インクジェット記録装置
【課題】搬送ベルトの蛇行を軽減し、記録品質及び記録速度の低下を招くことなく目詰り予防吐出を可能とするインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】搬送ベルトV上に載置されて搬送される記録媒体Pの搬送面とは反対側の面である記録面PPにノズルからインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置1であって、
記録面PPに対向して配設され、前記ノズルの複数を記録媒体Pの搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドHD1〜HD5を備え、
搬送ベルトVに、搬送ベルトVが一周する間に所定のタイミングで固定ヘッドHD1〜HD5に対向する目詰り予防吐出用開口を、搬送ベルトVの前記搬送方向に交差する幅方向の中心線に関して対称に形成したことを特徴とする。
【解決手段】搬送ベルトV上に載置されて搬送される記録媒体Pの搬送面とは反対側の面である記録面PPにノズルからインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置1であって、
記録面PPに対向して配設され、前記ノズルの複数を記録媒体Pの搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドHD1〜HD5を備え、
搬送ベルトVに、搬送ベルトVが一周する間に所定のタイミングで固定ヘッドHD1〜HD5に対向する目詰り予防吐出用開口を、搬送ベルトVの前記搬送方向に交差する幅方向の中心線に関して対称に形成したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関し、特に、インクが吐出されるノズルの目詰りの予防に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置における記録速度の高速化の要望から、多数のノズルが記録媒体の幅以上の長さに亘って配列されたライン型の記録ヘッド(以下、ラインヘッドという)を備えたインクジェット記録装置(以下、ラインヘッド型インクジェット記録装置という)が実用化されている。
このラインヘッド型インクジェット記録装置では、記録媒体は、記録される面がラインヘッドのノズルが形成された面に対向して連続的又は間欠的に搬送される。また、ラインヘッドは、搬送されてくる記録媒体の記録される面に向けて、配列された多数のノズルの中から記録すべき情報に基づいて選択的にインク滴を吐出する。つまり、ラインヘッド型インクジェット記録装置は、記録ヘッドの移動をともなわず、記録媒体を一方向に移動させるだけでその記録媒体に対する記録を完了するものである。以降、本明細書においては、記録ヘッドの移動をともなわず、記録媒体の移動のみで記録を完了するインクジェット記録装置をラインヘッド型インクジェット記録装置と総称する。
【0003】
ラインヘッド型に限らず、インクジェット記録装置の記録ヘッドにおいては、インク滴が吐出されるノズルからインクの溶媒が蒸発してノズル内のインクの粘度が上昇してしまい、最悪の場合には固化してしまったり、ノズル内に異物が侵入してしまったりしてノズルの目詰りが発生し、ノズルからインク滴を吐出する性能が低下してしまうことがある。そこで、インクジェット記録装置は、ノズル内のインク粘度の上昇や目詰りによって吐出性能が低下してしまう前に、記録とは関係なくインク滴を吐出して目詰りを予防する目詰り予防吐出を行い、良好な記録品質が維持されるように構成されている。
【0004】
上記ラインヘッド型インクジェット記録装置においては、従来、一対の搬送ローラ間にかけ渡されて記録媒体を搬送する搬送ベルトに複数の穴を形成し、これら複数の穴を通してインク滴を吐出することにより、多数の記録媒体に連続的に記録を行っても、目詰り予防吐出が記録完了までの時間を長期化してしまうことを回避する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−113690号公報(第6頁、図2及び図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、図15(a)に示すように、軸JK1と軸JK2との間に掛け渡される搬送ベルトVに形成された複数の穴は、搬送ベルトVの幅の中心線CLに関して非対称に設けられている。そして、軸JK2に図15(b)に示すF方向に力を付与して搬送ベルトVに引張り荷重を付与すると、搬送ベルトVは、同図に示すように、同図で見て上下の辺が中心線CLに関して非対称に変形する。つまり、搬送ベルトVを中心線CLに関して非対称に変形させる力の作用によって、記録媒体の搬送の際に、搬送ベルトが幅方向に移動しながら回転してしまうという蛇行現象が発生してしまう。なお、この図15(b)において、引張り荷重を付与する前の搬送ベルトVの形状を二点鎖線で示している。
【0006】
すなわち、この蛇行現象によって搬送ベルトV上に載置される記録媒体も蛇行するため、インクジェット記録装置の記録品質を向上することが困難であるという未解決の課題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、搬送ベルトの蛇行を軽減し、記録品質及び記録速度の低下を招くことなく目詰り予防吐出を可能とするインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の発明は、搬送ベルト上に載置されて搬送される記録媒体の搬送面とは反対側の面である記録面にノズルからインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録面に対向して配設され、前記ノズルの複数を前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドを備え、前記搬送ベルトに、該搬送ベルトが一周する間に所定のタイミングで前記固定ヘッドに対向する目詰り予防吐出用開口を、前記搬送ベルトの前記搬送方向に交差する幅方向の中心線に関して対称に形成したことを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0008】
上記の構成によれば、搬送ベルトが一周する間に所定のタイミングで固定ヘッドに対向する搬送ベルトの目詰り予防吐出用開口は、搬送ベルトの幅方向の中心線に関して対称に設けられる。従って、この搬送ベルトに所定の引張り荷重を付与しても、搬送ベルト変形を上記中心線に関して対称とすることができる。
上記により、記録媒体の搬送の際に、搬送ベルトが幅方向に移動しながら回転してしまうという蛇行現象を軽減することが可能となる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記目詰り予防吐出用開口は、前記固定ヘッドの一部に対向する開口部の複数を、前記搬送ベルトの前記搬送方向とは交差する方向に前記記録領域に亘って配列形成して構成されることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
上記の構成によれば、搬送ベルトの目詰り予防吐出用開口は、複数の開口部を記録領域に亘って配列形成して構成される。すなわち、固定ヘッドの記録領域を複数に分割し、その分割された記録領域ごとに各開口部が対向する。
【0010】
上記により、開口部の面積を、固定ヘッドの全記録領域に一つの目詰り予防吐出用開口が対向する場合の開口面積より小さくすることができる。従って、搬送ベルトに所定の引張り荷重を付与した際に、搬送ベルトが大きく変形してしまうことを軽減することが可能となる。
また、第3の発明は、第2の発明において、前記固定ヘッドは、複数の前記ノズルを所定の長さに亘って配列形成した複数の記録ヘッドを、前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に並べて配設した構成を有し、前記開口部は、前記記録ヘッドごとに対向することを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0011】
上記の構成によれば、開口部が記録ヘッドごとに対向するため、記録とは無関係にインク滴を吐出する目詰り予防吐出を記録ヘッドごとに制御して実施させることができる。
上記により、一つの固定ヘッドで記録領域を構成し、この記録領域を分割した分割記録領域ごとに制御して目詰り予防吐出を実施させる場合に比較して、目詰り予防吐出の制御が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置1は、平面図である図1(a)に示すように、ゲートローラGRと、静電気付与部ECと、用紙搬送部CVと、記録ヘッドHD1〜HD5と、排紙部EJと、を備えている。また、このインクジェット記録装置1は、正面図である図1(b)に示すように、後述する搬送ベルトVの内側にインク吸収部PDを備えている。
【0013】
ここで、上記の各構成の詳細を説明する。
用紙搬送部CVは、用紙搬送部CVの平面図である図2(a)に示すように、搬送部駆動モーターM0から動力が伝達される駆動軸DSと、この駆動軸DSに平行且つ駆動軸DSの上流側に配設される従動軸FSと、駆動軸DS及び従動軸FSにかけ渡される搬送ベルトVと、駆動軸DS及び従動軸FSのそれぞれを回転可能に図示しない筐体に保持する軸受BRと、を備えている。
【0014】
ここで、従動軸FSは、図示しないが、駆動軸DSとの間にかけ渡される搬送ベルトVに緩みが発生しないように張力を付与するため、上流方向に力が付与されている。
そして、搬送ベルトVは、搬送部駆動モーターM0の動力によって、図1(b)で見て反時計方向に回転され、搬送ベルトV上に載置された記録用紙Pを搬送方向であるX方向に搬送する。
【0015】
この搬送ベルトVには、図2(a)に示すように、各記録ヘッドHD1〜HD5に対応した開口部WD1〜WD5が設けられている。これらの開口部WD1〜WD5は、開口の形状及び面積が同等に設定され、X方向の下流側から開口部WD4を先頭にして、開口部WD1及びWD2、開口部WD3及びWD5の順で設けられている。
これら開口部WD1〜WD5のうち、開口部WD4は、図2(a)中のC部拡大図である図2(b)に示すように、搬送ベルトVの幅の中心線CLを開口のY方向の幅の中心として設けられ、開口部WD1及びWD2は、中心線CLから同等の距離W1を隔てて、X方向に直交する方向であるY方向に隣り合い、開口部WD3及びWD5は、中心線CLから同等の距離W2を隔ててY方向に隣り合って設けられている。つまり、これら開口部WD1〜WD5は、中心線CLに関して対称に設けられている。
【0016】
各開口部WD1〜WD5は、搬送ベルトVが搬送部駆動モーターM0の動力によって1回転する間に、各記録ヘッドHD1〜HD5に1回ずつ対向するように設けられている。
また、用紙搬送部CVは、搬送ベルトVの回転を制御するための基準となるインデックス信号を出力するインデックスセンサーISを備えている。
このインデックスセンサーISは、例えば、フォトインタラプタ等の発光素子及び受光素子を備えた光学式センサーで構成され、搬送ベルトVに設けられているインデックス部IDを検出し、各記録ヘッドHD1〜HD5が記録を行うタイミングや、後述する目詰り予防吐出のタイミングなどを計るきっかけとなるインデックス信号を出力する。
【0017】
記録ヘッドHD1〜HD5は、図1(a)に示すように、Y方向に間隔Hを有して隣り合う記録ヘッドHD1及びHD2のX方向の下流側に、記録ヘッドHD3〜HD5が、Y方向にこれら記録ヘッド同士の間に間隔Hを有して且つ記録ヘッドHD1及びHD2とはY方向に交互に、整列して配設されている。
また、これら記録ヘッドHD1〜HD5は、図1(b)に示すように、それぞれ用紙搬送部CV上で、インク滴が吐出されるノズルを記録用紙Pの記録面PPに向けて配設されている。
【0018】
ここで、記録ヘッドHD1〜HD5に設けられているノズルの配列について説明する。なお、記録ヘッドHD1〜HD5は、説明の便宜上、異なる符号を付してあるが、同一のものであり、ここでは、記録ヘッドHD1を例に説明する。
図3は、記録ヘッドHD1の外観を示す図であり、図3(a)は、図1(a)中のA視方向正面図であり、図3(b)は、底面図である。なお、この図3において、ノズルをわかりやすく示すため、ノズルの大きさを誇張して且つ個数を減じて図示している。
【0019】
記録ヘッドHD1は、図3(b)に示すように、イエロー色のインクが吐出されるイエローノズルNZY、マゼンタ色のインクが吐出されるマゼンタノズルNZM、シアン色のインクが吐出されるシアンノズルNZC及びブラック色のインクが吐出されるブラックノズルNZKを備えている。
各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKは、X方向に配列形成されるとともに、Y方向に配列距離LNに亘って配列形成されてイエローノズル列NZYL、マゼンタノズル列NZML、シアンノズル列NZCL及びブラックノズル列NZKLを構成する。これら各色ノズル列NZYL、NZML、NZCL、NZKLの配列距離LNが記録ヘッドHD1の記録幅となる。
【0020】
そして、図1(a)に示す記録ヘッドHD1及びHD2をX方向に平行移動させ、記録ヘッドHD1、HD2、HD3、HD4及びHD5をY方向に整列させると、図4に示すように、記録ヘッドHD1〜HD5の各色ノズル列NZYL、NZML、NZCL、NZKLがY方向に整列し、各色1本のノズル列を構成する。なお、この図4において、記録ヘッドHD1及びHD2を二点鎖線で示している。ここで、上述した記録ヘッド同士の間隔Hは、ノズルの配列距離LNとの関係がH<LNであり、且つ記録ヘッドHD1及びHD2と記録ヘッドHD3〜HD5とのY方向の端部のノズルの位置がX方向から見て重なるように設定されている。つまり、これら各色1本のノズル列は、ノズルの配列距離LNが記録ヘッドHD1〜HD5の個数分(ここでは、5個分)Y方向に整列した距離に亘る記録領域を構成する。
【0021】
なお、記録ヘッドHD1〜HD5としては、圧電素子、加熱素子等によりインクに圧力を付与してインク滴を吐出する記録ヘッドを採用することができる。
インク吸収部PDは、図1(b)中のB−B断面を模式的に示す図である図5に示すように、搬送ベルトVの内側で、後述する目詰り予防吐出によるインクを吸収するインク吸収体CTが記録用紙Pの搬送経路PCを挟んで記録ヘッドHD1〜HD5に対向して配設されている。
【0022】
このインク吸収体CTは、フェルト、スポンジ等の液体を吸収する能力が高い材料から構成され、図示しない筐体に支持されている支持板SJ上に配設されるケースCS内に備えられている。なお、この図5では、構成をわかりやすくするため、駆動軸DSからX方向の下流側を省略し、記録ヘッドHD2及びHD1の断面詳細を省略して図示している。
ここで、前述したインクジェット記録装置1の各主要部の制御のつながりについて説明する。
【0023】
インクジェット記録装置1は、前述した主要構成の他に、ブロック図である図6に示すように、記録用紙PをゲートローラGRに給紙する給紙部KSをさらに備えている。
また、インクジェット記録装置1は、給紙部KSを制御する給紙制御部KSDと、ゲートローラGRを制御するゲートローラ制御部GRDと、静電気付与部ECを制御する静電気付与制御部ECDと、インデックスセンサーISを制御するセンサー制御部SDと、搬送部駆動モーターM0を制御するモーター制御部MDと、各記録ヘッドHD1〜HD5を制御する記録ヘッド制御部HDDと、排紙部EJを制御する排紙制御部EJDと、外部機器からの記録情報を格納する記録情報格納部BFと、記録情報に基づいて上記の各制御部KSD、GRD、ECD、SD、MD、HDD、EJDに動作の指令を出すCPUと、を備えている。
【0024】
次に、インクジェット記録装置1における記録の動作について、以下に説明する。
図1に示すインクジェット記録装置1は、外部機器から記録情報及び記録指令を受けると、記録の動作を開始する。
記録の動作が開始されると、CPUがモーター制御部MDへ搬送部駆動指令を送り、搬送部駆動モーターM0は、モーター制御部MDによって、搬送ベルトVを図1(b)で見て反時計方向に回転させるように、駆動が制御される。
【0025】
これと同時に又はこれより遅れて、CPUは、ゲートローラGRへの記録用紙Pの供給を指示する給紙指令を給紙制御部KSDに送る。
CPUから給紙指令を受けた給紙制御部KSDは、給紙部KSを制御し、複数の記録用紙Pが格納されている図示しない用紙カセットから記録用紙Pを1枚ずつゲートローラGRに供給させる。
【0026】
ゲートローラGRは、記録用紙Pが供給されると、この記録用紙PをX方向に対する傾き及びY方向の位置ずれを矯正する。
そして、インデックス部IDが、図7に示すように、インデックスセンサーISの発光素子及び受光素子間の光軸を遮ると、インデックスセンサーISからCPUにインデックス信号が出力される。
【0027】
CPUは、インデックス信号が入力されると、各記録ヘッドHD1〜HD5が記録用紙Pに記録を行う時間の計測を開始するとともに、ゲートローラ制御部GRDにゲートローラGRの駆動を制御させ、記録用紙Pを用紙搬送部CVへ送り出す。このとき、搬送ベルトVの開口部WD1〜WD5を閉塞しないように、記録用紙Pを搬送ベルトV上に載置することが望ましい。
【0028】
記録用紙Pが用紙搬送部CVに送り出される間に、CPUからの指令に基づいて静電気付与制御部ECDが静電気付与部ECを制御し、記録用紙Pを帯電させる。
帯電して搬送ベルトVへの吸着力を有した記録用紙Pは、搬送部駆動モーターM0の駆動によって、図1(b)で見て反時計方向に回転されている搬送ベルトVの外周面に吸着し、記録ヘッドHD1及びHD2下へ導かれる。
【0029】
そして、CPUは、計測している時間で記録ヘッドHD1及びHD2による記録を開始するタイミングになったときに、記録ヘッド制御部HDDに第一の記録指令を送る。
記録ヘッド制御部HDDは、第一の記録指令に基づいて、記録ヘッドHD1及びHD2を制御し、搬送ベルトVによってノズル面NZP下を連続的に移動されてくる記録用紙Pの記録面PPに、記録情報に基づいて各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKから選択的にインク滴を吐出させて第一の記録を行う。
【0030】
第一の記録が行われた記録用紙Pは、搬送ベルトVによってさらに搬送され、記録ヘッドHD3〜HD5下へ導かれる。
そして、CPUは、計測している時間が記録ヘッドHD3〜HD5による記録を開始するタイミングになったときに、記録ヘッド制御部HDDに第二の記録指令を送る。
記録ヘッド制御部HDDは、第二の記録指令に基づいて、上記第一の記録の際と同様に記録ヘッドHD3〜HD5を制御して第二の記録を実施させる。
【0031】
この第二の記録が終了すると、一枚の記録用紙Pに対する記録が終了し、その記録用紙Pは、排紙制御部EJDが制御する排紙部EJによってインクジェット記録装置1外へ排出される。
ここで、記録情報のすべてに対する記録が終了していると、記録動作が終了し、未記録の記録情報が残っていると、上記給紙タイミングで新たな記録用紙PをゲートローラGRに供給して記録情報のすべてに対する記録が完了するまで記録動作を継続する。
【0032】
次に、インクジェット記録装置1における目詰り予防吐出の処理及び動作について、以下に説明する。ここで、目詰り予防吐出は、ノズル内のインク粘度の上昇や目詰りによって吐出性能が低下してしまう前に、記録とは関係なくノズルからインク滴を吐出して目詰りを予防するために行われる。
この目詰り予防吐出は、インクジェット記録装置1の電源がオフからオンになったとき、インクジェット記録装置1の電源がオンになっている状態で記録が行われずに所定時間が経過したとき、ユーザーが任意に指示したときなどに、CPUが図8に示す目詰り予防吐出処理を開始することによって動作が開始される。
【0033】
まず、ステップS1において、モーター制御部MDへ搬送部駆動指令を出力し、モーター制御部MDに、搬送ベルトVが図1(b)で見て反時計方向に回転するように、搬送部駆動モーターM0を制御させてステップS2に移行する。
このステップS2において、インデックス信号が入力されたか否かを判定し、入力された(YES)と判定されると、ステップS3に移行し、入力されていない(NO)と判定されると、インデックス信号が入力されるまで待機する。
【0034】
そして、インデックス部IDが、図7に示すように、インデックスセンサーISの発光素子及び受光素子間の光軸を遮ると、インデックスセンサーISからCPUにインデックス信号が出力される。
CPUは、インデックス信号が入力されると、ステップS3において、タイマーを起動し、各開口部WD1〜WD5が各記録ヘッドHD1〜HD5に対向するまでに要する時間の計測を開始してステップS4に移行する。
【0035】
このステップS4において、計測している時間Taが所定時間T1に達したか否かを判定し、達した(YES)と判定されると、ステップS5に移行し、達していない(NO)と判定されると、所定時間T1に達するまで待機する。
そして、計測している時間Taが所定時間T1に達して、図9(a)に示すように、開口部WD4が記録ヘッドHD4に対向するタイミングになると、ステップS5において、CPUは、記録ヘッド制御部HDDに第一の目詰まり予防吐出指令を出力してステップS6に移行する。
【0036】
記録ヘッド制御部HDDは、第一の目詰り予防吐出指令に基づいて、記録ヘッドHD4を制御し、図9(a)のD−D断面図である図9(b)に示すように、開口部WD4を経てインク吸収部PDのインク吸収体CTに向けて、各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKからインク滴を吐出させる。
ここで、各開口部WD1〜WD5の開口形状は、記録ヘッドHD1〜HD5のノズル面NZPの形状より大きく設定されている。つまり、各記録ヘッドHD1〜HD5が各開口部WD1〜WD5に対向した状態で、各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKから吐出されたインク滴を、搬送ベルトVに付着させることなく各開口部WD1〜WD5を通過させることができる。なお、この図9(b)では、構成をわかりやすくするため、駆動軸DSからX方向の下流側を省略し、記録ヘッドHD3〜HD5の断面詳細を省略して図示している。
【0037】
そして、ステップS6において、計測している時間Taが所定時間T2に達したか否かを判定し、達した(YES)と判定されると、ステップS7に移行し、達していない(NO)と判定されると、所定時間T2に達するまで待機する。
そして、計測している時間Taが所定時間T2に達して、図10(a)に示すように、開口部WD1及びWD2が記録ヘッドHD1及びHD2に対向するタイミングになると、ステップS7において、CPUは、記録ヘッド制御部HDDに第二の目詰まり予防吐出指令を出力してステップS8に移行する。
【0038】
記録ヘッド制御部HDDは、記録ヘッドHD4の際と同様に、第二の目詰り予防吐出指令に基づいて、記録ヘッドHD1及びHD2を制御して各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKからインク吸収体CTに向けてインク滴を吐出させる。
ステップS8において、計測している時間Taが所定時間T3に達したか否かを判定し、達した(YES)と判定されると、ステップS9に移行し、達していない(NO)と判定されると、所定時間T3に達するまで待機する。
【0039】
そして、記録ヘッドHD1、HD2及びHD4の際と同様に、計測している時間Taが所定時間T3に達して、図10(b)に示すように、開口部WD3及びWD5が記録ヘッドHD3及びHD5に対向するタイミングになると、ステップS9において、CPUは、記録ヘッド制御部HDDに第三の目詰り予防吐出指令を出力してステップS10に移行する。
【0040】
記録ヘッド制御部HDDは、第三の目詰り予防吐出指令に基づいて、記録ヘッドHD1、HD2及びHD4の際と同様に、記録ヘッドHD3及びHD5を制御し、インク吸収体CTに向けてインク滴を吐出させる。
ステップS10において、タイマーをリセットして処理を終了する。
なお、この目詰り予防吐出処理及び動作において、インク滴をインク吸収体CTに向けて吐出させる際に、搬送部駆動モーターM0の駆動を制御して搬送ベルトVの回転速度を低下させたり、搬送ベルトVの回転を停止させたりしてもかまわない。
【0041】
また、本実施形態において、記録ヘッドHD1〜HD5が固定ヘッドに対応し、開口部WD1〜WD5が目詰り予防吐出用開口に対応している。
上記により、開口部WD1〜WD5が搬送ベルトVの中心線CLに関して対称に設けられているため、搬送ベルトVに引張り荷重を付与しても、図11に示すように、搬送ベルトVの変形を中心線CLに関して対称にすることができる。従って、記録媒体Pの搬送の際に、搬送ベルトVを幅方向に移動させようとする力が中心線CLに関して対称に、すなわち互いに打ち消す方向に作用し、蛇行現象を軽減することが可能となる。なお、この図11において、引張り荷重を付与する前の搬送ベルトVの形状を二点鎖線で示している。
【0042】
また、インク滴を通過させて目詰り予防吐出を可能とする目詰り予防吐出用開口を、記録ヘッドごとに対向する開口部WD1〜WD5で構成しているため、一つの開口で構成する場合に比較して、各開口部WD1〜WD5の開口面積を小さくすることができる。従って、搬送ベルトVに引張り荷重を付与した際に、搬送ベルトVが大きく変形してしまうことを軽減し、記録品質の低下を抑えることが可能となる。また、目詰り予防吐出を記録ヘッドごとに制御することが可能であるため、一つの固定ヘッドで構成される記録領域を分割して制御する場合に比較して、制御が容易となり、制御にかかる処理の時間短縮や、回路構成の簡略化が可能となる。
【0043】
また、記録ヘッドHD1〜HD5は、これらの記録ヘッド同士間で、記録幅LNの一部がX方向から見て重なるように配設されているため、X方向から見て重なる位置にある各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKから重複してインク滴を吐出することができる。すなわち、記録ヘッド同士間の記録の境界部において、二つの記録ヘッドによって重複してインク滴が吐出されるため、未記録の記録面PPが筋状に露出してしまうことを抑制することが可能となる。
【0044】
また、記録ヘッドHD1〜HD5同士間で記録幅LNの一部がX方向から見て重なるように配設されていても、目詰り予防吐出用開口を記録ヘッドごとに対向する開口部WD1〜WD5で構成することができ、開口の面積が増大してしまうことを抑制することが可能となる。
なお、本実施形態では、開口部WD1〜WD5を、図2に示すように、X方向の下流側から開口部WD4を先頭にして、開口部WD1及びWD2、開口部WD3及びWD5の順で設けるようにしたが、これに限定されず、図12に示すように、開口部WD4を開口部WD3と開口部WD5との間に設け、開口部WD3〜WD5をY方向に整列させるようにしてもよい。
【0045】
この構成によれば、図2に示す場合に比較して、開口部WD1〜WD5のX方向の配列距離を短縮することができ、用紙搬送部CVを小型化することが可能となる。
また、本実施形態では、固定ヘッドを、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック色のインク滴を吐出するイエローノズルNZY、マゼンタノズルNZM、シアンノズルNZC及びブラックノズルNZKのそれぞれを備えた記録ヘッドHD1〜HD5で構成するようにしたが、これに限定されない。すなわち、図13(a)に示すように、各色に対応したイエロー記録ヘッドHDY、マゼンタ記録ヘッドHDM、シアン記録ヘッドHDC及びブラック記録ヘッドHDKで構成してもよい。
【0046】
この構成によれば、各ヘッドY1〜Y5、M1〜M5、C1〜C5、K1〜K5のノズル面の面積を低減することができるため、それに対応して各開口部HD1〜HD5の開口面積も低減することが可能となる。従って、張力による搬送ベルトVの変形を軽減することが可能となり、一層記録品質の向上に寄与することができる。
また、本実施形態では、記録領域を、個別の記録ヘッドHD1〜HD5で構成するようにしたが、これに限定されず、図13(b)に示すように、一体の記録ヘッドHDで構成してもよい。
【0047】
この場合、一体の記録ヘッドHDを各開口部WD1〜WD5が対向する領域ごとに制御することで、目詰り予防吐出が可能となる。
この構成によれば、図1に示す場合に比較して、記録ヘッドHD1〜HD5のX方向の配列距離を短縮することができ、用紙搬送部CVを一層小型化することが可能となる。
また、上述した図13(a)に示す例では、各色の記録ヘッドHDY、HDM、HDC及びHDKは、各ヘッドY1〜Y5、M1〜M5、C1〜C5、K1〜K5を、記録幅LNがY方向に沿うように配設して構成されるようにしたが、これに限定されず、図14に示すように、例えば、各6個のヘッドYi(i=1〜6)、Mi、Ci、Kiを、記録幅LNがY方向から所定角度傾くように配設してもよい。
【0048】
この場合、開口部WD1〜WD3は、図14で見て略菱形の形状を有し、開口面積がヘッドYi、Mi、Ci、KiのうちY方向に隣り合う二つに同時に対向可能な大きさに設定される。つまり、開口部WD1は、ブラック記録ヘッドHDKのヘッドK1及びK2に同じタイミングで対向し、その後、搬送ベルトVの回転にともなって順次、ヘッドC1及びC2、ヘッドM1及びM2、ヘッドY1及びY2に対向していく。同様に、開口部WD2は、ヘッドK3及びK4、ヘッドC3及びC4、ヘッドM3及びM4、ヘッドY3及びY4に順次対向し、開口部WD3は、ヘッドK5及びK6、ヘッドC5及びC6、ヘッドM5及びM6、ヘッドY5及びY6に順次対向する。
【0049】
この構成によれば、各色の記録ヘッドHDY、HDM、HDC及びHDKの記録領域におけるY方向のノズル密度を高めることができ、記録画質の向上が図られるとともに、開口部WD1〜WD3の数を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の主要構成を示す外観図。
【図2】本発明の実施形態における用紙搬送部の構成を示す平面図。
【図3】記録ヘッドの外観を示す図。
【図4】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の記録領域を説明する図。
【図5】インク吸収部の構成を示す断面図。
【図6】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の主要部の制御のつながりを示すブロック図。
【図7】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置のインデックスセンサーがインデックス部を検出した状態を示す図。
【図8】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の目詰り予防吐出処理の流れを説明する図。
【図9】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の目詰り予防吐出を説明する図。
【図10】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の目詰り予防吐出の動作の流れを説明する図。
【図11】本発明の実施形態の効果を説明する図。
【図12】本発明の実施形態における用紙搬送部の他の構成例を示す平面図。
【図13】記録ヘッドの他の構成例を示す図。
【図14】記録ヘッドのさらに他の構成例を示す図。
【図15】従来技術の課題を説明する図。
【符号の説明】
【0051】
1…インクジェット記録装置、V…搬送ベルト、WD1〜WD5…開口部、HD1〜HD5…記録ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関し、特に、インクが吐出されるノズルの目詰りの予防に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置における記録速度の高速化の要望から、多数のノズルが記録媒体の幅以上の長さに亘って配列されたライン型の記録ヘッド(以下、ラインヘッドという)を備えたインクジェット記録装置(以下、ラインヘッド型インクジェット記録装置という)が実用化されている。
このラインヘッド型インクジェット記録装置では、記録媒体は、記録される面がラインヘッドのノズルが形成された面に対向して連続的又は間欠的に搬送される。また、ラインヘッドは、搬送されてくる記録媒体の記録される面に向けて、配列された多数のノズルの中から記録すべき情報に基づいて選択的にインク滴を吐出する。つまり、ラインヘッド型インクジェット記録装置は、記録ヘッドの移動をともなわず、記録媒体を一方向に移動させるだけでその記録媒体に対する記録を完了するものである。以降、本明細書においては、記録ヘッドの移動をともなわず、記録媒体の移動のみで記録を完了するインクジェット記録装置をラインヘッド型インクジェット記録装置と総称する。
【0003】
ラインヘッド型に限らず、インクジェット記録装置の記録ヘッドにおいては、インク滴が吐出されるノズルからインクの溶媒が蒸発してノズル内のインクの粘度が上昇してしまい、最悪の場合には固化してしまったり、ノズル内に異物が侵入してしまったりしてノズルの目詰りが発生し、ノズルからインク滴を吐出する性能が低下してしまうことがある。そこで、インクジェット記録装置は、ノズル内のインク粘度の上昇や目詰りによって吐出性能が低下してしまう前に、記録とは関係なくインク滴を吐出して目詰りを予防する目詰り予防吐出を行い、良好な記録品質が維持されるように構成されている。
【0004】
上記ラインヘッド型インクジェット記録装置においては、従来、一対の搬送ローラ間にかけ渡されて記録媒体を搬送する搬送ベルトに複数の穴を形成し、これら複数の穴を通してインク滴を吐出することにより、多数の記録媒体に連続的に記録を行っても、目詰り予防吐出が記録完了までの時間を長期化してしまうことを回避する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−113690号公報(第6頁、図2及び図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、図15(a)に示すように、軸JK1と軸JK2との間に掛け渡される搬送ベルトVに形成された複数の穴は、搬送ベルトVの幅の中心線CLに関して非対称に設けられている。そして、軸JK2に図15(b)に示すF方向に力を付与して搬送ベルトVに引張り荷重を付与すると、搬送ベルトVは、同図に示すように、同図で見て上下の辺が中心線CLに関して非対称に変形する。つまり、搬送ベルトVを中心線CLに関して非対称に変形させる力の作用によって、記録媒体の搬送の際に、搬送ベルトが幅方向に移動しながら回転してしまうという蛇行現象が発生してしまう。なお、この図15(b)において、引張り荷重を付与する前の搬送ベルトVの形状を二点鎖線で示している。
【0006】
すなわち、この蛇行現象によって搬送ベルトV上に載置される記録媒体も蛇行するため、インクジェット記録装置の記録品質を向上することが困難であるという未解決の課題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、搬送ベルトの蛇行を軽減し、記録品質及び記録速度の低下を招くことなく目詰り予防吐出を可能とするインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の発明は、搬送ベルト上に載置されて搬送される記録媒体の搬送面とは反対側の面である記録面にノズルからインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録面に対向して配設され、前記ノズルの複数を前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドを備え、前記搬送ベルトに、該搬送ベルトが一周する間に所定のタイミングで前記固定ヘッドに対向する目詰り予防吐出用開口を、前記搬送ベルトの前記搬送方向に交差する幅方向の中心線に関して対称に形成したことを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0008】
上記の構成によれば、搬送ベルトが一周する間に所定のタイミングで固定ヘッドに対向する搬送ベルトの目詰り予防吐出用開口は、搬送ベルトの幅方向の中心線に関して対称に設けられる。従って、この搬送ベルトに所定の引張り荷重を付与しても、搬送ベルト変形を上記中心線に関して対称とすることができる。
上記により、記録媒体の搬送の際に、搬送ベルトが幅方向に移動しながら回転してしまうという蛇行現象を軽減することが可能となる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記目詰り予防吐出用開口は、前記固定ヘッドの一部に対向する開口部の複数を、前記搬送ベルトの前記搬送方向とは交差する方向に前記記録領域に亘って配列形成して構成されることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
上記の構成によれば、搬送ベルトの目詰り予防吐出用開口は、複数の開口部を記録領域に亘って配列形成して構成される。すなわち、固定ヘッドの記録領域を複数に分割し、その分割された記録領域ごとに各開口部が対向する。
【0010】
上記により、開口部の面積を、固定ヘッドの全記録領域に一つの目詰り予防吐出用開口が対向する場合の開口面積より小さくすることができる。従って、搬送ベルトに所定の引張り荷重を付与した際に、搬送ベルトが大きく変形してしまうことを軽減することが可能となる。
また、第3の発明は、第2の発明において、前記固定ヘッドは、複数の前記ノズルを所定の長さに亘って配列形成した複数の記録ヘッドを、前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に並べて配設した構成を有し、前記開口部は、前記記録ヘッドごとに対向することを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0011】
上記の構成によれば、開口部が記録ヘッドごとに対向するため、記録とは無関係にインク滴を吐出する目詰り予防吐出を記録ヘッドごとに制御して実施させることができる。
上記により、一つの固定ヘッドで記録領域を構成し、この記録領域を分割した分割記録領域ごとに制御して目詰り予防吐出を実施させる場合に比較して、目詰り予防吐出の制御が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置1は、平面図である図1(a)に示すように、ゲートローラGRと、静電気付与部ECと、用紙搬送部CVと、記録ヘッドHD1〜HD5と、排紙部EJと、を備えている。また、このインクジェット記録装置1は、正面図である図1(b)に示すように、後述する搬送ベルトVの内側にインク吸収部PDを備えている。
【0013】
ここで、上記の各構成の詳細を説明する。
用紙搬送部CVは、用紙搬送部CVの平面図である図2(a)に示すように、搬送部駆動モーターM0から動力が伝達される駆動軸DSと、この駆動軸DSに平行且つ駆動軸DSの上流側に配設される従動軸FSと、駆動軸DS及び従動軸FSにかけ渡される搬送ベルトVと、駆動軸DS及び従動軸FSのそれぞれを回転可能に図示しない筐体に保持する軸受BRと、を備えている。
【0014】
ここで、従動軸FSは、図示しないが、駆動軸DSとの間にかけ渡される搬送ベルトVに緩みが発生しないように張力を付与するため、上流方向に力が付与されている。
そして、搬送ベルトVは、搬送部駆動モーターM0の動力によって、図1(b)で見て反時計方向に回転され、搬送ベルトV上に載置された記録用紙Pを搬送方向であるX方向に搬送する。
【0015】
この搬送ベルトVには、図2(a)に示すように、各記録ヘッドHD1〜HD5に対応した開口部WD1〜WD5が設けられている。これらの開口部WD1〜WD5は、開口の形状及び面積が同等に設定され、X方向の下流側から開口部WD4を先頭にして、開口部WD1及びWD2、開口部WD3及びWD5の順で設けられている。
これら開口部WD1〜WD5のうち、開口部WD4は、図2(a)中のC部拡大図である図2(b)に示すように、搬送ベルトVの幅の中心線CLを開口のY方向の幅の中心として設けられ、開口部WD1及びWD2は、中心線CLから同等の距離W1を隔てて、X方向に直交する方向であるY方向に隣り合い、開口部WD3及びWD5は、中心線CLから同等の距離W2を隔ててY方向に隣り合って設けられている。つまり、これら開口部WD1〜WD5は、中心線CLに関して対称に設けられている。
【0016】
各開口部WD1〜WD5は、搬送ベルトVが搬送部駆動モーターM0の動力によって1回転する間に、各記録ヘッドHD1〜HD5に1回ずつ対向するように設けられている。
また、用紙搬送部CVは、搬送ベルトVの回転を制御するための基準となるインデックス信号を出力するインデックスセンサーISを備えている。
このインデックスセンサーISは、例えば、フォトインタラプタ等の発光素子及び受光素子を備えた光学式センサーで構成され、搬送ベルトVに設けられているインデックス部IDを検出し、各記録ヘッドHD1〜HD5が記録を行うタイミングや、後述する目詰り予防吐出のタイミングなどを計るきっかけとなるインデックス信号を出力する。
【0017】
記録ヘッドHD1〜HD5は、図1(a)に示すように、Y方向に間隔Hを有して隣り合う記録ヘッドHD1及びHD2のX方向の下流側に、記録ヘッドHD3〜HD5が、Y方向にこれら記録ヘッド同士の間に間隔Hを有して且つ記録ヘッドHD1及びHD2とはY方向に交互に、整列して配設されている。
また、これら記録ヘッドHD1〜HD5は、図1(b)に示すように、それぞれ用紙搬送部CV上で、インク滴が吐出されるノズルを記録用紙Pの記録面PPに向けて配設されている。
【0018】
ここで、記録ヘッドHD1〜HD5に設けられているノズルの配列について説明する。なお、記録ヘッドHD1〜HD5は、説明の便宜上、異なる符号を付してあるが、同一のものであり、ここでは、記録ヘッドHD1を例に説明する。
図3は、記録ヘッドHD1の外観を示す図であり、図3(a)は、図1(a)中のA視方向正面図であり、図3(b)は、底面図である。なお、この図3において、ノズルをわかりやすく示すため、ノズルの大きさを誇張して且つ個数を減じて図示している。
【0019】
記録ヘッドHD1は、図3(b)に示すように、イエロー色のインクが吐出されるイエローノズルNZY、マゼンタ色のインクが吐出されるマゼンタノズルNZM、シアン色のインクが吐出されるシアンノズルNZC及びブラック色のインクが吐出されるブラックノズルNZKを備えている。
各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKは、X方向に配列形成されるとともに、Y方向に配列距離LNに亘って配列形成されてイエローノズル列NZYL、マゼンタノズル列NZML、シアンノズル列NZCL及びブラックノズル列NZKLを構成する。これら各色ノズル列NZYL、NZML、NZCL、NZKLの配列距離LNが記録ヘッドHD1の記録幅となる。
【0020】
そして、図1(a)に示す記録ヘッドHD1及びHD2をX方向に平行移動させ、記録ヘッドHD1、HD2、HD3、HD4及びHD5をY方向に整列させると、図4に示すように、記録ヘッドHD1〜HD5の各色ノズル列NZYL、NZML、NZCL、NZKLがY方向に整列し、各色1本のノズル列を構成する。なお、この図4において、記録ヘッドHD1及びHD2を二点鎖線で示している。ここで、上述した記録ヘッド同士の間隔Hは、ノズルの配列距離LNとの関係がH<LNであり、且つ記録ヘッドHD1及びHD2と記録ヘッドHD3〜HD5とのY方向の端部のノズルの位置がX方向から見て重なるように設定されている。つまり、これら各色1本のノズル列は、ノズルの配列距離LNが記録ヘッドHD1〜HD5の個数分(ここでは、5個分)Y方向に整列した距離に亘る記録領域を構成する。
【0021】
なお、記録ヘッドHD1〜HD5としては、圧電素子、加熱素子等によりインクに圧力を付与してインク滴を吐出する記録ヘッドを採用することができる。
インク吸収部PDは、図1(b)中のB−B断面を模式的に示す図である図5に示すように、搬送ベルトVの内側で、後述する目詰り予防吐出によるインクを吸収するインク吸収体CTが記録用紙Pの搬送経路PCを挟んで記録ヘッドHD1〜HD5に対向して配設されている。
【0022】
このインク吸収体CTは、フェルト、スポンジ等の液体を吸収する能力が高い材料から構成され、図示しない筐体に支持されている支持板SJ上に配設されるケースCS内に備えられている。なお、この図5では、構成をわかりやすくするため、駆動軸DSからX方向の下流側を省略し、記録ヘッドHD2及びHD1の断面詳細を省略して図示している。
ここで、前述したインクジェット記録装置1の各主要部の制御のつながりについて説明する。
【0023】
インクジェット記録装置1は、前述した主要構成の他に、ブロック図である図6に示すように、記録用紙PをゲートローラGRに給紙する給紙部KSをさらに備えている。
また、インクジェット記録装置1は、給紙部KSを制御する給紙制御部KSDと、ゲートローラGRを制御するゲートローラ制御部GRDと、静電気付与部ECを制御する静電気付与制御部ECDと、インデックスセンサーISを制御するセンサー制御部SDと、搬送部駆動モーターM0を制御するモーター制御部MDと、各記録ヘッドHD1〜HD5を制御する記録ヘッド制御部HDDと、排紙部EJを制御する排紙制御部EJDと、外部機器からの記録情報を格納する記録情報格納部BFと、記録情報に基づいて上記の各制御部KSD、GRD、ECD、SD、MD、HDD、EJDに動作の指令を出すCPUと、を備えている。
【0024】
次に、インクジェット記録装置1における記録の動作について、以下に説明する。
図1に示すインクジェット記録装置1は、外部機器から記録情報及び記録指令を受けると、記録の動作を開始する。
記録の動作が開始されると、CPUがモーター制御部MDへ搬送部駆動指令を送り、搬送部駆動モーターM0は、モーター制御部MDによって、搬送ベルトVを図1(b)で見て反時計方向に回転させるように、駆動が制御される。
【0025】
これと同時に又はこれより遅れて、CPUは、ゲートローラGRへの記録用紙Pの供給を指示する給紙指令を給紙制御部KSDに送る。
CPUから給紙指令を受けた給紙制御部KSDは、給紙部KSを制御し、複数の記録用紙Pが格納されている図示しない用紙カセットから記録用紙Pを1枚ずつゲートローラGRに供給させる。
【0026】
ゲートローラGRは、記録用紙Pが供給されると、この記録用紙PをX方向に対する傾き及びY方向の位置ずれを矯正する。
そして、インデックス部IDが、図7に示すように、インデックスセンサーISの発光素子及び受光素子間の光軸を遮ると、インデックスセンサーISからCPUにインデックス信号が出力される。
【0027】
CPUは、インデックス信号が入力されると、各記録ヘッドHD1〜HD5が記録用紙Pに記録を行う時間の計測を開始するとともに、ゲートローラ制御部GRDにゲートローラGRの駆動を制御させ、記録用紙Pを用紙搬送部CVへ送り出す。このとき、搬送ベルトVの開口部WD1〜WD5を閉塞しないように、記録用紙Pを搬送ベルトV上に載置することが望ましい。
【0028】
記録用紙Pが用紙搬送部CVに送り出される間に、CPUからの指令に基づいて静電気付与制御部ECDが静電気付与部ECを制御し、記録用紙Pを帯電させる。
帯電して搬送ベルトVへの吸着力を有した記録用紙Pは、搬送部駆動モーターM0の駆動によって、図1(b)で見て反時計方向に回転されている搬送ベルトVの外周面に吸着し、記録ヘッドHD1及びHD2下へ導かれる。
【0029】
そして、CPUは、計測している時間で記録ヘッドHD1及びHD2による記録を開始するタイミングになったときに、記録ヘッド制御部HDDに第一の記録指令を送る。
記録ヘッド制御部HDDは、第一の記録指令に基づいて、記録ヘッドHD1及びHD2を制御し、搬送ベルトVによってノズル面NZP下を連続的に移動されてくる記録用紙Pの記録面PPに、記録情報に基づいて各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKから選択的にインク滴を吐出させて第一の記録を行う。
【0030】
第一の記録が行われた記録用紙Pは、搬送ベルトVによってさらに搬送され、記録ヘッドHD3〜HD5下へ導かれる。
そして、CPUは、計測している時間が記録ヘッドHD3〜HD5による記録を開始するタイミングになったときに、記録ヘッド制御部HDDに第二の記録指令を送る。
記録ヘッド制御部HDDは、第二の記録指令に基づいて、上記第一の記録の際と同様に記録ヘッドHD3〜HD5を制御して第二の記録を実施させる。
【0031】
この第二の記録が終了すると、一枚の記録用紙Pに対する記録が終了し、その記録用紙Pは、排紙制御部EJDが制御する排紙部EJによってインクジェット記録装置1外へ排出される。
ここで、記録情報のすべてに対する記録が終了していると、記録動作が終了し、未記録の記録情報が残っていると、上記給紙タイミングで新たな記録用紙PをゲートローラGRに供給して記録情報のすべてに対する記録が完了するまで記録動作を継続する。
【0032】
次に、インクジェット記録装置1における目詰り予防吐出の処理及び動作について、以下に説明する。ここで、目詰り予防吐出は、ノズル内のインク粘度の上昇や目詰りによって吐出性能が低下してしまう前に、記録とは関係なくノズルからインク滴を吐出して目詰りを予防するために行われる。
この目詰り予防吐出は、インクジェット記録装置1の電源がオフからオンになったとき、インクジェット記録装置1の電源がオンになっている状態で記録が行われずに所定時間が経過したとき、ユーザーが任意に指示したときなどに、CPUが図8に示す目詰り予防吐出処理を開始することによって動作が開始される。
【0033】
まず、ステップS1において、モーター制御部MDへ搬送部駆動指令を出力し、モーター制御部MDに、搬送ベルトVが図1(b)で見て反時計方向に回転するように、搬送部駆動モーターM0を制御させてステップS2に移行する。
このステップS2において、インデックス信号が入力されたか否かを判定し、入力された(YES)と判定されると、ステップS3に移行し、入力されていない(NO)と判定されると、インデックス信号が入力されるまで待機する。
【0034】
そして、インデックス部IDが、図7に示すように、インデックスセンサーISの発光素子及び受光素子間の光軸を遮ると、インデックスセンサーISからCPUにインデックス信号が出力される。
CPUは、インデックス信号が入力されると、ステップS3において、タイマーを起動し、各開口部WD1〜WD5が各記録ヘッドHD1〜HD5に対向するまでに要する時間の計測を開始してステップS4に移行する。
【0035】
このステップS4において、計測している時間Taが所定時間T1に達したか否かを判定し、達した(YES)と判定されると、ステップS5に移行し、達していない(NO)と判定されると、所定時間T1に達するまで待機する。
そして、計測している時間Taが所定時間T1に達して、図9(a)に示すように、開口部WD4が記録ヘッドHD4に対向するタイミングになると、ステップS5において、CPUは、記録ヘッド制御部HDDに第一の目詰まり予防吐出指令を出力してステップS6に移行する。
【0036】
記録ヘッド制御部HDDは、第一の目詰り予防吐出指令に基づいて、記録ヘッドHD4を制御し、図9(a)のD−D断面図である図9(b)に示すように、開口部WD4を経てインク吸収部PDのインク吸収体CTに向けて、各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKからインク滴を吐出させる。
ここで、各開口部WD1〜WD5の開口形状は、記録ヘッドHD1〜HD5のノズル面NZPの形状より大きく設定されている。つまり、各記録ヘッドHD1〜HD5が各開口部WD1〜WD5に対向した状態で、各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKから吐出されたインク滴を、搬送ベルトVに付着させることなく各開口部WD1〜WD5を通過させることができる。なお、この図9(b)では、構成をわかりやすくするため、駆動軸DSからX方向の下流側を省略し、記録ヘッドHD3〜HD5の断面詳細を省略して図示している。
【0037】
そして、ステップS6において、計測している時間Taが所定時間T2に達したか否かを判定し、達した(YES)と判定されると、ステップS7に移行し、達していない(NO)と判定されると、所定時間T2に達するまで待機する。
そして、計測している時間Taが所定時間T2に達して、図10(a)に示すように、開口部WD1及びWD2が記録ヘッドHD1及びHD2に対向するタイミングになると、ステップS7において、CPUは、記録ヘッド制御部HDDに第二の目詰まり予防吐出指令を出力してステップS8に移行する。
【0038】
記録ヘッド制御部HDDは、記録ヘッドHD4の際と同様に、第二の目詰り予防吐出指令に基づいて、記録ヘッドHD1及びHD2を制御して各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKからインク吸収体CTに向けてインク滴を吐出させる。
ステップS8において、計測している時間Taが所定時間T3に達したか否かを判定し、達した(YES)と判定されると、ステップS9に移行し、達していない(NO)と判定されると、所定時間T3に達するまで待機する。
【0039】
そして、記録ヘッドHD1、HD2及びHD4の際と同様に、計測している時間Taが所定時間T3に達して、図10(b)に示すように、開口部WD3及びWD5が記録ヘッドHD3及びHD5に対向するタイミングになると、ステップS9において、CPUは、記録ヘッド制御部HDDに第三の目詰り予防吐出指令を出力してステップS10に移行する。
【0040】
記録ヘッド制御部HDDは、第三の目詰り予防吐出指令に基づいて、記録ヘッドHD1、HD2及びHD4の際と同様に、記録ヘッドHD3及びHD5を制御し、インク吸収体CTに向けてインク滴を吐出させる。
ステップS10において、タイマーをリセットして処理を終了する。
なお、この目詰り予防吐出処理及び動作において、インク滴をインク吸収体CTに向けて吐出させる際に、搬送部駆動モーターM0の駆動を制御して搬送ベルトVの回転速度を低下させたり、搬送ベルトVの回転を停止させたりしてもかまわない。
【0041】
また、本実施形態において、記録ヘッドHD1〜HD5が固定ヘッドに対応し、開口部WD1〜WD5が目詰り予防吐出用開口に対応している。
上記により、開口部WD1〜WD5が搬送ベルトVの中心線CLに関して対称に設けられているため、搬送ベルトVに引張り荷重を付与しても、図11に示すように、搬送ベルトVの変形を中心線CLに関して対称にすることができる。従って、記録媒体Pの搬送の際に、搬送ベルトVを幅方向に移動させようとする力が中心線CLに関して対称に、すなわち互いに打ち消す方向に作用し、蛇行現象を軽減することが可能となる。なお、この図11において、引張り荷重を付与する前の搬送ベルトVの形状を二点鎖線で示している。
【0042】
また、インク滴を通過させて目詰り予防吐出を可能とする目詰り予防吐出用開口を、記録ヘッドごとに対向する開口部WD1〜WD5で構成しているため、一つの開口で構成する場合に比較して、各開口部WD1〜WD5の開口面積を小さくすることができる。従って、搬送ベルトVに引張り荷重を付与した際に、搬送ベルトVが大きく変形してしまうことを軽減し、記録品質の低下を抑えることが可能となる。また、目詰り予防吐出を記録ヘッドごとに制御することが可能であるため、一つの固定ヘッドで構成される記録領域を分割して制御する場合に比較して、制御が容易となり、制御にかかる処理の時間短縮や、回路構成の簡略化が可能となる。
【0043】
また、記録ヘッドHD1〜HD5は、これらの記録ヘッド同士間で、記録幅LNの一部がX方向から見て重なるように配設されているため、X方向から見て重なる位置にある各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKから重複してインク滴を吐出することができる。すなわち、記録ヘッド同士間の記録の境界部において、二つの記録ヘッドによって重複してインク滴が吐出されるため、未記録の記録面PPが筋状に露出してしまうことを抑制することが可能となる。
【0044】
また、記録ヘッドHD1〜HD5同士間で記録幅LNの一部がX方向から見て重なるように配設されていても、目詰り予防吐出用開口を記録ヘッドごとに対向する開口部WD1〜WD5で構成することができ、開口の面積が増大してしまうことを抑制することが可能となる。
なお、本実施形態では、開口部WD1〜WD5を、図2に示すように、X方向の下流側から開口部WD4を先頭にして、開口部WD1及びWD2、開口部WD3及びWD5の順で設けるようにしたが、これに限定されず、図12に示すように、開口部WD4を開口部WD3と開口部WD5との間に設け、開口部WD3〜WD5をY方向に整列させるようにしてもよい。
【0045】
この構成によれば、図2に示す場合に比較して、開口部WD1〜WD5のX方向の配列距離を短縮することができ、用紙搬送部CVを小型化することが可能となる。
また、本実施形態では、固定ヘッドを、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック色のインク滴を吐出するイエローノズルNZY、マゼンタノズルNZM、シアンノズルNZC及びブラックノズルNZKのそれぞれを備えた記録ヘッドHD1〜HD5で構成するようにしたが、これに限定されない。すなわち、図13(a)に示すように、各色に対応したイエロー記録ヘッドHDY、マゼンタ記録ヘッドHDM、シアン記録ヘッドHDC及びブラック記録ヘッドHDKで構成してもよい。
【0046】
この構成によれば、各ヘッドY1〜Y5、M1〜M5、C1〜C5、K1〜K5のノズル面の面積を低減することができるため、それに対応して各開口部HD1〜HD5の開口面積も低減することが可能となる。従って、張力による搬送ベルトVの変形を軽減することが可能となり、一層記録品質の向上に寄与することができる。
また、本実施形態では、記録領域を、個別の記録ヘッドHD1〜HD5で構成するようにしたが、これに限定されず、図13(b)に示すように、一体の記録ヘッドHDで構成してもよい。
【0047】
この場合、一体の記録ヘッドHDを各開口部WD1〜WD5が対向する領域ごとに制御することで、目詰り予防吐出が可能となる。
この構成によれば、図1に示す場合に比較して、記録ヘッドHD1〜HD5のX方向の配列距離を短縮することができ、用紙搬送部CVを一層小型化することが可能となる。
また、上述した図13(a)に示す例では、各色の記録ヘッドHDY、HDM、HDC及びHDKは、各ヘッドY1〜Y5、M1〜M5、C1〜C5、K1〜K5を、記録幅LNがY方向に沿うように配設して構成されるようにしたが、これに限定されず、図14に示すように、例えば、各6個のヘッドYi(i=1〜6)、Mi、Ci、Kiを、記録幅LNがY方向から所定角度傾くように配設してもよい。
【0048】
この場合、開口部WD1〜WD3は、図14で見て略菱形の形状を有し、開口面積がヘッドYi、Mi、Ci、KiのうちY方向に隣り合う二つに同時に対向可能な大きさに設定される。つまり、開口部WD1は、ブラック記録ヘッドHDKのヘッドK1及びK2に同じタイミングで対向し、その後、搬送ベルトVの回転にともなって順次、ヘッドC1及びC2、ヘッドM1及びM2、ヘッドY1及びY2に対向していく。同様に、開口部WD2は、ヘッドK3及びK4、ヘッドC3及びC4、ヘッドM3及びM4、ヘッドY3及びY4に順次対向し、開口部WD3は、ヘッドK5及びK6、ヘッドC5及びC6、ヘッドM5及びM6、ヘッドY5及びY6に順次対向する。
【0049】
この構成によれば、各色の記録ヘッドHDY、HDM、HDC及びHDKの記録領域におけるY方向のノズル密度を高めることができ、記録画質の向上が図られるとともに、開口部WD1〜WD3の数を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の主要構成を示す外観図。
【図2】本発明の実施形態における用紙搬送部の構成を示す平面図。
【図3】記録ヘッドの外観を示す図。
【図4】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の記録領域を説明する図。
【図5】インク吸収部の構成を示す断面図。
【図6】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の主要部の制御のつながりを示すブロック図。
【図7】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置のインデックスセンサーがインデックス部を検出した状態を示す図。
【図8】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の目詰り予防吐出処理の流れを説明する図。
【図9】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の目詰り予防吐出を説明する図。
【図10】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の目詰り予防吐出の動作の流れを説明する図。
【図11】本発明の実施形態の効果を説明する図。
【図12】本発明の実施形態における用紙搬送部の他の構成例を示す平面図。
【図13】記録ヘッドの他の構成例を示す図。
【図14】記録ヘッドのさらに他の構成例を示す図。
【図15】従来技術の課題を説明する図。
【符号の説明】
【0051】
1…インクジェット記録装置、V…搬送ベルト、WD1〜WD5…開口部、HD1〜HD5…記録ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルト上に載置されて搬送される記録媒体の搬送面とは反対側の面である記録面にノズルからインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録面に対向して配設され、前記ノズルの複数を前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドを備え、
前記搬送ベルトに、該搬送ベルトが一周する間に所定のタイミングで前記固定ヘッドに対向する目詰り予防吐出用開口を、前記搬送ベルトの前記搬送方向に交差する幅方向の中心線に関して対称に形成したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記目詰り予防吐出用開口は、前記固定ヘッドの一部に対向する開口部の複数を、前記搬送ベルトの前記搬送方向とは交差する方向に前記記録領域に亘って配列形成して構成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記固定ヘッドは、複数の前記ノズルを所定の長さに亘って配列形成した複数の記録ヘッドを、前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に並べて配設した構成を有し、
前記開口部は、前記記録ヘッドごとに対向することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
搬送ベルト上に載置されて搬送される記録媒体の搬送面とは反対側の面である記録面にノズルからインク滴を吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録面に対向して配設され、前記ノズルの複数を前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドを備え、
前記搬送ベルトに、該搬送ベルトが一周する間に所定のタイミングで前記固定ヘッドに対向する目詰り予防吐出用開口を、前記搬送ベルトの前記搬送方向に交差する幅方向の中心線に関して対称に形成したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記目詰り予防吐出用開口は、前記固定ヘッドの一部に対向する開口部の複数を、前記搬送ベルトの前記搬送方向とは交差する方向に前記記録領域に亘って配列形成して構成されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記固定ヘッドは、複数の前記ノズルを所定の長さに亘って配列形成した複数の記録ヘッドを、前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に並べて配設した構成を有し、
前記開口部は、前記記録ヘッドごとに対向することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−21400(P2006−21400A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200568(P2004−200568)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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