説明

インクジェット記録装置

【課題】良好な縁なし記録を高速で行うことができる省電力タイプのコンパクトなインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】この複合機1はプラテンを備え、このプラテンに可動リブ104が設けられている。可動リブ104は、搬送方向に搬送される記録用紙146に追従してスライドされる。可動リブ104のスライドは、所要の制御装置によって制御される。記録用紙146の端部は、常に可動リブ104よりも距離p1だけオーバーハングする。インクジェット記録ヘッド39の使用領域99は、常に記録用紙146の先端よりも距離fだけオーバーハングする。可動リブ104の搬送方向の長さ寸法Rは、R=H−(E1+E2)を満足する。ここで、E1=p1+f、E2=p2+fの関係がある。この距離E1及びE2は、それぞれ、1mm〜13mmに設定され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからインク滴を吐出することにより被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、多数のノズルが並設された記録ヘッドを備えている。画像が記録されるべき被記録媒体(典型的には記録用紙)は、この記録ヘッドの下方に搬送される。記録ヘッドは、主走査方向(記録用紙の搬送方向に直交する方向)に移動されつつ所定のタイミングで上記ノズルからインク滴を吐出し、これにより、当該記録用紙に画像が記録される。近年のインクジェット記録装置は、例えば画像を写真印刷のように記録用紙に記録する機能を備えている。このような画像記録は、記録用紙の縁に余白が設けられることなく行われるものであって、いわゆる「縁なし記録」と称される。
【0003】
縁なし記録が行われるときは、記録ヘッドは、画像記録時に記録用紙の縁を超えて当該記録用紙の外側にまでインクを吐出する。例えば、記録用紙の前端及び後端における縁なし記録では、上記多数のノズルのうちの一部のノズルが当該記録用紙の縁よりも外側に配置されるように、当該記録用紙が当該記録ヘッドに対して位置決めされ、当該ノズルから当該記録用紙の下方に配置されるプラテン上にインク滴が吐出されるようになっている。このプラテンは、その上部に主走査方向に延びる溝が設けられ、この溝の内部にインク吸収材を備えている。したがって、記録用紙に付着しなかったインク滴は、このインク吸収材に吸収される。従来のインクジェット記録装置では、このようにして記録用紙の縁に余白が生じることなく当該記録用紙全体に画像が記録されると共に、プラテン上に吐出されたインクによって当該記録用紙の裏面が汚れることが防止されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、近年では、インクジェット記録装置に画像記録の高速化の要請がある。画像記録の高速化が実現されるために、従来では、記録ヘッドの大型化が図られている。記録ヘッドが大型化されると、記録用紙の搬送方向に並ぶノズルの数が増え、高速記録が可能となるからである。ただし、記録ヘッドが大型化された場合、これに対応して上記プラテンに設けられた溝の幅寸法(記録用紙の搬送方向の寸法)も大きく設定されなければならない。なぜなら、縁なし記録が行われる際には、前述のように記録ヘッドから記録用紙の外側に吐出されたインク滴が確実に上記溝に受け止められなければならないからである。ところが、記録用紙が搬送される際には、当該記録用紙の端部が上記溝の上を通過することになるから、この溝幅が大きくなると、当該記録用紙が鉛直方向下向きに撓み、当該溝内に落ち込むように変形してしまう。このように記録用紙が撓んでしまうと、記録ヘッドのノズルと記録用紙の表面との距離が変化し、記録不良が生じる可能性がある。
【0005】
このような不都合を解消するために、従来では、上記プラテンの溝内に用紙支持部材が設けられ、この用紙支持部材が記録用紙の搬送に追従して回動されるようになっている。具体的には、この用紙支持部材は、上記溝の上に進出した記録用紙を下方から支え、当該溝の幅方向に移動する。これにより、記録用紙は、上記プラテンの溝の上を搬送されるときでも当該溝内に撓むことが防止される(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−118058公報
【特許文献2】特開2001−80145公報
【特許文献3】特開2002−307769公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の用紙支持部材は、所定の回動中心軸を中心にして回動されるものであるから(上記特許文献3参照)、用紙支持部材の先端部(記録用紙に接触する部分)は、記録ヘッド側へ接近した後、離隔する。換言すれば、搬送される記録用紙を上下方向に移動させてしまうため、記録用紙が常に記録ヘッドに対して平行に支持されるとは限らず、記録ヘッドのノズルと記録用紙の表面との距離が変化してしまう。この問題が解決されるためには、用紙支持部材の回転半径が十分に大きく設定されればよいが、これでは、インクジェット記録装置が大型化してしまうという新たな問題が発生する。
【0008】
また、用紙支持部材の記録用紙を支持する面が、上記回動中心軸を中心とする円弧状に形成されたものがあるが(上記特許文献2参照)、これでは、記録用紙は、上記溝の中央部でピンポイント支持されてしまうので、搬送される記録用紙の端部が常時支持されないことになる。すなわち、このように記録用紙を支持する面が円弧状に形成されると、記録用紙は上記用紙支持部材によって支持されたとしても、当該支持ポイント以外の部位(当該支持ポイントの前後の領域)が撓んでしまい、その結果、前述と同様に記録不良が生じる可能性がある。
【0009】
さらに、従来の用紙支持部材は、記録用紙の搬送に合わせて常に回動されなければならない。加えて、搬送される記録用紙が上記溝上でより真直な状態を保持するためには、上記用紙支持部材は、常に記録用紙の搬送の順方向及び逆方向に揺動される必要がある。そのため、用紙支持部材を駆動するモータが常時正転及び逆転を繰り返す必要があり、インクジェット記録装置の消費電力が大きくなるという問題もある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、良好な縁なし記録を高速で行うことができる省電力タイプのコンパクトなインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 上記目的が達成されるため、本発明に係るインクジェット記録装置は、搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、プラテンに対して対向配置され、搬送方向と直交する主走査方向に移動しながらインク滴を吐出することによってプラテン上に搬送された被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録ヘッドとを有し、被記録媒体への縁無し記録のためにインクジェット記録ヘッドの使用領域が当該被記録媒体から搬送方向にオーバーハングする所定の距離fが設定されている。このインクジェット記録装置は、搬送される被記録媒体に追従して当該被記録媒体を支持しつつ当該搬送方向にスライドされる可動支持部を備えており、当該可動支持部の搬送方向の長さ寸法Rは、R=H−(E1+E2)且つE1=p1+f、E2=p2+fを満足するように設定されている。ここで、Hは、縁無し記録がなされるときのインクジェット記録ヘッドの最大使用領域の搬送方向の寸法、p1は、可動支持部に支持される被記録媒体が垂下することなく当該可動支持部に支持されるために許容される搬送方向下流側へのオーバーハング距離、p2は、可動支持部に支持される被記録媒体が垂下することなく当該可動支持部に支持されるために許容される搬送方向上流側へのオーバーハング距離である。
【0012】
プラテンに搬送された被記録媒体は、このプラテンによって支持される。プラテンに対向してインクジェット記録ヘッドが配置されているから、このインクジェット記録ヘッドが主走査方向に移動しつつインク滴を吐出することにより、当該被記録媒体に画像が記録される。特に縁無し記録が行われるときは、上記オーバーハング距離fが設定されているから、上記インク滴が被記録媒体の縁に確実に吐出され、いわゆる白抜現象等の記録不良の発生が防止されている。この被記録媒体は、さらに搬送方向に搬送されるが、このとき、可動支持部が当該被記録媒体を支持したまま当該搬送方向にスライドする。すなわち、この被記録媒体の先端部は、可動支持部によって常時支持されることになり、したがって、被記録媒体が可撓性に富む記録用紙であっても垂れ下がることがない。同様に、この被記録媒体の後端部も当該可動支持部によって支持されるので垂れ下がることがない。その結果、この被記録媒体とインクジェット記録ヘッドとの距離は、一定に保たれる。
【0013】
しかも、可動支持部の長さ寸法Rが前述のように設定されているから、可動支持部が必要且つ十分なサイズに設計されると共に被記録媒体の搬送中に可動支持部がプラテンの所定位置で停止されても、搬送される被記録媒体の先端部及び後端部が垂れ下がることはなく、当該被記録媒体に対して良好に縁無し記録が行われる。したがって、可動支持部は、プラテン上に搬送された被記録媒体の先端部を支持したまま搬送方向にスライドした後、プラテンの所定位置(例えば略中央部)で一時停止し、その後、搬送される被記録媒体の後端部を支持した状態で再度搬送方向にスライドされ得る。言い換えれば、可動支持部の長さ寸法Rが前述のように設定されることにより、可動支持部は、被記録媒体の端部の垂れ下がりを防止して当該被記録媒体を支持するために、搬送方向に対して逆方向にスライドされる必要がないので、可動支持部の動きが簡略化される。
【0014】
(2) 上記距離E1及びE2は、それぞれ、1mm〜13mmに設定されるのが好ましい。
【0015】
これにより、被記録媒体が写真用L版用紙であっても、また普通紙であっても、当該被記録媒体が垂れ下がることが防止される。したがって、当該被記録媒体とインクジェット記録ヘッドとの距離が一定に保たれ、被記録媒体の種類にかかわらず良好な縁無し記録が実現される。
【0016】
(3) 上記プラテンは、搬送方向に沿って延びる上面を有するフレームと、フレームの上面の搬送方向上流側部分に突設された第1媒体支持部と、第1媒体支持部との間に主走査方向に延びる溝が形成されるように、上記上面の搬送方向下流側部分に突設された第2媒体支持部とを有して構成され得る。そして、上記可動支持部は、搬送される被記録媒体に追従して第1媒体支持部に隣り合う位置と第2媒体支持部に隣り合う位置との間で搬送方向に沿ってスライド可能に設けられており、上記溝の搬送方向の幅寸法Wは、W>R+E1+E2を満足しているのが好ましい。
【0017】
この構成では、プラテンに搬送された被記録媒体は、まず第1媒体支持部によって支持される。この被記録媒体は、第1媒体支持部上をさらに下流側に搬送され、第2媒体支持部側へ送られる。第1媒体支持部と第2媒体支持部との間に溝が形成されている。特に縁なし記録が行われるときには、当該被記録媒体の縁を越えてインクジェット記録ヘッドからインク滴が吐出されるが、この被記録媒体の縁を越えて吐出されたインク滴は、上記溝によって受け止められる。なお、この溝が上記インク滴を受け止めるものであるから、例えば、この溝の底部にインク吸収部材(典型的にはシート状のスポンジ)が敷設されていてもよい。
【0018】
上記第1媒体支持部上を搬送される被記録媒体の端部は、上記溝の上方を通過することになる。このとき、可動支持部が被記録媒体に追従して上記搬送方向にスライドされる。すなわち、可動支持部は、第1媒体支持部に対して主走査方向に隣り合う位置から第2媒体支持部に対して主走査方向に隣り合う位置までスライドしつつ上記搬送される被記録媒体を支持する。したがって、この被記録媒体は、可動支持部によって常時支持され、上記溝内に垂れ下がることはない。その結果、当該被記録媒体とインクジェット記録ヘッドとの距離は、一定に保たれる。さらに、上記溝の搬送方向の幅寸法WがW>R+E1+E2を満足するように設定されることにより、縁無し記録の際にインクジェット記録ヘッドの使用領域のいずれの部分が用いられても、被記録媒体の縁を越えて吐出されたインク滴が確実に上記溝に受け止められる。したがって、インク滴によってプラテン及び被記録媒体が汚れることが確実に防止される。
【0019】
(4) 上記第1媒体支持部は、上記上面の搬送方向上流側部分に突設され且つ主走査方向に並設された複数の第1固定リブからなり、上記第2媒体支持部は、上記上面の搬送方向下流側部分に突設され且つ主走査方向に並設された複数の第2固定リブからなり、上記可動支持部は、主走査方向に隣り合う各第1固定リブの間に位置する第1位置と、上記主走査方向に隣り合う各第2固定リブの間に位置する第2位置との間でスライド可能に設けられた複数の可動リブからなるのが好ましい。
【0020】
このように、第1媒体支持部及び第2媒体支持部並びに可動支持部がリブから構成されることにより、被記録媒体と第1媒体支持部、第2媒体支持部及び可動支持部との接触面積が小さくなるので、当該被記録媒体の円滑な搬送が可能となる。しかも、第1媒体支持部及び第2媒体支持部並びに可動支持部の構造がきわめて簡単になるという利点がある。
【0021】
(5) 可動支持部のスライドを制御する制御装置がさらに設けられていてもよい。この制御装置は、プラテンの搬送方向上流側に到達した被記録媒体を支持するように可動支持部を当該プラテンの搬送方向上流側へスライドさせ、上記オーバーハング距離p1を維持したまま当該被記録媒体の先端部分を支持した状態で当該被記録媒体に追従して当該可動支持部を搬送方向下流側へスライドさせると共に上記インクジェット記録ヘッドの使用領域が最大となったときに当該可動支持部を停止させ、搬送される当該被記録媒体の後端部分が上記距離p2だけオーバーハングしたときに再び当該可動支持部を搬送方向下流側へスライドさせるように構成されているのが好ましい。
【0022】
この制御装置が設けられることにより、可動支持部は、被記録媒体の端部の垂れ下がりを防止して当該被記録媒体を支持するために、搬送方向に対して逆方向にスライドされる必要がないので、可動支持部の動きが簡略化される。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、可動支持部が必要且つ十分なサイズに設定されているから、インクジェット記録装置がコンパクトに設計される。また、可動支持部がプラテン上を搬送される被記録媒体を支持するから、当該被記録媒体とインクジェット記録ヘッドとの距離が一定に保たれ、高画質の縁無し印刷が実現される。さらに、搬送される被記録媒体を可動支持部が支持するので、プラテン上にインク滴を吸収するための大きな溝が形成され得る。そのため、インクジェット記録ヘッドの使用領域が大きく設定され、その結果、高速記録が可能となる。加えて、可動支持部が上記サイズに設定されることから、可動支持部は、単純な動きによって被記録媒体を支持することができ、その結果、可動支持部の制御が簡易になると共に可動支持部を駆動するための電力が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態が適宜変更され得ることは言うまでもない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る複合機1の外観斜視図である。また、図2は、この複合機1の内部構成を示す縦断面図である。
【0026】
複合機1は、下部にインクジェット記録装置からなるプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFC:Multi Function Product)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。したがって、本発明に係るインクジェット記録装置は、複合機1のプリンタ部2として実現されている。なお、複合機1において、プリンタ機能以外の機能が省略されていてもよく、例えば、スキャナ部3が省略された単機能のプリンタとして構成されていてもよい。
【0027】
本実施形態に係る複合機1の特徴とするところは、後述されるように(図5参照)、プリンタ部2が記録用紙(被記録媒体)を支持するプラテン42及びこのプラテン42に設けられた可動リブ104(可動支持部)を有しており、搬送される記録用紙が可動リブ104に支持されることによって垂れ下がりが防止されている点、及びこの可動リブ104は、搬送方向の長さ寸法が最適設計されており、これにより、複合機1の小型化並びに省電力が実現されている点である。
【0028】
複合機1のプリンタ部2は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、このコンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。なお、複合機1は、デジタルカメラ等が接続されて、デジタルカメラ等から出力される画像データを記録用紙に記録したり、メモリカード等の各種記憶媒体が装填されて、この記憶媒体に記録された画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。
【0029】
図1が示すように、複合機1は、高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形形状を有し、複合機1の下部がプリンタ部2として構成されている。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されている。給紙トレイ20及び排紙トレイ21は、開口2aの内側に上下2段に設けられている。給紙トレイ20には、記録用紙が貯蔵され、例えば、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等の各種サイズの記録用紙が収容される。給紙トレイ20はスライドトレイ20aを備えており、これが必要に応じて引き出されることによってトレイ面が拡大される(図2参照)。このトレイ面が拡大されることによって、給紙トレイ20は、例えば、リーガルサイズの記録用紙を収容することができるようになる。給紙トレイ20に収容された記録用紙は、プリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
【0030】
複合機1の上部はスキャナ部3であり、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2が示すように、複合機1は、天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30を備えている。この原稿カバー30の下側にプラテンガラス31及びイメージセンサ32が配置されている。プラテンガラス31には、画像読取りを行う原稿が載置される。プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向(図2の左右方向)を主走査方向とするイメージセンサ32が、複合機1の幅方向(図2の紙面垂直方向)に往復動可能に設けられている。
【0031】
複合機1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。操作パネル4が操作されることにより、縁有り記録や縁無し記録等の記録モードや、記録枚数その他の種々の画像記録の条件が設定され得る。複合機1は、この操作パネル4からの操作指示に基づいて動作する。複合機1が外部のコンピュータに接続されている場合には、このコンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機1が動作する。また、複合機1の正面の左上部には、スロット部5が設けられている(図1参照)。スロット部5には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能である。操作パネル4において所定の操作を行うことにより、スロット部5に装填された小型メモリカードに記憶された画像データが読み出される。読み出された画像データに関する情報は、操作パネル4の液晶表示部に表示され、この表示に基づいて、任意の画像をプリンタ部2が記録用紙に記録させる。
【0032】
以下、複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明される。
【0033】
図2が示すように、複合機1の底側に給紙トレイ20が設けられ、給紙トレイ20の奥側に分離傾斜板22が設けられている。分離傾斜板22は、給紙トレイ20から重送された記録用紙を分離して、最上位置の記録用紙を上方へ案内する。用紙搬送路23は、分離傾斜板22から上方へ向かった後、正面側へ曲がっている。さらに、用紙搬送路23は、複合機1の背面側から正面側へと延び、画像記録ユニット24を経て排紙トレイ21へ通じている。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、用紙搬送路23に沿って下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、この画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
【0034】
図3は、プリンタ部2の主要構成を示す部分拡大断面図である。
【0035】
図3が示すように、給紙トレイ20の上側に給紙ローラ25が設けられている。給紙ロータ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ供給する。給紙ローラ25は、給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、LFモータ71(図5及び図8参照)を駆動源として駆動伝達機構27を介して回転駆動される。この駆動伝達機構27は複数のギアを有し、これらが噛合されることにより構成されている。
【0036】
給紙アーム26は、基軸26aに支持されている。給紙アーム26は、基軸26aを回動軸として回転可能に設けられており、このため、給紙トレイ20に対して接離可能に上下動することができる。ただし、給紙アーム26は、自重により又はバネ等によって給紙トレイ20に接触するように下側へ回動付勢されており、給紙トレイ20が挿抜される際に上側へ退避するようになっている。給紙アーム26が下側へ回動されることにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で給紙ローラ25が回転されることによって給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間に発生する摩擦力が、最上位置の記録用紙を分離傾斜板22へ送り出す。記録用紙は、その先端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ送り込まれる。給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、最上位置の記録用紙と共に送り出された記録用紙は分離傾斜板22との当接によって制止される。
【0037】
用紙搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。例えば、複合機1の背面側の用紙搬送路23の湾曲部17は、外側ガイド部材18と内側ガイド部材19とが装置フレームに固定されることにより構成されている。用紙搬送路23において、特に用紙搬送路23が曲がっている箇所には、回転コロ16が設けられている。この回転コロ16は、用紙搬送路23の幅方向に沿って配置された支持軸に支持され、回転自在となっている。回転コロ16のローラ面は、外側ガイド面に露出されている。したがって、用紙搬送路23が曲がっている箇所においても、記録用紙が円滑に搬送される。
【0038】
図3が示すように、用紙搬送路23には画像記録ユニット24が配置されている。画像記録ユニット24は、インクジェット記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復動するキャリッジ38を備えている。複合機1内には、インクジェット記録ヘッド39とは独立にインクカートリッジが配置されている。このインクカートリッジからインクチューブ41(図4参照)を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクがインクジェット記録ヘッド39へ供給される。キャリッジ38が往復動される間に、インクジェット記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。なお、図3及び図4には、インクカートリッジは図示されていない。
【0039】
図4は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図であり、主としてプリンタ部2の略中央から装置背面側の構成を示すものである。また、図5は、プリンタ部2の主要構成を示す斜視図であり、画像記録ユニット24の構成を示すものである。
【0040】
図4及び図5が示すように、用紙搬送路23の上側において一対のガイドレール43、44が配置されている。これらガイドレール43、44は、記録用紙の搬送方向(図4の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて対向しており、且つ記録用紙の搬送方向と直交する方向(図4の左右方向)に延設されている。ガイドレール43、44は、プリンタ部2の筐体内に設けられて、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43、44を跨ぐようにして記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動可能に載置されている。このように、ガイドレール43、44が記録用紙の搬送方向にほぼ水平に並べられることにより、プリンタ部2の高さが低くなり、装置の薄型化が実現されている。
【0041】
記録用紙の搬送方向上流側に配設されたガイドレール43は、用紙搬送路23の幅方向(図4の左右方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。また、記録用紙の搬送方向下流側に配設されたガイドレール44は、用紙搬送路23の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44に載置されており、キャリッジ38は、各ガイドレール43、44の長手方向に摺動されるようになっている。
【0042】
ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43、44に担持されたキャリッジ38は、上記縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動することができる。つまり、キャリッジ38は、ガイドレール43、44上に摺動自在に担持され、ガイドレール44の縁部45を基準として、記録用紙の搬送方向と直交する方向に往復動する。なお、図示されていないが、上記縁部45には、キャリッジ38の摺動を円滑にするためにグリースなどの潤滑剤が塗布されている。
【0043】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動機構46が配設されている。ベルト駆動機構46は、用紙搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた駆動プーリ47及び従動プーリ48と、これらの間に架け渡されたタイミングベルト49とを備えている。このタイミングベルト49は無端環状に形成されており、その内側に歯が設けられている。そして、この歯が上記駆動プーリ47及び従動プーリ48に噛み合っている。駆動プーリ47の軸にはCRモータ73(図5及び図8参照)から駆動力が伝達され、駆動プーリ47の回転によりタイミングベルト49が周運動する。なお、タイミングベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものも採用され得る。
【0044】
キャリッジ38は、その底面側においてタイミングベルト49に固着されている。したがって、タイミングベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38がガイドレール44の縁部45を基準としてガイドレール43、44上を往復動する。このキャリッジ38にインクジェット記録ヘッド39が搭載されているから、インクジェット記録ヘッド39は、用紙搬送路23の幅方向を主走査方向として往復動されることになる。
【0045】
図4が示すように、ガイドレール44には、リニアエンコーダ77(図8参照)のエンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。ガイドレール44の幅方向(キャリッジ38の往復動方向)の両端には、その上面から起立するように一対の支持部33、34が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部が支持部33、34に係止されて、ガイドレール44の縁部45に沿って架設されている。なお、図4には示されていないが、支持部33、34の一方には、板バネが設けられており、この板バネによりエンコーダストリップ50の端部が係止されている。この板バネにより、エンコーダストリップ50に長手方向に張力が作用しており、エンコーダストリップ50に弛みが生じることが防止されているとともに、エンコーダストリップ50に外力が作用した場合には、上記板バネが弾性変形して、エンコーダストリップ50が撓むようになっている。
【0046】
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、所定ピッチで長手方向に交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ38の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。光学センサ35は、キャリッジ38と共にエンコーダストリップ50の長手方向に沿って往復動し、その往復動の際にエンコーダストリップ50のパターンを検知する。インクジェット記録ヘッド39には、インクの吐出を制御するヘッド制御基板が設けられている。このヘッド制御基板は、光学センサ35の検知信号に基づくパルス信号を出力する。このパルス信号に基づいてキャリッジ38の位置が判断されて、キャリッジ38の往復動が制御される。なお、図4及び図5では、ヘッド制御基板はキャリッジ38のヘッドカバーで覆われており、図に表れていない。
【0047】
図3及び図4が示すように、用紙搬送路23の下側には、インクジェット記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。後に詳述されるが、このプラテン42に上記可動リブ104(図5参照)が設けられている。この可動リブ104は、プラテン42上を搬送される記録用紙に追従して搬送方向に移動し、常時記録用紙の端部を支持するようになっている。
【0048】
図4が示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわちインクジェット記録ヘッド39による画像記録範囲外には、パージ機構51や廃インクトレイ84等のメンテナンスユニットが配設されている。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル53(図6参照)から気泡や異物を吸引除去するものである。パージ機構51は、インクジェット記録ヘッド39のノズル53を覆うキャップ52と、キャップ52を通じてインクジェット記録ヘッド39に接続されるポンプ機構と、キャップ52をインクジェット記録ヘッド39のノズル53に接離させるための移動機構とからなる。なお、図4においては、ポンプ機構及び移動機構はガイドフレーム44の下方にあり、図に表れていない。
【0049】
インクジェット記録ヘッド39から気泡等の吸引除去が行われる際には、インクジェット記録ヘッド39がキャップ52上に位置するようにキャリッジ38が移動される。その状態で、キャップ52は、上方へ移動され、ノズル53が密閉されるようにインクジェット記録ヘッド39の下面に密着される。そして、ポンプ機構が作動するとキャップ52内が負圧にされる。これにより、インクジェット記録ヘッド39のノズル53からインクが吸引され、ノズル53内の気泡や異物は、この吸引されたインクとともに除去される。
【0050】
廃インクトレイ84は、フラッシングと呼ばれるインクジェット記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるためのものである。廃インクトレイ84は、プラテン42の上面であって、キャリッジ38の往復動範囲内且つ画像記録範囲外に形成されている。なお、廃インクトレイ84内にはフェルトが敷設されており、フラッシングされたインクは、該フェルトに吸収されて保持される。これらメンテナンスユニットにより、インクジェット記録ヘッド39内の気泡や混色インクの除去、乾燥防止等のメンテナンスが行われる。
【0051】
図1が示すように、プリンタ部2の筐体の正面には、扉7が開閉自在に設けられている。扉7が開かれると、カートリッジ装着部が装置正面側に露出され、インクカートリッジが装抜可能になる。カートリッジ装着部は、図示されていないが、インクカートリッジに対応して4つの収容室に区画されており、各収容室に、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの各色インクを保持するインクカートリッジが収容される。図4が示すように、カートリッジ装着部からキャリッジ38へは、各色インクに対応した4本のインクチューブ41が引き回されている。前述のように、キャリッジ38に搭載されたインクジェット記録ヘッド39には、各インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部に装着されたインクカートリッジから各色インクが供給される。
【0052】
インクチューブ41は、合成樹脂製のチューブであり、キャリッジ38の往復動に追従して撓む可撓性を有する。カートリッジ装着部から導出された各インクチューブ41は、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置本体の固定クリップ36に一旦固定されている。各インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分が固定されておらず、当該部分がキャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。なお、同図においては、固定クリップ36からカートリッジ装着部側へ延びるインクチューブ41の図示が省略されている。
【0053】
インクチューブ41は、固定クリップ36からキャリッジ38までの部分がキャリッジ38の往復動方向に反転する湾曲部を形成して引き回されている。換言すれば、インクチューブ41は、平面視において略U字形状を形成するように引き回されている。4本のインクチューブ41は、キャリッジ38において記録用紙の搬送方向に沿って水平に並設されており、キャリッジ38の往復動方向に延出されている。一方、固定クリップ36は、4本のインクチューブ41が垂直方向に積み重ねられた状態となるように、これらを配列し固定している。固定クリップ36は、上側に開口した断面がU字形状の部材である。そして、該開口から各インクチューブ41が挿入されて垂直方向に積み重ねられ、一体的に狭持されている。これにより、4本のインクチューブ41は、キャリッジ38から固定クリップ36へ向かって、水平方向の配列が垂直方向の配列になるように捻られながら、4本全体として略U字形状に湾曲されている。
【0054】
4本のインクチューブ41は、キャリッジ38から固定クリップ36までの長さが略同一にされている。キャリッジ38において、記録用紙の搬送方向の最も上流側に配置されたインクチューブ41が、固定クリップ36において最も上側に配置されている。そして、上記インクチューブ41の次に上流側に配置されたインクチューブ41が、固定クリップ36において該インクチューブ41の次となる下側に配置されている。これを繰り返して、キャリッジ38における記録用紙搬送方向の上流側のインクチューブ41から下流側へ向かって順に、固定クリップ36の最も上側から下側へ順次配置されている。各インクチューブ41の長さは略同一なので、キャリッジ38の記録用紙搬送方向の配列に従って、各インクチューブ41の略U字形状の湾曲部の中心が記録用紙搬送方向にずれるように湾曲される。これにより、湾曲部において、4本のインクチューブ41が上側から下側へ向かって斜め方向に整列され、キャリッジ38に追従して姿勢変化する際に、インクチューブ41同士が干渉することが低減される。なお、本実施形態では、4本のインクチューブ41について示しているが、インクチューブ41がさらに増えた場合には、順次同様に、キャリッジ38における記録用紙搬送方向の上流側のインクチューブ41から、固定クリップ36の上側に順次配置される。
【0055】
制御部64(図8参照)を構成するメイン基板からインクジェット記録ヘッド39のヘッド制御基板へはフラットケーブル85を通じて記録用信号等の伝送が行われる。なお、上記メイン基板は装置正面側(図4の手前側)に配設されており、図4では図示されていない。フラットケーブル85は、電気信号を伝送する複数本の導電線をポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のものであり、メイン基板とヘッド制御基板とを電気的に接続している。
【0056】
フラットケーブル85は、キャリッジ38の往復動に追従して撓む可撓性を有する。図4が示すように、フラットケーブル85は、キャリッジ38から固定クリップ86までの部分がキャリッジ38の往復動方向に反転する湾曲部を形成して引き回されている。換言すれば、フラットケーブル85は、薄帯状の表裏面を垂直方向として、平面視において略U字形状を形成するように引き回されている。つまり、フラットケーブル85の表裏面は、その垂線が水平方向を向いて、その面が垂直方向に拡がっている。また、キャリッジ38からフラットケーブル85が延出される方向と、インクチューブ41が延出される方向とは、キャリッジ38の往復動方向に対して同方向である。
【0057】
キャリッジ38に固定されたフラットケーブル85の一端側は、キャリッジ38に搭載されたヘッド制御基板に電気的に接続されている。固定クリップ86に固定されたフラットケーブル85の他端側は、さらにメイン基板へ延出されて電気的に接続されている。フラットケーブル85が略U字形状に湾曲された部分は、いずれの部材にも固定されておらず、インクチューブ41と同様に、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化する。このように、キャリッジ38の往復動に追従して姿勢変化するインクチューブ41及びフラットケーブル85は、回動支持部材90によって支持されている。なお、回動支持部材90の端部は、軸受部91に回動自在に支持されており、したがって、回動支持部材90は、この軸受部91を揺動中心として揺動し得る。
【0058】
インクチューブ41及びフラットケーブル85の装置正面側には、規制壁37が装置幅方向(図4の左右方向)に延設されている。規制壁37は、インクチューブ41に当接する垂直方向の壁面を有する壁であり、キャリッジ38の往復動方向に沿って直線状に立設されている。規制壁37は、インクチューブ41を固定する固定クリップ36からインクチューブ41の延出方向に設けられている。規制壁37の高さは、固定クリップ36により垂直方向に配列された4本のインクチューブ41のすべてが当接可能な寸法に設定されている。インクチューブ41は、固定クリップ36から規制壁37に沿って延出されている。このインクチューブ41は、規制壁37の装置背面側の壁面に当接することによって、装置正面側、換言すればキャリッジ38から離れる方向へ膨出することが規制されている。
【0059】
固定クリップ36は、装置の幅方向の略中央付近に配置されている。固定クリップ36は、インクチューブ41が規制壁37へ向かって延出されるように該インクチューブ41を固定している。つまり、規制壁37の垂直方向の壁面と、固定クリップ36がインクチューブ41を延出させる方向は、平面視において180°より小さな鈍角をなしている。インクチューブ41は可撓性を有するものであるが、適度な腰(曲げ剛性)を有する。したがって、インクチューブ41は、固定クリップ36により規制壁37に対して角度をもって延出されることにより、規制壁37の壁面に押し付けられる。これにより、キャリッジ38の往復動範囲において、インクチューブ41が規制壁37に沿って躾けられる範囲が広くなり、インクチューブ41の湾曲部からキャリッジ38までの部分が装置背面側、換言すればキャリッジ38側へ膨出する領域を小さくすることができる。
【0060】
固定クリップ86は、装置の幅方向の略中央付近であって固定クリップ36より湾曲内側となる位置に設けられている。この固定クリップ86は、フラットケーブル85が規制壁37へ向かって延出されるように該フラットケーブル85を固定している。つまり、規制壁37の垂直方向の壁面と、固定クリップ86がフラットケーブル85を延出させる方向は、平面視において180°より小さな鈍角をなしている。フラットケーブル85は可撓性を有するものであるが、適度な腰(曲げ剛性)をも有する。したがって、フラットケーブル85は、固定クリップ86により規制壁37に対して角度をもって延出されることにより、規制壁37の壁面に押し付けられる。これにより、キャリッジ38の往復動範囲において、フラットケーブル85が規制壁37に沿って躾けられる範囲が広くなり、フラットケーブル85の湾曲部からキャリッジ38までの部分が装置背面側、換言すればキャリッジ38側へ膨出する領域を小さくすることができる。
【0061】
図6は、インクジェット記録ヘッド39のノズル形成面を示す底面図である。
【0062】
同図が示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面に多数のノズル53が設けられている。なお、同図は、ノズル53の形成を明確に示すために各ノズル53を拡大して図示しているが、実際にはノズル53の内径はきわめて小さい。各ノズル53は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インクごとに、記録用紙の搬送方向に列設されている。なお、図において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向がキャリッジ38の往復動方向である。CMYBkの各色インクのノズル53は、それぞれ記録用紙搬送方向に列をなしており、その各色インクのノズル53の列が、キャリッジ38の往復動方向に並んでいる。各ノズル53の搬送方向のピッチや数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じてノズル53の列数を増減することも可能である。
【0063】
各ノズル53は、常時全部が使用されるものではなく、記録モードや記録用紙とインクジェット記録ヘッドとの相対的位置関係に対応して、使用されるノズル53が決定される。すなわち、画像記録の際中にインクジェット記録ヘッド39の使用領域が変化し、すべてのノズル53が使用される場合もあれば一部のノズル53のみが使用される場合もある。例えば、縁無し記録が行われる際に、記録用紙の中央部に画像記録される場合にはすべてのノズル53が使用され、インクジェット記録ヘッド39の使用領域が最大となるが(同図において参照符号118)、他方、当該記録用紙の縁部に画像記録される場合には、一部のノズル53が使用されずに、同図において領域99が使用領域となる。
【0064】
図7は、インクジェット記録ヘッド39の内部構成を示す部分拡大断面図である。
【0065】
同図が示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面に形成されたノズル53の上流側には、圧電素子54を備えたキャビティ55が形成されている。圧電素子54は所定の電圧が印加されることにより変形され、キャビティ55の容積を縮小する。このキャビティ55の容量の変化によって、キャビティ55内のインクがノズル53からインク滴として吐出される。
【0066】
キャビティ55は、各ノズル53ごとに設けられており、複数のキャビティ55に渡ってマニホールド56が形成されている。マニホールド56は、CMYBkの各色インクごとに設けられている。マニホールド56の上流側にはバッファタンク57が配設されている。バッファタンク57も、CMYBkの各色インクごとに設けられている。各バッファタンク57には、インクチューブ41を流通するインクがインク供給口58から供給される。バッファタンク57に一旦インクが貯留されることにより、インクチューブ41等でインク内に発生した気泡が捕捉され、キャビティ55及びマニホールド56に気泡が進入することが防止される。バッファタンク57内で捕捉された気泡は、気泡排出口59からポンプ機構により吸引除去される。バッファタンク57からマニホールド56へ供給されたインクは、マニホールド56により各キャビティ55に分配される。
【0067】
このようにして、インクカートリッジからインクチューブ41を通じて供給された各色インクが、バッファタンク57、マニホールド56を介してキャビティ55へ流れるようにインク流路が構成される。このようなインク流路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、圧電素子54の変形により、ノズル53からインク滴として記録用紙に吐出される。
【0068】
図3が示すように、画像記録ユニット24の上流側には、一対の搬送ローラ60及びピンチローラが設けられている。図3では、ピンチローラは、他の部材に隠れて表れていないが、搬送ローラ60の下側に圧接状態で配置されている。搬送ローラ60及びピンチローラは、用紙搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。画像記録ユニット24の下流側には、一対の排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。排紙ローラ62及び拍車ローラ63は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転は同期されている。搬送ローラ60に設けられたロータリーエンコーダ76(図8参照)は、搬送ローラ60とともに回転するエンコーダディスク61のパターンを光学センサで検知する。この検知信号に基づいて、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。また、この搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御されることにより、記録用紙の搬送距離が把握され得る。
【0069】
拍車ローラ63は、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸されている。拍車ローラ63は、排紙ローラ62と接離する方向にスライド移動可能に設けられ、コイルバネにより排紙ローラ62に圧接するように付勢されている。排紙ローラ62と拍車ローラ63との間に記録用紙が進入すると、拍車ローラ63は、記録用紙の厚み分だけ付勢力に反して退避し、該記録用紙を排紙ローラ62に圧接するように狭持する。これにより、排紙ローラ62の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。ピンチローラも搬送ローラ60に対して同様に設けられたものであり、記録用紙を搬送ローラ60に圧接するように狭持して、搬送ローラ60の回転力を確実に記録用紙へ伝達させる。
【0070】
用紙搬送路23の上記搬送ローラ60の上流側にレジセンサ95が配置されている。このレジセンサ95は、図3が示す検出子及び図示されていない光学センサ82を備えている。検出子は、用紙搬送路23に出没可能に配置されている。検出子は、常時用紙搬送路23に突出するように弾性付勢されており、用紙搬送路23を搬送される記録用紙が当接することにより、用紙搬送路23へ没入するように回動する。検出子の出没により、上記光学センサがON又はOFFされる。したがって、記録用紙が検出子を出没させることによって、用紙搬送路23における記録用紙の先端又は後端の位置が検出される。
【0071】
本実施形態に係る複合機1では、LFモータ71は、給紙トレイ20からの記録用紙の給紙のほか、プラテン42上に位置する記録用紙の搬送や記録済みの記録用紙の排紙トレイ21への排出の駆動源となっている。すなわち、LFモータ71は、搬送ローラ60を駆動すると共に(図5参照)、前述のように上記駆動伝達機構27を介して給紙ローラ25を駆動し(図3参照)、且つ所定の動力伝達機構83を介して排紙ローラ62が取り付けられた排紙ローラ軸を駆動するようになっている(図5参照)。なお、この動力伝達機構83は、例えば歯車列により構成されていてもよいし、組付スペースの関係上、適宜タイミングベルトが使用されてもよい。
【0072】
図8は、複合機1の制御部64の構成を示すブロック図である。
【0073】
制御部64は、プリンタ部3のみでなくスキャナ部2も含む複合機1の全体動作を制御するものであり、フラットケーブル85(図4参照)が接続されるメイン基板により構成される。なお、スキャナ部3に関する構成は、本発明の主要な構成ではないのでその詳細な説明は省略される。
【0074】
制御部64は、図が示すように、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
【0075】
ROM66には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0076】
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LFモータ71に通電する相励磁信号等を生成する。この信号は、LFモータ71の駆動回路72に付与され、この駆動回路72を介して駆動信号がLFモータ71に通電される。このようにして、LFモータ71の回転制御が行われる。
【0077】
駆動回路72は、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62及びパージ機構51に接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてLFモータ71が回転し、LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びパージ機構51へ伝達される。すなわち、前述のように、本実施形態に係る複合機1では、LFモータ71は、給紙トレイ20からの記録用紙の給紙のほか、プラテン42上に位置する記録用紙の搬送や記録済みの記録用紙の排紙トレイ21への排出の駆動源となっている。
【0078】
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CRモータ73に通電する相励磁信号等を生成する。この信号は、CRモータ73の駆動回路74に付与され、この駆動回路74を介して駆動信号がCRモータ73に通電される。このようにして、CRモータ73の回転制御が行われる。
【0079】
駆動回路74は、CRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。この電気信号を受けてCRモータ73が回転する。CRモータ73の回転力がベルト駆動機構46を介してキャリッジ38へ伝達されることにより、キャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。
【0080】
駆動回路75は、インクジェット記録ヘッド39を所定のタイミングで駆動させるものである。駆動回路75は、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいて、ASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御する。この駆動回路75は、上記ヘッド制御基板に搭載されており、フラットケーブル85を介して制御部64を構成するメイン基板からヘッド制御基板へ信号が伝送される。これにより、インクジェット記録ヘッド39は、所定のノズル53から所定のタイミングで各色インクを記録用紙に対して選択的に吐出する。
【0081】
ASIC70には、搬送ローラ60の回転量を検出するロータリーエンコーダ76、キャリッジ38の位置検知を行うリニアエンコーダ77、記録用紙の先端及び後端の検知を行う上記レジセンサ95が接続されている。キャリッジ38は、複合機1の電源オンにより、ガイドレール43、44の一方の端まで移動されて、リニアエンコーダ77による検知位置が初期化される。この初期位置から、キャリッジ38がガイドレール43、44上を移動すると、キャリッジ38に設けられた光学センサ35がエンコーダストリップ50のパターンを検知し、これに基づくパルス信号数がキャリッジ38の移動量として制御部64に把握される。制御部64は、この移動量に基づいてキャリッジ38の往復動を制御すべく、CRモータ73の回転を制御する。
【0082】
また、制御部64は、レジセンサ95の信号及びロータリーエンコーダ76が検出するエンコーダ量に基づいて記録用紙の先端又は後端の位置を把握する。制御部64は、記録用紙の先端がプラテン42の所定の位置に到達すると、記録用紙を所定の改行幅ごとに間欠搬送すべくLFモータ71の回転を制御する。この改行幅は、記録条件として入力された解像度等に基づいて設定される。記録用紙に対して縁無し記録が行われる際には、制御部64は、インクジェット記録ヘッド39の使用領域99が記録用紙から搬送方向に距離fだけオーバーハングするようにLFモータ71の回転を制御する。このオーバーハング距離fは、0.5mm〜7mm程度に設定され得る。
【0083】
ASIC70には、スキャナ部3や、複合機1の操作指示を行うための操作パネル4、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部5、パソコン等の外部情報機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81が接続されている。
【0084】
図9は、図5の要部拡大斜視図であって、プラテン42の拡大斜視図である。図10は、このプラテン42の正面図である。また、図11及び図12は、それぞれ、図10におけるXI−矢視図及びXII−矢視図である。さらに、図13は、プラテン42の底面側から見た斜視図、図14は、プラテン42の底面図である。
【0085】
このプラテン42は、前述のように、インクジェット記録ヘッド39に対向して(図3において下方に)配置されており、搬送される記録用紙を支持する(図3及び図5参照)。図9が示すように、このプラテン42は、全体として薄肉の細長矩形板状を呈している。プラテン42は、その長手方向が上記主走査方向に沿うように配置されている(図5参照)。また、図9において、矢印101の方向が上記搬送方向であって、記録用紙は、この矢印101の向きに搬送されるようになっている。
【0086】
このプラテン42は、フレーム100と、フレーム100に設けられた第1固定リブ102(第1媒体支持部)及び第2固定リブ103(第2媒体支持部)と、フレーム100にスライド可能に設けられた可動リブ104と、この可動リブ104を後述のようにスライド駆動する駆動機構105とを備えている。
【0087】
フレーム100は、例えば合成樹脂や鋼板からなり、その断面形状が略C形に形成されている。フレーム100は、プラテン42の骨格を構成している。フレーム100の基端及び先端に、それぞれ、ブラケット106、107が設けられている。これらブラケット106、107は、フレーム100と一体的に形成されている。フレーム100は、これらブラケット106、107を介して、例えばネジにより複合機1に係止固定されている(図3及び図5参照)。
【0088】
フレーム100の基端に駆動機構取付部108が設けられている。図9及び図13が示すように、この駆動機構取付部108は、フレーム100の基端に延設されており、フレーム100の上面109側に設けられた上板110と、フレーム100の下面側に設けられた下板111とを備えている。上板110及び下板111は、ともに矩形状を呈し、フレーム100と一体的に形成されている。下板111は、後に詳述される駆動機構105を支持するものである。
【0089】
フレーム100の上面109に上記第1固定リブ102及び第2固定リブ103が設けられている。具体的には、第1固定リブ102は、上記上面109の搬送方向上流側端部に設けられており、上方に(インクジェット記録ヘッド39側に)突出されている。また、第2固定リブ103は、上記上面109の搬送方向下流側端部に設けられており、上方に突出されている。図9が示すように、第1固定リブ102及び第2固定リブ103は、矩形の薄肉板状部材からなり、これらがフレーム100の上面109に立設されている。
【0090】
本実施形態では、複数の第1固定リブ102が上記上面109に設けられており、各第1固定リブ102は、主走査方向に所定間隔で並設されている。同様に、複数の第2固定リブ103が上記上面109に設けられており、主走査方向に所定間隔で並設されている。このように第1固定リブ102及び第2固定リブ103が設けられることにより、第1固定リブ102と第2固定リブ103との間に溝116が形成されている。この溝116は、図9及び図10が示すように、上記主走査方向に延び、且つ上記搬送方向に広がっている。この溝116の幅寸法(搬送方向寸法)Wは、上記インクジェット記録ヘッド39のサイズに対応されており、インクジェット記録ヘッド39の最大使用領域118(図6参照)よりも広くなるように設定されている。この溝116の幅寸法Wが上記最大使用領域118よりも大きく設定されることによる作用効果については後に詳述される。
【0091】
特に、本実施形態では、図9及び図10が示すように、一の第1固定リブ102と一の第2固定リブ103とは、上記溝116を挟んで上記搬送方向(矢印101の方向)に対向されている。また、第1固定リブ102の角部112、113は、面取加工が施されており、一対の傾斜面が形成されている。本実施形態では、第1固定リブ102の搬送方向両側の角部112、113に上記傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部112に上記傾斜面が形成されていればよい。同様に、第2固定リブ103の角部114、115にも面取加工が施されており、一対の傾斜面が形成されている。本実施形態では、第2固定リブ103の搬送方向両側の角部114、115に上記傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部114に上記傾斜面が形成されていればよい。このように、第1固定リブ102及び第2固定リブ103の角部112〜115に面取加工が施されているから、矢印101の方向に沿って搬送される記録用紙が上記角部112〜115に当接したとしても、記録用紙の円滑な搬送が妨げられることはない。
【0092】
上記フレーム100の上面109に複数のスリット119が設けられている。図9が示すように、このスリット119は、上記上面109の搬送方向上流側端部から下流側端部に至るまで搬送方向に沿って延びている。各スリット119は、隣り合う第1固定リブ102の間と隣り合う第2固定リブ103の間とを連続するように形成されている。上記可動リブ104は、このスリット119に嵌め込まれ、当該スリット119から上方に突出している。
【0093】
具体的には、可動リブ104は、図13が示すように、箱状に形成されたベース120と、矩形の薄肉板状部材121とを有する。この可動リブ104は、合成樹脂又は金属から構成され得る。ベース120は、断面がC形の部材として構成されており、上記フレーム100の内側に嵌め込まれている。同図では明確に示されていないが、このベース120は、その主走査方向の両端部が上記フレーム100によってスライド可能に支持されている。したがって、このベース120は、フレーム100の内側で搬送方向(図14において矢印98の方向)に円滑にスライド可能となっている。
【0094】
このベース120の上面に複数の上記薄肉板状部材121が設けられている。各薄肉板状部材121は、ベース120と一体的に形成されている。各薄肉板状部材121は、矩形状に形成されている。各薄肉板状部材121は、ベース120の上面に上記主走査方向に沿って所定間隔で並設されている。この所定間隔とは、上記スリット119のピッチに対応されている。したがって、各薄肉板状部材121は、上記各スリット119を貫通し、ベース120から上方に突き出している。
【0095】
図15は、図10における要部拡大図である。また、図16は、図15におけるXVI−XVI矢視図であり、縁無し記録がなされる際の薄肉板状部材121、記録用紙146及びインクジェット記録ヘッド39の位置関係を示す図である。
【0096】
図16が示すように、プラテン42上に搬送された記録用紙146に対してインクジェット記録ヘッド39からインク滴が吐出される際には、インクジェット記録ヘッド39の使用領域99は、記録用紙146の先端から搬送方向に距離fだけオーバーハングするように設定される。この距離fは、制御部64が使用するノズル53(図6参照)を制御することによって決定される。なお、同図では、記録用紙146の先端側について距離fが設定されているが、この距離fは、当該記録用紙146の後端側についても同様に設定される。この距離fは、0.5mm〜7mm程度に設定されるが、本実施形態では、記録用紙146の先端側及び後端側ともに3.5mm程度に設定されている。
【0097】
さらに、縁無し記録がなされる場合には、記録用紙146は、その先端が可動リブ104から搬送方向に(より具体的には、薄肉板状部材121から搬送方向に)所定の距離p1だけオーバーハングするように位置決めされる。この記録用紙146の位置は、制御部64がLFモータ71(図8参照)の回転を制御することによって調整される。この距離p1は、記録用紙146が垂下することなく薄肉板状部材121に支持されるために許容される搬送方向下流側へのオーバーハング距離である。この距離p1は、記録用紙146の種類によって定められ、一般に0.5mm〜8mm程度に設定される。例えば、記録用紙146がA4版普通紙であるならば、p1は、3.5mmに設定される。なお、同図では、記録用紙146の先端側について距離p1が設定されているが、当該記録用紙146の後端側についても同様に距離p2が定義され、本実施形態では、距離p1と距離p2とは同様の値に設定されている。
【0098】
ここで、記録用紙146の先端側について、上記距離p1と距離fとを足し合わせた距離E1が定義され、記録用紙146の後端側について、上記距離p2と距離fとを足し合わせた距離E2が定義される。すなわち、これら距離E1、E2は、それぞれ、1mm〜13mm程度に設定され得る。本実施形態では、距離E1及びE2は、共に7.0mmに設定されている。そして、図15及び図16が示すように、上記可動リブ104(より具体的には薄肉板状部材121)の搬送方向の長さ寸法Rは、上記溝116の幅寸法Wよりも小さく設定されており、しかも、縁無し記録がなされる場合のインクジェット記録ヘッド39の最大使用領域118の搬送方向の長さ寸法をHとすれば、R=H−(E1+E2)を満足するように設定されている。本実施形態では、上記最大使用領域118の搬送方向の長さ寸法Hは、24.9mmに設定されているから、薄肉板状部材121の搬送方向の長さ寸法Rは10.9mmに設定されている。なお、上記寸法Hは、インクジェット記録ヘッド39に設けられたすべてのノズル53が使用される場合の寸法であってもよいし、縁部に位置するノズル53のインク滴の吐出精度を考慮して、これら縁部に位置するノズル53が除外された場合の寸法であってもよい。さらに、本実施形態では、上記溝116の幅寸法Wは、30.9mmに設定されている。ただし、上記溝116の幅寸法Wは、W>R+E1+E2を満足するのであれば、他の寸法に設定され得る。
【0099】
図9及び図10が示すように、可動リブ104の角部122、123(より具体的には薄肉板状部材121の角部122、123)は、第1固定リブ102及び第2固定リブ103と同様に面取加工が施されており、一対の傾斜面が形成されている。本実施形態では、可動リブ104の搬送方向両側の角部122、123に上記傾斜面が形成されているが、少なくとも搬送方向上流側の角部122に上記傾斜面が形成されていればよい。このように、可動リブ104の角部122、123に面取加工が施されているので、第1固定リブ102を通過した記録用紙の端部が可動リブ104の角部122に当接した場合であっても、この記録用紙の端部は、滑らかに可動リブ104の上面に案内される。したがって、可動リブ104が設けられることに起因して、記録用紙の円滑な搬送が妨げられることはない。
【0100】
駆動機構105は、前述のように可動リブ104を搬送方向にスライドさせるためのものであって、図13が示すように、入力部材124と、回転板125と、揺動部材126とを備えている。本実施形態では、この回転板125の回転を後述のように規制する回転規制部材127及び図示されていないバネ部材がさらに設けられている。このバネ部材は、例えば渦巻きバネとして構成され、上記上板110と下板111との間に配置される。そして、このバネ部材は、上記上板110又は下板111及び回転板125に固定され、回転板125の回転に伴って変形される。つまり、このバネ部材は、回転板125が上記所定方向に回転された場合に、当該回転角度に応じた歪みエネルギーを蓄える。仮に、この歪みエネルギーが当該バネ部材から放出されたときは、回転板125が逆方向に回転されるようになっている。
【0101】
入力部材124は、図13が示すように略L字状に形成されており、第1アーム129と第2アーム130とを備えている。入力部材124は、主走査方向の印字領域外に配置されており(図5参照)、上記下板111の下面に設けられた保持部128によって保持されている。この保持部128は、本実施形態では断面が矩形の筒状に形成されており、この保持部128に入力部材124の第1アーム129がスライド自在に挿通されている。図13及び図14が示すように、第1アーム129の先端に係合爪131が形成されており、さらに、この係合爪131の基端側(第2アーム130側)に規制解除アーム132が形成されている。この規制解除アーム132は、後述されるように、上記回転板125の回転規制を解除するものである。他方、第2アーム130は、第1アーム129の基端に連続し、当該第1アーム129に対して直交している。すなわち、図13が示すように、第2アーム130は、駆動機構取付部108の上板110から上方に所定距離だけ延びており、上記インクジェット記録ヘッド39がスライドされたときに、キャリッジ38が第2アーム130を矢印133の方向(主走査方向)に押圧するようになっている。なお、同図では図示されていないが、上記保持部128の内部に付勢バネが配置されており、この付勢バネの弾性力によって入力部材124は、矢印133と反対方向に弾性付勢されている。したがって、キャリッジ38が入力部材124を矢印133の方向に押圧した後に当該入力部材124から離反した場合は、当該入力部材124は、上記付勢バネによって矢印133と反対方向にスライドされる。
【0102】
回転板125は、円盤状に形成されており、回転中心軸134によって回転可能に支持されている。この回転中心軸134は、上記フレーム100(具体的には、上記下板111)に固定されており、回転板125の中心に挿通されている。この回転板125の周面に複数の歯135が連続形成されている。この歯135は、上記入力部材124の係合爪131と係合している。したがって、前述のように、矢印133の方向に入力部材124がスライドされると、回転板125が回転中心軸134を中心にして右方向(図14参照)に回転される。また、前述のように、入力部材124は、矢印133の方向と反対方向に弾性付勢されているから、矢印133の方向に押圧された後にキャリッジ38が移動すると、当該矢印133の方向と反対方向にスライドされる。これにより、上記係合爪131は、再び上記歯135と係合する。さらに、この回転板125は、円形溝136を備えている。この円形溝136は、リング状に形成されており、その中心は、回転板125の中心と異なっている。すなわち、円形溝136は、回転板125の中心に対して偏心されている。この円形溝136に上記揺動部材126の基端部が係合するようになっている。
【0103】
揺動部材126は、細長平板からなる本体137と、この本体137の基端部に設けられた係合ピン138と、先端部に設けられた係合ロッド139とを備えている。この揺動部材126も合成樹脂又は金属から構成され得る。本体137は、揺動中心軸140によって回転自在に支持されている。この揺動中心軸140は、上記駆動機構取付部108の下板111に固定されており、本体137の中央部に挿通されている。上記係合ピン138は、本体137から上方に突出するように設けられており(図13参照)、上記回転板125の円形溝136に嵌め込まれている。係合ピン138の外径寸法は、上記円形溝136の溝幅寸法に対応されており、係合ピン138は、円形溝136に沿ってがたつくことなく相対的にスライドすることができるようになっている。このように係合ピン138が円形溝136に沿って相対移動することにより、本体137は、上記揺動中心軸140を中心にして回転する。すなわち、揺動部材126は、この揺動中心軸140を中心にして揺動し、これにより、上記本体137の先端部に設けられた係合ロッド139は、揺動中心軸140を中心とする円弧状をスライドすることになる。また、上記係合ロッド139は、上記可動リブ104のベース120に連結されている。ただし、上記ベース120は、長手方向(すなわち、主走査方向)に延びる長孔141を備えており、上記係合ロッド139は、この長孔141に嵌め込まれている。しかも、この係合ロッド139の外径寸法は、長孔141の内径寸法に対応されており、係合ロッド139は、走査方向以外の方向について長孔141との間でがたつくことはない。
【0104】
したがって、前述のように本体137が揺動し、係合ロッド139が揺動中心軸140を中心とする円弧状をスライドした場合には、係合ロッド139が上記長孔141に沿って主走査方向にスライドしつつ、上記ベース120が搬送方向に移動される。なお、前述のように、このベース120は、その主走査方向の両端部が上記フレーム100によってスライド可能に支持されているから、このベース120は、フレーム100の内側において当該フレーム100の上面109(図9参照)に平行な仮想面上を搬送方向(図14において矢印98の方向)に円滑にスライドする。換言すれば、上記揺動部材126が揺動中心軸140を中心に揺動することにより、上記可動リブ104が搬送方向に沿ってスライドすることになる。
【0105】
回転規制部材127は、上記回転板125に係合する係合棒が採用されている。図13及び図14が示すように、回転規制部材127は、支持ピン142によって回転自在に支持されている。この支持ピン142は、上記駆動機構取付部108の下板111に立設されており、上記回転規制部材127の基端部に挿通されている。回転規制部材127の先端部に係合爪143が形成されている。この係合爪143が回転板125の歯135に係合しており、これにより、回転板125は、図14において右回転が許容されているが、左回転が規制されている。この回転規制部材127は、バネ144により回転板125側へ弾性的に付勢されている。したがって、常時において回転規制部材127が回転板125と係合し、回転板125は、前述のように回転規制を受けている。
【0106】
回転規制部材127は、当接ピン145を備えている。この当接ピン145は、回転規制部材127に突設されており、下方に延びている(図13参照)。前述のように、入力部材124は、矢印133の方向にスライドされるが、この入力部材124が矢印133の方向に沿って所定の規制解除位置までスライドされた場合は、規制解除アーム132が上記当接ピン145に当接し、この当接ピン145を矢印133の方向に押圧する。これにより、回転規制部材127が上記バネ144の弾性力に抗して回動し、係合爪143が回転板125から離反する。すなわち、回転板125の回転規制が解除されるようになっている。
【0107】
本実施形態では、上記揺動部材126の係合ピン138は、上記円形溝136に係合しており(図13参照)、この円形溝136は、回転板125の中心を支持する回転中心軸134を中心に回転する。すなわち、回転中心軸134に対して偏心された円形溝136が、この回転中心軸134を中心に揺動回転する。ところで、図14において、円形溝136の右側位置に上記係合ピン138が係合されている。このとき、可動リブ104は、フレーム100の略中央部に位置しており、図13が示すように、第1固定リブ102と第2固定リブ103との間に位置する。可動リブ104は、通常において当該位置に配置されている。
【0108】
図14において、インクジェット記録ヘッド39が主走査方向に往復移動されると、入力部材124は、走査キャリッジ38によって間欠的に押圧される。これにより、回転版125が所定の回転角度ごとに(すなわち、上記歯135による回転送り量に応じた回転角度ごとに)間欠的に右方向に回転される。このように回転板125が回転されると、上記円形溝136が回転中心軸134を中心に揺動回転するから、上記円形溝136に係合している係合ピン138は、回転板125の回転に伴って左方向に移動される。そして、回転板125の回転角度が90°(degree)に達すると、上記係合ピン138は、回転板125の回転に伴って右方向に移動しはじめ、回転板125の回転角度が270°となるまで右方向に移動する。
【0109】
図17ないし図19は、縁無し記録がなされる際の記録用紙146の搬送と可動リブ104の移動との関係を模式的に示す図である。
【0110】
操作パネル4(図1参照)が操作されることにより、記録用紙146への縁無し記録が行われる。縁無し記録が設定されたときは、制御部64は、記録用紙146の搬送及びインクジェット記録ヘッド39の動作を次のように制御する。
【0111】
まず、可動リブ104は、初期において第1固定リブ102と第2固定リブ103との間(すなわち溝116の中央部)に位置する。前述のようにLFモータ71が駆動され、駆動伝達機構27を介して給紙ローラ25が記録用紙146が給紙トレイ20から引き出される。この記録用紙146は、用紙搬送路23に沿って搬送され、レジセンサ95を通過する。レジセンサ95が記録用紙146の先端を検知すれば、制御部64は、さらに記録用紙146を所定距離だけ搬送し、搬送ローラ60へ押しつけられる。これにより、記録用紙146の先端部がレジストされ、その後、制御部64は、記録用紙146を所定の改行幅ごとに間欠搬送すべくLFモータ71の回転を制御する。記録用紙146は、搬送ローラ60によってプラテン42上へ送られる。
【0112】
記録用紙146の先端がプラテン42の搬送方向上流側端部、具体的には図17(a)が示すように、第1固定リブ102上に達すると、可動リブ104が搬送方向上流側へ移動して記録用紙146を迎えに行く。具体的には、制御部64によってCRモータ73が駆動され、キャリッジ38がスライドされる。このキャリッジ38は、上記入力部材124(図9参照)を押圧し、これにより、回転板125が図14において右方向に回転される。すなわち、可動リブ104が搬送方向上流側へ移動し始める(同図(b)参照)。そして、回転板125の回転角度が90°に達すると、可動リブ104が同図(c)の位置に達し、記録用紙146を迎える。このとき、前述のように、記録用紙146の先端は、可動リブ104から距離p1だけオーバーハングしており、且つインクジェット記録ヘッド39の使用領域99は、記録用紙146の先端よりも搬送方向に距離fだけオーバーハングしている(図16参照)。
【0113】
その後、キャリッジ38のスライドと共に当該記録用紙146への画像記録が続けられる。具体的には、上記入力部材124がスライドするキャリッジ38によって押圧され、記録用紙146の搬送に同期して回転板125が図12においてさらに右方向に回転される。このとき、回転板125に設けられた上記円形溝136が前述のように回転中心軸134に対して偏心されているから、回転板125がさらに右方向に回転すると、可動リブ104は、図18(a)及び(b)が示すように、記録用紙146の先端部を支持したまま、当該記録用紙146の搬送に追従して搬送方向下流側に移動する。すなわち、上記オーバーハング距離f及びp1が維持されたまま可動リブ104が記録用紙146に追従する。このとき、記録用紙146は、搬送に伴ってプラテン42を被う面積が大きくなるから、記録用紙146の搬送に伴ってインクジェット記録ヘッド39の使用領域99も大きくなる。そして、回転板125の回転角度が180°に達すると、同図(c)が示すように、可動リブ104が上記初期位置(溝116の中央部)に復帰すると共に、インクジェット記録ヘッド39の使用領域99は最大となる。
【0114】
上記回転板125の回転角度が180°となり、可動リブ104が第1固定リブ102と第2固定リブ103の間まで移動したときは、当該可動リブ104は、当該初期位置に保持される。ただし、図19(a)が示すように、記録用紙146は、搬送方向に送られつつ画像記録が続行される。このように、記録用紙146を搬送しつつ可動リブ104を保持する手段としては、インクジェット記録ヘッド39を保持するキャリッジ38が上記入力部材124に当接しないように、制御部64によってキャリッジ38のスライド距離が制御されればよい。
【0115】
図19(b)が示すように、さらに記録用紙146が搬送方向下流側へ搬送され、当該記録用紙146の後端部が可動リブ104に接近した場合には、再び可動リブ104が搬送方向にスライドされ始める。具体的には、記録用紙146の後端部が上記レジセンサ95(図3参照)を通過すると、レジセンサ95が出力する信号に基づいて制御部64が当該後端部がレジセンサ95を通過したことを把握する。そして、上記ロータリーエンコーダ76が検出するエンコーダ量に基づいて記録用紙146の後端の位置が制御部64によって把握される。この記録用紙146の後端が可動リブ104に接近し、記録用紙146の後端が可動リブ104から搬送方向上流側へ距離p2だけオーバーハングし、且つインクジェット記録ヘッド39の使用領域99が記録用紙146の後端よりも搬送方向上流側に距離fだけオーバーハングした状態となったときに、上記初期位置に停止している可動リブ104が搬送方向にスライドされる。
【0116】
さらに、図19(c)が示すように、可動リブ104は、記録用紙146の後端部を支持したまま当該記録用紙146に追従して搬送方向下流側へスライドする。具体的には、制御部64によってCRモータ73が駆動され、キャリッジ38がスライドされる。このキャリッジ38は、上記入力部材124(図9参照)を押圧し、これにより、回転板125が図14において右方向に回転される。すなわち、可動リブ104が搬送方向上流側へ移動する。そして、回転板125の回転角度が270°に達すると、可動リブ104が同図(d)の位置に達して停止する。このとき、前述のように、記録用紙146の後端は、可動リブ104から距離p2だけオーバーハングしており、且つインクジェット記録ヘッド39の使用領域99は、記録用紙146の先端よりも搬送方向に距離fだけオーバーハングしている。このように、このように、上記初期位置に停止した可動リブ104を再び移動させる手段としては、インクジェット記録ヘッド39を保持するキャリッジ38が再び上記入力部材124に当接するように、当該キャリッジ38のスライド距離が制御部64によって制御されればよい。
【0117】
記録用紙146がプラテン42上から排出されると、上記キャリッジ38が上記入力部材124を所定の位置までスライドさせる。この走査キャリッジ38のスライドは、制御部64による上記CRモータ73(図5参照)の駆動制御により行われる。具体的には、図13及び図14が示すように、入力部材124が矢印133の方向にスライドされ、規制解除アーム132が当接ピン142を押圧する。これにより、バネ144の弾性力に抗して回転規制部材127が左方向に回転し、回転板125の回転規制が解除される。回転板125の回転に伴って上記バネ部材に歪みエネルギーが蓄積されているので、回転板125の回転規制が解除されることにより、この歪みエネルギーが放出され、その結果、回転板125が逆方向(図14において左方向)に回転する。上記バネ部材に蓄積された歪みエネルギーは、回転板125の回転に起因するものであるから、上記歪みエネルギーが全部放出されると、回転板125は、左方向に270°回転する。すなわち、可動リブ104が再び上記初期位置に復帰する。
【0118】
本実施形態に係る複合機1によれば、特に縁無し記録が行われるときは、前述のオーバーハング距離fが設定されているから、インクジェット記録ヘッド39から吐出されるインク滴が記録用紙146縁に確実に吐出され、いわゆる白抜現象等の記録不良の発生が防止される。また、記録用紙146がプラテン42上を搬送されるときに、可動リブ104が記録用紙146を支持したままスライドするから、記録用紙146の先端部及び後端部は、可動リブ104に常時支持されることになり、したがって、記録用紙146が普通紙その他の可撓性に富む用紙であっても垂れ下がることがなく、インクジェット記録ヘッド39との距離が一定に保たれる。これにより、高画質の縁無し印刷が実現される。
【0119】
しかも、可動リブ104の搬送方向の長さ寸法Rが前述のように設定されているから、記録用紙146の搬送中に可動リブ104がプラテン42の中央部で停止されても、搬送される記録用紙146の先端部及び後端部が垂れ下がることはない。すなわち、可動リブ104の長さ寸法Rが前述のように設定されることにより、可動リブ104が必要且つ十分なサイズに設計され、記録用紙146の端部の垂れ下がりを防止して当該記録用紙146を支持するために、印刷中に搬送方向に対して逆方向にスライドされる必要がない。したがって、複合機1がコンパクトに設計されると共に、画像記録中における可動リブ104の動きが簡略化され、その結果、制御部64による可動リブ104の制御が簡易になると共に、可動リブ104を駆動するための電力が抑えられる。
【0120】
加えて、搬送される記録用紙146を可動リブ104が支持するので、プラテン42上に設けられた溝116の幅寸法Wが大きく設定され得る。したがって、インクジェット記録ヘッド39の使用領域99が大きく設定され、高速記録が可能となる。
【0121】
また、本実施形態では、上記オーバーハング距離fとオーバーハング距離p1とを足し合わせた距離E1及び上記オーバーハング距離fとオーバーハング距離p2とを足し合わせた距離E2は、それぞれ、1mm〜13mmに設定されるから、記録用紙146が普通紙のほか写真用L版用紙その他の種々の被記録媒体であっても、垂れ下がりが防止される。したがって、被記録媒体の種類にかかわらず良好な縁無し記録が実現されるという利点がある。
【0122】
さらに、本実施形態では、プラテン42に設けられた溝116の搬送方向の幅寸法WがW>R+E1+E2を満足するように設定されているから、縁無し記録の際にインクジェット記録ヘッド39の使用領域99がどのように変化したとしても、記録用紙146の縁を越えて吐出されたインク滴が確実に上記溝116に受け止められる。したがって、インクジェット記録ヘッド39から吐出されたインク滴によってプラテン42及び記録用紙146が汚れることが確実に防止される。
【0123】
また、本実施形態では、搬送される記録用紙146を支持するのは第1固定リブ102、第2固定リブ103及び可動リブ104であるから、記録用紙146と各リブ102〜104との接触面積が小さくなり、記録用紙146の円滑な搬送が可能となる。しかも、第1固定リブ102及び第2固定リブ103並びに可動リブ104の構造がきわめて簡単になるから、複合機1の製造コストの上昇が抑えられるという利点がある。
【0124】
本実施形態では、可動リブ104は、CRモータ73を駆動源として駆動されている。具体的には、CRモータ73によってスライドされるキャリッジ38が動力源とされ、駆動機構105を介して伝達される動力によって可動リブ104が駆動されている。ただし、本発明において可動リブ104の駆動源は特に限定されるものではない。したがって、可動リブ104を駆動する手段は、上記CRモータ73に代えて、例えば、別途設けられたモータが採用されてもよい。この場合には、当該モータが直接に又は所要の動力伝達機構を介して間接的に可動リブ104に連結され、このモータの駆動が制御部64によって制御されることによって可動リブ104が前述のようにスライドされる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る複合機の外観斜視図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る複合機の縦断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る複合機の部分拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係る複合機のプリンタ部の平面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係る複合機のプリンタ部の斜視図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係る複合機のインクジェット記録ヘッドの拡大底面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係る複合機のインクジェット記録ヘッドの内部構成を示す部分拡大断面図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係る複合機の制御部の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、図5の要部拡大斜視図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態に係る複合機のプラテンの正面図である。
【図11】図11は、図10におけるXI−矢視図である。
【図12】図12は、図10におけるXII−矢視図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係る複合機のプラテンの底面側から見た斜視図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に係る複合機のプラテンの底面図である。
【図15】図15は、図10における要部拡大図である。
【図16】図16は、図15におけるXVI−XVI矢視図である。
【図17】図17は、縁無し記録がなされる際の記録用紙の搬送と可動リブの移動との関係を模式的に示す図である。
【図18】図18は、縁無し記録がなされる際の記録用紙の搬送と可動リブの移動との関係を模式的に示す図である。
【図19】図19は、縁無し記録がなされる際の記録用紙の搬送と可動リブの移動との関係を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0126】
39・・・インクジェット記録ヘッド
42・・・プラテン
64・・・制御部
88・・・可動支持部
99・・・使用領域
100・・・フレーム
102・・・第1固定リブ
103・・・第2固定リブ
104・・・可動リブ
116・・・溝
118・・・最大使用領域
146・・・記録用紙
R・・・可動リブの搬送方向の長さ寸法
W・・・溝の幅寸法
f・・・オーバーハング距離
p1・・・オーバーハング距離
p2・・・オーバーハング距離
E1・・・距離
E2・・・距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される被記録媒体を支持するプラテンと、
プラテンに対して対向配置され、搬送方向と直交する主走査方向に移動しながらインク滴を吐出することによってプラテン上に搬送された被記録媒体に画像を記録するインクジェット記録ヘッドとを有し、
被記録媒体への縁無し記録のためにインクジェット記録ヘッドの使用領域が当該被記録媒体から搬送方向にオーバーハングする所定の距離fが設定されているインクジェット記録装置であって、
搬送される被記録媒体に追従して当該被記録媒体を支持しつつ当該搬送方向にスライドされる可動支持部が設けられ、
当該可動支持部の搬送方向の長さ寸法Rは、
R=H−(E1+E2) 且つ E1=p1+f、E2=p2+f
但し、
H: 縁無し記録がなされるときのインクジェット記録ヘッドの最大使用領域の搬 送方向の寸法、
p1: 可動支持部に支持される被記録媒体が垂下することなく当該可動支持部に支 持されるために許容される搬送方向下流側へのオーバーハング距離
p2: 可動支持部に支持される被記録媒体が垂下することなく当該可動支持部に支 持されるために許容される搬送方向上流側へのオーバーハング距離
を満足するように設定されているインクジェット記録装置。
【請求項2】
上記距離E1及びE2は、それぞれ、1mm〜13mmに設定されている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
上記プラテンは、
搬送方向に沿って延びる上面を有するフレームと、
フレームの上面の搬送方向上流側部分に突設された第1媒体支持部と、
第1媒体支持部との間に主走査方向に延びる溝が形成されるように、上記上面の搬送方向下流側部分に突設された第2媒体支持部とを有し、
上記可動支持部は、
搬送される被記録媒体に追従して第1媒体支持部に隣り合う位置と第2媒体支持部に隣り合う位置との間で搬送方向に沿ってスライド可能に設けられており、
上記溝の搬送方向の幅寸法Wは、W>R+E1+E2を満足している請求項1又は2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
上記第1媒体支持部は、上記上面の搬送方向上流側部分に突設され且つ主走査方向に並設された複数の第1固定リブからなり、
上記第2媒体支持部は、上記上面の搬送方向下流側部分に突設され且つ主走査方向に並設された複数の第2固定リブからなり、
上記可動支持部は、主走査方向に隣り合う各第1固定リブの間に位置する第1位置と、上記主走査方向に隣り合う各第2固定リブの間に位置する第2位置との間でスライド可能に設けられた複数の可動リブからなる請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
プラテンの搬送方向上流側に到達した被記録媒体を支持するように可動支持部を当該プラテンの搬送方向上流側へスライドさせ、
上記オーバーハング距離p1を維持したまま当該被記録媒体の先端部分を支持した状態で当該被記録媒体に追従して当該可動支持部を搬送方向下流側へスライドさせると共に上記インクジェット記録ヘッドの使用領域が最大となったときに当該可動支持部を停止させ、
搬送される当該被記録媒体の後端部分が上記距離p2だけオーバーハングしたときに再び当該可動支持部を搬送方向下流側へスライドさせる制御装置がさらに設けられている請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−203492(P2007−203492A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22110(P2006−22110)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】