説明

インクジェット記録方法

【課題】自己分散型顔料及び樹脂粒子をそれぞれ高濃度で含むインクジェット記録用インク組成物を用いてインクジェット記録を実施する場合に、極めて良好な吐出安定性を保証するインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】インクジェット記録方法は、自己分散型顔料6重量%以上及び樹脂粒子3重量%以上を含むインクジェット記録用インク組成物を用い、更に、インク吸収材を備えた記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式記録装置は、印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成することができるため、カラー印刷を初めとする多くの印刷に使用されている。このようなインクジェット式記録装置は、インクカートリッジからインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッド、及び記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段を備え、記録ヘッドをキャリッジ上で記録用紙の幅方向に移動させながら記録用紙に対してインク滴を吐出させることによって記録が行われる。
【0003】
前記インクジェット式記録装置に搭載された記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズル開口部からインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行うので、ノズル開口部からのインク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化により、又は塵埃の付着、更にはインク流路への気泡の混入などにより、印刷不良を発生させるという問題を本来的に抱えている。
【0004】
このために、この種のインクジェット式記録装置には、非印刷時(休止時)に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段と、必要に応じてノズル形成面を払拭して清掃するワイピング部材が備えられている。
【0005】
このキャッピング手段は、印刷休止時に前記のノズル開口部のインク乾燥を防止する蓋体として機能し、記録ヘッドのノズル開口部の乾燥による目詰まりを抑制させることで、印字の再開時においての印字動作の信頼性を確保することを1つの目的としている。更に、このキャッピング手段はノズル形成面を封止した状態で、負圧発生手段としての吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口部からインクを強制的に吸引排出させてノズル開口部のインク固化による目詰まりや、インク流路内への気泡混入によるインク吐出不良を解消するクリーニング手段としての機能をも備えている。
【0006】
キャッピング手段の内部にインク吸収材を収納することによって、ノズル開口部のインク乾燥を防止する蓋体としての機能を強化することも知られている(特許文献1など)。前記のインク吸収材は、多孔質発泡体から形成されているため、ノズル形成面を封止した状態におけるキャッピング手段の内部空間を湿潤状態に維持することができる。
【0007】
こうしたインク吸収材を内部に備えたキャッピング手段の代表的な態様を図1に沿って説明する。
図1は、キャッピング手段としてのキャップ部1(断面)と、そのキャップ部1によって封止された記録ヘッド部2(部分断面)との模式的一部断面図である。キャップ部1は、キャップホルダ11と、その内部に収容された閉塞部材12と、その閉塞部材12に設けた窪みに収容されたインク吸収材13と、前記インク吸収材13を固定保持する突起部14とを含む。前記の閉塞部材12は、収容部12aと突出壁部12bとを有し、前記収容部12aは、中央部に設けた窪みに前記インク吸収材13を収容する。また、前記突出壁部12bは、その先端部12cにて記録ヘッド部2の表面22と気密的に接触し、記録ヘッド部2の表面22に設けられているノズル開口部21を含む領域の全体を4周から封止する。なお、図1の模式図においては、5つのノズル開口部21を示しており、それらの5つのノズル開口部21の全てが、閉塞部材12の突出壁部12bによって封止されている。また、閉塞部材12の突出壁部12bによって封止されている領域の外側領域22aには、ノズル開口部が設けられていない。更に、図1においては、各ノズル開口部21からインク滴が吐出される方向を矢印Aで示している。
【0008】
図1に示すようなキャッピング手段においては、多孔質発泡体からなるインク吸収材にインクを湿潤状態で保持させた状態でノズル形成面を封止することによって、キャッピング手段の内部空間を湿潤状態に維持させ、ノズル開口部のインク乾燥を防止することができる。
【0009】
一方、インクジェット式記録用インクには、水分の他に保湿剤としてグリセリンあるいはジエチレングリコールなどの多価アルコール類が一般的に混入されている。これらの多価アルコール類は、空気中の水分を吸収する性質を有しているので、これらの多価アルコール類をインク溶媒として用いることにより、インクの増粘及び固化を抑制し、主に記録ヘッドにおける微細なノズル開口の目詰まりを防止するように配慮されている。
【0010】
しかしながら、保湿剤(多価アルコール類)を含有するインクを用いるインクジェット式記録装置が、前記インク吸収材を含むキャッピング手段を備えていると、キャッピング手段は印刷実行時に開放状態となるので、時間経過と共にインク吸収材から水分が次々に蒸発するのに対して、前記保湿剤(多価アルコール類)はインク吸収材に残留する。その結果、インク吸収材に保持されているインク内の保湿剤(多価アルコール類)比率は、記録装置の使用時間の経過と共に次第に上昇する。
【0011】
このように、保湿剤組成比率が上昇した状態でインクがインク吸収材に保持されている場合に、キャッピング手段が封止状態になると、封止環境内で前記保湿剤が記録ヘッドの内部空間の水分をむしろ吸収するように作用し、記録ヘッドのノズル開口部におけるインクの乾燥を促進させることになる。すなわち、使用するインクの種類や組成に応じて、インク吸収材の利用を考慮する必要があり、インク吸収材がノズル開口部のインク乾燥を防止することも、あるいは逆に促進することもある。
【0012】
【特許文献1】特公平3−43066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、自己分散型顔料及び樹脂粒子をそれぞれ高濃度で含むインクジェット記録用インク組成物を用いて、前記キャッピング手段を備えた記録装置によって印刷を実施する場合について検討した結果、インク吸収材を備えたキャッピング手段を用いると吐出安定性が極めて良好になることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は、自己分散型顔料6重量%以上及び樹脂粒子3重量%以上を含むインクジェット記録用インク組成物を用いるインクジェット記録方法であって、
インク吸収材を備えた記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置を用いることを特徴とする、前記のインクジェット記録方法に関する。
【0015】
本発明方法の好ましい態様においては、自己分散型顔料の含有量が、6重量%〜15重量%のインク組成物を用いる。
また、本発明方法の別の好ましい態様においては、樹脂粒子の含有量が、3重量%〜15重量%のインク組成物を用いる。
本発明方法の更に別の好ましい態様においては、インク吸収材が、多孔質発泡体又は繊維質多孔体からなる。
本発明は、前記のインクジェット記録方法によって形成された記録物にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明方法によれば、自己分散型顔料及び樹脂粒子をそれぞれ高濃度で含むインクジェット記録用インク組成物を用いてインクジェット記録を実施する場合に、インク吸収材を備えたキャッピング手段を用いると、極めて良好な吐出安定性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明方法で使用する自己分散型顔料は、顔料の表面に−COOH、−CHO、−OH、−SOH及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上等の官能基(分散性付与基)を有するように処理された顔料であって、分散剤を別途配合せずとも、水系インク組成物中で均一に分散し得るものである。尚、ここでいう「分散」とは、自己分散型顔料が分散剤なしに水中に安定に存在している状態をいい、分散している状態のもののみならず、溶解している状態のものも含むものとする。自己分散型顔料が配合されたインク組成物は、自己分散型顔料以外の自己分散型ではない顔料及び分散剤の配合された通常のインク組成物と比べて、分散安定性が高く、また、インク組成物の粘度が適度なものとなるので、顔料をより多く含有させることが可能となり、特に普通紙に対して発色性に優れた文字や図形等の画像を形成することができる。更に、自己分散型顔料が配合されたインク組成物は、印字品質の向上に有効な浸透剤(後述する)を配合しても流動性の低下を生じることがないので、該浸透剤を併用することにより印字品質も高められる。
【0018】
自己分散型顔料を形成し得る顔料としては、通常のインクジェット記録用インク組成物におけるものと同様のものが用いられ、例えば、カーボンブラック、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等の有機顔料、チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック系、ベンガラ、朱、カドミウム赤、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンクロメート等の無機顔料を挙げることができる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能なら、何れも使用できる。これらのうち、特にアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、キナクリドン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料、ジオキサジン顔料、及びアントラキノン顔料系を用いることが好ましい。尚、「顔料」とは、水や溶剤、油等に通常不溶の粒子状の固体をいう。
【0019】
自己分散型顔料を調製するには、真空プラズマ等の物理的処理や化学的処理により、官能基又は官能基を含んだ分子を顔料の表面に配位させたり、グラフト等の化学的結合をさせること等によって得ることができる。例えば、特開平8−3498号公報に記載の方法によって得ることができる。また、自己分散型顔料としては、市販品を利用することも可能であり、好ましい例としては、オリエント化学工業(株)製の「マイクロジェットCW1」、キャボット社製の「CAB−O−JET 200」、又は「CAB−O−JET 300」等を挙げることができる。
【0020】
自己分散型顔料は、例えば、次のようにして調製することができる。自己分散型顔料の一調製方法の例として、顔料の表面酸化処理及びスルホン化処理による態様を以下に説明する。
溶剤に顔料を添加し、これをハイスピードミキサー等で高速剪断分散するか、又はビーズミルやジェットミル等で衝撃分散してスラリー状の顔料分散液を得る。該顔料分散液をゆっくり攪拌しながら、硫黄を含む処理剤(スルファミン酸、発煙硫酸、硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、又はアミド硫酸等)を添加し、該顔料分散液を60〜200℃に加熱処理して、前記顔料表面に前記分散性付与基を導入する。該顔料分散液から溶剤を除去した後、水洗、限外濾過、逆浸透、遠心分離、及び/又は濾過等を繰り返して前記硫黄を含む処理剤を取り除いて、自己分散型顔料を得る。
【0021】
また、自己分散型顔料は、インクの保存安定性の向上や、ノズルの目詰まり防止の観点から、その平均粒径が10〜300nmであることが好ましく、40〜150nmであることが更に好ましい。
【0022】
自己分散型顔料の含有量は、本発明で用いるインク組成物の全重量に対して6重量%以上であり、好ましくは6〜15重量%であり、更に好ましくは6〜10重量%である。自己分散型顔料の含有量が6重量%未満になると、充分なOD値を得ることができなくなる。自己分散型顔料の含有量が15重量%以下であると、インク組成物の安定性の点で好ましい。
【0023】
本発明方法で使用する樹脂粒子に適用することができる樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリオレフィン樹脂等を挙げることができるが、特に限定されない。これらの樹脂は、使用に際して1種又は2種以上で用いられ、複数種を用いる場合にはその少なくとも1種が、不飽和単量体の乳化重合によって得られた樹脂粒子のエマルジョン(例えば、いわゆる「アクリルエマルジョン」)の形態でインク組成物中に配合されることが好ましい。その理由は、樹脂粒子のままインク組成物中に添加しても該樹脂粒子の分散が不十分となる場合があるため、インク組成物の製造上、エマルジョンの形態が好ましいからである。また、エマルジョンとしては、インク組成物の保存安定性の観点から、アクリルエマルジョンが好ましい。
【0024】
樹脂粒子のエマルジョン(アクリルエマルジョン等)は、公知の乳化重合法により得ることができる。例えば、不飽和単量体(不飽和ビニルモノマー等)を重合開始剤、及び界面活性剤を存在させた水中において乳化重合することによって得ることができる。
【0025】
不飽和単量体としては、一般に乳化重合で使用されるアクリル酸エステル単量体類、メタクリル酸エステル単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルエステル単量体類、ビニルシアン化合物単量体類、ハロゲン化単量体類、オレフィン単量体類、又はジエン単量体類等を挙げることができる。更に、具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、及び酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物類;塩化ビニリデン、塩化ビニル等のハロゲン化単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、クロロプレン等のジエン類;ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン等のビニル単量体類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体類等を挙げることができ、これらを単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0026】
また、重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体も使用することができる。重合可能な二重結合を二つ以上有する架橋性単量体の例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジアクリレート化合物、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート等のトリアクリレート化合物、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のテトラアクリレート化合物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のヘキサアクリレート化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン等のジメタクリレート化合物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート化合物、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等を挙げることができ、これらを単独で又は二種以上を混合して使用することができる。
【0027】
また、乳化重合の際に使用される重合開始剤及び界面活性剤の他に、連鎖移動剤、更には中和剤等も常法に準じて使用してもよい。特に中和剤としては、アンモニア、無機アルカリの水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が好ましい。
【0028】
本発明方法において、樹脂粒子は、微粒子粉末としてインク組成物の他の成分と混合されてもよいが、好ましくは樹脂粒子を水媒体に分散させ、エマルジョン(ポリマーエマルジョン)の形態とした後、インク組成物の他の成分と混合されるのが好ましい。
【0029】
本発明方法で用いるインクジェット記録用インク組成物において、樹脂粒子の含有量は、前記インク組成物の全重量に対して、3重量%以上であり、好ましくは3〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。
樹脂粒子の含有量が3重量%未満になると、高OD値や充分な定着性を得ることが困難になる。樹脂粒子の含有量が15重量%以下であると、インクジェット適正物性値や信頼性(目詰まりや吐出安定性等)点で好ましい。
【0030】
樹脂粒子は、インク組成物中における分散安定性の観点から、その平均粒子径が好ましくは50〜250nm、より好ましくは60〜200nmである。また、樹脂粒子としては、単相構造及び複相構造(コアシェル型)の何れのものも使用することができる。
【0031】
樹脂粒子は、本発明方法で用いるインク組成物中に、均一なインクを調整するというインク調整の点とインク安定性の点で、エマルジョンとして配合されることが好ましい。
【0032】
本明細書において、「樹脂粒子」とは、水に不溶性の樹脂が主として水からなる分散媒中に粒子状に分散しているもの、あるいは水に不溶性の樹脂を主として水からなる分散媒中に粒子状に分散させたもの、更にはその乾燥物をも包含したものを意味する。また、本明細書において、「エマルジョン」は、ディスパージョン、ラテックス、サスペンジョンと呼ばれる固/液の分散体をも包含したものを意味するものとする。
【0033】
また、エマルジョンは、前述した自己分散型顔料の分散安定性向上の観点から、アニオン性であることが好ましい。尚、同様の観点から、表面がカチオン性の顔料(例えば、表面処理によりカチオン基で分散させたもの)を用いる場合は、エマルジョンはカチオン性であることが好ましい。
【0034】
エマルジョンは、例えば、次のようにして製造することができる。
滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、及び攪拌機を備えた反応容器に、イオン交換水100部を入れ、窒素雰囲気下、温度70℃で攪拌しながら、重合開始剤0.2部を添加する。これに、別途調製したモノマー溶液を滴下し重合反応させて、1次物質を調製する。その後、温度70℃で、該1次物質に、重合開始剤の10%水溶液2部を添加して攪拌し、更に別途調製した反応液を添加し、攪拌して重合反応させ、重合反応物を得る。該重合反応物を、中和剤で中和してpHが8〜8.5になるように調整した後、0.3μmのフィルターでろ過して粗大粒子を除去し、樹脂粒子を分散質とするエマルジョンを得る。
【0035】
重合開始剤としては、通常のラジカル重合に用いられる化合物と同様の化合物が用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシド等を挙げることができる。特に、前述のように、重合反応を水中で行う場合には、水溶性の重合開始剤が好ましい。
【0036】
また、重合反応で用いられる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムの他、一般にアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤又は両性界面活性剤として用いられているもの等を挙げることができる。
【0037】
また、重合反応で用いられる連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテン等を挙げることができる。
【0038】
本発明方法で用いるインク組成物は、通常、溶剤として水、好ましくはイオン交換水を含有する水系のインク組成物である。
【0039】
また、本発明方法で用いるインク組成物は、溶剤として、水以外に、有機溶剤を併用することもできる。このような有機溶剤としては、水と相溶性を有し、記録媒体へのインク組成物の浸透性及びノズルの目詰まり防止性を向上させると共に、後述する浸透剤等のインク組成物中の成分の溶解性を向上させるものが好ましく、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を、本発明方法で用いるインク組成物中に好ましくは0〜10重量%で用いることができる。
【0040】
本発明方法で用いるインク組成物には、印字品質を向上させる点から、アセチレングリコール系界面活性剤を含有させることが好ましい。このようなアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、又はこれらの物質それぞれにおける複数の水酸基それぞれにエチレンオキシ基若しくはプロピレンオキシ基を平均1〜30個付加してなる物質等を挙げることができる。また、アセチレングリコール系界面活性剤としては、市販品を用いることもでき、例えば、「オルフィンE1010」及び「オルフィンSTG」(何れも、商品名、日信化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、本発明方法で用いるインク組成物中、好ましくは0.1〜3重量%であり、更に好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0042】
本発明方法で用いるインク組成物には、記録媒体への定着性を更に向上させて記録する文字や図形等の画像の耐擦性を高めるために、浸透剤を含有させることが好ましい。このような浸透剤としては、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DEGmBE)、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル(DEGmtBE)、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(TEGmBE)、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(PGmBE)、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(DPGmBE)及び下記一般式(I):
RO−(PO)−(EO)−H (I)
(式中、Rは炭素数4〜10のアルキル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、EOはエチレンオキシ基を示す。m≧1、n≧0、m+n≦20。)
で表される化合物からなる群から選ばれる1種又は2以上が好ましく、特に、DEGmBE、TEGmBE、DPGmBEが好ましい。尚、前記一般式(I)において、mとnは系中の存在を示し、PO及びEOは、ブロック付加でもよく、ランダム付加でもよい。
【0043】
浸透剤の含有量は、インク組成物の浸透性及び速乾性を向上させてインクの滲み発生を有効に防止できる点で、本発明方法で用いるインク組成物中、好ましくは1〜20重量%である。
【0044】
また、本発明方法で用いるインク組成物には、前記浸透剤と同様に、文字や図形等の画像の耐擦性を高めるために、前記アセチレングリコール系界面活性剤以外の界面活性剤を含有させることもできる。そのような界面活性剤としては、例えば、両性界面活性剤として、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体等、非イオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系、ジメチルポリシロキサン等のシリコン系界面活性剤、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等の含フッ素系界面活性剤等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
本発明方法で用いるインク組成物には、ノズルの目詰まりを防止して信頼性をより高めるために、水溶性グリコール類を含有させることが好ましい。このような水溶性グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、トリメチレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の二価のアルコールや、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の三価以上のアルコール等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0046】
水溶性グリコール類の含有量は、本発明方法で用いるインク組成物中に好ましくは1〜30重量%である。
【0047】
また、本発明方法で用いるインク組成物には、前記水溶性グリコール類と同様に、ノズルの目詰まり防止のために、糖類や、防黴剤・防腐剤を含有させることもできる。
【0048】
糖類としては、例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、アルギン酸及びその塩、シクロデキストリン類、セルロース類等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を、本発明方法で用いるインク組成物中に好ましくは0〜15重量%で用いることができる。
【0049】
また、防黴剤・防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(AVECIA社のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、プロキセルTN)等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を、本発明方法で用いるインク組成物中に好ましくは0.01〜0.5重量%で用いることができる。
【0050】
本発明方法で用いるインク組成物には、目詰まり防止や吐出安定性といった信頼性確保の点で、EDTA等のキレート剤を含有させることが好ましく、本発明方法で用いるインク組成物中に好ましくは0.01〜0.5重量%で用いることができる。
【0051】
本発明方法で用いるインク組成物は、自己分散型顔料の表面がアニオン性である場合、印字濃度の向上及び液安定性の観点から、そのpHを6〜11とすることが好ましく、7〜10とすることが更に好ましい。インク組成物のpHを前記範囲内とするためには、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の無機アルカリ類、アンモニア、トリエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリプロパノールアミン等の炭素数6〜10の3級アミン類等を含有させることが好ましい。pH調整剤は、その1種又は2種以上を、本発明方法で用いるインク組成物中に好ましくは0.01〜2重量%で用いることができる。
【0052】
本発明方法で用いるインク組成物には、更に必要に応じて、表面張力調整剤、粘度調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、酸素吸収剤等の各種添加剤を含有させることができ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0053】
本発明方法で用いるインク組成物を調製する方法は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミル等を使用して調製することができる。本発明方法で用いるインク組成物の調製に際しては、粗大粒子を除去することが好ましい。例えば、前述の各成分を配合して得られた混合物(インク)を、金属フィルターやメンブランフィルター等のフィルターにてろ過することにより、300nm以上の粒子を除去する。このような処理を行うことによって、ノズルに目詰まりしない信頼性のより高いインク組成物が得られる。
【0054】
本発明方法で用いるインク組成物は、その色の種類等に制限されるものではなく、種々のカラーインク組成物(シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、ダークイエロー、レッド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレット等)、ブラックインク組成物、ライトブラックインク組成物等として使用できる。使用に際しては、本発明方法で用いるインク組成物を単独で、若しくはその複数種からなるインクセットとして、又は、本発明方法で用いるインク組成物の一種若しくは複数種とその他のインク組成物の一種若しくは複数種とからなるインクセットとして用いることができる。
【0055】
本発明方法で用いるインク組成物は、その画像を形成するための記録媒体として、特に制限されることなく、普通紙、インクジェット用専用紙、プラスチック、フィルム、金属等の種々の記録媒体に適用することができる。
【0056】
本発明によれば、前述したインク組成物を使用して記録媒体に画像を形成する記録方法が提供される。本発明の記録方法の一実施形態は、インクジェット記録方式によって、前述のインク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて印字を行うものである。本発明の記録方法を実施することによって、高い信頼性で以ってインク組成物を吐出させることができ、形成される画像の印字品質が良好で、OD値が高く、定着性が良好で耐擦性に優れた画像を得ることができる。
【0057】
また、本発明によれば、前述したインク組成物を使用して記録媒体に画像が形成されてなる記録物が提供される。本発明の記録物は、印字品質が良好で、OD値が高く、定着性が良好で耐擦性に優れた画像を有するものである。
【0058】
本発明のインクジェット記録方法では、インク吸収材を備えた記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置を用いる。
前記の記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置としては、従来から公知の装置を用いることができ、例えば、図1に示すキャッピング手段を有するインクジェット記録装置を用いることができる。
【0059】
インク吸収材は、インクを湿潤状態で保持可能な材料であれば特に限定されず、多孔質発泡体、例えば、合成樹脂フォーム(特には、ポリウレタンフォーム)、又は繊維質多孔体(特には、不織布、織布、又は織物のシート)からなることができる。なお、インク吸収材を収納する収容部と、記録ヘッド部の表面を気密的に封止可能な突出壁部とを含む閉塞部材は、弾性材料からなることが好ましい。
【0060】
インク吸収材の表面がノズル開口部と接触しないことを保証するために、例えば、特開2000−62202号公報に記載されているような抑え部材を、インク吸収材の表面に設けることもできる。なお、図1の模式図には図示していないが、前記閉塞部材12には、ポンプよって空吐出されたインクをキャップ部1の外部に排出するためのインク吸引口を設け、更に、弁によって外側の大気と連通させたり、遮断させたりすることのできる開放口を設けることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0062】
(1)インク組成物の調製
以下の各配合成分を、以下の配合量で混合攪拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過し、真空ポンプを用いて脱気処理してインク組成物を調製した。
顔料 6重量%、
エマルジョンA 4重量%、
エマルジョンB 1重量%、
TEGmBE 3重量%、
GL 5重量%、
TEG 10重量%、
1,2−HD 5重量%、
TPA 1重量%、
オルフィンE1010 1重量%、
オルフィンSTG 0.1重量%、
EDTA 0.02重量%、
プロキセルXL2 0.3重量%、
イオン交換水 全体を100重量%とする量
なお、前記顔料は、自己分散型顔料〔キャボット社製の「CAB−O−JET 300」(商品名);平均粒径;130nm〕である。エマルジョンA及びエマルジョンBは、いずれも、分散媒が水で分散質が樹脂粒子である、樹脂粒子の水系分散液である。エマルジョンの重量%は、樹脂粒子としての濃度を表す。それらの調製方法は後述する。
【0063】
略号は以下の意味である。
TEGmBE ;トリエチレングリコールモノブチルエーテル
GL ;グリセリン
TEG ;トリエチレングリコール
1,2−HD ;1,2−ヘキサンジオール
TPA ;トリプロパノールアミン
オルフィンE1010;アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業(株)製)
オルフィンSTG ;アセチレングリコール系界面活性剤(日信化学工業(株)製)
EDTA ;エチレンジアミン四酢酸二水素ナトリウム(キレート剤)
プロキセルXL2 ;防黴剤(アビシア(株)製)
【0064】
(2)エマルジョンAの製造法
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン365g、ブチルアクリレート545g、及びメタクリル酸30gを撹拌化に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液を添加して固形分40重量%、pH8に調整した。得られた水性エマルジョンにおける樹脂粒子のガラス転移温度は−6℃であった。Tgは、熱分析装置SSC5000〔セイコー電子(株)製〕を用いた示差熱分析により測定した値である。
【0065】
(3)エマルジョンBの製造法
撹拌機、還流コンデンサー、滴下装置、及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水900g及びラウリル硫酸ナトリウム1gを仕込み、撹拌下に窒素置換しながら70℃まで昇温した。内温を70℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム4gを添加し、溶解後、予めイオン交換水450g、ラウリル硫酸ナトリウム3gにアクリルアミド20gにスチレン615g、ブチルアクリレート295g、及びメタクリル酸30gを撹拌化に加えて作製した乳化物を、反応溶液内に連続的に4時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間の熟成を行った。得られた水性エマルジョンを常温まで冷却した後、イオン交換水と水酸化ナトリウム水溶液とを添加して固形分40重量%、pH8に調整した。
得られた水性エマルジョンにおける樹脂粒子のガラス転移温度は36℃であった。Tgは、熱分析装置SSC5000〔セイコー電子(株)製〕を用いた示差熱分析により測定した値である。
【0066】
<実施例1及び比較例1>
前項(1)で調製したインク組成物に関して、インク吸収材を備えた記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置(実施例1)、及びインク吸収材を備えていない記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置(比較例1)を用い、クリーニング回数による吐出安定性評価を実施した。
実施例1のインクジェットプリンタとしては、プリンタ(PX−V700;セイコーエプソン社製)を使用し、比較例1のインクジェットプリンタとしては、プリンタ(StylusC80;セイコーエプソン社製)を使用した。
【0067】
クリーニング回数による吐出安定性評価は、40℃環境にてベタ及び罫線パターンの連続印字を行うことによって実施した。連続印字前にノズルチェックを行い、充填性を確認した後に評価を開始した。その後、印字中にドット抜け又はインクの飛び散りや曲がり等による乱れが生じた際に、回復動作としてクリーニングをその都度行った。A4サイズで連続印刷100ページ内に要した前記クリーニング回数によって、以下の基準に基づいて判定した。
評価A:クリーニング回数ゼロ。
評価B:クリーニング回数1又は2回。
評価C:クリーニング回数3回以上。
評価結果を表1に示す。
【0068】
<実施例2及び比較例2>
前項(1)で調製したインク組成物に関して、インク吸収材を備えた記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置(実施例2)、及びインク吸収材を備えていない記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置(比較例2)を用い、キャッピング時間による吐出安定性評価を実施した。
実施例2のインクジェットプリンタとしては、プリンタ(PX−V700;セイコーエプソン社製)を使用し、比較例2のインクジェットプリンタとしては、プリンタ(StylusC80;セイコーエプソン社製)を使用した。
【0069】
キャッピング時間による吐出安定性評価は、40℃環境にてベタ及び罫線パターンのA4サイズ印字を行うことによって実施した。印字前にノズルチェックを行い、充填性を確認した後に評価を開始した。充填確認後、ホームポジションにてヘッドをキャッピングして封止した後、印字開始までの時間(=キャッピング時間)に対する印字安定性(ドット抜け又はインクの飛び散りや曲がり等による乱れ)を、以下の基準に基づいて判定した。
評価A:キャッピング時間5秒後の印字で乱れがない。
評価B:キャッピング時間10秒後の印字で乱れがない。
評価C:キャッピング時間60秒以上の印字で乱れがない。
評価結果を表1に示す。
【0070】
<実施例3及び比較例3>
前項(1)で調製したインク組成物に関して、インク吸収材を備えた記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置(実施例3)、及びインク吸収材を備えていない記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置(比較例3)を用い、目詰まり回復性による評価を実施した。
実施例3のインクジェットプリンタとしては、プリンタ(PX−V700;セイコーエプソン社製)を使用し、比較例3のインクジェットプリンタとしては、プリンタ(StylusC80;セイコーエプソン社製)を使用した。
【0071】
前記の各プリンタに前記インク組成物を充填し、正常な印字が行えることを確認した後に、印字を停止した。その後6ヶ月間、プリンタを常温(25℃)下に放置した。6ヶ月間の放置後、印字を再開し、吐出不良がなく、放置前と同等な印字が得られるまでクリーニング操作を行った。そのクリーニング操作の回数を以下の基準で評価した。
評価A:0〜5回のクリーニング操作で放置前と同等の印字が得られた。
評価B:6〜10回のクリーニング操作で放置前と同等の印字が得られた。
評価C:11回のクリーニング操作では放置前と同等の印字が得られなかった
評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0073】
極めて良好な吐出安定性を保証するインクジェット記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】キャップ部と、そのキャップ部によって封止された記録ヘッド部との模式的一部断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1・・・キャップ部;2・・・記録ヘッド部;
11・・・キャップホルダ;12・・・閉塞部材;
12a・・・収容部;12b・・・突出壁部;12c・・・突出壁部の先端部;
13・・・インク吸収材;14・・・突起部;
21・・・ノズル開口部;22・・・記録ヘッド部の表面;
22a・・・封止領域の外側領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己分散型顔料6重量%以上及び樹脂粒子3重量%以上を含むインクジェット記録用インク組成物を用いるインクジェット記録方法であって、
インク吸収材を備えた記録ヘッドキャッピング手段を有するインクジェット記録装置を用いることを特徴とする、前記のインクジェット記録方法。
【請求項2】
自己分散型顔料の含有量が、6重量%〜15重量%のインク組成物を用いる請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
樹脂粒子の含有量が、3重量%〜15重量%のインク組成物を用いる請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
インク吸収材が、多孔質発泡体又は繊維質多孔体からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録方法によって形成された記録物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−239915(P2006−239915A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55437(P2005−55437)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】