説明

インクジェット記録用インク組成物およびインクジェット記録方法

【課題】 良好な画像が得られ、再分散性に優れるるとともに、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズルに粒子が付着しにくく、かつ保存安定性に優れたインク組成物及びその製造方法。
【解決手段】 分散媒中に分散剤を用いて少なくとも色材を分散させた色材分散物と、分散媒中に分散剤を用いて少なくともポリマーを分散させたポリマー分散物をあらかじめ混合するかもしくは混合しながら、熱を加える工程を有する色材/ポリマー複合粒子の製造方法、及び、それを用いたインク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用インク組成物およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり高価な装置となる。熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高くかつ廃材が出る。一方インクジェット方式は、安価な装置で、且つ必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
インクジェット記録方式には、例えば、発熱体の熱により発生する蒸気の圧力でインク滴を飛翔させる方式や、圧電素子によって発生される機械的な圧力パルスによりインク滴を飛翔させる方式、また、静電界を利用して荷電粒子を含有するインク滴を飛翔させる方式(特許文献1及び2参照)がある。蒸気や機械的圧力でインク滴を飛翔させる方式は、インク滴の飛翔方向を制御できず、インクノズルの歪みや空気の対流により、被記録媒体上の望ましい位置へ、インク滴を正確に着弾させることが困難である。
一方、静電界を利用する方式は、インク滴の飛翔方向を静電界により制御するため、望ましい位置へインク滴を正確に着弾させることが可能であり、高画質の画像形成物(印刷物)を作製でき優れている。
【0004】
静電界を利用するインクジェット記録に用いられるインク組成物としては、分散媒および、色材を少なくとも含む荷電粒子を含有するインク組成物が用いられる(特許文献3及び4参照)。色材を含有するインク組成物は、色材を変更することにより、イエロー、マゼンタ、シアン、墨の4色のインクを作製することができ、さらに金や銀の特色インクを作製することができる。したがって、カラーの画像形成物(印刷物)を作製することができるため有用である。しかしながらこれまで、長時間のインクジェット記録では、常に安定してインク滴を吐出することが困難であった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6158844号明細書
【特許文献2】特許第3315334号公報
【特許文献3】米国特許第5952048号明細書
【特許文献4】特開平8−291267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、インクジェット記録に用いられるインク組成物は、色材およびポリマーを加熱混練した後、乾式で粉砕し粒子を得、分散媒および分散剤を加えて前記粒子を微小化するとともに分散媒に分散させ、さらに荷電調整剤を加えて粒子に荷電を付与することにより製造される。しかしながらこのようにして製造された従来のインク組成物は、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズル(吐出口)に粒子が付着し、詰まりが生じやすいという問題点がある。また、長期間保存すると粒子が沈降し、攪拌しても再分散せず、保存安定性が悪いという問題点もある。
したがって本発明の目的は、前記問題点を解決することのできる粒子、その製造方法およびインク組成物を提供することである。詳しくは、粒子間に働く相互作用を抑制することにより、例えば該粒子をインクジェット記録用のインク組成物の成分として用いた場合に、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズルに粒子が付着しにくく、かつ保存安定性も改善することのできる、粒子、その製造方法およびインク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達するために鋭意検討した結果、上記課題は以下の構成により、解決されることを見出した。
(1)分散媒中に分散剤を用いて少なくとも色材を分散させた色材分散物と、分散媒中に分散剤を用いて少なくともポリマーを分散させたポリマー分散物をあらかじめ混合するかもしくは混合しながら、熱を加える工程を有する色材/ポリマー複合粒子の製造方法。
(2)上記(1)に記載の色材/ポリマー複合粒子の製造方法により製造された色材/ポリマー複合粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物。
(3)上記(2)に記載のインク組成物を用いて、静電界を利用したインクジェット記録方式によりインク滴を飛翔させることを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0008】
長時間のインクジェット記録において常に安定してインク滴を吐出することが可能であり、吐出不良が無く、高画質な画像が形成できるインクジェット記録用インク組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明についてさらに詳述する。
本発明のインク組成物は、分散媒中に分散剤を用いて少なくとも色材を分散させた色材分散物と、分散媒中に分散剤を用いて少なくともポリマーを分散させたポリマー分散物をあらかじめ混合するかもしくは混合しながら、熱を加える工程を少なくとも有する製造方法により製造された色材/ポリマー複合粒子を含有する。
【0010】
[分散媒]
分散媒は、高い電気抵抗率、具体的には1010Ωcm以上を有する誘電性の液体であることが好ましい。仮に電気抵抗率の低い分散媒を使用すると、隣接する記録電極間で電気的導通を生じさせるため、本形態には不向きである。また、誘電性液体の比誘電率は5以下が好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、誘電性液体中の荷電粒子に有効に電界が作用されるため好ましい。
【0011】
本発明に用いる分散媒としては、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、およびこれらの炭化水素のハロゲン置換体、シリコーンオイルがある。例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン.イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、トルエン、キシレンおよびメシチレン等が挙げられ、具体的にはアイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、KF−96L(信越シリコーン社の商品名)等を単独あるいは混合して用いることができる。インク組成物全体に対する分散媒の含有量は、20〜99質量%の範囲内であることが好ましい。20質量%以上において、色材を含有する粒子を分散媒に分散することができ、また、99質量%以下において、色材の含有量を充足することができる。
【0012】
[色材]
本発明に用いる色材としては、公知の染料および顔料を使用することができ、用途や目的に応じて選択することができる。例えば、記録された画像記録物(印刷物)の色調の観点からは、顔料を用いることが好ましい(例えば、技術情報協会発行 「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」 2001年12月25日 第1刷参照。以下「非特許文献1」とも称する)。色材を変更することにより、イエロー、マゼンタ、シアン、墨(ブラック)の4色のインクを作製することができる。特に、オフセット印刷用インクやプルーフに用いられる顔料を使用するとオフセット印刷物と同様な色調が得られるので好ましい。
【0013】
イエローインク用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー74等のモノアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー12、 C.I.ピグメントイエロー17等のジスアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー180等の非ベンジジン系のアゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー100等のアゾレーキ顔料、 C.I.ピグメントイエロー95等の縮合アゾ顔料、 C.I.ピグメントイエロー115等の酸性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントイエロー18等の塩基性染料レーキ顔料、フラバントロンイエロー等のアントラキノン系顔料、イソインドリノンイエロー3RLT、C.I.ピグメントイエロー139等のイソインドリノン顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン顔料、イソインドリンイエロー等のイソインドリン顔料、 C.I.ピグメントイエロー153等のニトロソ顔料、 C.I.ピグメントイエロー
117等の金属錯塩アゾメチン顔料などが挙げられる。
【0014】
マゼンタインク用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド3等のモノアゾ系顔料、 C.I.ピグメントレッド38等のジスアゾ顔料、 C.I.ピグメントレッド53:1等やC.I.ピグメントレッド57:1等のアゾレーキ顔料、 C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料、 C.I.ピグメントレッド174等の酸性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントレッド81等の塩基性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、 C.I.ピグメントレッド88等のチオインジゴ顔料、 C.I.ピグメントレッド194等のペリノン顔料、 C.I.ピグメントレッド149等のペリレン顔料、 C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン顔料、 C.I.ピグメントレッド180等のイソインドリノン顔料、 C.I.ピグメントレッド83等のアリザリンレーキ顔料等が挙げられる。
【0015】
シアンインク用の顔料としては、例えば、C.Iピグメントブルー25等のジスアゾ系顔料、 C.I.ピグメントブルー15等のフタロシアニン顔料、 C.I.ピグメントブルー24等の酸性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントブルー1等の塩基性染料レーキ顔料、 C.I.ピグメントブルー60等のアントラキノン系顔料、 C.I.ピグメントブルー18等のアルカリブルー顔料等が挙げられる。
【0016】
墨インク用の顔料としては、例えば、アニリンブラック系顔料等の有機顔料や酸化鉄顔料、及びファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料類等が挙げられる。
更にマイクロリス−A,−K,−Tなどのマイクロリス顔料に代表される加工顔料も好適に使用できる。その具体例としてはマイクロリスイエロー4G−A,マイクロリスレッドBP−K,マイクロリスブルー4G−T,マイクロリスブラックC−Tなどが挙げられる。
また、白インク用の顔料として炭酸カルシウムや酸化チタン顔料を、銀インク用として
アルミニウム粉を、金インク用として銅合金を用いる等、必要に応じて各種の顔料を使用することができる。
【0017】
顔料は、基本的には一色につき一種類の顔料を使うことが、インク製造の簡便性の点で好ましいが、色相調整として例えば、墨インク用に、カーボンブラックにフタロシアニンを混合するなど、場合によっては2種以上併用することも好ましい。また、ロジン処理等、公知の方法により顔料を表面処理した後使用してもよい(技術情報協会発行、「顔料分散安定化と表面処理技術・評価」、2001年12月25日、第1刷参照。)。
インク組成物全体に対する顔料の含有量は、0.1〜50質量%の範囲内であることが好ましい。0.1質量%以上において、顔料量がより充足し、印刷物において充分良好な発色が得られ、50質量%以下において、色材を含有する粒子を分散媒により良好に分散させることができる。さらに好ましくは、1〜30質量%である。
【0018】
[被覆剤]
本発明のインク組成物の製造方法においては、分散媒中に分散剤を用いて少なくとも色材を分散させた色材分散物と、分散媒中に分散剤を用いて少なくともポリマーを分散させたポリマー分散物をあらかじめ混合するかもしくは混合しながら、熱を加える工程により、当該ポリマーにより被覆された色材粒子(色材/ポリマー複合粒子)を形成する。なお、当該ポリマーは、被覆剤ともいう。
すなわち、顔料等の色材は、インク組成物中において、被覆剤により被覆された状態で分散(粒子化)されている。色材は被覆剤で被覆されることにより、色材が持つ荷電を遮蔽し望ましい荷電特性を有することができる。また、色材の種類により異なる分散安定性の相違を打ち消し、同様な分散安定性が付与される。 さらに、本発明においては、被記録媒体へインクジェット記録した後、ヒートローラ等の加熱手段により定着することが好ましいが、この際、被覆剤が熱により溶融し、効率の良い定着に寄与する。
【0019】
被覆剤としては、例えば、ロジン類、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。これらの内、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点のいずれか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
【0020】
本発明において、被覆剤として特に好適に使用されるポリマーは、下記一般式(1)〜(4)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有するポリマーである。
【0021】
【化1】

【0022】
式中、X11は、酸素原子または−N(R13)−を示す。R11は、水素原子またはメチル基を示し、R12は、炭素数1〜30個の炭化水素基を示し、R13は、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示す。R21は、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を示す。R31、R32及びR41は、それぞれ独立に、炭素数1から20個の2価の炭化水素基を示す。尚、R12、R21、R31、R32、R41の炭化水素基中にエーテル結合、アミノ基、ヒドロキシ基、または、ハロゲン置換基を含んでいても良い。
【0023】
一般式(1)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するラジカル重合性モノマーを公知の方法によりラジカル重合することにより得られる。用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類が挙げ
られる。
【0024】
一般式(2)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するラジカル重合性モノマーを公知の方法によりラジカル重合することにより得られる。用いられるラジカル重合性モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、4−メチルスチレン等が挙げられる。
【0025】
一般式(3)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するジカルボン酸または酸無水物とジオールとを公知の方法で脱水縮合することにより得られる。用いられるジカルボン酸としては、コハク酸無水物、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−フェニレンジ酢酸、ジグリコール酸等が挙げられる。また、用いられるジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
一般式(4)で示される構成単位を含有するポリマーは、対応するヒドロキシ基を有するカルボン酸を公知の方法で脱水縮合するかまたは、対応するヒドロキシ基を有するカルボン酸の環状エステルを公知の方法で開環重合することにより得られる。用いられるヒドロキシ基を有するカルボン酸またはその環状エステルとしては、6−ヒドロキシヘキサン酸、11−ヒドロキシウンデカン酸、ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0027】
一般式(1)〜(4)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有するポリマーは、一般式(1)〜(4)で示される構成単位のホモポリマーであってもよいが、他の構成成分との共重合体(コポリマー)であっても良い。また、これらのポリマーは、被覆剤として単独で使用しても良いが、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0028】
インク組成物全体に対する被覆剤の含有量は、0.1〜40質量%の範囲内であることが好ましい。0.1質量%以上において、被覆剤の量がより充足し、充分な定着性が得られるとともに、40質量%以下において、色材と被覆剤を含有する粒子をより良好に形成することができる。
【0029】
[分散剤]
本発明においては、色材及びポリマーをそれぞれ分散媒中に分散(粒子化)し、その際、粒子直径を制御し、かつ粒子の沈降を抑制するために分散剤を使用する。
好適な分散剤としては、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステルや、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステルに代表される界面活性剤が挙げられる。また、例えば、スチレンとマレイン酸のコポリマー、及びそのアミン変性物、スチレンと(メタ)アクリル化合物のコポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリエチレンと(メタ)アクリル化合物のコポリマー、ロジン、BYK−160、162、164、182(ビックケミー社製のポリウレタン系ポリマー)、EFKA−401、402(EFKA社製のアクリル系ポリマー)、ソルスパース17000,24000(ゼネカ社製のポリエステル系ポリマー)等が挙げられる。本発明においては、インク組成物の長期間保存安定性の観点から、重量平均分子量が1,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜7.0の範囲内であるポリマーが好ましい。さらに、グラフトポリマー
またはブロックポリマーを用いることが最も好ましい。
【0030】
本発明において特に好適に用いられるポリマーは、下記一般式(5)及び(6)で示される構成単位の少なくともいずれか一方からなる重合体成分と、下記一般式(7)で示さ
れる構成単位を少なくともグラフト鎖として含有する重合体成分とを少なくとも含有するグラフトポリマーである。
【0031】
【化2】

【0032】
式中、X51は、酸素原子または−N(R53)−を示す。R51は、水素原子またはメチル基を示し、R52は、炭素数1〜10個の炭化水素基を示し、R53は、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示す。R61は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、または、炭素数1〜20個のアルコキシ基を示す。X71は、酸素原子または−N(R73)−を示す。R71は、水素原子またはメチル基を示し、R72は、炭素数4〜30個の炭化水素基を示し、R73は、水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基を示す。尚、R52、R72の炭化水素基中にエーテル結合、アミノ基、ヒドロキシ基、または、ハロゲン置換基を含んでいても良い。
【0033】
上記グラフトポリマーは、一般式(7)に対応するラジカル重合性モノマーを、好ましくは連鎖移動剤の存在下重合し、得られたポリマーの末端に重合性官能基を導入し、さらに、一般式(5)または(6)に対応するラジカル重合性モノマーと共重合することにより得ることができる。
【0034】
一般式(5)に対応するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルの(メタ)アクリル酸エステル類、及び、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0035】
一般式(6)に対応するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、4−メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等が上げられる。
また、一般式(6)に対応するラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、等が挙げられる。
これらのグラフトポリマーの具体例としては、下記の構造式で示されるポリマーが挙げられる。
【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
一般式(5)及び(6)で示される構成単位のいずれか1つを少なくとも含有する重合
体成分と、一般式(7)で示される構成単位を少なくともグラフト鎖として含有する重合成分とを含有するグラフトポリマーは、一般式(5)及び/又は(6)、並びに一般式(7)で示される構成単位のみを有していてもよいし、他の構成成分を含有していても良い。グラフト鎖を含有する重合体成分と、其れ以外の重合体成分との好ましい組成比(質量比)は、10:90〜90:10である。この範囲において、良好な粒子形成性が得られ、所望の粒子直径を得やすく、好ましい。これらのポリマーは、分散剤として単独で使用しても良く、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0039】
インク組成物全体に対する分散剤の含有量は、0.01〜30質量%の範囲内であることが好ましい。この範囲内において、より良好な粒子形成性が得られ、所望の粒子直径を得ることができる。
【0040】
[荷電調整剤]
本発明のインク組成物においては、色材/ポリマー複合粒子の荷電量を制御するために荷電調整剤を含有することが好ましい。
好適な荷電調整剤としては、ナフテン酸ジルコニウム塩、オクテン酸ジルコニウム塩等の有機カルボン酸の金属塩、ステアリン酸テトラメチルアンモニム塩等の有機カルボン酸のアンモニム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホコハク酸マグネシウム塩等の有機スルホン酸の金属塩、トルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等の有機スルホン酸のアンモニウム塩、スチレンと無水マレイン酸のコポリマーをアミンで変性したカルボン酸基を含有するポリマー等の側鎖にカルボン酸基を有するポリマー、メタクリル酸ステアリルとメタクリル酸のテトラメチルアンモニウム塩の共重合体等の側鎖にカルボン酸アニオン基を有するポリマー、スチレンとビニルピリジンの共重合体等の側鎖に窒素原子を有するポリマー、メタクリル酸ブチルとN−(2−メタクリロイルオキシエチル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムトシラート塩との共重合体等の側鎖にアンモニウム基を有するポリマー等が挙げられる。中でも、本発明においては、長時間安定性した荷電を保持する観点から、ポリマーの荷電調整剤を用いることが好ましい。なお、粒子に付与される荷電は、正荷電であっても負荷電であっても良い。
【0041】
インク組成物全体に対する荷電調整剤の含有量は、0.0001〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.001〜5質量%がより好ましい。この範囲内において、吐出に必要な粒子の荷電量がより充足され、また荷電量がより適度となる。
【0042】
[その他の成分]
本発明においては、さらに、腐敗防止のために防腐剤や、表面張力を制御するための界面活性剤等を目的に応じて含有することができる。
【0043】
[粒子の作製]
以上の成分を用い、分散媒中に分散剤を用いて少なくとも色材を分散させた色材粒子分散物、分散媒中に分散剤を用いて少なくともポリマーを分散させたポリマー粒子分散物を作製する。
そして、作製した色材粒子分散物とポリマー粒子分散物を、あらかじめ混合するか、もしくは混合しながら熱を加える工程を少なくとも含む工程により色材/ポリマー複合粒子を作製する。
尚、ポリマー粒子分散物におけるポリマーとしては、前述の被覆剤を挙げることができる。
【0044】
前述のように、従来のインク組成物は、色材およびポリマーを加熱混練した後、乾式で粉砕し粒子を得、分散媒および分散剤を加えて前記粒子を微小化するとともに分散媒に分散させ、さらに荷電調整剤を加えて粒子に荷電を付与することにより製造されるが、従来
のインク組成物は、インクジェット記録装置のインクジェットヘッドのノズルに粒子が付着し、つまりが生じやすいという問題点があった。また、長期間保存すると粒子が沈降し、攪拌しても再分散せず、保存安定性が悪いという問題点もあった。
【0045】
本発明では、色材粒子分散物、ポリマー粒子分散物を予め別々に作製し、これらを混合して熱を加えることで色材/ポリマー複合粒子を作製する。これらの工程により、粒子の表面に色材である顔料等が露出しにくくなり、粒子間に働く相互作用を抑制することができる。
【0046】
さらに詳しくは、従来の、予め色材/ポリマーを加熱混練した後、分散工程で製造された微小粒子は、粒子表面に色材が露出してしまい、粒子間の相互作用が強く、インクジェットヘッドのノズルで粒子が乾燥付着しやすい。また、保存時に凝集しやすくなる。
【0047】
本発明では、色材粒子分散物とポリマー粒子分散物とを別々に作製し、その後、熱による色材粒子とポリマー粒子との融合を行うことにより、添加の条件(加熱温度、段階的な添加)、各々の分散物の粒子径の比、分散安定性、素材の溶解度パラメーター(SP値)等により色材/ポリマー複合粒子内の色材とポリマーの存在形態(モルホロジー)を制御できる。すなわち、ポリマーが色材を被覆し、粒子の表面に色材の露出量が少ない粒子を作製することで、粒子間に働く相互作用を抑制し、前記の乾燥付着が起きにくく、また保存時の凝集も低減する。なお荷電調整剤の添加は、分散工程時、加熱工程時のいずれであってもよい。
色材としては、前記のいずれの色材を使用してもよいが、顔料が特に好ましい。
【0048】
本発明の色材/ポリマー複合粒子の作製方法について、以下詳細に説明する。
<前処理工程>
色材粉体、及び、ポリマー粉体は、分散物作製前に市販の乾式粉砕機等を用いて乾式粉砕しておくことが好ましい。
乾式粉砕に使用される粉砕装置としては、トリオサイエンス(株)製トリオブレンダー、協立理工(株)製SK−M10型サンプルミル、セイシン企業(株)製コジェットシステムα−mkIII、レッチェ(株)超遠心粉砕機、ホソカワミクロン(株)製コロブレックス160Z、中央化工機(株)製試験研究用小型振動ミル、日本ニューマチック(株)製ジェットミル等が挙げられる。
また、乾式粉砕後の平均粒径は小さいほど、後工程の湿式分散の効率がよくなり好ましいが、小さすぎると、粉体が飛散しやすく、取り扱いが悪くなる。好ましくは、平均体積直径が5μm〜1mm、より好ましくは5μm〜100μmの範囲内である。
【0049】
<色材粒子分散物及びポリマー粒子分散物の作製>
色材粒子分散物、ポリマー粒子分散物の作製は、一般的な湿式分散で行うことが出来る。分散工程で用いる分散機としては、特に制限はなく、市販の湿式分散機を使用することができる。例えば、ニーダー、ディゾルバー、ミキサー、高速ディスパーザー、ロールミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ビーズミルがあげられる。分散度に応じてメディアの径を変えて分散すると、効率よくインク組成物ができる。また、連続式ビーズミル、サンドミルで粒子径の大きな色材を分散する場合はプレ分散が必要な場合があるが、この場合はプレ分散機としてディスパーザ、ボールミル、バッチ式サンドミルなどを用いることができる。
【0050】
ヨコ型ビーズミル、サンドミルの具体例としては、ダイノーミル、ダイノーミルECM(スイス、WAB社)、パールミル、DCP(ドイツ、ドライス社)、アジテーターミル(ドイツ、ネッチェ社)、スーパーミル(ベルギー、サスマイヤー社)、コボルミル(スイス、フリーマ社)、スパイクミル(井上製作所)等が挙げられる。
【0051】
ボールミル、ビーズミル、サンドミル用のメディアには、ジルコニア、チタニア、アルミナ、ガラス、スチール、窒化ケイ素などいろいろな材質のものを使用できる。分散液の粘度、プレ分散の度合いなどにあわせて、メディアの比重、耐磨耗性等の観点からメディアの材質は選択される。
メディア径は特に限定されるものではないが、例えば直径0.1mm〜10mm程度のものが使用できる。一般的には、メディアが大きいほど粒径分布が広くなり、小さいほど小粒径まで分散できる傾向にある。また、メディアの充填率も特に限定されるものではないが、50%〜90%のメディア充填率が好ましい。メディアの充填率と分散性能は密接な関係があり一般的に充填率を高くできれば分散効率が向上することが知られている。
【0052】
分散媒としては、前記のものを使用することができ、色材粒子及びポリマー粒子に対して、即ち、色材粒子分散物、ポリマー粒子分散物において、同じものであっても、異なっていてもよい。
また、分散媒中に、インク組成物を構成する少なくとも1種の成分を添加してもよい。
【0053】
また、分散剤としては、前記のものを使用することができ、色材粒子及びポリマー粒子に対して同じものを使用してもよいし、異なるものを使用してもよい。
分散媒及び分散剤は、1種であっても複数の混合であってもよい。
【0054】
分散温度に関しては、分散物が作製できれば特に制限されるものではないが、実用性の観点から−10℃〜60℃の間が好ましく、より好ましくは、−10℃〜40℃である。
【0055】
色材粒子分散物及びポリマー粒子分散物における各粒子の平均体積直径は、特に制限されるものではないが、熱を加える工程を経て作製する色材/ポリマー複合粒子の平均体積直径に対して1/1000〜9/10の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、1/100〜9/10の範囲内であり、さらに好ましくは1/10〜9/10の範囲内である。色材/ポリマー複合粒子を作製する際、色材/ポリマー複合粒子の平均体積直径に対して、1/1000以上の平均体積直径にて、色材粒子分散物、及び、ポリマー粒子分散物の複合化がより容易であり、9/10以下の平均体積直径にて色材粒子、ポリマー粒子の複合化の均一性をより確保できる。
【0056】
色材粒子分散物とポリマー粒子分散物における各粒子の平均体積直径の比は特に制限されるものではないが、好ましくは、色材粒子分散物における色材粒子/ポリマー粒子分散物におけるポリマー粒子の比が、1/100から100/1の範囲である。より好ましくは、1/1から100/1の範囲である。色材粒子の平均体積直径がポリマー粒子の平均体積直径より大きいと、小サイズのポリマー粒子が大粒子の色材粒子の外側に付着し、色材をポリマーで包みやすくなるので好ましい。
【0057】
粒子の平均体積直径は、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−700(堀場製作所(株)製)等の装置を用い、遠心沈降法により測定できる。
【0058】
色材粒子分散物中の色材粒子の濃度は0.1〜50質量%が好ましく、0.1〜30質量%がより好ましい。
また、ポリマー粒子分散物中のポリマー粒子の濃度は0.1〜50質量%が好ましく、0.1〜30質量%がより好ましい。
【0059】
次に上記で説明した色材粒子分散物とポリマー粒子分散物を混合し、熱を加える工程について説明する。この工程で色材粒子とポリマー粒子が融合する。
【0060】
色材粒子分散物/ポリマー粒子分散物の体積比は1/100〜100/1が好ましく、1/10〜10/1がより好ましい。このような範囲にて、両分散液の均一な混合がより容易となる。
また、混合時の、色材粒子分散物中の色材粒子/ポリマー粒子分散物のポリマー粒子の質量比は、作製する色材ポリマー複合粒子の使用目的に応じて適宜決定できるが、1/10000〜7/3が好ましく、1/100〜1/2がより好ましい。
色材粒子分散物中の色材粒子/ポリマー粒子分散物中のポリマー粒子の質量比が1/10000以上にて、色材がより充足し、印刷物においてより良好な画像が得られ、7/3以下にて色材をポリマーで充分に被覆できる。
【0061】
色材粒子分散物と、ポリマー粒子分散物の混合は、予め混合しても良いし、加熱しながら色材粒子分散物、ポリマー粒子分散物のいずれか一方、または両者を段階的に加えてもよい。色材の粒子外への露出を減らしポリマーで包み込むには、ポリマー粒子分散物のポリマー粒子を粒子の外側に融合させたほうがよく、ポリマー粒子分散物の添加を色材粒子分散物と同時に行って融合するか、あるいはポリマー粒子分散物の添加を遅らせたほうが好ましい。すなわち、下記(1)〜(4)の工程が好ましい。
【0062】
(1)色材粒子分散物とポリマー粒子分散物を予め混合し、熱を加えて融合する。
(2)色材粒子分散物にポリマー粒子分散物を除々に加えながら、熱を加えて融合する。
(3)色材粒子分散物とポリマー粒子分散物の両者を除々に加えながら、熱を加えて融合する。
(4)色材粒子分散物と、ポリマー粒子分散物の一部を予め混合し、熱を加えながら、残りのポリマー分散物を除々に加える。
【0063】
色材粒子分散物とポリマー粒子分散物の混合及び加熱は、前記市販の湿式分散機を使用し、湿式分散を行いながら熱を加えて行うことも出来る。
【0064】
色材粒子分散物とポリマー粒子分散物を混合し加熱する際、分散安定性を確保するために分散剤を更に添加して加熱することもできる。
【0065】
加熱工程の加熱温度は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)および軟化点より高いことが好ましく、ポリマーの種類により適宜決定すればよいが、(ポリマーのTg−10℃)〜(ポリマーのTg+60℃)が好ましく、(ポリマーのTg)〜(ポリマーのTg+40℃)が特に好ましい。
ポリマーのTgは、示差熱測定装置、粘弾性測定装置により測定することができる。
また、加熱工程の時間は、30分〜10時間であるのが好ましい。
【0066】
このようにして得られる加熱工程終了後の粒子は、その平均体積直径が0.2μm〜5.0μmの範囲内であるのが好ましく、0.7〜5.0μmであるのがより好ましい。
粒子の平均体積直径は、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−700(堀場製作所(株)製)等の装置を用い、遠心沈降法により測定できる。粒子の平均体積直径は、用いる分散剤の種類と添加量、及び分散する際に用いる装置により、調整することができる。
【0067】
上記方法で作製した色材/ポリマー複合粒子の分散物に、必要に応じて前記各成分を添加してインク組成物とすることができる。
【0068】
[インク組成物の物性値]
上記のインク組成物の製造方法により、下記条件(A)〜(D)を満足する、長時間の
インクジェット記録において常に安定してインク滴を吐出することができるインク組成物を得ることができる。
(A)インク組成物の20℃での電気伝導度が、10nS/m〜300nS/mの範囲内である。
(B)荷電粒子(色材/ポリマー複合粒子)の電気伝導度が、インク組成物の電気伝導度の50%以上である。
(C)荷電粒子の体積平均直径が、0.2〜5.0μmの範囲内である。
(D)インク組成物の20℃での粘度が、0.5〜5mPa・sの範囲内である。
【0069】
インク組成物の20℃での電気伝導度は、10nS/m〜300nS/mの範囲内であることが好ましい。インク組成物の電気伝導度が10nS/m以上の場合に、インク滴の吐出が良好であり、300nS/m以下の場合に、インクジェット装置のヘッド(吐出部)において導通し、ヘッドの損傷が生じない。さらに好ましくは、30nS/m〜200nS/mである。
粒子の電気伝導度は、インク組成物を遠心沈降し、粒子を沈降させた上澄み液の電気伝導度を測定し、インク組成物の電気伝導度から差し引いた値である。
本発明では、粒子の電気伝導度が、インク組成物の電気伝導度の50%以上であることが好ましい。静電界を利用したインクジェット記録方式では、インク滴が吐出する際、荷電粒子の濃縮が起こるが、50%以上の場合には、この濃縮が生じず、結果として、被記録媒体に記録された際インクのにじみも生じない。さらに好ましくは60%以上である。
また、粒子の荷電量は、5〜200μC/gの範囲が好ましい。荷電量が5μC/g以上の場合に、濃縮が十分であり、また200μC/g以下の場合に、過度に濃縮されることもなく、ヘッド吐出口でのインクの詰まりが防止できる。より好ましくは10〜150μC/g、更に好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
【0070】
粒子の体積平均直径は、例えば、超遠心式自動粒度分布測定装置CAPA−700(堀場製作所(株)製)等の装置を用い、遠心沈降法により測定できる。平均直径は、算出方法によって、体積平均、数平均等があるが、本発明では、荷電粒子の体積平均直径が、0.2〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。0.2μm以上の場合、粒子の濃縮が充分となり、結果として、非記録媒体に記録された際インクのにじみが防止できる。また、5.0μm以下の場合に、ヘッド吐出口の詰まりの問題が生じない。さらに好ましくは、0.7〜5.0μmである。粒度分布は、狭く均一なほうが好ましい。
【0071】
本発明では、インク組成物の粘度が、0.5〜5mPa・sの範囲内であることが好ましい。粘度が0.5mPa・s以上の場合には、ヘッドのインク吐出口からインク組成物が液だれしてしまうという問題が生じず、また、5mPa・s以下の場合に、インク滴の吐出が良好である。さらに好ましくは、0.8〜4mPa・sの範囲内である。
また、インク組成物の表面張力は、10〜70mN/mの範囲内であることが好ましい。表面張力が10mN/m以上の場合に、ヘッドのインク吐出口からインク組成物が液だれしてしまうという問題が生じず、また、70mN/m以下の場合に、インク滴の吐出が良好である。さらに好ましくは、15〜50mN/mの範囲である。
【0072】
[インクジェット記録装置]
以上記述したインク組成物を、インクジェット記録方式により、被記録媒体へ記録することができるが、本発明においては、静電界を利用したインクジェット記録方式を用いることが好ましい。静電界を利用するインクジェット記録方式は、制御電極と被記録媒体背面の背面電極間に電圧を印加することにより、インク組成物の荷電粒子を静電力によって吐出位置に濃縮し、吐出位置から記録媒体へ飛翔させる方式である。制御電極と背面電極間に印加する電圧は、例えば荷電粒子が正の場合、制御電極が正極であり背面電極が負極となる。背面電極へ電圧を印加する代わりに被記録媒体に帯電を行っても同様の効果が得
られる。
【0073】
インクを飛翔させる方式として、例えば、注射針のようなニードル状の先端からインクを飛翔させる方式があり、本発明のインク組成物を用いることで、短時間の記録が可能である。
【0074】
一方、吐出開口を有するインク室内にインクが循環されており、吐出開口周縁に形成された制御電極に電圧を印加することによって吐出開口中に存在し、先端が被記録媒体側に向いたインクガイド先端から濃縮されたインク滴が飛翔する方法では、インクの循環による荷電粒子の補給と、吐出位置のメニスカス安定性を両立することができるため、長期間安定に記録を行うことができる。さらに本方式ではインクが外気と接する部分が吐出開口部だけと非常に少ないため、溶媒の蒸発を抑え、インク物性が安定化するため、本発明において好適に使用することができる。
【0075】
本発明のインク組成物を適用するに適したインクジェット記録装置の構成例を以下に示す。
まずは、図1に示す記録媒体に片面4色印刷を行う装置の概要について説明する。
図1に示されるインクジェット記録装置1は、フルカラー画像形成を行うための4色分の吐出ヘッド2C、2M、2Y及び2Kから構成される吐出ヘッド2にインクを供給し、さらに吐出ヘッド2からインクを回収するインク循環系3、図示されないコンピュータ、RIP等の外部機器からの出力により吐出ヘッド2を駆動させるヘッドドライバ4、位置制御手段5を備える。またインクジェット記録装置1は、3つのローラ6A、6B、6Cに張架された搬送ベルト7、搬送ベルト7の幅方向の位置を検知可能な光学センサなどで構成された搬送ベルト位置検知手段8、記録媒体Pを搬送ベルト上に保持するための静電吸着手段9、画像形成終了後に記録媒体Pを搬送ベルト7から剥離するための除電手段10及び力学的手段11を備える。搬送ベルト7の上流、下流には、記録媒体Pを図示されないストッカーから搬送ベルト7に供給するフィードローラ12及びガイド13、剥離後の記録媒体Pへインクを定着させると共に図示されない排紙ストッカーに搬送する定着手段14及びガイド15が配置されている。またインクジェット印刷装置1の内部には、搬送ベルト7を挟んで吐出ヘッド2に対向する位置には、記録媒体位置検出手段16を有し、さらにインク組成物から発生する溶媒蒸気を回収するための排出ファン17及び溶媒蒸気吸着材18からなる溶媒回収部が配置され、装置内部の蒸気は該回収部を通って装置外部に排出される。
【0076】
フィードローラ12は公知のローラが使用でき、記録媒体に対するフィード能力が高まるように配置される。また記録媒体P上には垢・紙粉等が付着していることがあるため、それらの除去を行うことが望ましい。フィードローラによって供給された記録媒体Pは、ガイド13を経て、搬送ベルト7に搬送される。搬送ベルト7の裏面(好ましくは金属裏面)はローラ6Aを介して設置されている。搬送された記録媒体は、静電吸着手段9により搬送ベルト上に静電吸着される。図1では、負の高圧電源に接続されたスコロトロン帯電器により静電吸着がなされる。静電吸着手段9により、記録媒体9が搬送ベルト7上に浮き無く静電吸着されると共に、記録媒体表面を均一帯電する。ここでは静電吸着手段を記録媒体の帯電手段としても利用しているが、別途設けてもよい。帯電された記録媒体Pは、搬送ベルト7によって吐出ヘッド部まで搬送され、帯電電位をバイアスとして記録信号電圧を重畳することにより静電インクジェット画像形成がなされる。画像形成された記録媒体Pは、除電手段10により除電され、力学的手段11により搬送ベルト7により剥離されて定着部へ搬送される。剥離された記録媒体Pは、画像定着手段14に送られ、定着がなされる。定着された記録媒体Pは、ガイド15を通って図示されない排紙ストッカーに排紙される。また、該装置は、インク組成物から発生する溶媒蒸気の回収手段を有する。回収手段は溶媒蒸気吸収材18からなり、排気ファン17により機内の溶媒蒸気を含む気体が吸着材に導入され、蒸気が吸着回収された後、機外に排気される。該装置は、上記例に限定されず、ローラ、帯電器等の構成デバイスの数、形状、相対配置、帯電極性等は任意に選べる。また上記システムでは4色描画について記述しているが、淡色インクや特色インクと組み合わせて、より多色のシステムとしてもよい。
【0077】
上記インクジェット印刷方法に使用されるインクジェット記録装置は、吐出ヘッド2、インク循環系3からなり、インク循環系3は、さらにインクタンク、インク循環装置、インク濃度制御装置、インク温度管理装置等を有し、インクタンク内には撹拌装置を含んでいてもよい。
【0078】
吐出ヘッド2としては、シングルチャンネルヘッド、マルチチャンネルヘッド、又はフルラインヘッドを使うことができ、搬送ベルト7の回転により主走査を行う。
本発明で好適に使用されるインクジェットヘッドは、インク流路内での荷電粒子を電気泳動させて開口付近のインク濃度を増加させ、吐出を行うインクジェット方法であり、主に記録媒体又は記録媒体背面に配置された対向電極に起因する静電吸引力によりインク滴の吐出を行うものである。従って、記録媒体又は対向電極がヘッドに対向していない場合や、ヘッドと対向する位置にあっても記録媒体又は対向電極に電圧が印加されていない場合には、誤って吐出電極に電圧が印加された場合や振動が与えられた場合でもインク滴の吐出は起こらず、装置内を汚すことはない。
【0079】
上記インクジェット装置に好適に使用される吐出ヘッドを図2及び図3に示す。図2及び図3に示すように、インクジェットヘッド70は、一方向のインク流Qが形成されるインク流路72の上壁を構成する電気絶縁性の基板74と、インクを記録媒体Pへ向けて吐出する複数の吐出部76とを有する。吐出部76には、いずれもインク流路72から飛翔するインク滴Gを記録媒体Pへ向けて案内するインクガイド部78が設けられ、基板74には、インクガイド部78がそれぞれ挿通する開口75が形成されており、インクガイド部78と開口75の内壁面との間にはインクメニスカス42が形成されている。インクガイド部78と記録媒体Pとのギャップdは200μm〜1000μm程度であることが好ましい。また、インクガイド部78は、下端側で支持棒部40に固定されている。
【0080】
基板74は、2つの吐出電極を所定間隔で離して電気的に絶縁している絶縁層44と、絶縁層44の上側に形成された第1吐出電極46と、第1吐出電極46を覆う絶縁層48と、絶縁層48の上側に形成されたガード電極50と、ガード電極50を覆う絶縁層52とを有する。また、基板74は、絶縁層44の下側に形成された第2吐出電極56と、第2吐出電極56を覆う絶縁層58とを有する。ガード電極50は、第1吐出電極46や第2吐出電極56に印加された電圧によって隣接する吐出部に電界上の影響が生じることを防止するために設けられる。
【0081】
更に、インクジェットヘッド70には、インク流路72の底面を構成すると共に、第1吐出電極46及び第2吐出電極56に印加されたパルス状の吐出電圧によって定常的に生じる誘導電圧により、インク流路72内の正に帯電したインク粒子(荷電粒子)Rを上方へ向けて(すなわち記録媒体側に向けて)泳動させる浮遊導電板62が電気的浮遊状態で設けられている。また、浮遊導電板62の表面には、電気絶縁性である被覆膜64が形成されており、インクへの電荷注入等によりインクの物性や成分が不安定化することを防止する。絶縁性被覆膜の電気抵抗は、1012Ω・cm以上が好ましく、より望ましくは1013Ω・cm以上である。また、絶縁性被覆膜はインクに対して耐腐食性であることが望ましく、これにより、浮遊導電板62がインクに腐食されることが防止される。また、浮遊導電板62は下方から絶縁部材66で覆われており、このような構成により、浮遊導電板62は完全に電気的絶縁状態にされている。
【0082】
浮遊導電板62は、ヘッド1ユニットにつき1個以上である(例えば、C、M、Y、Kの4つのヘッドがあった場合、浮遊導電板数は最低各1個ずつ有し、CとMのヘッドユニット間で共通の浮遊導電板とすることはない)。
【0083】
図3に示すように、インクジェットヘッド70からインクを飛翔させて記録媒体Pに記録するには、インク流路72内のインクを循環させることによりインク流Qを発生させた状態にし、ガード電極50に所定の電圧(例えば+100V)を印加する。更に、インクガイド部78に案内されて開口75から飛翔したインク滴G中の正の荷電粒子Rが記録媒体Pにまで引きつけられるような飛翔電界が、第1吐出電極46及び第2吐出電極56と、記録媒体Pとの間に形成されるように、第1吐出電極46、第2吐出電極56及び記録媒体Pに正電圧を印加する(ギャップdが500μmである場合に、1kV〜3.0kV程度の電位差を形成することを目安とする)。
【0084】
この状態で、画像信号に応じて第1吐出電極46及び第2吐出電極56にパルス電圧を印加すると、荷電粒子濃度が高められたインク滴Gが開口75から吐出する(例えば、初期の荷電粒子濃度が3〜15%である場合、インク滴Gの荷電粒子濃度が30%以上になる)。
その際、第1吐出電極46と第2吐出電極56の両者にパルス電圧が印加された場合にのみインク滴Gが吐出するように、第1吐出電極46と第2吐出電極56とに印加する電圧値を調整しておく。
【0085】
このように、パルス状の正電圧を印加すると、開口75からインク滴Gがインクガイド部78に案内されて飛翔し、記録媒体Pに付着すると共に、浮遊導電板62には、第1吐出電極46及び第2吐出電極56に印加された正電圧により正の誘導電圧が発生する。第1吐出電極46及び第2吐出電極56に印加される電圧がパルス状であっても、この誘導電圧はほぼ定常的な電圧である。従って、浮遊導電板62及びガード電極50と、記録媒体Pとの間に形成される電界によって、インク流路72内で正に帯電している荷電粒子Rは上方へ移動する力を受け、基板74の近傍で荷電粒子Rの濃度が高くなる。図3に示すように、使用する吐出部(すなわちインク滴を吐出させるチャンネル)の個数が多い場合、吐出に必要な荷電粒子数が多くなるが、使用する第1吐出電極46及び第2吐出電極56の枚数が多くなるため、浮遊導電板62に誘起される誘導電圧は高くなり、記録媒体側へ移動する荷電粒子Rの個数も増大する。
【0086】
上記では、着色粒子が正荷電に帯電している例について説明したが、着色粒子は負荷電に帯電されていてもよい。その場合には、上記の帯電極性は、すべて逆極性となる。
【0087】
なお、本発明においては、被記録媒体へのインク吐出後、適切な加熱手段によりインクを定着することが好ましい。用いられる加熱手段としては、ヒートローラー、ヒートブロック、ベルト加熱等の接触式加熱装置、及びドライヤー、赤外線ランプ、可視光線ランプ、紫外線ランプ、温風式オーブン等の非接触式加熱装置を用いることができる。これらの加熱装置は、インクジェット記録装置と連続し、一体となっていることが好ましい。定着時の被記録媒体の温度は、定着の容易さから、40℃〜200℃の範囲内であることが好ましい。また、定着の時間は、1マイクロ秒〜20秒の範囲内であることが好ましい。
【0088】
[インク組成物の補充]
静電界を利用したインクジェット記録方式では、インク組成物中の荷電粒子が濃縮されて吐出する。したがって、長時間インクの吐出を行うと、インク組成物中の荷電粒子が減量し、インク組成物の電気伝導度が低下する。また、荷電粒子の電気伝導度とインク組成物の電気伝導度との割合が変化する。さらに、吐出の際、直径の小さな荷電粒子よりも大きな荷電粒子が優先して吐出する傾向にあるため、荷電粒子の平均直径が小さくなる。ま
た、インク組成物中の固形物の含有量が変化するため、粘度も変化する。これら物性値の変化により、結果として、吐出不良を起したり、記録された画像の光学濃度の低下やインクのにじみが発生する。このため、当初インクタンクへ仕込んだインク組成物よりも、高濃度(固形分濃度が高い)のインク組成物を補充することにより、荷電粒子の減量を防止し、インク組成物の電気伝導度や、荷電粒子の電気伝導度とインク組成物の電気伝導度との割合を一定の範囲に留めることができる。また、平均粒子直径や粘度も維持することができる。さらに、インク組成物の物性値を、一定の範囲内に保つことにより、インク吐出が長時間安定して均一に行われる。この際の補充は、例えば、使用しているインク液の電気伝導度や光学濃度等の物性値を検出し、不足量を算出して、機械的または人力で成されることが好ましい。また、画像データを基に使用するインク組成物の量を算出し、機械的または人力で成されてもよい。
【0089】
[被記録媒体]
本発明においては、用途に応じて様々な被記録媒体を用いることができる。例えば、紙、プラスチックフイルム、金属、及び、プラスチックまたは金属がラミネートまたは蒸着された紙、金属がラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルム等を用いれば、インクジェット記録することにより、直接印刷物を得ることができる。被記録媒体の形状は、シート状のように平面的であっても、円筒形状のように立体的であってもよい。
【0090】
[定着]
本発明においては、被記録媒体へのインク吐出後、適当な加熱手段によりインクを定着することが好ましい。用いられる加熱手段としては、ヒートローラー、ヒートブロック、ベルト加熱等の接触式加熱装置および、ドライヤー、赤外線ランプ、可視光線ランプ、紫外線ランプ、温風式オーブン等の非接触式加熱装置を用いることができる。これらの加熱装置は、インクジェット記録装置と連携し、一体となっていることが好ましい。
【0091】
以上記述した本発明のインク組成物を用いることにより、インク滴の吐出を長時間安定して行うことができる。さらに、上述したインクジェット記録装置を用いることにより、高画質の画像記録物を、長時間に渡って得ることができる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
〔実施例1〕
<使用した材料>
実施例1においては、下記の材料を使用した。
【0094】
・シアン顔料(色材) フタロシアニン顔料 C.I.Pigment Blue(15:3)(東洋インキ製造(株)製、LIONOL BLUE FG−7350)
・被覆剤 [AP−1]
・分散剤 [BZ−2]
・荷電調整剤 [CT−1]
・分散媒 アイソパーG(エクソン社(株)製)
【0095】
被覆剤[AP−1]、分散剤[BZ−2]、荷電調整剤[CT−1]の構造を以下に示す。
【0096】
【化5】

【0097】
被覆剤[AP−1]は、スチレン、4−メチルスチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシルおよびメタクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルを公知の重合開始剤を用いてラジカル重合し、さらに、メチルトシラートと反応させることにより得た。
質量平均分子量は、15,000であり、多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、2.7であった。ガラス転移点(ミッドポイント)は51℃であり、ストレインゲージ法による軟化点は46℃であった。
【0098】
分散剤[BZ−2]は、メタクリル酸ステアリルを、2−メルカプトエタノール存在下ラジカル重合させ、さらに、メタクリル酸無水物と反応させることにより末端にメタクリロイル基を有するメタクリル酸ステアリルのポリマー(質量平均分子量は7,600であった)を得た後、これをスチレンとラジカル重合させることにより得た。質量平均分子量は、110,000であった。
荷電調整剤[CT−1]は、1−オクタデセンと無水マレイン酸のコポリマーに、1−ヘキサデシルアミンを反応させることにより得た。質量平均分子量は、17,000であった。
【0099】
〔実施例1〕
<色材粒子分散物[PB−1]の作製>
色材としてシアン顔料8gを、分散剤[BZ−2]4g、アイソパーG88g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を30℃に保ちながら1時間、2,000rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し色材粒子分散物[PB−1]を得た。得られた分散物における色材粒子の平均体積直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で測定したところ、0.3μmであった。また、固形分濃度は12質量%であった。(ホットプレート上で、145℃で2時間乾燥し、質量変化より算出した)
【0100】
<ポリマー粒子分散物[JB−1]の作製>
シアン顔料の代わりに、ポリマー(被覆剤)[AP−1]を使用した以外は、上記色材粒子分散物[PB−1]と同様にして、ポリマー粒子分散物[JB−1]を得た。得られた分散物におけるポリマー粒子の平均体積直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で測定したところ、0.3μmであった。また、固形分濃度は12質量%であった。
【0101】
<インク組成物[DC−1]の作製>
先に調製した色材粒子分散物[PB−1]40gと、ポリマー粒子分散物[JB−1]80gを攪拌子を備えた200mlフラスコに入れ、内温を70℃に保ちながら3時間マグネティックスターラーにて攪拌し、荷電調整剤[CT−1]0.6gを加えることで、インク組成物[DC−1]を得た。
【0102】
インク組成物[DC−1]の物性値は以下の通りであった。
インク組成物の20℃での電気伝導度を、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)及び液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数lkHzの条件で測定したところ、85nS/mであった。また、荷電粒子の荷電は正であった。
荷電粒子の平均体積直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で測定したところ、1.3μmであった。インク組成物の20℃での粘度を、東京計器(株)製E型粘度計で測定したところ1.4mPa・sであった。
【0103】
<インクジェット記録試験>
図1〜3に示すインクジェット記録装置に、インク組成物[DC−1]の100gをヘッドにつながるインクタンクに充填した。ここでは吐出ヘッドとして図2に示すタイプの150dpi(チャンネル密度50dpiの3列千鳥配置)、833チャンネルヘッドを使用し、また定着手段として1kWのヒータを内蔵したシリコンゴム性ヒートローラを使用した。インク温度管理手段として投げ込みヒータと攪拌羽をインクタンク内に設け、インク温度は30℃に設定し、攪拌羽を30rpmで回転しながらサーモスタットで温度コントロールした。ここで攪拌羽は沈澱・凝集防止用の攪拌手段としても使用した。被記録媒体としてA2サイズのオフセット印刷用微コート紙を使用した。エアーポンプ吸引により被記録媒体表面の埃除去を行った後、吐出ヘッドを画像形成位置まで被記録媒体に近づけ、記録すべき画像データを画像データ演算制御部に伝送し、搬送ベルトの回転により被記録媒体を搬送させながら吐出ヘッドを逐次移動しながらインク組成物を吐出して2400dpiの描画解像力で画像を形成した。搬送ベルトとして、金属ベルトとポリイミドフィルムを張り合わせたものを使用し、このベルトの片端付近に搬送方向に沿ってライン状のマーカーを配置し、これを搬送ベルト位置検知手段で光学的に読みとり、位置制御手段を駆動して画像形成を行った。
【0104】
この際、光学的ギャップ検出装置による出力により吐出ヘッドと記録媒体の距離は0.5mmに保った。また吐出の際には被記録媒体の表面電位を−1.5kVとしておき、吐出をおこなう際には+500Vのパルス電圧を印加し(パルス巾50μsec)、駆動周波数を10kHzで画像記録した。
画像記録後すぐに、ヒートローラを用いて定着した。定着時のコート紙の温度は90℃であり、ヒートローラとの接触時間は0.3秒であった。
画像記録は、画像面積率15%、1日当たりA4サイズ15枚の記録、という条件で1週間行い、インクジェットヘッドの吐出開口に粒子が付着しているかどうか調べた。結果を表1に記載した。
【0105】
<再分散性試験>
以下の要領で再分散性試験を行った。インク組成物[DC−1]1.0gを円筒状50mlの遠心沈降管に入れ、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度500rpm温度20℃の条件で2時間かけて粒子を沈降させた。粒子を沈降させた円筒状50mlの遠心沈降管にアイソパーGを5g加え、しっかりと蓋をし、ミックスローター(アズワン(株)社製VMR−5)上にて室温下、80rpmの条件で振とうさせ、沈降物が完全に再分散する時間を分単位で記録した。結果を表1に記載した。
【0106】
<長期安定性試験>
インク組成物を室温で1ヶ月間静置し、沈降物を調べた。結果を表1に記載した。
【0107】
〔実施例2〕
<色材分散物[PB−2]の作製>
分散剤[BZ−2]の量を2gとした以外は、実施例1の色材粒子分散物[PB−1]と同様にして、色材粒子分散物[PB−2]を得た。得られた分散物粒子の平均体積直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で測定したところ、1.0μmであった。また、固形分濃度は12質量%であった。
【0108】
<インク組成物[DC−2]の作製>
先に調製した色材粒子分散物[PB−2]40gと、実施例1と同様に作製したポリマー粒子分散物[JB−1]80gを攪拌子を備えた200mlフラスコに入れ、内温を70℃に保ちながら3時間マグネティックスターラーにて攪拌し、荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、室温に冷却することで、インク組成物[DC−2]を得た。
【0109】
インク組成物[DC−2]の物性値は以下の通りであった。
インク組成物の20℃での電気伝導度を、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)及び液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数lkHzの条件で測定したところ、92nS/mであった。また、荷電粒子の荷電は正であった。
荷電粒子の平均体積直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で測定したところ、1.4μmであった。インク組成物の20℃での粘度を、東京計器(株)製E型粘度計で測定したところ1.4mPa・sであった。
【0110】
〔実施例3〕
<インク組成物[DC−3]の作製>
実施例1と同様に作製した色材粒子分散物[PB−1]40gと、ポリマー粒子分散物[JB−1]40gを攪拌子、滴下ロートを備えた200mlフラスコに入れ、マグネティックスターラーにて攪拌、内温を70℃に保ちながら、ポリマー粒子分散物[JB−1]40gを1時間かけてゆっくり滴下した。さらに、内温を70℃に保ちながら、3時間攪拌した。荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、室温に冷却することで、インク組成物[DC−3]を得た。
【0111】
インク組成物[DC−3]の物性値は以下の通りであった。
インク組成物の20℃での電気伝導度を、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)及び液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数lkHzの条件で測定したところ、90nS/mであった。また、荷電粒子の荷電は正であった。
荷電粒子の平均体積直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で測定したところ、1.0μmであった。インク組成物の20℃での粘度を、東京計器(株)製E型粘度計で測定したところ1.4mPa・sであった。
【0112】
〔実施例4〕
色材を、C.I.Pigment Red 57:1 東洋インキ製造(株)製、ブリリアントカーミン6B、L.R.6B FG−4213に変更したこと以外は、[PB−1]と同様に色材粒子分散物[PB−3]を作製した。作製した[PB−3]を用いる以外は、実施例1と同様にしてインク組成物[DM−1]を作製した。
【0113】
〔実施例5〕
色材を、C.I.Pigment Yellow 74 クラリアント ジャパン(株)製 Hanza Brilliant Yellow 5GXBに変更したこと以外は、[PB−1]と同様に色材粒子分散物[PB−4]を作製した。作製した[PB−4]を用いる以外は、実施例1と同様にしてインク組成物[DY−1]を作製した。
【0114】
〔実施例6〕
色材を、C.I.Pigment Black 7 三菱化学(株)製、カーボンブラック、MA−100に変更したこと以外は、[PB−1]と同様に色材粒子分散物[PB−5]を作製した。作製した[PB−5]を用いる以外は、実施例1と同様にしてインク組成物[DK−1]を作製した。
【0115】
〔比較例1〕
<インク組成物[HC−1]の作製>
シアン顔料10gと被覆剤[AP−1]20gを、入江商会(株)製卓上型ニーダーPBV−0.1に入れ、ヒーター温度を100℃に設定し2時間加熱混合した。得られた混合物30gをトリオサイエンス(株)製トリオブレンダーにて粗粉砕し、さらに協立理工(株)製SK−M10型サンプルミルにて微粉砕した。得られた微粉砕物8gを、分散剤[BZ−2]4g、アイソパーG88g、および直径約3.0mmのガラスビーズと共に、東洋精機製作所(株)製ペイントシェーカーにて予備分散した。ガラスビーズを除去した後、直径約0.6mmのジルコニアセラミックビーズと共に、シンマルエンタープライゼズ(株)製TypeKDLダイノミルにて、内温を30℃に保ちながら2時間、500rpmの回転数で分散(粒子化)した。得られた分散液からジルコニアセラミックビーズを除去し、荷電調整剤[CT−1]0.6gを加え、インク組成物[HC−1]を得た。固形分濃度は、12質量%であった。
【0116】
インク組成物[HC−1]の物性値は以下の通りであった。
インク組成物の20℃での電気伝導度を、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)及び液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5V、周波数lkHzの条件で測定したところ、80nS/mであった。また、荷電粒子の荷電は正であった。
荷電粒子の平均体積直径を、堀場製作所(株)製CAPA−700で測定したところ、1.0μmであった。インク組成物の20℃での粘度を、東京計器(株)製E型粘度計で測定したところ1.4mPa・sであった。
【0117】
〔比較例2〕
色材を、C.I.Pigment Red 57:1 東洋インキ製造(株)製、ブリリアントカーミン6B、L.R.6B FG−4213に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、インク組成物[HM−1]を作製した。
【0118】
〔比較例3〕
色材を、C.I.Pigment Yellow 74 クラリアント ジャパン(株)製 Hanza Brilliant Yellow 5GXBに変更したこと以外は、比較例1と同様にして、インク組成物[HY−1]を作製した。
【0119】
〔比較例4〕
色材を、C.I.Pigment Black 7 三菱化学(株)製、カーボンブラック、MA−100に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、インク組成物[HK−1]を作製した。
【0120】
上記で調製した各インク組成物について、実施例1と同様にして、インクジェット記録試験、再分散性試験、及び長期安定性試験を行い、結果を表1に示した。
【0121】
【表1】

【0122】
表1の結果より、本発明の実施例1〜6は、比較例1〜4と比較し、ヘッド付着がなく、良好な画像が得られることが判った。また、再分散性試験からは、本発明のインク組成物の色材/ポリマー複合粒子間の相互作用が小さいと考えられ、長期安定性試験の結果も優れていることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明に用いるインクジェット印刷装置の一例を模式的に示す全体構成図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置のインクジェットヘッドの構成を示す斜視図である(判りやすくするために、各吐出部でのガード電極のエッジは描いていない)。
【図3】図2に示す、インクジェットヘッドの吐出部の使用数が多いときの荷電粒子の分布状態を示す側面断面図である(図2の矢視X−Xに相当)。
【符号の説明】
【0124】
G 飛翔したインク滴
P 被記録媒体
Q インク流
R 荷電粒子
1 インクジェット記録装置
2 吐出ヘッド
3 インク循環系
4 ヘッドドライバ
5 位置制御手段
6A〜6C 搬送ベルト張架ローラ
7 搬送ベルト
8 搬送ベルト位置検知手段
9 静電吸着手段
10 除電手段
11 力学的手段
12 フィードローラ
13 ガイド
14 画像定着手段
15 ガイド
16 記録媒体位置検知手段
17 排出ファン
18 溶媒蒸気吸着材
38 インクガイド
40 支持棒部
42 インクメニスカス
44 絶縁層
46 第1吐出電極
48 絶縁層
50 ガード電極
52 絶縁層
56 第2吐出電極
58 絶縁層
62 浮遊導電板
64 被覆膜
66 絶縁部材
70 インクジェットヘッド
72 インク流路
74 基板
75、75A、75B 開口
76、76A、76B 吐出部
78 吐出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒中に分散剤を用いて少なくとも色材を分散させた色材分散物と、分散媒中に分散剤を用いて少なくともポリマーを分散させたポリマー分散物をあらかじめ混合するか、もしくは混合しながら、熱を加える工程を有する色材/ポリマー複合粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の色材/ポリマー複合粒子の製造方法により製造された色材/ポリマー複合粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のインク組成物を用いて、静電界を利用したインクジェット記録方式によりインク滴を飛翔させることを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−182897(P2006−182897A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377276(P2004−377276)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】