説明

インクジェット記録装置、インクジェット記録方法

【課題】記録媒体上に付与された処理液やインクに含まれる非水系溶媒(特に、100℃以上の沸点をもつ高沸点溶媒)の浸透を促進させることにより、画像の品質の向上を図る。
【解決手段】本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段にて搬送される前記記録媒体の記録面に液体を付与する液体付与手段と、前記液体付与手段により記録面に前記液体が付与された前記記録媒体の先端を保持して該記録媒体を回転移動させる中間搬送体と、前記中間搬送体により回転移動する前記記録媒体の非記録面を案内する搬送ガイドと、前記中間搬送体により回転移動する前記記録媒体の記録面と非記録面に圧力差を付与する圧力付与手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法に係り、記録媒体上に付与されたインクや処理液の溶媒の乾燥や浸透を促進させ、特に、100℃以上の沸点をもつ高沸点溶媒の記録媒体への浸透を促進させるインクジェット記録装置、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、枚葉紙を保持する保持装置を備え、回転可能に形成された枚葉紙を搬送する搬送胴と、前記搬送胴に向けられた、枚葉紙に印刷するNIP(ノン・インパクト・プリンティング)印刷ヘッドとを含む印刷ユニットを有する枚葉紙輪転印刷機、が開示されている。そして、枚葉紙は搬送装置において印刷がなされた後、印刷画像の乾燥を行うことなく、枚葉紙排紙装置のチェーン搬送装置に渡される。
【0003】
特許文献2には、一定周速度で回転可能なドラムと、このドラムの外周面に印字媒体を挟持可能な挟持爪保持手段とを備え、挟持爪保持手段によりドラムの外周面に印字媒体を挟持してインクジェット記録ヘッドで印字媒体上に記録を行う高速画像形成装置が開示されている。そして、ドラム外周面に保持された印字媒体に印字した後、乾燥を行うことなく、印字媒体をドラムから剥離し、押圧ベルトコンベアーと印字媒体の記録面が接触させた状態で排出搬送する。
【特許文献1】特開2002−292956号公報
【特許文献2】特開平10−202973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、印刷画像の乾燥やインク乾燥について開示がなされていない。
【0005】
特許文献2には、乾燥部の開示はなく、ドラム上で記録された記録媒体をドラムから剥離後に排出する際に、押圧ベルトコンベアーと印字媒体の記録面を接触させるため、画像欠陥発生の可能性がある。
【0006】
ここで、記録媒体にインクジェット記録ヘッドで画像を形成する場合には、処理液に含まれる非水系溶媒(水分以外の溶媒)が記録媒体上に残存した状態で、インクを打滴すると記録媒体上でインク中の色材が流動し、画像ムラが発生して画像の品質低下のおそれがある。また、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)などの複数色のインクを付与して画像を形成するときには、混色が発生して画像の品質低下のおそれがある。
【0007】
さらに、インクに含まれる非水系溶媒が記録媒体上に残存した状態で、画像の定着を行なうと定着性が低下して画像の品質低下のおそれがある。特に、非水系溶媒の浸透速度が遅く、浸透量の小さい記録媒体(印刷用塗工紙など)を使用する場合には、定着性が低下して画像の品質低下のおそれがある。
【0008】
その一方で、描画ドラム上においてインクヘッドの下流側に乾燥および硬化の手段を配置すると、描画ドラムが加熱され、インクヘッドのメニスカスが乾燥および硬化して、インクヘッドの不吐出を生ずるおそれがある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、記録媒体上に付与された処理液やインクに含まれる非水系溶媒の浸透を促進させることにより、画像の品質の向上を図るインクジェット記録装置、インクジェット記録方法を提供すること、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段にて搬送される前記記録媒体の記録面に液体を付与する液体付与手段と、前記液体付与手段により記録面に前記液体が付与された前記記録媒体の先端を保持して該記録媒体を回転移動させる中間搬送体と、前記中間搬送体により回転移動する前記記録媒体の非記録面を案内する搬送ガイドと、前記中間搬送体により回転移動する前記記録媒体の記録面と非記録面に圧力差を付与する圧力付与手段を有すること、を特徴とする。
【0011】
かかる態様によれば、液体付与手段により付与された記録媒体の記録面の液体の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。ここで、非水系溶媒とは、水分以外の溶媒をいう。
【0012】
本発明の一態様として、前記圧力付与手段は、前記搬送ガイドに設けられ前記記録媒体の非記録面に負圧を付与する負圧付与手段であること、を特徴とする。
【0013】
かかる態様によれば、負圧を付与することにより、液体付与手段により付与された記録媒体の記録面の液体中の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。
【0014】
本発明の一態様として、前記負圧付与手段が付与する前記負圧を制御する負圧制御手段を有すること、を特徴とする。
【0015】
かかる態様によれば、付与する負圧を制御して、効率的に液体付与手段により付与された記録媒体の記録面の液体の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。
【0016】
本発明の一態様として、前記負圧制御手段は、前記記録媒体の種類に応じて前記負圧を制御すること、を特徴とする。
【0017】
かかる態様によれば、記録媒体の種類に合わせて、記録媒体に付与された液体の非水系溶媒の記録媒体への浸透を促進させるので、記録媒体の汎用性に対処することができる。
【0018】
本発明の一態様として、前記負圧制御手段は、前記記録媒体の厚みおよび前記記録媒体の空隙率の少なくとも1つに応じて前記負圧を制御すること、を特徴とする。
【0019】
かかる態様によれば、記録媒体の厚みおよび前記記録媒体の空隙率の少なくとも1つに応じて、記録媒体に付与された液体の非水系溶媒への浸透を促進させるので、記録媒体の汎用性に対処することができる。
【0020】
本発明の一態様として、前記圧力付与手段は、前記中間搬送体に設けられ前記記録媒体の記録面に正圧を付与する正圧付与手段であること、を特徴とする。
【0021】
かかる態様によれば、正圧を付与することにより、液体付与手段により付与された記録媒体の記録面の液体中の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。
【0022】
本発明の一態様として、前記正圧付与手段が付与する前記正圧を制御する正圧制御手段を有すること、を特徴とする。
【0023】
かかる態様によれば、付与する正圧を制御して、効率的に液体付与手段により付与された記録媒体の記録面の液体の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。
【0024】
本発明の一態様として、前記正圧制御手段は、前記記録媒体の種類に応じて前記正圧を制御すること、を特徴とする。
【0025】
かかる態様によれば、記録媒体の種類に合わせて、記録媒体に付与された液体の非水系溶媒の記録媒体への浸透を促進させるので、記録媒体の汎用性に対処することができる。
【0026】
本発明の一態様として、前記正圧制御手段は、前記記録媒体の厚みおよび前記記録媒体の空隙率の少なくとも1つに応じて前記正圧を制御すること、を特徴とする。
【0027】
かかる態様によれば、記録媒体の厚みおよび前記記録媒体の空隙率の少なくとも1つに応じて、記録媒体に付与された液体の非水系溶媒への浸透を促進させるので、記録媒体の汎用性に対処することができる。
【0028】
本発明の一態様として、前記正圧付与手段は、前記記録媒体の記録面に付与する正圧を一部規制する正圧規制手段を備えること、を特徴とする。
【0029】
かかる態様によれば、より確実に記録媒体の記録面の液体の非水系溶媒の記録媒体への浸透が促進される
本発明の一態様として、前記正圧付与手段は、前記記録媒体の記録面に対して送風を送出する送風口を備えること、を特徴とする。
【0030】
かかる態様によれば、送風口から送風を送出して記録媒体の記録面の液体の非水系溶媒の記録媒体への浸透が促進される。
【0031】
本発明の一態様として、前記正圧制御手段は、前記記録媒体の記録面に付与された高沸点溶媒の量に応じて前記送風口から送出する送風の温度および風量の少なくともいずれか1つを制御すること、を特徴とする。
【0032】
かかる態様によれば、高沸点の非水系溶媒を低粘化して記録媒体への浸透が促進される。
【0033】
本発明の一態様として、前記液体付与手段は、前記搬送手段にて搬送される前記記録媒体の記録面に処理液を付与する処理液付与手段であること、を特徴とする。
【0034】
かかる態様によれば、記録媒体の記録面の処理液の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。
【0035】
本発明の一態様として、前記液体付与手段は、前記搬送手段にて搬送される前記記録媒体の記録面にインクを付与するインクジェットヘッドであること、を特徴とする。
【0036】
かかる態様によれば、記録媒体の記録面のインクの非水系溶媒の浸透を促進させることができる。
【0037】
本発明の一態様として、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、記録面に液体を付与された記録媒体の非記録面を案内しつつ前記記録媒体の先端を保持して該記録媒体を回転移動させる際に、前記記録媒体の記録面と非記録面に圧力差を付与すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、記録媒体上に付与された処理液やインクに含まれる非水系溶媒の浸透を促進させることにより、画像の品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。ここではインクジェット記録装置への適用を例に説明する。
【0040】
〔インクセット〕
本発明の使用されるインクセットは、主として、水溶性溶媒、水、及び媒体中に分散保持されている顔料粒子を少なくとも含有するインクと、色材を含有しない液体であって、5wt%〜60wt%の高沸点有機溶媒、水、及び画像解像性を向上させる液体組成物を少なくとも含有する処理液と、で構成される。
【0041】
(インク)
本発明で用いられるインクは、溶媒不溶性材料として、色材(着色剤)である顔料やポリマー微粒子などを含有する水性顔料インクが用いられる。
【0042】
溶媒不溶性材料の濃度は、吐出に適切な粘度20mPa・s以下を考慮して1wt%以上20wt%以下であることが好ましい。より好ましくは画像の光学濃度を得るために4wt%以上の顔料濃度である。
【0043】
インクの表面張力は、吐出安定性を考慮して20mN/m以上40mN/mであることが好ましい。
【0044】
インクに使用される色材は、顔料あるいは染料と顔料とを混合して用いることができる。処理液との接触時における凝集性の観点から、インク中で分散状態にある顔料の方がより効果的に凝集するため好ましい。顔料の中でも、分散剤により分散されている顔料、自己分散顔料、樹脂により顔料表面を被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、及び高分子グラフト顔料が特に好ましい。また、顔料凝集性の観点から、解離度の小さいカルボキシル基によって修飾されている形態がより好ましい。
【0045】
マイクロカプセル顔料の樹脂は、限定されるものではないが、水に対して自己分散能又は溶解能を有し、かつアニオン性基(酸性)を有する高分子の化合物であるのが好ましい。この樹脂は、通常、数平均分子量が1,000〜100,000範囲程度のものが好ましく、3、000〜50、000範囲程度のものが特に好ましい。また、この樹脂は有機溶剤に溶解して溶液となるものが好ましい。樹脂の数平均分子量がこの範囲であることにより、顔料における被覆膜として、又はインク組成物における塗膜としての機能を十分に発揮することができる。
【0046】
前記樹脂は、自己分散能あるいは溶解するものであっても、又はその機能が何らかの手段によって付加されたものであってもよい。例えば、有機アミンやアルカリ金属を用いて中和することにより、カルボキシル基、スルホン酸基、またはホスホン酸基等のアニオン性基を導入されてなる樹脂であってもよい。また、同種または異種の一又は二以上のアニオン性基が導入された樹脂であってもよい。本発明にあっては、塩基をもって中和されて、カルボキシル基が導入された樹脂が好ましくは用いられる。
【0047】
本発明に用いる顔料としては、特に限定はされないが、具体例としては、オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。レッドまたはマゼンタ用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0048】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0049】
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0050】
本発明に係る着色インク液には、処理液と反応する成分として、着色剤を含まないポリマー微粒子を添加することが好ましい。ポリマー微粒子は、処理液との反応によりインクの増粘作用、凝集作用を強め、画像品位の向上させることができる。特に、アニオン性のポリマー微粒子をインクに含有せしめることにより、安全性の高いインクが得られる。
【0051】
処理液と反応して、増粘・凝集作用を起こすポリマー微粒子をインクに用いることにより、画像の品位を高めることができると同時に、ポリマー微粒子の種類によっては、ポリマー微粒子が記録媒体で皮膜を形成し、画像の耐擦性、耐水性をも向上させる効果を有する。
【0052】
ポリマーインクでの分散方法はエマルジョンに限定するものではなく、溶解していても、コロイダルディスパージョン状態で存在していてもよい。
【0053】
ポリマー微粒子は、乳化剤を用いてポリマー微粒子を分散させたものであっても、また、乳化剤を用いないで分散させたものであってもよい。乳化剤としては、通常、低分子量の界面活性剤が用いられているが、高分子量の界面活性剤を乳化剤として用いることもできる。外殻がアクリル酸、メタクリル酸などにより構成されたカプセル型のポリマー微粒子(粒子の中心部と外縁部で組成を異にしたコア・シェルタイプのポリマー微粒子)を用いることも好ましい。
【0054】
分散手法として、低分子量の界面活性剤を用いていないポリマー微粒子は、高分子量の界面活性剤を用いたポリマー微粒子、乳化剤を使用しないポリマー微粒子を含めてソープフリーラテックスと呼ばれている。例えば上記に記述した、スルホン酸基、カルボン酸基等の水に可溶な基を有するポリマー(可溶化基がグラフト結合しているポリマー、可溶化基を持つ単量体と不溶性の部分を持つ単量体とから得られるブロックポリマー)を乳化剤として用いたポリマー微粒子もこれに含まれる。
【0055】
本発明では、特にこのソープフリーラテックスを用いることが好ましく、ソープフリーラテックスは従来の乳化剤を用いて重合したポリマー微粒子にくらべ、乳化剤がポリマー微粒子の反応凝集や造膜を阻害したり、遊離した乳化剤がポリマー微粒子の造膜後に表面に移動し、顔料とポリマー微粒子の混合した凝集体と記録媒体との接着性を低下させる懸念がない。
【0056】
インクにポリマー微粒子として添加する樹脂成分としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0057】
ポリマー微粒子への高速凝集性付与の観点から、解離度の小さいカルボン酸基を有するものがより好ましい。カルボン酸基はpH変化によって影響を受けやすいので、分散状態が変化しやすく、凝集性が高い。
【0058】
ポリマー微粒子のpH変化に対する分散状態の変化は、アクリル酸エステルなどのカルボン酸基を有する、ポリマー微粒子中の構成成分の含有割合によって調整することができ、分散剤として用いるアニオン性の界面活性剤によっても調整可能である。
【0059】
ポリマー微粒子の樹脂成分は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。疎水性部分を有することで、ポリマー微粒子の内側に疎水部分が配向し、外側に親水部分が効率よく外側に配向され、液体のpH変化に対する分散状態の変化がより大きくなる効果があり、凝集がより効率よく行われる。
【0060】
本発明に用いられる酸ポリマーはカルボン酸系の酸ポリマーが好ましく用いられる。
【0061】
カルボン酸のpKaは概ね3〜4であるため、pH5であれば酸ポリマーはほとんど解離した状態であるので、電化反発により、分散安定性を有し、凝集を起こさない。これ以下であると、非解離状態となり、電化反発が失われ、凝集を起こす。
【0062】
市販のポリマー微粒子の例としては、ジョンクリル537、7640(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、ジョンソンポリマー株式会社製)、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製)、ジュリマーET−410、FC−30(アクリル系樹脂エマルジョン、日本純薬株式会社製)、アロンHD−5、A−104(アクリル系樹脂エマルジョン、東亞合成株式会社製)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製)、ザイクセンL(アクリル系樹脂エマルジョン、住友精化株式会社製)などが挙げられるが、これに限定するものではない。
【0063】
顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1から1:10が好ましい、より好ましくは1:1から1:3である。顔料に対するポリマー微粒子添加量の重量比率は2:1より少ないと、樹脂の融着による凝集体の凝集力が効果的に向上しない。また、添加量が1:10より多くてもインクの粘度が高くなりすぎ、吐出性などが悪化する。
【0064】
インクに添加するポリマー微粒子の分子量は融着したときの付着力を鑑みて、5,000以上が好ましい。5,000未満だと、凝集したときのインク凝集体の内部凝集力向上や記録媒体に画像の定着性に効果が不足し、また画質改善効果が不足する。
【0065】
ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜500nmの範囲がより好ましく、20〜200nmの範囲が更に好ましく、50〜200nmの範囲が特に好ましい。10nm以下では、凝集しても画質の改善効果、転写性の向上に効果があまり期待できない。1μm以上では、インクのヘッドからの吐出性や保存安定性が悪化するおそれがある。また、ポリマー粒子の体積平均粒子径分布に関しては、特に制限は無く、広い体積平均粒子径分布を持つもの、又は単分散の体積平均粒子径分布を持つもの、いずれでもよい。
【0066】
また、ポリマー微粒子を、インク内に2種以上混合して含有させて使用してもよい。
【0067】
本発明に用いられるインクに添加するpH調整剤としては中和剤として、有機塩基、無機アルカリ塩基を用いることができる。pH調整剤はインクジェット用インクの保存安定性を向上させる目的で、該インクジェット用インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましい。
【0068】
本発明に用いられるインクは、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶媒を10%以上90%以下含有する。このような水溶性高沸点有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。SP値が30以下の水溶性高沸点有機溶媒としては、処理液の場合と同様に、
例えば、
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(22.4)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(21.5)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(21.1)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(21.3)
ジプロピレングリコール(27.2)
【0069】
【化1】

【0070】
【化2】

【0071】
【化3】

【0072】
【化4】

【0073】
【化5】

【0074】
nCO(AO)−H (AO=EO or POで比率は1:1) (20.1)EO=エチレンオキシ
nCO(AO)10−H (同上) (18.8)
HO(A‘O)40−H (A’O=EO or POで比率はEO:PO=1:3) (18.7)
HO(A‘O)55−H (A”O=EO or POで比率はEO:PO=5:6) (18.8)
HO(PO)H (24.7)
HO(PO)H (21.2)
1,2ヘキサンジオール (27.4)
なお、カッコ内の数値はSP値を示している。
また、SP値が低い溶剤のうち、下記の構造が含まれていることが好ましい。
【0075】
【化6】

【0076】
等が挙げられる。
【0077】
本発明に用いられるインクには、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
【0078】
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
【0079】
表面張力を下げて固体状又は半固溶状の凝集処理層上でのぬれ性を高め、拡がり率を増加させることができる。
【0080】
本発明に用いられるインクの表面張力は、中間転写方式によって記録を行う際の中間転写媒体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点からは、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
【0081】
本発明に用いられるインクの粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
【0082】
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0083】
(処理液)
本発明に係る処理液として、インクのpHを変化させることにより、インクに含有される顔料およびポリマー微粒子を凝集させ、凝集物を生じさせるような処理液が好ましい。このような処理液を使用することで画像解像性を向上させることができる。
【0084】
処理液の成分として、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の中から選ばれることが好ましい。
【0085】
また、本発明に係る処理液の好ましい例として、多価金属塩あるいはポリアリルアミンを添加した処理液を挙げることができる。これらの化合物は、1種類で使用されてもよく、2種類以上併用されてもよい。
【0086】
本発明に係る処理液はインクとのpH凝集性能の観点からpHは1〜6であることが好ましく、pHは2〜5であることがより好ましく、pHは3〜5であることが特に好ましい。
【0087】
本発明に係る処理液の中における、インクの顔料およびポリマー微粒子を凝集させる成分の添加量としては、液体の全重量に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。0.01重量%以下の場合は処理液とインクが接触時に、濃度拡散が十分に進まずpH変化による凝集作用が十分に発生しないことがある。また20重量%以上であると、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
【0088】
本発明に係る処理液は、乾燥によってインクジェットヘッドのノズルが詰まるのを防止する目的から、水、その他添加剤溶性有機溶媒を含有することが好ましい。このような水、その他添加剤溶性有機溶媒には、湿潤剤及び浸透剤が含まれる。
【0089】
これらの溶媒は、水,その他添加剤と共に単独若しくは複数を混合して用いることができる。
【0090】
水、その他添加剤溶性有機溶媒の含有量は処理液の全重量に対し、60重量%以下であることが好ましい。60重量%以上よりも多い場合は処理液の粘度が増加し、インクジェットヘッドからの吐出性が悪化することがある。
【0091】
処理液には、定着性および耐擦性を向上させるため、樹脂成分をさらに含有してもよい。樹脂成分は、処理液をインクジェット方式によって打滴する場合ヘッドからの吐出性を損なわないもの、保存安定性があるものであればよく、水溶性樹脂や樹脂エマルジョンなどを自由に用いることができる。
【0092】
樹脂成分としては、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ビニル系、スチレン系等が考えられる。定着性向上といった機能を充分に発現させるには、比較的高分子のポリマーを高濃度1重量%〜20重量%に添加することが必要である。しかし、上記材料を液体に溶解させて添加しようとすると高粘度化し、吐出性が低下する。適切な材料を高濃度に添加し、かつ粘度上昇を抑えるには、ラテックスとして添加する手段が有効である。ラテックス材料としては、アクリル酸アルキル共重合体、カルボキシ変性SBR(スチレン−ブタジエンラテックス)、SIR(スチレン−イソプレン)ラテックス、MBR(メタクリル酸メチル−ブタジエンラテックス)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンラテックス)、等が考えられる。ラテックスのガラス転移点Tgはプロセス上、定着時に影響の強い値で、常温保存時の安定性と加熱後の転写性を両立するために、50℃以上120℃以下であることが好ましい。さらに最低造膜温度MFTはプロセス上、定着時に影響の強い値で、低温で充分な定着を得る為に100℃以下、さらに好ましくは50℃以下である。
【0093】
インクと逆極性のポリマー微粒子を処理液に含ませ、インク中の顔料及びポリマー微粒子と凝集させることによってさらに凝集性を高めてもよい。
【0094】
また、インクに含まれるポリマー微粒子成分に対応した硬化剤を処理液に含有し、二液が接触後、インク成分中の樹脂エマルジョンが凝集するとともに架橋又は重合するようにして、凝集性を高めてもよい。
【0095】
本発明に用いられる処理液は、界面活性剤を含有することができる。
【0096】
界面活性剤の例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
【0097】
更に、特開昭59−157636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系、シリコーン系の界面活性剤も用いることができる。これら表面張力調整剤は消泡剤としても使用することができ、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も使用することができる。
【0098】
表面張力を下げて画像形成体(中間転写媒体)上でのぬれ性を高めるのに効果がある。また、インクを先立って打滴する場合においてもインク上でのぬれ性を高め、二液の接触面積の増加により効果的に凝集作用がすすむ。
【0099】
本発明に係る処理液の表面張力は、10〜50mN/mであることが好ましく、また、中間転写媒体上でのぬれ性と液滴の微液滴化および吐出性の両立の観点から、15〜45mN/mであることが更に好ましい。
【0100】
本発明に用いられる処理液の粘度は、1.0〜20.0cPであることが好ましい。
【0101】
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線、吸収剤、等も添加することができる。
【0102】
次に、処理液に含まれる高沸点有機溶媒をSP値と併せて例示する。処理液に高沸点有機溶媒を含ませることで、処理液の粘度が増加し、記録媒体表面の処理剤量を増やすことができる。
GP−250(SP値:25)
50−HB−200(21)
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(22.4)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(21.5)
1,2ヘキサンジオール(27.4)
ジプロピレングリコール(27.2)
トリプロピレングリコール(24.74)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(21.1)
ジエチレングリコール(31.7)
但し、本発明は上述のものに限定されない。
【0103】
<第1実施形態>
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
まず、本発明の画像形成装置の一実施形態であるインクジェット記録装置について、全体構成を説明する。ここでは、処理液が非水系溶媒のうち100℃以上の沸点をもつ高沸点溶媒を含む場合について説明する。なお、非水系溶媒とは、水分以外の溶媒をいう。
【0104】
図1は、第1実施形態のインクジェット記録装置の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、記録媒体に直接的に画像を形成する直接描画方式の一形態として、ドラムが構成されたドラム直描方式のインクジェット記録装置である。
【0105】
インクジェット記録装置1は、記録媒体22の搬送方向の上流側から順に、記録媒体22(枚葉紙)を供給する給紙部10と、記録媒体22の記録面に対して処理液を付与し乾燥させる処理液付与部12と、記録媒体22の記録面に色インクを付与して画像形成を行う描画部14と、色インクの溶媒を乾燥させる乾燥部16と、画像を堅牢化する定着部18と、画像が形成された記録媒体22を搬送して排出する排出部20とから主に構成される。このように、インクジェット記録装置1は、各部に各画像形成プロセスを配置させた構成になっている。そして、処理液付与部12と描画部14の間には第1中間搬送部24が、描画部14と乾燥部16の間には第2中間搬送部26が、乾燥部16と定着部18の間には第3中間搬送部28が配置される。
【0106】
〔給紙部〕
給紙部10は、記録媒体22を処理液付与部12に供給する機構である。給紙部10には、給紙トレイ50が設けられ、記録媒体22は給紙トレイ50から処理液付与部12に給紙される。
【0107】
〔処理液付与部〕
処理液付与部12は、インクに含まれる色材を凝集させる色材凝集剤を含む処理液を記録媒体22の記録面に付与する機構である。
【0108】
処理液付与部12は、図1に示すように渡し胴52と処理液ドラム54を備え、処理液ドラム54の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、処理液ドラム54の周面に対向する位置に、処理液塗布装置56、温風噴出しノズル58、IRヒータ60を備える。
【0109】
渡し胴52は、記録媒体22を給紙部10の給紙トレイ50から受け取り、処理液ドラム54に受け渡すためのドラムである。なお、渡し胴52の代わりに、後述する中間搬送部を設けてもよい。
【0110】
処理液ドラム54は、記録媒体22を保持し、回転搬送させるためのドラムである。処理液塗布装置56は、記録媒体22の記録面に処理液を塗布するための装置である。温風噴出しノズル58とIRヒータ60は、記録媒体22の記録面に塗布された処理液の高沸点溶媒を乾燥させるための乾燥手段である。
【0111】
処理液ドラム54は、その外周面に設けられた爪形状の保持手段(後述する図4の保持手段34と同様な手段)により記録媒体22の先端を保持する。なお、処理液ドラム54は、その外周面に吸引孔を設けて、吸引孔からの吸引により記録媒体22を密着保持してもよい。
【0112】
図2は、処理液塗布装置56の構成図である。図2に示すように、処理液塗布装置56は、ゴムローラ62、アニロックスローラ64、スキージ66、処理液容器68などから構成される。処理液塗布装置56は、処理液容器68の処理液に一部が浸されたアニロックスローラ64と、アニロックスローラ64に圧接したスキージ66により処理液塗布量を計量する。そして、アニロックスローラ64に圧接したゴムローラ62を回転する処理液ドラム54に対して押し当て、該ゴムローラ62を処理液ドラム54の回転方向と逆方向(同図において時計回り方向)に所定の一定速度で回転駆動することにより、記録媒体22の記録面側に処理液を塗布する。
【0113】
処理液の膜厚は、描画部14のインクヘッド72C,72M,72Y,72K(図1参照)から打滴されるインクの液滴径より十分に小さいことが望ましい。例えば、インクの打滴量が2plのときには、液滴の平均直径は15.6μmである。このとき、処理液の膜厚が大きい場合には、インクドットが記録媒体22の表面に接触することなく、処理液内で浮遊する。そこで、インクの打滴量が2plのときに着弾ドット径を30μm以上得るためには、処理液の膜厚を3μm以下にすることが望ましい。
【0114】
図3は、温風噴出しノズル58、IRヒータ60の配置図である。処理液ドラム54上の記録媒体22の搬送方向の下流側に配置された温風噴出しノズル58、IRヒータ60は、処理液の水分を乾燥させる機器であり、固体層または薄膜処理液層を記録媒体22の記録面に形成する。このように、処理液を薄層化することにより、描画部14で打滴するインクのドットが記録媒体22の記録面と接触し、必要なドット径が得られるとともに、薄層化した処理液成分と反応して色材凝集が起こり、記録媒体22の記録面に固定する作用が得られやすい。
【0115】
一例として、処理液ドラム54の温度を50℃、IRヒータ60の温度を180℃、温風噴出しノズル58からの温風の温度を70℃、温風噴出しノズル58からの温風の風量を9m/分と設定する。
【0116】
〔描画部〕
描画部14は、図4に示すように、描画ドラム70を備え、描画ドラム70の回転方向(図4において反時計回り方向)に関して上流側から順に、描画ドラム70の外周面に対向する位置に近接配置された、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色のインクにそれぞれ対応したインクヘッド72C,72M,72Y,72Kを備える。
【0117】
描画ドラム70は、その外周面に記録媒体22の搬送方向の先端を保持して記録媒体22を回転搬送する保持手段73を備えるドラムである。インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、記録媒体22の記録面にインクを付与するインク付与手段である。
【0118】
図4に示すように、各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、それぞれ描画ドラム70の外周面に配置される記録媒体22における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有している。そして、各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、フルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列が形成されている。各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、記録媒体22の搬送方向(描画ドラム70の回転方向)と直交する方向に延在するように固定設置される。
【0119】
このような各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kは、それぞれ対応する色インクの液滴を描画ドラム70の外周面に保持された記録媒体22の記録面に向かって吐出する。すると、予め処理液付与部12にて記録媒体22の記録面に付与された処理液により、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、記録媒体22上で色材流れなどが発生しないように、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体上に画像が形成される。
【0120】
なお、インクと処理液の反応の一例として、処理液に酸を含有させPHダウンにより顔料分散を破壊し凝集するメカニズムを用い、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避することが考えられる。
【0121】
また、各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kの打滴タイミングは、描画ドラム70に配置された回転速度を検出するエンコーダ91(図11参照)に同期させる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。また、予め描画ドラム70のフレなどによる速度変動を学習し、エンコーダ91で得られた打滴タイミングを補正して、描画ドラム70のフレ、回転軸の精度、描画ドラム70の外周面の速度に依存せずに打滴ムラを低減させることができる。
【0122】
また、各インクヘッド72C,72M,72Y,72Kのノズル面の清掃、増粘インク排出など、メンテナンス動作はヘッドユニットを描画ドラム70から退避させて実施する。
【0123】
また、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。なお、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kのより詳細な説明については、後述する。
【0124】
なお、処理液付与部12の処理液ドラム54と描画部14の描画ドラム70は、構造上分離しているので、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kに処理液が付着することがなく、インクの不吐出要因を低減することができる。
【0125】
〔乾燥部〕
乾燥部16は、前記の図1に示すように、乾燥ドラム76を備え、図5に示すように、乾燥ドラム76の回転方向(図1において反時計回り方向)に関して上流側から順に、乾燥ドラム76の周面に対向する位置に、第1IRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2IRヒータ82を備える。
【0126】
第2中間搬送部26は、乾燥用の中間搬送部であり、記録媒体22を描画ドラム70から乾燥ドラム76に搬送するための搬送手段である。乾燥ドラム76は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるためのドラムである。第1IRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2IRヒータ82は、記録媒体22に付与されたインクの水分を乾燥させるための乾燥手段である。
【0127】
乾燥部16は、色材凝集作用により分離された水分を乾燥させる工程であり、図5に示す第1IRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2IRヒータ82により、乾燥ドラム76に保持された記録媒体22の記録面のインクの水分を蒸発させる。
【0128】
乾燥ドラム76は、その外周面に設けられた爪形状の保持手段(図4の保持手段34と同様な手段)により記録媒体22の先端を保持する。なお、乾燥ドラム76は、その外周面に吸引孔を設けて、吸引孔からの吸引により記録媒体22を密着保持してもよい。
【0129】
温風噴出しノズル80からの温風の温度は50℃〜70℃とし、蒸発した水分は不図示の排出手段によりエアとともに機外に排出される。なお、回収されたエアを冷却器(ラジエータ)などで冷却して、液体として回収してもよい。
【0130】
一例として、乾燥ドラム76の温度を60℃以下、第1IRヒータ78と第2IRヒータ82の温度を180℃、温風噴出しノズル80からの温風の温度を70℃、温風噴出しノズル80からの温風の風量を12m/分と設定する。
【0131】
なお、描画部14の描画ドラム70と乾燥部16の乾燥ドラム76は、構造上分離しているので、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kにおいて、熱乾燥によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの不吐出を低減することができる。また、乾燥部16の温度設定に自由度があり、最適な乾燥温度を設定することができる。
【0132】
〔定着部〕
定着部18は、前記の図1に示すように、定着ドラム84を備え、図6に示すように、定着ドラム84の回転方向(図6において反時計回り方向)に関して上流側から順に、定着ドラム84の周面に対向する位置に、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88、インラインセンサ90を備える。
【0133】
定着ドラム84は、その外周面に記録媒体22を保持して回転搬送させるためのドラムである。第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、記録媒体22に形成された画像を定着させるためのローラ部材である。インラインセンサ90は、記録媒体22に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0134】
定着ドラム84は、その外周面に設けられた爪形状の保持手段(図4の保持手段34と同様な手段)により記録媒体22の先端を保持する。なお、定着ドラム84は、前記の描画ドラム70における吸引孔74と同様に、その外周面に吸引孔を設けて、吸引孔からの吸引により記録媒体22を密着保持してもよい。
【0135】
定着部18では、図6に示すように、定着ドラム84に保持された記録媒体22の記録面に前記の乾燥部16にて形成された薄層の画像層内のラテックス粒子を、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88により加圧・加熱して溶融し、記録媒体22に固定定着させる。
【0136】
第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラとする。そして、ラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーを付与してラテックス粒子を溶融することで、記録媒体22の凹凸に押し込み定着を行なうとともに、画像表面の凹凸をレベリングし光沢性を得ることができる。
【0137】
また、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、定着ドラム84と一対のニップローラを形成し、少なくとも一方はローラ表面に弾性層を持ち、記録媒体22に対し均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0138】
また、第1定着ローラ86、第2定着ローラ88は、画像層厚みやラテックス粒子のTg特性により、複数段設けた構成でもよい。
【0139】
一例として、定着ドラム84の温度を60℃、第1定着ローラ86と第2定着ローラ88の温度を60〜80℃、第1定着ローラ86と第2定着ローラ88のニップ圧を1MPaと設定する。
【0140】
なお、定着部18と他のドラム上に構成されたプロセスが構造上分離されているので、定着部18の温度設定は、描画部14や乾燥部16と分離して自由に設定することができる。
【0141】
〔排出部〕
定着部18に続いて排出部20が設けられている。定着部18の定着ドラム84と排出部20の排出トレイ92との間には、これらに対接するように渡し胴94、搬送ベルト96、張架ローラ98が設けられている。記録媒体22は、渡し胴94により搬送ベルト96に送られ、排出トレイ92に排出される。
【0142】
〔インクヘッドの構造〕
次に、各インクヘッドの構造について説明する。色別のインクヘッド72C,72M,72Y,72Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号100によってインクヘッドを示すものとする。
【0143】
図7(a)はインクヘッド100の構造例を示す平面透視図であり、図7(b) はその一部の拡大図である。記録媒体22上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、インクヘッド100におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のインクヘッド100は、図7(a)、(b) に示したように、インク吐出口であるノズル102と、各ノズル102に対応する圧力室104等からなる複数のインク室ユニット(記録素子単位としての液滴吐出素子)108を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(記録媒体22の搬送方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0144】
記録媒体22の搬送方向(図7中矢印S)と略直交する方向(図7中矢印M)に記録媒体22の画像形成領域の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は図示の例に限定されない。例えば、図7(a) の構成に代えて、図8 に示すように、複数のノズル102が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール100’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで長尺化することにより、全体として記録媒体22の画像形成領域の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0145】
各ノズル102に対応して設けられている圧力室104は、その平面形状が概略正方形となっており(図7(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル102への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)106が設けられている。なお、圧力室104の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0146】
図9は、インクヘッド100における記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル102に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図7(a) 中の9−9線に沿う断面図)である。
【0147】
図9に示したように、各圧力室104は供給口106を介して共通流路110と連通されている。共通流路110はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路110を介して各圧力室104に供給される。
【0148】
圧力室104の一部の面(図9において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)112には個別電極114を備えたアクチュエータ116が接合されている。個別電極114と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ116が変形して圧力室104の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル102からインクが吐出される。なお、アクチュエータ116には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ116の変位が元に戻る際に、共通流路110から供給口106を通って新しいインクが圧力室104に再充填される。
【0149】
入力画像からデジタルハーフトーニング処理によって生成されるドットデータに応じて各ノズル102に対応したアクチュエータ116の駆動を制御することにより、ノズル102からインク滴を吐出させることができる。記録媒体22を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル102のインク吐出タイミングを制御することによって、記録媒体22上に所望の画像を記録することができる。
【0150】
上述した構造を有するインク室ユニット108を図10に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0151】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット108を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影(正射影)されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル102が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影される実質的なノズル列の高密度化を実現することが可能になる。
【0152】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体22の搬送方向と直交する方向に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0153】
特に、図10に示すようなマトリクス状に配置されたノズル102を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル102-11 、102-12 、102-13 、102-14 、102-15 、102-16 を1つのブロックとし(他にはノズル102-21 、…、102-26 を1つのブロック、ノズル102-31 、…、102-36 を1つのブロック、…として)、記録媒体22の搬送速度に応じてノズル102-11 、102-12 、…、102-16 を順次駆動することで記録媒体22の搬送方向と直交する方向に1ラインを印字する。
【0154】
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体22とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0155】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。即ち、本実施形態では、記録媒体22の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
【0156】
また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ116の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0157】
〔制御系の説明〕
図11は、インクジェット記録装置1のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置1は、通信インターフェース120、システムコントローラ122、プリント制御部124、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、ヘッドドライバ130、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、インラインセンサ90、エンコーダ91、モータドライバ142、メモリ144、ヒータドライバ146、画像バッファメモリ148、吸引制御部149等を備えている。
【0158】
通信インターフェース120は、ホストコンピュータ150から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース120にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ150から送出された画像データは通信インターフェース120を介してインクジェット記録装置1に取り込まれ、一旦メモリ144に記憶される。
【0159】
システムコントローラ122は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置1の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ122は、通信インターフェース120、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、ヘッドドライバ130、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、メモリ144、モータドライバ142、ヒータドライバ146、吸引制御部149等の各部を制御し、ホストコンピュータ150との間の通信制御、メモリ144の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ152やヒータ154を制御する制御信号を生成する。
【0160】
メモリ144は、通信インターフェース120を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ122を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ144は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0161】
ROM145には、システムコントローラ122のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、ROM145は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ144は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0162】
モータドライバ142は、システムコントローラ122からの指示にしたがってモータ152を駆動するドライバである。図11には、装置内の各部に配置されるモータを代表して符号152で図示されている。例えば、図11に示すモータ152には、図1の渡し胴52、処理液ドラム54、描画ドラム70、乾燥ドラム76、定着ドラム84、渡し胴94などの回転を駆動するモータ、描画ドラム70の吸引孔74から負圧吸引するためのポンプ75の駆動モータ、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kのヘッドユニットの退避機構のモータ、などが含まれている。
【0163】
ヒータドライバ146は、システムコントローラ122からの指示にしたがって、ヒータ154を駆動するドライバである。図11には、インクジェット記録装置1に備えられる複数のヒータを代表して符号154で図示されている。例えば、図11に示すヒータ154には、給紙部10において記録媒体22を予め適温に加熱しておくための不図示のプレヒータ、などが含まれている。
【0164】
プリント制御部124は、システムコントローラ122の制御にしたがい、メモリ144内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ130に供給する制御部である。プリント制御部124において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいて、ヘッドドライバ130を介してインクヘッド100のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0165】
プリント制御部124には画像バッファメモリ148が備えられており、プリント制御部124における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ148に一時的に格納される。なお、図11において画像バッファメモリ148はプリント制御部124に付随する態様で示されているが、メモリ144と兼用することも可能である。また、プリント制御部124とシステムコントローラ122とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0166】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース120を介して外部から入力され、メモリ144に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ144に記憶される。
【0167】
インクジェット記録装置1では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ144に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ122を介してプリント制御部124に送られ、該プリント制御部124において閾値マトリクスや誤差拡散法などを用いたハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
【0168】
即ち、プリント制御部124は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部124で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ148に蓄えられる。
【0169】
ヘッドドライバ130は、プリント制御部124から与えられる印字データ(即ち、画像バッファメモリ148に記憶されたドットデータ)に基づき、インクヘッド100の各ノズル102に対応するアクチュエータ116を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ130にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0170】
ヘッドドライバ130から出力された駆動信号がインクヘッド100に加えられることによって、該当するノズル102からインクが吐出される。記録媒体22を所定の速度で搬送しながらインクヘッド100からのインク吐出を制御することにより、記録媒体22上に画像が形成される。
【0171】
また、システムコントローラ122は、処理液付与制御部126、第1中間搬送制御部128、第2中間搬送制御部132、乾燥制御部134、第3中間搬送制御部136、定着制御部138、吸引制御部149を制御する。
【0172】
処理液付与制御部126は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、処理液付与部12の処理液塗布装置56の動作を制御する。具体的には、処理液塗布装置56において、ゴムローラ62の回転を駆動するゴムローラ回転駆動部156、アニロックスローラ64の回転を駆動するアニロックスローラ回転駆動部158、処理液容器68に処理液を供給する送液ポンプ160等が処理液付与制御部126により制御される。
【0173】
第1中間搬送制御部128は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、第1中間搬送部24の中間搬送体30や搬送ガイド32の動作を制御する。具体的には、中間搬送体30において、中間搬送体30自体の回転駆動、中間搬送体30に備わる保持手段34の回動やブロワ38の駆動などを制御する。また、搬送ガイド32においては、吸引孔42から吸引動作を行うためのポンプ43の動作などを制御する。
【0174】
図12に、第1中間搬送制御部128のシステム構成を示す要部ブロック図を示す。図12に示すように、第1中間搬送制御部128は、中間搬送体回転駆動部141、送風制御部143、負圧制御部147を構成する。
【0175】
中間搬送体回転駆動部141により中間搬送体30自体の回転駆動を制御する。
【0176】
送風制御部143により、ブロワ38からの送風の温度や風量を調整して、効率的に高沸点溶媒の低粘化や処理液の水分の乾燥を促進させるように制御させることができる。また、記録媒体22の種類(例えば、上質紙、コート紙などの種類)に応じてブロワ38からの送風の風量を制御して、送風による正圧の大きさを制御してもよい。また、記録媒体22の種類に応じてブロワ38からの送風の温度を制御してもよい。また、送風制御部143により、記録媒体22の記録面に付与された処理液やインクの高沸点溶媒の量に応じて送風口36から送出する送風の温度を制御してもよい。
【0177】
負圧制御部147により、ポンプ43を制御して、処理液に含まれる溶媒を浸透させるように、記録媒体22の記録面と反対側の面である非記録面から吸引する。また、ポンプ43により付与する負圧を、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに基づき可変するように制御してもよい。また、記録媒体22の種類に応じてポンプ43により付与する負圧の大きさを制御してもよい。
【0178】
第2中間搬送制御部132と第3中間搬送制御部136は、第1中間搬送制御部128と同様なシステム構成を有し、システムコントローラ122からの指示にしたがい、各々第2中間搬送部26と第3中間搬送部28の中間搬送体30や搬送ガイド32の動作を制御する。
【0179】
乾燥制御部134は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、乾燥部16における第1IRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2IRヒータ82の動作を制御する。
【0180】
定着制御部138は、システムコントローラ122からの指示にしたがい、定着部18における第1定着ローラ86、第2定着ローラ88の動作を制御する。
【0181】
吸引制御部149は、描画部14の描画ドラム70の吸引孔74に接続されるポンプ75の動作を制御する。
【0182】
また、システムコントローラ122には、インラインセンサ90から記録媒体22に付されたチェックパターンや記録媒体22の水分量、表面温度、光沢度などの計測結果のデータの検出信号も入力される。さらに、エンコーダ91から描画ドラム70の回転速度の検出信号も入力され、ヘッドドライバ130を介してインクヘッド100の打滴タイミングを制御する。
【0183】
〔中間搬送部〕
次に、各中間搬送部の構造について説明する。
【0184】
第1中間搬送部24は、記録媒体22を処理液付与部12の処理液ドラム54から描画部14の描画ドラム70へ搬送するための搬送手段である。第2中間搬送部26は、記録媒体22を描画部14の描画ドラム70から乾燥部16の乾燥ドラム76へ搬送するための搬送手段である。第3中間搬送部28は、記録媒体22を乾燥部16の乾燥ドラム76から定着部18の定着ドラム84へ搬送するための搬送手段である。
【0185】
第1中間搬送部24、第2中間搬送部26、第3中間搬送部28の構造は共通しているので、これらを代表して第1中間搬送部24について説明する。
【0186】
図13は、処理液付与部12と第1中間搬送部24の図である。
【0187】
図13に示すように、第1中間搬送部24は、大きく分けて中間搬送体30と搬送ガイド32から構成される。
【0188】
中間搬送体30は、処理液付与部12の処理液ドラム54から受け取った記録媒体22の先端を保持して回転移動させて、描画ドラム70に記録媒体22を受け渡す手段である。そして、図13に示すように、記録媒体22の先端を保持するための爪形状の保持手段34を有している。本実施形態では、2つの保持手段34が中間搬送体30の両端部に備えられているが、保持手段34の数はこれに限らない。
【0189】
図14は、第1中間搬送部の断面図であり、図14(b)は図14(a)のA−A断面図である。
【0190】
中間搬送体30は、図14(b)に示すように、搬送される記録媒体22の幅方向(搬送方向に垂直な方向)に間隔を空けて固設されたフレーム31,33にベアリング35,37を介して回転可能に設けられている。
【0191】
また、図14(a)と図14(b)に示すように、中間搬送体30の表面には記録媒体22の記録面に対して送風を送り出すための複数の送風口36が形成されている。そして、送風口36は、送風を送り出す送風手段としてのブロワ38に接続されている。なお、一例として、ブロワ38から送り出される送風を、温度が70℃の温風とし、風量を1m/分に設定することも考えられる。また、複数の送風口36から記録媒体22の記録面に対して、送風を垂直に送出させることが望ましい。
【0192】
また、図14(a)と図14(b)に示すように、中間搬送体30は、送風口36から送り出される送風を一部規制する送風規制ガイド40を内部に備える。送風規制ガイド40は、図14(b)に示すようにフレーム31に固設されている。例えば、図14(a)に示すように、図面左側の保持手段34により記録媒体22が保持され、記録媒体22が中間搬送体30に対し搬送ガイド32側に位置した状態を想定する。このとき、送風規制ガイド40は、記録媒体22の記録面と対峙する方向の送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制している。
【0193】
また、搬送ガイド32は、図4に示すように、中間搬送体30に近接配置されている。そして、搬送ガイド32は、円弧形状に形成され、記録媒体22の記録面の反対面(以下、非記録面という)にバックテンションを作用させながら記録媒体22の回転移動を案内する。具体的には、搬送ガイド32は、中間搬送体30の保持手段34が円軌跡を描く位置に対峙し、記録媒体22の搬送を案内するガイド面30aを備え、記録媒体22の回転方向と逆方向の力を作用させるバックテンション付与手段を備える。
【0194】
また、ガイド面30aは、記録媒体22を支持し案内する複数の支持部44を備える。
【0195】
このような構成を有する中間搬送体30と搬送ガイド32のもと、記録媒体22は、先端を中間搬送体30の保持手段34により保持されて回転移動する一方、非記録面を搬送ガイド32のガイド面30aの吸引孔42を通してポンプ43により負圧吸引される。そのため、記録媒体22は、非記録面を負圧吸引されつつ支持部44に支持されながら案内されて回転移動する。その後、中間搬送体30の保持手段34から描画ドラム70の保持手段73へ受け渡される。
【0196】
本発明の第1中間搬送部24においては、中間搬送体30が記録媒体22の先端を保持して記録媒体22を回転移動させる際に、搬送ガイド32の吸引孔42からの吸引により、記録媒体22の非記録面を吸引するので、記録媒体22の記録面に付与された処理液に含まれる高沸点溶媒が記録媒体22に浸透する。そのため、後工程の描画部14において、インク液滴が吐出される際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒が存在しないので、インク液滴中の色材が流動せず、画像の品質が向上する。
【0197】
なお、記録媒体22の非記録面を吸引する際に、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を、制御系の負圧制御部147(図12参照)により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率、記録媒体22の種類などの記録媒体22の仕様のうち、少なくとも1つに応じて可変するように制御してもよい。記録媒体22への溶媒の浸透を促進させるために、具体的には、記録媒体22の厚みが大きいほど、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を大きくする。また、記録媒体22の空隙率が小さいほど、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を大きくする。
【0198】
また、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の処理液が付与された記録面に送風を送り出すことにより、記録媒体22の記録面に付与された処理液中の高沸点溶媒の記録媒体22への浸透が促進される。さらに、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の処理液が付与された記録面に温風を送り出すことにより、処理液中の高沸点溶媒を低粘化し記録媒体22への浸透を促進させるとともに、処理液中の残留水分を乾燥させる。
【0199】
表1に、高沸点溶媒を含有する液体について、当該液体の温度に対する高沸点溶媒の粘度特性の評価結果を示す。表1では、高沸点溶媒の溶媒含有量を5種類設定したときに、液体の温度を3種類設定したときの評価結果を示す。粘度の単位は、mPa・s(cp)である。
【0200】
【表1】

【0201】
表1に示すように、液体の温度が高いほど高沸点溶媒の粘度は減少する傾向にあるので、温風を送り出すことにより処理液の温度を高くして、処理液の高沸点溶媒を低粘化すれば、記録媒体22への浸透を促進させることができる。
【0202】
そこで、前記のように、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の処理液が付与された記録面に温風を送り出すことにより、処理液の高沸点溶媒を低粘化し記録媒体22への浸透を促進させる。
【0203】
また、表1に示すように、高沸点溶媒の含有量が多いほど粘度は高い。そこで、処理液の高沸点溶媒の含有量に基づいて、中間搬送体30の送風口36から送り出す送風の温度を制御することにより、記録媒体22への浸透を制御することができる。具体的には、制御系の送風制御部143(図12参照)により、処理液の高沸点溶媒の含有量に応じて、ブロワ38から送り出す送風の温度を制御して、効率的に高沸点溶媒の低粘化を促進させるように制御させる。より具体的には、処理液の高沸点溶媒の含有量が多いほど、制御系の送風制御部143により、ブロワ38からの送風の温度を高く調整することが考えられる。
【0204】
〔画像形成方法〕
本発明のインクジェット記録装置を用いた画像形成方法について説明する。図16はインクジェット記録装置を用いた画像形成方法を示す模式図である。
【0205】
図16(a)に示すように、処理液61を処理液塗布装置56により処理液ドラム54に密着保持された記録媒体22上に、均一な膜厚で塗布する。
【0206】
次に、温風噴出しノズル58、IRヒータ60を用いて、図16(b)に示すように、記録媒体22の処理液61中の水分を乾燥させて、固体状または半固体状の凝集処理液層61´を形成し、酸63を析出させる。このように、処理液61中の水分を乾燥させて凝集処理液層61´を形成することにより、記録媒体22のカールを防止できる。
【0207】
ここでいう「固体状または半固溶状の凝集処理剤層」とは、以下に定義する含水率が0〜70%の範囲のものを言うものとする。
【0208】
【数1】

【0209】
次に、第1中間搬送部24において、搬送ガイド32の吸引孔42から記録媒体22の非記録面に負圧を付与し、かつ、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の記録面に送風を送出させる。これにより、図16(c)に示すように、処理液61中の高沸点溶媒65が記録媒体22に浸透し、記録媒体22の表面に存在しなくなり、酸63が表面に析出する。
【0210】
なお、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の記録面に温風を送出させれば、処理液61中の高沸点溶媒65が低粘化され記録媒体22への浸透が促進されるとともに、処理液61中に残留しうる水分を乾燥させることができる。また、送風制御部143により、記録媒体22の記録面に付与された高沸点溶媒の量に応じて送風口36から送出する送風の温度を制御すれば、高沸点溶媒を低粘化して記録媒体22への浸透が促進される。
【0211】
また、送風規制ガイド40を用いて記録媒体22の記録面と対峙する送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制することにより、より確実に記録媒体22の記録面の処理液の高沸点溶媒の記録媒体22への浸透が促進される。
【0212】
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の種類に応じてブロワ43やポンプ38を制御して記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
【0213】
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに応じて記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
【0214】
次に、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kから、図16(d)に示すように、記録媒体22に対してインク67が吐出される。
【0215】
ここで、インク67が吐出される際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒65が存在しないので、インク67中の色材が流動せず、画像の品質が向上する。
【0216】
次に、第2中間搬送部26において、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の記録面へ温風を送出させると、図16(e)に示すように、インク67中の水分が乾燥するとともに、インク67中の高沸点溶媒65が低粘化され記録媒体22への浸透が促進される。インク67中の高沸点溶媒65とは、水分以外の溶媒である非水系溶媒であって、100℃以上の沸点を持つ溶媒である。
【0217】
ここで、描画ドラム70上においては、乾燥によるインクヘッド72C,72M,72Y,72Kの不吐出を防ぐため、インク67中の水分が乾燥させる手段を有さない。そこで、第2中間搬送部26において、インク67中の水分を乾燥させておく。このように、インク67中の水分を乾燥させることにより、記録媒体22のカールや画像品質の劣化を防止できる。
【0218】
また、第2中間搬送部26において、搬送ガイド32の吸引孔42から記録媒体22の非記録面に負圧を付与させる。これにより、図16(e)に示すように、インク67中の高沸点溶媒65が記録媒体22に浸透していく。
【0219】
また、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の記録面へ温風を送出させることにより、インク液滴67中の高沸点溶媒65が低粘化され記録媒体22への浸透がさらに促進される。また、送風制御部143により、記録媒体22の記録面に付与された高沸点溶媒の量に応じて送風口36から送出する送風の温度を制御すれば、高沸点溶媒を低粘化して記録媒体22への浸透が促進される。
【0220】
また、送風規制ガイド40を用いて記録媒体22の記録面と対峙する送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制することにより、より確実に記録媒体22の記録面のインクの高沸点溶媒の記録媒体22への浸透が促進される。
【0221】
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の種類に応じてブロワ43やポンプ38を制御して記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
【0222】
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに応じて記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
【0223】
次に、第1IRヒータ78、温風噴出しノズル80、第2IRヒータ82を用いて、図16(f)に示すように、記録媒体22のインク67の水分を乾燥させる。ここで、第2中間搬送部26において、予めインク67中の水分を乾燥させておいたため、乾燥ドラム76上にてほぼ全てのインク67中の水分を乾燥させ切ることができる。
【0224】
次に、第3中間搬送部28において、搬送ガイド32の吸引口42から記録媒体22の非記録面に負圧を付与し、かつ、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の記録面に送風を送出させる。これにより、図16(g)に示すように、インク液滴67中の高沸点溶媒65が十分に記録媒体22に浸透し、記録媒体22上に色材凝集体69が形成される。
【0225】
なお、第3中間搬送部28において、中間搬送体30の送風口36から記録媒体22の記録面に温風を送出させれば、インク液滴67中の高沸点溶媒65が低粘化され記録媒体22への浸透が促進されるとともに、インク液滴67中に残留しうる水分を乾燥させることができる。また、送風制御部143により、記録媒体22の記録面に付与された高沸点溶媒の量に応じて送風口36から送出する送風の温度を制御すれば、高沸点溶媒を低粘化して記録媒体22への浸透が促進される。
【0226】
また、送風規制ガイド40を用いて記録媒体22の記録面と対峙する送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制することにより、より確実に記録媒体22の記録面のインクの高沸点溶媒の記録媒体22への浸透が促進される。
【0227】
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の種類に応じてブロワ43やポンプ38を制御して記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
【0228】
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに応じて記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
【0229】
次に、定着ドラム84上で定着ローラ86,88を用いて、図16(h)に示すように、記録媒体22上に画像を定着させる。ここで、定着ローラ86,88を用いて画像を定着させる際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒65が存在しないので、画像の定着性が向上し、画像の品質が向上する。
【0230】
〔第1実施形態の効果〕
第1実施形態のインクジェット装置1は、第1中間搬送部24の搬送ガイド32は中間搬送体30により回転移動する記録媒体22の非記録面に負圧を付与するので、記録媒体22の記録面の処理液の高沸点溶媒の浸透を促進させることができる。そのため、インク67が吐出される際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒が存在しないので、インク67中の色材が流動せず、画像の品質が向上する。なお、高沸点溶媒とは、水分以外の溶媒である非水系溶媒のうち、100℃以上の沸点をもつ非水系溶媒である。
【0231】
また、第2中間搬送部26および第3中間搬送部28の搬送ガイド32は中間搬送体30により回転移動する記録媒体22の非記録面に負圧を付与するので、記録媒体22の記録面のインクの高沸点溶媒の浸透を促進させることができる。そのため、定着ドラム84上で定着ローラ86,88を用いて記録媒体22に画像を定着させる際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒が存在しないので、画像の定着性が向上し、画像の品質が向上する。
【0232】
また、第1中間搬送部24において、中間搬送部30の送風口36から記録媒体22の記録面に対して送風を送出すれば、記録媒体22の記録面の処理液の高沸点溶媒の記録媒体22への浸透をさらに促進させることができる。
【0233】
また、第2中間搬送部26および第3中間搬送部28において、中間搬送部30の送風口36から記録媒体22の記録面に対して送風を送出することにより、記録媒体22の記録面のインクの高沸点溶媒の浸透をさらに促進させることができる。
【0234】
なお、第1中間搬送部24、第2中間搬送部26、第3中間搬送部28において、送風規制ガイド40を用いて記録媒体22の記録面と対峙する送風口36から送風を送り出すように送風の向きを規制することにより、より確実に記録媒体22の記録面の処理液またはインクの高沸点溶媒の記録媒体22への浸透が促進される。
【0235】
また、送風制御部143により、第1中間搬送部24、第2中間搬送部26、第3中間搬送部28において、記録媒体22の記録面に付与された高沸点溶媒の量に応じて送風口36から送出する送風の温度を制御すれば、高沸点溶媒を低粘化して記録媒体22への浸透が促進される。
【0236】
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の種類に応じてブロワ43やポンプ38を制御して記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
【0237】
また、送風制御部143や負圧制御部147により、記録媒体22の厚みおよび記録媒体22の空隙率の少なくとも1つに応じて記録媒体22に付与する圧力を制御すれば、記録媒体22の汎用性に対処することができる。
【0238】
なお、以上の実施例では処理液が非水系溶媒のうち100℃以上の沸点をもつ高沸点溶媒を含む場合について説明したが、本発明は処理液が高沸点溶媒以外の非水系溶媒を含む場合についても同様な効果を有する。
【0239】
具体的には、搬送ガイド32は中間搬送体30により回転移動する記録媒体22の非記録面に負圧を付与することにより、記録媒体22の記録面の処理液の高沸点溶媒以外の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。そのため、インク67が吐出される際に、記録媒体22の表面に非水系溶媒が存在しないので、インク67中の色材が流動せず、画像の品質が向上する。また、記録媒体22の記録面のインクの高沸点溶媒以外の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。そのため、定着ドラム84上で定着ローラ86,88を用いて記録媒体22に画像を定着させる際に、記録媒体22の表面に非水系溶媒が存在しないので、画像の定着性が向上し、画像の品質が向上する。
【0240】
また、中間搬送体30は回転移動する記録媒体22の記録面に送風を送出することにより、記録媒体22の記録面の処理液の高沸点溶媒以外の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。また、記録媒体22の記録面のインクの高沸点溶媒以外の非水系溶媒の浸透を促進させることができる。
【0241】
〔その他の効果〕
記録媒体22は、搬送ガイド32の吸引孔42からの吸引や中間搬送体30の送風口36からの送風により、非記録面がガイド面30aに吸着されて支持部44に支持されながら搬送され、記録媒体22の記録面は、中間搬送体30や搬送ガイド32などの構成部材に接触することなく搬送される。
【0242】
また、描画ドラム70の保持手段73や、乾燥ドラム76の保持手段や、定着ドラム84の保持手段に、記録媒体22の先端が保持されて密着搬送される際に、搬送ガイド32の吸引孔42からの吸引や中間搬送体30の送風口36からの送風により記録媒体22の後端にバックテンションが作用し、記録媒体22にシワ、浮きが生じない。
【0243】
なお、負圧制御部147や送風制御部143により、記録媒体22の種類に応じて、負圧や正圧を制御してもよい。また、バックテンション付与手段としては、その他、表面の摩擦係数が大きい支持部44も考えられる。具体的には、表面粗さを大きくした支持部44や、ゴムなどの材質からなる表面を備える支持部44が考えられる。これにより、吸引する場合と同等の効果を得ることができる。
【0244】
なお、図15は、記録媒体22の幅方向(記録媒体22の搬送方向と垂直な方向)から見たときの描画ドラム70近傍の断面図である。図15に示すように、描画ドラム70の外周面には、ポンプ75に接続し負圧吸引する吸引孔74が設けてもよい。これにより、描画ドラム70に記録媒体22が密着搬送される際に、描画ドラム70にて記録媒体22の先端を吸着保持する一方で、第1中間搬送部24にて記録媒体22の後端にバックテンションを作用させることになる。なお、乾燥ドラム76や定着ドラム84においても、同様に吸引孔を設けることにより、同様な効果を得ることができる。
【0245】
〔変形例〕
第1実施形態の変形例として、第1実施形態のインクジェット装置1の搬送用のドラム(処理液ドラム54、描画ドラム70、乾燥ドラム76、定着ドラム84)の一部または全部を、ベルトに変更した例も考えられる。図17は、インクジェット装置1の描画部14において、描画ドラム70の代わりに搬送ベルト170を使用した例を示す図である。なお、図17の搬送ベルト170では、記録媒体22を吸引搬送している。このような変形例においても、前記のインクジェット装置1と同様な効果を得ることができる。
【0246】
具体的には、搬送ベルト170にて搬送される記録媒体22の記録面にインクを付与するインクヘッド72C,72M,72Y,72Kと、インクヘッド72C,72M,72Y,72Kにより記録面にインクが付与された記録媒体22の先端を保持して記録媒体22を回転移動させる中間搬送体30と、中間搬送体30により回転移動する記録媒体22の非記録面を案内する搬送ガイド32と、を有し、当該搬送ガイド32は中間搬送体30により回転移動する記録媒体22の非記録面に負圧を付与するので、記録媒体22の記録面のインクの高沸点溶媒の浸透を促進させることができる。そのため、定着ドラム84または搬送ベルト(不図示)上で定着ローラ86,88を用いて記録媒体22に画像を定着させる際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒が存在しないので、画像の定着性が向上し、画像の品質が向上する。
【0247】
また、搬送ベルト(不図示)にて搬送される記録媒体22の記録面に処理液を付与する処理液塗布装置56と、処理液塗布装置56により記録面に処理液が付与された記録媒体22の先端を保持して記録媒体22を回転移動させる中間搬送体30と、中間搬送体30により回転移動する記録媒体22の非記録面を案内する搬送ガイド32と、を有し、搬送ガイド32は中間搬送体30により回転移動する記録媒体22の非記録面に負圧を付与するので、記録媒体22の記録面の処理液の高沸点溶媒の浸透を促進させることができる。そのため、描画ドラム70または搬送ベルト170上にてインク67が吐出される際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒が存在しないので、インク67中の色材が流動せず、画像の品質が向上する。
【0248】
<第2実施形態>
第2実施形態として、記録媒体22として特に専用紙を用いる場合のインクジェット記録装置2を説明する。専用紙は、付与されたインク中に含まれる色材(顔料)、ラテックス粒子の凝集を促進し色材と溶媒を分離するように、その記録面に予め処理がなされた用紙である。
【0249】
第2実施形態のインクジェット記録装置2は、第1実施形態のインクジェット記録装置1に対し、処理液付与部12と第1中間搬送部24を有さない点で異なる。図18に、第2実施形態のインクジェット記録装置2の概略構成図を示す。その他の構成は、第1実施形態のインクジェット記録装置1に共通する。
【0250】
第2中間搬送部26と第3中間搬送部28において、搬送ガイド32の吸引孔42からの吸引により、専用紙の非記録面を吸引するので、描画部14にて付与されたインクに含まれる高沸点溶媒が専用紙に浸透する。そのため、後工程の定着部18において、定着ローラ86,88を用いて画像を定着させる際に、記録媒体22の表面に高沸点溶媒が存在しないので、画像の定着性が向上し、画像の品質が向上する。
【0251】
なお、専用紙の非記録面を吸引する際にポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を、制御系の負圧制御部147(図12参照)により、専用紙の厚みおよび専用紙の空隙率の少なくとも1つに基づき可変するように制御してもよい。具体的には、専用紙の厚みが大きいほど、専用紙への溶媒の浸透を促進させるために、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を大きくする。また、専用紙の空隙率が小さいほど、専用紙への溶媒の浸透を促進させるために、ポンプ43により吸引孔42から付与する負圧を大きくする。
【0252】
また、第2中間搬送部26と第3中間搬送部28において、中間搬送体30の送風口36から専用紙の記録面に温風を送り出すことにより、インク中の高沸点溶媒を低粘化し記録媒体22への浸透を促進させるとともに、インク中の残留水分の乾燥を促進させる。
【0253】
なお、制御系の送風制御部143(図12参照)により、ポンプ38からの送風の温度や風量を調整して、効率的にインク中の高沸点溶媒の低粘化や残留水分の乾燥が促進するように制御させてもよい。
【0254】
以上、本発明のインクジェット記録装置、インクジェット記録方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】第1実施形態のインクジェット記録装置の全体構成図
【図2】処理液塗布装置の構成図
【図3】処理液付与部の処理液ドラム、温風噴出しノズル、IRヒータの配置図
【図4】描画ドラムおよびインクヘッドの構成図
【図5】乾燥部の乾燥ドラム、第1IRヒータ、温風噴出しノズル、第2IRヒータの配置図
【図6】定着部の定着ドラム、第1定着ローラ、第2定着ローラ、インラインセンサの配置図
【図7】ヘッドの内部構造を示す要部平面透視図
【図8】ヘッドの他の構成例を示す平面図
【図9】図7中の9−9線に沿う断面図
【図10】ヘッドのノズル配置例を示す平面図
【図11】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図12】第1中間搬送制御部のシステム構成を示す要部ブロック図
【図13】処理液付与部と第1中間搬送部の図
【図14】第1中間搬送部の断面図
【図15】描画ドラムの断面図
【図16】画像形成方法の説明図
【図17】描画ドラムの代わりに搬送ベルトを使用した例を示す図
【図18】第2実施形態のインクジェット記録装置の全体構成図
【符号の説明】
【0256】
1,2…インクジェット記録装置、12…処理液付与部、22…記録媒体、24…第1中間搬送部、26…第2中間搬送部、28…第3中間搬送部、30…中間搬送体、30a…ガイド面、32…搬送ガイド、36…送風口、38…ブロワ、40…送風規制ガイド、42…吸引孔、43…ポンプ、54…処理液ドラム、70…描画ドラム、72C,72M,72Y,72K…インクヘッド、73…保持手段、74…吸引孔、76…乾燥ドラム、84…定着ドラム、86…第1定着ローラ、88…第2定着ローラ、143…送風制御部、147…負圧制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段にて搬送される前記記録媒体の記録面に液体を付与する液体付与手段と、
前記液体付与手段により記録面に前記液体が付与された前記記録媒体の先端を保持して該記録媒体を回転移動させる中間搬送体と、
前記中間搬送体により回転移動する前記記録媒体の非記録面を案内する搬送ガイドと、
前記中間搬送体により回転移動する前記記録媒体の記録面と非記録面に圧力差を付与する圧力付与手段を有すること、
を特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記圧力付与手段は、前記搬送ガイドに設けられ前記記録媒体の非記録面に負圧を付与する負圧付与手段であること、
を特徴とする請求項1のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記負圧付与手段が付与する前記負圧を制御する負圧制御手段を有すること、
を特徴とする請求項2のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記負圧制御手段は、前記記録媒体の種類に応じて前記負圧を制御すること、
を特徴とする請求項3のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記負圧制御手段は、前記記録媒体の厚みおよび前記記録媒体の空隙率の少なくとも1つに応じて前記負圧を制御すること、
を特徴とする請求項3のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記圧力付与手段は、前記中間搬送体に設けられ前記記録媒体の記録面に正圧を付与する正圧付与手段であること、
を特徴とする請求項1のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記正圧付与手段が付与する前記正圧を制御する正圧制御手段を有すること、
を特徴とする請求項6のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記正圧制御手段は、前記記録媒体の種類に応じて前記正圧を制御すること、
を特徴とする請求項7のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記正圧制御手段は、前記記録媒体の厚みおよび前記記録媒体の空隙率の少なくとも1つに応じて前記正圧を制御すること、
を特徴とする請求項7のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記正圧付与手段は、前記記録媒体の記録面に付与する正圧を一部規制する正圧規制手段を備えること、
を特徴とする請求項6乃至9のいずれか1つのインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記正圧付与手段は、前記記録媒体の記録面に対して送風を送出する送風口を備えること、
を特徴とする請求項6乃至10のいずれか1つのインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記正圧制御手段は、前記記録媒体の記録面に付与された高沸点溶媒の量に応じて前記送風口から送出する送風の温度および風量の少なくともいずれか1つを制御すること、
を特徴とする請求項11のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記液体付与手段は、前記搬送手段にて搬送される前記記録媒体の記録面に処理液を付与する処理液付与手段であること、
を特徴とする請求項1乃至12のいずれか1つのインクジェット記録装置。
【請求項14】
前記液体付与手段は、前記搬送手段にて搬送される前記記録媒体の記録面にインクを付与するインクジェットヘッドであること、
を特徴とする請求項1乃至12のいずれか1つのインクジェット記録装置。
【請求項15】
インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、
記録面に液体を付与された記録媒体の非記録面を案内しつつ前記記録媒体の先端を保持して該記録媒体を回転移動させる際に、前記記録媒体の記録面と非記録面に圧力差を付与すること、
を特徴とするインクジェット記録方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−220411(P2009−220411A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−67449(P2008−67449)
【出願日】平成20年3月17日(2008.3.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】