンク40へ排出する。これにより、フィルタ21に蓄積された凝集物やゴミ等が排インクタンク40へ排出される。
【0038】
(3)その後、バルブ61、64を閉、バルブ63、65、66、90を開にすることにより、インクタンク30から一時貯蔵インクタンク32内へインクを再充填する。これにより配管72がインクで充填され、インクジェット装置3は記録動作時の状態に戻る。
【0039】
このように、本実施の形態によっても、金属微粒子等を顔料として含む分散安定性の悪いインクを用いた場合にも、インクジェットヘッド10の上流側に位置するフィルタ21に蓄積された凝集物やゴミ等を、インク流路内に気泡を入れることなく排インクタンク40に排出でき、フィルタ21の寿命を延ばすことができる。
【0040】
次に、本発明の第4の実施の形態によるインクジェット装置4について図5を参照しながら説明する。
【0041】
本実施の形態におけるインクジェット装置4は、前述したインクジェット装置1とほぼ同様の構成を有するが、一時貯蔵インクタンク32、バルブ61,62、90、及びコネクタ6が、インクジェットヘッド10とフィルタ21との間ではなく、配管77の各インクジェットヘッドユニット308への分岐点Bとノズルキャップ20との間に設けられている点で異なる。つまり、一時貯蔵インクタンク32は、コネクタ6、バルブ90、61、67を介して配管71、77により排インクタンク40に接続されていると共に、コネクタ6、バルブ90、62を介してノズルキャップ20にも接続されている。
【0042】
かかる構成においては、フィルタ21に蓄積された異物は次の異物除去動作によって除去される。なお、当該異物除去動作も、前述の第1の実施の形態の場合と同様に、図示しない圧力検知器によりインクジェットヘッド10の上流側の負圧が閾値を越えたことが検知されると開始される。
【0043】
(1)まず、キャップ20をインクジェットヘッド10に密着させ、バルブ62、64、69を閉、バルブ61、67、68、90を開の状態で、真空ポンプ50により配管78及び排インクタンク40を介して、配管77及び一時貯蔵インクタンク32内を真空に引くことにより、一時貯蔵インクタンク32内のインクを排インクタンク40内へ排出させる。次に、バルブ61、64を閉、バルブ62、63、65、66、90を開の状態で、インクタンク30から一時貯蔵インクタンク32へインクを充填する。
【0044】
(2)次に、バルブ61、63、67、69を閉、バルブ62、64、68、90を開の状態で、真空ポンプ50により、配管78及び排インクタンク40を介して、配管72、74、インクジェットヘッド10、及びノズルキャップ20を真空に引き、一時貯蔵インクタンク32内のインクをフィルタ21を通して流し、排インクタンク40内へ排出する。これにより、フィルタ21に蓄積された凝集物やゴミ等が排インクタンク40内へ排出される。
【0045】
(3)その後、バルブ61、64を閉、バルブ62、63、65、66、90を開の状態で、インクタンク30から一時貯蔵インクタンク32へフィルタ21を通してインクを再充填する。これにより、配管72、74がインクで充填され、インクジェット装置4は記録動作時の状態に戻る。
【0046】
このように、本実施の形態によっても、金属微粒子等を顔料として含む分散安定性の悪いインクを用いた場合にも、インクジェットヘッド10の上流側に位置するフィルタ21に蓄積された凝集物やゴミ等を、排インクタンク40に排出できるため、フィルタ21の寿命を延ばすことができる。また、インク流路内に気泡を入れることなくフィルタ21を回復できるため、パージング等を行う手間が省ける。
【0047】
なお、第4の実施の形態においてのみ、(1)の動作でインクタンク30から一時貯蔵インクタンク32へインクを充填する前に一時貯蔵インクタンク32内のインクを排インクタンク40内へ排出させているのは、次のような理由による。つまり、第4の実施の形態によるインクジェット装置4では、一時貯蔵インクタンク32がノズルキャップ20よりもインク流方向下流側に位置しているため、(1)の動作前は一時貯蔵インクタンク32内には空気が入った状態にある。このため、一時貯蔵インクタンク32内のインクを排出する動作をせずに一時貯蔵インクタンク32にインクを充填しようとしても、空気に邪魔されてインクの充填が遅くなってしまうのである。また、一時貯蔵インクタンク32内に気泡を含んだインクが入ることにより、このインクを(2)の動作で排出させたときに、インクジェットヘッド10等に気泡が入り込み、吐出不良の原因となる。そこで、(1)の動作において一時貯蔵インクタンク32内のインクを排インクタンク40へ排出させることにより、このような弊害を防止することができる。
【0048】
これに対し第1乃至第3の実施の形態においては、一時貯蔵インクタンク32はノズルキャップ20よりもインク流方向上流側に位置しているため、一時所蔵インクタン32内は常に気泡が無い状態になっている。よって、(1)の動作でインク排出動作を行わなくてもインクジェットヘッド10等に気泡が入り込むことがないのである。
【0049】
本発明によるインクジェット装置は、前述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0050】
例えば、前述した第1乃至第4の実施の形態のいずれにおいても、一時貯蔵インクタンク32に超音波発生手段を設け、前記動作(2)の前に一時貯蔵インクタンク32内のインクを超音波により再分散させてもよい。これによりフィルタ21をインクジェットヘッド10側から凝集物で詰まらせるのを防止できる。
【0051】
また、一時貯蔵インクタンク32を加圧する加圧手段を設け、前記(2)の動作として加圧によりインクを排インクタンク40へ排出してもよい。これによれば、負圧によりインクを排出する場合と比較して、より高い圧力でインクを流すことができるため、フィルタ21内の異物をより効果的に除去することができる。また、配管74、72を真空に引かないため、排インクタンク40へのインク排出動作終了時において、配管74、72内には既にインクが充填されている。よって、これら配管72内にインクを充填させるための動作(3)が不要となり、異物除去動作を短時間で行うことができる。
【0052】
更に、動作(1)に代えて、バルブ90を閉の状態で一時貯蔵インクタンク32をコネクタ6から取り外し、新しいインクの充填された一時貯蔵インクタンク32と交換しても良い。或いは、新しいインクの充填された一時貯蔵インクタンク32ではなく、顔料の入っていない洗浄液が充填されたタンクと交換しても良い。洗浄液が充填されたタンクと交換する場合には、動作(2)の時にフィルタ21をインクジェットヘッド10側から凝集物で詰まらせる心配がない。そして、動作(3)によりインクタンク30から一時貯蔵インクタンク32へインクを再充填することで、配管72内に残った洗浄液を押し流すと共に、配管72内にインクを充填させることができ、インクジェット装置を記録動作時の状態に戻すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
金属微粒子を分散したような分散性の悪いインクを使用したインクジェット装置に適用でき、例えばインクジェットによる白インクを使用したマーキング用途や金属配線用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるインクジェット装置を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるインクジェット装置のインクジェットヘッドの断面図。
【図3】本発明の第2の実施の形態によるインクジェット装置を示すブロック図。
【図4】本発明の第3の実施の形態によるインクジェット装置を示すブロック図。
【図5】本発明の第4の実施の形態によるインクジェット装置を示すブロック図。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3、4・・インクジェット装置、 6・・コネクタ、
8・・インクジェットヘッドユニット、 10・・インクジェットヘッド、
20・・ノズルキャップ、 21、22・・フィルタ、
30・・インクタンク、31・・負圧維持容器、 32・・一時貯蔵インクタンク、
40・・排インクタンク、 50・・真空ポンプ、
61、62、63、64、65、67、68、69、90、91・・バルブ
71、72、73、74、75、77、78、79・・配管、 92・・大気連通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
該インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給手段と、
該インクジェットヘッドと該インク供給手段とを接続するインク経路と、
該インク経路上であって、該インクジェットヘッドと該インク供給手段の間に設けられたフィルタと、を備えるインクジェット装置であって、
前記インクジェットヘッドと前記フィルタとの間で前記インク経路に接続された一時貯蔵インクタンクと、
前記インク供給手段と該フィルタとの間で該インク経路に接続された排インクタンクとを、更に備えることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項2】
前記一時貯蔵インクタンクは第1のバルブを介して前記インク経路に接続され、前記排インクタンクは第2のバルブを介して該インク経路に接続され、前記インクジェットヘッドと該フィルタとは第3のバルブを介して接続されていることを特徴とする、請求項1記載のインクジェット装置。
【請求項3】
複数のインクジェットヘッドと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数のフィルタと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数の一時貯蔵インクタンクとを備え、各インクジェットヘッドは対応のフィルタを介して前記排インクタンクに接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインクジェット装置。
【請求項4】
複数のインクジェットヘッドと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数の一時貯蔵インクタンクとを備え、前記フィルタは該複数のインクジェットヘッドの全てに共通に設けられ、各インクジェットヘッドは当該共通のフィルタを介して前記排インクタンクに接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインクジェット装置。
【請求項5】
複数のインクジェットヘッドを備え、前記フィルタ及び前記一時貯蔵インクタンクは該複数のインクジェットヘッドの全てに共通に設けられ、各インクジェットヘッドは当該共通のフィルタを介して前記排インクタンクに接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインクジェット装置。
【請求項6】
前記インク経路の少なくとも一部を真空に引くことにより、前記一時貯蔵インクタンク内のインクを前記フィルタを介して前記排インクタンクへ排出させる負圧手段を更に備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1に記載のインクジェット装置。
【請求項7】
前記一時貯蔵インクタンクを加圧して、前記一時貯蔵インクタンク内のインクを前記フィルタを介して前記排インクタンクへ排出させる加圧手段を更に備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1に記載のインクジェット装置。
【請求項8】
インクを吐出して記録を行うインクジェットヘッドと、
該インクジェットヘッドにインクを供給するインク供給手段と、
該インクジェットヘッドと該インク供給手段とを接続するインク経路と、
該インク経路上であって、該インクジェットヘッドと該インク供給手段の間に設けられたフィルタと、
該インクジェットヘッドを吸引パージするパージキャップと、を備えるインクジェット装置であって、
該パージキャップに接続された一時貯蔵インクタンクと、
該インク供給手段と該インクジェットヘッドとの間で該インク経路に接続された排インクタンクとを、更に備えることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項9】
複数のインクジェットヘッドと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数のフィルタと、該複数のインクジェットヘッドにそれぞれ対応する複数の一時貯蔵インクタンクとを備え、各インクジェットヘッドは対応のフィルタを介して前記排インクタンクに接続されていることを特徴とする請求項8に記載のインクジェット装置。
【請求項10】
前記インク経路の少なくとも一部を真空に引くことにより、前記一時貯蔵インクタンク内のインクを、前記パージキャップと、前記インクジェットヘッドと、前記フィルタとを介して前記排インクタンクへ排出させる負圧手段を更に備えることを特徴とする、請求項8又は9に記載のインクジェット装置。
【請求項11】
前記一時貯蔵インクタンクを加圧して、前記一時貯蔵インクタンク内のインクを、前記パージキャップと、前記インクジェットヘッドと、前記フィルタとを介して前記排インクタンクへ排出させる加圧手段を更に備えることを特徴とする、請求項8又は9に記載のインクジェット装置。
【請求項12】
前記一時貯蔵インクタンクに超音波振動を与える超音波手段を更に備えることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1に記載のインクジェット装置。
【請求項13】
前記一時貯蔵インクタンクは可撓性を有することを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1に記載のインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−35732(P2006−35732A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221382(P2004−221382)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】