インクジェット記録装置
【課題】廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現すること。
【解決手段】保守動作により生じた廃インクの量を、ソフト的積算手段で積算し、かつ廃インク収用手段4に設けられたハード的な検出手段によって廃インクの量を検知する。これにより、どちらかの積算手段が故障・破損により動作しなくなった場合でもインク溢れを防止でき、かつ故障の診断を行うことができる。
【解決手段】保守動作により生じた廃インクの量を、ソフト的積算手段で積算し、かつ廃インク収用手段4に設けられたハード的な検出手段によって廃インクの量を検知する。これにより、どちらかの積算手段が故障・破損により動作しなくなった場合でもインク溢れを防止でき、かつ故障の診断を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出することで記録をおこなうインクジェット記録装置およびそれと同等のものに関するもので、特に廃インクを処理する際の廃インク収納手段内の廃インク量検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来インクジェット記録装置は、記録媒体を横切って往復運動するキャリッジに搭載される記録ヘッドを利用することが多い。記録ヘッドが記録媒体を横切って運動するにつれて、制御電子部品が記録ヘッドの吐出部分を起動して、記録媒体上にイメージまたは文字を形成するため吐出ノズルからインク滴を吐出する。また記録ヘッドへのインク補給はインクタンクから行われる。
【0003】
このようなインクジェット記録装置においては、様々なメインテナンス動作のために記録以外で使用されたインクが廃インクとして記録装置内で処理される。また、縁無し記録時に記録媒体の外側へ吐出されたインクも同様に廃インクとして処理される。記録装置内には、このような廃インクを収納するための廃インク収用手段が付設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような機構をもつインクジェット記録装置において、記録動作に伴って排出された廃インクをインクタンクに回収する構成を持った記録装置についてはすでに実用化されており、多数の発明がなされている。例えば、回収した廃インクのあふれを防止するために廃インク収用手段の中にフロートを設けこのフロートにより廃インクの状態やオーバーフローを検知することが行われている。また、廃インク収用手段の一部に検知手段を設けて廃インク収用手段のオーバーフロー防止を行うことも行われている。しかし、このような検知手段においては、複数の検知位置を持たない限り廃インク収用手段の状態を把握することが困難である。更に、ユーザーは廃インク収用手段が使用不可能な状態かもしくはそれに近い状態になってからでないと収容手段の状態を認識できない点や、廃インク容量の表示が出来ないという欠点があった。
【0006】
このような、ハード的に廃インク残量を検知する構成は、比較的初期の記録装置または大型の業務用記録装置に用いられることが多い。しかし近年はコスト面から、後述のようないわゆるソフト的に廃インク量を積算し、ユーザーに対する警告や本体の動作制限等に用いる構成が提案され実用に供されている。このような方法では、廃インクの検知手段を設けず排出された廃インクをソフト的に積算し、蒸発量を加味した上で廃インク量を正確に計測しようとする試みが行われている。また、これに類似する構成として特許文献1では、縁無し記録を行う際のはみ出し部分の廃インク量を温湿度による蒸発を加味して制御する方法が提案されている。しかし、このようにソフト的に廃インク量を積算して計測する構成で確実に廃インクのオーバーフローを防止するためには、使いきりのかなり手前で廃インクの供給を停止する必要があり、廃インク収容手段を効率よく使い切ることが困難である。 一方でインクの蒸発が可逆的であるため一旦蒸発が促進されるような環境で蒸発した廃インクが、例えば高湿環境下に置かれると再度水分を吸収し廃インク量が増加するといった現象が知られている。このため、これらの従来のソフト計測による積算方式では、あらかじめ廃インク排出時の各環境にあわせた蒸発率により廃インクを計算する計算式によって廃インク量を算出した場合、以降の環境変化等により廃インクがオーバーフローする可能性が払拭できず、万全の構成とはいえない。
【0007】
またソフト的に廃インクを積算し、検知する方法の欠点として、記録ヘッドを吸引回復するポンプの廃インク排出量や、記録ヘッドからの記録に寄与しないインク吐出量等は、予め設定された値から一定の誤差を持っており積算量にも数10%の誤差を生じる。加えて、意図しないユーザーによる不用意な電源オフが行われた場合等においては、正確な廃インク量が記憶手段に書き込まれず実廃インク量と積算廃インク量で誤差を生じる可能性がある。このような誤差が+方向に生じた場合には、廃インクがあふれる恐れがあるため、通常はオーバーフローを回避するために誤差が+方向かつ最大の場合にも溢れないよう、想定される最大値で計算するのが常である。従って、このような構成の場合、誤差が少ないか、もしくは実廃インクの公差が(−)マイナス方向に振れている系すなわち実廃インク量が少ない場合には、廃インク積算手段により収用手段が一杯であるとされ、エラーになった場合でも多くの場合に廃インク収用手段にはまだ空きが有るケースが見受けられる。
【0008】
また、この種の記録装置では廃インク収用手段の空き具合をパネルやテスト印字でユーザーに表示する手段を設けるが、誤差が(+)プラス方向であることを前提に廃インクを積算した場合、廃インク収用手段の空き情報を正確に反映できない可能性が高い。
【0009】
更に、何らかの原因で回復装置が故障してしまった場合においては、本来インクを排出しないタイミングで排出動作が行われたり、本来排出されるべきタイミングで排出がなされなかったり、といった現象が発生する。しかし、この場合にはソフト的に廃インクを加算する方法については正しい値を示さない可能性が高い。
【0010】
本発明は上記のような事情に鑑み、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドを載置可能に構成されており、前記記録ヘッドからインクを吐出することで記録および回復処理を行い、該回復処理の際に吐出された前記インクは廃インクとなって廃インク収容手段に貯留されるインクジェット記録装置において、前記廃インク収容手段に設けられ、該廃インク収容手段の中の前記廃インクの量を検知する検知手段と、前記回復処理の際に前記記録ヘッドから吐出された前記インクの量を積算する積算手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によればインクジェット記録装置は、廃インク収容手段に設けられ、廃インク収容手段の中の廃インク量を検知する検知手段と、回復処理の際に記録ヘッドから吐出された廃インク量を積算する積算手段と、を備えている。これによって、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態のインクジェット記録装置の外観を示した斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の内部が分かるように示した斜視図である。
【図3】図1の記録装置におけるインクの供給・排出系を示した模式図である。
【図4】第1の実施形態において用いた記録装置の制御回路の構成例を示す図である。
【図5】回復処理シーケンスを示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態の記録装置の記録シーケンスを示したフローチャートである。
【図7】記録ヘッドと予備吐出口を示した側面図である。
【図8】第1の実施形態の記録装置の記録シーケンスを示したフローチャートである。
【図9】ソフト的に廃インクの量を積算する工程を示したフローチャートである。
【図10】(a)から(f)は廃インクの積算カウンターを模式的に示した図である。
【図11】ハード的に廃インク量検知を行う廃インク収容手段を示した断面図である。
【図12】(a)から(c)は、廃インク収容手段の変形例を示した断面図である。
【図13】廃インク積算の合わせこみの概念を示したグラフである。
【図14】廃インク量の合わせこみ時のシーケンスを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。本発明はこれらの実施形態のみに限らず、これらをさらに組み合わせることや、この特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の技術にも当然応用することができる。
【0015】
(基本的構成)
(記録装置概要)
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置1の外観を示した斜視図であり、図2は、インクジェット記録装置1の内部が分かるように示した斜視図である。本実施形態のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1は、記録媒体の搬送を行う記録媒体搬送部と、記録媒体搬送方向に対して交差する方向に記録ヘッドを載置可能であり往復動作するキャリッジ17とを備えている。キャリッジ17に搭載された記録ヘッド2は、記録媒体に対して移動しながら記録データに応じてインクを吐出することで記録を行う。さらに記録装置1は、記録ヘッド2の吐出状態を回復する回復装置9を備えている。
【0016】
ここで、記録装置1に対するインクの供給と排出について説明する。なお、本実施形態のインクジェット記録装置は、ブラック、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタおよびイエローのインクを吐出して記録を行うが、各インクについてインクの供給と排出は同様の構成となっている。
【0017】
図3は、本実施形態の記録装置1におけるインクの供給・排出系を示した模式図である。インクタンク10から供給されたインクは、インク供給管13、ジョイント14、加圧室21、インク供給弁16、加圧ポンプ30等からなる供給路を経由して記録ヘッド2に供給される。インク供給弁16は、インクタンク10と加圧室21の間に設置され、必要に応じて開閉する。加圧室21にはある一定量の以下のインクを溜め込むことが出来る。加圧ポンプ30は、加圧室21に対して作用し、加圧室21を減圧することでインクタンク10からインクを吸い出し、加圧室21を加圧することで加圧室21に溜め込まれたインクを記録ヘッド2に供給する。記録ヘッド2から吐出され記録に寄与しなかったインク(以下、廃インク)は、キャップ5や予備吐出口11に集められ、廃インク回収管23を経由して廃インク収用手段4に保存(貯留)される。キャップ5は、記録領域から外れた場所に位置し、非記録時に記録ヘッド2のインク吐出面を保護・保湿するために使われる他、記録開始前や記録中の予備吐出を受けたり、記録ヘッド2の吐出面を吸引回復したりするときに使われる。予備吐出によってキャップ5内に溜まった廃インクは、吸引ポンプ12により回収され、廃インク回収管23を経由して廃インク溜め4に蓄えられる。また、吸引回復が行われるときは、記録ヘッド2のインク吐出面とキャップ5が密閉し、吸引ポンプ12が動作することで記録ヘッド2からインクが吸い出され、廃インク回収管23を経由して廃インク溜め4に蓄えられる。予備吐出口11は、記録領域から外れたキャップ5とは反対側に設置される場合や、記録領域の適当な場所に設置される場合がある。予備吐出口11に溜まった廃インクは、重力によって廃インク回収管23を経由して廃インク溜め4に蓄えられる。
【0018】
記録ヘッド2は、その壁の一部が可とう膜31により構成されている。可とう膜31は、インクの消費に伴う記録ヘッド2内部の圧力変化に応じて伸縮動作を行う。可とう膜31の伸縮動作は、可とう膜31に接続されたアーム32に伝えられ、さらにはアーム32の可とう膜31とは反対側の先端に接続された弁33に伝えられる。弁33は、インク供給管13と記録ヘッド2との接続部を塞いでおり、上記のような仕組みによってインクの消費に伴って開閉される。
【0019】
次に、記録動作におけるインクの流れと各部の動きを説明する。
【0020】
(初期充填動作)
インクタンク10からインク供給管13へのインク導出は、加圧ポンプ30を使用して加圧室21内を減圧することによって行う。インク供給弁16を開にし、加圧ポンプ30を減圧方向に作動させると、インクタンク10から導出されたインクは加圧室21に蓄えられる。所定の閾値までインクが蓄えられたら減圧を止め、インク供給弁16を閉にする。次に、加圧ポンプ30を加圧方向に作動させ、加圧室21に蓄えられたインクを所定の圧力まで加圧する。しかし、記録ヘッド2内の弁33がインク供給管13を塞ぐ力は、加圧ポンプ30で加圧された圧力よりも大きいため、このままでは弁33が開いてインク供給管13と記録ヘッド2が連通するということはない。そこで、キャップ5を記録ヘッド2と密閉させ、吸引ポンプ12を作動させることで、記録ヘッド2の内部を減圧する必要がある。このように構成することで弁33が開き、記録ヘッド2にインクを供給することができる。所定量のインクが記録ヘッド2内に供給されたら、吸引ポンプ12を止め、キャップ5を記録ヘッド2から分離する。その結果、記録ヘッド2内の負圧値との釣り合いによって弁33が閉じるまでインクが供給された後インクの供給は停止する。
【0021】
(記録中のインク供給動作)
記録によって記録ヘッド2内のインクが消費されていくと、記録ヘッド2内の負圧が高まる。その結果、弁33が開き加圧室21で加圧されたインクが記録ヘッド2に供給され、記録ヘッド2内の負圧との釣り合いによって弁33は閉じられる。記録中は上記の動作の繰り返しによって、加圧室21に蓄えられたインクが記録ヘッド2に供給される。
【0022】
加圧室21に蓄えられたインクが所定の閾値以下になると、インクタンク10から加圧室21にインクを供給する動作が行われる。すなわち、加圧ポンプ30の加圧動作を停止し、加圧室21の加圧が解除された段階でインク供給弁16を開き、次に加圧ポンプ30を減圧方向に作動させることで、インクタンク10内のインクが加圧室21に供給される。このとき、記録ヘッド2内の弁33は閉じたままであるので、記録ヘッド2内のインクが加圧室21に供給されることはない。加圧室21内のインクが所定量に達した場合、もしくは加圧室21が減圧されてから所定の時間が経過した場合、インク供給弁16を閉じ、加圧ポンプを加圧方向に作動させることで、加圧室21へのインク供給を終了する。この動作は好ましくは記録中以外のタイミングで行われるが、多少であれば記録中であっても良い。
【0023】
次に、本実施形態の記録装置1で使用可能なインクについて説明する。インクとしては、色材に染料成分を含むインクおよび顔料成分を含むインク(以下、それぞれ染料インクおよび顔料インクという)や、両成分を含むインクなどがある。使用する染料としては、従来から当該技術分野において周知の各種染料を用いることができる。例えば、直接染料としてのアゾ染料、フタロシアニン染料、酸性染料としてのアゾ染料、アントラキノン系染料、等が挙げられる。
【0024】
また、顔料を使用する場合も、従来公知の有機および無機顔料をすべて使用することができる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料およびキレートアゾ顔料等のアゾ顔料やフタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントセキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオイシジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキおよび酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系およびカーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水性に分散可能なら、いずれのものも使用できる。
【0025】
インクに顔料を分散させるために含有される水溶性樹脂(分散樹脂)は、アミンあるいは塩基を溶解させた水溶液に可溶で、かつ重量平均分子量が3000から30000の範囲が好ましい。さらに、好ましくは5000から15000の範囲であるものがよく、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体あるいは、これらの塩等を使用することができる。
【0026】
顔料成分と染料成分とを併用したインクとするときには、一般に、顔料:染料(重量比)が8:2〜2:8の範囲であるのが望ましい。より好ましくは、7:3〜3:7(顔料:染料)の範囲とする。
【0027】
さらにインクは、好ましくは、インク全体が中性またはアルカリ性に調整されていることが、前記した水溶性樹脂の溶解性を向上させ、一層の長期保存安定性に優れたインクとすることができるので望ましい。インクのpHは、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食原因となる場合があるので、好ましくはpH7〜10の範囲とされるのが望ましい。
【0028】
pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸物等の無機アルカリ剤、有機酸や、鉱酸が挙げられる。
【0029】
インクにおいて好適な水性媒体は、水および水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水は種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。本発明のインクは水系インクであり、水の含有量としてはインク全重量の50%以上であることが好ましい。
【0030】
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソ−ブチルアルコール等の炭化数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール類のケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルコレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン:エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0031】
水溶性有機溶剤としては、従来公知のインクに使用されているものであれば、概ね使用することができる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレンまたはオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;チオジグリコール;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記の様な水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインクの全重量に対して重量%で1〜49%、好ましくは2〜30%の範囲である。また、上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも混合物としても使用できる。しかし、媒体を併有する場合の最も好ましい液媒体組成は、少なくとも1種の水溶性高沸点有機溶剤、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを含有するものである。
【0032】
また、インクは、上記の成分のほか、必要に応じて所望の物性値を有するインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等をさらに添加することができる。さらに、市販の水溶性染料等も添加することができる。
【0033】
上記プリンタに適用される各色インクの例を以下に記載する。
【0034】
(2−1)イエローインク
分散液の作製
顔料[C.I.ピグメントイエロー74(製品名:Hansa Brilliant Yellow 5GX(クラリアント社製))]10部、アニオン系高分子P−1[スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(共重合比(重量比)=30/40/30)、酸価202、重量平均分子量6500、固形分10%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム]30部、および純水60部を混合し、以下に示す材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを150部充填し、水冷しつつ、12時間分散処理を行った。さらに、この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去した。そして、最終調製物として、固形分が約12.5%、重量平均粒径が120nmの顔料分散体1を得た。得られた顔料分散体を用いて、下記のようにしてインクを調製した。
【0035】
インクの作製
以下の成分を混合し、十分に攪拌して溶解・分散後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過して、イエローインクを調製した。
・上記で得た顔料分散体1 40部
・グリセリン 9部
・エチレングリコール 6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH) 1部
・1,2−ヘキサンジオール 3部
・ポリエチレングリコール(分子量1000) 4部
・水 37部。
【0036】
(2−2)マゼンタインク
分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価300、数平均分子量2500のAB型ブロックポリマーを作り、さらに、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0037】
上記ポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を300gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。
【0038】
次に、マイクロフリュイダイザを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0039】
さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ分散液とした。得られたマゼンタ分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が5質量%であった。
【0040】
インクの作製
インクの作製は、上記マゼンタ分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度4質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
・上記マゼンタ分散液 40部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物
(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 39.5部。
【0041】
(2−3)ライトマゼンタインク
分散液の作製
マゼンタインクで使用したポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を300gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。
【0042】
次に、マイクロフリュイダイザを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0043】
さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ分散液とした。得られたマゼンタ分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が5質量%であった。
【0044】
インクの作製
インクの作製は、上記マゼンタ分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度4質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
・上記マゼンタ分散液 8部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物
(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 71.5部。
【0045】
(2−4)シアンインク
分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量3000のAB型ブロックポリマーを作り、さらに、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0046】
上記のポリマー溶液を180g、C.I.ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を220gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。
【0047】
次に、マイクロフリュイダイザを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0048】
さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とした。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が10質量%であった。
【0049】
インクの作製
インクの作製は、上記シアン分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
・上記シアン分散液 20部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物
(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 53.5部。
【0050】
(2−5)ライトシアンインク
分散液の作製
シアンインクで作成したポリマー溶液を180g、C.I.ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を220gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。
【0051】
次に、マイクロフリュイダイザを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0052】
さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とした。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が10質量%であった。
【0053】
インクの作製
インクの作製は、上記シアン分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
・上記シアン分散液 4部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物
(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 69.5部。
【0054】
(2−6)ブラックインク(マット紙用ブラックインク)
分散液の作製
表面積が230m2/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック10gとp−アミノ−N−安息香酸3.41gを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して、70℃で撹拌した。ここにさらに数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、さらに1時間撹拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させ、さらに、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。
【0055】
インクの作製
以下の成分を混合し、十分撹拌して溶解後、ポアサイズ3μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過してブラックインクを調製した。
・顔料分散体1 30部
・硫酸カリウム 1部
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水 50.8部
【0056】
次に、本実施形態の記録装置1の制御系の構成について説明する。
図4は、本実施形態において用いた記録装置の制御回路の構成例を示す。プログラマブル・ペリフェラル・インターフェイス(以下PPIとする)101は、ホストコンピュータ100から送られてくる指令信号や記録データを含む記録情報信号を受信してMPU102に転送する。またPPI101は、ホストコンピュータ100に対しては必要に応じ記録装置のステータス情報を送出する。またPPI101は、ユーザーが記録装置に対して各種設定を行う設定入力部や、ユーザーに対してメッセージを表示する表示部等を有したコンソール106との間で入出力を行う。更にまたPPI101は、キャリッジ17ないし記録ヘッド2がホームポジションにあることを検出するHPセンサや、キャッピングセンサなどを含むセンサ群107からの信号入力を受容する。
【0057】
MPU(マイクロプロセッシングユニット)102は、制御用ROM105に記憶された処理手順に対応した制御プログラムに従って、記録装置内の各部を制御する。RAM103は、受信した信号を格納し、あるいはMPU102のワークエリアとして使用され、また各種データを一時的に記憶する。ROM104は、フォント発生用ROMで、コード情報に対応して文字や記録等のパターン情報を記憶しており、入力したコード情報に対応して各種パターン情報を出力する。プリントバッファ121は、RAM103等に展開された記録データを記憶し、M行記録分の容量を持っている。制御用ROM105には上記制御プログラムのほか、後述する制御の過程で使用されるデータ(例えば本実施形態の主要部に係るワイピング実行の要否を定めるためのデータ)等に対応した固定データを格納しておくことができる。これらの各部は、アドレスバス117およびデータバス118を介して、MPU102により制御される。
【0058】
キャッピングモータ113は、キャップ5の昇降、ワイパーホルダー8の移動および吸引ポンプ6の動作の駆動源をなす。モータドライバ114、115および116は、それぞれ、キャッピングモータ113、キャリッジモータ110および給紙モータ119をMPU102の制御に応じて駆動する。シートセンサ109は、記録媒体の有無、すなわち記録媒体が記録ヘッドによる記録が可能な位置に供給されたか否かを検知する。ヘッドドライバ111は、記録情報信号に応じて記録ヘッド2の発熱部52を駆動する。電源部120は、上記各部へ電源を供給しており、駆動電源装置としてACアダプタと電池とを有している。
【0059】
記録装置1およびホストコンピュータ100からなる記録システムにおいては、ホストコンピュータ100からパラレルポート、赤外線ポートあるいはネットワーク等を介して記録データ送信する際、その先頭部分に所要のコマンドが付加される。そのコマンドとしては、例えば記録の行われる記録媒体の種類(普通紙、OHPシート、光沢紙等の種類や、さらには転写フィルム、厚紙、バナー紙等の特殊な記録媒体の種別)、媒体サイズ(A0判、A1判、A2判、B0判、B1判、B2判など)、記録品位(ドラフト、高品位、中品位、特定色の強調、モノクローム/カラーの種別)、給紙経路(ASF、手差し、給紙カセット1、給紙カセット2等)、およびオブジェクトの自動判別の有無などがある。また、記録媒体でのインクの定着性を向上するための処理液を付与する構成が採用される場合には、その付与の有無を定める情報等がコマンドとして送信されることもある。
【0060】
これらのコマンドに従って、記録装置側では前述したROM105から記録に必要なデータを読み込み、それらのデータに基づいて記録を行う。データとしては、例えば上述したマルチパス記録を行う際の記録パス数や、記録媒体単位面積あたりのインクの打ち込み量および記録方向等を決定するためのものがある。またその他、マルチパス記録を行う際に適用されるデータ間引き用のマスク種類や、記録ヘッドの駆動条件(たとえば発熱部52に印加する駆動パルスの形状、印加時間等)、ドットのサイズ、記録媒体搬送の条件、さらにはキャリッジ速度等もある。
【0061】
次に、本実施形態の記録装置1の記録制御について説明する。
(回復処理のシーケンス)
図5、図6および図8は、本実施形態の記録装置1の記録制御を示したフローチャートである。図5は、回復処理シーケンスを示すフローチャートであり、ステップS1で一次電源投入後にプリンタとしての機能を実際に実行可能な状態にする二次電源投入(ソフトオン)またはホストコンピュータ100からの記録開始コマンドの入力に応じて起動される。その後ステップS2において、現在時刻Taの読み込みを行い、ステップS3において前回記録動作を行った時刻Tbの読み込みを行う。そしてステップS4において、経過時間(クリーニング間隔T)の算出が行われる。次に、ステップS5では当該算出したクリーニング間隔Tが規定の閾値T0を超えているか否かの判定を行い、肯定判定がなされればステップS6において吐出状態の良否判定が実施される。この判定により吐出状態が不良であり、何らかの回復動作が必要と判定された場合のみ回復動作すなわち吸引動作、予備吐出、ワイピング等を含む一連の回復シーケンスが実施される。その後、ステップS7で吐出状態が良好であるかどうかの判定を行い、良好でない場合には、ステップS8でクリーニング処理が行われる。その後、ステップS9で再びステップS6と同様の吐出状態の良否判定が実施され、ステップS10で再度吐出状態が良好であるかどうかの判定が行われる。ここで、吐出状態が良好でないと判断された場合には、ステップS13に移行し、エラー表示を行う。また、ステップS10で吐出状態が良好であると判断されると、ステップS11に移行して、前回記録動作を行った時刻Tbの内容を現在の時刻Taに置換し、ステップS12でREADY状態となる。
【0062】
なお、クリーニング間隔Tは、MPU102またはその他の適切な手段が提供するカレンダ機能により現在時刻Taを知り、RAM103のレジスタ領域等に格納してある前回記録動作を行った時刻Tbの値を読み込むことで算出することができる。
【0063】
このような置換作業は、例えば、後述する図6のS66における記録動作の際に実施してもよく、実際に本実施形態では各記録スキャン動作で置換作業(リセット)を実施するよう構成している。このように構成することで、各吐出動作によってタイマがリセットされるためにより詳細に非使用時間が計測可能となる。タイマについては前述したように各スキャンで頻繁に更新するか、または排紙S72にあわせて行っても概略同じような非使用時間の計測が可能である。
【0064】
(記録処理のシーケンス)
図6は、本実施形態の記録装置1の記録処理シーケンスを示したフローチャートである。記録装置1の休止状態では、上述のように、記録ヘッド2ないし吐出部のフェイス面にはキャッピングが施されているため、記録に先立ってキャップを開放して記録ヘッド2ないしキャリッジ17を移動可能状態にする。すなわち、ステップS60で、キャップをした状態にあるか否かを検出するためのセンサ(センサ群107の構成要素)に基づいて判定を行い、キャップ状態であればステップS61でキャップ5を下降させてキャップオープン状態にする。
【0065】
次に、ステップS62において、記録に先立ち図5で説明したような回復シーケンスを適宜実施してから、ステップS63で記録媒体の送給を行い、記録媒体を記録開始位置に搬送する。その後、ステップS64でプリントバッファ121に1スキャン分のデータが蓄積されたか否かを判定し、肯定判定であれば、ステップS65において、フェイス面に対向しつつも下降しているキャップ5に対して予備吐出を実行する。そして、キャッリッジモータ3によりキャリッジ17をスキャンさせ、ステップS66において当該蓄積データについての記録動作を実行する。その後、ステップS67へと移行するが、ステップS64でプリントバッファ121に1スキャン分のデータが蓄積されていないと判断された場合も、ステップS64からステップS67へと移行してくる。ステップS67では、未記録の記録データの有無を確認し、無ければステップS72に移行して排紙処理を行う。ステップS67で未記録の記録データがあると判断された場合には、ステップS69に移行して待機時間Twが所定時間Tcを超えたか否かを判定する。待機時間Twが所定時間Tcを超えている場合には、ステップS68でキャッピングが施されてステップS64へと戻る。ステップS69で待機時間Twが所定時間Tcを超えていないと判定された場合には、ステップS70に移行して、待機時間Twが所定時間Tpを超えたかどうかを判定する。ステップS70で待機時間Twが所定時間Tpを超えていない場合には、ステップS64に戻り、待機時間Twが所定時間Tpを超えている場合には、ステップS71で予備吐出を行ってからステップS64に戻る。
【0066】
なお、ステップ68を経由した場合のように、キャッピングが施される場合もあることを考慮し、ステップS64での肯定判定後に上記ステップS60およびS61と同様の手順を介挿することができる。なお、所定時間Tpと所定時間Tcとの関係はTp<Tcとすることができる。また、以上の手順では各スキャン開始直前に毎回予備吐出を行うようにしているが、前回予備吐出を行ってからの経過時間を上記と同様にタイマによって管理し、予備吐出の実行の要否を判定するようにすることも可能である。また、キャップを開放し記録を開始するまでの間に行われる予備吐出等では、吐出口について一律の数の吐出を行うようにしてもよいし、経過時間などによって決定される数だけの吐出が行われるようにしてもよい。また、各色吐出部別に数や実行タイミングなどの予備吐出条件を設定してもよい。さらに、特に記録中に行われる予備吐出については、前回スキャン時までに使用されなかったノズルについてのみを行うものでもよいし、使用したノズルを含めすべてのノズルに対して行ってもよい。また、使用ノズルに対しては使用した頻度に基づいて吐出数を減らすようにしてもよい。また、予備吐出には、キャップ5との対向位置に記録ヘッドを移動設定して行うもののほか、図16に示したような予備吐出口を設ける場合もある。
【0067】
図7は、記録ヘッドと予備吐出口を示した側面図である。図7において記録ヘッド2から吐出されたインクは予備吐出口11によって回収され、廃インク回収管23を通って廃インク収用部4に導かれる。また廃インクが生じないため廃インク量のカウントは行われないが、別の予備吐出方法として、キャリッジ17のスキャン幅を制限し記録速度を向上させるため、記録動作中に記録画像の品位を低下させない適宜の記録媒体上の部位に予備吐出を行うこともある。
【0068】
(記録終了後のシーケンス)
図8は、記録終了後に実行されるシーケンスを示したフローチャートである。ステップS80において、図6で説明したような記録媒体1頁分の記録シーケンスが終了すると、ステップS81においてワイピングを実施するか否かを判断するワイプフラグ(後述)の内容を判定し、オン(セット状態)であればステップS82でワイピングを行う。また、この際ワイプフラグおよびドットカウンタのリセットも同時に行う。ステップS83では、1頁ぶんの記録が終了したかを確認して、終了していなければステップS80に戻り改めて記録を行う。ステップS83で1頁ぶんの記録が終了していれば、ステップS84へと移行し、次の頁の記録データが有るかどうかを判断する。ステップS84で肯定判定の場合にはステップS80に復帰して、当該次頁の記録データについての記録シーケンスを実施する。一方ステップS84で否定判定であれば、ステップS85で所定時間(例えば55秒)の待機を行う。待機しても次頁の記録データが無ければ、ステップS86でワイピングを行い、さらにステップS87でキャッピングを施して、本手順を終了する。
【0069】
なお、本手順ではワイピング実行の有無を各頁の記録シーケンス終了毎に判断するようにした。これは、ワイピング動作が介挿されることで記録媒体1頁内のスキャン間に時間差が生じることにより色むらが発生するのを防止する上で有効である。しかし、記録領域が大きいプロッタや、A0判やA1判など比較的大判の記録媒体に対して記録を行うプリンタの場合には、適宜各スキャンまたは複数スキャン毎に判断を行うようにすることも可能である。
【0070】
本実施形態において、ワイプフラグはRAM103の一部の領域に設けておくことができる。ワイプフラグは、基本的には吐出部の吐出数すなわち記録ドットのカウント値に従ってセット可能である。記録ドットのカウント値は、例えば、1スキャン分の各色記録データをバッファに蓄積する際や、1スキャン分の記録中または記録後にドットカウントを行い、例えばRAM103の所定領域に設けたカウントエリアに加算して行くことで得ることが可能である。
【0071】
(特徴的構成)
以下、本実施形態の特徴的な構成について説明する。
(ソフト的な廃インク量検知)
記録前、記録中、記録後また所定のタイミングで実施される保守動作により廃インクが発生することは上述したとおりである。このようにして発生する廃インクの量を検知する方法として、本実施形態ではソフト的手段による廃インク積算を採用している。
【0072】
図9は、ソフト的に廃インクの量を積算する工程を示したフローチャートである。本実施形態では、廃インクが所定時間で蒸発することを前提に蒸発量を加味してソフト的に廃インク量を算出する。以下、このフローチャートに沿って廃インクの積算方法を説明する。
【0073】
ステップS90で、廃インクを伴う回復動作が実行されると、ステップS91で、廃インクの総量の計算がなされる。その後、ステップS92で、環境パラメータである湿度(Ha)と温度(Ta)とを読み込み、ステップS93で、読み込んだ温湿度を元に蒸発率Yを予測する。そして、予測して蒸発率Yを基にステップS94で、蒸発後の廃インク量Zの計算を実施する。このように算出された蒸発後に残留する廃インク量Zは、ステップS95で、それまで保持していた廃インク量Fに加算され新たな廃インク量Fとして本体内または廃インク収用手段に付属のメモリー等に保持される。そして、ステップS96で、計算の結果算出された新たな廃インク量Fはあらかじめ定められた所定値と比較される。廃インク量Fが所定値に達していなければそのまま動作は継続されるが、所定値に達した場合にはステップS97でユーザーに対して警告が発せられる。この警告は、後述するハード的に廃インクのリミットが検知されるまで、持続的に警告を表示しても良いし、また電源オンや所定の回復動作(例えば定期的に行われる吸引クリーニング動作)の際に警告を発するよう構成してもよい。また、環境パラメータは、湿度、温度に限らず、空気の流速等を読み込んでもよい。 図10(a)から(f)は、廃インクの積算カウンターを模式的に示した図である。図10(a)のように、カウンターは最低でも廃インク収用手段4の容量内に収用できる全廃インクXmlをカウントできるような容量を確保されている。第1回目の積算では排出した総廃インクAmlが算出される(図10(b)参照)。本実施形態では、毎回蒸発するごと蒸発分を差し引くのは計算が煩雑になるため、この段階で現在の温湿度を参考にして蒸発分はすでに蒸発したものとして蒸発分を除いたCmlが積算される(図10(c)参照)。このように構成することにより、簡単な構成で比較的精度の高い廃インクの積算を実現することができる。メモリー容量の増加や計算の煩雑さをいとわなければ、温度・湿度をモニターしつつ各積算回数の廃インクについて蒸発状態を予測するような構成とすることも可能である。しかし、廃インク収用手段内では各積算で発生した廃インクは混合された状態で存在するため、各積算回数の廃インクを分離してカウンターに保存し、それぞれの廃インクについて個別に蒸発の予測を実施することは、実用的に有用とはいえない行為である。第2回の積算が実施されると、1回目同様に排出した廃インク総量Dmlから蒸発分Emlを除いた残留分Fmlが積算される(図10(d)参照)。本実施形態ではこのようにして順次、蒸発残分のみを積算する構成としている。
【0074】
ところが図10(e)から(f)に記載した通り、『積算による蒸発残インク』の想定は溢れ防止の観点から必ず実際の蒸発後のインクよりも多く残る様に想定されており、『実際の蒸発』よりも少ないのが通例である。このような場合、廃インク収容部はソフト的にはカウントアップしており、使い切った状態であるが、実際の収用手段には図中のG部分が累積した分に相当する余裕がある。このような場合であっても、後述するハード検知を併用することにより、ユーザーに定期的に警告を行うなど、一定の制限を行いつつ廃インク収用手段4の余裕分も使い切ることが出来る。
【0075】
なお、図9に示した回復動作(ステップS90)はすべての廃インクを発生する回復動作である必要は無い。例えば記録ヘッド2からキャップ5を通じてインクを排出するクリーニング動作(図5ステップS8)、記録後シーケンスに示した予備吐出を含むワイピングシーケンス(図8ステップS86)等のインク排出量の多いものに限り廃インク積算処理を実施してもよい。また記録中に記録動作と平行して行われる予備吐出(図6ステップS65)のような排出量の少ない動作に限り廃インク積算処理を除外しても良い。更には複数回の回復動作ごと(例えば100回〜1000回毎に設定)に積算処理を行ってもよく、所定のタイミング(例えば排紙コマンドを受け付けた場合に前回の排紙コマンド以降の積算値をまとめて処理する)に限り回復動作に伴い積算処理を実施しても良い。
【0076】
(ハード的な廃インク量検知)
図11は、ハード的に廃インク量の検知を行う廃インク収容手段4を示した断面図である。本実施形態の廃インク収容手段4では、廃インク回収管23を通じて輸送された廃インクは、廃インク吸収体30へ放出され保持される。廃インクは、廃インク吸収体30が保持可能な所定値以上となり、廃インク収用手段の上部にオーバーフローし電極34に達すると、廃インクは満杯であると検知され、この検知された結果を優先して、すべての本体動作が停止されて、廃インクエラーを発生させる。このような構成では廃インク吸収体30の最上部までを使い切ることができるが、このままでは上部にオーバーフローしたインクは廃インク収容手段4の交換の際の傾斜、振動で溢れてしまう可能性がある。
【0077】
図12(a)から(c)は、本実施形態の廃インク収容手段4の変形例を示した断面図である。図12のように廃インク吸収体30の上部にポリアクリル酸Na等の所謂SAP(super absorbent polymer:吸水性樹脂)のような膨張性の物質を含む吸収体36を配置してもよい。そして、その吸収体36の膨張をロッド38で伝達しセンサ37で検知する方法を用いることもできる。また、吸収体36の変位をより高感度に捕らえるため直動式のロッド38でなくリンケージ等を用いて吸収体36の変位を増幅する手段を用いる構成も有用である。さらにまた、本実施形態では、廃インクの満杯検知手段を廃インク収容部4の上部に設けたが、電極34のような検知手段を吸収体の任意の位置に配置しオーバーフローが発生する前に検知する手段も有効である。
【0078】
(ハード的検知手段とソフト的検知手段の関係)
このようにハード的な廃インク検知手段とソフト的な積算手段の両方の構成を持つことで、どちらかの積算手段が故障・破損により動作しなくなった場合でもインク溢れを防止でき、かつ故障の診断を行うことができる。以下にその例を説明する。
【0079】
(廃インク収用手段のROM破損の場合)
廃インク収用手段4には通常の場合、収用した廃インクを記録するメモリー手段35(図11参照)が備わっており、廃インク積算手段で積算した廃インク量の記録を行う。また廃インク収用手段が脱着された場合にはメモリー手段35から新たに挿入された廃インク収用手段4の現在の廃インク量を読み込み必要に応じて警告を発する等の操作が行われる。一方でメモリー手段35に用いられるROMは外部に露出しているため機械的・電気的な要因で破損する場合がある。例えば、脱着の際に付近にあるものにぶつけ、メモリー手段35が本体のコンタクト部分と接触しなくなった場合や、静電気により記憶部分が電気的に破壊されてしまった場合が考えられる。また、ユーザーによる不用意な操作や規定外の着脱などには一般的に十分な保護がなされているが、まったく想定していない操作などにより書き込みされたデータに矛盾を生じデータの信頼性が失われる場合がある。こういった場合にソフト的な積算手段しかもたない場合は、メモリー手段35が破損した廃インク収用手段4を廃棄し、新たに入手した廃インク収用手段4に交換する必要がある。一方で、本実施形態のように両方の構成を備えている場合には、ユーザーへの警告こそ行えず、積算インク量は不明のままであるものの、ハード検知手段が動作し廃インクが一杯になるまで使用を継続することができる。このため、廃インク収納部として最低限の機能を維持することができる。
【0080】
(ハード的検知手段の不良の判定)
一方でハード的検知手段にも不良が発生する場合がある。例えば、ソフト的積算手段による積算値がほとんど進んでないにもかかわらず、ハード的検知手段による廃インク収用手段の満杯エラーが発生する場合がある。また逆に、ソフト的積算手段による積算値が予め定められた規定値を超えて積算されているにもかかわらず、ハード的検知手段による廃インク収用手段の満杯エラーが表示されない場合がある。このような場合、積算の誤り、ハード検知手段の故障あるいは本体故障による廃インクの過剰発生が考えられる。いずれの場合も対処が必要だが、本実施形態の構成のようにソフト的積算手段とハード的検知手段とを併せ持つことにより、以上のようなトラブルが発生した際に、診断のトリガをかけることができる。この場合はユーザーに廃インク収用手段4を確認させ、廃インク収用部4が満杯であれば、積算の誤りまたは本体故障による廃インクの過剰発生の可能性が考えられる。また廃インクが満杯でなければハード検知手段の故障の可能性が高いと考えられる。そのような場合のために、廃インク検知手段が異常であることをユーザーに告知する手段を備えていてもよい。
【0081】
また、廃インク検知手段が異常であると判断された場合には、ソフト的積算手段の結果を優先させて、記録装置のすべての動作を停止しつつ、警告を表示するようにしてもよい。
【0082】
(その他の構成)
なお、記録装置に適用されるインク吐出方式には種々のものがあり、上述のように通電に応じインクに膜沸騰を生じさせる熱エネルギを発生する電気熱変換素子が設けられているものでも、ピエゾ素子など電気機械エネルギ変換素子が設けられているものでもよい。また、上述の構成ではブラック、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタおよびイエローのインクを用いる場合について説明したが、用いるインクの色や濃度などの色調数および種類は適宜定め得ることは勿論である。さらに、上述した実施形態で記載された数値もあくまで例示のためのものであって、本発明がこれに限られないことは言うまでもない。また、複数の廃インク収容手段を備え、適宜切り替えながら用いる構成でもよい。加えて、上例では所謂シリアルタイプの記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は記録媒体の全幅に対応した範囲にわたってノズルを配列してなる所謂フルラインタイプのインクジェット記録ヘッドを用いる記録装置に対しても有効なものである。
【0083】
このように、保守動作により生じた廃インクの量を、ソフト的積算手段で積算し、かつ廃インク収用手段4に設けられたハード的な検出手段によって廃インクの量を検知する。これによって、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することができた。
【0084】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略し、以下では、特徴的な構成についてのみ説明する。
【0085】
本実施形態では第1の実施形態の場合とは逆に、ハード的検出手段での廃インク満タン検知時に、ソフト手段による積算量とハード的検知時の想定廃インク量とから、ソフト手段による積算量の誤差が規定値以下であるかどうかを判断する。そして、規定値以下であった場合には、積算値を補正すように積算式を変更する。この構成においては、ソフト検知手段に生じた誤差や環境による蒸発量の見込みの誤りをハード検知時の想定値に対してあわせこみを行う。また、同時にソフトによる積算値とハード検知時の想定値のずれをその比率に応じて個別の積算値に反映し、次回以降のソフトによる積算値の精度を向上させることができる。
【0086】
図13は、廃インク積算の合わせこみの概念をグラフで示したものであり、図14は、廃インク量の合わせこみ時のシーケンスを示したフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って廃インク量の合わせこみ時のシーケンスを説明する。
【0087】
ステップS100で廃インクの量が廃インク検知ポイントに達すると、ステップS101でソフト的検知手段による廃インクの積算値Lが呼び出され、その後、ステップS102でハード的検知手段による検知時の想定廃インク量Mを呼び出す。次に、ステップS103で、両者の差が所定値以下(この例の場合は15%以下)であるかどうかを確認する。収まっていればこれらは誤差としてステップS104で積算値Lに1−│L−M│/Mの値を乗じるように積算式を変更する。その後、ステップS105で廃インクの警告を発する。
【0088】
廃インク積算値とハード的検知との間には、例えば1)ヘッド吐出量の公差によるもの、2)吸引等の回復機構による回復量の公差よるもの、3)想定環境による蒸発量を見込んでいる場合には想定環境と実際の環境のずれによるもの、等に起因して誤差が生ずる。これらの誤差のうち、2)の本体に付属の回復手段に関しては本体に依存しており経時的な劣化はあるが急激に変動することは考えにくい。また、1)の吐出量公差に関しても同様に経時的な変化はあるが、記録ヘッドに依存しており同じく急激な変化を示さない。したがって、変化量が少ない比較的短時間で廃インク収用手段4が交換される。また複数の廃インク収用手段4を備えており、中の廃インク量が所定値なると別の廃インク収用手段に切り替えが行われる場合には、上記のあわせこみがより有効に働くと考えられる。また3)環境の見込み誤差についても近年のオフィス環境では昼夜の差こそあれ比較的に一定していることが多い。そのため、こういった比較的一定の環境においては、本実施形態のように環境による蒸発量の見込みをハードによる検知であわせこみを実施する技術は有効に働くものである。
【0089】
なお、ステップS103にて両数値の差が規定値以上で有る場合は本実施形態の場合は、エラー表示を行うに留めているが、先の実施形態のようにさらに閾値を設定し、差が一定以上の場合(例えば差が50%以上)には故障の診断を実施するよう構成しても良い。
【0090】
このように、ハード的検出手段での廃インク満タン検知時に、ソフト手段による積算量とハード的検知時の想定廃インク量とから、ソフト手段による積算量の誤差が規定値内にあるかどうかを判断する。そして、規定値以下であった場合には、積算値を補正すように積算式を変更する。これによって、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することができた。
【0091】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略し、以下では、特徴的な構成についてのみ説明する。
【0092】
第1および第2の実施形態におけるソフト的な廃インク積算により積算した廃インク量には、蒸発率が見込まれており、積算および記憶手段への保持を行う際には蒸発後の値が用いられている。一方で、インクの蒸発に関しては、本発明で用いたような水系インクでは可逆的に進行することが知られており、例えば低湿下で蒸発したものが高湿度下に置かれると、凝縮して再び液化する現象が見られる。第1および第2の実施形態における積算値では、蒸発を見込んで廃インク収用手段4はあふれが発生しない構成としている。しかし、実際には蒸発が起こらない環境であったり、蒸発後に凝縮して再び液化したりする等の理由から、廃インク収用手段4からインクが溢れるという事態が考えられる。また、これらは記録動作中や、回復動作中でなくとも発生することが考えられる。
【0093】
そこで、本実施形態では、電源を切った場合でも廃インク収用手段のセンサと付随する回路のみは通電しておき、任意のタイミングで廃インク収用手段の状態が測定できるように構成している。
【0094】
このように、電源を切った場合でも廃インク収用手段のセンサを有効な状態にしておき、任意のタイミングで廃インク収用手段の状態が測定可能にする。これによって、蒸発しない環境下や蒸発後に凝縮して再び液化するような状況においても、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0095】
1 インクジェット記録装置
2 記録ヘッド
4 廃インク収容手段
34 電極
100 ホストコンピュータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出することで記録をおこなうインクジェット記録装置およびそれと同等のものに関するもので、特に廃インクを処理する際の廃インク収納手段内の廃インク量検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来インクジェット記録装置は、記録媒体を横切って往復運動するキャリッジに搭載される記録ヘッドを利用することが多い。記録ヘッドが記録媒体を横切って運動するにつれて、制御電子部品が記録ヘッドの吐出部分を起動して、記録媒体上にイメージまたは文字を形成するため吐出ノズルからインク滴を吐出する。また記録ヘッドへのインク補給はインクタンクから行われる。
【0003】
このようなインクジェット記録装置においては、様々なメインテナンス動作のために記録以外で使用されたインクが廃インクとして記録装置内で処理される。また、縁無し記録時に記録媒体の外側へ吐出されたインクも同様に廃インクとして処理される。記録装置内には、このような廃インクを収納するための廃インク収用手段が付設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような機構をもつインクジェット記録装置において、記録動作に伴って排出された廃インクをインクタンクに回収する構成を持った記録装置についてはすでに実用化されており、多数の発明がなされている。例えば、回収した廃インクのあふれを防止するために廃インク収用手段の中にフロートを設けこのフロートにより廃インクの状態やオーバーフローを検知することが行われている。また、廃インク収用手段の一部に検知手段を設けて廃インク収用手段のオーバーフロー防止を行うことも行われている。しかし、このような検知手段においては、複数の検知位置を持たない限り廃インク収用手段の状態を把握することが困難である。更に、ユーザーは廃インク収用手段が使用不可能な状態かもしくはそれに近い状態になってからでないと収容手段の状態を認識できない点や、廃インク容量の表示が出来ないという欠点があった。
【0006】
このような、ハード的に廃インク残量を検知する構成は、比較的初期の記録装置または大型の業務用記録装置に用いられることが多い。しかし近年はコスト面から、後述のようないわゆるソフト的に廃インク量を積算し、ユーザーに対する警告や本体の動作制限等に用いる構成が提案され実用に供されている。このような方法では、廃インクの検知手段を設けず排出された廃インクをソフト的に積算し、蒸発量を加味した上で廃インク量を正確に計測しようとする試みが行われている。また、これに類似する構成として特許文献1では、縁無し記録を行う際のはみ出し部分の廃インク量を温湿度による蒸発を加味して制御する方法が提案されている。しかし、このようにソフト的に廃インク量を積算して計測する構成で確実に廃インクのオーバーフローを防止するためには、使いきりのかなり手前で廃インクの供給を停止する必要があり、廃インク収容手段を効率よく使い切ることが困難である。 一方でインクの蒸発が可逆的であるため一旦蒸発が促進されるような環境で蒸発した廃インクが、例えば高湿環境下に置かれると再度水分を吸収し廃インク量が増加するといった現象が知られている。このため、これらの従来のソフト計測による積算方式では、あらかじめ廃インク排出時の各環境にあわせた蒸発率により廃インクを計算する計算式によって廃インク量を算出した場合、以降の環境変化等により廃インクがオーバーフローする可能性が払拭できず、万全の構成とはいえない。
【0007】
またソフト的に廃インクを積算し、検知する方法の欠点として、記録ヘッドを吸引回復するポンプの廃インク排出量や、記録ヘッドからの記録に寄与しないインク吐出量等は、予め設定された値から一定の誤差を持っており積算量にも数10%の誤差を生じる。加えて、意図しないユーザーによる不用意な電源オフが行われた場合等においては、正確な廃インク量が記憶手段に書き込まれず実廃インク量と積算廃インク量で誤差を生じる可能性がある。このような誤差が+方向に生じた場合には、廃インクがあふれる恐れがあるため、通常はオーバーフローを回避するために誤差が+方向かつ最大の場合にも溢れないよう、想定される最大値で計算するのが常である。従って、このような構成の場合、誤差が少ないか、もしくは実廃インクの公差が(−)マイナス方向に振れている系すなわち実廃インク量が少ない場合には、廃インク積算手段により収用手段が一杯であるとされ、エラーになった場合でも多くの場合に廃インク収用手段にはまだ空きが有るケースが見受けられる。
【0008】
また、この種の記録装置では廃インク収用手段の空き具合をパネルやテスト印字でユーザーに表示する手段を設けるが、誤差が(+)プラス方向であることを前提に廃インクを積算した場合、廃インク収用手段の空き情報を正確に反映できない可能性が高い。
【0009】
更に、何らかの原因で回復装置が故障してしまった場合においては、本来インクを排出しないタイミングで排出動作が行われたり、本来排出されるべきタイミングで排出がなされなかったり、といった現象が発生する。しかし、この場合にはソフト的に廃インクを加算する方法については正しい値を示さない可能性が高い。
【0010】
本発明は上記のような事情に鑑み、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドを載置可能に構成されており、前記記録ヘッドからインクを吐出することで記録および回復処理を行い、該回復処理の際に吐出された前記インクは廃インクとなって廃インク収容手段に貯留されるインクジェット記録装置において、前記廃インク収容手段に設けられ、該廃インク収容手段の中の前記廃インクの量を検知する検知手段と、前記回復処理の際に前記記録ヘッドから吐出された前記インクの量を積算する積算手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によればインクジェット記録装置は、廃インク収容手段に設けられ、廃インク収容手段の中の廃インク量を検知する検知手段と、回復処理の際に記録ヘッドから吐出された廃インク量を積算する積算手段と、を備えている。これによって、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態のインクジェット記録装置の外観を示した斜視図である。
【図2】インクジェット記録装置の内部が分かるように示した斜視図である。
【図3】図1の記録装置におけるインクの供給・排出系を示した模式図である。
【図4】第1の実施形態において用いた記録装置の制御回路の構成例を示す図である。
【図5】回復処理シーケンスを示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態の記録装置の記録シーケンスを示したフローチャートである。
【図7】記録ヘッドと予備吐出口を示した側面図である。
【図8】第1の実施形態の記録装置の記録シーケンスを示したフローチャートである。
【図9】ソフト的に廃インクの量を積算する工程を示したフローチャートである。
【図10】(a)から(f)は廃インクの積算カウンターを模式的に示した図である。
【図11】ハード的に廃インク量検知を行う廃インク収容手段を示した断面図である。
【図12】(a)から(c)は、廃インク収容手段の変形例を示した断面図である。
【図13】廃インク積算の合わせこみの概念を示したグラフである。
【図14】廃インク量の合わせこみ時のシーケンスを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。本発明はこれらの実施形態のみに限らず、これらをさらに組み合わせることや、この特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の技術にも当然応用することができる。
【0015】
(基本的構成)
(記録装置概要)
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置1の外観を示した斜視図であり、図2は、インクジェット記録装置1の内部が分かるように示した斜視図である。本実施形態のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)1は、記録媒体の搬送を行う記録媒体搬送部と、記録媒体搬送方向に対して交差する方向に記録ヘッドを載置可能であり往復動作するキャリッジ17とを備えている。キャリッジ17に搭載された記録ヘッド2は、記録媒体に対して移動しながら記録データに応じてインクを吐出することで記録を行う。さらに記録装置1は、記録ヘッド2の吐出状態を回復する回復装置9を備えている。
【0016】
ここで、記録装置1に対するインクの供給と排出について説明する。なお、本実施形態のインクジェット記録装置は、ブラック、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタおよびイエローのインクを吐出して記録を行うが、各インクについてインクの供給と排出は同様の構成となっている。
【0017】
図3は、本実施形態の記録装置1におけるインクの供給・排出系を示した模式図である。インクタンク10から供給されたインクは、インク供給管13、ジョイント14、加圧室21、インク供給弁16、加圧ポンプ30等からなる供給路を経由して記録ヘッド2に供給される。インク供給弁16は、インクタンク10と加圧室21の間に設置され、必要に応じて開閉する。加圧室21にはある一定量の以下のインクを溜め込むことが出来る。加圧ポンプ30は、加圧室21に対して作用し、加圧室21を減圧することでインクタンク10からインクを吸い出し、加圧室21を加圧することで加圧室21に溜め込まれたインクを記録ヘッド2に供給する。記録ヘッド2から吐出され記録に寄与しなかったインク(以下、廃インク)は、キャップ5や予備吐出口11に集められ、廃インク回収管23を経由して廃インク収用手段4に保存(貯留)される。キャップ5は、記録領域から外れた場所に位置し、非記録時に記録ヘッド2のインク吐出面を保護・保湿するために使われる他、記録開始前や記録中の予備吐出を受けたり、記録ヘッド2の吐出面を吸引回復したりするときに使われる。予備吐出によってキャップ5内に溜まった廃インクは、吸引ポンプ12により回収され、廃インク回収管23を経由して廃インク溜め4に蓄えられる。また、吸引回復が行われるときは、記録ヘッド2のインク吐出面とキャップ5が密閉し、吸引ポンプ12が動作することで記録ヘッド2からインクが吸い出され、廃インク回収管23を経由して廃インク溜め4に蓄えられる。予備吐出口11は、記録領域から外れたキャップ5とは反対側に設置される場合や、記録領域の適当な場所に設置される場合がある。予備吐出口11に溜まった廃インクは、重力によって廃インク回収管23を経由して廃インク溜め4に蓄えられる。
【0018】
記録ヘッド2は、その壁の一部が可とう膜31により構成されている。可とう膜31は、インクの消費に伴う記録ヘッド2内部の圧力変化に応じて伸縮動作を行う。可とう膜31の伸縮動作は、可とう膜31に接続されたアーム32に伝えられ、さらにはアーム32の可とう膜31とは反対側の先端に接続された弁33に伝えられる。弁33は、インク供給管13と記録ヘッド2との接続部を塞いでおり、上記のような仕組みによってインクの消費に伴って開閉される。
【0019】
次に、記録動作におけるインクの流れと各部の動きを説明する。
【0020】
(初期充填動作)
インクタンク10からインク供給管13へのインク導出は、加圧ポンプ30を使用して加圧室21内を減圧することによって行う。インク供給弁16を開にし、加圧ポンプ30を減圧方向に作動させると、インクタンク10から導出されたインクは加圧室21に蓄えられる。所定の閾値までインクが蓄えられたら減圧を止め、インク供給弁16を閉にする。次に、加圧ポンプ30を加圧方向に作動させ、加圧室21に蓄えられたインクを所定の圧力まで加圧する。しかし、記録ヘッド2内の弁33がインク供給管13を塞ぐ力は、加圧ポンプ30で加圧された圧力よりも大きいため、このままでは弁33が開いてインク供給管13と記録ヘッド2が連通するということはない。そこで、キャップ5を記録ヘッド2と密閉させ、吸引ポンプ12を作動させることで、記録ヘッド2の内部を減圧する必要がある。このように構成することで弁33が開き、記録ヘッド2にインクを供給することができる。所定量のインクが記録ヘッド2内に供給されたら、吸引ポンプ12を止め、キャップ5を記録ヘッド2から分離する。その結果、記録ヘッド2内の負圧値との釣り合いによって弁33が閉じるまでインクが供給された後インクの供給は停止する。
【0021】
(記録中のインク供給動作)
記録によって記録ヘッド2内のインクが消費されていくと、記録ヘッド2内の負圧が高まる。その結果、弁33が開き加圧室21で加圧されたインクが記録ヘッド2に供給され、記録ヘッド2内の負圧との釣り合いによって弁33は閉じられる。記録中は上記の動作の繰り返しによって、加圧室21に蓄えられたインクが記録ヘッド2に供給される。
【0022】
加圧室21に蓄えられたインクが所定の閾値以下になると、インクタンク10から加圧室21にインクを供給する動作が行われる。すなわち、加圧ポンプ30の加圧動作を停止し、加圧室21の加圧が解除された段階でインク供給弁16を開き、次に加圧ポンプ30を減圧方向に作動させることで、インクタンク10内のインクが加圧室21に供給される。このとき、記録ヘッド2内の弁33は閉じたままであるので、記録ヘッド2内のインクが加圧室21に供給されることはない。加圧室21内のインクが所定量に達した場合、もしくは加圧室21が減圧されてから所定の時間が経過した場合、インク供給弁16を閉じ、加圧ポンプを加圧方向に作動させることで、加圧室21へのインク供給を終了する。この動作は好ましくは記録中以外のタイミングで行われるが、多少であれば記録中であっても良い。
【0023】
次に、本実施形態の記録装置1で使用可能なインクについて説明する。インクとしては、色材に染料成分を含むインクおよび顔料成分を含むインク(以下、それぞれ染料インクおよび顔料インクという)や、両成分を含むインクなどがある。使用する染料としては、従来から当該技術分野において周知の各種染料を用いることができる。例えば、直接染料としてのアゾ染料、フタロシアニン染料、酸性染料としてのアゾ染料、アントラキノン系染料、等が挙げられる。
【0024】
また、顔料を使用する場合も、従来公知の有機および無機顔料をすべて使用することができる。例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料およびキレートアゾ顔料等のアゾ顔料やフタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントセキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオイシジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキおよび酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系およびカーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水性に分散可能なら、いずれのものも使用できる。
【0025】
インクに顔料を分散させるために含有される水溶性樹脂(分散樹脂)は、アミンあるいは塩基を溶解させた水溶液に可溶で、かつ重量平均分子量が3000から30000の範囲が好ましい。さらに、好ましくは5000から15000の範囲であるものがよく、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体あるいは、これらの塩等を使用することができる。
【0026】
顔料成分と染料成分とを併用したインクとするときには、一般に、顔料:染料(重量比)が8:2〜2:8の範囲であるのが望ましい。より好ましくは、7:3〜3:7(顔料:染料)の範囲とする。
【0027】
さらにインクは、好ましくは、インク全体が中性またはアルカリ性に調整されていることが、前記した水溶性樹脂の溶解性を向上させ、一層の長期保存安定性に優れたインクとすることができるので望ましい。インクのpHは、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食原因となる場合があるので、好ましくはpH7〜10の範囲とされるのが望ましい。
【0028】
pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミンや、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸物等の無機アルカリ剤、有機酸や、鉱酸が挙げられる。
【0029】
インクにおいて好適な水性媒体は、水および水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水は種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。本発明のインクは水系インクであり、水の含有量としてはインク全重量の50%以上であることが好ましい。
【0030】
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソ−ブチルアルコール等の炭化数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール類のケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルコレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン:エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0031】
水溶性有機溶剤としては、従来公知のインクに使用されているものであれば、概ね使用することができる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレンまたはオキシプロピレン付加重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;チオジグリコール;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記の様な水溶性有機溶剤の含有量は、一般にはインクの全重量に対して重量%で1〜49%、好ましくは2〜30%の範囲である。また、上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも混合物としても使用できる。しかし、媒体を併有する場合の最も好ましい液媒体組成は、少なくとも1種の水溶性高沸点有機溶剤、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールを含有するものである。
【0032】
また、インクは、上記の成分のほか、必要に応じて所望の物性値を有するインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等をさらに添加することができる。さらに、市販の水溶性染料等も添加することができる。
【0033】
上記プリンタに適用される各色インクの例を以下に記載する。
【0034】
(2−1)イエローインク
分散液の作製
顔料[C.I.ピグメントイエロー74(製品名:Hansa Brilliant Yellow 5GX(クラリアント社製))]10部、アニオン系高分子P−1[スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(共重合比(重量比)=30/40/30)、酸価202、重量平均分子量6500、固形分10%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム]30部、および純水60部を混合し、以下に示す材料をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを150部充填し、水冷しつつ、12時間分散処理を行った。さらに、この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去した。そして、最終調製物として、固形分が約12.5%、重量平均粒径が120nmの顔料分散体1を得た。得られた顔料分散体を用いて、下記のようにしてインクを調製した。
【0035】
インクの作製
以下の成分を混合し、十分に攪拌して溶解・分散後、ポアサイズ1.0μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過して、イエローインクを調製した。
・上記で得た顔料分散体1 40部
・グリセリン 9部
・エチレングリコール 6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物
(商品名:アセチレノールEH) 1部
・1,2−ヘキサンジオール 3部
・ポリエチレングリコール(分子量1000) 4部
・水 37部。
【0036】
(2−2)マゼンタインク
分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価300、数平均分子量2500のAB型ブロックポリマーを作り、さらに、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0037】
上記ポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を300gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。
【0038】
次に、マイクロフリュイダイザを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0039】
さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ分散液とした。得られたマゼンタ分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が5質量%であった。
【0040】
インクの作製
インクの作製は、上記マゼンタ分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度4質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
・上記マゼンタ分散液 40部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物
(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 39.5部。
【0041】
(2−3)ライトマゼンタインク
分散液の作製
マゼンタインクで使用したポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を300gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。
【0042】
次に、マイクロフリュイダイザを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0043】
さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してマゼンタ分散液とした。得られたマゼンタ分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が5質量%であった。
【0044】
インクの作製
インクの作製は、上記マゼンタ分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度4質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
・上記マゼンタ分散液 8部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物
(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 71.5部。
【0045】
(2−4)シアンインク
分散液の作製
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量3000のAB型ブロックポリマーを作り、さらに、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0046】
上記のポリマー溶液を180g、C.I.ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を220gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。
【0047】
次に、マイクロフリュイダイザを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0048】
さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とした。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が10質量%であった。
【0049】
インクの作製
インクの作製は、上記シアン分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
・上記シアン分散液 20部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物
(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 53.5部。
【0050】
(2−5)ライトシアンインク
分散液の作製
シアンインクで作成したポリマー溶液を180g、C.I.ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を220gを混合し、機械的に0.5時間撹拌した。
【0051】
次に、マイクロフリュイダイザを使用し、この混合物を、液体圧力約70MPa下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0052】
さらに、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とした。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が10質量%、分散剤濃度が10質量%であった。
【0053】
インクの作製
インクの作製は、上記シアン分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にする。これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2質量%、分散剤濃度2質量%の顔料インクを調製した。
・上記シアン分散液 4部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコール 10部
・アセチレングリコールEO付加物
(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 69.5部。
【0054】
(2−6)ブラックインク(マット紙用ブラックインク)
分散液の作製
表面積が230m2/gでDBP吸油量が70ml/100gのカーボンブラック10gとp−アミノ−N−安息香酸3.41gを水72gによく混合した後、これに硝酸1.62gを滴下して、70℃で撹拌した。ここにさらに数分後、5gの水に1.07gの亜硝酸ナトリウムを溶かした溶液を加え、さらに1時間撹拌した。得られたスラリーを濾紙(商品名:東洋濾紙No.2;アドバンティス社製)で濾過し、濾取した顔料粒子を十分に水洗し、90℃のオーブンで乾燥させ、さらに、この顔料に水を足して顔料濃度10重量%の顔料水溶液を作製した。
【0055】
インクの作製
以下の成分を混合し、十分撹拌して溶解後、ポアサイズ3μmのミクロフィルタ(富士フィルム製)にて加圧濾過してブラックインクを調製した。
・顔料分散体1 30部
・硫酸カリウム 1部
・トリメチロールプロパン 6部
・グリセリン 6部
・ジエチレングリコール 6部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 0.2部
(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)
・水 50.8部
【0056】
次に、本実施形態の記録装置1の制御系の構成について説明する。
図4は、本実施形態において用いた記録装置の制御回路の構成例を示す。プログラマブル・ペリフェラル・インターフェイス(以下PPIとする)101は、ホストコンピュータ100から送られてくる指令信号や記録データを含む記録情報信号を受信してMPU102に転送する。またPPI101は、ホストコンピュータ100に対しては必要に応じ記録装置のステータス情報を送出する。またPPI101は、ユーザーが記録装置に対して各種設定を行う設定入力部や、ユーザーに対してメッセージを表示する表示部等を有したコンソール106との間で入出力を行う。更にまたPPI101は、キャリッジ17ないし記録ヘッド2がホームポジションにあることを検出するHPセンサや、キャッピングセンサなどを含むセンサ群107からの信号入力を受容する。
【0057】
MPU(マイクロプロセッシングユニット)102は、制御用ROM105に記憶された処理手順に対応した制御プログラムに従って、記録装置内の各部を制御する。RAM103は、受信した信号を格納し、あるいはMPU102のワークエリアとして使用され、また各種データを一時的に記憶する。ROM104は、フォント発生用ROMで、コード情報に対応して文字や記録等のパターン情報を記憶しており、入力したコード情報に対応して各種パターン情報を出力する。プリントバッファ121は、RAM103等に展開された記録データを記憶し、M行記録分の容量を持っている。制御用ROM105には上記制御プログラムのほか、後述する制御の過程で使用されるデータ(例えば本実施形態の主要部に係るワイピング実行の要否を定めるためのデータ)等に対応した固定データを格納しておくことができる。これらの各部は、アドレスバス117およびデータバス118を介して、MPU102により制御される。
【0058】
キャッピングモータ113は、キャップ5の昇降、ワイパーホルダー8の移動および吸引ポンプ6の動作の駆動源をなす。モータドライバ114、115および116は、それぞれ、キャッピングモータ113、キャリッジモータ110および給紙モータ119をMPU102の制御に応じて駆動する。シートセンサ109は、記録媒体の有無、すなわち記録媒体が記録ヘッドによる記録が可能な位置に供給されたか否かを検知する。ヘッドドライバ111は、記録情報信号に応じて記録ヘッド2の発熱部52を駆動する。電源部120は、上記各部へ電源を供給しており、駆動電源装置としてACアダプタと電池とを有している。
【0059】
記録装置1およびホストコンピュータ100からなる記録システムにおいては、ホストコンピュータ100からパラレルポート、赤外線ポートあるいはネットワーク等を介して記録データ送信する際、その先頭部分に所要のコマンドが付加される。そのコマンドとしては、例えば記録の行われる記録媒体の種類(普通紙、OHPシート、光沢紙等の種類や、さらには転写フィルム、厚紙、バナー紙等の特殊な記録媒体の種別)、媒体サイズ(A0判、A1判、A2判、B0判、B1判、B2判など)、記録品位(ドラフト、高品位、中品位、特定色の強調、モノクローム/カラーの種別)、給紙経路(ASF、手差し、給紙カセット1、給紙カセット2等)、およびオブジェクトの自動判別の有無などがある。また、記録媒体でのインクの定着性を向上するための処理液を付与する構成が採用される場合には、その付与の有無を定める情報等がコマンドとして送信されることもある。
【0060】
これらのコマンドに従って、記録装置側では前述したROM105から記録に必要なデータを読み込み、それらのデータに基づいて記録を行う。データとしては、例えば上述したマルチパス記録を行う際の記録パス数や、記録媒体単位面積あたりのインクの打ち込み量および記録方向等を決定するためのものがある。またその他、マルチパス記録を行う際に適用されるデータ間引き用のマスク種類や、記録ヘッドの駆動条件(たとえば発熱部52に印加する駆動パルスの形状、印加時間等)、ドットのサイズ、記録媒体搬送の条件、さらにはキャリッジ速度等もある。
【0061】
次に、本実施形態の記録装置1の記録制御について説明する。
(回復処理のシーケンス)
図5、図6および図8は、本実施形態の記録装置1の記録制御を示したフローチャートである。図5は、回復処理シーケンスを示すフローチャートであり、ステップS1で一次電源投入後にプリンタとしての機能を実際に実行可能な状態にする二次電源投入(ソフトオン)またはホストコンピュータ100からの記録開始コマンドの入力に応じて起動される。その後ステップS2において、現在時刻Taの読み込みを行い、ステップS3において前回記録動作を行った時刻Tbの読み込みを行う。そしてステップS4において、経過時間(クリーニング間隔T)の算出が行われる。次に、ステップS5では当該算出したクリーニング間隔Tが規定の閾値T0を超えているか否かの判定を行い、肯定判定がなされればステップS6において吐出状態の良否判定が実施される。この判定により吐出状態が不良であり、何らかの回復動作が必要と判定された場合のみ回復動作すなわち吸引動作、予備吐出、ワイピング等を含む一連の回復シーケンスが実施される。その後、ステップS7で吐出状態が良好であるかどうかの判定を行い、良好でない場合には、ステップS8でクリーニング処理が行われる。その後、ステップS9で再びステップS6と同様の吐出状態の良否判定が実施され、ステップS10で再度吐出状態が良好であるかどうかの判定が行われる。ここで、吐出状態が良好でないと判断された場合には、ステップS13に移行し、エラー表示を行う。また、ステップS10で吐出状態が良好であると判断されると、ステップS11に移行して、前回記録動作を行った時刻Tbの内容を現在の時刻Taに置換し、ステップS12でREADY状態となる。
【0062】
なお、クリーニング間隔Tは、MPU102またはその他の適切な手段が提供するカレンダ機能により現在時刻Taを知り、RAM103のレジスタ領域等に格納してある前回記録動作を行った時刻Tbの値を読み込むことで算出することができる。
【0063】
このような置換作業は、例えば、後述する図6のS66における記録動作の際に実施してもよく、実際に本実施形態では各記録スキャン動作で置換作業(リセット)を実施するよう構成している。このように構成することで、各吐出動作によってタイマがリセットされるためにより詳細に非使用時間が計測可能となる。タイマについては前述したように各スキャンで頻繁に更新するか、または排紙S72にあわせて行っても概略同じような非使用時間の計測が可能である。
【0064】
(記録処理のシーケンス)
図6は、本実施形態の記録装置1の記録処理シーケンスを示したフローチャートである。記録装置1の休止状態では、上述のように、記録ヘッド2ないし吐出部のフェイス面にはキャッピングが施されているため、記録に先立ってキャップを開放して記録ヘッド2ないしキャリッジ17を移動可能状態にする。すなわち、ステップS60で、キャップをした状態にあるか否かを検出するためのセンサ(センサ群107の構成要素)に基づいて判定を行い、キャップ状態であればステップS61でキャップ5を下降させてキャップオープン状態にする。
【0065】
次に、ステップS62において、記録に先立ち図5で説明したような回復シーケンスを適宜実施してから、ステップS63で記録媒体の送給を行い、記録媒体を記録開始位置に搬送する。その後、ステップS64でプリントバッファ121に1スキャン分のデータが蓄積されたか否かを判定し、肯定判定であれば、ステップS65において、フェイス面に対向しつつも下降しているキャップ5に対して予備吐出を実行する。そして、キャッリッジモータ3によりキャリッジ17をスキャンさせ、ステップS66において当該蓄積データについての記録動作を実行する。その後、ステップS67へと移行するが、ステップS64でプリントバッファ121に1スキャン分のデータが蓄積されていないと判断された場合も、ステップS64からステップS67へと移行してくる。ステップS67では、未記録の記録データの有無を確認し、無ければステップS72に移行して排紙処理を行う。ステップS67で未記録の記録データがあると判断された場合には、ステップS69に移行して待機時間Twが所定時間Tcを超えたか否かを判定する。待機時間Twが所定時間Tcを超えている場合には、ステップS68でキャッピングが施されてステップS64へと戻る。ステップS69で待機時間Twが所定時間Tcを超えていないと判定された場合には、ステップS70に移行して、待機時間Twが所定時間Tpを超えたかどうかを判定する。ステップS70で待機時間Twが所定時間Tpを超えていない場合には、ステップS64に戻り、待機時間Twが所定時間Tpを超えている場合には、ステップS71で予備吐出を行ってからステップS64に戻る。
【0066】
なお、ステップ68を経由した場合のように、キャッピングが施される場合もあることを考慮し、ステップS64での肯定判定後に上記ステップS60およびS61と同様の手順を介挿することができる。なお、所定時間Tpと所定時間Tcとの関係はTp<Tcとすることができる。また、以上の手順では各スキャン開始直前に毎回予備吐出を行うようにしているが、前回予備吐出を行ってからの経過時間を上記と同様にタイマによって管理し、予備吐出の実行の要否を判定するようにすることも可能である。また、キャップを開放し記録を開始するまでの間に行われる予備吐出等では、吐出口について一律の数の吐出を行うようにしてもよいし、経過時間などによって決定される数だけの吐出が行われるようにしてもよい。また、各色吐出部別に数や実行タイミングなどの予備吐出条件を設定してもよい。さらに、特に記録中に行われる予備吐出については、前回スキャン時までに使用されなかったノズルについてのみを行うものでもよいし、使用したノズルを含めすべてのノズルに対して行ってもよい。また、使用ノズルに対しては使用した頻度に基づいて吐出数を減らすようにしてもよい。また、予備吐出には、キャップ5との対向位置に記録ヘッドを移動設定して行うもののほか、図16に示したような予備吐出口を設ける場合もある。
【0067】
図7は、記録ヘッドと予備吐出口を示した側面図である。図7において記録ヘッド2から吐出されたインクは予備吐出口11によって回収され、廃インク回収管23を通って廃インク収用部4に導かれる。また廃インクが生じないため廃インク量のカウントは行われないが、別の予備吐出方法として、キャリッジ17のスキャン幅を制限し記録速度を向上させるため、記録動作中に記録画像の品位を低下させない適宜の記録媒体上の部位に予備吐出を行うこともある。
【0068】
(記録終了後のシーケンス)
図8は、記録終了後に実行されるシーケンスを示したフローチャートである。ステップS80において、図6で説明したような記録媒体1頁分の記録シーケンスが終了すると、ステップS81においてワイピングを実施するか否かを判断するワイプフラグ(後述)の内容を判定し、オン(セット状態)であればステップS82でワイピングを行う。また、この際ワイプフラグおよびドットカウンタのリセットも同時に行う。ステップS83では、1頁ぶんの記録が終了したかを確認して、終了していなければステップS80に戻り改めて記録を行う。ステップS83で1頁ぶんの記録が終了していれば、ステップS84へと移行し、次の頁の記録データが有るかどうかを判断する。ステップS84で肯定判定の場合にはステップS80に復帰して、当該次頁の記録データについての記録シーケンスを実施する。一方ステップS84で否定判定であれば、ステップS85で所定時間(例えば55秒)の待機を行う。待機しても次頁の記録データが無ければ、ステップS86でワイピングを行い、さらにステップS87でキャッピングを施して、本手順を終了する。
【0069】
なお、本手順ではワイピング実行の有無を各頁の記録シーケンス終了毎に判断するようにした。これは、ワイピング動作が介挿されることで記録媒体1頁内のスキャン間に時間差が生じることにより色むらが発生するのを防止する上で有効である。しかし、記録領域が大きいプロッタや、A0判やA1判など比較的大判の記録媒体に対して記録を行うプリンタの場合には、適宜各スキャンまたは複数スキャン毎に判断を行うようにすることも可能である。
【0070】
本実施形態において、ワイプフラグはRAM103の一部の領域に設けておくことができる。ワイプフラグは、基本的には吐出部の吐出数すなわち記録ドットのカウント値に従ってセット可能である。記録ドットのカウント値は、例えば、1スキャン分の各色記録データをバッファに蓄積する際や、1スキャン分の記録中または記録後にドットカウントを行い、例えばRAM103の所定領域に設けたカウントエリアに加算して行くことで得ることが可能である。
【0071】
(特徴的構成)
以下、本実施形態の特徴的な構成について説明する。
(ソフト的な廃インク量検知)
記録前、記録中、記録後また所定のタイミングで実施される保守動作により廃インクが発生することは上述したとおりである。このようにして発生する廃インクの量を検知する方法として、本実施形態ではソフト的手段による廃インク積算を採用している。
【0072】
図9は、ソフト的に廃インクの量を積算する工程を示したフローチャートである。本実施形態では、廃インクが所定時間で蒸発することを前提に蒸発量を加味してソフト的に廃インク量を算出する。以下、このフローチャートに沿って廃インクの積算方法を説明する。
【0073】
ステップS90で、廃インクを伴う回復動作が実行されると、ステップS91で、廃インクの総量の計算がなされる。その後、ステップS92で、環境パラメータである湿度(Ha)と温度(Ta)とを読み込み、ステップS93で、読み込んだ温湿度を元に蒸発率Yを予測する。そして、予測して蒸発率Yを基にステップS94で、蒸発後の廃インク量Zの計算を実施する。このように算出された蒸発後に残留する廃インク量Zは、ステップS95で、それまで保持していた廃インク量Fに加算され新たな廃インク量Fとして本体内または廃インク収用手段に付属のメモリー等に保持される。そして、ステップS96で、計算の結果算出された新たな廃インク量Fはあらかじめ定められた所定値と比較される。廃インク量Fが所定値に達していなければそのまま動作は継続されるが、所定値に達した場合にはステップS97でユーザーに対して警告が発せられる。この警告は、後述するハード的に廃インクのリミットが検知されるまで、持続的に警告を表示しても良いし、また電源オンや所定の回復動作(例えば定期的に行われる吸引クリーニング動作)の際に警告を発するよう構成してもよい。また、環境パラメータは、湿度、温度に限らず、空気の流速等を読み込んでもよい。 図10(a)から(f)は、廃インクの積算カウンターを模式的に示した図である。図10(a)のように、カウンターは最低でも廃インク収用手段4の容量内に収用できる全廃インクXmlをカウントできるような容量を確保されている。第1回目の積算では排出した総廃インクAmlが算出される(図10(b)参照)。本実施形態では、毎回蒸発するごと蒸発分を差し引くのは計算が煩雑になるため、この段階で現在の温湿度を参考にして蒸発分はすでに蒸発したものとして蒸発分を除いたCmlが積算される(図10(c)参照)。このように構成することにより、簡単な構成で比較的精度の高い廃インクの積算を実現することができる。メモリー容量の増加や計算の煩雑さをいとわなければ、温度・湿度をモニターしつつ各積算回数の廃インクについて蒸発状態を予測するような構成とすることも可能である。しかし、廃インク収用手段内では各積算で発生した廃インクは混合された状態で存在するため、各積算回数の廃インクを分離してカウンターに保存し、それぞれの廃インクについて個別に蒸発の予測を実施することは、実用的に有用とはいえない行為である。第2回の積算が実施されると、1回目同様に排出した廃インク総量Dmlから蒸発分Emlを除いた残留分Fmlが積算される(図10(d)参照)。本実施形態ではこのようにして順次、蒸発残分のみを積算する構成としている。
【0074】
ところが図10(e)から(f)に記載した通り、『積算による蒸発残インク』の想定は溢れ防止の観点から必ず実際の蒸発後のインクよりも多く残る様に想定されており、『実際の蒸発』よりも少ないのが通例である。このような場合、廃インク収容部はソフト的にはカウントアップしており、使い切った状態であるが、実際の収用手段には図中のG部分が累積した分に相当する余裕がある。このような場合であっても、後述するハード検知を併用することにより、ユーザーに定期的に警告を行うなど、一定の制限を行いつつ廃インク収用手段4の余裕分も使い切ることが出来る。
【0075】
なお、図9に示した回復動作(ステップS90)はすべての廃インクを発生する回復動作である必要は無い。例えば記録ヘッド2からキャップ5を通じてインクを排出するクリーニング動作(図5ステップS8)、記録後シーケンスに示した予備吐出を含むワイピングシーケンス(図8ステップS86)等のインク排出量の多いものに限り廃インク積算処理を実施してもよい。また記録中に記録動作と平行して行われる予備吐出(図6ステップS65)のような排出量の少ない動作に限り廃インク積算処理を除外しても良い。更には複数回の回復動作ごと(例えば100回〜1000回毎に設定)に積算処理を行ってもよく、所定のタイミング(例えば排紙コマンドを受け付けた場合に前回の排紙コマンド以降の積算値をまとめて処理する)に限り回復動作に伴い積算処理を実施しても良い。
【0076】
(ハード的な廃インク量検知)
図11は、ハード的に廃インク量の検知を行う廃インク収容手段4を示した断面図である。本実施形態の廃インク収容手段4では、廃インク回収管23を通じて輸送された廃インクは、廃インク吸収体30へ放出され保持される。廃インクは、廃インク吸収体30が保持可能な所定値以上となり、廃インク収用手段の上部にオーバーフローし電極34に達すると、廃インクは満杯であると検知され、この検知された結果を優先して、すべての本体動作が停止されて、廃インクエラーを発生させる。このような構成では廃インク吸収体30の最上部までを使い切ることができるが、このままでは上部にオーバーフローしたインクは廃インク収容手段4の交換の際の傾斜、振動で溢れてしまう可能性がある。
【0077】
図12(a)から(c)は、本実施形態の廃インク収容手段4の変形例を示した断面図である。図12のように廃インク吸収体30の上部にポリアクリル酸Na等の所謂SAP(super absorbent polymer:吸水性樹脂)のような膨張性の物質を含む吸収体36を配置してもよい。そして、その吸収体36の膨張をロッド38で伝達しセンサ37で検知する方法を用いることもできる。また、吸収体36の変位をより高感度に捕らえるため直動式のロッド38でなくリンケージ等を用いて吸収体36の変位を増幅する手段を用いる構成も有用である。さらにまた、本実施形態では、廃インクの満杯検知手段を廃インク収容部4の上部に設けたが、電極34のような検知手段を吸収体の任意の位置に配置しオーバーフローが発生する前に検知する手段も有効である。
【0078】
(ハード的検知手段とソフト的検知手段の関係)
このようにハード的な廃インク検知手段とソフト的な積算手段の両方の構成を持つことで、どちらかの積算手段が故障・破損により動作しなくなった場合でもインク溢れを防止でき、かつ故障の診断を行うことができる。以下にその例を説明する。
【0079】
(廃インク収用手段のROM破損の場合)
廃インク収用手段4には通常の場合、収用した廃インクを記録するメモリー手段35(図11参照)が備わっており、廃インク積算手段で積算した廃インク量の記録を行う。また廃インク収用手段が脱着された場合にはメモリー手段35から新たに挿入された廃インク収用手段4の現在の廃インク量を読み込み必要に応じて警告を発する等の操作が行われる。一方でメモリー手段35に用いられるROMは外部に露出しているため機械的・電気的な要因で破損する場合がある。例えば、脱着の際に付近にあるものにぶつけ、メモリー手段35が本体のコンタクト部分と接触しなくなった場合や、静電気により記憶部分が電気的に破壊されてしまった場合が考えられる。また、ユーザーによる不用意な操作や規定外の着脱などには一般的に十分な保護がなされているが、まったく想定していない操作などにより書き込みされたデータに矛盾を生じデータの信頼性が失われる場合がある。こういった場合にソフト的な積算手段しかもたない場合は、メモリー手段35が破損した廃インク収用手段4を廃棄し、新たに入手した廃インク収用手段4に交換する必要がある。一方で、本実施形態のように両方の構成を備えている場合には、ユーザーへの警告こそ行えず、積算インク量は不明のままであるものの、ハード検知手段が動作し廃インクが一杯になるまで使用を継続することができる。このため、廃インク収納部として最低限の機能を維持することができる。
【0080】
(ハード的検知手段の不良の判定)
一方でハード的検知手段にも不良が発生する場合がある。例えば、ソフト的積算手段による積算値がほとんど進んでないにもかかわらず、ハード的検知手段による廃インク収用手段の満杯エラーが発生する場合がある。また逆に、ソフト的積算手段による積算値が予め定められた規定値を超えて積算されているにもかかわらず、ハード的検知手段による廃インク収用手段の満杯エラーが表示されない場合がある。このような場合、積算の誤り、ハード検知手段の故障あるいは本体故障による廃インクの過剰発生が考えられる。いずれの場合も対処が必要だが、本実施形態の構成のようにソフト的積算手段とハード的検知手段とを併せ持つことにより、以上のようなトラブルが発生した際に、診断のトリガをかけることができる。この場合はユーザーに廃インク収用手段4を確認させ、廃インク収用部4が満杯であれば、積算の誤りまたは本体故障による廃インクの過剰発生の可能性が考えられる。また廃インクが満杯でなければハード検知手段の故障の可能性が高いと考えられる。そのような場合のために、廃インク検知手段が異常であることをユーザーに告知する手段を備えていてもよい。
【0081】
また、廃インク検知手段が異常であると判断された場合には、ソフト的積算手段の結果を優先させて、記録装置のすべての動作を停止しつつ、警告を表示するようにしてもよい。
【0082】
(その他の構成)
なお、記録装置に適用されるインク吐出方式には種々のものがあり、上述のように通電に応じインクに膜沸騰を生じさせる熱エネルギを発生する電気熱変換素子が設けられているものでも、ピエゾ素子など電気機械エネルギ変換素子が設けられているものでもよい。また、上述の構成ではブラック、ライトシアン、シアン、ライトマゼンタ、マゼンタおよびイエローのインクを用いる場合について説明したが、用いるインクの色や濃度などの色調数および種類は適宜定め得ることは勿論である。さらに、上述した実施形態で記載された数値もあくまで例示のためのものであって、本発明がこれに限られないことは言うまでもない。また、複数の廃インク収容手段を備え、適宜切り替えながら用いる構成でもよい。加えて、上例では所謂シリアルタイプの記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は記録媒体の全幅に対応した範囲にわたってノズルを配列してなる所謂フルラインタイプのインクジェット記録ヘッドを用いる記録装置に対しても有効なものである。
【0083】
このように、保守動作により生じた廃インクの量を、ソフト的積算手段で積算し、かつ廃インク収用手段4に設けられたハード的な検出手段によって廃インクの量を検知する。これによって、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することができた。
【0084】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略し、以下では、特徴的な構成についてのみ説明する。
【0085】
本実施形態では第1の実施形態の場合とは逆に、ハード的検出手段での廃インク満タン検知時に、ソフト手段による積算量とハード的検知時の想定廃インク量とから、ソフト手段による積算量の誤差が規定値以下であるかどうかを判断する。そして、規定値以下であった場合には、積算値を補正すように積算式を変更する。この構成においては、ソフト検知手段に生じた誤差や環境による蒸発量の見込みの誤りをハード検知時の想定値に対してあわせこみを行う。また、同時にソフトによる積算値とハード検知時の想定値のずれをその比率に応じて個別の積算値に反映し、次回以降のソフトによる積算値の精度を向上させることができる。
【0086】
図13は、廃インク積算の合わせこみの概念をグラフで示したものであり、図14は、廃インク量の合わせこみ時のシーケンスを示したフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って廃インク量の合わせこみ時のシーケンスを説明する。
【0087】
ステップS100で廃インクの量が廃インク検知ポイントに達すると、ステップS101でソフト的検知手段による廃インクの積算値Lが呼び出され、その後、ステップS102でハード的検知手段による検知時の想定廃インク量Mを呼び出す。次に、ステップS103で、両者の差が所定値以下(この例の場合は15%以下)であるかどうかを確認する。収まっていればこれらは誤差としてステップS104で積算値Lに1−│L−M│/Mの値を乗じるように積算式を変更する。その後、ステップS105で廃インクの警告を発する。
【0088】
廃インク積算値とハード的検知との間には、例えば1)ヘッド吐出量の公差によるもの、2)吸引等の回復機構による回復量の公差よるもの、3)想定環境による蒸発量を見込んでいる場合には想定環境と実際の環境のずれによるもの、等に起因して誤差が生ずる。これらの誤差のうち、2)の本体に付属の回復手段に関しては本体に依存しており経時的な劣化はあるが急激に変動することは考えにくい。また、1)の吐出量公差に関しても同様に経時的な変化はあるが、記録ヘッドに依存しており同じく急激な変化を示さない。したがって、変化量が少ない比較的短時間で廃インク収用手段4が交換される。また複数の廃インク収用手段4を備えており、中の廃インク量が所定値なると別の廃インク収用手段に切り替えが行われる場合には、上記のあわせこみがより有効に働くと考えられる。また3)環境の見込み誤差についても近年のオフィス環境では昼夜の差こそあれ比較的に一定していることが多い。そのため、こういった比較的一定の環境においては、本実施形態のように環境による蒸発量の見込みをハードによる検知であわせこみを実施する技術は有効に働くものである。
【0089】
なお、ステップS103にて両数値の差が規定値以上で有る場合は本実施形態の場合は、エラー表示を行うに留めているが、先の実施形態のようにさらに閾値を設定し、差が一定以上の場合(例えば差が50%以上)には故障の診断を実施するよう構成しても良い。
【0090】
このように、ハード的検出手段での廃インク満タン検知時に、ソフト手段による積算量とハード的検知時の想定廃インク量とから、ソフト手段による積算量の誤差が規定値内にあるかどうかを判断する。そして、規定値以下であった場合には、積算値を補正すように積算式を変更する。これによって、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することができた。
【0091】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため説明を省略し、以下では、特徴的な構成についてのみ説明する。
【0092】
第1および第2の実施形態におけるソフト的な廃インク積算により積算した廃インク量には、蒸発率が見込まれており、積算および記憶手段への保持を行う際には蒸発後の値が用いられている。一方で、インクの蒸発に関しては、本発明で用いたような水系インクでは可逆的に進行することが知られており、例えば低湿下で蒸発したものが高湿度下に置かれると、凝縮して再び液化する現象が見られる。第1および第2の実施形態における積算値では、蒸発を見込んで廃インク収用手段4はあふれが発生しない構成としている。しかし、実際には蒸発が起こらない環境であったり、蒸発後に凝縮して再び液化したりする等の理由から、廃インク収用手段4からインクが溢れるという事態が考えられる。また、これらは記録動作中や、回復動作中でなくとも発生することが考えられる。
【0093】
そこで、本実施形態では、電源を切った場合でも廃インク収用手段のセンサと付随する回路のみは通電しておき、任意のタイミングで廃インク収用手段の状態が測定できるように構成している。
【0094】
このように、電源を切った場合でも廃インク収用手段のセンサを有効な状態にしておき、任意のタイミングで廃インク収用手段の状態が測定可能にする。これによって、蒸発しない環境下や蒸発後に凝縮して再び液化するような状況においても、廃インク収容手段を効率よく使用し、かつオーバーフローを生じることの無い廃インク量検知手段を備えたインクジェット記録装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0095】
1 インクジェット記録装置
2 記録ヘッド
4 廃インク収容手段
34 電極
100 ホストコンピュータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを載置可能に構成されており、前記記録ヘッドからインクを吐出することで記録および回復処理を行い、該回復処理の際に吐出された前記インクは廃インクとなって廃インク収容手段に貯留されるインクジェット記録装置において、
前記廃インク収容手段に設けられ、該廃インク収容手段の中の前記廃インクの量を検知する検知手段と、
前記回復処理の際に前記記録ヘッドから吐出された前記インクの量を積算する積算手段と、
を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記積算手段は、前記廃インクが所定時間で蒸発することを前提に蒸発量を加味して前記インクの量を積算することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記蒸発量は、少なくとも湿度、温度、空気の流速のいずれかの環境パラメータによって決定されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記検知手段が検知した前記廃インク量と、前記積算手段が積算した前記インクの量と、を比較し、その差が所定値以下であれば、前記積算に用いる積算式の誤差を減らすように前記積算式を変更し、廃インク量が規定値に達したことを警告することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記検知手段が検知した前記廃インク量と、前記積算手段が積算した前記インクの量と、を比較し、その差が所定値以上であれば、廃インク量が規定値に達したことを警告することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記積算に用いる積算式の変更では、前記環境パラメータによって決定される前記蒸発量も変更されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記積算手段の示す廃インクの量があらかじめ定められた所定値を超えて積算されているにもかかわらず前記検知手段による検知が行われない場合に、前記積算手段の結果を優先して記録装置の停止を実施し、前記検知手段が異常であることを知らせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
複数の前記廃インク収容手段を備え、該廃インク収容手段の中のインク量が所定量になったら、別の前記廃インク収容手段に切り替えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
記録ヘッドを載置可能に構成されており、前記記録ヘッドからインクを吐出することで記録および回復処理を行い、該回復処理の際に吐出された前記インクは廃インクとなって廃インク収容手段に貯留されるインクジェット記録装置において、
前記廃インク収容手段に設けられ、該廃インク収容手段の中の前記廃インクの量を検知する検知手段と、
前記回復処理の際に前記記録ヘッドから吐出された前記インクの量を積算する積算手段と、
を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記積算手段は、前記廃インクが所定時間で蒸発することを前提に蒸発量を加味して前記インクの量を積算することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記蒸発量は、少なくとも湿度、温度、空気の流速のいずれかの環境パラメータによって決定されることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記検知手段が検知した前記廃インク量と、前記積算手段が積算した前記インクの量と、を比較し、その差が所定値以下であれば、前記積算に用いる積算式の誤差を減らすように前記積算式を変更し、廃インク量が規定値に達したことを警告することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記検知手段が検知した前記廃インク量と、前記積算手段が積算した前記インクの量と、を比較し、その差が所定値以上であれば、廃インク量が規定値に達したことを警告することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記積算に用いる積算式の変更では、前記環境パラメータによって決定される前記蒸発量も変更されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記積算手段の示す廃インクの量があらかじめ定められた所定値を超えて積算されているにもかかわらず前記検知手段による検知が行われない場合に、前記積算手段の結果を優先して記録装置の停止を実施し、前記検知手段が異常であることを知らせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
複数の前記廃インク収容手段を備え、該廃インク収容手段の中のインク量が所定量になったら、別の前記廃インク収容手段に切り替えることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−25599(P2011−25599A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175577(P2009−175577)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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