インクジェット記録装置および方法
【課題】 記録のための記録ヘッドの往復移動において、すべてのノズル列の予備吐出を確実に行う。
【解決手段】 複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて前記シートに画像を記録する記録部と、記録ヘッドから前記シートの外側に予備吐出で吐出されるインクを受けるインク受けを備える。制御部は、シート上の記録領域および前記複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記記録ヘッドが前記往復移動において反転する反転位置を決める。
【解決手段】 複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて前記シートに画像を記録する記録部と、記録ヘッドから前記シートの外側に予備吐出で吐出されるインクを受けるインク受けを備える。制御部は、シート上の記録領域および前記複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記記録ヘッドが前記往復移動において反転する反転位置を決める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット方式の記録装置と記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクの吐出不良を防止するため予備吐出を行うことができるインクジェット記録装置の例が開示されている。記録ヘッドをシートから外れた非記録領域に移動させ、インク受けに予備吐出を行うことで、記録ヘッドの目詰まりや吐出不良を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−025026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリントスループットを向上させるため、画像記録のために往復移動する記録ヘッドの同一の走査の中で、シートへの記録と予備吐出を行うことが好ましい。記録ヘッドの走査において、シート上の記録領域に応じてヘッド走査方向を反転する反転位置を定めることで、記録ヘッドの移動距離をできるだけ短くすることが望まれる。
【0005】
しかし、シートへの記録領域の設定や記録に使用するノズル列の選択によっては、往復移動の際に記録ヘッドの複数のノズル列の一部がインク受けの上に到達できなくなる可能性がある。インク受けの上に到達できないノズル列は予備吐出を行うことができないので、インク吐出不良となって画像品位が低下する。
【0006】
本発明は、記録のための記録ヘッドの往復移動においてすべてのノズル列の予備吐出を確実に行うことができる手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて、前記シートに画像を記録する記録部と、前記記録ヘッドから前記シートの外側に予備吐出で吐出されるインクを受けるインク受けと、制御部と、を有し、前記制御部は、シート上の記録領域および前記複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記記録ヘッドが前記往復移動において反転する反転位置を設定することを特徴とする。
【0008】
本発明のインクジェット記録方法は、複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて、シートに画像を記録するステップと、前記複数のノズル列のそれぞれからインク受けに予備吐出を行うステップと、を有し、あるノズル列から予備吐出を行うのと並行して、前記あるノズル列とは別のノズル列から前記シートに記録することが含まれており、シート上の記録領域に拘わらず、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記往復移動の移動範囲を決められることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート上の記録領域の設定および複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに関わらず、記録のための記録ヘッドの往復移動においてすべてのノズル列の予備吐出を確実に行うことができる。これにより、画像品位の低下抑制とプリントスループット向上を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例に係るインクジェット記録装置の記録部の構成図
【図2】制御部を中心とするシステム構成を示すブロック図
【図3】印刷と並行してインク受けへ予備吐出を行う様子を示す図
【図4】シート上に設定された記録領域に応じた往復移動の範囲を示す図
【図5】一部のノズル列の予備吐出を行えない場合の様子を示す図
【図6】記録ヘッドの移動範囲を求める手法を説明するための図
【図7】記録ヘッドの移動範囲を求める手法を説明するための図
【図8】インク受けに対する予備吐出の様子を示す図
【図9】記録ヘッドの移動範囲を求める手法を説明するための図
【図10】記録ヘッドの移動制御の手順を示すフローチャート
【図11】図10のフローチャートの一部ステップの詳細手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はインクジェット記録装置の記録部の構成図であり、記録ヘッドが往復移動する範囲での各部材の位置関係を模式的に示したものである。記録ヘッド20は複数のノズル列を搭載するインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド20は、インクジェット方式でインクを吐出するノズル列21が複数(6色分のノズル列21a、21b、21c、21d、21e、21f)が矢印15の方向に沿って並べられている。記録ヘッド20はキャリッジに搭載されており、キャリッジは矢印15の方向に往復移動(双方向スキャン)する。ガイド13はキャリッジの移動をガイドする。記録ヘッド20は移動しながらシート14(記録媒体)に向けてインクを吐出し、シートの上に1バンド分の画像を記録(印刷)する。シート14は矢印16の方向に1バンド分ずつステップ送りで給紙され(副走査)、記録ヘッド20の矢印15の往復移動(主走査)と合わせて、シリアルプリント方式でシートに画像が形成される。
【0012】
プラテン10は、画像記録の際に記録ヘッド20がキャリッジによって往復移動する最大範囲(図中の17b)をカバーする範囲(図中の17a)に設けられており、プラテン10の支持面には、副走査で移動するシート14が保持される。図1の例ではシート14は17cで示すシート幅を有している。プラテン10の支持面には、インク受け11(インク滴回収部)が埋め込まれるように設けられている。インク受け11は、記録ヘッドの走査領域内に設けられ、17cの近傍に設けられている。記録ヘッド20を移動させながら、あるノズル列がインク受け11の上を通過するタイミングで、そのノズル列に含まれるインクノズルからインク受け11に向けて予備吐出を行う。予備吐出は1つのノズルから数発(例えば5発)のインク滴を吐出させる。記録ヘッド20が往復移動する際に1走査において印刷と予備吐出の両方を行うことができる。
【0013】
記録ヘッドが移動する方向において、インク受け11のさらに外側、ホームポジション(初期位置)の近くに、インク受け11よりも大きなインク受け12が設けられている。インク受け12は複数のノズル列すべてをカバーするサイズ(図中17dで示す範囲)を有し、インク受け12の上に記録ヘッド20が位置した状態で、すべてのノズル列から略同時に予備吐出させることができる。
【0014】
記録動作中に、このインク受け12へ記録ヘッド20を移動させて予備吐出することも可能である。しかし、インク受け12の位置まで記録ヘッド20を頻繁に移動させると、その移動時間がプリントスループットの低下の要因となる。そこで、なるべくインク受け12で予備吐出を行わず、インク受け11で予備吐出を行うことが好ましい。
【0015】
図2はインクジェット記録装置における制御部を中心とするシステム構成を示すブロック図である。記録ヘッド20に搭載された複数のノズル列21a、21b、21c、21d、21e、21fは各々独立したデータ転送信号線34a、ノズル列に共通な吐出タイミング信号線34b、データ転送用クロック線34cによって、吐出制御部30と接続されている。吐出制御部30は、印刷用データ生成部31、予備吐出用データ生成部32、データ転送・吐出タイミング生成部33と接続されている。
【0016】
キャリッジには記録ヘッド20と共にエンコーダセンサ22が取り付けられている。エンコーダセンサ22は、ガイド13と平行に取り付けられたコードストリップ18のコードを光学的に読み取る。読み取ったコードの信号は、エンコーダ信号線35にエンコーダ信号として送られて、データ転送・吐出タイミング生成部33へ記録ヘッドの位置情報として伝達される。データ転送・吐出タイミング生成部33は、エンコーダ信号を基にヘッドへのデータ転送タイミングおよびヘッドの吐出タイミングを生成する。生成された印刷データ(記録データ)と予備吐出データは吐出制御部30で統合し、ノズル列ごとに印刷データを転送する。また、エンコーダ信号に基づいてデータ転送・吐出タイミングを制御する。こうして、複数のノズル列で印刷と予備吐出を並行して動作させることが可能である。
【0017】
図3は、記録ヘッド20の1回の走査の中で、印刷とインク受け11へ予備吐出の両方を並行して行う手順を示す模式図である。記録ヘッド20はホームポジション側の走査開始位置(往復移動の一方の停止位置)からシート14の方向(白抜きの矢印方向)へ走査を開始する。図3(a)に示す状態は、走査で最も先行する左端のノズル列21aがインク受け11の真上に来た瞬間である。このタイミングでノズル列21aからインク受け11に向けて予備吐出を行う。このとき、他のノズル列21b〜21fはインク受け11の上に到達していないので予備吐出を行わない。次いで、ノズル列21bがインク受け11の真上に位置するタイミングでノズル列21bの予備吐出を行う。このときノズル列21aは予備吐出を終了している。
【0018】
図3(b)に示す状態では、ノズル列21cがインク受け11の上に位置し、且つ先行するノズル列21aはシート14の上の記録領域のホームポジション側の端部に位置している。このタイミングでは、3つめのノズル列21cが予備吐出するとともに、ノズル列21aはシート14に向けて記録のためにインクを吐出する。つまり、先行するノズル列で記録を行うと並行して後続のノズル列は予備吐出を行う。なお、本明細書において「並行して」とは、記録のためのインク吐出タイミングと別のノズルからの予備吐出のタイミングが略一致(完全一致または時間のオーバーラップを持って僅かなずれはあるが実質的に同じ)である形態に限定されない。オーバーラップなく短時間に順次行うようなタイミングである形態も「並行して」の意味に含まれるものとする。
【0019】
以降同様に、ノズル列21d、21e、21fの順にインク受け11上で予備吐出すると並行して、シート14の記録領域に到達した先行するノズル列はインクを吐出して印刷を行う。図3(c)に示す状態では、先行するノズル列21a〜21dが印刷を行うと並行して、最も遅れたノズル列21fが予備吐出を行う。図3(d)に示す状態では、予備吐出を終えたすべてのノズル列がシート14の上に位置している。記録ヘッド20を記録領域をカバーする範囲で走査しながら、すべてのノズル列21a〜21fを用いて1バンドの印刷を完成させる。記録ヘッドが往復移動の反転位置まで来たら、記録ヘッド20の移動方向が反転する。1バンドの副走査の後に記録ヘッド20は走査開始位置まで戻る。以降、同様に往復動を繰り返して画像を形成していく。
【0020】
図4は、シート上に設定される記録領域に応じて記録ヘッド20の往復移動の範囲(走査の反転位置)が変化する様子を示す模式図である。図中、40a、40bは印刷によりシート14に記録が行われる記録領域を表し、41a、41bは記録ヘッド20がシート上を走査する軌跡(主走査と副走査によってなされるシート面に対する2次元の軌跡)を表す。図4(a)に示すように記録領域40aがシート14の全面の広い領域として設定されている場合は、記録ヘッドは大きな往復移動ストロークとなり、軌跡41aもシート14のシート幅方向の両側端部を通過する。
【0021】
これに対して図4(b)に示すように、記録領域40bがホームポジション側の端部近傍の狭い領域として設定されている場合は、記録ヘッドは小さな往復移動ストロークとなり、記録ヘッド20の軌跡41bはシート14のホームポジション側の端部のみ通過する。このように記録領域のサイズおよび設定される場所に応じて、記録ヘッドの往復移動における最適な反転位置を設定する。ここでいう反転位置は、ホームポジションまたはインク受け11から遠い側の反転位置であり、ホームポジションに近い側の反転位置(走査開始位置)は繰り返しの往復移動において一定である。こうして、記録領域の設定に応じた往復移動ストロークとすることで、記録に要する時間を短縮するすなわちプリントスループットを向上させることができる。
【0022】
図4(b)のように、記録領域40bがホームポジション側に偏って小さい、すなわち記録ヘッドの移動ストロークもシート幅方向において小さい場合には、以下に説明する現象が起きる可能性がある。これが本実施形態において着目する課題である。
【0023】
図5は、図4(b)記録領域の設定における記録ヘッドの移動の様子を示す模式図である。記録領域はシートのホームポジション側の端部近傍の狭いエリアに設定されている。この例では、記録領域への印刷に使用するのはノズル列21a(1つの色、例えばブラック)だけで、他のノズル列21b〜21f(他の色)は印刷には用いないものとする。なお、これはあくまで一例であって、複数のノズル列のうち、1つまたは複数のいずれのノズル列を印刷に使用するかは、画像に含まれる色によって決まる。
【0024】
図5(a)に示す状態では、先行するノズル列21aを用いた印刷と並行して、インク受け11上でノズル列21cから予備吐出を行う。ノズル列21aが記録領域の左端(ホームポジションから遠い側の端部)まで移動して記録領域への印刷が終了したら、記録ヘッド20の走査を停止させる。図5(b)は走査を停止させた状態であり、ここが往復移動の反転位置になる。この状態では、ノズル列21dがインク受け11の上に位置し予備吐出が必要であるにもかかわらず、ヘッド走査に伴うエンコーダ信号がデータ転送・吐出タイミング生成部33に入力されず、ノズル列21dの予備吐出を行うことができない。さらに後続のノズル列21e、21fはインク受け11上に到達することすらできないため、予備吐出を行うことができない。
【0025】
プラテンを基準として見たとき、プラテン10に沿って記録領域のホームポジションから遠い側の端部位置がホームポジションに近くなるほど、この現象は起きやすくなる。使用するシートのシート幅方向のサイズ(プラテン上でシートが通過する位置)が変わると現象の起きやすさも変わり得る。また、複数のノズル列21a〜21fのうちいずれのノズル列を記録に使用するかによって、現象は起きやすさは変わる。使用する複数のノズルの間隔によっても現象の起きやすさは異なる。
【0026】
本実施形態は以上の課題に鑑みてなされたものである。基本的には、シート上の記録領域の設定および複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、往復移動での1走査の際に複数のノズル列の全てがインク受け11の上を通過するように、記録ヘッド20が往復移動において反転する反転位置を決める。制御部は、予備吐出で必要とする記録ヘッド20の走査距離、および印刷で必要とする記録ヘッド20の走査距離をそれぞれ求め、長い方の距離に基づいて記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における反転位置)を設定する。
【0027】
より具体的には、制御部は、記録ヘッド20が走査開始位置にあるときの記録に使用するノズル列のうち最もインク受け11から離れているノズル列の位置から、記録領域の端部位置(インク受け11から遠い側)までの距離(第1の走査距離)を求める。また、記録部は、記録ヘッド20が走査開始位置にあるときの複数のノズル列のうち最もインク受け11から離れているノズル列の位置から、インク受け11までの距離(第2の走査距離)を求める。そして制御部は、第1の走査距離と第2の走査距離の大小関係を比較し、大きい方の距離に基づいて往復移動における反転位置(ホームポジションから離れた側)を決めて設定する。
【0028】
ここで、記録領域の端部位置(インク受け11から遠い側)は、印刷する画像の大きさ、印刷する画像のシート上でのレイアウトなどの情報に基づいて求めることができる。これらは、制御部のメモリに記憶される記録ための画像データ、レイアウト情報、使用するシートのサイズ等に基づいて知ることができる。
【0029】
この制御により、往復移動での1走査の際にノズル列21a〜21fの全てがインク受け11の上を通過する。したがって、すべてのノズル列がインク受け11に対して予備吐出を行うことができる。
【0030】
次のような別の方法を採用してもよい。制御部は、インク受け11から記録領域のインク受け11から遠い側の端部位置までの距離(第1の距離)を求める。また、複数のノズル列の中で最もホームポジション側のノズル列と、記録に使用するノズル列のうち最もホームポジションから遠いノズルとの間の距離(第2の距離)を求める。そして、第1の距離と第2の距離を比較する。第1の距離が第2の距離よりも小さい場合には、記録に必要な移動距離を増やして、複数のノズル列の最もホームポジション側のノズル列がインク受けの上に移動するように、反転位置を決めて設定する。
【0031】
図6は、すべてのノズル列を用いて広い記録領域に印刷し、且つ予備吐出を行う場合(図3、図4(a)参照)における、記録ヘッドの移動範囲(往復移動の反転位置)の求め方を説明するための図である。図6の横軸は時間スケールであり、右から左へ時間が経過する。
【0032】
56aは記録ヘッド20の走査開始位置で移動を開始するときの時間、56cは記録ヘッド20の走査終了位置(反転位置)に移動したときの時間である。区間50aは最も先行するノズル列21aが予備吐出を行う時間幅を示す予備吐出区間であり、区間51aは同じノズル列21aがシートの上に印刷を行う時間幅を示す印刷区間である。同様に、区間50b〜50f、区間51b〜51fは、それぞれノズル列21b〜21fの予備吐出区間および印刷区間を表す。ここで、区間50aの開始タイミング(区間の右端)と区間51aの開始タイミング(区間の右端)との間の距離は、ノズル列21aから吐出されるインクで記録される画像領域の右端の位置(走査方向上流側の位置)からインク受け11までの距離に対応する。区間51aの時間幅は、ノズル列21aから吐出されるインクで記録される画像領域の走査方向における画像サイズに対応する。この関係は他のノズル列における区間についても同様である。
【0033】
少なくとも最後のノズル列21fが区間50fにおいて予備吐出を終える位置(時間56b)まで記録ヘッド20を走査すれば、すべてのノズル列21a〜21fがインク受けの上を通過して予備吐出を行うことができる。予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間53に対応)は、走査開始位置(時間56a)からノズル列21fがインク受け11に到達し予備吐出を開始するまでの距離(期間55a)と、ノズル列21fが予備吐出を行う区間50fの距離(期間55bに対応)との和である。この後、最後のノズル列21fが印刷を終える位置(時間56c)まで記録ヘッドを走査することにより、すべてのノズル列21a〜21fで画像領域に印刷を終えることができる。印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間54aに対応)は、走査開始位置(時間56a)とノズル列21fの印刷終了位置(時間56c)の間の距離(期間)である。
【0034】
制御部は、予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間53に対応)と、印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間54aに対応)とを比較する。そして、長い方の距離に応じた距離だけ記録ヘッド20を走査させるよう制御する。図6の例では、期間54aに対応した距離の方が長い。制御部は記録ヘッド20を少なくとも期間54aに対応した距離だけ走査させるよう、記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における走査反転位置)を設定する。こうして、すべてのノズル列21a〜21fによる予備吐出と印刷を行うことができる。
【0035】
予備吐出に必要な走査距離と印刷に必要な走査距離はそれぞれ、加速や減速のための距離やノズル列毎の位置調整などを考慮したマージンを考慮することが好ましい。マージンを付加することにより、印刷および予備吐出で必要とするエンコーダ信号が確実にデータ転送・吐出タイミング生成部33に入力され、印刷と予備吐出の信頼性を向上させることができる。
【0036】
図7は、記録領域がシート端部近傍の狭い領域であり、且つ記録にはノズル列21aのみ使用して他のノズル列21b〜21fは使用しない場合(図5、図4(b)参照)の例を示す。図6と同様、図7の横軸は時間スケールであり、右から左へ時間が経過する。予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間53に対応)は、図6の場合と同様に求めることができる。
【0037】
一方、図7において印刷を行う区間は、印刷に用いるノズル列21aの印刷区間51gのみである。印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間54bに対応)は、走査開始位置(時間56a)と、ノズル列21aの印刷終了位置(時間56d)との間の距離(期間)となる。
【0038】
制御部は、予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離と、印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離を比較する。図7の例では、先の図6とは逆に前者の走査距離の方が長い。制御部は記録ヘッド20を少なくとも期間53に対応した距離だけ走査させるよう、記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における走査反転位置)を設定する。こうして、すべてのノズル列21a〜21fがインク受けの上を通過して予備吐出を行うことができ、且つノズル列21aによるシート端部への印刷を完成させることができる。
【0039】
図8は、図7の方法で制御したときの動作の様子を示す模式図である。図8(a)の状態では、図5(a)と同様にノズル列21aの印刷と並行して、インク受け11上でノズル列21cの予備吐出を行う。図5の例と違って、ノズル列21aの印刷が済んだ後も記録ヘッド20の移動を継続させる。図8(b)に示す位置では、ノズル列21dの予備吐出を行うことができる。図8(c)に示す位置まで記録ヘッド20を移動させながら、各ノズル列がインク受け11の上を通過するごとに予備吐出を行う。図8(c)の位置が反転位置であり、記録ヘッド20の移動方向が反転する。1バンドの副走査の後に記録ヘッド20は走査開始位置まで戻る。戻る際にも記録および各ノズル列から予備吐出を行うようにしてもよい。以降、同様に往復動を繰り返して記録領域に画像を形成していく。
【0040】
なお、1枚のシートに図4(a)、図4(b)のような記録領域が混在するケースも考えられる。この場合は、シート上の場所に応じて記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における走査反転位置)を異ならせるように設定すればよい。
【0041】
以上の例では、記録ヘッド20が往復動作を繰り返すごとに、毎回予備吐出を行うものであるが、必ずしも毎回行わなくてもよい。例えば、印刷累積時間や記録ヘッドの走査回数に応じて、所定回数の走査に一度、予備吐出を行うようにしてもよい。
【0042】
図9は、予備吐出を伴わずに記録する場合の記録ヘッドの移動範囲の求め方を説明するための図である。印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間54cに対応)は、走査開始位置(時間56eに対応)とノズル列21fの印刷終了位置(時間56cに対応)の間の距離である。制御部は記録ヘッド20を少なくとも期間54cに対応した距離だけ走査させるよう、記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における走査反転位置)を設定する。
【0043】
このケースでは、予備吐出を行わないため、記録ヘッド走査開始位置(時間56e)を、図6の記録ヘッド走査開始位置(時間56a)よりも、ノズル列21aの印刷区間51aに近づけることができる。そのため、記録ヘッドの走査距離を短縮し、プリントスループットをより向上させることができる。なお、予備吐出を伴わずに図4(b)のような狭い記録領域に記録する場合には、走査距離は、図7において予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離は考慮する必要はなく、期間54bの短い走査距離で済む。
【0044】
図10および図11は、これまで説明した手順による移動制御のシーケンスを示すフローチャートである。図10において、Step1では記録ヘッド走査で予備吐出を行うかどうか判定する。予備吐出を行う場合(判断がYes)はStep2に移行する。Step2では、予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離LAを前述の方法で算出して取得する。予備吐出を行わない場合(Step1の判断がNo)は、Step2をスキップしてStep3に移行する。Step3では、印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離LBを前述の方法で算出して取得する。Step4では、記録ヘッドの走査距離を判定して走査を開始する。
【0045】
図11はStep4の詳細手順を示すサブルーチン(サブ1)のフローチャートである。Step11で、記録ヘッド走査で予備吐出を行うかどうか判定する。予備吐出を行う場合(判断がYes)はStep12に移行する。Step12では、LAとLBの大小関係を比較する。LAがLBよりも大きい場合(判断がYes)は、Step13に移行する。Step13では、走査距離をLAと設定し、設定した走査距離に基づいて記録ヘッドの走査を行う。一方、LAがLB以下の場合(Step12の判断がNo)は、Step14に移行する。Step14では、走査距離をLBと設定し、設定した走査距離に基づいて記録ヘッドの走査を行う。なお、Step11の判断で予備吐出を行わない場合(判断がNo)は、Step14に移行して、走査距離をLBと設定して走査を行う。
【0046】
走査距離LAを算出する際には、予備吐出を行う複数のノズル列のうちいずれか1つまたは少数を代表的に用いると計算が短時間で済む。例えば最もホームポジションの側のノズル列21fの位置情報を用いる。同様に、走査距離LBを算出する際には、印刷に使用する1つまたは複数のノズル列のうちいずれか1つまたは少数を代表的に用いると計算が短時間で済む。例えば印刷に使用するノズル列のうち最もホームポジション側のノズル列の位置情報を用いる。複数のノズル列を使用するときは、ノズル列間の距離の情報も計算に用いる。また、走査距離LA、走査距離LBを求める際には、使用するシート14のシート幅方向のサイズによって決まるプラテン上でのシート位置とインク受け11との距離の情報を反映することができる。また、使用するインク色毎にシートに記録される範囲が異なる場合がある。そこで、画像データに応じて画像形成に使用するインク色(ノズル列)ごと異なる記録範囲を設定して、走査距離LBを求めるようにしてもよい。
【0047】
以上の説明はあくまで一例であって、記録ヘッド20が備えるノズル列の数は、上述の例の数に限定されるものではない。複数のノズル列のうち1つまたは複数のいずれのノズル列を印刷に使用するかは、画像に含まれる色によって決まる。
【0048】
また、インク受け11の数は1つに限らず、シートの幅に応じて複数を設けた構成であってもよいし、シートの両側にインク受けを設けた構成であってもよい。また、予備吐出を伴う記録ヘッドの走査を連続して行う場合は、上述の方法で走査距離を決定した後、走査開始前または走査中に走査距離を延長すればよい。走査距離を延長することで、シートに対して反対側のインク受け上で、次回の走査で予備吐出を行うことができる。
【0049】
シート近傍のインク受け上での予備吐出、および近傍ではないインク受け上での予備吐出を、印刷の際に組み合わせて行う場合も同様である。近傍ではないインク受け上で予備吐出を行う場合は、図10のStep1および図11のStep11で、予備吐出を行わないようにしてもよい。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、シート上の記録領域の設定および複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに関わらず、記録のための記録ヘッドの往復移動においてすべてのノズル列の予備吐出を確実に行うことができる。これにより、画像品位の低下抑制とプリントスループット向上を高い次元で両立することができる。
【0051】
以上説明したように記録と予備吐出を並行して行う形態では、シート端部からインク受けまでの距離は非常に小さい。そのため、ある1走査において最先行のノズル列がインク受けの上に位置する際には、最後尾のノズル列はシート端部からおよそ最先行と最後尾の2つのノズル列の間の距離だけ離れた位置となる。一方、記録と予備吐出を並行して行わないとすると、ある1走査において最後尾のノズル列がインク受けの上に位置しても、最先行のノズル列は印刷領域にはまだ到達せずに印刷を行うことができない。この場合は、シート端部からインク受けまでの距離は、最先行と最後尾の2つのノズル列の間の距離よりも大きな距離(例えば、最先行と最後尾のノズル列の間の距離の2倍)だけ離れた位置関係となる。そのため、記録ヘッドの往復移動のストロークが増大することになる。
【0052】
例えば、最先行と最後尾の2つのノズル列の間の距離:1.6インチ、使用するシート:JIS規格のA4サイズ(シート幅8.3インチ)、シートの両端で予備吐出を行うものとする。記録ヘッドの往復移動における1走査の移動距離は、次の通り概算することができる。
【0053】
記録と予備吐出を並行して行う:8.3+1.6×2=11.5(インチ)
記録と予備吐出を並行して行わない:8.3+1.6×2×2=14.7(インチ)
このように本実施形態では、記録ヘッドの走査距離がおよそ22%短縮し、その分プリントスループットを向上させることができる。なお、本実施形態において、記録領域が狭い場合にもすべてのノズル列で予備吐ができるように走査距離を増やしたとしても、全体から見れば僅かな増加であって、これによるスループットの低下は無視できる程度である。
【符号の説明】
【0054】
10 プラテン
11 インク受け
12 インク受け
14 シート
20 記録ヘッド
21 ノズル列
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット方式の記録装置と記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクの吐出不良を防止するため予備吐出を行うことができるインクジェット記録装置の例が開示されている。記録ヘッドをシートから外れた非記録領域に移動させ、インク受けに予備吐出を行うことで、記録ヘッドの目詰まりや吐出不良を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−025026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリントスループットを向上させるため、画像記録のために往復移動する記録ヘッドの同一の走査の中で、シートへの記録と予備吐出を行うことが好ましい。記録ヘッドの走査において、シート上の記録領域に応じてヘッド走査方向を反転する反転位置を定めることで、記録ヘッドの移動距離をできるだけ短くすることが望まれる。
【0005】
しかし、シートへの記録領域の設定や記録に使用するノズル列の選択によっては、往復移動の際に記録ヘッドの複数のノズル列の一部がインク受けの上に到達できなくなる可能性がある。インク受けの上に到達できないノズル列は予備吐出を行うことができないので、インク吐出不良となって画像品位が低下する。
【0006】
本発明は、記録のための記録ヘッドの往復移動においてすべてのノズル列の予備吐出を確実に行うことができる手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて、前記シートに画像を記録する記録部と、前記記録ヘッドから前記シートの外側に予備吐出で吐出されるインクを受けるインク受けと、制御部と、を有し、前記制御部は、シート上の記録領域および前記複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記記録ヘッドが前記往復移動において反転する反転位置を設定することを特徴とする。
【0008】
本発明のインクジェット記録方法は、複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて、シートに画像を記録するステップと、前記複数のノズル列のそれぞれからインク受けに予備吐出を行うステップと、を有し、あるノズル列から予備吐出を行うのと並行して、前記あるノズル列とは別のノズル列から前記シートに記録することが含まれており、シート上の記録領域に拘わらず、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記往復移動の移動範囲を決められることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シート上の記録領域の設定および複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに関わらず、記録のための記録ヘッドの往復移動においてすべてのノズル列の予備吐出を確実に行うことができる。これにより、画像品位の低下抑制とプリントスループット向上を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例に係るインクジェット記録装置の記録部の構成図
【図2】制御部を中心とするシステム構成を示すブロック図
【図3】印刷と並行してインク受けへ予備吐出を行う様子を示す図
【図4】シート上に設定された記録領域に応じた往復移動の範囲を示す図
【図5】一部のノズル列の予備吐出を行えない場合の様子を示す図
【図6】記録ヘッドの移動範囲を求める手法を説明するための図
【図7】記録ヘッドの移動範囲を求める手法を説明するための図
【図8】インク受けに対する予備吐出の様子を示す図
【図9】記録ヘッドの移動範囲を求める手法を説明するための図
【図10】記録ヘッドの移動制御の手順を示すフローチャート
【図11】図10のフローチャートの一部ステップの詳細手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1はインクジェット記録装置の記録部の構成図であり、記録ヘッドが往復移動する範囲での各部材の位置関係を模式的に示したものである。記録ヘッド20は複数のノズル列を搭載するインクジェット記録ヘッドである。記録ヘッド20は、インクジェット方式でインクを吐出するノズル列21が複数(6色分のノズル列21a、21b、21c、21d、21e、21f)が矢印15の方向に沿って並べられている。記録ヘッド20はキャリッジに搭載されており、キャリッジは矢印15の方向に往復移動(双方向スキャン)する。ガイド13はキャリッジの移動をガイドする。記録ヘッド20は移動しながらシート14(記録媒体)に向けてインクを吐出し、シートの上に1バンド分の画像を記録(印刷)する。シート14は矢印16の方向に1バンド分ずつステップ送りで給紙され(副走査)、記録ヘッド20の矢印15の往復移動(主走査)と合わせて、シリアルプリント方式でシートに画像が形成される。
【0012】
プラテン10は、画像記録の際に記録ヘッド20がキャリッジによって往復移動する最大範囲(図中の17b)をカバーする範囲(図中の17a)に設けられており、プラテン10の支持面には、副走査で移動するシート14が保持される。図1の例ではシート14は17cで示すシート幅を有している。プラテン10の支持面には、インク受け11(インク滴回収部)が埋め込まれるように設けられている。インク受け11は、記録ヘッドの走査領域内に設けられ、17cの近傍に設けられている。記録ヘッド20を移動させながら、あるノズル列がインク受け11の上を通過するタイミングで、そのノズル列に含まれるインクノズルからインク受け11に向けて予備吐出を行う。予備吐出は1つのノズルから数発(例えば5発)のインク滴を吐出させる。記録ヘッド20が往復移動する際に1走査において印刷と予備吐出の両方を行うことができる。
【0013】
記録ヘッドが移動する方向において、インク受け11のさらに外側、ホームポジション(初期位置)の近くに、インク受け11よりも大きなインク受け12が設けられている。インク受け12は複数のノズル列すべてをカバーするサイズ(図中17dで示す範囲)を有し、インク受け12の上に記録ヘッド20が位置した状態で、すべてのノズル列から略同時に予備吐出させることができる。
【0014】
記録動作中に、このインク受け12へ記録ヘッド20を移動させて予備吐出することも可能である。しかし、インク受け12の位置まで記録ヘッド20を頻繁に移動させると、その移動時間がプリントスループットの低下の要因となる。そこで、なるべくインク受け12で予備吐出を行わず、インク受け11で予備吐出を行うことが好ましい。
【0015】
図2はインクジェット記録装置における制御部を中心とするシステム構成を示すブロック図である。記録ヘッド20に搭載された複数のノズル列21a、21b、21c、21d、21e、21fは各々独立したデータ転送信号線34a、ノズル列に共通な吐出タイミング信号線34b、データ転送用クロック線34cによって、吐出制御部30と接続されている。吐出制御部30は、印刷用データ生成部31、予備吐出用データ生成部32、データ転送・吐出タイミング生成部33と接続されている。
【0016】
キャリッジには記録ヘッド20と共にエンコーダセンサ22が取り付けられている。エンコーダセンサ22は、ガイド13と平行に取り付けられたコードストリップ18のコードを光学的に読み取る。読み取ったコードの信号は、エンコーダ信号線35にエンコーダ信号として送られて、データ転送・吐出タイミング生成部33へ記録ヘッドの位置情報として伝達される。データ転送・吐出タイミング生成部33は、エンコーダ信号を基にヘッドへのデータ転送タイミングおよびヘッドの吐出タイミングを生成する。生成された印刷データ(記録データ)と予備吐出データは吐出制御部30で統合し、ノズル列ごとに印刷データを転送する。また、エンコーダ信号に基づいてデータ転送・吐出タイミングを制御する。こうして、複数のノズル列で印刷と予備吐出を並行して動作させることが可能である。
【0017】
図3は、記録ヘッド20の1回の走査の中で、印刷とインク受け11へ予備吐出の両方を並行して行う手順を示す模式図である。記録ヘッド20はホームポジション側の走査開始位置(往復移動の一方の停止位置)からシート14の方向(白抜きの矢印方向)へ走査を開始する。図3(a)に示す状態は、走査で最も先行する左端のノズル列21aがインク受け11の真上に来た瞬間である。このタイミングでノズル列21aからインク受け11に向けて予備吐出を行う。このとき、他のノズル列21b〜21fはインク受け11の上に到達していないので予備吐出を行わない。次いで、ノズル列21bがインク受け11の真上に位置するタイミングでノズル列21bの予備吐出を行う。このときノズル列21aは予備吐出を終了している。
【0018】
図3(b)に示す状態では、ノズル列21cがインク受け11の上に位置し、且つ先行するノズル列21aはシート14の上の記録領域のホームポジション側の端部に位置している。このタイミングでは、3つめのノズル列21cが予備吐出するとともに、ノズル列21aはシート14に向けて記録のためにインクを吐出する。つまり、先行するノズル列で記録を行うと並行して後続のノズル列は予備吐出を行う。なお、本明細書において「並行して」とは、記録のためのインク吐出タイミングと別のノズルからの予備吐出のタイミングが略一致(完全一致または時間のオーバーラップを持って僅かなずれはあるが実質的に同じ)である形態に限定されない。オーバーラップなく短時間に順次行うようなタイミングである形態も「並行して」の意味に含まれるものとする。
【0019】
以降同様に、ノズル列21d、21e、21fの順にインク受け11上で予備吐出すると並行して、シート14の記録領域に到達した先行するノズル列はインクを吐出して印刷を行う。図3(c)に示す状態では、先行するノズル列21a〜21dが印刷を行うと並行して、最も遅れたノズル列21fが予備吐出を行う。図3(d)に示す状態では、予備吐出を終えたすべてのノズル列がシート14の上に位置している。記録ヘッド20を記録領域をカバーする範囲で走査しながら、すべてのノズル列21a〜21fを用いて1バンドの印刷を完成させる。記録ヘッドが往復移動の反転位置まで来たら、記録ヘッド20の移動方向が反転する。1バンドの副走査の後に記録ヘッド20は走査開始位置まで戻る。以降、同様に往復動を繰り返して画像を形成していく。
【0020】
図4は、シート上に設定される記録領域に応じて記録ヘッド20の往復移動の範囲(走査の反転位置)が変化する様子を示す模式図である。図中、40a、40bは印刷によりシート14に記録が行われる記録領域を表し、41a、41bは記録ヘッド20がシート上を走査する軌跡(主走査と副走査によってなされるシート面に対する2次元の軌跡)を表す。図4(a)に示すように記録領域40aがシート14の全面の広い領域として設定されている場合は、記録ヘッドは大きな往復移動ストロークとなり、軌跡41aもシート14のシート幅方向の両側端部を通過する。
【0021】
これに対して図4(b)に示すように、記録領域40bがホームポジション側の端部近傍の狭い領域として設定されている場合は、記録ヘッドは小さな往復移動ストロークとなり、記録ヘッド20の軌跡41bはシート14のホームポジション側の端部のみ通過する。このように記録領域のサイズおよび設定される場所に応じて、記録ヘッドの往復移動における最適な反転位置を設定する。ここでいう反転位置は、ホームポジションまたはインク受け11から遠い側の反転位置であり、ホームポジションに近い側の反転位置(走査開始位置)は繰り返しの往復移動において一定である。こうして、記録領域の設定に応じた往復移動ストロークとすることで、記録に要する時間を短縮するすなわちプリントスループットを向上させることができる。
【0022】
図4(b)のように、記録領域40bがホームポジション側に偏って小さい、すなわち記録ヘッドの移動ストロークもシート幅方向において小さい場合には、以下に説明する現象が起きる可能性がある。これが本実施形態において着目する課題である。
【0023】
図5は、図4(b)記録領域の設定における記録ヘッドの移動の様子を示す模式図である。記録領域はシートのホームポジション側の端部近傍の狭いエリアに設定されている。この例では、記録領域への印刷に使用するのはノズル列21a(1つの色、例えばブラック)だけで、他のノズル列21b〜21f(他の色)は印刷には用いないものとする。なお、これはあくまで一例であって、複数のノズル列のうち、1つまたは複数のいずれのノズル列を印刷に使用するかは、画像に含まれる色によって決まる。
【0024】
図5(a)に示す状態では、先行するノズル列21aを用いた印刷と並行して、インク受け11上でノズル列21cから予備吐出を行う。ノズル列21aが記録領域の左端(ホームポジションから遠い側の端部)まで移動して記録領域への印刷が終了したら、記録ヘッド20の走査を停止させる。図5(b)は走査を停止させた状態であり、ここが往復移動の反転位置になる。この状態では、ノズル列21dがインク受け11の上に位置し予備吐出が必要であるにもかかわらず、ヘッド走査に伴うエンコーダ信号がデータ転送・吐出タイミング生成部33に入力されず、ノズル列21dの予備吐出を行うことができない。さらに後続のノズル列21e、21fはインク受け11上に到達することすらできないため、予備吐出を行うことができない。
【0025】
プラテンを基準として見たとき、プラテン10に沿って記録領域のホームポジションから遠い側の端部位置がホームポジションに近くなるほど、この現象は起きやすくなる。使用するシートのシート幅方向のサイズ(プラテン上でシートが通過する位置)が変わると現象の起きやすさも変わり得る。また、複数のノズル列21a〜21fのうちいずれのノズル列を記録に使用するかによって、現象は起きやすさは変わる。使用する複数のノズルの間隔によっても現象の起きやすさは異なる。
【0026】
本実施形態は以上の課題に鑑みてなされたものである。基本的には、シート上の記録領域の設定および複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、往復移動での1走査の際に複数のノズル列の全てがインク受け11の上を通過するように、記録ヘッド20が往復移動において反転する反転位置を決める。制御部は、予備吐出で必要とする記録ヘッド20の走査距離、および印刷で必要とする記録ヘッド20の走査距離をそれぞれ求め、長い方の距離に基づいて記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における反転位置)を設定する。
【0027】
より具体的には、制御部は、記録ヘッド20が走査開始位置にあるときの記録に使用するノズル列のうち最もインク受け11から離れているノズル列の位置から、記録領域の端部位置(インク受け11から遠い側)までの距離(第1の走査距離)を求める。また、記録部は、記録ヘッド20が走査開始位置にあるときの複数のノズル列のうち最もインク受け11から離れているノズル列の位置から、インク受け11までの距離(第2の走査距離)を求める。そして制御部は、第1の走査距離と第2の走査距離の大小関係を比較し、大きい方の距離に基づいて往復移動における反転位置(ホームポジションから離れた側)を決めて設定する。
【0028】
ここで、記録領域の端部位置(インク受け11から遠い側)は、印刷する画像の大きさ、印刷する画像のシート上でのレイアウトなどの情報に基づいて求めることができる。これらは、制御部のメモリに記憶される記録ための画像データ、レイアウト情報、使用するシートのサイズ等に基づいて知ることができる。
【0029】
この制御により、往復移動での1走査の際にノズル列21a〜21fの全てがインク受け11の上を通過する。したがって、すべてのノズル列がインク受け11に対して予備吐出を行うことができる。
【0030】
次のような別の方法を採用してもよい。制御部は、インク受け11から記録領域のインク受け11から遠い側の端部位置までの距離(第1の距離)を求める。また、複数のノズル列の中で最もホームポジション側のノズル列と、記録に使用するノズル列のうち最もホームポジションから遠いノズルとの間の距離(第2の距離)を求める。そして、第1の距離と第2の距離を比較する。第1の距離が第2の距離よりも小さい場合には、記録に必要な移動距離を増やして、複数のノズル列の最もホームポジション側のノズル列がインク受けの上に移動するように、反転位置を決めて設定する。
【0031】
図6は、すべてのノズル列を用いて広い記録領域に印刷し、且つ予備吐出を行う場合(図3、図4(a)参照)における、記録ヘッドの移動範囲(往復移動の反転位置)の求め方を説明するための図である。図6の横軸は時間スケールであり、右から左へ時間が経過する。
【0032】
56aは記録ヘッド20の走査開始位置で移動を開始するときの時間、56cは記録ヘッド20の走査終了位置(反転位置)に移動したときの時間である。区間50aは最も先行するノズル列21aが予備吐出を行う時間幅を示す予備吐出区間であり、区間51aは同じノズル列21aがシートの上に印刷を行う時間幅を示す印刷区間である。同様に、区間50b〜50f、区間51b〜51fは、それぞれノズル列21b〜21fの予備吐出区間および印刷区間を表す。ここで、区間50aの開始タイミング(区間の右端)と区間51aの開始タイミング(区間の右端)との間の距離は、ノズル列21aから吐出されるインクで記録される画像領域の右端の位置(走査方向上流側の位置)からインク受け11までの距離に対応する。区間51aの時間幅は、ノズル列21aから吐出されるインクで記録される画像領域の走査方向における画像サイズに対応する。この関係は他のノズル列における区間についても同様である。
【0033】
少なくとも最後のノズル列21fが区間50fにおいて予備吐出を終える位置(時間56b)まで記録ヘッド20を走査すれば、すべてのノズル列21a〜21fがインク受けの上を通過して予備吐出を行うことができる。予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間53に対応)は、走査開始位置(時間56a)からノズル列21fがインク受け11に到達し予備吐出を開始するまでの距離(期間55a)と、ノズル列21fが予備吐出を行う区間50fの距離(期間55bに対応)との和である。この後、最後のノズル列21fが印刷を終える位置(時間56c)まで記録ヘッドを走査することにより、すべてのノズル列21a〜21fで画像領域に印刷を終えることができる。印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間54aに対応)は、走査開始位置(時間56a)とノズル列21fの印刷終了位置(時間56c)の間の距離(期間)である。
【0034】
制御部は、予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間53に対応)と、印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間54aに対応)とを比較する。そして、長い方の距離に応じた距離だけ記録ヘッド20を走査させるよう制御する。図6の例では、期間54aに対応した距離の方が長い。制御部は記録ヘッド20を少なくとも期間54aに対応した距離だけ走査させるよう、記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における走査反転位置)を設定する。こうして、すべてのノズル列21a〜21fによる予備吐出と印刷を行うことができる。
【0035】
予備吐出に必要な走査距離と印刷に必要な走査距離はそれぞれ、加速や減速のための距離やノズル列毎の位置調整などを考慮したマージンを考慮することが好ましい。マージンを付加することにより、印刷および予備吐出で必要とするエンコーダ信号が確実にデータ転送・吐出タイミング生成部33に入力され、印刷と予備吐出の信頼性を向上させることができる。
【0036】
図7は、記録領域がシート端部近傍の狭い領域であり、且つ記録にはノズル列21aのみ使用して他のノズル列21b〜21fは使用しない場合(図5、図4(b)参照)の例を示す。図6と同様、図7の横軸は時間スケールであり、右から左へ時間が経過する。予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間53に対応)は、図6の場合と同様に求めることができる。
【0037】
一方、図7において印刷を行う区間は、印刷に用いるノズル列21aの印刷区間51gのみである。印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間54bに対応)は、走査開始位置(時間56a)と、ノズル列21aの印刷終了位置(時間56d)との間の距離(期間)となる。
【0038】
制御部は、予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離と、印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離を比較する。図7の例では、先の図6とは逆に前者の走査距離の方が長い。制御部は記録ヘッド20を少なくとも期間53に対応した距離だけ走査させるよう、記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における走査反転位置)を設定する。こうして、すべてのノズル列21a〜21fがインク受けの上を通過して予備吐出を行うことができ、且つノズル列21aによるシート端部への印刷を完成させることができる。
【0039】
図8は、図7の方法で制御したときの動作の様子を示す模式図である。図8(a)の状態では、図5(a)と同様にノズル列21aの印刷と並行して、インク受け11上でノズル列21cの予備吐出を行う。図5の例と違って、ノズル列21aの印刷が済んだ後も記録ヘッド20の移動を継続させる。図8(b)に示す位置では、ノズル列21dの予備吐出を行うことができる。図8(c)に示す位置まで記録ヘッド20を移動させながら、各ノズル列がインク受け11の上を通過するごとに予備吐出を行う。図8(c)の位置が反転位置であり、記録ヘッド20の移動方向が反転する。1バンドの副走査の後に記録ヘッド20は走査開始位置まで戻る。戻る際にも記録および各ノズル列から予備吐出を行うようにしてもよい。以降、同様に往復動を繰り返して記録領域に画像を形成していく。
【0040】
なお、1枚のシートに図4(a)、図4(b)のような記録領域が混在するケースも考えられる。この場合は、シート上の場所に応じて記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における走査反転位置)を異ならせるように設定すればよい。
【0041】
以上の例では、記録ヘッド20が往復動作を繰り返すごとに、毎回予備吐出を行うものであるが、必ずしも毎回行わなくてもよい。例えば、印刷累積時間や記録ヘッドの走査回数に応じて、所定回数の走査に一度、予備吐出を行うようにしてもよい。
【0042】
図9は、予備吐出を伴わずに記録する場合の記録ヘッドの移動範囲の求め方を説明するための図である。印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離(期間54cに対応)は、走査開始位置(時間56eに対応)とノズル列21fの印刷終了位置(時間56cに対応)の間の距離である。制御部は記録ヘッド20を少なくとも期間54cに対応した距離だけ走査させるよう、記録ヘッド20の移動範囲(往復移動における走査反転位置)を設定する。
【0043】
このケースでは、予備吐出を行わないため、記録ヘッド走査開始位置(時間56e)を、図6の記録ヘッド走査開始位置(時間56a)よりも、ノズル列21aの印刷区間51aに近づけることができる。そのため、記録ヘッドの走査距離を短縮し、プリントスループットをより向上させることができる。なお、予備吐出を伴わずに図4(b)のような狭い記録領域に記録する場合には、走査距離は、図7において予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離は考慮する必要はなく、期間54bの短い走査距離で済む。
【0044】
図10および図11は、これまで説明した手順による移動制御のシーケンスを示すフローチャートである。図10において、Step1では記録ヘッド走査で予備吐出を行うかどうか判定する。予備吐出を行う場合(判断がYes)はStep2に移行する。Step2では、予備吐出で必要とする記録ヘッドの走査距離LAを前述の方法で算出して取得する。予備吐出を行わない場合(Step1の判断がNo)は、Step2をスキップしてStep3に移行する。Step3では、印刷で必要とする記録ヘッドの走査距離LBを前述の方法で算出して取得する。Step4では、記録ヘッドの走査距離を判定して走査を開始する。
【0045】
図11はStep4の詳細手順を示すサブルーチン(サブ1)のフローチャートである。Step11で、記録ヘッド走査で予備吐出を行うかどうか判定する。予備吐出を行う場合(判断がYes)はStep12に移行する。Step12では、LAとLBの大小関係を比較する。LAがLBよりも大きい場合(判断がYes)は、Step13に移行する。Step13では、走査距離をLAと設定し、設定した走査距離に基づいて記録ヘッドの走査を行う。一方、LAがLB以下の場合(Step12の判断がNo)は、Step14に移行する。Step14では、走査距離をLBと設定し、設定した走査距離に基づいて記録ヘッドの走査を行う。なお、Step11の判断で予備吐出を行わない場合(判断がNo)は、Step14に移行して、走査距離をLBと設定して走査を行う。
【0046】
走査距離LAを算出する際には、予備吐出を行う複数のノズル列のうちいずれか1つまたは少数を代表的に用いると計算が短時間で済む。例えば最もホームポジションの側のノズル列21fの位置情報を用いる。同様に、走査距離LBを算出する際には、印刷に使用する1つまたは複数のノズル列のうちいずれか1つまたは少数を代表的に用いると計算が短時間で済む。例えば印刷に使用するノズル列のうち最もホームポジション側のノズル列の位置情報を用いる。複数のノズル列を使用するときは、ノズル列間の距離の情報も計算に用いる。また、走査距離LA、走査距離LBを求める際には、使用するシート14のシート幅方向のサイズによって決まるプラテン上でのシート位置とインク受け11との距離の情報を反映することができる。また、使用するインク色毎にシートに記録される範囲が異なる場合がある。そこで、画像データに応じて画像形成に使用するインク色(ノズル列)ごと異なる記録範囲を設定して、走査距離LBを求めるようにしてもよい。
【0047】
以上の説明はあくまで一例であって、記録ヘッド20が備えるノズル列の数は、上述の例の数に限定されるものではない。複数のノズル列のうち1つまたは複数のいずれのノズル列を印刷に使用するかは、画像に含まれる色によって決まる。
【0048】
また、インク受け11の数は1つに限らず、シートの幅に応じて複数を設けた構成であってもよいし、シートの両側にインク受けを設けた構成であってもよい。また、予備吐出を伴う記録ヘッドの走査を連続して行う場合は、上述の方法で走査距離を決定した後、走査開始前または走査中に走査距離を延長すればよい。走査距離を延長することで、シートに対して反対側のインク受け上で、次回の走査で予備吐出を行うことができる。
【0049】
シート近傍のインク受け上での予備吐出、および近傍ではないインク受け上での予備吐出を、印刷の際に組み合わせて行う場合も同様である。近傍ではないインク受け上で予備吐出を行う場合は、図10のStep1および図11のStep11で、予備吐出を行わないようにしてもよい。
【0050】
以上説明した実施形態によれば、シート上の記録領域の設定および複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに関わらず、記録のための記録ヘッドの往復移動においてすべてのノズル列の予備吐出を確実に行うことができる。これにより、画像品位の低下抑制とプリントスループット向上を高い次元で両立することができる。
【0051】
以上説明したように記録と予備吐出を並行して行う形態では、シート端部からインク受けまでの距離は非常に小さい。そのため、ある1走査において最先行のノズル列がインク受けの上に位置する際には、最後尾のノズル列はシート端部からおよそ最先行と最後尾の2つのノズル列の間の距離だけ離れた位置となる。一方、記録と予備吐出を並行して行わないとすると、ある1走査において最後尾のノズル列がインク受けの上に位置しても、最先行のノズル列は印刷領域にはまだ到達せずに印刷を行うことができない。この場合は、シート端部からインク受けまでの距離は、最先行と最後尾の2つのノズル列の間の距離よりも大きな距離(例えば、最先行と最後尾のノズル列の間の距離の2倍)だけ離れた位置関係となる。そのため、記録ヘッドの往復移動のストロークが増大することになる。
【0052】
例えば、最先行と最後尾の2つのノズル列の間の距離:1.6インチ、使用するシート:JIS規格のA4サイズ(シート幅8.3インチ)、シートの両端で予備吐出を行うものとする。記録ヘッドの往復移動における1走査の移動距離は、次の通り概算することができる。
【0053】
記録と予備吐出を並行して行う:8.3+1.6×2=11.5(インチ)
記録と予備吐出を並行して行わない:8.3+1.6×2×2=14.7(インチ)
このように本実施形態では、記録ヘッドの走査距離がおよそ22%短縮し、その分プリントスループットを向上させることができる。なお、本実施形態において、記録領域が狭い場合にもすべてのノズル列で予備吐ができるように走査距離を増やしたとしても、全体から見れば僅かな増加であって、これによるスループットの低下は無視できる程度である。
【符号の説明】
【0054】
10 プラテン
11 インク受け
12 インク受け
14 シート
20 記録ヘッド
21 ノズル列
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて、前記シートに画像を記録する記録部と、
前記記録ヘッドから前記シートの外側に予備吐出で吐出されるインクを受けるインク受けと、
制御部と、
を有し、前記制御部は、シート上の記録領域および前記複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記記録ヘッドが前記往復移動において反転する反転位置を設定することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記方向において前記記録領域の前記インク受けから遠い側の端部位置、および前記複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、前記反転位置を決めることを特徴とする、請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記記録ヘッドが走査開始位置にあるときの記録に使用するノズル列のうち最も前記インク受けから離れているノズル列の位置から前記端部位置までの第1の距離と、前記記録ヘッドが走査開始位置にあるときの前記複数のノズル列のうち最も前記インク受けから離れているノズル列の位置から前記インク受けまでの第2の距離のうち、大きい方の距離に基づいて、前記反転位置を決めることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記方向において、前記インク受けから前記記録領域の前記インク受けから遠い側の端部位置までの第1の距離が、前記複数のノズル列の中で最もホームポジション側のノズル列と記録に使用するノズル列のうち最もホームポジションから遠いノズルとの第2の距離よりも小さい場合には、前記最もホームポジション側のノズル列が前記インク受けの上に移動するように、前記反転位置を決めることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記複数のノズル列のうち、あるノズル列から予備吐出を行うのと並行して、前記あるノズル列とは別のノズル列から前記シートに記録することが可能であることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記1走査の際に予備吐出を行うか否かに応じて、前記反転位置を決めることを特徴とする、請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドが往復移動する範囲をカバーする範囲に設けられたプラテンをさらに有し、前記インク受けは前記プラテンに設けられていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて、シートに画像を記録するステップと、
前記複数のノズル列のそれぞれからインク受けに予備吐出を行うステップと、
を有し、あるノズル列から予備吐出を行うのと並行して、前記あるノズル列とは別のノズル列から前記シートに記録することが含まれており、
シート上の記録領域に拘わらず、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記往復移動の移動範囲を決められることを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項1】
複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて、前記シートに画像を記録する記録部と、
前記記録ヘッドから前記シートの外側に予備吐出で吐出されるインクを受けるインク受けと、
制御部と、
を有し、前記制御部は、シート上の記録領域および前記複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記記録ヘッドが前記往復移動において反転する反転位置を設定することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記方向において前記記録領域の前記インク受けから遠い側の端部位置、および前記複数のノズル列のうちいずれを記録に使用するかに応じて、前記反転位置を決めることを特徴とする、請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記記録ヘッドが走査開始位置にあるときの記録に使用するノズル列のうち最も前記インク受けから離れているノズル列の位置から前記端部位置までの第1の距離と、前記記録ヘッドが走査開始位置にあるときの前記複数のノズル列のうち最も前記インク受けから離れているノズル列の位置から前記インク受けまでの第2の距離のうち、大きい方の距離に基づいて、前記反転位置を決めることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記方向において、前記インク受けから前記記録領域の前記インク受けから遠い側の端部位置までの第1の距離が、前記複数のノズル列の中で最もホームポジション側のノズル列と記録に使用するノズル列のうち最もホームポジションから遠いノズルとの第2の距離よりも小さい場合には、前記最もホームポジション側のノズル列が前記インク受けの上に移動するように、前記反転位置を決めることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記複数のノズル列のうち、あるノズル列から予備吐出を行うのと並行して、前記あるノズル列とは別のノズル列から前記シートに記録することが可能であることを特徴とする、請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記1走査の際に予備吐出を行うか否かに応じて、前記反転位置を決めることを特徴とする、請求項5記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドが往復移動する範囲をカバーする範囲に設けられたプラテンをさらに有し、前記インク受けは前記プラテンに設けられていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
複数のノズル列を備える記録ヘッドを、シートに面に沿って前記複数のノズル列が並べられる方向に往復移動させて、シートに画像を記録するステップと、
前記複数のノズル列のそれぞれからインク受けに予備吐出を行うステップと、
を有し、あるノズル列から予備吐出を行うのと並行して、前記あるノズル列とは別のノズル列から前記シートに記録することが含まれており、
シート上の記録領域に拘わらず、前記往復移動での1走査の際に前記複数のノズル列の全てが前記インク受けの上を通過するように、前記往復移動の移動範囲を決められることを特徴とするインクジェット記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−61845(P2012−61845A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150904(P2011−150904)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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