インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法
【課題】ノズル数が多い記録ヘッドにおいても、インク滴の吐出状態の検出時に吐出するインク量を最小限に抑えつつ、インク滴の吐出状態を効率よく正確に検出することができるインクジェット記録装置、および、その制御方法を提供すること。
【解決手段】複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、複数のノズルから順次インク滴を吐出させる。その検出のためにノズルがインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、その検出時に吐出するインク滴の量を多くする。
【解決手段】複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、複数のノズルから順次インク滴を吐出させる。その検出のためにノズルがインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、その検出時に吐出するインク滴の量を多くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置、および、その制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、電気熱変換素子(ヒータ)や圧電素子などを用いて、記録ヘッドのノズルからインク滴を吐出することにより画像を記録する。ゴミ等の異物がノズルに詰まった場合、および電気熱変換体や圧電素子などが故障した場合には、インク滴が吐出できなくなって、画像に欠損が生じるおそれがある。
【0003】
また、インクジェット記録装置としては、記録ヘッドからのインク滴の吐出状態を検出する機能をもつものがあり、その検出方法の代表的な例としては、光学式検出方法と電荷式検出方法がある。光学式検出方法は、記録ヘッドを所定の検出位置に停止させ、発光素子から出た光ビームの中にノズルからインク滴を吐出させ、その光ビームを受ける受光素子の光量変化からインク滴の吐出状態を検出して、吐出状態が不良の吐出不良ノズルを検知する。電荷式検出方法は、インクに予め電荷を与えておき、吐出したインク滴を受け止める箇所において測定した電荷量の変化から、吐出状態が不良の吐出不良ノズルを検知する。ノズル毎のインク滴の吐出状態の検出結果に応じて、ノズルから画像の記録に寄与しないインク滴を吐出する予備吐出などの回復処理をする。あるいは、インク滴を吐出不能なノズル(不吐出ノズル)によって記録すべき画像を、インク滴を吐出可能なノズルによって記録するように制御する。
【0004】
特許文献1には、光学的にインク滴の吐出状態を検出する方式において、その検出の正確性を向上させるために、ノズルからのインク滴の吐出回数が多くなった場合に、吐出状態の検出時におけるインク滴の吐出数を変更する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−227174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、インクジェット記録装置が大判プリンタである場合には、ノズルの総数が数万に及ぶ。このように、インク滴の吐出状態の検出対象となるノズル数が多くなった場合、1ノズル毎に、インク滴の吐出状態を検出すると多くの時間が必要となる。また、インク滴の吐出状態を最初に検出するノズルと、それを最後に検出するノズルとの間において、インク滴の吐出状態に差が生じるおそれがある。例えば、インク滴の吐出状態の検出のために最初にインク滴を吐出してからの経過時間に伴って、ノズル内におけるインクの乾燥、増粘が進行して、インク滴の吐出状態が悪化する。特に、吐出されるインク滴の大きさが小さくなればなるほど、ノズル内の増粘インクの悪影響を受けやすくなる。
【0007】
そのため、インク滴の吐出状態を検出するためのインク滴の吐出の前に、ノズル内の増粘インクを排出するためにノズルからインク滴を吐出して、インク滴の吐出状態の検出時にインク滴を正常に吐出できるようにする必要がある。複数のノズルにおけるインク滴の吐出状態を連続的に検出する場合、最後に検出対象となるノズル内のインクの増粘の程度が大きくなるため、その最後の検出対象のノズルから増粘インクを排出するために充分なインク滴を吐出する必要がある。このような最後の検出対象のノズルに合わせて、他のノズルからもインク滴を吐出すると、インクの吐出量、およびインク滴の吐出状態の検出に掛かる時間が長くなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、ノズル数が多い記録ヘッドにおいても、インク滴の吐出状態の検出時に吐出するインク量を最小限に抑えつつ、インク滴の吐出状態を効率よく正確に検出することができるインクジェット記録装置、および、その制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェット記録装置は、インク滴を吐出可能な複数のノズルを有する記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる吐出制御手段と、前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出する検出手段と、前記ノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする吐出量制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のインクジェット記録装置の制御方法は、インク滴を吐出可能な複数のノズルを有する記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置の制御方法であって、前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる工程と、前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出する工程と、前記ノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のノズルに対してインク滴の吐出状態を検出する順番を考慮して、その検出時に吐出するインク滴の吐出量を制御することにより、必要最小限の吐出量でより短時間に高精度に吐出状態を検出することができる。
【0012】
また、インク滴の吐出状態を検出する複数のノズルを複数のノズルグループに分けて、ノズルグループ毎に、そのノズルグループ内の複数のノズルを、吐出状態を連続的に検出する対象とすることにより、より短時間で高精度に吐出状態を検出できる。また、ノズルから吐出されるインク滴の大きさ、およびインクの種類に応じて、吐出状態の検出時に吐出するインク量を制御することにより、より高精度に吐出状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】図1の記録装置におけるプリント部の概略斜視図である。
【図3】図2のプリント部の概略構成図である。
【図4】図1の記録装置における記録ヘッドの吐出状態の検出動作を説明するための要部の斜視図である。
【図5】図1の記録装置における記録ヘッドのノズルの配置形態を説明するための模式図である。
【図6】図1の記録装置における記録ヘッドの吐出状態の検出信号を説明するための波形図である。
【図7】(a)は、図5の記録ヘッドにおける最初のノズルの吐出状態の検出動作を説明するための模式図、(b)は、図5の記録ヘッドにおける最後のノズルの吐出状態の検出動作を説明するための模式図である。
【図8】図1の記録装置における記録ヘッドの吐出パルスを説明するための波形図である。
【図9】(a)は、ノズル毎のインク吐出数の比較例の説明図、(b)は、本発明の第1の実施形態におけるノズル毎のインク吐出数の説明図、(c)は、本発明の第2の実施形態におけるノズル毎のインク吐出数の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態における吐出状態の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】(a),(b),(c)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態においてノズルの吐出状態の検出動作を説明するための模式図である。
【図12】(a),(b)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態における記録ヘッドの吐出パルスを説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1から図9は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。本実施形態におけるインクジェット記録装置は、大判の記録媒体に画像を記録する大判タイプの記録装置としての構成例である。
【0015】
図1において、長尺の記録媒体1は、巻出しローラ11の回転に応じてそこから巻出され、中間ローラ13および15によりガイドされてから、プリンタ部(記録部)1000の対向部位に設けられた搬送部100によって実質的に矢印の水平方向に搬送される。その後、記録媒体1は、送りローラ17および中間ローラ19にカイドされてから、巻取りローラ21に巻取られる。搬送部100は、プリンタ部1000に対して記録媒体1の搬送方向の上流側および下流側に位置する搬送ローラ110および120と、それらローラ間に巻回された無端ベルト形態の搬送ベルト130と、を備えている。また、プリンタ部1000による記録に際して、記録媒体1のプリント面(記録面)を平坦に規制するように、一対のプラテンローラ140によって、搬送ベルト130の所定範囲を適切な張力で展張して平坦性を向上させる。記録媒体1は、対のプラテンローラ140間の領域内においてプリンタ部1000により画像が記録され、搬送ローラ120の位置において搬送ベルト130から離されてから、巻取りローラ21に巻取られる。記録媒体1が巻取りローラ21に巻き取られるまでの間において、乾燥ヒータ600により乾燥処理が施される。
【0016】
図2は、プリンタ部1000および記録媒体1の搬送系の模式図である。プリンタ部1000は、記録媒体1の搬送方向(副走査方向)Fとは異なる方向(交差する方向)、例えば、搬送方向Fに直交する記録媒体1の幅方向(主走査方向)Sに移動可能なキャリッジ1010を有している。1020は、主走査方向Sに延在する支持レールである。この支持レール1020は、キャリッジ1010に固着されたスライダ1012をスライド可能にガイドするスライドレール1022を支持している。1030は、キャリッジ1010を主走査に移動させるための駆動源としてのモータである。このモータ1030の駆動力は、キャリッジ1010に連結されたベルト1032、および、その他の適宜の伝動機構を介してキャリッジ1010に伝達される。
【0017】
キャリッジ1010には、主走査方向と交差する方向(本例では、主走査方向と直交する搬送方向F)に沿って、インクを吐出可能な多数のノズルが配列された記録ヘッド1100が搬送方向Fとは異なる方向(本例では、主走査方向S)に複数搭載されている。本例では、主走査方向Sに複数配置した記録ヘッド1100が搬送方向Fに沿って2組搭載されている(図1参照)。それぞれの記録ヘッド1100から吐出するインクの色は、便宜選択できる。本例においては、搬送方向Fの上流側に位置する1段目の組の記録ヘッド1100の主走査によって記録した記録媒体1上の領域に対して、搬送方向Fの下流側に位置する2段目の組の記録ヘッド1100によって再度記録を行うことができる。また、それらの組の記録ヘッド1100による記録領域を分けて、それぞれの記録領域に対する記録を分担させることにより、高速記録を行うこともできる。
【0018】
記録ヘッド1100として、ノズルからインクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。電気熱変換素子を用いた場合には、その発熱によりインクを発泡させ、発泡エネルギーを利用してノズル先端の吐出口からインク滴を吐出することができる。本例の記録ヘッド1100は、このような電気熱変換素子を用いてインク滴を吐出する記録ヘッドである。
【0019】
図3は、キャリッジ1010の走査系の説明図である。キャッピング手段1220は、筐体103の上部の支持部1200内に設けられており、非記録動作時に、それぞれの記録ヘッド1100の吐出口面(吐出口の形成面)に当接して、吐出口の乾燥および異物の混入を抑えたり、異物の除去を行う。具体的には、非記録時に、記録ヘッド1100をキャッピング手段1220と対向する位置に移動させ、キャッピング手段1220を駆動手段1210によって吐出口面に当接するキャップ方向に移動される。これにより、キャッピング手段1220における弾性部材等を吐出口面に圧接させて、キャッピングを行う。
【0020】
目詰まり防止手段1231は、記録ヘッド1100の吐出動作(予備吐出動作)、つまりインクリフレッシュによってインクの吐出条件の均一化を行うための吐出動作をするときに、その吐出動作により吐出されたインクを受ける。この目詰まり防止手段1231は、記録ヘッド1100によるって画像の記録動作位置Pの外において、記録ヘッド1100と対向する位置に設けられる。目詰まり防止手段1231には、キャッピング手段1220と記録動作位置Pとの間、およびその反対側に、記録ヘッド1100から予備吐出されたインク滴を受けて吸収するための受け部材1231aが配置されている。なお、液受け部材1231a内には図示しない液体保持部材が設けられ、その材質としては、スポンジ状多孔質部材等が用いられている。また、キャッピング手段1220と記録動作位置Pとの間には、記録ヘッド1100の吐出口面を摺擦可能な払拭手段(ワイピングブレード)70が配置され、その摺擦によって、吐出口面に付着したインク滴や塵埃などを払拭する。50は、それらの塵埃等を受ける受け皿である。
【0021】
次に、記録ヘッドのノズルからのインクの吐出状態を検出するための検出方法を図4から図6に基づいて説明する。
【0022】
図4において、記録ヘッド1100の下面に形成されたノズルNから、目詰まり防止手段1231に向かってインク滴を吐出することができる。図5は、記録ヘッド1100を下面側から見たノズルの配置図であり、ノズル列として、H列、I列、J列、K列の4列が形成されている。H列ノズルには、右側からN0,N1,N2・・・N2559ノズルまでの計2560のノズルが配列されており、ノズル同士は、約0.021mmの間隔を有している。I列、J列、K列のノズル列も同様である。また、各ノズルから吐出するインク滴は3plの体積である。図4において、キャリッジ1010は、ベルト1032によって矢印Sの主走査方向Sに往復移動され、記録媒体1は、矢印Fの副走査方向Fに搬送される。1Aは、既に画像が記録された記録媒体1上の領域であり、1Bは、これから画像が記録される領域である。また、記録動作領域Pの外には、LEDとレンズを含む発光素子5と、受光素子6と、が対を成すように副走査方向Fに沿って配置されている。発光素子5から出射するビーム7の方向は、記録ヘッド1100のノズルNの配列方向(副走査方向F)に一致している。これにより、各ノズルNから吐出されるインク滴の全ては、ビーム7中を通過させることができる。
【0023】
図6は、受光素子6が受光した光量(受光量)の変化に対応する検出信号を示すグラフであり、縦軸は、受光素子6が感知する光量(本例の場合は、電圧)であり、横軸は時間である。ノズル列内のN0,N1,N2・・・N2559ノズルから順次インク滴を吐出させる。そして、そのインク滴がビーム7中を通過したときに受光素子6が感知する光量(本例の場合は、電圧)から、インクの吐出状態が不良のノズル(吐出不良ノズル)が存在するか否かの判断する。図6中の点線部分のように、電圧が変化しない場合には、その時点においてインク滴を吐出すべきノズルからインク滴が吐出されず、そのノズルが吐出不良ノズルであると判断できる。図4中の矢印A,B,Cのように、記録ヘッド1100のN0,N1,N2・・・N2559ノズルから、その順でインク滴を一定周期で吐出させる。このようなインク滴の吐出制御は、記録ヘッド1100を統括的に制御する記録装置本体内の制御部(CPU等)によって実行される。また、受光素子6の光量変化により現われる電圧変化によって、インク滴が吐出されたか否かを判断して、吐出不良ノズルを特定するための吐出不良ノズルの特定制御も記録装置本体内の制御部(CPU等)によって実行される。
【0024】
次に、インクの吐出状態を検出するためのインク滴の吐出について、図7から図9に基づいて説明する。
【0025】
図7(a),(b)は、記録ヘッド1100をノズル列Hに直交した側面から見た模式図である。まず、個々のノズルの吐出状態の検出を行う前に、全ノズルのノズル内部に蓄積した増粘インクを排出するために、それらのノズルから画像の記録に寄与しないインクを吐出する予備吐出を一斉に行う。本例においては、計2560の全ノズルから、一斉に10発ずつインク滴を吐出(予備吐出)する。その後、N0,N1,N2・・・N2559ノズルから、その順序でインク滴を吐出させて、インクの吐出状態を1ノズルずつ検出する。それらのノズルから順次吐出されたインク滴Rは、発光素子5から出射された光ビーム7のビーム束を横断するように通過する。図7(a)中のRは、N0ノズルから吐出されて光ビーム7内を通過したインク滴である。インク滴Rが光ビーム7のビーム束を横断する際に、受光素子6が受光する光量の変化により、インク滴が吐出されたか否かを検出する。最初のノズルN0の吐出状態の検出を行った後、N1ノズル、N2ノズルの順に吐出状態の検出を行う。そして、図7(b)のように、最後のN2559ノズルの吐出状態の検出を行う。
【0026】
N0ノズルの吐出状態の検出を行ってから、N2559ノズルの吐出状態の検出が完了するまでに多くの時間を要するため、N2559ノズル内のインクは、インク滴の吐出状態に影響を及ぼすほど増粘しているおそれがある。そのため、吐出状態を検出するためのインク滴Rを吐出する前に、ノズル内の増粘インクを排出して、正常な吐出状態を得る必要がある。そこで本例においては、後述するように、ノズルから数発のインク滴を吐出して吐出状態を正常化してから、吐出状態を検出する。
【0027】
図8は、N0ノズルからN2559ノズルからインクの吐出するための電気信号(ヒータの駆動パルス)の波形を示す。
【0028】
N0ノズルの吐出状態を検出する際には、インク滴を4発吐出するように、それに対応する4パルスの電気信号(吐出パルス)がN0ノズルのヒータに送られる。吐出される4発のインク滴の内、1発目は、ノズル内の増粘インクを排出するために吐出され、残りの3発は、インクの吐出状態を検出するために吐出される。最初に吐出状態を検出するN0ノズルは、その内部のインクの増粘程度が軽いため、増粘インクを排出するためにインク滴を1発だけ吐出する。ノズルN0から4発のインク滴を吐出した後、若干の時間休止した後、N1ノズルの吐出状態を検出する。その休止の時間は、ノズルN0から吐出されたインク滴の飛翔中に、それらの一部が分離することにより発生して、周辺に浮遊する極小のインク滴が消えるまでの時間である。このようにして、ノズル列Hにおける計2560のノズルの全てに対して、吐出状態の検出を行う。
【0029】
N2559ノズルの吐出状態を検出する際には、インク滴を11発吐出するように、それに対応する11パルスの吐出パルスがN2559のノズルのヒータに送られる。吐出される11発のインク滴の内、1発目から8発目の8発は、増粘インクを排出のために吐出され、残りの9発目から11発目の3発は、吐出状態を検出するために吐出される。N0ノズルの吐出状態の検出を行なってから、N2559ノズルの吐出状態の検出を行なうまでの待機時間により、N2559ノズル内のインクが増粘したため、増粘インクを排出するための8発のインク滴の吐出が必要となる。N1ノズルからN2558ノズルについては、予備吐出を一斉に行なってから、吐出状態の検出を行なうまでの待機時間に応じて、インク滴の吐出数を4発から11発の間で増加させる。各ノズルの吐出状態の検出を行なう時間間隔が一定であれば、吐出状態の検出の順番と、インクの増粘の程度と、は比例関係にあるため、各ノズルの吐出状態の検出を行なう順番に応じて、各のノズルからのインク滴の吐出数を階段的に増加させればよい。本例では、インク滴の吐出間隔は約50μ秒である。
【0030】
図9(b)は、本例におけるノズル毎のインク滴の吐出数の設定例の説明図であり、横軸はノズル番号を表し、縦軸は吐出数を表している。N0ノズルからN2559ノズルにおいて、増粘インクを排出するための増粘インク排出分として吐出するインク滴は、1発から8発まで段階的に増加し、一方、吐出状態を検出するための吐出状態検出分として吐出するインク滴は、一律に3発となっている。図9(a)は比較例を示し、特許文献1のように、最後に吐出状態の検出を行なうノズルに合わせて、全ノズルのインク滴の吐出数が多く設定されている。図9(a),(b)の比較から明らかなように、本例のように、吐出状態の検出を行なう順番に応じて、インク滴の吐出数を段階的に変化させることにより、吐出状態の検出に必要な時間も大幅に減らすことができる。
【0031】
また、増粘インクを排出するための吐出するインク量を多くすることにより、増粘インクは、より排出されやすくなる。したがって、インク滴の1発当たりの吐出量が多くなる場合には、待機時間に応じて、インク滴の吐出数を減少させてもよい。ただし、吐出状態を検出するために吐出するインク滴を大きくした場合には、吐出状態を正確に検出できなくなるおそれがある。
【0032】
図10は、本例におけるノズルの吐出状態の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【0033】
まず、吐出状態を連続して検出する全ての対象ノズル(本例の場合は、同一ノズル列内のノズル)に対して、増粘インクを排出するための予備吐出を一斉に行う(ステップS1)。その後、このような一斉の予備吐出から、1番目(n=0)のノズルの吐出状態の検出を行なうまでの経過時間を計算し(ステップS2)、その計算した経過時間に応じて、その1番目のノズルの吐出状態を検出するためのインク滴の吐出数を算出する(ステップS3)。その算出した吐出数のインク滴を1番目のノズルから吐出して、その吐出状態を検出する(ステップS4)。その検出結果とノズル番号とを対応付けて記録する(S5)。全ての対象ノズルに関して、吐出状態の検出が終了していない場合には、インク滴の浮遊ミストが消えるまで待機する(ステップS6,7)。そして、検出対象のノズル番号を1つ増やして(ステップS8)、ステップS2に戻る。このようにして、検出対象の全ノズルについて、一斉の予備吐出からの経過時間に応じた数のインク滴を吐出して、その吐出状態を検出する。このように、吐出状態の検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、その検出時に吐出するインク滴の吐出量を多くする。このような吐出量制御により、インク滴の吐出状態を正確に検出することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、同一のノズル列を形成する複数のノズルに対して、連続的に吐出状態の検出を行った。しかし、同一のノズル列内のノズルの吐出状態を必ずしも連続的に検出する必要はなく、いくつかのノズルグループに分割して、そのノズルグループ毎に、そのノズルグループ内の複数のノズルを制御対象として、それらの吐出状態を検出してもよい。つまり、同一ノズル列内の所定数のノズルを1つの単位として、その吐出状態を検出してもよい。
【0035】
前述した実施形態と同様に、記録ヘッド1100の設けられたノズル列には、2560個のノズルが配列されている。まず、最初に個々のノズルの吐出状態の検出を行う前に、連続して吐出状態の検出を行う全ノズルの内部に蓄積した増粘インクを排出するために、一斉に予備吐出を行う。本例の場合は、前述した実施形態と同様に、2560個のノズルのそれぞれから、画像の記録に付与しないインクを一斉に10発吐出(予備吐出)する。次に、N0ノズル,N1ノズル,・・・の順に、1ノズルずつ順番に吐出状態の検出を行う。最初のノズルN0から吐出されたインク滴Qは、発光素子5から出射された光ビーム7のビーム束を横断するように通過する。その際に、受光素子6が受光する光量の変化により、N0ノズルからインク滴が吐出されたか否かを検出する。ノズルN0の吐出状態の検出が行われた後、N1ノズル、N2ノズルの順に、N1279ノズルまでの全ノズルの半分に対して、連続して吐出状態の検出を行う。
【0036】
図12(a)は、N0ノズルからN1779ノズルの吐出状態を検出するための吐出パルスの波形を示す。N0ノズルの吐出状態を検出する際には、インク滴を4発吐出するための吐出パルスがCPUから送られる。この吐出パルスの内の1発目は、増粘インクを排出するためにインク滴を吐出するパルスであり、残りの3発は、吐出状態を検出するためにインク滴を吐出するパルスである。最初に吐出状態を検出するN0ノズルは、その内部におけるインクの増粘の程度が小さいため、その増粘インクを排出するためにインク滴を1発だけ吐出する。そして、若干の時間休止した後にN1ノズルの吐出状態を検出する。その休止の時間は、ノズルN0から吐出されたインク滴の飛翔中に、それらの一部が分離することにより発生して、周辺に浮遊する極小のインク滴が消えるまでの時間である。同様にして、0ノズルからN1779ノズルについて吐出状態の検出を行う。N1779ノズルの吐出状態を検出する際には、図12(a)のように、インク滴を7発吐出させるための吐出パルスが送られる。この吐出パルスの内、1発目から4発目は、増粘インクを排出のためにインク滴を吐出するパルスであり、残りの3発は、吐出状態を検出するためにインク滴を吐出するパルスである。N1からN1278ノズルについては、前述した形態と同様に、一斉の予備吐出からの待機時間に応じて、4発から7発のインク滴を吐出させるように吐出パルスを段階的に変化させる。
【0037】
このようにして、N0ノズルからN1279ノズルに対しての吐出状態の検出が終わった後は、吐出状体の検出処理を一旦休止し、残りのN1280ノズルからN2559ノズルから、図11(c)のように同時に予備吐出を行う。本例においては、それらのノズルから4発ずつの予備吐出を行う。この予備吐出により、N0ノズルからN1779ノズルの吐出状態の検出をしている間にN1280ノズルからN2559ノズルの内部に発生した増粘インクが排出される。このような予備吐出の終了後、N1280ノズルからN2559ノズルに対して、N1280,N1281・・・N2559ノズルの順に吐出状態の検出を行なう。図11(c)は、N1280ノズルについての吐出状態の検出処理の状態を表す。また、図12(b)は、N1280ノズルからN2559ノズルから、インク滴を吐出させるための吐出パルスを示す。図12(b)において、N1280ノズルからN2559ノズルから吐出するインク滴の吐出数は、直前に予備吐出を行っているため、N0ノズルからN1779ノズルから吐出するインク滴の吐出数と同数であっても正常に吐出状態を検出することができる。
【0038】
図9(c)は、本実施形態におけるノズル毎のインク滴の吐出数の説明図であり、横軸はノズル番号を表し、縦軸は吐出数を表している。本実施形態の図9(c)と、前述した第1の実施形態の図9(b)と、を比較すると、インク滴の総吐出数はほぼ同じである。しかし、本実施形態においては、全ノズル数を前半と後半のノズルグループに2分割して、後半のノズルグループに対して予備吐出を一括して行なうため、そのための吐出時間がほとんど掛からない。したがって、吐出状態の検出に必要な時間、および吐出量を減らすことができる。
【0039】
(第3の実施形態)
一般的に、ノズル内において同じインクが同じ程度増粘した場合、吐出するインク滴の小さいほど、インクの吐出が不安定になる傾向がある。記録ヘッドとしては、同一のノズル列中に、異なる大きさのインク滴を吐出するノズルを含むものがある。この場合、一斉に予備吐出してから、各ノズルの吐出状態を検出するまでの待機時間だけではなく、各ノズルから吐出されるインク滴の大きさも考慮することが望ましい。このようにインク滴の大きさを考慮して、増粘インクを排出するために必要十分な数のインク滴を吐出することにより、より短い時間で吐出状態の検出が可能となる。
【0040】
(第4の実施形態)
インクによっては、ノズル内におけるインクの増粘速度が異なる組成のものがある。記録ヘッドとしては、1つのノズル列の中において、そのような複数種のインクを吐出する構成の記録ヘッド、および、そのような異なるインクを吐出する複数のノズル列が1直線上に並んでいる構成の記録ヘッドなどがある。このような構成の記録ヘッド場合には、連続的に吐出状態を検出するノズルに対して、一斉に予備吐出してから、各ノズルの吐出状態の検出を行なうまでの待機時間だけではなく、インク種も考慮することが望ましい。このようにインクの種類を考慮して、増粘インクを排出するために必要十分な数のインク滴を吐出することにより、より短い時間にて吐出状態の検出が可能となる。
【0041】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、インク滴をノズルから吐出させる方式として、電気熱変換素子に電気エネルギーを加えて、インクを発泡および吐出させる方式を採用した。しかしながら、本発明は、インク滴を吐出する種々のインクジェット方式において適用することができ、例えば、電気エネルギーを圧力変動に変換する圧電素子を用いてインクを吐出する方式であってもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、インク滴の吐出状態を検出する手法として、光学式検知方法を用いた例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、種々の検知方法を用いることができる。例えば、吐出するインクに予め電荷を印加しておき、吐出されたインク滴を受け止める箇所において、そのインク滴の電荷量の変化を測定し、その測定結果に基づいて不吐出ノズルを検知する電荷式不吐検知方法を用いることもできる。つまり、各ノズルの吐出状態を同時に検出する方法でなければ、どのような検出方法であってもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、吐出状態を検出する光学式検出機構の中のビーム出射手段としてLED光源を用いた。しかし、光源としては、レーザービームなどのLED光源以外の光源を用いてもよい。また、上述した実施形態では、複数のノズルの吐出状態を検出する順番として、ノズル列の端から順に検出する例について説明した。しかし本発明は、必ずしもその順序で無くてもよく、順不同の順番であってもよい。また、上述した実施形態では、ノズルがインク滴を吐出しているか否かの判定を行う例について説明した。しかし本発明は、インク滴の吐出の有無、吐出方向、吐出速度など吐出状態全般についての検出も可能であり、例えば、吐出速度を測定することもできる。
【0044】
また、上述した実施形態では、記録ヘッドが記録媒体上を往復移動しながら記録を行う、いわゆるシリアル式のインクジェット記録装置として適用例として説明した。しかし本発明は、記録動作中に記録ヘッドが移動しない、いわゆるラインプリンタ式のインクジェット記録装置に対しても適用可能である。
【0045】
また、本発明においては、記録装置に接続されるホスト装置が前述した記録装置の機能の少なくとも一部を持つように構成してもよい。また、本発明の形態としては、上述した記録装置におけるインク滴の吐出状態の検出方法をコンピュータによって実施するためのプログラム、および、そのプログラムを格納した記憶媒体を含むことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 記録媒体
5 発光素子
6 受光素子
7 光ビーム
1100 記録ヘッド
N ノズル
R、Q インク滴
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出して画像を記録するインクジェット記録装置、および、その制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、電気熱変換素子(ヒータ)や圧電素子などを用いて、記録ヘッドのノズルからインク滴を吐出することにより画像を記録する。ゴミ等の異物がノズルに詰まった場合、および電気熱変換体や圧電素子などが故障した場合には、インク滴が吐出できなくなって、画像に欠損が生じるおそれがある。
【0003】
また、インクジェット記録装置としては、記録ヘッドからのインク滴の吐出状態を検出する機能をもつものがあり、その検出方法の代表的な例としては、光学式検出方法と電荷式検出方法がある。光学式検出方法は、記録ヘッドを所定の検出位置に停止させ、発光素子から出た光ビームの中にノズルからインク滴を吐出させ、その光ビームを受ける受光素子の光量変化からインク滴の吐出状態を検出して、吐出状態が不良の吐出不良ノズルを検知する。電荷式検出方法は、インクに予め電荷を与えておき、吐出したインク滴を受け止める箇所において測定した電荷量の変化から、吐出状態が不良の吐出不良ノズルを検知する。ノズル毎のインク滴の吐出状態の検出結果に応じて、ノズルから画像の記録に寄与しないインク滴を吐出する予備吐出などの回復処理をする。あるいは、インク滴を吐出不能なノズル(不吐出ノズル)によって記録すべき画像を、インク滴を吐出可能なノズルによって記録するように制御する。
【0004】
特許文献1には、光学的にインク滴の吐出状態を検出する方式において、その検出の正確性を向上させるために、ノズルからのインク滴の吐出回数が多くなった場合に、吐出状態の検出時におけるインク滴の吐出数を変更する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−227174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、インクジェット記録装置が大判プリンタである場合には、ノズルの総数が数万に及ぶ。このように、インク滴の吐出状態の検出対象となるノズル数が多くなった場合、1ノズル毎に、インク滴の吐出状態を検出すると多くの時間が必要となる。また、インク滴の吐出状態を最初に検出するノズルと、それを最後に検出するノズルとの間において、インク滴の吐出状態に差が生じるおそれがある。例えば、インク滴の吐出状態の検出のために最初にインク滴を吐出してからの経過時間に伴って、ノズル内におけるインクの乾燥、増粘が進行して、インク滴の吐出状態が悪化する。特に、吐出されるインク滴の大きさが小さくなればなるほど、ノズル内の増粘インクの悪影響を受けやすくなる。
【0007】
そのため、インク滴の吐出状態を検出するためのインク滴の吐出の前に、ノズル内の増粘インクを排出するためにノズルからインク滴を吐出して、インク滴の吐出状態の検出時にインク滴を正常に吐出できるようにする必要がある。複数のノズルにおけるインク滴の吐出状態を連続的に検出する場合、最後に検出対象となるノズル内のインクの増粘の程度が大きくなるため、その最後の検出対象のノズルから増粘インクを排出するために充分なインク滴を吐出する必要がある。このような最後の検出対象のノズルに合わせて、他のノズルからもインク滴を吐出すると、インクの吐出量、およびインク滴の吐出状態の検出に掛かる時間が長くなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、ノズル数が多い記録ヘッドにおいても、インク滴の吐出状態の検出時に吐出するインク量を最小限に抑えつつ、インク滴の吐出状態を効率よく正確に検出することができるインクジェット記録装置、および、その制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェット記録装置は、インク滴を吐出可能な複数のノズルを有する記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる吐出制御手段と、前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出する検出手段と、前記ノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする吐出量制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のインクジェット記録装置の制御方法は、インク滴を吐出可能な複数のノズルを有する記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置の制御方法であって、前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる工程と、前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出する工程と、前記ノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数のノズルに対してインク滴の吐出状態を検出する順番を考慮して、その検出時に吐出するインク滴の吐出量を制御することにより、必要最小限の吐出量でより短時間に高精度に吐出状態を検出することができる。
【0012】
また、インク滴の吐出状態を検出する複数のノズルを複数のノズルグループに分けて、ノズルグループ毎に、そのノズルグループ内の複数のノズルを、吐出状態を連続的に検出する対象とすることにより、より短時間で高精度に吐出状態を検出できる。また、ノズルから吐出されるインク滴の大きさ、およびインクの種類に応じて、吐出状態の検出時に吐出するインク量を制御することにより、より高精度に吐出状態を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】図1の記録装置におけるプリント部の概略斜視図である。
【図3】図2のプリント部の概略構成図である。
【図4】図1の記録装置における記録ヘッドの吐出状態の検出動作を説明するための要部の斜視図である。
【図5】図1の記録装置における記録ヘッドのノズルの配置形態を説明するための模式図である。
【図6】図1の記録装置における記録ヘッドの吐出状態の検出信号を説明するための波形図である。
【図7】(a)は、図5の記録ヘッドにおける最初のノズルの吐出状態の検出動作を説明するための模式図、(b)は、図5の記録ヘッドにおける最後のノズルの吐出状態の検出動作を説明するための模式図である。
【図8】図1の記録装置における記録ヘッドの吐出パルスを説明するための波形図である。
【図9】(a)は、ノズル毎のインク吐出数の比較例の説明図、(b)は、本発明の第1の実施形態におけるノズル毎のインク吐出数の説明図、(c)は、本発明の第2の実施形態におけるノズル毎のインク吐出数の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態における吐出状態の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】(a),(b),(c)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態においてノズルの吐出状態の検出動作を説明するための模式図である。
【図12】(a),(b)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態における記録ヘッドの吐出パルスを説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1から図9は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。本実施形態におけるインクジェット記録装置は、大判の記録媒体に画像を記録する大判タイプの記録装置としての構成例である。
【0015】
図1において、長尺の記録媒体1は、巻出しローラ11の回転に応じてそこから巻出され、中間ローラ13および15によりガイドされてから、プリンタ部(記録部)1000の対向部位に設けられた搬送部100によって実質的に矢印の水平方向に搬送される。その後、記録媒体1は、送りローラ17および中間ローラ19にカイドされてから、巻取りローラ21に巻取られる。搬送部100は、プリンタ部1000に対して記録媒体1の搬送方向の上流側および下流側に位置する搬送ローラ110および120と、それらローラ間に巻回された無端ベルト形態の搬送ベルト130と、を備えている。また、プリンタ部1000による記録に際して、記録媒体1のプリント面(記録面)を平坦に規制するように、一対のプラテンローラ140によって、搬送ベルト130の所定範囲を適切な張力で展張して平坦性を向上させる。記録媒体1は、対のプラテンローラ140間の領域内においてプリンタ部1000により画像が記録され、搬送ローラ120の位置において搬送ベルト130から離されてから、巻取りローラ21に巻取られる。記録媒体1が巻取りローラ21に巻き取られるまでの間において、乾燥ヒータ600により乾燥処理が施される。
【0016】
図2は、プリンタ部1000および記録媒体1の搬送系の模式図である。プリンタ部1000は、記録媒体1の搬送方向(副走査方向)Fとは異なる方向(交差する方向)、例えば、搬送方向Fに直交する記録媒体1の幅方向(主走査方向)Sに移動可能なキャリッジ1010を有している。1020は、主走査方向Sに延在する支持レールである。この支持レール1020は、キャリッジ1010に固着されたスライダ1012をスライド可能にガイドするスライドレール1022を支持している。1030は、キャリッジ1010を主走査に移動させるための駆動源としてのモータである。このモータ1030の駆動力は、キャリッジ1010に連結されたベルト1032、および、その他の適宜の伝動機構を介してキャリッジ1010に伝達される。
【0017】
キャリッジ1010には、主走査方向と交差する方向(本例では、主走査方向と直交する搬送方向F)に沿って、インクを吐出可能な多数のノズルが配列された記録ヘッド1100が搬送方向Fとは異なる方向(本例では、主走査方向S)に複数搭載されている。本例では、主走査方向Sに複数配置した記録ヘッド1100が搬送方向Fに沿って2組搭載されている(図1参照)。それぞれの記録ヘッド1100から吐出するインクの色は、便宜選択できる。本例においては、搬送方向Fの上流側に位置する1段目の組の記録ヘッド1100の主走査によって記録した記録媒体1上の領域に対して、搬送方向Fの下流側に位置する2段目の組の記録ヘッド1100によって再度記録を行うことができる。また、それらの組の記録ヘッド1100による記録領域を分けて、それぞれの記録領域に対する記録を分担させることにより、高速記録を行うこともできる。
【0018】
記録ヘッド1100として、ノズルからインクを吐出するためのエネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子として、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などを用いることができる。電気熱変換素子を用いた場合には、その発熱によりインクを発泡させ、発泡エネルギーを利用してノズル先端の吐出口からインク滴を吐出することができる。本例の記録ヘッド1100は、このような電気熱変換素子を用いてインク滴を吐出する記録ヘッドである。
【0019】
図3は、キャリッジ1010の走査系の説明図である。キャッピング手段1220は、筐体103の上部の支持部1200内に設けられており、非記録動作時に、それぞれの記録ヘッド1100の吐出口面(吐出口の形成面)に当接して、吐出口の乾燥および異物の混入を抑えたり、異物の除去を行う。具体的には、非記録時に、記録ヘッド1100をキャッピング手段1220と対向する位置に移動させ、キャッピング手段1220を駆動手段1210によって吐出口面に当接するキャップ方向に移動される。これにより、キャッピング手段1220における弾性部材等を吐出口面に圧接させて、キャッピングを行う。
【0020】
目詰まり防止手段1231は、記録ヘッド1100の吐出動作(予備吐出動作)、つまりインクリフレッシュによってインクの吐出条件の均一化を行うための吐出動作をするときに、その吐出動作により吐出されたインクを受ける。この目詰まり防止手段1231は、記録ヘッド1100によるって画像の記録動作位置Pの外において、記録ヘッド1100と対向する位置に設けられる。目詰まり防止手段1231には、キャッピング手段1220と記録動作位置Pとの間、およびその反対側に、記録ヘッド1100から予備吐出されたインク滴を受けて吸収するための受け部材1231aが配置されている。なお、液受け部材1231a内には図示しない液体保持部材が設けられ、その材質としては、スポンジ状多孔質部材等が用いられている。また、キャッピング手段1220と記録動作位置Pとの間には、記録ヘッド1100の吐出口面を摺擦可能な払拭手段(ワイピングブレード)70が配置され、その摺擦によって、吐出口面に付着したインク滴や塵埃などを払拭する。50は、それらの塵埃等を受ける受け皿である。
【0021】
次に、記録ヘッドのノズルからのインクの吐出状態を検出するための検出方法を図4から図6に基づいて説明する。
【0022】
図4において、記録ヘッド1100の下面に形成されたノズルNから、目詰まり防止手段1231に向かってインク滴を吐出することができる。図5は、記録ヘッド1100を下面側から見たノズルの配置図であり、ノズル列として、H列、I列、J列、K列の4列が形成されている。H列ノズルには、右側からN0,N1,N2・・・N2559ノズルまでの計2560のノズルが配列されており、ノズル同士は、約0.021mmの間隔を有している。I列、J列、K列のノズル列も同様である。また、各ノズルから吐出するインク滴は3plの体積である。図4において、キャリッジ1010は、ベルト1032によって矢印Sの主走査方向Sに往復移動され、記録媒体1は、矢印Fの副走査方向Fに搬送される。1Aは、既に画像が記録された記録媒体1上の領域であり、1Bは、これから画像が記録される領域である。また、記録動作領域Pの外には、LEDとレンズを含む発光素子5と、受光素子6と、が対を成すように副走査方向Fに沿って配置されている。発光素子5から出射するビーム7の方向は、記録ヘッド1100のノズルNの配列方向(副走査方向F)に一致している。これにより、各ノズルNから吐出されるインク滴の全ては、ビーム7中を通過させることができる。
【0023】
図6は、受光素子6が受光した光量(受光量)の変化に対応する検出信号を示すグラフであり、縦軸は、受光素子6が感知する光量(本例の場合は、電圧)であり、横軸は時間である。ノズル列内のN0,N1,N2・・・N2559ノズルから順次インク滴を吐出させる。そして、そのインク滴がビーム7中を通過したときに受光素子6が感知する光量(本例の場合は、電圧)から、インクの吐出状態が不良のノズル(吐出不良ノズル)が存在するか否かの判断する。図6中の点線部分のように、電圧が変化しない場合には、その時点においてインク滴を吐出すべきノズルからインク滴が吐出されず、そのノズルが吐出不良ノズルであると判断できる。図4中の矢印A,B,Cのように、記録ヘッド1100のN0,N1,N2・・・N2559ノズルから、その順でインク滴を一定周期で吐出させる。このようなインク滴の吐出制御は、記録ヘッド1100を統括的に制御する記録装置本体内の制御部(CPU等)によって実行される。また、受光素子6の光量変化により現われる電圧変化によって、インク滴が吐出されたか否かを判断して、吐出不良ノズルを特定するための吐出不良ノズルの特定制御も記録装置本体内の制御部(CPU等)によって実行される。
【0024】
次に、インクの吐出状態を検出するためのインク滴の吐出について、図7から図9に基づいて説明する。
【0025】
図7(a),(b)は、記録ヘッド1100をノズル列Hに直交した側面から見た模式図である。まず、個々のノズルの吐出状態の検出を行う前に、全ノズルのノズル内部に蓄積した増粘インクを排出するために、それらのノズルから画像の記録に寄与しないインクを吐出する予備吐出を一斉に行う。本例においては、計2560の全ノズルから、一斉に10発ずつインク滴を吐出(予備吐出)する。その後、N0,N1,N2・・・N2559ノズルから、その順序でインク滴を吐出させて、インクの吐出状態を1ノズルずつ検出する。それらのノズルから順次吐出されたインク滴Rは、発光素子5から出射された光ビーム7のビーム束を横断するように通過する。図7(a)中のRは、N0ノズルから吐出されて光ビーム7内を通過したインク滴である。インク滴Rが光ビーム7のビーム束を横断する際に、受光素子6が受光する光量の変化により、インク滴が吐出されたか否かを検出する。最初のノズルN0の吐出状態の検出を行った後、N1ノズル、N2ノズルの順に吐出状態の検出を行う。そして、図7(b)のように、最後のN2559ノズルの吐出状態の検出を行う。
【0026】
N0ノズルの吐出状態の検出を行ってから、N2559ノズルの吐出状態の検出が完了するまでに多くの時間を要するため、N2559ノズル内のインクは、インク滴の吐出状態に影響を及ぼすほど増粘しているおそれがある。そのため、吐出状態を検出するためのインク滴Rを吐出する前に、ノズル内の増粘インクを排出して、正常な吐出状態を得る必要がある。そこで本例においては、後述するように、ノズルから数発のインク滴を吐出して吐出状態を正常化してから、吐出状態を検出する。
【0027】
図8は、N0ノズルからN2559ノズルからインクの吐出するための電気信号(ヒータの駆動パルス)の波形を示す。
【0028】
N0ノズルの吐出状態を検出する際には、インク滴を4発吐出するように、それに対応する4パルスの電気信号(吐出パルス)がN0ノズルのヒータに送られる。吐出される4発のインク滴の内、1発目は、ノズル内の増粘インクを排出するために吐出され、残りの3発は、インクの吐出状態を検出するために吐出される。最初に吐出状態を検出するN0ノズルは、その内部のインクの増粘程度が軽いため、増粘インクを排出するためにインク滴を1発だけ吐出する。ノズルN0から4発のインク滴を吐出した後、若干の時間休止した後、N1ノズルの吐出状態を検出する。その休止の時間は、ノズルN0から吐出されたインク滴の飛翔中に、それらの一部が分離することにより発生して、周辺に浮遊する極小のインク滴が消えるまでの時間である。このようにして、ノズル列Hにおける計2560のノズルの全てに対して、吐出状態の検出を行う。
【0029】
N2559ノズルの吐出状態を検出する際には、インク滴を11発吐出するように、それに対応する11パルスの吐出パルスがN2559のノズルのヒータに送られる。吐出される11発のインク滴の内、1発目から8発目の8発は、増粘インクを排出のために吐出され、残りの9発目から11発目の3発は、吐出状態を検出するために吐出される。N0ノズルの吐出状態の検出を行なってから、N2559ノズルの吐出状態の検出を行なうまでの待機時間により、N2559ノズル内のインクが増粘したため、増粘インクを排出するための8発のインク滴の吐出が必要となる。N1ノズルからN2558ノズルについては、予備吐出を一斉に行なってから、吐出状態の検出を行なうまでの待機時間に応じて、インク滴の吐出数を4発から11発の間で増加させる。各ノズルの吐出状態の検出を行なう時間間隔が一定であれば、吐出状態の検出の順番と、インクの増粘の程度と、は比例関係にあるため、各ノズルの吐出状態の検出を行なう順番に応じて、各のノズルからのインク滴の吐出数を階段的に増加させればよい。本例では、インク滴の吐出間隔は約50μ秒である。
【0030】
図9(b)は、本例におけるノズル毎のインク滴の吐出数の設定例の説明図であり、横軸はノズル番号を表し、縦軸は吐出数を表している。N0ノズルからN2559ノズルにおいて、増粘インクを排出するための増粘インク排出分として吐出するインク滴は、1発から8発まで段階的に増加し、一方、吐出状態を検出するための吐出状態検出分として吐出するインク滴は、一律に3発となっている。図9(a)は比較例を示し、特許文献1のように、最後に吐出状態の検出を行なうノズルに合わせて、全ノズルのインク滴の吐出数が多く設定されている。図9(a),(b)の比較から明らかなように、本例のように、吐出状態の検出を行なう順番に応じて、インク滴の吐出数を段階的に変化させることにより、吐出状態の検出に必要な時間も大幅に減らすことができる。
【0031】
また、増粘インクを排出するための吐出するインク量を多くすることにより、増粘インクは、より排出されやすくなる。したがって、インク滴の1発当たりの吐出量が多くなる場合には、待機時間に応じて、インク滴の吐出数を減少させてもよい。ただし、吐出状態を検出するために吐出するインク滴を大きくした場合には、吐出状態を正確に検出できなくなるおそれがある。
【0032】
図10は、本例におけるノズルの吐出状態の検出処理を説明するためのフローチャートである。
【0033】
まず、吐出状態を連続して検出する全ての対象ノズル(本例の場合は、同一ノズル列内のノズル)に対して、増粘インクを排出するための予備吐出を一斉に行う(ステップS1)。その後、このような一斉の予備吐出から、1番目(n=0)のノズルの吐出状態の検出を行なうまでの経過時間を計算し(ステップS2)、その計算した経過時間に応じて、その1番目のノズルの吐出状態を検出するためのインク滴の吐出数を算出する(ステップS3)。その算出した吐出数のインク滴を1番目のノズルから吐出して、その吐出状態を検出する(ステップS4)。その検出結果とノズル番号とを対応付けて記録する(S5)。全ての対象ノズルに関して、吐出状態の検出が終了していない場合には、インク滴の浮遊ミストが消えるまで待機する(ステップS6,7)。そして、検出対象のノズル番号を1つ増やして(ステップS8)、ステップS2に戻る。このようにして、検出対象の全ノズルについて、一斉の予備吐出からの経過時間に応じた数のインク滴を吐出して、その吐出状態を検出する。このように、吐出状態の検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、その検出時に吐出するインク滴の吐出量を多くする。このような吐出量制御により、インク滴の吐出状態を正確に検出することができる。
【0034】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、同一のノズル列を形成する複数のノズルに対して、連続的に吐出状態の検出を行った。しかし、同一のノズル列内のノズルの吐出状態を必ずしも連続的に検出する必要はなく、いくつかのノズルグループに分割して、そのノズルグループ毎に、そのノズルグループ内の複数のノズルを制御対象として、それらの吐出状態を検出してもよい。つまり、同一ノズル列内の所定数のノズルを1つの単位として、その吐出状態を検出してもよい。
【0035】
前述した実施形態と同様に、記録ヘッド1100の設けられたノズル列には、2560個のノズルが配列されている。まず、最初に個々のノズルの吐出状態の検出を行う前に、連続して吐出状態の検出を行う全ノズルの内部に蓄積した増粘インクを排出するために、一斉に予備吐出を行う。本例の場合は、前述した実施形態と同様に、2560個のノズルのそれぞれから、画像の記録に付与しないインクを一斉に10発吐出(予備吐出)する。次に、N0ノズル,N1ノズル,・・・の順に、1ノズルずつ順番に吐出状態の検出を行う。最初のノズルN0から吐出されたインク滴Qは、発光素子5から出射された光ビーム7のビーム束を横断するように通過する。その際に、受光素子6が受光する光量の変化により、N0ノズルからインク滴が吐出されたか否かを検出する。ノズルN0の吐出状態の検出が行われた後、N1ノズル、N2ノズルの順に、N1279ノズルまでの全ノズルの半分に対して、連続して吐出状態の検出を行う。
【0036】
図12(a)は、N0ノズルからN1779ノズルの吐出状態を検出するための吐出パルスの波形を示す。N0ノズルの吐出状態を検出する際には、インク滴を4発吐出するための吐出パルスがCPUから送られる。この吐出パルスの内の1発目は、増粘インクを排出するためにインク滴を吐出するパルスであり、残りの3発は、吐出状態を検出するためにインク滴を吐出するパルスである。最初に吐出状態を検出するN0ノズルは、その内部におけるインクの増粘の程度が小さいため、その増粘インクを排出するためにインク滴を1発だけ吐出する。そして、若干の時間休止した後にN1ノズルの吐出状態を検出する。その休止の時間は、ノズルN0から吐出されたインク滴の飛翔中に、それらの一部が分離することにより発生して、周辺に浮遊する極小のインク滴が消えるまでの時間である。同様にして、0ノズルからN1779ノズルについて吐出状態の検出を行う。N1779ノズルの吐出状態を検出する際には、図12(a)のように、インク滴を7発吐出させるための吐出パルスが送られる。この吐出パルスの内、1発目から4発目は、増粘インクを排出のためにインク滴を吐出するパルスであり、残りの3発は、吐出状態を検出するためにインク滴を吐出するパルスである。N1からN1278ノズルについては、前述した形態と同様に、一斉の予備吐出からの待機時間に応じて、4発から7発のインク滴を吐出させるように吐出パルスを段階的に変化させる。
【0037】
このようにして、N0ノズルからN1279ノズルに対しての吐出状態の検出が終わった後は、吐出状体の検出処理を一旦休止し、残りのN1280ノズルからN2559ノズルから、図11(c)のように同時に予備吐出を行う。本例においては、それらのノズルから4発ずつの予備吐出を行う。この予備吐出により、N0ノズルからN1779ノズルの吐出状態の検出をしている間にN1280ノズルからN2559ノズルの内部に発生した増粘インクが排出される。このような予備吐出の終了後、N1280ノズルからN2559ノズルに対して、N1280,N1281・・・N2559ノズルの順に吐出状態の検出を行なう。図11(c)は、N1280ノズルについての吐出状態の検出処理の状態を表す。また、図12(b)は、N1280ノズルからN2559ノズルから、インク滴を吐出させるための吐出パルスを示す。図12(b)において、N1280ノズルからN2559ノズルから吐出するインク滴の吐出数は、直前に予備吐出を行っているため、N0ノズルからN1779ノズルから吐出するインク滴の吐出数と同数であっても正常に吐出状態を検出することができる。
【0038】
図9(c)は、本実施形態におけるノズル毎のインク滴の吐出数の説明図であり、横軸はノズル番号を表し、縦軸は吐出数を表している。本実施形態の図9(c)と、前述した第1の実施形態の図9(b)と、を比較すると、インク滴の総吐出数はほぼ同じである。しかし、本実施形態においては、全ノズル数を前半と後半のノズルグループに2分割して、後半のノズルグループに対して予備吐出を一括して行なうため、そのための吐出時間がほとんど掛からない。したがって、吐出状態の検出に必要な時間、および吐出量を減らすことができる。
【0039】
(第3の実施形態)
一般的に、ノズル内において同じインクが同じ程度増粘した場合、吐出するインク滴の小さいほど、インクの吐出が不安定になる傾向がある。記録ヘッドとしては、同一のノズル列中に、異なる大きさのインク滴を吐出するノズルを含むものがある。この場合、一斉に予備吐出してから、各ノズルの吐出状態を検出するまでの待機時間だけではなく、各ノズルから吐出されるインク滴の大きさも考慮することが望ましい。このようにインク滴の大きさを考慮して、増粘インクを排出するために必要十分な数のインク滴を吐出することにより、より短い時間で吐出状態の検出が可能となる。
【0040】
(第4の実施形態)
インクによっては、ノズル内におけるインクの増粘速度が異なる組成のものがある。記録ヘッドとしては、1つのノズル列の中において、そのような複数種のインクを吐出する構成の記録ヘッド、および、そのような異なるインクを吐出する複数のノズル列が1直線上に並んでいる構成の記録ヘッドなどがある。このような構成の記録ヘッド場合には、連続的に吐出状態を検出するノズルに対して、一斉に予備吐出してから、各ノズルの吐出状態の検出を行なうまでの待機時間だけではなく、インク種も考慮することが望ましい。このようにインクの種類を考慮して、増粘インクを排出するために必要十分な数のインク滴を吐出することにより、より短い時間にて吐出状態の検出が可能となる。
【0041】
(他の実施形態)
上述した実施形態では、インク滴をノズルから吐出させる方式として、電気熱変換素子に電気エネルギーを加えて、インクを発泡および吐出させる方式を採用した。しかしながら、本発明は、インク滴を吐出する種々のインクジェット方式において適用することができ、例えば、電気エネルギーを圧力変動に変換する圧電素子を用いてインクを吐出する方式であってもよい。
【0042】
また、上述した実施形態では、インク滴の吐出状態を検出する手法として、光学式検知方法を用いた例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、種々の検知方法を用いることができる。例えば、吐出するインクに予め電荷を印加しておき、吐出されたインク滴を受け止める箇所において、そのインク滴の電荷量の変化を測定し、その測定結果に基づいて不吐出ノズルを検知する電荷式不吐検知方法を用いることもできる。つまり、各ノズルの吐出状態を同時に検出する方法でなければ、どのような検出方法であってもよい。
【0043】
また、上述した実施形態では、吐出状態を検出する光学式検出機構の中のビーム出射手段としてLED光源を用いた。しかし、光源としては、レーザービームなどのLED光源以外の光源を用いてもよい。また、上述した実施形態では、複数のノズルの吐出状態を検出する順番として、ノズル列の端から順に検出する例について説明した。しかし本発明は、必ずしもその順序で無くてもよく、順不同の順番であってもよい。また、上述した実施形態では、ノズルがインク滴を吐出しているか否かの判定を行う例について説明した。しかし本発明は、インク滴の吐出の有無、吐出方向、吐出速度など吐出状態全般についての検出も可能であり、例えば、吐出速度を測定することもできる。
【0044】
また、上述した実施形態では、記録ヘッドが記録媒体上を往復移動しながら記録を行う、いわゆるシリアル式のインクジェット記録装置として適用例として説明した。しかし本発明は、記録動作中に記録ヘッドが移動しない、いわゆるラインプリンタ式のインクジェット記録装置に対しても適用可能である。
【0045】
また、本発明においては、記録装置に接続されるホスト装置が前述した記録装置の機能の少なくとも一部を持つように構成してもよい。また、本発明の形態としては、上述した記録装置におけるインク滴の吐出状態の検出方法をコンピュータによって実施するためのプログラム、および、そのプログラムを格納した記憶媒体を含むことができる。
【符号の説明】
【0046】
1 記録媒体
5 発光素子
6 受光素子
7 光ビーム
1100 記録ヘッド
N ノズル
R、Q インク滴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出可能な複数のノズルを有する記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる吐出制御手段と、
前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出する検出手段と、
前記ノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする吐出量制御手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、複数のノズルグループに分けられ、
前記吐出制御手段は、前記ノズルグループ毎に、当該ノズルグループ内の複数のノズルを制御対象とし、
前記吐出量制御手段は、前記ノズルグループ毎に、当該ノズルグループ内の複数のノズルが吐出するインク滴の量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記吐出量制御手段は、インク滴の吐出数を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記吐出制御手段は、前記検出のために前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる前に、前記複数のノズル内の所定数のノズルから、画像の記録に寄与しないインク滴を吐出させ、
前記吐出量制御手段は、前記所定数のノズル内のノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記所定数のノズル内のノズルが前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記吐出量制御手段は、前記ノズルが吐出するインク滴の大きさに応じて、前記検出時に吐出するインク滴の量を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記吐出量制御手段は、前記ノズルが吐出するインクの種類に応じて、前記検出時に吐出するインク滴の量を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記ノズルから吐出されたインク滴が通過する光ビームを用い、前記インク滴の通過により変化する前記光ビームの受光量に基づいて、インク滴の吐出状態を検出することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インク滴を吐出可能な複数のノズルを有する記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる工程と、
前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出する工程と、
前記ノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする工程と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項1】
インク滴を吐出可能な複数のノズルを有する記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる吐出制御手段と、
前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出する検出手段と、
前記ノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする吐出量制御手段と、
を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、複数のノズルグループに分けられ、
前記吐出制御手段は、前記ノズルグループ毎に、当該ノズルグループ内の複数のノズルを制御対象とし、
前記吐出量制御手段は、前記ノズルグループ毎に、当該ノズルグループ内の複数のノズルが吐出するインク滴の量を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記吐出量制御手段は、インク滴の吐出数を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記吐出制御手段は、前記検出のために前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる前に、前記複数のノズル内の所定数のノズルから、画像の記録に寄与しないインク滴を吐出させ、
前記吐出量制御手段は、前記所定数のノズル内のノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記所定数のノズル内のノズルが前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記吐出量制御手段は、前記ノズルが吐出するインク滴の大きさに応じて、前記検出時に吐出するインク滴の量を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記吐出量制御手段は、前記ノズルが吐出するインクの種類に応じて、前記検出時に吐出するインク滴の量を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記ノズルから吐出されたインク滴が通過する光ビームを用い、前記インク滴の通過により変化する前記光ビームの受光量に基づいて、インク滴の吐出状態を検出することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
インク滴を吐出可能な複数のノズルを有する記録ヘッドを用いて、記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出するために、前記複数のノズルから順次インク滴を吐出させる工程と、
前記複数のノズルから吐出されるインク滴の吐出状態を検出する工程と、
前記ノズルが前記検出のためにインク滴を吐出する順番が遅くなるにつれて、前記検出時に吐出するインク滴の量を多くする工程と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−106405(P2012−106405A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256780(P2010−256780)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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