説明

インクジェット記録シートの製造方法

【課題】本発明の目的は、画像ムラが改善され、画像鮮明性に優れるとともに、操業性にも優れたインクジェット記録シートの製造方法を提供するものである。
【解決手段】ウェブ上にブレードコーターを用いて顔料含有塗工液を塗工するインクジェット記録シートの製造方法であって、該ブレードコーターに用いられる塗工用ブレードが、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢するブレード母材とから構成されており、該ブレード母材が先端部とは異なる素材からなるとともに、該先端部がショアAで50〜100の硬度を有することを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。上記顔料が非晶質シリカであり、且つ該シリカの含有量が顔料全体の30〜100質量%であることを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録シートの製造方法に関し、更に詳しくは、ブレードコーターを用いて顔料含有塗工液を塗工する顔料系インクジェット記録シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させ、紙等の記録用紙に付着させて、画像・文字等の記録を行うものである。この記録方式は、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、且つ現像及び定着が不要等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として、種々の用途において急速に普及している。更に、多色インクジェット記録方式により形成される画像は、多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して遜色のない記録を得ることが可能であり、作成部数が少なくてすむ用途では写真技術による記録よりも安価であることから、フルカラー画像記録分野にまで広く応用されている。
【0003】
更に、インクジェット記録方式を利用したプリンターは、市場からの更なる要求のために、高解像度化、色再現範囲の拡大、高速化が図られている。これに伴い、記録媒体であるインクジェット記録用紙には、優れた画像品質を発現するための高いインク受理容量の確保や、発色性の良好な塗層の塗設が不可欠となっている。
【0004】
インクジェット記録シートを製造する際、支持体となるウエブ上に種々の塗工手段によって顔料含有塗工液を塗工しインク受理層を設けるが、例えばエアナイフ塗工やカーテン塗工で設けた場合、いわゆる輪郭塗工となり、紙の面積が10〜100μm2程度の微視的な範囲においては均一な原紙被覆性が得られるが、エアナイフムラや塗工中の同伴空気によるカーテンムラ等の問題点が発生する為、紙の面積が10〜100mm2程度の範囲では不均一な原紙被膜性しか得られなかった。
【0005】
塗工ムラ等を改善する方法としてブレードコータによる塗工が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ブレード塗工は生産効率の高さからインクジェット記録シートにおいても利用が期待されているが、例えば、顔料系インクジェット記録シートに好ましく用いられるシリカは固形分濃度30%以上での分散が非常に困難であるため、これを主体とした塗工液は固形分濃度が高くできず、従来の金属ブレード等の硬度の高いブレードを使用した場合には塗工量が十分につかず有効に利用できなかった。また、硬度の高いブレードによる塗工では、原紙が持つ坪量の不均一さに影響され、不均一な原紙被覆性しか得られず、印字ムラなどの問題点が発生し、市場の要求に応える充分な品質が得られなかった。
【特許文献1】特開2003−276319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を解決することにあり、画像ムラが改善され、画像鮮明性に優れるとともに、操業性にも優れたインクジェット記録シートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、ブレード先端部とブレード母材が異なる素材から構成される塗工用ブレードを用いてウェブ上に塗工液を塗工するインクジェット記録シートの製造方法を発明するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ウェブ上にブレードコーターを用いて顔料含有塗工液を塗工するインクジェット記録シートの製造方法であって、該ブレードコーターに用いられる塗工用ブレードが、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢するブレード母材とから構成されており、該ブレード母材が先端部とは異なる素材からなるとともに、該先端部がショアAで50〜100の硬度を有することを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法である。
【0009】
また、第2の発明は第1の発明において、上記先端部がショアAで70〜80の硬度を有することを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法である。
【0010】
また、第3の発明は第1または第2の発明において、上記顔料が非晶質シリカであり、且つ該シリカの含有量が顔料全体の30〜100質量%であることを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像ムラが改善され、画像鮮明性に優れたインクジェット記録シートを製造することができるとともに、操業性にも優れたインクジェット記録シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る塗工用ブレードを使用したインクジェット記録シートの製造方法について、詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る塗工用ブレードは、図1に示すように、ウェブ3と接して塗工液6を掻き取る先端部2と、この先端部2をウェブ3に付勢する、先端部2とは異なる素材のブレード母材1とから構成されており、ブレード母材1は金属その他の形状安定材料からなり、このブレード母材1には、ウェブ3に接触させて過剰の塗工液を掻き取ることを意図した、ブレード母材1とは異なる素材で構成される先端部2を備えている。この先端部2を備えたブレード母材1の先端部2とは反対部分をブレード保持部材であるクランプ7に設置し、このクランプ7をバッキングロール4の方向に向かって移動することによりブレード母材1がたわみ、その反力としてウェブ3に接触した先端部2に押しつけ圧が発生して塗工液6を掻き落とし、塗工量の計量を行う。尚、5はファウンテン・アプリケーターであり、塗工液6をウェブ3に供給し付着させる。
【0014】
本発明によれば、先端部2が比較的低い硬度の材料、すなわち、50〜100のショアA硬度を有する材料で構成される塗工用ブレードを使用したときに、かなりの利点が得られることがわかった。尚、本発明でいうショアA硬度とは、JIS K6263に準拠するデュロメータタイプAによる硬度である。
【0015】
本発明に係る塗工用ブレードは図2に示すように、移動するウェブ3に接触している先端部2はその弾性と先端角度8によって変形し、或る程度までウェブ3表面の凹凸に順応し、接触部分の圧力分布が均一になる。その結果、塗工層が、硬度の高い金属やセラミックのブレードに比べ均等にウェブ3の凹凸を覆うという望ましい効果を与える。特に、先端角度8が3〜40°であれば、より均一な原紙被覆性が得られる。
【0016】
ここで注意しなければならないのは、原紙被覆性は塗工機の設定条件によってある程度変化する点である。すなわち、ベントブレード塗工においてはブレード母材1をバッキングロール4の方向に向かって押しつけていき、ブレード母材1をたわませることで押しつけ圧を得、塗工液の計量を行うが、この押しつける位置によって先端部2がウェブ3に接触する圧力分布が変化する。この圧力分布が均一になるように調整する事で、結果として塗り上がりの塗工紙における原紙被覆性は変化する。
【0017】
ブレード母材1をバッキングロール4方向に押しつけていく一般的な方法としては、ブレード母材を保持するクランプ7にステッピングモーターで駆動する移動装置を取り付け、そのステッピングモーターのパルス数(1パルスあたり1〜10μm程度移動する。)が移動距離を示し、この数値がブレード母材1のたわみと対応する為、この数値(以下ステッピングパルスとする。)をもってたわみを制御する。
【0018】
このたわみによってブレード母材1に設置された先端部2がウェブ3に接触する圧力分布が変化する。すなわち、たわみが少ない状態に制御された場合、先端部2の上端の角部が主にウェブ3と接触するため上端部の圧力が極端に高く下端部が低い状態となる。この状態ではウェブの凹凸に対応できず、良好な原紙被覆性を持つ塗工層は得られない。逆にたわみが大きすぎると下端部の圧力が極端に高くなり、先端部の圧力が下がるため、平滑な塗工層が得られないばかりか、塗りムラが発生してしまう。このためたわみを制御するステッピングパルスを適性な領域に制御する事によって良好な原紙被覆性を得る事ができる。
【0019】
従来の金属製ブレード、セラミックブレード、メッキコーティングブレードなど硬度の高いブレードにおいては上記制御を実施し、圧力分布の最適化を行っても、その硬度の高さにゆえに最適な制御範囲が狭く、塗り上がりの塗工紙における原紙被覆性を良好にする事が困難であった。
【0020】
しかしながら、本発明に係る塗工用ブレードを使用した場合、その弾性により先端部2が変形するため、最適な制御範囲が広く、良好な原紙被覆性による画像再現性を得る事ができる。
【0021】
また、エアナイフ塗工やカーテン塗工した場合、いわゆる輪郭塗工となり紙の面積が10〜100μm2程度の微視的な範囲においては均一な原紙被覆性が得られるが、エアナイフムラや塗工中の同伴空気によるカーテンムラ等の問題点が発生するため、紙の面積が10〜100mm2程度の範囲では不均一な原紙被膜性しか得られない。しかしながら、本発明に係る塗工用ブレードを使用したインクジェット記録シートでは原紙被覆性が良いため、良好な画像再現性を得る事ができる。
【0022】
本発明に係る塗工用ブレードに設置される先端部2はショアA硬度が50〜100である。硬度については、硬度がこの範囲より高すぎると先端部の弾性に由来する原紙被覆性が悪化し、低すぎると先端部の耐久性に悪影響を及ぼし寿命が短くなる。従って、特にショアA硬度が70〜80の範囲内にあるのが更に好ましい。
【0023】
本発明のコーティング・ブレードに設置される先端部2の先端角度8は3〜40°が好ましい。上記のように本発明に係る塗工用ブレードに設置される先端部2の先端角度8を3〜40°の形状としたブレードで製造したインクジェット記録シートは、先端部2とウェブ3の間にかかる圧力の最大値が減少しつつ全体の圧力分布が均一化される為、原紙被覆性が更に向上する効果を持つ。
【0024】
また上記形状の塗工用ブレードはブレード塗工においてしばしば見受けられる“ストリーク”を減少する効果が認められる。“ストリーク”とは、ブレードの先端部とウェブの間に異物もしくは塗工液が脱水された固形化した凝集体等が堆積し、ウエブの流れ方向にスジ状の欠陥を生じる現象であり、インクジェット記録シートの画像再現性に大きな欠陥を生じる。
【0025】
上記のように本発明に係る塗工用ブレードに設置される先端部2の先端の角度8を特に3°〜40°の形状としたブレードで製造したインクジェット記録シートは、先端部2とウェブ3の間にかかる圧力の最大値が減少しつつ全体の圧力分布がより均一化され、異物等が堆積しにくい為、“ストリーク”の発生の少ない良好な画像再現性を持つインクジェット記録シートとなる。
【0026】
本発明における先端部2は、有機重合体によって構成することができる。有効な重合体の例としては、ポリウレタン類、スチレンブタジエン重合体類(すなわち、ラバータイプの重合体類)およびポリオレフィン類が挙げられる。
【0027】
特に好ましいタイプの重合体はポリウレタン類である。ポリウレタン類はポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタンがその代表的なもので、一般的には、ジイソシアネート類とポリオール類との重付加反応により得られる。ジイソシアネート類としては、通常、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネート等が用いられる。ポリオール類の代表的なものはポリエーテルとポリエステルであり、ポリエーテルとしては、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシジエチレングリコール等が挙げられ、ポリエステルとしては、アジピン酸とジエチレングリコールとの縮合物がその代表的なものである。
【0028】
本発明に係る塗工用ブレードに使用されるブレード母材1の厚さは、0.2〜2mmの範囲が、先端部2の厚さは、0.1〜5mmの範囲が適切である。また、ブレードの平面でその長手方向に対して直角に見た先端部2の幅は5〜25mmの範囲が適切であるが、これらの寸法はこれに限定されない。
【0029】
本発明に係る顔料含有塗工液はインク受理層の形成に用いられる。顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、チサンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、気相法シリカ、α,β,γ,δ−等のアルミニウム酸化物、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリスチレン、尿素樹脂、メラミン樹脂の有機顔料等の顔料を用いることができる。中でも、インク吸収性に優れることから多孔性無機顔料が好ましく、非晶質シリカ、炭酸マグネシウム、アルミナ等が挙げられるが、特に細孔容量の大きい非晶質シリカが好ましい。これら顔料の平均粒子径は0.1〜20μmの範囲が好ましい。
【0030】
これらの顔料は1種または2種以上組み合わせて用いられるが、非晶質シリカを顔料全体の30〜100質量%、特に、50〜100質量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0031】
本発明に係る顔料含有塗工液には、顔料とともにバインダーが用いられる。バインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆、蛋白、ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸及びメタクリル酸の重合体又は共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、無水マレイン酸、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、或いはこれら各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂系等の水性バインダー、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポチエステル樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダーが挙げられ、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
これらバインダーの使用量は、目的とするインクジェット記録シートの特性に合わせて、適宜調整することが出来るが、一般には、顔料100質量%に対して5〜80質量%が好ましい。また、染料を定着させる目的でカチオン性樹脂を併用することもできる。
【0033】
本発明における顔料含有塗工液には、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、レベリング剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、発泡剤、浸透剤、離型剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤及びpH調節剤等の各種添加剤を適宜組合わせて含有させても良い。
【0034】
本発明に係る塗工液を塗布するウェブとしては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGWRMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかで抄造された紙(原紙ともいう)を用いることができ、また合成紙、フィルム、不織布も用いることができる。
【0035】
本発明におけるウェブが紙の場合には、サイズプレス加工が施されていないもの、澱紛、ポリビニルアルコールなどでサイズプレス加工されたもの等を用いることができる。また、必要とする原紙の密度、平滑度を得るために各種カレンダー処理を施すこともできる。
【0036】
また、一連の操業で、塗工、乾燥されたインクジェット記録シートは必要に応じて各種カレンダー処理が施すことができる。
【0037】
本発明における顔料含有塗工液のウェブ上への塗工量は、乾燥質量で1〜40g/m2であり、好ましくは2〜30g/m2である。
【0038】
また、本発明のインクジェット記録シートの塗工層の層構造は1層に限定されるものではなく、2層以上の塗工層であってもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお実施例中の部および%は、特に指定のない限り、すべて質量部および質量%を示す。
【0040】
実施例1
<原紙配合>
LBKP(濾水度440mlcsf) 70部
NBKP(濾水度490mlcsf) 30部
【0041】
<内添薬品>
炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示、平均粒子径1μm) *8部
カチオン化澱粉 1.0部
カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調製し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
【0042】
<インク受理層形成用顔料含有塗工液1>
非晶質シリカ微粒子(平均粒子径3.3μm) 100部
ポリビニルアルコール 20部
カチオン性染料定着剤樹脂 20部
これらを水に溶解、混合し、固形分15%のインク受理形成用顔料含有層塗工液1とした。
【0043】
<ブレード仕様1>
ブレード母材の素材 スチール
ブレード母材の幅 81mm
ブレード母材の厚さ 0.4mm
先端部材の素材 ポリウレタン
先端部の厚さ 0.2mm
先端部の幅 15mm
先端部の先端角度 10°
先端部の硬度(ショアA硬度) 55
【0044】
上記により得られた原紙に対して、上記塗工液を上記の配合により調製し、ファウンテンアプリケーション/ベントブレード方式塗工機を用いて、塗工速度500m/分で塗工液を塗工し、乾燥塗工量15g/m2を目標として塗工条件を調整した後、乾燥してインクジェット記録シートを製造した。
【0045】
実施例2
実施例1における塗工用ブレードの先端部硬度を85にした以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録シートを製造した。
【0046】
実施例3
実施例1における塗工用ブレードの先端部硬度を75にした以外は実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録シートを製造した。
【0047】
実施例4
実施例1におけるインク受理層形成用顔料含有塗工液1に替えて、下記のインク受理層形成用顔料含有塗工液2を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット記録シートを製造した。
【0048】
<インク受理層形成用顔料含有塗工液2>
非晶質シリカ微粒子(平均粒子径3.3μm) 30部
軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1μm) 70部
ポリビニルアルコール 20部
カチオン性染料定着剤樹脂 20部
これらを水に溶解、混合し、固形分30%のインク受理層形成用顔料含有塗工液2とした。
【0049】
実施例5
実施例1におけるインク受理層形成用顔料含有塗工液1に替えて、下記のインク受理層形成用顔料含有塗工液3を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5のインクジェット記録シートを製造した。
【0050】
<インク受理層形成用顔料含有塗工液3>
非晶質シリカ微粒子(平均粒子径3.3μm) 25部
軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1μm) 75部
ポリビニルアルコール 20部
カチオン性染料定着剤樹脂 20部
これらを水に溶解、混合し、固形分30%のインク受理層形成用顔料含有塗工液3とした。
【0051】
比較例1
実施例1における塗工用ブレードに替えて下記に示す仕様の金属ブレードを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録シートを製造した。
【0052】
<ブレード仕様2>
ブレード素材(単一素材で構成) スチール
ブレードの幅 81mm
ブレードの厚さ 0.4mm
先端角度 10°
【0053】
比較例2
実施例1におけるインク受理層形成用顔料含有塗工液1に替えて、下記のインク受理層形成用顔料含有塗工液4を用い、比較例1におけるブレード仕様2の金属ブレードを用いた以外は実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録シートを製造した。
【0054】
<インク受理層形成用顔料含有塗工液4>
非晶質シリカ微粒子(平均粒子径3.3μm) 30部
軽質炭酸カルシウム(平均粒子径1μm) 70部
ポリビニルアルコール 20部
カチオン性染料定着剤樹脂 20部
これらを水に溶解、混合し、固形分45%のインク受理層形成用顔料含有塗工液4とした。
【0055】
比較例3
実施例1におけるファウンテンアプリケーション/ベントブレード方式塗工機に替えてエアナイフ塗工機を用い下記の塗工条件で塗工した以外は実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録シートを製造した。
【0056】
<エアナイフ塗工条件>
塗工速度 200m/分
エアナイフ圧力 5000mmAq
【0057】
上記実施例1〜5および比較例1〜3により得られたインクジェット記録シートについて、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
【0058】
<評価方法>
(1)画像鮮明性
画像の鮮明性は、高精細な写真画像をPM820C(エプソン社製)を用いて描画しインクの溢れや、流れ具合を目視で判断した。
◎(非常に良好):インクの溢れや流れが全くない。
○(良好) :インクの溢れや流れが僅かにあるが、製品として良好。
△(普通) :インクの溢れや流れが若干あるが、製品として可。
×(不良) :インクの溢れや流れが顕著にあり、製品として使用不可。
【0059】
(2)画像ムラ
画像鮮明性の評価時と同様に描画行い製造したインクジェット記録用シートにおける画像ムラを目視観察した。評価基準を以下に示す。
◎(非常に良好):画像ムラが全く観察されない。
○(良好) :画像ムラがごく僅かに観察されるが、製品として良好。
△(普通) :画像ムラが観察されるが製品として可のレベル。
×(不良) :画像ムラが観察され、製品として使用不可。
【0060】
(3)操業性(ブレード耐久性試験)
使用したブレードがインクジェット記録シートの面質に悪影響を及ぼさず塗工可能だったウエブ長さで評価した。評価基準を以下に示す。
◎(非常に良好):100000m以上
○(良好) :50000m以上、100000m未満
△(普通) :20000m以上、50000m未満
×(不良) :20000m未満
【0061】
【表1】

【0062】
<評価>
表1から、ブレード先端部硬度が50〜100の範囲内にある実施例1〜5は、比較例1及び2の先端部金属ブレードに比べ、インクジェット特性の画像鮮明性と画像ムラにおいて著しく優れており、比較例3のエアナイフ塗工に比べ、画像ムラの点で著しく優れている。また、ブレード先端部硬度が70〜80の範囲内にある実施例3は、この範囲外の実施例1に比べてブレード耐久性が更に優れており、実施例2に比べて画像ムラの点で更に優れている。更にブレード先端部硬度が同じ場合、全顔料中のシリカ含有量が30〜100質量%の実施例1及び4はこの範囲外の実施例5に比べ、画像ムラの点で更に優れている。実施例4は金属ブレードで製造された比較例2と全顔料中のシリカ含有量が同一で、塗工量も同じだが、比較例2に比べ画像鮮明性と画像ムラが優れている。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、優れたインクジェット特性を有するインクジェット記録シートを得ることができるとともに、優れた操業性を兼ね備えたインクジェット記録シートの製造方法として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に用いられる塗工用ブレードをブレードコーターに設置し、ウェブ上にインク受理層形成用顔料含有塗工液を塗工している状態を示す断面図。
【図2】本発明に用いられる塗工用ブレードに設けられた先端部の先端角度を示す断面図。
【符号の説明】
【0065】
1 ブレード母材
2 先端部
3 ウェブ
4 バッキングロール
5 ファウンテン・アプリケーター
6 塗工液
7 クランプ
8 先端角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ上にブレードコーターを用いて顔料含有塗工液を塗工するインクジェット記録シートの製造方法であって、該ブレードコーターに用いられる塗工用ブレードが、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢するブレード母材とから構成されており、該ブレード母材が先端部とは異なる素材からなるとともに、該先端部がショアAで50〜100の硬度を有することを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。
【請求項2】
上記先端部がショアAで70〜80の硬度を有する請求項1記載のインクジェット記録シートの製造方法。
【請求項3】
上記顔料が非晶質シリカであり、且つ該シリカの含有量が顔料全体の30〜100質量%であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−181509(P2006−181509A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379130(P2004−379130)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】