説明

インクジェット記録装置

【課題】 記録ヘッドユニット5の交換等のメインテナンス作業を容易にする。
【解決手段】 横向きにインク導入口21を有する容器筐24の下面に記録ヘッド部10を備えた筐体7を、主ガイドレール3に装着した走査キャリッジ6に対して記録ヘッド部10のノズルの配置面と平行状に接近させ、走査キャリッジ6内のジョイント部材9の横向きのインク吐出口19とインク導入口21とを対面当接した状態で、筐体7を、その左右両側に基端部42aの回りに回動可能な平面視コ字状の緊張係合具42を介して走査キャリッジ6の上面の係合固定部に嵌め入れて固定する。筐体7の上面に印刷回路基板32を設け、その上面に、主ガイドレール3と平行状に長いコネクタ33を固定し、この本体部33aの接点にフレキシブルなフラットケーブル34の端子部を合わせ、上蓋体33bにて押えて電気的接続を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電式等のインクジェット記録装置の構成に係り、より詳しくは、走査キャリッジに対して着脱可能に搭載した記録ヘッドの構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、入力信号に基づいて記録ヘッドのノズルからインク滴を用紙等の被記録媒体に噴射して記録するインクジェット記録装置であって、供給すべきインクを前記記録ヘッドが搭載された走査キャリッジの外部に位置固定的に配置したインクタンク等のインク供給源から供給管を介して記録ヘッドに送るように構成したものとして、例えば、特開平2000−218822号公報では、メインテナンスや部品の交換を容易にするために、被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動自在な走査キャリッジにおける上面開放筐型の記録ヘッドハウジング内には、記録ヘッドが配置されると共にヒートシンクによって複数の収容室に区画され、記録ヘッドには、記録ヘッドハウジングからヒートシンクを部分的に下方に延出して構成されたインク吐出口が設けられ、ヒートシンクには回路基板が設けられ、この回路基板には、図示しない制御装置からフレキシブルケーブルを介して画像情報に対応した画像信号が入力されるようになっている。その場合、前記フレキシブルケーブルの中途部が走査キャリッジの基端側の縦板に貫通装着されていた。
【0003】また、記録ヘッドハウジングの収容室の各々には、インクの各色に対応して複数設けられたサブタンクが収容されるよう構成されている。そして、この各サブタンクに突出したアームの先端を走査キャリッジの一側上部の枢支軸を中心に上下回動可能に連結され、サブタンクにおけるガイドカバーに設けたロック装置により、サブタンクが下方位置(前記収容室内の所定位置で略水平になって記録ヘッドにインクが供給可能位置)にて走査キャリッジに固定できるように構成されている。走査キャリッジ外のメインタンクから前記サブタンクにはインク供給チューブを介してインクが供給されるものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来公知の構成によれば、走査キャリッジに対して接離回動可能なサブタンクの下方であって、走査キャリッジの底板とサブタンクとで挟まれたヒートシンクにフラットケーブルが連結されているから、前記サブタンクを走査キャリッジから大きく引き離した後でないと、フラットケーブルを取り外すことができず、しかも走査キャリッジの基端側の縦板を貫通したフレキシブルケーブルの先端(端子部)を、前記縦板と対向するヒートシンクの縦面の位置で回路基板に固定していたため、作業空間が極めて狭くなり、記録ヘッドの交換時に、フレキシブルケーブルとの結線部を外す作業が容易でないという問題があった。
【0005】本発明は、このような問題を解消すべくなされたものであって、走査キャリッジに対する記録ヘッドの着脱作業が容易であって、フレキシブルフラットケーブルの着脱作業が容易で且つ小型化に寄与できるようにしたインクジェット記録装置を提供することを技術的課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この技術的課題を達成するため、請求項1に記載の発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動自在な走査キャリッジに対して記録ヘッドを着脱可能に搭載し、前記走査キャリッジ外のインク供給源から供給管を介して前記記録ヘッドにインクを供給すると共に、記録ヘッドに、駆動電気信号を走査キャリッジの外からフラットケーブルを介して伝達するように構成してなるインクジェット記録装置において、前記走査キャリッジには、インク供給源からの供給管に接続するジョント部材を設ける一方、前記記録ヘッドには、前記ジョイント部材のインク吐出口と接続可能なインク導入口と、制御用回路基板と、コネクタとを備え、前記走査キャリッジと記録ヘッドとの連結状態において、前記コネクタを介して前記フラットケーブルを着脱可能に接続したものである。
【0007】そして、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドに配置する前記制御用回路基板及び前記コネクタは、前記記録ヘッドのノズルの配置面と反対側に設け、前記走査キャリッジと記録ヘッドとを、前記被記録媒体に対する記録ヘッドのノズルの配置面と略平行な方向に沿って接離可能に連結すると共に、この接離する方向に沿って前記インク導入口と前記インク吐出口とを接離可能に構成したものである。
【0008】また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置において、前記インク導入口と前記インク吐出口とが前記ノズルの配置面と平行状に当接して密閉されるように、前記走査キャリッジと前記記録ヘッドとを、係合手段を介して固定したものである。
【0009】そして、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドと、前記インク導入口とを有し、記録ヘッドにインクを供給する供給路形成部材とを一体的支持する筐体をさらに備え、該筐体に前記コネクタを設け、その筐体を前記走査キャリッジに対して前記係合手段を介して固定したことを特徴とするものである。
【0010】請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドはカラー用の複数色のインクに各々対応させるノズル列を有し、前記ジョント部材は、その内部に各色毎のインク流通路を備えたものである。
【0011】請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記走査キャリッジと前記筐体とを固定した状態で、その走査キャリッジの一端を、当該走査キャリッジを移動自在に案内する一方のガイド部材に支持し、その一端とほぼ反対側の前記筐体の端部を、他のガイド部材に移動自在に支持したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面について説明する。図1は、本発明を適用するインクジェット記録装置の概略平面図、図2は記録ヘッドユニットの要部拡大平面図、図3は記録ヘッドユニットの側断面図、図4は走査キャリッジと筐体とを分離した状態を示す斜視図である。
【0013】まず、図1を参照して、インクジェット記録装置1の要部について説明すると、インクジェット記録装置1の本体ケース2内のフレーム4に、左右方向(図1で矢印X方向、以下、主走査方向という)に長手の主ガイドレール3及び副ガイドレール45の両端を固定する。該主ガイドレール3及び副ガイドレール45には、記録ヘッドユニット5を左右往復移動可能に装着し、図示しないタイミングベルトと駆動モータ等の駆動手段により、所定範囲内で主走査方向に往復動させるように構成されている。
【0014】前記記録ヘッドユニット5は、走査キャリッジ6と、下面に記録ヘッド部10を備えた筐体7等とからなり、記録ヘッドとしての筐体7は後に詳述すように走査キャリッジ6に対して略水平方向に着脱可能に連結されている。
【0015】図1において、用紙Pの搬送面よりも下方には、4色(マゼンタ(赤色)、イエロー(黄色)、シアン(青色)、ブラック(黒色))のインクを別個に収納できる4つのインク供給源としてのインクカートリッジ8(個別の符号は8a,8b,8c,8d)が横一列状に配置されている。この各インクカートリッジ8a〜8dにそれぞれ基端が連結された合成樹脂製等の可撓性を有するインク供給管11(個別の符号は11a〜11d)の先端部は、前記走査キャリッジ6内に固定されたインク供給用のジョイント部材9に連結し、そのジョイント部材9から筐体7内のインク流路(後に詳述する)を介して記録ヘッド部10にインクが供給されるように構成されている。
【0016】実施形態においては、記録ヘッド部10(個別の符号は10a,10b,10c,10d)は、カラーの画像形成のために、4色(マゼンタ(赤色)、イエロー(黄色)、シアン(青色)、ブラック(黒色))のための4つの記録ヘッドが平行に配置され、各インクは各記録ヘッド部10の下面のノズルから下向きに吐出され、被記録媒体の一例としての用紙Pの表面に付着させるものである(図3参照)。この用紙Pは図1においてY方向(以下、副走査方向という)に搬送される。そのために、図3に示すように、前記記録ヘッドユニット5より下方位置に搬送方向上流側の一対の搬送ローラ12a,12bと下流側の一対の搬送ローラ12c,12d等からなる搬送装置を備えている。
【0017】また、図1の本体ケース2の左端部(走査キャリッジ6の移動範囲内の端部)には、回復動作(吸引パージ)のための吸引キャップ13と、各記録ヘッドの表面を拭き清掃するためのワイパーブレード14とが、前記記録ヘッド部10と対向するように配置されており、吸引パージ時には、吸引キャップ13が記録ヘッドの前面(下面)のノズル部を覆うように接近密着するように構成されている。前記吸引キャップ13に接続した吸引パイプ15は図示しない吸引ポンプを介して、廃棄タンク、例えば、前記インクカートリッジ8(8a〜8dのうちの1つ)における廃棄区域に接続されており、吸引パージにより吸い出される廃棄インクが前記箇所(廃棄区域)に排出されるようになっている。なお、回復動作のための装置としては、上記の吸引による方法のほか、ヘッドのインクの供給側からインクに高い圧力を付与する方法もある。
【0018】図2〜図8を参照しながら、記録ヘッドユニット5の構成を詳述する。まず、走査キャリッジ6は、図2、図3及び図4に示すように、前記主ガイドレール3に被嵌する基部6aと、該基部6aから本体ケース2の前方(前記インクカートリッジ8の配置位置と反対側)に開放された収納空間を有するジョイント収納部6bと、該ジョイント収納部6bからさらに前方に延びる左右一対の支持枠6c,6cとが合成樹脂材にて一体成形されたものである。
【0019】そして、前記ジョイント収納部6bに内に固定される合成樹脂製のジョイト部材9は、図6〜図8に示すように、左右に長い密閉箱体であって、下ケース9aと上ケース9bと上ケース9bの上面を覆う蓋体9cとからなり、図6(b)に示すように、下ケース9a及び上ケース9bの左右両側の開口部内に設けた接続口16a〜16dには、前記各インクカートリッジ8a〜8dに接続した合成樹脂製の供給管11a〜11dの他端を嵌合させる。その場合、図3及び図4に示すように、ジョイント収納部6bの左右両側方に切欠き溝20、20を形成し、該切欠き溝20、20内に供給管11a〜11dの中途部を通過させることにより、各供給管11a〜11dが略水平状態のまま前記ジョイント部材9の接続口16a〜16dに対して接続できるように構成されている。
【0020】そして、接続口16aに連通する流路17a(図6(a)、図7(b)、図8(b)及び図8(c)参照)は前記下ケース9a及び上ケース9bに跨がって形成され、該流路17aは、図6(a)及び図6(b)に示すように、ジョント部材9の左から2番目のインク吐出口19aに連通している。他方、接続口16bに連通する流路17b(図6(a)、図7(b)、図8R>8(a)及び図8(c)参照)は、上ケース9aのみに形成されており、該流路17bは図6(a)及び図6(b)に示すように、左から1番目のインク吐出口19bに連通している。同様にして、接続口16cに連通して上ケース9aのみに形成された流路17cはジョント部材9の右端(4番目)のインク吐出口19cに連通している。他方、接続口16dに連通して下ケース9a及び上ケース9bに跨がって形成された流路17dはジョント部材9の左から3番目のインク吐出口19dに連通している。各インク吐出口19a〜19dは、ジョイント部材9の前面から前向きで略水平状に突出形成されている。
【0021】他方、合成樹脂製の筐体7内には、各記録ヘッド部10a,10b,10c,10d毎に対応する色のインクが溜まり且つ気泡を捕捉できるエアトラップ23(各色毎の個別の符号は23a,23b,23c,23d)が形成されたインク供給路形成部材としての容器筐24を固定する(図2、図5参照)。
【0022】前記筐体7の後端には、インク導入口21(個別の符号は21a,21b,21c,21d)がエアトラップ23a,23b,23c,23dから後向き略水平状に突出形成されており、前記走査キャリッジ6内のジョイント部材9における前記各インク吐出口19(個別の符号は19a,19b,19c,19d)に対面する高さ位置にある。インク導入口21とインク吐出口19とを接続する場合には、前記各インク吐出口19a〜19dに被嵌させた筒状のシールリング22を介して、各インク導入口21a〜21d毎にその外周が密閉されるように構成する。シールリング22は弾性体として、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリロゴム(NBR)、イソプレンゴム、ブチレンゴム、フッ素系ゴム等にて構成することが好ましい。
【0023】容器筐24の下面には、従来から公知の構成の記録ヘッド部10が固定され、各記録ヘッド部10の下面にはインク滴を下向きに吐出するためのノズルが列状に配置されており、前記各エアトラップ23内のフィルタ25を通過して通路26から供給されたインクを、従来から公知の構成、例えば各ノズル毎のインク室に分配し、圧電素子等のアクチュエータ30によってノズルから吐出させるように構成されている。なお、前記ノズル列の箇所を除き、カバープレート31にて筐体7の下面を覆い、用紙Pの表面と対峙させている(図3及び図5参照)。
【0024】また、前記筐体7の上面側には、図2、図3R>3及び図4に示すように、制御用回路基板の一例としての印刷回路基板32が固定されており、該印刷回路基板32の上面には、横長のコネクタ33が、前記主ガイドレール3と略平行状に固定されている。該コネクタ33は本体部33aに対して上下回動する上蓋体33bを有し、本体部33aの上面には、その長手方向に一定ピッチ(実施例では0.5mピッチ)で多数の接点が配置されている。図示しないコンピュータ等の外部機器もしくは本体ケース2内のコントローラに一端が接続されたフレキシブルなフラットケーブル34の他端の各端子部を、前記各接点に合わせるようにして本体部33a上に搭載し、上蓋体33bを閉めると、各端子と接点との電気的導通が可能となる。フラットケーブル34は途中部を走査キャリッジ6のジョイント収納部6bの天井面とジョイント部材9との間に固定され、切欠き溝20から引き出される。
【0025】他方、前記印刷回路基板32の下面側に一端を半田固定したフラットケーブル35は、前記容器筐24の外側であって、前記インク導入口19の配置側と反対側面を介して、前記記録ヘッド部10におけるアクチュエータ30に固定して電気的に接続する。
【0026】これにより、通常、フラットケーブル34がコネクタ33に接続されている状態では、前記フラットケーブル34を介して、図示しないコンピュータ等の外部機器もしくは本体ケース2内のコントローラから画像形成のための指令及び画像データ等の駆動電気信号を印刷回路基板32に伝送し、前記アクチュエータ30を駆動させる。
【0027】そして、後述するように、走査キャリッジ6に対して筐体7を取り外すに際しては、前記上蓋体33bを上方に開くと、本体部33aの接点とフラットケーブル34の各端子部とが簡単に外れるので、筐体7のメインテナンスや交換作業が至極容易となる。
【0028】次に、前記走査キャリッジ6に対する筐体7の着脱及び固定のための構成について説明する。図2R>2、図3及び図4はその第1実施形態を示し、前記走査キャリッジ6における左右両側の板状の支持枠6c,6c(支持部の一例)の各内面の下端縁等には、略水平状にて前方に延びるガイドレール40、40が設けられており、筐体7の左右両側外面には、前記各ガイドレール40に被嵌する凹溝状の案内溝41が形成されている。このガイドレール40と案内溝41とは、前記記録ヘッド部10のノズルの配置面と略平行の方向に前記ジョント部材9に接近案内するための一対の支持手段の一例となる。筐体7側に突条のガイドレールを形成し、走査キャリッジ6の支持枠6c,6c側に凹溝を形成しても良い。
【0029】また、平面視略コ字状の屈曲させた金属製ワイヤ等からなる緊張固定具42の両足42b,42bの端部を内向きに折り曲げた両基端部42a,42aを、前記筐体7の左右両側側面の前部位(基部6aから遠く離れた側)に回動可能に装着しておく。
【0030】他方、前記基部6aとジョイント収納部6bとの間であって、走査キャリッジ6上面には、前記緊張固定具42の両足42b,42bの先端間を繋いだ係合部42cが嵌まり係合する溝状の係合固定部43を形成しておく。
【0031】前記の構成によれば、筐体7内の記録ヘッド部10や容器筐24を交換する等のメインテナンスのときには、前述のように、コネクタ33に対してフラットケーブル34を外した後、前記緊張係合具42の係合部42cを走査キャリッジ6の係合固定部43から外して水平方向に抜き出し、所定の交換作業等を実行したのち、図4に示すように、主ガイドレール3に装着された走査キャリッジ6に対して筐体7が分離された状態から、走査キャリッジ6の左右両側の支持枠6c,6cの間に、記録ヘッド部10が下面に装着された筐体7を略水平状に挿入する。つまり、前記走査キャリッジ6に対して筐体7を、その後端部の後向きのインク導入口21と、走査キャリッジ6における前向きのインク吐出口19とを対向させて挿入する。これにより、筐体7の左右両側の案内溝41、41が支持枠6c,6cの内面のガイドレール40、40に案内されて、全ての前記インク導入口21が対応するインク吐出口19における筒状のシールリング22に嵌まりながら、各インク吐出口19と対面当接し、両流路が連通する状態となる。この状態で、係合手段としての前記緊張固定具42を、その左右両側足42b,42bが走査キャリッジ6の左右両側の支持枠6c,6cの外側を囲むようにして回動させ、緊張固定具42自体の弾性力を利用して、係合部42cを、走査キャリッジ6における上面の溝状の係合固定部43に係合固定するのである。これにより、筐体7が走査キャリッジ6から外れないようになると共に、前記全てのインク導入口21が対応するインク吐出口19と密接でき、その箇所からのインクの漏出を確実に防止することができるのである。
【0032】前記の係合固定作業を実行した後、フラットケーブル34の端子部を、コネクタ33の本体部33aにおける各接点に合わせ、上蓋体33bを閉じれば、電気的接続作業も終了できる。このフラットケーブル34及びコネクタ33が走査キャリッジ6及び筐体7の上面側(記録ヘッド部10のノズルの配置面と反対側)に配置されていることにより、メインテナンスの作業者は大きい作業空間でフラットケーブル34の着脱作業が至極簡単にできるのである。
【0033】走査キャリッジ6と筐体7とを外れ不能に連結係合するための係合手段は、前述のコ字状の緊張固定具42を走査キャリッジ6側に基端を回動可能に装着し、筐体7側に溝状の係合固定部43を設けても良い。また、前記ワイヤ状の緊張固定具42に代えて、フックレバー状のものにて前記両者を係脱するように構成しても良い。
【0034】そして、筐体7の前端側の略水平状の案内溝44に対して、副ガイドレール45(図3参照)を嵌め入れ、該副ガイドレール45を前記本体ケース2のフレーム4等に固定すれば、一方のガイド部材としての主ガイドレール3と、他方のガイド部材としての副ガイドレール45とにより、記録ヘッドユニット5は両端支持され、筐体7の下面の記録ヘッド部10のノズル面と、用紙Pの搬送経路との隙間を一定に保持しながら、記録ヘッドユニット5を主走査方向に往復移動させることができるのである。
【0035】以上のように、本発明では、走査キャリッジ6に対して記録ヘッドとしての筐体7を、用紙P(被記録媒体)に対する記録ヘッド部10のノズルからのインクの吐出方向と交差する方向(換言すると、ノズルの配置面と略平行状)に沿って接離可能に構成すると共に、前記接離する方向に沿って記録ヘッドとしての筐体7におけるインク導入口21と前記ジョント部材9のインク吐出口19とを接離可能に構成したから、インク導入口21及びインク吐出口19のノズルの配置面からの高さ位置(ノズルからのインクの吐出方向に沿う高さ位置)を短くでき、且つ容器筐24内のインク流路を横長(ノズルの配置面と略平行状)に設定できる結果、インク流路となる容器筐24の高さ寸法を大きくする必要がなく、コンパクトにできる。
【0036】また、筐体7を案内支持するための走査キャリッジ6における一対の支持部としての支持枠6c,6cも横長に形成でき、高さ寸法を大きくする必要がないから、筐体7及び走査キャリッジ6の高さ寸法を小さくできて、記録ヘッドユニット5全体をコンパクトにできるという効果を奏する。
【0037】さらに、前記走査キャリッジ6と前記記録ヘッドとしての筐体7とを、係合手段である緊張固定具42を介して固定する場合に、この緊張固定具42に弾性力を備えていると、インク導入口21とインク吐出口19とを前記弾性的付勢力にて密接できるから、両口の当接箇所でのインクの漏出を確実に防止できるのである。
【0038】本発明におけるジョイント部材9及び容器筐4内に、カラー画像形成のための複数の色のインクを別々に流通させるようにインク流路を形成した場合にも、ジョイント部材9及び容器筐を小型化できるという効果を奏する。本発明においては、被記録媒体の搬送経路を縦方向とし、走査キャリッジ6の開放側を上向きにとなし、記録ヘッドとしての筐体7を走査キャリッジ6に対して上方から着脱自在とするように構成しても良い。
【0039】
【発明の効果】以上に詳述したように、請求項1に記載の発明のインクジェット記録装置は、被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動自在な走査キャリッジに対して記録ヘッドを着脱可能に搭載し、前記走査キャリッジ外のインク供給源から供給管を介して前記記録ヘッドにインクを供給すると共に、記録ヘッドに、駆動電気信号を走査キャリッジの外からフラットケーブルを介して伝達するように構成してなるインクジェット記録装置において、前記走査キャリッジには、インク供給源からの供給管に接続するジョント部材を設ける一方、前記記録ヘッドには、前記ジョイント部材のインク吐出口と接続可能なインク導入口と、制御用回路基板と、コネクタとを備え、前記走査キャリッジと記録ヘッドとの連結状態において、前記コネクタを介して前記フラットケーブルを着脱可能に接続したものである。
【0040】従って、前記走査キャリッジと記録ヘッドとが連結状態において、フラットケーブルを記録ヘッドに設けたコネクタの箇所で着脱作業できるから、従来のものに比べて、記録ヘッドの交換等のメインテナンス時におけるフラットケーブルの装着、取外し作業が簡単になるという効果を奏する。
【0041】そして、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドに配置する前記制御用回路基板及び前記コネクタは、前記記録ヘッドのノズルの配置面と反対側に設け、前記走査キャリッジと記録ヘッドとを、前記被記録媒体に対する記録ヘッドのノズルの配置面と略平行な方向に沿って接離可能に連結すると共に、この接離する方向に沿って前記インク導入口と前記インク吐出口とを接離可能に構成したものである。前記コネクタが記録ヘッドのノズルの配置面と反対側に配置されているから、メインテナンス作業時に作業者の手をノズルの配置面に近づけることなく、コネクタからフラットケーブルを着脱できて、手が汚れず、他方、前記走査キャリッジと記録ヘッドとの接離方向と平行状に記録ヘッドを移動させるだけで、前記インク導入口と前記インク吐出口とを合わせたり、外したりでき、記録ヘッドの脱着作業も簡単にできるという効果を奏する。
【0042】また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置において、前記インク導入口と前記インク吐出口とが前記ノズルの配置面と平行状に当接して密閉されるように、前記走査キャリッジと前記記録ヘッドとを、係合手段を介して固定したものである。
【0043】従って、走査キャリッジに対して記録ヘッドを接離する方向は、記録ヘッドにおけるノズルの配置面と略平行状となり、この接離方向に沿わせて記録ヘッドにおけるインク導入口と前記ジョント部材のインク吐出口とを接離可能に構成したから、記録ヘッドの高さ寸法(ノズルからのインクの吐出方向に沿う高さ寸法)を大きくする必要がなく、記録ヘッドユニットをコンパクトにできると共に、係合手段による記録ヘッドと走査キャリッジとの連結にて、インク導入口と前記インク吐出口とが密接してインク漏れも簡単に防止できるという効果を奏する。
【0044】そして、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドと、前記インク導入口とを有し、記録ヘッドにインクを供給する供給路形成部材とを一体的支持する筐体をさらに備え、該筐体に前記コネクタを設け、その筐体を前記走査キャリッジに対して前記係合手段を介して固定したことを特徴とするものである。
【0045】こような筐体を、その剛性、強度を利用してコネクタの支持部とするので、コネクタの支持部材を別途必要とせず、記録ヘッドユニットをコンパクトにできるという効果を奏する。
【0046】請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドはカラー用の複数色のインクに各々対応させるノズル列を有し、前記ジョント部材は、その内部に各色毎のインク流通路を備えたものであるから、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のハウジングによる効果に加えて、ジョイント部材及び記録ヘッドに、カラー画像形成のための複数の色のインクを別々に流通させるようにインク流路を形成した場合にも、これらの部品を小型化できるという効果を奏する。
【0047】請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記走査キャリッジと前記筐体とを固定した状態で、その走査キャリッジの一端を、当該走査キャリッジを移動自在に案内する一方のガイド部材に支持し、その一端とほぼ反対側の前記筐体の端部を、他のガイド部材に移動自在に支持したものである。従って、走査キャリッジと記録ヘッドとしての筐体を一体化した記録ヘッドユニットは、前記一対のガイド部材にて両端支持されて主走査方向に案内できるので、筐体の下面の記録ヘッド部のノズル面と、被記録媒体の搬送経路との隙間を一定に保持できて、画像形成の品質を保持できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるインクジェット記録装置の平面図である。
【図2】記録ヘッドユニットの平面図である。
【図3】記録ヘッドユニットの側面図である。
【図4】走査キャリッジに対して筐体を外した状態の斜視図である。
【図5】筐体の側断面図である。
【図6】ジョイント部材を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図7】(a)は図6(b)におけるVIIa−VIIa線矢視図、(b)は図6(b)におけるVIIb−VIIb線矢視図である。
【図8】(a)は図6(a)における VIIIa−VIIIa 線矢視図、(b)は図6(a)におけるVIIIb −VIIIb 線矢視図、(c)は図6(a)における VIIIc−VIIIc 線矢視図である。
【符号の説明】
3 主ガイドレール
5 記録ヘッドユニット
6 走査キャリッジ
7 筐体
8 インクカートリッジ
9 ジョイント部材
10 記録ヘッド部
11 インク供給管
19 インク吐出口
21 インク導入口
22 シールリング
24 容器筐
32 印刷回路基板
33 コネクタ
33a 本体部
33b 上蓋体
34 フラットケーブル
40 ガイドレール
41 案内溝
42 緊張係合具
44 案内溝
45 副ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動自在な走査キャリッジに対して記録ヘッドを着脱可能に搭載し、前記走査キャリッジ外のインク供給源から供給管を介して前記記録ヘッドにインクを供給すると共に、記録ヘッドに、駆動電気信号を走査キャリッジの外からフラットケーブルを介して伝達するように構成してなるインクジェット記録装置において、前記走査キャリッジには、インク供給源からの供給管に接続するジョント部材を設ける一方、前記記録ヘッドには、前記ジョイント部材のインク吐出口と接続可能なインク導入口と、制御用回路基板と、コネクタとを備え、前記走査キャリッジと記録ヘッドとの連結状態において、前記コネクタを介して前記フラットケーブルを着脱可能に接続したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】 前記記録ヘッドに配置する前記制御用回路基板及び前記コネクタは、前記記録ヘッドのノズルの配置面と反対側に設け、前記走査キャリッジと記録ヘッドとを、前記被記録媒体に対する記録ヘッドのノズルの配置面と略平行な方向に沿って接離可能に連結すると共に、この接離する方向に沿って前記インク導入口と前記インク吐出口とを接離可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】 前記インク導入口と前記インク吐出口とが前記ノズルの配置面と平行状に当接して密閉されるように、前記走査キャリッジと前記記録ヘッドとを、係合手段を介して固定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】 前記記録ヘッドと、前記インク導入口とを有し、記録ヘッドにインクを供給する供給路形成部材とを一体的支持する筐体をさらに備え、該筐体に前記コネクタを設け、その筐体を前記走査キャリッジに対して前記係合手段を介して固定したことを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】 前記記録ヘッドはカラー用の複数色のインクに各々対応させるノズル列を有し、前記ジョント部材は、その内部に各色毎のインク流通路を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】 前記走査キャリッジと前記筐体とを固定した状態で、その走査キャリッジの一端を、当該走査キャリッジを移動自在に案内する一方のガイド部材に支持し、その一端とほぼ反対側の前記筐体の端部を、他のガイド部材に移動自在に支持したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【公開番号】特開2003−136698(P2003−136698A)
【公開日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−337892(P2001−337892)
【出願日】平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】