インクジェット記録ヘッド
【課題】クロストークを軽減し、かつ液体の吐出周波数を高めてスループットを向上させることが可能なインクジェット記録ヘッドを提供する。
【解決手段】基板2と、液体を吐出する吐出口7が形成されたオリフィスプレート3と、基板2とオリフィスプレート3との間に形成された液室5と、を有し、基板2が、吐出口7に対向する圧力発生素子6であって、通電されると液室5における圧力発生素子6に対向する部分である圧力室R内に、液体を吐出口7から吐出させる圧力を発生させる圧力発生素子6と、圧力発生素子6の周囲に設けられ、液体を液室5に供給する供給口2Aと、を備えている。
【解決手段】基板2と、液体を吐出する吐出口7が形成されたオリフィスプレート3と、基板2とオリフィスプレート3との間に形成された液室5と、を有し、基板2が、吐出口7に対向する圧力発生素子6であって、通電されると液室5における圧力発生素子6に対向する部分である圧力室R内に、液体を吐出口7から吐出させる圧力を発生させる圧力発生素子6と、圧力発生素子6の周囲に設けられ、液体を液室5に供給する供給口2Aと、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気熱変換素子やピエゾ素子等の圧力発生素子を利用して、圧力室に充填されたインクを吐出口から吐出するインクジェット記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なインクジェット記録装置では、インクタンクからインクジェット記録ヘッドにインクが供給される。インクジェット記録ヘッドは、インクを記録媒体に向けて吐出する。インクジェット記録ヘッドにおいて、インクは、供給口を通じて圧力室に充填される。圧力室に充填されたインクは、電気熱変換素子、ピエゾ素子に代表される圧力発生素子によって、吐出口から吐出される。その後、インクが供給口を通じて圧力室に再充填される、いわゆるリフィルが行われる。
【0003】
上記のようなインクジェット記録ヘッドでは、異物が圧力室へ侵入するのを抑制する技術として、1つの吐出口に対してその吐出口よりも小さい2つのインク供給口を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−71502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット記録ヘッドにおいて、インク吐出に悪影響を及ぼす現象には、異物が圧力室に侵入する現象の他に、圧力発生素子によって発生した圧力波が他の圧力室に伝播する現象、いわゆるクロストークがある。そこで、インク流路を低く(狭く)するとインクの流れが壁面からの粘性抵抗を受けて抑制されるのでクロストークが軽減する。しかし、インクの流抵抗が大きくなると、リフィル速度が低下するのでインクの吐出周波数を高めることができない。すなわち、クロストークを軽減させようとするとスループットを高めることができなくなる。
【0006】
本発明は、クロストークを軽減し、かつ液体の吐出周波数を高めてスループットを向上させることが可能なインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録ヘッドは、基板と、液体を吐出する吐出口が形成されたオリフィスプレートと、前記基板と前記オリフィスプレートとの間に形成された液室と、を有し、前記基板が、前記吐出口に対向する圧力発生素子であって、通電されると前記液室における前記圧力発生素子に対向する部分である圧力室内に、前記液体を前記吐出口から吐出させる圧力を発生させる圧力発生素子と、前記圧力発生素子の周囲に設けられ、前記液体を前記液室に供給する供給口と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロストークを軽減し、かつ液体の吐出周波数を高めてスループットを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図2】図1に示すノズル列の1つを拡大して示す平面図である。
【図3】図2に示す切断線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図2に示す切断線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図6】図5に示す切断線VI−VIに沿った断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図8】図7に示す切断線VIII−VIIIに沿った断面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図11】本発明の第6の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図12】本発明のインクジェット記録ヘッドが搭載されるインクジェット記録装置の主要な内部構成を示す斜視図である。
【図13】図12に示すインクジェット記録装置に搭載されるインクジェット記録ヘッドを下方から視た斜視図である。
【図14】図13に示すインクジェット記録ヘッドを上方から視た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の説明に先立ち、本発明のインクジェット記録ヘッドを適用可能なインクジェット記録装置の構成について図12〜図14を参照して説明する。
【0011】
(インクジェット記録装置の構成)
図12は、本発明のインクジェット記録ヘッドが搭載されるインクジェット記録装置100の主要な内部構成を示す斜視図である。図13は、図12に示すインクジェット記録装置100に搭載されるインクジェット記録ヘッド19を下方から見た斜視図である。図14は、図13に示すインクジェット記録ヘッド19を上方から見た分解斜視図である。
【0012】
図12に示すインクジェット記録装置100では、記録媒体がトレイ11にセットされ、インクジェット記録ヘッド19がキャリッジ22に搭載される。記録媒体は、インクジェット記録装置100の内部を、搬送方向B(図12参照)に搬送される。キャリッジ22は、搬送方向Bに直交する主走査方向Aに往復移動する。したがって、インクジェット記録ヘッド19も主走査方向Aに往復移動する。インクジェット記録ヘッド19には、図14に示すように複数のインクタンク24が着脱可能に取り付けられている。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。本実施形態のインクジェット記録ヘッド19には、図1に示すように、ノズル列群C1,M1,Y,M2,C2が形成されている。ノズル列群C1およびC2は、シアンインク吐出用のノズル列群である。ノズル列群C1は、2つのノズル列La,Lbを含む。ノズル列群C2は、2つのノズル列Li,Ljを含む。ノズル列群M1およびM2は、マゼンタインク吐出用のノズル列群である。ノズル列群M1は、2つのノズル列Lc,Ldを含む。ノズル列群M2は、2つのノズル列Lg,Lhを含む。ノズル列群Yは、イエローインク吐出用のノズル列群であり、2つのノズル列Le,Lfを含む。
【0014】
図2は、上述したノズル列の一つであるノズル列Ldを拡大した平面図である。図3は、図2に示す切断線III−IIIに沿った断面図である。図4は、図2に示す切断線IV−IV線に沿った断面図である。図3、4に示すように、本実施形態のインクジェット記録ヘッド19は、支持部材1と、基板2と、オリフィスプレート3とを有する。支持部材1、基板2、およびオリフィスプレート3はインクジェット記録ヘッド19における全てのノズル列に対して共通化させることができる。図1および図2は、オリフィスプレート3を取り除いた状態の平面図である。
【0015】
支持部材1と基板2との間には、各ノズル列群に対応する複数の共通液室4が形成されている。各共通液室4には、インクタンク24からインクが供給される。共通液室4に供給されたインクは、基板2を貫通する複数の供給口2Aを通じて液室5に充填される。液室5は、基板2とオリフィスプレート3との間に形成されている。本実施形態において、複数の供給口2Aが、ノズル列方向Y(図2参照)に沿って配列されている。基板2には、ノズル列方向Yに沿って配列された複数の圧力発生素子6が形成されている。本実施形態において、圧力発生素子6は、配線10(図2に参照)を通じて通電されると発熱する電気熱変換素子(ヒータ)である。オリフィスプレート3における、各圧力発生素子6と対向する位置には複数の吐出口7が形成されている。
【0016】
吐出口列群M1において、ノズル列Lc,Ldのそれぞれには複数の圧力発生素子6および吐出口7が所定のピッチPで配列されている(図1参照)。さらに、ノズル列Lcの圧力発生素子6および吐出口7と、ノズル列Ldの圧力発生素子6および吐出口7は、半ピッチ(P/2)ずらされている(図1参照)。したがって、ノズル列Lc,Ldのそれぞれにおける吐出口7のピッチPの2倍の解像度で画像を記録することができる。本実施形態ではノズル列Lc,Ldのそれぞれにおいて、複数の供給口2Aは、圧力発生素子6および吐出口7と同じピッチPで配列され、圧力発生素子6に隣接して交互に位置している。他の吐出口列群C1,Y,M2,C2についても同様である。
【0017】
インクジェット記録ヘッド19では、ノズル列群Yを中心にノズル列群C1およびノズル列群C2が左右対称に位置し、ノズル列群M1およびM2が左右対称に位置することによって、いわゆる双方向記録が可能となっている。これにより、インクジェット記録ヘッド19の往復移動時(図1に示す矢印A1,A2参照)にイエロー、シアン、およびマゼンタのインクを同じ順序で吐出して、色ムラの軽減された高品位の画像を記録することができる。ノズル列群C1とC2の間において、それらの圧力発生素子6と吐出口7はピッチPの1/4(P/4)ずつずれている。同様に、ノズル列群M1とM2の間において、それらの圧力発生素子6と吐出口7はピッチPの1/4(P/4)ずつずれている。
【0018】
液室5において、圧力発生素子6および吐出口7に対向する部分は圧力室Rとして機能する。すなわち液室5は、互いに連通した複数の圧力室5で構成されている。各圧力室Rには、共通液室4から供給口2Aを通じてインクが充填される。本実施形態では、液室5における各圧力室Rの周囲には複数のノズルフィルター8が設けられている。各ノズルフィルター8は、柱状体である。ノズルフィルター8の開口幅に相当する各柱状体の隙間S(図1参照)は、各吐出口7の口径D(図3参照)よりも狭い。これにより、吐出口7よりも大きい異物が圧力室内へ浸入することを防止できる。
【0019】
本実施形態では、供給口2Aは、上述したノズル列方向Yに直交するX方向の両端部が、配線10の配置に必要な幅dを残してノズル列方向Yに延びている。このような構成のインクジェット記録ヘッド19は、記録データに基づいて圧力発生素子6を発熱させて、圧力室R内のインクを発泡させることにより、その発泡エネルギーを利用して圧力室R内のインクを吐出口7から吐出させる。インク吐出後の圧力室R内には、供給口2Aを通じて共通液室4内のインクがリフィル(再充填)される。このようなインクジェット記録ヘッド19を図12に示すシリアルスキャン方式のインクジェット記録装置100に搭載した場合には、次のようにして画像を記録することができる。記録ヘッド19を主走査方向Aに移動させつつ、その吐出口7からインクを吐出させる動作と、記録媒体を搬送方向Bに搬送する動作と、を繰り返すことにより、記録媒体上に画像を記録することができる。このとき、各圧力発生素子6には2つの供給口2Aがノズル列方向Yに隣接している。そのため、その2つの供給口2Aからインクを圧力室Rに迅速にリフィルすることができる。本実施形態のようにノズル列群が2以上のノズル列で構成されている場合、圧力発生素子6にノズル列方向Yに隣接する2つの供給口2Aに加えて、圧力発生素子6にX方向に隣接する2つの供給口2Aからも圧力室R内にインクをリフィルすることができる。そのため、リフィル速度をより高めることが可能となる。したがって、より一層、インクの吐出周波数を高めてスループットを向上させることができる。
【0020】
特に、本実施形態では、2つの供給口2Aが、配線10の配置箇所を除いて圧力発生素子6の四方を囲っていることにより、インクを圧力室Rに迅速にリフィルできる。すなわち、圧力発生素子6上で発生するインクの発泡を利用して圧力室R内のインクを吐出させた後、その圧力発生素子6の四方を断続的に囲う2つの供給口2Aから圧力室Rにインクをより迅速に再充填できる。さらに、圧力発生素子6上に発生した気泡の圧力は、供給口2Aに効率的に吸収される。したがって、クロストークを軽減することができる。本実施形態のようにノズル列群が2つのノズル列で構成されている場合、圧力発生素子6にノズル列方向Yに隣接する2つの供給口2Aの両端部と、圧力発生素子6にX方向に隣接する供給口2Aとに圧力室R内の気泡の圧力を吸収させることが可能となる。したがって、ノズル列方向Yに作用するクロストークのみならず、X方向に作用するクロストークも軽減させることが可能となる。本実施形態のインクジェット記録ヘッド19によれば、リフィル速度の向上とクロストークの軽減といった、一般的に相反する課題に対して、両立させることが可能となる。
【0021】
さらに、本実施形態のインクジェット記録ヘッド19によれば、供給口2Aから入ったゴミなどの異物は、ノズルフィルター8によって圧力室R内への侵入が防止される。そのため、インクの適正な吐出状態が安定的に保たれる。また、ノズル列方向Yに隣接する2つの圧力室Rの間に供給口2Aが位置するため、供給口2Aは、それら2つの圧力室Rによって共有される。そのため、1つの圧力室Rに対して複数の供給口2Aを個別に備えた構成に比して、基板2を小さくすることができる。その結果、インクジェット記録ヘッド19の小型化を図ることも可能となる。
【0022】
上述したように、インクの吐出周波数を高めてスループットを向上させ、かつ圧力室R内で発生した圧力を供給口2Aにて効率よく吸収して、クロストークを軽減することにより、高品位の画像を高速に記録することが可能となる。しかも、図1に示すようにノズル列群を2つのノズル列によって構成することにより、高解像度の画像を双方向記録することが可能となる。
【0023】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。図6は、図5に示す切断線VI―VIに沿った断面図である。前述した実施形態
のインクジェット記録ヘッドと同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図5の平面図は、図6に示すオリフィスプレート3を取り除いた状態を示す。
【0024】
本実施形態では、基板2とオリフィスプレート3との間に形成された液室5(圧力室R)の高さmhが吐出口7の口径Dよりも低く、かつノズルフィルター8が設けられていない。液室5(圧力室R)の高さmhが吐出口7の口径Dよりも低いため、吐出口7よりも大きい異物は液室5に入らず、圧力室R内への異物の侵入が防止される。本実施形態のインクジェット記録ヘッドでは、圧力室Rの高さmhが第1の実施形態に比べ低いが、ノズルフィルター8が設けられていない。そのため、インクの流抵抗が第1の実施形態に比べ大きくならないので、第1の実施形態と同様に高い周波数でインクを吐出することが可能となる。
【0025】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部構成を示す平面図である。図8は、図7に示す切断線VIII−VIIIに沿った断面図である。以下、上述し
た第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドと同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図7の平面図は、図8に示すオリフィスプレート3を取り除いた状態を示す。
【0026】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドには、液室5に一対の流路壁9が設けられている。一対の流路壁9は、供給口2Aの外側から圧力室RをX方向に挟み、オリフィスプレート3を支持する。各流路壁9はノズル列方向Yに略平行に延びている。X方向における流路壁9の間隔Gは、供給口2AのX方向の幅Wx+100μm程度以下である(図7参照)。流路壁9は、供給口の外側に位置しているため、供給口2Aから圧力室Rへのリフィルを阻害することなく、クロストークを軽減できる。この結果、前述した実施形態と同様に、高いインク吐出周波数を維持しながら、圧力室R間のクロストークを低減することができる。さらに、オリフィスプレート3の強度を上げることが可能となる。
【0027】
本実施形態では、流路壁9はノズル列方向Yに不連続に延びた形状になっているが、ノズル列全体に渡って一体化した形状であっても同様の効果が得られる。
【0028】
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。前述した実施形態のインクジェット記録ヘッドと同様の構成要素については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0029】
図9(a)に示すインクジェット記録ヘッドでは、配線10が圧力発生素子6の中心以外から延び、かつ配線10のレイアウトが、ノズル列方向Yに関して交互に異なっている。このような配線レイアウトに対応するため供給口2Aは、T字状に形成され、ノズル列方向Yに関して交互に逆向きに配置されている。
【0030】
図9(b)に示すインクジェット記録ヘッドでは、配線10が圧力発生素子6の中心以外から延び、かつ配線10のレイアウトが同一になっている。このような配線レイアウトに対応するため供給口2Aは、X方向の両端部がノズル列方向Yに互いに反対に延びたような形状となっている。
【0031】
図9(c)に示すインクジェット記録ヘッドでは、配線10のレイアウトが圧力発生素子6からノズル列方向Yに延びて、その後X方向に屈折した形状となっている。このような配線レイアウトに対応するため供給口2Aは、図9(b)に示す供給口2Aに比べ中心部が狭い形状となっている。
【0032】
図9(a)〜(c)に示すインクジェット記録ヘッドはノズルフィルター8を備えていない。しかし、ノズルフィルター8を備えていても同様の効果が得られる。
【0033】
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部構成を示す平面図である。前述した実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0034】
図10(a)、(b)に示すインクジェット記録ヘッドでは、櫛状に形成された供給口2Aが、各圧力発生素子6の三方を連続して囲む構成となっている。図10(c)に示すインクジェット記録ヘッドでは、1つの供給口2Aが各圧力発生素子6の三方を連続して囲み、残り一方を断続的に囲んだ構成となっている。図10(a)〜(c)に示すインクジェット記録ヘッドでは、配線10(不図示)は、各圧力発生素子6の周囲のうち供給口2Aで囲まれてない部分から延びている。
【0035】
図10(a)〜(c)に示すインクジェット記録ヘッドによれば、供給口2Aの平面積が他の実施形態に比べ広くなっているので、インクの流抵抗が小さくなる。よって、リフィル速度を高めてインク吐出周波数を高めることが可能となる。
【0036】
図10(a)〜(c)に示すインクジェット記録ヘッドはノズルフィルター8を備えていない。しかし、ノズルフィルター8を備えていても同様の効果が得られる。
【0037】
(第6の実施形態)
図11は、本発明の第6の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。前述した実施形態のインクジェット記録ヘッドと同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
図11(a)、(b)に示すインクジェット記録ヘッドでは、1つの圧力発生素子6の四方を、4つの供給口2Aで断続的に囲む構成となっている。これにより、他の実施形態に比べ配線10を通せる部分が増え、配線レイアウトの自由度が増す。
【0039】
上述した実施形態では、圧力発生素子6が電気熱変換素子(ヒーター)であったが、圧力発生素子であってもよい。特に圧力発生素子6が薄膜ピエゾ素子である場合、電気熱変換素子に近い高速駆動が可能となる。
【0040】
さらに、上述した実施形態では吐出媒体がインクであるが、その他の液体であってもよい。特に産業用用途で用いられる吐出媒体はインクジェット用インクより高粘度の液体が多く、リフィル周波数が低くなる傾向がある。従ってこのような高粘度の液体について本発明のインクジェット記録ヘッドを利用することにより、リフィル周波数が低いという問題を解決することができる。
【0041】
更に本発明のインクジェット記録ヘッドは、供給口2Aを通してインクが供給される複数の圧力室Rがノズル列方向Yに配列され、各圧力室Rは、充填された液体を圧力発生素子6を利用して吐出口7から吐出可能であればよい。したがって、本発明は、このような構成のインクジェット記録ヘッドに対して、広く適用することができる。例えば、前述したようなシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドの他、いわゆるフルラインタイプのインクジェット記録ヘッドに用いられる記録ヘッドに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
2 基板
2A 供給口
3 オリフィスプレート
5 液室
6 圧力発生素子
7 吐出口
R 圧力室
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気熱変換素子やピエゾ素子等の圧力発生素子を利用して、圧力室に充填されたインクを吐出口から吐出するインクジェット記録ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なインクジェット記録装置では、インクタンクからインクジェット記録ヘッドにインクが供給される。インクジェット記録ヘッドは、インクを記録媒体に向けて吐出する。インクジェット記録ヘッドにおいて、インクは、供給口を通じて圧力室に充填される。圧力室に充填されたインクは、電気熱変換素子、ピエゾ素子に代表される圧力発生素子によって、吐出口から吐出される。その後、インクが供給口を通じて圧力室に再充填される、いわゆるリフィルが行われる。
【0003】
上記のようなインクジェット記録ヘッドでは、異物が圧力室へ侵入するのを抑制する技術として、1つの吐出口に対してその吐出口よりも小さい2つのインク供給口を形成する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−71502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット記録ヘッドにおいて、インク吐出に悪影響を及ぼす現象には、異物が圧力室に侵入する現象の他に、圧力発生素子によって発生した圧力波が他の圧力室に伝播する現象、いわゆるクロストークがある。そこで、インク流路を低く(狭く)するとインクの流れが壁面からの粘性抵抗を受けて抑制されるのでクロストークが軽減する。しかし、インクの流抵抗が大きくなると、リフィル速度が低下するのでインクの吐出周波数を高めることができない。すなわち、クロストークを軽減させようとするとスループットを高めることができなくなる。
【0006】
本発明は、クロストークを軽減し、かつ液体の吐出周波数を高めてスループットを向上させることが可能なインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のインクジェット記録ヘッドは、基板と、液体を吐出する吐出口が形成されたオリフィスプレートと、前記基板と前記オリフィスプレートとの間に形成された液室と、を有し、前記基板が、前記吐出口に対向する圧力発生素子であって、通電されると前記液室における前記圧力発生素子に対向する部分である圧力室内に、前記液体を前記吐出口から吐出させる圧力を発生させる圧力発生素子と、前記圧力発生素子の周囲に設けられ、前記液体を前記液室に供給する供給口と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロストークを軽減し、かつ液体の吐出周波数を高めてスループットを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図2】図1に示すノズル列の1つを拡大して示す平面図である。
【図3】図2に示す切断線III−IIIに沿った断面図である。
【図4】図2に示す切断線IV−IVに沿った断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図6】図5に示す切断線VI−VIに沿った断面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図8】図7に示す切断線VIII−VIIIに沿った断面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図11】本発明の第6の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。
【図12】本発明のインクジェット記録ヘッドが搭載されるインクジェット記録装置の主要な内部構成を示す斜視図である。
【図13】図12に示すインクジェット記録装置に搭載されるインクジェット記録ヘッドを下方から視た斜視図である。
【図14】図13に示すインクジェット記録ヘッドを上方から視た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の説明に先立ち、本発明のインクジェット記録ヘッドを適用可能なインクジェット記録装置の構成について図12〜図14を参照して説明する。
【0011】
(インクジェット記録装置の構成)
図12は、本発明のインクジェット記録ヘッドが搭載されるインクジェット記録装置100の主要な内部構成を示す斜視図である。図13は、図12に示すインクジェット記録装置100に搭載されるインクジェット記録ヘッド19を下方から見た斜視図である。図14は、図13に示すインクジェット記録ヘッド19を上方から見た分解斜視図である。
【0012】
図12に示すインクジェット記録装置100では、記録媒体がトレイ11にセットされ、インクジェット記録ヘッド19がキャリッジ22に搭載される。記録媒体は、インクジェット記録装置100の内部を、搬送方向B(図12参照)に搬送される。キャリッジ22は、搬送方向Bに直交する主走査方向Aに往復移動する。したがって、インクジェット記録ヘッド19も主走査方向Aに往復移動する。インクジェット記録ヘッド19には、図14に示すように複数のインクタンク24が着脱可能に取り付けられている。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。本実施形態のインクジェット記録ヘッド19には、図1に示すように、ノズル列群C1,M1,Y,M2,C2が形成されている。ノズル列群C1およびC2は、シアンインク吐出用のノズル列群である。ノズル列群C1は、2つのノズル列La,Lbを含む。ノズル列群C2は、2つのノズル列Li,Ljを含む。ノズル列群M1およびM2は、マゼンタインク吐出用のノズル列群である。ノズル列群M1は、2つのノズル列Lc,Ldを含む。ノズル列群M2は、2つのノズル列Lg,Lhを含む。ノズル列群Yは、イエローインク吐出用のノズル列群であり、2つのノズル列Le,Lfを含む。
【0014】
図2は、上述したノズル列の一つであるノズル列Ldを拡大した平面図である。図3は、図2に示す切断線III−IIIに沿った断面図である。図4は、図2に示す切断線IV−IV線に沿った断面図である。図3、4に示すように、本実施形態のインクジェット記録ヘッド19は、支持部材1と、基板2と、オリフィスプレート3とを有する。支持部材1、基板2、およびオリフィスプレート3はインクジェット記録ヘッド19における全てのノズル列に対して共通化させることができる。図1および図2は、オリフィスプレート3を取り除いた状態の平面図である。
【0015】
支持部材1と基板2との間には、各ノズル列群に対応する複数の共通液室4が形成されている。各共通液室4には、インクタンク24からインクが供給される。共通液室4に供給されたインクは、基板2を貫通する複数の供給口2Aを通じて液室5に充填される。液室5は、基板2とオリフィスプレート3との間に形成されている。本実施形態において、複数の供給口2Aが、ノズル列方向Y(図2参照)に沿って配列されている。基板2には、ノズル列方向Yに沿って配列された複数の圧力発生素子6が形成されている。本実施形態において、圧力発生素子6は、配線10(図2に参照)を通じて通電されると発熱する電気熱変換素子(ヒータ)である。オリフィスプレート3における、各圧力発生素子6と対向する位置には複数の吐出口7が形成されている。
【0016】
吐出口列群M1において、ノズル列Lc,Ldのそれぞれには複数の圧力発生素子6および吐出口7が所定のピッチPで配列されている(図1参照)。さらに、ノズル列Lcの圧力発生素子6および吐出口7と、ノズル列Ldの圧力発生素子6および吐出口7は、半ピッチ(P/2)ずらされている(図1参照)。したがって、ノズル列Lc,Ldのそれぞれにおける吐出口7のピッチPの2倍の解像度で画像を記録することができる。本実施形態ではノズル列Lc,Ldのそれぞれにおいて、複数の供給口2Aは、圧力発生素子6および吐出口7と同じピッチPで配列され、圧力発生素子6に隣接して交互に位置している。他の吐出口列群C1,Y,M2,C2についても同様である。
【0017】
インクジェット記録ヘッド19では、ノズル列群Yを中心にノズル列群C1およびノズル列群C2が左右対称に位置し、ノズル列群M1およびM2が左右対称に位置することによって、いわゆる双方向記録が可能となっている。これにより、インクジェット記録ヘッド19の往復移動時(図1に示す矢印A1,A2参照)にイエロー、シアン、およびマゼンタのインクを同じ順序で吐出して、色ムラの軽減された高品位の画像を記録することができる。ノズル列群C1とC2の間において、それらの圧力発生素子6と吐出口7はピッチPの1/4(P/4)ずつずれている。同様に、ノズル列群M1とM2の間において、それらの圧力発生素子6と吐出口7はピッチPの1/4(P/4)ずつずれている。
【0018】
液室5において、圧力発生素子6および吐出口7に対向する部分は圧力室Rとして機能する。すなわち液室5は、互いに連通した複数の圧力室5で構成されている。各圧力室Rには、共通液室4から供給口2Aを通じてインクが充填される。本実施形態では、液室5における各圧力室Rの周囲には複数のノズルフィルター8が設けられている。各ノズルフィルター8は、柱状体である。ノズルフィルター8の開口幅に相当する各柱状体の隙間S(図1参照)は、各吐出口7の口径D(図3参照)よりも狭い。これにより、吐出口7よりも大きい異物が圧力室内へ浸入することを防止できる。
【0019】
本実施形態では、供給口2Aは、上述したノズル列方向Yに直交するX方向の両端部が、配線10の配置に必要な幅dを残してノズル列方向Yに延びている。このような構成のインクジェット記録ヘッド19は、記録データに基づいて圧力発生素子6を発熱させて、圧力室R内のインクを発泡させることにより、その発泡エネルギーを利用して圧力室R内のインクを吐出口7から吐出させる。インク吐出後の圧力室R内には、供給口2Aを通じて共通液室4内のインクがリフィル(再充填)される。このようなインクジェット記録ヘッド19を図12に示すシリアルスキャン方式のインクジェット記録装置100に搭載した場合には、次のようにして画像を記録することができる。記録ヘッド19を主走査方向Aに移動させつつ、その吐出口7からインクを吐出させる動作と、記録媒体を搬送方向Bに搬送する動作と、を繰り返すことにより、記録媒体上に画像を記録することができる。このとき、各圧力発生素子6には2つの供給口2Aがノズル列方向Yに隣接している。そのため、その2つの供給口2Aからインクを圧力室Rに迅速にリフィルすることができる。本実施形態のようにノズル列群が2以上のノズル列で構成されている場合、圧力発生素子6にノズル列方向Yに隣接する2つの供給口2Aに加えて、圧力発生素子6にX方向に隣接する2つの供給口2Aからも圧力室R内にインクをリフィルすることができる。そのため、リフィル速度をより高めることが可能となる。したがって、より一層、インクの吐出周波数を高めてスループットを向上させることができる。
【0020】
特に、本実施形態では、2つの供給口2Aが、配線10の配置箇所を除いて圧力発生素子6の四方を囲っていることにより、インクを圧力室Rに迅速にリフィルできる。すなわち、圧力発生素子6上で発生するインクの発泡を利用して圧力室R内のインクを吐出させた後、その圧力発生素子6の四方を断続的に囲う2つの供給口2Aから圧力室Rにインクをより迅速に再充填できる。さらに、圧力発生素子6上に発生した気泡の圧力は、供給口2Aに効率的に吸収される。したがって、クロストークを軽減することができる。本実施形態のようにノズル列群が2つのノズル列で構成されている場合、圧力発生素子6にノズル列方向Yに隣接する2つの供給口2Aの両端部と、圧力発生素子6にX方向に隣接する供給口2Aとに圧力室R内の気泡の圧力を吸収させることが可能となる。したがって、ノズル列方向Yに作用するクロストークのみならず、X方向に作用するクロストークも軽減させることが可能となる。本実施形態のインクジェット記録ヘッド19によれば、リフィル速度の向上とクロストークの軽減といった、一般的に相反する課題に対して、両立させることが可能となる。
【0021】
さらに、本実施形態のインクジェット記録ヘッド19によれば、供給口2Aから入ったゴミなどの異物は、ノズルフィルター8によって圧力室R内への侵入が防止される。そのため、インクの適正な吐出状態が安定的に保たれる。また、ノズル列方向Yに隣接する2つの圧力室Rの間に供給口2Aが位置するため、供給口2Aは、それら2つの圧力室Rによって共有される。そのため、1つの圧力室Rに対して複数の供給口2Aを個別に備えた構成に比して、基板2を小さくすることができる。その結果、インクジェット記録ヘッド19の小型化を図ることも可能となる。
【0022】
上述したように、インクの吐出周波数を高めてスループットを向上させ、かつ圧力室R内で発生した圧力を供給口2Aにて効率よく吸収して、クロストークを軽減することにより、高品位の画像を高速に記録することが可能となる。しかも、図1に示すようにノズル列群を2つのノズル列によって構成することにより、高解像度の画像を双方向記録することが可能となる。
【0023】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。図6は、図5に示す切断線VI―VIに沿った断面図である。前述した実施形態
のインクジェット記録ヘッドと同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図5の平面図は、図6に示すオリフィスプレート3を取り除いた状態を示す。
【0024】
本実施形態では、基板2とオリフィスプレート3との間に形成された液室5(圧力室R)の高さmhが吐出口7の口径Dよりも低く、かつノズルフィルター8が設けられていない。液室5(圧力室R)の高さmhが吐出口7の口径Dよりも低いため、吐出口7よりも大きい異物は液室5に入らず、圧力室R内への異物の侵入が防止される。本実施形態のインクジェット記録ヘッドでは、圧力室Rの高さmhが第1の実施形態に比べ低いが、ノズルフィルター8が設けられていない。そのため、インクの流抵抗が第1の実施形態に比べ大きくならないので、第1の実施形態と同様に高い周波数でインクを吐出することが可能となる。
【0025】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部構成を示す平面図である。図8は、図7に示す切断線VIII−VIIIに沿った断面図である。以下、上述し
た第1の実施形態のインクジェット記録ヘッドと同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図7の平面図は、図8に示すオリフィスプレート3を取り除いた状態を示す。
【0026】
本実施形態のインクジェット記録ヘッドには、液室5に一対の流路壁9が設けられている。一対の流路壁9は、供給口2Aの外側から圧力室RをX方向に挟み、オリフィスプレート3を支持する。各流路壁9はノズル列方向Yに略平行に延びている。X方向における流路壁9の間隔Gは、供給口2AのX方向の幅Wx+100μm程度以下である(図7参照)。流路壁9は、供給口の外側に位置しているため、供給口2Aから圧力室Rへのリフィルを阻害することなく、クロストークを軽減できる。この結果、前述した実施形態と同様に、高いインク吐出周波数を維持しながら、圧力室R間のクロストークを低減することができる。さらに、オリフィスプレート3の強度を上げることが可能となる。
【0027】
本実施形態では、流路壁9はノズル列方向Yに不連続に延びた形状になっているが、ノズル列全体に渡って一体化した形状であっても同様の効果が得られる。
【0028】
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。前述した実施形態のインクジェット記録ヘッドと同様の構成要素については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0029】
図9(a)に示すインクジェット記録ヘッドでは、配線10が圧力発生素子6の中心以外から延び、かつ配線10のレイアウトが、ノズル列方向Yに関して交互に異なっている。このような配線レイアウトに対応するため供給口2Aは、T字状に形成され、ノズル列方向Yに関して交互に逆向きに配置されている。
【0030】
図9(b)に示すインクジェット記録ヘッドでは、配線10が圧力発生素子6の中心以外から延び、かつ配線10のレイアウトが同一になっている。このような配線レイアウトに対応するため供給口2Aは、X方向の両端部がノズル列方向Yに互いに反対に延びたような形状となっている。
【0031】
図9(c)に示すインクジェット記録ヘッドでは、配線10のレイアウトが圧力発生素子6からノズル列方向Yに延びて、その後X方向に屈折した形状となっている。このような配線レイアウトに対応するため供給口2Aは、図9(b)に示す供給口2Aに比べ中心部が狭い形状となっている。
【0032】
図9(a)〜(c)に示すインクジェット記録ヘッドはノズルフィルター8を備えていない。しかし、ノズルフィルター8を備えていても同様の効果が得られる。
【0033】
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部構成を示す平面図である。前述した実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0034】
図10(a)、(b)に示すインクジェット記録ヘッドでは、櫛状に形成された供給口2Aが、各圧力発生素子6の三方を連続して囲む構成となっている。図10(c)に示すインクジェット記録ヘッドでは、1つの供給口2Aが各圧力発生素子6の三方を連続して囲み、残り一方を断続的に囲んだ構成となっている。図10(a)〜(c)に示すインクジェット記録ヘッドでは、配線10(不図示)は、各圧力発生素子6の周囲のうち供給口2Aで囲まれてない部分から延びている。
【0035】
図10(a)〜(c)に示すインクジェット記録ヘッドによれば、供給口2Aの平面積が他の実施形態に比べ広くなっているので、インクの流抵抗が小さくなる。よって、リフィル速度を高めてインク吐出周波数を高めることが可能となる。
【0036】
図10(a)〜(c)に示すインクジェット記録ヘッドはノズルフィルター8を備えていない。しかし、ノズルフィルター8を備えていても同様の効果が得られる。
【0037】
(第6の実施形態)
図11は、本発明の第6の実施形態のインクジェット記録ヘッドの要部を示す平面図である。前述した実施形態のインクジェット記録ヘッドと同様の構成要素については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
図11(a)、(b)に示すインクジェット記録ヘッドでは、1つの圧力発生素子6の四方を、4つの供給口2Aで断続的に囲む構成となっている。これにより、他の実施形態に比べ配線10を通せる部分が増え、配線レイアウトの自由度が増す。
【0039】
上述した実施形態では、圧力発生素子6が電気熱変換素子(ヒーター)であったが、圧力発生素子であってもよい。特に圧力発生素子6が薄膜ピエゾ素子である場合、電気熱変換素子に近い高速駆動が可能となる。
【0040】
さらに、上述した実施形態では吐出媒体がインクであるが、その他の液体であってもよい。特に産業用用途で用いられる吐出媒体はインクジェット用インクより高粘度の液体が多く、リフィル周波数が低くなる傾向がある。従ってこのような高粘度の液体について本発明のインクジェット記録ヘッドを利用することにより、リフィル周波数が低いという問題を解決することができる。
【0041】
更に本発明のインクジェット記録ヘッドは、供給口2Aを通してインクが供給される複数の圧力室Rがノズル列方向Yに配列され、各圧力室Rは、充填された液体を圧力発生素子6を利用して吐出口7から吐出可能であればよい。したがって、本発明は、このような構成のインクジェット記録ヘッドに対して、広く適用することができる。例えば、前述したようなシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドの他、いわゆるフルラインタイプのインクジェット記録ヘッドに用いられる記録ヘッドに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
2 基板
2A 供給口
3 オリフィスプレート
5 液室
6 圧力発生素子
7 吐出口
R 圧力室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、液体を吐出する吐出口が形成されたオリフィスプレートと、前記基板と前記オリフィスプレートとの間に形成された液室と、を有し、
前記基板が、前記吐出口に対向する圧力発生素子であって、通電されると前記液室における前記圧力発生素子に対向する部分である圧力室内に、前記液体を前記吐出口から吐出させる圧力を発生させる圧力発生素子と、前記圧力発生素子の周囲に設けられ、前記液体を前記液室に供給する供給口と、を備えている、インクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
少なくとも一つ以上の前記供給口が、前記圧力発生素子の四方を断続的に囲んでいる、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
一つの前記供給口が、前記圧力発生素子の三方を連続して囲んでいる、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記液室における前記圧力室の周囲に設けられ、互いの隙間が前記各吐出口の口径よりも狭い複数のノズルフィルターをさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記液室の高さが前記吐出口の口径よりも低い、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
前記液室における前記供給口の外側に設けられ、前記オリフィスプレートを支持する流路壁をさらに有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
同じ色の前記液体を吐出する複数の前記吐出口が、複数の列に配列されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項1】
基板と、液体を吐出する吐出口が形成されたオリフィスプレートと、前記基板と前記オリフィスプレートとの間に形成された液室と、を有し、
前記基板が、前記吐出口に対向する圧力発生素子であって、通電されると前記液室における前記圧力発生素子に対向する部分である圧力室内に、前記液体を前記吐出口から吐出させる圧力を発生させる圧力発生素子と、前記圧力発生素子の周囲に設けられ、前記液体を前記液室に供給する供給口と、を備えている、インクジェット記録ヘッド。
【請求項2】
少なくとも一つ以上の前記供給口が、前記圧力発生素子の四方を断続的に囲んでいる、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項3】
一つの前記供給口が、前記圧力発生素子の三方を連続して囲んでいる、請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記液室における前記圧力室の周囲に設けられ、互いの隙間が前記各吐出口の口径よりも狭い複数のノズルフィルターをさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項5】
前記液室の高さが前記吐出口の口径よりも低い、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項6】
前記液室における前記供給口の外側に設けられ、前記オリフィスプレートを支持する流路壁をさらに有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項7】
同じ色の前記液体を吐出する複数の前記吐出口が、複数の列に配列されている、請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録ヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−35186(P2013−35186A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172092(P2011−172092)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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