説明

インクジェット記録装置のインク供給装置

【課題】複数の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置において、記録ヘッドを流れるインクの粘度を制御するために、効率良くインクを加温できるインクジェット記録装置のインク供給装置を提供する。
【解決手段】背圧タンク21と、分配タンク12と、複数のインク開閉電磁弁13と、複数の記録ヘッド14とを備え、分配タンク12はインク供給路24を介して背圧タンク21に接続され、複数のインク開閉電磁弁13は分配タンク12に直接取り付けられると共に分配供給管15を介して複数の記録ヘッド14に接続されているインクジェット記録装置のインク供給装置であって、分配タンク21はインクを加温する加温ヒータ71と温度センサー72が内蔵されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置における複数の記録ヘッドを流れるインクの粘度を制御するインク供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置のインク供給装置については、以下のような構造(図3参照)のインクジェット記録装置が知られている。
すなわち、このインクジェット記録装置は、記録時、インクが中間タンク131から供給弁133、共通流路134、分配器141、個別ヘッド供給路145を介して個別ヘッド151の吐出により自給される。
中間タンク131への補給は、膨らみ検知センサー132により補給が必要と判断したときにインクタンク111から補給流路121を通って送液ポンプ122により送液され、補給弁123、中間タンク131へ所定量送液補給される。
共通流路134の途中に設けられた分配器141は記録ヘッド150を構成する個別ヘッド151に供給するインクの流路抵抗を均一化するために設けられ、短時間供給源の役割を果たす。
記録ヘッド150の回復時、分配器141上部に配されている大気連通遮断弁143を開放して送液ポンプ122を逆転させて、インク流路の一部である分配器141に僅かに空気を吸い込み、大気連通遮断弁143を閉鎖する。
その後、インクは、送液ポンプ122を正転させることにより送液され、中間タンク131をバイパスする補給弁125、加圧流路124を経由して、個別ヘッド弁146により選択された個別ヘッド151のノズルより押出される。
個別ヘッド151のノズルからのインクの垂れが納まった後、メンテナンス台160に配されているワイパーブレード161によりノズル面がワイピングされる。
分配器141の上部からは空気抜き弁144を有する空気抜き流路171が配管されており、インク初期導入時およびインク供給路に空気が混入したときにこの流路から空気を排出する(特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、記録ヘッドを流れるインクの粘度を制御するインクジェッド式記録装置においては、次のようなものが知られている。
すなわち、記録ヘッド、タンク、及び供給パイプの各々に、カートリッジヒータ、ヒータ、ヒータを設けるとともに、第1の温度センサー、第2の温度センサー、第3の温度センサーを設け、温度制御部は、記録ヘッド、タンク、及び供給パイプの温度を個々、最適温度に制御するインクジェッド式記録装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245615号公報
【特許文献2】特開2003−19790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示のインクジェット記録装置に、上記特許文献2に開示のようなカートリッジヒータ、ヒータ、及び第1,2,3の温度センサーを適用する場合、上記特許文献1に開示のインクジェット記録装置における中間タンク131、共通流路134、分配器141、各個別ヘッド供給路145、各個別ヘッド弁146及び各個別ヘッド151にそれぞれ、カートリッジヒータ、ヒータ、及び第1,2,3の温度センサーを組み込む必要が生じる。
そのため、ヒータ数・制御箇所が増え、各部の温度を均一にするのが困難で、故障等により温度制御不良を生じやすく、部品コストも高くなる、という問題点がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものである。
すなわち、本発明は、複数の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置において、記録ヘッドを流れるインクの粘度を制御するために、効率良くインクを加温できるインクジェット記録装置のインク供給装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、背圧タンクと、分配タンクと、複数のインク開閉電磁弁と、複数の記録ヘッドとを備え、前記分配タンクはインク供給路を介して前記背圧タンクに接続され、前記複数のインク開閉電磁弁は前記分配タンクに直接取り付けられると共に分配供給管を介して前記複数の記録ヘッドに接続されているインクジェット記録装置のインク供給装置であって、前記分配タンクはインクを加温する加温ヒータと温度センサーが内蔵されているインクジェット記録装置のインク供給装置に存する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記各分配供給管は加温ヒータ付き分配供給管であると共に、温度センサーが備えられている請求項1に記載のインクジェット記録装置のインク供給装置に存する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、分配タンク12はインクを加温する加温ヒータ71と温度センサー72が内蔵されているので、分配タンク12内のインク(すなわち各記録ヘッド14に供給されるインク)を所定の温度に制御でき、したがって、インクの粘度を所定の粘度に保つことができる。
また、分配タンクには一個の加温ヒータと一個の温度センサーを内蔵するだけで対応できるので、部品コストを抑えることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、前記各分配供給管は加温ヒータ付き分配供給管であると共に、温度センサーが備えられているので、前記各分配供給管内を通るインクの温度も、各チューブヒータ付き分配供給管15ごとに所定の温度に制御でき、したがって、そのインクの粘度も所定の粘度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置のインク供給装置のインク供給系を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、図1の分配タンクを示し、(A)は正面図、(B)は(A)の左側面図である。
【図3】図3は、従来の複数の記録ヘッドを有するインクジェット記録装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置のインク供給装置について図1,2を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置のインク供給装置は、ヘッドボックス11と、背圧タンク21と、メインタンク31、エア切換用3ポート電磁弁61と、圧縮エア供給路62と、エア通路63と、圧縮エア供給路62を通じてエア切換用3ポート電磁弁61へ圧縮エアを供給する圧縮エア供給源65と、を備えている。
【0014】
ヘッドボックス11内には、分配タンク12と、分配タンク12に直接取り付けられた複数(5個)のインク開閉電磁弁13と、複数(5個)の記録ヘッド14と、複数(5個)のチューブヒータ付き分配供給管(加温ヒータ付き分配供給管)15が収容されており、各インク開閉電磁弁13と各記録ヘッド14は、各チューブヒータ付き分配供給管15で連結されている。
図2に示すように、チューブヒータ付き分配供給管15は、リード線15aを介してコネクタ15bが取り付けられており、このコネクタ15bは図示しない電源に接続されている。
また、図示はしないが、チューブヒータ付き分配供給管15内のインクの温度を測定する温度センサーが設けられており、この温度センサ(例えば熱電対等)は図示しない制御装置に接続されている。
なお、各インク開閉電磁弁13には各チューブヒータ付き分配供給管15を差し込むための各分配供給管差し込み部13a(図2参照)が取り付けられている。
【0015】
インクジェット記録装置にはピエゾ素子等の電気機械変換体が用いられ、図示しない制御装置によりこのピエゾ素子等の電気機械変換体が駆動され、各記録ヘッド14からインク滴が吐出され、図示しない用紙等の被記録体に記録される。
【0016】
図2に示すように、分配タンク12は、枠体12aを挟んで透明な蓋体12bとプレート12cが取り付けられ、枠体12a内の空間12dにインクが充填されるようになっている。
また、後述するインク供給路24の一端部は分配タンク12の枠体12aの上部に取り付けられたインク供給路接続体12e(図2参照)に接続されている。
また、分配タンク12の枠体12aの上部には枠体12a内の空気を抜くためのエア抜き具12fが接続されている。
また、分配タンク12の枠体12aとプレート12cとの間に板状のラバーヒータ(加温ヒータ)71が挟まれた状態で取り付けられ、さらに、空間12d内のインクの温度を測定する温度センサー72(例えば熱電対等)が枠体12aあるいはプレート12cに取り付けられている。
そして、この温度センサー72と上述したチューブヒータ付き分配供給管内の図示しない温度センサーは、図示しない制御装置に接続されており、板状のラバーヒータ(加温ヒータ)71及び各チューブヒータをオン・オフするように制御されることでインクの温度が一定に制御される。
【0017】
図1に示すように、背圧タンク21内には、この中に収納されるインクの液面の略全面に接触して浮かぶフロート22が内蔵されている。
また、この背圧タンク21にはフロート22を介してインクの液面高さを検出する液面検出器23が設けてある。
また、背圧タンク21の底部と分配タンク12を接続するインク供給路24が設けられている。
【0018】
背圧タンク21の上方には、外部から圧縮エアが供給される圧縮エア供給路62と、この圧縮エア供給路62が接続されるエア切換用3ポート電磁弁61と、このエア切換用3ポート電磁弁61に接続されるエアフィルタ64が配置されており、エア切換用3ポート電磁弁61はエア通路63を介して背圧タンク21の上方内部と連通している。
【0019】
エア切換用3ポート電磁弁61は、後述するように、記録ヘッド14による記録時と、加圧パージ時により切り換えて使用するものである。
【0020】
メインタンク31の上部にはメインタンク供給ポンプ39によりインクが供給されるようになっており、また、メインタンク31の上部はエアフィルタ38を介して大気に連通している。
また、背圧タンク21の底部とメインタンク31の底部は、インク補給路32を介して接続されている。
また、背圧タンク21とメインタンク31とを接続するインク補給路32には、背圧タンク21内のインクの消費量に応じてメインタンク31からインクを補給するインク補給ポンプ33とインク補給電磁弁34と補給インクフィルタ35と脱気モジュール36が介装されている。
なお、脱気モジュール36には脱気コントローラ37が接続されている。
【0021】
また、背圧タンク21の底部とメインタンク31の上部は、インク戻り路41により接続されており、このインク戻り路41の途中には背圧タンク戻り電磁弁42と背圧タンク戻りポンプ43が設けられている。
【0022】
また、複数の記録ヘッド14の下方には複数の記録ヘッド14と対向する位置に受け皿51が配置され、この受け皿51に接続される廃液タンク52と、この廃液タンク52に接続される廃液回収部53が設けられている。
【0023】
記録時には、図示しない制御装置の操作により、エア切換用3ポート電磁弁61は大気に開放される位置に切り換えられており、したがって、背圧タンク21はエアフィルタ64を介して大気に連通し、圧縮エアの供給は停止している。
【0024】
そして、上記したインク補給ポンプ33とインク補給電磁弁34の作動が、液面検出器23の検出値により図示しない制御装置によって制御されるようになっている。
【0025】
すなわち、背圧タンク21内のインクがインク供給路24、分配タンク12、インク開閉電磁弁13、及び分配供給管15を介して記録ヘッド14へ供給されて、背圧タンク21内のインクの液面が低下したとき、このときの液面低下を検出した液面検出器23からの信号によりインク補給電磁弁34が開くと共にインク補給ポンプ33が作動してメインタンク31から背圧タンク21へインクが補給される。
そして、このインク補給量が所定量となり、背圧タンク21内のインク液面が所定の位置になったときに、これを検出する液面検出器23からの信号によりインク補給ポンプ33が停止されると共にインク補給電磁弁34が閉じられるようになっている。その結果、背圧タンク21内のインク液面は常時所定の高さに維持される。
【0026】
したがって、背圧タンク21内のインク液面と記録ヘッド14のヘッド面との高さ方向の位置関係は一定であり、一定の位置水頭Hが保たれることになる。
【0027】
次に、加圧パージ時の作用について以下に説明する。
記録時には背圧タンク21の内部が大気に開放するように切り換えられているエア切換用3ポート電磁弁61を、加圧パージ時には圧縮エアが背圧タンク21の内部上方に供給されるように、図示しない制御装置の操作により切り換える。
なお、この切り換え操作により、エア切換用3ポート電磁弁61の大気への開放は遮断されている。
そうすると、背圧タンク21の内部上方に供給された圧縮エアにより背圧タンク21内のインクの液面がフロート22を介して加圧される。
そして、吐出不良の記録ヘッド14を、図示しない制御装置でのスイッチにより指示することで、その指示された記録ヘッド14に対応するインク開閉電磁弁13のみが開放される。
すると、その指示された記録ヘッド14のみに加圧されたインクが供給され、ノズル孔から気泡や増粘したインクが受け皿51に排出される。
そして、受け皿51に排出された廃インクは廃液タンク52に回収され、廃液回収部53に集められる。
【0028】
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置のインク供給装置によれば、次のような効果を有する。
【0029】
圧縮エアによりインクが加圧され、指示された記録ヘッド14に対応するインク開閉電磁弁13のみが開放されて、指示された記録ヘッド14のみを対象に加圧パージが可能である。
また、各インク開閉電磁弁13は分配タンク12に直接取り付けられているので、加圧パージ時に各インク開閉電磁弁13周辺からのインク漏れがない。
【0030】
本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置のインク供給装置によれば、分配タンク12はインクを加温する加温ヒータ71と温度センサー72が内蔵されているので、分配タンク12内のインク(すなわち各記録ヘッド14に供給されるインク)を所定の温度に制御でき、分配タンク12に直接取り付けられた各インク開閉電磁弁13までも熱伝導で加温、温度制御され、したがって、インクの粘度を所定の粘度に保つことができる。
また、分配タンク12には一個の加温ヒータ71と一個の温度センサー72が内蔵されるだけで対応が可能であるので、部品コストを抑えることができる。
また、図示しない各温度センサーを備えることで、各チューブヒータ付き分配供給管15内を通るインクの温度も、各チューブヒータ付き分配供給管15ごとに所定の温度に制御でき、したがって、そのインクの粘度も所定の粘度に保つことができる。
【0031】
以上、本発明を説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されることはなく、その目的に添う限り種々の変形例が可能である。
例えば、分配タンクや分配供給管の温度センサーは、熱電対に限らず、各種サーミスタの採用が可能である。
また、実施の形態においては、ピエゾ素子等の電気機械変換体が用いられるピエゾインクジェット方式のインクジェット記録装置の例を示しているが、本発明はサーマルインクジェット方式のインクジェット記録装置にも当然適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、記録ヘッドを流れるインクの粘度を制御するために、効率良くインクを加温できるインクジェット記録装置のインク供給装置を提供するものであるが、その原理を採用する限り、記録媒体にインクジェット方式で記録する装置として種々のものに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
11・・・ヘッドボックス
12・・・分配タンク
12a・・・枠体
12b・・・蓋体
12c・・・プレート
12d・・・空間
12e・・・インク供給路接続体
12f・・・エア抜き具
13・・・インク開閉電磁弁
13a・・・分配供給管差し込み部
14・・・記録ヘッド
15・・・チューブヒータ付き分配供給管(加温ヒータ付き分配供給管)
15a・・・リード線
15b・・・コネクタ
21・・・背圧タンク
22・・・フロート
23・・・液面検出器
24・・・インク供給路
31・・・メインタンク
32・・・インク補給路
33・・・インク補給ポンプ
34・・・インク補給電磁弁
35・・・補給インクフィルタ
36・・・脱気モジュール
37・・・脱気コントローラ
38・・・エアフィルタ
39・・・メインタンク供給ポンプ
41・・・インク戻り路
42・・・背圧タンク戻り電磁弁
43・・・背圧タンク戻りポンプ
51・・・受け皿
52・・・廃液タンク
53・・・廃液回収部
61・・・エア切換用3ポート電磁弁
62・・・圧縮エア供給路
63・・・エア通路
64・・・エアフィルタ
65・・・圧縮エア供給源
71・・・板状のラバーヒータ(加温ヒータ)
72・・・温度センサー
H・・・位置水頭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背圧タンクと、分配タンクと、複数のインク開閉電磁弁と、複数の記録ヘッドとを備え、前記分配タンクはインク供給路を介して前記背圧タンクに接続され、前記複数のインク開閉電磁弁は前記分配タンクに直接取り付けられると共に分配供給管を介して前記複数の記録ヘッドに接続されているインクジェット記録装置のインク供給装置であって、
前記分配タンクはインクを加温する加温ヒータと温度センサーが内蔵されていることを特徴とするインクジェット記録装置のインク供給装置。
【請求項2】
前記各分配供給管は加温ヒータ付き分配供給管であると共に、温度センサーが備えられていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置のインク供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−11669(P2012−11669A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150370(P2010−150370)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】