説明

インクジェット記録方法

【課題】複数の解像度にて、白ぬけ、にじみ、インク流れのない高品質画像を得ることが
できる記録用インクを提供する。
【解決手段】インク中にヘキシレングリコールを含むことにより、解像度に応じたドット
径のドットが形成でき、さらにインク量を変えてドット径を広げるても、紙上に過剰なイ
ンクが残留することがなく、インクにじみ、インク流れの無いドットが得られ、高品質画
像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印字のにじみを抑制する方法として、特開昭58−188684号公報、特
開昭62−288042号公報等に示されている様に、記録媒体にインクジェット記録方
法によりインクを付着させ、その記録媒体を特定温度以上で加熱する手段が知られている

【0003】
また、インク中に水溶性樹脂、樹脂エマルジョンを含有するインク組成としては、特開
平4−18462号公報、特開平5−148441号公報等に、吐出安定性を確保しつつ
、記録媒体への定着性の確保を目的としたインク組成物が開示されている。
【0004】
本発明者らは、先般、以上の従来技術に改良を加え、インク中に熱可塑性樹脂を含有し
た独自のインク組成を用い、その軟化温度以上に記録媒体の温度を上げることにより、印
字のにじみの防止に加え、カラーの発色が鮮明になるとの知見を得た。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のインクを用いて、加熱された記録媒体への印字を行なった場合、
インク中の熱可塑性樹脂がその軟化温度以上で加熱されることにより、溶媒の蒸発と樹脂
の相変化により粘度上昇が速やかに行われ、高品質画像が得られるという効果がある反面
、複数の解像度で印画する機能を有すインクジェットプリンターでは、種々の解像度に応
じたサイズのドット径が得られないという問題があった。特に細かい解像度でにじみの無
い高品質のドットが得られても、荒い解像度では要求されるサイズよりもドット径が小さ
くなってしまい、白ぬけ部分が発生してしまうという問題があった。また逆に荒い解像度
で十分なサイズで、にじみの無い高品質のドットが得られても、細かい解像度では印画さ
れたインクの量が過剰になってしまい、乾燥不良、インクの流れ等の画質劣下が生じてし
まった。
【0006】
本発明は、上述の観点からなされたもので、その目的は、複数の解像度で印画する機能
を有すインクジェットプリンターにおいて、荒い解像度から細かい解像度まで対応できる
ドット径サイズが得られ、さらににじみの無いドットが得られる、インクジェット記録用
インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット記録用インクは、印字ヘッドから加熱された記録媒体にインク
滴を吐出してインク像を形成し記録するインクジェット記録用のインクにおいて、少なく
とも、水と、顔料と、熱可塑性樹脂エマルジョンと、ヘキシレングリコールを含有するこ
とを特徴とする。さらに好ましくはヘキシレングリコールを1〜10wt%含むことを特
徴とする。
【0008】
本発明のインクジェット記録用インクは、水溶性高分子をさらに含むことを特徴とし、
好ましくは、水溶性高分子が、サッカロース、マルチトール、マルトース、グルコン酸、
ソルビトール、マンニトール、グルコースから選ばれた1種または複数種の糖類であるこ
とを特徴とする。
【0009】
本発明のインクジェット記録用インクは、多価アルコールをさらに含むことを特徴とし
好ましくは、多価アルコールが、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、2、6ヘキサントリオール
から選ばれた1種または複数種であるであることを特徴とする。
【0010】
本発明のインクジェット記録用インクは、界面活性剤を0.1〜1wt%含むことを特
徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のインクジェット記録用インクの構成の実施例を詳細に説明する。
【0012】
本発明のインクジェット記録用インクは、熱可塑性樹脂がその軟化温度以上で加熱され
た記録媒体への印字を行なった場合、インク中の溶媒の蒸発と樹脂の相変化により粘度上
昇が速やかに行われ、高品質画像が得られるという効果がある。
【0013】
しかしながら、にじみ、ひげが抑えられるという効果の反面、ドットが広がらず、大き
なドット径が得られにくいという問題がある。ドットを大きくする方法として、1ドット
を形成するインク量を増やすという手段があるが、その場合過剰のインク量が印画される
為、乾燥不良、インク流れという問題がしょうじてしまう。
【0014】
しかしながらインク中にヘキシレングリコールを含むことにより、それらの問題を解決
できる。すなわち、解像度が変わって隣接ドットとの距離が変わるだけで、その距離に応
じてトッドが広がり、要求されるドットサイズがえられる。さらに、前記方法で要求ドッ
トサイズに調節できない場合は、より大きいドット径を得るには1ドットを形成するイン
ク量を変えることで、解像度に応じた種々のサイズのドットが得られ、仮にインクが過剰
に印画されてもかつにじみ、インク流れのない画像を形成できる。
【0015】
さらに詳細には、インク中の熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱された記録媒体上で、
ドットが水の蒸発、熱可塑性樹脂の造膜によって形成されつつあるときに、インク中のヘ
キシレングリコール紙中へ適度な浸透性を有することにより、隣のドットとの距離に応じ
た浸透幅を形成できるため、複数の解像度に対応できる。さらにより大きくなドット径を
得るには1ドットを形成するインク量を変えることでドット径は広がるが、インク中のヘ
キシレングリコール紙中へ適度な浸透性を有することにより、紙上に過剰なインクが残留
することがなく、従来例の問題であったにじみ、インク流れの無いドットが得られる。ま
た、水溶性高分子、多価アルコール、界面活性剤を含有することにより、ドットの広がり
、にじみ等をより柔軟に調節できるようになり、対応できるドットサイズの柔軟性がより
広がる。へキシレングリコールの含有量としては、1〜10wt%が好ましく、さらには
2〜5wt%が好ましい。キシレングリコールの含有量が1wt%未満では、十分な浸透
性が確保できず、10wt%を超えるとインクの乾燥不良、またインクにじみによる濃度
不足が生じてしまう。
【0016】
以下に具体的に本発明のインクの構成を説明する。
【0017】
本発明のインクに用いることができる顔料としては、有機顔料、無機顔料等が挙げられ
、例えば、黒用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、
チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または
銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニ
リンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0018】
更にカラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、
12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(
黄色酸化鉄)、53、55、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、
100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、
C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカー
レット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2
(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、
48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:
1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ロ
ーダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、1
08(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123
、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185
、190、193、209、219、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシ
アニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:
4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、等が使
用できる。前記の顔料を1種類で用いるか、または2種類以上を適宜組み合わせて用いる
ことができる。
【0019】
前記顔料の添加量は、インク組成物全体に対して、好ましくは0.1〜10wt%、よ
り好ましくは0.5〜5wt%である。含有量を0.1wt%以上にすることにより十分
な印字濃度を確保することができ、含有量を10wt%以下にすることにより、インクの
粘度特性に構造粘性を生じさせずに、高印字品質に不可欠な十分な吐出安定性を確保する
ことができる。また、0.5〜5wt%にすることにより、特に吐出安定性の耐久性を向
上させることができる。
【0020】
また、粒経は特に限定されるものではないが、粒径(平均粒子径)は、好ましくは25
μm以下、より好ましくは1μm以下である。粒径が25μm以下の顔料を用いることに
より、目詰まり等の発生を抑制することができ、一層十分な吐出安定性を実現することが
できる。
【0021】
本発明によるインク組成物は、前記顔料をインク組成物内で微粒子状で分散安定化させ
ることができる樹脂分散剤を含有する。使用することのできる樹脂分散剤としては、例え
ば、親水性部分と疎水性部分を分子中に有する共重合体、具体的には、スチレン・アクリ
ル酸共重合体樹脂、スチレン・アクリル酸エステル共重合体、スチレン・メタクリル酸共
重合体、スチレン・メタクリル酸・アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸系共重合体
、例えば、スチレン・マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル・マレイン酸共重合体、
スルホン酸系分散剤、例えば、アクリル酸エステル・スチレンスルホン酸共重合体、スチ
レン・メタクリルスルホン酸共重合体、またはアクリル酸エステル・アリルスルホン酸共
重合体、あるいはこれらの塩を上げることができる。中でも重量平均分子量(以後単に分
子量と称す)が1600〜25000かつ酸価が100〜250の共重合体樹脂、特にス
チレン・アクリル酸共重合体樹脂をもちいるのが好ましい。分子量が1600〜2500
0、酸価が100〜250の範囲以外の共重合体樹脂、特にスチレン・アクリル酸共重合
体樹脂を使用するとインク組成物が乾燥した際の再分散性が得られず、クリーニング特性
が得られにくくなり、ひいては吐出安定性を確保することができないという問題が起る場
合がある。
【0022】
本インクに用いることのできる、水溶性高分子としては、糖類が挙げられる。
例えば、グルコース、キシロース、アラビノース、等の単糖類、サッカロース、マルト
ース等の二等類、マルトトリイトール、でんぷん等の多糖類、さらには糖誘導体としてマ
ルチトール、オリゴ糖アルコール等から選ばれた1種または複数種を用いることができる
。また、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイド等の水
溶性樹脂およびそれらの変性品も用いることができる。
【0023】
本発明のインク組成物は水溶性有機溶媒として多価アルコールを含む。具体例としては
グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジ
プロピレングリコール、1、2、6ヘキサントリオールから選ばれた1種または複数種を
用いることができる。またその他としてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ
ール、上記他価アルコールのモノエーテル化合物、ジエーテル化物、エステル化物、例え
ばジエチレングリコールモノメチルエーテル、またはジエチレングリコールモノエチルエ
ーテル、ジエチレングリコールモノブチル、さらにはN−メチル−2ピロリドン、モノエ
タノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミ
ン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の含窒素有機溶剤等も用いることがで
きる。
【0024】
また、主溶媒である水に対して、乾燥性の向上を目的としてエタノール、プロパノール
イソプロパノール、またはブタノール等の高揮発性の1価アルコールも少量ならば含有す
ることができる。
【0025】
本インクに用いることのできる熱可塑性樹脂エマルジョンとしては、スチレンアクリル
酸エステル共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、ポリスチ
レン、ポリエチルアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン共重
合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、クロロプレン共重合体、架橋アクリル樹
脂、架橋スチレン樹脂、フッ素樹脂、フッ化ビニリデン、ベンゾグアナミン樹脂、ポリオ
レフィン樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、スチレン−
アクリルアミド共重合体、n−イソブチルアクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル
、アクリルアミド、ポリビニルアセタール、ロジン系樹脂、ポリエチレン、塩化ビニリデ
ン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合
体、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、アルコールワックス、
合成酸化ワックス、αオレフィン−無水マレイン酸共重合体、カルナバワックス等の動植
物系ワックス、ラノリン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が用い
ることが出来る。以上の熱可塑性樹脂のMFTは、熱融着に必要なエネルギーの低減化か
ら50℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは65℃〜90℃が好ましい。
【0026】
前記の熱可塑性樹脂の含有量は、インク組成物全体に対して好ましくは0.2〜20w
t%、より好ましくは、7〜20wt%である。含有量を0.2wt%以下以下にするこ
とによって、一層良好な印字品質を確保することができ、含有量を20wt%以下にする
ことによってインク組成物の粘度を適切に抑えこむことができる。
【0027】
本発明に用いることができる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤としては、高級
脂肪酸塩、高級アルキルジカルボン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキル
スルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフ
タレンスルホン酸の塩(Na、K、Li、Ca)ホルマリン重縮合物、高級脂肪酸とアミ
ノ酸の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフ
テン酸塩等、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホ
ン酸塩、N−アシルメチルタウリン、アルキルエーテル硫酸塩、第二級高級アルコールエ
トキシサルフェート、モノグリサルフェート、アルキルエーテル燐酸エステル塩、アルキ
ル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキ
シエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ
ーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウ
ム塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸モノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアル
キルエーテル燐酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸カリウム塩
、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸ジエタノールアミン、アルキルナフタレンス
ルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等がある。
【0028】
またノニオン界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポ
リオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステア
レート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタンモノステアレート、
アセチレングリコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(アセチレン
グリコールアルコールエチレンオキサイド)、プロピルエタノールアミド、ポリオキシエ
チレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、等がある。
【0029】
上記アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤は、それぞれ単独で、また両者を組み合
わせて用いることができる。また界面活性剤の種類は、1種類であっても複数種であって
も構わない。界面活性剤の総添加量としては、多すぎると起泡性が大きくなり、吐出安定
性を損なわせる危険性が生じる為、0.1〜1wt%が好ましく、より好ましくは0.1
wt%〜0.8wt%である。1wt%より多いと泡立ちが激しくなることがあり、0.
1wt%未満になると被記録媒体上でのインクの広がりが不十分になる場合がある。
【0030】
また、その他必要に応じて、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム等のpH
調整剤、防カビ、防腐、防錆等の目的で安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン
、ソルビン酸、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)
、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ベゾチアゾリン−3−オン(製品名:プロキセルX
LII(ICI製))、3,4−イソチアゾリン−3−オン等を含むことができる。さらに
ノズル乾燥防止の目的で、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等を添加することができる。
【0031】
本発明によるインク組成物の諸物性は適宜制御することができるが、本発明の好ましい
態様によればインク組成の粘度は25mPa・秒以下であるのが好ましく、より好ましく
は10mPa・秒以下(25℃)である。この範囲であることでインク組成物は安定にイ
ンク吐出ヘッドから吐出される。また、インクの表面張力は適宜制御されるが、30〜5
0mN/m(25℃)であることが好ましい。
【0032】
本発明のインクジェット記録用インク組成物は、前記の各配合成分を任意の順序で適宜
混合し、溶解及び/または分散させた後、不純物などを濾過して除去することにより調製
することができる、特には、顔料と樹脂分散剤と水とにより水性顔料分散液を調製し、そ
の顔料分散液に熱可塑性樹脂エマルジョン等のその他の配合成分を混合して調製するのが
好ましい。
【0033】
また、顔料を適宜選択し、さらに必要により、選択された前記顔料との組み合わせで他
の配合成分を適宜選択し、カラーインクジェット記録用の本発明によるイエローインク組
成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物等を調製する
ことができる。
【0034】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によっ
て限定されるものではない、以下の実施例において、配合比率は重量による。
【0035】
1.顔料分散液の作成
スチレン−アクリル酸共重合体(重量平均分子量 25000、酸価200)樹脂4部
とトリエタノールアミン2.7部、イソプロピルアルコール0.4部、イオン交換水72
.9部を70℃の加温下で完全溶解させる。
【0036】
次にカーボンブラックMA−100(三菱化成株式会社製)20部を加え、プレミクシ
ングを行った後、アイガーミル(アイガージャパン社製)で顔料の平均粒子径が100n
mになるまで分散を行い(ビーズ充填率70%、メディア径0.7mm)。
【0037】
目的の顔料分散液を得た。
【0038】
2.インクの調整
次に該分散液を使用した本発明の実施例1のインク化について述べる。
【0039】
上記の分散液 10wt%
ヘキシレングリコール 2wt%
スチレン・アクリルエステルエマルジョン
(固形分として) 7wt%
ジエチレングリコール 7wt%
マルチトール(固形分として) 8wt%
アニオン性界面活性剤 0.3wt%
(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩)
イオン交換水 残分
尚、スチレン・アクリルエステルエマルジョンは、固形分50.0%品の水分散液であ
り、マルチトールは固形分80%の水溶液であるため、上記の値は固形分換算した値でし
めした。
【0040】
上記成分を混合した後、金属メッシュフィルター(真鍋工業株式会社製 綾織り230
0メッシュ)を通過させ、本発明の実施例1のインクを得た。
【0041】
<実施例2〜8>
以下の表1に記載の配合成分を以下の表1に記載の配合量で用いることを除いて、前記
実施例1記載の製造方法を繰り返すことにより、本発明のインクジェット記録用インク組
成物を得た。
【0042】
【表1】

【0043】
尚、本発明の比較例としては、従来例の水、顔料、水溶性樹脂、マイクロエマルジョン
、水溶性有機溶媒からなるインクを調製した。
【0044】
次に、上記インクの評価に用いる装置、すなわちインクジェト記録ヘッドからインクを
吐出して記録媒体に付着させ、その付着と同時に、記録媒体支持体から(例えばプラテン
)から記録媒体を介してインク組成液滴に熱を加えて定着を行なう、インクジェット記録
に関し詳細に説明する。
【0045】
本発明による前記のインク組成物を慣用のインクカートリッジに収納して、慣用のイン
クジェット記録装置に挿入し、インクジェット記録を実施することができる。また、イエ
ローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物
等の少なくとも1種(好ましくは前記インク組成物すべて)を本発明のインク組成物とし
てマゼンタインクを収納する前記のインクカートリッジと、イエローインクを収納する前
記のインクカートリッジと、シアンインクを収納する前記のインクカートリッジと、場合
によりブラックインクを収納する前記のインクカートリッジとを組み合わせて挿入するか
、あるいは、マゼンタインクと、イエローインクと、シアンインクと、場合によりブラッ
クインクをそれぞれ別々に仕切られた画分中に収納するインクカートリッジを挿入したカ
ラーインクジェット記録装置を用いてカラーインクジェット記録を実施することができる

【0046】
プラテンの加熱温度は好ましくは約80℃〜120℃である。80℃よりも低いと乾燥
不足及び定着不足となることがあり、120℃より高いと過剰なエネルギーが必要となる
ことがある。
【0047】
さらに詳細に、本発明のインクジェット記録用インクの評価に用いたインクジェット記
録装置について、図面を用いつつ説明する。
【0048】
図1は、本発明のインクジェット記録用インクの評価に用いたインクジェット記録装置
を示すものである。
【0049】
図中でプラテン71は記録媒体を加熱する手段と、記録媒体を搬送する手段とをかねる
ものである。このプラテン71は、熱伝導性の高い金属、例えばアルミニウムからなる円
筒であり、図示しない駆動装置によって図中の矢印の方向に回転する。このプラテン71
の表面はシリコーンゴムなどを積層して構成されてもよい。また、このプラテン71内部
には、ヒータ72が配置され、このプラテン71を加熱する。さらに、このプラテン71
には、紙押さえローラ73及び74が圧接されており、このプラテン71と紙押さえロー
ラ73及び74との間に記録媒体75が置かれ、これらの回転に伴い記録媒体75が搬送
される。紙押さえローラ73は、例えば金属製の芯材にアクリルニトリルゴムをその表面
に接着させて構成される。
【0050】
また、プラテン71に記録媒体75を間に挟んで対向する位置に、インクジェット記録
ヘッド76が置かれる。この記録ヘッド76は、圧電素子によって液滴を形成するもので
あっても、熱エネルギーによって液滴を形成するものであってもよい。この記録ヘッド7
6は、48個のノズルを任意のマトリックスで配置してなる。この記録ヘッド76のノズ
ルは、図示しない演算装置によって与えられた印字データに基づき、インク液滴を吐出す
る。この記録ヘッド76にはインクタンク77よりインクが供給され、また記録ヘッド駆
動装置78により記録媒体が送られる方向と直行する方向に動くことが出来る。
【0051】
インクジェット記録は次のように行われる。まず、記録媒体75がプラテン71と紙押
さえローラ73及び74との間に挟持されて搬送される。搬送されながら、記録媒体75
はヒータ72で加熱されたプラテン71に接触して加熱される。従って、この態様の装置
においては、記録媒体75の温度が上記した熱可塑性樹脂の軟化温度以上の温度となるよ
う、プラテン71表面の温度が制御されている。次に搬送された記録媒体75に、記録ヘ
ッド76により印字パターンに従って、選択的にインク液滴が吐出される。記録媒体に付
着したインク液滴は加熱され、膜化してインクドッドを形成する。次にプラテン71と、
紙押さえローラ73及び74とにより所定量記録媒体が搬送され、再び記録ヘッド76に
より記録が行われる。ここで、インクドットを隣接して、または重ねて形成する場合には
、一定の印字間隔を設けて印字が行われるのが好ましい。記録媒体75に必要な記録が行
われた後、記録媒体75は装置から排出される。
【0052】
この装置では、インクジェット記録ヘッドとプラテンの距離は約1.5mm離されてお
り、インクジェット記録ヘッドの温度は概ね40℃〜50℃であり、プラテン71の表面
温度は約120℃であり、記録媒体の表面温度は80℃から120℃であった。この温度
環境からインクに要求される特性としては、ヘッド内の温度では保湿効果が得られ乾燥等
による増粘がなく吐出安定性が確保でき、さらに記録媒体上の温度では、水の蒸発に伴い
23wt%以上含まれる非蒸発成分の固形分濃度が急激に上昇し、粘度が大きくなること
によりインクがにじむことなくまた乾燥ムラがなく定着されることである。
【0053】
図2は、本発明の記録装置を示すものである。この装置において、図1の装置と同一の
要素については、図1と同一の参照番号を付してある。この装置においては、記録ヘッド
がインク組成物の色ごとに設けられてなる。すなわち、記録ヘッド81、82、83、及
び84が、それぞれブラックインク、マゼンタインク、シアンインク、及びイエローイン
クを吐出する記録ヘッドである。それら記録ヘッドへのインクの供給はインクタンク77
から行われる。
【0054】
この図2の装置による印字は基本的には図1の装置による印字と同様である。
すなわち、記録媒体75が記録媒体巻き付け装置85によってプラテン71に巻き付け
られる。次に記録ヘッド81〜84によって一列または複数列の印字を行う。次に記録ヘ
ッド78を所定量動かし、更に一列または複数列の印字を行う。
これを繰り返して記録媒体75に画像を記録する。
【0055】
印画解像度は360dpiと600dpiの2種類で印画した。また吐出インク量は、
70ngと50ngの2段階で吐出できる様吐出条件を調節した。
【0056】
続いて、上記2種類の解像度と、上記2種類のインク吐出量にて、本発明のインク組成
物にて印画された印画像の、形成されたドット径とにじみ度の評価結果を示す。
【0057】
尚、被記録紙は再生紙とコピー用紙を用いた。また、評価は実施例1〜8のインクの単
色での評価と、実施例1〜4、および実施例5〜8の4色のインクを重ねあわせて印画し
たフルカラー印画パターンの2種類で行った。
【0058】
評価は次のようなレベル判定により行った。
【0059】
(1)印画像のドット径とベタの印画品質
◎:解像度に対応した十分なドット径が得られており、ベタ部が均一に埋まっている。
○:解像度に対応した十分なドット径が得られているが、ベタ部が一部不均一になって
いる。
×:解像度に対応した十分なドット径が得られず、ベタ部に白ぬけ部分がある。
【0060】
(2)印画像のドットのにじみとインク流れ
◎:にじみ、インク流れが無い。
○:にじみ、インク流れが若干あるが画質上問題無いレベル。
×:にじみ、インク流れがあり、画質上問題である。
【0061】
【表2】

【0062】
以上の結果から、インク中にヘキシレングリコールを含む本発明のインクジェット記録
用インクを用いることにより、解像度に応じた種々のサイズのドットが得られ、かつにじ
み、インク流れのない画像を形成できる。
【0063】
インク中にヘキシレングリコールを含むインクジェット記録用インクを用いることによ
り、インク中の熱可塑性樹脂の軟化温度以上に加熱された記録媒体上で、ドットが水の蒸
発、熱可塑性樹脂の造膜によって形成されつつあるときに、インク中のヘキシレングリコ
ールの紙中、紙上へ適度な広がりを有することにより、解像度に応じたドット径のドット
が形成できる。さらに1ドットのインク量を変えることでドット径を広げる際、インク中
のヘキシレングリコールが紙中へ適度な浸透性を有することにより、紙上に過剰なインク
が残留することがなく、インクにじみ、インク流れの無いドットが得られるという効果を
有する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明のインクジェット記録用インクの評価に用いたインクジェット記録装置の模式図である。
【図2】本発明のインクジェット記録用インクの評価に用いたインクジェット記録装置の模式図である。
【符号の説明】
【0065】
71…プラテン、72…ヒータ、73…紙押さえローラー、74…紙押さえローラー、
75…記録紙(記録媒体)、76…記録ヘッド、77…インクタンク、78…記録ヘッド
駆動装置、81…記録ヘッド(ブラックインク)、82…記録ヘッド(マゼンタインク)
、83…記録ヘッド(シアンインク)、84…記録ヘッド(イエローインク)、85…記
録媒体巻き付け装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドから加熱された記録媒体にインク滴を吐出してインク像を形成して記録する
インクジェット記録用インクにおいて、
少なくとも、水と、顔料と、熱可塑性樹脂エマルジョンと、ヘキシレングリコールを含
有するインクジェット記録用インク。
【請求項2】
前記ヘキシレングリコールを1〜10wt%含んだ請求項1記載のインクジェット記録
用インク。
【請求項3】
水溶性高分子をさらに含む請求項1記載のインクジェット記録用インク。
【請求項4】
前記水溶性高分子が、サッカロース、マルチトール、マルトース、グルコン酸、ソルビ
トール、マンニトール、グルコースから選ばれた1種または複数種の糖類である請求項3
記載のインクジェット記録用インク。
【請求項5】
多価アルコールをさらに含む請求項1記載のインクジェット記録用インク。
【請求項6】
前記多価アルコールが、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ト
リエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、2、6ヘキサントリオールから選
ばれた1種または複数種である請求項5記載のインクジェット記録インク。
【請求項7】
界面活性剤を0.1〜1wt%含むことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記
録用インク。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−327064(P2007−327064A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190484(P2007−190484)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【分割の表示】特願平8−267562の分割
【原出願日】平成8年10月8日(1996.10.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】