説明

インクジェット記録装置

【課題】インクの吐出特性の変動を抑制するインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】ヘッド7とヘッド7の温度を検出する温度センサとを有し、ヘッド7に、サブヒータとメインヒータとが配置されたインクジェット記録装置は、第1期間ごとに、第1期間内で温度センサが検出した温度を平均して第1平均温度を求めるサブヒータ用温度取得器101と、サブヒータ用温度取得器101が第1平均温度を求めるたびに、その第1平均温度に基づいてサブヒータを駆動するサブヒータ駆動制御器102と、第1期間よりも長い第2期間ごとに、その第2期間内で温度センサが検出した温度を平均して第2平均温度を求める駆動制御用温度取得器2と、駆動制御用温度取得器2が第2平均温度を求めるたびに、その第2平均温度に基づいてメインヒータを駆動するヘッド駆動部6と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラインヘッド型のヘッドを備えるインクジェット記録装置におけるサブヒータの制御方法が記載されている。特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、インクを吐出するための本ヒータとは異なるサブヒータを用いて、シリコンなどで構成されるインク吐出のためのチップと、吐出口近傍のインクと、を予め温めておき、インクの吐出特性を安定させる。特許文献1に記載されたような本ヒータとサブヒータとを有するインクジェット記録装置は、ヘッドの温度を所定回数計測するたびに、これらの計測結果を平均し、その平均温度に基づいて本ヒータを制御するとともに、その平均温度を用いてサブヒータも制御する。
【0003】
図7は、サブヒータの動作により平衡状態になったヘッドの実際の温度と目標温度との関係を示す図である。図7では、16回の温度計測ごとに、これらの結果を平均することにより平均温度を取得することとする。また、サブヒータの加熱によるヘッドの温度上昇の特性と、非加熱(放熱)によるヘッドの温度下降の特性と、が対称であるものとする。図7には、スケールSn(n=0、1、・・・)と、ヘッドの実際の温度T0と、サブヒータをON/OFFする制御信号と、が示されている。さらに、ヘッドの目標温度Tavが、一点破線により示されている。スケールSn(n=0、1、・・・)は、温度計測のサンプリングタイミングを示す。
【0004】
図7に示すように、S0の時点で、温度T0が目標温度Tavよりも低いことが検知され、サブヒータがONになり、温度T0が上昇し始める。次に平均温度を取得するタイミングは、S1〜S16での計測結果の平均温度が確定するS16のタイミングである。S16の時点で、平均温度が取得され、その平均温度が目標温度Tav(すなわち、平衡状態での平均値)以上であることが検知されて、サブヒータがOFFされる。サブヒータがOFFされると、ヘッドの放熱特性に従って、温度T0が下降し始める。そして、次の平均温度を取得するタイミングS32で、S17〜S32での計測結果の平均温度が確定し、その平均温度が目標温度Tavよりも低いことが検知され、サブヒータがONされる。
【0005】
このように、サブヒータのON(加熱)とOFF(放熱)とを繰り返すことにより、ヘッドの温度が平衡状態となる。また、平衡状態における平均温度の取得時に目標温度Tavと温度T0との温度誤差が最大ΔT0となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−250054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたようなインクジェット記録装置では、一般的に、本ヒータの制御のための温度取得の周期とサブヒータの制御のための温度取得の周期とが同じであり、各温度取得の周期は、本ヒータの制御に適するように決められている。本ヒータの制御では、ヘッドの急激な温度変化が起こり難いことから、本ヒータ自体の熱およびその他のノイズの影響を十分に軽減するために、平均温度のサンプリング数を多めに採ることが多い。よって、本ヒータの制御のための温度取得の周期は長めに設定されることが多い。一方、サブヒータの制御では、温度取得の周期が長くなるほど、サブヒータの動作の切替え間隔が長くなり、目標温度との温度誤差が大きくなる。
【0008】
このため、インクジェット記録装置では、本ヒータの制御に適するように決定された温度取得の周期と同じ周期でサブヒータの制御のための温度取得が行われるため、本ヒータの制御のために取得される平均温度と実際の温度との温度誤差が大きくなってしまう。よって、インクの吐出特性の変動が大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、インクの吐出特性の変動を抑制するインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐き出す印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの温度を検出する温度検出手段と、を有し、前記印刷ヘッドに、当該印刷ヘッドを保温するための第1発熱素子と、前記インクを吐き出すための第2発熱素子と、が配置されたインクジェット記録装置であって、第1期間ごとに、当該第1期間内で前記温度検出手段が検出した温度を平均して第1平均温度を求める第1平均手段と、前記第1平均手段が前記第1平均温度を求めるたびに、当該第1平均温度に基づいて前記第1発熱素子を駆動する第1駆動手段と、前記第1期間よりも長い第2期間ごとに、当該第2期間内で前記温度検出手段が検出した温度を平均して第2平均温度を求める第2平均手段と、前記第2平均手段が前記第2平均温度を求めるたびに、当該第2平均温度に基づいて前記第2発熱素子を駆動する第2駆動手段と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクの吐出特性の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態のインクジェット記録装置を示すブロック図である。
【図2】インクジェット記録装置の詳細構成を例示するブロック図である。
【図3】インクジェットヘッド7の温度変化を説明するための模式図である。
【図4】インクジェットヘッド7の温度の取得タイミングを説明するための概念図である。
【図5】第2の実施形態におけるインクジェットヘッド7の構成例を示す模式図である。
【図6】第2の実施形態におけるインクジェット記録装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】関連する背景技術によるヘッドの実際の温度と目標温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の一構成例を示すブロック図である。
【0015】
インクジェット記録装置は、ラインヘッド型のサーマルインクジェット印刷装置である。インクジェット記録装置は、サブヒータ制御器1と、駆動制御用温度取得器2と、ヘッド温度記録部3と、ヘッド温度取得部4と、データ処理部5と、ヘッド駆動部6と、インクジェットヘッド7と、を備える。
【0016】
データ処理部5は、図示しないPC(Personal Computer)などの外部装置から入力される印刷データを受け付ける。データ処理部5は、その印刷データを受け付けると、その印刷データに対し、インクジェットヘッド7にデータを送るためのデータ処理を施して、そのデータ処理が施された処理データを、ヘッド駆動部6に出力する。
【0017】
ヘッド駆動部6は、インクジェットヘッド7を駆動する第2駆動手段である。ヘッド駆動部6は、データ処理部5から出力された処理データを受け付ける。また、ヘッド駆動部6は、駆動制御用温度取得器2から、インクジェットヘッド7を駆動する(インクを吐出する)ために用いられる温度(以下「第2平均温度」と称する。)を示す第2平均温度情報を受け付ける。ヘッド駆動部6は、第2平均温度情報と処理データとを受け付けると、その第2平均温度情報と処理データとに基づいて、インクジェットヘッド7の有する吐出特性が最適となるように駆動信号を生成する。ヘッド駆動部6は、第2平均温度情報を受け付けるたびに、駆動信号を生成する。また、ヘッド駆動部6は、その生成された駆動信号を、インクジェットヘッド7に出力する。
【0018】
インクジェットヘッド7は、ヘッド駆動部6から出力された駆動信号を受け付けると、その駆動信号に基づいて記録媒体(印刷用紙)にインクを吐き出す印刷ヘッドである。インクジェットヘッド7は、図示していない、温度センサと、メインヒータと、メインヒータと異なるサブヒータと、を有する。
【0019】
温度センサは、インクジェットヘッド7の温度を検出し、その結果を示す温度情報を出力する温度検出手段である。温度センサとしては、例えば、ダイオードまたは温度可変抵抗器が用いられる。メインヒータは、インクを吐き出すための第2発熱素子である。サブヒータは、インクジェットヘッド7を保温するための第1発熱素子である。
【0020】
ヘッド温度取得部4は、インクジェットヘッド7が有する温度センサからの温度情報を、予め定められた周期(以下「サンプリング周期」と称する。)で取得する。ヘッド温度取得部4は、サンプリング周期で温度センサから温度情報を取得するたびに、その温度情報を、ヘッド温度記憶部3に出力する。
【0021】
ヘッド温度記憶部3は、予め定められた数(以下「所定数」と称する。)の温度情報を記憶する。ヘッド温度記憶部3は、所定数の温度情報のそれぞれを一定期間(以下「第2期間」と称する。)だけ記憶する。ヘッド温度記憶部3は、ヘッド温度取得部4によりサンプリング周期で入力される温度情報(入力データ)を順次記憶する。ヘッド温度記憶部3では、移動平均のためのデータ移動手法が用いられる。データ移動手法としては、例えば、所謂シフトレジスタの構成を採る手法、または、メモリを用いてアドレスを順次移動させていく手法がある。
【0022】
図2は、インクジェット記録装置の詳細構成を例示する図である。
【0023】
図2には、ヘッド温度記憶部3の詳細構成が示されている。ヘッド温度記憶部3は、16個の記憶素子DL1〜DL16を備え、新たな温度情報が入力されるたびに、温度情報を順次更新する構造を有する。ヘッド温度記憶部3は、第2期間内に温度センサが検出した16個の温度情報を、記憶素子DL1〜DL16に記憶する。記憶素子DL1〜DL16に記憶された温度情報は、駆動制御用温度取得器2に出力され、記憶素子DL1〜4に記憶された温度情報は、サブヒータ制御器1に出力される。
【0024】
図1に戻り、駆動制御用温度取得器2は、第2期間ごとに、第2期間内で温度センサが検出した温度を平均して第2平均温度を求める第2平均手段である。本実施形態では、駆動制御用温度取得器2は、ヘッド温度記憶部3に記憶された所定数の温度情報を、サンプリング周期で移動平均する。駆動制御用温度取得器2は、所定数の温度情報を元に移動平均の演算を行うことにより、第2平均温度情報を取得する。これにより、駆動制御用温度取得器2は、温度情報に含まれるノイズ成分を低減することができる。なお、第2平均温度情報は、吐出させるインクに与える熱エネルギーを決定するために用いられる。
【0025】
駆動制御用温度取得器2は、例えば、第2期間内に温度センサが検出した16個の温度情報の移動平均を求める。図2に示すように、駆動制御用温度取得器2は、記憶素子DL1〜DL16の出力データを元に、温度情報の平均化を行う。駆動制御用温度取得器2は、例えば、式1に基づいて、16(n)個の温度情報(DLk)の移動平均<R>を演算する。
【0026】
<R> =(ΣDLk)/n 、k=1〜n :n=16 ・・・式1
駆動制御用温度取得器2は、その演算された移動平均<R>を、第2平均温度情報としてヘッド駆動部6に出力する。このため、ヘッド駆動部6は、駆動制御用温度取得器2が第2平均温度を求めるたびに、駆動制御用温度取得器2にて求められた第2平均温度に基づいてメインヒータを駆動する。
【0027】
サブヒータ制御器1は、インクジェットヘッド7が有するサブヒータを駆動する。サブヒータ制御器1は、サブヒータ用温度取得器101と、サブヒータ駆動制御器102と、を備える。
【0028】
サブヒータ用温度取得器101は、予め定められた期間(以下「第1期間」と称する。)ごとに、第1期間内で温度センサが検出した温度を平均して第1平均温度を求める第1平均ス手段である。第1期間は、サンプリング期間よりも長く、第2期間よりも短い期間である。
【0029】
本実施形態では、サブヒータ用温度取得器101は、サブヒータを制御するために用いられる第1平均温度を示す第1平均温度情報を取得する。サブヒータ用温度取得器101は、ヘッド温度記憶部3に記憶された所定数よりも少ない特定数の温度情報を、第1期間よりも短いサンプリング周期で移動平均する。サブヒータ用温度取得器101は、特定数の温度情報を元に移動平均の演算を行うことにより、第1平均温度情報を取得する。これにより、サブヒータ用温度取得器101は、温度情報に含まれるノイズ成分を除去する。
【0030】
サブヒータ用温度取得器101は、例えば、図2に示すように、4段の記憶素子DL1〜4に記憶された4個の温度情報を受け付ける。サブヒータ用温度取得器101は、第1期間内で温度センサが検出した4個の温度情報を元に、移動平均の演算を行う。サブヒータ用温度取得器101は、例えば、式2に基づいて、4(m)個の温度情報(DLk)の移動平均<r>を演算する。
【0031】
<r>=(ΣDLK)/m 、k=1〜m :m=4 ・・・式2
式2による移動平均<r>の変化は、駆動制御用温度取得器2にて取得される第2平均温度よりも4倍速くなる。このため、サブヒータ駆動制御器102にフィードバックするサイクルが速くなり、インクジェットヘッド7の目標温度と実際の温度との間の温度誤差を低減することができる。よって、インクジェット記録装置は、駆動制御用温度取得器2にて取得される第2平均温度情報の精度を向上させることができる。
【0032】
また、サブヒータ用温度取得器101は、式2による演算結果を、第1平均温度情報としてサブヒータ駆動制御器102に出力する。なお、本実施形態では、サブヒータ用温度取得器101で移動平均に使用される記憶素子DL1〜4の数を、駆動制御用温度取得器2で移動平均に使用される記憶素子DL1〜16の数の1/4倍としているが、1/2以下であれば、同様の効果が得られる。
【0033】
サブヒータ駆動制御器102は、サブヒータ用温度取得器101が第1平均温度を求めるたびに、サブヒータ用温度取得器101にて求められた第1平均温度に基づいて、インクジェットヘッド7が有するサブヒータを駆動する。サブヒータ駆動制御器102は、第1駆動手段である。本実施形態では、サブヒータ駆動制御器102は、サブヒータ用温度取得器101にて取得された第1平均温度が目標温度となるように、サブヒータのON/OFFを切り替える。
【0034】
ここで、図2を参照してサブヒータ駆動制御器102の詳細構成について説明する。
【0035】
サブヒータ駆動制御器102は、比較基準温度保持器103と、サブヒート温度比較器104と、サブヒータ駆動器105と、を備える。また、インクジェットヘッド7には、サブヒータ710が示されている。
【0036】
比較基準温度保持器103は、インクジェットヘッド7を保温するための目標温度を予め保持する。
【0037】
サブヒート温度比較器104は、サブヒータ用温度取得器101の出力と、比較基準温度保持器103に保持された目標温度と、を比較して、その比較結果をサブヒータ駆動器105に出力する。
【0038】
サブヒータ駆動器105は、サブヒート温度比較器104から比較結果を受け付けると、その比較結果に応じて、サブヒータ710のON/OFFを切り替える。サブヒータ駆動器105は、例えば、第1平均温度が目標温度よりも低い旨を示す比較結果を受け付けると、サブヒータ710をON(加熱)するためのON信号を、サブヒータ710に出力する。一方、サブヒータ駆動器105は、第1平均温度が目標温度よりも高い旨を示す比較結果を受け付けると、サブヒータ710をOFF(放熱)するためのOFF信号を、サブヒータ710に出力する。
【0039】
なお、比較基準温度保持器103には、第1平均温度と目標温度との比較によって生じるチャタリングを抑制するため、目標温度として、サブヒータ710をONするための基準値と、サブヒータ710をOFFするための基準値と、がそれぞれ保持される。
【0040】
図3は、インクジェットヘッド7の温度変化を説明するための模式図である。
【0041】
図3には、インクジェットヘッド7の実際の温度Tが実線により示され、図7に示した温度T0が破線により示されている。図3では、温度センサが4個の温度情報を検出する期間を第1期間とし、温度センサが16個の温度情報を検出する期間を第2期間とする。さらに、簡単のため、駆動制御用温度取得器2が第2期間ごとに第2平均温度情報を取得し、サブヒータ用温度取得器101が第1期間ごとに第1平均温度を取得することとしている。
【0042】
図3に示すように、S0の時点で、第1平均温度が目標温度Tavよりも低いことが検知され、サブヒータ710がONされる。このため、温度Tは上昇を始める。
【0043】
サブヒータ用温度取得器101では、4個の温度情報を元に第1平均温度が求められるため、S4の時点で第1平均温度情報が取得される。S4の時点で、第1平均温度が目標温度Tavよりも高いことが検知され、サブヒータ710がOFFされる。よって、S4の時点から温度Tは下降し始める。インクジェットプリンタの場合は、吐出用の液体インク自身による冷却効果と、インクを吐き出すことによる放熱効果と、セラミクスなどで構成されるヘッド保持部材の放熱効果と、によって温度が低下する。
【0044】
次に、S8の時点で、温度Tが目標温度Tavよりも低いことが検知され、サブヒータ710がONされる。このため、温度Tが上昇し始める。このようにして、インクジェットヘッド7の温度が平衡状態となる。
【0045】
なお、温度Tの上昇および下降の速度(傾き)は、被加熱制御物の熱容量、放熱特性および加熱手段の加熱能力に依存するが、温度のサンプリング周期または期間には依存しない。よって、温度Tの上昇および下降の傾きは、温度T0の傾きと同じになる。
【0046】
また、S16の時点で駆動制御用温度取得器2にて取得される第2平均温度情報は、S1〜S16の平均であり、目標温度Tavとほぼ等しくなる。したがって、平衡状態での目標温度Tavに対する温度誤差はδTとなる。この温度誤差δTは、図7に示した温度誤差△Tよりも小さくなる。よって、本実施形態におけるインクジェット記録装置は、駆動制御用温度取得器2にて取得された第2平均温度と実際の温度との温度誤差が、図7で述べたインクジェット記録装置よりも小さくなる。このため、温度誤差に起因するインクジェットヘッド7の吐出特性の変動を抑制することができる。
【0047】
なお、図3では、理解を容易にするために、サブヒータ用温度取得器101にて取得される第1平均温度情報が、4個の温度情報が全て入れ替わる周期で算出される例について説明した。本実施形態では、移動平均による演算を行うため、サブヒータ駆動制御器102へのフィードバックは、ヘッド温度取得部4にて温度情報が取得されるサンプリング周期で行うことが可能である。このため、サブヒータ駆動制御器102は、より細かくサブヒータ710の制御を行うことが可能となる。
【0048】
また、同様に第2平均温度情報も移動平均により取得されるため、ヘッド駆動部6には、ヘッド温度取得部4にて温度情報が取得されるサンプリング周期で、第2平均温度情報が出力される。このため、ヘッド駆動部6は、より細かくメインヒータの制御を行うことが可能となる。
【0049】
次に、ヘッド温度取得部4にて温度情報が取得されるタイミングについて図4を参照して簡単に説明する。
【0050】
図4は、ラインフラグを基準としてインクジェットヘッド7の温度を取得する例を説明するための概念図である。図4には、ラインフラグと、1ラインヒート期間と、温度センサ読取り期間と、が示されている。
【0051】
ラインフラグは、インクジェットヘッダ7のラインヘッドで印刷する1ラインに相当する基準信号である。ラインフラグは、図示していないエンコーダなどの基準信号発生器によって印刷用紙の搬送に応じて生成される。
【0052】
1ラインヒート期間は、インクジェットヘッダ7が、印字トリガ(ラインフラグの立上り)に応じて、1ライン分の印字データを印刷するように駆動される期間である。1ラインヒート期間は、ライン間隔よりも短い時間間隔である。
【0053】
温度センサ読取り期間は、ヘッド温度取得部4が、温度センサから温度情報を読み取るための期間である。温度センサの読取り期間は、1ラインヒート期間と重ならないように、ライン間隔のうち1ラインヒート期間以外の期間に設けられる。
【0054】
よって、インクジェット記録装置は、1ラインヒート期間から一定期間だけ空けて温度情報を取得することにより、メインヒータの加熱による影響を軽減することができる。さらに、インクジェット記録装置は、印刷用紙に印字しながら、ライン毎に(各ライン周期で)温度情報を取得することができる。
【0055】
本発明の第1の実施形態によれば、第2平均手段としての駆動制御用温度取得器2が、第2期間ごとに、第2期間内に温度センサが検出した温度を平均して第2平均温度を求める。そして、第2駆動手段としてのヘッド駆動部6は、駆動制御用温度取得器2が第2平均温度を求めるたびに、駆動制御用温度取得器2にて求められた第2平均温度に基づいて、第2発熱素子としてのメインヒータを駆動する。これとともに、第1平均手段としてのサブヒータ用温度取得器101が、第2期間より短い第1期間ごとに、第1期間内に温度センサが検出した温度を平均して第1平均温度を求める。そして、第1駆動手段としてのサブヒータ駆動制御器102は、サブヒータ用温度取得器101が第1平均温度を求めるたびに、サブヒータ用温度取得器101にて求められた第1平均温度に基づいて、第1発熱素子としてのサブヒータを駆動する。
【0056】
このため、本実施形態におけるインクジェット記録装置は、サブヒータ用温度取得器101が第1平均温度を求めるための周期を、駆動制御用温度取得器2が第2平均温度を求めるための周期よりも短くすることができる。よって、サブヒータ駆動制御器102は、サブヒータのON/OFFの切替えをより短周期で行うことができるため、インクジェットヘッド7の温度の変動を低減することができる。このため、インクジェット記録装置は、ヘッド駆動部6に供給する第2平均温度を安定化させることができる。
【0057】
したがって、本発明の第1の実施形態によれば、インクジェット記録装置は、インクジェッヘッド7のインク吐出特性の安定性を向上させることができ、より良好な印刷を行うことができる。
【0058】
また、本発明の第1の実施形態では、第1平均手段としてのサブヒータ用温度取得器101が、第1期間内で温度センサが検出した温度を、第1期間内よりも短い期間で移動平均する。このため、サブヒータ駆動制御器102は、サブヒータのON/OFFの切替えをさらに細かく制御することができる。
【0059】
また、本発明の第1の実施形態では、第2平均手段としての駆動制御用温度取得器2が、第2期間内で温度センサが検出した温度を、第2期間よりも短い期間で移動平均する。このため、ヘッド駆動部6は、インクジェットヘッド7の吐出制御をさらに精度よく行うことができる。
【0060】
また、ヘッド駆動部6は、サブヒータ用温度取得器101にて取得される第1平均温度情報とは別に、駆動制御用温度取得器2にて取得された第2平均温度情報に基づいてインクジェットヘッド7の吐出制御を行う。このため、サブヒータ710による温度制御の範囲が目標温度を外れた場合であっても、良好なヘッド駆動が可能となる。
【0061】
例えば、連続して濃い絵を印刷するときに、インクジェットヘッド7の吐出量が多い場合は、インク吐出のためにメインヒータの加熱量が増大し、インクジェットヘッド7の温度が高くなり、目標温度を超えてしまう場合がある。この場合、サブヒータ制御器101は、自動的にサブヒータ710をOFFにするが、インクジェットヘッド7の放熱量は一定のため、暫くは、目標温度を外れた状態がつづくことになる。このときでも、ヘッド駆動部6は、サブヒータ制御器1によるサブヒータ710の制御とは独立して、駆動制御用温度取得器2にて取得された第2平均温度情報に基づいて、インクジェットヘッド7の駆動制御を行うことができる。
【0062】
また、サブヒータ制御器1は、上述のように、ヘッド駆動部6と独立してサブヒータ710を制御することができ、ヘッド吐出制御のタイミングを基準に、サブヒータ710の切替えを制御する必要は無い。このため、簡易な回路構成によって、サブヒータ制御器1を実現することができる。
【0063】
例えば、印刷を開始する前は、ヘッド駆動部6にてインクジェットヘッド7のメインヒータが加熱されていないため、サブヒータ710がONになってインクジェットヘッド7の温度が目標温度に到達する。目標温度に到達すると、サブヒータ710がOFFになり、自動的に所定温度範囲に収まるようにサブヒータ710が切り替えられる。また、印刷が開始されると、メインヒータの加熱によってインクジェットヘッド7の温度が上昇するため、自動的に、サブヒータ710はOFFになる。また、印刷途中で絵柄が変わりメインヒータの加熱量が少なくなる場合でも、自動的に一部のサブヒータ710がONとなる。よって、インクジェットヘッド7の温度変化を抑制するこができ、良好なヘッド駆動制御が可能となる。
【0064】
なお、サブヒータ制御器1によるサブヒータ710のON/OFFを切り替えるタイミングは、図3に示した温度センサ読取り期間後、次の1ラインヒート期間開始までの期間に設定される。これは、1ラインヒート期間中にサブヒータ710をON/OFFすることにより、1ラインの印刷途中で温度特性が変化しないようにするためである。
【0065】
次に、第2の実施形態におけるインクジェット記録装置について説明する。
【0066】
図5は、第2の実施形態におけるインクジェットヘッド7の構成例を示す模式図である。図5では、インクジェットヘッド7は、複数のサブユニット701、702〜708を有し、各サブユニット701〜708には、複数の温度センサが設けられている。サブユニット701〜708の各々に示された8本の各ラインは、ライン状に設けられたノズル列を表わし、各ノズル列は、記録媒体(印刷用紙)上で概同一位置にインクが配置されるように構成される。
【0067】
各サブユニット701〜708の両端の重なり部分(ユニット703では、端部AおよびB)は、他のサブユニットの重なり部分と、記録媒体上で概同一位置にインクが配置されるように構成される。また、サブユニット701〜708の各々に示した四角印(□)は、温度センサを示す。例えば、ユニット703には、温度センサ801〜803が示されている。温度センサ801および803は、例えば、インクジェットヘッド7の所定領域AおよびBの温度を検出する第1検出手段である。また、温度センサ802は、所定領域外の領域Cの温度を検出する第2検出手段である。
【0068】
各サブユニット701〜708は、印刷用紙の搬送方向において他のサブユニットと一部領域が互いに重なるように配置される。各サブユニット701〜708に設けられる温度センサのそれぞれは、各サブユニット701〜708の重なり部分の温度と、非重なり部分の温度と、が検出できるように、中央部(例えば、領域C)と両端部(例えば、領域AおよびB)とにそれぞれ設けられる。
【0069】
サブユニット701〜708の端部では、他のサブユニットの端部と搬送方向において重なるため、記録媒体上で概同一位置にインクを配置できるノズルの数が、サブユニット701〜708の中央部に比べて倍になる。このため、1つのサブユニット当たりの吐出頻度が、中央部に比べて1/2となる。このため、サブユニット701〜708の端部(例えば、領域AおよびB)では、メインヒータの加熱によるインクジェットヘッド7の温度上昇速度が、中央部(例えば、領域C)よりも遅くなる。
【0070】
そこで、第2の実施形態では、駆動制御用温度取得器2が、各サブユニット701〜708の3つの領域(例えば、領域A、BおよびC)ごとの第2平均温度情報を、個別にヘッド駆動部6に供給できるように構成される。また、サブヒータは、各サブユニット701〜708ごとに、サブユニット全体を温めることができるように設けられる。
【0071】
図6は、図5に示したインクジェットヘッド7を用いた場合におけるインクジェット記録装置の構成例を示すブロック図である。インクジェット記録装置には、3つの温度センサを有するサブユニット701〜708のうち、1つのサブユニット703に対応する構成例が示されている。
【0072】
ヘッド温度取得部4は、温度センサ801〜803にて検出された温度をそれぞれサンプリング周期で取得する。ヘッド温度取得部4は、温度センサ801〜803にて検出された温度を示す温度情報をサブユニット301〜303にそれぞれ記憶する。
【0073】
ヘッド温度記憶部3は、3つの温度センサ801〜803に対応するサブユニット301〜303を有する。サブユニット301〜303の各々は、図1および図2に示したヘッド温度記憶部3と同様の構成である。サブユニット301、302および303の各々の出力は、例えば、以下のように表現される。
【0074】
aDLn、a=301、302、303 ;n=1〜16
駆動制御用温度取得器2は、3つの温度センサ801〜803に対応するサブユニット201〜203を有する。サブユニット201〜203の各々は、図1および図2に示した駆動制御用温度取得器2と同様の構成である。サブユニット201および203は、第2期間ごとに、第2期間内で温度センサ801および803が検出した温度を平均して第1検出温度を求める第1演算手段である。また、サブユニット202は、第2期間ごとに、第2期間内で温度センサ802が検出した温度を平均して第2検出温度を求める第2演算手段である。サブユニット201、202および203の各々の出力は、例えば、以下のように表現される。
【0075】
<aR>、a=301、302、303
サブユニット201、202および203は、式1と同様に、次式に基づいて、第2平均温度<aR>の演算を行う。
【0076】
<aR>=(ΣaDLk)/m
a=301、302、303、k=1〜m :m=16
ヘッド駆動部6は、サブユニット201〜203が第1および第2検出温度をそれぞれ求めるたびに、サブユニット201〜203にて求められた第1および第2検出温度に基づいてメインヒータを駆動する。本実施形態では、ヘッド駆動部6は、サブユニット201〜203の各々から第2平均温度が出力されるたびに、これらの結果に基づいて、インクジェットヘッド7の各領域A、BおよびCに対応するメインヒータをそれぞれ制御する。
【0077】
サブヒータ用温度取得器101は、3つの温度センサ801〜803に対応するサブユニット1011〜1013を有する。サブユニット1011〜1013の各々は、図1および図2に示したサブヒータ用温度取得器101と同様の構成である。サブユニット1011、1012および1013にて取得された各第1平均温度情報<ar>は、例えば、以下のように表現される。
【0078】
<ar>、a=301、302、303
また、サブヒータ用温度取得器101は、式2と同様に、次式に基づいて、第1平均温度情報<ar>を演算する。
【0079】
<ar>=(ΣaDLk)/m
a=301、302、303、k=1〜m :m=4
サブヒータ駆動制御器102は、図2に示したサブヒータ駆動制御器102と同様の構成である。サブヒータ駆動制御器102は、比較基準温度保持部103と、サブヒート温度比較器104と、サブヒータ駆動器105と、を備える。なお、比較基準温度保持部103とサブヒータ駆動器105とは、図2に示したものと同一の構成であるため、ここでの詳細な説明を省略する。
【0080】
サブヒータ駆動制御器102は、サブユニット1011〜1013の各々にて取得された3つの第1平均温度情報の平均値を算出し、その平均値と比較基準温度保持器103の目標温度とを比較し、その比較結果に基づいてサブヒータ駆動器105を駆動する。
【0081】
サブヒート温度比較器104は、次式に基づいて、サブヒータ用温度取得器101の3つの出力の平均値<r3>を算出する。
【0082】
<r3>=(Σ(<ar>))/3 a=301、302、303
サブヒート温度比較器104は、その算出された平均値<r3>と、比較基準温度保持器103に保持された目標温度と、を比較する。なお、3の数値が奇数のため、回路構成が煩雑となる場合は、サブヒート温度比較器104は、比較基準温度保持器103に保持された目標温度を3倍した値と、<r3>=Σ(<ar>)の演算結果と、を比較するようにしてもよい。
【0083】
本発明の第2の実施形態によれば、第1検出手段としての温度センサ801が、サブユニット703の領域Aの温度を検出し、第2検出手段としての温度センサ802が、サブユニット703の領域Cの温度を検出する。第1演算手段としてのサブユニット201が、第2期間ごとに、第2期間内で温度センサ801が検出した温度を平均して第1検出温度を求める。第2演算手段としてのサブユニット202が、第2期間ごとに、第2期間内で温度センサ802が検出した温度を平均して第2検出温度を求める。そして、第2駆動手段としてのヘッド駆動部6が、サブユニット201および202が第1および第2検出温度をそれぞれ求めるたびに、サブユニット201および202にて求められた第1および第2検出温度に基づいてメインヒータを駆動する。
【0084】
このため、ヘッド駆動部6は、インクジェットヘッド7内のインクの吐出量の相対的な違いによってインクジェットヘッド7の温度特性が異なる領域Aおよび領域Cごとに、インクジェットヘッド7の吐出制御を行うことができる。
【0085】
以上説明した各実施形態において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0086】
2 駆動制御用温度取得器 (第2平均手段に対応)
6 ヘッド駆動部 (第2駆動手段に対応)
7 インクジェットヘッド (印刷ヘッドおよび第2発熱素子に対応)
101 サブヒータ用温度取得器 (第1平均手段に対応)
102 サブヒータ駆動制御器 (第1駆動手段に対応)
710 サブヒータ (第1発熱素子に対応)
801〜803 温度センサ (温度検出手段に対応)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐き出す印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドの温度を検出する温度検出手段と、を有し、前記印刷ヘッドに、当該印刷ヘッドを保温するための第1発熱素子と、前記インクを吐き出すための第2発熱素子と、が配置されたインクジェット記録装置であって、
第1期間ごとに、当該第1期間内で前記温度検出手段が検出した温度を平均して第1平均温度を求める第1平均手段と、
前記第1平均手段が前記第1平均温度を求めるたびに、当該第1平均温度に基づいて前記第1発熱素子を駆動する第1駆動手段と、
前記第1期間よりも長い第2期間ごとに、当該第2期間内で前記温度検出手段が検出した温度を平均して第2平均温度を求める第2平均手段と、
前記第2平均手段が前記第2平均温度を求めるたびに、当該第2平均温度に基づいて前記第2発熱素子を駆動する第2駆動手段と、を含むインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1平均手段は、前記第1期間内で前記温度検出手段が検出した温度を、前記第1期間よりも短い周期で移動平均する、インクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、
前記第2平均手段は、前記第2期間内で前記温度検出手段が検出した温度を、前記第2期間よりも短い周期で移動平均する、インクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置において、
前記温度検出手段は、
前記印刷ヘッドの所定領域の温度を検出する第1検出手段と、
前記印刷ヘッドの前記所定領域外の領域の温度を検出する第2検出手段と、を含み、
前記第2平均手段は、
前記第2期間ごとに、前記第2期間内で前記第1検出手段が検出した温度を平均して第1検出温度を求める第1演算手段と、
前記第2期間ごとに、前記第2期間内で前記第2検出手段が検出した温度を平均して第2検出温度を求める第2演算手段と、を含み、
前記第2駆動手段は、前記第1および第2演算手段が前記第1および第2検出温度をそれぞれ求めるたびに、当該第1および第2検出温度に基づいて前記第2発熱素子を駆動する、インクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−230302(P2011−230302A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100043(P2010−100043)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】