説明

インクジェット記録装置および校正方法

【課題】インクジェット記録装置において、記録特性の校正に用いる測定用画像の乾燥後に測定を始めるまでの待機時間を必要最小限にしつつ、測定用画像の色が安定した状態で測定する。
【解決手段】インク種類の情報とインク打込み量情報に基づいて、待機時間参照テーブルAを参照し待機時間Tsを決定する(ステップ6)。これとともに、乾燥後の記録用紙を待機エリア9まで搬送して停止させ(ステップ7)、停止させてからの時間Tを計時し、この時間Tが待機時間Tsに達するまで次の工程の測定処理を待機する。そして、待機時間Tsに達すると、測定器10を用いて記録用紙に記録されたパッチの濃度を測定する(ステップ8、9)。これにより、記録ヘッドを校正する際に、乾燥後測定までの待機時間に過不足がない状態で校正を行うことができる。これにより、待機時間を必要最小限にしつつ、測定用画像の色が安定した状態で測定することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置および校正方法に関し、詳しくは、インクで記録された画像の色ないし濃度を測定し、その測定結果に基づいて記録装置における記録特性の校正(キャリブレーション)を行う際の画像測定に係わる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
校正を行う際、先ず測定用のパッチを記録する。このパッチが記録された記録用紙は、記録直後の状態と定着した後の状態とでは、記録用紙に吐出されたインクによって記録用紙の含水量が比較的大きく異なり、それによって色が大きく異なることがある。このため、校正では、記録用紙の最終的な状態すなわち記録用紙を乾燥させて色が安定した状態で測定を行うことが望ましい。その際に、自然乾燥を行うと時間がかかるため、例えば、高温の空気を記録用紙に吹き付ける機構、輻射加熱機構、伝導加熱機構等の強制的な乾燥機構を用いることが多い。
【0003】
しかし、そのような強制的な乾燥機構により記録用紙の乾燥を行う場合、乾燥処理を終えた直後は記録用紙の温度が高い。このため、この高い温度が雰囲気温度まで低下したり、記録用紙の含水量が雰囲気の平衡量になるまで変化したりするのに伴い、測定用画像の色(色調や濃度)も変化する。その結果、この色が変化している途中では測定する時期によって測定値が異なるという問題がある。
【0004】
この問題に対して、特許文献1には、定着装置により記録用紙に色材を定着させてから測定するまでの間に待機時間を設けることが記載されている。これにより、色が充分安定した状態で記録した画像を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−268589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、色が安定するまでに必要な時間は、測定用画像を記録したインクの種類やインクの量によって異なることが多い。図1(a)は、インクの種類ごとの、乾燥処理後の経過時間と色の安定度との関係を示す図である。ここで、色の安定度は、24時間経過後の色を基準としてその基準の色との色差で表しており。色差が小さいほど色が安定していることを示している。また、図1(b)は、測定用画像を記録するのに使用したインク量(打ち込み量)ごとの、同様の乾燥処理後の経過時間と色の安定度との関係を示す図である。これらの図に示すように、乾燥後に色が安定するまでの時間は、インク種やインクの打ち込み量によっても異なる。このため、インクの種類やインクの打ち込み量などの条件によらず、一律の待機時間を設定すると、条件によっては過剰な待機時間を確保することになり、強制乾燥による時間短縮の効果が削減されることになる。あるいは、一律の待機時間を設定すると待機時間が不十分な状態で測定することがあり、この場合は、測定した色が安定した後の色と異なり、結果として、測定結果に基づく校正がそのときの記録特性を反映したものにならない。
【0007】
本発明は、記録特性の校正に用いる測定用画像の乾燥後に測定を始めるまでの待機時間を必要最小限にしつつ、測定用画像の色が安定した状態で測定することが可能なインクジェット記録装置および校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明では、インクを吐出する記録ヘッドを用い記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、記録ヘッドによって記録された測定用画像が記録された記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、前記乾燥手段によって乾燥された記録媒体における測定用画像の測定を行う測定手段と、前記乾燥手段によって乾燥された記録媒体の測定用画像に対して前記測定手段による測定を開始するまでの時間を、測定用画像を記録したときの記録情報に応じて可変に設定する制御手段と、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、記録特性の校正に用いる測定用画像の乾燥後に測定を始めるまでの待機時間を必要最小限にしつつ、測定用画像の色が安定した状態で測定をおこなうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は、インクの種類ごとの、乾燥処理後の経過時間と色の安定度との関係を示す図であり、(b)は、測定用画像を記録するのに使用したインク量(打ち込み量)ごとの、同様の乾燥処理後の経過時間と色の安定度との関係を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示すインクジェット記録装置の記録用紙の搬送方向に沿った断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の校正における校正用画像の記録からその測定結果に基づく校正までの一連の処理を示すフローチャートである。
【図5】(a)は、第1実施形態で用いる校正用画像を示す図であり、(b)は、インクの種類(ステップ1で選択した校正の対象となる記録ヘッドの情報)とパッチを記録する際のインク打込み量(パッチの濃度情報)に応じて待機時間Tsを定めた「待機時間テーブルA」を示す図である。
【図6】(a)は、本発明の第2の実施形態に係る、2つの記録ヘッドの校正を同時に行う際の校正用画像を示す図であり、(b)は、4つの記録ヘッドを同時に校正する場合の校正用画像を示す図である。
【図7】(a)は、本発明の第3の実施形態に係る、1次色に係るモード1の校正用画像を示す図であり、(b)は、2次色以上に係るモード2の校正用画像を示す図である。
【図8】(a)は、モード2の校正処理で用いる、インク打ち込み量ごとの待機時間を表したテーブル(「待機時間テーブルB」)を示す図であり、(b)は、上記校正モードごとの待機時間を規定した「モード別待機時間テーブル」を示す図である。
【図9】第3の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【図10】第3の実施形態に係る、記録用紙の種類情報に基づいて校正モードを選択するための用紙別モードテーブルを示す図である。
【図11】第3の実施形態の校正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。また、図3は、図2に示すインクジェット記録装置の記録用紙の搬送方向に沿った断面図である。図2および図3において、記録装置1において通常の記録を行う場合は、給紙トレー4から給紙された記録媒体としての記録用紙3は、その搬送路の上下に複数配置された搬送ローラ5の回転によって搬送される。この搬送によって、記録用紙3に対して、記録ヘッド2の記録部による記録および乾燥処理部6による乾燥が行われ、その後排紙トレー11に排紙される。
【0013】
記録装置1では、以上説明した通常の記録とは別に、記録ヘッド2から吐出されるインクによって記録される画像の色や濃度などの記録特性を適正に維持するために、ヘッド制御パラメータに関する校正(キャリブレーション)を行う。この校正では、記録ヘッド2によって校正用の画像を記録する。そして、この校正用画像を記録した記録用紙を、乾燥処理部6によって乾燥し、その後、搬送路上の待機エリア9で、図4およびそれ以降の図で後述される待機時間だけ待機させる。待機時間は可変に設定される。この待機の後、測定器10による測定を行い、排紙トレーに排紙する。
【0014】
記録ヘッド2は、4色のインク(C=シアン、M=マゼンタ、Y=イエロー、K=ブラック)を吐出する記録ヘッド2C、2M、2Y、2Kの4つで構成されている。これらの記録ヘッドは、いわゆるフルラインタイプの記録ヘッドであり、搬送される記録用紙の幅全体にわたってノズルを配列したものである。なお、本発明を実施する上で、記録ヘッドの型式やインクの色数および種類は上例に限られないことはもちろんである。乾燥処理部6には、その搬送路の上方にヒータ7およびそれによって加熱された気流を送るためのファン8が設けられている。測定器10は、記録用紙の記録面と対向する位置に設けたラインセンサを備え、このラインセンサを記録用紙の搬送方向に相対移動させながら測定を行う。
【0015】
以上説明した記録装置における各種動作およびデータ処理は、制御部12によって制御される。すなわち、制御部12は、メモリ13に記憶された、図4などで後述する処理などのプログラムに従い上記動作や処理を実行する。
【0016】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態は、校正用画像を記録ヘッド2C、2M、2Y、2Kそれぞれによる1次色で記録し、その測定結果に基づいてそれぞれの記録ヘッドに対応するヘッド制御パラメータを設定ないし変更する形態に関する。
【0017】
図4は、本実施形態の校正における校正用画像の記録からその測定結果に基づく校正までの一連の処理を示すフローチャートである。以下では、説明を簡略化するため、1つの記録ヘッド2Cに関する校正を行う場合の処理を説明する。
【0018】
図4において、先ず、校正する記録ヘッドを選択する(ステップ1)。続いて、給紙トレー4から記録用紙3を給紙する(ステップ2)。給紙された記録用紙3は搬送ローラー5により搬送され、シアンインクを吐出する記録ヘッド2Cを用いて1次色の校正用画像を記録する(ステップ3)。
【0019】
図5(a)は、本実施形態で用いる校正用画像を示す図である。図5(a)に示すように、校正用画像は、記録ヘッドごとに記録されるパッチからなる。このパッチは、記録用紙の種類やオペレータによる設定に応じて定められるインク打込み量(濃度)で記録される。ステップ3の校正用画像の記録に続いて、校正の対象である記録ヘッドを特定する情報(2C)と、パッチを記録したときのインク打込み量の情報を、メモリ13に格納する(ステップ4)。次に、校正用画像が記録された記録用紙を乾燥処理部6まで搬送して強制乾燥させる(ステップ5)。
【0020】
上記ステップ5の乾燥処理が終了した段階で、測定用画像が記録された記録用紙の含水量W1は乾燥処理部の外の雰囲気湿度における平衡含水量W0より少ない状態になっている。そして、この状態の記録用紙は、乾燥処理部から出た直後から雰囲気中の湿気を吸うことにより含水量が増え、これに伴い記録用紙におけるパッチの色もしくは濃度が変化する。これに対して、次のステップ6以降で、待機時間Tsを決定しその時間だけ次の工程の測定処理の開始を待機する。
【0021】
本実施形態では、色が安定するのに必要な時間がインクの種類とインクの記録媒体に対する打ち込み量によって異なるという観点から、校正用画像を記録するときの記録情報(インクの種類とインクの打込み量)に応じて、上記安定する時間として待機時間Tsを可変に定めて設定する。
【0022】
図5(b)は、インクの種類(ステップ1で選択した校正の対象となる記録ヘッドの情報)とパッチを記録する際のインク打込み量(パッチの濃度情報)に応じて待機時間Tsを定めた「待機時間テーブルA」を示す図である。なお、「インク打ち込み量」は、吐出によって記録用紙の単位面積当たりに着弾するインクの量として表され、実際の打ち込み量情報は、パッチを記録する濃度情報が用いられる。すなわち、この濃度情報が最終的に2値データとなってこれに応じてインク吐出がなされるときの、上記単位面積当りの吐出数(×1つのインク滴の量)が上記インク打ち込み量となる。図5(b)に示すように、例えば、インク打ち込み量が同じ6[g/m2]でも、C、M、Y、Kインクの待機時間はそれぞれ10秒、60秒、10秒、20秒となって、相互に異なることが分かる。なお、図5(b)に示すインクの種類に応じた、インク打ち込み量に対する待機時間の関係は一例を示すものであり、この例に限られない。待機時間は、インクの特性や校正用画像を記録する記録媒体の種類に応じて、可変に設定するようにしてもよい。
【0023】
再び図4を参照すると、ステップ5の乾燥処理に続き、ステップ6で、制御部12はメモリ13に記憶したインク種類の情報(選択した記録ヘッドの情報)とインク打込み量情報に基づいて、待機時間参照テーブルAを参照し待機時間Tsを決定する。これとともに、乾燥後の記録用紙を待機エリア9まで搬送して停止させ(ステップ7)、停止させてからの時間Tを計時し、この時間Tが待機時間Tsに達するまで次の工程の測定処理を待機する。そして、待機時間Tsに達すると、搬送ローラを再び回転させ記録用紙を再び搬送して測定器10の位置まで搬送する(ステップ8)。
【0024】
次に、測定器10を用いて記録用紙に記録されたパッチの濃度を測定する(ステップ9)。そして、ステップ9で得た測定結果に基づき、制御部12は、通常の記録時の記録濃度が予め決められた適正な濃度範囲に収まるように、記録ヘッド2の制御パラメータの生成もしくは再設定を行う(ステップ10)。このステップ10で、再設定などを行う記録ヘッドの制御パラメータの例としては、インクを吐出する際にエネルギー発生素子に印加するパルスのエネルギーや記録ヘッドの制御温度等のパラメータがある。また、濃度特性を校正する別の形態として、記録する画像の画像データに対するγ補正などの画像処理のパラメータを生成ないし変更するものがある。例えば、測定の結果が理想の濃度範囲より低い場合には画像データの濃度を上げるように画像処理パラメータを生成ないし変更する。なお、本発明は、校正の形態によって限定されないことはもちろんである。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、校正対象の1つの記録ヘッドを校正する際に、乾燥後測定までの待機時間に過不足がない状態で校正を行うことができる。これにより、待機時間を必要最小限にしつつ、測定用画像の色が安定した状態で測定することが可能となる。
【0026】
(実施形態2)
上述した第1の実施形態は、1回の校正処理で1つの記録ヘッドについて校正する形態であるが、本発明の第2の実施形態は、1回の校正処理で複数の記録ヘッドに関する校正を行うものである。以下の説明では、記録ヘッド2Cと記録ヘッド2Yそれぞれによる濃度特性を同時に校正する例について説明する。
【0027】
図6(a)は、記録ヘッド2Cと記録ヘッド2Yの校正を同時に行う際の校正用画像を示す図である。図6(a)に示すように、同一の記録用紙に記録ヘッド2C、2Yでパッチを記録することにより、記録後の乾燥処理、および測定等の一連の処理を1回で行うことができる。ここで、一連の処理は一部を除いて上述した第1の実施形態と同様であり、異なる点は待機時間の決定方法である。
【0028】
前述した通り、乾燥させてから色が安定するまでに要する時間は、インクの種類やインク打込み量などの条件によって異なるので、同時に複数の処理を行う際には最も長く時間のかかる条件に合わせて待機する。例えば、記録ヘッド2Cで打込み量12[g/m2]と、記録ヘッド2Yで打込み量12[g/m2]の条件でそれぞれのパッチを記録する場合、図5(b)に示す待機時間参照テーブルAによれば、待機時間はそれぞれ10秒と20秒となる。このため、待機時間Tsは両者を比較して長いほうの20秒に決定する。
【0029】
なお、同時に校正する記録ヘッドの数はいくつでもよく、例えば記録装置に搭載する総ての記録ヘッドを同時に校正しても良い。図6(b)は、4つの記録ヘッドを同時に校正する場合の校正用画像を示す図である。図6(b)において、4つの記録ヘッドそれぞれのパッチは記録ヘッド(インク色)ごとに同一の記録用紙に並べて記録され、これにより、その後の一連の処理を同時に行うことができる。待機時間の設定は、図5(b)のテーブルを参照し、4つの記録ヘッドそれぞれのインク打ち込み量の条件の中で、最大となる待機時間を選択する。
【0030】
(実施形態3)
本発明の第3の実施形態は、上述した1次色のパッチを記録しそれに基づいて校正を行うモード1と、2次色など異なる色を重ねてパッチを記録しそれに基づいて校正を行うモード2を選択的に実行可能としたものである。なお、本実施形態では、後述されるように、この校正のモードは校正用画像を記録する記録用紙の種類、すなわち、記録に用いる記録用紙の種類に対応している。例えば、異なる色のインクを重ねて記録する場合に発色が比較的大きく変化する記録用紙を用いるときは、モード2の校正を行う。
【0031】
図7(a)は、1次色に係るモード1の校正用画像を示す図であり、図7(b)は、2次色以上に係るモード2の校正用画像を示す図である。図7(a)に示すモード1の校正用画像は、記録ヘッド2C、2M、2Y、2Kそれぞれについて2段階のインク打ち込み量(6、12[g/m2])で記録する1次色のパッチを同じ記録用紙に配列したものである。図7(b)に示すモード2の校正用画像は、各記録ヘッド2C、2M、2Y、2Kの組み合わせによって記録する2次色以上のパッチを記録用紙に配列したものである。図7(b)の各パッチに示されるインク打ち込み量(12、18[g/m2])はそれぞれのインク色の組み合わせにおけるインク打ち込み量の合計である。ここで、CインクとMインクのインク打ち込み量の合計が18[g/m2]とは、例えば、Cインク9[g/m2]、Mインクが9[g/m2]となるように、パッチを記録するためのC、Mインクそれぞれの濃度データを設定することである。なお、個々のインクの打ち込み量の割合は上例のように等分に限られないことはもちろんであり、記録装置の仕様などに応じて校正のためのパッチを設計する際にこの割合を定めることができる。
【0032】
図8(a)は、モード2の校正処理で用いる、インク打ち込み量ごとに異なる待機時間を表したテーブル(「待機時間テーブルB」)を示す図である。図8(a)に示すように、待機時間が最も長いのは、マゼンタ(M)とイエロー(Y)インクを合計18[g/m2]の打ち込み量で記録した2次色パッチであり、200秒である。従って、図7(b)に示す校正用画像を記録してモード2の校正を行う場合、待機時間Tsは200秒とする。
【0033】
一方、図7(a)に示す校正用画像を記録するモード1の校正では、図5(b)に示す待機時間テーブルAから、待機時間が最も長いのは、マゼンタ(M)のインク打ち込み量12[g/m2]」のパッチであり、120秒である。従って、モード1の校正を行う場合、待機時間Tsは120秒とする。
【0034】
図8(b)は、校正モードごとに以上のように定めた最長の待機時間がそれぞれ対応付けられた「モード別待機時間テーブル」を示す図である。本実施形態は、以下に説明するように、校正に用いる記録用紙の種類またはオペレータによる設定に応じて校正のモードを決定し、それに応じて図8(b)に示すテーブルを参照して待機時間を可変に定めて設定する。
【0035】
図9は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す図である。本実施形態の記録装置の構成は、図3に示す構成に、モード入力部14と、給紙トレー4から給紙される記録媒体の種類を検知する用紙種別検知センサ15を加えたものである。モード入力部15と、用紙種別検知センサ15は、共に制御部12に信号接続されている。モード入力部15を介してオペレータによって入力されたモード情報および用紙種別検知センサ15で検知した記録用紙の種類情報は制御部12に送られ、制御部12は、図11にて後述するようにそれらの情報に基づいて校正処理を行う。
【0036】
図11は、本実施形態の校正処理を示すフローチャートである。先ずステップ31で、用紙種別検知センサ15で検知した記録用紙の種類の情報を取得する。次に、ステップ32で、記録用紙の種類情報に基づいて図10に示す「用紙種別モードテーブル」を参照し、校正のモードを選択する。
【0037】
次に、オペレータにモードを入力させる(ステップ33)。この入力結果がステップ32で選択したモードと同じか否かを判定し(ステップ34)、同じ場合はステップ36へ、異なる場合にはオペレータにモードが異なる旨を知らせ、再度モードを入力させる(ステップ35)。この入力されたモードをもって、最終的なモード確定とする(ステップ36)。なお、ステップ31、32、34、35、36の処理は、記録用紙の種類が切り替わった際にオペレータがモードの切り替え設定をし忘れないようにするための処理である。本校正処理に必須のものではない。すなわち、ステップ31から36までの処理をステップ33のみにすることもできる。
【0038】
モードが確定すると、制御部12は、図8(b)に示すモード別待機時間テーブルを参照して、ステップ36で確定したモードに対応する待機時間Tsを決定する(ステップ37)。これとともに、記録用紙を給紙部から搬送し(ステップ38)、モードに対応した校正用画像を対応する記録ヘッドを用いて記録する(ステップ39)。そして、乾燥処理を行い(ステップ40)、待機エリア9まで記録用紙を搬送した後停止させ(ステップ41)、ステップ37で決定した待機時間Tsだけ待機する。この待機の後、再び記録用紙を搬送させ(ステップ42)、測定器10によって各パッチの測定を行う(ステップ43)。その測定結果に基づいて、第1実施形態で説明したのと同様に、対応する記録ヘッドの校正を行う(ステップ44)。
【0039】
なお、以上の各実施形態では、インクが4種類の場合の例を説明したが、本発明はインクの種類がさらに多い場合にも適用できる。
【0040】
上述した各実施形態は、パッチを測定した後その測定値に基づいて記録ヘッドの制御パラメータを設定するなどの、いわゆる校正を行うものとしたが、本発明の適用はこのような形態に限られない。例えば、測定結果を、記録用紙に記録して出力したりあるいは表示器に表示したりすることによってオペレータに報知するようにしてもよい。そして、オペレータはこの報知に応じて、例えば、装置の操作部を介して色調整のための設定を行うことができる。すなわち、本発明は、記録した何らかの測定用画像を乾燥した後、測定までの待機時間を上述した各実施形態のように可変に定めて設定するどのような形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 記録装置
2 記録ヘッド
3 記録用紙
6 乾燥処理部
9 待機エリア
10 測定器
12 制御部
13 メモリ
14 モード入力部
15 用紙種別検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する記録ヘッドを用い記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
記録ヘッドによって記録された測定用画像が記録された記録媒体を乾燥させる乾燥手段と、
前記乾燥手段によって乾燥された記録媒体における測定用画像の測定を行う測定手段と、
前記乾燥手段によって乾燥された記録媒体の測定用画像に対して前記測定手段による測定を開始するまでの待機時間を、測定用画像を記録したときの記録情報に応じて可変に設定する制御手段と、
を具えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記測定手段による測定の結果に基づいて、記録特性の校正を行う校正手段をさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録情報は、測定用画像を記録する際のインクの打込み量情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録情報は、前記測定用画像を記録する際のインクの種類の情報を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記インクジェット記録装置は、最長の前記待機時間がそれぞれ対応付けられた複数のモードを有し、前記記録情報は、記録媒体の種類に応じて選択されたモードの情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクジェット記録装置は、記録媒体を記録ヘッドによる記録部へ給紙する給紙手段と、前記給紙手段から給紙される記録媒体の種類を検知する検知手段と、前記複数のモードの中から前記検知手段によって検知された記録媒体の種類に応じてモードを選択する選択手段と、をさらに具えたことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
インクを吐出する記録ヘッドを用い記録媒体にインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置における記録特性を校正するための校正方法であって、
記録ヘッドによって記録された測定用画像が記録された記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥された記録媒体における測定用画像の測定を行う測定工程と、
前記測定工程における測定の結果に基づいて記録特性の校正を行う校正工程と、
前記乾燥工程で乾燥された記録媒体の測定用画像に対して前記測定工程における測定を開始するまでの時間を、測定用画像を記録したときの記録情報に応じて可変に設定する工程と、
を有することを特徴とする校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−240545(P2011−240545A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113210(P2010−113210)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】