説明

インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法

【課題】長期での保存安定性に優れ、高濃度で混色及び色滲みのない高画質画像の記録を可能にする。
【解決手段】少なくとも画像を形成するための第1の液体Aと、前記第1の液体Aと組成が異なる第2の液体Bとから構成され、液体A及びBの少なくとも一方が、平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法に関し、詳しくは、多液を用いて高速に、高画質な画像を形成するのに好適なインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル等のインク吐出口からインクを液滴で吐出するインクジェット方式は、小型で安価であり、印字媒体に非接触で画像形成が可能である等の理由から多くのプリンタに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを液滴吐出する熱インクジェット方式は、高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
【0003】
現在、インクジェットプリンタにより、普通紙あるいは、プラスチックなど非吸水性の記録媒体にインクを打滴して印字する際の高速化及び高画質化が重要な課題となっている。
【0004】
インクジェット記録は、インク(液体)の液滴を連続的に液滴n1、液滴n2、液滴n3、・・・、液滴nxと吐出し、被記録媒体上に液滴n1、液滴n2、液滴n3、・・・、液滴nxにてラインを形成したり、画像を形成するものであるが、特に打滴後の液滴の浸透に時間が掛かると、画像に滲みが生じやすく、また、隣接するインク液滴n1とインク液滴n2の間で混合が生じ、鮮鋭な画像形成の妨げとなるなど、実用上問題があった。液滴間での混合の際には、打滴された隣接の液滴が合一して液滴の移動が起こるために、着弾した位置からずれ、細線を描く場合には線幅の不均一が生じ、着色面を描く場合には色ムラ等が発生する。
【0005】
画像の滲みや線幅の不均一等を抑制する方法の一つとして、インクの硬化を促進する方法がある。その一つとして、インク溶媒の揮発ではなく放射線によって硬化し固着する技術が提案されている。更には、精密描画性を付与するために、2液式のインクを用い、記録媒体上で両者を反応させるものであり、例えば、塩基性ポリマーを有する液体を付着させた後、アニオン染料を含有するインクを記録する方法(例えば、特許文献1参照)や、カチオン性物質を含む液体組成物を適用した後、アニオン性化合物と色材を含有するインクを適用する方法(例えば、特許文献2参照)、一方に光硬化型樹脂を、他方に光重合開始剤を含むインクを用いる記録方法(例えば、特許文献3参照)などが開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法では、画像の滲み抑制にはある程度の効果はあるものの、液滴間の混合に起因する線幅の不均一や色ムラ等の解消には不充分であり、また、水性溶媒を含むために乾燥速度が遅い、析出した染料が不均一に分布しやすく画質低下を招く懸念もある。
【0007】
上記に関連する技術として、着色成分として顔料を用い、放射線によって硬化して固着する技術がある(例えば、特許文献4参照)。ここでは、固化するモノマーを含有するインクと顔料分散体を含有するインクの2液のいずれか一方を用いて画素を形成した後に他方で前記画像と同一ポイントに画素を形成し、硬化を紫外線、電子線等を用いて行なうことが記載されている。
また、水と共に反応性モノマーや着色剤等を含有するインク組成物と凝集物を生じさせる凝集剤を含有する凝集溶液とを用い、記録媒体上に前記凝集溶液を付着させた後に前記インク組成物を付着させることが記載されたものがある(例えば、特許文献5参照)。さらに、光重合開始剤を含有する反応液を全面付与した後にモノマー含有のインク組成物を付与し、紫外線照射を行なうことが記載されたものもある(例えば、特許文献6参照)。
【0008】
上記以外に、インクを2種類に分けて互いに重なるように打滴することに関する記載がなされたものがある(例えば、特許文献7参照)。
【特許文献1】特開昭63−60783号公報
【特許文献2】特開平8−174997号公報
【特許文献3】特許第3478495号
【特許文献4】特開平8−218018号公報
【特許文献5】特開2001−348519号公報
【特許文献6】特許3642152
【特許文献7】特開2000−135781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来の技術のみでは、例えばインク吸収速度の遅い非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いて記録を行なう場合に、高い画像濃度を得ようと隣接する液滴a1、液滴a2を重ねて打滴すると、隣接する液滴同士が非乾燥状態で媒体上に存在している際の液滴間の混合、すなわち隣接する液滴の合一という現象が生じてしまい、それに伴なう線幅の不均一や混色(色ムラ等)などを充分に解消することは困難である。
【0010】
さらに、2液を用いる系では、被記録媒体上で組成の異なる液を混合するため、特に顔料分散剤を用いている際に分散が良好に行われていないと混合によるショックにより、混合時点で分散破壊を起こして、画像濃度に影響を与えたり、画像の透明性が損なわれる課題がある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、長期での保存安定性に優れ、高濃度で混色及び色滲みのない高画質画像を記録することができるインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
また、本発明は、上記に加えて更に、ドット形状を保持し均質な線幅を有する画像の記録並びに、ベタツキがなく擦過性、耐光性、耐オゾン性に優れた画像の記録の可能なインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法を提供することをも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 少なくとも画像を形成するための少なくとも一種の第1の液体Aと、前記第1の液体Aと組成が異なる少なくとも一種の第2の液体Bとから構成されたインクジェット記録用インクセットであって、前記液体A及びBの少なくとも一方が、平均粒子サイズが50nm以下であり、粒子サイズの変動係数が50%以下である有機材料粒子を含有するインクジェット記録用インクセットである。
<2> 前記有機材料粒子は、再沈法により生成されたことを特徴とする前記<1>に記載のインクジェット記録用インクセットである。
<3> 前記有機材料粒子が、良溶媒に溶解した有機材料の溶液と、前記良溶媒と相溶する前記有機材料の貧溶媒と、高分子分散剤を含有する溶液との少なくとも3種を混合し、この混合液より前記有機材料を粒子として生成させてなることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用インクセットである。
<4> 前記有機材料が、有機顔料であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか一つに記載のインクジェット記録用インクセットである。
<5> 前記液体Bが、着色剤を含有しない、もしくは着色剤の含有量が1%未満であることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか一つに記載のインクジェット記録用インクセットである。
<6> 前記液体Aが、重合性もしくは架橋性材料を含むことを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか一つに記載のインクジェット記録用インクセットである。
<7> 前記液体Bが、界面活性剤を更に含むことを特徴とする前記<1>〜<6>のいずれか一つに記載のインクジェット記録用インクセットである。
【0013】
<8> 前記<1>〜<7>のいずれか一つに記載のインクジェット記録用インクセットを用い、第2の液体Bを第1の液体Aで形成される画像と同一もしくは該画像よりも広い範囲に予め被記録媒体に付与しておくインクジェット記録方法である。
<9> 前記液体Aを少なくとも第1の液滴a1及び液滴a2として、前記液滴a1と前記液滴a2とを重なり部分をもって打滴することで前記画像を形成することを特徴とする前記<8>に記載のインクジェット記録方法である。
<10> 前記重なり部分における重なり率が10%以上90%以下であることを特徴とする前記<9>に記載のインクジェット記録方法である。
<11> 前記液体Bの付与後、前記液体Aの前記液滴a1が打滴されるまでの打滴間隔が5μ秒以上400m秒以下であることを特徴とする前記<8>〜<10>のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法である。
<12> 前記液滴a1及び液滴a2を含む前記液体Aの液滴サイズが、0.1ピコリットル以上100ピコリットル以下であることを特徴とする前記<8>〜<11>のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法である。
<13> 前記液体Aの打滴までの間は前記液体Bを液体状に保持することを特徴とする前記<8>〜<12>のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法である。
<14> 前記液体Aが、重合性もしくは架橋性材料を含み、前記液滴Aの打滴後、活性エネルギーを前記画像に与えて重合性もしくは架橋性材料を重合もしくは架橋することを特徴とする前記<8>〜<13>のいずれか一つに記載のインクジェット記録方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、長期での保存安定性に優れ、高濃度で混色及び色滲みのない高画質画像を記録することができるインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法を提供することができる。
また、本発明によれば上記に加えて更に、ドット形状を保持し均質な線幅を有する画像の記録並びに、ベタツキがなく擦過性、耐光性、耐オゾン性に優れた画像の記録の可能なインクジェット記録用インクセット及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のインクジェット記録用インクセット及びこれを用いたインクジェット記録方法について詳細に説明する。
【0016】
本発明のインクジェット記録用インクセットは、少なくとも画像を形成するための少なくとも一種の第1の液体Aと、第1の液体Aと組成が異なる少なくとも一種の第2の液体Bとから構成され、第1の液体A及び第2の液体Bの少なくとも一方に、平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子を用いた構成としたものである。
【0017】
インクジェットプリンタにおけるインク吐出口(ヘッド)から被記録媒体の上に、第1の液体Aによる液滴a1、液滴a2、・・・と、第1の液体Aと組成が異なる第2の液体Bとをそれぞれ吐出して所望の画像を形成する場合、液体A及び/又は液体Bに「平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子」を用いることで、この有機材料粒子が微細で単分散性が高く外力(ショック)を受けても凝集しにくいことから、高い画像濃度を得るために液滴a1と液滴a2との間など液滴間で重なり部分を有するように打滴したときの、打滴された液滴同士が衝突、混合する際のショックで起きる分散破壊を効果的に回避できるので、高濃度で透明性に優れ、混色及び色滲みのない高画質な画像の記録が可能である。
また、互いに組成の異なる第1の液体Aと第2の液体Bとの2液系に構成するので、ドット形状を保持して均質な線幅を有する画像を記録でき、ベタツキがなく擦過性、耐光性、耐オゾン性にも優れる。
【0018】
以下、本発明のインクジェット記録用インクセットを構成する第1の液体A及び第2の液体Bについて詳細に説明する。
【0019】
第1の液体Aは、少なくとも画像を形成するための組成となるように構成され、第2の液体Bは少なくとも前記第1の液体Aと組成が異なるように構成されており、液体A又は液体B、あるいは液体A及び液体Bの双方には、平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子の少なくとも一種が含有される。
【0020】
−有機材料粒子−
本発明のインクジェット記録用インクセットを構成する液体A及び/又は液体Bに含有される有機材料粒子は、平均粒子サイズが50nm以下であり、粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子(以下、「本発明に係る有機材料粒子」ともいう。)である。本発明に係る有機材料粒子は、ある大きさの顔料をビーズ等で細かくした従来公知の粒子とは異なり、細かく単分散性で、濃縮系での有機粒子の粒径及び単分散性の変化が小さくあるいは変化のない均一な粒子であり、外部からショックが加わっても凝集しにくいために、安定な分散物が得られ、画像形成時の打滴の際に分散破壊を起こして、濃度の低下、透明性の低下、及び色混じりや色滲みの発生を防止するのに有効である。特に、被記録媒体上に打滴された2液を混合する際に下方側に打滴されたインク濃度が低下するのを防止できる。したがって、高濃度で透明性、色調に優れた高画質画像を記録することができる。
【0021】
本発明に係る有機材料粒子は、平均粒子サイズが50nm以下であり、好ましくは40nm以下である。下限値は10nmである。この平均粒子サイズは、微細分散された一次粒子のサイズであり、走査型電子顕微鏡S5200〔(株)日立製作所製〕を用いて直接観察して求められる。平均粒子サイズが前記範囲内であると、安定な分散物が得られ、画像形成時の打滴の際の分散破壊を起こしにくい。
【0022】
また、本発明に係る有機材料粒子は、粒子サイズの変動係数が50%以下であり、単分散性が高い。変動係数は小さい程よく、好ましくは45%以下である。
粒子サイズ分布の変動係数とは、粒子サイズ分布の標準偏差の平均粒子サイズに対する比率のことである。つまり、粒子の投影面積径、球相当経もしくは厚みの分布の標準偏差を、それぞれ投影面積径、球相当径もしくは厚みの平均値で割った値に100をかけて%で表示した値である。粒子サイズ分布は、公知のいかなる方法で測定されたものでもよいが、電子顕微鏡写真により粒子の形状を観察して測定する方法により得ることができる。具体的には、走査型電子顕微鏡S5200〔(株)日立製作所製〕を用いて求められる。
【0023】
本発明の有機材料粒子は、再沈法により生成されたものであることが好ましい。再沈法とは、有機材料を良溶媒に溶解しておき、前記有機材料の貧溶媒と混合することにより、粒子として生成、調製する方法である。この方法の中でも、以下に示す方法を用いることが更に好ましい。
【0024】
以下に再沈法の好ましい方法を示す。
本発明に係る有機材料粒子は、良溶媒に溶解した有機材料の溶液と、前記良溶媒と相溶する前記有機材料の貧溶媒と、高分子分散剤を含有する溶液との少なくとも3種を混合し、この混合液より前記有機材料を粒子として生成させることによって調製することができる。なお、本発明に係る有機材料粒子は、結晶質粒子でも非結晶性粒子でもよく、これらの混合物であってもよい。
以下、本発明に係る有機材料粒子の調製方法について詳述する。
【0025】
[有機材料粒子として用いられる材料]
有機材料粒子を形成する有機材料は、再沈法で粒子形成することができるものであれば特に制限はない。有機材料には、有色の着色材料と実質的に無色の無着色材料とが含まれ、例えば、有機顔料、有機色素、フラーレン、ポリジアセチレン、ポリイミドなどの高分子化合物、芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素(例えば、配向性を有する芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素、または昇華性を有する芳香族炭化水素もしくは脂肪族炭化水素)などからなる粒子が挙げられ、有機顔料、有機色素、または高分子化合物が好ましく、有機顔料が特に好ましい。また、これらを組み合わせたものでもよい。
【0026】
有機顔料は、色相的に限定されるものではなく、例えば、ペリレン、ペリノン、キナクリドン、キナクリドンキノン、アントラキノン、アントアントロン、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合、ジスアゾ、アゾ、インダントロン、フタロシアニン、トリアリールカルボニウム、ジオキサジン、アミノアントラキノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、イソインドリン、イソインドリノン、ピラントロンもしくはイソビオラントロン系顔料、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0027】
更に詳しくは、例えば、C.I.ピグメントレッド190(C.I.番号71140)、C.I.ピグメントレッド224(C.I.番号71127)、C.I.ピグメントバイオレット29(C.I.番号71129)等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.番号71105)、もしくはC.I.ピグメントレッド194(C.I.番号71100)等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット19(C.I.番号73900)、C.I.ピグメントバイオレット42、C.I.ピグメントレッド122(C.I.番号73915)、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド202(C.I.番号73907)、C.I.ピグメントレッド207(C.I.番号73900、73906)、もしくはC.I.ピグメントレッド209(C.I.番号73905)のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントレッド206(C.I.番号73900/73920)、C.I.ピグメントオレンジ48(C.I.番号73900/73920)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ49(C.I.番号73900/73920)等のキナクリドンキノン系顔料、C.I.ピグメントイエロー147(C.I.番号60645)等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド168(C.I.番号59300)等のアントアントロン系顔料、C.I.ピグメントブラウン25(C.I.番号12510)、C.I.ピグメントバイオレット32(C.I.番号12517)、C.I.ピグメントイエロー180(C.I.番号21290)、C.I.ピグメントイエロー181(C.I.番号11777)、C.I.ピグメントオレンジ62(C.I.番号11775)、もしくはC.I.ピグメントレッド185(C.I.番号12516)等のベンズイミダゾロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー93(C.I.番号20710)、C.I.ピグメントイエロー94(C.I.番号20038)、C.I.ピグメントイエロー95(C.I.番号20034)、C.I.ピグメントイエロー128(C.I.番号20037)、C.I.ピグメントイエロー166(C.I.番号20035)、C.I.ピグメントオレンジ34(C.I.番号21115)、C.I.ピグメントオレンジ13(C.I.番号21110)、C.I.ピグメントオレンジ31(C.I.番号20050)、C.I.ピグメントレッド144(C.I.番号20735)、C.I.ピグメントレッド166(C.I.番号20730)、C.I.ピグメントレッド220(C.I.番号20055)、C.I.ピグメントレッド221(C.I.番号20065)、C.I.ピグメントレッド242(C.I.番号20067)、C.I.ピグメントレッド248、C.I.ピグメントレッド262、もしくはC.I.ピグメントブラウン23(C.I.番号20060)等のジスアゾ縮合系顔料、
【0028】
C.I.ピグメントイエロー13(C.I.番号21100)、C.I.ピグメントイエロー83(C.I.番号21108)、もしくはC.I.ピグメントイエロー188(C.I.番号21094)等のジスアゾ系顔料、C.I.ピグメントレッド187(C.I.番号12486)、C.I.ピグメントレッド170(C.I.番号12475)、C.I.ピグメントイエロー74(C.I.番号11714)、C.I.ピグメントイエロー150(C.I.番号48545)、C.I.ピグメントレッド48(C.I.番号15865)、C.I.ピグメントレッド53(C.I.番号15585)、C.I.ピグメントオレンジ64(C.I.番号12760)、もしくはC.I.ピグメントレッド247(C.I.番号15915)等のアゾ系顔料、C.I.ピグメントブルー60(C.I.番号69800)等のインダントロン系顔料、C.I.ピグメントグリーン7(C.I.番号74260)、C.I.ピグメントグリーン36(C.I.番号74265)、ピグメントグリーン37(C.I.番号74255)、ピグメントブルー16(C.I.番号74100)、C.I.ピグメントブルー75(C.I.番号74160:2)、もしくは15(C.I.番号74160)等のフタロシアニン系顔料、C.I.ピグメントブルー56(C.I.番号42800)、もしくはC.I.ピグメントブルー61(C.I.番号42765:1)等のトリアリールカルボニウム系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23(C.I.番号51319)、もしくはC.I.ピグメントバイオレット37(C.I.番号51345)等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントレッド177(C.I.番号65300)等のアミノアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド254(C.I.番号56110)、C.I.ピグメントレッド255(C.I.番号561050)、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド272(C.I.番号561150)、C.I.ピグメントオレンジ71、もしくはC.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール系顔料、C.I.ピグメントレッド88(C.I.番号73312)等のチオインジゴ系顔料、C.I.ピグメントイエロー139(C.I.番号56298)、C.I.ピグメントオレンジ66(C.I.番号48210)等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109(C.I.番号56284)、もしくはC.I.ピグメントオレンジ61(C.I.番号11295)等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ40(C.I.番号59700)、もしくはC.I.ピグメントレッド216(C.I.番号59710)等のピラントロン系顔料、またはC.I.ピグメントバイオレット31(60010)等のイソビオラントロン系顔料が挙げられる。
本発明においては、2種類以上の有機顔料または有機顔料の固溶体を組み合わせて用いることもできる。
【0029】
有機色素としては、例えば、アゾ色素、シアニン色素、メロシアニン色素、クマリン系色素などが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリジアセチレン、ポリイミドなどが挙げられる。
【0030】
[有機材料粒子の形成]
次に、有機材料粒子の形成について説明する。
本発明に係る有機材料粒子中の有機材料粒子(以下、有機粒子ともいう。)は、有機材料を良溶媒に溶解した有機材料溶液と、有機材料の貧溶媒と、高分子分散剤溶液とを混合して有機粒子を得る再沈法によって好適に形成することができる(以下、再沈法により得られた有機粒子液を「有機粒子再沈液」という。)。
【0031】
−有機粒子形成時の良溶媒−
まず、有機材料を溶解する良溶媒について説明する。
良溶媒は用いる有機材料を溶解することが可能で、有機粒子作製時に用いる貧溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に制限はない。有機材料の良溶媒への溶解性は有機材料の溶解度が0.2質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。この溶解度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。貧溶媒と良溶媒との相溶性もしくは均一混合性の好ましい範囲は、良溶媒の貧溶媒に対する溶解量が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0032】
良溶媒としては、例えば、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、二硫化炭素、脂肪族系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、スルホキシド系溶媒またはアミド系溶媒が好ましく、水系溶媒、スルホキシド系溶媒またはアミド系溶媒がより好ましく、スルホキシド系溶媒またはアミド系溶媒が特に好ましい。
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
また、良溶媒に有機材料を溶解した有機材料溶液の濃度としては、溶解時の条件における有機材料の良溶媒に対する飽和濃度乃至これの1/100程度の範囲が望ましく、用いられる有機材料にもよるが、例えば、0.5〜12質量%が好ましく、工業的な生産規模まで見据えより高い収量が求められるときは、2〜12質量%とすることが好ましい。
有機材料溶液の調整条件は、有機材料溶液の調整条件に特に制約はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−10〜150℃が好ましく、−5〜130℃がより好ましく、0〜100℃が特に好ましい。
【0033】
本発明において有機材料は、良溶媒中に均一に溶解するが、酸性でもしくはアルカリ性で溶解することも好ましい。一般に分子内にアルカリ性で解離可能な基を有する顔料の場合はアルカリ性が、アルカリ性で解離する基が存在せず、プロトンが付加しやすい窒素原子を分子内に多く有するときは酸性が用いられる。例えば、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ジスアゾ縮合系顔料はアルカリ性で、フタロシアニン系顔料は酸性で溶解される。
【0034】
アルカリ性で溶解させる場合に用いられる塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、金属アルコキシドなどの有機塩基であるが、好ましくは無機塩基である。
【0035】
使用される塩基の量は、顔料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、無機塩基の場合、好ましくは有機材料に対して1.0〜30モル当量であり、より好ましくは1.0〜25モル当量であり、さらに好ましくは1.0〜20モル当量である。有機塩基の場合、好ましくは有機材料に対して1.0〜100モル当量であり、より好ましくは5.0〜100モル当量であり、さらに好ましくは20〜100モル当量である。
【0036】
酸性で溶解させる場合に用いられる酸は、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸であるが好ましくは無機酸である。特に好ましくは硫酸である。
使用される酸の量は、有機材料を均一に溶解可能な量であり、特に限定されないが、塩基に比べて過剰量用いられる場合が多い。無機酸および有機酸の場合を問わず、好ましくは有機材料に対して3〜500モル当量であり、より好ましくは10〜500モル当量であり、さらに好ましくは30〜200モル当量である。
【0037】
アルカリまたは酸を有機溶媒と混合して、有機材料の良溶媒として用いる際は、アルカリまたは酸を完全に溶解させるため、若干の水や低級アルコールなどのアルカリまたは酸に対して高い溶解度をもつ溶剤を、有機溶媒に添加することができる。水や低級アルコールの量は、有機材料溶液全量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどを用いることができる。
【0038】
−有機材料の貧溶媒−
次に、有機材料の貧溶媒について説明する。
有機材料の貧溶媒は、有機材料を溶解する良溶媒と相溶するもしくは均一に混ざるものであれば特に制限はない。有機材料の貧溶媒としては、有機材料の溶解度が0.02質量
%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。この溶解
度は酸またはアルカリの存在下で溶解された場合の溶解度であってもよい。また、良溶媒と貧溶媒との相溶性もしくは均一混合性は、良溶媒の項で述べたとおりである。
貧溶媒としては、例えば、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、二硫化炭素、脂肪族系溶媒、ニトリル系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水系溶媒、アルコール系溶媒またはエステル系溶媒が好ましい。特にインクジェット用途においては水系溶媒が非常に好ましい。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、1−メトキシ−2−プロパノールなどが挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。脂肪族系溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、トリクロロエチレンなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPF6―との塩などが挙げられる。
【0039】
−有機粒子形成時の分散剤−
有機粒子の調製では、高分子分散剤を有機粒子形成時に添加するが,有機材料溶液および有機材料の貧溶媒以外の第3の溶液中に含有させて添加する。なお、高分子分散剤の分子量は溶液として均一に溶解できるものであれば制限なく用いることができるが、好ましくは分子量1,000〜2,000,000であり、5,000〜1,000,000がより好ましく、10,000〜500,000がさらに好ましく、10,000〜100,000が特に好ましい(本発明においては、特に断りのない限り、分子量とは重量平均分子量を意味する。高分子化合物は多分散系であり、必ずしも同一の分子量または粒子量を持たない。したがって、分子量を測定すると得られた値はなんらかの形で平均された平均分子量になる。その主なものは次の3種類である。すなわち、(1)数平均分子量Mn、(2)重量平均分子量Mw、(3)Z平均分子量Mzであり、Mn<Mw<Mzの関係が成立する。)。
【0040】
有機材料粒子の調製において、高分子分散剤を溶解する溶媒は、高分子分散剤を所望の濃度に溶解することができれば特に制限はないが、例えば、水系溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、二硫化炭素、脂肪族系溶媒、ニトリル系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水系溶媒、アルコール系溶媒またはエステル系溶媒が好ましい。
また、高分子分散剤溶液の濃度は、高分子分散剤の溶解度等により適宜定められるが、高分子分散剤の量(他の分散剤と併用するときはその総量)が、溶液の全量に対し1〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることが特に好ましい。
【0041】
高分子分散剤として、具体的には例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ビニルアルコール−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール−部分ホルマール化物、ポリビニルアルコール−部分ブチラール化物、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニル硫酸塩、ポリ(4−ビニルピリジン)塩、ポリアミド、ポリアリルアミン塩、縮合ナフタレンスルホン酸塩、スチレン−アクリル酸塩共重合物、スチレン−メタクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、アクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−アクリル酸塩共重合物、メタクリル酸エステル−メタクリル酸塩共重合物、スチレン−イタコン酸塩共重合物、イタコン酸エステル−イタコン酸塩共重合物、ビニルナフタレン−アクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−メタクリル酸塩共重合物、ビニルナフタレン−イタコン酸塩共重合物、セルロース誘導体、澱粉誘導体などが挙げられる。その他、アルギン酸塩、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、アラビアゴム、トンガントゴム、リグニンスルホン酸塩などの天然高分子類も使用できる。なかでも、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンが好ましい。これら高分子分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
高分子分散剤以外にも、アニオン性、カチオン性、両イオン性、ノニオン性もしくは顔料性の、低分子分散剤を併用することも望ましい。これらの低分子分散剤は、有機材料溶液および有機材料の貧溶媒の両方もしくは一方に分散剤を添加することができる。または高分子分散剤溶液中に添加することも非常に好ましい。併用する分散剤に関しては、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」(化学情報協会、2001年12月発行)の29〜46頁に詳しく記載されている。
【0042】
アニオン性分散剤(アニオン性界面活性剤)としては、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。なかでも、N−アシル−N−アルキルタウリン塩が好ましい。N−アシル−N−アルキルタウリン塩としては、特開平3−273067号明細書に記載されているものが好ましい。これらアニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
カチオン性分散剤(カチオン性界面活性剤)には、四級アンモニウム塩、アルコキシル化ポリアミン、脂肪族アミンポリグリコールエーテル、脂肪族アミン、脂肪族アミンと脂肪族アルコールから誘導されるジアミンおよびポリアミン、脂肪酸から誘導されるイミダゾリンおよびこれらのカチオン性物質の塩が含まれる。これらカチオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
両イオン性分散剤は、前記アニオン性分散剤が分子内に有するアニオン基部分とカチオン性分散剤が分子内に有するカチオン基部分を共に分子内に有する分散剤である。
ノニオン性分散剤(ノニオン性界面活性剤)としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。なかでも、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルが好ましい。これらノニオン性分散剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
顔料性分散剤とは、親物質としての有機顔料から誘導され、その親構造を化学修飾することで製造される顔料性分散剤と定義する。例えば、糖含有顔料分散剤、ピペリジル含有顔料分散剤、ナフタレンまたはペリレン誘導顔料分散剤、メチレン基を介して顔料親構造に連結された官能基を有する顔料分散剤、ポリマーで化学修飾された顔料親構造、スルホン酸基を有する顔料分散剤、スルホンアミド基を有する顔料分散剤、エーテル基を有する顔料分散剤、あるいはカルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボキサミド基を有する顔料分散剤などがある。カラーフィルター用途を考えたときには、アルカリ可溶性の高分子分散剤を用いることが好ましい。また、特開2000−239554に記載の一般式(I)で表される化合物も好ましく用いられる。
高分子分散剤の有機材料に対する量(他の分散剤と併用するときはその総量)は、有機粒子の均一分散性および保存安定性をより一層向上させるために、有機材料100質量部に対して0.1〜1000質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜500質量部の範囲であり、特に好ましくは10〜250質量部の範囲である。0.1質量部未満であると有機材料粒子の分散安定性の向上が見られない場合がある。
【0046】
[有機粒子形成時の条件]
有機粒子作製時、すなわち有機粒子を析出し、形成する際の貧溶媒の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。
有機材料溶液(a)と、有機材料の貧溶媒(b)と、高分子分散剤溶液(c)との混合方法は、特に制限はなく、同時に混合しても、逐次的に混合してもよいが、十分量の貧溶媒(b)に対し、有機材料溶液(a)と高分子分散剤溶液(c)とを連続的に添加することが好ましく、このとき有機材料溶液(a)と高分子分散剤溶液(c)を同時に添加することがより好ましい。
有機材料溶液(a)および/または高分子分散剤溶液(c)を貧溶媒(b)に添加する際、貧溶媒(b)が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。
有機材料溶液(a)、貧溶媒(b)、高分子分散剤溶液(c)の混合比は、体積比で1<b/a<20、1<b/c<100が好ましい。
得られる有機粒子再沈液の濃度は、有機粒子を生成しうる範囲であれば特に制限されないが、分散溶媒1000mlに対して有機粒子が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
【0047】
[有機材料粒子の粒径、単分散性]
有機材料粒子の粒径(平均粒子サイズ)に関しては、計測法により数値化して集団の平均の大きさを表現する方法があるが、よく使用されるものとして、分布の最大値を示すモード径、積分分布曲線の中央値に相当するメジアン径、各種の平均径(数平均、長さ平均、面積平均、重量平均、体積平均等)などがある。本発明においては、特に断りのない限り、平均粒子サイズは数平均径で表す。有機粒子(一次粒子)の粒径は、50nm以下であるが、45nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましい。
【0048】
また、粒子の単分散性を表す指標として、有機粒子の濃縮方法に用いられる有機粒子分散液に含まれる粒子(一次粒子)の単分散性、つまり体積平均粒径(Mv)と数平均粒径(Mn)との比(Mv/Mn)は、1.0〜2.0であることが好ましく、1.0〜1.8であることがより好ましく、1.0〜1.5であることが特に好ましい。
【0049】
[有機粒子形成法(製造装置)]
有機材料粒子の形成に用いられる製造装置及びそれを用いた粒子形成法について、以下に好ましい具体例を説明する。但し、この例示により本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0050】
(有機粒子製造装置例1)
図1は本発明において、一実施態様として用いられる製造装置の概略図である。図1において有機材料溶液は供給管14aにより、高分子分散剤溶液は14bにより容器11内に設けられた混合室13内へ連続的に供給される。ここに容器11内には貧溶媒11aが容れられており、該混合室13は貧溶媒の液面下に設けられ、その内部は該貧溶媒により満たされている。また反応容器11内のバルク貧溶媒は該混合室13内での攪拌の作用により、該混合室13内を下方から上方へ(図中矢印の方向へ)横切るようにつねに対流せしめられている。
【0051】
図2は、図1の製造装置の一実施態様として混合室13を拡大して概略的に示した拡大部分断面図である。有機材料溶液は供給管14aより、高分子分散剤溶液は14bより混合室13内へ供給される。該混合室13は断面積一定の直四角筒よりなるケーシング17により形成され、ケーシング17の上端は開放端とされ、下端には円形孔18が設けられて該混合器13内の貧溶媒がバルク貧溶媒と互いに連結するようになっている。ここに有機材料溶液供給管14aおよび高分子分散剤溶液供給管14bはケーシング17の下端を構成する壁内に設けられ、前記円形孔に向けて開口している。また前記混合器13内には撹拌羽根12が設けられており、撹拌羽根はシャフト15に取り付けられ、モーター(図示せず)により回転せしめられる。この攪拌羽根12の回転により、貧溶媒は円形孔18を通り混合器13内を下方から上方へ向かってつねに循環運動せしめられている。
【0052】
上記の混合室13に設けられた撹拌羽根12は、混合室内に所望の混合強さをつくり出すものでなければならない。この混合強さは、有機材料溶液および高分子分散剤溶液が混入した際の液滴(ドロップレット)の大きさに対する重要な操作因子であることが推定される。
また、撹拌羽根12は、混合空間内で生成した有機粒子が混合室13にとどまることにより、他の有機粒子と結合して更に大きな粒子となったり、混合室13に供給される有機材料溶液にさらされて大きな粒子となったりして巨大粒子が生成することがないよう、生成した有機粒子を迅速に引き出し、迅速に混合室13外へ排出する能力を有するものが選ばれることが好ましい。
撹拌羽根12としては上記目的が達成されれば、いかなる形式のものでもよく、例えばタービン型、ファンタービン型等が用いられうる。
またケーシング17は、前述のごとく四角筒により構成されていることが好ましい。このようにすることで、撹拌羽根12によりつくられた流れをケーシング17の角が乱し、邪魔板のごとき付加物を要することなく、混合効果を一層高めることができる。
【0053】
図3は、図1の製造装置の別の実施態様として混合室内の撹拌羽根を二つ(混合用撹拌羽根19a、排出用撹拌羽根19b)にした混合器の拡大部分断面図である。このように撹拌羽根を二つ設けることによって、混合強さをコントロールする能力と、生成した有機粒子を混合器外へ排出する能力を独立に選択することができるようにし、混合の強さ、循環量を独立に所望の値に設定して操作することが可能となる。
【0054】
(有機粒子製造装置例2)
図4は、本発明に係る有機材料粒子の製造に用いられる製造装置の別の実施態様を概略的に示す断面図である。図4において有機材料溶液および貧溶媒はそれぞれ供給管24a、24bにより撹拌槽21a内に連続的に供給される。同時に高分子分散剤溶液はその他の供給管24cより撹拌槽21a内に連続的に供給される。撹拌槽21a内で生成した有機粒子が撹拌槽21a内にとどまることにより、他の有機粒子と結合して更に大きな粒子となったり、供給される有機材料溶液にさらされて大きな粒子となったりして巨大粒子が生成することがないよう、生成した有機粒子再沈液は排出管23より迅速に引き出される。
【0055】
図5は、本発明の有機粒子の製造に用いられる装置の、さらに別の実施態様を概略的に示す断面図である。図5の製造装置においては、撹拌装置50は、有機材料溶液および貧溶媒をそれぞれ流入させる2つの液供給口32,33と、高分子材料溶液を流入させる供給口31と、撹拌処理を終えた混合液体を排出する液排出口36とを備えた円筒状の撹拌槽38と、該撹拌槽38内で回転駆動されることで該撹拌槽38内の液体の撹拌状態を制御する撹拌手段である一対の撹拌羽根41,42とを備えてなる。
撹拌槽38は、上下方向に中心軸を向けた円筒状の槽本体39と、該槽本体39の上下の開口端を塞ぐ槽壁となるシールプレート40とで構成されている。また、撹拌槽38および槽本体39は、透磁性に優れた非磁性材料で形成されている。2つの液供給口32,33は槽本体39の下端寄りの位置に装備されており、液排出口36は槽本体39の上端寄りの位置に装備されている。
【0056】
そして、一対の撹拌羽根41,42は、撹拌槽38内の相対向する上下端に離間して配置されて、互いに逆向きに回転駆動される。各撹拌羽根41,42は、それぞれの撹拌羽根41,42が近接する槽壁(シールプレート40)の外側に配置された外部磁石46と磁気カップリングCを構成している。即ち、各、撹拌羽根41,42は、磁力でそれぞれの外部磁石46に連結されており、各外部磁石46を独立したモーター48,49で回転駆動することで、互いに逆向きに回転操作される。
【0057】
槽38内に対向配置された一対の撹拌羽根41,42は、図5中に波線の矢印(X)及び実線の矢印(Y)で示すように、それぞれ向きの異なる撹拌流を槽38内に形成する。そして、それぞれの撹拌羽根41,42の形成する撹拌流は、流れ方向が異なるために互いに衝突して槽38内における撹拌を促進する高速の乱流を槽38内に生成して、槽38内の流れが定常化することを防止し、撹拌羽根41,42の回転を高速化した場合にも撹拌羽根41,42の回転軸回りに空洞が形成されることを阻止すると同時に、撹拌作用を十分に受けずに撹拌槽38の内周面に沿って槽38内を流れる定常流が形成されるという不都合の発生を阻止することができる。したがって、撹拌羽根41,42の回転の高速化により、容易に処理速度を向上させることができ、さらに、その際に、槽38内の液体の流れが定常化して撹拌混合が不十分の液体が排出されることを阻止して、処理品位の低下を防止することができる。
また、撹拌槽38内の各撹拌羽根41,42は、磁気カップリングCによって撹拌槽38の外部に配置されたモーター48,49に連結されているため、撹拌槽38の槽壁に回転軸を挿通させる必要がなくなり、撹拌槽38を回転軸の挿通部のない密閉容器構造にすることができるため、撹拌混合した液の槽外への漏出を防止すると同時に、回転軸用の潤滑液(シール液)等が不純物として槽38内の液に混入することによる処理品位の低下を防止することができる。
【0058】
本発明に係る有機粒子の製造において、これらの構成を有する製造装置を用いて、バッチ方式だけでなく連続フロー方式でも有機粒子の製造をすることができ、大量生産にも対応できる。また生成した有機粒子再沈液が迅速に排出されることにより、撹拌槽内に供給される有機材料溶液と貧溶媒液の比を常に一定にすることが可能になる。このため、製造開始時から製造終了時まで、分散液の有機材料の溶解度を一定にすることが可能になり、単分散な有機粒子を安定に製造することができる。
さらに槽内の液体の流れが定常化して撹拌混合が不十分の混合液が排出されることを阻止し、また、回転軸用の潤滑液(シール液)等が不純物として槽内の液に混入することを防止することで、単分散な有機粒子をさらに安定に製造することができる。
【0059】
[有機粒子再沈液の濃縮]
本発明においては、有機粒子再沈液を脱塩濃縮することによって、好適なインクジェット記録用インクとすることができる有機粒子分散組成物を工業的な規模で生産することが可能である。
以下に、分散液を濃縮する方法について説明する。
濃縮方法に関しては、有機粒子液を濃縮できれば特に制限されないが、例えば、(i)限外ろ過法により脱塩濃縮を行う方法、(ii)濃縮抽出法によって(必要に応じてフィルターろ過と組み合わせて)濃縮する方法、(iii)遠心分離法によって有機粒子を沈降させて濃縮する方法、(iv)乾燥法(真空凍結乾燥により溶媒を昇華させて濃縮する方法、加熱ないし減圧による溶媒を乾燥させて濃縮する方法等)が好ましく、これらの組合せなども好ましく用いられる。濃縮後の有機粒子液(以下、「濃縮有機粒子液」ともいう。)の濃度は用途や再分散条件等に応じて適宜定められるが、濃縮有機粒子液全量に対して、有機粒子の濃度が1〜100質量%であることが好ましく、5〜100質量%であることがより好ましく、10〜100質量%であることが特に好ましい。
【0060】
本発明では、濃縮有機粒子液とした液中の有機粒子を凝集させずに分散状態で得ることができ、有機粒子分散組成物とすることができる。すなわち、粒子形成時に、有機材料溶液および有機材料の貧溶媒とは別系統で高分子分散剤溶液を混合することで、再凝集を抑制することを可能としたものである。さらに、工業的な生産規模まで見据え濃縮化工程の容易化を図るとき、有機材料の溶液の濃厚化が非常に有効であるが、このような場合であっても高分子分散剤を有機材料溶液中に共存させて濃厚化することで、粒子サイズの望ましくない変化を抑制しうるものである。濃縮前後での凝集による粒径の変化は、用いられる有機材料等にもよるが、凝集させない場合、粒径変化率(濃縮後粒径を濃縮前粒径で除した値から1を減じた値)で示すと20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
【0061】
(i)限外ろ過法
限外ろ過は、例えばハロゲン化銀乳剤の脱塩/濃縮に用いられる方法を適用することが
できる。リサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)No.10208(1972)、No.13 122(1975)およびNo.16 351(1977)が知られている。操作条件として重要な圧力差や流量は、大矢春彦著「膜利用技術ハンドブック」幸書房出版(1978)、p275に記載の特性曲線を参考に選定することができるが、目的の有機粒子分散組成物を処理する上では、粒子の凝集を抑えるために最適条件を見いだす必要がある。また、膜透過より損失する溶媒を補充する方法においては、連続して溶媒を添加する定容式と断続的に分けて添加する回分式とがあるが、脱塩処理時間が相対的に短い定容式が好ましい。こうして補充する溶媒には、イオン交換または蒸留して得られた純水を用いるが、純水の中に分散剤、分散剤の貧溶媒を混合してもよいし、有機粒子分散組成物に直接添加してもよい。
【0062】
図6に、限外ろ過を行うための装置の一構成例を示す。図6に示されるように、この装置は有機粒子再沈液を収納するタンク81、このタンク81内の有機粒子再沈液を循環させる循環用ポンプ82、および循環用ポンプ82によって導入された分散物中の副生成無機塩を透過水として除去する限外ろ過モジュール83を有する。透過水が分離された分散物は再度タンク81内に戻され、同様の操作が、副生成無機塩の除去の所定の目的が達成されるまで、繰り返し行われる。さらに、この装置には、透過水によって失われる溶媒を純水として一定量補充するために使用される補充純水計測用流量計84が設置されており、純水補充量を決定するのに用いられる透過水計測用流量計85が設置されている。また、透過水を希薄にするための水を導入するための逆方向洗浄用ポンプ86が設置されている。
【0063】
限外ろ過膜は、すでにモジュールとして組み込まれた平板型、スパイラル型、円筒型、中空糸型、ホローファイバー型などが旭化成(株)、ダイセル化学(株)、(株)東レ、(株)日東電工などから市販されているが、総膜面積や洗浄性の観点より、スパイラル型もしくは中空糸型が好ましい。また、膜を透過することができる成分のしきい値の指標となる分画分子量は、用いられる分散剤の分子量より決定する必要があるが、5,000以上50,000以下のものが好ましく、5,000以上15,000以下のものがより好ま
しい。
【0064】
(ii)濃縮抽出法
濃縮抽出法は、有機粒子再沈液に、抽出溶媒を添加混合し、有機粒子を該抽出溶媒相に濃縮抽出して(濃縮抽出後の有機粒子液を「濃縮抽出液」、「有機粒子濃縮抽出液」などともいう。)、その濃縮抽出液を必要に応じてフィルターなどによりろ過して濃縮する方法である。
用いられる抽出溶媒は特に制限されないが、有機粒子再沈液の分散溶媒(例えば、水系溶媒)と実質的に混じり合わず(本発明において、実質的に混じり合わずとは、相溶性が低いことをいい、溶解量50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい)、混合後、静置すると界面を形成する溶媒であることが好ましい。また、この抽出溶媒は、有機粒子が抽出溶媒中で再分散しうる弱い凝集(ミリングまたは高速攪拌などの高いせん断力を加えなくても再分散が可能である)を生ずる溶媒であることが好ましい。このような状態であれば、粒子サイズを変化させる強固な凝集を起こさず、目的の有機粒子を抽出溶媒で湿潤させる一方、フィルターろ過などにより容易に水などの分散溶媒を除去することができる点で好ましい。
抽出溶媒としてはエステル系溶媒、アルコール系溶媒、芳香族系溶媒、脂肪族系溶媒が好ましく、エステル系溶媒、芳香族系溶媒または脂肪族系溶媒がより好ましく、エステル系溶媒が特に好ましい。
エステル系溶媒としては、例えば、2−(1−メトキシ)プロピルアセテート、酢酸エチル、乳酸エチルなどが挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、n−ブタノール、イソブタノールなどが挙げられる。芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。脂肪族系溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどが挙げられる。また、抽出溶媒は上記の好ましい溶媒による純溶媒であっても、複数の溶媒による混合溶媒であってもよい。
【0065】
抽出溶媒の量は有機粒子を抽出できれば特に制約されないが、濃縮して抽出することを考慮して有機粒子再沈液より少量であることが好ましい。これを体積比で示すと、有機粒子再沈液を100としたとき、添加される抽出溶媒は1〜100の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜90の範囲であり、20〜80の範囲が特に好ましい。多すぎると濃縮化に多大な時間を要し、少なすぎると抽出が不十分で分散溶媒中に粒子が残存する。
抽出溶媒を添加した後、分散液と十分に接触するように攪拌混合することが好ましい。攪拌混合は常用の方法を用いることができる。抽出溶媒を添加し混合するときの温度に特に制約はないが、1〜100℃であることが好ましく、5〜60℃であることがより好ましい。抽出溶媒の添加、混合はそれぞれの工程を好ましく実施できるものであればどのような装置を用いてもよいが、例えば、分液ロート型の装置を用いて実施できる。
【0066】
濃縮抽出法によれば、有機粒子再沈液から効率よく有機粒子を濃縮することができる。濃縮倍率に関しては、例えば、濃縮後の有機粒子液における濃度を好ましくは100〜1000倍程度、より好ましくは500〜1000倍程度まで濃縮することもできる。さらに、有機粒子の抽出後に残された分散溶媒に有機粒子がほとんど残留せず、高い抽出率とすることができる。
【0067】
有機粒子再沈液の分散溶媒と濃縮抽出液を分離するため、フィルターろ過することが好ましい。フィルターろ過の装置は、例えば、加圧ろ過のような装置を用いることができる。好ましいフィルターとしては、ナノフィルター、ウルトラフィルターなどが挙げられる。フィルターろ過により、残された分散溶媒の除去を行い、濃縮抽出液中の有機粒子をさらに濃縮することが好ましい。
【0068】
(iii)遠心分離法
遠心分離による有機粒子の濃縮に用いられる遠心分離機は有機粒子再沈液(または有機粒子濃縮抽出液)中の有機粒子を沈降させることができればどのような装置を用いてもよい。遠心分離機としては、例えば、汎用の装置の他にもスキミング機能(回転中に上澄み層を吸引し、系外に排出する機能)付きのものや、連続的に固形物を排出する連続遠心分離機などが挙げられる。
遠心分離条件は、遠心力(重力加速度の何倍の遠心加速度がかかるかを表す値)で50〜10000が好ましく、100〜8000がより好ましく、150〜6000が特に好ましい。遠心分離時の温度は、分散液の溶剤種によるが、−10〜80℃が好ましく、−5〜70℃がより好ましく、0〜60℃が特に好ましい。
【0069】
(iv)乾燥法
・減圧乾燥法
減圧乾燥による有機粒子の濃縮に用いられる装置は有機粒子再沈液(または有機粒子濃縮抽出液)の溶媒を蒸発させることができれば特に制限はない。例えば、汎用の真空乾燥器およびロータリーポンプや、液を撹拌しながら加熱減圧乾燥できる装置、液を加熱減圧した管中に通すことによって連続的に乾燥ができる装置等が挙げられる。
加熱減圧乾燥温度は30〜230℃が好ましく、35〜200℃がより好ましく、40〜180℃が特に好ましい。減圧時の圧力は、100〜100000Paが好ましく、300〜90000Paがより好ましく、500〜80000Paが特に好ましい。
減圧乾燥法により濃縮すれば、有機粒子再沈液から効率よく有機粒子を濃縮することができ、濃縮倍率に関しては、例えば、原料となる有機粒子再沈液中の有機粒子の密度を1とすると、濃縮有機粒子液における密度を好ましくは100〜3000倍程度、より好ましくは500〜2000倍程度まで濃縮することができる。
【0070】
・凍結乾燥法
凍結乾燥の方法は特に限定されず、例えば、冷媒直膨方法、重複冷凍方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、間接加熱凍結方法が挙げられるが、好ましくは冷媒直膨方法、間接加熱凍結方法、より好ましくは間接加熱凍結方法を用いるのがよい。いずれの方法においても、予備凍結を行なった後凍結乾燥を行なうことが好ましい。予備凍結の条件は特に限定されないが、凍結乾燥を行なう試料がまんべんなく凍結されている必要がある。
間接加熱凍結方法の装置としては、小型凍結乾燥機、FTS凍結乾燥機、LYOVAC凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、三重熱交換真空凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、HULL凍結乾燥機が挙げられるが、好ましくは小型凍結乾燥機、実験用凍結乾燥機、研究用凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機、より好ましくは小型凍結乾燥機、モノクーリング式凍結乾燥機を用いるのがよい。
凍結乾燥の温度は特に限定されないが、例えば−190〜−4℃、好ましくは−120〜−20℃、より好ましくは−80〜−60℃程度である。凍結乾燥の圧力も特に限定されず、当業者が適宜選択可能であるが、例えば、0.1〜35Pa、好ましくは1〜15Pa、さらに好ましくは、5〜10Pa程度で行なうのがよい。凍結乾燥時間は、例えば2〜48時間、好ましくは6〜36時間、より好ましくは16〜26時間程度である。もっとも、これらの条件は当業者に適宜選択可能である。凍結乾燥方法については、例えば、製剤機械技術ハンドブック:製剤機械技術研究会編、地人書館、p.120-129(2000年9月);真空ハンドブック:日本真空技術株式会社編、オーム社、p.328-331(1992年);凍結及び乾燥研究会会誌:伊藤孝治他、No.15、p.82(1965)などを参照することができる。
【0071】
有機材料粒子としては、不要なイオンを除去した組成物とすることが好ましい。除去されるイオンは、特に限定されないが、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、塩素(Cl)等の分子量の小さいものを除去することが好ましい。例えばカラーフィルター用途においては分子量が小さく動きやすいイオンが多いと必要な電圧が保持できず障害となる。除去後のイオンのトータル量は有機材料に対して、1質量%以下が好ましく、さらに0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。不要なイオンの除去は、例えば前述の限外ろ過装置を用いて行うことができる。
【0072】
[濃縮有機粒子液の分散]
本発明においては、濃縮した有機粒子をインクジェット記録用インクに合わせて適当な溶媒中に再び微細分散化して有機粒子分散組成物とすることができる(本発明において、微細分散化とは、分散液中の粒子の凝集を解き分散度を高めることをいう)。
上述の濃縮抽出法の項で述べたように、有機粒子濃縮抽出液においては、速やかなフィルターろ過を可能とするため、有機粒子を濃縮化とともに凝集させておく場合がある。また、遠心分離法または乾燥法においても、同様に濃縮化した有機粒子が凝集をおこしている場合がある。
【0073】
このような凝集粒子(本発明において、凝集粒子とは、凝集体など粒子が二次的な力で集まっているものをいう。)を分散する方法として、例えば超音波による分散方法や物理的なエネルギーを加える方法を用いることができる。
用いられる超音波照射装置は10kHz以上の超音波を印加できる機能を有することが好ましく、例えば、超音波ホモジナイザー、超音波洗浄機などが挙げられる。超音波照射中に液温が上昇すると、粒子の熱凝集が起こるため、液温を1〜100℃とすることが好ましく、5〜60℃がより好ましい。温度の制御方法は、分散液温度の制御、分散液を温度制御する温度調整層の温度制御などによって行うことができる。
物理的なエネルギーを加えて濃縮した有機粒子を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライダー、スーパーミル、ディゾルバー、ホモミキサー、サンドミル等の公知の分散機が挙げられる。
再分散時に有機粒子形成時に用いる分散剤として[有機粒形成時の分散剤]の項で示したものを用いることも好ましい。
【0074】
上記した方法によると、再分散後の有機粒子(一次粒子)を微細分散化した粒子とすることができ、平均粒子サイズが50nm以下のナノ粒子として得ることができる。
本発明においては、本発明に係る有機材料粒子を分散物の形態で用いることができる。
【0075】
本発明のインクジェット記録用インクセットには、「平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子」を1種のみ添加してもよいし、2種以上を併用してもよい。
「平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子」の、インクジェット記録用インクセットを構成する液体A及び/又は液体Bの各々における含有量は、液体全質量の1〜50質量%が好ましく、1.5〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。該含有量が前記範囲内であると、分散性及びその安定性を保持しつつ、所望の色相及び着色濃度、鮮明な色調が得られる。
【0076】
また、本発明においては、第1の液体A及び第2の液体Bの少なくとも一方に本発明に係る有機材料粒子を含有するが、好ましくは、第1の液体Aが本発明に係る有機材料粒子として有色の着色材料を含み、第2の液体Bが、着色材料を含有しない、もしくは着色材料の含有量が1%未満である態様が好ましい。
【0077】
−重合性もしくは架橋性材料−
第1の液体A及び第2の液体Bは、画像を形成するための重合性もしくは架橋性材料の少なくとも一種を用いて好適に構成することができ、好ましくは少なくとも第1の液体Aに用いて構成される。重合性もしくは架橋性材料は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合もしくは架橋反応を生起し、硬化する機能を有するものである。
【0078】
重合性もしくは架橋性材料としては、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、二量化反応など公知の重合性もしくは架橋性材料を適用することができる。少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物、エポキシ系化合物、オキセタン系化合物、オキシラン系化合物、マレイミド基を側鎖に有する高分子化合物、芳香核に隣接した光二量化可能な不飽和二重結合を有するシンナミル基、シンナミリデン基やカルコン基等を側鎖に有する高分子化合物などが挙げられ、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物がより好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する化合物(単官能又は多官能化合物)から選択されるものであることが特に好ましい。具体的には、本発明に係る産業分野において広く知られるものの中から適宜選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物、並びにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものが含まれる。
【0079】
特に、カチオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましく、具体的には、分子内にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、内部二重結合性基(マレイン酸など)等や、エポキシ基、オキセタニル基などを有するものが好ましく、中でも、低エネルギーで硬化反応を生起させ得る点で、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基を有する化合物が好ましい。
【0080】
前記多官能化合物としては、ビニル基含芳香族化合物、2価以上のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである(メタ)アクリレート、2価以上のアミンと(メタ)アクリル酸とのアミドである(メタ)アクリルアミド、多塩基酸と2価アルコールとの結合で得られるエステル又はポリカプロラクトンに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステル(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイドと多価アルコールとの結合で得られるエーテルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入するか、あるいは2価以上のアルコールとエポシキ含有モノマーを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン結合を持つウレタンアクリレート、アミノ樹脂アクリレート、アクリル樹脂アクリレート、アルキッド樹脂アクリレート、スピラン樹脂アクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、不飽和ポリエステルと前記光重合性モノマーとの反応生成物、及びワックス類と前記重合性モノマーとの反応生成物などが挙げられる。
【0081】
中でも、(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、不飽和ポリエステルと前記光重合性モノマーとの反応生成物が好ましく、アクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートが特に好ましい。
なお、本明細書中において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタアクリル酸の双方を取り得ることを示す。
【0082】
前記多官能化合物の具体例としては、ジビニルベンゼン、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,6−アクリロイルアミノヘキサン、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、2塩基酸と2価アルコールとからなる分子量500〜30000のポリエステルの分子鎖末端に(メタ)アクリロイル基を持つポリエステルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノール(AあるいはS、F)骨格を有する分子量450〜30000のエポキシアクリレート、フェノールノボラック樹脂の骨格を含有する分子量600〜30000のエポキシアクリレート、分子量350〜30000の多価イソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリル酸モノマーとの反応物、分子内にウレタン結合を有するウレタン変性物などが挙げられる。
【0083】
また、単官能化合物として、(メタ)アクリレート、スチレン、アクリルアミド、ビニル基含有モノマー(ビニルエステル類、ビニルエーテル類、N−ビニルアミドなど)、(メタ)アクリル酸などを挙げることができ、(メタ)アクリレート、アクリルアミド、ビニルエステル類、ビニルエーテル類が好ましく、(メタ)アクリレート、アクリルアミドが特に好ましい。
重合性化合物は、無置換でも置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アミド基、カルボン酸基などが挙げられる。
【0084】
前記単官能化合物の具体例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、アリルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、2−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチルアクリレート、エステルにポリブチルアクリレート部位を有するアクリレート、エステルにポリジメチルシロキサン部位を有するアクリレートなどが挙げられる。
【0085】
さらに、カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが好適である。
【0086】
前記エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド等が挙げられる。
単官能エポキシ化合物の例としては、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0087】
多官能エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
【0088】
単官能ビニルエーテルの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
【0089】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、硬化性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0090】
オキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物をさし、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載のように、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
オキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
【0091】
単官能オキセタンの例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0092】
多官能オキセタンの例としては、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0093】
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217公報の段落番号〔0021〕〜〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物を好適に使用できる。
オキセタン化合物の中でも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
【0094】
カチオン重合性モノマーは、1種のみを用いても2種以上を併用してもよいが、硬化時の収縮を効果的に抑制する観点からは、少なくとも1種のオキセタン化合物とエポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを併用することが好ましい。
【0095】
重合性もしくは架橋性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性もしくは架橋性材料の、第1の液体A及び/又は第2の液体B中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲が好ましく、70〜99.0質量%の範囲がより好ましく、80〜99.0質量%の範囲がさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲が好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲が特に好ましい。
【0096】
−重合開始剤−
第1の液体A及び第2の液体Bは、重合開始剤の少なくとも一種を用いて好適に構成することができ、好ましくは少なくとも第2の液体Bに用いて構成される。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性もしくは架橋性材料の重合もしくは架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
【0097】
この重合開始剤は、第1の液体A並びに第2の液体Bの保存安定性を確保する観点から、重合性材料とは別に含有させることが望ましく、本発明においては、第1の液体Aが前記重合性もしくは架橋性材料を含有し、第2の液体Bやそれ以外の液体が重合開始剤を含有する形態が好ましい。
【0098】
重合性の態様において、ラジカル重合もしくはカチオン重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することが特に好ましい。
重合開始剤は、光の作用、又は増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から前記光ラジカル発生剤、又は光酸発生剤であることが好ましい。
【0099】
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
【0100】
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier"Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications":Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載の、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
【0101】
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
【0102】
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42864号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
【0103】
前記(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、またはIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、および同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、および同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、および特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、および同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
【0104】
前記(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3',4,4'−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'4,4'−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'4,4'−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'4,4'−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'4,4'−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3'4,4'−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
【0105】
前記(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−86516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2'−ビス(o,o'−ジクロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−メチルフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール、2,2'−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0106】
前記(e)ケトオキシムエステル化合物としては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0107】
前記(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
前記(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
【0108】
前記(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
【0109】
前記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
【0110】
前記(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、および同0388343号各明細書、米国特許3901710号、および同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、および特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、および同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、および同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、および特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、および特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0111】
前記(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
【0112】
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
【0113】
前記(a)〜(j)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
【0114】
【化1】

【0115】
【化2】

【0116】
【化3】

【0117】
【化4】

【0118】
【化5】

【0119】
【化6】

【0120】
【化7】

【0121】
【化8】

【0122】
なお、重合開始剤は感度に優れるものが好ましいが、例えば、80℃以下の温度で熱分解を起こすものを用いることは保存安定性の観点から好ましくなく、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を選択することが好ましい。
【0123】
重合開始剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
【0124】
重合開始剤の第2の液体B中における含有量としては、経時安定性と硬化性、硬化速度との観点から、第1の液体A、第2の液体Bを画像形成に必要な最大量を媒体上に打滴した場合、単位面積あたりに塗設された重合性材料に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%が更に好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。なお、含有量が多すぎる場合には、経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインクの強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることがある。
【0125】
なお、重合開始剤を第2の液体Bに含有すると共に第1の液体Aに含有させてもよく、この場合には、第1の液体Aの保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有することができる。
また、重合開始剤は、第2の液体Bに含有せず既述の第1の液体Aに含有させるようにしてもよい。この場合は、第1の液滴中の含有量は、第1の液体A中の重合性もしくは架橋性化合物に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0126】
−−増感色素−−
本発明においては、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加してもよい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
【0127】
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
【0128】
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
【0129】
【化9】

【0130】
式(IX)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。
【0131】
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−または−NR62−または−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
【0132】
前記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
【0133】
【化10】

【0134】
【化11】

【0135】
−−共増感剤−−
さらに、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0136】
別の例としては、チオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平8−65779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
【0137】
第2の液体Bには、上記した本発明に係る有機材料粒子を、第1の液体Aに含有すると共にあるいは液体Aには含有せずに、好適に用いることができ、好ましくは、sp値が35以下となるように調製される。第2の液体Bは、非水溶性であって、油溶性の有機溶剤系側の性質に調整された状態が好ましい。
【0138】
第2の液体Bのsp値が35以下であると、例えば既述のように重合性もしくは架橋性材料を含む第1の液体A(液滴a1、液滴a2、・・・)との間の親和性が増大し、第1の液滴a1及び液滴a2を互いに重なり部分を有して付与したときの液滴同士の合一を抑止でき、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生を効果的に防止することができる。
【0139】
第1の液体Aの液滴a1、液滴a2、・・・は、重合性もしくは架橋性材料を含んで有機溶剤系に好適に調製でき、有機溶剤系に調製されているときには第2の液体Bと混合しやすく、互いに接触して重なり部分を有するように打滴される第1の液滴a1と液滴a2との間など液滴間の合一を効果的に回避できる。これにより、既述のように、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生を効果的に防止される。
【0140】
第2の液体Bのsp値の調整は、親油性溶剤(高沸点有機溶剤、重合性化合物)などを用いて好適に行なえる。好ましい調整態様の一つとして、親油性溶剤を第2の液体Bの全質量の50質量%以上100質量%以下の範囲で含有する構成とすることができる。親油性溶剤の含有量が前記範囲内であると、sp値を低減して35以下の範囲に調整することができる。
第2の液体のsp値のより好ましい範囲は、30以下であり、特に好ましくは25以下である。
【0141】
sp値は、種々の溶剤、溶質に対して定義されるものであり、溶剤/溶剤間、溶剤/溶質間における溶けやすさを示す値である。この値は、溶剤と溶剤とが混ざり合う場合、溶剤に溶質が溶ける場合のエネルギーの変化から算出されるものであり、本発明で用いたsp値は、具体的には、東北大学 R.L.smithによるsp値計算プログラムにより計算して得られるものである。計算に際しては、25℃を基準とし、炭素原子を含まない化合物を除き、ポリマーやポリエチレン鎖等の構成単位については結合手を持つ飽和の繰り返し単位(例えばスチレンの場合は-CH2-CH(C6H5)-)とし、水(H2O)は47.8として計算される。
【0142】
−親油性溶剤−
親油性溶剤は、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生防止に効果的であると共に、第2の液体のsp値を既述の範囲に調整することができる。
「親油性」とは、水100ccに対して1g以下の溶解性を有する化合物をいう。
【0143】
なお、親油性溶剤は、第2の液体Bに含有すると共にあるいは含有せずに、既述の第1の液体Aに含有することもできる。また、第2の液体B並びに第1の液体A以外の他の液体に含有するようにしてもよい。
【0144】
親油性溶剤としては、高沸点有機溶媒、前述の重合性化合物などが挙げられ、ノズル固化回避などに対しては高沸点有機溶剤が好ましく、インクにより形成する膜の膜強度を高めるためには重合性化合物を用いることが好ましい。
以下、本発明において好適な高沸点有機溶媒について説明する。
【0145】
前記高沸点有機溶媒としては、(1) 25℃での粘度が100mPa・s以下又は60℃での粘度が30mPa・s以下であり、かつ(2) 沸点が100℃よりも高いものが好ましい。
【0146】
前記(1) の粘度条件のいずれをも満たさない高沸点有機溶媒では、粘度が高くなって、被記録媒体上への付与に支障を来すことがあり、前記(2) の沸点条件を満たさない高沸点有機溶媒では、沸点が低くなりすぎて画像記録中に蒸発し、本発明の効果が低下することがある。
【0147】
前記(1) の条件のうち、25℃での粘度は、更に70mPa・s以下の範囲が好ましく、40mPa・s以下の範囲がより好ましく、20mPa・s以下の範囲が特に好ましい。60℃での粘度は、更に20mPa・s以下の範囲が好ましく、10mPa・s以下の範囲が特に好ましい。また、前記(2) の条件については、沸点は150℃以上の範囲がより好ましく、170℃以上の範囲が特に好ましい。また、融点の下限値としては80℃以下の範囲が好ましい。更には、水の溶解度(25℃)が4g以下であるものが好ましく、3g以下の範囲がより好ましく、2g以下の範囲がさらに好ましく、1g以下の範囲が特に好ましい。
【0148】
ここでの「粘度」は、東機産業(株)製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度である。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10r.p.m.の回転数にて測定を行なった。但し、60mPa・sより高粘なものについては、必要により回転数を5r.p.m.、2.5r.p.m.、1r.p.m.、0.5r.p.m.等に変化させて測定を行なった。
【0149】
なお、「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
【0150】
前記高沸点有機溶媒としては、下記式〔S−1〕〜〔S−9〕で表される化合物が好ましい。
【0151】
【化12】

【0152】
前記式〔S−1〕においてR1、R2及びR3は各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表す。また、a,b,cは、各々独立に0又は1を表す。
【0153】
式〔S−2〕においてR4及びR5は各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表し、R6は、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I以下同じ)、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表し、dは0〜3の整数を表す。dが複数のとき、複数のR6は同じでも異なっていてもよい。
【0154】
式〔S−3〕においてArはアリール基を表し、eは1〜6の整数を表し、R7はe価の炭化水素基又はエーテル結合で互いに結合した炭化水素基を表す。
【0155】
式〔S−4〕においてR8は脂肪族基を表し、fは1〜6の整数を表し、R9はf価の炭化水素基又はエーテル結合で互いに結合した炭化水素基を表す。
【0156】
式〔S−5〕においてgは2〜6の整数を表し、R10はg価の炭化水素基(ただしアリール基を除く)を表し、R11は脂肪族基又はアリール基を表す。
【0157】
式〔S−6〕においてR12、R13及びR14は各々独立に、水素原子、脂肪族基又はアリール基を表す。Xは−CO−又は−SO2−を表す。R12とR13又はR13とR14は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0158】
式〔S−7〕においてR15は脂肪族基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリール基又はシアノ基を表し、R16はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、hは0〜3の整数を表す。hが複数のとき、複数のR16は同じでも異なっていてもよい。
【0159】
式〔S−8〕においてR17及びR18は、各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表し、R19はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、iは0〜5の整数を表す。iが複数のとき、複数のR19は同じでも異なっていてもよい。
【0160】
式〔S−9〕においてR20及びR21は、各々独立に、脂肪族基又はアリール基を表す。jは1又は2を表す。R20及びR21は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0161】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21が脂肪族基又は脂肪族基を含む基であるとき、脂肪族基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、また不飽和結合を含んでいても置換基を有していてもよい。置換基の例として、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、エポキシ基等がある。
【0162】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21が環状脂肪族基、すなわちシクロアルキル基であるか、又はシクロアルキル基を含む基であるとき、シクロアルキル基は3〜8員の環内に不飽和結合を含んでよく、また置換基や架橋基を有していてもよい。置換基の例としてハロゲン原子、脂肪族基、ヒドロキシル基、アシル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基等があり、架橋基の例としてメチレン、エチレン、イソプロピリデン等が挙げられる。
【0163】
式〔S−1〕〜〔S−9〕においてR1〜R6、R8、R11〜R21、Arがアリール基又はアリール基を含む基であるとき、アリール基はハロゲン原子、脂肪族基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基等の置換基で置換されていてもよい。
【0164】
式〔S−3〕、〔S−4〕、〔S−5〕においてR7、R9又はR10が炭化水素基であるとき、炭化水素基は環状構造(例えばベンゼン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環)や不飽和結合を含んでいてもよく、また置換基を有していてもよい。置換基の例としてハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、エポキシ基等がある。
【0165】
以下に、式〔S−1〕〜〔S−9〕で表される高沸点有機溶媒の中でも、特に好ましい高沸点有機溶媒について述べる。
式〔S−1〕においてR1、R2及びR3は、各々独立して、炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基(例えばn−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、EH−オクチル、2−エチルヘキシル、3,3,5−トリメチルヘキシル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ドデシル、n−オクタデシル、ベンジル、オレイル、2−クロロエチル、2,3−ジクロロプロピル、2−ブトキシエチル、2−フェノキシエチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えばフェニル、クレジル、p−ノニルフェニル、キシリル、クメニル、p−メトキシフェニル、p−メトキシカルボニルフェニル)が好ましい。これらの中でも、R1、R2及びR3は特に、n−ヘキシル、n−オクチル、EH−オクチル、2−エチルヘキシル、3,5,5−トリメチルヘキシル、n−ドデシル、2−クロロエチル、2−ブトキシエチル、シクロヘキシル、フェニル、クレジル、p−ノニルフェニル、クメニルが好ましい。
a、b、cは各々独立に0又は1であり、より好ましくはa、b、cすべて1である。
【0166】
式〔S−2〕においてR4及びR5は、各々独立して、炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基(例えば前記R1について挙げた脂肪族基と同じ基、ヘプチル、エトキシカルボニルメチル、1,1−ジエチルプロピル、2−エチル−1−メチルヘキシル、シクロヘキシルメチル、1−エチル−1,5−ジメチルヘキシル、3,5,5−トリメチルシクロヘキシル、メンチル、ボルニル、1−メチルシクロヘキシル)、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記R1について挙げたアリール基、4−t−ブチルフェニル、4−t−オクチルフェニル、1,3,5−トリメチルフェニル、2,4,−ジ−t−ブチルフェニル、2,4,−ジ−t−ペンチルフェニル)が好ましい。これらの中でも、R4及びR5は更に、脂肪族基が好ましく、特に、n−ブチル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、2−ブトキシエチル、エトキシカルボニルメチルが好ましい。
6はハロゲン原子(好ましくは塩素原子)、炭素原子数1〜18のアルキル基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル、n−ドデシル)、炭素原子数1〜18のアルコキシ基(例えばメトキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ベンジルオキシ)、炭素原子数6〜18のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−トリルオキシ、4−メトキシフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ)又は炭素原子数2〜19のアルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル)又は炭素原子数6〜25のアリールオキシカルボニル基が好ましい。これらの中でも、R6は更に、アルコキシカルボニル基が好ましく、特に、n−ブトキシカルボニルが好ましい。
dは0又は1である。
【0167】
式〔S−3〕においてArは炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えばフェニル、4−クロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、4−メトキシフェニル、1−ナフチル、4−n−ブトキシフェニル、1,3,5−トリメチルフェニル、2−(2−n−ブトキシカルボニルフェニル)フェニル)が好ましく、これらの中でも、Arは特に、フェニル、2,4−ジクロロフェニル、2−(2−n−ブトキシカルボニルフェニル)フェニルが好ましい。
eは1〜4(好ましくは1〜3)の整数である。
7はe価の炭素原子数2〜24(好ましくは2〜18)の炭化水素基〔例えば前記R4について挙げた脂肪族基、n−オクチル、前記R4について挙げたアリール基、−(CH22−、
【0168】
【化13】

【0169】
〕又はe価の炭素原子数4〜24(好ましくは4〜18)のエーテル結合で互いに結合した炭化水素基〔例えば、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2(OCH2CH23−、−CH2CH2CH2OCH2CH2CH2−、
【0170】
【化14】

【0171】
〕が好ましい。これらの中でも、R7は、更にアルキル基が好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシルが好ましい。
【0172】
式〔S−4〕においてR8は炭素原子数1〜24(好ましくは1〜17)の脂肪族基(例えばメチル、n−プロピル、1−ヒドロキシエチル、1−エチルペンチル、n−ヘプチル、n−ウンデシル、n−トリデシル、ペンタデシル、8,9−エポキシヘプタデシル、シクロプロピル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル)が好ましく、これらの中でも、R8は特に、n−ヘプチル、n−トリデシル、1−ヒドロキシエチル、1−エチルペンチル、8,9−エポキシヘプタデシルが好ましい。
fは1〜4(好ましくは1〜3)の整数である。
9はf価の炭素原子数2〜24(好ましくは2〜18)の炭化水素基又はf価の炭素原子数4〜24(好ましくは4〜18)のエーテル結合で互いに連結した炭化水素基(例えば前記R7について挙げた基、1―メチル−2−メトキシエチル、2−ヘキシルデシル)が好ましく、これらの中でも、R9は特に、2−エチルヘキシル、2−ヘキシルデシル、1―メチル−2−メトキシエチル、
【0173】
【化15】

【0174】
が好ましい。
【0175】
式〔S−5〕においてgは2〜4(好ましくは2又は3)である。
10はg価の炭化水素基〔例えば、−CH2−、−(CH22−、−(CH24−、−(CH27−、−(CH28−、
【0176】
【化16】

【0177】
〕が好ましく、これらの中でも、R10は特に、−(CH24−、−(CH28−、
【0178】
【化17】

【0179】
が好ましい。
11は炭素原子数1〜24(好ましくは4〜18)の脂肪族基、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記R4について挙げた脂肪族基、アリール基)が好ましく、これらの中でも、R11は、更にアルキル基が好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシルが好ましい。
【0180】
式〔S−6〕において、R12は水素原子、炭素原子数1〜24の脂肪族基(好ましくは3〜20)〔例えばn−プロピル、1−エチルペンチル、n−ウンデシル、n−ペンタデシル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシメチル、4−t−オクチルフェノキシメチル、3−(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)プロピル、1−(2,4−ジ−t−ブチルフェキシ)プロピル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、8−N,N−ジエチルカルバモイルオクチル〕、又は炭素原子数6〜24(好ましくは6〜18)のアリール基(例えば前記Arについて挙げたアリール基、3−メチルフェニル、2−(N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル)フェニル)が好ましく、これらの中でも、R12は特に、n−ウンデシル、8−N,N−ジエチルカルバモイルオクチル、3−メチルフェニル、2−(N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル)フェニルが好ましい。
13及びR14は、水素原子、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)の脂肪族基(例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、シクロペンチル、シクロプロピル)又は炭素原子数6〜18(好ましくは6〜15)のアリール基(例えばフェニル、1−ナフチル、p−トリル)が好ましく、これらの中でも、R13及びR14は特に、メチル、エチル、n−ブチル、n−オクチル、n−テトラデシル、フェニルが好ましい。
13とR14とが互いに結合し、Nとともにピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環を形成してもよく、R12とR13とが互いに結合し、Nとともにピロリドン環、ピペリジン環を形成してもよい。
Xは−CO−又は−SO2−であり、好ましくはXは−CO−である。
【0181】
式〔S−7〕においてR15は炭素原子数1〜24(好ましくは3〜18)の脂肪族基(例えばメチル、イソプロピル、t−ブチル、t−ペンチル、t−ヘキシル、t−オクチル、2−ブチル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ドデシル、2−ヘキサデシル、t−ペンタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル)、炭素原子数2〜24(好ましくは5〜17)のアルコキシカルボニル基(例えばn−ブトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル)、炭素原子数7〜24(好ましくは7〜18)のアリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基、クレジルオキシカルボニル基)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)のアルキルスルホニル基(例えばメチルスルホニル、n−ブチルスルホニル、n−ドデシルスルホニル)、炭素原子数6〜30(好ましくは6〜24)のアリールスルホニル基(例えばp−トリルスルホニル、p−ドデシルフェニルスルホニル、p−ヘキサデシルオキシフェニルスルホニル)、炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリール基(例えばフェニル、p−トリル)又はシアノ基が好ましく、これらの中でも、R15は、更に炭素原子数1〜24の脂肪族基、炭素原子数2〜24のアルコキシカルボニル基がより好ましく、特に、炭素原子数1〜24の脂肪族基が好ましい。
16はハロゲン原子(好ましくはCl)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)の脂肪族基{より好ましくは、アルキル基(例えば前記R15について挙げたアルキル基)、炭素原子数3〜18(更に好ましくは5〜17)のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)}、炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリール基(例えばフェニル、p−トリル)、炭素原子数1〜24(好ましくは1〜18)のアルコキシ基(例えばメトキシ、n−ブトキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ベンジルオキシ、n−ドデシルオキシ、n−ヘキサデシルオキシ)又は炭素原子数6〜32(好ましくは6〜24)のアリールオキシ基(例えばフェノキシ、p−t−ブチルフェノキシ、p−t−オクチルフェノキシ、m−ペンタデシルフェノキシ、p−ドデシルオキシフェノキシ)であり、これらの中でも、R16は、更に炭素原子数1〜24の脂肪族基がより好ましく、特に炭素原子数1〜12の脂肪族基が好ましい。
hは1〜2の整数である。
【0182】
式〔S−8〕においてR17及びR18の好ましい例は、前記R13及びR14における水素原子以外の例と同じであり、これらの中でも、R17及びR18は、更に脂肪族基がより好ましく、特に、n−ブチル、n−オクチル、n−ドデシルが好ましい。但し、R17及びR18は互いに結合して環を形成することはない。
19の好ましい例は、前記R16と同じであり、これらの中でもR19は、更にアルキル基及びアルコキシ基がより好ましく、特に、n−オクチル、メトキシ、n−ブトキシ、n−オクチルオキシが好ましい。
iは1〜5の整数である。
【0183】
式〔S−9〕においてR20及びR21の好ましい例は、結合して環を形成しない場合には、前記R1、R2及びR3と同じであり、これらの中でもR20及びR21は、特に、炭素原子数1〜24の置換又は無置換の脂肪族基が好ましい。
20とR21とが互いに結合し環を形成してもよく、形成される環としては、3〜10員環が好ましく、5〜7員環が特に好ましい。
jは1又は2を表し、好ましくは、jは1である。
【0184】
以下、高沸点有機溶媒の具体例(例示化合物S−1〜S−53)並びに、各高沸点有機溶媒の粘度(25℃及び60℃の環境下、前記手段により測定した値;mPa・s)及び沸点(℃)を示す。
ここで、高沸点有機溶媒の沸点は、減圧蒸留時の沸点から常圧に換算した値である。なお、下記具体例において、沸点の記載のないものは170℃で沸騰しないことが確認されたものであり、25℃における粘度の記載のないものは25℃で固体であることを表す。
【0185】
【化18】

【0186】
【化19】

【0187】
【化20】

【0188】
【化21】

【0189】
【化22】

【0190】
【化23】

【0191】
【化24】

【0192】
【化25】

【0193】
【化26】

【0194】
高沸点有機溶媒は、1種類を単独で用いても、2種以上〔例えば、トリクレジルホスフェートとジブチルフタレート、トリオクチルホスフェートとジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジブチルフタレートとポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)〕を混合して使用してもよい。
【0195】
高沸点有機溶媒の前記以外の化合物例、及び/又はこれら高沸点有機溶媒の合成方法については、例えば、米国特許第2,322,027号、同第2,533,514号、同第2,772,163号、同第2,835,579号、同第3,594,171号、同第3,676,137号、同第3,689,271号、同第3,700,454号、同第3,748,141号、同第3,764,336号、同第3,765,897号、同第3,912,515号、同第3,936,303号、同第4,004,928号、同第4,080,209号、同第4,127,413号、同第4,193,802号、同第4,207,393号、同第4,220,711号、同第4,239,851号、同第4,278,757号、同第4,353,979号、同第4,363,873号、同第4,430,421号、同第4,430,422号、同第4,464,464号、同第4,483,918号、同第4,540,657号、同第4,684,606号、同第4,728,599号、同第4,745,049号、同第4,935,321号、同第5,013,639号、欧州特許第276,319A号、同第286,253A号、同第289,820A号、同第309,158A号、同第309,159A号、同第309,160A号、同第509,311A号、同第510,576A号、東独特許第147,009号、同第157,147号、同第159,573号、同第225,240A号、英国特許第2,091,124A号等の各明細書、特開昭48−47335号、同50−26530号、同51−25133号、同51−26036号、同51−27921号、同51−27922号、同51−149028号、同52−46816号、同53−1520号、同53−1521号、同53−15127号、同53−146622号、同54−91325号、同54−106228号、同54−118246号、同55−59464号、同56−64333号、同56−81836号、同59−204041号、同61−84641号、同62−118345号、同62−247364号、同63−167357号、同63−214744号、同63−301941号、同64−9452号、同64−9454号、同64−68745号、特開平1−101543号、同1−102454号、同2−792号、同2−4239号、同2−43541号、同4−29237号、同4−30165号、同4−232946号、同4−346338号等の各公報に記載されている。
【0196】
本発明においては、沸点が100℃よりも高い高沸点有機溶剤が好適であり、更には沸点が170℃よりも高い高沸点有機溶剤が好ましい。
【0197】
本発明に利用できる重合性化合物は、前述した重合性化合物を用いることができる。
【0198】
親油性溶剤の第2の液体中における添加量としては、該液体の全質量に対して、50%質量以上100質量%以下の範囲が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0199】
第1の液体Aは、第2の液体Bとのsp値の差が10以下となるように調製される。第1の液滴a1の打滴前に予め付与される第2の液体Bとのsp値の差が10以下で親和性が高く、後続の液滴a2と接触させて打滴されたときの液滴同士の合一を効果的に防止することができる。好ましいsp値の差は、5以下である。
第1の液体Aと第2の液体Bとの間のsp値の差が前記範囲内であると、互いに溶解しやすく、液滴a1は液滴a2との間よりも液滴Bとの間の方が接触面積が大きいため第2の液体Bとの間で親和性が良好になり、したがって例えば、互いに重なり部分を有して付与される液滴a1、液滴a2、・・・が着色剤を含有する場合に、液滴a1及び液滴a2間で色滲みや混色を起こしたり、着色された線像の線幅バラツキの回避に効果的である。
【0200】
sp値の調整は、後述の親油性溶剤、重合性材料などを用いて好適に調整が可能であり、例えば液滴中の親油性溶剤の割合を高めることでよりsp値を下げることができる。
【0201】
本発明においては、好ましい形態として、
(1)第1の液体Aが重合性もしくは架橋性材料及び「平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子」を含み、第2の液体Bが重合開始剤を含む形態
(2)第1の液体Aが重合性もしくは架橋性材料及び「平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子」を含み、第2の液体Bが重合開始剤及び親油性溶剤を含む形態
などが挙げられる。
上記において、重合性もしくは架橋性材料は、第1の液体Aに含有すると共に、本発明の効果を阻害しない範囲において第2の液体Bに含有されていてもよく、重合開始剤は、本発明に係る第2の液体Bに含有すると共に、本発明の効果を阻害しない範囲において第1の液体Aに含有されていてもよい。
【0202】
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいては、第1の液体A及び/又は第2の液体Bに「平均粒子サイズが50nm以下であって粒子サイズの変動係数が50%である有機材料粒子」を含む以外に、第1の液体Aに画像を形成するための重合性もしくは架橋性材料を含有し、第2の液体Bを、液体でのsp値を35以下とすると共に第1の液体Aとのsp値の差を10以下とした構成が好ましい。
特に非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体などの液体吸収性の低い被記録媒体に画像記録を行なうときには、高い画像濃度を得るために、互いに重なり部分を有して付与された隣接の液滴(第1の液滴a1と液滴a2)が乾燥前に媒体上に留まって接触していると、互いに合一して画像の滲みや細線の線幅が不均一になって先鋭な画像の形成性が損なわれやすいが、第1の液滴a1及び液滴a2の打滴前に、予め液体Bのsp値を特定する構成により、液滴a1及び液滴a2が互いに重なり部分を有して付与されても液滴a1及び液滴a2間の合一を抑えて、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生が効果的に防止されるので、高画像濃度の画像解像度を確保しつつ、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、高品質の画像を記録することができる。
【0203】
〈その他成分〉
上記した成分以外に、公知の添加剤などを目的に応じて併用することができる。
〜貯蔵安定剤〜
本発明に係る第1の液体A及び第2の液体B(好ましくは第1の液体Aに)には、保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性もしくは架橋性材料と共存させて用いることが好ましく、また、含有する液滴又は液体あるいは共存の他成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
【0204】
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられ、具体的にはベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジエチルヒドロキシルアミン、ベンゾチアゾール、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、クエン酸、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノブチルエーテル、ナフテン酸銅などが挙げられる。
【0205】
貯蔵安定剤の添加量は、重合開始剤の活性や重合性もしくは架橋性材料の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と硬化性とのバランスの点で、液中における固形分換算で、0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
【0206】
〜導電性塩類〜
導電性塩類は、導電性を向上させる固体の化合物である。本発明においては、保存時に析出する懸念が大きいために実質的に使用しないことが好ましいが、導電性塩類の溶解性を上げたり、液体成分に溶解性の高いものを用いたりすることで溶解性がよい場合には、適当量添加してもよい。
前記導電性塩類の例としては、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルアミン塩酸塩などが挙げられる。
【0207】
〜溶剤〜
本発明においては、既述の高沸点溶剤以外の溶剤を用いることができる。溶剤としては、液(インク)の極性や粘度、表面張力、着色材料の溶解性・分散性の向上、導電性の調整、及び印字性能の調整などの目的で使用できる。
なお、溶剤は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことが、速乾性及び線幅の均一な高画質画像を記録する点で好ましいことから、中でも既述した高沸点有機溶媒を用いた構成とするのが望ましい。
【0208】
100℃以下の有機溶剤である低沸点有機溶媒も挙げられるが、硬化性に影響を与える懸念があり、また、低沸点有機溶媒は環境汚染を考慮すると使用しないことが望ましい。使用する場合には、安全性の高いものを用いることが好ましく、安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上が更に好ましい。具体的には、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素などが挙げられ、具体的には、メタノール、2−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0209】
溶剤は一種単独で用いる以外に複数組み合わせて使用することができるが、水及び/又は低沸点有機溶媒を用いる場合には、両者の使用量は各液中0〜20質量%が好ましく、0〜10質量%が更に好ましく、実質的に含まないのが好ましい。本発明に係る第1の液体A及び第2の液体Bに水を含有すると、経時による不均一化、染料の析出等に起因する液体の濁りが生じる等の経時安定性の点、及び非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体を用いたときの乾燥性の点で好ましくない。なお、実質的に含まないとは、不可避不純物の存在を容認することを意味する。
【0210】
〜その他添加剤〜
さらに、ポリマー、表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤等の公知の添加剤を併用することができる。
表面張力調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、pH調整剤に関しては、公知の化合物を適宜選択して用いればよいが、具体的には例えば、特開2001−181549号公報に記載されている添加剤などを用いることができる。
【0211】
また、上記のほか、混合により反応して凝集物を生成するか、増粘する1組の化合物をそれぞれ、本発明に係る第1の液体Aと第2の液体Bとに分けて含有することができる。前記1組の化合物は、凝集体を急速に形成させるか、あるいは液を急速に増粘させる特徴を有するものであり、これにより互いに隣接する液滴間の合一をより効果的に抑制することができる。
前記1組の化合物の反応例としては、酸/塩基反応、カルボン酸/アミド基含有化合物による水素結合反応、ボロン酸/ジオールに代表される架橋反応、カチオン/アニオンによる静電的相互作用による反応等が挙げられる。
【0212】
次に、本発明のインクジェット記録方法について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録方法においては、本発明のインクジェット記録用インクセットを用い、第2の液体Bを第1の液体Aで形成される画像と同一もしくは該画像よりも広い範囲に予め被記録媒体に付与しておくようにする。本発明のインクジェット記録用インクセットを用いることで、打滴された2液各々の液滴同士が衝突、混合する際のショックで起きる分散破壊を回避できるので、高濃度で透明性に優れ、混色及び色滲みのない高画質な画像の記録が可能である。
また、第1の液体Aの打滴前に予め、第2の液体Bを被記録媒体に付与しておくので、第1の液体Aの液滴同士(例えば液滴a1及び液滴a2)が互いに重なり部分を有して付与されても液滴間、例えば液滴a1と液滴a2との間の合一を抑えて、画像の滲み及び画像中の細線などの線幅バラツキの発生が効果的に防止されるので、高画像濃度の画像解像度を確保しつつ、均一幅で先鋭なライン形成が可能であり、高品質の画像を記録することができる。また、ベタツキがなく擦過性、耐光性、耐オゾン性にも優れる。特に液体Bの液体でのsp値が35以下(好ましくは30以下)であって液体Aとのsp値の差が10以下である場合に効果的である。
【0213】
本発明においては、画像を形成するための液体として、第1の液滴a1及び液滴a2を含む第1の液体Aと、これと組成の異なる第2の液体Bとを用いる。ここで、第1の液滴a1及び液滴a2は、単一の第1の液体Aを用いてインク吐出口から打滴される液滴a1、a2、a3、・・・nxにおける液滴であって、好ましくは重なり合って打滴されるものを意味する。打滴が同時である液滴であってもよいし、先行打滴と後続打滴の関係である先行液滴と後続液滴であってもよく、先行液滴と後続液滴であることが好ましい。
【0214】
さらに好ましくは、インクジェットプリンタにおけるインク吐出口(ヘッド)から、第1の液体Aによる第1の液滴a1、液滴a2、・・・を吐出して所望の画像を形成する際に、液体Aによる第1の液滴a1を打滴した後、後続の第1の液滴a2を先行して打滴された液滴a1と重なり部分を有するように打滴する。
【0215】
本発明のインクジェット記録方法においては、既述の第1の液滴a1及び液滴a2を、インクジェットノズル等を用いて打滴するようにし、第2の液体Bについては、必ずしもインクジェットノズルを用いた噴射による付与に限られず、塗布等の他の手段によって付与することができる。
【0216】
次に、被記録媒体上に第2の液体Bを付与する際の付与手段について説明する。なお、第1の液滴a1及び液滴a2(第1の液体A)を打滴する打滴手段については、前記のようにインクジェットノズルを用いた噴射を中心に説明する。以下に、具体例を示す。
【0217】
(i)塗布装置を用いた塗布
塗布装置を用いて、第2の液体Bを被記録媒体上に塗布し、その後に液滴a1及び液滴a2(第1の液体A)をインクジェットノズルにより打滴することによって、画像記録する態様は好適である。
【0218】
塗布装置としては、特に制限はなく、公知の塗布装置の中から目的等に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照できる。
また、インクジェットノズルは、特に制限はなく、公知のノズルから目的等に応じて適宜選択することができる。なお、インクジェット記録方式については後述する。
【0219】
なお、第1の液滴a1及び液滴a2(第1の液体A)並びに第2の液体B以外の他の液体を用いてもよく、他の液体については、前記塗布装置による塗布やインクジェットノズルによる噴射など、いかなる方法で記録媒体上に付与してもよく、また、付与のタイミングも特に限定されるものではない。着色剤を含有する場合には、インクジェットノズルでの噴射によるのが好ましく、第2の液体Bを塗布した後に付与することが好ましい。
【0220】
(ii)インクジェットノズルによる噴射
インクジェットノズルによって第2の液体Bを第2の液滴b1、液滴b2、液滴b3、・・・液滴bxにて噴射し、その後に第1の液体Aの液滴a1、液滴a2、液滴a3、・・・液滴ax(第1の液体A)をインクジェットノズルにより打滴することによって、画像記録する態様は好適である。インクジェットノズルについては、前記同様である。
【0221】
この場合もまた、第1の液滴a1及び液滴a2(第1の液体A)並びに第2の液体B以外の他の液体については、塗布装置による塗布や、インクジェットノズルによる噴射など、いかなる方法で被記録媒体上に付与してもよく、付与のタイミングも特に限定されるものではない。着色剤を含有する場合には、インクジェットノズルでの噴射によるのが好ましく、第2の液体Bをノズルから噴射した後に更に噴射して付与されることが好ましい。
【0222】
次に、インクジェットノズルによる噴射の方式(インクジェット記録方式)について説明する。
本発明においては、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式、等の公知の方式が好適である。
なお、インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0223】
前記(i)の付与手段による場合、少なくとも第1の液滴a1及び第1の液滴a2が、予め被記録媒体上に塗布された第2の液体Bの上にインクジェット記録方式によって打滴され、画像形成される。前記(ii)の付与手段による場合は、予めインクジェット記録方式により被記録媒体上に付与された第2の液体Bの上に更に、少なくとも第1の液滴a1及び第1の液滴a2がインクジェット記録方式により打滴され、画像形成される。
【0224】
本発明においては、液滴a1と液滴a2とが重なり部分を有するので、単位長さ当たりの打滴数が増し、より高解像度の画像記録が可能である。このとき、第2の液体Bを被記録媒体上に付与した後、1秒以下の間に第1の液滴a1及び液滴a2を打滴することが好ましい。
【0225】
重なり部分を有して打滴する際の重なり率は、少なくとも液滴a1と液滴a2とが重なって打滴されてから1秒後の重なり率であり、特に第1の液滴a1を打滴した後の第1の液滴a2の打滴から1秒後の重なり部分における重なり率が10%以上90%以下となるように打滴するようにするのが好ましい。より高解像度の画像記録に有効である。
中でも、重なり率は、20%以上80%以下であるのが好ましく、30%以上70%以下であるのが好ましい。
【0226】
前記重なり率とは、隣接する液滴(液滴a1、液滴a2、・・・)が、いかなる割合で重なっているかを示す指標である。記録媒体上に着弾後の液滴の直径をaとした場合、1/2aが重なっている場合には重なり率は50%である。本発明における場合、隣接して打滴された液滴は互いに合一せずに打滴形状を保持しうるが、重なり率は、1滴打滴して1秒後の液滴半径をbとし、隣接打滴間の間隔をcとしたとき、100×(2b−c)/2b[%]で表される。
【0227】
また、第1の液滴a1及び第1の液滴a2の打滴量には、特に制限はなく、記録画像の鮮鋭度に応じて選択できる。一般には、1液滴当たり0.5pl〜10pl程度が好ましい。また、第2の液体Bの付与については、第1の液滴a1及び液滴a2で打滴形成される画像と同一領域もしくは該画像よりも広い領域に付与できれば、特に制限されるものではない。
【0228】
画像記録の際、第1の液滴a1及び第1の液滴a2の1打滴当たりの第2の液体Bの付与量のバランスとしては、液滴a1又は液滴a2の量を1とした場合の第2の液体Bの付与量(質量比)は0.05〜5の範囲が好ましく、0.07〜1の範囲がより好ましく、0.1〜1の範囲が特に好ましい。
【0229】
第1の液滴a1及び液滴a2を含む第1の液体Aは、0.1pL(ピコリットル;以下同様)以上100pL以下の液滴サイズにて(好ましくはインクジェットノズルにより)打滴されるのが好ましい。液滴サイズが前記範囲内であると、高先鋭度の画像を濃度で描写できる点で有効である。また、より好ましくは0.5pL以上50pL以下である。
【0230】
また、第2の液体Bの付与後、第1の液体Aの液滴a1が打滴されるまでの打滴間隔としては、5μ秒以上400m秒以下の範囲内であるのが好ましい。打滴間隔が前記範囲内であると、本発明の効果を顕著に奏し得る点で有効である。打滴間隔は、より好ましくは10μ秒以上300m秒以下であり、特に好ましくは20μ秒以上200μ秒以下である。
【0231】
(液体Aと液体Bの物性)
インクジェット記録方式によって被記録媒体上に噴射される第1の液体A(液滴)並びに第2の液体B(液滴)の物性については、装置により異なるが一般にはそれぞれ、25℃での粘度については、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、10〜80mPa・sがより好ましい。
【0232】
本発明のインクジェット記録用インクセットに含まれる液体Aと液体Bとは、被記録媒体上に目的の大きさの液体Aドットを形成する観点から、液体Bは界面活性剤を含有することが好ましく、下記の条件(A)、(B)、及び(C)の全てを満たすことが好ましい。
(A)液体Bの表面張力は、インクジェット記録用インクセットに含まれるいずれかの液体Aの表面張力よりも小さい。
(B)液体Bに含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、
γs(0)−γs(飽和)>1mN/m
の関係を満たす。
(C)液体Bの表面張力は、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2
の関係を満たす。
【0233】
ここで、γsは、液体Bの表面張力の値である。γs(0)は、液体Bのうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに飽和する該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0234】
〈条件(A)〉
本発明において、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさの液体Aドットを形成するためには、液体Bの表面張力γsは、インクジェット記録用インクセットに含まれるいずれかの液体Aの表面張力γkよりも小さくすることが好ましい。
さらに、着滴から露光までの間の液体Aドットの拡大をより効果的に防ぐ観点から、γs<γk−3(mN/m)がより好ましく、γs<γk−5(mN/m)が特に好ましい。
また、フルカラーの画像を印字する場合は、画像の鮮鋭性を向上させる観点から、液体Bの表面張力γsは、少なくとも視感度の高い着色剤を含有する液体Aの表面張力よりも小さくすることが好ましく、インクジェット記録用インクセットに含まれる全ての液体Aの表面張力より小さいことがより好ましい。なお、ここで視感度の高い着色剤とは、マゼンタ、または、ブラック、または、シアンの色を呈する着色剤が挙げられる。
また、液体Aの表面張力γkと液体Bの表面張力γsとの値が上記の関係を満たしていても、両者の値が15mN/m未満であるとインクジェット打滴時に液滴の形成が困難になり不吐出が生じる場合がある。一方、50mN/mを超えると、インクジェットヘッドとの濡れ性が悪くなり不吐出の問題が生じる場合がある。したがって、吐出適正の観点から、液体Aの表面張力γkと液体Bの表面張力γsとは、15mN/m以上50mN/m以下が好ましく、18mN/m以上40mN/m以下がより好ましく、20mN/m以上38mN/m以下が特に好ましい。
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃、60%RHにて測定した値である。
【0235】
〈条件(B)と条件(C)〉
本発明において、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、液体Bは少なくとも1種類以上の界面活性剤を含有することが好ましい。なお、この場合は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち少なくとも1種類は、下記の条件(B)を満たすことが好ましい。
γs(0)−γs(飽和)>1mN/m …条件(B)
さらに、液体Bの表面張力は、下記の条件(C)の関係を満たすことが好ましい。
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2 …条件(C)
【0236】
既述のように、γsは、液体Bの表面張力の値である。γs(0)は、液体Bのうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力の値である。γs(飽和)は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の濃度を増加させたときに飽和する該液の表面張力の値である。γs(飽和)最大は、液体Bに含有する界面活性剤のうち、前記条件(B)を満たす全ての界面活性剤に対して求めたγs(飽和)のうちの最大値である。
【0237】
なお、前記γs(0)は、液体Bのうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値を測定することによって得られる。前記γs(飽和)は、液体Bに含まれる界面活性剤のうち1種類の界面活性剤を前記「全ての界面活性剤を除いた液」に添加し、該界面活性剤の含有濃度を0.01質量%ずつ増加させたときに、表面張力の変化量が0.01mN/m以下になったときの該液の表面張力を測定することによって得られる。
【0238】
以下、前記γs(0)、γs(飽和)、γs(飽和)最大 について具体的に説明する。
例えば、液体B(例1)を構成する成分が、高沸点溶媒(フタル酸ジエチル、和光純薬工業(株)製)、重合開始剤(TPO−L、下記の開始剤−1)、フッ素系界面活性剤(メガファック F475、大日本インキ化学工業(株)製)、炭化水素系界面活性剤(スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム)とした場合、γs(0)、γs(飽和)1(フッ素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)2(炭化水素系界面活性剤を添加した時)、γs(飽和)、および、γs(飽和)最大は、下記の通りとなる。
【0239】
【化27】

【0240】
即ち、γs(0)は、液体Bのうち全ての界面活性剤を除いた液の表面張力値であり、36.7mN/mとなる。また、該液にフッ素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)1としたとき、その値は20.2mN/mとなる。さらに、同様に該液に炭化水素系界面活性剤を添加し、濃度を増加させた時の該液の表面張力の飽和値をγs(飽和)2としたとき、その値は30.5mN/mとなる。
【0241】
前記液体B(例1)は、前記条件(B)を満たす界面活性剤を2種類含有するため、γs(飽和)は、フッ素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和)1)と炭化水素系界面活性剤を添加した時(γs(飽和)2)の2つの値をとり得る。これらから、γs(飽和)最大は、前記γs(飽和)1及びγs(飽和)2のうちの最大値であることから、γs(飽和)2の値となる。
以上より、それらを纏めると下記のようになる。
γs(0)=36.7mN/m
γs(飽和)1=20.2mN/m(フッ素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)2=30.5mN/m(炭化水素系界面活性剤を添加した時)
γs(飽和)最大=30.5mN/m
【0242】
以上の結果から、液体Bの表面張力γsとしては、
γs<(γs(0)+γs(飽和)最大)/2=33.6mN/m
の関係を満たすことが好ましい。
なお、前記条件(C)については、着滴から露光までの間のインク滴の拡大をより効果的に防ぐ観点から、液体Bの表面張力としては、
γs<γs(0)−3×{γs(0)− γs(飽和)}/4
の関係を満たすことがより好ましく、
γs≦γs(飽和)
の関係を満たすことが特に好ましい。
【0243】
ここで、前記表面張力は、一般的に用いられる表面張力計(例えば、協和界面科学(株)製、表面張力計CBVP−Z等)を用いて、ウィルヘルミー法で液温20℃にて測定した値である。
【0244】
〜界面活性剤〜
本発明においては、前述の通り、被記録媒体上に目的の大きさのインクドットを形成するためには、液体Bは少なくとも1種類の界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明でいう界面活性剤は、ヘキサン、シクロヘキサン、p−キシレン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ブチルカルビトール、シクロヘキサノン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロパノール、メタノール、水、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、好ましくは、ヘキサン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、さらに好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質であり、特に好ましくは、イソボニルアクリレート、1,6−ヘキサンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートのうち少なくとも1種類の溶媒に対して強い表面活性を有する物質である。
【0245】
上記に列挙した溶媒に対して、ある化合物が強い表面活性を有する物質か否かは、下記の手順によって判断することができる。
(手順)
上記に列挙した溶媒から1種類の溶媒を選択し、該溶媒の表面張力γ(0)溶媒を測定する。前記γ(0)溶媒を求めた溶媒と同じ液に該化合物を添加し、該化合物の濃度を0.01質量%づつ増加させ、表面張力の変化が0.01mN/m以下になったときの溶液の表面張力γ(飽和)溶媒を測定する。前記γ(0)溶媒と前記γ(飽和)溶媒の関係が、
γ(0)溶媒 − γ(飽和)溶媒 > 1 mN/m
であれば、該化合物は該溶媒に対して強い表面活性を有する物質であると判断する。
【0246】
液体Bに含有する界面活性剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。その他、界面活性剤としては、例えば、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0247】
本発明において、上記のように予め第2の液体Bを付与しておき、その後に第1の液滴a1及び液滴a2を打滴した後には、優れた定着性を得る観点から、エネルギーを付与することで記録画像を固定化する工程を設けることができる。エネルギーの付与により、含まれる重合性もしくは架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応を促進させ、より強固な画像をより効率よく形成することができる。例えば重合開始剤を含む系では、活性光や加熱などの活性エネルギーの付与により重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されると共に、活性種の増加や温度上昇により、活性種に起因する重合性もしくは架橋性材料の重合もしくは架橋による硬化反応が促進される。
エネルギーの付与は、活性光の照射、又は加熱によって好適に行なうことができる。
【0248】
前記活性光としては、例えば、紫外線、可視光線など、並びにα線、γ線、X線、電子線などが使用できる。これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点で好ましく、紫外線が特に好ましい。
硬化反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般には1〜500mJ/cm2程度である。
【0249】
また、加熱によりエネルギーを付与する場合は、被記録媒体の表面温度が40〜80℃の温度範囲となる条件で0.1〜1秒間加熱することが好ましい。
加熱は、非接触型の加熱手段を使用して行なうことができ、オーブン等の加熱炉内を通過させる加熱手段や、紫外光〜可視光〜赤外光等の全面露光による加熱手段等が好適である。加熱手段としての露光に好適な光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、カーボンアーク灯、水銀灯等が挙げられる。
【0250】
本発明においては、第2の液体Bと第1の液体Aとの打滴の間に前記活性光線で硬化させる過程を含むことも可能であるが、第1の液体Aの打滴を開始するまでの間は予め被記録媒体に付与された第2の液体Bを液体状に保持することが望ましく、したがって、全く硬化させない、又は半硬化させることが好ましい態様である。
【0251】
−被記録媒体−
本発明のインクジェット記録方法においては、被記録媒体として、浸透性の記録媒体、非浸透性の記録媒体、及び緩浸透性の記録媒体のいずれも使用することができる。中でも、本発明の効果がより顕著に奏される観点から、非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体が好ましい。
【0252】
液体吸収性の低い記録媒体に画像記録を行なうときには、従来、互いに重なり部分を有して付与された隣接の液滴(インクA及びインクB)が乾燥前に媒体上に留まって接触していると、互いに合一等して画像の滲みや混色、細線の線幅が不均一、画像端部が膨らむことによる端部不均一が起こりやすいが、第1の液体Aで画像が打滴形成しようとする領域と同一もしくは該領域よりも広い範囲に予め、第2の液体Bを打滴しておく構成により、液体Aの液滴同士が互いに重なり部分を有して付与されたときに液滴間の合一が抑えられるので、打滴形成された画像中の細線の線幅バラツキや、格子線のゆがみ、画像端部が膨らむことによる不均一を効果的に防止することができる。これにより、滲みがなく細線品質(線幅の均質性を含む。)が良好で画像端部の均一な高画質画像を記録することができる。また、ベタツキがなく擦過性にも優れる。
【0253】
ここで、浸透性の記録媒体は、10pl(ピコリットル)の液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100m秒以下である媒体であり、具体的には、普通紙、多孔質紙などが挙げられる。非浸透性の記録媒体とは、実質的に液滴が浸透しない媒体をいい、例えば合成樹脂やガラス等を用いた媒体が挙げられる。「実質的に浸透しない」とは、1分後の液滴の浸透率が5%以下であることをいう。また、緩浸透性の記録媒体とは、10plの液滴を被記録媒体上に滴下した場合に、全液量が浸透するまでの時間が100m秒以上である媒体をいい、具体的にはアート紙などが挙げられる。非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体の詳細については後述する。
【0254】
浸透性の記録媒体としては、例えば、普通紙、多孔質紙その他液を吸収できる媒体が挙げられる。
非浸透性ないし緩浸透性の記録媒体としては、例えば、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。また、機能付加の目的で、これら材質を複数組み合わせて複合化した基材も使用できる。
【0255】
前記合成樹脂としては、いかなる合成樹脂も使用可能であるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられる。合成樹脂を用いた場合の厚みや形状としては、フィルム状、カード状、ブロック状のいずれでもよく、特に限定されるものではなく、透明又は不透明のいずれであってもよい。
【0256】
前記合成樹脂の使用形態としては、いわゆる軟包装に用いられるフィルム状にして用いることも好ましく、各種非吸収性のプラスチックス及びそのフィルムを用いることができる。プラスチックスフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等が挙げられる。その他プラスチックスとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などを使用できる。
【0257】
前記樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられる。特に好ましいのは、紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
【0258】
前記金属としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛等、又はステンレス等、及びこれらの複合材料が好適である。
【0259】
また更に、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスク等を用いることも可能であり、レーベル面側にインク受容層および光沢付与層を付与することもできる。
【0260】
本発明のインクジェット記録方法に用いる第1の液体A(液滴a1、a2、・・・)及び第2の液体B、並びにこれらを構成する各種成分等の詳細については既述の通りである。
【実施例】
【0261】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0262】
(実施例1)
<マゼンタ顔料分散物P−1の調製>
PV19(Hostaparm RED E5B02 クラリアント社製)8g、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル(OXT−221;東亞合成(株)製)56g、及びBYK−168(ビックケミー社製)16gを混合し、スターラーで1時間撹拌した。撹拌後の混合物をアイガーミルにて分散し、マゼンタ顔料分散物P−1を得た。
ここで、分散条件は、直径0.65mmのジルコニアビーズを70%の充填率で充填し、周速を9m/sとし、分散時間1時間とした。
【0263】
<マゼンタ顔料を含有するインクジェット記録用インク液I−1の調製>
下記組成の成分を撹拌混合し溶解して、インクジェット記録用インク液I−1(液体A)を調製した。インクジェット記録用インク液I−1のsp値は18、表面張力は32N/mであった。
〈組成〉
・上記のマゼンタ顔料分散物P−1 …3.75g
・ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル …0.825g
・1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000、ダイセル・サイテック(株)製) …8.925g
・下記重合開始剤−2 …1.5g
(Irg250、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
【0264】
【化28】

【0265】
sp値は、既述のように、R.L.smith(東北大学)によるsp値計算プログラムにより計算した(25℃)。以下、同様である。但し、炭素原子を含まない化合物は計算から除くと共に、ポリマーやポリエチレン鎖等の構成単位については結合手を持つ飽和の繰り返し単位とし、水は47.8として計算した。
【0266】
<顔料分散物の調製>
(調製例1)
顔料(PV19、Hostaparm RED E5B02、クラリアント社製)6gを、ジメチルスルホキシドと8mol/L(リットル;以下同様)の水酸化カリウム水溶液とを6:1で混合した溶液に150mmol/Lとなるように溶解した顔料溶液A1を調製した。
次に、メタクリル酸/メタクリル酸ベンジル共重合体(=28/72[モル比]、重量平均分子量:3万、40%1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液)2.0g、下記顔料分散剤A0.6g、及び分散剤ポリビニルピロリドン(和光純薬(株)社製、K30、分子量40,000)18gを溶解し、1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液B1を50ml調製した。
また、これとは別に、貧溶媒として水を準備した。
【0267】
【化29】

【0268】
ここで、1℃に温度コントロールし、藤沢薬品工業(株)製のGK−0222−10型ラモンドスターラーにより500r.p.m.で攪拌している貧溶媒の水1000ml中に、上記の顔料溶液A1を、日本精密化学(株)製のNP−KX−500型大容量無脈流ポンプを用いて流速50ml/minで200ml注入し、同時に上記の1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液B1を日本精密化学(株)製のNP−KX−500型大容量無脈流ポンプを用いて流速25ml/minで100ml注入することにより、顔料粒子を形成し、顔料粒子再沈液を調製した。
【0269】
調製した顔料粒子再沈液(顔料粒子濃度約0.5質量%)から限外ろ過機を用いることにより不要なイオンや有機溶媒を除去し、溶媒をビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル(OXT−221、東亞合成(株)製)に置き換え、60mlの顔料粒子分散組成物1(顔料粒子濃度約10.0質量%;本発明に係る有機材料粒子の分散物)を得た。
【0270】
(調製例2)
前記調製例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液B1の調製に用いた分散剤ポリビニルピロリドン18gをポリアクリルアミド18gに代えたこと以外、前記調製例1と同様にして、60mlの顔料粒子分散組成物2(顔料粒子濃度約10.0質量%;本発明に係る有機材料粒子の分散物)を得た。
【0271】
(調製例3)
前記調製例1において、1−メトキシ−2−プロピルアセテート溶液B1の調製に用いた分散剤ポリビニルピロリドン18gをポリエチレンイミン18gに代えたこと以外、前記調製例1と同様にして、60mlの顔料粒子分散組成物3(顔料粒子濃度約10.0質量%;本発明に係る有機材料粒子の分散物)を得た。
【0272】
<マゼンタ顔料を含むインクジェット記録用インク液I−2〜I−4の調製>
前記インクジェット記録用インク液I−1の調製において、マゼンタ顔料分散物P−1を前記調製例1〜3で得た顔料粒子分散組成物1、2、3にそれぞれ代えたこと以外、前記インクジェット記録用インク液I−1の調製と同様にして、マゼンタ顔料を含むインクジェット記録用インク液I−2〜I−4(液体A)を調製した。インクジェット記録用インク液I−2〜I−4のsp値及び表面張力は下記表1に示す。
【0273】
<シアン顔料を含むインクジェット記録用インク液II−1の調製>
前記インクジェット記録用インク液I−1の調製において、マゼンタ顔料分散物P−1の調製に用いたPV19(Hostaparm RED E5B02、クラリアント社製)を、これと等質量のPB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)にそれぞれ代えたこと以外、前記インクジェット記録用インク液I−1の調製と同様にして、シアン顔料を含むインクジェット記録用インク液II−1を調製した。インクジェット記録用インク液II−1のsp値及び表面張力は下記表1に示す。
【0274】
<顔料を含まないインクジェット記録用インク液III−1の調製>
下記組成の成分を撹拌混合して溶解し、インクジェット記録用インク液III−1を調製した。インクジェット記録用インク液III−1のsp値は19、表面張力は23mN/mであった。
〈組成〉
・ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル ・・・4.18g
・1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000、ダイセル・サイテック(株)製) ・・・9.77g
・9,10−ジブトキシアントラセン ・・・0.75g
・メガファックF475(大日本インキ化学工業(株)製) ・・・0.3g
【0275】
<1液型のインクジェット記録用比較インク液I'−1〜I'−4及びII'−1の調製>
下記組成の成分を攪拌混合し溶解して、1液型のマゼンタ顔料を含むインクジェット記録用比較インク液I'−1、I'−2、I'−3、I'−4と、1液型のシアン顔料を含むインクジェット記録用比較インク液II'−1を調製した。
1)1液型のマゼンタ顔料を含むインクジェット記録用比較インク液I'−1
下記組成の成分を撹拌混合し溶解して、マゼンタ顔料を含むインクジェット記録用比較インク液I'−1を調製した。比較インク液I'−1のsp値は19、表面張力は32N/mであった。
〈組成〉
・上記のマゼンタ顔料分散物P−1 …3.75g
・ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル …0.6g
・1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000、ダイセル・サイテック(株)製) …8.4g
・前記重合開始剤−2 …1.5g
(Irg250、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
・9,10−ジブトキシアントラセン …0.75g
【0276】
2)1液型のマゼンタ顔料を含むインクジェット記録用比較インク液I'−2〜I'−4
前記インクジェット記録用比較インク液I'−1の調製に用いたマゼンタ顔料分散物P−1を前記調製例1〜3で得た顔料粒子分散組成物1、2、3にそれぞれ代えたこと以外、前記インクジェット記録用比較インク液I'−1と同様にして、マゼンタ顔料を含むインクジェット記録用比較インク液I'−2〜I'−4を調製した。
【0277】
3)1液型のシアン顔料を含むインクジェット記録用比較インク液II'−1
前記インクジェット記録用比較インク液I'−1の調製において、マゼンタ顔料分散物P−1の調製に用いたPV19(Hostaparm RED E5B02、クラリアント社製)を、これと等質量のPB15:3(IRGALITE BLUE GLO;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)に代えたこと以外、前記インクジェット記録用比較インク液I'−1の調製と同様にして、シアン顔料を含むインクジェット記録用比較インク液II'−1を調製した。
【0278】
上記より得られた各インク液のSP値、表面張力、インク液中での顔料粒子の平均粒子サイズ、及び、インク液中での顔料粒子の変動係数を下記表1に示す。
【0279】
【表1】

【0280】
<画像記録及び評価>
調製したインクジェット記録用インク液I−1、II−1、及びIII−1をインクジェットプリンタ(東芝テックヘッド(CA3)搭載冶具:打滴周波数:4.8KHz、ノズル数:318、ノズル密度:150npi(ノズル/inch)、ドロップサイズ:6〜42pl(ピコリットル)間を7段階に可変のヘッドを2つ配列し、300npiにしたヘッドセットを4組搭載)に装填し、3つのヘッドセットより各インクを吐出し(42pl)、被記録媒体上の全面に均一に描画し、画像サンプルを作製した。このとき、被記録媒体として、厚さ60μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート(商品名:PPL/レーザープリンタ用ゼロックスフィルム OHP FILM、富士ゼロックス(株)製;以下、PETシートという。)を用いた。
【0281】
吐出順は、インクジェット記録用インク液III−1→II−1→I−1の順とし、インク液III−1とインク液II−1とを打滴する際の打滴間隔を400m秒とし、インク液II−1とインク液I−1とを打滴する間隔を400m秒とした。このとき、搬送速度を調節して、インク液III−1については隣接する液滴間の重なり率が5%になるようにし、インク液I−1、II−1については隣接する液滴(液滴a1と液滴a2とを含む本発明に係る液体Aの液滴)間の重なり率が50%になるようにした。
【0282】
なお、重なり率は、既述のように、1滴打滴して1秒後の液滴半径をbとし、隣接打滴間の間隔をcとして100×(2b−c)/2b[%]にて算出したものである。
【0283】
吐出後、メタルハライドランプを用いて365nmの波長にて紫外線量〜500mJ/cm2にて紫外線を照射し、画像サンプルを固定化した。照射は、II−1の打滴後1秒後に行なった。
【0284】
また、上記で用いたインクジェット記録用インク液I−1/II−1を、下記表2に示すような組み合わせI−2/II−1、I−3/II−1、I−4/II−1に変更し、上記した方法と同様にして描画し、画像サンプルを作製した。さらに、III−1を用いずに、I'−1/II'−1、I'−2/II'−1、I'−3/II'−1、I'−4/II'−1に変更し、上記した方法と同様にして描画し、画像サンプルを作製した。
【0285】
<評価>
作製した画像サンプルについて、下記の評価を行なった。評価結果を下記表2に示す。
−1.シアン、マゼンタの色混じり−
各画像サンプルを目視により観察し、シアン、マゼンタのインク滴が交じり合った場合を「×」とし、各色のインク滴が独立に存在していた場合を「○」として評価した。
【0286】
−2.シアン濃度の評価−
III−1→II−1を打滴した画像サンプル(すなわち、前記画像サンプルの作製の際にそれぞれI−1、I−2、I−3、I−4の打滴を行なわずに作製した画像サンプル)を作製して、前記画像サンプルと比較し、インク液Iの打滴の有無によるシアン濃度の差〔(インク液Iを打滴したときのシアン濃度)−(インク液Iを打滴しなかったときのシアン濃度)をX−rite(X−rite社製)により測定した。シアン濃度の差を下記表2に示す。
【0287】
−3.ベタツキ性の評価−
紫外線の照射直後、画像サンプルの画像面(記録面)を指で触れ、下記の評価基準にしたがって評価した。
〈評価基準〉
A:ベタツキはなかった。
B:若干ベタツキが認められた。
C:著しくベタツキが認められた。
【0288】
−4.耐擦過性の評価−
描画したPETシートについて、紫外線照射後30分経過した後の画像面(記録面)を消しゴムで10往復擦ったときの変化を観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
〈評価基準〉
A:擦過による濃度低下は全くなかった。
B:擦過による濃度低下が僅かに認められた。
C:擦過により著しく濃度が低下した。
【0289】
−5.耐光性の評価−
各画像サンプルに対し、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いてキセノン光(85,000Lux)を1週間照射し、照射前後の濃度をマイクロデンシトメーター(機種名:MICRO−PHOTOMETER MPM−No.172、メーカー名:ユニオン オプティカル(株)製)にて測定して照射後の色素残存率〔%〕を求め、下記の評価基準にしたがって5段階評価した。なお、耐光性の評価は、PETシート上の画像のみについて行なった。
〈評価基準〉
A:色素残存率が90%以上であった。
B:色素残存率が89〜80%であった。
C:色素残存率が79〜70%であった。
D:色素残存率が69〜50%であった。
E:色素残存率が49%未満であった。
【0290】
−6.オゾン耐性の評価−
各画像サンプルをオゾン濃度5.0ppm条件下に1週間保存し、保存前後での画像の濃度をマイクロデンシトメーター(機種名:MICRO−PHOTOMETER MPM−No.172、メーカー名:ユニオン オプティカル(株)製)にて測定して保存後の色素残存率(%)を求め、下記評価基準にしたがって5段階評価した。なお、オゾン耐性の評価はPETシート上の画像のみについて行なった。
〈評価基準〉
A:色素残存率が90%以上であった。
B:色素残存率が89〜80%であった。
C:色素残存率が79〜70%であった。
D:色素残存率が69〜50%であった。
E:色素残存率が49%未満であった。
【0291】
【表2】

【0292】
前記表2に示すように、画像を形成するための液体Aと共に液体Bを用いて描画を行なった場合(本発明)では、良好に2色間の色混じりを回避でき、しかも本発明に係る有機材料粒子を用いることで、重ねて打滴した場合の下側に打滴した色濃度の低下が抑えられ、良好な発色性を示した。
これに対し、インクジェット記録用インク液I−1のように、市販の顔料を分散した場合(比較例)では、重ねて打滴した場合に、下側に打滴した色濃度が低下してしまい、良好な発色性が得られなかった。
また、インクジェット記録用インク液I−1、I−2、I−3、I−4、及びII−1は、ノズルに液を詰めっぱなしにしてもノズル固化が起こらず、吐出安定性の点でも有効であったのに対し、1液型の比較インク液I'−1、I'−2、I'−3、I'−4、及びII'−1では、ノズルに液を詰めっぱなしにした場合にノズル固化が生じることが分かった。
【0293】
(実施例2)
実施例1の調製例1において、調製時の温度などの条件を変化させることにより、調製したインク液の粒子サイズ、変動係数が下記表3に示す値になるように顔料粒子分散組成物(顔料粒子濃度約10.0質量%;本発明に係る有機材料粒子の分散物)4〜8を調製し、インクジェット記録用インク液I−2で用いた顔料粒子分散組成物1を前記顔料粒子分散組成物4〜8に代え、インクジェット記録用インク液I−2の調製と同様にして、インクジェット記録用インク液IV−1〜IV−5を調製した。
【0294】
【表3】

【0295】
続いて、実施例1と同様に、インクジェットプリンタを用いて下記表4に示す吐出順にて画像記録を行ない、色混じり、シアン濃度の評価を行なった。評価結果を下記表4に示す。
【0296】
【表4】

【0297】
上記のように、本発明の範囲から外れる粒子サイズ、変動係数の顔料を含有する比較例のインク液では、シアン濃度の低下が見られた。
【0298】
(実施例3)
実施例1のI−1〜I−4、II−1の調製に用いたビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル及び1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン(Cel3000、ダイセル・サイテック(株)製)を下記の高沸点有機溶媒S−15を等質量で置き換えたこと以外、実施例1と同様にして、インク液を調製し、画像記録を行なうと共に、色混じり、シアン濃度の評価を行なった。本実施例でも、実施例1と同様の結果が得られた。
【0299】
【化30】

【図面の簡単な説明】
【0300】
【図1】有機材料粒子の製造方法に用いられる製造装置の好ましい実施態様を概略的に示す断面図である。
【図2】図1の製造装置の一実施態様として混合室を一部断面により概略的に示す拡大部分断面図である。
【図3】図1の製造装置の別の実施態様として混合室を一部断面により概略的に示す拡大部分断面図である。
【図4】有機材料粒子の製造方法に用いられる製造装置の別の好ましい実施態様を概略的に示す断面図である。
【図5】有機材料粒子の製造方法に用いられる製造装置のさらに別の好ましい実施態様を概略的に示す断面図である。
【図6】有機材料粒子の製造方法に用いられる限外ろ過装置の一構成例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0301】
11…容器
11a…液槽(溶媒),11b…液面
12…撹拌羽根
13…混合室
14a,14b…供給管
14c,14d…供給管開口部
15…シャフト
16…モーター
17…ケーシング(混合室壁)
18…孔(円形孔)
19a,19b…撹拌羽根
21…容器(攪拌槽外壁)
21a…攪拌槽
22…撹拌羽根
23…排出管
24a,24b,24c…供給管
25…シャフト
31,32,33…供給口
36…排出口
40…シールプレート
41,42…撹拌羽根
46…外部磁石
48,49…モータ
50…撹拌装置
81…収納容器
82…循環用ポンプ
83…限外ろ過モジュール
84…補充純粋計測用流量計
85…透過水計測用流量計
86…逆方向洗浄用ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも画像を形成するための少なくとも一種の第1の液体Aと、前記第1の液体Aと組成が異なる少なくとも一種の第2の液体Bとから構成されたインクジェット記録用インクセットであって、
前記液体A及びBの少なくとも一方が、平均粒子サイズが50nm以下であり、粒子サイズの変動係数が50%以下である有機材料粒子を含有するインクジェット記録用インクセット。
【請求項2】
前記有機材料粒子は、再沈法により生成されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項3】
前記有機材料粒子が、良溶媒に溶解した有機材料の溶液と、前記良溶媒と相溶する前記有機材料の貧溶媒と、高分子分散剤を含有する溶液との少なくとも3種を混合し、この混合液より前記有機材料を粒子として生成させてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項4】
前記有機材料が、有機顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項5】
前記液体Bが、着色剤を含有しない、もしくは着色剤の含有量が1%未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項6】
前記液体Aが、重合性もしくは架橋性材料を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項7】
前記液体Bが、界面活性剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録用インクセットを用い、第2の液体Bを第1の液体Aで形成される画像と同一もしくは該画像よりも広い範囲に予め被記録媒体に付与しておくインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記液体Aを少なくとも第1の液滴a1及び液滴a2として、前記液滴a1と前記液滴a2とを重なり部分をもって打滴することで前記画像を形成することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記重なり部分における重なり率が10%以上90%以下であることを特徴とする請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
前記液体Bの付与後、前記液体Aの前記液滴a1が打滴されるまでの打滴間隔が5μ秒以上400m秒以下であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
前記液滴a1及び液滴a2を含む前記液体Aの液滴サイズが、0.1ピコリットル以上100ピコリットル以下であることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項13】
前記液体Aの打滴までの間は前記液体Bを液体状に保持することを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項14】
前記液体Aが、重合性もしくは架橋性材料を含み、前記液滴Aの打滴後、活性エネルギーを前記画像に与えて重合性もしくは架橋性材料を重合もしくは架橋することを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−270079(P2007−270079A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100741(P2006−100741)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成17年度独立行政法人新エネルキ゛ー・産業技術総合開発機構 ナノテクノロシ゛ーフ゜ロク゛ラム「ナノテク・先端部材実用化研究開発」/「有機顔料ナノ結晶の新規製造フ゜ロセスの研究開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】