説明

インクジェット記録装置の気泡排出方法

【課題】インク供給路内の気泡の排出を効率的に行うことができるインクジェット記録装置の気泡排出方法を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置の気泡排出方法は、開閉弁を閉じた状態で吸引ポンプにより記録ヘッドの吐出口からインクを吸引してインク流路に存在する気泡を膨張させる第1のインク吸引工程を有している。また、インクジェット記録装置の気泡排出方法は、第1のインク吸引工程を行った後に、開閉弁を開けて、加圧ポンプによりメインタンクからインクを記録ヘッドに送り出す第1のインク供給工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置の気泡排出方法に関し、特にインク収納体と記録ヘッドの間のインク流路から気泡を排出するのに適したインクジェット記録装置の気泡排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メインタンクとサブタンクとの間にインク供給管が配置され、メインタンクからインク供給管を介してサブタンクにインクが供給され、サブタンクに接続された記録ヘッドからインクを吐出して記録が行われることが開示されている。特許文献1に記載の気泡排出方法によれば、インク供給管に弁が設けられ、一旦弁が閉じられて記録ヘッドの吐出口をキャッピングした状態で吐出口からインクを吸引することで記録ヘッドから弁までの流路に負圧を発生させる。この状態から、まず、サブタンクと記録ヘッドとの間に配置されたフィルターに気泡が集められるのに適したインク流れが生じるように、弁が開けられる。その後、フィルターに集められて大きくなった気泡を記録ヘッドから排出するのに適したインク流れが生じるように、弁が開けられる。これにより、記録ヘッドから気泡が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−143046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の気泡排出方法では、気泡を排出させるためのインク流れが不十分である可能性がある。特に、上述のようにインク供給管によってインクが供給される構成のインクジェット記録装置では、インク供給管の屈曲している部分などで流速分布が生じる可能性がある。インク供給管内でインク流れに流速分布が生じた場合には、インク流れの流速の遅い部分に気泡が残り易い。また、インク供給路管の内壁に付着している気泡が比較的小さい場合、気泡の排出を行った後に気泡がさらに残り易い。上述のように、インク供給路に気泡が残ってしまうと、これによってインクの吐出不良などが生じる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、インク供給路内の気泡の排出を効率的に行うことができるインクジェット記録装置の気泡排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインクジェット記録装置の気泡排出方法は、インクを吐出口から吐出して記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドに供給されるインクを貯留するインク収納体と、前記記録ヘッドと前記インク収納体との間に接続され、前記インク収納体から前記記録ヘッドまでインクを流通させるインク流路と、前記インク収納体に貯留されたインクを前記記録ヘッドに供給するためにインクを送り出すインク供給手段と、前記記録ヘッドの前記吐出口からインクを吸引可能なインク吸引手段と、前記インク流路に設けられ、前記インク流路の開閉動作を行うことが可能な弁機構とを有し、前記インク流路から気泡を排出するインクジェット記録装置の気泡排出方法であって、前記弁機構を閉じた状態で前記インク吸引手段により前記記録ヘッドの前記吐出口からインクを吸引して前記インク流路に存在する気泡を膨張させる第1のインク吸引工程と、前記第1のインク吸引工程の後に、前記弁機構を開けて、前記インク供給手段により前記インク収納体からインクを前記記録ヘッドに送り出す第1のインク供給工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インク流路内に負圧を形成し、気泡を膨張させた状態で記録ヘッドへのインク流れを発生させるので、インク流路内に存在する気泡を記録ヘッド側へ流し易く、効率的に気泡の排出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一実施形態に係るインクジェット記録装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】メインタンクについて模式的に示した断面図である。
【図3】(a)、(b)は、開閉弁について模式的に示した断面図である。
【図4】(a)、(b)は、サブタンクについて模式的に示した断面図である。
【図5】制御系のブロック図である。
【図6】チョーク吸引の制御フローを示すフローチャートである。
【図7】(a)、(b)、(c)は、サブタンク内での気泡の状態について模式的に示した断面図である。
【図8】チョーク吸引前動作の制御フローを示すフローチャートである。
【図9】供給チューブ内での気泡の状態について模式的に示した断面図である。
【図10】チョーク吸引前動作が行われるときの、時間と供給チューブ内のインクの圧力について示したグラフである。
【図11】チョーク吸引について、全体の制御フローを示すフローチャートである。
【図12】(a)、(b)は、本発明の第二実施形態に係る開閉弁について模式的に示した断面図である。
【図13】チョーク吸引前動作が行われるときの、時間と供給チューブ内のインクの圧力について示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係るインクジェット記録装置1000におけるインク供給路の構成を模式的に示した図である。
【0010】
図1において101〜104はインクを貯留するインクタンクとしてのメインタンクである。本実施形態では、4色のインクのそれぞれが貯留されたメインタンクが4つ配置されている。メインタンク101〜104としては、Blackのインクを貯留するメインタンク101、Cyanのインクを貯留するメインタンク102、Magentaのインクを貯留するメインタンク103、Yellowのインクを貯留するメインタンク104がある。
【0011】
メインタンク101〜104には、加圧ポンプ105(インク供給手段)が接続されている。メインタンク101〜104内部のインクを記録ヘッド113へ供給する際には、メインタンク101〜104に貯留されているインクが、加圧ポンプ105の加圧によってインク流路内を圧送される。加圧ポンプ105によって加圧されてメインタンク101〜104から記録ヘッド113へ供給されるインクは、メインタンク101〜104と供給チューブ107との間のジョイント部106を介し、各色に対応した供給チューブ107へ送られる。
【0012】
供給チューブ107は、各色のインクに対応したサブタンク109〜112に接続されている。また、サブタンク109〜112は、インクを吐出する記録ヘッド113に接続されている。サブタンク109〜112はインクを一時的に貯蔵し、記録時、若しくはメンテナンス時に記録ヘッド113へとインクを供給する。供給チューブ107は、記録ヘッド113とメインタンク101との間に接続され、メインタンクから記録ヘッド113までインクを流通させるインク流路である。
【0013】
本実施形態の記録ヘッド113においては、記録用のインクが記録ヘッド113の発泡室の内部に供給される。発泡室には吐出口が形成されており、吐出口でインクがメニスカスを形成することにより、記録ヘッド113内でインクが安定に保持される。また、発泡室には、発熱素子(電気熱変換体)が備えられている。発熱素子に通電させ、その発熱素子から熱エネルギーを発生させることにより、発泡室内部のインクが加熱されて膜沸騰により発泡する。そのときのインクの発泡エネルギーによって、吐出口からインク滴が吐出される。
【0014】
サブタンク109〜112と記録ヘッド113は、キャリッジ114に装着されている。キャリッジ114は、図示しない駆動モータにより主走査方向(図中のx方向)に往復運動を行うことが可能である。そして、記録ヘッド113が主走査方向に走査しながら記録ヘッド113からインクを記録媒体に吐出することで記録画像を記録媒体に形成し、記録が行われる。記録ヘッド113が1行分の記録を行うと、図示しない搬送機構により記録媒体P主走査方向に交差する副走査方向へと搬送する。このキャリッジ114の往復運動による記録と記録媒体の搬送とを繰り返すことにより記録媒体の全体への記録が行われる。
【0015】
また、供給チューブ107には、メインタンクとサブタンクとの間に弁収納部が配置され、その弁収納部150の内部にインク流路における開閉動作を行うことが可能な開閉弁108(弁機構)が設けられている。開閉弁108は各色の供給チューブ107ごとに取り付けられており、各色の供給チューブ107でインクの流れを個別に連通、遮断させることが可能である。
【0016】
記録ヘッド113にメンテナンスが必要な場合は、記録ヘッドが記録媒体に対応した位置から外れる位置までキャリッジ114が主走査方向に移動し、図1の吸引キャップ115に対応した位置でキャリッジ114が停止する。吸引キャップ115は、図示しない駆動源により上下方向に移動可能に形成されている。そして、増粘したインクや気泡等を記録ヘッド113から外部に排出するために記録ヘッド113の吐出口からインクを吸引して排出する吸引回復等のメンテナンスが行われるときには、吸引キャップ115が記録ヘッド113の吐出口形成面に近接する。そして、記録ヘッド113の吐出口形成面をキャッピングすることが可能である。吸引キャップ115は、記録ヘッド113の吐出口からインクを吸引可能な吸引ポンプ116(インク吸引手段)に接続されている。インクジェット記録装置1000のメンテナンス時には、記録ヘッド113の吐出口形成面を吸引キャップ115によって密封した状態で吸引ポンプ116を駆動させることで吸引キャップ115内からインクを排出し、吸引キャップ115内を減圧することができる。これにより、記録ヘッド113の吐出口を介して記録ヘッド113内部のインクを排出することができる。排出されたインクは、排出管117を通して、インクジェット記録装置1000内部の図示しない廃インク吸収体に排出され、貯蔵される。このように記録ヘッド113内部のインクを吸引して記録ヘッド113から排出することにより、メインタンク101〜104から記録ヘッド113内の増粘インクや気泡等を記録ヘッド113の外部に排出することが可能となる。
【0017】
図2はメインタンク101〜104のうちの一つのメインタンクについて模式的に示した断面図である。ここでは、便宜上、Blackインクを貯留するメインタンク101を用いて説明する。Blackインクを貯留するメインタンク101は、メインタンク外装201内にインクパック202(インク収納体)が収納されて形成されている。メインタンク外装201には、供給チューブに連通するインク連通管203が接続されており、インク連通管203を通して供給チューブ107へとインクを供給することができる。また、メインタンク外装201とインクパック202との間に形成された加圧空間204に、加圧ポンプから供給される空気が供給されるように、加圧ポンプ連通口205が形成されている。加圧ポンプ連通口205には、加圧ポンプ205から供給される空気が加圧空間204に供給されるように、加圧ポンプ105からのインク流路が形成されている。
【0018】
加圧ポンプ105を作動させると加圧空間204に空気が導入され、この空気によってメインタンク外装201の内部に収納されたインクパック202が加圧される。このときの加圧ポンプ105からの空気の加圧によりインクパックが潰されることで、内部に貯留されたインクがインクパック202内より押し出される。インクパック202から押し出されたインクは、インク連通管203を介して供給チューブ107に供給される。加圧ポンプ105は、加圧が不要なときは大気と連通し、加圧空間204内を大気圧に制御することが可能である。
【0019】
図3(a)及び図3(b)は、各色の供給チューブ107ごとに設けられた開閉弁108のうち、一つの開閉弁108について模式的に示した断面図である。ここでは、便宜上、Blackインクを貯留するメインタンク101から延びた供給チューブ107に接続された開閉弁108を用いて説明する。
【0020】
図3(a)は開閉弁108が閉じた状態を模式的に示した断面図であり、図3(b)は開閉弁108が開いた状態を模式的に示した断面図である。メインタンクより供給されたインクは、供給チューブ107を通り、開閉弁108へと流入する。開閉弁108は、開閉弁流路301とダイアフラム302を有して形成されている。ダイアフラム302は弾性部材によって形成され、縁部が開閉弁流路301の一部に固定されて取り付けられている。ダイアフラム302は、ばね部材303によってインク流路を閉じる方向に付勢されている。従って、本実施形態では、インクパック202から圧送されるインクによってダイアフラム302が開く方向に力が作用しているとき以外は、ダイアフラム302がばね部材303によって下側に付勢されている。これによって、ダイアフラム302は開閉弁流路301の縁部に当接している。図3(a)に示されるように、通常は、開閉弁108は、インクが開閉弁流路301を流れないように開閉弁流路301のインク流路をふさいでいる。
【0021】
一方、加圧ポンプの駆動によりメインタンク101のインクパック202からインクが押し出され、開閉弁108よりも上流側のインクが加圧されたときには、そのインクの圧力が上昇する。このとき、開閉弁108よりも上流側のインクの圧力によってダイアフラム302が上方に押される。ダイアフラム302が押される力が、ダイアフラム302を下方に付勢する力と開閉弁302よりも下流側のインクの負圧によってダイアフラムを下方に引っ張る力との合計の力を上回ると、ダイアフラム302が上方に移動する。これにより、図3(b)に示されるように、開閉弁流路301が開くようにダイアフラム303が変形する。このときに、開閉弁108は、開かれた状態となる。
【0022】
図4(a)及び図4(b)は、サブタンク400の構成を模式的に示した断面図である。図4(a)は、供給制限弁402が閉じた状態のサブタンク400について示している。また、図4(b)は、供給制限弁402が開いた状態のサブタンク400について模式的に示した断面図である。サブタンク400は、供給チューブ107から供給されるインクを一旦貯留する。サブタンク400内に貯留されたインクは、サブタンク400から記録ヘッド113へ供給される。供給チューブ107を通ってメインタンク101からサブタンク400に供給されるインクは、サブタンク流入口401からサブタンク400内に流入する。一旦サブタンク400内に流入したインクは、フィルター410を介して記録ヘッド113へ供給される。
【0023】
サブタンク400は、供給制限弁402を隔てて、インク室403と負圧室405との2つの空間が区画されている。本実施形態では、供給制限弁402よりもサブタンク流入口401側にある液室がインク室403であり、供給制限弁402よりもフィルター410側にある液室が負圧室405である。供給制限弁402がインク室402と負圧室405との間のインク流路に形成されているので、供給制限弁402を開閉させることでインク室402と負圧室405との間におけるインク流路の連通している状態と連通していない状態とを切り替えることができる。
【0024】
支持棒407の一端は、供給制限弁402に接合されている。また、支持棒407の他端は、可撓性部材によって形成されたシート404に取り付けられている。また、支持棒407におけるシート404と接合されている部分には、ばね部材406の一端が取り付けられている。また、ばね部材406の他端は、サブタンク400内部のインク室403を構成する壁面に取り付けられている。そして、インク室403内に取り付けられたばね部材406は、インク室403の体積を膨張させるようにサブタンク400の外側に向かう方向にシート404を付勢している。そのため、供給制限弁402は通常閉じた状態となっている。
【0025】
シート404は、サブタンク400の壁面の一部を構成するように、サブタンク400に溶着されて取り付けられている。そのため、シート404に隣接したインク流路内の圧力に応じて、シート404が移動する。シート404に隣接したインク流路内の圧力が低いときには、シート404はサブタンク400の内側に移動する。これに対してシート404に隣接したインク流路内の圧力が高いときには、シート404はサブタンク400の内側に移動せずに、シート404に接続された供給制限弁402が閉じられた状態で、シート404がサブタンク400の外側に位置する。
【0026】
シート404及び供給制限弁402が、サブタンク400内部でこのように取り付けられているので、インク室403内の圧力と負圧室405内の圧力のバランスによって、供給制限弁402及びシート404が変位する。負圧室405内部圧力が低くなり、供給制限弁402を負圧室405の方へ引っ張る力がばね部材406の付勢力等の力により供給制限弁402をインク室403の方へ引っ張る力よりも大きくなると、供給制限弁402が負圧室405の方へ移動する。
【0027】
従って、記録あるいは吸引回復等によるインクの消費によってサブタンク400の負圧室405内のインクが記録ヘッド113に供給されて負圧室405内部の負圧がある程度高まると、供給制限弁402が負圧室405側に移動する。これによって、インク室403と負圧室405との間のインク流路が連通し、インク室403と負圧室405との間の差圧により、インク室403から負圧室405へのインク流れが生じる。
【0028】
インク室403から負圧室405へインクが流れることで負圧室405にインクが流入し負圧室405内部の負圧が小さくなると、ばね部材406による付勢力が負圧室405内部の負圧により供給制限弁402を負圧室405側へ引っ張る力を上回るようになる。これにより供給制限弁402はインク室403の方へ移動し、インク室403と負圧室405との間のインク流路が連通しないように、インク流路を閉じる。また、ばね部材406によって供給制限弁402がインク流路を閉じる方向に付勢されているので、負圧室405の内部は、負圧に保持されている。
【0029】
図5は、本実施形態の制御回路の構成を示すブロック図である。図5に示されるCPU1400は、メインバスライン1405を介して装置各部の制御およびデータ処理を実行する。すなわち、CPU1400は、ROM1401に格納されるプログラムに従い、データ処理、記録ヘッド駆動およびキャリッジ駆動を以下の各部を介して制御して記録動作を行う。CPU1400はインターフェース1404を介して、ホスト装置との通信処理が可能である。RAM402はこのCPU400によるデータ処理等のワークエリアとして用いられ、一時的に複数スキャンの記録データ、及びインクジェット記録装置1000の回復処理動作及び供給動作に係るパラメータ等を保存することができる。画像入力部1403はホスト装置とのインターフェース1404を介し、ホスト装置から入力した画像を一時的に保持する。供給系制御回路1406はRAM1402に格納される供給処理プログラムに従って、供給系モータ1407の駆動制御を行う、加圧ポンプ1408を動作させる。この加圧ポンプの動作によってメインタンク内の加圧処理は制御される。
【0030】
回復系制御回路1408ではRAM1402に格納される回復処理プログラムに従って回復形モータの駆動制御を行い、吸引キャップ1410の上下動作及び、吸引ポンプ1411の動作等の回復動作を制御する。また、ヘッド駆動制御回路1412は、記録ヘッド1413のインク吐出用の駆動を制御し、記録のためのインク吐出を記録ヘッド1413に行わせる。キャリッジ駆動回路1414は画像処理部1403で入力された記録データに従い、記録ヘッド1413の主走査方向のスキャンを制御する。キャリッジ駆動回路1414による記録ヘッド1413のスキャン動作と紙送り制御回路1415による記録媒体の紙送りを繰り返すことにより、記録画像を完成させる。
【0031】
上述のような、メインタンクとサブタンクとの間が供給チューブによって接続されており、サブタンクから記録ヘッドにインクが供給される形式のインクジェット記録装置では、供給チューブに気泡が付着したままインクが記録ヘッドに供給されることがある。メインタンクからサブタンクに到るインク流路には、メインタンクの着脱、溶存ガスの析出、及び長期間放置による大気からの気体透過により、気泡が混入してしまう場合がある。気泡がインク流路に混入したままインクが記録ヘッドに到達すると、記録ヘッドからのインクの吐出が正常に行われなくなる可能性があり、所望の記録ができなくなる場合がある。そこで、本実施形態では、チョーク吸引と称するサブタンク内に残った気泡の排出工程が行われる。
【0032】
図6を用いて、サブタンク内に残った気泡の排出工程のフローについて説明する。まず、Step501で、チョーク吸引動作を開始する。チョーク吸引動作が開始されると、それまで記録が行われることで加圧ポンプの駆動が行われている場合には、Step502で加圧ポンプ105の駆動を停止する。加圧ポンプ105の駆動が停止されると、開閉弁108におけるダイアフラム302へのインク流路内のインクによる加圧が停止される。このとき、ダイアフラム302がばね部材303によって閉じる方向に付勢されているので、ダイアフラム302が閉じられる。
【0033】
続いて、記録ヘッド113に吸引キャップ115が取り付けられ、Step503で吸引動作(第1のインク吸引工程)が開始される。ここでは、開閉弁108が閉じられた状態で記録ヘッド側から吸引動作が行われる。開閉弁108が閉じられた状態で吸引キャップ115に接続された吸引ポンプ116が駆動されると、記録ヘッド113からインクが吸引され、記録ヘッド113内及びサブタンク400の負圧室405内の圧力が低下し、負圧室405内で負圧が発生する。そのまま吸引ポンプの駆動が続けられることで負圧室405内の負圧がある程度高まると、サブタンク400の供給制限弁402が開き、負圧室405とインク室403との間の流路が連通する。この状態で吸引ポンプ116によるインクの吸引が続けられると、記録ヘッド113から開閉弁108までのインク流路における圧力が低下し、この領域に負圧が発生する。
【0034】
このとき、記録ヘッド113から開閉弁108までのインク流路の圧力が負圧のまま維持されるので、インク流路内に気泡が存在する場合には、その気泡が膨張する。サブタンク400内に気泡が存在している場合に、記録ヘッド113から開閉弁108までのインク流路の圧力が低下することで気泡が膨張した際の気泡について、図7(a)に示す。図7(a)に示されるように、サブタンク400内の気泡が膨張すると、記録ヘッド113と開閉弁108との間でインク流れが生じたときに、インクの流れに乗って気泡がインクと共に移動し易くなる。そのため、気泡を記録ヘッドの外部に排出し易くなる。
【0035】
また、このときにはサブタンク400の供給制限弁402が開けられた状態にあるので、吸引ポンプ116の駆動によりインク室403内のインクが吸引され、インク室403内の圧力が低下する。インク室403内の圧力が低く、供給制限弁402が開けられている状態にあるので、サブタンク400に配置されたシート404は内側に変位する。サブタンク400内の圧力が低下したときに気泡が膨張した状態でシート404が内側に変位してインク流路の容積が減少するので、インク流路における気泡の占める割合が増加する。
【0036】
本実施形態では、サブタンク400内は約0.5atm程度まで減圧されるため、サブタンク内の気泡601は、およそ2倍の体積に膨張する。サブタンク内で気泡601が膨張し、またインク室403の容積が減少することにより、サブタンク400内のインク流路はほぼ気泡によって占められる。サブタンク400内のインク流路がほぼ気泡601で占められた際のサブタンク400内のインク流路について図7(b)に示す。このときサブタンク400内に収容しきれない気泡は、フィルター410を通過し、記録ヘッド113の方へ排出される。
【0037】
次に、図6のStep504で吸引ポンプが所定量駆動したかどうかが判定される。このとき、吸引ポンプによる所定量の駆動は、インク流路に所望の負圧が発生するまでの吸引ポンプによる駆動量である。吸引ポンプによる所定量の駆動は、予め設定された駆動量であってもよいし、インク流路内で図示しない負圧センサによってインク流路内の圧力が検出され、所定の負圧が検出されるまでの駆動量であってもよい。吸引ポンプによる駆動量が所定の駆動量に達しない場合は、図6のフローがStep503に戻って引き続き吸引ポンプによる駆動を継続する。
【0038】
吸引ポンプによる駆動量が所定量の吸引ポンプ駆動量に到達すると、吸引ポンプの駆動が停止する。そして、Step505で加圧ポンプの駆動が開始される。加圧ポンプが駆動されることにより、メインタンクからインクが供給チューブ107に供給される。加圧ポンプが駆動され続け、供給チューブ107の開閉弁108よりも上流側のインクの圧力が開閉弁108におけるダイアフラムを開けることが可能な圧力まで高まると、開閉弁108のダイアフラムが開けられる。これにより、開閉弁の上流側と下流側のインク流路が連通する。このとき、開閉弁108は開状態となっているので、メインタンクから供給されたインクは供給チューブを介してサブタンク400へと流入する(第1のインク供給工程)。サブタンク400内にインクが流入することにより、サブタンク400のインク室403及び負圧室405内の負圧が緩和される。また、サブタンク400内にインクが流入することにより、サブタンク400内に残って膨張していた気泡がインクに押し出されて記録ヘッドの方へ流される。これにより、サブタンク400内に残った気泡がサブタンク400の外部へ排出されて気泡排出が行われる。
【0039】
この動作の過程で、吸引ポンプが停止した状態でインク室403から負圧室405にインクが流入するので、負圧室405内部の負圧が減少する。そのため、インク室403内の負圧と負圧室405内の負圧の差が小さくなり、ばね部材406の付勢力によって供給制限弁402が閉じられる。供給制限弁が閉じられると、記録ヘッドからのインクの排出が止まり、Step506でチョーク吸引動作が終了する。
【0040】
サブタンク400にインクが充填されると、気泡の一部が記録ヘッドの方へ排出されたことから、気泡が小さくなってサブタンク400内に残される。小さくなった気泡が残されているサブタンク400について図7(c)に示す。加圧ポンプの動作によりメインタンクからインクが供給されサブタンク内のインク室403にインクが供給される。このときに生じるインク流によりサブタンク内の気泡はフィルター410を通過し、記録ヘッド113を介して排出される。このとき、サブタンク400、あるいは供給チューブ107の内部に、気泡602が一部残留する可能性がある。しかしながら、サブタンク内の気泡の体積をチョーク吸引動作が行われる前の気泡の体積と比較すると、サブタンク400から記録ヘッド113の方へ排出された気泡の分だけ気泡の体積が減少している。これにより、本実施形態では、サブタンク400内に残る気泡は、記録ヘッドからのインクの吐出影響を及ぼすような体積ではなくなっている。従って、大きな気泡が記録ヘッドへ連通するインク流路に残ることで、記録に影響を与えてしまうことを抑えることができる。
【0041】
本実施形態のチョーク吸引によるインク流路からの気泡の排出方法によれば、開閉弁108からサブタンクまでのインク流路内部の圧力を負圧にした状態で気泡を膨張させた後に、メインタンク101からサブタンク400にインクが供給される。このときのインク流れによって、気泡がサブタンク400から排出される。従って、インクが流れ易い状態でメインタンク101からサブタンク400へインクが供給されるので、供給チューブ107内に残っている気泡を効率良く排出できる。従って、供給チューブ107に残る気泡を少なく抑えることができ、供給チューブ107内に残る気泡が記録に影響を与えてしまうことを抑えることができる。
【0042】
このようなチョーク吸引動作によって記録ヘッドから排出することが可能な気泡は、サブタンク400内に残った気泡、もしくは、供給チューブ107におけるサブタンク400の近傍に位置する気泡である。そのため、チョーク吸引動作前には、インク流路内の気泡はなるべくサブタンク内、もしくは、その近傍に移動させることが望ましい。このような理由から、本実施形態では、チョーク吸引動作前に、気泡をサブタンクの方へ移動させるためのチョーク吸引前動作が行われる。
【0043】
図8を用いて、チョーク吸引動作前に、気泡をサブタンクの方へ移動させるためのチョーク吸引前動作フローについて説明する。また、図9(a)に、供給チューブ107に残っている気泡について示す。まず、Step701でチョーク吸引前動作が開始される。チョーク吸引前動作が開始されると、それまでに加圧ポンプの駆動が行われている場合には、Step702で加圧ポンプ105の駆動を停止する。加圧ポンプ105の駆動が停止されると、開閉弁108におけるダイアフラム302へのインク流路内のインクによる加圧が停止され、閉じる方向に付勢されているダイアフラム302が閉じられる。次に、記録ヘッド113に吸引キャップ115が取り付けられ、Step703で吸引動作が開始される。ここでは、開閉弁108が閉じられた状態で記録ヘッド側から吸引動作が行われる(第2のインク吸引工程)。吸引キャップ115に接続された吸引ポンプ116が駆動されることで記録ヘッド113からインクが吸引されると、記録ヘッド113内及びサブタンク400の負圧室405内の圧力が低下し、負圧室405内の負圧が高まる。負圧室405内の負圧がある程度高まると、サブタンク400の供給制限弁402が開き、負圧室405とインク室403との間の流路が連通する。この状態で吸引ポンプ116によるインクの吸引が続けられると、記録ヘッド113から開閉弁108までのインク流路における圧力が低下し、この領域に負圧が発生する。このとき、供給チューブ107内のサブタンク400近傍に気泡が存在する場合には、負圧によりその気泡が膨張する。このときの負圧によって、供給チューブ107内におけるサブタンク400の近傍に位置する気泡が膨張している状態について図9(b)に示す。
【0044】
次に、Step704で吸引ポンプが所定量駆動したかどうかが判定される。吸引ポンプによる駆動量が所定の駆動量に達していない場合は、Step703に戻って引き続き吸引ポンプによる駆動を継続する。Step704で吸引ポンプによる駆動量が所定の駆動量に到達すると、Step705で、カウンタnのリセットを行う。次に、Step706で、加圧ポンプ105の動作を開始する(第2のインク供給工程)。加圧ポンプ105が動作することにより、開閉弁108のダイアフラムが開状態となり、メインタンク101からインクが供給チューブ107に供給される。サブタンク400及び供給チューブ107内部が負圧のまま、開閉弁108を介してメインタンク101からインクが供給されるので、供給チューブ107の内部でメインタンク101側からサブタンク400側にインクの流れが生じる。このときのインク流れによって、供給チューブ107内で膨張させた気泡をサブタンク400側へ送る。供給チューブ107内で、サブタンク400側に送られている気泡について、図9(c)に示す。加圧ポンプ105が駆動されて所定時間経過した後に、Step707で加圧ポンプ105が停止する。ここでの所定時間とは、開閉弁108が開状態となってから、供給チューブ107内の圧力が正圧にならない程度までの短い時間である。
【0045】
Step706とStep707での加圧ポンプ105を駆動させる工程が行われている間は、継続して吸引ポンプ105は駆動されている(第2のインク吸引工程)。従って、加圧ポンプ105の駆動により供給されるインクの分だけ負圧は小さくなるが、加圧ポンプ105の駆動が行われている間にも、供給チューブ107内及びサブタンク400内の負圧はある程度保たれる。そのため、Step707での加圧ポンプ105の停止後は、開閉弁108が閉じられた状態で吸引ポンプ105がさらに駆動されるので、供給チューブ107内及びサブタンク400内の負圧量が低下したところから大きくなり、全体的に負圧量は一定に保たれる。
【0046】
フローがStep708に達すると、カウンタのnに1が加算され、Step709でカウンタの値が所定回数Aに達したか否かが判断される。カウンタの値が所定回数Aに達していなければ、フローはStep706に戻り、加圧ポンプ105を所定時間駆動させる。この加圧ポンプ105を駆動させる回数が所定回数Aに達するまで、この工程が繰り返される。加圧ポンプ105の駆動回数が所定回数Aに到達すれば、Step710でチョーク吸引前動作を終了する。
【0047】
図10に、チョーク吸引前動作における時間経過と供給チューブ107内の圧力との関係を表すグラフを示す。図10で、Aで示す点が図7のフローにおけるStep702に相当する加圧ポンプ停止時である。このときの供給チューブ内における気泡801は、図9(a)に示されるように、供給チューブ107の内側における上面に位置している。その後、Step703で吸引ポンプ動作が開始されるため、供給チューブ内で負圧が大きくなる。所定量の吸引ポンプ駆動が行われた点がBに示す点であり、この時のインク流路内における気泡802は図9(b)に示されるように、供給チューブ107内の負圧が大きくなっているため、気泡802が膨張している。そのため、気泡802は、膨張前の状態に比べ、インク流が発生したときに、インク流れによる力を受けやすい状態となっている。Bの直後に加圧ポンプ105の駆動によってメインタンク400から供給チューブ107内にインクが供給されると、供給チューブ107内での圧力分布によってインク流が発生する。膨張によって既に流れ易くなっている気泡802は、供給チューブ107内をサブタンク400方向へと流される。すなわち、供給チューブ107内の流速分布が生じる箇所や気泡がインク流路内壁に張り付いている場合等、気泡が流れにくい場合でも気泡を膨張させることにより流れ易くなる。図10に示されるCの区間は、Step706、707での、気泡802の負圧による膨張とインク流の発生を所定回数(A回)繰り返している時の供給チューブ107内の圧力を時間の経過と共に示している。この区間Cの間、供給チューブ107内の気泡は、図9(b)、(c)の状態を繰り返し、サブタンク内へと移動する。
【0048】
図11を用いて、メインタンク101からサブタンク400内までのインク流路に存在する気泡を排出させるためのチョーククリーニングシーケンスフローの全体について説明する。
【0049】
まず、Step901でチョーククリーニングシーケンスを開始する。そして、Step902で、上述したチョーク吸引前動作を行い、メインタンク101からサブタンク400入口までの供給チューブ107内に存在する気泡をサブタンク400内へ移動させる。チョーク吸引前動作が行われると、Step903で上述したチョーク吸引が行われる。このとき、Step902のチョーク吸引前動作で予めサブタンク400内へと移動させておいた気泡をサブタンク400から記録ヘッドを介して外部へ排出させる。チョーク吸引が行われると、Step904でチョーククリーニングシーケンスを終了する。
【0050】
このように、供給チューブ107内に残った気泡の排出方法として、本実施形態では、チョーク吸引前にインク供給路内を負圧に保持したままメインタンク101からサブタンク400の方へインクを流している。これにより、インク流路内に流速分布やインク流路内壁への気泡の付着が発生した場合でも、チョーク吸引前に気泡を膨張させることで気泡を流し易くした状態でインクがメインタンク101からサブタンク400の方へ送られる。
【0051】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態のメインタンク101からサブタンク400に到るまでの供給チューブ107内に残った気泡の排出方法について説明する。なお、上記第一実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
第一実施形態では、メインタンク101とサブタンク400との間の供給チューブ107に配置された開閉弁108におけるインク流路の開閉を行う弁としてとして、ダイアフラムを用いたものについて説明した。これに対して第二実施形態では、開閉弁108におけるインク流路の開閉を行う弁として電磁弁を用いたものについて説明する。
【0053】
図12(a)及び図12(b)は各色の供給チューブに設けられた開閉弁のうち、一例についての模式的な断面図を示す。図12(a)は開閉弁108’が閉じた状態を模式的に示した断面図、図10(b)は開閉弁108’が開いた状態を模式的に示した断面図である。
【0054】
メインタンク101より供給されたインクは供給チューブ107を通り、開閉弁108’へと流入する。開閉弁108’では、開閉弁流路301と電磁弁1001を有して流路が形成されている。電磁弁1001の先端と、電磁弁1001が閉じたときに開閉弁流路壁に当接する箇所は弾性部材1002によって形成されているので、電磁弁1001が図12(b)に示す様な閉状態の時は開閉弁流路301内のインク流路を塞ぐことができる。
【0055】
図6に示すフローチャートのチョーク吸引において、Step505で加圧ポンプが駆動される際に、電磁弁1001が開かれた状態になる。このとき、電磁弁1001は、所定量のインクがメインタンクからサブタンクへ供給される間の所定時間開かれる。Step505で加圧ポンプ105が停止すると、電磁弁1001も閉じられる。また、図7に示すチョーク吸引前動作において、Step706で加圧ポンプが駆動される際に電磁弁1001が開かれた状態になる。このときについても、電磁弁1001は、所定量のインクがメインタンクからサブタンクへ供給される間の所定時間開かれる。Step707で加圧ポンプ105が停止すると、電磁弁1001も閉じられる。
【0056】
また、記録時にサブタンク内部のインクが消費されてメインタンク101からサブタンク400へインクが供給される際にも、電磁弁1001が所定時間開けられてメインタンク101とサブタンク400との間のインク流路が連通する。
【0057】
このように、メインタンク101とサブタンク400との間のインク流路に設けられる開閉弁はダイアフラム以外の形式の弁であっても良く、メインタンクとサブタンクとの間のインク流路での開閉を行うことができるのであればその他の形式の弁であっても良い。
【0058】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態のメインタンク101からサブタンク400に到るまでの供給チューブ107内に残った気泡の排出方法について説明する。なお、上記第一実施形態及び第二実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
第一実施形態及び第二実施形態においては、開閉弁が開いた状態、もしくは閉じた状態の二つの状態のみが選択的に制御される開閉弁を用いた場合について説明した。これに対して、第三実施形態では、開閉弁によるインク流路の開放量を部分的に開けて、そこのインク流路を流れるインクの流量を調節可能な流量制御弁を用いた場合について説明する。
【0060】
本実施形態で用いられる開閉弁108’’は、図12(a)及び図12(b)と同様に電磁弁が用いられる。本実施形態では、図12(a)の開放状態と図12(b)の閉状態との中間状態として部分的に弁を開けるように制御を行うことが可能である。つまり、開閉弁108’’の開口面積を制御することにより、開閉弁108’’を流れるインクの流量を調節することが可能な流量制御弁になっている。
【0061】
第一実施形態及び第二実施形態に示された開閉弁では、開閉弁は全開の状態と全閉の状態との二つの状態しか有していない。従って、加圧ポンプを駆動させてメインタンクからサブタンク側へインクを供給する際には、開閉弁が全開の状態でインクがサブタンク側に供給される。開閉弁が全開状態のときにインクが開閉弁を通ってサブタンク側に供給されるので、比較的多くの流量のインクが開閉弁を流れ、これによって開閉弁よりもサブタンク側の供給チューブ内の圧力が低下する。その後加圧ポンプの駆動が停止して開閉弁が閉じられと開閉弁は全閉状態になり、その状態で吸引ポンプが継続して駆動される。開閉弁が全閉状態で吸引ポンプが駆動されるので、開閉弁よりもサブタンク側の供給チューブ内におけるインク流路の圧力が低下する。このような加圧ポンプの駆動と開閉弁の開閉動作を繰り返すことから、供給チューブにおけるインク流路内での圧力分布は波形を示している。
【0062】
これに対して第三実施形態の開閉弁108’’では、開閉弁108’’のインク流路を流れるインクの流量を調節できる。従って、チョーク吸引前動作のフローにおけるStep706で加圧ポンプが駆動される際に、開閉弁108’’が部分的に開けられることで、開閉弁108’’を流れるインクの流量が調節される。従って、加圧ポンプ105の駆動により開閉弁108’’よりもサブタンク側に供給されるインクの流量に応じて開閉弁108’’の開度を調節することができる。これにより、開閉弁108’’よりもサブタンク側の供給チューブ107内で負圧を維持したまま、適度な量のインクが開閉弁108’’を通って流されるので、開閉弁108’’の開閉動作を繰り返す必要がなく、開閉弁108’’の開度を一定に保つことができる。従って、開閉弁108’’よりもサブタンク側へインクを一定量流しながら、図13に示されるように供給チューブ107内でインクの圧力を負圧のまま一定に保つことができる。
【0063】
本実施形態では、このようにチョーク吸引前動作が行われるので、メインタンク101からサブタンク400へのインクの供給が間欠的ではなく、一定の流量のインク供給が連続して行われる。そのため、供給チューブ107内に気泡が残っている場合に、気泡を連続的にサブタンク側へ送ることができ、気泡をより効率的に送ることができる。
【符号の説明】
【0064】
113 記録ヘッド
101、102、103、104 メインタンク
107 供給チューブ
105 加圧ポンプ
116 吸引ポンプ
108 開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出口から吐出して記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに供給されるインクを貯留するインク収納体と、
前記記録ヘッドと前記インク収納体との間に接続され、前記インク収納体から前記記録ヘッドまでインクを流通させるインク流路と、
前記インク収納体に貯留されたインクを前記記録ヘッドに供給するためにインクを送り出すインク供給手段と、
前記記録ヘッドの前記吐出口からインクを吸引可能なインク吸引手段と、
前記インク流路に設けられ、前記インク流路の開閉動作を行うことが可能な弁機構とを有し、前記インク流路から気泡を排出するインクジェット記録装置の気泡排出方法であって、
前記弁機構を閉じた状態で前記インク吸引手段により前記記録ヘッドの前記吐出口からインクを吸引して前記インク流路に存在する気泡を膨張させる第1のインク吸引工程と、
前記第1のインク吸引工程の後に、前記弁機構を開けて、前記インク供給手段により前記インク収納体からインクを前記記録ヘッドに送り出す第1のインク供給工程と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置の気泡排出方法。
【請求項2】
前記弁機構は、前記インク流路の一部を構成するように配置されて前記インク流路を閉じる方向に付勢されたダイアフラムを有しており、
前記第1のインク供給工程で、前記インク収納体から前記インク供給手段によって送り出されたインクによって前記ダイアフラムを押す力が、前記ダイアフラムによる前記インク流路を閉じる方向への付勢力と、前記第1のインク吸引工程で前記吐出口から前記インク吸引手段による前記インク流路の負圧によって前記ダイアフラムを閉じる方向に引っ張る力と、を合わせた力を超えたときに、前記ダイアフラムが前記インク流路を開けることで前記弁機構を開けることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置の気泡排出方法。
【請求項3】
前記弁機構は、電磁弁を有しており、
前記第1のインク吸引工程で、前記電磁弁を制御することにより前記電磁弁を閉じ、
前記第1のインク供給工程で、前記電磁弁を制御することにより前記電磁弁を開けることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置の気泡排出方法。
【請求項4】
前記第1のインク吸引工程の前に、
前記弁機構を閉じた状態で前記インク吸引手段により前記記録ヘッドの前記吐出口からインクを吸引して前記インク流路に存在する気泡を膨張させる第2のインク吸引工程と、
前記弁機構を開けた状態で前記インク供給手段により前記インク収納体からインクを前記記録ヘッドに送り出して前記気泡を前記記録ヘッドの方へ移動させる第2のインク供給工程とが、繰り返し行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置の気泡排出方法。
【請求項5】
前記弁機構は、電磁弁を有しており、
前記電磁弁は、前記インク流路を部分的に開け、制御されることによって前記インク流路における開度を調節することが可能であり、
前記電磁弁の前記インク流路における開度を調節することで、前記第2のインク供給工程が行われるときに前記弁機構を流れるインクの流量を調節することを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置の気泡排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−126099(P2012−126099A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281933(P2010−281933)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】