説明

インクジェット記録ヘッドの回復方法およびインクジェット記録装置

【課題】インクジェット記録ヘッドのヒータ上に堆積する「こげ」を効果的かつ確実に剥離可能な回復方法を提供すること。
【解決手段】記録時のエネルギよりも大きいエネルギを第1の周波数で複数回付与する第1工程と、記録時のエネルギよりも大きいエネルギを第2の周波数で複数回付与する第2工程とを有し、前記第1工程と前記第2工程を交互に実行する。これにより、付着力の異なる層が積載してなる「こげ」を効果的に剥離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータに所定のパルス電圧を印加することにより、当該ヒータに接するインク中に発泡を生じさせ、インクを吐出する方式のインクジェット記録ヘッドの回復方法に関する。特に、ヒータ近傍に堆積する異物を除去するための記録ヘッド回復方法およびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、インクを記録媒体に直接吐出して画像を記録するので、ノンインパクトで低騒音な記録方法である。また、特別に複雑な構成を必要としないため、低ランニングコスト、装置の小型化、カラー化等が比較的容易に実現できる。このように様々な長所を有していることから、近年ではインクジェット記録方法を採用したプリンタ、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ等が、数多く提供されている。
【0003】
インクジェット記録装置において、インクを滴として吐出するための方法は様々なものが実用化されているが、高解像な画像を高速に記録することが出来るという優位点から、特にサーマルインクジェット方式が有用されている。
【0004】
図1は、サーマルインクジェット方式における記録素子の構成を説明するための模式図である。ここでは、1つの記録素子(ノズル)の断面を示している。図において、1101はヒータ(電気熱変換体)であり、電圧パルスを印加することにより発熱する。1102はインク1103を吐出口まで導くための流路壁である。
【0005】
図2(a)および(b)は、図1に示したノズルにおける吐出動作工程を説明するための模式図である。ヒータ1101に所定の電圧パルスが印加されることによりヒータが発熱し、近傍にあるインクを急激に加熱する。これにより膜沸騰が起こり、ヒータ表面に気泡1201が発生する(図2(a))。気泡1201は体積膨張を続け、吐出口近傍のインクが徐々に吐出口から押し出され、やがて分離し飛翔して行く(図2(b))。これがインクの吐出である。ここでは1回分の吐出動作について説明したが、各記録素子では記録信号に応じて連続的に吐出動作が行われる。
【0006】
ところで、電気熱変換体は保護膜等を通じて、または直接インクと接しているが、このような膜沸騰が連続して繰り返されると、電気熱変換体や保護膜表面には熱分解生成物が徐々に付着して行く。このような付着物を、以下「こげ」と称する。「こげ」が生成・堆積されると、電気熱変換体の発熱が十分にインクに伝わらなくなったり、電気熱変換体や保護膜の平面性が損なわれたりして、膜沸騰が正常に行われなくなる。結果、吐出されるインク滴の吐出速度や質量は吐出頻度に応じて徐々に変動する。
【0007】
図3は、吐出を繰り返すうちに変化していく吐出速度の様子をグラフとして例示した図である。図において、横軸は吐出回数であり、縦軸は吐出速度である。図によれば、吐出を繰り返していくうちに、徐々に吐出速度が低下していることが分かる。
【0008】
このような吐出速度の低下が進むと、吐出されたインク滴が目的の位置に記録されず、画像劣化の原因となる。よって、サーマルインクジェット方式のインクジェット記録装置では、このような「こげ」を除去するための構成や方法が課題となっており、そのような提案も既になされている。
【0009】
例えば、特許文献1には、吐出口表面にキャップを押し付け、チューブポンプ等の吸引力によって、ノズル内の異物を剥離・排除する方法が開示されている。また、記録とは無関係の予備吐出を利用する方法も提案されている。特に特許文献2では、個々の電気熱変換体に通常よりも高いエネルギを印加することによって、「こげ」の剥離を促進する予備吐出効果が開示されている。更に特許文献3においては、異なる2つの周波数のパルスを印加することによって、予備吐出を実行する内容か開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平02−4521号公報
【特許文献2】特開平04−363253号公報
【特許文献3】特開平10−278302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、従来では、その取り扱いの利便性から染料を色材としたインクを用いるインクジェット記録装置が主流であった。しかし、染料インクによる記録物では、耐光性、耐水性等の画像堅牢性が十分でなく、近年では、顔料を色材としたインクを用いるインクジェット記録装置が数多く提供されつつある。しかしながら、顔料インクは染料インクに比べ、上述した「こげ」が発生しやすく、特許文献1〜3に挙げたような従来の方法では、十分に「こげ」を剥離することは困難であった。
【0012】
また、染料インクに関しても最近は耐候性に優れた種類の染料を使用する試みが多く、このような染料インクにおいては、やはり従来の方法では十分に「こげ」を剥離することは困難であった。
【0013】
特に、付着力が強い部分と弱い部分が混在して形成されている「こげ」の場合には、弱い部分を剥離することが出来ても、強い部分がそのまま残存してしまう場合などがあり、十分な回復が得られていなかった。
【0014】
本発明は上記問題点の解決するためになされたものであり、その目的とするところは、インクジェット記録ヘッドの「こげ」を効果的かつ確実に剥離可能な回復方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのために本発明においては、インク保持部のヒータに所定のエネルギを付与することにより前記インクを吐出させて記録を実行するインクジェット記録ヘッドの回復方法であって、前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを第1の周波数で複数回付与する第1工程と、前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを前記所定の周波数とは異なる第2の周波数で複数回付与する第2工程とを有し、前記第1工程と前記第2工程を交互に実行することを特徴とする。
【0016】
また、画像信号に基づいてインク保持部のヒータに所定のエネルギを付与することにより前記インクを吐出する記録ヘッドを用い記録を実行するインクジェット記録装置において、前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを第1の周波数で複数回付与することにより、前記記録ヘッドに第1予備吐出動作を実行させる手段と、前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で複数回付与することにより、前記記録ヘッドに第2予備吐出動作を実行させる手段と、前記画像信号に基づいた吐出を実行していないタイミングで、前記第1予備吐出動作と前記第2予備吐出動作を交互に実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、付着力の異なる層が積載してなる「こげ」を効果的に剥離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
図4は、本実施形態に適用するインクジェット記録装置の機構を説明するための構成図である。本実施形態で適用する記録ヘッドは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの4色を吐出可能となっており、これらインクを収容する収容部と一体化されたユニット形態となっている。以下、65は記録ヘッドユニットあるいは単に記録ヘッドと称す。
【0020】
66は、記録ヘッドユニット65を搭載可能なキャリッジであり、ガイド軸67と摺動可能に係合するとともに、その一部はモータ68によって駆動されるベルト69と接続している。この構成により、キャリッジ66はガイド軸67に沿った主走査方向への移動が可能で、記録ヘッド65による記録領域およびホームポジション領域への移動を行っている。
【0021】
51は記録媒体を挿入するための記録媒体供給部、52は供給された記録媒体を副走査方向に搬送するための送りローラである。記録媒体供給部51より供給された記録媒体は、送りローラによって、記録ヘッド65による記録が可能な位置まで搬入され、位置決めされる。その後、キャリッジ66の主走査方向への移動走査に伴い記録データに基づいて記録ヘッド65からインクが吐出され、1行分の画像が形成される。次に、1行分の記録幅に対応した量だけ記録媒体が副走査方向に搬送される。このような記録ヘッド65の記録主走査と記録媒体の搬送動作とを間欠的に繰り返すことにより、記録媒体に徐々に画像が形成されて行く。記録が進行し、画像が完成されると、排出ローラ53によって記録媒体は排出部へと排出される。
【0022】
記録ヘッド65の移動領域内の記録領域に隣接したホームポジションには、記録ヘッド65のメンテナンス処理等を行うための吐出回復部64が構成されている。吐出回復部64には、ブレード61、キャップ62、およびインク吸収体63などを備えている。
【0023】
ブレード61は記録ヘッド65の吐出口面を掃除するためのワイピング部材であって、その一端はブレード保持部材によって保持されて固定端となり、カレンチレバーの形態をなしている。また、インク吸収体63は、記録ヘッド65の吐出口面の余分なインクを吸収するための材質で構成されており、ブレード61と同様に記録ヘッド65の移動経路中に配置されている。記録ヘッド65がホームポジションに出入りする際、ブレード63は移動経路中に突出し、記録ヘッドの吐出口面の余分な水分や塵等を除去する。
【0024】
キャップ62は、記録ヘッド65がホームポジションに戻ってきた際に、記録ヘッド65の吐出口面に向かって突出し、これと当接して吐出口面のキャッピングを行なう。非記録中や待機中などには、このようにキャップ62が吐出口面を覆うことによって、吐出口からインクの揮発成分が蒸発するのを抑制する。記録ヘッド65が移動中であるときには、キャップ62は退避している。
【0025】
また、記録ヘッドの吐出状態を維持するために、記録とは無関係の予備吐出を行う際にも、記録ヘッド65はホームポジションに戻り、キャップ62に向けてインクの吐出を行う。
【0026】
なお、以上では、予備吐出はキャップ62に対して行う内容で説明したが、本発明は必ずしもこのような記録装置でなくとも良い。例えば、吐出回復部64に予備吐出を受容するための予備吐パッドを更に設け、当該予備吐パッドに向けて予備吐出を行う構成であってもよい。また、予備吐パッドを設ける位置は、図に示した吐出回復部内に限られるものではなく、記録ヘッド65の移動走査領域でホームポジションとは反対側の位置に、あるいは記録領域を挟んだ両側に設けてもよい。
【0027】
図18は、本実施形態に適用するインクジェット記録装置の制御系の構成を説明するためのブロック図である。図において、1は画像データ入力部である。画像データ入力部1は、スキャナやデジタルカメラ、更にはパーソナルコンピュータ等の外部入力機器から、多値の画像データを入力する。2は操作部であり、各種パラメータの設定や記録の開始を指示するための各種キーを備えている。3は記録装置全体の各種処理を行うCPUである。CPU3は、記憶媒体4に格納された制御プログラムに従って、記録システム全体を制御する。
【0028】
4は各種データを記憶する記憶媒体である。記憶媒体4には、後述する記録ヘッド回復用の各種閾値や、CPU3が行う各種制御のプログラムなどが格納されている。本実施形態の記録装置の動作は、すべてこの制御プログラムに従って、CPU3が実行する。
【0029】
5は各処理を行うためのワークエリア、エラー処理時の一時待避エリアおよび画像処理時のワークエリアとして用いるRAMである。RAM5では、記憶媒体4の中の各種テーブルを一時的にコピーし、その内容を変更し、変更したテーブルを参照しながら画像処理を進めることができる。また、後述するドットカウンタ9がカウントした吐出回数情報をRAM5に一時的に格納することにより、CPU3が記憶媒体4に格納されている閾値と比較することが出来る。
【0030】
7は画像の出力を実行する画像記録部であり、作成された2値情報に基づいて記録ヘッドからインクを吐出し、記録媒体上に画像を形成する。8は各種データを転送するバスラインであり、装置内のアドレス信号、データ、制御信号などを伝送する。
【0031】
9はドットカウンタであり、各色の記録ヘッドが吐出する回数をカウントする。10は、記録ヘッドに対する一連のメンテナンス処理を実行するための吐出回復部である。
【0032】
図5は、本実施形態に適用する記録ヘッドユニット65の構成を説明するための図である。1601Bk、1601C、1601Mおよび1601Yは、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのインクをそれぞれ収容するインク収容部である。1603は吐出部(いわゆる記録ヘッド)であり、各色複数のノズルが配列されている。各色のインク収容部1601の中には、既に各色のインクが充填されているインク吸収体が収納されている。インク収容部1601から吐出部1603の吐出口までは、インクを輸送するための液路が形成され、記録ヘッド部1603へ導かれたインクは、複数のノズルからからインク滴として吐出する。インク吸収体の材料としては、例えばポリウレタンを用いることができる。
【0033】
図6は、記録ヘッド1603を吐出方向から観察した図である。本実施形態の記録ヘッドにおいて、同色のインクを吐出するノズルは副走査方向に1280個ずつ1200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で配列している。また、異色のノズル列は副走査方向に並列している。
【0034】
図7は、本実施形態で適用する記録ヘッド1603の概略構成を説明するための模式図である。本実施形態の記録ヘッド1603は主に、複数のインク流路14が成型されたガラス27と、個々の流路に対応する位置に電気熱変換体を備えたヒータボード15を、互いに接着して形成されている。インク流路を形成する部材としては、ガラスのほかにセラミックやプラスチック等を用いることも出来る。
【0035】
図8は、図7で示した記録ヘッド1603の1つのノズルの構成を説明するための断面図である。また、図9は、図8をA−Bラインで切断した断面図である。図において、ヒータボード15は、酸化シリコン等で形成される保護膜16、アルミニウム電極17-1および17-2、ニクロム等で形成される発熱抵抗体層18、蓄熱層19、アルミナ等の放熱性のよい基板20を備えている。流路内のインク21は、毛細管力によって吐出オリフィス22まで導かれ、その先端においては大気圧Pによりメニスカス23を形成している。
【0036】
電極17-1、17-2に電圧パルスが印加されると、ヒータボード15のnで示される領域が急激に発熱し、ここに接しているインク21に気泡が発生する。そして、気泡の成長圧力でメニスカスが突出し、所定量のインク滴がオリフィス22より液滴24となって飛翔し、記録媒体25に着弾する。
【0037】
次に、本実施形態で適用するインクの成分について説明する。本発明者らが鋭意検討を行ったところ、本発明の目的である「こげ」の剥離については、イエローインクに関して非常に大きな効果を得られた。よって以下では、本発明者らが使用したイエローインク生成方法を例として開示する。但し、本発明の効果は、下記インクに限定されるものではない。他の生成方法によるイエローインクや他色のインクに対しても、程度の差こそあれ本実施形態に好適に用いることが出来る。
【0038】
(1)分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価300、数平均分子量2500のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0039】
上記のポリマー溶液を140g、C.I.ピグメントイエロー128を100gおよびイオン交換水260gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約70MPa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0040】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してイエロー分散液とした。得られたイエロー分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が7.5質量%であった。
【0041】
(2)インクの作製
インクの作製は、上記イエロー分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した。その後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度4.5質量%、分散剤濃度3.38質量%の顔料インクを調製した。
上記イエロー分散液 45部
グリセリン 10部
ジエチレングリコール 10部
アセチレングリコールEO付加物
(商品名:アセチレノールEH、川研ファインケミカル製) 0.5部
イオン交換水 34.5部
【0042】
図10は、以上説明した記録装置、記録ヘッドおよびインクを用い、吐出を実行した場合の、電気熱変換体に付与するエネルギとインク液滴の吐出速度との関係を示した図である。ここでは、通電時間を100万分の9秒(0.9μsec)に固定した状態で、電気熱変換体(ヒータ)の両端に印加する電圧の値を変化させることにより付与エネルギを調整している。
【0043】
図において、横軸はヒータに与えるエネルギ量を示しており、E0は吐出に必要な最低限のエネルギを示している。以後、これを臨界エネルギE0と呼ぶ。また、E0を実現するための電圧をVthとする。例えば、印加電圧をVthの1.1倍にするとヒータの抵抗値は一定であるから投入されるエネルギはE0の1.21倍になる。図の横軸は臨界エネルギE0を1としたエネルギの値が示されている。
【0044】
本実施形態の記録装置において、エネルギ値が1.1付近までは吐出速度は急激に上昇する。多くのインクがこのような傾向を示す。1.1を過ぎると、吐出速度はなだらかに上昇する。この1.1以降の挙動はインクによって様々であり、徐々に下降するものがあれば、ほぼ同じ速度をキープするものもある。
【0045】
再び図3を参照する。本実施形態のインクジェット記録装置においても、吐出を繰り返すことにより、図3のように徐々に吐出速度が低下していく。ここでは、臨界エネルギE0の1.21倍のエネルギによって、10kHzの周波数で、5×10回のイエローインクの吐出を行った際の、吐出速度の変異が示されている。臨界エネルギE0の1.21倍のエネルギおよび10kHzの吐出周波数とは、記録時に一般的に用いられる値である。本例においては、吐出開始時と終了時において吐出速度は15mから12mまで低下している。既に背景の技術の項で説明したように、このような現象は、繰り替えされる吐出動作に伴って電気熱変換体(ヒータ)上に「こげ」が徐々に付着することに起因している。
【0046】
本発明では、通常のエネルギおよび吐出周波数において生成され、ヒータ上に付着した「こげ」を、通常よりも大きなエネルギを通常とは異なる吐出周波数によって付与することにより、剥離・除去することを特徴としている。具体的には、記録ヘッドの回復工程の1つとして、記録に用いるエネルギよりも大きいエネルギを、記録時とは異なる2つ周波数で付与することによって、予備吐出を行う。
【0047】
以下に、本実施形態の適切な予備吐出方法を説明するために、本発明者らが行った検討について説明する。
【0048】
まず、本発明者らは、図3で説明したような「こげ」の付着した吐出速度が約12m/sの記録ヘッドを複数個作成した。そして、複数の予備吐出パターンに従って予備吐出を実行し、吐出速度の測定を行った。表1は、予備吐出パターンを示したものである。
【0049】
【表1】

【0050】
表において、パターンAは、記録に用いるエネルギと同等の1.21×E0に相当するパルス電圧を10kHzの周波数で100万回印加する。パターンBは、1.21×E0に相当するパルス電圧を100Hzの周波数で100万回印加する。パターンCは、1.5×E0に相当するパルス電圧を10kHzの周波数で100万回印加する。パターンDは、1.5×E0に相当するパルス電圧を100Hzの周波数で100万回印加する。パターンEは、パターンCを行った後にパターンDを行う。パターンFは、パターンDを行った後にパターンCを行う。更に、パターンGは、1.5×E0に相当するパルス電圧を10kHzの周波数で30万回印加し、引き続き100Hzでの吐出を3000発行うサイクルを3回繰り返す。
【0051】
図11は、上記パターンA〜パターンGの予備吐出を実行する過程において、記録ヘッドの吐出速度を測定した結果である。図において、横軸は予備吐出動作中の吐出数、縦軸は各吐出回数時に於ける吐出速度である。図からも明らかなように、パターンA〜パターンGの中では、パターンGの予備吐出が最も効果的であることがわかる。すなわち、最も少ない吐出数で初期の吐出速度15m/sに回復している。
【0052】
以下、各パターンについて具体的に想定されるメカニズムを説明する。
【0053】
図12は、ヒータ1601上に堆積する「こげ」と、これらが剥離する状態を説明するための模式図である。一般に、「こげ」物質とは、インク中の色材や分散剤が熱分解して析出されたものであることが分析により判明している。これら析出物「こげ」は、ヒータ1101上に図12(a)で示すように堆積し、ここでは比較的剥離されやすい「こげ」を1204、比較的剥離されにくい「こげ」を1605で示している。しかし、実際には明らかに分類される2種類の「こげ」が現れるわけではない。「こげ」が生成される環境は様々に変化することから、生成される「こげ」の付着力の強さも様々となる。付着力の程度の差が異なる幾層もの「こげ」が堆積していることを分かりやすくするため、ここでは2種類に分類して説明している。図12(a)のように、「こげ」の層がヒータ上に折り重なった状態では、ヒータにパルス電圧が印加されても発泡が阻害され、吐出されるインクの速度は「こげ」のない場合に比べて遅くなってしまう。
【0054】
この状態に対し予備吐出を行ったとしても、それがパターンAおよびパターンBのように通常の吐出動作と同じエネルギ条件であれば、通常の吐出動作とほぼ同等の環境が設定されるのみである。よって、そのまま「こげ」の堆積が促進され、「こげ」剥離としての効果は現れない。
【0055】
パターンCあるいはパターンDのように、通常の吐出動作よりも高いエネルギ条件で予備吐出が行われると、ヒータ1101上での発泡力が強まり、堆積された「こげ」も剥離されるようになる。特に、パターンCのように高い周波数では、発泡が勢い良く繰り返されるため、付着力の弱い「こげ」1204は、速いスピードで一気に剥離される。そのため、図11の曲線Cのように、比較的少ない吐出回数の段階で吐出速度は回復に向かう。しかし、付着力の強い「こげ」1205はこの方法では剥離されにくく、ヒータ上に残存したままである。従って、吐出速度は早い段階で飽和し、図11の曲線Cで示すように頭打ちになってしまう。
【0056】
これに対し、パターンDのように低い周波数の吐出では、比較的剥離されにくい「こげ」も確実に除去することが出来る。しかし、周波数が低い分、勢いが抑えられ、同じ回数の吐出を実行しても剥離される「こげ」の総量は少ない。そのため、パターンDでは着実に吐出速度は回復するものの、吐出速度の回復速度は緩やかで、完全に回復するまでに多大な時間を要する。
【0057】
パターンEおよびパターンFは、通常の吐出動作よりも高いエネルギ条件で高周波の吐出と低周波の吐出を1度ずつ繰り返したものである。パターンEでは、高周波の吐出を100万回行った後に低周波の吐出を1万回行っている。一方、パターンFでは、先に低周波の吐出を1万回行った後に高周波の吐出を100万回行っている。このように、高周波の吐出と低周波の吐出の双方を実行する方法であれば、付着力の強い「こげ」1205を剥離する状況を与えながら、付着力の弱い「こげ」1204を高速に剥離することが出来る。しかし、パターンEやパターンFのように、高周波による吐出と低周波による吐出を繰り返す回数が1回のみであると、付着力の弱い「こげ」が十分に剥離されない状況が懸念され、この場合、パターンCのように早い段階で吐出速度の回復が飽和点に達してしまう。
【0058】
本発明者らが行った検討の結果によれば、パターンGが特徴とするように、相対的に高エネルギの吐出を高周波と低周波で交互に繰り返すことにより、吐出速度が効果的に回復される。
【0059】
図12(b)〜(d)は、同図(a)のように付着した「こげ」が、パターンGの予備吐出によって剥離されていく様子を示している。パターンGでは「こげ」が付着した図12(a)の状態に対して、まず高周波で3万回の吐出を行い付着力の弱い「こげ」1204を一気に除去する。この状態が図12(b)であり、この段階で「こげ」の表面には付着力の強い「こげ」1205が現れる。図11を参照するに、この状態まではパターンCとほぼ同様の曲線を描いているが、これ以上高周波の吐出を継続しても付着力の強い「こげ」1205は剥離され難いので吐出速度は飽和状態となる。
【0060】
次に、低周波で3000回の吐出を実行する。この段階で付着力の強い「こげ」1205が剥離され、再び付着力の弱い「こげ」1204が表面に現れる(図12(c))。その後再び高周波による3万回の吐出を行うことにより、表面に現れた付着力の弱い「こげ」が一気に剥離される(図12(d))。このように、高周波による吐出動作と低周波による吐出動作とを交互に繰り返し行うことにより、付着力の異なる「こげ」が層となって堆積していても、これらを効率的に剥離していくことが出来る。よって、パターンCや他のパターンに比べ、格段に早急に吐出速度の回復が可能となる。
【0061】
以上の結果を踏まえ、本実施形態のインクジェット記録装置では、通常の予備吐出動作を実行する「通常回復シーケンス」のほかに、「こげ」を効率的に除去するためにパターンGに従って予備吐出を実行する「特別回復シーケンス」を用意した。
【0062】
図13は、本実施形態のインクジェット記録装置における回復シーケンスの工程を説明するためのフローチャートである。
【0063】
回復シーケンスが開始されると、まずステップS1701において、記録ヘッドのドットカウント(吐出数カウント)値AおよびBを取得する。ここで、ドットカウント値Aとは、前回通常回復シーケンスを実行した時点から現段階までの吐出回数である。また、ドットカウント値Bとは、前回特別回復シーケンスを実行した時点から現段階までの吐出回数である。
【0064】
ステップS1702では、得られたドットカウント値Bを閾値βと比較し、B>βの場合はステップS1703へ進む。ステップS1703では、記録ヘッドには「こげ」が付着している可能性が高いと判断し、特別回復シーケンスを実行する。
【0065】
ステップS1703による特別回復シーケンス終了後、ステップS1706へ進み、ドットカウント値Bをリセットし、更にステップS1707においてドットカウント値Aもリセットする。
【0066】
一方、ステップS1702でドットカウント値B≦βと判断された場合、ステップS1704へ進み、ステップS1701で得られたドットカウント値Aを閾値αと比較する。A>αと判断された場合、特別回復シーケンスは必要ないが通常回復シーケンスは必要と判断され、通常回復シーケンスのみ実行する(ステップS1705)。本実施形態において、通常回復シーケンスでは、通常の記録動作と同等のエネルギと周波数によって予備吐出を実行する。その後、ステップS1707に進み、ドットカウント値Aを0にリセットする。
【0067】
ステップS1704にて、A≦αと判断された場合、またステップS1707にてドットカウント値Aがリセットされた後は、ステップS1708へ進み1ページ分の記録動作が実行される。このとき、記録動作に伴う吐出回数がドットカウント値AおよびBのそれぞれに加算されていく。1ページ分の記録動作が終了すると再びステップS1701に戻り、現在のドットカウント値の確認を行う。
【0068】
本実施形態において、特別回復シーケンス用の閾値βの値は5×1010、通常回復シーケンス用の閾値αの値は1×1010としている。すなわち、通常回復シーケンスが4回行われた後に、特別回復シーケンスが1回行われることになる。特別回復シーケンスは「こげ」を剥離する効果が強い一方でヒータ表面を浸食する作用も確認されており、「こげ」堆積の少ない状態であまり頻繁に特別回復シーケンスを実行すると、ヒータの寿命が低下する懸念が生じるからである。但し、閾値の上記値は本発明を限定するものではなく、閾値の値は記録ヘッドのノズル数やインク毎の「こげ」の発生状況などに応じて、適切に定められればよい。
【0069】
なお、以上説明したフローチャートは、1つ(1色)の記録ヘッドに対応する動作として説明したが、複数の記録ヘッドにおいて同様の工程を適用することも出来る。また、上記例は先に例示したイエローインクに適切な回復方法であったが、記録ヘッドやインク色ごとに、閾値、駆動周波数、駆動回数およびサイクルの繰り返し回数などが、それぞれ適切に定められ、独立して制御されていても良い。
【0070】
以上説明したように本実施形態によれば、通常の記録よりも高い値のエネルギによる予備吐出を、高周波と低周波で繰り返すことにより、ヒータ表面に堆積した「こげ」を効率的に剥離し、記録を重ねることによって生じる吐出速度の低下を極力抑制している。
【0071】
本発明者らは、いくつもの層が堆積して成る「こげ」の剥離動作中においては、層の状態も動作経過に応じて変化するので、これらを剥離するに適切な吐出周波数(駆動周波数)も、時々によって変化することに着目した。よって、特許文献3のように、予備吐出動作のために複数の周波数を用意するのみではなく、複数の周波数による駆動をサイクリックに複数回繰り返すことにより、「こげ」剥離の確実性を増加させることが出来ると判断し、本発明に至った。
【0072】
なお、上記実施形態では、図13で説明したフローチャートにおいて、1ページ単位でドットカウント値の確認を行う内容で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。記録ヘッドのノズル数や、記録媒体のサイズ、あるいは「こげ」の発生状況などに応じて、ドットカウント値を確認する頻度は調整することが出来る。
【0073】
また、特別回復シーケンスにおいては、高周波の予備吐出をまず実行した後に、低周波の予備吐出を実行し、このサイクルを3回繰り返す工程で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。低周波の予備吐出から開始されてもよいし、3回以外の繰り返し回数であってもよい。更に、高周波の吐出と低周波の吐出が完全に同じ回数だけ行われなくとも、異なる周波数の予備吐出の繰り返しが複数回実行されれば、本発明の範疇に含まれる。
【0074】
また、上記回復シーケンスでは、予備吐出動作のためのシーケンスとして図13のフローチャートを用いて説明したが、無論、記録ヘッドの別の回復処理として、吸引回復やワイピング動作などが併用して行われていても良い。
【0075】
更に、以上説明したインクジェット記録装置では、顔料インクを用いて説明してきたが、本発明は顔料インクに対してのみ効果が現れるわけではない。例えば、染料を含有するインクを用いる場合であっても、あるいは色材を含有しない処理液を吐出する場合であっても、ヒータ上に「こげ」が堆積する傾向を有する記録ヘッドであれば、本発明は有効に適用できる。
【0076】
また、以上では4色のインクを用いて画像を形成するインクジェット記録装置について説明したが、無論本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
図14は、1色分(例えばブラック)のインクのみを吐出する記録ヘッドユニット70の例を説明するための斜視図である。図において、記録ヘッドユニット70の中には、例えば既にブラックインクが充填されているインク吸収体が収納されており、これによりインク収容部が画成されている。インク吸収体中のインクは、記録ヘッド部71へ導かれ、複数のノズルからからインク滴として吐出する。インク吸収体の材料としては、例えばポリウレタンを用いることができる。72は記録ヘッドユニット内部を大気に連通させるための大気連通口である。このような記録ヘッドユニット70は、上記実施形態で説明した記録ヘッド65に変えてキャリッジ66に着脱可能とし、記録モードに応じてこれら記録ヘッドユニットを交換する形態であってもよい。
【0078】
また、以上説明した実施形態では、インクを供給するタンクが記録ヘッドと一体的に形成されている例で説明したが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。以下に、本発明のインクジェット記録装置に適用可能な他のインク供給方式についていくつか例示する。
【0079】
図15は、記録ヘッドとインクタンクとが別体で形成され、両者がチューブによって連結される構成の、インクタンクの一例を示した図である。図において、45はインクタンクの筺体であり、内部には記録ヘッドに供給するインクを収容したインク収容部40と廃インク吸収体44が備えられている。インク収容部40は例えば袋状であり、インクとの接触面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。インク収容部40の端部にはゴム製の栓42が設けられており、連結用のチューブ46の先端に備えられた中空針47を挿入することによりインク袋40中のインクがヘッドに供給可能となる。
【0080】
一方、記録ヘッドの吸引回復処理や、予備吐出によって回収された廃インクは、不図示の廃インクチューブを介して、再びインクタンクに収容される。回収された廃インクは、廃インク吸収体44に吸収される。
【0081】
本例の場合、インクタンクは記録ヘッドの移動に伴わず、記録装置の底部などに固定されている。連結されたチューブが記録ヘッドの移動に追従することによって、記録中でも記録ヘッドへのインク供給や廃インクの収容が可能となっている。
【0082】
図16は、互いに別体でありながら、キャリッジに搭載された記録ヘッドに対し着脱可能なインクタンクの一例を示した図である。図において、インクタンクカートリッジ1401は、ブラックインクを収容したブラックインクの収容部1405と、カラーインクを収容したカラーインクの収容部1403を備えている。
【0083】
また、図17は図16で説明したインクタンクカートリッジ1401を記録ヘッド1501に装着する様子を示した図である。記録時、インクタンクカートリッジ1401は記録ヘッド1501に装着された状態でキャリッジに搭載され、記録に伴って消費されていくインクを記録ヘッド1501に供給する。インクタンクカートリッジ1401内のインクが空になると、インクタンクカートリッジ1401は記録ヘッドから外され、新しいものと交換される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】サーマルインクジェット方式における記録素子の構成を説明するための模式図である。
【図2】(a)および(b)は、ノズルにおける吐出動作工程を説明するための模式図である。
【図3】吐出を繰り返すうちに変化していく吐出速度の様子をグラフとして例示した図である。
【図4】本発明の実施形態に適用するインクジェット記録装置の機構を説明するための構成図である。
【図5】本発明の実施形態に適用する記録ヘッドユニットの構成を説明するための図である。
【図6】記録ヘッドを吐出方向から観察した図である。
【図7】本発明の実施形態で適用する記録ヘッドの概略構成を説明するための模式図である。
【図8】記録ヘッドの1つのノズルの構成を説明するための断面図である。
【図9】図8をA−Bラインで切断した断面図である。
【図10】電気熱変換体に付与するエネルギとインク液滴の吐出速度との関係を示した図である。
【図11】パターンA〜パターンGの予備吐出を実行する過程において、記録ヘッドの吐出速度を測定した結果を説明するための図である。
【図12】(a)〜(d)は、ヒータに堆積する「こげ」と、これらが剥離する状態を説明するための模式図である。
【図13】本発明の実施形態において回復シーケンスの工程を説明するためのフローチャートである。
【図14】1色分のインクを吐出する記録ヘッドユニットの例を説明するための斜視図である。
【図15】記録ヘッドとインクタンクとが別体で形成され、両者がチューブによって連結される構成の、インクタンクの一例を示した図である。
【図16】互いに別体でありながら、キャリッジに搭載された記録ヘッドに対し着脱可能なインクタンクの一例を示した図である。
【図17】図16で説明したインクタンクカートリッジを記録ヘッドに装着する様子を示した図である。
【図18】本発明の実施形態に適用するインクジェット記録装置の制御系の構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
【0085】
14 インク流路
15 ヒータボード
17 アルミニウム
18 発熱抵抗層
19 蓄熱層
20 基板
21 インク
22 吐出オリフィス
23 メニスカス
24 インク滴
25 記録媒体
27 ガラス板
45 インクタンク筐体
42 栓
44 廃インク吸収体
46 チューブ
47 針
51 記録媒体供給部
52 送りローラ
53 排出ローラ
61 ブレード
62 キャップ
63 インク吸収体
64 吐出回復部
65 記録ヘッドユニット
66 キャリッジ
67 ガイド軸
68 モータ
69 ベルト
70 記録ユニット
71 ヘッド部
72 大気連通口
1101 電気熱変換体(ヒータ)
1102 流路壁
1103 インク
1201 泡
1203 インク滴
1204 付着力の弱いこげ
1205 付着力の強いこげ
1401 インクタンクカートリッジ
1403 カラーインクの収容部
1405 ブラックインクの収容部
1501 記録ヘッド
1601 インク収容部
1603 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク保持部のヒータに所定のエネルギを付与することにより前記インクを吐出させて記録を実行するインクジェット記録ヘッドの回復方法であって、
前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを第1の周波数で複数回付与する第1工程と、
前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で複数回付与する第2工程と
を有し、前記第1工程と前記第2工程を交互に実行することを特徴とするインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項2】
前記第1工程と前記第2工程においては、前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを付与することにより、記録のための吐出とは異なる吐出が実行されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項3】
前記第1工程および前記第2工程の少なくとも一方は、2回以上実行されることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項4】
前記第1の駆動周波数は前記第2の駆動周波数よりも高く、前記第1工程は前記第2工程に先立って実行されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項5】
前記第1の駆動周波数は1000Hz以上で、前記第2の駆動周波数は1000Hz以下であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項6】
前記第1の駆動周波数は前記第2の駆動周波数よりも低く、前記第1工程は前記第2工程に先立って実行されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項7】
前記第1の駆動周波数は1000Hz以下で、前記第2の駆動周波数は1000Hz以上であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項8】
前記ヒータに前記所定のエネルギと同等のエネルギを複数回付与する第3工程を更に有し、該第3工程が実行されるモードは、前記第1および第2工程が実行されるモードと独立して用意されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項9】
前記記録ヘッドは複数種類のインクを吐出可能であり、前記インクジェット記録ヘッドの回復方法はインク色ごとに独立に用意されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項10】
前記インクは色材として顔料を含有していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項11】
前記インクは色材として染料を含有していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドの回復方法。
【請求項12】
画像信号に基づいてインク保持部のヒータに所定のエネルギを付与することにより前記インクを吐出する記録ヘッドを用い記録を実行するインクジェット記録装置において、
前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを第1の周波数で複数回付与することにより、前記記録ヘッドに第1予備吐出動作を実行させる手段と、
前記ヒータに前記所定のエネルギよりも大きいエネルギを前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で複数回付与することにより、前記記録ヘッドに第2予備吐出動作を実行させる手段と、
前記画像信号に基づいた吐出を実行していないタイミングで、前記第1予備吐出動作と前記第2予備吐出動作を交互に実行することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2007−152668(P2007−152668A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349355(P2005−349355)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】